説明

EGFレセプターシグナル伝達の調節のためのTACEまたはアンフィレグリンの阻害

【課題】細胞中のGタンパク質またはGタンパク質−結合レセプター介在シグナル伝達による、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化(以下トランス活性化)の調節のための方法の提供。
【解決手段】TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリン(以下TACE等)の活性を阻害する、トランス活性化の調節のための方法。当該TACE等の活性を阻害する方法は、アンチセンス分子、リボザイムまたはRNAi分子を、TACE等のmRNAに適用する、抗体または抗体フラグメントをTACE等に対して直接的に適用する、TACE等の低分子量インヒビターを適用する等を含む。当該方法は、高増殖性疾病、癌等のトランス活性化によって引き起こされるか、あるいはこれに関連する疾病の予防または治療に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞または生物中におけるGタンパク質またはGタンパク質−結合レセプター(GPCR)介在シグナル伝達による、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化の調節に関し、この場合、これは、メタロプロテアーゼTACE/ADAM17の活性および/またはレセプターチロシンキナーゼリガンドであるアンフィレグリンの活性の阻害を含む。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質−結合レセプター(GPCR)とEGFRシグナル系との間の伝達は、増殖因子前駆体proHB−EGF(1−3)の細胞表面タンパク分解を含む。しかしながら、ヒト癌細胞におけるEGFRシグナルトランス活性化の分子的機序については、あまり知られていない。
【0003】
Gタンパク質結合レセプター(GPCRs)とEGFRとの間のレセプター間伝達は、繊維芽細胞、ケラチノサイトおよび平滑筋細胞を含む種々の細胞型において生じる(4)。細胞のGPCRアゴニストでの処理によって、EGFRの活性およびチロシンリン酸化が生じ、引き続いてEGFR−特異的、細胞内シグナルの発生を導く(5)。EGFRトランス活性化シグナルの急速なキネティクスおよびEGFRリガンドの放出がGPCR刺激後には検出できないといった事実から、EGFRトランス活性化の機序は、細胞間構成要素上でのみ応答するものであると提案された(5,6)。これとは対照的に、EGFRトランス活性化の機序概念は、GPCR刺激細胞の細胞表面で、ヘパリン−結合EGF−様増殖因子(HB−EGF)のタンパク分解的放出を含む(1)。HB−EGF、ならびにトランスフォーミング増殖因子α(TGFa)およびアンフィレグリン(AR)は、EGF−様リガンドファミリーに属するものであって、この場合、これらは、直接的にEGFRを活性化する。これらの分子は、膜貫通前駆物質として合成され、かつ、タンパク分解により、可溶性および拡散性増殖因子を生じる(7)。EGFRシグナルトランス活性化のHB−EGF−依存的機序は、血管平滑筋細胞(8)、心臓内皮細胞(9)および心筋細胞(10)におけるGPCRマイトジェンシグナル化における研究によってさらに試験的サポートが得られている。重要であるのは、最近のデータが、病理生物学的プロセスの病因、たとえば嚢胞性繊維芽症(3)、心臓肥大(2)および胃腸肥大(11)でのEGFRシグナルトランス活性化経路を包含していることである。さらに、増加した証拠としては、異所のGPCRシグナルとヒト癌の増殖および進行との間の直接的相互関係を立証するものである(12)。近年になって、GPCR−EGFRのクロストーク経路が、頭部および頸部の扁平上皮細胞癌(HNSCC)細胞において広範囲に確立され、かつGPCRアゴニスト、たとえばLPAおよびカルバコールが、HNSCC細胞の増殖および遊走挙動を、EGFRトランス活性化を介して調整することが証明された。したがって、分子的機序の基礎をなすEGFRシグナルトランス活性化の解明は、癌腫、たとえば扁平上皮細胞癌の予防および治療のための新規ストラテジーを導きうるものといえる。
【0004】
ここで、GPCRアゴニストであるリソホスファチジル酸(LPA)またはカルバコールによって刺激された扁平上皮細胞癌細胞により、特に、メタロプロテアーゼ依存性分解およびEGFRリガンドアンフィレグリン(AR)の放出が生じることが証明された。さらに、siRNA干渉によるAR遺伝子サイレンシングまたは中和抗体によるAR生物学的活性の阻害は、GPCR−誘発EGFRチロシンリン酸化、下流のマイトジェンシグナル発生、Akt/PKBの活性化、細胞増殖および遊走を阻害する。さらに、扁平上皮細胞癌細胞中での、ドミナントネガティブ突然変異体の発現またはRNA干渉によるメタロプロテアーゼ−分解TACE/ADAM17の遮断が、GPCR刺激されたAR放出およびEGFR依存性細胞応答を抑止する。したがって、TACEおよび/またはARは、GPCR介在型シグナル化のエフェクターとして機能してもよいことから、細胞性受容クロストークネットワークの重要な要素とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Amour, A. et al. TNF-alpha converting enzyme (TACE) is inhibited by TIMP-3. FEBS Lett 435,39-44. (1998).
【非特許文献2】Asakura, M. et al. Cardiac hypertrophy is inhibited by antagonism of ADAM12 processing of HB-EGF: metalloproteinase inhibitors as a new therapy. Nat Med 8,35-40. (2002).
【非特許文献3】Bar-Sagi, D. & Hall., A. Ras and Rho GTPases: a family reunion. Cell 103,227-38. (2000).
【非特許文献4】Carpenter, G. Employment of the epidermal growth factor receptor in growth factor-independent signaling pathways. J Cell Biol 146,697- 702. (1999).
【非特許文献5】Cook, P. W. et al. A heparin sulfate-regulated human keratinocyte autocrine factor is similar or identical to amphiregulin. Mol Cell Biol 11, 2547-57. (1991).
【非特許文献6】Daub, H. , Weiss, F. U., Wallasch, C. & Ullrich, A. Role of transacti- vation of the EGF receptor in signalling by G-protein-coupled receptors. Nature 379,557-60. (1996).
【非特許文献7】Diaz-Rodriguez, E. , Montero, J. C., Esparis-Ogando, A. , Yuste, L. & Pandiella, A. Extracellular Signal-regulated Kinase Phosphorylates Tumor Necrosis Factor alpha-converting Enzyme at Threonine 735: A Potential Role in Regulated Shedding. Mol Biol Cell 13,2031-44.(2002)
【非特許文献8】Eguchi, S. , Dempsey, P. J. , Frank, G. D., Motley, E. D. & Inagami, T. Activation of MAPKs by angiotensin Il in vascular smooth muscle cells. Metalloprotease-dependent EGF receptor activation is required for activation of ERK and p38 MAPK but not for JNK. J Biol Chem 276, 7957-62. (2001).
【非特許文献9】Elbashir, S. M. et al. Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells. Nature 411, 494-8. (2001).
【非特許文献10】Faure, M. , Voyno-Yasenetskaya, T. A. Bourne, H. R. cAMP and beta gamma subunits of heterotrimeric G proteins stimulate the mitogen- activated protein kinase pathway in COS-7 cells. J Biol Chem 269, 7851-4. (1994).
【非特許文献11】Fujiyama, S. et al. Angiotensin AT (1) and AT (2) receptors differentially regulate angiopoietin-2 and vascular endothelial growth factor expression and angiogenesis by modulating heparin binding-epidermal growth factor (EGF) -mediated EGF receptor transactivation. Circ Res 88,22-9. (2001).
【非特許文献12】Gschwind, A., Prenzel, N. & Ullrich, A. Lysophosphatidic Acid-induced Squamous Cell Carcinoma Cell Proliferation and Motility Involves Epidermal Growth Factor Receptor Signal Transactivation. Cancer Res 62,6329-6336. (2002).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第一に、細胞中のGタンパク質またはGタンパク質結合レセプター介在シグナル伝達による、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化を調整するための方法に関し、この場合、この方法は、メタロプロテアーゼTACE/ADAM17の活性および/またはレセプターチロシンキナーゼリガンドであるアンフィレグリンの活性の阻害を含む。
【0007】
本発明によれば、用語「阻害」は、好ましくは「特異的」阻害に関し、その際、TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの活性は選択的に阻害され、すなわち、他のメタロプロテアーゼ、たとえばADAM12または他のレセプターチロシンキナーゼリガンド、たとえばHB−EGFの活性をあまり阻害しない。TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの選択的阻害によって、レセプターチロシンキナーゼトランス活性化の高い特異的分解が達成されてもよく、これらは、好ましくない副作用の発生が減少されうることから、製薬学的適用のために重要である。
【0008】
さらに、用語"阻害"は、好ましくは"直接的な"阻害に関し、その際、インヒビターは、直接的にTACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンと結合するか、あるいは、これらをコードする核酸分子と結合する。しかしながら、本発明はさらに、"間接的な"阻害を包含し、その際、インヒビターは、直接的にTACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンと結合しないが、しかしながら、これらの前駆体または代謝物質、特にアンフィレグリン前駆体であるプロアンフィレグリンと結合する。
【0009】
用語"活性"は、好ましくは、TACE/ADAM17によるプロアンフィレグリンの分断および/またはレセプターチロシンキナーゼの活性化、たとえばアンフィレグリンによるEGFRの活性化に関する。本発明のTACE/ADAM17インヒビターは、好ましくは、セレプターチロシンキナーゼリガンドであるアンフィレグリンの分断および放出の阻害を可能にする。本発明のアンフィレグリンインヒビターは、好ましくは、アンフィレグリンの生物学的活性、特にEGFRチロシンキナーゼリン酸化、下流のマイトジェンシグナル発生、Akt/PKBの活性、細胞増殖および/または遊走の抑制が可能である。
【0010】
本発明の他の態様は、Gタンパク質またはGタンパク質結合レセプター介在シグナル伝達による、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化により生じるか、あるいはこれに随伴して生じる、疾病の予防および/または治療のための、メタロプロターゼTACE/ADAM17のインヒビターおよび/またはレセプターチロシンキナーゼリガンドアンフィレグリンのインヒビターの使用に関する。このような型の疾病の存在は、mRNAレベルでの、Gタンパク質および/またはGPCR発現の測定によって(cDNAアレイ分析、SAGE、ノーザンブロット等)および/またはタンパク質レベルでの測定によって(ウエスタンブロット分析、イムノフルオレセンス顕微観察、in situハイブリダイゼーション技術等)定めることができる。さらに、このような疾病の型の存在は、ゲノムおよび/またはGタンパク質またはGPCRsをコードするmRNA分子中における活性化された突然変異体の発生および/またはウイルス性コード化GPCRsの存在を測定することによって定めることができる。さらに、GPCRアゴニスト、たとえばLPAおよび/またはアンフィレグリンの高いレベルは、血清中および/または疾病に影響する組織中で測定することができる。このような疾病の型は、増加したレセプターチロシンキナーゼ発現とは無関係であることが示された。
【0011】
たとえば、疾病は高増殖性疾病、たとえば癌、たとえば扁平上皮細胞癌または他の疾病、たとえば、高増殖性皮膚疾患、たとえば乾癬であってもよい。
【0012】
TACE/ADAM17およびアンフィレグリンの活性は、核酸レベルにおいて、たとえば遺伝子レベルまたは転写レベルにおいて阻害されていてもよい。遺伝子レベルでの阻害は、部分的または完全な遺伝子の不活性化、すなわち遺伝子分裂による不活性化を含んでもよい。他方では、阻害は転写レベルで、たとえばアンチセンス分子、たとえばDNA分子、RNA分子または核酸類似体、リボザイム、たとえばRNA分子または核酸類似体またはRNA干渉能を有するsiRNA分子(RNAi)、たとえばRNA分子または核酸分子を、直接的にTACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンmRNAに対して適用することによって生じうる。TACE/ADAM17の発現を阻害するアンチセンス分子は、たとえばUS特許6180403で記載されている(この場合、これらは、本明細書中で参考のために引用されている)。
【0013】
さらに、TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの活性は、タンパク質レベルで阻害することができ、この場合、これらは、たとえば、結果としてTACE/ADAM17および/またはアンフィレグリン活性の特異的阻害を生じる化合物を適用することによって阻害することができる。タンパク質レベルでの阻害は、たとえば、抗体または抗体フラグメントを、直接的にTACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンに対して適用することを含んでいてもよい。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、組換え抗体、たとえば一本鎖抗体または少なくとも1個の抗体結合部位を含むこのような抗体のフラグメント、たとえばタンパク質分解抗体フラグメント、たとえばFab、Fab’またはF(ab’)2フラグメントまたは組換え抗体フラグメント、たとえば、scFvフラグメントであってもよい。治療目的のために、特にヒトの治療のために、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体の適用は特に好ましい。
【0014】
抗体または抗体フラグメントは、TACE/ADAM17のメタロプロテアーゼ−領域に対して、あるいは、分子の他の部分に対して直接的に適用されてもよい。抗体または抗体フラグメントは、選択的に、TACE/ADAM17の成熟形またはTACE/ADAM17の前駆体を、免疫沈降によって示すように認識することができる。二者択一的に、抗体または抗体フラグメントは、TACE/ADAM17の成熟形および前駆体の双方を認識することができる。
【0015】
モノクローナル抗体は、公知方法によって、たとえばKoehlerら(Nature 256(1975), 495-497)、Coleら(Mol. Cell. Biol. 62 (1984), 109-120)またはKozborら(J. Immunol.Meth. 81 (1985), 31-42)によって記載された、ハイブリドーマ技術によって製造することができる(これらは、本明細書中において参考のために示す)。キメラまたはヒト化抗体は、Morrisonら(Proc. natl. Acad. Sci. USA 81 (1984), 6851-6855)、Neubergerら(Nauture 312 (1984), 604-608)、Takedaら(Nature 314 (1985), 452-454)、Jonesら(Nature321(1986),522-525)、Riechmannら(Nature 322 (1988), 323-327)、Verhoeyenら(Science 239 (1988), 1534-1536)またはQueenら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989), 10029-10033)に記載された技術によって製造することができる(この場合、これらの文献は参考のために示す)。抗体または抗体フラグメントを製造するための他の方法は、Burton(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991), 11120-11123)、Orlandiら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989), 3833-3837)、Winterら(Nature 349 (1991), 293-299)またはHuseら(Science 254 (1989), 1275-1281)によって記載されている(この場合、これらの文献は、参考のために示す)。
【0016】
さらに、TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの低分子量のインヒビターを使用することができる。TACE/ADAM17インヒビターの例は、スルホン酸またはホスフィン酸誘導体、たとえばスルホンアミド、スルホンアミドヒドロオキサム酸、ホスフィン酸アミドヒドロオキサム酸であり、たとえばWO98/16503、WO98/16506、WO98/16514、WO98/16520、Mac Phersonら(J. Med. Chem. 40, (1997), 2525)、Tamuraら(J.Med. Chem. 41 (1998), 690)、Levinら(Bioorg. & Med. Chem. Lett. 8 (1998), 2657)、Pikulら(J.Med. Chem. 41 (1998), 3568)、WO97/18194、EP−A−0803505、WO98/08853、WO98/03166およびEP−A−1279674に記載されている(これらの文献は、参考のために示す)。他のインヒビターは、以下に示すスクリーニング法によって同定することができる。
【0017】
治療目的のために、医薬は、付加的に製薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤および/またはアジュバントを含む医薬組成物の形で投与される。
【0018】
本発明への使用に適した医薬組成物は、活性成分が、その意図される目的を達成するための有効量で含まれる組成物を含む。治療的有効量は、患者における症状の改善または延命を生じる化合物量を意味するものと解される。このような化合物の毒性および治療的有効性は、細胞培養または実験動物での標準的な製薬学的方法によって測定することができ、この場合、これらは、たとえばLD50(全対象の50%が致死する量)およびED50(全対象の50%において治療的有効性が認められる量)によって測定することができる。本発明の方法において使用される任意の化合物に関して、治療的有効量は、細胞培養アッセイから最初に算定することができる。たとえば、投与量は、動物モデル中で、細胞培養において定められたIC50を含む、循環する濃度範囲を達成するように処方することができる(すなわち、それぞれ、増殖因子レセプター活性の半最大値(half-maximal)を達成する試験化合物の濃度)。このような情報は、ヒトにおいて使用可能な容量をより正確に定めるために使用することができる。毒性と治療効果との間の投与量比は、治療インデックスであり、かつLD50とED50との比として示すことができる。高い治療インデックスを示す化合物が好ましい。正確な処方、投与経路および投与量は、それぞれ医師により患者の状態から選択することができる(たとえば、Finglら、1975、"The pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1, p.1)。
【0019】
投与量および投与間隔は、レセプター調節作用を維持するためにか、あるいは最少有効濃度(MEC)のために十分な活性部分の血漿レベルを提供するために、別個に調整することができる。MECは、それぞれの化合物に関して可変であるが、しかしながらin vitroデータ、たとえば、ここに記載されたアッセイを用いてのレセプターの50〜90%阻害を達成するために必要な濃度から算定することができる。化合物は、時間の10〜90%、好ましくは30〜90%および最も好ましくは50〜90%に亘って、MECの上廻る血漿レベルを維持する処方を用いて投与しなければならない。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴および投与経路に依存しうる。局所適用または選択的投与の場合には、薬剤の有効な局所的濃度は、血漿濃度に関連するものではない。
【0020】
勿論、投与された組成物の正確な量は、治療された患者、患者の体重、症状の重症度、投与方法および担当医師の判断に依存することができる。抗体または治療的に活性の核酸分子および他の化合物に関しては、たとえば0.001〜100mg/kg、特に好ましくは0.01〜10mg/kg/日の日用量が適している。
【0021】
適した投与経路は、たとえば、経口、直腸、経粘膜、または腸管投与を含み;非経口投与、この場合、これらは、筋肉内、皮下、脊髄内注射、ならびにクモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内、腹膜内、鼻腔内、または眼球内注射を含んでいてもよい。
【0022】
二者択一的に、化合物は、全身的投与法ではなくむしろ局所において投与されてもよく、たとえば、化合物の直接的な固体癌への注入、しばしばデポー処方または一定の放出処方であってもよい。
【0023】
さらに、薬剤は、標的化された薬剤運搬系の形で投与されてもよく、たとえば腫瘍特異的抗体で被覆されたリポソームの形で投与されてもよい。リポソームは、標的化し、かつ腫瘍によって選択的に取り込まれうる。
【0024】
本発明の他の態様は、Gタンパク質またはGタンパク質結合レセプター介在シグナル伝達によるレセプターチロシンキナーゼトランス活性化の調節因子を同定するための方法であり、この場合、これらの方法は、試験化合物が、TACE/ADAM17の活性および/またはアンフィレグリンの活性を阻害可能であるか否かについて測定するものである。この方法は、スクリーニング方法として適しており、たとえば、Gタンパク質シグナル伝達の調節を可能にする新規化合物または化合物群を同定するためのハイスループットスクリーニング法である。さらに方法は、化合物の製薬学的効果および/または副作用を特徴付けるための有効な方法として適している。方法は、単離されたタンパク質、細胞抽出物、組換え細胞または遺伝子導入された非−ヒト動物の使用を含む。組換え細胞または遺伝子導入された非−ヒト動物は、好ましくは、相当する野生型細胞または動物と比較しての改変されたTACE/ADAM17および/またはアンフィレグリン発現を示す。
【0025】
適したレセプターチロシンキナーゼの例は、EGFRおよびEGFRファミリーの他の群、たとえばHER2、HER3またはHER4、PDGFR、血管内皮増殖因子レセプターKDR/Flk−1、Trkレセプター、FGFR−1またはIGF−1レセプターであるが、しかしながら、他の型の増殖因子レセプター、たとえばTNFレセプター1、TNFレセプター2、CD30およびIL−6レセプターは、Gタンパク質/GPCR介在シグナル伝達のための標的である。
【0026】
さらに、本発明は、以下の図および実施例によって説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】A:EGFRシグナルトランス活性化を示す図、B:EGF様前駆体発現のフローサイトメトリー分析を示す図、C:proARのLPA−誘導タンパク質分解プロセッシングを示す図、D:ARのGPCR−誘導タンパク質分解放出を示す図。
【図2】A:RNA干渉(RNAi)によるEGF様増殖因子前駆体発現の遮断を示す図、B.EGFRチロシンリン酸化含量に関するアッセイを示す図、C.LPA−誘導による細胞遊走のためのAR要求性を示す図、D:抗AR−中和抗体およびヘパリンのGPCR−誘導EGFRおよびSHCチロシンリン酸化上での効果を示す図、E:in vitroでのSHCを用いてのGrb2の結合を示す図、F:GPCR−誘導ERK/MARK活性およびAkt/PKBリン酸化を示す図、G:LPA−誘導DNA合成上のAR阻害の効果を示す図。
【図3】A:HNSCC細胞系においてTACEの発現を示す図、B:EGFR−シグナルトランス活性化阻害を示す図、C:レトロウイルス遺伝子導入後のSCC−9細胞中の、野生型およびドミナントネガティブTACEまたはHA−タグADAM12の発現を示す図、D.フローサイトメトリー分析およびAR ELISA測定を示す図、E:GPCR刺激されたEGFR−シグナルトランス活性化上のドミナントネガティブTACEの効果を示す図。
【図4】A:TACE siRNAによる内在性TACE発現の遮断を示す図、B:TACEノックダウンによる細胞表面上でのproARの堆積を示す図、C:TACEを要求するEGFR−シグナルトランスミッションを示す図、D:LPAに対して応答する扁平上皮細胞癌細胞運動性を示す図。
【図5】メタロプロテアーゼ−領域に対して製造されたモノクローナル抗体を用いての成熟TACEタンパク質の免疫沈降を示す図。
【図6】内在性TACEタンパク質の免疫沈降を示す図。
【図7】モノクローナル抗体のTECE−結合のフローサイトメトリー分析を示す図。
【図8】TACE活性を必要とする、EGFRシグナル活性化を示す図。
【図9】TACE活性を必要とする、EGFRシグナルトランス活性化を示す図。
【0028】
図1 EGFRのGPCR刺激は、リガンド−依存性機序を含み、かつ、細胞表面からのAR放出が付随する。a:EGFRシグナルトランス活性化は、メタロプロテアーゼ活性およびEGFR細胞外領域を必要とする。SCC−9細胞は、マリンマステート(BB2516、10μM;20分)、抗−EGFR抗体ICR−3R(20μg/mL;60分)またはPTX(100ng/ML;18時間)でプレインキュベートされ、かつLPA(10μM)、カルバコール(Car、1mM)、EGF(7.5ng/mL)またはペルバナデート(PV、1mM)で3分間に亘って処理した。引き続き、細胞抽出物を抗−EGFR抗体タンパク質で免疫沈降(IP)させたものを、抗ホスホチロシン抗体でイムノブロットし(IB)、かつ抗−EGFR抗体で再度プローブした。b:EGF様前駆体発現のフローサイトメトリー分析。SCC−9細胞を捕集し、かつ表面に関してHB−EGF、TGFaまたはARを染色し、かつフローサイトメトリーにより分析した。コントロール細胞を、FITC−結合二次抗体のみでラベルした。c:proARのLPA−誘導タンパク質分解プロセッシング。SCC−9細胞を、バチマステート(BB94、10μM)またはPTXでプレインキュベートし、かつ、LPAまたはTPA(1μM)で5分に亘って刺激した。細胞を培養し、かつ細胞表面AR密度をフローサイトメトリーにより分析した。d:ARのGPCR−誘導タンパク質分解放出。SCC−9細胞をバチマステートまたはビヒクルでプレインキュベートし、その後に、アゴニストを用いて120分に亘って刺激した。調整された培地を捕集し、かつ全AR量についてELISAにより分析した。それぞれのバーは、3重の値の平均値である(平均値±s.d.).。P<0.03 アゴニストとBB94+アゴニストとの差。
【0029】
図2 GPCR刺激は、EGFR−依存型シグナルおよび生物学的応答を誘発するためにARを必要とする。a:RNA干渉(RNAi)によるEGF様増殖因子前駆体発現の遮断。SCC−9細胞はsiRNAで、2日間に亘って培養されたproAR、proHB−EGFまたはproTGFαについて感染させ、かつ前記のようにRT−PCRによる遺伝子発現について分析するか、あるいは、b:LPAまたはカルバコールで刺激し、かつEGFRチロシンリン酸化含量に関してアッセイした。c:LPA−誘導による細胞遊走に関するAR要求性。SiRNA−感染SCC−9細胞を、化学誘引物質としてのファイブロネクチンに向かってのウェル間の遊走について分析した。それぞれのバーは、4重の値の平均値である(平均値±s.d.)。,P<0.001 コントロールsiRNA+LPAとproARsiRNA+LPA。d:抗AR−中和抗体およびヘパリンの、GPCR−誘導EGFRおよびSHCチロシンリン酸化上での効果。SCC−9細胞を、抗−AR抗体(aAR Ab、50μg/mL、60分)またはヘパリン(100ng/mL、15分)で予め処理し、かつ、3分に亘って(EGFR)または5分に亘って(SHC)前記のように刺激した。沈降したEGFRおよびSHCを、抗ホスホチロシン抗体でイムノブロットし、その後に同様のフィルターを、抗EGFRおよび抗SHC抗体でそれぞれ再度プロービングした。e:in vitroでのSHCを用いてのGrb2の結合。SCC−9細胞をインヒビターでプレインキュベートし、かつ前記のように5分に亘って刺激した。ライセートを、GST−Grb−2融合タンパク質またはGSTのみでインキュベートした。タンパク質を、モノクローナル抗SHC抗体でイムノブロットした。f:ARは、GPCR−誘導ERK/MARK活性およびAkt/PKBリン酸化のために必要とされる。SCC−9またはSCC−15細胞を、インヒビターでプレインキュベートし、かつ7分に亘って刺激した。リン酸化されたERK1/2を、全ライセートを抗−ホスホ−ERK抗体を用いてのイムノブロットによって検出した。同様のフィルターを、抗−ERK抗体で再度プローブした。3個の別個の試験からのERKリン酸化の定量的分析(平均値±s.d)。,P<0.05 LPAとインヒビター+LPAとの差異。Akt/Pkbの刺激。細胞ライセートを、抗−ホスホ−Akt/PKB抗体でのイムノブロットし、引き続いて同様のフィルターを、抗−Akt/PKB抗体を用いての再度プローブすることにより処理した。g:LPA−誘導DNA合成上のAR阻害の効果。SCC−15細胞を前記のようにインヒビターを用いて処理し、かつリガンドの存在下または不在下で、18時間に亘ってインキュベートした(LPA;AR、10ng/ml)。細胞をその後にH−チミジンでパルスラベルし、かつチミジンの取り込みを、液体シンチレーションカウンターにより測定した。定量的分析は、3個の独立した試験によりおこなった(平均値±s.d.)。,P<0.001 LPAとインヒビター+LPA。
【0030】
図3 ドミナントネガティブTACEは、GPCR−誘導AR放出およびEGFR−シグナル活性化を抑止する。a:TACEを、HNSCC細胞系において発現させる。TACEを、モノクローナルTACE/ADAM17抗体を用いてライセートから免疫沈降した。HEK−293細胞を、ポジティブコントロールとして役立つヒトTACEcDNAを用いて感染させた。b:Timp−3であってTimp−1ではないものは、EGFR−シグナルトランス活性化を阻害する。SCC−9細胞を、ヒトTimp−1またはTim−3をコードするレトロウイルスで感染させた。EGFR−活性を、前記に示すようにアゴニストで刺激した後に、イムノブロットにより測定した(左パネル)。Timp−1/3を有するC−末端VSV−tagの発現は、抗−VSV−抗体での全細胞ライセートをイムノブロットすることにより確認した(右パネル)。c:レトロウイルス遺伝子導入後のSCC−9細胞中の、野生型およびドミナントネガティブTACEまたはHA−タグADAM12の発現。全ライセートを前記のようにイムノブロットした。d.ドミナントネガティブTACEは、LPA−誘導proAR分断(左パネル)および細胞培地中へのAR放出(右パネル)を、フローサイトメトリー分析およびAR ELISAそれぞれによって測定した。e:GPCR刺激されたEGFR−シグナルトランス活性化上のドミナントネガティブTACEの効果。
【0031】
図4 TACEsiRNAは、EGERシグナルトランスミッションおよび細胞遊走を、GPCRアゴニストにより阻害した。a:TACE siRNAは、内在性TACE発現を遮断した。SCC−9細胞を、TACEまたはADAM12 siSNAを用いてトランスフェクトした。遺伝子発現を、RT−PCR(左パネル)またはポリクローナル抗−TACE抗体を用いてのイムノブロット(右パネル)により分析した。b:TACEノックダウンは、細胞表面上でのproARの堆積を示す。siRNA−感染SCC−9細胞は、AR細胞表面に関する含量をFACSによって分析した。c:EGFR−シグナルトランスミッションは、GPCR活性上で、TACEを必要とした。SCC−9細胞は、siRNAを用いてトランスフェクトし、かつ前記のようにアゴニストを用いて刺激した。EGFR、SHC、ERKおよびAktの活性を、前記のように測定した。d:LPAに対して応答する扁平上皮細胞癌細胞運動性は、TACEに依存する。siRNA−トランスフェクトされたSCC−9細胞を、LPAまたはARを用いて処理し、かつトランスウェル遊走アッセイ中で分析した。
【0032】
図5 メタロプロテアーゼ−領域に対して製造したモノクローナル抗体を用いての成熟TACEタンパク質の免疫沈降。TACE−ヘマグルチニン(HA)を一時的に発現するHEK−293細胞を、24時間に亘って血清枯渇させ(serum-starved)、TritonX−100溶解バッファーで溶解し、この場合、このバッファーは、5μM BB94をメタロプロテーゼインヒビターとして含有するものである。粗ライセート200μgを、5μg コントロールIgG(モノクローナル抗−HA抗体)または5μgのモノクローナル抗−TACE−抗体を用いての免疫沈降に使用した。その後に、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、タンパク質をニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。免疫沈降されたTACEタンパク質を、ポリクローナルTACE抗体を用いてのイムノブロットにより分析した(CHEMICON#19027)。
【0033】
図6 内在性TACEタンパク質の免疫沈降。SCC−9細胞は、24時間に亘って血清−枯渇にし、かつメタロプロテアーゼインヒビターとして5μMのBB94を含有するTritonX−100溶解バッファーを用いて溶解した。200μgの粗ライセートを、5μgコントロールIgG(モノクローナル抗−HA抗体)または5μgモノクローナル抗−TACE抗体を用いての免疫沈降に使用した。引き続いて、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動をおこない、タンパク質をニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。免疫沈降されたTACEタンパク質を、TACE抗体を用いての免疫沈降により分析した(ポリクローナル抗体 CHEMICON 19027)。
【0034】
図7 モノクローナル抗体のTECE−結合のフローサイトメトリー分析。SCC9−細胞を播種し、24時間に亘って増殖させた。回収した後に、細胞をTACEのメタロプロテアーゼ領域に対して生じるモノクローナルTACE抗体で、45分に亘って染色した。リン酸塩緩衝液(PBS)での染色の後に、細胞をフィコエリトリン(PE)−結合二次抗体を用いて45分に亘ってインキュベートし、かつ再度PBSで洗浄した。細胞をBecton Dickinson FACS calibur Fow cytometer上で分析した。
【0035】
図8 EGFRシグナル活性化は、TACE活性を必要とする。血清枯渇のSCC9細胞を30分に亘って、前記に示したように5μgコントロールIgG(モノクローナル抗HA−抗体)または5μg モノクローナルTACE抗体を用いてプレインキュベートし、かつLPA(10μM)で3分間に亘って処理した。溶解の後に、EGFRを、抗−EGFR抗体を用いて免疫沈降した(IP)。チロシン−リン酸化EGFRを、抗−ホスホチロシン(αPY)でのイムノブロット(IB)により検出し、その後に、同様のフォルターを、抗−EGFR抗体を用いて再度プロービングした。
【0036】
図9 EGFRシグナルトランス活性化は、TACE活性を必要とする。血清−枯渇のSCC9細胞を、30分に亘って前記に示したように、5μgコントロールIgG(モノクローナル抗−HA抗体)または5μgモノクローナルTACE抗体を用いてプレインキュベートし、かつLPA(10μM)で3分に亘って処理した。溶解後に、EGFRを、抗−EGFR抗体を用いて免疫沈降した(IP)。チロシン−リン酸化EGFRを、抗−ホスホチロシン(αPY)抗体でイムノブロット(IB)することによって検出し、その後に同様のフィルターを、抗EGFR−抗体を用いて再度プロービングした。
【0037】
例1 扁平上皮細胞癌中のEGFRシグナルトランス活性化。TACEによるプロアンフィレグリン分断の要求性。
【0038】
1.方法
1.1 細胞培養、プラスミドおよびレトロウイルストランスフェクション
すべての細胞系(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を、取り扱い説明書にしたがって、規定通りに増殖させた。HEK−293細胞のトランスフェクションを、従来知られているように、リン酸カルシウム共沈により実施した(1)。抗−アンフィレグリン(AR)、抗−HB−EGF中和抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN、PTX、ヘパリン(Sigma, St.Louis, MO)マリマステート(BB2516、Sugen Inc., South San Francisco, CA)、バチマステート(BB94, British Biotech, Oxford, UK)を血清枯渇細胞に、それぞれの増殖因子添加前に添加した。
【0039】
ADAM10、12、15および17をコードする完全長cDNAsは、PCRによって、ヒト胎盤cDNAライブラリーから増幅させ、かつ、pcDNA3(Invitrogen, Carlsbad, CA)およびpLXSNベクター(Clontech, Palo Alto, CA)中でサブクローニングした。ウイルスからの保護のために、プロ−およびメタロプロテアーゼ領域を欠失するドミナントネガティブプロテアーゼコンストラクトを、従来の方法で製造した(2.26)。すべてのプロテアーゼコンストラクトは、C−末端ヘマグルチニン(HA)tagを含み、抗−HAモノクローナル抗体を用いて検出可能であった(Babco, Richmond, CA)。両栄養性パッケージング細胞系Phoenixを、pLXSNレトロウイルス発現プラスミドを用いて、従来知られているリン酸カルシウム/クロロキン法によりトランスフェクトした(29)。感染後24時間で、ウイルス性上清を回収し、かつサブコンフルエントなSCC−9細胞のトランスフェクションのために使用した(5x10細胞/6ウェルプレート)。
【0040】
1.2タンパク質分析
細胞を溶解し、かつタンパク質を従来の方法で免疫沈降した(13)。ウエスタンブロットを、標準的な方法で実施した。ヒトEGFR(108.1)およびSHC(1)ならびにGST−Grb2融合タンパク質(5)に対する抗体を、予め特徴付けした。ホスホチロシンを、4G10モノクローナル抗体(UBI, Lake Placid, NY)を用いて検出した。ポリクローナル抗−ホスホ−p44/p42(Thr202/Tyr204)MAPK抗体および抗−ホスホ−Akt(Ser473)抗体を、New England Biolabs(Beverly, MA)から入手した。ポリクローナル抗−Akt1/2および抗−ERK2抗体は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Curz, CA)、抗−TACE−抗体はChemicon(Harrow, UK)からのものである。
【0041】
1.3 フローサイトメトリー分析およびELISA
ACS分析を従来の方法で実施した(1)。細胞を、HB−EGF、AR(R&D Systems)またはTGFa(Oncogene, Boston, MA)に対するエクトドメイン−特異的抗体を用いて染色した。PBSで洗浄した後に、細胞をFITC−結合二次抗体を用いてインキュベートし、かつBacton Dickinson FACScalibur フローサイトメーター上で分析した。
【0042】
遊離ARの濃度は、サンドイッチELISA(R&Dシステム)によって、モノクローナル抗−AR キャプチャー抗体およびビオチン化ポリクローナル検出抗体を用いて測定した。スタンダードは、培地で希釈した組換えヒトARを使用した。統計的分析に関しては、スチューデントのt−検定を使用し、2群間のデータを比較した。値は、平均値±s.dとして少なくとも3重の試料で示した。P<0.05は、統計的な有意性が考慮された。
【0043】
1.4RNA干渉およびRT−PCR分析
内在遺伝子のターゲッティングのための21−ヌクレオチドsiRNAデュープレックス(Dharmacon Research, Lafayette, CO, USA)のトランスフェクションは、標的化された内在性遺伝子を、オリゴフェクタミン(Invitrogen)および4.2μg siRNAデュープレックス/6ウェルプレートを用いて、従来方法にしたがっておこなった(30)。トランスフェクトしたSCC−9細胞を、血清−枯渇にし、かつトランスフェクションの4日後にアッセイをおこなった。サイレンシングにおける標的遺伝子中の最も高い効率は、重要な遺伝子の種々の領域を標的化するsiRNAデュープレックスの混合物を用いて得られた。使用されたsiRNAの配列は以下のとおりであった。
【0044】

【0045】
標的遺伝子の特異的サイレンシングを、ウエスタンブロット(TACE)およびRT−PCR分析によって確認した。RNeasy Mini Kit(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて単離されたRNAは、AMV Reverse Transcriptase(Roche, Mannheim, Germany)を用いて逆転写した。PuReTaq Ready−To−Go PCRビーズ(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を、PCR増幅のために使用した。カスタムプライマー(Sigma Ark, Steinheim, Germany)はproAR、
【0046】

【0047】
である。PCR産物は、2.5%アガロースゲル上で電気泳動し、かつDNAをエチジウムブロマイド染色によって可視化した。生成物の位置およびその大きさは、100bpラダー(GIBCO, Gaithersburg, Maryland)を用いて、UVイルミネーション下で測定した。
【0048】
1.5 増殖および遊走アッセイ
H−チミジン取り込みアッセイ(5)のために、SCC−15細胞を、12ウェルプレート中に3x10細胞/ウェルで播種した。48時間に亘っての血清枯渇後に、公知方法のように細胞をプレインキュベートし、かつ刺激した。18時間後に細胞を、H−チミジン(1μCi/ml)で、4時間に亘ってパルスラベルし、かつチミジン取り込みを、三塩化酢酸沈降によって測定し、その後に、液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。
【0049】
細胞運動性の分析は、従来技術のように、モディファイトBoydenチャンバーを用いて従来の方法のようにしておこなった(13)。siRNAsでのトランスフェクトの24時間後に、SCC−9細胞を、ポリカーボネートメンブレン挿入物(6.5mm直径および8μm孔径)中に、1×10細胞/ウェルで、24−トランスウェルディッシュ中で、アゴニストの存在下または不在下に播種した。低いチャンバーを、化学誘引物質としてファイブロネクチン10μg/mlを含有する、FCS不含の標準培地で満たした。細胞は、36時間に亘って遊走可能であった。インキュベーションの後に、非遊走細胞を、メンブレンの上表面から除去した。下表面へ移動した細胞を固定化し、かつクリスタルバイオレットで染色した。染色した細胞を10%酢酸で可溶化し、570nmでの吸収をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0050】
2.結果
HNSCC細胞中での、GPCR−誘導トランス活性化シグナルは、広汎性メタロプロテアーゼインヒビター、たとえばバチマステート(BB94)(13)およびマリマステート(BB2516;図1A)に対して敏感である。EGFRシグナルトランス活性化のリガンド依存性機序との一貫性に関しては、我々は、モノクローナル抗−EGFR抗体ICR−3Rが、この場合、EGF−様の増殖因子が、レセプターの細胞外領域と結合するのを防ぎ(14)、SCC−9細胞中で、GPCR−およびEGF−誘導EGFRチロシンリン酸化を排除することが見出された(図1A)。これとは対照的に、ICR−3Rは、ペルバナデートによって、多くの細胞間タンパク質のチロシンリン酸化含量を増加させる、潜在的チロシンホスファターゼインヒビター(15)によって誘導された応答と干渉することはなかった。従来の報告では、GPCR−誘導EGFRチロシンリン酸化が、HB−EGF(1−3)のタンパク質分解を必要とすることが証明され、これによって、HB−EGFまたは他のEGF−様増殖因子が、ERGFRトランス活性化経路中で、頭部および頸部癌細胞中に含まれるのではないかということが示唆された。cDNA顕微鏡分析よって、HB−EGF、TGFαおよびAR mRNAsの、SCC−4、SCC−9、SCC−15およびSCC−25細胞中での発現が見出された(データは示されていない)。さらに、これらリガンドの発現および細胞表面の局在は、フローサイトメトリーによって、エクトドメイン特異的抗体を用いて確認した(図1B、SCC−9に関する典型的データ)。驚くべきことに、頭部および頸部癌細胞のLPA(10μM)またはホルボールエステルTPA(1mM)での処理は、この場合、これらは、発散(shedding)の一般的誘導物質として作用し、内因性proARの細胞表面含量を減少させる(図1C)。しかしながら、これらの細胞性内容物において、さらにLPAは、proTGFαまたはproHB−EGFのタンパク質分解を誘発しないが、その一方でTPAでの刺激は、双方のEGF−様増殖因子前駆体(データは示していない)とのエクトドメイン分断を生じる。これらの図は、LPA刺激が、HNSCC中のproARの発散を誘発する。さらに、バチマステート(10μM)は完全に、proARのLPA−誘発エクトドメイン分解を回避し、これよって、proAR発散のためのメタロプロテアーゼ活性要求性が確認された。Gi/Oファミリーの優性な百日咳毒(PTX)−敏感性Gタンパク質が、LPA−誘導EGFRチロシンリン酸化の介在物質であり(図1A)、PTX(100ng/mL)が部分的に、SCC−9細胞の細胞表面上で、proARシェーディングを阻害する(図1C)。
【0051】
細胞表面proARの減少に加えて、GPCR刺激は、サンドウイッチ−ELISA(図1D)によって測定されたように、細胞培地中で成熟ARの堆積を生じる。カルバコールと応答してのAR放出は、GPCR−リガンドに応じて放出されたARの量およびEGFRチロシンリン酸化含量との間の直接的な相互関係を示唆する、LPA刺激と比較して本質的に低いことが見出された(図1A)。さらに、バチマステートでのプレインキュベーションは、細胞培地中での、GPCR−およびTPA−誘導されたARの堆積を完全に回避し、その際、AR放出のメタロプロテアーゼ依存性が確認された(図1D)。
【0052】
AR機能が、GPCR−誘導EGFRチロシンリン酸化および下流の細胞性応答について要求されるか否かについて測定するために、3種の試験をおこなった。最初に、SCC−9細胞中でproAR、proHB−EGFおよびproTGFαの内在性発現をサイレンスにするために、siRNA(small interfering RNA)を使用した。標的化された遺伝子発現の効率および特異的ノックダウンは、RT−PCRによってモニタリングされ(図2A)、その際、mRNA分解により生じる遺伝子サイレンシングを確認した。随伴的に、EGFRトランス活性化シグナル上のsiRNAの効果が試験された。図2Bに示すように、proARに対するsiRNAは、GPCR−誘発EGFRチロシンリン酸化を完全にブロックする。proHB−EGFおよびproTGFαに対するSiRNAは、しかしながらproARのための特異的要求を試験するトランス活性化シグナルを著しく変更することはない。さらに、我々はproARノックダウンが、頭部および頸部癌細胞のGPCR−誘導運動性に作用するか否かについて試験した。実際には、proARsiARは、in vitroにおいてLPA−誘発化学誘引的遊走を著しく抑制した(図2C)。
【0053】
第二に、我々は、LPAによるEGFRチロシンリン酸化上のAR中和抗体の効果について、扁平上皮細胞癌細胞系、SCC−4、SCC−9、SCC−15およびSCC−25中で試験した。結果は、ヒトARのエクトドメインに対して生じるポリクローナルヤギまたはモノクローナルマウス抗体で予め処理することによって、EGFRトランス活性シグナルが抑制されることを示した(図2D、SCC−9細胞中のポリクローナル抗−AR−抗体に関する典型的なデータ)。同様の結果は、頭部および頸部癌細胞の、カルバコールでの刺激上で得られた(データは示されていない)。対照的に、HB−EGFの特異的な阻害は、ジフテリア毒突然変異体CRM197または抗−HB−EGF中和抗体を用いて、LPA−またはカルバコール−誘導EGFRトランス活性化上での効果を示すことはなかった(データは示されていない)。
【0054】
第三に、ARが、ヘパリン結合ドメインを含有し、かつ、グリコ−スアミノグリカンヘパリンは、ケラチノサイト(16)およびMCF−10A細胞(17)中のAR−誘導マイトージェン応答を阻害することから、EGFRトランス活性化シグナル上のヘパリンの効果について評価した。予測されるように、ヘパリン(100ng/mL)は、LPAにより生じるEGFRチロシンリン酸化を完全に遮断する(図2D)。これらの図に基づいて、AR機能がトランス活性化EGFRの下流のSHC活性化に関して要求されるか否かについて試験し、それというのも、アダプタータンパク質SHCのチロシンリン酸化およびSHC−Grb2−Sos錯体の形成は、活性化EGFRのRas/MAPKカスケード(18)と結合における重要な工程であることが知られている。実際には、AR遮断は、完全に、LPA−誘発SHC−チロシンリン酸化(図2D)を回避し、かつグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)Grb2融合タンパク質(図2E)に付随する。
【0055】
いつかの試験では、EGFRトランス活性化が1個の重要な機序であることが、GPCRアゴニストがERK/MAPK経路(4,12、19、20)を活性化することにより示されていた。ARが、HNSCC細胞中でのLPA刺激されたERK/MARK活性のために必要とされるか否かについて決定するために、ERK1/2活性上のAR阻害の効果を試験した。図2Fに示すように、AR中和抗体、ヘパリンおよびバチマステートは、SCC−9およびSCC−15細胞中でのLPA−誘導ERK活性を妨げる。そのマイトージェン効果に加えて、LPAは、ERK/MARK経路とAkt/PKB(21,22)のホスホイノシチド3−キナーゼ(P13K)−依存性リン酸化の双方を活性化することによって、生存因子として役割を有していてもよい。したがって、LPA刺激が、頭部および頸部癌細胞中のAkt/PKBのリン酸化を誘導するか否かについての疑問が生じた。結果は、LPAがSer−473で、Akt/PKBのリン酸化を著しく増加させることを示した(図2F)。さらに、LPAによるAkt/PKBリン酸化は、WortmanninまたはLY294002(示されていない)によるPI3K阻害に対して敏感であり、さらにAR遮断またはバチマステート処理によって排除された(図2F)。
【0056】
成長促進GPCRシグナル化のためのAR機能についての研究を進めるために、LPA−誘導DNA合成上のAR阻害の効果について評価した。図2Gにおいて示すように、HNSCC細胞は、AR阻害上でLPAによって誘発されたDNA合成の割合の著しい減少を示し、この場合、これらは、LPAによる完全な増殖応答が、ARを必要とすることを示唆するものである。さらに、バチマステートおよびEGFR−特異的インヒビターチルホスチンAG1478は、LPAによるDNA合成を、基底値を下廻るように減少させた。まとめると、これらのデータは、EGFR特性、マイトージェンおよび運動促進トランス活性化シグナルの、HNSCC中での生成に関して、ARが要求されることを実証した。
【0057】
最近の観察において、マウスの繊維芽細胞中での、proARおよび他のEGF様増殖因子前駆体の構造的発散における、メタロプロテアーゼ分解TACE/ADAM17の役割が示唆された(23、24)。さらに、TACEのタンパク質分解活性は、Timp−1ではなく、メタロプロテアーゼ−3(Timp−3)の組織インヒビターによって、in vitroで阻害されることが示された(25)。TACEが広範囲に、HNSCC細胞系(図3A)中で発現することから、EGFRトランス活性化シグナル上のTimp−1およびTimp−3の効果について試験した。確かに、レトロウイルス伝達によるTimp−1でなくTimp−3−の異所性発現は、SCC−9細胞中でのGPCR−誘導EGFRチロシンリン酸化を阻害した(図3B)。さらに、pro−およびメタロプロテアーゼドメイン(26)を欠失するドミナントネガティブTACEの異所性発現(図3C)は、GPCR−誘導proAR切断、成熟ARの放出(図3D)およびSCC−9細胞中でのEGFRシグナル伝達を抑制した(図3E)。対照的に、GPCR−誘発proHB−EGFプロセッシングにおいて含まれることが示された、ADAM10(3)およびADAM12(2)のドミナントネガティブ突然変異体と、類似のADAM15突然変異体のいずれも、GPCR−誘導応答に影響しないことが示された(図3E、ADAM12に関して示された典型的なデータ)。
【0058】
HNSCC中のEGFRトランス活性化経路に関しての、TACEの要求性を別個に証明するために、RNA干渉によるTACEの内在性発現を遮断した。TACE発現の抑制は、RT−PCRおよびウエスタンブロット分析によってモニタリングした(図4A)。興味深いことに、TACEのsiRNA−直接的阻害は、SCC−9細胞の細胞表面上でのproRの堆積を生じる(図4B)。これは、TACEが、基礎的なproARエクトドメンプロセッシングにおいて含まれるといった見方を支持するものである。さらに、TACE siRNAは、特異的にGPCR−誘導EGFR、SHC、ERK/MAPKおよびAkt/PKB活性を抑制した(図4C)。最終的に、TACEsiRNAは、さらにLPAに応じてのSCC−9細胞の遊走を妨げる(図4D)。
【0059】
3.考察
試験結果の増加した量は、EGFRが、異なるGPCRシグナルの中心的インテグレーターとしての機能し、それによって下流の経路に集められるといった概念を支持するものである(4,6,12)。存在するデータは、ヒト癌細胞での望ましくないEGFRトランス活性化機序を支持し、かつGPCRシグナル中のTACEに関する新規生物学的機能を同定する。これらの結果は、TACEのGPCR−誘導活性が、遊離ARの量の増加に寄与しうるといった生物学的因果関係を有することを証明したものである。EGFRのHB−EGF−依存型トランス活性化が、肺上皮細胞(3)およびCOS−7細胞(27)中のADAM10によってか、あるいは、心筋細胞(2)中のADAM12によって介在されるといった他の機序が記載されている。しかしながら、膜貫通proARが、GPCR刺激に応じて分解され、さらにARが、GPCRアゴニストにより、真の癌細胞特性を介在するための機能的等価物であることが初めて示された。TACE−依存性AR放出は、GPCR−誘導EGFR刺激、ERK/MAPK経路の活性、Akt/PKBのリン酸化、細胞増殖および遊走の誘発に対して不可欠であることを示した。
【0060】
TACEが、ヘテロ三量体Gタンパク質によってどのように活性化されるかについては知られていない。しかしながら、ERKは、TPA刺激(28)に応じてスレオニン735で、TACEの細胞質ドメインと結合し、かつリン酸化することが示されており、GPCR−誘導AR放出およびEGFRチロシンリン酸化は、HNSCC細胞(観察については開示されていない)中で、MEKインヒビターに対して非感受性であり、その際、ERKは、EGFRの上流に包含されるものではない。今後の研究の重要項目は、GPCRシグナルトランスミッションが、どのように、ADAM10/HB−EGF、ADAM12/HB−EGFまたはTACE/ARモジュールによって、細胞型−または生理学的に依存する手段で、介在されるかを定義することであろう。したがって、これらの試験は、生理学的に重要なGPCRリガンド、TACEおよびARの関連性を、重要な癌細胞の特徴付けの介在において証明したものにほかならない。
【0061】
例2 TACEに対するモノクローナル抗体の製造および特徴付け
2.1モノクローナル抗体の製造
モノクローナル抗体(Mabs)は、ヒトTACE(ADAM17)のメタロプロテアーゼドメインに対して製造された。組換えタンパク質は、BALB/cマウスの免疫化に関して使用され(J.H. Peters, H. Baumgarten and M. Schulze, Monoclonale Antikoerper-Herstellung und Charakterisierung, Springer- Verlag, 1985, Berlin Heidelberg New York Tokio)、モノクローナル抗体の精製は、T−GelTM Absorbentを用いておこなった(Pierce, Rockford, IL, USA)。
【0062】
2.2機能的分析
TACEのメタロプロテアーゼ−ドメインを認識する8個のモノクローナル抗体を、ELISAによって同定された。これらの抗体は、ヘマグルチニンエピトープ(TACE−HA)でタグされた、TACEをコードする真核細胞性発現プラスミドで一時的にトランスフェクトされたHEK−293細胞のライセートを免疫沈降するために使用した(31)。モノクローナル抗体432−2、400−1、343−3および432−7は、特にTACEの成熟体を免疫沈降するものであるのに対し、α−HA抗体は、優先的にTACEの前駆体を免疫沈降した(図5)。
【0063】
さらに、SCC−9細胞のライセートからの内在性TACEタンパク質を免疫沈降するためのモノクローナル抗体の能力を試験した。MAbs432−2、400−1、343−3および432−7は、TACEのメタロプロテアーゼドメインに対して製造され、特に、TACEの成熟体を免疫沈降するが、前駆体に関しては免疫沈降しないものであった(図6)。
【0064】
モノクローナル抗体は、生存細胞の細胞表面上でのTACEを検出するその能力に関して試験した。抗体402−6および368−3は、細胞表面が染色しないことを示すのに対し、367−3は、弱いシグナルを示した。対照的に、抗体343−3、374−5、400−1、434−2および432−7は強いシグナルを示した(図7)。
【0065】
最後に、扁平上皮細胞癌細胞系SCC−9中での、LPA−誘導EGFRチロシンリン酸化上のモノクローナルTACE抗体の効果について試験した。結果は、374−5、432−2、400−1および367−3での予めの処理が、LPAによって誘発されたEGFRシグナルトランス活性化を阻害するのに対し(図8)、EGFでのEGFRの直接的な刺激が、モノクローナルTACE抗体での前処理によって影響を受けないことを示した(図9)。
【0066】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞中のGタンパク質またはGタンパク質−結合レセプター介在シグナル伝達による、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化の調節のための方法において、TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの活性を阻害することを特徴とする、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化の調節のための方法。
【請求項2】
細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞がガン細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
細胞が、扁平上皮癌細胞である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの活性を、核酸レベルで阻害する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
阻害が、特異的転写阻害を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
阻害が、アンチセンス分子、リボザイムまたはRNAi分子を、TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンmRNAに対して直接的に適用することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
阻害が、遺伝子の不活性化を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの活性を、タンパク質レベルで阻害する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
阻害が、特異的タンパク質阻害を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
阻害が、抗体または抗体フラグメントを、TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンに対して直接的に適用することを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
阻害が、TACE/ADAM17および/またはアンフィレグリンの低分子量インヒビターの適用を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
Gタンパク質またはGタンパク質−結合レセプター介在シグナル伝達による、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化によって引き起こされるか、あるいはこれに関連する疾病の予防または治療のための医薬を製造するための、TACE/ADAM17インヒビターおよび/またはアンフィレグリンインヒビターの使用。
【請求項14】
疾病が、高増殖性疾病である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
疾病が、癌である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
疾病が、扁平上皮細胞癌である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
医薬が付加的に、製薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤および/またはアジュバンドを含む、請求項13から16までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
GプロテインまたはGプロテイン結合レセプター介在シグナル伝達による、レセプターチロシンキナーゼのトランス活性化によって引き起こされるか、あるいはこれに関連する疾病の予防または治療のための方法において、これを必要とする患者に、有効量のTACE/ADAM17インヒビターおよび/またはアンフィレグリンインヒビターを投与することを特徴とする、レセプターチロシンキナーゼによって引き起こされるか、あるいはこれに関連する疾病の予防または治療のための方法。
【請求項19】
Gタンパク質またはGタンパク質−結合レセプター介在シグナル伝達によるレセプターチロシンキナーゼトランス活性化のための調節因子を同定するための方法において、試験化合物が、TACE/ADAM17の活性および/またはアンフィレグリンの活性を阻害する能力を有するか否かについて測定することを特徴とする、レセプターチロシンキナーゼトランス活性化のための調節因子を同定するための方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−148798(P2011−148798A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25668(P2011−25668)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【分割の表示】特願2006−501913(P2006−501913)の分割
【原出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【Fターム(参考)】