説明

DcR3ポリペプチドというTNFR相同体

【課題】新規なDNAの同定及び単離、並びに、該新規ポリペプチドの組換え生産方法を提供する。
【解決手段】DcR3と命名されたTNFR相同体ポリペプチド、DcR3、DcR3キメラ分子、及びDcR3に対する抗体をコードする核酸分子。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、新規なDNAの同定及び単離、並びに、ここに「DcR3」と命名する新規ポリペプチドの組換え生産に関する。
【0002】
(発明の背景)
腫瘍壊死因子-α(「TNF−α」)、腫瘍壊死因子−β(「TNF−β」又は「リンホトキシン」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、Fasリガンド(Apo−1リガンド又はCD95リガンドとも称される)、及びApo-2リガンド(トレイル(TRAIL)とも称される)等の様々な分子が、サイトカインの腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリーのメンバーとして同定された[例えば、Gruss及びDower, Blood, 85:3378-3404(1995);Wileyら, Immunity, 3:673-682(1995);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12687-12690(1996)]。これらの分子のなかでも、TNF-α、TNF-β、CD30リガンド、4-1BBリガンド、Fasリガンド、及びApo-2リガンド(TRAIL)は、アポトーシス性細胞死に関与していることが報告されている。TNF-αとTNF-βの両方とも、感受性腫瘍細胞におけるアポトーシス性細胞死を誘発することが報告されている[Schmidら, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881(1986); Dealtryら, Eur. J. Immunol., 17:689(1987)]。ゼングらは、TNF-αがCD8ポジティブT細胞のポスト刺激性アポトーシスに関与していることを報告している[Zhengら, Nature, 377:348-351(1995)]。他の研究者は、CD30リガンドが胸腺における自己反応性T細胞の欠失に関与していることを報告している[Amakawaら, プログラム細胞死に関するコールドスプリングハーバー研究所のシンポジウム、要約集、第10巻、(1995)]。
【0003】
Fasリガンドは主に3つの型のアポトーシス、即ち(a)成熟Tリンパ球の活性化誘発性細胞死(AICI);(b)免疫特権的部位からの炎症細胞の除去;及び(c)細胞毒性リンパ球による損傷細胞の殺傷[Nagata, Cell, 88: 355 (1997))]を調節することが明らかになった。T細胞AICDが、ひとたび感染がクリアされた宿主の免疫反応の停止を助けると報告されている。抗体によるT細胞レセプター(TCR)の繰り返し刺激は、Tヘルパー細胞の表面におけるFasリガンド及びFasの発現を誘発し、従って、FasリガンドはFasに結合し、活性化されたリンパ球のアポトーシスをトリガーして、それらの除去を導く。免疫特権的部位は、炎症性免疫反応が機能を乱す可能性のある眼、脳又は精巣といった組織を含む。免疫特権的部位における細胞は、構成的にFasリガンドを発現し、Fas依存性アポトーシスを通してFasを発現する浸潤している白血球を除去する。黒色腫[Hahne等, Science, 274:1363 (1996)]及び肝細胞ガン[Strand等, Nature Med., 2:1361-1366 (1996)]を含むある種のガンは、免疫サーベランス(survaillance)を回避するために類似のFasリガンド依存性機構を用いる。ナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞毒性Tリンパ球は、ウイルス又は細菌感染により、又は少なくとも2つの経路での発ガン遺伝子形質転換により損傷を受けた細胞を除去すると報告されている。一方の経路は、パーフォリン及びグランザイムの放出を含み、代替的経路は、標的細胞上のFasの結合によるFasリガンドの発現及びアポトーシスの誘発を含む[Nagata, 上掲;Moretta, Cell, 90:13 (1997)]。
【0004】
マウスFas/Apo−1又はリガンド遺伝子(各々1pr及びg1dと呼ばれる)における変異は、幾つかの自己免疫疾患に関連しており、Fasリガンドが末梢における自己反応性リンパ球のクローン欠失の調節において役割を担っていることを示している[Krammer等, Curr. Op. Immunol., 6:279-289 (1994);Nagata等, Science, 267:1449-1456 (1995)]。また、Fasリガンドは、CD4ポジティブTリンパ球及びBリンパ球における細胞刺激後アポトーシスを誘発すると報告されており、もはや必要でない場合の活性化されたリンパ球の除去に含まれ得る[Krammer等, 上掲;Nagata等, 上掲]。Fasレセプターと特異的に結合するアゴニストのマウスモノクローナル抗体は、TNF-αに匹敵するか類似する細胞死滅活性を示すことが報告されている[Yoneharaら, J. Exp. Med., 169:1747-1756(1989)]。
【0005】
このようなTNFファミリーのサイトカインが介在する種々の細胞反応誘導は、特異的な細胞レセプターに結合することにより開始されると考えられている。約55-kDa(TNFR1)と75-kDa(TNFR2)の2つの異なるTNFレセプターが同定されており[Hohmanら, J. Biol. Chem., 264:14927-14934(1989);Brockhausら, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131(1990);1991年3月20日に公開されたEP417563]、双方のレセプターの型に対応するヒト及びマウスcDNAが単離され、特徴付けされている[Loetscherら, Cell, 61:351(1990);Schallら, Cell, 61:361(1990);Smithら, Science, 248:1019-1023(1990);Lewisら, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834(1991);Goodwinら, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026(1991)]。広範な多型性が、双方のTNFレセプター遺伝子に関連している[例えば、Takaoら, Immunogenetics, 37:199-203(1993)を参照]。双方のTNFRは細胞外、膜貫通及び細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有する。双方のレセプターの細胞外部分はまた可溶性TNF結合タンパク質として天然に見出される[Nophar, Yら, EMBO J., 9:3269(1990);及びKohno, Tら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87:8331(1990)]。更に最近になって、組換え体可溶性TNFレセプターのクローニングがヘイル(Hale)らにより報告されている[J. Cell. Biochem. 増補15F, 1991, p.113(P424)]。
1型又は2型のTNFR(TNFR1及びTNFR2)の細胞外部分は、NH2末端から出発して、1〜4とされる4つのシステインに富んだドメイン(CRD)の反復アミノ酸配列パターンを含む。各CRDは約40のアミノ酸長のものであり、良好に保存された位置に4〜6のシステイン残基を含んでいる[Schallら, 上掲;Loetscherら, 上掲;Smithら, 上掲;Nopharら, 上掲;Kohnoら, 上掲]。TNFR1において、4つのCRDのおおよその境界は次の通りである:CRD1−14から約53までのアミノ酸;CRD2−約54から約97までのアミノ酸;CRD3−約98から約138までのアミノ酸;CRD4−約139から約167までのアミノ酸。TNFR2において、CRD1は、17〜約54までのアミノ酸を、CRD2は約55から約97までのアミノ酸を;CRD3は約98から約140までのアミノ酸を;CRD4は約141から約179までのアミノ酸を含む[Bannerら, Cell, 73:431-435(1993)]。また、リガンド結合におけるCRDの潜在的な役割は前掲のバナー(Banner)らにより記載されている。
【0006】
CRDの類似の反復パターンが、p75神経成長因子レセプター(NGFR)[Johnsonら, Cell, 47:545(1986);Radekeら, Nature, 325:593(1987)]、B細胞抗原CD40[Stamenkovicら, EMBO J., 8:1403(1989)]、T細胞抗原OX40[Malletら, EMBO J., 9:1063(1990)]及びFas抗原[Yoneharaら, 上掲、及びItohら, Cell, 66:233-243 (1991)]を含む幾つかの他の細胞表面タンパク質に存在している。また、CRDはショープ(Shope)及び粘液腫ポックスウィルスの可溶型TNFR(sTNFR)様のT2タンパク質にも見出されている[Uptonら, Virology, 160:20-29(1987);Smithら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 176:335(1991);Uptonら, Virology, 184:370(1991)]。これらの配列の最適なアラインメントは、システイン残基の位置が良好に保存されていることを示している。これらレセプターは、しばしば集合的に、TNF/NGFレセプタースーパーファミリーのメンバーと称される。p75NGFRに関する最近の研究では、CRD1の欠失[Welcher, A.A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:159-163(1991)]又はこのドメインにおける5-アミノ酸の挿入[Yan. H及びChao, M.V., J. Biol. Chem., 266:12099-12104(1991)]は、NGF結合にはほとんど又は全く影響を持たないことが示されている[Yan. H及びChao, M.V., 上掲]。p75NGFRは、そのCRD4と膜貫通領域の間に、NGF結合に関与しない約60のアミノ酸のプロリンに富んだ伸展を含む[Peetre, Cら, Eur. J. Hematol.,41:414-419(1988);Seckinger, Pら, J. Biol. Chem., 264:11966-11973(1989);Yan. H及びChao, M.V., 上掲]。同様のプロリンに富んだ領域はTNFR2に見出されているが、TNFR1にはない。
【0007】
イトーらは、Fasレセプターが55-kDaのTNFR1によりシグナル化されるものと同様のアポトーシス性細胞死をシグナル化し得ることを開示している[Itohら, 上掲]。また、Fas抗原の発現は、細胞をTNF-α又は抗Fasのマウスモノクローナル抗体で処理した場合に、TNFR1のものと共にダウンレギュレーションされることが報告されている[Krammerら, 上掲;Nagataら, 上掲]。従って、Fas及びTNFR1レセプターの双方を同時発現する株化細胞が、共通のシグナル伝達経路を通して細胞死滅を媒介しているとの仮説を唱える研究者もいた[同]。
【0008】
リンホトキシン-αを除き、今日までに同定されているTNFファミリーのリガンドは、II型の膜貫通タンパク質であり、そのC末端は細胞外にある。これに対して、今日までに同定されているTNFレセプター(TNFR)ファミリーのレセプター類はI型の膜貫通タンパク質である。しかしながら、TNFリガンド及びレセプターファミリーの双方において、ファミリーメンバー間で同定された相同性は、主として細胞外ドメイン(「ECD」)において見出されている。TNF-α、Fasリガンド及びCD40リガンドを含むTNFファミリーサイトカインのいくつかは、細胞表面においてタンパク分解的に切断され;各場合に得られたタンパク質は、典型的には、可溶性サイトカインとして機能するホモ三量体分子を形成する。また、TNFレセプターファミリーのタンパク質は、通常、タンパク分解的に切断され、同族のサイトカインの阻害剤として機能し得る可溶性レセプターのECDを放出する。
【0009】
最近になって、TNFRファミリーの他のメンバーが同定されている。これらの新たに同定されたTNFRファミリーのメンバーは、CAR1、HVEM及びオステオプロテゲリン(osteoprotegerin)(OPG)を含む[Brajatsh等, Cell, 87:845-855 (1996);Montgomery等, Cell, 87:427-436 (1996);Marsters等, J. Biol. Chem., 272:14029-14032 (1997);Simonet等, Cell, 89:309-319 (1997)]。他の知られたTNFR様分子とは異なり、上掲のシモネット(Simonet)等は、OPGが疎水的膜貫通スパンニング配列を含まないことを報告している。
【0010】
マースターズ(Marsters)ら、Curr. Biol., 6:750(1996)において、研究者等は、細胞外のシステインに富んだ反復についてTNFRファミリーに対して類似性を示し、細胞質死亡ドメイン配列を含む点でTNFR1及びCD95に似ており、Apo-3と称される、ヒトのポリペプチド天然配列の全長を開示している[Marstersら,Curr. Biol., 6:1669(1996)もまた参照されたい]。他の研究者によれば、Apo-3はDR3、wsl-1及びTRAMPとも称されている[Chinnaiyanら, Science, 274:990(1996);Kitsonら, Nature, 384:372(1996);Bodmerら, Immunity, 6:79(1997)]。
【0011】
パンらは、「DR4」と称される他のTNFレセプターファミリーのメンバーを開示している[Panら, Science, 276:111-113(1997)]。DR4は細胞自殺器を活動させる細胞質死亡ドメインを含むと報告されている。パンらは、DR4がApo-2リガンド又はTRAILとして知られているリガンドに対するレセプターであると考えられることを開示している。
【0012】
シェリダン(Sheridan)ら, Science, 277:818-821 (1997)及びパン(Pan)ら, Science, 277: 815-818 (1997)には、Apo-2リガンド(TRAIL)のレセプターと考えられる他の分子が記載されている。この分子は、DR5と称される(また、Apo-2とも称されていた)。DR4と同様に、DR5は、細胞質脂肪ドメインを含み、アポトーシスのシグナル伝達ができる。
【0013】
シェリダンら, 上掲には、DcR1(またはApo-2DcR)が、Apo-2リガンド(TRAIL)のデコイレセプターであると開示されている。シェリダンらは、DcR1がインビトロでApo-2リガンド機能を阻害することができると報告している。また、TRIDと称されるデコイレセプターに関する開示については、パンら,上掲を参照。
TNFファミリーのサイトカイン及びそれらのレセプターについての概説は、Gruss及びDower, 上掲参照。
【0014】
膜結合タンパク質及びレセプターは、多細胞生物の形成、分化及び維持において重要な役割を担うことができる。多くの個体細胞の運命、例えば増殖、泳動、分化、又は他の細胞との相互作用は、典型的には、他の細胞及び/又は直近の環境から受容した情報によって支配される。この情報は、しばしば分泌されたポリペプチド(例えば、分裂促進因子、生存因子、細胞毒性因子、分化因子、神経ペプチド因子、及びホルモン)によって伝達され、一方それらは、多様な細胞レセプター又は膜結合タンパク質によって受容され解読される。これらの膜結合タンパク質及び細胞レセプターは、それらに限られないが、サイトカインレセプター、レセプターキナーゼ、レセプターホスファターゼ、細胞−細胞相互作用に含まれるレセプター、及びセレクチン及びインテグリン等の細胞接着分子を包含する。例えば、細胞成長及び分化を調節する信号の伝達は、部分的には種々の細胞タンパク質のリン酸化によって調節される。タンパク質チロシンキナーゼというこの過程を触媒する酵素も、成長因子レセプターとして作用することができる。例としては、線維芽細胞成長因子レセプター及び神経成長因子レセプターが含まれる。
【0015】
欠く結合タンパク質及びレセプター分子は、製薬及び診断薬等を含む様々な工業的用途を有している。例えば、レセプターイムノアドヘシンは、レセプター−リガンド相互作用を阻止する治療薬として用いることができる。また、膜結合タンパク質は、潜在的ペプチド又は関連するレセプター/リガンド相互作用の分子阻害剤のスクリーニングにも用いることができる。
【0016】
新たな天然レセプタータンパク質を同定するために、工業的にも学術的にも努力がなされてきた。多くの努力は、新たなレセプタータンパク質をコードする配列を同定するための、哺乳動物組み換えDNAライブラリのスクリーニングに集中している。
【0017】
(発明の概要)
本出願人は、本出願において「DcR3」と命名される新規ポリペプチドをコードするcDNAクローンを同定した。ここで用いられる「DcR3」なる語は、本出願人が既に「DNA30942」と呼んでいるものと同じポリペプチドを指す。
【0018】
一実施態様において、本発明は、DcR3ポリペプチドをコードするDNAを含む単離された核酸分子を提供する。一態様において、単離された核酸分子は、図1(配列番号:1(SEQ ID NO:1))のアミノ酸残基1〜300;図1(配列番号:1)のアミノ酸残基1〜215;又はxが図1(配列番号:1)の残基215〜300のいずれかである場合の残基1〜xを有するDcR3ポリぺプチドをコードするDNAを含むか、又はこのようなコード核酸配列に相補的であり、少なくとも中程度、場合によっては高いストリンジェント条件下でそれに安定して結合したままである。
【0019】
他の実施態様において、本発明はDcR3ポリペプチドをコードするDNAを含んでなるベクターを提供する。また、このようなベクターを含有する宿主細胞も提供する。例として、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌、又は酵母菌であってよい。DcR3ポリペプチドの生産方法もさらに提供され、宿主細胞を、DcR3の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からDcR3を回収することを含んでいる。
【0020】
他の実施態様では、本発明は単離されたDcR3ポリペプチドを提供する。特に、本発明は、一実施態様においては図1(配列番号:1)の残基1〜300又は図1(配列番号:1)の残基1〜215又はxが図1(配列番号:1)の残基215〜300のいずれかである場合の残基1〜xを含んでなるアミノ酸配列を含む、単離された天然配列DcR3ポリペプチドを提供する。
【0021】
他の実施態様においては、本発明は単離されたDcR3変異体を提供する。DcR3変異体は、図1(配列番号:1)の推定アミノ酸配列又はここで同定されるドメイン配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくは天然又は天然発生DcR3の活性を有する。
【0022】
他の実施態様において、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列と融合したDcR3ポリペプチドを含んでなるキメラ分子を提供する。このようなキメラ分子の例には、エピトープタグ配列又は免疫グロブリン配列のFc領域と融合したDcR3が含まれる。
【0023】
他の実施態様において、本発明はDcR3ポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。場合によっては、抗体はモノクローナル抗体である。場合によっては、抗体は、DcR3に結合してそのFasリガンド及び/又はDcR3によって認識される他のリガンドへの結合を阻止するモノクローナル抗体である。
【0024】
さらなる実施態様において、本発明はDcR3ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストを提供する。また、治療及び診断方法も提供される。
他の実施態様において、本発明は図3(配列番号:3)の核酸配列を含む発現された配列タグ(EST)を提供する。
【0025】
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される際の「DcR3ポリペプチド」及び「DcR3」という用語には、天然配列DcR3及びDcR3変異体(ここでさらに定義される)が含まれる。DcR3は種々の供給源、例えばヒト組織型又は他の供給源から単離されたもの、あるいは組換え又は合成法により調製されたものであってよい。
【0026】
「天然配列DcR3」は、天然由来のDcR3と同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列DcR3は、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列DcR3」という用語には、特に、DcR3の自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた型)及びDcR3の自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。本発明の一実施態様において、天然配列DcR3は、図1(配列番号:1)のアミノ酸1〜300を含有する成熟又は全長天然配列DcR3である。あるいは、DcR3は図1(配列番号:1)のアミノ酸1〜215を含む。
【0027】
「DcR3変異体」とは、全長天然配列ヒトDcR3に対して図1(配列番号):1)に示されている推定アミノ酸配列又はここで同定されるドメイン配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する以下に定義するDcR3を意味する。このようなDcR3変異体には、例えば、図1の配列(配列番号:1)あるいはここで同定されるドメイン配列のN又はC末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加され、もしくは欠失されたDcR3ポリペプチドが含まれる。通常、DcR3変異体は、図1のアミノ酸配列(配列番号:1)と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0028】
ここで同定されるDcR3配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、DcR3配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0029】
ここで同定されるDcR3配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、DcR3配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0030】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したDcR3、又はそれらのドメイン配列を含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さはDcR3の活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
【0031】
「単離された」とは、ここで開示される種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され及び単離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、ポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分なほど精製される。DcR3の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドには、組換え細胞内のインシトゥーのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0032】
「単離された」DcR3核酸分子は、同定され、DcR3核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたDcR3核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離されたDcR3核酸分子は、天然の細胞中に存在するDcR3核酸細胞とは区別される。しかし、単離されたDcR3核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にあるDcR3を通常発現する細胞に含まれるDcR3核酸分子を含む。
【0033】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に関連付けられたコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0034】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に関連付けられ」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に関連付けられている;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に関連付けられている;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に関連付けられている。一般的に、「作用可能に関連付けられる」とは、関連付けられたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。関連づけは簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法に従って、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0035】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に抗DcR3モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体または阻止抗体を含む)、及び多エピトープ特異性を持つ抗DcR3抗体組成物を包含している。ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を称する。
【0036】
ここで意図している「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生DcR3の生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するDcR3の形態を意味する。
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝結、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又はコントロールされた形態を指す。この活性は、例えば細胞生死判別アッセイ、FACS分析又はDNA電気泳動法等、全て従来から知られている方法により決定し測定することができる。
【0037】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、芽細胞腫、胃腸癌、腎臓癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、神経芽腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞腫(hepatoma)、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮体癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)及び様々な種類の頭部及び頸部の癌が含まれる。
【0038】
ここで使用される「治療する」、「治療」及び「治療法」とは、治癒的療法、予防的療法及び予防的療法を称する。
ここで使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ及びネコを含む哺乳動物として分類されるあらゆる動物を指す。本発明の好ましい実施態様においては、哺乳動物はヒトである。
【0039】
II. 本発明の組成物と方法
本発明は、本出願においてDcR3と称されるポリペプチドをコードする、新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に本出願人は、以下の実施例で更に詳細に開示するような、DcR3ポリペプチドをコードするcDNAを同定し、分離した。BLAST及びFastA配列アラインメントプログラムを用いて、本出願人は、全長天然配列DcR3(図1及び配列番号:1に示す)が、ヒトTNFR2と約28%のアミノ酸同一性を有することを見いだした。従って、現在では、本出願で開示されたDcR3がTNFRファミリーの新たなメンバーであり、TNFRタンパク質ファミリーの典型的な活性又は特性を持つであろうと考えられる。OPGのように、他のTNFRファミリーメンバー[Simonet等, 上掲]であるDcR3分子は、今では、膜貫通領域を欠き、分泌されたタンパク質であることが分かっている。
【0040】
DcR3は、Fasリガンドに結合でき及び/又はFasリガンドによって誘発されるアポトーシスの阻害を含むFasリガンド活性の阻害ができる可溶性デコイレセプターであり得ると今日では考えられている。以下の実施例に示すように、遺伝子増幅実験は、DcR3遺伝子がかなりの数の原発性の肺及び大腸癌において増幅されることを明らかにし、ある種の癌は、Fasリガンド誘発性アポトーシスを阻止するDcR3の様なデコイレセプターの発現により免疫細胞毒性攻撃を回避できることを示唆している。また、実施例は、DcR3が免疫阻害活性であり得ることを示し、例えばT細胞媒介疾患におけるその用途を示唆している。DcR3に対する抗体は、DcR3生産性癌の免疫細胞毒性攻撃に対する感受性化及び腫瘍反応性リンパ球の増殖の促進に用いることができる。
【0041】
B. DcR3の修飾
DcR3の共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、DcR3の標的とするアミノ酸残基を、DcR3の選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えばDcR3を水不溶性支持体マトリクスあるいは抗DcR3抗体の精製方法又はその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジル)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
【0042】
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチルへの脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0043】
本発明の範囲内に含まれるDcR3ポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、ここで意図されるのは、天然配列DcR3に見られる1又は複数の炭水化物部分の欠失、及び/又は天然配列DcR3に存在しない1又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0044】
DcR3ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列の変更を伴う。この変更は、例えば、1又は複数のセリン又はトレオニン残基の天然配列DcR3(O-結合グリコシル化部位)への付加、又は置換によってなされてもよい。DcR3アミノ酸配列は、場合によっては、DNAレベルでの変化、特に、DcR3ポリペプチドをコードするDNAの予め選択された塩基において変異させ、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを精製させることを通して変更されてもよい。
【0045】
DcR3ポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に発行されたWO87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
【0046】
DcR3ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、あるいはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddin等, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、及びEdge等, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
【0047】
DcR3の共有結合的修飾の他の型は、DcR3ポリぺプチドの、種々の非タンパク質ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。
【0048】
また、本発明のDcR3は、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したDcR3を含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとDcR3との融合を含む。エピトープタグは、一般的にはDcR3のアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなDcR3のエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってDcR3を容易に精製できるようにする。もう一つの実施態様において、キメラ分子はDcR3の免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含む。特に、キメラ分子は、IgG分子に融合した図1(配列番号:1)のアミノ酸残基1〜215を含むDcR3のECDを含んでもよい。キメラ分子の二価の形態には、このような融合はIgG分子のFc領域であり得る。
【0049】
種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体は、この分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
【0050】
C. DcR3の調製
以下の説明は、主として、DcR3核酸を含むベクターで形質転換又はトランスフェクトされた細胞を培養してDcR3を生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてDcR3を調製することはできると考えられる。例えば、DcR3配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。DcR3の種々の部分は、別々に化学的に合成され、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて全長DcR3を生産してもよい。
【0051】
1. DcR3をコードするDNAの単離
DcR3をコードするDNAは、DcR3mRNAを保有し、それを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒトDcR3DNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。またDcR3コード遺伝子は、ゲノムライブラリから又はオリゴヌクレオチド合成により得ることもできる。
【0052】
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(DcR3に対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されているような標準的な手順を使用して実施することができる。DcR3をコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrookら,上掲;Dieffenbachら,PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0053】
以下の実施例には、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリッド化時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は、当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の厳密性及び高厳密性を含むハイブリッド化条件は、Sambrookら,上掲に提供されている。
【0054】
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、Genbank等の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の決定された領域内又は全長にわたっての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、同一性を測定するのに様々なアルゴリズムを用いるALIGN、DNAstar、及びINHERIT等のコンピュータソフトウェアプログラムを用いた配列アラインメントを通して決定することができる。
【0055】
タンパク質コード配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrookらにより記述されている従来のプライマー伸展法を使用し、選択されたcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることにより得られる。
【0056】
DcR3変異体はDcR3DNAに適切なヌクレオチド変化を導入するか、所望のDcR3ポリペプチドを合成することにより調製することができる。アミノ酸の変化により、グリコシル化部位の数と位置の変化、膜係留特性の変更のように、DcR3の翻訳後過程を改変し得ることは当業者であれば理解されることである。
【0057】
ここで記載されている天然全長配列DcR3又はDcR3の種々のドメインにおける変異は、例えば米国特許第5364934号に記載された保存的あるいは非保存的突然変異に関する技術とガイドラインの任意のものを使用して発生させることができる。変異は、DcR3をコードしている一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であり、天然配列DcR3に対してDcR3のアミノ酸配列に変化が生じている。場合によっては、変異は、DcR3分子の一又は複数のドメインにおいて、少なくとも1つのアミノ酸を任意の他のアミノ酸に置換することによりなされる。変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発のような、当該分野において既知の方法を用いて行うことができる。部位特異的突然変異誘発[Carterら, Nucl. Acids. Res., 13:4331(1986);Zollerら, Nucl. Acids. Res., 10:6487(1987)]、カセット突然変異[Wellsら, Gene, 34:315(1985)]、制限選択的突然変異誘発[Wellら, Philos. Trans. R. Soc. London. SerA, 317:415(1986)]又は他の既知の技術をクローンDNAに実施してDcR3変異体のDNAを生産することができる。
【0058】
また、特定のリガンド又はレセプターとの相互作用に関与する、近接配列に沿った一又は複数のアミノ酸を同定するために、スキャニングアミノ酸分析法を使用することもできる。好ましいスキャニングアミノ酸は、比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリン及びシステインが含まれる。変異体の主鎖構造をあまり改変することなく、ベータ炭素を越えた側鎖が除去されるため、アラニンがこの群のなかで好ましいスキャニングアミノ酸である。またアラニンは最も一般的なアミノ酸であることも好ましい。さらに、アラニンは埋設及び露出位置の双方に頻繁に見出される[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.);Chothia, J. Mol. Biol., 105:1(1976)]。アラニン置換により適切な量の変異体を生じない場合には、アイソテリックアミノ酸を使用することができる。
【0059】
選択されたDcR3変異体がひとたび生産されると、それらを、例えばFasリガンドと接触させることができ、相互作用があれば測定することができる。DcR3変異体とFasとの相互作用は、例えば以下の実施例に記載したようなインビトロアッセイにより測定することができる。天然配列DcR3とDcR3変異体の活性と性質を比較するため任意の数の分析的測定法を使用することができ、結合性に対して簡便なものは、天然配列DcR3の解離定数Kdと比較したDcR3変異体とFasとの間に形成された複合体の解離定数Kdである。
【0060】
場合によっては、突然変異(例えば一又は複数のアミノ酸の欠失)に好適なDcR3配列中の代表的な部位には、一又は複数のシステインリッチドメイン内の部位が含まれる。このような変異は上述の方法を使用することにより達成される。
【0061】
2. 宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したDcR3生成のための発現又はクローニングベクターでトランスフェクト又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば媒質、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。 一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
【0062】
トランスフェクションの方法、例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shawほか, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開の国際特許出願第WO89/05859号に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4399216号に記載されている。酵母中への形質転換は、典型的には、Van solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0063】
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。
【0064】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、DcR3をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。
【0065】
グリコシル化DcR3の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Grahamほか, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980))ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065); 及びマウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562, ATTC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術常識内にある。
【0066】
3. 複製可能なベクターの選択及び使用
DcR3をコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの形成には、当業者に知られた標準的な連結技術を用いる。
【0067】
DcR3は直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。
一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるDcR3DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5010182号に記載されている)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行のEP362179)、又は1990年11月15日に公開された国際特許出願第WO90/13646号に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連ある種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
【0068】
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
【0069】
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0070】
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの他の例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、DcR3核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub 等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcombら, Nature, 282:39(1979);Kingmanら, Gene, 7:141(1979);Tschemperら, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0071】
発現及びクローニングベクターは、通常、DcR3核酸配列に作用可能に関連付けられ、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。多種の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Cahng等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer ほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモータもまたDcR3をコードするDNAと作用可能に関連付けられたシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
【0072】
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman ほか, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess ほか, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1987)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0073】
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母での発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許第73657号に更に記載されている。
【0074】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのDcR3転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターは宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
【0075】
より高等の真核生物による本発明のDcR3をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物の遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、DcR3コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0076】
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、DcR3をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養でのDcR3の合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingほか, Nature, 293:620-625 (1981); Manteiほか, Nature, 281:40-46 (1979); 欧州特許第117060号; 及び欧州特許第117058号に記載されている。
【0077】
4. 遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインシトゥハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。また、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
【0078】
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列DcR3ポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はDcR3DNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0079】
5. DcR3ポリペプチドの精製
DcR3の形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。DcR3が膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。DcR3の発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
【0080】
DcR3を、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びDcR3のエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutcher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産されるDcR3の性質に依存する。
【0081】
D. DcR3の用途
DcR3をコードする核酸配列(又はそれらの補体)は、ハイブリッド化プローブとして、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成においての使用を含む、分子生物学における種々の用途を有している。また、DcR3核酸は、ここに記載される組み換え技術によるDcR3ポリペプチドの調製にも有用であろう。
【0082】
全長天然配列DcR3(図2;配列番号:2)遺伝子、又はその一部は、全長DcR3遺伝子の単離又は図2(配列番号:2)に開示されたDcR3配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他の遺伝子(例えば、DcR3の天然発生変異体又は他の種からのDcR3をコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリのためのハイブリッド化プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリッド化プローブは、配列番号2の核酸配列又は天然配列DcR3のプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、DcR3遺伝子のコード領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド化プローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビディン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明のDcR3遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、そのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブリダイズするかを決定するのに使用できる。ハイブリッド化技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
【0083】
本出願に記載し特許請求しているESTは、ここに記載した方法を用いて、同様にプローブとして用いることができる。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連したDcR3配列の同定のための配列のプールを生成することができる。
【0084】
また、DcR3をコードする核酸配列は、そのDcR3をコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリッド化プローブの形成にも用いることができる。ここに提供される核酸配列は、インシトゥハイブリッド形成、既知の染色体標識に対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリッド化スクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。以下の実施例12は、選択された染色体マッピング技術を更に記載し、DcR3遺伝子がヒト染色体20にマッピングされたことを決定する。
【0085】
ここに開示されたように、DcR3遺伝子はガン細胞及び組織中で増幅される。例えば以下の実施例13は、DcR3遺伝子が異なる肺及び大腸癌中で増幅されることが見いだされたことを記載している。従って、本発明の分子は、組織をDcR3遺伝子の増幅について分析することにより、癌の存在又は癌に罹患する危険性を検知する診断薬として使用することができる。患者組織におけるDcR3遺伝子増幅の検出は、患者に対する抗DcR3抗体治療の様式を決定するといった、患者に望ましい治療様式を選択するに当たり熟練医師によっても用いられる。このような診断方法又はアッセイは、この分野で知られたPCR又はFISH技術を含む種々の技術を用いて実施できる。また、組織は、DcR3遺伝子増幅の決定について実施例13で記載した技術を用いて分析してもよい。
【0086】
DcR3のコード配列が他のタンパク質に結合するタンパク質をコードする場合(例えば、DcR3がレセプターである場合)、DcR3は、結合性相互作用に含まれる他のタンパク質又は分子を同定するアッセイに用いることができる。このような方法によって、レセプター/リガンド結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、レセプターDcR3は、関連するリガンドの単離に使用できる。スクリーニングアッセイは、天然DcR3又はDcR3のリガンド又はレセプターの生物学的活性ににたリード化合物の発見のために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングにも用いられ、小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。考慮される小分子は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く知られ特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生物学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
【0087】
また、DcR3又はその修飾型をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物を産生するのに使用でき、これらは治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(例えばマウス又はラット)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、DcR3をコードするcDNA又は、確立された技術によりDcR3をコードするゲノムDNAをクローン化するために使用することができ、ゲノム配列を、DcR3をコードするDNAを発現する細胞を有するトランスジェニック動物を産生するために使用することができる。特にマウス又はラット等のトランスジェニック動物を産生する方法は当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4736866号や第4870009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのDcR3導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入されたDcR3をコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物はDcR3をコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えば過度のアポトーシスを伴う病理的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。発明のこの態様においては、動物を試薬で治療し、導入遺伝子を有する未治療の動物に比べ病状の発病率が低ければ、疾患に対する治療的処置の可能性が示される。
【0088】
あるいは、DcR3の非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたDcR3をコードする変更ゲノムDNAと、DcR3をコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、DcR3をコードする欠陥又は変更遺伝子を有するDcR3「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、DcR3をコードするcDNAは、確立された技術に従い、DcR3をコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。DcR3をコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas及びCapecchi, Cell, 51:503(1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えば電気穿孔法等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Liほか, Cell, 69:915(1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、期間をおいて「ノックアウト」動物をつくり出す。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、例えば腫瘍の発達を含む、DcR3ポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及びその病理的状態の発達に対する防御能力によって特徴付けられる。
【0089】
本出願で開示したように、DcR3は、Fasリガンド又は哺乳動物細胞でDcR3が結合する他のリガンドによるアポトーシスを調節し、並びにFasリガンドの他の機能を変化させるために治療的に使用することができる。この治療は、例えば、インビボ又はエキソビボ遺伝子治療技術を用いて行うことができる。DcR3をコードする核酸を遺伝子治療に用いることもできる。遺伝子治療の応用に置いて、遺伝子は細胞中に導入され、治療的に有効な遺伝子産物、例えば検出可能な遺伝子置換体のインビボ合成を達成する。「遺伝子治療」とは、1回の処理によって長期間の効果が達成される従来の遺伝子治療、及び治療的に有効なDNA又はmDNAの1回又は繰り返しの投与を含む遺伝子治療薬の投与の両方を包含する。アンチセンスRNA及びDNAは、ある種の遺伝子のインビボ発現を阻止するための治療薬として用いられる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドが細胞内に移入され、細胞膜による取り込みが制限されていることにより、低い細胞内濃度にもかかわらず阻害剤として作用することが既に示されている[Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:4143-4146 (1986)]。オリゴヌクレオチドは、修飾して、例えば元の荷電したリン酸ジエステル取基を非荷電基で置換することにより、取り込み性を向上させることができる。
【0090】
核酸を生細胞に導入するために利用可能な種々の技術がある。これらの技術は、核酸が対象とする宿主に、インビトロあるいはインビボのいずれで培養細胞中に移入されるかに依る。哺乳動物にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などを含む。現在インビボ遺伝子移入技術に好ましいのは、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでのトランスフェクション及びウイルスコートのタンパク質−リポソーム媒介トランスフェクション[Dzau等, Trends in Biotechnology, 11:205-210 (1993)]を含む。幾つかの状況では、核酸源を、細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターのリガンド等の標的細胞を標的とする試薬とともに提供するのが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスを伴って細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、標的化及び/又は取り込みの促進のために用いられ、例えば、特定の細胞型指向性のカプシドタンパク質又はその断片、サイクルで内在化を受けるタンパク質に対する抗体、細胞間局在化を標的とし、細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem., 262:4429-4432 (1987)及びWagner等, Proc. Natl. Acad. Sci., 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。遺伝子標識化及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science, 256:808-813 (1992)を参照のこと。
【0091】
DcR3ポリペプチド及びDcR3の修飾形態(並びに以下に述べるDcR3抗体)は、アゴニスト又はアンタゴニスト分子として治療的に用いられる。例えば、アンタゴニストとして作用できるDcR3分子は、Fasリガンド又はFasリガンド誘発活性、あるいはDcR3が結合する他のリガンドの活性の阻害又は阻止に用いられる。DcR3のこのような形態の例は、DcR3と免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含む上記のキメラ分子を含んでいる。これは、DcR3と免疫グロブリンの細胞外ドメインを含むキメラ分子を含んでいる。ここに記載したこれらのDcR3分子は、Fasリガンド誘発性アポトーシス又はFasリガンド誘発性リンパ球活性などのFasリガンド活性を阻害することができ、並びに抗原性刺激に対する反応におけるリンパ球の増殖を抑制する。実施例に記載する混合されたリンパ球反応アッセイデータに基づいて、油発された免疫反応は排他的にFasリガンドに媒介される必要はないと考えられる。
【0092】
従って、この阻害又はアンタゴニスト活性は、免疫に媒介された及び少なくともそれらの誘発及び機構の要素としてTリンパ球の活性化を含み、従って哺乳動物に有害なこれらの疾患における細胞内及び細胞間事象と共同する疾患における応用も有する。T細胞の活性化を含む又は依存すると考えられているこのような免疫媒介された疾患は、それらに限られないが、喘息又は他のアレルギー疾患を含み、それらは、例えばアレルギー性鼻炎及びアトピー性疾患、慢性関節リウマチ及び若年性慢性関節炎、乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、グルテン−感受性腸炎、ホウィップル病、多発性硬化症及び他の免疫媒介脱髄CNS疾患、及び移植拒絶及び対宿主性移植片病を含む移植関連疾患を包含する。
【0093】
これらの疾患は、例えば哺乳動物における免疫抑制療法の目に見える回復によって示されるように直接に、あるいは例えば疾患を持つ患者の患部におけるT又はBリンパ球又は自己免疫あるいはヒト疾患の動物モデルの実験的使用を介して得られたデータ通した推測によって示されるように間接的に免疫媒介されると考えられている。[一般的に、Samter's Immunological Diseases, 5th Ed., Vols. I及びII, Little Brown and Company (1995)参照]。
【0094】
担体とそれらの製剤は、Osloらにより編集されたRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., 1980, Mack Publishing Co.,に記載されている。典型的には、適量の製薬的に許容可能な塩が、製剤を等浸透圧にするために製剤において使用される。担体の例には、生理食塩水、リンガー液及びデキストロース液のようなバッファーが含まれる。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8、さらに好ましくは約7.4〜約7.8である。さらなる担体は、固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスなどの徐放製剤を含み、そのマトリクスは、成形物品、例えばフィルム、リポソームまたはマイクロパーティクルの形状である。例えば投与経路又は投与されるDcR3分子の濃度によっては、ある種の担体がより好ましくなることは、当業者には明らかである。
【0095】
哺乳動物への投与は、注射(例えば、静脈、腹腔内、皮下、筋内)、又は点滴のように、有効な形態で血流への送達を確実にする他の方法によりなすことができる。
投与の有効な用量とスケジュールは経験的に決定することができ、このような決定は当業者の技量の範囲に含まれる。
【0096】
E. 抗DcR3抗体
本発明は、さらに抗DcR3抗体を提供するものである。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。
【0097】
1. ポリクローナル抗体
DcR3抗体はポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、DcR3ポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物における免疫原性が知られているタンパク質に包合させるのが有用である。このような適切な免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0098】
2. モノクローナル抗体
あるいは、DcR3抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0099】
免疫化剤は、典型的にはDcR3ポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット及びマウスの骨髄腫細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親の形質転換細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0100】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これはカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeurほか, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
【0101】
次いでハイブリドーマ細胞を培養する培地を、DcR3に対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0102】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程を経てサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
【0103】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインAセファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0104】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4816567号に記載された方法により作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法によって(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[US. Patent No.4816567;Morrisonほか, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。
【0105】
以下の実施例に記載するようにして、抗DcR3モノクローナル抗体を調製した。これらの抗体のいくらかは、4C4.1.4;5C4.14.7;11C5.2.8;8D3.1.5;及び4B7.1.1と命名され、ATCCに寄託され、寄託受入番号 、 、 、 、及び がそれぞれ付与された。一実施態様において、本発明のモノクローナル抗体は、受入番号 、 、 、 、及び で寄託されたハイブリドーマ株化細胞により分泌される抗体の一又は複数と同じ生物学的特徴を有する。「生物学的特徴」という用語は、モノクローナル抗体のインビトロ及び/又はインビボの活性又は性質、例えばDcR3に結合する能力又はFasリガンド/DcR3結合を実質的に阻止する能力を指すために使用される。場合によっては、モノクローナル抗体はここで特に言及された抗体の少なくとも1つと同じエピトープに結合する。そのようなエピトープ結合は、例えばここや実施例において記載したように、種々のアッセイを行うことにより測定することができる。
【0106】
本発明の抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連したシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
【0107】
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の調製は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0108】
3. ヒト化抗体
本発明のDcR3抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0109】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法を使用して行える。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(U.S. Patent No.4,816,567)である。実際には、ヒト化抗体は典型的にはある程度のCDR残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。
【0110】
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1992);Marksほか, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて産生することもできる。また、Coleら及びBoernerらの方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoernerら, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。
【0111】
4. 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方はDcR3に対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
【0112】
二重特異性抗体を生成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生成方法は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えたため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成でき、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際特許出願第93/08829号、及びTrauneckerほか, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
【0113】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を生成するための更なる詳細については、例えばSureshほか,Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0114】
5. ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有的に結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療のために(WO91/00360、WO92/200373;EP03089)提案された。本抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されているものが含まれる。
【0115】
D. DcR3抗体の用途
本発明のDcR3抗体は様々な有用性を有している。例えば、DcR3抗体は、DcR3の診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、血清又は腫瘍での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に、検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。抗体を検出可能な部位に包合するためにこの分野で知られた任意の方法が用いられ、Hunter等 Nature, 144:945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981) ;及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法を含む。
【0116】
また、DcR3抗体は組換え細胞培養又は天然供給源からのDcR3のアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、DcR3に対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾過紙のような適当な支持体に固定する。次に、固定された抗体を、精製するDcR3を含む試料と接触させた後、固定された抗体に結合したDcR3以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、DcR3を抗体から離脱させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
【0117】
また本発明のDcR3抗体は治療的有用性も有する。例えば、DcR3抗体は、Fasリガンド誘発性アポトーシスを阻止するか、潜在的な自己免疫/炎症効果を阻止するDcR3の活性をアンタゴナイズするために使用することができる。DcR3アンタゴニストは、癌治療において、例えばDcR3が癌細胞の免疫細胞毒性殺傷を阻害するのを防止することにより作用することができる。それらは、例えば、Fasリガンド−DcR3結合の阻止又はDcR3消滅又は除去の増強又は促進によって達成される。当業者は、免疫反応の活性化又は刺激を抑制でき、従ってあるレベルの免疫抑制が可能であり、それにより哺乳類の免疫サーベイランスシステム及び反応の回避において癌細胞を助ける能力を持つ分子が存在することを知っている。免疫系の天然阻害剤の例は、Tリンパ球の同時刺激機構の阻害によりTリンパ球活性化を阻害することのできるCTLA4である。この阻害のインビボでのアンタゴナイズは、哺乳動物が免疫学的に癌を拒絶する能力を向上させることが示された。インビボでの抗体によるCTLA4の阻止が、確立された癌に対する免疫反応を向上させ、その後この癌を拒絶させることが報告されている。[Kwon等, Proc. Nat. Acad. Sci., 94:8099-8103 (1997);Leach等, Science, 271:1734-1736 (1996)]。
【0118】
治療的組成物及び投与手法(DcR3について上述したような)が用いられ得る。アンタゴニストの投与のための有効投与量及びスケジュールは、経験的に決定され、そのような決定をするのも技術常識の範囲内である。当業者は、投与されるべきアンタゴニストの投与量が、例えば、アンタゴニストを受容する哺乳動物、投与経路、特に用いられるアンタゴニストの型及び哺乳動物に投与される他の薬剤によって変化することを理解するであろう。抗体アンタゴニストについての適当な投与量の選択の助言は抗体の治療的使用に関する文献、例えばHandbook of Monoclonal Antibodies, Ferrone等, 編, Noges 発行, Park Ridge, N.J., (1985)ch. 22,及びpp.303-357;Smith等, Antibodies in Human Diagnosis and Therapy, Haber等編, Raven Press, New York (1977) pp. 365-389に見いだされる。アンタゴニスト単独で用いられる典型的な日々の投与量は、1日当たり約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲であり、上記の要因に応じて変化する。
【0119】
ここに記載したDcR3アンタゴニストを用いた癌の治療法においては、他の付加的な治療法を哺乳動物に施すことが考えられ、そのようなものには、限定されるものではないが、化学療法及び放射線療法、イムノアジュバント、サイトカイン、及び抗体ベース療法が含まれる。例としては、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6)、白血病阻害因子、インターフェロン、TGF-β、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、HER-2抗体及び抗CD20抗体が含まれる。哺乳動物細胞においてアポトーシスを誘発することが知られている他の薬剤を用いてもよく、そのような薬剤にはTNF-α、TNF-β(リンホトキシン-α)、CD30リガンド、及び4-1BBリガンドが含まれる。
【0120】
本発明において考慮される化学療法には、当該分野において既知であって市販されている化学物質又は薬物、例えばドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン及びカルボプラチンが含まれる。このような化学療法に対する調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務家により経験的に決定される。そのような化学療法に対する調製法及び用量スケジュールはまた化学療法サービス,M.C.Perry編, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。化学療法剤は、上述されたもののような、製薬的に許容可能な担体で好ましく投与される。アンタゴニストは、一又はそれ以上の他の治療薬に続いて又は同時に投与してもよい。アンタゴニスト及び治療薬の量は、例えば、用いられる薬剤の型、治療される癌、及び投与のスケジュール及び経路に依存するが、一般的には各々が個々に用いられる場合より少ない。
【0121】
哺乳動物へのアンタゴニストの投与に続いて、哺乳動物の癌及び生理学的状態は、熟練した実務者に良く知られた種々の方法で監視できる。例えば、腫瘍の大きさは、物理的又は標準的なX線画像化技術によって観察できる。
【0122】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
【0123】
実施例
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示していない限りは、製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受入番号により次の実施例及び明細書全体を通して特定している細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Mannasas,Virginia)である。
【0124】
実施例1
ヒトDcR3をコードしているcDNAクローンの単離
スイス-プロット公的データベースからの約950の周知の分泌タンパク質からの細胞外ドメイン(ECD)配列(分泌シグナル配列を含む場合もある)を、ESTデータベースの検索に使用した。ESTデータデー素は、公的なESTデータベース(例えば、GenBank)、個人的ESTデータベース(LIFESEQTM、Incyte Pharmaceuticals、Palo Alto, CA)、及びジェネンテクからのEST商品を含む。検索は、コンピュータプログラムBLAST又はBLAST2[Altschul等, Methods in Enzymology, 266:460-480 (1996)]を用いて、EST配列の6フレーム翻訳物に対するECDタンパク質配列の比較として行なった。BLASTスコアが70(90の場合もある)又はそれ以上となり、周知のタンパク質をコードしない比較物をクラスター分析し、プログラム「phrap」(Phil Green, University of Washington, Seattle, Washington)で共通DNA配列に組み立てた。
【0125】
種々のESTを用い、共通DNA配列を組み立てた。ESTは、ジェネンテクのEST商品(配列番号:3、図3及び4参照)、個人データベースからの6つのEST(配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8及び配列番号:9、図4参照)及び公的データベースからのEST(配列番号:10)を含む。
【0126】
共通配列に基づいて、オリゴヌクレオチドを合成し、PCRにより対象とする配列を含むcDNAライブラリーを同定して、DcR3の全長コード配列のクローンを単離するためのプローブとして用いた。
【0127】
PCRプライマーの対(前方及び後方)を合成した:
CACGCTGGTTTCTGCTTGGAG
(配列番号:11)
AGCTGGTGCACAGGGTGTCATG
(配列番号:12)
また、プローブも合成した:
CCCAGGCACCTTCTCAGCCAGCCAGCAGCTCCAGCTCAGAGCAGTGCCAGCCC
(配列番号:13)
全長クローンの供給源について幾つかのライブラリーをスクリーニングするために、ライブラリーからのDNAを上で同定したPCRプライマー対でPCR増幅した。次いで、ポジティブライブラリーを、プローブオリゴヌクレオチド及びPCRプライマーの一つを用いてDcR3遺伝子をコードするクローンを単離した。
【0128】
cDNAライブラリーの形成のためのRNAは、胎児肺組織から単離した。cDNAクローンを単離するために用いるcDNAライブラリーは、Invitrogen, San Diego, CA からのもの等の市販試薬を用いて標準的方法によって形成した。cDNAは、NotI部位を含むオリゴdTでプライムし、SalIヘミキナーゼアダプターの平滑末端で結合させ、NotIで切断し、ゲル電気泳動でおよそのサイズ分割をし、決められた方向で適当なクローニングベクター(pRKBなど;pRK5Bは、SfiI部位を持たないpRK5Dの前駆体である;Holmes等, Science, 253:1278-1280 (1991))に独特のXhol及びNotI部位においてクローン化した。
【0129】
上記のように単離したクローンのDNA配列は、DcR3の全長DNA(図2;配列番号:2)及びDcR3の誘導されたタンパク質配列(図1;配列番号:1)を与えた。
【0130】
DcR3の全核酸配列を図2(配列番号:2)に示す。クローンDNA30942は、単一の読み取り枠を含み、ヌクレオチド位置101−103に見かけの翻訳開始部位を有する[Kozak等, 上掲](図2;配列番号:2)。予測されたポリペプチド前駆体は300アミノ酸長である。配列のN末端は典型的な分泌シグナル(図1;配列番号:1のアミノ酸1−23)を含む。DcR3アミノ酸配列の分析により、図5及び6に示すように4つのCRDの存在が明らかとなった。DcR3は膜貫通領域を含まない。また、図1(配列番号:1)のアミノ酸1〜215は、4つのCRDを含むECDを表すと考えられる(図5)。DcR3は、図1の残基173に1つの潜在的N結合グリコシル化部位を有する。クローンDNA30942は、ATCCに寄託され(DNA30942−1134と特定されている)、ATCC寄託番号209254が付与された。
【0131】
全長配列のBLAST及びFastA配列アラインメント分析に基づいて、DcR3は、TNFR2(28.7%)及びOPG(31%)に対して幾分のアミノ酸配列同一性を示した。図5及び6参照。DcR3及びOPGの4つのCRDにおける全てのシステインは保持されたが;DcR3のC末端部分は、約100残基分短かった。
【0132】
実施例2
ノーザンブロット分析
ヒト組織及びヒト癌株化細胞におけるDcR3mRNAの発現を、ノーザンブロット分析によって検査した。ヒトRNAブロットを、全長DcR3cDNAをベースにした32P標識DNAプローブにハイブリダイズした。ヒト胎児RNAブロットMTN(クローンテック)、ヒト成人RNAブロットMTN-II(クローンテック)及びヒト癌株化細胞RNAブロット(クローンテック)をDNAプローブと共にインキュベートした。次いでブロットをハイブリダイゼーション用バッファー(5X SSPE;2X デンハード溶液;100mg/mLの変性剪断されたサケ精子DNA;50%のホルムアミド;2%のSDS)に入ったプローブと共に、42℃で60時間インキュベートした。ブロットを2X SSC;0.05%のSDSを用い、室温で1時間、数回洗浄し、ついで0.1X SSC;0.1%のSDSを用い、50℃で30分間洗浄した。ブロットを一晩さらした後、リン光体イメージャー分析(Fuji)により展開させた。
【0133】
約1.2kBの優勢なDcR3翻訳物を、胎児肺、脳、及び肝臓、及び成人脾臓、大腸、及び肺に検出した(図7)。さらに、比較的高いDcR3mRNAレベルがヒト大腸癌株化細胞、SW480で検出された(図7参照)。
【0134】
ハイブリダイゼーションプローブとしてのDcR3の使用
以下の方法は、DcR3をコードする核酸配列のハイブリダイゼーションプローブとしての使用を記載する。
DcR3のコード配列(図2、配列番号:2に示す)を含むDNAは、ヒト組織cDNAライブラリー又はヒト組織ゲノムライブラリーにおける同種DNA(DcR3の天然発生変異体など)のスクリーニングのためのプローブとして用いられる。
【0135】
いずれかのライブラリーDNAを含むフィルターのハイブリダイゼーション及び洗浄は、以下の高い緊縮条件で実施した。放射標識DcR3誘導プローブのフィルターへのハイブリダイゼーションは、50%ホルムアルデヒド、5xSSC、0.1%SDS、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、2xデンハード溶液、及び10%デキストラン硫酸の溶液中で、42℃において20時間行った。フィルターの洗浄は、0.1xSSC及び0.1%SDSの水溶液中、42℃で行った。
次いで、全長天然配列DcR3をコードするDNAと所望の配列同一性を有するDNAは、この分野で知られた標準的な方法を用いて同定できる。
【0136】
実施例4
大腸菌におけるDcR3の発現
この実施例は、大腸菌における組み換え発現による、DcR3の調製を例示する。
DcR3をコードするDNA配列(配列番号:2)は、最初に選択されたPCRプライマーを用いて増幅した。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌から誘導されたもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977))であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含む。ベクターは、制限酵素で設計され、脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いで、ベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、polyhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、DcR3コード領域、ラムダ転写終結区、及びargU遺伝子を含む。
【0137】
ライゲーション混合物は、次いで、選択した大腸菌のSambrook等, 上掲に記載された方法を用いた形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで成長する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される
プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列分析で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培地で終夜成長させることができる。終夜培地は、続いて大規模培地の播種に用いられる。次に細胞を最適密度で成長させ、その間に発現プロモーターが作動する。
更に数時間の培養の後、細胞を採集して遠心分離した。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化され、可溶化DcR3タンパク質を金属キレート化カラムを用いてタンパク質を緊密に結合させる条件下で精製した。
【0138】
実施例5
哺乳動物細胞におけるDcR3の発現
この実施例は、哺乳動物細胞における組み換え発現による、DcR3の調製を例示する。
A.発現ベクターとしてpRK5(1989年3月15日発行のEP307247参照)を用いた。場合によっては、DcR3DNAを選択した制限酵素でpRK5に結合させ、Sambrook等,上掲に記載されたような結合方法を用いてDcR3DNAの挿入を行う。得られたベクターは、pRK5−DcR3と呼ばれる。
【0139】
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞とすることができる。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの媒質中で組織培養プレートにおいて成長させて集密化し、約10μgのpRK5−DcR3DNAを約1μgのVA RNA遺伝子をコードするDNA[Thimmappaya等, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mMトリス-HCl、0.1mMEDTA、0.227MCaClに溶解させた。この混合物に、滴状の、500μlの50mMHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPOを添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させた。培養媒質を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30分間添加した。293細胞は、次いで血清無し媒質で洗浄し、新鮮な媒質を添加し、細胞を約5日間インキュベートした。
【0140】
トランスフェクションの約24時間後、培養媒質を除去し、培養媒質(のみ)又は200μCi/ml35S−システイン及び200μCi/ml35S−メチオニンを含む培養媒質で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件媒質を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲルに添加した。処理したゲルを乾燥させ、DcR3ポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムにさらした。形質転換した細胞を含む培地は、更なるインキュベーションを施し(血清無し媒質)、媒質を選択されたバイオアッセイで試験した。
【0141】
それに換わる技術において、DcR3は、Somparyac等, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に過渡的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで成長させ、700μgのpRK5−DcR3DNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90分間処理し、組織培養媒質で洗浄し、組織培養媒質、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件媒質を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。発現されたDcR3を含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
【0142】
B.他の実施態様では、エピトープタグDcR3をCHO細胞で発現させた。DcR3はpRK5ベクターからサブクローニングした。サブクローン挿入物は、次いで、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のpoly-hisタグを持つ枠に融合させた。poly-hisタグDcR3挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のための選択マーカーDHFRを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングした。最後に、CHO細胞をSV40誘導細胞で(上記のように)トランスフェクトした。発現されたpoly-hisタグDcR3を含む培養媒質は、濃縮して、Ni2+−キレートアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。精製したタンパク質のSDS−PAGEによる分析により、分泌されたタンパク質が約35kDaの分子量を有していることが明らかとなった。
【0143】
実施例6
酵母菌でのDcR3の発現
以下の方法は、酵母菌中でのDcR3の組み換え発現を記載する。
第1に、ADH2/GAPDHプロモーターからのDcR3の細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを形成する。DcR3をコードするDNA、選択されたシグナルペプチド及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入してR3の細胞内発現を指示する。分泌のために、DcR3をコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーター、酵母菌アルファ因子分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)DcR3の発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
【0144】
酵母菌株AB110などの酵母菌は、次いで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵媒質中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEによる分離で分析でき、次いでクマシーブルー染色で染色することができる。
続いて組み換えDcR3は、発酵媒質から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、選択されたカートリッジフィルターを用いて媒質を濃縮することによって単離及び精製される。DcR3を含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
【0145】
実施例7
バキュロウイルスでのDcR3の発現
以下の方法は、バキュロウイルス中でのDcR3の組み換え発現を記載する。
DcR3は、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させた。このようなエピトープタグは、poly-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域)を含む。pVL1393(Navogen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、DcR3又はDcR3の所定部位(細胞外ドメインをコードする配列、例えば図1(配列番号:1)のアミノ酸1〜215等)が、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生産物は、次いで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
【0146】
組み換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて共トランスフェクトすることにより生成される。28℃で4−5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilley等, Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
【0147】
次に、発現されたpoly-hisタグDcR3は、例えばNi2+−キレートアフィニティクロマトグラフィーにより次のように精製される。抽出は、Rupert等, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞は、洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLHepes、pH7.9;12.5mM MgCl;0.1mM EDTA;10%グリセロール;0.1% NP−40;0.4M KCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を添加バッファー(50mMリン酸塩、300mM NaCl、10%グリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターで濾過した。Ni2+−NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mLの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの添加バッファーで平衡させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに添加した。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで添加バッファーで洗浄した。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄場ファー(50mMリン酸塩;300mM NaCl、10%グリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mMイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)へのNi2+−NTA−複合体でのウェスタンブロットで分析した。溶離したHis10−タグDcR3を含む分画をプールし、添加バッファーで透析した。
【0148】
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)DcR3の精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む周知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
【0149】
実施例8
DcR3に結合する抗体の調製
この実施例は、DcR3に特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、Goding,上掲に記載されている。用いられる免疫原は、精製DcR3、DcR3を含む融合タンパク質、細胞表面に組み換えDcR3を発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
【0150】
Balb/cなどのマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化し、皮下又は腹膜内に1−100マイクログラムで注入したDcR3免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Researh, Hamilton, MT)に乳化し、動物の後足蹠に注入してもよい。免疫化したマウスは、次いで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。DcR3抗体の検出のためのELISAアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
【0151】
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「陽性」な動物に、DcR3静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ACTTから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等のマウス骨髄腫株化細胞に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、次いで、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)媒質を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、皮融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
【0152】
ハイブリドーマ細胞は、DcR3に対する反応性についてのELISAでスクリーニングされる。所望のDcR3に対するモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹膜内注入し、抗DcR3モノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで成長させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
【0153】
実施例9
DcR3とFasとの相互作用を測定するインビトロアッセイ
A.FACS分析
アッセイは、DcR3が各TNFファミリーリガンドで一過性トランスフェクトされた293細胞に結合するか否かを測定するために行った。ヒト293細胞(ATCC CRL 1573)は、空のpRK5ベクター(実施例5参照)又は全長TNF−アルファをコードするpRK5[Pennica等, Nature, 312:724-729 (1984)]、Fasリガンド[Suda等, Cell, 75:1169-1178 (1993)]、LIGHT[Mauri等, Immunity, 8:21 (1998),Apo−2リガンド[1997年7月17日発行のWO97/25428]、Apo−3(TWEAKとも呼ばれる)[Marsters等, Current Biology, 8:525 (1998); Chicheportiche等, J. biol. Chem., 272:32401 (1997)]、又はOPG(TRANCE、RANKLとも呼ばれる)[Wong等, J. Biol. Chem., 272:25190 (1997); Anderson等, Nature, 390:175 (1997); Lacey等, Cell, 93:165 (1998)]で一過性トランスフェクトされた。次いで、細胞を、組み換えビオチン化FcタグDcR3(上記実施例7に記載したように発現され、プロテインAクロマトグラフィーで精製されたもの[Ashkenazi等, Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 8:104 (1995)])、TNFR1のFcタグ外部ドメイン(対照)、又はPBSバッファー(対照)とともに37℃で1時間インキュベートした。さらに、細胞をフィコエリトリン複合ストレプトアビディン(Gibco BRl)とともに37℃で30分間インキュベートし、次いで蛍光標示式細胞分取器で分析した。
【0154】
結果は、DcR3がFasリガンドトランスフェクトされた細胞に特異的に結合するが、TNF−アルファでトランスフェクトされた細胞には結合しないことを示した(図8A参照)。また、DcR3はLIGHTに有意な結合性を示すが、Apo−2リガンド、Apo−3リガンド、又はOPGには結合しない(データは示さず)。
【0155】
B.共免疫沈降アッセイ
また、DcR3が可溶性Fasリガンドに結合するか否化を測定するために、共免疫沈降アッセイも行った。
精製した、可溶性Fasリガンド(Alexis Biochemicals)(1マイクログラム)を、FcタグDcR3(上記)、TNFR1、又はFas外部ドメイン(5マイクログラム)とともに室温で1時間インキュベートし、プロテインA−セファロース(Repligen)で免疫沈降させた。沈殿物をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(4−20%勾配)により、還元条件(25mMジチオトレイトール)で溶解させ、免疫ブロットで可視化し、次いで2マイクログラム/mlのウサギポリクローナル抗Fasリガンド抗体(Oncogene Research Products)での強化化学発光検出(Amersham)を行った。また、可溶性Fasリガンド自体も、比較のために直接添加した。
【0156】
結果を図8Bに示す。FcタグDcR3は、FcタグFasと同様に、精製された可溶性Fasリガンドに結合したが、TNFR1にはしなかった。この結果は、DcR3がFasリガンドに結合できる他のTNFRファミリーのメンバー(Fas以外)であることを示唆している。
【0157】
実施例10
DcR3のFasリガンド活性を阻害する能力を測定するインビトロアッセイ
A.トランスフェクトされたFasリガンドに誘発されたアポトーシスの阻害
Fasを発現するHela細胞における全長Fasリガンドの一過性トランスフェクションによるアポトーシス誘発に対するDcR3の影響を試験した。
ヒトHelaS3細胞(ATCC CCL 22)に、pRK5(実施例5参照)、又はpRK5コード全長Fasリガンド[Suda等, 上掲](1マイクログラム/10細胞)で一過性トランスフェクトをした。トランスフェクトした細胞を、PBSバッファー、FcタグTNFR1、FcタグFas、又はFcタグDcR3(実施例9参照)(50マイクログラム/ml)の存在下で、37℃/5%COにおいて18時間インキュベートした。次いで、Marsters等, Curr. Biol., 6:1669-1676 (1996)に既に記載されているように、アネキシン結合についてのFACSによりアポトーシスを分析した。
【0158】
結果を図9Aに示す。データは、3回の平均+−SEMである。Fasリガンドは、約25%のHela細胞においてアポトーシスを誘発した。FcタグFas又はFcタグDcR3は、この効果を有意に阻害したが、FcタグTNFR1はしなかった。
【0159】
B.T細胞AICDの阻害
内因性Fasリガンド(Nagata, 上掲)の機能を含むT細胞AICDに対するDcR3の影響を測定するためにアッセイを行った。
CD3+リンパ球を各ヒトドナーの末梢血から単離し、植物性凝集素(2マイクログラム/ml)で24時間刺激し、そして(Marsters等, Curr. Biol., 上掲 (1996)に既に記載されているように)IL−2(100U/ml)の存在下で5日間培養した。次いで、細胞をPBSバッファー又は抗CD3抗体(Ortho Pharmaceuticals)で被覆したウェルに蒔き、PBSバッファー、対照用IgG、FcタグFas又はFcタグDcR3(10マイクログラム/ml)の存在下、37℃/5%CO2でインキュベートした。18時間後、CD4+細胞のアポトーシスを、上記A欄に記載したようにFACSで測定した。
【0160】
結果を図9Bに示す。結果は、5人のドナーについての結果の平均+−SEMである。抗CD3抗体でのTCR結合は、IL−2刺激したCD4+T細胞におけるアポトーシスレベルの約2倍増加させた。図9B参照。以前の報告[Dhein等, Nature, 373:438 (1995)]に一致して、FcタグFasは実質的に効果を阻止し、FcタグDcR3はアポトーシスの誘発を同程度に阻止した。
【0161】
C.NK細胞によるジャーカット細胞死滅の阻害
末梢血NK細胞によるFas発現標的細胞に死滅、Fasリガンド機能を含むプロセスに対するDcR3の影響を測定するためにアッセイを行った[Arase等, J. Exp. Med., 181:1235 (1995); Medvedev等, Cytokine, 9:394 (1997)]。
NK細胞は、各ドナーの末梢血から、抗CD56磁気マイクロビーズ(Myltenyi Biotech)を豊富化することにより調製し、PRMI1640/10%FBS媒質中で、37℃/5%COにおいて24時間、51Cr添加ジャーカットT白血病細胞とともに、エフェクター対標的比率1:1から1:5で、PBSバッファー、対照用IgG、又はFcタグFas又はFcタグDcR3(10マイクログラム/ml)の存在下でインキュベートした。次いで、標的細胞死滅のレベルを、エフェクターー標的共培養における51Crの放出量を、同数のジャーカット細胞の洗浄剤溶解による51Cr放出量と比較して測定した。
【0162】
結果を図9Cに示す。データは、2人のドナーについての3回のアッセイの平均+−SEMである。NK細胞は、ジャーカットT細胞においてかなりの細胞死滅をトリガーする。FcタグFas及びDcR3は、標的細胞死滅を実質的に阻害するが、対照用IgGはしなかった。結果は、DcR3の結合がFasリガンド活性を阻害することを示した。
【0163】
実施例12
染色体マッピング
ヒトDcR3遺伝子の染色体局在化を、放射性ハイブリッド(RH)パネル分析によって試験した。RHマッピングを、ヒト-マウス細胞の放射線ハイブリッドパネル(Research Genetics)とDcR3 cDNAのコード領域に基づくプライマーを使用するPCRにより実施した[Gelbら,Hum. Genet., 98:141(1996)]。スタンフォードヒトゲノムセンターデータベースを使用したPCRデータの解析では、DcR3はマーカーAFM218xe7に結合し、5.4のLODを持ち、ヒト染色体20(20q13)の長手の離間帯にマッピングされることを示した。
【0164】
実施例13
遺伝子増幅アッセイ
この実施例は、DcR3コード遺伝子は、肺及び大腸癌のゲノムにおいて増幅されることを示す。増幅は遺伝子産物の過剰発現を伴い、DcR3ポリペプチドがある種の癌における治療的処置のための有用な標的であることを示している。このような治療薬は、DcR3コード遺伝子のアンタゴニスト、例えば、DcR3に対するマウス−ヒトキメラ、ヒト化又はヒト抗体の形態をとりうる。
【0165】
スクリーニングの出発材料は、肺及び大腸癌及び癌株化細胞の一次腫瘍組織から(Qiagen試薬を用いて)単離したゲノムDNAであった。DNAはヘキスト線量3258挿入蛍光測定を用いた蛍光測定法で定量した。規格化対照として、10人の正常で健康な個体からの末梢血からDNAを単離し、それをプールして健常個体における遺伝子コピーのアッセイ用対照として用いた(「NorHu」)。
【0166】
各々における相対的DcR3遺伝子コピー数、及びDcR3をコードするDNAがスクリーニングされる肺及び大腸癌において過剰発現されるか否かの測定に、5’ヌクレアーゼアッセイ(TaqManTM)及び現実時間定量的PCR(Gelmini等, Clin. Chem., 43:752-758 (1997); ABI Prizm 7700 Sequence Detection SystemTM, Perkin Elmer, Applied Biosystems Division, Foster City, Ca)を用いた。一次肺腫瘍外科試料は、アイオワ大学から提供され、一次大腸腫瘍試料はリーズ大学から提供された。肺腫瘍組織のパネルは、8つの腺癌、7つの扁平上皮細胞癌、、1つの非小細胞癌、1つの小細胞癌、及び1つの気管支腺癌を含んでいた。大腸腫瘍組織のパネルは、17の腺癌を含んでいた。癌株化細胞は、ATCC:SW480大腸腺癌(ATCC CCL 228);COLO320DM腺癌(ATCC CCL 220);SK−CO−1腺癌(ATCC HTB 39);SW403腺癌(ATCC CCL 230);及びHT29大腸腺癌から得た。
【0167】
結果は、デルタCt単位から決定した相対的遺伝子コピー数として報告する。1デルタCt単位は、1PCRサイクル又は平常に対して約2倍増幅に相当し、2単位は4倍に相当し、3単位は6倍に相当する。定量化は、DcR3コード遺伝子から誘導したプライマー及びTaqManTM蛍光プローブを用いて得た。独特な核酸配列を含む可能性が最も高く、イントロンのスプライスアウトを持つ可能性が最も低いDcR3の領域、例えば、3’−非翻訳領域がプライマー誘導に好ましい。DcR3遺伝子増幅に用いたプライマー及びプローブの配列は次の通りである:
hu.DcR3.TMP (プローブ) ACACGATGCGTGCTCCAAGCAGAA(配列番号:14)
hu.DcR3.TMP (前方プライマー) CTTCTTCGCGCACGCTG(配列番号:15)
a.DcR3.TMP (後方プライマー) ATCACGCCGGCACCAG(配列番号:16)
【0168】
5’ヌクレアーゼアッセイ反応は、蛍光PCR−ベース技術であり、現実の時間における増幅の監視にTaqDNAポリメラーゼ酵素の5’エキソヌクレアーゼ活性を使用する。PCR反応の単位複製配列典型を精製するために2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。第3のオリゴヌクレオチド、又はプローブは、2つのプライマー間に局在化したヌクレオチド配列の検出に用いた。プローブは、TaqDNAポリメラーゼ酵素で延長不可能であり、リポーター蛍光染料及び消光剤蛍光染料で標識される。リポーター染料からの任意のレーザー励起放出は、それらがプローブ上にあるように2つの染料が接近している場合には消光染料で消光される。増幅反応の間、プローブはTaqDNAポリメラーゼ酵素でテンプレート依存的に切断される。得られたプローブ断片は、溶液中で分解し、リポーター染料放出からのシグナルは第2のフルオロフォアの消光効果を受けない。リポーター染料の1分子が、合成された新たな分子のために遊離され、消光されないリポーター染料がデータの定量的解釈の基礎とされる。
【0169】
5’ヌクレアーゼ法は、ABI Prizm 7700TM Sequence Detection Systemのような現実時間定量的PCR装置で行われる。系は、温度サイクル器、レーザー、電荷結合素子(CCD)カメラ、及びコンピュータからなる。系は、温度サイクル器において96ウェル形式で試料を増幅する。増幅の間、レーザー励起された蛍光シグナルが、96ウェル全てについての光ファイバーケーブルを通して実時間で回収され、CCDカメラで検出される。系は、器具を作動させデータを分析するソフトウェアを備えている。
【0170】
5’ヌクレオチドアッセイデータは、最初にCt又は閾値サイクルとして表現される。これは、リポーターシグナルが蛍光のバックグラウンドレベルより上まで蓄積されるサイクルとして定義される。Ct値は、核酸試料における特定標的配列の出発コピー相対数の定量的尺度として用いられる。
【0171】
結果を図10に示す。18の肺腫瘍のうちの8つ、及び17の大腸腫瘍のうちの9つが、2から18倍のDcR3の遺伝子増幅を示した(図10参照)。結果を確認するために、DcR3ベースのプライマー及びプローブのさらに3つの独立した組での大腸腫瘍DNAを定量的PCRで分析した。本質的に同様の増幅が観察された(データは示さず)。
ヒト大腸腫瘍株化細胞の遺伝子増幅分析は、5細胞のうち3つがDcR3の有意な遺伝子増幅を示し(図10)、一次腫瘍組織におけるDcR3の増幅に一致することを明らかにした。
【0172】
DcR3隣接領域の増幅レベルも分析した。DcR3を持つヒト遺伝子クローンは、細菌性人工染色体(BAC)ライブラリー(Genome Systems)から単離した。BAC(68374rev及び68374fwd)からの隣接領域の増幅は、大腸腫瘍パネルにおける2つの最も近い利用可能な遺伝子マーカー、AFM218xe7(T160)及びSHGC−36268(T159)(AFM218xe7から約500kbにマッピングされる)に沿って測定した。
DcR3は、最も高い増幅を示し、次いで68374rev、さらに68374fwd及びT160が続き、これらはほぼ同じ増幅程度を示したが、T159は増幅を示さなかった(図10)。結果は、DcR3が、癌において増幅された染色体20領域のエピセンターにあり、DcR3が腫瘍生存を促進する可能性と一致する。
【0173】
実施例14
DcR3による阻害活性を測定するための
混合リンパ球培養反応 (MLR)アッセイ
Tリンパ球のアロ抗原の提示に対して増殖する能力を試験することにより、CD4+Tリンパ球機能を評価するためにMLRアッセイを実施した。「一方向」MLRアッセイにおいて、末梢血単核細胞(PBMC)のドナー集団が、PBMCの放射線刺激集団に暴露される。MLRプロトコールは、Coligan等, Current Protocols in Immunology, publ. John Wiley & Sons, Inc. (1994)に記載されている。次いで、アッセイ結果により、提示されたアロ抗原での刺激に対するレスポンダーTリンパ球の増殖を促進又は阻害できる分子が同定される。
【0174】
A.ヒトPBMCのMLRアッセイ
PBMCは、標準的なロイコホレーシス(leukophoresis)法を用いて2人のヒトドナーから単離した。一方のドナーは、刺激剤PBMC供給源として用い、他のドナー細胞はレスポンダーPBMCの提供に用いた。次いで、各細胞調製物を、アッセイを行うまで50%ウシ胎児血清及び50%DMSO中で凍結した。
次に、細胞を、アッセイ媒質中において37℃/5%COで終夜解凍した。アッセイ媒質は、RPMI媒質;10%ウシ胎児血清;1%ペニシリン/ストレプトマイシン;1%グルタミン;1%HEPES;1%非必須アミノ酸及び1%ピルビン酸塩を含む。洗浄の後、細胞をアッセイ媒質中に、3x10細胞/mlの濃度で再懸濁させた。刺激剤細胞として用いたドナー細胞は、約3000Radsを用いて放射した。
【0175】
PBMC細胞を次のように培養プレートウェルに蒔いた(3回):100マイクロリットルの1%又は0.1%に希釈した試験試料(FcタグDcR3、上記実施例9に記載、O.D.で測定して2、40、1000及び25,000ng/mlの濃度);50マイクロリットルの放射刺激剤細胞;50マイクロリットルのレスポンダーPBMC細胞。100マイクロリットルの細胞培養媒質又は100マイクロリットルのCD4−IgGを対照として用いた。次いで、培養プレートを37℃/5%COで4日間インキュベートした。5日目に、各ウェルをトリチウム化チミジン(1マイクロキュリー/ウェル;Amersham)でパルスした。6時間後、細胞を3回洗浄し、標識の取り込みについてのシンチレーションカウントにより評価した。
【0176】
結果を図11Aに例示した。図11Aのデータは、DcR3−IgGのヒトMLRにおけるTリンパ球の応答に対する用量依存的な阻害活性があることを示している。反応媒質中でDcR3−IgGのレベルが2ng/mlから25,000ng/mlに増加すると、Tリンパ球増殖の有意な減少があり、DcR3−IgGが40、1000又は25,000ng/mlのいずれかで添加された場合にトリチル化チミジン標識の取り込みの減少によって示された。このMLRの阻害は用量依存的であり、陽性対照及びMLRに影響を持たない対照IgG融合タンパク質(CD4−IgG)の効果に比較して有意であった。
【0177】
B.ネズミPBMCのMLRアッセイ
PBMCは、マウスの2つの異なる系統、Balb/c及びC57B6の脾臓から単離した。細胞は、新たに取り出した脾臓から回収し、(上記A欄に記載されたように)アッセイ媒質中に配置した。次いで、PBMCを、細胞をLympholyteTM(Organon Teknika)上にかぶせることにより単離し、2000rpmで20分間遠心分離した。一分子細胞層を回収し、アッセイ媒質で洗浄し、アッセイ媒質中に1x107細胞/mlの濃度で再懸濁した。一方のドナーは、刺激剤PBMCを提供するのに用い、他方のドナー細胞はレスポンダーPBMCを提供するのに用いた。
【0178】
刺激剤細胞として用いたドナー細胞は、約3000Radsを用いて放射した。PBMC細胞を次のように培養プレートウェルに蒔いた(3回):100マイクロリットルの1%又は0.1%に希釈した試験試料(FcタグDcR3、O.D.で測定して25、250、2500及び25,000ng/mlの濃度で用いた);50マイクロリットルの放射刺激剤細胞;50マイクロリットルのレスポンダーPBMC細胞。100マイクロリットルの細胞培養媒質又は100マイクロリットルのCD4−IgGを対照として用いた。次いで、培養プレートを37℃/5%COで4日間インキュベートした。5日目に、各ウェルをトリチウム化チミジン(1マイクロキュリー/ウェル;Amersham)でパルスした。6時間後、細胞を3回洗浄し、標識の取り込みについてのシンチレーションカウントにより評価した。
【0179】
結果を図11Bに例示した。図11Bのデータは、DcR3−IgGのネズミMLRにおけるTリンパ球の応答に対する用量依存的な阻害活性があることを示している。反応媒質中でDcR3−IgGのレベルが25ng/mlから25,000ng/mlに増加すると、Tリンパ球増殖の有意な減少があり、トリチル化チミジン標識の取り込みの減少によって示された。このMLRの阻害は用量依存的であり、陽性対照及びMLRに影響を持たない対照IgG融合タンパク質(CD4−IgG)の効果に比較して有意であった。
【0180】
C.同時刺激アッセイ
PBLは、標準的なロイコホレーシス(leukophoresis)法を用いてヒトドナーから単離した。次いで、細胞調製物を、アッセイを行うまで50%ウシ胎児血清及び50%DMSO中で凍結した。
次に、細胞を、アッセイ媒質中において37℃/5%COで終夜解凍した。アッセイ媒質は、RPMI媒質;10%ウシ胎児血清;1%ペニシリン/ストレプトマイシン;1%グルタミン;10mM HEPES;及び50マイクログラム/mlゲンタマイシンを含む。洗浄の後、細胞をアッセイ媒質中に再懸濁させ、37℃/5%COで終夜インキュベートした。
【0181】
培養プレートを調製するために、96ウェルの平底プレート(Nunc)をマウス抗ヒトCD3(Amacから購入)又はマウス抗ヒトCD28(Biodesignから購入)又は抗CD3及び抗CD28抗体の両方で被覆した。両方の抗体は、カルシウム及びマグネシウム無しのハイクローンD(Hyclone D)-PBSで希釈した。抗CD3抗体を10ng/ウェルの濃度で添加し、抗CD28抗体を25ng/ウェルで添加し、全容量を100マイクロリットル/ウェルとした。プレートを、PBS中4℃で終夜インキュベートした。
【0182】
次に、被覆プレートをPBSで洗浄した。洗浄したPBLを、1x10細胞/mlの濃度で媒質中に再懸濁し、プレートに100マイクロリットル/ウェルで添加した。次いで、100マイクロリットルの試験試料(FcタグDcR3、O.D.で測定して25、250、2500及び25,000ng/mlの濃度で用いた)又は対照物を各ウェルに添加し、各ウェルの全容量を200マイクロリットルとした。100マイクロリットルの細胞培養媒質又は100マイクロリットルのCD4−IgGを対照として用いた。次いで、培養プレートを37℃/5%COで72時間インキュベートした。続いて、各ウェルをトリチウム化チミジン(1マイクロキュリー/ウェル;Amersham)でパルスした。6時間後、細胞を3回洗浄し、標識の取り込みについてのシンチレーションカウントにより評価した。
【0183】
結果を図11Cに例示した。図11Cのデータは、DcR3−IgGのヒト同時刺激アッセイにおけるTリンパ球の応答に対する用量依存的な阻害効果があることを示している。反応媒質中でDcR3−IgGのレベルが25ng/mlから25,000ng/mlに増加すると、Tリンパ球増殖の有意な減少があり、トリチル化チミジン標識の取り込みの減少によって示されている。このヒト同時刺激アッセイの阻害は用量依存的であり、陽性対照及びヒト同時刺激アッセイに影響を持たない対照IgG融合タンパク質(CD4−IgG)の効果に比較して有意であった。
【0184】
実施例15
DcR3に対するモノクローナル抗体の調製
0.5μg/50μlのDcR3イムノアドヘシンタンパク質(Ribi Immunochemical Research Inc., Hamilton, MTから購入したMPL-TDMアジュバントで希釈)を、各々の後足の裏の柔らかい部分に、1週間の日間隔で11回注射することで、Balb/cマウス(チャールズリヴァー研究所から得たもの)を免疫化した。既に開示されたように[Ashkenaziら、Proc. Natl. Acad. Sci., 88:10535-10539(1991)]、pRK5においてヒト免疫グロブリンG1重鎖のヒンジ及びFc領域に、DcR3(図1)のアミノ酸残基1−300を融合させることによりDcR3イムノアドヘシンタンパク質を産生した。イムノアドヘシンタンパク質を、昆虫細胞で発現させ、前掲のAshkenaziらにより記載されたようにして、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0185】
最終の追加免疫から3日後に、膝窩リンパ節をマウスから取り除き、単一細胞懸濁液を、1%のペニシリン-ストレプトマイシンが補填されたDMEM培地(Biowhitakker Corp.から得たもの)中で調製した。ついで、リンパ節細胞を35%のポリエチレングリコールを使用し、マウス骨髄腫細胞P3X63AgU.1(ATCC CRL 1597)と融合させ、96ウェル培養プレートで培養した。融合の結果得られたハイブリドーマをHAT培地において選択した。融合から10日後に、ハイブリドーマ培地の上清をELISAでスクリーニングし、DcR3イムノアドヘシンタンパク質又はCD4−IgGタンパク質に結合するモノクローナル抗体の存在を試験した。
【0186】
捕獲ELISAにおいて、各々のウェルに、PBSに2μg/mlのヤギ抗ヒトIgG Fc(Cappel Laboratories社から購入)が入ったものを50μl添加して、96-ウェルマイクロタイタープレート(Maxisorb;Nunc, Kamstrup, Denmark)をコーティングし、4℃で終夜インキュベートした。ついでプレートを洗浄バッファー(0.05%のトゥイーン20を含有するPBS)で3回洗浄した。ついで、マイクロタイタープレートのウェルを、PBSに2.0%のウシ血清アルブミンが入ったもの200μlで阻止し、室温で1時間インキュベートした。ついでプレートを、洗浄バッファーで、再度3回洗浄した。
【0187】
洗浄工程後、アッセイ用バッファー(0.5%のBSA及び0.5%のトゥイーン20を含むPBS)に0.4μg/mlのDcR3イムノアドヘシンタンパク質(上述のもの)が入ったもの50μlを各々のウェルに添加した。プレートを振盪装置上で、室温で1時間インキュベートし、続いて洗浄バッファーで3回洗浄した。
【0188】
洗浄工程に続き、100μlのハイブリドーマ上清又は精製した抗体(プロテインG-セファロースカラムを使用)を、アッセイ用バッファーの所定ウェルに添加した。100μlのP3X63AgU.1骨髄腫細胞の条件培地を、対照として他の所定ウェルに添加した。プレートを振盪装置上で、室温で1時間インキュベートし、続いて洗浄バッファーで3回洗浄した。
【0189】
次に、アッセイ用バッファーで1:1000に希釈されたHRP-抱合ヤギ抗マウスIgG Fc(Cappel Laboratories社から購入)の50μlを各ウェルに添加し、プレートを振盪装置上で、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、ついで各ウェルに50μlの基質(TMBマイクロウェル・ペルオキシダーゼ基質、Kirkegaard & Perry, Gaithersburg, MD)を添加し、室温で10分間インキュベートした。50μlのTMB1-成分終止溶液(ジエチレングリコール, Kirkegaard & Perry)を各ウェルに添加して反応を終了させ、450nmでの吸光度を自動マイクロタイタープレート読取装置で読み取った。
【0190】
ELISAによりスクリーニングされたハイブリドーマ上清の内、17の上清が陽性であると判断された(バックグラウンドのおよそ4倍高いと算出)。選択したハイブリドーマを、ELISA(後述)において、DcR3のFasリガンドへの結合を阻害するそれらの能力について試験した。潜在的な阻止又は非阻止分泌ハイブリドーマを、限定希釈によって2回クローニングした。
【0191】
実施例16
DcR3抗体の特異性を決定するためのELISAアッセイ
実施例15に記載したモノクローナル抗体が、DcR3以外の他の知られたレセプターに結合できるか否かを測定するためにELISAを実施した。特に、4C4.1.4;11C5.2.8;8D3.1.5;5C4.14.7;及び4B7.1.1抗体は、各々、ここに記載したDcR3及びDR4[Panら,上掲]、DR5[Sheridan等, 上掲及びPan等, 上掲]、DcR1[Sheridan等, 上掲]、及びOPG[Simonet等, 上掲]に対する結合性を試験した。ELISAは、本質的に上述の実施例15に記載したようにして実施した。抗原特異性は、10マイクログラム/mlのDcR3抗体を用いて測定した。
結果を図12に示す。DcR3の5つの抗体全ては、DcR3に特異的に結合した(図13も参照)。5つのDcR3抗体のいずれも、アッセイにおける他のレセプターへの交差反応性を示さなかった。
【0192】
実施例17
DcR3抗体の阻止活性を測定するためのELISA試験
ELISAにおいて、96-ウェルのマイクロタイタープレート(Maxisorb;Nunc, Kamstrup, Denmark)を、各ウェルに50μlの炭酸塩バッファー中の2μg/mlヤギ抗ヒトIgG Fc(Cappel Laboratories社から購入)を添加することによりコーティングし、4℃で終夜インキュベートした。ついでプレートを洗浄バッファー(0.05%のトゥイーン20を含有するPBS)で3回洗浄した。ついで、マイクロタイタープレートのウェルを、PBSに2.0%のウシ血清アルブミンが入ったもの200μlで阻止し、室温で1時間インキュベートした。ついでプレートを、洗浄バッファーで、再度3回洗浄した。
【0193】
洗浄工程後、アッセイ用バッファー(0.5%のBSA及び0.5%のトゥイーン20を含むPBS)に0.5μg/mlのDcR3イムノアドヘシンタンパク質(上述の実施例15に記載したもの)又はFas−IgGが入ったもの100μlを各々のウェルに添加した。プレートを振盪装置上で、室温で1時間インキュベートし、続いて洗浄バッファーで3回洗浄した。
洗浄工程に続き、100μlの精製した抗体4C4.1.4;11C5.2.8;8D3.1.5;5C4.14.7;又は4B7.1.1を、アッセイ用バッファー中の所定ウェルに添加した。プレートを振盪装置上で、室温で1時間インキュベートし、続いて洗浄バッファーで3回洗浄した。
【0194】
次に、100μlのフラッグタグFasリガンド(Alexis Pharmaceuticals)(35ng/mlの濃度)を各ウェルに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、続いて1:2000希釈のHRP−ストレプトアビディン(Zymed)100μlをウェルに添加し、1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回再度洗浄した。次いで各ウェルに50μlの基質(TMBマイクロウェル・ペルオキシダーゼ基質、Kirkegaard & Perry, Gaithersburg, MD)を添加し、室温で5分間インキュベートした。50μlのTMB1-成分終止溶液(ジエチルグリコール, Kirkegaard & Perry)を各ウェルに添加して反応を終了させ、450nmでの吸光度を自動マイクロタイタープレート読取装置で読み取った。
結果を図12に示す。%阻止活性は、Fasリガンドに対してDcR3抗体の100倍過剰において決定した。3つの抗体、4B7.1.1;11C5.2.8;及び5C4.14.7は、有意な阻止活性を示した(図14も参照)。
【0195】
実施例18
抗体のアイソタイピング
DcR3抗体(実施例15−17において上述したもの)のアイソタイプを、アイソタイプ特異的ヤギ抗マウスIg(Fisher Biotech, Pittsburgh, PA)で、マイクロタイタープレートを4℃で一晩かけてコーティングすることにより決定した。ついでプレートを洗浄バッファー(上述の実施例15に記載したもの)で洗浄した。ついで、マイクロタイタープレートのウェルを200μlの2%ウシ血清アルブミン(BSA)で阻止し、室温で1時間インキュベートした。プレートを、再度洗浄バッファーで3回洗浄した。次に、100μlのハイブリドーマ培養上清又は5μg/mlの精製抗体を所定ウェルに加えた。プレートを室温で30分インキュベートし、ついで50μlのHRP-抱合ヤギ抗マウスIgG(実施例15において上述したもの)を各ウェルに添加した。プレートを室温で30分インキュベートした。プレートに結合したHRPのレベルを、上述のHRP基質を使用して検出した。
【0196】
アイソタイピング分析により、8D3.1.5;11C5.2.8及び4B7.1.1抗体がIgG1抗体であることが示された。またこの分析により、5C4.14.7抗体がIgG2b抗体であり、4C4.1.4抗体がIgG2a抗体であることが示された。これらの結果も図12に示す。
【0197】
材料の寄託
次の材料をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション,10801 University Blvd., Manassas, Virginia, USA(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
DNA30942-1134 209254 1997年9月16日
4C4.1.4 ___ 1998年9月 日
5C4.14.7 ___ 1998年9月 日
11C5.2.8 ___ 1998年9月 日
8D3.1.5 ___ 1998年9月 日
4B7.1.1 ___ 1998年9月 日
【0198】
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に後代を入手可能とすることを保証するものである。
【0199】
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のもの即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
【0200】
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【0201】
出願人又は代理人の 国際出願番号
ファイル整理場号 11669.31WO01

寄託した微生物に関する表示
(PCT規則13の2)

A.以下の表示は明細書中第 頁 行目に言及した寄託に関する。

B.寄託の表示
寄託機関の名称
アメリカン タイプ カルチャー コレクション
寄託機関の住所
10801 University Blvd., Manassas, Virginia, USA

寄託の日付 寄託番号
1997年9月16日;1998年9月 日

C.追加表示(不要の場合は空欄とすること)

D.寄託がなされる指定国(寄託が全ての指定国についてでない場合)

E.表示の別の提供(不要の場合は空欄とすること)
以下に列挙する表示は後に国際事務局に提出される(表示の一般的性質、例えば寄託の受託番号を特定すること)
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】天然配列DcR3の誘導アミノ酸配列を示す図である。
【図2】天然配列DcR3cDNAの核酸配列を示す図である。
【図3】EST核酸配列(配列番号:3)を示す図である。
【図4】共通配列の組み立てに用いた種々のEST(配列番号:3−10)を示す図である。
【図5】DcR3とヒトTNFR2(hTNFR2)のアラインメントを示す図である。4つのシステインに富むドメイン(CRD)を、CRD1、CRD2、CRD3及びCRD4として示した。
【図6】DcR3とヒトOPGのアラインメントを示す図である。4つのシステインに富むドメイン(CRD)を、CRD1、CRD2、CRD3及びCRD4として特定した。
【図7】ノーザンブロットハイブリッド化分析で測定したときのヒト組織及びヒト癌株化細胞におけるDcR3mRNAの発現を示す図である。
【図8A】DcR3のFasリガンドに対する特異的結合性を測定するためのFACS分析の結果を示す図である。
【図8B】DcR3の可溶性Fasリガンドに対する特異的結合性を測定するための共免疫沈降アッセイの結果を示す図である
【図9A】DcR3によるFasリガンド活性の阻害を測定するためのインビトロアッセイの結果を示す図である。
【図9B】DcR3によるFasリガンド活性の阻害を測定するためのインビトロアッセイの結果を示す図である。
【図9C】DcR3によるFasリガンド活性の阻害を測定するためのインビトロアッセイの結果を示す図である。
【図10A】種々の肺及び大腸腫瘍及び種々の大腸腫瘍株化細胞におけるDcR3遺伝子の増幅を測定するためのアッセイの結果を示す図である。
【図10B】種々の肺及び大腸腫瘍及び種々の大腸腫瘍株化細胞におけるDcR3遺伝子の増幅を測定するためのアッセイの結果を示す図である。
【図10CD】種々の肺及び大腸腫瘍及び種々の大腸腫瘍株化細胞におけるDcR3遺伝子の増幅を測定するためのアッセイの結果を示す図である。
【図11A】DcR3の、混合リンパ球培養反応 (MLR)又は同時刺激アッセイにおけるリンパ球増殖に与える影響を測定するアッセイの結果を示す図である。
【図11B】DcR3の、混合リンパ球培養反応 (MLR)又は同時刺激アッセイにおけるリンパ球増殖に与える影響を測定するアッセイの結果を示す図である。
【図11C】DcR3の、混合リンパ球培養反応 (MLR)又は同時刺激アッセイにおけるリンパ球増殖に与える影響を測定するアッセイの結果を示す図である。
【図12】4C4.1.4;5C4.14.7;11C5.2.8;8D3.1.5;及び4B7.1.1抗体と呼ばれるある種のDcR3抗体の抗原特異性及び阻止活性を示す表である。
【図13】4C4.1.4;5C4.14.7;11C5.2.8;8D3.1.5;及び4B7.1.1抗体と呼ばれるある種のDcR3抗体の抗原特異性を示す図である。
【図14】4C4.1.4;5C4.14.7;11C5.2.8;8D3.1.5;及び4B7.1.1抗体と呼ばれるある種のDcR3抗体の阻止活性を測定するためのELISAの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1(配列番号:1)のアミノ酸残基1〜300を含んでなる天然配列DcR3ポリペプチドと、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する単離されたDcR3ポリペプチド。
【請求項2】
前記DcR3ポリペプチドが少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有する請求項1に記載のDcR3ポリペプチド。
【請求項3】
前記DcR3ポリペプチドが少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する請求項2に記載のDcR3ポリペプチド。
【請求項4】
前記DcR3ポリペプチドが、Fasリガンドに結合する請求項1に記載のDcR3ポリペプチド。
【請求項5】
図1(配列番号:1)のアミノ酸残基1〜300を含んでなる単離された天然配列DcR3ポリペプチド。
【請求項6】
図1(配列番号:1)のアミノ酸残基1〜215を含んでなる単離されたDcR3ポリペプチド。
【請求項7】
アミノ酸残基1〜Xを含んでなり、Xが図1(配列番号:1)のアミノ酸残基215〜300のいずれか1つである単離されたDcR3ポリペプチド。
【請求項8】
1つ又はそれ以上のシステインに富むドメインを含むポリペプチドを含んでなり、前記1つ又はそれ以上のシステインに富むドメインが、図6に示すCRD1、CRD2、CRD3又はCRD4のアミノ酸配列を含む、単離されたTNFR相同体。
【請求項9】
異種性アミノ酸配列に融合した請求項1に記載のDcR3ポリペプチド又は請求項7に記載の配列を含んでなるキメラ分子。
【請求項10】
前記異種性アミノ酸配列がエピトープタグ配列である請求項9に記載のキメラ分子。
【請求項11】
前記異種性アミノ酸配列が免疫グロブリン配列である請求項9に記載のキメラ分子。
【請求項12】
前記免疫グロブリン配列がIgG Fcドメインである請求項11に記載のキメラ分子。
【請求項13】
前記配列が図1(配列番号:1)のアミノ酸残基1〜215を含んでなる請求項11に記載のキメラ分子。
【請求項14】
請求項1に記載のDcR3ポリペプチド又は請求項7に記載の配列に結合する抗体。
【請求項15】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
前記抗体が阻止抗体を含む請求項14に記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体がキメラ抗体を含む請求項14に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体がヒト抗体を含む請求項14に記載の抗体。
【請求項19】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された4C4.1.4モノクローナル抗体の生物学的特徴を有する請求項15に記載の抗体。
【請求項20】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された5C4.14.7モノクローナル抗体の生物学的特徴を有する請求項15に記載の抗体。
【請求項21】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された11C5.2.8モノクローナル抗体の生物学的特徴を有する請求項15に記載の抗体。
【請求項22】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された8D3.1.5モノクローナル抗体の生物学的特徴を有する請求項15に記載の抗体。
【請求項23】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された4B7.1.1モノクローナル抗体の生物学的特徴を有する請求項15に記載の抗体。
【請求項24】
当該抗体が、ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された4C4.1.4モノクローナル抗体が結合するエピトープと同様のエピトープに結合する請求項15に記載の抗体。
【請求項25】
当該抗体が、ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された5C4.14.7モノクローナル抗体が結合するエピトープと同様のエピトープに結合する請求項15に記載の抗体。
【請求項26】
当該抗体が、ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された11C5.2.8モノクローナル抗体が結合するエピトープと同様のエピトープに結合する請求項15に記載の抗体。
【請求項27】
当該抗体が、ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された8D3.1.5モノクローナル抗体が結合するエピトープと同様のエピトープに結合する請求項15に記載の抗体。
【請求項28】
当該抗体が、ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された4B7.1.1モノクローナル抗体が結合するエピトープと同様のエピトープに結合する請求項15に記載の抗体。
【請求項29】
請求項15に記載の抗体を産生するハイブリドーマ株化細胞。
【請求項30】
ATCC寄託番号___として寄託された4C4.1.4ハイブリドーマ株化細胞。
【請求項31】
ATCC寄託番号___として寄託された5C4.14.7ハイブリドーマ株化細胞。
【請求項32】
ATCC寄託番号___として寄託された11C5.2.8ハイブリドーマ株化細胞。
【請求項33】
ATCC寄託番号___として寄託された8D3.1.5ハイブリドーマ株化細胞。
【請求項34】
ATCC寄託番号___として寄託された4B7.1.1ハイブリドーマ株化細胞。
【請求項35】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された4C4.1.4モノクローナル抗体。
【請求項36】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された5C4.14.7モノクローナル抗体。
【請求項37】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された11C5.2.8モノクローナル抗体。
【請求項38】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された8D3.1.5モノクローナル抗体。
【請求項39】
ATCC寄託番号___として寄託されたハイブリドーマ株化細胞により産生された4B7.1.1モノクローナル抗体。
【請求項40】
請求項1に記載のDcR3ポリペプチド又は請求項7に記載の配列をコードしている核酸配列を含んでなる単離された核酸。
【請求項41】
前記核酸配列が図1(配列番号:1)のアミノ酸残基1〜300を含んでなる天然配列DcR3ポリペプチドをコードする請求項40に記載の核酸。
【請求項42】
請求項40に記載の核酸を含んでなるベクター。
【請求項43】
ベクターで形質転換した宿主細胞により認識されるコントロール配列に作用可能に結合した請求項42に記載のベクター。
【請求項44】
請求項42に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項45】
CHO細胞を含んでなる請求項44に記載の宿主細胞。
【請求項46】
酵母細胞を含んでなる請求項44に記載の宿主細胞。
【請求項47】
大腸菌を含んでなる請求項44に記載の宿主細胞。
【請求項48】
DcR3ポリペプチドをコードしている核酸分子を使用してDcR3ポリペプチドの生産を行う方法において、請求項44に記載の宿主細胞を培養することを含んでなる方法。
【請求項49】
DcR3ポリペプチドをコードする核酸を発現する細胞を含む非ヒト、トランスジェニック動物。
【請求項50】
マウス又はラットである請求項49に記載の動物。
【請求項51】
DcR3ポリペプチドをコードする変更遺伝子を有する細胞を含む、非ヒト、ノックアウト動物。
【請求項52】
マウス又はラットである請求項51に記載の動物。
【請求項53】
請求項1又は7に記載のDcR3と担体を含んでなる組成物。
【請求項54】
請求項14に記載のDcR3抗体及び担体を含んでなる組成物。
【請求項55】
容器と該容器に入れられる組成物を含んでなり、組成物がDcR3ポリペプチド又はDcR3抗体を含む製造品。
【請求項56】
インビボ又はエキソビボにおいてDcR3ポリペプチド又はDcR3抗体を使用するための使用説明書をさらに含んでなる請求項55に記載の製造品。
【請求項57】
哺乳動物細胞におけるアポトーシスを変調する方法において、DcR3ポリペプチド又はDcR3ポリペプチドを含むキメラ分子に前記細胞を暴露することを含んでなる方法。
【請求項58】
哺乳動物細胞におけるFasリガンド誘発性アポトーシスを阻害する方法において、DcR3ポリペプチド又はDcR3ポリペプチドを含むキメラ分子に前記細胞を暴露することを含んでなる方法。
【請求項59】
哺乳動物細胞におけるFasリガンド誘発活性を阻害する方法において、DcR3ポリペプチド又はDcR3ポリペプチドを含むキメラ分子に前記細胞を暴露することを含んでなる方法。
【請求項60】
哺乳動物ガン細胞をDcR3抗体に暴露することを含んでなる哺乳類動物のガンの処置方法。
【請求項61】
前記ガン細胞においてDcR3遺伝子が増幅される請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記哺乳動物ガン細胞が、肺ガン細胞又は大腸ガン細胞である請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記哺乳動物ガン細胞が、化学治療又は放射線治療に暴露される請求項61に記載の方法。
【請求項64】
哺乳動物細胞を、DcR3遺伝子の増幅について分析することを含んでなるガンを検出又は診断する方法。
【請求項65】
哺乳動物におけるT細胞媒介免疫反応を阻害する方法において、DcR3ポリペプチド又はDcR3ポリペプチドを含むキメラ分子に、哺乳動物細胞を暴露することを含んでなる方法。
【請求項66】
配列番号:3又はその補体の核酸配列を含んでなる単離された核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10CD】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−159970(P2009−159970A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−30533(P2009−30533)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【分割の表示】特願2000−511869(P2000−511869)の分割
【原出願日】平成10年9月18日(1998.9.18)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】