説明

EGFRインヒビター処理のための予測マーカー

本発明は、癌患者におけるEGFRインヒビター処理の臨床学的有益性を予測する生物マーカーを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者におけるEGFRインヒビター処理の臨床学的有益性を予測する生物マーカーを供給する。
【0002】
多くのヒト悪性腫瘍は、上皮成長因子受容体(EGFR)の異常又は過剰−発現に関連している。EGF、形質転換成長因子−α(TGF−α)及び多くの他のリガンドが、EGFRに結合し、その受容体の細胞内チロシンキナーゼドメインの自己リン酸化を刺激する。多くの細胞内経路が、続いて活性化され、そしてそれらの下流の現象がインビトロで腫瘍細胞増殖をもたらす。EGFRを通しての腫瘍細胞の刺激は、インビボでの腫瘍増殖及び腫瘍生存性のために重要であることが推測される。
【0003】
TarcevaTM、すなわちEGFRチロシンキナーゼのインヒビターに関する初期臨床データは、その化合物が、標的化された効果的濃度を提供する用量(臨床前データにより決定される場合)で、安全であり、そして一般的に十分に許容されることを示す。進行した疾病を有する患者における臨床フェーズI及びIIは、Tarcevaが広範囲の上皮腫瘍において有望な臨床的活性を有することを示した。実際Tarcevaは、確立されたセカンドライン化学療法に類似する程度の、しかし化学療法及び改良された便利性(静脈内投与の代わりに錠剤)よりも良好な安全性プロフィールの加えられた有益性を伴って、頭頸部癌及びNSCLC(非小細胞癌)を有する、以前に処理された患者における持続性部分的緩解を誘発できることが示されている。最近完結された、ランダム化された、二重盲検プラシーボ対象試験(BR.21)は、単一の剤Tarcevaが、進行した疾病についての標準の治療が失敗したNSCLC患者の生存性を有意に延長し、そして改良することを示している。
【0004】
TarcevaTM(エルロチニブ)は、小さな化学分子であり;それは、EGFRチロシンキナーゼ(EGFR−TKI)の経路活性で有能な選択的インヒビターである。
【0005】
肺癌は、北アメリカ及びヨーロッパにおける癌関連の死亡の主要因子である。アメリカ合衆国においては、肺癌による死亡の数は、癌死亡の原因を導く、第二(結腸)、第3(乳)及び第4(前立腺)からの合計死亡を超える。すべての肺癌の約75%〜80%がNSCLCであり、そして約40%の患者が局部的に進行し、そして/又は非切除可能な癌を提示する。このグループは典型的には、悪性胸膜滲出を除いて、重大な段階III A及びIII B疾病を有するそれらのグループを包含する。
【0006】
ヨーロッパ連合(EU)における肺癌のおおまかな発生率は、1年、100000人当たり、52.5、死亡率は48.7である。男性間で、その割合は、それぞれ79.3及び78.3であり、女性間で、21.6及び20.5である。NSCLCはすべての肺癌患者の80%を占める。男性間での肺癌死亡の約90%、及び女性間での80%が、喫煙に起因している。
【0007】
USにおけるアメリカ癌協会によれば、2004年、約173,800人の新規肺癌患者(93.100人の男性及び80.700人の女性)が存在し、そしてそれはすべての新規癌の約13%を占める。ほとんどの患者は、診断の2年以内にそれらの疾病の結果、死亡する。多くのNSCLC患者に関しては、好都合な処理はまだ未完成のままである。進行した癌はしばしば、外科的に従順ではなく、そしてまた、許容できる用量の放射線治療及び化学療法に耐性である。ランダム化された試験においては、現在最も活性的な組合せ化学療法は、約30%〜40%の応答率及び35%〜40%の1年生存率を達成した。これは、支持療法のみにより見られる10%の1年生存率よりも、真に進行している(Sheperd 1999)。
【0008】
最近まで、再発に続く再発した患者のための治療選択は、最良の支持療法又は緩和に制限された。ドセタクセル(Taxotere)と最良の支持療法とを比較する最近の試験は、NSCLCを有する患者が、シスプラチンに基づくファーストランレジメが失敗した後、セコンドライン化学療法から有益であり得たことを示した。すべての年齢の及び0.1又は2のECOGパーフォマンス−スタタスを有する患者は、白金に基づく処理の前、治療抵抗性であった患者のように、ドセタクセルによる改良された生存性を示した。治療から有益でなかった患者は、10%の体重減、高ラクテートデヒドロゲナーゼレベル、多器官関与又は肝臓関与を有する患者を包含した。
【0009】
さらに、ドセタクセル単独療法の有益性は、セカンドライン設定を超えなかった。サードライン処理又はそれ以上の処理としてドセタクセルを受ける患者は、生存性の延長を示さなかった。単独剤ドセタクセルは、NSCLCのための標準のセコンドライン治療になる。NSCLCのセコンドライン治療におけるもう1つのランダム化された臨床期III 試験は、ペメトレクセド(Alimta(商標))とドセタクセルとを比較した。ペメトレクセドによる処理が、ドセタクセルに比較して有意に少ない副作用を伴って、臨床学的に同等の効力をもたらした。
【0010】
癌処理を取り扱う方法を開発する必要性があることが長く認められてきた。標的化された癌処理の開発により、腫瘍標的物の分子プロフィールを提供する方法論(すなわち、臨床学的有益性のために予測的であるそれら)に特定の興味がある。癌における遺伝子発現プロフィールについての原理の証明は、現在の形態学及び免疫組織化学試験に基づいて明らかではない腫瘍タイプの分子分類によりすでに確立されている。2種の別々の疾病実在物は、遺伝子発現プロフィールを用いての拡散性の大B−細胞リンパ腫の単一の現在の分類とは、異なった予後に関して区別された。
【0011】
従って、癌患者におけるEGFRインヒビター処理の臨床学的有益性を予測する発現生物マーカーを供給することが、本発明の目的である。
【0012】
第1の目的においては、本発明は、患者の腫瘍サンプルにおけるRARRESl遺伝子の発現レベルを決定し、そして処理から臨床学的有益性を得ない患者集団の腫瘍におけるRARRES1の発現レベルの代表的値と、前記RARRES1遺伝子の発現レベルとを比較する段階を含んで成る、上皮成長因子受容体(EGFR)インヒビターによる処理に応答して癌患者の臨床学的有益性を予測するためのインビトロ方法を提供し、ここで前記患者の腫瘍サンプルにおけるRARRES1遺伝子の低い発現レベルが、処理から臨床学的有益性を得るであろう患者のための表示ある。
【0013】
略語RARRES1とは、レチノイン酸受容体応答体1を意味する。配列番号1はヒトRARRES1のヌクレオチド配列、すなわち転写体1を示し、そして配列番号2はヒトRARRES1のヌクレオチド配列、すなわち転写体2を示す。
【0014】
用語“処理から臨床学的有益性を得ない患者集団の腫瘍におけるRARRES1の発現レベルの代表的値”とは、処理から臨床学的有益性を得ない患者集団の腫瘍におけるRARRES1の平均発現レベルの推定値を言及する。臨床学的有益性は、12週以上の間、目的の応答又は疾病安定化のいずれかを有するものとして定義される。
【0015】
さらなる好ましい態様においては、前記RARRES1遺伝子は、前記処理から臨床学的有益性を得ない患者集団の腫瘍におけるRARRES1の発現レベルの代表的値に比較して、前記患者の腫瘍サンプルにおいて1.3〜3.1倍又はそれ以上低い発現レベルを示す。
【0016】
好ましい態様においては、マーカー遺伝子の発現レベルは、RNA発現レベル、例えば定量化RT-PCRを評価するマイクロアレイ技法又は他の技法により、又はそれぞれのタンパク質、例えば免疫組織化学(IHC)の発現レベルを調べるいずれかの方法により決定される。遺伝子チップの構成及び使用は、当業界において良く知られている。アメリカ特許第5,202,231号; 第5,445,934号; 第5,525,464号; 第5,695,940号; 第5,744,305号; 第5,795, 716号 及び第1 5,800,992号を参照のこと。また、Johnston, M. Curr. Biol. 8:R171-174 (1998); Iyer VR et al., Science 283:83-87 (1999)も参照のこと。もちろん、遺伝子発現レベルは、当業者に知られている他の方法、例えばノザンブロット、RT-PCR, 同時定量的PCR、プライマー延長、RNアーゼ保護、RNA発現プロフィーリングにより決定され得る。
【0017】
本発明のマーカー遺伝子は、生物マーカー組に他の生物マーカーと共に組合わされ得る。生物マーカー組は、癌患者におけるEGFRインヒビター処理の効果を予測するために、予測生物マーカーのいずれかの組合せから構築され得る。本明細書に記載される生物マーカー及び生物マーカー組は例えば、癌を有する患者がEGFRインヒビターによる治療介入にいかに応答するかを予測するために使用され得る。
【0018】
用語“遺伝子”とは、本明細書において使用される場合、遺伝子の変異体を含んで成る。用語“変異体”とは、GenBank受託番号により与えられる核酸配列に実質的に類似する核酸配列に関する。用語“実質的に類似する”とは、当業者に十分に理解される。特に、遺伝子変異体は、ヒト集団における最も一般的な対立遺伝子の核酸配列に比較して、ヌクレオチド交換を示す対立遺伝子であり得る。好ましくは、そのような実質的に類似する核酸配列は、最も一般的な対立遺伝子に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有する。用語“変異体”はまた、スプライス変異体も言及する。
【0019】
EGFRインヒビターは、ゲフィチニブ、エルロチニブ、PKI-166、EKB-569、 GW2016、 CI-1033、及び抗−erbB抗体、例えばトラスツズマブ及びセソキシマブから成る群から選択され得る。
もう1つの態様においては、EGFRインヒビターは、エルロチニブである。
さらにもう1つの態様においては、癌はNSCLCである。
【0020】
本発明により記載される遺伝子の遺伝子発現の検出及び定量化のための技法は、ノザンブロット、RT-PCR、同時定量化PCR、プライマー延長、RNアーゼ保護、RNA発現プロフィーリング及び関連技法を包含するが、但しそれらだけには限定されない。それらの技法は、当業者に良く知られている。例えば、Sambrook J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, 2000)を参照のこと。
【0021】
本発明により記載されるそれぞれの遺伝子のタンパク質発現の検出のための技法は、免疫組織化学(IHC)を包含するが、但しそれだけには限定されない。
【0022】
本発明によれば、患者の組織サンプル、例えば腫瘍又は癌生検からの細胞が、1又は複数の生物マーカーの発現パターンを決定するためにアッセイされ得る。癌処理の成功又は失敗は、1又は複数の生物マーカーの対照組の発現パターンに相対的に類似するか又は異なるように、試験組織(試験細胞)、例えば腫瘍又は癌生検からの細胞の生物マーカー発現パターンに基づいて、決定され得る。本発明においては、表3の遺伝子が、EGFRインヒビター処理から臨床学的有益性を得なかった患者の腫瘍に比較して、EGFRインヒビター処理から臨床学的有益性を得た患者の腫瘍において、ダウンレギュレートされ、すなわち低い発現レベルを示すことが見出された。
【0023】
従って試験細胞が、癌処理に応答した患者の発現プロフィールに対応する生物マーカー発現プロフィールを示す場合、個人の癌又は腫瘍が、EGFRインヒビターによる処理に都合よく応答するであろうことが非常に可能性あるか又は予測される。対照的に、試験細胞が、癌処理に応答しなかった患者の発現プロフィールに対応する生物マーカー発現プロフィールを示す場合、個人の癌又は腫瘍が、EGFRインヒビターによる処理に都合よく応答しないであろうことが非常に可能性あるか又は予測される。
【0024】
本発明の生物マーカー、すなわち表3に列挙される遺伝子は、癌を有する患者、特に難治性NSCLCを有する患者のための個人別治療への最初の段階である。この個人別治療は、癌療法、特にNSCLCのための存在する薬物からの最も適切な剤の処理医者による選択を可能にするであろう。個々の未来の患者のための個人別治療の有益性は次の通りである:患者を有益にする応答速度/数が上昇し、そして無効果のための副作用の危険性が低められるであろう。
【0025】
さらなる目的においては、本発明は、本発明のインビトロ方法により同定される癌患者を処理するための治療法を提供する。前記治療法は、表3の遺伝子の予測発現パターンに基づいて処理のために選択された患者にEGFRインヒビターを投与することを含んで成る。好ましいEGFRインヒビターは、エルロチニブであり、そして処理されるべき好ましい癌はNSCLCである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、研究企画を示す。
【図2】図2は、サンプル処理のスキームを示す。
【図3a】図3aは、Genechip(商標)プロフィーリングについての臨床学的結果に対するRARRES1発現レベルを示す。
【図3b】図3bは、qRT-PCRについての臨床学的結果に対するRARRES1発現レベルを示す。
【図3c】図3cは、RARRES1についてのGenechip(商標)測定値とqRT-PCR測定値との間の相互関係を示す。
【実施例】
【0027】
研究及び研究企画のための基本原理
最近、NSCLC患者の亜集団の腫瘍組織におけるEGFR遺伝子内の突然変異、及びそれらの突然変異と、エルロチニブ及びゲフィチニブに対する感度との関連性が記載されている(Pao W, et al. 2004; Lynch et al. 2004; Paez et al. 2004)。2種の研究から組合された患者に関して、突然変異誘発されたEGFRが、ゲフィチニブに応答した14人の患者のうち13人に観察され、そして応答しなかった11人のゲフィチニブ処理された患者のいずれにも観察されなかった。
【0028】
それらの突然変異の報告される保有率は、非選択NSCLC患者において8%(2/25)であった。それらの突然変異は、より頻繁には、腺癌(21%)、女性からの腫瘍(20%)、及び日本人患者からの腫瘍(26%)において見出された。突然変異は、EGFRの高められたインビトロ活性及びゲフィチニブに対する高められた感度をもたらす。延長された安定疾患又は生存期間に対する突然変異の関係は、予測的に評価されることはない。
【0029】
BR.21研究からの試験分析に基づけば、観察された生存有益性は、単にEGFR突然変異のためであるとは思われない。なぜならば、有益な生存有益性は、目的の応答性を有する患者が分析から除外される場合でさえ、維持されているからである(ファイル上のデータから)。他の分子機構もまた、その効果に寄与するはずである。
【0030】
Tarceva処理に応答するか又はその処理に対して有益であることが推定される遺伝子発現レベルに変化が存在する仮定に基づいて、マイクロアレイ分析がそれらの変化を検出するために使用された。
【0031】
これは、ファーストライン療法の失敗の後、TarcevaTM単独療法により処理された、明白に定義された研究集団を必要とした。BR. 21 研究からの経験に基づけば、有益な集団は、12週間、目的の応答を有するか、又は疾病安定化を有するものとして定義される。臨床学的及びマイクロアレイデータ組が、予備定義された統計学的計画に従って分析された。
【0032】
この技法の適用は、新しく凍結された組織(FFT)を必要とする。従って、必須生検が、処理の開始の前、実施されるべきであった。集められた材料は、液体窒素(N2)において凍結された。
【0033】
第2腫瘍サンプルを、同時に集め、そしてパラフィン(包埋されるホルマリン固定されたパラフィン、FFPE)に貯蔵した。このサンプルを、EGFRシグナル化経路における変更について分析した。
【0034】
気管支鏡検査を通しての腫瘍生検を実施する能力は、この研究のための前提条件であった。気管支鏡検査は、肺癌の診断を確認するための標準方法である。一般的に安全であるが、合併症、例えば出血の残る危険性が存在する。
【0035】
この研究は、難治性NSCLCを有する患者のための個人別治療への第1段階である。この個人別治療は、この指標のための存在する薬物からの最も適切な剤の処理医者による選択を可能にするであろう。
【0036】
個人別治療が利用できると、個々の未来の患者のための有益性は、次の通りに、本研究において患者が取るべき危険性よりも重要であろう:
患者を有益にする応答速度/数が上昇し、
無効果処理のための副作用の危険性が低められるであろう。
【0037】
投与量選択のための基本原理
TarcevaTMを、疾病の進行、耐えることができない毒性又は死亡まで、150mgの用量で1日当たり1度、経口投与した。この用量の選択は、薬理学的パラメーター、及び進行した癌を有する、重度に前処理された患者におけるフェーズI、II及びIII 試験において観察されるこの用量の安全性及び耐性プロフィールに基づかれた。150mg/日の用量を受ける癌患者の血漿に見出される薬物レベルは一貫して、臨床学的効能のために標的化された500ng/mlの平均血症濃度以上であった。BR.21は、この用量で生存有益性を示した。
【0038】
研究の目的
主要目的は、TarcevaTM処理の臨床学的有益性(CR, PR又はSD≧12週)について予測的である特異的に発現された遺伝子の同定であった。TarcevaTM処理に対する“応答性”(CR, PR)について予測的な特異的に発現された遺伝子の同定は、重要な追加の目的であった。
第2の目的は、処理からの有益性に関してEGFRシグナル化経路における変更を評価することであった。
【0039】
研究企画
研究企画及び投与量レジメの概要:
これは、開放−レベルの予測マーカー同定フェーズII研究であった。この研究は、約12の国の約26の地域で行われた。少なくとも1つの事前の化学療法レジメの失敗に続いて、進行したNSCLCを有する264人の患者が、12ヶ月以上、登録された。連続した経口TarcevaTMが、150mg/日の用量で与えられた。用量の低減が、薬物治療に対する耐性に基づいて可能にされた。臨床学的及び実験パラメーターが、疾病制御及び毒性評価するために査定された。処理は、疾病進行、許容できない毒性又は死亡まで続けた。研究企画は、図1に示されている。
【0040】
腫瘍組織及び血液サンプルが、TarcevaTMの効果を評価し、そして治療から有益性を得る患者の亜集団を同定するための分子分析のために得られた。
【0041】
予測マーカー評価
腫瘍の生検が、処理の開始の前、2週間以内に採取された。2種の異なったサンプルを集めた:
第1のサンプルは常に、すぐに液体窒素において凍結され;
第2のサンプルは、ホルマリンに固定され、そしてパラフィンに包埋された。
瞬間凍結組織は、この研究において最高の優先権を有した。図2は、サンプル処理のスキームを示す。
【0042】
マイクロアレイ分析
瞬間凍結サンプルが、腫瘍RNA及び腫瘍の周囲の組織からのRNAを抽出するために、腫瘍細胞のレーザー捕獲顕微鏡手術(LCM)のために使用された。RNAが、患者の腫瘍遺伝子発現プロフィールを確立するために、Affymetrixマイクロアレイチップ(HG−U133A)上で分析された。Affymetrixチップの品質管理が、統計学的比較のための適切な品質のそれらのサンプルを選択するために使用された。
【0043】
ホルマリン固定され、パラフィン包埋された組織に対する単一生物マーカー分析
第2の腫瘍生検、すなわちFFPEサンプルが、下記に記載されるように、DNA突然変異、IHC及びISH分析を行うために使用された。類似する分析が、初期診断で集められた組織に対して実施された。
【0044】
EGFR、及びEGFRシグナル化経路に包含される他の分子をコードする遺伝子のDNA突然変異状態が、DNA配列決定により分析された。EGFRの遺伝子増幅及び関連する遺伝子が、FISHにより研究された。
タンパク質発現分析は、EGFRの免疫組織化学[IHC]分析、及びEGFRシグナル化経路内の他のタンパク質を包含した。
【0045】
応答の評価
RECIST(一次元主要測定)基準が、応答を評価するために使用された。それらの基準は、次のリンク下で見出され得る:http://www.eortc.be/recist/。
CR又はPRの状態に割り当てられるためには、腫瘍測定の変化が、処理期間の間、いずれかの時間で、少なくとも4週離れての反復された査定により確認されるべきであることを注意すること。
【0046】
SDの場合、追跡測定は、6週の最少間隔で研究開始の後、少なくとも1度、SD基準を満たすべきである。
推定されるSDの場合、追跡測定は、少なくとも12週の維持期間を伴って、研究開始の後、少なくとも1度、SD基準を満たすべきである。
【0047】
生存性の査定
3ヶ月ごとの規則的状態のチェックが、患者によるクリニックの訪問又は電話により行われた。すべての死亡は記録された。研究の最後で、生存者の決定的な確認が個々の患者のために必要とされた。
【0048】
方法
RNAサンプル調製及びRNAサンプルの品質調節:
すべての生検サンプル処理は、病理学参照実験により取り扱われ;新鮮な凍結された組織サンプルが、Roche Baselにおける臨床学的サンプル操作施設に調査地域から、及びそこから、さらなる処理のために病理学実験室に送られた。レーザー捕獲顕微手術が周囲の組織から腫瘍細胞を選択するために使用された。LCMの後、RNAを、濃縮された腫瘍材料から精製した。次に、病理学実験は、RNAの濃度及び品質の評価を行うために、多くの段階を実施した。
【0049】
RNアーゼは、RNA分解酵素であり、そしてあらゆる所で見出され、そしてその結果、RNAが使用されるであろうすべての方法は、RNA分解を最少にするために厳格に制御されるべきである。ほとんどのmRNA種自体は、かなり短い半減期を有し、そしてその結果、かなり不安定であると思われる。従って、いずれのアッセイの前でも、RNA完全性の調査及び定量化を実施することが重要である。
【0050】
RNAの濃度及び品質プロフィールは、2100 Bioanalyzer(商標)と呼ばれるAgilent (Agilent Technologies, Inc., Palo Alto, CA)からの計測器を用いて評価され得る。計測器のソフトウェアは、RNA完全性番号(RIN)、すなわち定量化見積もり(Schroeder, A., など、The RIN:RNA測定に完全性値を割り当てるためのRNA完全性番号、BMC Mol Biol, 2006, 7:p.3)、そして全RNAサンプルのリボソーム比較を計算する。RINは、RNAサンプルの完全な電気泳動痕跡から決定され、そしてその結果、分析生成物の存在又は不在を包含する。
【0051】
RNA品質が2100 Bioanalyzer(商標)により分析された。添加されるポリ−Iノイズ以上の少なくとも1つのrRNAピークを有する唯一のサンプル及び十分なRNAが、Affymetrixプラットフォーム上でのさらなる分析のために選択された。精製されたRNAは、マイクロアレイによる分析のために、Medical Genomics (RCMG; Basel, Switzerland)のためのRocheセンターに送られた。122のRNAサンプルが、さらなる処理のために病理実験室から受け取られた。
【0052】
組織RNAサンプルの標的ラベリング
標的ラベリングを、Affymetrix (Affymetrix, Santa Clara, California)からのTwo-Cycle Target Labeling Amplification Protocolにより、製造業者の指示に従って実施した。
前記方法は、標準のEberwine線状増幅方法に基づかれ、そして2サイクルのこの方法を使用し、マイクロアレイへのハイブリダイゼーションのための十分にラベルされたcRNAを生成する。
【0053】
ラベリング反応に使用される全RNA投入量は、10ng以上のRNAが利用できるそれらのサンプルに関しては、10ngであり;この量以下が利用できるか、又は入手できる定量データが存在しない(非常に低いRNA濃度のために)場合、全サンプルの半分が反応に使用される。ラベリング反応からの収量は、20〜180μgのcRNAであった。標準化段階が、15μgのcRNAがあらゆるサンプルのために使用されるハイブリダイゼーションのレベルで導入された。
【0054】
ヒト対照RNA(Stratagene, Carlsbad, CA, USA)が、個々のサンプルバッチによるワークフローにおいて対照サンプルとして使用された。10ngのこのRNAが、ラベリング及びハイブリダイゼーション試薬が予測されるように作用することを確かめるために、試験サンプルと共に投入量として使用された。
【0055】
マイクロアレイハイブリダイゼーション
Affymetrix HG−U133Aマイクロアレイは、約14,500の十分に特徴づけられた遺伝子を表す、約18,400の転写体及び変異体を標的化する22,000以上のプローブ組を含む。
【0056】
すべてのサンプルについてのハイブリダイゼーションが、Affymetrix指示(Affymetrix Inc., Expression Analysis Technical Manual, 2004)に従って実施した。手短に言及すれば、個々のサンプルに関して、15μgのビオチン−ラベルされたcRNAが、二価のカチオン及び熱の存在下でフラグメント化され、そしてAffymetrix HG-U133Aの十分なゲノムオリゴヌクレオチドアレイに一晩ハイブリダイズされた。次の日、アレイがストレプタビジン−フィコエリトリン(Molecular Probes; Eugene, OR)により、その製造業者の指示に従って染色された。次に、アレイが、GeneChip Scanner 3000 (Affymetrix)を用いて走査され、そしてシグナル強度が自動的に、GeneChip Operating Software (GCOS) Version 1.4 (Affymetrix)により計算された。
【0057】
統計学的分析
5つの主要段階から成るAffymetrixTMデータの分析:
段階1は品質調節であった。目的は、標準以下の品質プロフィールを含む分析アレイデータを同定し、そして除外することであった。
【0058】
段階2は、前処理及び標準化であった。その目的は、チップ間比較できる、標準化され、そして縮尺された“分析データ”を創造することであった。それは、バックグラウンドノイズ評価及び控除、プローブ総括及び縮尺を包含した。
【0059】
段階3は、診査及び説明であった。この目的は、変動性の潜在的バイアス及び源を同定することであった。それは有力な共変量を同定するために多変量及び一変量記載分析技法の適用から成った。
【0060】
段階4は、モデリング及び試験であった。この目的は、“臨床学的有益性”患者と、“臨床学的有益性を受けない”患者との間の平均レベルでの差異の統計学的評価に基づいて、一連の候補体マーカーを同定することであった。それは、適切な統計学的モデルを、個々のプローブ組に適合し、そして統計学的有意性の測定を誘導することからなった。
【0061】
段階5は、ロバストネス解析であった。この目的は、全処理方法及び統計学的仮定に多くは依存しない、認定された一連の候補体マーカーを生成することであった。それは、異なった方法論アプローチによる分析を反復し、そしてその一連の候補体を分けることから成った。
すべての分析は、Rソフトウェアーパッケージを用いて実施された。
【0062】
段階1品質調製
データ品質の評価は、いくつかのパラメーターをチェックすることに基づかれた。それは、標準のAffymetrix GeneChipTM品質パラメーター、特に縮尺因子、存在するコール(Present Call)の百分率及び平均バックグラウンドを包含した。この段階はまた、局在化されたハイブリダイゼーション問題を検出するための仮想チップ像の目視検査、及びメジアン挙動性からのいずれかの異常離脱を検出するための仮想メジアンチップへの個々のチップの比較を包含した。チップ間相互関係分析がまた、異常値のサンプルを検出するために実施された。さらに、Agilent BioanalyzerTM 2100によるRNAサンプルの分析から得られたRNA品質の補助的測定が、考慮された。
【0063】
それらのパラメーターに基づいて、20のアレイからのデータが分析から排除された。従って、102人の患者を表す合計102のアレイからのデータが、その分析に包含された。それらの102のサンプル組の臨床学的記載が表1に報告される。
【0064】
【表1】

【0065】
段階2データ前処理及び標準化
rmaアルゴリズム(Irizarry, R.A., et al., Summaries of Affymetrix GeneChip probe level data. Nucl. Acids Res., 2003. 31(4): p. el5)が、前処理及び標準化のために使用された。mas5アルゴリズム(AFFYMETRIX, GeneChip(商標) Expression: Data Analysis Fundamentals. 2004, AFFYMETRIX)が、個々のプローブ組のための検出コールを製造するために使用された。すべてのサンプルにおける“不在”又は“周辺”と呼ばれるプローブ組は、さらなる分析から除かれる;5930のプローブ組が、この基準に基づいて分析から除かれた。従って、分析データ組は、102人の患者において測定された16353(22283からの)のプローブ組を有するマトリックスから成った。
【0066】
段階3データの記述及び検査
記述的診査的分析が、潜在的バイアス及び変動性の主要源を同定するために実施された。遺伝子発現プロフィールに対する可能性ある衝撃を有する共変量組がスクリーンされた。それは、技術的及び臨床学的変数を包含した。技術的共変量は次のものを包含した:RNAプロセッシングデータ(後に、バッチとして言及される)、RIN(RNA品質/完全性の測定として言及される)、サンプル収量のオペレーター及びセンター。臨床学的共変量は次のものを包含した:組織学的タイプ、喫煙状態、腫瘍等級、性能評点(Oken, M.M., et al., Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group. Am J Clin Oncol, 1982. 5(6): p. 649-55)、人工データ、応答体状態及び臨床学的有益性データ。
【0067】
分析ツールは、一変量ANOVA及び主成分分析を包含した。それらの共変量の個々に関しては、一変量ANOVAが、個々のプローブ組とは無関係に適用された。
バッチ変数の有意な効果が同定された。実際、バッチ変数は、サンプル処理のデータと、Affymetrixチップのデータとの間の差異を獲得した。バッチ変数が興味ある変数とはほぼ関係しないことを調べた後、バッチ効果を、Johnson, W.E., C. Li, and A. Rabinovic, Adjusting batch effects in microarray expression data using empirical Bayes methods. Biostat, 2007. 8(1): p. 118-127に記載される方法を用いて、修正した。
【0068】
バッチ効果の修正の後、標準化されたデータ組は、続く分析において分析データ組として役立った。
組織学及びRINは、記述分析により強調される2種の追加の重要な変数であった。
【0069】
段階4データモデリング及び試験
線状モデルは、個々のプローブ組に独立して固定された。このモデルに含まれる変数は、表2に報告されている。モデルパラメーターは、最大の見込み技法により評価された。“臨床学的有益性”変数(×1)に対応するパラメーターが、臨床学的有益性を有する患者グループと、臨床学的有益性を有さない患者グループとの間の発現レベルでの差異を評価するために使用された。
【0070】
【表2】

【0071】
個々のプローブ組iに関しては、統計学的試験の目的は、臨床学的有益性を有する患者及び臨床学的有益性を有さない患者における平均発現レベルが、表2に列挙される他の調節共変量を考慮して、同等の仮説を拒絶することであった。正式には、均等性の統計的仮説が、2種の反対の代替体に対して試験された。その対応するp−値は、表3に報告される。
【0072】
線状モデルの選択は、2つの理由により動機づけられた。最初に、線状モデルは、興味ある変数の効果を評価する場合、混合する変数の調節を可能にする、可変性の十分に特徴づけられた、且つ強いアプローチである。第2に、102のサンプルサイズ及びデータ組の標準化及び縮尺が与えられる場合、正規の分布仮定は妥当であり、そして正当化された。
【0073】
個々のプローブ組に関して、分散の均一性の仮定が、モデル残差に基づいて、Fligner−Killeen試験を用いて評価された。その分析は3種の段階から成った:
1.残差分散の均一性について個々のカテゴリー変数を試験し;
2.最小p−値を有する変数Vを表示し;
3.最小p−値が0.001以下である場合、異なったレベルの変数Vが異なった分散を有するモデルを再適合する。
【0074】
段階5ロバストネス
ロバストネス分析の目的は、分析の結果が人工的であり、且つ統計学的分析の基礎をなす前処理段階又は仮定の結果である危険性を低めることであった。次の3種の観点が考慮された:a)品質調節段階での少数の余分なチップの包含又は排除;b)前処理及び標準化アルゴリズム;c)統計学的仮説及び試験アプローチ。
【0075】
候補体マーカーの列挙が、異なった分析設定を伴って、有意なものとして一貫して示される遺伝子の亜集団として定義された。異なった適用される分析選択肢は次の通りであった:
a)8チップの追加の亜集団が、より緊縮品質の制御基準に基づいて同定された。“減じられたデータ組”は、それらの8チップを排除することにより定義された。
b)MAS5が、前処理及び標準化のために、rmaに代わるものとして定義された。MAS5は、バックグラウンド評価、プローブ要約及び標準化のために異なった方法を使用する。
c)2種の追加の統計学的試験が使用された。
【0076】
a. 臨床学的有益性と非臨床学的有益性との間の差異についてのWilcoxon試験、及び
b. 臨床学的有益性が応答変数として、及び遺伝子発現が共変量として取られる、論理的回帰モデルについての尤度比検定(LRT)。それらの2種の追加試験は、基礎となる異なった組の統計学的仮定に依存する。個々のプローブ組に関しては、LRTは、1度の自由度を有するカイ二乗に従った。
【0077】
要約すると、2組のサンプル(“十分な”データ組及び“減じられた”データ組)、及び2つの前処理アルゴリズム(mas5及びrma)が考慮され;これが4種の異なった分析データ組をもたらした。それらの4種のデータ組の個々に、3種の異なった統計学的試験が適用された。従って、個々のプローブ組に関しては、3種のp−値が計算された。個々の分析データ組においては、複合基準が、示差調節された遺伝子の列挙を同定するために適用された。この複合基準は次のように定義された:最大p−値は0.05以下であり、そして最少p−値は0.001以下である。遺伝子マーカーを同定するために基準1を用いてのロバストネス解析は、EGFRインヒビター処理のための予測マーカーとしてRARRES1を生成した。
【0078】
【表3】

【0079】
追加の統計学的分析
選択された候補体マーカーRARRES1に関して、次の追加の分析が、独立した統計学者により有効な環境下で実施された:
・一次Affymetrix分析からのPFS(進行を伴わない生存性)についての一変量Cox回帰、
・一次Affymetrix分析からの臨床学的有益性についての一変量ロジスティック回帰。
それらの分析結果は下記に示されている。それらは、一次分析の結果と一致し、そして選択されたマーカーの選択を確認する。
【0080】
結果一次Affymetrix分析からPFS(進行を伴わない生存性)についての一変量C0X回帰
遺伝子 患者の数 危険比 危険比についての95%CI p−値
RARRES1 102 1.20 1.04;1.38 0.0129
結果一次Affymetrix分析からの臨床学的有益性についての一変量Cox回帰
遺伝子 患者の数 可能性比 可能性についての95%CI p−値
RARRES1 102 0.42 0.21;0.82 0.0115
【0081】
gRT-PCR
cDNAを、SuperScriptTM III First-strand Synthesis SuperMix for qRT-PCR (Invitrogen, CA, USA)を用いて(但し、RNアーゼH消化物を包含しない)、その製造業者の指示に従って合成した。
【0082】
定量的PCRを、TaqMan(商標) Gene Expression Assays on an ABI PRISM(商標) 7900HT Sequence Detection Systemを用いて、その製造業者(Applied Biosystems, CA, USA)の推薦に従って実施した。すべてのアッセイは、三重反復して行った。
【0083】
使用されるプライマー及びプローブは、エキソン堺界を交差するか、又は興味あるAffymetrix Genechip(商標)プローブ配列内に存在した。2種のハウスキーピング遺伝子が、内因性対照として包含された:β−2−ミクログロブリン(B2M; Assay Hs99999907_ml)及びヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT; Assay Hs99999909_ml)。
【0084】
すべての試験は、校正体サンプル(ヒト成人肺からのMVPTM全RNA;Stratagene, CA, USA)、及び標準曲線を包含した。普遍的ヒト対照全RNA (Stratagene, CA, USA)を、RARRES1標準曲線のための鋳型として使用した。すべてのサンプルは、三重反復して測定された。相対的定量化を、-ΔCt方法を用いて実施した。
【0085】
結果
前に報告されたように、Affymetrix Genechip(商標)遺伝子発現プロフィールを、この研究に含まれる102人の患者のために決定した。それらの患者の中で、qRT-PCR結果が75人の患者のために得られた(表4)。qRT−PCR結果を有する患者の人口統計及び臨床学的特徴は、全集団(n=264)及び利用できるGenechip(商標)遺伝子発現プロフィールを有する患者のそれらに類似した。
【0086】
【表4】

【0087】
qRT-PCR結果を有する75人の患者のうち、4人(5%)が部分的応答(PR)を有し、23人(31%)がSDを有し、39人(52%)がPDを有し、そして9人(12%)が評価できなかった。それらの結果は、全研究集団(n=264)において観察されたそれらに非常に類似した。
【0088】
図3は、Affymetrix Genechip(商標)プロフィーリング及びqRT-PCRにより評価される場合、個々の患者においてRARRES1についての相対的mRNAレベルを示す。図3aは、Genechip(商標)プロフィーリングについての臨床学的結果に対する発現レベルを示し、そして図3bは、qRt-PCRに対する発現レベルを示す。
【0089】
RARRES1 mRNA転写体のGenechip(商標)測定とqRT-PCR測定との間に良好な相互関係が存在した(図3c;ピアソンのp=0.7, p<0.01)。Genechip(商標)プロフィーリングにより観察される場合、qRT-PCRを用いて評価されたRARRES1 mRNAレベルは、エルロチニブと相互関係すると思われ、そしてより高レベルが、非応答体に比較して、応答体に観察された。
【0090】
論議
高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイ技法により組織サンプルを分析し、そして統計学的モデリングをデータに適用することにより、本発明者は、その発現レベルがエルロチニブによる処理から臨床学的有益性を得る患者の予測的であり得る、遺伝子を同定することができた。
【0091】
複合基準(上記に定義される)を適用した。それは、EGFRインヒビター処理のための予測マーカーとしてのRARRES1をもたらした。
染色体3q25.32-q25.3上に位置するRARRES1遺伝子は、タイプ1膜タンパク質をコードする。この遺伝子の発現は、タザロテン(tazarotene)及びレチノイン酸受容体によりアップレギュレートされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腫瘍サンプルにおけるRARRESl遺伝子の発現レベルを決定し、そして処理から臨床学的有益性を得ない患者集団の腫瘍におけるRARRES1の発現レベルの代表的値と、前記RARRES1遺伝子の発現レベルとを比較することを含んで成る、上皮成長因子受容体(EGFR)インヒビターによる処理に対する癌患者の応答性を予測するためのインビトロ方法であって、前記患者の腫瘍サンプルにおけるRARRES1遺伝子の低い発現レベルが、処理から臨床学的有益性を得るであろう患者のための表示あることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記発現レベルが、マイクロアレイ技法により決定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記RARRES1遺伝子が、前記処理から臨床学的有益性を得ない患者集団の腫瘍におけるRARRES1の発現レベルの代表的値に比較して、前記患者の腫瘍サンプルにおいて1.3〜3.1倍又はそれ以上低い発現レベルを示す、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記EGFRインヒビターが、エルロチニブ(erlotinib)である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
EGFRインヒビター処理に対する癌患者の応答性を予測するためへのRARRES1遺伝子の使用。
【請求項7】
前記癌がNSCLCである、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記EGFRインヒビターがエルロチニブである、請求項6又は7記載の使用。
【請求項9】
EGFRインヒビターを患者に投与することを含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法により同定される癌患者の処理方法。
【請求項10】
前記EGFRインヒビターがエルロチニブである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記癌がNSCLCである、請求項9又は10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2010−535523(P2010−535523A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520471(P2010−520471)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006522
【国際公開番号】WO2009/021683
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】