説明

EL素子及びその製造方法

【課題】 自発光性材料膜からなるEL層を用いたEL素子においては、膜厚が均一なEL層を得るための条件として、EL層の下地層の平坦性が要求されているため、下地層には平坦化に適した有機材料膜が用いられている。しかし、有機材料膜は吸水性が高いため、有機材料膜内を伝播する水分によりEL層が劣化し、発光しなくなる。
【解決手段】 EL層12の下地である有機材料膜10は、平坦部16と平坦部16周辺に連なるような斜面部17aを有し、かつ、有機材料膜10を介した隣接画素への水分の伝播を抑制するために、個々の画素ごとに信号線2と間隙18a、18bをもって分離されて形成されているEL素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL素子及びその製造方法に関し、特にはアクティブマトリックス型のディスプレイに適するEL素子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence : 以下ELと略す)を利用した有機EL素子(以下、単にEL素子と称する)は、陽極と陰極との間に、有機正孔輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けてなり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。EL素子において、EL層は成膜によって形成されるが、成膜しようとする部位の下地の面が十分に平坦でないと、EL層を均一な膜厚に成膜することができないという問題が生じる。そこで、EL層の下地の面を平坦にする目的で、有機材料膜を用いる場合がある。有機材料膜としては、スピンコート法のような塗布による形成を用いるため平坦化しやすいという理由でポリイミド樹脂やアクリル樹脂といった有機材料を用いた膜が主に用いられる。有機材料として感光性ポリイミドを用いることにより、工程を複雑にすることなく有機材料膜を形成後、平坦部にEL層を形成する製法が提示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、これらの有機材料膜は吸水性が高く、有機材料膜から漏出する水分がEL層に侵入するため、EL層が劣化することによる表示不良が問題となっている。このような有機材料膜から漏出する水分によるEL層の劣化を防止するためのバリアとして、有機材料膜の上層に無機絶縁膜を設ける方法が提示されており、たとえば、スピナーによる塗布方式により有機材料膜を形成し、その上層にCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの方法によって酸化シリコン系材料膜や窒化シリコン系材料膜などの無機絶縁膜を形成することが開示されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−160486号公報(第2−3頁、図2(1))
【特許文献2】特開2001−356711号公報(第3頁、図3(3))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のEL素子において、有機材料膜からEL層への水分浸入を遮断する手法は提示されているが、有機材料膜内の水分拡散自体を抑制しているわけではない。一般的に有機材料膜自体を加工することはないため、EL素子における有機材料膜は表示領域全体に広がっている。したがって、EL素子の周囲から有機材料膜内を水分が拡散移動してくる侵入自体を抑制しているわけではない。そのため、何らかの不良によって、いったん有機材料膜からEL層への水分侵入が開始すると、EL素子の周辺から有機材料膜内を経由して供給される水分によりEL層の劣化をさらに助長させるという事態を引き起こす。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、水分がEL素子の周辺から有機材料膜内を拡散することにより、EL層の劣化を助長させる潜在的な要因となることを抑制するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかるEL素子は、EL層の下部において平坦部を有し、その平坦部の周辺に斜面部を有する有機材料膜が、個々の画素で独立して形成されており、有機材料膜を介して隣接画素へ水分が伝播する経路が遮断されている。
【発明の効果】
【0008】
有機材料膜が個々の画素で独立するため、有機材料膜を介した水分の伝搬を阻止することができ、EL層の発光特性の劣化を防ぐことができるので、動作の安定したEL素子を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1によるEL素子の素子構造についてEL素子を用いたマトリックス型表示装置(以下、単に表示装置と称する)を例にとって説明する。図1に示したのは、本実施の形態1を適用したEL素子からなる表示装置のうち、2×2の4画素についての上面図である。これら複数の画素は全く同等のように描かれているが、実際は、画素からの射出される光の色は画素ごとにR、G、Bとわかれていてもよい。図1において示される本実施の形態1にかかわる素子構造は、ガラス、石英等からなる絶縁性基板5上に、走査線1、信号線2と、走査線1と信号線2とで区切られる領域にマトリックス状に配置されて表示装置の表示に寄与する光を射出するための画素3とからなり、画素3には走査線1と信号線2とから入力される走査信号や映像信号を画素3に伝える機能素子である薄膜トランジスタ6が下層に形成されているものである。
【0010】
画素3の上層には、有機材料からなる有機材料膜10とアノード電極11とが隣接する画素から分離されて形成されており、画素3を構成する有機材料膜10とアノード電極11とは長方形状をなし、周辺の端部と走査線1または、信号線2との間には間隙が形成されており、画素3と隣接する画素とはこの間隙と走査線1または信号線2との幅に相当する部分で分断されている。アノード電極11はコンタクト開口部4(空白の四角で示した部分)を介して下層の画素電極7と接続されている。図示していないが、自発光性材料膜であるEL層12とカソード電極13とが絶縁性基板5の全面を覆うようにアノード電極11上に形成されている。ここで、画素電極7は、信号線2と同じレイヤーの配線材料からなる。信号線2からの信号を薄膜トランジスタ6に入力するための信号電極(図1では図示されていない)が、信号線2と薄膜トランジスタ6とに電気的に接続されている。また、信号電極は、信号線2や画素電極7と同時に、同じ材料で形成される。また、図1においては、薄膜トランジスタ6の型を限定する必要が無いのでブラックボックス的に表しているが、1つだけでもよいし、2つ以上の薄膜トランジスタが組み合わされて形成されたものでもよい。薄膜トランジスタ6の構造も、EL層12を発光させるための制御された電流を得ることができれば、逆スタガ型、トップゲート型のいずれでもよい。また、薄膜トランジスタ6は、絶縁性基板5上に形成されているように記載しているが、薄膜トランジスタ6と絶縁性基板5との間には下地膜としての絶縁膜を適宜設けてもよい。
【0011】
素子構造を詳しく見るために、図1の画素3と、画素3に隣接する画素の一部についてX−Xで示した箇所、すなわちコンタクト開口部4を含む箇所の断面図を図2として示した。図2で示す画素においては、絶縁性基板5上に形成された信号線2と薄膜トランジスタ6と薄膜トランジスタ6の電極である画素電極7と信号電極8とを被覆するように形成された配線保護膜9の上層に有機材料からなる有機材料膜10が形成され、さらにその上層にはアノード電極11が形成されている。ここで、有機材料膜10とアノード電極11とは、図1でも示されている通り、画素ごとに独立して分離した状態で形成されている。図2の断面図においては、信号線2をはさんだ各画素において有機材料膜10とアノード電極11とが形成されているが、信号線2上には有機材料膜10は存在せず、隣接する画素間相互には間隙18a、18bと信号線2の幅を足し合わせた領域で、隣接する画素の各々の有機材料膜は、互いに分離されていることが示されている。
【0012】
また、有機材料膜10は、平坦な領域である平坦部16に加えて、平坦部16の周囲において平坦部16から連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面をなす斜面部17aをも有している。さらに、画素電極7は、配線保護膜9と有機材料膜10とに設けられたコンタクト開口部4を介してアノード電極11と接続されており、従って薄膜トランジスタ6とアノード電極11とは画素電極7を介して電気的に接続されている。ここで、コンタクト開口部4においても斜面部17aと同様な斜面部17bが形成されている。すなわち、コンタクト開口部4では、平坦部16から遠ざかりコンタクト開口部4の中央に近づくにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17bが形成されている。さらに、斜面部17aが平坦部16から連なる前記の関係は、アノード電極11のパターン端部における膜断面に斜面17cが形成されていることにより、アノード電極11を形成した後においても保たれている。
【0013】
さらに、有機材料膜10の平坦部16の上部および斜面部17a、17bの上部と、斜面部17cを含むアノード電極11との上部とを覆うようにして、EL層12とカソード電極13とが形成されている。このEL層12は膜厚0.1μm程度の極薄の膜として蒸着やスパッタにより形成されるため、急峻な端面や段差が存在すると段切れなどの不具合が発生しやすいが、本実施の形態1においてEL層12は、有機材料膜10の平坦部16や平坦部16周辺に形成された斜面部17a上に形成されるので、そのような不良の発生は抑制されている。また、EL層12は下地に凹凸があると成膜時の被覆不良に起因して
表示不良を引き起こすことがあるが、本実施の形態1においては、有機材料膜10の平坦部16に加えて平坦部16の周囲において平坦部16から連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17a上にEL層12を形成するため、上述の不良を低減することが可能である。さらに、コンタクト開口部4の斜面部17bにおいても平坦部16から遠ざかりコンタクト開口部4の中央に近づくにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面が形成されているので、たとえば、EL層12の形成手段として蒸着を用いても、斜面部17b上の膜厚が均一に維持された層を形成することができ、良好な表示特性をえることができる。なお、図示していないが、EL層12は画素ごとに発光色を変えて形成してもよい。
【0014】
有機材料膜10を画素ごとに独立し、分離した状態で形成したときの効果を見るために、図1においてY−Yで示した箇所の断面図を図3に示し、従来の画素構造における水分の進入経路を比較例として図23に示す。図23に示すように、有機材料膜10は画素ごとに分離して形成されておらず、隣接する画素における有機材料膜と一体となっているため、絶縁性基板5の端部付近に位置する有機材料膜端部20から各画素へと水分が侵入する経路が矢印で示すように存在するが、本実施の形態1を適用した場合は図3に示すように、有機材料膜10は画素ごとに分離して形成されているため、絶縁性基板5の端部に位置する有機材料膜端部20からの水分の伝播経路が遮断されていることがわかる。
【0015】
コンタクト開口部4の位置については、図1や図2の構成に限定する必要は無い。たとえば、薄膜トランジスタ6の設置領域とコンタクト開口部4との位置関係は、コンタクト開口部4が画素電極7の領域内からはみ出さない状態にあればよい。逆に、画素電極7はコンタクト開口部4を含んだ領域であればよく、アノード電極11よりも大きくても良い。また、画素3の周辺部に相当する有機材料膜10の斜面部17aやアノード電極11の端部は、平坦部16と連なって連続的になだらかな斜面に加工する必要があるため、斜面部17a、17cにかからない場所であれば、コンタクト開口部4の形成位置は平坦部16のどこであっても構わない。また、一つの画素について、コンタクト開口部の数を一つに限る必要はない。
【0016】
図1から図3に示された本実施の形態1にかかるEL素子の素子構造においては、信号配線と走査線とに囲まれた領域を一つの画素とすると、画素の有機材料膜は隣接する画素の有機材料膜とは独立に分離された構造となっている。そのため、平坦化しやすい有機材料からなる有機材料膜10を用いたとしても、EL素子の周辺から有機材料膜10内を介して各画素へと水分が浸入するという経路を断つことになるので、水分によるEL層12の劣化を防止することが可能である。また、本実施の形態1においては、有機材料膜10の平坦部16に加えて平坦部16の周囲において平坦部16から連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17a、17b上にEL層12を形成するため、斜面部17a、17bを形成しない場合に比べてEL層の被覆不良を低減することが可能である。
【0017】
本実施の形態1にかかるEL素子の製造方法について図4から図6により説明する。図4においては、絶縁性基板5上に画素電極7を備えた薄膜トランジスタ6を有する画素(図1に示す)をマトリックス状に形成すると同時に、信号電極8、信号線2を形成し、画素電極7や信号電極8や信号線2上に配線保護膜9を形成した後、感光性アクリルなどの有機材料からなる有機材料膜10を形成する。ポジ型の感光性アクリルを使う場合、写真製版工程によって、最終的に平坦部16が形成される位置である画素3の右上部(図1において4で示す部分)に光を照射して、現像処理をおこなうことで有機材料膜10にコンタクト開口部4を形成することができる。このとき、感光性アクリル等の有機材料からなる有機材料膜10に光を照射する際の条件を最適化することにより、コンタクト開口部4の中央に近づくにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17bが平坦な部分に連なって形成される。感光性ポジ型の場合であれば、斜面部17bに相当する箇所の光量をコンタクト開口部4の底面部よりも若干低くしておくとよい。そして、コンタクト開口部4の底に露出している配線保護膜9を異方性ドライエッチング等の手段によりエッチングすることで画素電極7の接続部分となる領域の表面を露出させる。
【0018】
その後、図5に示すように、アノード電極11となる金属膜をスパッタ等の手段により成膜した後に画素周辺部の金属膜が除去されるような写真製版を行い、アノード電極11が画素ごとに分離した所望の形になるようエッチングを行った。ここで、アノード電極11は、コンタクト開口部4を介して画素電極7と接続されるように形成される。その後、レジスト14またはレジスト14除去後のアノード電極11をマスクとして、有機材料膜10のエッチングもしくは写真製版処理を行い、レジストを除去した状況を図6に示す。ここで、有機材料膜10は平坦部16に加えて平坦部16の周囲において平坦部16から連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17aを有する形状に加工され、しかも画素ごとに独立に分離された形状となっている。すなわち、有機材料膜10は、隣接する画素の有機材料膜とは、間隙18a、18bと信号線2との幅に相当する部分で分断されている。さらに、アノード電極11のパターン端部においては膜の断面において斜面17cが形成されている。このような斜面部17a、17cは、有機材料膜10上に形成される膜の被覆性を維持するために必要なものであり、アノード電極11のエッチング条件や有機材料膜10のエッチング条件あるいは現像条件を最適化することで得られるものである。また、斜面部17a、17cと同様にコンタクト開口部4に形成された斜面部17bも平坦部16から連なっているので、同等の効果を有している。
【0019】
図6に示した工程において、有機材料膜10は画素ごとに分離されたことになる。ここで、有機材料膜10の中に残存する水分を追い出すために加熱工程を加えてもよい。図6に示すように、有機材料膜10の斜面部17aはアノード電極11に被覆されておらず、残存する水分はこの被覆されていない部分から追い出されることになる。
【0020】
その後、有機材料膜10の平坦部16の上部および斜面部17a、17bの上部と、斜面部17cを含むアノード電極11との上部とに、EL層12とカソード電極13となるITOやIZTO等の透明導電膜を積層するように形成することにより、図2に示す素子構造が完成する。ここで、EL層12は隣接する画素にわたって同一レイヤーで成形してもよいが、画素ごとに発光する色がR、G、Bと異なるように成形してもよい。また、本実施の形態1においては、EL層12形成前に有機材料膜10内の水分を追い出す加熱を行うことにより、EL層12を有機材料膜10の斜面部17aに直接形成してもEL層12は劣化しない構造となっているため、有機材料膜10と隣接する有機材料膜との間隙部18a、18bに絶縁膜を形成する工程を省略することができた。なお、ここに示す製造方法は所望の構造を得るための一例であり、この製造方法に限定されるものではない。
【0021】
実施の形態2.
実施の形態1のEL素子においては、平坦化加工に適した有機材料からなる有機材料膜10からの水分漏出によるEL層12の劣化をより確実に防止するために、有機材料膜10を画素ごとに分離独立させることにより、EL素子の周辺から各画素への水分侵入を抑制させた。しかし、図2において示されているように、有機材料膜10の側面とEL層12とが直接接触している箇所、すなわち有機材料膜10の斜面部17aと接触するEL層12の部分があるため、たとえば、有機材料膜10中に水分がわずかに残存している場合には、有機材料膜10の中の水分が斜面部17aを通過してEL層12へ侵入するため、EL層の劣化が起こる可能性がある。
【0022】
図7に、本実施の形態2にかかわるEL素子の画素の断面構造を示す。図7においては、図2に示す本実施の形態1の構成と同一箇所には同一番号を付記している。本実施の形態1と異なる点は、本実施の形態2においては、侵入した水分によるEL層12の劣化をさらに抑制するために各画素の有機材料膜10を絶縁保護膜15で覆ったことを特徴としている点である。図7に示されている通り、有機材料膜10の斜面部17aとEL層12とは絶縁保護膜15を介して直接接触しない構造となっているため、有機材料膜10中に初期に残存するわずかの水分のEL層12への侵入を抑制することができ、EL層12の劣化をより確実に防止することが可能である。図7に相当する上面図は、本実施の形態1とほとんど同じであり、本実施の形態2においてはコンタクト開口部4以外の領域には絶縁保護膜15が存在するため、有機材料膜10がコンタクト開口部4を除いて絶縁保護膜15により被覆されている点のみ相違する。
【0023】
以下、図8から図10に従って、本実施の形態2にかかるEL素子の製造方法について説明する。図8においては、絶縁性基板5上に画素を駆動する信号を伝えるための画素電極7を備えた薄膜トランジスタ6や信号電極8を有する画素(図1に示す)をマトリックス状に形成するとともに信号線2を形成し、画素電極7や信号線2の上に配線保護のための配線保護膜9などを窒化珪素膜などで形成した後、感光性アクリルなどの有機材料からなる有機材料膜10を配線保護膜9上に形成する。ポジ型の感光性アクリルを使う場合、写真製版工程によって、画素と画素との間の部分に光を照射して、現像処理をおこなうことで有機材料膜10を画素ごとに独立に分離して形成させることができる。
【0024】
図8に示すように、有機材料膜10は、画素ごとに分離されて、しかも、平坦部16に加えて平坦部16の周囲において平坦部16から連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17aを有する形状に加工される。この斜面部17aは、アノード電極11や有機材料膜10上に形成される膜の被覆性を維持するために必要なものであり、感光性アクリル等の有機材料からなる有機材料膜に光を照射する際の条件を最適化することによりえられるものである。また、有機材料膜10は、隣接する画素の有機材料膜とは、間隙18a、18bと信号線2との幅に相当する部分で分断されている。
【0025】
その後、図9に示すように分離した有機材料膜10を被覆するように窒化珪素等の絶縁保護膜15をCVD等の手段により成膜してから、レジスト14を塗布し、コンタクト開口部4となる箇所が除去されるように露光と現像処理を行う。その後、コンタクト開口部4が形成される領域の絶縁保護膜15と、有機材料膜10と、配線保護膜9とを連続的または一括でエッチング除去することによりコンタクト開口部4が形成され、画素電極7の接続部分となる領域の表面が露出されて、図9の素子構造が形成された状態となる。
【0026】
その後は、レジスト14を除去し、本実施の形態1と同様に、アノード電極11となる金属薄膜をスパッタ等の手段により成膜した後に写真製版とエッチングを行うことにより、図10に示すように、アノード電極11が有機材料膜10を被覆する絶縁保護膜15の上に形成され、かつ、アノード電極11はコンタクト開口部4を介して画素電極7と接続される。このときの上面図にほぼ対応するのが、本実施の形態1において示した図1である。絶縁保護膜15の有無という相違点はあるが、有機材料膜10とアノード電極11とが画素ごとに独立に分離されており、コンタクト開口部4を介して画素電極7とアノード電極11とが接続されている状況については図10と同様に示されている。また、アノード電極11のパターン端部には、本実施の形態1と同様に、エッチング条件を最適化することにより斜面部17cが形成されている。
【0027】
さらに、有機材料膜10の平坦部16と斜面部17a、斜面部17b、および斜面部17cを含むアノード電極11と、それらを被覆する絶縁保護膜15との上部にEL層12とカソード電極13となるITOやIZTO等の透明導電膜を形成することにより、図7に示す素子構造が完成する。なお、ここに示す製造方法は所望の構造を得るための一例であり、この製造方法に限定されるものではない。絶縁保護膜15は、電気絶縁性の膜であればよく、たとえば、化学的気相法で成膜された酸化シリコン膜は緻密な膜質を有するのでなおよい。
【0028】
また、アノード電極11を有機材料膜10の斜面部17aに延在するように形成してもよく、この場合、発光面積が増大し、高い輝度がえられるのでよい。
【0029】
本実施の形態2においては、画素ごとに分離独立した有機材料膜10を被覆する絶縁保護膜15が形成されているため、有機材料膜10の斜面部17aとEL層12とが直接接触しない構造となっており、有機材料膜10中の残存水分によるEL層12の劣化を防止することが可能である。
【0030】
実施の形態3.
本実施の形態3によるEL素子を用いた表示装置を例にとって説明する。図11は、表示装置のうち、2×2の4画素についての上面図である。これら複数の画素は全く同等のように描かれているが、実際は、画素からの射出される光の色は画素ごとにR、G、Bとわかれていてもよい。図11において示される素子構造は、ガラス、石英等からなる絶縁性基板5上に、走査線1、信号線2と、走査線1と信号線2とで区切られる領域に配置されて表示装置の表示に寄与する光を射出するための画素3とからなり、画素3には走査線1と信号線2とから入力される走査信号や映像信号を画素3に伝える機能素子である薄膜トランジスタ(図示せず)と、画素3の全領域には薄膜トランジスタと接続されて画素3に信号を供給する画素電極7とが下層に形成されているものである。
【0031】
さらに、画素3の上層には、有機材料からなる有機材料膜10とアノード電極11とが画素ごとに独立に分離されて形成されており、有機材料膜10とアノード電極11とは長方形状をなし、周辺の端部と走査線1または、信号線2との間には間隙が形成されており、画素3と隣接する画素とはこの間隙と走査線1または信号線2との幅に相当する部分で分断されている。アノード電極11は有機材料膜10(図中では点線で記載)を完全に被覆した状態で形成されており、さらに有機材料膜10を示す点線の外側に形成されたコンタクト開口部4(空白の四角で示した部分)を介して下層の画素電極7と接続されている。なお、ここで、画素電極7は、信号線2と同じレイヤーの配線材料からなる。
【0032】
図11で示されている構造を詳しく見るために、図11のX−Xで示した箇所、すなわちコンタクト開口部4を含む箇所の断面図を図12に示した。絶縁性基板5上に形成された薄膜トランジスタ(図示せず)に接続されている画素電極7上の配線保護膜9の上部にパターニングされた有機材料膜10がある。走査線2をはさんだ各画素において有機材料膜10は形成されているが、有機材料膜10の周辺の端部と信号線2との間には間隙18a、18bが形成されており、隣接する画素とはこの間隙と信号線2との幅に相当する部分で分断されている。さらに、有機材料膜10は平坦部16に加えて平坦部16の周囲において平坦部16から連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17aを有する形状に加工されているため、上層であるEL層12が良好に被覆できるという効果を奏する。
【0033】
このような有機材料膜10を被覆するようにアノード電極11が形成されており、アノード電極11は、有機材料膜10が存在しない配線保護膜9上の領域に形成されたコンタクト開口部4を介して、下層である画素電極7と接続している。そして、有機材料膜10の平坦部16、斜面部17aとそれらを被覆するアノード電極11の上部にEL層12およびカソード電極13(ITOやIZTOなど)が形成されている構造を有する素子が本実施の形態3にかかる表示素子である。本実施の形態3にかかる素子構造においては、有機膜材料10が画素ごとに分離されていることに加えて、アノード電極11が画素電極7上の配線保護膜9の上部において有機材料膜10全体を覆い隠しているため、有機系材料からなる有機材料膜10を使用した場合に課題となる有機材料膜10からEL層12への水分の伝搬は、アノード電極11によって防止され、水分によるEL層12の劣化を防止することが可能であるという効果を奏する。また、EL層12は有機材料膜10の斜面部17aも被覆しているため、斜面部17aで発光する領域が増大し、かつ平坦部16における光照射方向と異なるため、斜めから見たときにも輝度を維持することが可能である。
【0034】
画素電極7の平面的な形状は特に規定されるものではない。すなわち、図12に記載されているように、画素3の領域全面に存在しなくてもよく、コンタクト開口部4を介してアノード電極11と接続すればよい。また、コンタクト開口部4の個数についても、多いほうがコンタクト抵抗を低減し、信号電流をより精密にアノード電極11に供給できる効果を奏するが、コンタクト抵抗の問題が無ければ、1個のみとしてもよい。
【0035】
本実施の形態3におけるEL素子の製造方法を図11、13、14、15、16に基づいて以下に説明する。図13は、絶縁性基板5上に、画素3を駆動する画素電極7を備えた薄膜トランジスタ(図示せず)を有する画素3を図11に示すようにマトリックス状に形成すると同時に、信号線2を形成し、薄膜トランジスタの画素電極7と信号線2を被覆するように配線保護膜9を形成した後、感光性アクリル等の有機系材料膜を塗布後、写真製版により有機材料膜10として加工し、写真製版およびエッチングにより配線保護膜9にコンタクト開口部4を形成した工程断面図である。ここで、有機材料膜10は、画素ごとに独立に分離されて、平坦部16に加えて平坦部16の周囲において平坦部16から連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17aを有する形状に加工される。また、有機材料膜10は、隣接する画素の有機材料膜とは、間隙18a、18bと信号線2との幅に相当する部分で分断されている。なお、本実施の形態3においては、有機材料膜10を形成した後にコンタクト開口部4を形成しているが、これらの形成の順序は逆にしてもよい。また、有機材料膜10の形成や斜面部17aの形成についての具体的な態様については、本実施の形態1に記載したとおりである。
その後、アノード電極11となる金属材料膜11aをスパッタ法等の成膜手段により成膜した状況を示したのが図14であり、コンタクト開口部4内部はアノード電極11となる金属材料膜11aによって埋められている。その後、コンタクト開口部4と有機材料膜10を被覆するように金属材料膜11aをパターニングすることによりアノード電極11を形成した後、有機材料膜10の平坦部16の上部と斜面部17a、17bの上部と、それらを被覆するアノード電極11の上部とに、EL層12とカソード電極13となるITO膜を形成することにより、図12で示したEL素子が完成することになる。
【0036】
本実施の形態3の変形例として、図15、図16に示される以下のような製造方法でもよい。まず、図14の状態から前記金属材料膜11aを全面エッチバックにより除去し、図15に示すようにコンタクト開口部4内部以外の前記金属材料膜11aを除去する。そして、アノード電極11となる金属材料膜11bを成膜した後、図16に示すように、コンタクト開口部4と有機材料膜10とを被覆するように金属材料膜11bをパターニングすることにより、金属材料膜11aと金属材料膜11bとからなるアノード電極11を形成する。この後は、有機材料膜10の平坦部16の上部と斜面部17a、17bの上部と、それらを被覆するアノード電極11の上部とに、EL層12とカソード電極13となるITO膜を形成することにより、図12に示すEL素子が完成することになる。このとき、コンタクト開口部4内部に埋め込まれている金属材料膜11aと、アノード電極11を構成する金属材料膜11bとは異種の金属でもよい。たとえば、コンタクト開口部4内部の金属材料膜11aとしてコンタクト特性に優れた材料を用い、コンタクト開口部4以外の金属材料膜11bとしてEL層12へのホール注入に最適な材料を用いることにより、両方の点で最適化されて発光特性が優れたEL素子を得ることができる。
【0037】
本実施の形態3においては、図12に示すように、アノード電極11が有機材料膜10全体を覆い隠しているため、有機系の有機材料膜10を使用した場合に課題となる水分の伝搬は、アノード電極11によって防止され、EL層12の劣化を防止可能な構造となる。また、EL層12は有機材料膜10の斜面部17aも被覆しているため、斜面部17aで発光する領域が増大し、かつ平坦部16における光照射方向と異なるため、斜めから見たときにも輝度を維持することが可能である。また、有機材料膜10にコンタクト開口部4を形成する必要が無いので、平坦部16の面積の比率を増やすことができる。さらに、有機材料膜10にコンタクト開口部4を形成する際に問題となる有機材料膜10に起因する異物の発生などのプロセス上の問題を排除できる。
【0038】
実施の形態4.
図17に、本実施の形態4にかかる表示素子の断面構造を示す。図11、図12で示される本実施の形態3の上面図、断面図における構成と同一部分には同一符号を付している。本実施の形態4は本実施の形態3を基にした形態であり、図の説明も本実施の形態3と同一の内容については省略する。本実施の形態4においては、有機材料膜10とアノード電極11との間に絶縁保護膜15が形成されており、アノード電極11と同様に絶縁保護膜15も有機材料膜10を被覆している点が本実施の形態3と異なる。本実施の形態4に示される素子構造により、有機材料膜10からEL層12への水分の伝播が絶縁保護膜15によってさらに阻止されるため、水分によるEL層12の劣化を防止するという効果を奏する。
【0039】
EL素子の製造方法は、図13、14、15、16に示す本実施の形態3とほぼ同じ工程よりなるので、同一の工程は記載せず、本実施の形態3の工程との相違点のみを説明する。本実施の形態3によるEL素子の製造方法においては、コンタクト開口部4が形成される領域の配線保護膜9をエッチング除去して画素電極7を露出させ、コンタクト開口部4を形成する工程があるが、実施の形態4においてはその工程よりも前に、画素ごとに独立して分離された有機材料膜10上に絶縁保護膜15を成膜する工程を追加する点が異なる。したがって、コンタクト開口部4を形成する工程では、絶縁保護膜15も配線保護膜9と同時にエッチング除去する必要がある。本実施の形態4において、コンタクト開口部4が形成される領域の配線保護膜9と絶縁保護膜15とをエッチング除去した工程の後、コンタクト開口部4が形成され、画素電極7の表面が露出された素子構造の断面図を図18に示す。本実施の形態3における図13と異なる点については既に記載したとおりである。図18に示した工程の後は、本実施の形態3と同様に、有機材料膜10の平坦部16と斜面部17aとを被覆するように、かつ、コンタクト開口部4を介して画素電極7と接続するようにアノード電極11を形成し、その後、有機材料膜10の平坦部16と斜面部17aの上部と、それらを被覆するアノード電極11の上部とに、EL層12とITO等の透明導電膜であるカソード電極13とを形成すると、図17の断面図に示すEL素子が完成する。なお、実施の形態3の変形例で示したように、コンタクト開口部4内部の金属材料膜としてコンタクト特性に最適な材料を用い、コンタクト開口部4以外の金属材料膜としてホール注入に最適な材料を用いると、本実施の形態4においても同様の効果をえることができる。
【0040】
実施の形態5.
本実施の形態5にかかるEL素子の素子構造について表示装置を例にして説明する。図19に示すのは、表示装置のうち、2×2の4画素についての上面図であり、これら複数の画素は全く同等のように描かれているが、実際は、画素からの射出される光の色は画素ごとにR、G、Bとわかれていてもよい。図19において示される素子構造は、ガラス、石英等からなる絶縁性基板5上に、走査線1、配線保護膜9に被覆された信号線2と、走査線1と信号線2とで区切られる領域にマトリックス状に配置されて表示装置の表示に寄与する光を射出するための画素3とからなり、画素3には走査線1と信号線2とから入力される走査信号や映像信号を画素3に伝える機能素子である薄膜トランジスタ(図示せず)と、薄膜トランジスタと接続されて画素3に信号を供給する画素電極7とが下層に形成されているものである。
【0041】
さらに、画素3の上層には、有機材料からなる有機材料膜10とアノード電極11とが画素ごとに独立に分離されて形成されており、画素3を構成する有機材料膜10とアノード電極11とは長方形状をなし、周辺の端部と走査線1または、信号線2との間には間隙が形成されており、画素3と隣接する画素とはこの間隙と走査線1または信号線2との幅に相当する部分で分断されている。アノード電極11は有機材料膜10を完全に被覆した状態で形成されており、図において有機材料膜10の外形はアノード電極11の領域内の点線で示されている。また、アノード電極11は、図19中の有機材料膜10を示す点線で囲まれた外側の領域である露出部19において下層の画素電極7と接続されている。図において画素電極7は画素3領域の過半を占めているように記載されているが、アノード電極11と接続されている限り、必ずしもその必要は無く、たとえば有機絶縁材料10が無い箇所のみに形成していてもよい。
【0042】
図19で示した構造を詳しく見るために、画素3と、画素3に隣接する画素の一部について、図のX−Xで示した箇所の素子構造の断面形状を図20に示す。ガラス、石英等からなる絶縁性基板5上に、配線保護膜9により被覆された信号線2と、画素電極7とが形成されており、画素電極7上には有機材料膜10が画素ごとに独立して分離されて形成されている。その周辺の端部と信号線2との間には間隙18a、18bが形成されており、隣接する画素とは間隙18a、18bと信号線2との幅に相当する部分で分断されている。また、有機材料膜10はおのおの平坦部16と斜面部17aとを有しており、有機材料膜10を被覆するようにアノード電極11が形成され、アノード電極11は有機材料膜10が存在しない領域である露出部19で下層の画素電極7と接続している。そして、有機材料膜10の平坦部16と斜面部17a、およびアノード電極11の上部に、EL層12、カソード電極13が積層されて形成されている。
【0043】
本実施の形態5においては、画素電極7の上部に、有機材料膜10の外周の少なくとも一部が画素電極7の外周よりも内側になるように形成されているため、画素電極7上に有機材料膜10が存在しない領域である露出部19が存在する。露出部19において下層の画素電極7と接続されるように、アノード電極11が有機材料膜10を被覆するように形成されているのでコンタクト開口部4を形成することなく、アノード電極11と画素電極7との電気的な接続をとることができる。さらに、アノード電極11が有機材料膜10を被覆しているため、この構造によっても有機系材料からなる有機材料膜10を使った場合に問題となる水分の伝播によるEL層12の劣化を阻止することができる。また、EL層12は有機材料膜10の斜面部17aも被覆しているため、斜面部17aで発光する領域が増大し、かつ平坦部16における光照射方向と異なるため、斜めから見たときにも輝度を維持することが可能である。
【0044】
本実施の形態5は、画素電極7上の配線保護膜9を除去することにより、本実施の形態1〜4では構成されていたコンタクト開口部4の形成を不要にした点に特徴がある。コンタクト開口部4の形成には斜面部17bが必須となるが、本実施の形態5においては有機材料膜10の斜面部17a以外に斜面部を形成する必要が無く、画素3においてEL層12の膜厚均一性を良好に維持できる平坦部16の面積比率を向上することができる。また、図19に示されているアノード電極11をより大きく広げて画素電極7の接続部をアノード電極11の外周に限定すれば、さらに平坦部16の面積比率を向上させることができるので、下地の凹凸に起因するEL層12の不良を抑制することができる。
【0045】
図20では、アノード電極11は有機材料膜10の断面形状の両側において画素電極7と接続されているが、必ずしも両側で接続されている必要はない。有機材料膜10を写真製版およびエッチングなどの工程で形成するときにアライメントずれや寸法変動によって、有機材料膜10の断面形状の片側でしか接続されなくとも、薄膜トランジスタの画素電極7から供給される電流がアノード電極11に伝達されることに関しては支障が無い。たとえば、図21のように有機材料膜10の位置がずれることにより、アノード電極11と画素電極7とが接続されない箇所があっても、有機材料膜10の外周の少なくとも一部において、画素電極7とアノード電極11とが接続していればよい。
【0046】
本実施の形態5におけるEL素子の製造方法について、図19、図20、図22を用いて以下に説明する。絶縁性基板5上に、画素電極7を備えた薄膜トランジスタ(図示せず)を有する画素3(図19に示す)を図19に示すようにマトリックス状に形成するとともに、信号線2を形成して、これらの上部に配線保護膜9を形成した後に、あらかじめ画素電極7上の配線保護膜9を写真製版およびエッチングなどの工程により除去しておく必要がある。図22に、レジスト14をマスクとして、信号線2上以外の箇所の配線保護膜9をエッチング除去した工程を示す。この後は、レジスト14を除去して、以下に説明する製造方法を経て図20に示すEL素子が完成する。
【0047】
まず、画素電極7上に有機材料膜10を形成後、画素周辺部の有機材料膜10を除去し、画素ごとに平坦部16と平坦部16の周囲に平坦部16に連なって平坦部16から遠ざかるにつれて有機材料膜10の膜厚が薄くなるような斜面部17aを有する形状に有機材料膜10を加工することにより、画素電極7の少なくとも一部に有機材料膜10によって被覆されない露出部19を形成する。また、有機材料膜10は、隣接する画素の有機材料膜とは、間隙18a、18bと信号線2との幅に相当する部分で分断される。具体的には、たとえば有機材料膜10としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、写真製版工程により画素3の周辺部に光を照射して現像処理を行うことにより、有機材料膜10を画素ごとに分離することができる。また、このとき、有機材料膜10に光を照射する際の光量を調整することにより、斜面部17aを形成することができる。
【0048】
その後、露出部19において画素電極7と接続されるように、かつ、有機材料膜10の平坦部16と斜面部17aとを被覆するようにアノード電極11を形成する。最後に、有機材料膜10の平坦部16の上部および斜面部17aの上部と、有機材料膜10を被覆するアノード電極11の上部とに、EL層12とITO等の透明導電膜であるカソード電極13とを形成して、図20に示すEL素子が完成する。本実施の形態5によるEL素子の製造方法においては、コンタクト開口部を形成するためのマスクは不要となる。本実施の形態5の特徴である画素電極7上の配線保護膜9の除去に由来してコンタクト開口部4の形成工程を省略することができるという効果を有する。
【0049】
以上に説明した本実施の形態1〜5によれば、EL層12の下層となる平坦部16を形成するために有機材料膜10を用いる場合であっても、有機材料膜10が個々の画素において独立するため、有機材料膜10を介した水分の伝搬を阻止することができ、水分によるEL層12の発光特性劣化を防ぐことができ、動作の安定した表示装置を製作することができる。また、本実施の形態1〜5においては、自発光性材料膜として、主に有機EL層を用いた場合について説明したが、無機EL層を用いても同様に構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1におけるEL素子の4画素を示す上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるEL素子の画素を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるEL素子の画素を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるEL素子の画素を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3におけるEL素子の4画素を示す上面図である。
【図12】本発明の実施の形態3におけるEL素子の画素を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図16】本発明の実施の形態3におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図17】本発明の実施の形態4におけるEL素子の画素を示す断面図である。
【図18】本発明の実施の形態4におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図19】本発明の実施の形態5におけるEL素子の4画素を示す上面図である。
【図20】本発明の実施の形態5におけるEL素子の画素を示す断面図である。
【図21】本発明の実施の形態5の変形例におけるEL素子の画素を示す断面図である。
【図22】本発明の実施の形態5におけるEL素子の画素を示す工程断面図である。
【図23】本発明の実施の形態1における比較例を示す画素の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 走査線、2 信号線、3 画素、4 コンタクト開口部、5 絶縁性基板
6 薄膜トランジスタ
7 薄膜トランジスタの画素電極、8 薄膜トランジスタの信号電極
9 配線保護膜、10 有機材料膜、11 アノード電極、12 EL層
13 カソード電極、14 レジスト、15 絶縁保護膜、16 平坦部
17a、17b、17c 斜面部
18a、18b 間隙
19 露出部、20 有機材料膜端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上に形成され、マトリックス状に配置された複数の画素および各画素に形成された薄膜トランジスタを有するEL素子であって、前記画素は、平坦部と前記平坦部の周囲において前記平坦部に連なって前記平坦部から遠ざかるにつれてそれ自身の膜厚が薄くなるような斜面をなす斜面部とを有する有機材料膜と、前記有機材料膜の少なくとも平坦部上に形成され、前記薄膜トランジスタと接続されるアノード電極と、前記平坦部上であって前記アノード電極上に形成された自発光性材料膜とを有し、前記有機材料膜は、画素ごとに独立に形成されていることを特徴とするEL素子。
【請求項2】
前記アノード電極と前記薄膜トランジスタとは、有機材料膜の平坦部に形成されたコンタクト開口部を介して電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項3】
前記有機材料膜は、前記コンタクト開口部を除いて、酸化シリコン膜もしくは窒化シリコン膜により被覆されていることを特徴とする請求項2記載のEL素子。
【請求項4】
前記有機材料膜は、前記アノード電極により被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項5】
前記有機材料膜は、酸化シリコン膜もしくは窒化シリコン膜により被覆されていることを特徴とする請求項4に記載のEL素子。
【請求項6】
絶縁性基板上に画素電極と接続された薄膜トランジスタを有する画素をマトリックス状に形成する工程と、前記画素電極上に配線保護膜を形成後、前記配線保護膜上に有機材料膜を形成する工程と、前記画素電極の表面を露出させるように、前記配線保護膜または前記有機材料膜の少なくとも一方にコンタクト開口部を形成する工程と、前記コンタクト開口部を介して前記画素電極と接続されるように前記有機材料膜上にアノード電極を形成する工程と、前記画素周辺部の前記有機材料膜を除去し、前記画素ごとに平坦部と前記平坦部の周囲に前記平坦部に連なって前記平坦部から遠ざかるにつれて前記有機材料膜の膜厚が薄くなるような斜面部を有する形状に前記有機材料膜を加工する工程と、
前記有機材料膜の前記平坦部の上部および前記斜面部の上部と前記アノード電極の上部とに自発光性材料膜を形成する工程とを有するEL素子の製造方法。
【請求項7】
有機材料膜を加工する工程の前に、画素周辺部のアノード電極を除去することを特徴とする請求項6に記載のEL素子の製造方法。
【請求項8】
有機材料膜を加工する工程の後に絶縁保護膜を形成する工程を有し、
コンタクト開口部を形成する工程においては、画素電極の表面が露出するように配線保護膜、並びに、前記絶縁保護膜または前記有機材料膜の少なくとも一方に前記コンタクト開口部を設ける工程とを有することを特徴とする請求項6に記載のEL素子の製造方法。
【請求項9】
有機材料膜を加工する工程の後に、アノード電極を形成する工程を有し、前記アノード電極を形成する工程においては、前記有機材料膜を被覆するように前記アノード電極を形成することを特徴とする請求項6に記載のEL素子の製造方法。
【請求項10】
有機材料膜を加工する工程とアノード電極を形成する工程との間に絶縁保護膜を形成する工程を有し、コンタクト開口部を形成する工程においては、画素電極の表面が露出するように配線保護膜と前記絶縁保護膜とに前記コンタクト開口部を設ける工程を有することを特徴とする請求項9に記載のEL素子の製造方法。
【請求項11】
絶縁性基板上に画素電極と接続された薄膜トランジスタを有する画素をマトリックス状に形成する工程と、前記画素電極上に配線保護膜を形成後、前記画素電極上の前記配線保護膜を除去した後に、前記画素電極上に有機材料膜を形成する工程と、
前記画素周辺部の前記有機材料膜を除去し、前記画素ごとに平坦部と前記平坦部の周囲に前記平坦部に連なって前記平坦部から遠ざかるにつれて前記有機材料膜の膜厚が薄くなるような斜面部を有する形状に前記有機材料膜を加工することにより、前記画素電極の少なくとも一部に前記有機材料膜によって被覆されない露出部を形成する工程と、前記露出部を介して前記画素電極と接続されるように、かつ、前記平坦部と前記斜面部とを被覆するようにアノード電極を形成する工程と、前記有機材料膜の前記平坦部の上部および前記斜面部の上部と前記アノード電極の上部とに自発光性材料膜を形成する工程とを有するEL素子の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−302860(P2006−302860A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251434(P2005−251434)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】