ECM材料を伴う生分解性足場
生分解性足場に対して、細胞外マトリックス(ECM)の不連続領域が付加される。これにより、ECMの再構築プロセスと、該足場が提供できる物理的特性の範囲を組合わせることが可能である。各利用分野について最適な離散ECM材料の量は開示されており、この温度は包帯剤の中に等分布され、かくしてECMの濃度を不要に高くすることが回避される。ECMの効果に加えて、基本材料の多孔質構造は、細胞に対し内方成長のための構造を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性層の中に取込まれたフレーク、繊維、粒子、粉末などの形をしたECM材料を有する生分解性層を含む足場に関する。
【背景技術】
【0002】
足場は、新しい機能的組織を形成するプロセスにおいて、細胞の組織、成長及び分化を誘導するために用いられる構造である。
【0003】
組織の再構築という最終目的を達成するために、足場はいくつかの特定的必要条件を満たさなくてはならない。細胞及び栄養素の両方の構造全体を通した細胞の成長及び拡散を容易にするためには高い気孔率及び適当な気孔サイズが必要である。足場は、外科的除去の必要性なく周囲の組織により吸収される必要があるため、生分解性は不可欠である。
【0004】
足場として使用するために数多くの異なる(天然及び合成、生分解性及び常在性)材料が調査されてきた。これらの材料の大部分は、生体再吸収可能な縫合糸としてすでに利用されているため、研究主題としての組織工学の到来以前に医療分野では知られてきたものである。これらの材料の例としては、コラーゲン又は一部の線形脂肪族ポリエステルがある。
【0005】
しかしながら、実験室で作られた足場をインビボで試験した場合、恐らくは例えば成長因子などのいかなる生体シグナル分子も合成的に作られた足場内に見出されないという事実に起因して、これらの足場内へ容易に細胞が成長しないという状態が見られることが多い。
【0006】
足場の生物学的特性を改善し創傷の治癒を促進するために、いくつかの研究所は合成足場に成長因子を付加し、創傷治癒に対する有利な効果を観察した。これらの刊行物の全てにおいて、単一の成長因子がシート又はヒドロゲル内に取込まれていた。検査された成長因子は、FGF−2(1;2)、25μg/cm2の濃度でテストされたβ−FGF−2(2)、FGF−1(3;4)、EGF(5)(14)、又は2μg/cm2の濃度のTGF−β(6;7)であった。温血脊椎動物からの無細胞細胞外マトリックス(ECM)が組織工学及び形成外科手術において広範に使用されている(8)。無細胞ECMが複数の成長因子を含有することが示されてきた(9−11)。ECMは数多くの生体分子を含有し、濃縮されたECMのこのシートに細胞が容易に定着するということがわかっている(12;13)。今日市場にあるECMはヒト又はブタ由来のものである。細胞は組織から取出され、該組織はその後凍結乾燥されシートの形にカットされる。ブタ由来のシートは異なるサイズをしている。これらのシートの価格は非常に高い。これらのシートは、未水和状態ではかなり堅い。一例としては、Acell社製シートがある。Acell社は、創傷の治癒を加速するECMシート(膀胱マトリックス、UBM)を販売している。かかるシート(7×5cm)は重さが約100mgであり、密度は約190mg/cm3である。
【0007】
創傷におけるECM又はECMタンパク質の使用は、既知である。これらの製品はシート又はヒドロゲルの形をしている。シート製品の例としては、Healthpoint社製のOASIS(凍結乾燥されたブタのECMシート)及びWrightmedical社製のGraftjacket(凍結乾燥されたヒトECMシート)がある。シートは足場ならびにタンパク質の複合混合物の両方を創傷細胞に対して提供する。市販されているECMタンパク質含有非足場製品の例としては、発育中のブタの歯のECMからのタンパク質抽出物を含有するヒドロゲルであるMolnlycke社製のXelmaがある。
【発明の開示】
【0008】
概要
本出願は、足場内にECMを取込んだ場合に、ECMの成長促進効果が維持されるということを開示している。我々は、ECM材料を含有する足場を使用した場合、驚くべきことに、濃度が高くても優れた細胞形態を提供しないということを立証する。60%未満の濃度が、最良の細胞形態及び分布を得るのに充分なものである。さらに、足場内の離散(discrete)ECM材料の濃度を変動させることによって足場の物理的特徴が変化するものの、これらの変化は足場の材料によって左右されるということを示す。本出願は、滅菌の後ECM材料の生物活性を維持する滅菌戦略を示すことにより、この知識を患者に活用するものである。
【0009】
詳細な開示
本発明は、離散ECM粒子を含む一時的複合材料足場に関する。
【0010】
足場に対しECMの不連続領域を付加することにより、足場が提供できる一連の物理的特性(例えば強度、柔軟性、可動性、耐久性)とECMの再構築特性を組合せることが可能である。さらにかかる足場の価格は、粉末が無細胞ECMの生産に由来する廃棄物であること及び各利用分野のための離散ECM材料の最適量を決定し包帯剤中に等分布させ、かくして無意味に高濃度のECMを回避することができることの両方の理由で、その他のECM足場よりも低くなる。ECMの効果に加えて、基材の多孔質構造は、細胞に対し、内方成長のための構造を提供する。1実施形態においては、粒子、フレーク、繊維又は粉末といったような離散ECM材料を添加することによりECMの不連続領域が得られる。
【0011】
ECM材料の不連続相というのは、その形態及び密度に関して、それらが包埋されている粉砕材料と区別されるECMの材料を意味する。これは、例5に見られるような組織学切片によって又は例6に見られる走査型電子顕微鏡(SEM)によって実証することができる。ECMの不連続領域を付加することにより、ECMの濃度を制御することができる。例(例えば例2及び3)で示されているように、細胞の成長を最適化するためには濃度を制御することが重要である。
【0012】
足場形成(例えばフリーズドライ)の前に足場に対しECM材料を付加することが好ましい。このようにして、ECM材料は、足場内に均質に分布させられる。すなわち、それが足場を固化するのにかかる時間内(例えば凍結中)で、ECM材料の密度は、足場の1方の端部においてもう1方の端部よりも高い可能性がある。しかしながら当該状況においては、足場の中心の密度が0を上回るのであれば、均質な分布が足場を通したかかる密度勾配を許容する。かくして、好ましい実施形態は、ECMの不連続領域の濃度が20%(w/w)〜60%(w/w)の間にある、ECMの均質に分布した不連続領域を含む仮連続足場に関する。
【0013】
当該状況下では、仮足場というのは、創傷部位から消滅するか、加水分解するか、破壊させられるか、生物分解済み/生物再吸収性/生物吸収性のものであるか、溶解させられるか又はその他の形で消失する足場を意味する。創傷から取り除くべきものが全くなくなるため、これは臨床的に極めて大きな利点を有する。従って、新たに形成された組織が仮足場の除去により乱されたり、ストレスを受けたりすることがない。足場は、利用分野に応じて、1日〜10週間の間で破壊させられることが標準的に好ましい。開放創の利用分野では、足場が1〜10日の間、例えば2〜7日の間に破壊されることが好ましい。本発明の1態様においては、足場は生分解性のものである。
【0014】
1実施形態においては、該足場は、連続足場である。これは連続相の足場である。不連続領域を伴う連続足場は、結果として複合材料をもたらす。
【0015】
その他の複合材料の場合と同様、これは、著しく異なる物理的又は化学的特性をもち、そして完成した構造内で分離した全く異なるものであり続ける、2つ以上の成分材料から作られる工学処理材料である。
【0016】
細胞外マトリックス(ECM)は動物及びヒトの組織の非細胞部分である。このためECMは、細胞をとり囲む複合材料である。従って、ECMの不連続領域は細胞の無い領域であることが好ましい。無細胞領域は、物理的、酵素的及び/又は化学的方法を使用することによって得られる。細胞層は、例えば組織をこすり取ることで物理的に除去することができる。組織中で細胞を互いに引き離すためには、洗浄剤及び酵素を使用することができる。低浸透圧は組織内の細胞のバーストを誘発し、その結果脱細胞化プロセスを促すことになるため、水又はその他の低張溶液を使用することもできる。
【0017】
無細胞領域を得るためのもう1つの方法は、足場マトリックスに対しECM粉末(ECMの不連続領域)を付加することによるものである。細胞の構成要素が免疫原性応答をひき起こし得ることから、無細胞生成物は、移植された場合のあらゆる免疫拒絶のリスクを最小限におさえる。
【0018】
ECM中には、大まかに言って3つの主要な構成要素、すなわち繊維質要素(特にコラーゲン、エラスチン又はレチクリン)、リンクタンパク質(例えばフィブロネクチン、ラミニン)及び空間充てん分子(通常はグリコサミノグリカン)が存在する。ECMは、細胞を引きつけ、成長因子及びサイトカインのタンクとして役立つことにより、細胞増殖を促進するものとして知られている(9;10)。創傷中で用いられる微粒子ECMを含有する仮足場には、創傷の縁部からの細胞ならびに循環血からの細胞が多く存在することになる。細胞が足場に侵入するにつれて、足場材料は分解され、場合によって、該足場は新しい組織で置換されることになる。
【0019】
ECMの不連続領域の濃度は、好ましくは15%(w/w)超、すなわち20%(w/w)超、例えば30%(w/w)超である。ECMの不連続領域の濃度は、好ましくは95%(w/w)未満、すなわち90%(w/w)未満、例えば80%(w/w)未満又は70%(w/w)未満である。本発明の特に好ましい実施形態においては、濃度は20%(w/w)〜60%(w/w)、例えば20%(w/w)〜40%(w/w)である。
【0020】
ヒトの皮膚は、主にケラチノサイトによって形成されている表皮の上層を含む。表皮の下は、主に線維芽細胞により、ただしそれだけでなく内皮細胞によっても形成されている真皮がある。
【0021】
線維芽細胞の成長を促進する場合、当該例(例えば例3)は、0%(w/w)から約60%(w/w)までECMの濃度を増大させた結果として、足場の表面上の細胞数及び細胞の形態の顕著な改善がもたらされるということを示している。かくして、本発明の1つの態様は、線維芽細胞の成長を促進するための40%(w/w)〜60%(w/w)のECMを含む創傷ケアデバイスに関するものである。
【0022】
ケラチノサイトの成長を促進する場合、ゼラチン足場を用いた当該例は、0%(w/w)から約25%(w/w)までECMの濃度を増大させると、その結果として、(ケラチノサイトが行なうはずであるような)細胞が共に成長する能力、細胞形態及び総細胞数の顕著な改善がもたされる、ということを示している。しかしながら、ECMの濃度を40%(w/w)超に増大させると、その結果、表面上の細胞数、その形態及び細胞数に関する細胞成長の促進が低減されることになる。かくして、本発明の1つの態様は、ケラチノサイトの成長を促進するための20%(w/w)〜30%(w/w)のECMを含む創傷ケアデバイスに関する。
【0023】
本発明の創傷用包帯剤は多数の層を含むことができる。これらの層は、任意には全てECMを含む1つ以上の主分解性材料層を内含することができる。ECMが2つ以上の層内に取込まれている場合、層を横断して用量が変動する可能性がある。1実施形態においては、第1層は40%(w/w)〜60%(w/w)のECMを含む、第2層は20%(w/w)〜30%(w/w)のECMを含む。
【0024】
もう1つの実施形態においては、足場は、異なる細胞型の成長刺激のために設計されている。すなわち、線維芽細胞の成長刺激のために最適な濃度は、40%(w/w)〜60%(w/w)のECMであり、内皮細胞のための最適な濃度は30%(w/w)〜60%(w/w)であり、一方ケラチノサイトの成長刺激のためには、最適な濃度は20%(w/w)〜30%(w/w)である。本発明の1つの実施形態は、40%(w/w)〜60%(w/w)のECMの不連続領域濃度をもつ繊維芽細胞の刺激用の第1の足場と20%(w/w)〜30%(w/w)のECMの不連続領域濃度をもつケラチノサイトの刺激用の第2の足場という2つの足場を含んで成る創傷ケアデバイスに関する。20%(w/w)〜30%(w/w)のECM材料の不連続領域濃度をもつ第3の足場を創傷ケアデバイスに付加することが可能である。
【0025】
当該データは、繊維芽細胞の成長の刺激のための40%(w/w)〜60%(w/w)のECM不連続領域を含む足場の使用を可能にしている。当該データはまた、ケラチノサイトの成長の刺激のための20%(w/w)〜30%(w/w)のECM不連続領域を含む足場の使用をも可能にしている。
【0026】
繊維芽細胞の成長を促進する場合に、成長する繊維芽細胞がケラチノサイトの成長を含め、成長因子を排出することになる、というのが我々の経験上言えることである。従って、本発明の好ましい一態様は、ECMの不連続領域の濃度が40%(w/w)〜50%(w/w)の間である足場に関する。これによって、繊維芽細胞の成長は、ケラチノサイト成長が結果として促進され創傷が治癒されるような形で促進される。
【0027】
足場構造中のECMの濃度は、重量/重量百分率として計算される。すなわち、濃度(w/w)=MECM/MECM+Mscaffold)×100%であり、式中MECMはECMのグラム単位の質量であり、Mscaffoldは足場のグラム単位の質量(ECMは含まず)である。
【0028】
溶解性足場(例えばMPEG−PLGA)においては、溶媒中に足場を溶解させ、ECMをろ過させる。フリーズドライの後、材料を秤量する。
【0029】
不溶性足場の場合には、材料は適切な包埋材料(例えばパラフィン)の中に包埋され、統計学上代表的な数に区分化され、ECMのみを染色して足場材料は染色しない適切な染色液を用いて染色される。画像分析を用いて、ECMの量は、足場との関係において計算される。
【0030】
好ましいECM材料は、材料の組織源に由来する生物活性ECM構成要素を含有する。例えば、これらの材料は、繊維芽細胞成長因子−2(塩基性FGF)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−beta)及び血管内皮成長因子(VEGF)を含有し得る。同様に、本発明のECM基材が、例えば、1つ以上のコラーゲン、グリコサミノグリカン、糖タンパク質及び/又はプロテオグリカンを内含する付加的な生物活性成分を含有することも好まれる。ECMは、大部分がIVタイプのコラーゲン、ラミニン及びプロテオグリカンで構成される基底膜を内含し得る。本発明のECM材料は、好ましくは、ブタ、ウシ及びヒツジを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)食肉生産向けに飼育された動物から収穫された組織から調製される。組織供給源としては、その他の温血脊椎動物も有用であるが、食肉生産に使用される動物からこのような組織を入手できる可能性がより大きいことから、かかる組織が好ましいものとなっている。ガラカトシル、アルファ1,3ガラクトース(GALエピトープ)を含まなくするように遺伝子工学処理されたブタを、ECM材料の生産用の組織供給源として使用してもよい。好ましい実施形態においては、ECMはブタ由来のものとなる。
【0031】
ECM材料は、いかなる動物からでも得ることができる。これは腸組織、膀胱、肝臓、脾臓、胃、リンパ節又は皮膚に由来し得るが、これらに制限されるわけではない。ヒトの死体皮膚、ブタ膀胱粘膜下層(UBS)、ブタ膀胱マトリックス(UBM)、又はブタ小腸粘膜下層(SIS)に由来するECMが特に好ましい。
【0032】
好ましくは、ヒト組織は疾病の転移を最小限におさえるために回避される。従って、好ましい実施形態においては、ECMの不連続領域は動物の組織から得られる。種の類似性のため、温血哺乳動物からのECMを使用することが好まれる。
【0033】
特定の好ましい実施形態においては、ECMの不連続領域はUBM(膀胱マトリックス)粒子である。UBM材料は、ECMタンパク質の独特のカクテルを含み、これらのタンパク質のうち定量化されているのは次のわずかなものである:TGF−β293±8pg/g、b−FGF3862±170pg/g及びVEGF475±22pg/g(すなわちpgVEGF/gUBM)。3mg/cm2という平均密度で、濃度は、ECMシート中のTGF−β:約0.9pg/cm2、b−FGF:11.6pg/cm2そしてVEGF1.4pg/cm2である。
【0034】
本発明の1つの態様は、成長因子の一定の投薬を伴う足場を提供することにある。本発明において使用される足場の1つの特性は、多孔質基材内部でECMの不連続領域を分布させ、かくして細胞がECMを利用しやすくすることにある。細胞が足場基質を通って移動する場合、ECMの不連続領域はプロテアーゼ活性に曝露され、分解され、その結果としてECMの不連続領域から生物活性成分が放出されると考えられている(14)。かくして、生物活性成分の放出を、使用期間全体を通して幾分か一定に保つことができ、かくして創傷床及び細胞に対して幾分か恒常な投薬を提供することができる。1つの実施形態においては、ECMの不連続領域は、仮足場の内部で均等に分布している。
【0035】
ECMは、いくつかの微粒化された形態、例えば粒子、フレーク、繊維又は粉末といった形で得られる。これらは全て、ECMの不連続領域、すなわち離散ECM材料とみなされる。
【0036】
ECMの不連続領域の1つの好ましい形態はECM粒子である。好ましくは、約150μgの平均直径をもつ粒子である。これは、体積加重平均用のMalvern Instrument社製のMastersizer200によって決定される。例えば、100μmの表面積加重平均は、3μmの最小粒子、750μmの最大粒子を有し得る。体積加重平均はこの場合250μmとなる。
【0037】
多孔質足場内でECMの不連続領域を分布させることにより、ECMの不連続領域からの大きな影響なく足場の物理的特性(例えば強度、柔軟性、可動性、耐久性)を最適化することが可能である。
【0038】
ECMの有益な効果及び多孔質足場が提供することのできる物理的特性の両方を得るために、足場といったような創傷包帯剤の中に微粒子ECMを内含させることができ、これを再生医療(例えば軟組織、骨、軟骨、靭帯及び腱の再形成)又は歯科応用分野に使用することができる。この多孔質足場は好ましくは生分解性材料で作られているべきである。仮足場は、凍結乾燥された形態、繊維質形態(製織又は不織)、発泡形態又はフィルム形態のいずれかであり得る。全ての形態において、ECMの不連続領域は、多孔質/繊維質構造の外部及び内部表面の両方から細胞に接近可能である。
【0039】
足場に使用される材料は、合成及び天然の両方の供給源に由来する、あらゆる生分解性材料であってよい。天然材料で構築された足場のうち、特に好ましいものは、細胞外マトリックスの誘導体に基づくものである。かかる材料の例としては、タンパク質材料、例えばコラーゲン又はフィブリン、及び多糖類材料、例えばキトサン又はグリコサミノグリカン(GAG)がある。
【0040】
1実施形態においては、生分解性足場は、タンパク質含有物質から作られる。これは、タンパク質分解酵素による分解を可能にすることになる。かかる足場は、好ましくは、コラーゲン、ケラチン、フィブリン、エラスチン、ラミニン、ビメンチン、ビドロネクチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン及びこれらの誘導体などといったタンパク質又はゼラチンといったような未変性タンパク質で作られる。
【0041】
ゼラチン、フィブリン、ヒアルロン酸、コラーゲン、キチン、キトサン、ケラチン、アルギン酸塩、PLA及びPLGAといったような重合体材料を用いて足場を作ることにより、組合せ及び修飾を通して足場の物理的特徴(強度、柔軟性、可とう性)を変動させることが可能である。
【0042】
もう1つの実施形態においては、生分解性足場は、炭水化物/多糖類含有物質で作られている。こうして、多糖類の加水分解による分解及び酵素分解が可能となる。かかる足場は、好ましくは、多糖類、例えば硫酸ヘパラン、硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、ヘパリン、硫酸ケラタン及びこれらの誘導体、アルギン酸塩、HSCセルロース及びヒルロース誘導体(CMC)、一部のアルギン酸塩、キトサン、キチン、ペクチン及びペクチン誘導体、ヒアルロン酸及びプロテオグリカン(ムコ多糖類)及びこれらの誘導体で作られる。
【0043】
もう1つの態様においては、仮足場は合成である。かかる足場は主として、酵素消化と組合わさった加水分解により分解される。これらの足場は、好ましくは、PLA(ポリラクチド)、PGA(ポリグリコリド)、PLGA(ポリ(ラクチド−コ−グリコシド))、MPEG−PLGA、P細胞(ポリカプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリ無水物、ポリヒドロキシアルカノアート、及び上述の材料の共重合体から成る群から選択された材料で作られている。
【0044】
周知の天然足場/ゲルの例としては、コラーゲンベース(3;6)、フィブリンベース(4)、キトサンベース(1)又はゼラチンベース(2;7)のものがある。
【0045】
一般に用いられる合成材料はPLA−ポリ乳酸である。これは、人体内で分解して、体内から容易に除去される天然に発生する化学物質である乳酸を形成するポリエステルである。類似の材料としてはポリグリコール酸(PGA)及びポリカプロラクトン(PCL)がある。その分解機序はPLAのものと類似であるが、これらはPLAに比べてそれぞれ、速い及び遅い分解速度を示す。かかるMPEG−PLGA重合体は以下の通りに合成可能である。すなわち、窒素雰囲気を伴うグローブボックス内のバイアルに対して、トルエン中の4%(w/w)のオクタン酸第一スズ、MPEG、DL−ラクチド、グリコシドを加える。バイアルを閉じ、加熱し、中味が澄んで均質になるまで振とうし、その後1分〜24時間120〜200℃のオーブン内に入れる。合成は、その後の精製を容易にするため適切な溶媒(例えばジオキサン)中の溶液内で行なうこともできる。次に窒素雰囲気を伴うグローブボックス内のバイアルに対しMPEG、DL−ラクチド、グリコリド、4%の2−エチルヘキサン酸第一スズ及びジオキサンを加えて、上述の通りに処理する。
【0046】
重合体は、以下の通りに精製することができる。すなわち、重合体を適切な溶媒(例えばジオキサン、テトラ、ヒドロフラン、グロロホルム、アセトン)の中に溶解させ、−40℃の温度で非溶媒(例えば水、メタノール、エタノール、1−プロパノール又は2−プロパノール)中で攪拌しながら沈殿させる。重合体を沈降させ、溶媒を廃棄し、重合体を一晩40℃〜120℃で真空オーブン内にて乾燥させる。
【0047】
以上で例示した通り、足場の基材は、その組合せを含めて合成及び/又は天然由来の材料で作ることができる。従って、足場は、タンパク質、多糖類、及び合成重合体の組合せを含むことができる。
【0048】
本発明において使用される足場の1つの機能は、細胞成長を促進するマトリックスを提供することにある。足場内への細胞の内方成長を促進するための1つの基準は、室温で固体である足場にある。すなわち、足場は固定した物理的構造つまり両連続相(bi-contiuous)構造を有する。この構造により、細胞は足場を通って移動し、新しい組織を形成する補助を受ける。
【0049】
細胞成長を促進するためのもう1つの基準は、少なくとも細胞の移動を可能にする気孔率又は複数の開放気孔を有する足場にある。
【0050】
気孔率は、P=1−ρ(V/M)として定義づけされ、式中Pは足場の気孔率、ρは使用される重合体系の密度、Mは重量そしてVは製造された足場の体積である。
【0051】
本発明の1つの実施形態は、本書で記述される通りECMの不連続領域を含む多孔質足場に関する。実施例において例示される通り、50%超の気孔率が細胞成長を可能にする。かくして、1つの好ましい実施形態において、ここで記述される通りの足場は、80%超、さらには90%超又は95%といった気孔率を含む。
【0052】
多孔質足場は、互いに連結された開放気孔を有することが好ましい。
【0053】
本発明の好ましい実施形態においては、仮足場は0.1〜8mmの間、好ましくは0.3〜3mmの間、さらに一層好ましくは0.5〜2mmの間の厚みを有する。本発明の特に好ましい実施形態においては、生分解性層の厚みは約1mmである。本発明の好ましい実施形態においては、生分解性層は創傷と直接接触している。
【0054】
本発明に従う足場は、創傷包帯剤としての使用を目指したものである。創傷包帯剤において念頭におくべき1つの要因は、それを柔軟でかつ形状適合性を有するものにすることである。柔軟で形状適合性を有するものというのは、該状況下において、それが開放創に適用された場合に不快でも苦痛でもなく、例えば縁部が敏感な創傷周囲を切り開いたりストレスを加えたりせず、創傷の屈曲と共に包帯剤が湾曲することを意味する。こうして、創傷部域とECM含有足場の直接的接触も確保される。
【0055】
このような柔軟で形状適合性を有するマトリックスの一例としては、1〜2%(w/w)溶液中で調製されフリーズドライされたキトサンがある。結果は、柔軟な開放マトリックスすなわち相互連結された開放気孔を伴う足場である。このマトリックスは、同様に、細胞の成長及び遊走を可能にするのに充分な開放気孔を有する。
【0056】
1組の実施形態においては、本発明に従った包帯剤は、急性創傷、火傷、慢性創傷及び/又は外科創傷のために使用される。
【0057】
もう1つの実施形態においては、本発明に従った包帯剤は、美容整形手術で使用される。
【0058】
関連する実施形態においては、ECMの不連続領域を含む足場は、再生医療(例えば軟組織、骨、軟骨、靭帯及び腱の再形成)又は歯科応用分野のために用いられる。
【0059】
これらの用途の多くにおいて、本発明に従った包帯剤が滅菌されていることが必要条件である。本発明の1つの実施形態は、ECMの不連続領域を含む滅菌された仮連続足場に関する。これは標準的には、この製品が滅菌されていることが包装上にマーキングされている、バクテリアタイト包装されたECMの不連続領域を含む仮連続足場として表現される。実施例4で例示される通り、例えば放射線照射による滅菌は、(足場のタイプに応じて)ECMの生物学的効果を維持する。バクテリアタイト材料は当業者にとって周知のものである。
【0060】
参考文献
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10.Voytlk-Harbin,S,L.,Brightman,A,O.,Kralne,M,R.,Waisner,B.,& Badylak,S,F.1997,「小腸粘膜下層由来の抽出可能な成長因子の同定」J,Cell Biochem.,vol,67,pp.478-491.
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12.Badylak,S,F.,Record,R.,Lindberg,K.,Hodde,J.,& Park,K.1998,「小腸粘膜下層:インビトロ細胞成長用の基質」J.Blomater,Sel.Poym.Ed,vol.9,pp.863-878.
13.Lindberg,K,& Badylak,S.F.2001,「ブタ小腸粘膜下層(SIS):インビトロ初代ヒト上皮細胞の分化及び基底膜タンパク質の合成を支援する生物足場」Burns 2001 May.;27.(3):254.-66.,vol.27,pp.254-266.
14.Li,F.,Li,W.,Johnson,S.,Ingram,D.,Yoder,M.,& Badylak,S.2004,「初代内皮細胞のための走化性因子としての細胞外マトリックスから誘導された低分子量ペプチド」Endothelium 2004.May,-Aug,;11(3-4):199.-206.,vol.11,pp,199-206.
【実施例】
【0061】
実施例1:ECM粒子を伴う及び伴わない合成足場内の一次ヒト繊維芽細胞の内方成長
40%(w/w)でUBM(A細胞)粒子(平均直径約150μm)を含有する生分解性ポリエステルでできた足場を、細胞形態及び3D成長の試験において、ECM粒子無しの足場と比較した。
【0062】
メトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000〜30,000、L:G 1:1)を、1.5%溶液になるまで1,4−ジオキサン中で溶解させた。UBM含有足場については、3mlの重合体溶液(40%w/wの乾燥物質)に0.03gのUBMを添加し、高速混合し、3×3cmのモールド内に注ぎ込んだ。溶液を−5℃で凍結させ、5時間−20℃及び約60時間20℃で凍結乾燥した。試料をその後5時間デシケータ内で陰圧状態に置く(油圧ポンプ)。
【0063】
2つの足場の表面上の播種された一次繊維芽細胞の成長及び形態試験を評価した。
【0064】
1日目、3日目及び7日目からの結果を1〜5に等級付けした。なお、1は最悪のケース、5は最良のケースに対応している。ECM粒子と混合した足場内で、細胞の分布及び成長には全ての日に等級5が与えられ、これは対照足場(全ての日に等級2.5)よりも優れていた。
【0065】
結論:粉末化されたECMマトリックスの生物活性は、合成足場内への取込み後も活性を保持しており、足場単独の場合と比べて、足場上ではるかに優れた成長をひき起こした。
【0066】
実施例2:5つの異なる濃度のECMを含有するゼラチン−ECM複合材料中の細胞の形態及び3D成長
ゼラチン−ECM足場の表面上に播種された一次繊維芽細胞の細胞形態と3D成長の研究。
ゼラチン足場を加熱により架橋させ、UBLの漸増的濃度(0、12%(w/w)、26%(w/w)、41%(w/w)、51%(w/w)及び58%(w/w))を含有していた。濃度を、総固体量との関係におけるUBM量として計算し、これはすなわち、58%(w/w)の足場が0.05gの重合体及び13.8mgのUBM/cm3に対応する0.07gのUBMを含有していることを意味していた。
【0067】
タイプA、ブルーム175のブタの皮膚由来のゼラチン(Sigma)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加えた(0、12、26、41、51、58%w/w;0、0.007、0.018、0.035、0.053、0.07g/足場)。5mlのUBM含有ゼラチン溶液をモールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして36時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間120℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0068】
この研究は、複合足場中のUBMの濃度を増大させることにより、UBM無しの場合に比べ、繊維芽細胞がより良く分布させられ、より高い増殖速度を有することを示した。研究の最初の数日間は、UBM無しの足場上では細胞が適用された部域内でのみ成長しており、一方UBMの濃度が26%(w/w)超である足場の表面上では細胞がより良くかつより均等に分布していることが観察された。14日以降は、UBMを含有する複合足場と比べてUBM無しのゼラチン足場ではより少ない数の細胞しか見られないことが明らかであった。細胞形態に関しては、繊維芽細胞は、素のゼラチン足場では丸味のあるただし接着性の形態を有していたが、UBMの量が増大するにつれて、増々繊維芽細胞様形態が観察された。41%(w/w)のUBMから、繊維芽細胞の最良の形態及び分布が観察された。41%(w/w)超にUBMの濃度を増大させることで、複合足場内の細胞の形態又は分布が良くなる結果とはならなかった。
【0069】
実施例3:6つの異なる濃度のECM粒子を保持するMPEG−PLGA又はゼラチンの複合足場の調製及びその中の細胞の形態及び3D成長
ゼラチン及びECMの複合足場の調製:タイプA、Gelita pharmagrade 832のブタの皮膚由来のゼラチンを、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加えた;0、0.006、0.013、0.021、0.033、0.05、0.075g/足場(0、10、20、30、40、50、60%w/w)。5mlのUBM含有ゼラチン溶液をモールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして18時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間130℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0070】
MPEG−PLGA及びECMすなわちメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000〜30,000、L:G 1:1)の複合足場の調製を、1.5%溶液となるまで1,4−ジオキサン内で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加え;0、0.017、0.038、0.064、0.1、0.15、0.225g/足場(0、10、20、30、40、50、60%w/w)、高速混合し、7.3×7.3cmのモールド内に10ml注いだ。溶液を−5℃で凍結させ、5時間−20℃でそして約15時間20℃で凍結乾燥した。その後24時間、試料をデンケータ中で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0071】
複合足場の細胞形態及び3D成長を評価するために、各タイプの足場から生検材料を打ち抜き、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンフォテリシンB)を含有する少量の成長培地中2.5×104細胞/cm2の密度で(初代繊維芽細胞はDMEM中の10%FCC中;HUVECはEGM−2中;初代ケラチノサイトは、KGM−2中)足場の表面上に、初代ヒト繊維芽細胞(継代3)、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC、継代4)又は初代ケラチノサイト(継代5)と共に播種した。付加的な成長培地を添加する前に、5%CO2で37℃で足場をインキュベートした。足場の細胞付着、形態、成長及び集団の評価を、ニュートラルレッドでの細胞の染色とそれに続くEvolution MP冷却カラーカメラ(Media Cybernetics)の取付けられたLeica DMIRE2倒立顕微鏡を用いた評価により、実施した。Imsge Pro Plus 5.1ソフトウェア(Media Cybernetics)を用いてデジタル画像を取り込んだ。細胞毒性検出キット(LDH、Roche Diagnostics GmbH)を使用することで細胞数を計算した。上述のものと同じやり方で異なる足場タイプの上面に3つの異なる濃度(1.25×104、2.5×104及び5×104細胞/cm2)で細胞を播種した。平坦な振とう機上で4℃で20時間0.5%のCHAPSを用いて細胞溶解する前にPBSで足場を洗浄することにより、1日目、3日目及び7日目に足場を評価した。上清をマイクロプレートに移送し、メーカの指示に従ってLDH量を測定した。
【0072】
繊維芽細胞
繊維芽細胞の定量測定は、時間の増大につれての細胞数の増加を示したが、ゼラチン足場内のUBMの異なる濃度の間にはいかなる影響も見られなかった(図1)。
【0073】
MPEG−PLGA足場中では、細胞は時間及び足場中のUBMの量の両方と共に増大していた(図2)。UBM無しのゼラチン足場内の細胞の形態及び3D成長は、研究の最初の何日かの間、接着性細胞が丸味のある形態で成長しそれらが適用された場所にとどまっていることを示した。これらの細胞は研究の残りの部分の間に僅かであるがさらに紡錘状の形状になった。足場に対し10%(w/w)のUBMを添加してもこのパターンは変化しなかったが、20%(w/w)のUBMでは、漸増的数の細胞が、通常の繊維芽細胞様形態を伴う紡錘状細胞となり、細胞は表面上でより大きく広がり始めていた。30〜40%(w/w)で、紡錘状細胞の比の最大値が観察され、足場の表面上の細胞成長からより3Dの細胞形態を伴う足場の深さ方向への細胞成長への変化が見られた。MPEG−PLGA内では、UBMの濃度が増大すると足場の上及び中の細胞数が増大するというわずかな例外を除いて、同じパターンが観察された。20〜30%(w/w)のUBMでは、細胞の広がりの増加が見られ、さらに多くの細胞が紡鐘状の形態を有していた。40%(w/w)以上からは、細胞は3D形態で成長し始めており、表面上で成長する代りに今度は足場の深さ方向に成長していた。
【0074】
ケラチノサイト
10%(w/w)UBMを伴うゼラチン足場の上面に初代ケラチノサイトを播種すると、UBM無しの足場に比べ、細胞数が増大した。細胞数の最大値は、研究の最初の何日間かに10〜20%(w/w)のUBMで見られたが、研究のその後の期間では、20〜30%(w/w)のUBMが最大の効果を示した。UBMの濃度を増大させると、足場上の細胞数は減少する結果となった(図3)。
【0075】
MPEG−PLGA足場上で、最大の細胞数はUBM無しの足場上で見られた。UBMの添加により、UBMの数の増加と共に足場内に見られる細胞数は減少する結果となった。この効果は研究の最後でさらに顕著になった。一般に、濃度の重複のため複製間に比較的大きな変動が見られた(図4)。細胞の形態及び3D成長は、ゼラチン足場の表面に接着する単一の成長するケラチノサイトを示した。10%(w/w)のUBM足場中で、小さなシート内のように互いに密に連結し合った状態で増大した数の細胞が成長していた。この効果は経時的により顕著であると思われ、濃度を20〜30%(w/w)UBMに増大させることでさらに密着した成長がもたらされていたが、これは10%(w/w)UBMの場合ほど密なものではなかった。20〜30%(w/w)超のUBMでは、細胞数の減少と合わせて、細胞の広がりの増大を伴うより単独の細胞成長が見られた。UBM無しのMPEG−PLGA足場内で、細胞は足場の中央で収集され、ほぼ一枚のシート内のように互いに密接して成長していた。UBMの濃度を増大させると、細胞数が減少すると共に細胞の広がりは増大する結果となった。2つの最高の濃度において、死細胞が足場構造内に捕捉された状態で発見された。
【0076】
内皮細胞
Huvecが播種されたゼラチン足場は、最適な20〜30%(w/w)前後のUBM値まで数が増大する傾向を示し、その後減少が見られた(図5)。HuvecでのMPEG−PLGAは、UBMの濃度の増大が細胞数の増加を結果としてもたらすことを示した。一般に、Huvecを用いた両方のタイプの足場において隣接する濃度の重複を伴って大きな変動が見られた(図6)。細胞の形態及び3D成長は、ゼラチン足場内でUBMを30%(w/w)UBMまで増大させることで、通常の短かい伸展と共に平坦化する形態を伴って成長する表面に接着するHuvecの能力が上昇することを示した。40%(w/w)以上では、細胞は、より丸味のある形態と細胞数の減少を伴って成長していた。UBM無しのMPEG−PLGA足場において、Huvecは数が少なく、丸味のある形態で成長し、結果として7日目には細胞は全く無かった。10〜20%(w/w)のUBMを足場に添加すると、細胞の広がり効果が得られるが、形態に対する効果は全くない。濃度を30〜40%(w/w)超まで増大させると、最適な細胞形態が得られ、濃度をさらに増大させると細胞はさらに一層3D成長する。一般にUBMを含有するゼラチン及びMPEG−PLGAの両方の足場の細胞形態及び3D成長においても、変動が見られた。初代繊維芽細胞、初代ケラチノサイト及びヒト内皮細胞に対するUBM濃度増加の効果の概要:
【0077】
【表1】
【0078】
実施例4:初代繊維芽細胞の細胞形態及び3D成長に対する、ECMの滅菌+/−足場内への取込みの効果
1.5%溶液となるまで、1,4−ジオキサン中にメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000〜30,000、L:G 1:1)を溶解させた。UBM含有試料については、0.045gの無滅菌UBMを10mlの重合体溶液(23%w/wの乾燥物質)に添加し、高速混合し、7×7cmのモールドの中に注いだ。−5℃で溶液を凍結させ、5時間−20℃でそして約18時間20℃で凍結乾燥した。その後、試料を15時間デシケータ内で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0079】
UBMを伴う及び伴わない試料は、0.1×25KGy及び2×25KGyによりベータ照射した。もう1つの試料を同じ要領で調製したが、この場合、予備滅菌したUBM(2×25KGyベータ照射)を使用し(0.045g/5ml溶液)、調製の後試料を滅菌しなかった。
【0080】
タイプA、ブルーム175のブタの皮膚由来のゼラチン(Sigma)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。5mlの溶液(23%w/wの乾燥物質)に対して0.015gの無滅菌UBMを攪拌しながら添加し、モールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして20時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間120℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。UBMを伴う及び伴わない試料を0及び1×25KGy及び2×25KGyでベータ照射した。もう1つの試料を同じ要領でUBM無しで調製した。0.1×25KGy及び2×25KGyでの調製後、試料を滅菌した。
【0081】
タイプA、ブルーム175のブタの皮膚由来のゼラチン(Sigma)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。5mの溶液(23%w/wの乾燥物質)に対して0.015gの予備滅菌したUBM(1×25KGy)を攪拌しながら添加し、モールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして50時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間130℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0082】
細胞形態及び3D成長研究は、UBMシートへの照射の増大により、UBMシート上の細胞数は減少するが、細胞の形態に対する効果は全くない、ということを示した。ゼラチン足場及び30%(w/w)のUBMを伴うゼラチンの中では、細胞数の減少及び標準的な繊維芽細胞様の細胞からさらに丸みのある細胞への形態の変化が見られ、ゼラチン足場内で最大の効果が見られた。ゼラチン足場内に取込む前のUBM粒子の滅菌は、足場の滅菌前のUBM粒子の取込みに比べて優れた細胞形態及び3D成長を提供する。MPEG−PLGA中では、照射の増大は、足場の加湿の増大に起因して繊維芽細胞様の形態をもつ細胞数の増加を結果としてもたらした。30%(w/w)のUBMを含有するMPEG−PLGAの足場の照射は、同じくUBM粒子が足場内への取込み前に照射された足場に比べ、繊維芽細胞のより3Dの形態及びさらに一層高い細胞数を結果としてもたらした。
【0083】
この研究は、照射を受けていないゼラチン足場内で最高の生物活性が達成されること、そして照射が活性を減少させることを示した。反対に、MPEG−PLGA足場内にUBM粒子が取込まれ、その後で滅菌された場合に、最高の生物活性が見られた。照射は、UBMの生物活性を減少させると考えられている。照射は、生物活性との関係において材料に応じてプラス又はマイナス方向に足場材料に影響を及ぼし得る。足場材料(例えばMPEG−PLGA)が滅菌中のUBMの保護効果を有し得ることを示す指摘が存在している。
【0084】
実施例5:MPEG−PLGA中のECMの離散粒子
UBM粒子を41%(w/w)含有するMPEG−PLGAの足場に、少量の成長培地(抗生物物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンフォテリシンB)を含有するDMEM中の10%FCS)中2.5×104細胞/cm2の密度で足場表面上に初代繊維芽細胞を播種した。付加的な成長培地を添加する前に、5%のCO2で37℃で足場をインキュベートした。7日後に足場を3日間Lillys定着剤中に入れてから、パラフィン内に包埋し、8μmのスライスに切片化し、Meyerのヘマトキシリンエオジン(HE)により染色した。Evolution MP冷却カラーカメラ(Media Cybernetics)が取付けられたBX−60Olympus顕微鏡を用いて、デジタル画像(4倍及び20倍の倍率)を収集し、Imge Pro Plus 5.1ソフトウェアを用いてデジタル画像を取り込んだ。
【0085】
MPEG−PLGAの足場中のECM粒子の分布のデジタル画像は、HEにより赤色に染色され足場材料と識別された離散UBM粒子を示した。足場内で成長する繊維芽細胞は青色に染色された(図7)。
【0086】
実施例6:SEMにより示されたMPEG−PLGA中のUBMの離散粒子
実施例1に記述されている通りに足場を調製した。
【0087】
SEM写真は、UBM粒を伴う(図9)及び伴わない(図8)MPEG−PLGA足場を示している。写真は250という倍率で足場の上面で撮影される。SEM写真は、Danish technological institute(2005−160)で撮影された。
【0088】
実施例7:ECM粒子を保持する足場内の3次元内皮成長及び分化
1.5%溶液となるまで1,4−ジオキサン中にメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000−30,000、L:G 1:1)を溶解させた。UBM含有試料については、10mlの重合体溶液(23%w/wの乾燥物質)に0.045gの無滅菌UBMを添加し、高速混合し、7×7cmのモールドの中に注ぎ込んだ。溶液を−5℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして約16時間20℃で凍結乾燥した。その後試料を15時間、デシケータ内で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0089】
臍帯由来の初代ヒト内皮細胞を、MPEG−PLGA足場及び23%(w/w)のUBMを含有する足場の表面上で初代ヒト真皮繊維芽細胞と同時培養した。6〜10日間明確な内皮成長培地内に沈めた状態で構成体を培養し、その後これらをエアリフトしさらに9日間培養した。培養最終日に、構成体を4%のホルマリン緩衝液で定着させ、2等分し、パラフィン包埋した。
【0090】
CD31/PECAM(血小板内皮細胞培養分子)の免疫組織化学的ペルオキシターゼ染色により、内皮細胞を5μmの切片上で視覚化した。繊維芽細胞を同定するために、平行な切片を、ヘマトキシリン対比染色を組合せたPECAMペルオキシダーゼで染色した。内皮成長及び分化は繊維芽細胞性能により影響されることから、全ての足場材料を2つの異なる繊維芽細胞集団を用いてテストしたが、異なる結果をもたらしてはいなかった。
【0091】
全てのMPEG−PLGA足場が、繊維芽細胞及び内皮成長を支援している。全てのMPEG−PLGA足場の体積全体を通して繊維芽細胞が発見された。UBM粒子が均質に分布し、足場は培養中無傷状態にとどまる。しかしながらMPEG−PLGA足場上での内皮細胞及び繊維芽細胞の培養は内皮表面成長のみをもたらし、内皮細胞は足場の上面の隣接する繊維芽細胞により産生されたマトリックスの内部で増殖する。UBM粒子を添加することにより、足場のより深い層内での繊維芽細胞及び内皮成長が促進され、内皮細胞は毛細血管様の形態を採用する。内皮細胞は、UBM粒子内へと移動するのではなくむしろその表面に沿って誘導される。従って、足場内にUBM粒子を内含させることで、内皮成長及び分化のきわめて確かな改善が導かれることがわかる。異なる繊維芽細胞集団は、異なる結果をもたらしていなかった。
【0092】
MPEG−PLGA足場(図10)及びMPEG−PLGA中の23%(w/w)のUBM(図11)は、成長がUBM粒子を保持する深層内へのものである、MPEG−PLGA足場の表面内での内皮細胞の成長を示している(内皮は赤色に染色される(黒色で示されている)−繊維芽細胞は見えない)。
【0093】
内皮細胞の毛細血管様の形態は、23%(w/w)のUBMを保持するMPEG−PLGA足場のより深い層の中に見られた(図12)。これらの構造は、MPEG−PLGA足場内には見られなかった。
【0094】
実施例8:異なる濃度のECM粒子を含有する足場の物理的及び機械的特性
調製された試料:
− ゼラチンマトリックスを伴う、フリーズドライされた足場、
− ゼラチンマトリックスと40w/wのUBM粒子を伴う、フリーズドライされた足場、
− ゼラチンマトリックスと80w/wのUBM粒子を伴うフリーズドライされた足場。
【0095】
タイプAのブタの皮膚由来のゼラチン(PG−882−6Gelita)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加えた(40%w/w;0.033g/5ml、80%w/w:0.2g/5ml)。5mlのUBM含有ゼラチン溶液をモールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを2.5時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして100時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間120℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0096】
調製された試料:
− PLGAマトリックスを伴う、フリーズドライされた足場、
− PLGAマトリックスと40w/wのUBM粒子を伴う、フリーズドライされた足場、
− PLGAマトリックスと80w/wのUBM粒子を伴うフリーズドライされた足場。
【0097】
1.5%溶液となるまで1,4−ジオキサン中にメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000−30,000、L:G 1:1)を溶解させた。UBM含有試料については、10mlの重合体溶液(40%w/w;0.1g/10ml、80%(w/w);0.6g/10ml)にUBMを添加し、高速混合し、7×7cmのモールドの中に注ぎ込んだ。溶液を1,4−ジオキサン層上にて−5℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして約100時間20℃で凍結乾燥した。その後試料を15時間、デシケータ内で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0098】
物理的特性及び機械的試験
マトリックス材料及び添加されるUBMの量に応じて異なる物理的及び機械的特性を達成することができる。
・ 添加されたUBMの量に伴い気孔率は減少し、かくして密度は増大する。
・ マトリックスが疎水性である場合、UBMは大きい湿潤性を提供することになる。
・ ゼラチン足場は、少なくとも最高40%(w/w)まではその引張り強度を保持し、その後、それは減少し、一方、PLGA足場はUBM粒子によってわずかに強化される。フリーズドライプロセスと組合わさって低い材料濃度は低い引張り強度を与え、このことは当該例中の試料についてもあてはまる。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
高さはノギスで測定される。
【0102】
密度は以下の式から計算される:
密度=質量/(面積×高さ)
【0103】
気孔率は以下の式から計算される:
気孔率=(重合体密度−試料密度)/重合体密度。
【0104】
重合体密度は、添加されるUBM(3mg/cm3)に応じて重量調整される。
【0105】
湿潤性は、水滴が試料により完全に吸収される時間として計算され、写真監視される。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
引張り試験は、Stable Micro Systems社製Texture Analyzer上で実施された。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代繊維芽細胞が播種されたゼラチン足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図2】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代繊維芽細胞が播種されたMPEG−PLGA足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図3】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代ケラチノサイトが播種されたゼラチン足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図4】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代ケラチノサイトが播種されたMPEG−PLGA足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図5】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代臍細胞内皮細胞が播種されたゼラチン足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図6】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代臍細胞内皮細胞が播種されたMPEG−PLGA足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図7】MPEG−PLGA足場内のECM粒子の分布のデジタル画像である。
【図8】MPEG−PLGA足場のSEM写真(倍率250倍)である。
【図9】40%のECM粒子を含有するMPEG−PLGAのSEM写真(倍率250倍)である。
【図10】MPEG−PLGA足場内の内皮成長のデジタル画像である。
【図11】23%のECM粒子を含有するMPEG−PLGA中の内皮成長のデジタル画像である。
【図12】足場のより深い層内の毛細血管様の形態の拡大図を示す、23%のECM粒子を含有するMPEG−PLGA内の内皮成長のデジタル画像である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性層の中に取込まれたフレーク、繊維、粒子、粉末などの形をしたECM材料を有する生分解性層を含む足場に関する。
【背景技術】
【0002】
足場は、新しい機能的組織を形成するプロセスにおいて、細胞の組織、成長及び分化を誘導するために用いられる構造である。
【0003】
組織の再構築という最終目的を達成するために、足場はいくつかの特定的必要条件を満たさなくてはならない。細胞及び栄養素の両方の構造全体を通した細胞の成長及び拡散を容易にするためには高い気孔率及び適当な気孔サイズが必要である。足場は、外科的除去の必要性なく周囲の組織により吸収される必要があるため、生分解性は不可欠である。
【0004】
足場として使用するために数多くの異なる(天然及び合成、生分解性及び常在性)材料が調査されてきた。これらの材料の大部分は、生体再吸収可能な縫合糸としてすでに利用されているため、研究主題としての組織工学の到来以前に医療分野では知られてきたものである。これらの材料の例としては、コラーゲン又は一部の線形脂肪族ポリエステルがある。
【0005】
しかしながら、実験室で作られた足場をインビボで試験した場合、恐らくは例えば成長因子などのいかなる生体シグナル分子も合成的に作られた足場内に見出されないという事実に起因して、これらの足場内へ容易に細胞が成長しないという状態が見られることが多い。
【0006】
足場の生物学的特性を改善し創傷の治癒を促進するために、いくつかの研究所は合成足場に成長因子を付加し、創傷治癒に対する有利な効果を観察した。これらの刊行物の全てにおいて、単一の成長因子がシート又はヒドロゲル内に取込まれていた。検査された成長因子は、FGF−2(1;2)、25μg/cm2の濃度でテストされたβ−FGF−2(2)、FGF−1(3;4)、EGF(5)(14)、又は2μg/cm2の濃度のTGF−β(6;7)であった。温血脊椎動物からの無細胞細胞外マトリックス(ECM)が組織工学及び形成外科手術において広範に使用されている(8)。無細胞ECMが複数の成長因子を含有することが示されてきた(9−11)。ECMは数多くの生体分子を含有し、濃縮されたECMのこのシートに細胞が容易に定着するということがわかっている(12;13)。今日市場にあるECMはヒト又はブタ由来のものである。細胞は組織から取出され、該組織はその後凍結乾燥されシートの形にカットされる。ブタ由来のシートは異なるサイズをしている。これらのシートの価格は非常に高い。これらのシートは、未水和状態ではかなり堅い。一例としては、Acell社製シートがある。Acell社は、創傷の治癒を加速するECMシート(膀胱マトリックス、UBM)を販売している。かかるシート(7×5cm)は重さが約100mgであり、密度は約190mg/cm3である。
【0007】
創傷におけるECM又はECMタンパク質の使用は、既知である。これらの製品はシート又はヒドロゲルの形をしている。シート製品の例としては、Healthpoint社製のOASIS(凍結乾燥されたブタのECMシート)及びWrightmedical社製のGraftjacket(凍結乾燥されたヒトECMシート)がある。シートは足場ならびにタンパク質の複合混合物の両方を創傷細胞に対して提供する。市販されているECMタンパク質含有非足場製品の例としては、発育中のブタの歯のECMからのタンパク質抽出物を含有するヒドロゲルであるMolnlycke社製のXelmaがある。
【発明の開示】
【0008】
概要
本出願は、足場内にECMを取込んだ場合に、ECMの成長促進効果が維持されるということを開示している。我々は、ECM材料を含有する足場を使用した場合、驚くべきことに、濃度が高くても優れた細胞形態を提供しないということを立証する。60%未満の濃度が、最良の細胞形態及び分布を得るのに充分なものである。さらに、足場内の離散(discrete)ECM材料の濃度を変動させることによって足場の物理的特徴が変化するものの、これらの変化は足場の材料によって左右されるということを示す。本出願は、滅菌の後ECM材料の生物活性を維持する滅菌戦略を示すことにより、この知識を患者に活用するものである。
【0009】
詳細な開示
本発明は、離散ECM粒子を含む一時的複合材料足場に関する。
【0010】
足場に対しECMの不連続領域を付加することにより、足場が提供できる一連の物理的特性(例えば強度、柔軟性、可動性、耐久性)とECMの再構築特性を組合せることが可能である。さらにかかる足場の価格は、粉末が無細胞ECMの生産に由来する廃棄物であること及び各利用分野のための離散ECM材料の最適量を決定し包帯剤中に等分布させ、かくして無意味に高濃度のECMを回避することができることの両方の理由で、その他のECM足場よりも低くなる。ECMの効果に加えて、基材の多孔質構造は、細胞に対し、内方成長のための構造を提供する。1実施形態においては、粒子、フレーク、繊維又は粉末といったような離散ECM材料を添加することによりECMの不連続領域が得られる。
【0011】
ECM材料の不連続相というのは、その形態及び密度に関して、それらが包埋されている粉砕材料と区別されるECMの材料を意味する。これは、例5に見られるような組織学切片によって又は例6に見られる走査型電子顕微鏡(SEM)によって実証することができる。ECMの不連続領域を付加することにより、ECMの濃度を制御することができる。例(例えば例2及び3)で示されているように、細胞の成長を最適化するためには濃度を制御することが重要である。
【0012】
足場形成(例えばフリーズドライ)の前に足場に対しECM材料を付加することが好ましい。このようにして、ECM材料は、足場内に均質に分布させられる。すなわち、それが足場を固化するのにかかる時間内(例えば凍結中)で、ECM材料の密度は、足場の1方の端部においてもう1方の端部よりも高い可能性がある。しかしながら当該状況においては、足場の中心の密度が0を上回るのであれば、均質な分布が足場を通したかかる密度勾配を許容する。かくして、好ましい実施形態は、ECMの不連続領域の濃度が20%(w/w)〜60%(w/w)の間にある、ECMの均質に分布した不連続領域を含む仮連続足場に関する。
【0013】
当該状況下では、仮足場というのは、創傷部位から消滅するか、加水分解するか、破壊させられるか、生物分解済み/生物再吸収性/生物吸収性のものであるか、溶解させられるか又はその他の形で消失する足場を意味する。創傷から取り除くべきものが全くなくなるため、これは臨床的に極めて大きな利点を有する。従って、新たに形成された組織が仮足場の除去により乱されたり、ストレスを受けたりすることがない。足場は、利用分野に応じて、1日〜10週間の間で破壊させられることが標準的に好ましい。開放創の利用分野では、足場が1〜10日の間、例えば2〜7日の間に破壊されることが好ましい。本発明の1態様においては、足場は生分解性のものである。
【0014】
1実施形態においては、該足場は、連続足場である。これは連続相の足場である。不連続領域を伴う連続足場は、結果として複合材料をもたらす。
【0015】
その他の複合材料の場合と同様、これは、著しく異なる物理的又は化学的特性をもち、そして完成した構造内で分離した全く異なるものであり続ける、2つ以上の成分材料から作られる工学処理材料である。
【0016】
細胞外マトリックス(ECM)は動物及びヒトの組織の非細胞部分である。このためECMは、細胞をとり囲む複合材料である。従って、ECMの不連続領域は細胞の無い領域であることが好ましい。無細胞領域は、物理的、酵素的及び/又は化学的方法を使用することによって得られる。細胞層は、例えば組織をこすり取ることで物理的に除去することができる。組織中で細胞を互いに引き離すためには、洗浄剤及び酵素を使用することができる。低浸透圧は組織内の細胞のバーストを誘発し、その結果脱細胞化プロセスを促すことになるため、水又はその他の低張溶液を使用することもできる。
【0017】
無細胞領域を得るためのもう1つの方法は、足場マトリックスに対しECM粉末(ECMの不連続領域)を付加することによるものである。細胞の構成要素が免疫原性応答をひき起こし得ることから、無細胞生成物は、移植された場合のあらゆる免疫拒絶のリスクを最小限におさえる。
【0018】
ECM中には、大まかに言って3つの主要な構成要素、すなわち繊維質要素(特にコラーゲン、エラスチン又はレチクリン)、リンクタンパク質(例えばフィブロネクチン、ラミニン)及び空間充てん分子(通常はグリコサミノグリカン)が存在する。ECMは、細胞を引きつけ、成長因子及びサイトカインのタンクとして役立つことにより、細胞増殖を促進するものとして知られている(9;10)。創傷中で用いられる微粒子ECMを含有する仮足場には、創傷の縁部からの細胞ならびに循環血からの細胞が多く存在することになる。細胞が足場に侵入するにつれて、足場材料は分解され、場合によって、該足場は新しい組織で置換されることになる。
【0019】
ECMの不連続領域の濃度は、好ましくは15%(w/w)超、すなわち20%(w/w)超、例えば30%(w/w)超である。ECMの不連続領域の濃度は、好ましくは95%(w/w)未満、すなわち90%(w/w)未満、例えば80%(w/w)未満又は70%(w/w)未満である。本発明の特に好ましい実施形態においては、濃度は20%(w/w)〜60%(w/w)、例えば20%(w/w)〜40%(w/w)である。
【0020】
ヒトの皮膚は、主にケラチノサイトによって形成されている表皮の上層を含む。表皮の下は、主に線維芽細胞により、ただしそれだけでなく内皮細胞によっても形成されている真皮がある。
【0021】
線維芽細胞の成長を促進する場合、当該例(例えば例3)は、0%(w/w)から約60%(w/w)までECMの濃度を増大させた結果として、足場の表面上の細胞数及び細胞の形態の顕著な改善がもたらされるということを示している。かくして、本発明の1つの態様は、線維芽細胞の成長を促進するための40%(w/w)〜60%(w/w)のECMを含む創傷ケアデバイスに関するものである。
【0022】
ケラチノサイトの成長を促進する場合、ゼラチン足場を用いた当該例は、0%(w/w)から約25%(w/w)までECMの濃度を増大させると、その結果として、(ケラチノサイトが行なうはずであるような)細胞が共に成長する能力、細胞形態及び総細胞数の顕著な改善がもたされる、ということを示している。しかしながら、ECMの濃度を40%(w/w)超に増大させると、その結果、表面上の細胞数、その形態及び細胞数に関する細胞成長の促進が低減されることになる。かくして、本発明の1つの態様は、ケラチノサイトの成長を促進するための20%(w/w)〜30%(w/w)のECMを含む創傷ケアデバイスに関する。
【0023】
本発明の創傷用包帯剤は多数の層を含むことができる。これらの層は、任意には全てECMを含む1つ以上の主分解性材料層を内含することができる。ECMが2つ以上の層内に取込まれている場合、層を横断して用量が変動する可能性がある。1実施形態においては、第1層は40%(w/w)〜60%(w/w)のECMを含む、第2層は20%(w/w)〜30%(w/w)のECMを含む。
【0024】
もう1つの実施形態においては、足場は、異なる細胞型の成長刺激のために設計されている。すなわち、線維芽細胞の成長刺激のために最適な濃度は、40%(w/w)〜60%(w/w)のECMであり、内皮細胞のための最適な濃度は30%(w/w)〜60%(w/w)であり、一方ケラチノサイトの成長刺激のためには、最適な濃度は20%(w/w)〜30%(w/w)である。本発明の1つの実施形態は、40%(w/w)〜60%(w/w)のECMの不連続領域濃度をもつ繊維芽細胞の刺激用の第1の足場と20%(w/w)〜30%(w/w)のECMの不連続領域濃度をもつケラチノサイトの刺激用の第2の足場という2つの足場を含んで成る創傷ケアデバイスに関する。20%(w/w)〜30%(w/w)のECM材料の不連続領域濃度をもつ第3の足場を創傷ケアデバイスに付加することが可能である。
【0025】
当該データは、繊維芽細胞の成長の刺激のための40%(w/w)〜60%(w/w)のECM不連続領域を含む足場の使用を可能にしている。当該データはまた、ケラチノサイトの成長の刺激のための20%(w/w)〜30%(w/w)のECM不連続領域を含む足場の使用をも可能にしている。
【0026】
繊維芽細胞の成長を促進する場合に、成長する繊維芽細胞がケラチノサイトの成長を含め、成長因子を排出することになる、というのが我々の経験上言えることである。従って、本発明の好ましい一態様は、ECMの不連続領域の濃度が40%(w/w)〜50%(w/w)の間である足場に関する。これによって、繊維芽細胞の成長は、ケラチノサイト成長が結果として促進され創傷が治癒されるような形で促進される。
【0027】
足場構造中のECMの濃度は、重量/重量百分率として計算される。すなわち、濃度(w/w)=MECM/MECM+Mscaffold)×100%であり、式中MECMはECMのグラム単位の質量であり、Mscaffoldは足場のグラム単位の質量(ECMは含まず)である。
【0028】
溶解性足場(例えばMPEG−PLGA)においては、溶媒中に足場を溶解させ、ECMをろ過させる。フリーズドライの後、材料を秤量する。
【0029】
不溶性足場の場合には、材料は適切な包埋材料(例えばパラフィン)の中に包埋され、統計学上代表的な数に区分化され、ECMのみを染色して足場材料は染色しない適切な染色液を用いて染色される。画像分析を用いて、ECMの量は、足場との関係において計算される。
【0030】
好ましいECM材料は、材料の組織源に由来する生物活性ECM構成要素を含有する。例えば、これらの材料は、繊維芽細胞成長因子−2(塩基性FGF)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−beta)及び血管内皮成長因子(VEGF)を含有し得る。同様に、本発明のECM基材が、例えば、1つ以上のコラーゲン、グリコサミノグリカン、糖タンパク質及び/又はプロテオグリカンを内含する付加的な生物活性成分を含有することも好まれる。ECMは、大部分がIVタイプのコラーゲン、ラミニン及びプロテオグリカンで構成される基底膜を内含し得る。本発明のECM材料は、好ましくは、ブタ、ウシ及びヒツジを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)食肉生産向けに飼育された動物から収穫された組織から調製される。組織供給源としては、その他の温血脊椎動物も有用であるが、食肉生産に使用される動物からこのような組織を入手できる可能性がより大きいことから、かかる組織が好ましいものとなっている。ガラカトシル、アルファ1,3ガラクトース(GALエピトープ)を含まなくするように遺伝子工学処理されたブタを、ECM材料の生産用の組織供給源として使用してもよい。好ましい実施形態においては、ECMはブタ由来のものとなる。
【0031】
ECM材料は、いかなる動物からでも得ることができる。これは腸組織、膀胱、肝臓、脾臓、胃、リンパ節又は皮膚に由来し得るが、これらに制限されるわけではない。ヒトの死体皮膚、ブタ膀胱粘膜下層(UBS)、ブタ膀胱マトリックス(UBM)、又はブタ小腸粘膜下層(SIS)に由来するECMが特に好ましい。
【0032】
好ましくは、ヒト組織は疾病の転移を最小限におさえるために回避される。従って、好ましい実施形態においては、ECMの不連続領域は動物の組織から得られる。種の類似性のため、温血哺乳動物からのECMを使用することが好まれる。
【0033】
特定の好ましい実施形態においては、ECMの不連続領域はUBM(膀胱マトリックス)粒子である。UBM材料は、ECMタンパク質の独特のカクテルを含み、これらのタンパク質のうち定量化されているのは次のわずかなものである:TGF−β293±8pg/g、b−FGF3862±170pg/g及びVEGF475±22pg/g(すなわちpgVEGF/gUBM)。3mg/cm2という平均密度で、濃度は、ECMシート中のTGF−β:約0.9pg/cm2、b−FGF:11.6pg/cm2そしてVEGF1.4pg/cm2である。
【0034】
本発明の1つの態様は、成長因子の一定の投薬を伴う足場を提供することにある。本発明において使用される足場の1つの特性は、多孔質基材内部でECMの不連続領域を分布させ、かくして細胞がECMを利用しやすくすることにある。細胞が足場基質を通って移動する場合、ECMの不連続領域はプロテアーゼ活性に曝露され、分解され、その結果としてECMの不連続領域から生物活性成分が放出されると考えられている(14)。かくして、生物活性成分の放出を、使用期間全体を通して幾分か一定に保つことができ、かくして創傷床及び細胞に対して幾分か恒常な投薬を提供することができる。1つの実施形態においては、ECMの不連続領域は、仮足場の内部で均等に分布している。
【0035】
ECMは、いくつかの微粒化された形態、例えば粒子、フレーク、繊維又は粉末といった形で得られる。これらは全て、ECMの不連続領域、すなわち離散ECM材料とみなされる。
【0036】
ECMの不連続領域の1つの好ましい形態はECM粒子である。好ましくは、約150μgの平均直径をもつ粒子である。これは、体積加重平均用のMalvern Instrument社製のMastersizer200によって決定される。例えば、100μmの表面積加重平均は、3μmの最小粒子、750μmの最大粒子を有し得る。体積加重平均はこの場合250μmとなる。
【0037】
多孔質足場内でECMの不連続領域を分布させることにより、ECMの不連続領域からの大きな影響なく足場の物理的特性(例えば強度、柔軟性、可動性、耐久性)を最適化することが可能である。
【0038】
ECMの有益な効果及び多孔質足場が提供することのできる物理的特性の両方を得るために、足場といったような創傷包帯剤の中に微粒子ECMを内含させることができ、これを再生医療(例えば軟組織、骨、軟骨、靭帯及び腱の再形成)又は歯科応用分野に使用することができる。この多孔質足場は好ましくは生分解性材料で作られているべきである。仮足場は、凍結乾燥された形態、繊維質形態(製織又は不織)、発泡形態又はフィルム形態のいずれかであり得る。全ての形態において、ECMの不連続領域は、多孔質/繊維質構造の外部及び内部表面の両方から細胞に接近可能である。
【0039】
足場に使用される材料は、合成及び天然の両方の供給源に由来する、あらゆる生分解性材料であってよい。天然材料で構築された足場のうち、特に好ましいものは、細胞外マトリックスの誘導体に基づくものである。かかる材料の例としては、タンパク質材料、例えばコラーゲン又はフィブリン、及び多糖類材料、例えばキトサン又はグリコサミノグリカン(GAG)がある。
【0040】
1実施形態においては、生分解性足場は、タンパク質含有物質から作られる。これは、タンパク質分解酵素による分解を可能にすることになる。かかる足場は、好ましくは、コラーゲン、ケラチン、フィブリン、エラスチン、ラミニン、ビメンチン、ビドロネクチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン及びこれらの誘導体などといったタンパク質又はゼラチンといったような未変性タンパク質で作られる。
【0041】
ゼラチン、フィブリン、ヒアルロン酸、コラーゲン、キチン、キトサン、ケラチン、アルギン酸塩、PLA及びPLGAといったような重合体材料を用いて足場を作ることにより、組合せ及び修飾を通して足場の物理的特徴(強度、柔軟性、可とう性)を変動させることが可能である。
【0042】
もう1つの実施形態においては、生分解性足場は、炭水化物/多糖類含有物質で作られている。こうして、多糖類の加水分解による分解及び酵素分解が可能となる。かかる足場は、好ましくは、多糖類、例えば硫酸ヘパラン、硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、ヘパリン、硫酸ケラタン及びこれらの誘導体、アルギン酸塩、HSCセルロース及びヒルロース誘導体(CMC)、一部のアルギン酸塩、キトサン、キチン、ペクチン及びペクチン誘導体、ヒアルロン酸及びプロテオグリカン(ムコ多糖類)及びこれらの誘導体で作られる。
【0043】
もう1つの態様においては、仮足場は合成である。かかる足場は主として、酵素消化と組合わさった加水分解により分解される。これらの足場は、好ましくは、PLA(ポリラクチド)、PGA(ポリグリコリド)、PLGA(ポリ(ラクチド−コ−グリコシド))、MPEG−PLGA、P細胞(ポリカプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリ無水物、ポリヒドロキシアルカノアート、及び上述の材料の共重合体から成る群から選択された材料で作られている。
【0044】
周知の天然足場/ゲルの例としては、コラーゲンベース(3;6)、フィブリンベース(4)、キトサンベース(1)又はゼラチンベース(2;7)のものがある。
【0045】
一般に用いられる合成材料はPLA−ポリ乳酸である。これは、人体内で分解して、体内から容易に除去される天然に発生する化学物質である乳酸を形成するポリエステルである。類似の材料としてはポリグリコール酸(PGA)及びポリカプロラクトン(PCL)がある。その分解機序はPLAのものと類似であるが、これらはPLAに比べてそれぞれ、速い及び遅い分解速度を示す。かかるMPEG−PLGA重合体は以下の通りに合成可能である。すなわち、窒素雰囲気を伴うグローブボックス内のバイアルに対して、トルエン中の4%(w/w)のオクタン酸第一スズ、MPEG、DL−ラクチド、グリコシドを加える。バイアルを閉じ、加熱し、中味が澄んで均質になるまで振とうし、その後1分〜24時間120〜200℃のオーブン内に入れる。合成は、その後の精製を容易にするため適切な溶媒(例えばジオキサン)中の溶液内で行なうこともできる。次に窒素雰囲気を伴うグローブボックス内のバイアルに対しMPEG、DL−ラクチド、グリコリド、4%の2−エチルヘキサン酸第一スズ及びジオキサンを加えて、上述の通りに処理する。
【0046】
重合体は、以下の通りに精製することができる。すなわち、重合体を適切な溶媒(例えばジオキサン、テトラ、ヒドロフラン、グロロホルム、アセトン)の中に溶解させ、−40℃の温度で非溶媒(例えば水、メタノール、エタノール、1−プロパノール又は2−プロパノール)中で攪拌しながら沈殿させる。重合体を沈降させ、溶媒を廃棄し、重合体を一晩40℃〜120℃で真空オーブン内にて乾燥させる。
【0047】
以上で例示した通り、足場の基材は、その組合せを含めて合成及び/又は天然由来の材料で作ることができる。従って、足場は、タンパク質、多糖類、及び合成重合体の組合せを含むことができる。
【0048】
本発明において使用される足場の1つの機能は、細胞成長を促進するマトリックスを提供することにある。足場内への細胞の内方成長を促進するための1つの基準は、室温で固体である足場にある。すなわち、足場は固定した物理的構造つまり両連続相(bi-contiuous)構造を有する。この構造により、細胞は足場を通って移動し、新しい組織を形成する補助を受ける。
【0049】
細胞成長を促進するためのもう1つの基準は、少なくとも細胞の移動を可能にする気孔率又は複数の開放気孔を有する足場にある。
【0050】
気孔率は、P=1−ρ(V/M)として定義づけされ、式中Pは足場の気孔率、ρは使用される重合体系の密度、Mは重量そしてVは製造された足場の体積である。
【0051】
本発明の1つの実施形態は、本書で記述される通りECMの不連続領域を含む多孔質足場に関する。実施例において例示される通り、50%超の気孔率が細胞成長を可能にする。かくして、1つの好ましい実施形態において、ここで記述される通りの足場は、80%超、さらには90%超又は95%といった気孔率を含む。
【0052】
多孔質足場は、互いに連結された開放気孔を有することが好ましい。
【0053】
本発明の好ましい実施形態においては、仮足場は0.1〜8mmの間、好ましくは0.3〜3mmの間、さらに一層好ましくは0.5〜2mmの間の厚みを有する。本発明の特に好ましい実施形態においては、生分解性層の厚みは約1mmである。本発明の好ましい実施形態においては、生分解性層は創傷と直接接触している。
【0054】
本発明に従う足場は、創傷包帯剤としての使用を目指したものである。創傷包帯剤において念頭におくべき1つの要因は、それを柔軟でかつ形状適合性を有するものにすることである。柔軟で形状適合性を有するものというのは、該状況下において、それが開放創に適用された場合に不快でも苦痛でもなく、例えば縁部が敏感な創傷周囲を切り開いたりストレスを加えたりせず、創傷の屈曲と共に包帯剤が湾曲することを意味する。こうして、創傷部域とECM含有足場の直接的接触も確保される。
【0055】
このような柔軟で形状適合性を有するマトリックスの一例としては、1〜2%(w/w)溶液中で調製されフリーズドライされたキトサンがある。結果は、柔軟な開放マトリックスすなわち相互連結された開放気孔を伴う足場である。このマトリックスは、同様に、細胞の成長及び遊走を可能にするのに充分な開放気孔を有する。
【0056】
1組の実施形態においては、本発明に従った包帯剤は、急性創傷、火傷、慢性創傷及び/又は外科創傷のために使用される。
【0057】
もう1つの実施形態においては、本発明に従った包帯剤は、美容整形手術で使用される。
【0058】
関連する実施形態においては、ECMの不連続領域を含む足場は、再生医療(例えば軟組織、骨、軟骨、靭帯及び腱の再形成)又は歯科応用分野のために用いられる。
【0059】
これらの用途の多くにおいて、本発明に従った包帯剤が滅菌されていることが必要条件である。本発明の1つの実施形態は、ECMの不連続領域を含む滅菌された仮連続足場に関する。これは標準的には、この製品が滅菌されていることが包装上にマーキングされている、バクテリアタイト包装されたECMの不連続領域を含む仮連続足場として表現される。実施例4で例示される通り、例えば放射線照射による滅菌は、(足場のタイプに応じて)ECMの生物学的効果を維持する。バクテリアタイト材料は当業者にとって周知のものである。
【0060】
参考文献
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12.Badylak,S,F.,Record,R.,Lindberg,K.,Hodde,J.,& Park,K.1998,「小腸粘膜下層:インビトロ細胞成長用の基質」J.Blomater,Sel.Poym.Ed,vol.9,pp.863-878.
13.Lindberg,K,& Badylak,S.F.2001,「ブタ小腸粘膜下層(SIS):インビトロ初代ヒト上皮細胞の分化及び基底膜タンパク質の合成を支援する生物足場」Burns 2001 May.;27.(3):254.-66.,vol.27,pp.254-266.
14.Li,F.,Li,W.,Johnson,S.,Ingram,D.,Yoder,M.,& Badylak,S.2004,「初代内皮細胞のための走化性因子としての細胞外マトリックスから誘導された低分子量ペプチド」Endothelium 2004.May,-Aug,;11(3-4):199.-206.,vol.11,pp,199-206.
【実施例】
【0061】
実施例1:ECM粒子を伴う及び伴わない合成足場内の一次ヒト繊維芽細胞の内方成長
40%(w/w)でUBM(A細胞)粒子(平均直径約150μm)を含有する生分解性ポリエステルでできた足場を、細胞形態及び3D成長の試験において、ECM粒子無しの足場と比較した。
【0062】
メトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000〜30,000、L:G 1:1)を、1.5%溶液になるまで1,4−ジオキサン中で溶解させた。UBM含有足場については、3mlの重合体溶液(40%w/wの乾燥物質)に0.03gのUBMを添加し、高速混合し、3×3cmのモールド内に注ぎ込んだ。溶液を−5℃で凍結させ、5時間−20℃及び約60時間20℃で凍結乾燥した。試料をその後5時間デシケータ内で陰圧状態に置く(油圧ポンプ)。
【0063】
2つの足場の表面上の播種された一次繊維芽細胞の成長及び形態試験を評価した。
【0064】
1日目、3日目及び7日目からの結果を1〜5に等級付けした。なお、1は最悪のケース、5は最良のケースに対応している。ECM粒子と混合した足場内で、細胞の分布及び成長には全ての日に等級5が与えられ、これは対照足場(全ての日に等級2.5)よりも優れていた。
【0065】
結論:粉末化されたECMマトリックスの生物活性は、合成足場内への取込み後も活性を保持しており、足場単独の場合と比べて、足場上ではるかに優れた成長をひき起こした。
【0066】
実施例2:5つの異なる濃度のECMを含有するゼラチン−ECM複合材料中の細胞の形態及び3D成長
ゼラチン−ECM足場の表面上に播種された一次繊維芽細胞の細胞形態と3D成長の研究。
ゼラチン足場を加熱により架橋させ、UBLの漸増的濃度(0、12%(w/w)、26%(w/w)、41%(w/w)、51%(w/w)及び58%(w/w))を含有していた。濃度を、総固体量との関係におけるUBM量として計算し、これはすなわち、58%(w/w)の足場が0.05gの重合体及び13.8mgのUBM/cm3に対応する0.07gのUBMを含有していることを意味していた。
【0067】
タイプA、ブルーム175のブタの皮膚由来のゼラチン(Sigma)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加えた(0、12、26、41、51、58%w/w;0、0.007、0.018、0.035、0.053、0.07g/足場)。5mlのUBM含有ゼラチン溶液をモールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして36時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間120℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0068】
この研究は、複合足場中のUBMの濃度を増大させることにより、UBM無しの場合に比べ、繊維芽細胞がより良く分布させられ、より高い増殖速度を有することを示した。研究の最初の数日間は、UBM無しの足場上では細胞が適用された部域内でのみ成長しており、一方UBMの濃度が26%(w/w)超である足場の表面上では細胞がより良くかつより均等に分布していることが観察された。14日以降は、UBMを含有する複合足場と比べてUBM無しのゼラチン足場ではより少ない数の細胞しか見られないことが明らかであった。細胞形態に関しては、繊維芽細胞は、素のゼラチン足場では丸味のあるただし接着性の形態を有していたが、UBMの量が増大するにつれて、増々繊維芽細胞様形態が観察された。41%(w/w)のUBMから、繊維芽細胞の最良の形態及び分布が観察された。41%(w/w)超にUBMの濃度を増大させることで、複合足場内の細胞の形態又は分布が良くなる結果とはならなかった。
【0069】
実施例3:6つの異なる濃度のECM粒子を保持するMPEG−PLGA又はゼラチンの複合足場の調製及びその中の細胞の形態及び3D成長
ゼラチン及びECMの複合足場の調製:タイプA、Gelita pharmagrade 832のブタの皮膚由来のゼラチンを、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加えた;0、0.006、0.013、0.021、0.033、0.05、0.075g/足場(0、10、20、30、40、50、60%w/w)。5mlのUBM含有ゼラチン溶液をモールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして18時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間130℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0070】
MPEG−PLGA及びECMすなわちメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000〜30,000、L:G 1:1)の複合足場の調製を、1.5%溶液となるまで1,4−ジオキサン内で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加え;0、0.017、0.038、0.064、0.1、0.15、0.225g/足場(0、10、20、30、40、50、60%w/w)、高速混合し、7.3×7.3cmのモールド内に10ml注いだ。溶液を−5℃で凍結させ、5時間−20℃でそして約15時間20℃で凍結乾燥した。その後24時間、試料をデンケータ中で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0071】
複合足場の細胞形態及び3D成長を評価するために、各タイプの足場から生検材料を打ち抜き、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンフォテリシンB)を含有する少量の成長培地中2.5×104細胞/cm2の密度で(初代繊維芽細胞はDMEM中の10%FCC中;HUVECはEGM−2中;初代ケラチノサイトは、KGM−2中)足場の表面上に、初代ヒト繊維芽細胞(継代3)、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC、継代4)又は初代ケラチノサイト(継代5)と共に播種した。付加的な成長培地を添加する前に、5%CO2で37℃で足場をインキュベートした。足場の細胞付着、形態、成長及び集団の評価を、ニュートラルレッドでの細胞の染色とそれに続くEvolution MP冷却カラーカメラ(Media Cybernetics)の取付けられたLeica DMIRE2倒立顕微鏡を用いた評価により、実施した。Imsge Pro Plus 5.1ソフトウェア(Media Cybernetics)を用いてデジタル画像を取り込んだ。細胞毒性検出キット(LDH、Roche Diagnostics GmbH)を使用することで細胞数を計算した。上述のものと同じやり方で異なる足場タイプの上面に3つの異なる濃度(1.25×104、2.5×104及び5×104細胞/cm2)で細胞を播種した。平坦な振とう機上で4℃で20時間0.5%のCHAPSを用いて細胞溶解する前にPBSで足場を洗浄することにより、1日目、3日目及び7日目に足場を評価した。上清をマイクロプレートに移送し、メーカの指示に従ってLDH量を測定した。
【0072】
繊維芽細胞
繊維芽細胞の定量測定は、時間の増大につれての細胞数の増加を示したが、ゼラチン足場内のUBMの異なる濃度の間にはいかなる影響も見られなかった(図1)。
【0073】
MPEG−PLGA足場中では、細胞は時間及び足場中のUBMの量の両方と共に増大していた(図2)。UBM無しのゼラチン足場内の細胞の形態及び3D成長は、研究の最初の何日かの間、接着性細胞が丸味のある形態で成長しそれらが適用された場所にとどまっていることを示した。これらの細胞は研究の残りの部分の間に僅かであるがさらに紡錘状の形状になった。足場に対し10%(w/w)のUBMを添加してもこのパターンは変化しなかったが、20%(w/w)のUBMでは、漸増的数の細胞が、通常の繊維芽細胞様形態を伴う紡錘状細胞となり、細胞は表面上でより大きく広がり始めていた。30〜40%(w/w)で、紡錘状細胞の比の最大値が観察され、足場の表面上の細胞成長からより3Dの細胞形態を伴う足場の深さ方向への細胞成長への変化が見られた。MPEG−PLGA内では、UBMの濃度が増大すると足場の上及び中の細胞数が増大するというわずかな例外を除いて、同じパターンが観察された。20〜30%(w/w)のUBMでは、細胞の広がりの増加が見られ、さらに多くの細胞が紡鐘状の形態を有していた。40%(w/w)以上からは、細胞は3D形態で成長し始めており、表面上で成長する代りに今度は足場の深さ方向に成長していた。
【0074】
ケラチノサイト
10%(w/w)UBMを伴うゼラチン足場の上面に初代ケラチノサイトを播種すると、UBM無しの足場に比べ、細胞数が増大した。細胞数の最大値は、研究の最初の何日間かに10〜20%(w/w)のUBMで見られたが、研究のその後の期間では、20〜30%(w/w)のUBMが最大の効果を示した。UBMの濃度を増大させると、足場上の細胞数は減少する結果となった(図3)。
【0075】
MPEG−PLGA足場上で、最大の細胞数はUBM無しの足場上で見られた。UBMの添加により、UBMの数の増加と共に足場内に見られる細胞数は減少する結果となった。この効果は研究の最後でさらに顕著になった。一般に、濃度の重複のため複製間に比較的大きな変動が見られた(図4)。細胞の形態及び3D成長は、ゼラチン足場の表面に接着する単一の成長するケラチノサイトを示した。10%(w/w)のUBM足場中で、小さなシート内のように互いに密に連結し合った状態で増大した数の細胞が成長していた。この効果は経時的により顕著であると思われ、濃度を20〜30%(w/w)UBMに増大させることでさらに密着した成長がもたらされていたが、これは10%(w/w)UBMの場合ほど密なものではなかった。20〜30%(w/w)超のUBMでは、細胞数の減少と合わせて、細胞の広がりの増大を伴うより単独の細胞成長が見られた。UBM無しのMPEG−PLGA足場内で、細胞は足場の中央で収集され、ほぼ一枚のシート内のように互いに密接して成長していた。UBMの濃度を増大させると、細胞数が減少すると共に細胞の広がりは増大する結果となった。2つの最高の濃度において、死細胞が足場構造内に捕捉された状態で発見された。
【0076】
内皮細胞
Huvecが播種されたゼラチン足場は、最適な20〜30%(w/w)前後のUBM値まで数が増大する傾向を示し、その後減少が見られた(図5)。HuvecでのMPEG−PLGAは、UBMの濃度の増大が細胞数の増加を結果としてもたらすことを示した。一般に、Huvecを用いた両方のタイプの足場において隣接する濃度の重複を伴って大きな変動が見られた(図6)。細胞の形態及び3D成長は、ゼラチン足場内でUBMを30%(w/w)UBMまで増大させることで、通常の短かい伸展と共に平坦化する形態を伴って成長する表面に接着するHuvecの能力が上昇することを示した。40%(w/w)以上では、細胞は、より丸味のある形態と細胞数の減少を伴って成長していた。UBM無しのMPEG−PLGA足場において、Huvecは数が少なく、丸味のある形態で成長し、結果として7日目には細胞は全く無かった。10〜20%(w/w)のUBMを足場に添加すると、細胞の広がり効果が得られるが、形態に対する効果は全くない。濃度を30〜40%(w/w)超まで増大させると、最適な細胞形態が得られ、濃度をさらに増大させると細胞はさらに一層3D成長する。一般にUBMを含有するゼラチン及びMPEG−PLGAの両方の足場の細胞形態及び3D成長においても、変動が見られた。初代繊維芽細胞、初代ケラチノサイト及びヒト内皮細胞に対するUBM濃度増加の効果の概要:
【0077】
【表1】
【0078】
実施例4:初代繊維芽細胞の細胞形態及び3D成長に対する、ECMの滅菌+/−足場内への取込みの効果
1.5%溶液となるまで、1,4−ジオキサン中にメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000〜30,000、L:G 1:1)を溶解させた。UBM含有試料については、0.045gの無滅菌UBMを10mlの重合体溶液(23%w/wの乾燥物質)に添加し、高速混合し、7×7cmのモールドの中に注いだ。−5℃で溶液を凍結させ、5時間−20℃でそして約18時間20℃で凍結乾燥した。その後、試料を15時間デシケータ内で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0079】
UBMを伴う及び伴わない試料は、0.1×25KGy及び2×25KGyによりベータ照射した。もう1つの試料を同じ要領で調製したが、この場合、予備滅菌したUBM(2×25KGyベータ照射)を使用し(0.045g/5ml溶液)、調製の後試料を滅菌しなかった。
【0080】
タイプA、ブルーム175のブタの皮膚由来のゼラチン(Sigma)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。5mlの溶液(23%w/wの乾燥物質)に対して0.015gの無滅菌UBMを攪拌しながら添加し、モールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして20時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間120℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。UBMを伴う及び伴わない試料を0及び1×25KGy及び2×25KGyでベータ照射した。もう1つの試料を同じ要領でUBM無しで調製した。0.1×25KGy及び2×25KGyでの調製後、試料を滅菌した。
【0081】
タイプA、ブルーム175のブタの皮膚由来のゼラチン(Sigma)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。5mの溶液(23%w/wの乾燥物質)に対して0.015gの予備滅菌したUBM(1×25KGy)を攪拌しながら添加し、モールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを1時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして50時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間130℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0082】
細胞形態及び3D成長研究は、UBMシートへの照射の増大により、UBMシート上の細胞数は減少するが、細胞の形態に対する効果は全くない、ということを示した。ゼラチン足場及び30%(w/w)のUBMを伴うゼラチンの中では、細胞数の減少及び標準的な繊維芽細胞様の細胞からさらに丸みのある細胞への形態の変化が見られ、ゼラチン足場内で最大の効果が見られた。ゼラチン足場内に取込む前のUBM粒子の滅菌は、足場の滅菌前のUBM粒子の取込みに比べて優れた細胞形態及び3D成長を提供する。MPEG−PLGA中では、照射の増大は、足場の加湿の増大に起因して繊維芽細胞様の形態をもつ細胞数の増加を結果としてもたらした。30%(w/w)のUBMを含有するMPEG−PLGAの足場の照射は、同じくUBM粒子が足場内への取込み前に照射された足場に比べ、繊維芽細胞のより3Dの形態及びさらに一層高い細胞数を結果としてもたらした。
【0083】
この研究は、照射を受けていないゼラチン足場内で最高の生物活性が達成されること、そして照射が活性を減少させることを示した。反対に、MPEG−PLGA足場内にUBM粒子が取込まれ、その後で滅菌された場合に、最高の生物活性が見られた。照射は、UBMの生物活性を減少させると考えられている。照射は、生物活性との関係において材料に応じてプラス又はマイナス方向に足場材料に影響を及ぼし得る。足場材料(例えばMPEG−PLGA)が滅菌中のUBMの保護効果を有し得ることを示す指摘が存在している。
【0084】
実施例5:MPEG−PLGA中のECMの離散粒子
UBM粒子を41%(w/w)含有するMPEG−PLGAの足場に、少量の成長培地(抗生物物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンフォテリシンB)を含有するDMEM中の10%FCS)中2.5×104細胞/cm2の密度で足場表面上に初代繊維芽細胞を播種した。付加的な成長培地を添加する前に、5%のCO2で37℃で足場をインキュベートした。7日後に足場を3日間Lillys定着剤中に入れてから、パラフィン内に包埋し、8μmのスライスに切片化し、Meyerのヘマトキシリンエオジン(HE)により染色した。Evolution MP冷却カラーカメラ(Media Cybernetics)が取付けられたBX−60Olympus顕微鏡を用いて、デジタル画像(4倍及び20倍の倍率)を収集し、Imge Pro Plus 5.1ソフトウェアを用いてデジタル画像を取り込んだ。
【0085】
MPEG−PLGAの足場中のECM粒子の分布のデジタル画像は、HEにより赤色に染色され足場材料と識別された離散UBM粒子を示した。足場内で成長する繊維芽細胞は青色に染色された(図7)。
【0086】
実施例6:SEMにより示されたMPEG−PLGA中のUBMの離散粒子
実施例1に記述されている通りに足場を調製した。
【0087】
SEM写真は、UBM粒を伴う(図9)及び伴わない(図8)MPEG−PLGA足場を示している。写真は250という倍率で足場の上面で撮影される。SEM写真は、Danish technological institute(2005−160)で撮影された。
【0088】
実施例7:ECM粒子を保持する足場内の3次元内皮成長及び分化
1.5%溶液となるまで1,4−ジオキサン中にメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000−30,000、L:G 1:1)を溶解させた。UBM含有試料については、10mlの重合体溶液(23%w/wの乾燥物質)に0.045gの無滅菌UBMを添加し、高速混合し、7×7cmのモールドの中に注ぎ込んだ。溶液を−5℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして約16時間20℃で凍結乾燥した。その後試料を15時間、デシケータ内で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0089】
臍帯由来の初代ヒト内皮細胞を、MPEG−PLGA足場及び23%(w/w)のUBMを含有する足場の表面上で初代ヒト真皮繊維芽細胞と同時培養した。6〜10日間明確な内皮成長培地内に沈めた状態で構成体を培養し、その後これらをエアリフトしさらに9日間培養した。培養最終日に、構成体を4%のホルマリン緩衝液で定着させ、2等分し、パラフィン包埋した。
【0090】
CD31/PECAM(血小板内皮細胞培養分子)の免疫組織化学的ペルオキシターゼ染色により、内皮細胞を5μmの切片上で視覚化した。繊維芽細胞を同定するために、平行な切片を、ヘマトキシリン対比染色を組合せたPECAMペルオキシダーゼで染色した。内皮成長及び分化は繊維芽細胞性能により影響されることから、全ての足場材料を2つの異なる繊維芽細胞集団を用いてテストしたが、異なる結果をもたらしてはいなかった。
【0091】
全てのMPEG−PLGA足場が、繊維芽細胞及び内皮成長を支援している。全てのMPEG−PLGA足場の体積全体を通して繊維芽細胞が発見された。UBM粒子が均質に分布し、足場は培養中無傷状態にとどまる。しかしながらMPEG−PLGA足場上での内皮細胞及び繊維芽細胞の培養は内皮表面成長のみをもたらし、内皮細胞は足場の上面の隣接する繊維芽細胞により産生されたマトリックスの内部で増殖する。UBM粒子を添加することにより、足場のより深い層内での繊維芽細胞及び内皮成長が促進され、内皮細胞は毛細血管様の形態を採用する。内皮細胞は、UBM粒子内へと移動するのではなくむしろその表面に沿って誘導される。従って、足場内にUBM粒子を内含させることで、内皮成長及び分化のきわめて確かな改善が導かれることがわかる。異なる繊維芽細胞集団は、異なる結果をもたらしていなかった。
【0092】
MPEG−PLGA足場(図10)及びMPEG−PLGA中の23%(w/w)のUBM(図11)は、成長がUBM粒子を保持する深層内へのものである、MPEG−PLGA足場の表面内での内皮細胞の成長を示している(内皮は赤色に染色される(黒色で示されている)−繊維芽細胞は見えない)。
【0093】
内皮細胞の毛細血管様の形態は、23%(w/w)のUBMを保持するMPEG−PLGA足場のより深い層の中に見られた(図12)。これらの構造は、MPEG−PLGA足場内には見られなかった。
【0094】
実施例8:異なる濃度のECM粒子を含有する足場の物理的及び機械的特性
調製された試料:
− ゼラチンマトリックスを伴う、フリーズドライされた足場、
− ゼラチンマトリックスと40w/wのUBM粒子を伴う、フリーズドライされた足場、
− ゼラチンマトリックスと80w/wのUBM粒子を伴うフリーズドライされた足場。
【0095】
タイプAのブタの皮膚由来のゼラチン(PG−882−6Gelita)を、1%溶液となるまで、milli−Q水及びt−BuOH(95:5)中で溶解させた。UBM含有試料については、攪拌しながらUBMを溶液に加えた(40%w/w;0.033g/5ml、80%w/w:0.2g/5ml)。5mlのUBM含有ゼラチン溶液をモールド(D=5cm)内に注ぎ込んだ。溶液の入ったモールドを2.5時間+5℃に置き、その後−20℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして100時間20℃で凍結乾燥した。その後15時間120℃の真空オーブン内で試料を架橋させた。
【0096】
調製された試料:
− PLGAマトリックスを伴う、フリーズドライされた足場、
− PLGAマトリックスと40w/wのUBM粒子を伴う、フリーズドライされた足場、
− PLGAマトリックスと80w/wのUBM粒子を伴うフリーズドライされた足場。
【0097】
1.5%溶液となるまで1,4−ジオキサン中にメトキシ−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(Mn2,000−30,000、L:G 1:1)を溶解させた。UBM含有試料については、10mlの重合体溶液(40%w/w;0.1g/10ml、80%(w/w);0.6g/10ml)にUBMを添加し、高速混合し、7×7cmのモールドの中に注ぎ込んだ。溶液を1,4−ジオキサン層上にて−5℃で凍結させ、5時間−20℃で、そして約100時間20℃で凍結乾燥した。その後試料を15時間、デシケータ内で陰圧状態(油圧ポンプ)に置いた。
【0098】
物理的特性及び機械的試験
マトリックス材料及び添加されるUBMの量に応じて異なる物理的及び機械的特性を達成することができる。
・ 添加されたUBMの量に伴い気孔率は減少し、かくして密度は増大する。
・ マトリックスが疎水性である場合、UBMは大きい湿潤性を提供することになる。
・ ゼラチン足場は、少なくとも最高40%(w/w)まではその引張り強度を保持し、その後、それは減少し、一方、PLGA足場はUBM粒子によってわずかに強化される。フリーズドライプロセスと組合わさって低い材料濃度は低い引張り強度を与え、このことは当該例中の試料についてもあてはまる。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
高さはノギスで測定される。
【0102】
密度は以下の式から計算される:
密度=質量/(面積×高さ)
【0103】
気孔率は以下の式から計算される:
気孔率=(重合体密度−試料密度)/重合体密度。
【0104】
重合体密度は、添加されるUBM(3mg/cm3)に応じて重量調整される。
【0105】
湿潤性は、水滴が試料により完全に吸収される時間として計算され、写真監視される。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
引張り試験は、Stable Micro Systems社製Texture Analyzer上で実施された。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代繊維芽細胞が播種されたゼラチン足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図2】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代繊維芽細胞が播種されたMPEG−PLGA足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図3】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代ケラチノサイトが播種されたゼラチン足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図4】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代ケラチノサイトが播種されたMPEG−PLGA足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図5】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代臍細胞内皮細胞が播種されたゼラチン足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図6】3つの異なる濃度(細胞/cm2)でのヒト初代臍細胞内皮細胞が播種されたMPEG−PLGA足場のLDH測定値。棒は、Absで測定された3日目の成長を表わす。
【図7】MPEG−PLGA足場内のECM粒子の分布のデジタル画像である。
【図8】MPEG−PLGA足場のSEM写真(倍率250倍)である。
【図9】40%のECM粒子を含有するMPEG−PLGAのSEM写真(倍率250倍)である。
【図10】MPEG−PLGA足場内の内皮成長のデジタル画像である。
【図11】23%のECM粒子を含有するMPEG−PLGA中の内皮成長のデジタル画像である。
【図12】足場のより深い層内の毛細血管様の形態の拡大図を示す、23%のECM粒子を含有するMPEG−PLGA内の内皮成長のデジタル画像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECMの不連続領域の濃度が20%(w/w)から60%(w/w)の間にある、ECMの不連続領域を含んで成る仮連続足場。
【請求項2】
生分解性である、請求項1に記載の仮足場。
【請求項3】
ECMの不連続領域が均質に分布させられている、請求項1又は2に記載の仮足場。
【請求項4】
生分解性足場がタンパク質含有物質で作られている、請求項1〜3のいずれかに記載の仮足場。
【請求項5】
生分解性足場が多糖類含有物質で作られている、請求項1〜3のいずれかに記載の仮足場。
【請求項6】
生分解性足場が合成重合体含有物質で作られている、請求項1〜3のいずれかに記載の仮足場。
【請求項7】
生分解性足場が請求項4〜6に記載される材料のいずれかの組合せで作られている、請求項1〜6のいずれかに記載の仮足場。
【請求項8】
相互連結された開放気孔を有する請求項1〜7のいずれかに記載の仮足場。
【請求項9】
0.1〜8mmの厚みを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の仮足場。
【請求項10】
製品が滅菌済みであることの表示をパッケージに付されて、足場がバクテリアタイト(bacterial tight)な状態で包装されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の仮足場。
【請求項1】
ECMの不連続領域の濃度が20%(w/w)から60%(w/w)の間にある、ECMの不連続領域を含んで成る仮連続足場。
【請求項2】
生分解性である、請求項1に記載の仮足場。
【請求項3】
ECMの不連続領域が均質に分布させられている、請求項1又は2に記載の仮足場。
【請求項4】
生分解性足場がタンパク質含有物質で作られている、請求項1〜3のいずれかに記載の仮足場。
【請求項5】
生分解性足場が多糖類含有物質で作られている、請求項1〜3のいずれかに記載の仮足場。
【請求項6】
生分解性足場が合成重合体含有物質で作られている、請求項1〜3のいずれかに記載の仮足場。
【請求項7】
生分解性足場が請求項4〜6に記載される材料のいずれかの組合せで作られている、請求項1〜6のいずれかに記載の仮足場。
【請求項8】
相互連結された開放気孔を有する請求項1〜7のいずれかに記載の仮足場。
【請求項9】
0.1〜8mmの厚みを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の仮足場。
【請求項10】
製品が滅菌済みであることの表示をパッケージに付されて、足場がバクテリアタイト(bacterial tight)な状態で包装されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の仮足場。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−513207(P2009−513207A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537105(P2008−537105)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067837
【国際公開番号】WO2007/048831
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067837
【国際公開番号】WO2007/048831
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】
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