説明

EL表示装置

【課題】信頼性の高いEL表示装置を提供する。
【解決手段】アクティブマトリクス型のEL表示装置において、EL素子はシール材とフレーム材により封止されており、EL素子の上部電極とフレキブルプリントサーキット(FPC)とは接続配線により電気的に接続される。接続配線は、下部基板とシール材及びフレーム材との間を、上面がシール材と接するように設けられ、トランジスタのソース電極及びドレイン電極と同一層から形成される。この構造によりEL素子の劣化を防止するとともに、FPCとの電気的接続もスムーズに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置及びそれを用いた電子装置に関
する。具体的には、EL素子の劣化を防ぐための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料のEL現象を利用した自発光素子としてEL素子を用いた表示装置(E
L表示装置)の開発が進んでいる。EL表示装置は自発光型であるため、液晶表示装置の
ようなバックライトが不要であり、さらに視野角が広いため、屋外で使用する携帯型機器
の表示部として有望である。
【0003】
しかしながら、EL素子の基本部分となるEL層は有機材料であるため、極めて酸化に
弱く、僅かな酸素の存在により容易に劣化してしまう。また、熱にも弱く、これもまた酸
化を助長する原因となる。この酸化に弱いという欠点が、EL素子の寿命の短さの原因で
あり、実用化する大きな障壁となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、信頼性の高いEL表示装置を提供することを課題とする。そして、そのよ
うなEL表示装置を表示部として用いることにより表示部の信頼性が高い電子装置を提供
することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の構成について、図1を用いて説明する。図1(A)は本願発明のEL表示装
置であり、EL素子を密閉空間に封入するためのシーリング構造を設けていない状態を示
している。
【0006】
図1(A)において、101は基板、102は画素部、103はソース側駆動回路、1
04はゲート側駆動回路、105は画素部102、ソース側駆動回路103、ゲート側駆
動回路104をFPC(フレキシブルプリントサーキット)106に電気的に接続するた
めの接続配線である。また、FPCは外部機器へと電気的に接続され、これにより画素部
102、ソース側駆動回路103及びゲート側駆動回路104に外部からの信号を入力す
ることができる。
【0007】
画素部102、ソース側駆動回路103及びゲート側駆動回路104は基板101上に
形成された薄膜トランジスタ(以下、TFTという)で形成されている。なお、TFTと
しては如何なる構造のTFTを用いても良い。勿論、公知の構造であっても良い。
【0008】
図1(B)は、図1(A)の状態に、シーリング構造を設けた状態である。本願発明の
シーリング構造は、充填材(図示せず)、カバー材107、シール材(図示せず)及びフ
レーム材108を含む。
【0009】
ここで、図1(B)をA−A’で切断した断面図を図2(A)に、B−B’で切断した
断面図を図2(B)に示す。なお、図2(A)、(B)では図1(A)
、(B)と同一の部位に同一の符号を用いている。
【0010】
図2(A)に示すように、基板101上には画素部102、駆動回路103が形成され
ており、画素部102は電流制御用TFT201とそれに電気的に接続された画素電極2
02を含む複数の画素により形成される。この画素電極202はEL素子の陽極として機
能する。また、画素電極202を覆うようにEL層203が形成され、その上にはEL素
子の陰極204が形成される。
【0011】
なお、本明細書中では、陽極/EL層/陰極の組み合わせでなる素子をEL素子と呼ぶ
。実際には、陽極と陰極との間に電流を流し、EL層で電子と正孔とが再結合することに
より発光を得る。
【0012】
また、EL素子の構造は本願発明では特に限定しない。通常、陽極としては仕事関数の
大きい膜、例えば透明導電膜が用いられ、陰極としては仕事関数の小さい膜、例えばアル
カリ金属又はアルカリ土類金属を含む膜が用いられる。また、EL層は公知のあらゆる構
造を用いることができる。
【0013】
なお、本明細書中においてEL層とは、陽極と陰極との間にあってキャリアの移動、輸
送または再結合を行う場を提供する層を指す。再結合中心となる発光層のみからなる場合
もあるが、通常は電子注入層、電子輸送層、正孔注入層または正孔輸送層を組み合わせて
用いられる。
【0014】
また、EL層を形成する材料は無機材料と有機材料とがあるが、駆動電圧が小さくて済
む有機材料が好ましい。さらに、有機材料の中にも低分子系材料と高分子系(ポリマー系
)材料とがあるが、耐熱性が高い点と成膜が容易な点とから高分子系材料が有効である。
【0015】
ところで、画素部102が形成されると同時に駆動回路103も形成される。駆動回路
103はnチャネル型TFT205とpチャネル型TFT206とを相補的に組み合わせ
たCMOS回路を基本単位として形成される場合が多い。
【0016】
また、陰極204は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線105を経由してF
PC106に電気的に接続されている。さらに、画素部102及び駆動回路103に含ま
れる素子は全てパッシベーション膜207で覆われている。このパッシベーション膜20
7は省略することも可能であるが、各素子を外部と遮断する上で設けた方が好ましい。
【0017】
次に、EL素子を覆うようにして充填材208を設ける。この充填材208はカバー材
107を接着するための接着剤としても機能する。充填材208としては、PVC(ポリ
ビニルクロライド)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)ま
たはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。この充填材208の内
部に乾燥剤を設けておくと、吸湿効果を保ち続けられるので好ましい。
【0018】
また、カバー材107としては、ガラス板、アルミニウム板、ステンレス板、FRP(
Fiberglass-Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフロライド)フィルム、マイ
ラーフィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリルフィルムを用いることができる。な
お、充填材208としてPVBやEVAを用いる場合、数十μmのアルミニウムホイルを
PVFフィルムやマイラーフィルムで挟んだ構造のシートを用いることが好ましい。
【0019】
但し、EL素子からの発光方向(光の放射方向)によってはカバー材107が透光性を
有する必要がある。即ち、図2の場合はカバー材107の反対側に光が放射されるので材
質は問わないが、カバー材107側に放射されるような場合はカバー材107は透過率の
高い材質からなることが望ましい。
【0020】
次に、充填材208を用いてカバー材107を接着した後、充填材208の側面(露呈
面)を覆うようにフレーム材108を取り付ける。フレーム材108はシール材(接着剤
として機能する)209によって接着される。このとき、シール材209としては、光硬
化性樹脂を用いるのが好ましいが、EL層の耐熱性が許せば熱硬化性樹脂を用いても良い
。なお、シール材209はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい
。また、シール材209の内部に乾燥剤を添加してあっても良い。
【0021】
以上のような方式を用いてEL素子を充填材208に封入することにより、EL素子を
外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を
促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高いEL表示装置を作製
することができる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明を実施することで、EL表示装置のEL素子の部分の劣化を効果的に抑制する
ことができる。従って、信頼性の高いEL表示装置が得られる。また、そのような信頼性
の高いEL表示装置を電子装置の表示部として用いることで、電子装置の信頼性を高める
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】EL表示装置の上面構造を示す図。
【図2】EL表示装置の断面構造を示す図。
【図3】EL表示装置の断面構造を示す図。
【図4】二重真空方式の貼り合わせ装置を示す図。
【図5】EL表示装置の断面構造を示す図。
【図6】EL表示装置の断面構造を示す図。
【図7】EL表示装置の断面構造を示す図。
【図8】電子装置の具体例を示す図。
【図9】電子装置の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明の実施形態について図3を用いて説明する。図3は本願発明のEL表示装置を
切断した断面図である。なお、基本的な構造は図2(A)と同様であるので、必要に応じ
て説明を行う。
【0025】
図3のEL表示装置は、ガラス基板301上に形成されたTFTにより画素部302及
び駆動回路303が形成されている。また、画素部302に形成された電流制御用TFT
にはEL素子304が電気的に接続されている。なお、ガラス基板の代わりに、石英基板
、シリコン基板、ステンレス基板、プラスチック基板(プラスチックフィルムを含む)ま
たはセラミックス基板を用いても良い。但し、必要に応じて基板上に絶縁膜を設ける必要
がある。
【0026】
また、本実施形態では、電流制御用TFTに接続された画素電極(陰極)の上に、高分
子系有機材料を発光層とするEL層及び各画素共通の透明導電膜でなる陽極を形成してE
L素子とする。高分子系有機材料としては公知の如何なる材料を用いても良く、低分子系
有機材料を積層して用いても良い。また、公知の如何なる積層構造としても良い。本実施
形態では、陰極上に特開平8−96959号公報に従って白色発光の発光層を形成する。
陽極となる透明導電膜としては、酸化インジウムと酸化スズの化合物、酸化インジウムと
酸化亜鉛の化合物、酸化スズまたは酸化亜鉛を用いることができる。
【0027】
以上の構造を含むアクティブマトリクス基板の上には、充填材305としてPVBが設
けられ、充填材305には乾燥剤306として酸化バリウムが含まれている。酸化バリウ
ム以外にも特開平9−148066号公報に記載されたものを用いることができる。また
、乾燥剤の添加は本願発明において必須ではないが、信頼性をより高めるためには添加し
ておくことが望ましい。
【0028】
なお、乾燥剤はどのような形態で添加されていても良いが、大きな塊状(クラスター状
)で分散させると、画像の明るさを落とす要因になる可能性もあるため、できるだけ小さ
な粒状で分散させた方が好ましい。好ましくは、平均径100μmφ以下の粒状の乾燥剤
が、1×102〜1×105個/cm3の密度で含まれるような状態が好ましい。
【0029】
充填材305の上にはカバー材307としてガラス基板が設けられている。本実施形態
の場合、カバー材307は透光性でなければならない。これは、EL素子の構造により発
光層から発した光がカバー材307を透過して観測者に到達するからである。勿論、カバ
ー材307としてガラス基板の代わりに、プラスチック基板(プラスチックフィルムを含
む)、石英基板またはPVFフィルムを用いることもできる。
【0030】
また、本実施形態では、カバー材307に遮光膜308とカラーフィルター309が形
成されている。遮光膜308としては黒色顔料またはカーボンを含む樹脂を用いれば良い
。勿論、チタン膜、タンタル膜、タングステン膜等の金属膜を用いても良い。また、カラ
ーフィルター309としては赤色、緑色または青色の顔料を含む樹脂を用いれば良い。遮
光膜308とカラーフィルター309の成膜方法はインクジェット法、スピンコート法等
の公知の方法で良い。
【0031】
本実施形態では、EL素子として白色発光の発光層を単層で用い、そこから発する白色
光をカラーフィルターで色分離して赤色、緑色及び青色の発色を得る。これによりカラー
表示が可能となる。なお、本願発明で用いることのできるカラー表示方式は公知の如何な
る方式であっても良い。また、カラー表示に限らず、単色発光によるモノクロ表示も可能
である。
【0032】
ここで、充填材305を用いてカバー材307を接着する方法について図4を用いて説
明する。図4に示す装置は二重真空方式と呼ばれる方式の貼り合わせ装置である。この貼
り合わせ装置は、第1真空室401と第2真空室402を有し、各々には第1排気手段4
03、第2排気手段404、第1リークバルブ405、第2リークバルブ406が備え付
けられている。
【0033】
また、第2真空室402には加熱手段407が取り付けられ、抵抗加熱により第1真空
室402の内部の温度を上げることができる。さらに、第2真空室402の内部には、ア
クティブマトリクス基板(TFT及びEL素子の形成までを終えた基板)408、PVB
フィルム409及びカバー材410が配置される。
【0034】
次にまず、第1真空室401及び第2真空室402の内部を真空に排気する。そして、
この状態で加熱手段407により第2真空室402の内部が120℃程度まで加熱され、
PVBフィルム409が流動性を示すようになる。PVBフィルム409が流動性を示す
ようになったら、第1真空室401のリークバルブ405を開け、第1真空室401内を
大気解放して加圧する。
【0035】
第1真空室401が加圧されると、第1真空室401と第2真空室402とを仕切るダ
イアフラム(シリコーン、ゴム等で形成される)が、第2真空室402のカバー材410
を圧迫し、アクティブマトリクス基板408とカバー材410とが充填材409によって
完全に接着される。この後は、第2真空室402を室温に戻し、リークバルブ406によ
り大気解放する。なお、第2真空室402は冷却水等を循環させて強制冷却しても良い。
【0036】
以上のようにして、アクティブマトリクス基板とカバー材との貼り合わせ工程が行われ
る。なお、本実施形態では二重真空方式を用いているが、単一真空方式を用いても良い。
どちらの技術も「太陽電池ハンドブック,電気学会太陽電池調査専門委員会 編,pp.165-1
66,1985」に詳しい。
【0037】
以上のようにしてアクティブマトリクス基板とカバー材307とを充填材305によっ
て貼り合わせたら、シール材309によってフレーム材310を接着し、充填材305の
端面を完全に覆い隠す。本実施形態では、シール材309として紫外線硬化性のエポキシ
樹脂を用い、フレーム材310としてステンレス材を取り付ける。
【0038】
こうして図3に示すようなEL表示装置が完成する。このようなEL表示装置は、外部
から水分や酸素が侵入しないため、EL層の劣化を防ぐことができ、EL素子の寿命が長
い。即ち、非常に信頼性の高いEL表示装置である。
【実施例1】
【0039】
本実施例では、カバー材としてPVFフィルムを用いた例を図5に示す。図5において
、501は透光性基板(本実施例ではプラスチック基板)、502は画素部、503は駆
動回路であり、各々はTFTで形成されている。また、画素部502にはEL素子504
が形成され、画像表示が行われる。
【0040】
EL素子(またはその上のパッシベーション膜)まで形成されたアクティブマトリクス
基板の上に乾燥剤506を添加した充填材505を介してカバー材507を貼り合わせる
。貼り合わせ工程は図4に示した貼り合わせ装置を用いれば良い。このカバー材507は
、PVFフィルム507a、507bでアルミニウム箔(アルミホイル)507cを挟んだ
構造となっている。アルミニウム箔507cは耐湿性を高めるために設けられる。
【0041】
その後、紫外線硬化樹脂でなるシール材508を用いてフレーム材509を取り付ける
。本実施例ではフレーム材509としてステンレス材を用いる。最後にFPC510を取
り付けてEL表示装置が完成する。
【実施例2】
【0042】
本実施例では、本願発明を単純マトリクス型EL表示装置に実施した場合の例について
図6に示す。図6において、601はプラスチック基板、602はアルミニウム膜とフッ
化リチウム膜の積層構造(EL層に接する部分がフッ化リチウム膜)でなる陰極である。
本実施例では、陰極602を蒸着法により形成する。なお、図6では図示されていないが
、複数本の陰極が紙面に垂直な方向へストライプ状に配列されている。
【0043】
陰極602の上には高分子系有機材料でなるEL層(発光層のみ)603が印刷法によ
り形成される。本実施例では、PVK(ポリビニルカルバゾール)、Bu−PBD(2−
(4'−tert−ブチルフェニル)−5−(4''−ビフェニル)−1,3,4−オキサジア
ゾール)、クマリン6、DCM1(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−p−ジメチ
ルアミノスチリル−4H−ピラン)、TPB(テトラフェニルブタジエン)、ナイルレッ
ドを1,2−ジクロロメタンに溶解し、印刷法により陰極602上に転写した後、焼成し
て白色発光のEL層603を形成する。
【0044】
なお、本実施例ではEL層603を上記発光層のみの単層構造とするが、必要に応じて
電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層もしくは正孔素子層を設
けても良い。
【0045】
EL層603を形成したら、透明導電膜でなる陽極604を形成する。本実施例では、
透明導電膜として酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を蒸着法により形成する。なお、
図6では図示されていないが、複数本の陽極が紙面に垂直な方向が長手方向となり、且つ
、陰極と直交するようにストライプ状に配列されている。また、図示されないが陽極60
4は所定の電圧が加えられるように、後にFPCが取り付けられる部分まで配線が引き出
されている。
【0046】
陽極604を形成したら、パッシベーション膜605として100nm厚の窒化珪素膜
を形成する。これは、後にカバー材等を接着する際に、EL層604が外気に触れないよ
うにするための保護膜である。
【0047】
以上のようにして基板601上にEL素子を形成する。次に、カバー材606としてプ
ラスチック板を用意し、その表面に遮光膜607及びカラーフィルター608を形成する
。遮光膜607はカーボンを含む樹脂を用い、カラーフィルター608はRGBに対応し
た顔料を含む樹脂を用いる。成膜方法はインクジェット法、スピンコート法または印刷法
を用いれば良い。
【0048】
また、本実施例の構造ではEL素子から発した光がカバー材606を透過して観測者の
目に入るため、カバー材606は透光性である。本実施例ではプラスチック板を用いてい
るが、ガラス板、PVFフィルムなどの透光性基板(または透光性フィルム)を用いれば
良い。
【0049】
こうしてカバー材606を用意したら、乾燥剤609を添加した充填材610を介して
カバー材606を貼り合わせる。貼り合わせ工程は図4に示した貼り合わせ装置を用いれ
ば良い。その後、紫外線硬化樹脂でなるシール材611を用いてフレーム材612を取り
付ける。本実施例ではフレーム材612としてステンレス材を用いる。最後にFPC61
3を取り付けてEL表示装置が完成する。
【実施例3】
【0050】
本実施例では、本願発明を単純マトリクス型EL表示装置に実施した場合の例について
図7に示す。図7において、701はガラス基板、702は透明導電膜でなる陽極である
。本実施例では、酸化インジウムと酸化スズとの化合物をスパッタ法により形成する。な
お、図7では図示されていないが、複数本の陽極が紙面に垂直な方向へストライプ状に配
列されている。
【0051】
陽極702の上には絶縁膜(本実施例では窒化珪素膜)703がフォトリソグラフィに
より形成され、絶縁膜703の上にはアクリルもしくはポリイミド等の樹脂でなるスペー
サー704が形成される。スペーサー704は逆三角形になるように形成する。逆三角形
にするには、スペーサーとなる樹脂膜を積層構造で設け、下層ほどエッチングレートが速
い膜とすれば良い。また、スペーサー704は紙面と垂直な方向が長手方向となるストラ
イプ状に形成される。
【0052】
スペーサー704を形成したら、蒸着法によりEL層705及び陰極706を、真空を
破らずに連続形成する。EL層705としては、陽極側から30nm厚のCuPc(銅フ
タロシアニン)、50nm厚のTPD(トリフェニルアミン誘導体)及び50nm厚のA
lq(トリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体)を積層した構造とする。但し、膜厚
はこれに限定されるものではない。また、陰極706としては120nm厚のMgAg(
Mg:Ag=10:1の割合で共蒸着した合金)電極を用いる。これにより緑色発光のE
L素子が形成される。
【0053】
EL層705及び陰極706はシャドーマスクを用いて蒸着するため、不必要な部分に
成膜することなくEL層705及び陰極706を選択的に形成することができる。また、
画素部ではスペーサー704によって画素707相互の分離が行われるため、高密度に画
素707を集積化することができる。勿論、EL層705及び陰極706はスペーサー7
04に沿って紙面と垂直な方向が長手方向となるストライプ状に形成される。また、この
構造では陰極706は陽極702に直交するように配列される。
【0054】
陰極706までを真空を破らずに形成したら、さらに真空を破らずに保護電極708と
してアルミニウム膜でなる電極を形成する。保護電極708は陰極706に均一に電圧を
加えるための導電体として機能する一方、陰極706の酸化を防ぐ保護膜としても機能す
る。なお、図示されないが、保護電極708は全ての陰極に同じ電圧を加えられるよう電
気的に接続され、且つ、所定の電圧が加えられるように、後にFPCが取り付けられる部
分まで配線が引き出されている。
【0055】
以上のようにして基板601上にEL素子を形成する。次に、乾燥剤709を添加した
充填材710を介してカバー材711を貼り合わせる。貼り合わせ工程は図4に示した貼
り合わせ装置を用いれば良い。その後、紫外線硬化樹脂でなるシール材712を用いてフ
レーム材713を取り付ける。本実施例ではフレーム材713としてステンレス材を用い
る。最後にFPC714を取り付けてEL表示装置が完成する。
【0056】
なお、本実施例の構造ではEL素子から発した光がカバー材711の反対側に放射され
るため、カバー材606は透光性であっても遮光性であっても良い。本実施例ではカバー
材711としてガラス板を用いているが、プラスチック板、PVFフィルムなどの透光性
基板(または透光性フィルム)またはセラミックス板、PVFでアルミニウム箔を挟んだ
フィルム等を用いれば良い。
【実施例4】
【0057】
本願発明を実施して形成されたEL表示装置は、自発光型であるため液晶表示装置に比
べて明るい場所での視認性に優れ、しかも視野角が広い。従って、様々な電子装置の表示
部として用いることができる。例えば、TV放送等を大画面で鑑賞するには対角30イン
チ以上(典型的には40インチ以上)のELディスプレイ(EL表示装置を筐体に組み込
んだディスプレイ)の表示部として本願発明のEL表示装置を用いるとよい。
【0058】
なお、ELディスプレイには、パソコン用ディスプレイ、TV放送受信用ディスプレイ
、広告表示用ディスプレイ等の全ての情報表示用ディスプレイが含まれる。また、その他
にも様々な電子装置の表示部として本願発明のEL表示装置を用いることができる。
【0059】
その様な本願発明の電子装置としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型デ
ィスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、カーナビゲーションシステム、音響再生装
置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム
機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍
等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはコンパクトディスク(CD)、レーザ
ーディスク(LD)又はデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その
画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。特に、斜め方向から見
ることの多い携帯情報端末は視野角の広さが重要視されるため、EL表示装置を用いるこ
とが望ましい。それら電子装置の具体例を図8に示す。
【0060】
図8(A)はELディスプレイであり、筐体2001、支持台2002、表示部200
3等を含む。本願発明は表示部2003に用いることができる。ELディスプレイは自発
光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよりも薄い表示部とすること
ができる。
【0061】
図8(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部210
3、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。本願発明の
EL表示装置は表示部2102に用いることができる。
【0062】
図8(C)は頭部取り付け型のELディスプレイの一部(右片側)であり、本体220
1、信号ケーブル2202、頭部固定バンド2203、表示部2204、光学系2205
、EL表示装置2206等を含む。本願発明はEL表示装置2206に用いることができ
る。
【0063】
図8(D)は記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本
体2301、記録媒体(CD、LDまたはDVD等)2302、操作スイッチ2303、
表示部(a)2304、表示部(b)2305等を含む。表示部(a)は主として画像情
報を表示し、表示部(b)は主として文字情報を表示するが、本願発明のEL表示装置は
これら表示部(a)、(b)に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装
置には、CD再生装置、ゲーム機器なども含まれうる。
【0064】
図8(E)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体2401、カメラ部240
2、受像部2403、操作スイッチ2404、表示部2405等を含む。本願発明のEL
表示装置は表示部2405に用いることができる。
【0065】
図8(F)はパーソナルコンピュータであり、本体2501、筐体2502、表示部2
503、キーボード2504等を含む。本願発明のEL表示装置は表示部2503に用い
ることができる。
【0066】
なお、将来的にEL材料の発光輝度が高くなれば、出力した画像情報を含む光をレンズ
等で拡大投影してフロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる

【0067】
また、上記電子装置はインターネットやCATV(ケーブルテレビ)などの電子通信回
線を通じて配信された情報を表示することが多くなり、特に動画情報を表示する機会が増
してきている。EL材料の応答速度は非常に高いため、EL表示装置は動画表示に好まし
いが、画素間の輪郭がぼやけてしまっては動画全体もぼけてしまう。従って、画素間の輪
郭を明瞭にするという本願発明のEL表示装置を電子装置の表示部として用いることは極
めて有効である。
【0068】
また、EL表示装置は発光している部分が電力を消費するため、発光部分が極力少なく
なるように情報を表示することが望ましい。従って、携帯情報端末、特に携帯電話や音響
再生装置のような文字情報を主とする表示部にEL表示装置を用いる場合には、非発光部
分を背景として文字情報を発光部分で形成するように駆動することが望ましい。
【0069】
ここで図9(A)は携帯電話であり、本体2601、音声出力部2602、音声入力部
2603、表示部2604、操作スイッチ2605、アンテナ2606を含む。本願発明
のEL表示装置は表示部2604に用いることができる。なお、表示部2604は黒色の
背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0070】
また、図9(B)は音響再生装置、具体的にはカーオーディオであり、本体2701、
表示部2702、操作スイッチ2703、2704を含む。本願発明のEL表示装置は表
示部2702に用いることができる。また、本実施例では車載用カーオーディオを示すが
、携帯型の音響再生装置に用いても良い。なお、表示部2704は黒色の背景に白色の文
字を表示することで消費電力を抑えられる。これは携帯型の音響再生装置において特に有
効である。
【0071】
以上の様に、本願発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子装置に用いること
が可能である。また、本実施例の電子装置は実施例1〜7に示したいずれの構成のEL表
示装置を用いても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域と第2の領域とを有する第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向し、前記第1の領域と重なり、前記第2の領域とは重ならない第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板の前記第1の領域上に設けられた、半導体層、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を有する薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタ上に設けられた、第1の電極、前記第1の電極上のEL層、及び前記EL層上の第2の電極を有するEL素子と、
前記第2のガラス基板の端部に沿うシール材と、
前記シール材の外側に設けられたフレーム材と、
前記第1のガラス基板の前記第2の領域上に設けられ、前記シール材及び前記フレーム材の外側に設けられたフレキシブルプリントサーキットと、
前記EL素子の前記第2の電極と前記フレキシブルプリントサーキットとを電気的に接続する機能を有する接続配線と、を有し、
前記接続配線は、前記第1のガラス基板と前記シール材及び前記フレーム材との間に設けられた部分を有し、
前記接続配線と前記シール材とが重なる部分において、前記接続配線の上面は前記シール材と接する領域を有し、
前記接続配線は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同一層から形成されていることを特徴とするEL表示装置。
【請求項2】
第1の領域と第2の領域とを有する第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向し、前記第1の領域と重なり、前記第2の領域とは重ならない第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板の前記第1の領域上に設けられた、半導体層、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を有する薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタ上に設けられた、第1の電極、前記第1の電極上のEL層、及び前記EL層上の第2の電極を有するEL素子と、
前記第2のガラス基板の端部に沿うシール材と、
前記シール材の外側に設けられたフレーム材と、
前記第1のガラス基板の前記第2の領域上に設けられ、前記シール材及び前記フレーム材の外側に設けられたフレキシブルプリントサーキットと、
前記EL素子の前記第2の電極と前記フレキシブルプリントサーキットとを電気的に接続する機能を有する接続配線と、を有し、
前記接続配線は、前記第1のガラス基板と前記シール材及び前記フレーム材との間に設けられた部分を有し、
前記接続配線と前記シール材とが重なる部分において、前記接続配線の上面は前記シール材と接する領域を有し、
前記接続配線は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同一層から形成され、
前記接続配線は、前記第1基板の前記第2の領域において、部分的に設けられていることを特徴とするEL表示装置。
【請求項3】
第1の領域と第2の領域とを有する第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向し、前記第1の領域と重なり、前記第2の領域とは重ならない第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板の前記第1の領域上に設けられた、半導体層、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を有する薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタ上に設けられた、第1の電極、前記第1の電極上のEL層、及び前記EL層上の第2の電極を有するEL素子と、
前記EL素子上の第1の膜と、
前記第2のガラス基板の端部に沿うシール材と、
前記シール材の外側に設けられたフレーム材と、
前記第1のガラス基板の前記第2の領域上に設けられ、前記シール材及び前記フレーム材の外側に設けられたフレキシブルプリントサーキットと、
前記EL素子の前記第2の電極と前記フレキシブルプリントサーキットとを電気的に接続する機能を有する接続配線と、を有し、
前記接続配線は、前記第1のガラス基板と前記シール材及び前記フレーム材との間に設けられた部分を有し、
前記接続配線と前記シール材とが重なる部分において、前記接続配線の上面は前記シール材と接する領域を有し、
前記接続配線は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同一層から形成されていることを特徴とするEL表示装置。
【請求項4】
第1の領域と第2の領域とを有する第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と対向し、前記第1の領域と重なり、前記第2の領域とは重ならない第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板の前記第1の領域上に設けられた、半導体層、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を有する薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタ上に設けられた、第1の電極、前記第1の電極上のEL層、及び前記EL層上の第2の電極を有するEL素子と、
前記EL素子上の第1の膜と、
前記第2のガラス基板の端部に沿うシール材と、
前記シール材の外側に設けられたフレーム材と、
前記第1のガラス基板の前記第2の領域上に設けられ、前記シール材及び前記フレーム材の外側に設けられたフレキシブルプリントサーキットと、
前記EL素子の前記第2の電極と前記フレキシブルプリントサーキットとを電気的に接続する機能を有する接続配線と、を有し、
前記接続配線は、前記第1のガラス基板と前記シール材及び前記フレーム材との間に設けられた部分を有し、
前記接続配線と前記シール材とが重なる部分において、前記接続配線の上面は前記シール材と接する領域を有し、
前記接続配線は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同一層から形成され、
前記接続配線は、前記第1基板の前記第2の領域において、部分的に設けられていることを特徴とするEL表示装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記第1の膜は、前記接続配線と前記シール材とが重なる部分には設けられていないことを特徴とするEL表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記接続配線の上面が前記シール材と接する前記領域において、前記フレーム材は前記シール材を介して前記接続配線と重なる部分を有することを特徴とするEL表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記EL素子からの発光を取り出す領域には、前記フレーム材は設けられていないことを特徴とするEL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−163976(P2012−163976A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90928(P2012−90928)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【分割の表示】特願2009−205732(P2009−205732)の分割
【原出願日】平成11年9月22日(1999.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】