説明

EPAS1阻害剤の組成物および使用

本発明は、内皮PASドメインタンパク質1(EPAS1)阻害剤、ならびに該EPAS1阻害剤に関連する方法および組成物に関する。特定の実施形態において、該EPAS1阻害剤には、例えば、siRNAなどの核酸が含まれる。本開示は、EPAS1発現を調節するための組成物および方法を提供する。特に、EPAS1発現を調節するためのRNAi組成物は、EPAS1と関連する異常な増殖状態を治療するのに有用であると考えられる。本発明はまた、EPAS1阻害剤、ならびに標的細胞内におけるEPAS1の阻害を達成しうる、これらと関連する方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2008年4月4日に出願された米国仮特許出願第61/123,069号の利益を主張する。この出願の全ての教示は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
転写複合体である低酸素誘導因子(HIF)は、酸素ホメオスタシスの重要な調節因子である。低酸素状態は、酸素の輸送および鉄の代謝、赤血球生成、血管新生、解糖およびグルコースの取込み、転写、代謝、pHの調節、成長因子によるシグナル伝達、ストレスおよび細胞接着に対する応答を含めた多くの細胞過程および生理学的過程に関与する遺伝子の発現を誘導する。これらの遺伝子生成物は、低酸素組織に対する酸素送達の増大、または酸素を必要としない代替的な代謝経路(解糖)の活性化に関与する。低酸素誘導経路は、正常な細胞過程に必要とされるのに加え、血管新生、不死化、遺伝子の不安定性、組織浸潤、および転移を可能とするかまたは補助することにより、腫瘍の増殖もまた補助しうる(非特許文献1;非特許文献2)。
【0003】
HIFとは、その両方が塩基性ヘリックス−ループ−ヘリックス転写因子である、ベータサブユニットと複合したアルファサブユニットからなるヘテロ二量体である。HIFのベータサブユニットは、構成的な核タンパク質である。アルファサブユニットは、酸素反応経路に特異的な調節サブユニットであり、HIF1アルファ、HIF2アルファ、またはHIF3アルファ(それぞれ、HIF1α、HIF2α、およびHIF3α)という3つのサブユニットの1つでありうる(非特許文献2;非特許文献3)。
【0004】
腫瘍が血液供給を確立するまでは、低酸素状態が腫瘍の増殖を制限する。これに続いてHIF1α活性が上昇する結果、血管内皮成長因子(VEGF)などの標的遺伝子の発現が上昇する。VEGFの発現は、大半の充実性腫瘍における血管形成および血管新生の確立に不可欠である(非特許文献4)。HIF1α、VEGFの過剰発現、および腫瘍の悪性度の著明な関連はまた、悪性度が最も高い(患者の平均生存期間が1年未満である)神経膠腫であるヒト多形性神経膠芽腫においても見られる。急速に増殖する腫瘍がその血液供給を上回る結果、広範な壊死が生じ、これらの領域が高レベルのHIF1αタンパク質およびVEGF mRNAを発現することから、低酸素状態に対する腫瘍の反応が示唆される(Zagzagら、Cancer、88巻、2606〜2618頁、2000年)。
【0005】
HIF2α(また、内皮PASドメインタンパク質1(EPAS1)、MOP2、低酸素誘導因子2、HIF関連因子(HRF)、HIF1アルファ様因子(HLF)とも称する)をコードする遺伝子は当初、内皮細胞内において発現する転写因子として同定された(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。HIF活性がどのようにしてVEGFの発現を調節するのかを示す実験により、EPAS1活性の上昇と血管新生との連関が裏付けられている。正常なヒト腎細胞のEPAS1は低レベルであることが典型的であるが、EPAS1をコードするベクターをこれらの細胞内に導入すると、VEGFのmRNAレベルおよびタンパク質レベルが著明に上昇する(非特許文献9)。EPAS1を阻害したところ、VEGFの発現は著明に低下し、これにより、EPAS1の活性とVEGFの発現との直接の連関が裏付けられた(非特許文献9)。HIFの活性とVEGFの発現との相関はまた、悪性細胞および悪性組織においても観察される。EPAS1は、EPAS1をコードするベクターの不在下にある腎細胞癌(RCC)細胞株内において容易に検出することができる(非特許文献9)。正常組織と比較した、腎細胞癌の組織試料中におけるEPAS1 mRNAおよびVEGF mRNAの著明な増大は、EPAS1の異常な活性化が、RCCによる血管新生に関与しうることを示唆する(非特許文献9)。
【0006】
RCCに加え、他の悪性腫瘍におけるEPAS1の発現もまた報告されている。EPAS1は、ヒト膀胱癌、とりわけ、浸潤性の表現型を有するヒト膀胱癌において、mRNAおよびタンパク質のレベルで発現する(非特許文献10)。EPAS1の過剰発現の別の例は、頭頚部扁平上皮細胞癌(SCHNC)においても見られる。EPAS1レベルの上昇は、SCHNCの局所的な侵襲性挙動のほか、血管新生の強化とも関連する(非特許文献11)。これらの知見はまた、EPAS1の過剰発現と、化学療法に対する耐性との連関も裏付けた。EPAS1の過剰発現と癌とのさらに別の相関は、良性の褐色細胞腫と比べるとEPAS1レベルの上昇およびVEGF経路の誘導を示す、悪性の褐色細胞腫においても見られる(非特許文献12)。EPAS1の過剰発現はまた、肺非小細胞癌(NSCLC)においても一般的なイベントであり、癌細胞による多数の血管新生に関わる因子の上方調節および血管新生に関わる受容体の過剰発現にも関連する。NSCLCにおけるEPAS1の過剰発現は、予後不良の指標である(非特許文献13)。EPAS1のmRNAレベルおよびタンパク質レベルの上昇は、ヒト肺腺癌細胞においても見られ、低酸素状態に対するこれらの細胞の曝露により、EPAS1の発現がさらに上昇する(非特許文献14)。まとめると、これらの研究は、EPAS1の上昇により侵襲性の腫瘍挙動がもたらされ、HIF経路の標的化が、異なる複数種の癌の治療を補助しうることを裏付ける。
【0007】
さらに、低酸素状態の反応エレメントは、正常酸素状態下の癌細胞株内におけるVEGFアイソフォームの構成的な上方調節においても役割を果たす。神経膠芽腫細胞内の細胞型特異的なエンハンサーエレメント内にあるHREは、HREに対するEPAS1結合の増強を介して、VEGF発現の上方調節に関与する(非特許文献15)。低酸素誘導因子1ベータには結合しうるがHREには結合しえない、EPAS1の切断型には、VEGFプロモーターの転写活性化が不可能であった(非特許文献16)。これは、血管形成および血管新生に必要とされる因子の発現を増強することにより低酸素状態に対抗する、癌細胞の能力をさらに裏付ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Harris、Nat. Rev. Cancer、2巻、38〜47頁、2002年
【非特許文献2】Maxwellら、Curr. Opin. Genet. Dev.、11巻、293〜299頁、2001年
【非特許文献3】SafranおよびKaelin、J. Clin. Invest.、111巻、779〜783頁、2003年
【非特許文献4】Iyerら、Genes Dev.、12巻、149〜162頁、1998年
【非特許文献5】Emaら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、94巻、4273〜4278頁、1997年
【非特許文献6】Flammeら、Mech. Dev.、63巻、51〜60頁、1997年
【非特許文献7】Hogeneschら、J. Biol. Chem.、272巻、8581〜8593頁、1997年
【非特許文献8】Tianら、Genes Dev.、11巻、72〜82頁、1997年
【非特許文献9】Xiaら、Cancer、91巻、1429〜1436頁、2001年
【非特許文献10】Xiaら、Urology、59巻、774〜778頁、2002年
【非特許文献11】Koukourakisら、Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys.、53巻、1192〜1202頁、2002年
【非特許文献12】Favierら、Am. J. Pathol.、161巻、1235〜1246頁、2002年
【非特許文献13】Giatromanolakiら、Br. J. Cancer、85巻、881〜890頁、2001年
【非特許文献14】Satoら、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、26巻、127〜134頁、2002年
【非特許文献15】Liangら、J. Biol. Chem.、277巻、20087〜20094頁、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多くの疾患においてEPAS1が関与する結果として、EPAS1の機能を有効に調節することが可能なさらなる薬剤が必要であると長らく考えられてきたが、その必要性は依然として存在する。EPAS1発現の上方調節が多くの異なる種類の癌と関連することを踏まえるなら、このような阻害は、癌の治療においてとりわけ重要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、EPAS1発現を調節するための組成物および方法を提供する。特に、EPAS1発現を調節するためのRNAi組成物は、EPAS1と関連する異常な増殖状態を治療するのに有用であると考えられる。異常な増殖状態の例は、癌、腫瘍、過形成、肺線維症、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化、および血管内における平滑筋細胞の増殖などの過剰増殖障害である。EPAS1の阻害は、このような障害の治療に特に有用な手法でありうる。
【0011】
したがって、本発明は、EPAS1阻害剤、ならびに標的細胞内におけるEPAS1の阻害を達成しうる、これらと関連する方法および組成物を提供する。特に、標的細胞には、癌性細胞または腫瘍細胞など、望ましくない増殖を経る細胞、特定の疾患または状態と関連する過剰な増殖(growthおよび/またはproliferation)を経る細胞(例えば、自己免疫疾患または移植の拒絶におけるT細胞)、および病原体(例えば、細菌細胞および真菌細胞)が含まれる。本発明のEPAS1阻害は、EPAS1の発現またはEPAS1の生物学的機能(例えば、EPAS1の酵素活性)を低下させることにより、EPAS1を阻害しうる。
【0012】
EPAS1阻害剤は、核酸、低分子、抗体を包含するペプチド、ペプチド誘導体、またはペプチド模倣体でありうる。
【0013】
特定の実施形態は、核酸であるEPAS1阻害剤に関する。本発明は、特定の条件(例えば、生理学的条件または細胞内条件)下でEPAS1の転写物とハイブリダイズし、細胞内における標的遺伝子の発現を低下させる、少なくとも1つの部分を含む単離核酸を提供する。標的遺伝子の転写物は、任意のスプライシング前転写物(すなわち、イントロンを包含する)、スプライシング後転写物のほか、任意のスプライス変異体でありうる。特定の実施形態において、標的遺伝子の転写物は、配列番号1に記載の配列を有する。核酸類型の例には、例えば、RNAi構築物および触媒性の核酸構築物が含まれる。核酸は一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある。二本鎖核酸はまた、該鎖の一方または他方が一本鎖である突出領域または非相補性領域も包含しうる。一本鎖核酸は、自己相補性領域を包含しうるが、これは、該化合物が、二本鎖螺旋構造の領域を有する、いわゆる「ヘアピン」構造または「ステムループ」構造を形成することを意味する。核酸は、配列番号1(図1)によって指定される核酸配列など、標的遺伝子の核酸配列、またはその任意の相同体(例えば、オルトログおよびパラログ)もしくは変異体(例えば、対立遺伝子変異体)のうちの1000以下、500以下、250以下、100以下、または50以下のヌクレオチドからなる領域に相補的なヌクレオチド配列を含みうる。相補性領域は、好ましくは、少なくとも8ヌクレオチドであり、場合によっては、少なくとも10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドである。相補性領域は、標的遺伝子転写物のイントロンの範囲内に入る場合もあり、コード配列の範囲内に入る場合もあり、非コード配列の範囲内に入る場合もある。一般に、核酸は、約8〜約500ヌクレオチドまたは同塩基対の長さであり、場合によって、該長さは約14〜約50ヌクレオチドである。核酸は、DNAの場合もあり、RNAの場合もあり、RNA:DNAハイブリッドの場合もある。任意の一本鎖には、DNAおよびRNAの混合物のほか、DNAまたはRNAとして容易に分類できない修飾形態も含まれうる。同様に、二本鎖核酸は、DNA:DNAの場合もあり、DNA:RNAの場合もあり、RNA:RNAの場合もあり、また、任意の一本鎖にも、DNAおよびRNAの混合物のほか、DNAまたはRNAとして容易に分類できない改変形態が含まれうる。核酸は、骨格(ヌクレオチド間の結合を含めた、天然の核酸における糖−リン酸部分)または塩基部分(天然核酸のプリン部分またはピリミジン部分)に対する1つまたは複数の修飾を含めた、各種の修飾のいずれかを包含しうる。核酸は、約15〜約30ヌクレオチドの長さであることが好ましく、血清中、細胞内、または経口送達される核酸の場合における胃、および吸入される核酸の場合の肺など、該核酸が送達される可能性が高い場所における安定性などの特徴を改善する1つまたは複数の修飾を含有することが多い。RNAi構築物の場合、標的転写物に相補的な鎖は一般に、RNAまたはその修飾体である。他の鎖は、RNAの場合もあり、DNAの場合もあり、他の任意の変異体の場合もある。二本鎖RNAi構築物または一本鎖「ヘアピン」RNAi構築物の二重鎖部分は、好ましくは、18〜30ヌクレオチドの長さであり、場合によっては、約21〜27ヌクレオチドの長さである。触媒性または酵素性の核酸は、リボザイムの場合もあり、DNA酵素の場合もあり、また、修飾形態も含有しうる。本明細書における核酸は、生理学的条件下、ノンセンス対照またはセンス対照がほとんどまたはまったく影響を及ぼさない濃度で細胞と接触させた場合、標的のEPAS1遺伝子の発現を約50%、75%、90%以上阻害しうる。核酸の作用を調べるのに好ましい濃度は、1、5、10、20、50、100、または1000ナノモルである。本明細書における核酸はまた、細胞の表現型に対する効果についても調べることができる。特定の癌細胞株の場合、標的核酸の投与時において、細胞死または増殖速度の低下を測定することができる。好ましくは、実験的に有意味な核酸濃度では、細胞増殖が50%を超えて阻害される。
【0014】
特定の態様において、本発明は、各種のEPAS1阻害剤、例えば、EPAS1遺伝子(または標的とされる核酸)を標的とする核酸のいずれかを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は一般に、薬学的に許容される担体を包含する。医薬組成物は、生理学的条件下で標的の遺伝子転写物とハイブリダイズし、細胞内における標的遺伝子の発現を低下させる核酸を含みうる。
【0015】
特定の態様において、本発明は、細胞内におけるEPAS1遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。該方法は、該細胞を、生理学的条件下で標的のEPAS1転写物とハイブリダイズし、細胞内における標的遺伝子の発現を低下させる有効量の核酸と接触させるステップを含みうる。EPAS1を標的とする、開示される核酸のいずれかを、このような方法において用いることができる。細胞は、腫瘍細胞または癌性細胞の場合もあり、病原体細胞の場合もあり、正常細胞の場合もある。特定の実施形態において、正常細胞は、患者における特定の疾患または状態をもたらす、望ましくない増殖を経る。
【0016】
特定の態様において、本発明は、対象における腫瘍の増殖速度を低下させる方法であって、該腫瘍の増殖速度を低下させるのに十分な量の、本明細書におけるEPAS1阻害剤を投与するステップを含む方法を提供する。特定の態様において、本発明は、癌に罹患する患者を治療する方法であって、本明細書におけるEPAS1阻害剤を該患者に投与するステップを含む方法を提供する。EPAS1阻害剤は、核酸、例えば、RNAi核酸または触媒性核酸であり得、薬学的に許容される担体と共に製剤化することができる。場合によって、腫瘍は、核酸が標的とする遺伝子を発現する1つまたは複数の癌細胞を含む。標的のEPAS1遺伝子は、同等の組織に由来する非癌性細胞と比べて過剰発現しうる。腫瘍はまた、転移性腫瘍でもありうる。このような治療は、核酸と共に相加的または相乗作用的な形で癌細胞を阻害する、少なくとも1つのさらなる抗癌化学療法剤と組み合わせることができる。核酸および(1つまたは複数の)さらなる抗癌剤は、組合せ製剤として併せて製剤化することもでき、個別に製剤化し、組合せ効果を達成するような形(例えば、タイミング、用量)で投与することもできる。
【0017】
特定の態様において、本発明は、例えば、癌または病原体による感染を治療するための医薬の製造における核酸の使用を提供する。
【0018】
特定の態様において、本発明は、病原体が感染した患者または病原体により汚染された対象から病原体を除去または低減するための方法および組成物を提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、パッケージ化された医薬品を提供する。このようなパッケージ化された医薬品は、(i)EPAS1遺伝子を標的とする、本明細書で開示される治療有効量の阻害剤と、(ii)EPAS1遺伝子を発現する腫瘍を有する患者を治療するためのEPAS1阻害剤の投与のための指示書および/またはラベルとを含む。
【0020】
本発明の別の態様は、パッケージ化された消毒剤を提供する。パッケージ化された消毒剤は、病原体などの1つまたは複数の感染作用物質に対して特的なものであってもよい。このようなパッケージ化された消毒剤は、(i)感染作用物質中におけるEPAS1遺伝子を標的とする有効量のEPAS1阻害剤と、(ii)感染作用物質の量を除去または低減するためのEPAS1阻害剤の投与のための指示書および/またはラベルとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1−1】図1は、ヒトEPAS1のcDNA配列(GenBank受託番号第NM_001430号)(配列番号1)を示す図である。下線を付して太字とした11塩基ずつの3つの連続塩基は、配列番号2〜4により表されるコア標的配列に対応する。
【図1−2】図1は、ヒトEPAS1のcDNA配列(GenBank受託番号第NM_001430号)(配列番号1)を示す図である。下線を付して太字とした11塩基ずつの3つの連続塩基は、配列番号2〜4により表されるコア標的配列に対応する。
【図2】図2は、A498(ヒト腎癌)細胞内における3つの初期siRNA二重鎖:siEPAS1A(配列番号5および6)、siEPAS1B(配列番号7および8)、およびsiEPAS1C(配列番号9および10)の抗EPAS1活性の評価を示す図である。siCON1がEPAS1の下方調節(トランスフェクトされない細胞と比べて)を示さなかったのに対し、EPAS1に対する3つのsiRNAすべてが、EPAS1 mRNAに対する著明な下方調節を示した。
【図3】図3Aは、A498細胞の3つの初期部位の近傍にある、さらなるsiRNA二重鎖の抗EPAS1活性を示す。検討された二重鎖のうちで、siEPAS1A−2、siEPAS1A−1、siEPAS1A、siEPAS1A+3、siEPAS1B−4、およびsiEPAS1C−4が、最も強力な抗EPAS1活性を示した。図3Bは、タイリング実験の設計についての例示である。
【図4】図4は、A498細胞の増殖に対する、複数の抗EPAS1 siRNA二重鎖(最も強力な抗EPAS1活性を示した二重鎖;図3Aを参照されたい)の効果をさらに検討する図である。被験のsiRNA二重鎖のうち、siEPAS1A−2およびsiEPAS1Aが、リアルタイム細胞電子センシング(RT−CES)により測定されたA498細胞の増殖に対する最も著明な阻害剤である。
【図5】図5は、siEPAS1A−2(配列番号29および30)が、培養されたヒト腎細胞癌細胞株(A498、786−O、およびCaki−1)における細胞内EPAS1 mRNAレベルを有効に低下させることを示す図である。
【図6A】図6は、siEPAS1A−2による治療時における細胞増殖速度の低下を示す図である。VHL状態に基づき予測される通り、siEPAS1A−2が、A498細胞および786−O細胞においては著明な抗増殖効果を達成したが、Caki−1細胞においては同効果を達成しなかったことにより、VHLを欠損する癌細胞が、細胞内HIFレベルを低下させる治療に適する候補細胞であることが示される。
【図6B】図6は、siEPAS1A−2による治療時における細胞増殖速度の低下を示す図である。VHL状態に基づき予測される通り、siEPAS1A−2が、A498細胞および786−O細胞においては著明な抗増殖効果を達成したが、Caki−1細胞においては同効果を達成しなかったことにより、VHLを欠損する癌細胞が、細胞内HIFレベルを低下させる治療に適する候補細胞であることが示される。
【図6C】図6は、siEPAS1A−2による治療時における細胞増殖速度の低下を示す図である。VHL状態に基づき予測される通り、siEPAS1A−2が、A498細胞および786−O細胞においては著明な抗増殖効果を達成したが、Caki−1細胞においては同効果を達成しなかったことにより、VHLを欠損する癌細胞が、細胞内HIFレベルを低下させる治療に適する候補細胞であることが示される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の概要
本発明の一態様は、配列番号2〜4から選択される配列を含む、約15〜約30ヌクレオチドの長さの第1鎖と、約15〜約30ヌクレオチドの長さの第2鎖とを含み、第1鎖および第2鎖のうちの少なくとも12ヌクレオチドが互いに相補的であり、生理学的条件下で二本鎖核酸を形成し、該二本鎖核酸が、RNA干渉機構を介して細胞内における内皮PASドメインタンパク質1(EPAS1)の発現を低下させうる核酸に関する。
【0023】
特定の実施形態において、核酸は、場合によって、約15〜約30ヌクレオチドの長さの二本鎖RNAである。他の実施形態において、核酸は、約4〜約10ヌクレオチドの長さのループ領域を含むヘアピンRNAである。本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、核酸は、その第1鎖としてのDNAポリヌクレオチドと、その第2鎖としてのRNAポリヌクレオチドとを含みうる。一部の実施形態において、前出の核酸の第1鎖および/または第2鎖は、3’突出領域を含む場合もあり、5’突出領域を含む場合もあり、3’突出領域および5’突出領域の両方を含む場合もあり、該突出領域は、場合によって、約1〜約10ヌクレオチドの長さを含有する。
【0024】
開示される実施形態のいずれかにおいて、核酸の第1鎖は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81から選択される配列を含みうる。同様に、第2鎖は、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、および82から選択される配列を含みうる。
【0025】
本発明の別の態様は、生理学的条件下で、配列番号1のヌクレオチド655〜718、2878〜2929、または4978〜5039に対応するEPAS1転写物の領域とハイブリダイズし、細胞内におけるEPAS1の発現を低下させる配列を含む単離核酸に関する。さらなる実施形態において、該核酸は、配列番号1のヌクレオチド665〜708、2888〜2919、または4988〜5029に対応するEPAS1転写物の領域とハイブリダイズする配列を含む。特定の実施形態において、該核酸は、配列番号1のヌクレオチド670〜703、2893〜2914、または4992〜5024に対応するEPAS1転写物の領域とハイブリダイズする配列を含む。特定の実施形態において、該核酸は、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある。
【0026】
開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、核酸は、前記EPAS1の領域のうちの1つに相補的な少なくとも10の連続ヌクレオチドを含みうる。該核酸は、約14〜約50ヌクレオチドの長さでありうる。本明細書に記載の核酸は、RNA分子の場合もあり、DNA分子の場合もあり、DNA鎖およびRNA鎖を含む場合もある。
【0027】
一部の実施形態において、開示される核酸のうちのいずれかは、配列番号2〜4から選択される配列を含むRNAi構築物でありうる。特定の実施形態において、該核酸は、配列番号5〜82から選択される配列を含むRNAi構築物である。他の実施形態において、該核酸は、酵素性核酸、例えば、リボザイムまたはDNA酵素でありうる。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、開示される核酸のうちのいずれかは、RNAi構築物、例えば、dsRNAまたはヘアピンRNAでありうる。RNAi構築物の二重鎖部分は、約15〜約30ヌクレオチドの長さでありうる。
【0029】
開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、核酸は、場合によって、以下:アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシルメチルエステル、カーボネート、リン酸トリエステルのうちの1つまたは複数を含みうる、1つまたは複数の修飾骨格部分または修飾塩基部分を含む。該修飾骨格部分または修飾塩基部分は、場合によって、少なくとも1つの2’−O−アルキル化リボヌクレオチドを含む。
【0030】
特定の実施形態において、上記の核酸、および/または上記の適用可能な組合せのうちのいずれかによる核酸は、生理学的条件下で、例えば、約10または約20ナノモルの濃度で細胞と接触させると、該細胞におけるEPAS1発現を50%以上阻害する。
【0031】
本発明の別の態様は、開示される実施形態のうちのいずれかによる核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0032】
特定の実施形態において、薬学的に許容される担体には、陽イオンポリマーが含まれる。薬学的に許容される担体には、シクロデキストリンポリマー、例えば、im−CDPが含まれる。特定の実施形態において、医薬組成物は、シクロデキストリンポリマー、および開示される核酸のうちのいずれかを包含する粒子を含む場合もあり、かつ/またはPEG化される場合もある。
【0033】
他の実施形態において、医薬組成物の粒子は、アダマンタンをさらに含みうる。一部の実施形態において、医薬組成物は、特定の組織型または細胞型を標的とするリガンドを含み、場合によって、該リガンドは、トランスフェリンを含む。特定の実施形態において、医薬組成物は、約50〜約70nmの直径、例えば、約50nmの直径など、約10〜約100nmの直径のナノ粒子を含む。
【0034】
さらなる実施形態において、薬学的に許容される担体は、イミダゾール修飾された、シクロデキストリンを含有する陽イオンポリマーと、アダマンタン−PEG−リガンドを含む標的化部分とを含み、該ポリマーおよび標的化部分は、該核酸を封入するナノ粒子を形成する。該ナノ粒子は、約50〜約100nm、例えば、約50〜約70nm、さらにまたは約50nmなど、約50〜約120nmの直径である。例えば、医薬組成物の標的化リガンドは、ガラクトースおよび/またはトランスフェリンを含みうる。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、細胞の望ましくない増殖と関連する疾患または状態を治療するための医薬の製造における、開示される核酸のうちのいずれかの使用に関する。細胞は、癌性細胞の場合もあり、腫瘍細胞の場合もあり、病原性細胞の場合もある。特定の実施形態において、細胞は、その望ましくない増殖により疾患または状態がもたらされる正常細胞でありうる。
【0036】
本発明の他の態様は、癌を有する患者を治療する方法であって、治療有効量の、上述の核酸のうちのいずれかを該患者に投与するステップを含む方法に関する。特定の実施形態において、該方法は、例えば、核酸と共に相加的または相乗作用的な形で癌細胞の増殖を阻害する、少なくとも1つのさらなる抗癌化学療法剤、例えば、フルオロウラシル(5FU)を投与するステップをさらに含みうる。一部の実施形態において、癌細胞は、同等の組織に由来する非癌性細胞と比較してより高レベルのEPAS1を発現する。
【0037】
特定の実施形態において、本発明は、癌を有する患者を治療する方法であって、RNAi機構を介してEPAS1の発現を低下させる治療有効量の二本鎖核酸と、EPAS1発現を誘導する1つまたは複数の抗癌剤とを該患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0038】
上記または他の箇所に記載の方法のうちのいずれかにおいて、核酸は、薬学的に許容される担体と共に製剤化することができる。特定の実施形態において、該核酸は、腎明細胞癌などの癌細胞を標的とするリガンドと共に製剤化することができ、例えば、該リガンドは、場合によってトランスフェリンおよび/またはガラクトースを含む。該核酸は、ポリマーナノ粒子による成分として製剤化することができ、該ナノ粒子は、約50〜約120nmの直径、例えば、約50〜約100nmの直径、さらにまたは約50nmの直径など、約10〜約120nmの直径である。
【0039】
本明細書で開示される方法のうちのいずれかにおいて、治療有効量の核酸は、全身投与することができる。
【0040】
本明細書に記載の方法は、核酸を投与するステップの前に、患者におけるフォンヒッペル−リンダウ(VHL)タンパク質活性のレベルを決定するステップをさらに含みうる。例えば、前記活性は、健康な対象におけるVHLのRNAレベルまたはタンパク質レベルと比較した、該患者における前記レベルの低下を測定することにより決定することができる。他の実施形態において、前記活性は、切断を引き起こす突然変異または対立遺伝子の喪失を引き起こす突然変異を含む、VHL遺伝子における1つまたは複数の突然変異を同定するための遺伝子スクリーニングにより決定することができる。さらに、該1つまたは複数の突然変異は、ノンセンス突然変異、フレームシフトの突然変異、プロモーターの突然変異、エンハンサーの突然変異、スプライス部位の突然変異、ヌル突然変異、またはポリAテールの突然変異を含みうる。
【0041】
発明の詳細な説明
概観
EPAS1の活性化は、HIFの標的遺伝子、中でもとりわけ、VEGF、TGF−アルファ、Met、間質細胞由来因子(SDF)1、およびケモカイン受容体であるCXCR4をコードする遺伝子の上方調節を結果としてもたらす(Soccioら、Jour. Biol. Chem.、280巻、19410〜19418頁、2005年;KimおよびKaelin、J. Clin. Onocology、22巻、4991〜5004頁、2004年)。EPAS1は、それ自体として、癌治療の望ましい標的である。特に、EPAS1の上方調節は、腎細胞癌と密接に関連しており、部分的に、そのフォンヒッペル−リンダウ腫瘍抑制遺伝子(VHL)との関連に起因する。VHLの不活化は、多様なVHL関連異常、特に、腎明細胞癌(RCC)の発生と連関する。VHL遺伝子の産物であるpVHLは、HIFのαサブユニットを認識し、それをポリユビキチン化およびプロテアソームによる分解の標的とする複合体の一部である。したがって、VHLが欠損する癌細胞は、HIFレベルが高く、細胞内HIFレベルを低下させる治療の良好な候補細胞となっている。
【0042】
EPAS1の阻害は、その酵素活性など、細胞内におけるEPAS1の生物学的活性を阻害することにより達成することができる。代替的に、EPAS1の阻害は、細胞内におけるEPAS1遺伝子の発現を阻害することによっても達成することができる。EPAS1の活性および/または発現を下方調節する低分子および核酸が利用可能である。少数の例には、アンチセンス分子(例えば、米国特許第7,217,572号)および短鎖ヘアピンRNA(Kondoら、1巻、3号、439〜444頁、2003年;およびZimmerら、2巻、89〜95頁、2004年で説明される)が含まれる。にもかかわらず、EPAS1を下方調節する新規のツールとして、新規であり、また改善されたEPAS1阻害剤が依然として所望される。
【0043】
核酸によるEPAS1阻害剤
特定の態様において、対象の発明は、EPAS1遺伝子の核酸阻害剤、また、例えばEPAS1遺伝子の発現を低下させるかまたは下方調節することによりEPAS1遺伝子またはEPAS1タンパク質の活性を阻害するかまたは低下させる方法を提供する。「阻害する」または「低下させる」とは、1つまたは複数のタンパク質またはタンパク質サブユニットをコードする遺伝子の発現、または核酸もしくは同等核酸のレベルが、対象の発明による核酸薬剤の不在下において観察される発現またはレベル未満に低下することを意味する。
【0044】
本明細書で用いられる「核酸」または「核酸薬剤」という用語は、ヌクレオチドを含有し、EPAS1遺伝子に対して所望の効果を及ぼす、任意の核酸ベースの化合物を指す。該核酸は、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり、多数本鎖の場合もあり、また、修飾ヌクレオチドを含む場合もあり、非修飾ヌクレオチドを含む場合もあり、ヌクレオチド以外の分子を含む場合もあり、これら各種の混合物および組合せを含む場合もある。対象の発明による核酸薬剤の例には、dsRNA、siRNA、および酵素核酸が含まれるがこれらに限定されない。
【0045】
特定の実施形態において、対象の発明は、真核生物または原核生物を含めた1つまたは複数の種に由来するEPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAを標的とする核酸阻害剤を提供する。特定の実施形態では、該核酸阻害剤を、それらが、特定の種に由来するEPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAの配列の発現は特異的に阻害するが、他の種に由来するEPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAの発現は阻害しないように設計することができる。例えば、病原体感染の治療に有用な核酸阻害剤を、それらが、病原体におけるEPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAの発現は特異的に阻害するが、宿主のEPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAの発現は阻害しないように設計することができる。
【0046】
特定の実施形態において、対象の発明は、EPAS1遺伝子内における1つまたは複数の特定の領域を標的とする、EPAS1遺伝子の核酸阻害剤を提供する。ヒトEPAS1遺伝子内における例示的な領域には、下記の表1(また、図1も参照されたい)に示されるコア標的領域が含まれる。コア標的配列とは一般に、例えば、dsRNA、siRNA、および酵素核酸などの阻害核酸が配列特異的に結合するとEPAS1の発現を有効に阻害する、標的EPAS1遺伝子または対応するmRNAの部分を指す。一般に、核酸阻害剤は、コア標的配列を含むEPAS1タンパク質の領域、またはEPAS1遺伝子もしくはEPAS1 mRNAの配列内にあるコア標的領域の一端または両端に隣接する5、10、または20ヌクレオチド、例えば、コア標的部位±5、±10、または±20ヌクレオチド(一端または両端における)を含む、EPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAの部分と、厳密な条件下でハイブリダイズしうる。表1に示されるコア標的配列は、ヒトEPAS1配列から得たが、本明細書では、他の哺乳動物など他の真核生物を含めた他の種に由来するEPAS1配列内にある同等の領域もまた意図される。
【0047】
【表1】

dsRNA構築物およびRNAi構築物
特定の実施形態において、対象の発明は、二本鎖RNA(dsRNA)構築物およびRNAi構築物に関する。本明細書で用いられる「dsRNA」という用語は、siRNAを含めた、RNA干渉(RNAi)が可能な二本鎖RNA分子を指す(例えば、Bass、Nature、411巻、428〜429頁、2001年;Elbashirら、Nature、411巻、494〜498頁、2001年;Kreutzerら、PCT特許公開第WO00/44895号;Zernicka−Goetzら、PCT特許公開第WO01/36646号;Fire、PCT特許公開第WO99/32619号;Plaetinckら、PCT特許公開第WO00/01846号;MelloおよびFire、PCT特許公開第WO01/29058号; Deschamps−Depaillette、PCT特許公開第WO99/07409号;ならびにLiら、PCT特許公開第WO00/44914号を参照されたい)。加えて、RNAiとは当初、二本鎖RNA(dsRNA)が、転写後において特異的に遺伝子発現を遮断する、植物および線虫において観察された現象に適用された用語である。RNAiは、in vitroまたはin vivoにおける遺伝子発現を阻害するかまたは低下させる有用な方法を提供する。
【0048】
本明細書で用いられる「短鎖干渉RNA」、「siRNA」、または「短鎖干渉核酸」という用語は、細胞により適切にプロセシングされるとRNAiまたは遺伝子サイレンシングを媒介することが可能な任意の核酸を指す。例えば、siRNAは、自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を含む二本鎖ポリヌクレオチド分子であり得、該アンチセンス領域は、標的遺伝子に対する相補性を含む。siRNAは、自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を含む一本鎖ヘアピンポリヌクレオチドであり得、該アンチセンス領域は、標的遺伝子に対する相補性を含む。siRNAは、自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を含む、2つ以上のループ構造およびステムを有する環状一本鎖ポリヌクレオチドであり得、該アンチセンス領域は、標的遺伝子に対する相補性を含み、該環状ポリヌクレオチドは、in vivoまたはin vitroにおいてプロセシングされて、RNAiの媒介が可能な活性siRNAを生成する。siRNAはまた、標的遺伝子に対する相補性を有する一本鎖ポリヌクレオチドも含み、該一本鎖ポリヌクレオチドは、5’−リン酸(例えば、Martinezら、Cell、110巻、563〜574頁、2002年を参照されたい)、または5’,3’−二リン酸などの末端リン酸基をさらに含みうる。特定の実施形態において、siRNAは、標的核酸に結合し、標的核酸の活性を変化させる、非酵素性核酸である。siRNAの結合および/または活性は、RNA誘導サイレンシング複合体(またはRISC)など、1つまたは複数のタンパク質またはタンパク質複合体との相互作用により促進されうる。特定の実施形態において、siRNAは、siRNA分子の1本の鎖の単一の連続配列に沿って、標的配列に相補的な配列を含む。
【0049】
場合によって、対象の発明によるsiRNAは、阻害される遺伝子(「標的」遺伝子)のmRNA転写物の少なくとも一部のヌクレオチド配列と、生理学的条件下で(例えば、細胞内環境において)ハイブリダイズするヌクレオチド配列を含有する。二本鎖RNAは、それがRNAiを媒介する能力を有するのに十分な程度に天然RNAに類似することだけが必要である。したがって、対象の発明は、遺伝子の突然変異、細胞株の多型、または進化的多様性に起因して予測されうる配列変異体を許容しうることの利点を有する。標的配列と、siRNA配列との間で許容されるヌクレオチドのミスマッチ数は、5塩基対中の1カ所、10塩基対中の1カ所、20塩基対中の1カ所、50塩基対中の1カ所である。siRNA二重鎖の中央部におけるミスマッチは極めて重大であり、標的RNAの切断を本質的に消失させうる。これに対し、標的RNAに相補的なsiRNA鎖の3’端にあるヌクレオチドは、標的認識の特異性にさほど寄与しない。配列の同一性は、当技術分野で公知の配列比較およびアライメントアルゴリズム(GribskovおよびDevereux、「Sequence Analysis Primer」、Stockton Press社、1991年、および同書に引用される参考文献を参照されたい)により、また、例えば、デフォルトのパラメータを用いるBESTFITソフトウェアプログラムにおいて実装されるスミス−ウォーターマンアルゴリズム(例えば、ウィスコンシン大学遺伝子計算グループ)を介して、ヌクレオチド配列間の百分率による差違を計算することにより最適化することができる。siRNAと標的遺伝子の部分との90%、95%、96%、97%、98%、または99%を超える配列同一性、さらにまたは100%の配列同一性が好ましい。代替的に、RNAの二重鎖領域は、厳密な条件(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃で12〜16時間にわたるハイブリダイゼーション;その後、洗浄する)下で標的遺伝子転写物の部分とハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列として機能的に定義することもできる。
【0050】
dsRNAの二本鎖構造は、1本の自己相補性RNA鎖、2本の相補性RNA鎖、またはDNA鎖および相補的なRNA鎖により形成することができる。場合によって、RNA二重鎖の形成は、細胞の内側で誘発することもでき、細胞の外側で誘発することもできる。RNAは、細胞当たり少なくとも1コピーの送達を可能とする量で導入することができる。より高用量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500、または1000コピー)の二本鎖材料は、より有効な阻害をもたらしうるが、具体的な適用ではより低用量もまた有用である。RNAの二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列が阻害の標的とされるという点において、阻害は配列特異的である。
【0051】
本明細書に記載の通り、対象のsiRNAは、約19〜30ヌクレオチドの長さ、約21〜27ヌクレオチドの長さ、約21〜25ヌクレオチドの長さ、または約21〜23ヌクレオチドの長さの二重鎖領域を含む。siRNAは、特定の配列に対合することにより、ヌクレアーゼ複合体を動員し、標的の遺伝子転写物へと該複合体を誘導することが理解される。結果として、該タンパク質複合体内におけるヌクレアーゼにより標的遺伝子の転写物が分解される。特定の実施形態において、siRNA分子は、3’ヒドロキシル基を含む。特定の実施形態では、例えば、酵素であるダイサーの存在下においてより長い二本鎖RNAをプロセシングすることにより、例えば、in situでsiRNA構築物を作製することができる。一実施形態では、Drosophilaのin vitro系を用いる。この実施形態では、dsRNAを、Drosophilaの胚に由来する可溶性抽出物と混合し、これにより混合物を作製する。該混合物を、dsRNAが、約21〜約27ヌクレオチドのRNA分子へとプロセシングされる条件下で維持する。siRNA分子は、当業者に公知の多数の技法を用いて精製することができる。例えば、ゲル電気泳動を用いてsiRNAを精製することができる。代替的に、非変性型のカラムクロマトグラフィーなど、非変性法を用いてsiRNAを精製することもできる。加えて、クロマトグラフィー(例えば、サイズ除外クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、抗体によるアフィニティー精製を用いてsiRNAを精製することもできる。
【0052】
対象のdsRNA(例えば、siRNA)の作製は、化学合成法により実施することもでき、組換え核酸法により実施することもできる。処理された細胞の内因性RNAポリメラーゼによりin vivoにおける転写を媒介させる場合もあり、クローニングされたRNAポリメラーゼを用いてin vitroにおける転写を行う場合もある。本明細書で用いられる対象の発明によるdsRNA分子またはsiRNA分子は、RNAだけを含有する分子に限定される必要はなく、化学修飾されたヌクレオチドおよびヌクレオチド以外の分子をさらに包含する。例えば、dsRNAは、例えば、細胞内ヌクレアーゼに対する感受性を低下させ、バイオアベイラビリティーを改善し、製剤特徴を改善し、かつ/または他の薬物動態特性を変化させる、リン酸−糖骨格またはヌクレオチドに対する修飾を包含しうる。例示を目的として述べると、天然RNAのホスホジエステル結合は、少なくとも1つの窒素または硫黄のヘテロ原子を包含するように修飾することができる。RNA構造における修飾は、dsRNAに対する一般的な反応を回避する一方で、特異的な遺伝子阻害を可能とするように調整することができる。同様に、塩基も、アデノシン脱アミノ酵素の活性を遮断するように修飾することができる。dsRNAは、酵素的に作製することもでき、部分的/全体的な有機合成により作製することもでき、修飾された任意のリボヌクレオチドは、in vitroにおける酵素的合成または有機合成により導入することができる。RNA分子を化学修飾する方法を、dsRNAの修飾に適合させることができる(例えば、Heidenreichら、Nucleic Acids Res.、25巻、776〜780頁、1997年;Wilsonら、J Mol.Recog.、7巻、89〜98頁、1994年;Chenら、Nucleic Acids Res.、23巻、2661〜2668頁、1995年;Hirschbeinら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、7巻、55〜61頁、1997年を参照されたい)。例示だけを目的として述べると、dsRNAまたはsiRNAの骨格は、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホロジチオエート(phosphodithioates)、メチルホスホネート−ホスホジエステルのキメラ、ペプチド核酸、5−プロピニル−ピリミジン含有オリゴマー、または糖修飾(例えば、2’置換リボヌクレオシド、a−立体構造)により修飾することができる。特定の場合において、対象の発明のdsRNAは、2’−ヒドロキシ(2’−OH)含有ヌクレオチドを欠く。特定の実施形態において、siRNA分子は、ホスホロチオエートによるセンス鎖を含む。特定の実施形態において、siRNA分子は、ホスホジエステルによるアンチセンス鎖を含む。
【0053】
具体的な実施形態において、siRNA分子の少なくとも1本の鎖は、約1〜約10ヌクレオチドの長さ、約1〜5ヌクレオチドの長さ、約1〜3ヌクレオチドの長さ、または約2〜4ヌクレオチドの長さの3’突出を有する。特定の実施形態において、siRNAは、3’突出を有する一方の鎖を含む場合があり、他方の鎖は3’端が平滑末端である(例えば、3’突出を有さない)。別の実施形態において、siRNAは、両方の鎖において3’突出を含みうる。該突出の長さは、同じの場合もあり、鎖ごとに異なる場合もある。siRNAの安定性をさらに増強するため、3’突出を分解に対して安定化させることができる。一実施形態では、アデノシンヌクレオチドまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを包含することにより、RNAを安定化させる。代替的に、修飾された類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2’−デオキシチミジン(2’−deoxythyinidine)による、3’突出におけるウリジンヌクレオチドの置換は許容され、RNAiの効能に影響を及ぼさない。2’ヒドロキシルの不在は、組織培地中における突出のヌクレアーゼ耐性を著明に増強し、in vivoにおいて有益でありうる。
【0054】
別の具体的な実施形態において、対象のdsRNAはまた、長い二本鎖RNAの形態でもありうる。例えば、dsRNAは、少なくとも25、50、100、200、300、または400塩基である。一部の場合において、dsRNAは、400〜800塩基の長さである。場合によって、例えば、細胞内においてsiRNA配列を作製するには、dsRNAを細胞内で消化する。しかし、おそらくは、配列に依存しないdsRNA反応により引き起こされうる有害作用のために、in vivoにおける長い二本鎖RNAの使用が常に実用的であるわけではない。このような実施形態において、インターフェロンまたはPKRの作用を低減する局所送達系または局所送達作用物質の使用が好ましい。
【0055】
さらに具体的な実施形態において、dsRNAまたはsiRNAは、ヘアピン構造(またはヘアピンRNA)の形態である。ヘアピンRNAは、外因的に合成することもでき、in vivoにおけるRNAポリメラーゼIIIプロモーターから転写することにより形成することもできる。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのために、このようなヘアピンRNAを作製および使用する例は、例えば、Paddisonら、Genes Dev.、16巻、948〜58頁、2002年;McCaffreyら、 Nature、418巻、38〜9頁、2002年;McManusら、 RNA、8巻、842〜50頁、2002年;Yuら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、99巻、6047〜6052頁、2002年において説明されている。このようなヘアピンRNAを細胞内または動物内において操作し、標的遺伝子の連続的で安定した抑制を確保することが好ましい。細胞内におけるヘアピンRNAのプロセシングによりsiRNAを作製しうることは、当技術分野において公知である。
【0056】
PCT特許出願第WO01/77350号は、真核細胞内における同じトランス遺伝子のセンスおよびアンチセンス両方のRNA転写物をもたらす、トランス遺伝子の2方向的な転写のための例示的なベクターについて説明している。したがって、特定の実施形態において、本発明は、以下の固有の特徴を有する組換えベクターを提供する:それは、反対方向に配置された2つの重複する転写単位を有し、対象のdsRNAのためのトランス遺伝子に隣接するウイルスレプリコンを含み、該2つの重複する転写単位により、宿主細胞内における同じトランス遺伝子フラグメントからセンスおよびアンチセンス両方のRNA転写物がもたらされる。
【0057】
例示的な実施形態において、対象の発明は、上記の表1に示したコア標的配列、またはコア標的配列の片側または両側に隣接する±5、±10、または±20ヌクレオチドを有する、コア標的配列に対応するEPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAの領域に対応する領域を対象とするsiRNAを提供する。各種の例示的なsiRNA二重鎖の配列を、以下の表2〜6に示す。
【0058】
【表2】

上記3つの21マーに対応する27マーのsiRNAもまた提供される。より具体的に述べると、「27R」および「27L」の変異体は、EPAS1の発現を下方調節するのにより強力でありうる。Kimら、Nature Biotechnology、23巻、222〜226頁、2005年;Roseら、Nucleic Acids Research、33巻、13号、4140〜56頁、2005年7月26日を参照されたい。「R」の27マーでは、初期の標的配列の右側(標的に対して3’側)へと伸長するように塩基が付加されているのに対し、「L」の27マーでは、初期の標的配列の左側(標的に対して5’側)へと伸長するように塩基が付加されている。27マーのsiRNAの例を、以下の表3に示す。
【0059】
【表3】

対象の発明はまた、コア標的配列の−20〜+20塩基内、または対象の発明によるsiRNAの−10〜+10塩基内を標的とするsiRNAも提供する。例えば、3つの21マーのsiRNAの各々の−5〜+5塩基内、または3つのコア標的配列の各々の−10〜+10塩基内に標的部位を有する21マーの二重鎖を以下の表4〜6に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

酵素性核酸
特定の実施形態において、対象の発明は、EPAS1遺伝子またはEPAS1 mRNAの発現を阻害する酵素性核酸に関する。例示的な酵素性核酸には、上記の表1に示したコア標的配列のうちの1つ、または該コア標的領域の片側または両側に隣接する5、10、または20ヌクレオチドを有する、コア標的配列を含む領域を標的とする酵素性核酸が含まれる。「酵素性核酸」とは、基質結合領域において、特定の標的遺伝子に対する相補性を有し、また、標的核酸を特異的に切断するように作用する酵素活性も有する核酸を意味する。酵素性核酸は、分子間相互作用により核酸を切断し、これにより、標的核酸を不活化することが可能であると理解される。これらの相補性領域は、標的核酸に対する酵素性核酸の十分なハイブリダイゼーションを可能とし、これにより、切断を可能とする。100パーセントの相補性(同一性)が好ましいが、この適用では、50〜75%の低い相補性でもまた有用である(例えば、WernerおよびUhlenbeck、Nucleic Acids Research、23巻、2092〜2096頁、1995年;Hammannら、Antisense and Nucleic Acid Drug Dev.、9巻、25〜31頁、1999年を参照されたい)。酵素性核酸は、塩基、糖、および/またはリン酸基において修飾することができる。本明細書に記載の通り、「酵素性核酸」という用語は、リボザイム、触媒性RNA、酵素性RNA、触媒性DNA、アプタザイムもしくはアプタマー結合リボザイム、調節性リボザイム、触媒性オリゴヌクレオチド、ヌクレオザイム、DNAザイム、RNA酵素、エンドリボヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、ミニザイム、リードザイム、オリゴザイム、またはDNA酵素などの語句と互換的に用いられる。これらのすべての用語は、酵素活性を有する核酸について述べる。本明細書に記載の具体的な酵素性核酸に適用は限定されず、本発明の酵素性核酸において重要なすべてのことは、それが、標的核酸領域のうちの1つまたは複数に相補的である、特異的な基質結合部位を有し、それが、その基質結合部位の内部または周囲において、該分子に対して核酸切断活性および/またはライゲーション活性を付与するヌクレオチド配列を有することである(Cechら、米国特許第4,987,071号;Cechら、JAMA、260巻、3030頁、1988年)ことを当業者は認識するであろう。
【0063】
現在のところ、複数種の天然の酵素性核酸が公知である。各酵素性核酸は、生理学的条件下で、トランス位にある核酸のホスホジエステル結合の加水分解を触媒しうる(したがってまた、他の核酸を切断しうる)。一般に、酵素性核酸は、まず、標的核酸に結合することにより作用する。このような結合は、標的核酸を切断するように作用する、酵素性核酸の酵素性部分に対してごく近傍に保持される該分子の標的結合部分を介して生じる。したがって、酵素性核酸は、相補性塩基対合を介して標的核酸をまず認識し、次いでこれに結合し、適正な部位に結合すると、酵素的に作用して標的核酸を切断する。このような標的核酸の戦略的切断により、コードされるタンパク質の合成を誘導するその能力が破壊される。酵素性核酸は、その核酸標的に結合し、これを切断した後で、その核酸から放出されて別の標的を探索し、新たな標的に繰り返し結合してこれらを切断しうる。
【0064】
具体的な実施形態において、対象の酵素性核酸は、EPAS1 mRNAを触媒作用によって切断してその翻訳を阻害するように設計されたリボザイムである(例えば、1990年10月4日に公開された、PCT 国際特許公開第WO90/11364号;Sarverら、Science、247巻、1222〜1225頁、1990年;および米国特許第5,093,246号を参照されたい)。部位特異的な認識配列においてmRNAを切断するリボザイムを用いて特定のmRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的な塩基対を形成する隣接領域により規定される位置にあるmRNAを切断する。唯一の要件は、標的mRNAが、2塩基による以下の配列:5’−UG−3’を有することである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築および作製は当技術分野において周知であり、HaseloffおよびGerlach、1988年、Nature、334巻、585〜591頁においてより完全な形で説明されている。本発明のリボザイムにはまた、Tetrahymena thermophilaにおいて天然であり、広範にわたって説明されている(例えば、Zaugら、Science、224巻、574〜578頁、1984年;ZaugおよびCech、Science、231巻、470〜475頁、1986年;Zaugら、Nature、324巻、429〜433頁、1986年;University Patents社による国際特許出願第WO88/04300号; BeenおよびCech、Cell、47巻、207〜216頁、1986年を参照されたい)RNAエンドリボヌクレアーゼ(IVS RNAまたはL−19 IVS RNAとして公知)などのRNAエンドリボヌクレアーゼ(以後、「Cech型リボザイム」と称する)も含まれる。
【0065】
別の具体的な実施形態において、対象の酵素性核酸は、DNA酵素である。DNA酵素は、アンチセンス法およびリボザイム法両方の力学的特徴の一部を組み込む。DNA酵素は、アンチセンスオリゴヌクレオチドとまったく同様に、特定の標的核酸配列を認識するが、リボザイムともまったく同様に、それらは触媒性であり、標的核酸を特異的に切断するように設計される。略述すると、標的核酸を特異的に認識してこれを切断する理想的なDNA酵素を設計するために、当業者はまず、固有の標的配列を同定しなければならない。好ましくは、固有であるかまたは実質的に固有の配列は、約18〜22ヌクレオチドのG/Cに富む配列である。高G/C含量は、DNA酵素と標的遺伝子配列とのより強力な相互作用を確保する一助となる。DNA酵素を合成する場合、メッセージを該酵素の標的とする特異的なアンチセンスの認識配列は、それが、該DNA酵素の2本のアームを含み、該DNA酵素のループが該2本の特異的なアームの間に配置されるように分割される。DNA酵素を作製して投与する方法は、例えば、米国特許第6,110,462号において見出すことができる。
【0066】
特定の実施形態において、対象の発明による核酸薬剤は、12〜200ヌクレオチドの長さでありうる。一実施形態において、対象の発明による例示的な酵素性核酸は、例えば、25〜40ヌクレオチドの長さを含めた、15〜50ヌクレオチドの長さである(例えば、Jarvisら、J. Biol. Chem.、271巻、29107〜29112頁、1996年を参照されたい)。別の実施形態において、対象の発明による例示的なアンチセンス分子は、例えば、20〜35ヌクレオチドの長さを含めた、15〜75ヌクレオチドの長さである(例えば、Woolfら、PNAS、89巻、7305〜7309頁、1992年;Milnerら、Nature Biotechnology、15巻、537〜541頁、1997年を参照されたい)。別の実施形態において、対象の発明による例示的なsiRNAは、例えば、21〜27ヌクレオチドの長さを含めた、20〜30ヌクレオチドの長さである。必要とされるすべてのことは、対象の核酸薬剤が、本明細書で意図されるその活性に十分であり適切な長さおよび立体構造であることを当業者は認識するであろう。本発明の核酸薬剤の長さは、言及された一般的な限界内に制限されない。
【0067】
核酸薬剤の合成
自動化された方法を用いて100ヌクレオチドを超える長さの核酸を合成することは難しく、このような分子による治療費用は法外なものとなる。本発明の場合、外因性送達には、小型の核酸モチーフ(小型とは、約100ヌクレオチド未満の長さ、好ましくは約80ヌクレオチド未満の長さ、またより好ましくは約50ヌクレオチド未満の長さの核酸モチーフを指す)(例えば、酵素性核酸の構築物およびRNAi構築物)を用いることが好ましい。これらの分子の構造が単純であると、標的とされるRNA構造の領域内に侵入する核酸の能力が増大する。
【0068】
本発明による、RNA分子およびDNA分子を含めた例示的な核酸阻害剤分子は、化学合成することができる。例示を目的として述べると、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA)は、Caruthersら、Methods in Enzymology、211巻、3〜19頁、1992年;Thompsonら、PCT国際特許公開第WO99/54459;Wincottら、Nucleic Acids Res.、23巻、2677〜2684頁、1995年;Wincottら、Methods Mol. Bio.、74巻、59頁、1997年;Brennanら、Biotechnol Bioeng.、61巻、33〜45頁、1998年;およびBrennan、米国特許第6,001,311号において説明される通り、当技術分野で公知のプロトコールを用いて合成される。オリゴヌクレオチドの合成では、5’端におけるジメトキシトリチル基および3’端におけるホスホルアミダイト基など、一般的な核酸保護基および核酸結合基を用いる。非限定的な例において、小規模の合成は、2.5分間にわたる2’−O−メチル化ヌクレオチドの結合ステップおよび45秒間にわたる2’−デオキシヌクレオチドの結合ステップにより、Applied Biosystems社製の394型合成器上で実施することができる。代替的に、合成は、Protogene社(カリフォルニア州、パロアルト)製の器具など、96ウェルプレートによる合成器上で、サイクルに最小限の改変を加えて実施することもできる。
【0069】
場合によって、本核酸の部分を個別に合成し、合成後において、例えば、ライゲーション(Mooreら、Science、256巻、9923頁、1992年;Draperら、PCT 国際特許公開第WO93/23569号;Shabarovaら、Nucleic Acids Research、19巻、4247頁、1991年;Bellonら、Nucleosides & Nucleotides、16巻、951頁、1997年;Bellonら、Bioconjugate Chem.、8巻、204頁、1997年)により接合することができる。
【0070】
本明細書における核酸は、ヌクレアーゼ耐性基、例えば、2’−アミノ基、2’−C−アリル基、2’−フルオロ基、2’−O−メチル基、2’−H基を伴う修飾により、安定性を大幅に増強するように修飾することが好ましい(総説については、UsmanおよびCedergren、TIBS、17巻、34頁、1992年;Usmanら、Nucleic Acids Symp. Ser.、31巻、163頁、1994年を参照されたい)。リボザイムは、一般的な方法を用いるゲル電気泳動により精製するか、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC;Wincottら、前出を参照されたい)により精製し、水中で再懸濁させる。
【0071】
核酸の活性および設計の最適化
修飾(例えば、塩基修飾、糖修飾、および/またはリン酸修飾)を伴う核酸は、血清リボヌクレアーゼによるそれらの分解を防止することが可能であり、これにより、それらの効力を増大させうる。当技術分野では、核酸内に導入して、それらのヌクレアーゼの安定性および有効性を著明に増強しうる、糖修飾、塩基修飾、およびリン酸修飾が複数の例で説明されている。例えば、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性基、例えば、2’−アミノ基、2’−C−アリル基、2’−フルオロ基、2’−O−メチル基、2’−H基を伴う修飾である、ヌクレオチド塩基の修飾により安定性を増強し、かつ/または生物学的活性を増強するように修飾される(総説については、UsmanおよびCedergren、TIBS、17巻、34頁、1992年;Usmanら、Nucleic Acids Symp. Ser.、31巻、163頁、1994年;Burginら、Biochemistry、35巻、14090頁、1996年を参照されたい)。核酸の糖修飾は、当技術分野で広範にわたり説明されている(例えば、Ecksteinら、PCT特許公開第WO92/07065号;Perraultら、Nature、344巻、565〜568頁、1990年;Piekenら、Science、253巻、314〜317頁、1991年;UsmanおよびCedergren、Trends in Biochem. Sci.、17巻、334〜339頁、1992年;Usmanら、PCT特許公開第WO93/15187号;Sproat、米国特許第5,334,711号;およびBeigelmanら、J. Biol. Chem.、270巻、25702頁、1995年;Beigelmanら、PCT特許公開第WO97/26270号;Beigelmanら、米国特許第5,716,824号;Usmanら、米国特許第5,627,053号;Woolfら、PCT特許公開第WO98/13526号;1998年4月20日に出願された、Thompsonら、U.S.S.60/082,404;Karpeiskyら、 Tetrahedron Lett.、39巻、1131頁、1998年;EarnshawおよびGait、Biopolymers(Nucleic acid Sciences)、48巻、39〜55頁、1998年;VermaおよびEckstein、Annu. Rev. Biochem.、67巻、99〜134頁、1998年;ならびにBurlinaら、Bioorg. Med. Chem.、5巻、1999〜2010頁、1997年を参照されたい)。同様の修飾を用いて、本発明の核酸を修飾することができる。
【0072】
ホスホロチオエート結合、ホスホロチオエート結合、および/または5’−メチルホスホネート結合を伴うヌクレオチド間の結合によるオリゴヌクレオチドの化学的な修飾は安定性を改善するが、これらの修飾が過剰になると、毒性が引き起こされうる。したがって、該核酸を設計する場合は、これらのヌクレオチド間結合の量を評価し、適切に最小化するべきである。これらの結合の濃度を低下させることで毒性が低下し、その結果、これらの分子の有効性が増大し、特異性が上昇する。
【0073】
一実施形態において、本発明の核酸は、1つまたは複数のG−クランプヌクレオチドを包含する。G−クランプヌクレオチドとは修飾されたシトシン類似体であり、該修飾により、二重鎖内の相補的なグアニンのワトソン−クリック面およびフーグスティーン面の両方に水素結合を形成する能力が付与される(例えば、LinおよびMatteucci、J. Am. Chem. Soc.、120巻、8531〜8532頁、1998年を参照されたい)。相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる場合、オリゴヌクレオチド内において単一のG−クランプ類似体による置換を行うと、螺旋の熱安定性およびミスマッチの識別力が、結果として実質的に増強されうる。本発明の核酸内でこのようなヌクレオチドを組み入れると、核酸標的に対する親和性および特異性の両方が結果として増強される。別の実施形態において、本発明の核酸には、2’,4’−C−メチレン(mythylene)ビシクロヌクレオチドなど、1つまたは複数のLNA(ロックト核酸)ヌクレオチドが含まれる(例えば、Wengelら、PCT特許公開第WO00/66604号および同第WO99/14226号を参照されたい)。
【0074】
別の実施形態において、本発明は、EPAS1遺伝子を標的とする核酸のコンジュゲートおよび/または複合体を特徴とする。このようなコンジュゲートおよび/または複合体を用いて、細胞などの生体系内への核酸の送達を促進することができる。本発明により提供されるコンジュゲートおよび複合体は、細胞膜を超えて標的の組織または細胞型へと治療剤を輸送するかまたは移動させ、薬物動態を変化させ、かつ/または本発明の核酸の局在化を調節することにより、治療活性を付与しうる。このようなコンジュゲートおよび/または複合体はまた、以下でも説明される。
【0075】
本発明は、低分子、脂質、リン脂質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、抗体、毒素、負に帯電したポリマー、および他のポリマー、例えば、タンパク質、ペプチド、ホルモン、炭水化物、ポリエチレングリコール、またはポリアミンが含まれるがこれらに限定されない分子を、細胞膜を超えて送達するための新規のコンジュゲートおよび複合体の設計および合成を包含する。一般に、記載の輸送体は、分解性のリンカーを伴う場合であれ伴わない場合であれ、個別に、または多成分系の一部として用いられるように設計される。これらの化合物は、血清の存在下であれ不在下であれ、異なる組織に由来する多数の細胞型内への本発明の核酸の送達および/または局在化を改善することが期待される(SullengerおよびCech、米国特許第5,854,038号を参照されたい)。本明細書に記載の分子によるコンジュゲートは、生体分解性の核酸リンカー分子など、生体分解性のリンカーを介して生物学的な活性分子に結合しうる。
【0076】
本明細書で用いられる「生体分解性核酸リンカー分子」という用語は、1つの分子を別の分子、例えば、生物学的な活性分子へと接合する生体分解性リンカーとして設計される核酸分子を指す。生体分解性核酸リンカー分子の安定性は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および化学修飾されたヌクレオチド、例えば、2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、2’−フルオロ修飾ヌクレオチド、2’−アミノ修飾ヌクレオチド、2’−O−アミノ修飾ヌクレオチド、2’−C−アリル修飾ヌクレオチド、2’−O−アリル修飾ヌクレオチド、および他の2’修飾ヌクレオチド、または塩基修飾ヌクレオチドの多様な組合せを用いることにより調節することができる。生体分解性核酸リンカー分子は、二量体、三量体、四量体、またはより長い核酸、例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドの場合もあり、リンベースの結合、例えば、ホスホルアミデート結合またはホスホジエステル結合を伴う単一のヌクレオチドを含む場合もある。生体分解性核酸リンカー分子はまた、核酸骨格修飾、核酸糖修飾、または核酸塩基修飾も含みうる。本明細書で用いられる「生体分解性」という用語は、生体系における分解、例えば、酵素性分解または化学分解を指す。
【0077】
外因的に送達される、本明細書に記載の分子などの治療用核酸薬剤は、望ましくないタンパク質のレベルを低下させるのに十分な長時間にわたり標的RNAの翻訳が阻害されるまで、細胞内で安定であることが最適である。この時間は、疾患状態に応じて、数時間〜数日間で変化する。これらの核酸薬剤は、有効な細胞内治療剤として機能するために、ヌクレアーゼに対して耐性であるべきである。本明細書および当技術分野における核酸の化学合成の改善は、上記で説明した通り、それらのヌクレアーゼに対する安定性を増強するヌクレオチド修飾を導入することにより核酸を修飾する能力を拡張している。
【0078】
別の態様において、核酸は、5’キャップ構造および3’キャップ構造を含む。「キャップ構造」とは、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端に組み込まれた化学修飾を意味する(例えば、Wincottら、WO97/26270を参照されたい)。これらの末端修飾は、エキソヌクレアーゼによる分解から核酸を保護し、細胞内への送達および/または局在化の一助となる。キャップは、5’末端(5’キャップ)または3’末端(3’キャップ)において存在する場合もあり、両方の末端において存在する場合もある。非限定的な例において、5’キャップには、逆位脱塩基残基(部分)、4’,5’−メチレンヌクレオチド;1−(ベータ−D−エリトロフラノシル)ヌクレオチド、4’−チオヌクレオチド、炭素環状ヌクレオチド;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;修飾塩基によるヌクレオチド;ホスホロジチオエート結合;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環状3’,4’−セコヌクレオチド;非環状3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;非環状3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’−3’−逆位ヌクレオチド部分;3’−3’−逆位脱塩基部分;3’−2’−逆位ヌクレオチド部分;3’−2’−逆位脱塩基部分;1,4−ブタンジオールホスフェート;3’−ホスホルアミデート;リン酸ヘキシル;リン酸アミノヘキシル;3’−リン酸;3’−ホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;または架橋もしくは非架橋のメチルホスホネート部分が含まれる(より詳細については、Wincottら、WO97/26270を参照されたい)。他の非限定的な例において、3’キャップには、例えば、4’,5’−メチレンヌクレオチド;1−(ベータ−D−エリトロフラノシル)ヌクレオチド;4’−チオヌクレオチド、炭素環状ヌクレオチド;5’−アミノ−アルキルホスフェート;1,3−ジアミノ−2−プロピルホスフェート、3−アミノプロピルホスフェート;6−アミノヘキシルホスフェート;1,2−アミノドデシルホスフェート;リン酸ヒドロキシプロピル;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;修飾塩基によるヌクレオチド;ホスホロジチオエート;トレオ−ペントフラノシル(threopentofuranosy)ヌクレオチド;非環状3’,4’−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5’−5’−逆位ヌクレオチド部分;5’−5’−逆位脱塩基部分;5’−ホスホルアミデート;5’−ホスホロチオエート;1,4−ブタンジオールホスフェート;5’−アミノ;架橋および/または非架橋の5’−ホスホルアミデート、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋のメチルホスホネート、および5’−メルカプト部分が含まれる(より詳細については、BeaucageおよびIyer、Tetrahedron、49巻、1925頁、1993年を参照されたい)。
【0079】
siRNAの設計
RNA干渉またはRNAiとは、もとは植物(この場合、RNA干渉は、転写後遺伝子サイレンシング、またはPTGSとして知られた)、C.elegans、およびDrosophila(Bernsteinら、2001年;Carmellら、2002年において総説されている)において説明された遺伝子サイレンシング機構である。最新のモデルにおいて、RNAi経路は、二本鎖RNA(dsRNA)の「引き金」により活性化され、次いで、これが、細胞内酵素であるDicerにより、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる、21〜23ヌクレオチドの短いdsRNAへとプロセシングされる。siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)内へと組み込まれ、そこではsiRNAのアンチセンス鎖がガイド鎖として用いられ、相同的なmRNAが、該siRNAガイド鎖の5’端から約10塩基に位置する、siRNA/標的二重鎖内におけるエンドヌクレアーゼによる切断の標的とされる。哺乳動物細胞の場合、30ヌクレオチドより長いdsRNAは、RNAiではなく、非特異的なインターフェロン経路を誘発する。しかし、Tuschlらは、哺乳動物細胞内に外因的に導入されたより短いsiRNAは、Dicer工程を迂回し、インターフェロン反応を誘発せずに、相同的なmRNAの分解を直接に活性化することを示した(Elbashirら、2001年a;Harborthら、2001年;Caplenら、2002年)。その後、多くの研究者が、in vivoにおけるヒトのウイルス標的および細胞標的に対して、siRNAおよび類縁の短鎖ヘアピンRNA(shRNA)の発現の実行可能性を示した。RNAiにおける進歩は急速に拡大しつつあり、治療適用に対してかなりの進展が既になされている(Zamore、2001年;KitabwallaおよびRuprecht、2002年;Martinezら、2002年;Couzin、2003年;Scherrら、2003年;Wilsonら、2003年;HannonおよびRossi、2004年)。
【0080】
合成siRNAは、外因性の短時間にわたる適用に最適の方法である。現在のところ、非修飾のsiRNAが、典型的にはトランスフェクションの2〜3日後にピークとなるRNAi効果を媒介している。合成siRNAで最も一般的な設計は、DicerによるトリガーdsRNAの切断を介して作製される内因性siRNAを模倣し(Elbashirら、2001年a)、この場合、センス鎖およびアンチセンス鎖は、21〜23ヌクレオチドの長さである。アニーリングされた二重鎖部分は、両方の3’端における2ヌクレオチドずつの突出を除き、完全に相補的である。合成siRNAの場合、ジヌクレオチドの3’突出は、それらの天然の対応物と同様に、標的配列に由来しうる。大半の目的には、21〜23マーから構築されたsiRNAで十分であるが、29ヌクレオチドまでのオリゴマーは、インターフェロン反応を誘発することなく用いることができる。本発明者らは、Dicerの作用により細胞内においてより長い二本鎖RNAから生成されるsiRNAは、外因的に供給される21マーより最大で100倍強力でありうることを観察した(Kimら、2005年)。Siolasら(2005年)による手引書の草稿も同様の結論を示したが、これらの研究者は、合成のヘアピンをDicer基質として用いた。本明細書で提起される試験は、動物試験で用いられる強力なsiRNAを生成させるのに重要なこれらの知見を活用する。次に、Dicer基質である二重鎖RNAから生成されるsiRNAの正確な予測を可能とする、新規の設計ルールについて論じる。
【0081】
siRNAのアンチセンス鎖と標的とのミスマッチは、それらの数および位置に応じて、様々な程度で活性を低下させる傾向がある。siRNA/標的ミスマッチとRNAi活性との関係を制御する法則が完全に明らかにされたわけではないが、siRNAおよび単純なshRNAの両方におそらく当てはまる、ある程度の一般化を行うことはできる。エンドヌクレアーゼによる切断部位近傍の突然変異は、常にではないが、RNAi効果を低下させることが多い。また、アンチセンス鎖の最初の半分(5’端)における突然変異も、極めて有害である(RandallおよびRice、2001年;Holenら、2002年;Amarzguiouiら、2003年)。エンドヌクレアーゼによる切断は、siRNAのアンチセンス鎖の5’端から「その位置を計測される」ので、ガイド鎖の5’端における突然変異は、活性化されたRISC複合体内におけるアンチセンス/mRNA標的の二重鎖を不安定化させ、切断を阻害する可能性がある。まとめると、これらの結果は、特定のアイソフォームを標的とするようにRNAi構築物を設計する場合、その対応するsiRNAと非標的アイソフォームとのミスマッチが、該二重鎖の5’端で生じるように、標的アイソフォーム内の標的部位を選択することが望ましい場合がある。標的が切断可能でない場合(SchererおよびRossi、2003年bにおいて総説されている)など、これが不可能な場合は、交差反応性について調べることが重要である。
【0082】
大半の目的には、21〜23マーから構築されたsiRNAで十分であるが、29ヌクレオチドまでのオリゴマーは、インターフェロン反応を誘発することなく用いることができる。本発明者らは、Dicerの作用により細胞内においてより長い二本鎖RNAから生成されるsiRNAは、外因的に供給される21マーより最大で100倍強力でありうることを観察した(Kimら、2005年)。Siolasら(2005年)による手引書の草稿も同様の結論を示したが、これらの研究者は、合成のヘアピンをDicer基質として用いた。本明細書で提起される試験は、動物試験で用いられる強力なsiRNAを生成させるのに重要なこれらの知見を活用する。Dicer基質である二重鎖RNAから生成されるsiRNAの正確な予測を可能とする、新規の設計ルールについて論じる。
【0083】
Drosophilaの胚溶解物における実験は、合成siRNA鎖上における遊離5’−OHまたは5’−リン酸の必要を示した(Elbashirら、2001年b;Nykanenら、2001年)。同様の結果は、HeLa抽出物(Schwarzら、2002年)または完全細胞(ChiuおよびRana、2002年)においても観察された。siRNA鎖の一方または他方に対する非対称的な5’−アミノ修飾は、アンチセンス鎖の5’アミノ修飾がRNAiを消失させるのに対し、センス鎖だけの同じ修飾はRNAi効果を阻害しないことを示した。また、リン酸化されない合成siRNAは、ホスファターゼにより前処理したのでない限り、細胞内にトランスフェクトし、後に再単離しても、in vitroにおいて、キナーゼによりリン酸化することができない(ChiuおよびRana、2002年)。まとめると、これは、in vivoにおける、アンチセンス鎖上の5’リン酸に対する必要性を強く示唆する。これは、このヌクレオチドの修飾が、活性化されたRISC複合体内においてエンドヌクレアーゼによる切断のガイド鎖として用いられる、アンチセンス鎖の能力に干渉するという仮説と符合する。一方、3’端を遮断する修飾は、二重鎖siRNAに対してほとんど影響を及ぼさず、大半の場合、いずれの鎖に対してもほとんど影響を及ぼさない(Amarzguiouiら、2003年)。
【0084】
siRNA二重鎖に対する骨格修飾の研究により、5’末端と3’末端の間に分布する、siRNA鎖当たり最大で6カ所の2’−O−メチル修飾、または3’末端における2カ所の2’−O−アリル修飾は、RNAiに有害な影響を及ぼさないことが示されている(Amarzguiouiら、2003年)。この程度を超えて修飾の数を増加させるか、または5’末端のアリル修飾を行うと、RNAiは低下する(Amarzguiouiら、2003年;Holenら、2003年)。2カ所を超えるホスホロチオエート修飾は、著明な効力の増大を促進せず、逆に、毒性である(Amarzguiouiら、2003年)。siRNAを動物内に直接注射する場合に限り、該siRNAに対する骨格修飾によりこれらの分子の半減期が延長されるので、該骨格修飾の利点を実現することができる(Layzerら、2004年;Soutschekら、2004年)。本明細書において、本発明者らは、シクロデキストリンナノ粒子担体によりもたらされる、血清ヌクレアーゼからの保護を利用し、したがって、本発明者らのRNAは、骨格修飾されず、このため、それらは、in vivoにおいて有効にDicer処理されうる。
【0085】
配列の定義
RNAiは、陽イオン性脂質または他の担体を用いて細胞に送達される合成siRNAを介して、または21マーのセンス鎖およびアンチセンス鎖の遺伝子発現もしくはsiRNAへとプロセシングされる短鎖ヘアピンRNA(SchererおよびRossi、2003年aにおいて総説されている)を介して誘発することができる。siRNAを介するノックダウンの成功についての重要な決定因子は、標的部位への到達可能性と、siRNAによる適切な鎖の選択との組合せである。本発明者らおよび他の発明者らは、標的部位とsiRNA二重鎖との適切な組合せを同定するアルゴリズムを開発している(Healeら、2005年)。本発明者らのアルゴリズムは、標的部位の二次構造予測、およびsiRNAの二重鎖端における安定性を考慮に入れる。後者は、RISC内へのアンチセンス鎖の選択において重要である(Khvorovaら、2003年;Schwarzら、2003年;Tomariら、2004年)。また、RNアーゼIIIファミリーのメンバーであるDicerにより切断されるのに十分な長さのdsRNAは、21マーのsiRNAより最大で100倍強力でありうることも発見されている(Kimら、2005年;Siolasら、2005年)。したがって、標的部位およびsiRNAの同定に好ましい本発明者らの方法は、本発明者らのアルゴリズム(Healeら、2005年)により配列モチーフを精選し、潜在的な標的配列および21マーのsiRNAを同定し、複数の21マーを相対的な有効性について調べることである。
【0086】
最適の標的部位を決定するための、コンピュータによる新規のアルゴリズムを用いて、ヒト内皮PASドメインタンパク質1(EPAS1)遺伝子内における3つの潜在的な標的部位を同定した。参照によりその全体性において本明細書に組み込まれる、US2006/0263435A1におけるDavisらにより説明される通り、これらの3つの標的配列を対象とするsiRNAを合成し、これを細胞抽出物に対するプレスクリーンアッセイにおいて調べた。
【0087】
細胞抽出物による結合アッセイは、細胞内における有効性を高度に予測することが既に示されている(例えば、参照によりその全体性において本明細書に組み込まれる、米国特許第7,427,605号を参照されたい)。略述すると、合成の21マーをその5’端において32Pで標識し、HEK 293の細胞質抽出物中において室温でインキュベートする。RISCの構成要素であるargonaute 2(Ago2)を含有する複合体内において、siRNAを結合させることができる。米国特許第7,427,605号の図6に示される通り、結合の有効性は、細胞内における効力と強く相関する。最も強力な21マーを同定したら、その配列を、Dicerの基質である27塩基の二重鎖内に組み込む。27マーから最適の21マーだけが生成されるように、Dicer処理のためのフォーマットを確立した(以下を参照されたい)。したがって、選択された27マーの使用に対する唯一の制約条件は送達である。in vivoにおけるDicer処理に好ましい基質は、以下:
【0088】
【化1】

の一般的な特徴を有する。
【0089】
in vitroにおけるDicer処理、およびDicer処理された産物に対する質量分析を用いて、Dicerが、2塩基の3’突出を認識し、センス鎖の5’端からの21塩基、および該2塩基突出からの21塩基を切断し、唯一の21マーを生成することが決定されている。センス鎖の3’端における2つのデオキシリボヌクレオチド(dN)を包含することにより、Dicerは、この二重鎖の右側からは進行せず、これにより、対象の21マーだけの生成を確保する。米国特許第7,427,605号の図6および実施例1は、単一の塩基だけ異なる一連の21マーを抽出物とインキュベートする、抽出物結合アッセイの代表的な結果を示す。siRNAの結合親和性は、標的のノックダウンと正確に相関する。このアッセイは、20を超える異なるsiRNAについて繰り返されたが、この相関は依然として存続した。
【0090】
ヒトEPAS1 mRNAの配列は、Healeら、2005年に記載のアルゴリズムにより決定した。上位で予測された複数のsiRNAおよび標的を、他のヒト配列との潜在的な相補性について解析し、アンチセンス鎖の5’端におけるマッチの拡張に注意した。他の標的に対する5’側相同性の拡張を共有しなかった配列を、10nMの濃度で調べた。A498細胞において最も著明なEPAS1 mRNAレベルの低減および/または抗増殖効果を示すdsRNAを、後続のin vivo実験において用いることができる。
【0091】
EPAS1阻害剤の使用
特定の実施形態において、本発明は、1つまたは複数の細胞、例えば、腫瘍細胞もしくは癌性細胞、または病原体細胞の望ましくない増殖を阻害する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、癌の増殖を阻害するかまたは低下させる方法、および癌に罹患する個体を治療する方法を提供する。これらの方法は、上記で説明した、1つまたは複数の有効量のEPAS1阻害剤(例えば、siRNA)を個々の患者に投与するステップを伴う。特定の実施形態において、本発明は、転移性癌を治療する方法および/または転移を防止する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、例えば、化学療法剤など、従来の療法に対して耐性である癌を治療する方法を提供する。特定の方法は、特に、動物、またより具体的には、ヒトの治療的処置および予防的処置を目的とし、このような方法では、(1つまたは複数の)治療有効量のEPAS1阻害剤が、動物またはヒト患者に投与される。
【0092】
「治療(treating)」という用語は、予防的および/または治療的処置(prophylactic and/or therapeutic treatments)を包含する。「予防的または治療的」処置という用語は当技術分野で認知されており、宿主に対する、対象組成物のうちの1つまたは複数の投与を包含する。それが、望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床症状以前に投与される場合、該処置は予防的であり(すなわち、それは、望ましくない状態の発生に対して宿主を保護する)、それが、望ましくない状態の発現後に投与される場合、該処置は治療的である(すなわち、それは、既存の望ましくない状態またはその副作用を軽減するか、改善するか、または安定化させることを意図する)。
【0093】
本明細書で用いられる通り、障害または状態を「防止する」治療薬とは、統計学的試料のうち、非治療の対照試料と比べて、治療された試料における障害もしくは状態の発生を低下させるか、または非治療の対照試料と比べて、障害もしくは状態の、1つもしくは複数の症状の発生を遅延させるか、またはその重症度を軽減する化合物を指す。
【0094】
本明細書に記載の腫瘍または癌には、個体内部における腫瘍、異種移植による腫瘍、またはin vitroで培養される腫瘍が含まれる。特に、本発明の核酸薬剤は、癌の治療または防止に有用である。対象の方法により治療しうる癌の例示的な形態には、前立腺癌、膀胱癌、肺癌(小細胞肺癌または非小細胞肺癌を含めた)、結腸癌、腎癌、肝癌、乳癌、子宮頚癌、子宮内膜癌または他の子宮癌、卵巣癌、精巣癌、陰茎癌、膣癌、尿道癌、胆癌、食道癌、または膵臓癌が含まれるがこれらに限定されない。対象の方法により治療しうる癌のさらなる例示的な形態には、骨格筋腫または平滑筋腫、胃癌、小腸癌、唾液腺癌、肛門癌、直腸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、脳下垂体癌、および鼻咽頭癌が含まれるがこれらに限定されない。本発明のEPAS1阻害剤により治療しうる癌のさらなる例示的な形態には、ヘッジホッグ発現細胞を含む癌が含まれる。本発明のEPAS1阻害剤により治療しうる癌のまたさらなる例示的な形態には、EPAS1発現細胞を含む癌が含まれる。特定のこのような実施形態において、癌細胞と同じ組織型の正常細胞または非癌性細胞は、当技術分野における技法により検出可能なレベルではEPAS1を発現しえない;例えば、腎癌細胞内におけるEPAS1の発現と対照的に、正常な腎組織または腎細胞は、検出可能なレベルのEPAS1を発現しない。本発明は、本明細書におけるEPAS1阻害剤を単独で用いることもでき、他の治療薬および/または、従来からのものであれそうでない場合であれ、他の療法を含めた全体的な治療レジメンの一部として投与することもできることを意図する。
【0095】
本明細書に記載のEPAS1阻害核酸を用いて治療しうる癌のさらなる例には、以下:急性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病、ならびに骨髄異形成症候群などの急性骨髄性白血病;慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞白血病などであるがこれらに限定されない慢性白血病;真性赤血球増加症;ホジキン病、非ホジキン病などであるがこれらに限定されないリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫、および骨髄外形質細胞腫などであるがこれらに限定されない多発性骨髄腫;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症;良性単クローン性免疫グロブリン血症;重鎖病;骨肉腫(bone sarcoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma(hemangiosarcoma))、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫が含まれるがこれらに限定されない骨および結合組織の肉腫;神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、非神経膠性腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽細胞腫、原発性脳リンパ腫などが含まれるがこれらに限定されない脳腫瘍;乳腺癌、小葉(小細胞)癌、乳管内癌、乳腺髄様癌、粘液性乳癌、乳腺管状癌、乳腺乳頭癌、乳腺パジェット病、および炎症性乳癌が含まれるがこれらに限定されない乳癌;褐色細胞腫および副腎皮質癌などであるがこれらに限定されない副腎癌;甲状腺乳頭癌または甲状腺濾胞癌、甲状腺髄様癌、および甲状腺未分化癌などであるがこれらに限定されない甲状腺癌;インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、VIPオーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、および膵カルチノイド腫瘍または膵内分泌腫瘍などであるがこれらに限定されない膵臓癌;クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、末端肥大症、および尿崩症(diabetes insipius)などであるがこれらに限定されない下垂体癌;虹彩黒色腫、脈絡叢黒色腫、および毛様体黒色腫などの眼内黒色腫、ならびに網膜芽腫などであるがこれらに限定されない眼腫瘍;膣扁平上皮癌、膣腺癌、および膣黒色腫などの膣癌;外陰扁平上皮癌、外陰黒色腫、外陰腺癌、外陰基底細胞癌、外陰肉腫、および外陰パジェット病などの外陰癌;子宮扁平上皮癌および子宮腺癌などであるがこれらに限定されない子宮頚癌;子宮内膜癌および子宮肉腫などであるがこれらに限定されない子宮癌;卵巣上皮癌、卵巣境界腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、および卵巣間質性腫瘍などであるがこれらに限定されない卵巣癌;食道扁平上皮癌、食道腺癌、食道腺様嚢胞癌、食道粘液性類表皮癌、食道腺扁平上皮癌、食道肉腫、食道黒色腫、食道形質細胞腫、食道疣状癌、および食道燕麦細胞(小細胞)癌などであるがこれらに限定されない食道癌;胃腺癌、決潰型(ポリープ状)胃癌、潰瘍型胃癌、表在拡大型胃癌、びまん拡大型胃癌、胃悪性リンパ腫、胃脂肪肉腫、胃線維肉腫、および胃癌肉腫などであるがこれらに限定されない胃癌;結腸癌;直腸癌;肝細胞癌および肝芽腫などであるがこれらに限定されない肝癌;胆嚢腺癌などの胆嚢癌;乳頭型胆管癌、結節型胆管癌、およびびまん型胆管癌などの胆管癌;肺非小細胞癌、肺扁平上皮細胞癌(肺類表皮癌)、肺腺癌、肺大細胞癌、および肺小細胞癌などの肺癌;精巣胚細胞腫瘍、精巣セミノーマ、退形成性セミノーマ、定型(典型)セミノーマ、精母細胞性セミノーマ、精巣非セミノーマ、精巣胎児性癌、精巣奇形腫、精巣絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)などであるがこれらに限定されない精巣癌;前立腺腺癌、前立腺平滑筋肉腫、および前立腺横紋筋肉腫などであるがこれらに限定されない前立腺癌;陰茎癌;口腔扁平上皮癌などであるがこれらに限定されない口腔癌;基底細胞癌;唾液腺腺癌、唾液腺粘膜表皮癌、および唾液腺腺様嚢胞癌などであるがこれらに限定されない唾液腺癌;咽頭扁平上皮癌および咽頭疣状癌などであるがこれらに限定されない咽頭癌;皮膚基底細胞癌、皮膚扁平上皮細胞癌、および皮膚黒色腫、表在拡大型皮膚黒色腫、結節型皮膚黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫などであるがこれらに限定されない皮膚癌;腎明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、嫌色素性腎細胞癌、好酸性顆粒細胞腫、腎腺癌、副腎腫、腎線維肉腫、移行上皮癌(腎芋および/または尿管(uterer))などであるがこれらに限定されない腎癌;ウィルムス腫瘍;膀胱移行上皮癌、膀胱扁平上皮癌、膀胱腺癌、膀胱癌肉腫などであるがこれらに限定されない膀胱癌が含まれる。加えて、癌には、粘液肉腫、骨肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、および乳頭腺癌が含まれる(このような障害の総説については、Fishmanら、1985年、「Medicine」、第2版、J.B. Lippincott社、フィラデルフィア;およびMurphyら、1997年、「Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery」、Viking Penguin社、Penguin Books U.S.A.社、米国を参照されたい)。
【0096】
特定の実施形態において、本発明は、正常細胞(例えば、非癌性細胞および/または非病原性細胞)の望ましくない増殖を阻害する方法を提供する。例えば、正常細胞は、毛髪の成長に必要とされる細胞であり得、本明細書に記載の方法により毛髪の望ましくない成長を治療することができる;細胞の望ましくない増殖は、毛髪の正常な成長、異所発毛症、多毛症(hypertrichosis)、多毛症(hirsutism)、または脱毛性毛包炎、網状瘢痕性紅斑性毛包炎、頭部乳頭状皮膚炎、および偽毛包炎を含めた毛包炎において生じうる。さらなる例において、正常細胞は、自己免疫反応、移植拒絶など、望ましくない免疫反応に関与する免疫細胞でありうる。例示的な実施形態において、正常細胞は正常なT細胞であり、T細胞の過剰な活性または増殖は、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、および乾癬性関節炎を含めた)、多発性硬化症、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を含めた)、乾癬、シェーグレン症候群、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、I型糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病反転反応、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳脊髄炎、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、真性赤血球性貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス−ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、移植片対宿主病、骨髄移植、肝移植、または任意の臓器または組織の移植などの移植症例(同種組織または異種組織を用いる移植を含めた)、アトピー性アレルギーなどのアレルギー、および白血病および/またはリンパ腫などのT細胞新生物を含めた、多数の疾患または状態の一因である。
【0097】
本明細書に記載の方法の特定の実施形態において、1つまたは複数の核酸によるEPAS1阻害剤は、併せて(同時に)投与することもでき、異なる時点において(逐次的に)投与することもできる。例えば、2つ以上のdsRNA、siRNA、もしくは酵素性核酸、またはこれらの組合せは、本明細書に記載の方法に従って用いることができる。
【0098】
特定の実施形態において、本発明の対象の阻害核酸は、単独で用いることができる。代替的に、対象の阻害核酸は、他の従来の抗癌剤、抗病原体剤、または望ましくない細胞増殖の治療または予防を対象とする他の治療法と組み合わせて投与することもできる。例えば、このような方法は、癌の予防的な防止、手術後における癌の再発および転移の防止において、また従来の他の癌療法に対するアジュバントとして用いることができる。本発明は、対象の核酸薬剤の使用を介して、従来の癌療法(例えば、化学療法、放射線療法、光線療法、免疫療法、および手術)の有効性を増強しうることを認識する。EPAS1阻害核酸および別の治療剤を含む組合せ療法を用いる場合、このような治療剤は、個別に投与することもでき、併せて投与することもできる。特定の実施形態において、組合せ療法は、併せて製剤化される場合であれ、個別の製剤として投与される場合であれ、EPAS1阻害核酸および別の治療剤を伴いうる。
【0099】
従来の多種多様な化合物が、抗新生物活性を有することが示されている。これらの化合物は、充実性腫瘍を退縮させるか、白血病もしくは骨髄腫の転移およびさらなる増殖を防止するか、またはその悪性細胞数を低減するために、化学療法における薬剤として用いられている。化学療法は、各種の悪性腫瘍を治療するのに有効であるが、望ましくない副作用を誘発する抗新生物化合物が多い。2つ以上の異なる治療を組み合わせる場合、治療は相乗作用的に働き、各治療の用量の低減を可能とし、これにより、高用量の各化合物によりもたらされる有害な副作用が軽減されることが示されている。他の場合には、治療に対して不応な悪性腫瘍が、2つ以上の異なる治療による組合せ療法には応答する場合がある。
【0100】
特定の化学療法剤はEPAS1の望ましくない上方調節を引き起こし、これにより、サイクリンG2、c−Met、CXCR4、IGF2、IGF−BP1、IGF−BP2、IGF−BP3、EGF、WAF−1、TGF−α、TGF−β3、ADM、EPO、IGF2、EG−VEGF、VEGF、NOS2、LEP、LRP1、HK1、HK2、AMF/GP1、ENO1、GLUT1、GAPDH、LDHA、血小板由来成長因子B、PFKBF3、PKFL、MIC1、NIP3、NIX、RTP801、および/または特定のマトリックスメタロプロテアーゼのうちの1つまたは複数の発現が誘導される。その血管新生の誘導およびその嫌気性代謝の活性化を介して細胞の生存を促進することにより、EPAS1の活性化は、これらの薬剤による他の抗癌活性に対して反作用的であると考えられている。したがって、(1つまたは複数の)EPAS1阻害剤を特定の化学療法剤と組み合わせて用いて、それらの有効性を高めることができる。
【0101】
例示だけを目的として述べると、(1つまたは複数の)EPAS1阻害剤との対象の組合せ療法において用いうる薬剤には、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レトロゾール、レウコボリン、レウプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが含まれる。
【0102】
これらの抗癌剤は、それらの作用機構により、例えば、以下の群:ピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、およびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストおよび類縁阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの代謝拮抗剤/抗癌剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)などの天然生成物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(テニポシド)などの微小管破壊剤、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルバジン、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびエトポシド(VP16))を含めた抗増殖/抗有糸分裂剤;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシンなどの抗生剤;酵素(全身においてL−アスパラギンを代謝し、それら自身のアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を除去するL−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;窒素マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジン(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)、およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、および他のトロンビン阻害剤);線溶剤(組織プラスミノーゲン活性化剤、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼなど)、アスピリン、COX−2阻害剤、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、マイコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP−470、ゲニステイン)および成長因子阻害剤(血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤、上皮成長因子(EGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断剤;一酸化窒素供与剤;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾン、およびプレドニゾロン(prenisolone));成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘発剤およびカスパーゼ活性化剤;クロマチン破壊剤に分類することができる。
【0103】
これらの抗癌剤は、EPAS1阻害剤と共に個別で用いることもでき、さらなる抗癌剤と共に組合せで用いることもできる。当技術分野では、上記で列挙した組合せ療法が含まれるがこれらに限定されない多くの組合せ療法が開発されている。従来の抗癌剤に加えて、対象の方法による薬剤はまた、従来の化学療法の標的である望ましくない細胞増殖に寄与する細胞成分の発現を阻害する化合物、およびアンチセンスRNA、RNAiポリヌクレオチド、または他のポリヌクレオチドでもありうる。例示だけを目的として述べると、このような標的は、成長因子、成長因子受容体、細胞周期調節タンパク質、転写因子、またはシグナル伝達キナーゼである。
【0104】
本発明の方法は、従来の抗癌剤がより低用量でより大きな効果を及ぼすことを可能とすることにより、既存の組合せ療法を超えて有利でありうる。本発明の好ましい実施形態において、EPAS1阻害剤(例えば、核酸構築物)と組み合わせて用いられた場合における、抗癌剤または抗癌剤の組合せについての有効用量(ED50)は、抗癌剤単独(すなわち、EPAS1阻害剤を伴わない、同じ1つの薬剤または複数の薬剤)についてのED50の5分の1以下である。逆に、EPAS1阻害剤(例えば、核酸構築物)と組み合わせて用いられた場合における、このような抗癌剤または抗癌剤の組合せについての治療指数(TI)は、抗癌剤レジメン単独(すなわち、EPAS1阻害剤を伴わない、同じ1つの薬剤または複数の薬剤)についてのTIの少なくとも5倍である。
【0105】
特定の実施形態において、本明細書に記載のEPAS1阻害核酸は、例えば、抗炎症剤、免疫抑制剤、および/または抗感染症剤(例えば、抗生化合物、抗ウイルス化合物、および/または抗真菌化合物など)を含めた他の治療剤と組み合わせて投与することができる。例示的な抗炎症薬には、例えば、ステロイド性抗炎症薬(例えば、コルチゾール、アルドステロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、デオキシコルチコステロン、およびフルオロコルチゾールなど)および非ステロイド抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、およびピロキシカムなど)が含まれる。例示的な免疫抑制薬には、例えば、プレドニゾン、アザチオプリン(Imuran)、シクロスポリン(Sandimmune、Neoral)、ラパマイシン、抗胸腺細胞グロブリン、ダクリズマブ、OKT3およびALG、マイコフェノール酸モフェチル(Cellcept)およびタクロリムス(Prograf、FK506)が含まれる。例示的な抗生剤には、例えば、サルファ薬(例えば、スルファニルアミド)、葉酸類似体(例えば、トリメトプリム)、ベータ−ラクタム(例えば、ペニシリン(penacillin)、セファロスポリン)、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン(stretomycin)、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン)、テトラサイクリン(例えば、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびドキシサイクリン)、マクロリド(例えば、エリトロマイシン、アジトロマイシン、およびクラリトロマイシン)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン)、ストレプトグラミン(例えば、キヌプリスチンおよびダルホプリスチン)、フルオロキノロン(例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、およびモキシフロキサシン)、ポリペプチド(例えば、ポリミキシン)、リファンピン、ムピロシン、シクロセリン、アミノシクリトール(例えば、スペクチノマイシン)、グリコペプチド(例えば、バンコマイシン)、およびオキサゾリジノン(例えば、リネゾリド)が含まれる。例示的な抗ウイルス剤には、例えば、ビダラビン、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤(例えば、ZAT、ddl、ddC、D4T、3TC)、ヌクレオシド類似体以外の逆転写酵素阻害剤(例えば、ネビラピン、デラビルジン)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、サクイナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル)、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、レレンザ、タミフル、プレコナリル、およびインターフェロンが含まれる。例示的な抗真菌剤には、例えば、ポリエン系抗真菌剤(例えば、アムホテリシンおよびニスタチン)、イミダゾール系抗真菌剤(例えば、ケトコナゾールおよびミコナゾール)、トリアゾール系抗真菌剤(例えば、フルコナゾールおよびイトラコナゾール)、フルシトシン、グリセオフルビン、およびテルビナフィンが含まれる。
【0106】
他の態様において、本明細書に記載のEPAS1阻害核酸はまた、例えば、KhodadoustおよびSharma(US2006/0135443A1)により説明される化合物など、HIF1αを阻害する他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。このような化合物はまた、本明細書に記載のEPAS1阻害剤と共に用いることもでき、本明細書に記載の抗癌剤とさらに組み合わせて用いることもできる。
【0107】
他の実施形態において、本開示は、血管新生を阻害する方法および血管新生関連疾患を治療する方法を提供する。本明細書に記載の血管新生関連疾患には、例えば、充実性腫瘍、白血病などの血行性腫瘍、および腫瘍転移;良性腫瘍、例えば、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;免疫性炎症および非免疫性炎症などの炎症性障害;慢性関節リウマチおよび乾癬;眼内血管新生性疾患、例えば、糖尿病性網膜炎、若年性網膜炎、黄斑変性、角膜移植拒絶、新生血管緑内障、後水晶体線維増殖症、ルベオーシス;オスラー−ウェーバー−ランデュ症候群(Osler−Webber Syndrome);心筋血管新生;プラーク内新血管形成;毛細血管拡張症;血友病性関節症;血管線維腫ならびに創傷顆粒形成および創傷治癒;毛細血管拡張症、乾癬、強皮症、化膿性肉芽腫、冠動脈側枝、虚血性四肢血管新生、角膜疾患、ルベオーシス、関節炎、糖尿病性新血管形成、骨折、血管形成、血球新生を含めた血管新生依存性癌が含まれるがこれらに限定されない。
【0108】
本開示の方法および組成物はまた、任意の血管新生非依存性癌(腫瘍)を治療するのにも有用であることが理解される。本明細書で用いられる「血管新生非依存性癌」という用語は、腫瘍組織内において、新血管形成がほとんどまたはまったく見られない癌(腫瘍)を指す。
【0109】
このような方法の特定の実施形態では、1つまたは複数の核酸治療剤を、併せて(同時に)投与することもでき、異なる時点において(逐次的に)投与することもできる。加えて、核酸治療剤は、癌を治療するか、または血管新生を阻害するための別の種類の化合物と共に投与することができる。
【0110】
組合せ療法の性質に応じて、本発明の核酸治療剤は、他の療法が投与される間、および/またはその後において継続することができる。核酸治療剤の投与は、単回投与で実施することもでき、複数回投与で実施することもできる。一部の場合には、核酸治療剤の投与が従来の療法に少なくとも数日間先だって開始されるのに対し、他の場合には、従来の療法の投与直前または投与時において投与が開始される。
【0111】
投与方法および組成物
特定の実施形態において、本発明は、本明細書で記載される、1つまたは複数のEPAS1阻害剤を含む組成物を提供する。特定の実施形態において、組成物は、患者における治療的使用に適する医薬品である。特定の実施形態において、組成物は、動物またはヒトにおける美容的使用に適する化粧品である。代替的な実施形態において、組成物は、医薬部外品および非化粧品である。一般に、化粧品と医薬品との違いは、後者をヒトまたは動物において使用するには、規制機関による承認(例えば、米国食品医薬品局による)が必要となることである。
【0112】
EPAS1阻害剤、特に、該核酸を送達する方法は、当技術分野で公知の方法に基づく(例えば、Akhtarら、Trends Cell Bio.、2巻、139頁、1992年;および「Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics」、Akhtar編、1995年; Sullivanら、PCT特許公開第WO94/02595号を参照されたい)。事実上任意の核酸を送達するのに、これらのプロトコールを用いるか、改変するか、または改良しうる。リポソーム内における封入、イオントフォレーシスによる投与、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生体分解性のナノカプセル、および生体付着性のマイクロスフェアなど、他の媒体内への組込みによる投与が含まれるがこれらに限定されない、当業者に公知の各種の方法により、核酸を細胞へと投与することができる。代替的に、核酸/媒体の組合せは、直接の注射により、または注入ポンプを用いることにより局所的に送達される。他の送達経路には、経口(錠剤形態または丸薬形態)送達および/またはくも膜下腔内送達(Gold、Neuroscience、76巻、1153〜1158頁、1997年)が含まれるがこれらに限定されない。他の手法には、各種の輸送系および担体系の使用、例えば、コンジュゲートおよび生体分解性ポリマーの使用を介する手法が含まれる。特定の実施形態において、対象のEPAS1阻害剤および媒体は、投与前の最終的な剤形において混合され、製剤化される。代替的な実施形態において、対象のEPAS1阻害剤および媒体は、投与時において混合されるように、個別に製剤化される。例えば、対象のEPAS1阻害剤および媒体は、送達用のキットまたはパッケージの個別の区画内において保存され、対象のEPAS1阻害剤および媒体が送達用に混合されるのは、所望の部位への投与時、または所望の経路を介する投与時においてである。個別の区画は、キット中における個別のバイアルの場合もあり、医薬送達ペン中における個別のカートリッジ(米国特許第5,542,760号を参照されたい)の場合もあり、個別のカニューレまたはシリンジ内の区画などの場合もある。
【0113】
特定の実施形態において、対象のEPAS1阻害剤は、送達媒体としてポリマーによるマイクロ粒子またはナノ粒子を包含する超分子複合体として提供される。本明細書で用いられる「マイクロ粒子」または「ナノ粒子」という用語には、マイクロスフェアまたはナノスフェア(均一の球体)、マイクロカプセルまたはナノカプセル(コアおよびポリマーの外層を有する)、および不規則な形状の粒子が含まれる。
【0114】
本発明は、その間にわたってEPAS1阻害剤の放出が所望される時間内、またはその後の比較的早期、一般には1年間の範囲、より典型的には数カ月間、さらにより典型的には数日間〜数週間にわたり生体分解性であることが好ましいポリマーの使用を意図する。生体分解とは、マイクロ粒子の分解、すなわち、マイクロ粒子/ナノ粒子を形成するポリマーの解離を指す場合もあり、かつ/またはポリマー自体の分解を指す場合もある。これは、ジケトピペラジンの場合のように、その中にある粒子が投与される担体から、放出部位におけるpHへのpH変化の結果として生じることもあり、ポリ(ヒドロキシ酸)の場合のように、加水分解の結果として生じることもあり、アルギン酸などのポリマーのイオン結合により形成されるマイクロ粒子またはナノ粒子の場合のように、マイクロ粒子からカルシウムなどのイオンが拡散することにより生じることもあり、多くの多糖およびタンパク質の場合のように、酵素作用により生じることもある。一部の場合には、直線的放出が最も有用であるが、他の場合には、パルス放出または「バルク放出」が、より有効な結果をもたらすこともある。
【0115】
代表的な合成材料は、ジケトピペラジン;ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびこれらのコポリマーなどのポリ(ヒドロキシ酸);ポリ酸無水物;ポリオルトエステルなどのポリエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(テレフタル酸エチレン)などのポリアルキレン;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、およびポリ塩化ビニルなどのポリビニル化合物;ポリスチレン;ポリシロキサン;ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)を含めたアクリル酸ポリマーおよびメタクリル酸ポリマー;ポリウレタンおよびこれらのコポリマー;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、フタル酸酢酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、三酢酸セルロース、およびセルロース硫酸ナトリウム塩を含めたセルロース;ポリ(酪酸)(poly(butic acid));ポリ(吉草酸);ならびにポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)である。
【0116】
天然のポリマーには、アルギン酸ならびにデキストランおよびセルロースを含めた他の多糖、コラーゲン、アルブミン、および他の親水性タンパク質、ゼインおよび他のプロラミン、ならびに疎水性タンパク質、これらのコポリマーおよび混合物が含まれる。本明細書で用いられるこれらの化学的誘導体とは、化学基、例えば、アルキル基、アルキレン基の置換、付加、水酸化、酸化、および当業者によって日常的に行われる他の修飾を指す。
【0117】
生体付着性ポリマーには、H.S.Sawhney、C.P.PathakおよびJ. A.Hubell、Macromolecules、26巻、581〜587頁、1993年により説明される生体浸蝕性ハイドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、およびポリアクリレートが含まれる。
【0118】
薬物送達戦略に対する包括的な総説については、Hoら、Curr.Opin.Mol.Ther.、1巻、336〜343頁、1999年;およびJain、「Drug Delivery Systems:Technologies and Commercial Opportunities,Decision Resources」、1998年;およびGroothuisら、J.NeuroVirol.、3巻、387〜400頁、1997年を参照されたい。核酸の送達および投与についてのより詳細な説明は、Sullivanら、前出;Draperら、PCT WO93/23569;Beigelmanら、PCT特許公開第WO99/05094号;Klimukら、PCT特許公開第WO99/04819号において提供されている。
【0119】
本明細書で用いられる「非経口投与」および「非経口投与された」という語句は、経口投与および局所投与以外の投与方式を意味し、通常は注射により、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節包内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、胸骨内の注射および注入、ならびに肝内動脈内投与(肝内注射および肝内注入を含めた)が含まれるがこれらに限定されない。
【0120】
本明細書で用いられる「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」、および「末梢投与された」という語句は、化合物、薬物、または他の物質が患者の全身に投入され、したがって、代謝および他の同様の過程にかけられるように、中枢神経系内への直接的な投与以外の化合物、薬物、または他の物質の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0121】
特定の実施形態において、本発明の対象の核酸(例えば、RNAi構築物および酵素性核酸)は、薬学的に許容される担体と共に製剤化される。このような治療剤は、単独で、または医薬製剤(組成物)の成分として投与することができる。該薬剤は、ヒトまたは脊椎動物に対する医療において用いられる任意の好都合な方法での投与に応じて製剤化することができる。保湿剤、乳化剤、およびラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤のほか、着色剤、放出剤、被覆剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤、および抗酸化剤もまた、組成物中に存在しうる。
【0122】
対象の核酸による製剤は、全身投与、局所(local)投与、経口投与、鼻腔内投与、局所(topical)投与、非経口投与、直腸内投与、および/または膣内投与に適するものを包含する。該製剤は、単位剤形で提示すると好都合な場合があり、製薬技術分野で周知の任意の方法により調製することができる。担体物質と組み合わせて単一の剤形をもたらしうる有効成分の量は、治療される宿主、特定の投与方式に応じて変化する。担体物質と組み合わせて単一の剤形をもたらしうる有効成分の量は一般に、治療効果をもたらす化合物の量である。
【0123】
特定の実施形態において、これらの製剤または組成物を調製する方法は、別の種類の治療薬または抗感染症剤、ならびに担体、および、場合によって、1つまたは複数の付属成分を混合するステップを包含する。一般に、該製剤は、液体の担体、または微粒子化された固体の担体、またはこれらの両方により調製することができ、次いで、必要な場合は生成物を成形する。
【0124】
経口投与用の製剤は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ドロップ(通常、スクロースおよびアカシアガムまたはトラガカントガムである香味ベースを用いる)、粉末、顆粒の形態の場合もあり、水溶性または非水溶性の液体中における溶液または懸濁液の場合もあり、水中油または油中水による液体エマルジョンの場合もあり、エリキシル剤またはシロップの場合もあり、トローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアガムなどの不活性ベースを用いる)の場合もあり、かつ/または口腔洗浄剤などの場合もあるが、各々が、所定量の対象の核酸治療剤を有効成分として含有する。
【0125】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末、顆粒など)の場合、本発明の1つまたは複数の核酸治療剤は、クエン酸ナトリウム、リン酸ジカルシウム、および/または以下:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤および増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアガムなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカのデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物などの潤滑剤;(10)着色剤のうちのいずれかなど、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合することができる。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤も含みうる。類似の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤のほか、高分子量のポリエチレングリコールなどを用いる軟性および硬性の充填型ゼラチンカプセル内における充填剤としても用いることができる。
【0126】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が含まれる。有効成分に加えて、該液体剤形は、水、またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、麦芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物など他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤など、当技術分野で一般的に用いられる不活性希釈剤を含有しうる。不活性希釈剤のほか、経口組成物はまた、保湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、および防腐剤などのアジュバントも包含しうる。
【0127】
活性化合物に加えて、懸濁液は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカントガム、ならびにこれらの混合物などの懸濁剤を含有しうる。
【0128】
本発明の方法および組成物は、子宮頸部および膣の皮膚または粘膜へと局所投与することができる。これにより、副作用を誘発する可能性を最小限としながら、皮膚または粘膜に局在化する、望ましくない細胞増殖に対して直接的な送達を行う最大の機会がもたらされる。局所製剤は、皮膚または角質層の透過増強剤として有効であることが公知の、多種多様な薬剤のうちの1つまたは複数をさらに含みうる。これらの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルアルコールまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。製剤を化粧品として許容されるものとするために、追加の薬剤をさらに組み入れることができる。これらの例は、脂肪、蝋、油、色素、香料、防腐剤、安定化剤、および界面活性剤である。当技術分野において公知の角質溶解剤などの角質溶解剤もまた組み入れることができる。例は、サリチル酸および硫黄である。
【0129】
局所投与用または経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、貼付剤、および吸入剤が含まれる。対象の核酸は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要とされうる任意の防腐剤、緩衝剤、または推進剤と混合することができる。軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルは、対象の核酸分子に加えて、動物性脂肪および植物性脂肪、油、蝋、パラフィン、デンプン、トラガカントガム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、滑石、および酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤を含有しうる。
【0130】
粉末およびスプレーは、対象の核酸治療剤に加え、ラクトース、滑石、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有しうる。スプレーは、クロロフルオロハイドロカーボンなど通常の推進剤、ならびにブタンおよびプロパンなど、揮発性の非置換炭化水素をさらに含有しうる。
【0131】
吸入に適する製剤もまた提供され、このような製剤は、肺系に局在化される肺内送達または全身送達に用いることができる。医薬の肺内送達用デバイスの例には、用量計量型吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器(DPI)が含まれる。対象のEPAS1阻害剤および/または活性薬剤の送達に適合させうる、吸入による例示的な送達系は、例えば、米国特許第5,756,353号;同第5,858,784号;およびPCT特許出願第WO98/31346号;同第WO98/10796号;同第WO00/27359号;同第WO01/54664号;同第WO02/060412号において説明されている。対象のEPAS1阻害剤および/または活性薬剤を送達するのに用いうる他のエアゾール製剤は、米国特許第6,294,153号;同第6,344,194号;同第6,071,497号;米国特許出願公開第2004/0063654号、およびPCT特許出願第WO02/066078号;同第WO02/053190号;同第WO01/60420号;同第WO00/66206号において説明されている。
【0132】
加圧式用量計量型吸入器(pMDI)は、世界中で最も一般的に用いられる吸入器である。バルブを開く(通常、推進剤キャニスター上における押し下げ操作により)とエアゾールが創出され、これにより、液体推進剤がキャニスターから噴霧される。通常、薬物または治療薬は、液体推進剤中に懸濁させた微粒子(通常、直径数ミクロン)内に含有されるが、一部の製剤では、薬物または治療薬を推進剤中に溶解させることができる。エアゾールがデバイスから放出されるに従い、推進剤は急速に蒸発し、その結果、薬物または治療薬の微粒子が吸入される。このようなpMDIにおいて典型的に用いられる推進剤には、ハイドロフルオロアルカン(HFA)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、薬物または治療薬を製剤化するのに、界面活性剤もまたpMDIと共に用いることができる。エタノール、アスコルビン酸、メタ二硫酸ナトリウム、グリセリン、クロロブタノール、および塩化セチルピリジニウム(cetylpyridium chloride)など、他の溶媒または賦形剤もまた、pMDIと共に用いることができる。このようなpMDIは、例えば、スペーサー、保持チャンバーなどの付加デバイス、および他の改変をさらに包含しうる。
【0133】
吸入器の第三の種類は、乾燥粉末吸入器(DPI)である。DPIにおいて、エアゾールは通常、それが吸入されるまでデバイス内に含有される粉末である。治療薬または薬物は、微粒子粉末(通常、数マイクロメートル(百万分の1メートル)の直径)としての粉末形態で製造される。多くのDPIにおいて、薬物または治療薬は、直径50〜100マイクロメートルが典型的である、はるかに大型の糖粒子(例えば、ラクトース一水和物)と混合される。ラクトース/薬物の凝集物に対する空気動力学的な力が増大すると、個別の小粉末用量の充填が容易となりうることに加え、吸入時における薬物粒子の引き込みが改善される。吸入時において、粉末は、乱流および/またはそれに対して粒子凝集物が衝突するスクリーンもしくは回転表面などの力学的デバイスの補助によりその構成粒子へと分解され、薬物の個々の粉末微粒子が、肺内に吸入される空気中へと放出される。糖粒子は通常、デバイス内および/または口腔−咽喉内に残留することが意図される。
【0134】
本発明の一態様は、EPAS1阻害剤を含むエアゾール組成物を提供する。エアゾール組成物は、エアゾール化されたEPAS1阻害剤を含む組成物の場合もあり、エアゾール化に適する製剤中にEPAS1阻害剤を含む組成物の場合もある。EPAS1阻害剤は、さらなる活性薬剤と組み合わせて製剤化することができ、該組合せ製剤は、エアゾール化に適する。代替的に、EPAS1阻害剤およびさらなる活性薬剤は、エアゾール化が生じた後であるか、または対象への投与後においてそれらが混合されるように、個別に製剤化することもできる。
【0135】
非経口投与に適する医薬組成物は、使用の直前に無菌の注射溶液または分散液中へと再構成することができ、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有しうる、1つまたは複数の薬学的に許容される、水溶性または非水溶性の無菌等張溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または無菌粉末と組み合わせた、1つまたは複数の核酸薬剤を含みうる。本発明の医薬組成物において用いうる、適切な水溶性および非水溶性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。例えば、レシチンなどの被覆材料を用いることにより、分散液の場合、必要とされる粒子サイズを維持することにより、また、界面活性剤を用いることにより、適正な流体性を維持することができる。
【0136】
これらの組成物はまた、防腐剤、保湿剤、乳化剤、および分散化剤などのアジュバントも含有しうる。例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなど、各種の抗菌剤および抗真菌剤を組み入れることにより、微生物作用の防止を確保することができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に組み入れることもまた望ましい場合がある。加えて、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤を組み入れることにより、注射用医薬形態の遅延吸収をもたらすことができる。
【0137】
注射用デポ剤の形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなど、生体分解性ポリマー中において、1つまたは複数の核酸薬剤のマイクロ封入マトリックスを形成することにより作製される。ポリマーに対する薬物の比率、および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度が制御される。他の生体分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が含まれる。注射用デポ製剤はまた、身体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョン中において薬物を捕捉することによっても調製することができる。
【0138】
膣内投与用または直腸内投与用の製剤は、本発明の1つまたは複数の化合物を、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤用の蝋、またはサリチル酸を含み、室温では固体であるが、体温では液体となり、したがって、直腸内腔または膣内腔では溶融し、活性化合物を放出する、1つまたは複数の適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することにより調製しうる坐剤として提示することができる。
【0139】
特定の実施形態において、本発明の核酸は、それらの所望の活性に最も適する身体内の場所における該核酸の有効な分布を可能とする、薬学的に許容される薬剤により製剤化される。このような薬学的に許容される薬剤の非限定的な例には、PEG、リン脂質、ホスホロチオエート、各種の組織内への薬物の侵入を増強しうるP−糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など)、植え込み後における徐放送達のためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)マイクロスフェアなどの生体分解性ポリマー(Emerich, DFら、Cell Transplant、8巻、47〜58頁、1999年)、および血液脳関門を越えて薬物を送達し、ニューロン内への取込み機構を変化させうるシアノアクリル酸ポリブチルからなるナノ粒子など、負荷ナノ粒子(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry、23巻、941〜949頁、1999年)が含まれる。
【0140】
他の実施形態において、本発明の核酸の一部は、真核生物のプロモーターによる細胞内で発現させることができる(例えば、IzantおよびWeintraub、Science、229巻、345頁、1985年;McGarryおよびLindquist、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、83巻、399頁、1986年;Scanlonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻、10591〜5頁、1991年;Kashani−Sabetら、Antisense Res. Dev.、2巻、3〜15頁、1992年;Dropulicら、J. Virol.、66巻、1432〜41頁、1992年;Weerasingheら、J. Virol.、65巻、5531〜4頁、1991年;Ojwangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻、10802〜6頁、1992年;Chenら、Nucleic Acids Res.、20巻、4581〜9頁、1992年;Sarverら、Science、247巻、1222〜1225頁、1990年;Thompsonら、Nucleic Acids Res.、23巻、2259頁、1995年;Goodら、Gene Therapy、4巻、45頁、1997年)。当業者は、適切なDNA/RNAベクターにより、任意の核酸を真核細胞内で発現させうることを認識する。酵素性核酸による一次転写物からのそれらの放出により、このような核酸の活性を増強することができる(Draperら、PCT WO93/23569;およびSullivanら、PCT WO94/02595;Ohkawaら、Nucleic Acids Symp. Ser.、27巻、15〜6頁、1992年;Tairaら、Nucleic Acids Res.、19巻、5125〜30頁、1991年;Venturaら、Nucleic Acids Res.、21巻、3249〜55頁、1993年;Chowriraら、J. Biol. Chem.、269巻、25856頁、1994年;これらの参考文献のすべては、参照によりその全体性において本明細書に組み込まれる)。CNSに特異的な遺伝子治療法は、Bleschら、Drug News Perspect.、13巻、269〜280頁、2000年;Petersonら、Cent. Nerv. Syst. Dis.、485〜508頁、2000年;PeelおよびKlein、J. Neurosci. Methods、98巻、95〜104頁、2000年;Hagiharaら、Gene Ther.、7巻、759〜763、2000年;ならびにHerrlingerら、Methods Mol. Med.、35巻、287〜312頁、2000年により説明されている。Kaplittら、米国特許第6,180,613号により、神経系細胞へのAAVを介する核酸の送達がさらに説明されている。
【0141】
本発明の別の態様において、本発明のRNA分子は、DNAベクターまたはRNAベクター内へと挿入された転写単位(例えば、Coutureら、TIG、12巻、510頁、1996年を参照されたい)から発現されることが好ましい。組換えベクターは、DNAプラスミドまたはウイルスベクターであることが好ましい。リボザイムを発現するウイルスベクターは、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアルファウイルスに基づいて構築することができるが、これらに限定されない。核酸を発現することが可能な組換えベクターは、上記で説明した通りに送達され、標的細胞内に存続することが好ましい。代替的に、核酸の一過性発現をもたらすウイルスベクターも用いることができる。このようなベクターは、必要に応じて繰り返し投与することができる。発現すると、核酸は、標的のmRNAに結合する。核酸発現ベクターの送達は、静脈内投与もしくは筋肉内投与によるか、患者から摘出された標的細胞への投与後に、患者内へと再導入することによるか、または所望の標的細胞内への導入を可能とする他の任意の手段によるなど、全身性でありうる(総説については、Coutureら、TIG、12巻、510頁、1996年を参照されたい)。
【0142】
一態様において、本発明は、本発明の核酸のうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む発現ベクターを意図する。該核酸配列は、本発明の核酸の発現を可能とする形で作動的に連結される。例えば、本発明は、a)転写開始領域(例えば、真核生物のpol I、II、またはIII開始領域);b)転写終結領域(例えば、真核生物のpol I、II、またはIII終結領域);c)本発明の核酸触媒のうちの少なくとも1つをコードする核酸配列であって、前記核酸の発現および/または送達を可能とする形で、前記開始領域および前記終結領域へと作動的に連結される核酸配列を含む発現ベクターを特徴とする。該ベクターは、場合によって、本発明の核酸触媒をコードする配列の5’側または3’側に作動的に連結された、タンパク質のオープンリーディングフレーム(ORF);および/またはイントロン(介在配列)を包含しうる。
【0143】
二本鎖核酸を包含する特定の実施形態において、該二本鎖は、細胞内において個別に発現し、次いで、ハイブリダイズしうる。このような個別の発現は、個別の発現構築物を介する場合もあり、単一の発現構築物を介する場合もある。代替的に、該二本鎖は共に発現しうる、例えば、ヘアピンRNAの二本鎖は、共に発現しうる。
【0144】
選択される投与経路に関わらず、適切な水和形態で用いうる本発明のEPAS1阻害剤、および/または本発明の医薬組成物は、以下で説明されるか、または従来の他の方法による、薬学的に許容される剤形へと製剤化される。
【0145】
特定の患者に所望される治療応答を達成するのに有効な有効成分の量、組成物、および投与方式を、該患者に対して毒性とならずに得るように、本発明の医薬組成物中における有効成分の実際の用量レベルを変化させることができる。
【0146】
選択される用量レベルは、用いられる本発明の特定のEPAS1阻害剤の活性、投与経路、投与回数、用いられる特定の化合物の排出速度、治療期間、用いられる特定のEPAS1阻害剤と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物、および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康、および既往の治療履歴など、医療技術分野で周知の因子を含めた各種の因子に依存する。
【0147】
医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物中で用いられる本発明のEPAS1阻害剤の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベル未満のレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで用量を漸増することができる。
【0148】
一般に、本発明のEPAS1阻害剤の適切な毎日の用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物量である。このような有効用量は一般に、上記の因子に依存する。一般に、患者の静脈内用量、脳室内用量、および皮下用量は、1日当たり体重キログラム当たり約0.0001〜約100mgの範囲である。
【0149】
所望の場合、活性化合物の毎日の有効用量は、場合によっては単位剤形において、1日のうちの適切な間隔で個別に、2回、3回、4回、5回、6回以上の部分用量として投与することができる。
【0150】
本発明の医薬製剤にはまた、獣医科用組成物、例えば、獣医科使用に適する、例えば、家畜(livestockまたはdomestic animals)、例えば、イヌの治療に適するEPAS1阻害剤の医薬調製物も含まれる。この治療を受ける患者は、霊長動物、特に、ヒト、およびウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジ;ならびに家禽およびペット一般など、他の非ヒト哺乳動物を含めた、それを必要とする任意の動物である。
【0151】
EPAS1阻害剤はまた、医薬部外品としての使用、例えば、病原体汚染された任意の対象から病原体を除去する消毒剤としての使用、または望ましくない毛髪成長を消失させるための化粧品としての使用のためにも製剤化することができる。化粧品組成物は、特定の医薬組成物(例えば、ローション、軟膏、フィルム、貼付剤など)と同様に製剤化することができる。
【0152】
本発明の、RNAi構築物などのEPAS1阻害剤はまた、取込み、分配、および/または吸収に寄与する、例えば、リポソーム、ポリマー、受容体標的化分子、経口製剤、直腸内製剤、局所製剤、または他の製剤として、他の分子、分子構造、または化合物の混合物と共に混合するか、封入するか、コンジュゲートさせるか、または他の形で会合させることもできる。対象のRNAi構築物は、透過性増強剤、担体化合物、および/またはトランスフェクション剤も含めた製剤において提供することができる。
【0153】
RNAi構築物、特に、siRNA分子の送達に適合させうる、このような取込み補助製剤、分布補助製剤、および/または吸収補助製剤の調製について教示する代表的な米国特許には、U.S.5,108,921;同5,354,844;同5,416,016;同5,459,127;同5,521,291;同51543,158;同5,547,932;同5,583,020;同5,591,721;同4,426,330;同4,534,899;同5,013,556;同5,108,921;同5,213,804;同5,227,170;同5,264,221;同5,356,633;同5,395,619;同5,416,016;同5,417,978;同5,462,854;同5,469,854;同5,512,295;同5,527,528;同5,534,259;同5,543,152;同5,556,948;同5,580,575;および同5,595,756が含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
本発明のRNAi構築物はまた、ヒトを含めた動物に投与されると、その生物学的に活性な代謝物またはその残留物を(直接的または間接的に)もたらすことが可能な、薬学的に許容される塩、エステルもしくはこのようなエステルの塩、または他の任意の化合物も包含する。したがって、本開示はまた、例えば、RNAi構築物およびsiRNAの薬学的に許容される塩、このようなRNAi構築物の薬学的に許容される塩、ならびに他の生体等価物にも引き寄せられる。
【0155】
薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンにより形成される。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適切なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、およびプロカインである(例えば、Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J. of Pharma Sci.、66巻、1〜19頁、1977年を参照されたい)。前記の酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸形態を、従来の方法で該塩を生成するのに十分な量の所望の塩基と接触させることにより調製する。遊離酸形態は、該塩形態を酸と接触させ、従来の方法で遊離酸を単離することにより再生成することができる。遊離酸形態は、極性溶媒中における溶解度など、特定の物理的特性において、それぞれの塩形態とある程度異なるが、それ以外の本発明の目的にとって、該塩は、それらの各々の遊離酸と同等である。本明細書で用いられる「薬学的付加塩」には、本発明の組成物の成分のうちの1つの酸形態の薬学的に許容される塩が含まれる。これらには、該アミンの有機酸塩および無機酸塩が含まれる。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、およびリン酸塩である。他の適切な薬学的に許容される塩は当業者に周知であり、各種の無機酸および有機酸の塩基塩が含まれる。
【0156】
siRNAの場合、薬学的に許容される塩の例には、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどの陽イオン、スペルミンおよびスペルミジンなどのポリアミンにより形成される塩;(b)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などにより形成される酸付加塩;(c)酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギニン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの有機酸により形成される塩;(d)塩素、臭素、およびヨウ素などの元素陰イオンにより形成される塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
例示的な組成物は、リポソーム系などの送達系と混合され、また場合によって、許容される賦形剤を含めた、RNAi構築物を含む。特定の実施形態において、該組成物は、局所投与用に製剤化される。
【0158】
特定の実施形態において、対象の核酸は、ポリマー媒体を用いて送達される。ポリマー媒体は、1つまたは複数の対象の核酸と共にマイクロ粒子を形成しうる。特定の実施形態において、特に、全身投与が望ましい場合、ナノ粒子のサイズは、直径約10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、120nm、150nm、200nm以上でありうる。特定の実施形態において、ナノ粒子のサイズは、直径約10〜120nm、10〜100nm、50〜120nm、50〜100nm、10〜70nm、50〜70nm、または約50nmでありうる。特定の実施形態において、ナノ粒子は、シクロデキストリンを含む。具体的な実施形態において、ナノ粒子は、シクロデキストリンコポリマー、例えば、米国特許第6,509,323号および米国特許出願公開第2002/0151523号に記載の直鎖状のシクロデキストリンコポリマー、および米国特許出願公開第2004/0077595号、同第2004/0109888号、および同第2004/0087024に記載のシクロデキストリンベースのポリマーを含む。具体的な実施形態において、シクロデキストリンは修飾され、例えば、イミダゾールを含有するCDPなどの官能化された末端基を有する。特定の実施形態において、核酸は、米国特許第7,018,609号、および同第7,166,302号、および米国特許出願公開第2004/0063654号に記載の複合体などの組入れ複合体を用いて送達することができる。特定の実施形態において、送達系または媒体は、1つまたは複数の修飾剤または修飾成分、例えば、マイクロ粒子の表面化学反応を変化させうる修飾剤をさらに含みうる。修飾剤は、陰イオン成分でありうる。修飾剤は、以下に記載の通り、(1つまたは複数の)特定の組織、または(1つまたは複数の)細胞型を標的とするリガンドでありうる。修飾剤は、ポリエチレングリコール(PEG)分子、例えば、PEG5000分子でありうる。
【0159】
特定の実施形態において、EPAS1阻害剤またはその医薬組成物は、標的細胞上における特定の細胞表面タンパク質またはマトリックスに結合し、これにより標的細胞への該複合体の封入を促進し、場合によっては、細胞によるRNAi構築物の取込みを増強するのに有効な1つまたは複数のリガンドと会合しうる。例示だけを目的として、特定の細胞型を本発明の超分子複合体およびリポソームの標的とする場合の使用に適するリガンドの例を、以下の表に列挙する。
【0160】
【表7】

特定の実施形態において、EPAS1阻害剤またはその医薬組成物は、ガラクトースまたはトランスフェリンを含む1つまたは複数の標的化リガンドと会合しうる。腎明細胞癌(RCC)では、トランスフェリンに結合可能な表面受容体であるメガリンが過剰発現する(Schuetzら、J Mol Diagn.、7巻、206〜18頁、2005年)。また低酸素状態時には、トランスフェリン受容体が過剰発現することも示されている(Tacchiniら、J. Biol. Chem.、274巻、24142〜6頁、1999年;LokおよびPonka、J Biol. Chem.、274巻、24147〜52頁、1999年)。明細胞RCCはまた、トランスフェリン受容体を高度に上方調節し、トランスフェリンを、腎臓の障害、特に腎癌を治療するのに望ましい標的化リガンドとしている。ガラクトースを含む例示的なリガンドには、例えば、ラクトースおよび類似の分子が含まれる。肝臓のアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)は、肝細胞表面上で発現するC型レクチンである。ASGPRは、末端のβ−D−ガラクトース(Gal)またはN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を有する糖タンパク質に結合する。ASGPRに対するリガンドの親和性は、種類(Gal対GalNAc)、数(四分岐>三分岐>>二分岐>>一分岐)、および多分岐残基の配置に依存する。ASGPR(ヒトは四量体)の各ポリペプチドサブユニットは、単一の末端Galまたは同GalNAcに結合しうる。
【0161】
他の実施形態
腎癌
腎癌の最も一般的な形態である腎細胞癌(RCC)には、10,000人中約3人が罹患する。この発生率は上昇しつつあり、その結果、米国では毎年約38,000人の新規症例が発生している。近年RCCについて3つの新薬が承認されたが、効果は大半が部分的であり、期間も限られている(CostaおよびDrabkin、Oncologist Dec、12巻、12巻、1404〜15頁、2007年)。本明細書において、本発明者らは、腎癌を治療するための新規の治療剤を提起する。非ウイルス的に送達された短鎖干渉RNA(siRNA)によるEPAS1の阻害は、腎癌に対する有効な療法を提供する。単独の、および/または低用量の化学療法剤と組み合わせたEPAS1阻害の結果、安全性プロファイルが現在の療法より優れていると予測される、腎癌に対する治療機構がもたらされる。
【0162】
RCC症例の75パーセントは明細胞癌であり、大半が、フォンヒッペル−リンダウ(VHL)遺伝子の機能不全により駆動されている。VHLの機能喪失およびRCCをもたらすVHL以外の他の経路は、血管内皮成長因子(VEGF)の上方調節および結果として生じる新血管形成など、低酸素反応の異常な活性化を共有する。VHL遺伝子の産物であるpVHLは、転写因子である低酸素誘導因子(HIF)のαサブユニットを認識し、それをポリユビキチン化およびプロテアソームによる分解の標的とする複合体の一部である。したがって、VHL欠損癌細胞は、HIFレベルが高く、細胞内HIFレベルを低下させる治療の良好な候補細胞となっている。実際、動物におけるpVHL欠損腫瘍の増殖を抑制するには、レトロウイルスを介する、EPAS1を標的とするshRNAの送達によるEPAS1(3つのヒトHIFαタンパク質の1つ)の阻害で十分であることが示されている(Kondoら、PLOS Biology、1巻、3号、439〜444頁、2003年)。
【0163】
フォンヒッペル−リンダウ(VHL)腫瘍抑制遺伝子の産物の作用は、正常細胞および疾患細胞の両方における低酸素状態遺伝子の調節に関与する。VHL病を有する個体は、腎嚢胞、腎明細胞癌、褐色細胞腫、中枢神経系の血管芽細胞腫、網膜血管腫、膵臓の島細胞腫、および内リンパ嚢腫瘍に対する素因を示す(PughおよびRatcliffe、Semin. Cancer. Biol.、13巻、83〜89頁、2003年)。VHL遺伝子の産物は、低酸素誘導因子アルファサブユニットの分解に関与する、E3−ユビキチンリガーゼ複合体の認識成分として作用することにより、ユビキチンを介するタンパク質分解に関与する(Cockmanら、J. Biol. Chem.、275巻、25733〜25741頁、2000年;Ohhら、Nat. Cell Biol.、2巻、423〜427頁、2000年)。正常細胞において、VHL/HIF複合体は、HIFアルファサブユニットを形成し、これを破壊の標的とする(Maxwellら、Nature、399巻、271〜275頁、1999年)。相同的な酸素依存ドメインの認識は、それを介してVHLタンパク質がHIF1αを認識する機構であるため、この破壊は、EPAS1の酸素依存ドメインの水酸化、およびVHL遺伝子の産物によるその後の認識を介して生じるものと提示されている(Maxwellら、Nature、399巻、271〜275頁、1999年)。実際、in vitroにおいて、EPAS1は、酵素であるプロリル4−ヒドロキシラーゼにより水酸化される(Hirsilaら、J. Biol. Chem.、2003年)。
【0164】
腎癌に対するEPAS1の阻害
EPAS1 mRNAは、肺、心臓、および肝臓など、高度に血管形成された成体マウスの組織内、ならびに胚マウスおよび成体マウスの胎盤細胞および内皮細胞内において主に発現する(Hogeneschら、J. Biol. Chem.、272巻、8581〜8593頁、1997年)。ヒトの正常組織と癌との比較により、EPAS1タンパク質は、正常組織では検出可能でないが、悪性組織内では容易に可視化されることが示される(Talksら、Am. J. Pathol.、157巻、411〜421頁、2000年)。発生におけるEPAS1の発現に対する必要性は、カテコールアミンホメオスタシスの破壊、および観察される心不全に対する保護の欠如が含まれる、EPAS1遺伝子欠損マウス胚において観察される異常により裏付けられる(Tianら、Genes Dev.、12巻、3320〜3324頁、1998年)。
【0165】
EPAS1の発現およびHIFの転写活性は、細胞内の酸素濃度により正確に調節されている。酸素レベルの変化が、HIF1−ベータタンパク質のレベルには影響を及ぼさないのに対し、細胞を低酸素状態に曝露すると、主に、該アルファサブユニットタンパク質の安定化に起因して、該アルファサブユニットの量が顕著に増大する(SafranおよびKaelin, J. Clin. Invest.、111巻、779〜783頁、2003年)。組織培養細胞内では、EPAS1のmRNAおよびタンパク質が低レベルで発現するが、低酸素状態である1%酸素へと曝露することにより、EPAS1タンパク質の発現は顕著に誘導される(Wiesenerら、Blood、92巻、2260〜2268頁、1998年)。低酸素誘導因子2アルファ/低酸素誘導因子1ベータのヘテロ二量体タンパク質は、コア認識配列である5’−TACGTG−3’を含有し、低酸素状態調節型遺伝子のシス調節領域内に見出される低酸素反応エレメントに結合する(Emaら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、94巻、4273〜4278頁、1997年;Hogeneschら、J. Biol. Chem.、272巻、8581〜8593頁、1997年)。HREに対する該ヘテロ二量体の結合は、遺伝子発現を誘導する。正常酸素状態へと復帰すると、EPAS1は、急速に分解される(Wiesenerら、Blood、92巻、2260〜2268頁、1998年)。
【0166】
EPAS1の活性化には、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路が極めて重要である。MAPKを直接にリン酸化する二重特異性タンパク質キナーゼの阻害は、低酸素状態におけるEPAS1のトランス活性化を防止する(Conrad、1999年;Conrad、2001年)。しかし、該阻害剤は、EPAS1のリン酸化を防止せず、したがって、MAPK経路は、EPAS1の活性を調節するが、該タンパク質を直接にはリン酸化しない(Conradら、Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Biol.、128巻、187〜204頁、2001年;Conradら、J. Biol. Chem.、274巻、33709〜33713頁、1999年)。EPAS1の調節には、Srcファミリーのキナーゼ経路もまた関与する。Srcファミリーのキナーゼに対する特異的な阻害は、ヒト肺腺癌細胞におけるEPAS1 mRNAの低酸素状態誘導発現を消失させる(Satoら、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、26巻、127〜134頁、2002年)。
【0167】
酸素ホメオスタシスの維持は、生理学的発生において必要とされるのに加えて、腫瘍の増殖においても必要とされる。腫瘍が確立する異常な血管を介する血液の循環は低度であるため、腫瘍細胞は低酸素状態を経過する。低酸素状態は癌細胞にとっても毒性であるが、それらは、低酸素環境においてそれらが増殖することを可能とする遺伝子的変化および適合的変化の結果として存続する。このような適合の1つは、血管内皮成長因子(VEGF)と称する血管新生性成長因子の発現上昇である。VEGFは、低酸素状態に応答して、正常細胞のほか、癌細胞によっても分泌される、血管新生に関わる重要な因子である(Harris、Nat. Rev. Cancer、2巻、38〜47頁、2002年;Maxwellら、Curr. Opin. Genet. Dev.、11巻、293〜299頁、2001年)。
【0168】
最もよく見られるVHL遺伝子変異の症状である血管芽細胞腫は、それらに関連する間質細胞内におけるVEGF mRNAの過剰発現を示す。該VEGF mRNAの過剰発現は、EPAS1 mRNAの発現上昇と高度に相関している。この知見は、VHL遺伝子の機能喪失と、おそらく、VEGF依存性血管成長におけるEPAS1活性を介する、VEGF遺伝子の転写活性化との関係を示唆する(Flammeら、Am. J. Pathol.、153巻、25〜29頁、1998年)。
【0169】
VHL遺伝子の産物による腫瘍抑制活性は、in vivoのヒト腎癌細胞におけるHIF標的遺伝子の活性化により無効化されうる。VHL遺伝子の産物の突然変異体が、HIFを、ユビキチンを介する破壊の標的とする能力を喪失することは、HIFの下方調節と、VHLの腫瘍抑制機能とが密接に連関していることを示唆する(Kondoら、Cancer Cell、1巻、237〜246頁、2002年)。げっ歯動物腎細胞癌では、ヒト腎細胞癌と対照的に、VHL遺伝子ではなく、結節硬化症複合体2(Tsc−2)遺伝子の産物が主要な標的である(Liuら、Cancer Res.、63巻、2675〜2680頁、2003年)。Tsc−2機能を欠くラットRCC細胞は、EPAS1タンパク質の安定化およびVEGFの上方調節を示し、血管形成が高度であった(Liuら、Cancer Res.、63巻、2675〜2680頁、2003年)。
【0170】
HIFの活性がどのようにしてVEGFの発現を調節するのかを示す実験により、EPAS1活性の上昇と血管新生との連関もまた裏付けられている。正常なヒト腎細胞のEPAS1は低レベルであることが典型的であるが、EPAS1をコードするベクターをこれらの細胞内に導入すると、VEGFのmRNAレベルおよびタンパク質レベルが著明に上昇する(Xiaら、Cancer、91巻、1429〜1436頁、2001年)。EPAS1を阻害したところ、VEGFの発現は著明に低下し、これにより、EPAS1の活性とVEGFの発現との直接の連関が裏付けられた(Xiaら、Cancer、91巻、1429〜1436頁、2001年)。同様に、EPAS1をコードするウイルスによりヒト臍帯静脈細胞に形質導入すると、VEGF mRNAの用量依存的な増大が観察される(Maemuraら、J. Biol. Chem.、274巻、31565〜31570頁、1999年)。突然変異してトランス活性化ドメインを欠くEPAS1の発現は、低酸素状態時におけるVEGF mRNAの誘導を阻害するが、この知見により、EPAS1が、VEGF発現の重要な調節物質であることがさらに示唆される(Maemuraら、J. Biol. Chem.、274巻、31565〜31570頁、1999年)。
【0171】
HIFの活性とVEGFの発現との相関はまた、悪性細胞および悪性組織においても観察される。EPAS1は、EPAS1をコードするベクターの不在下にある腎細胞癌(RCC)細胞株内において容易に検出することができる(Xiaら、Cancer、91巻、1429〜1436頁、2001年)。正常組織と比較した、腎細胞癌の組織試料中におけるEPAS1およびVEGF mRNAの著明な増大は、EPAS1の異常な活性が、RCCによる血管新生に関与しうることを示唆する(Xiaら、Cancer、91巻、1429〜1436頁、2001年)。
【0172】
まとめると、これらの研究は、EPAS1の上昇により侵襲性の腫瘍挙動がもたらされ、HIF経路の標的化が、異なる複数種類の癌の治療を補助しうることを裏付ける。特に、これらの研究および本明細書で報告されない他の研究は、EPAS1が、腎癌に対する優れた標的であることを示す。EPAS1の発現を阻害して腎細胞癌を治療するには、EPAS1に対するsiRNAを罹患した腎組織へと送達する腎細胞標的化粒子を用いて、本明細書に記載の組成物を送達することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載の阻害核酸の腎特異的な送達に適する媒体として、RONDEL(商標)による送達法を用いることができる。RONDEL(商標)法は、その2つの部分からなるsiRNA送達系の基盤をなす、シクロデキストリン含有ポリマーの使用を伴う。第1の成分は、低分子干渉RNAと混合するとsiRNAの陰イオン「骨格」に結合する、直鎖状のシクロデキストリン含有ポリ陽イオンである。該ポリマーおよびsiRNAは、siRNAを、血清中におけるヌクレアーゼによる分解から完全に保護する、直径100nm未満のナノ粒子へと自己組織化する。siRNA送達系は、静脈内注射を含めた、各種の送達経路を可能とするように設計されている。標的細胞へと送達されると、標的化リガンドは、細胞表面上における膜受容体へと結合し、エンドサイトーシスによりRNA含有ナノ粒子は細胞内へと取り込まれ、送達媒体から放出される。
【0173】
本発明の腎臓治療剤は、低分子、ペプチド、または、例えば、ペプチド模倣剤などのペプチド類似体、および核酸でありうる。本発明の核酸による腎臓治療剤は、アンチセンスRNA、RNAi構築物(例えば、siRNA)、またはリボザイムでありうる。核酸による腎臓治療剤はまた、例えば、腎細胞内において発現される遺伝子を送達する発現構築物などの遺伝子治療構築物でありうる。
【0174】
本発明の腎臓治療剤は、例えば、望ましくない細胞増殖により引き起こされる腎疾患または腎状態に対して有効である。本発明の方法および組成物は、腎癌(例えば、腎明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、嫌色素性腎細胞癌、および好酸性顆粒細胞腫)、急性腎不全、慢性腎不全、糸球体腎炎、糖尿病性腎症などを含むがこれらに限定されない、任意の腎疾患または腎状態に対して有用または有効でありうる。したがって、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の腎疾患または腎状態など、1つまたは複数の腎疾患または腎状態に対して有効でありうる。
【0175】
特定の実施形態において、腎臓治療剤は、腎疾患または腎状態を有する患者の腎細胞内において調節異常である遺伝子を標的とする。該遺伝子は、腎細胞に特異的でありうる。代替的に、該遺伝子は、例えば、腎細胞における発現レベルが、他の細胞および組織と比較して同等であるかまたはより低い遺伝子など、腎臓特異的な遺伝子ではなく、その遺伝子の発現および/または活性が、腎疾患または腎状態を有する患者の腎細胞においては正常な腎臓に由来する腎細胞と比較して変化している。例えば、腎細胞癌においては、EPAS1が調節異常である。すなわち、EPAS1は、フォンヒッペル−リンダウ(VHL)タンパク質の異常活性により、腎細胞癌の細胞では過剰発現するが、正常な腎細胞における発現は検出不可能なレベルでありうる。EPAS1を標的とする腎臓治療剤は、EPAS1の発現を特異的に低下させるかまたは阻害する核酸薬剤であり得、このような核酸薬剤は、アンチセンス分子の場合もあり、RNAi構築物(例えば、siRNA構築物)の場合もあり、リボザイムの場合もある。
【0176】
本発明の別の態様は、腎疾患または腎状態を有する患者を治療する方法を提供する。該方法は一般に、治療有効量の、本発明の医薬組成物を該患者に全身投与するステップを含む。全身投与は、例えば、静脈内注射または腹腔内注射、経皮送達、肺内送達、または経口摂取など、各種の送達経路を介して達成することができる。
【0177】
特定の態様において、本発明は、癌に罹患する患者を治療する方法であって、(a)該患者において、EPAS1を発現する(または、所定の閾値を上回るレベルでEPAS1を発現する)複数の癌細胞を有する腫瘍を同定するステップと、(b)EPAS1を標的とする対象の核酸を、適切な形で該患者に投与するステップとを含む方法を提供する。該方法は、EPAS1遺伝子が増幅された複数の癌細胞を有する腫瘍を該患者において同定するステップを、診断部分として包含しうる。遺伝子増幅は、例えば、in situ蛍光ハイブリダイゼーション(FISH)またはレプレゼンテーショナルオリゴヌクレオチドマイクロアレイ解析(ROMA)を含めた、各種の方法により検出することができる。
【0178】
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の送達媒体の一部として、(1つまたは複数の)EPAS1阻害剤を投与することにより、明細胞RCCなどの腎疾患に罹患する患者を治療する方法を提供する。他の実施形態において、該治療方法は、彼らのVHL状態を決定するために、治療前に患者をプロファイリングするステップを包含する。すなわち、適切なVHL状態を有する患者は、本方法に望ましい候補患者として選択することができる。適切なVHL状態は、当技術分野で認知される各種の方法を介して決定することができる。例えば、Huiら(U.S.6,013,436)は、挿入または欠失による突然変異でありうる、VHLにおける突然変異を診断するためのキットおよび方法を開示する。加えて、Boman(US2007/031881A1)は、細胞内におけるVHLレベルを検出して、野生型の対立遺伝子についてホモ接合性の細胞とヘテロ接合性の細胞とを区別するイムノアッセイについて教示する。さらに、Henderson(US2004/166491A1)は、VHL遺伝子における一塩基多型(SNP)を診断する方法について教示する。コード領域に位置する場合、SNPの存在は、非機能性であるか、または機能が低下するタンパク質の生成を結果としてもたらしうる。SNPは、非コード領域において生じることがより頻繁である。SNPが調節領域において生じると、それは、VHLタンパク質の発現に影響を及ぼしうる。例えば、プロモーター領域におけるSNPの存在は、タンパク質の発現を低下させうる。本方法は、それ自体、VHLの欠損性変異体を有する腫瘍を患者において同定するステップを診断部分として包含しうる。
【0179】
本発明は、低分子薬剤、ペプチドまたはペプチド類似体(ペプチド模倣剤を含めた)、核酸薬剤(例えば、siRNA構築物を含めたRNAi構築物、アンチセンス分子、酵素性核酸、または他の遺伝子治療構築物など)、ワクチン、または現在入手可能であるかもしくは開発中(例えば、臨床試験における)の医薬が含まれるがこれらに限定されない、各種の腎臓治療剤を意図する。このような腎臓治療剤は、Davisら(US2006/0263435A1)により説明される方法に従い送達することができる。
【実施例】
【0180】
ここまで一般的な形で説明されている本開示は、本開示の特定の態様および実施形態の例示だけを目的として包含されるものであり、本開示を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【0181】
(実施例1)
siRNAを用いるEPAS1発現の下方調節
本発明者らは今や、EPAS1の配列に特異的な多数のsiRNAを設計し、これらを、in vitroおよびin vivoの両方において、それらがEPAS1の発現を下方調節する能力について調べた。本明細書では、配列番号5〜82(上記の表2〜6で示す)として、特異的なsiRNAの配列を示す。
【0182】
図2で示す通り、EPAS1を対象とするsiRNAは、A498(ヒト腎癌)細胞におけるEPAS1の発現を下方調節することが可能であった。EPAS1に対する3つのsiRNA二重鎖(表2において配列番号5〜10として示される、siEPAS1A、siEPAS1B、およびsiEPAS1C)の各々は、A498細胞におけるEPAS1のタンパク質レベルを低下させる。これに対し、表8において配列番号83および84として示されるsiCON1(対照の非標的化siRNA)は、明らかな下方調節を示さない。
【0183】
図2で示される実験を実施するため、A498細胞を、American Type Culture Collection社から入手した。トランスフェクションの24時間前に、6ウェル組織培養プレートに細胞を播種した(ウェル当たりの細胞250,000個)。トランスフェクションには、製造元の推奨に従い、Lipofectamine(商標)RNAiMAX(Invitrogen社製)および以下の核酸:
「siCONTROL」または「siCON1」:陰性対照の非標的化siRNA;
「siEPAS1A」:上記の表2における配列番号5および6として示されるhEPAS1の標的部位「A」にわたるsiRNA;
「siEPAS1B」:上記の表2における配列番号7および8として示されるhEPAS1の標的部位「B」にわたるsiRNA;
「siEPAS1C」:上記の表2における配列番号9および10として示されるhEPAS1の標的部位「C」にわたるsiRNA
の各々を用いて、無血清培地(OptiMEM、Invitrogen社製)内で複合体を調製した。
【0184】
10nMの最終核濃度で4時間にわたり該核酸複合体を細胞に曝露し、その後、吸引により該複合体を除去し、完全培地で置換した。トランスフェクションの2日(48時間)後、Trizolによりすべての細胞から全RNAを単離し、cDNAへと逆転写させた。qRT−PCRによりEPAS1 mRNAの相対レベル(トランスフェクトされていないA498細胞と比べた)を決定し、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH)に対してデータを標準化した。
【0185】
【表8】

(実施例2)
各標的部位におけるEPAS1 siRNAを同定するためのタイリング実験
図3Aで示す通り、タイリング実験を用いて、効力を増大させた、EPAS1を対象とするsiRNAを同定した。図3で示される実験を実施するため、A498(ヒト腎癌)細胞を、American Type Culture Collection社から入手した。トランスフェクションの24時間前に、6ウェル組織培養プレートに細胞を播種した(ウェル当たりの細胞250,000個)。トランスフェクションには、製造元の推奨に従い、Lipofectamine(商標)RNAiMAX(Invitrogen社製)および以下の核酸:
「siEPAS1A」:上記の表2および4における配列番号5、6、および23〜42として示されるhEPAS1の部位「A」にわたるsiRNA二重鎖;
siEPAS1A−5:上記の表4における配列番号23および24として示されるhEPAS1の元の部位「A」の上流にある、siRNAの5つのヌクレオチド;
siEPAS1A−4:上記の表4における配列番号25および26として示されるhEPAS1の元の部位「A」の上流にある、siRNAの4つのヌクレオチド;
siEPAS1A−3:上記の表4における配列番号27および28として示されるhEPAS1の元の部位「A」の上流にある、siRNAの3つのヌクレオチド;
siEPAS1A−2:上記の表4における配列番号29および30として示されるhEPAS1の元の部位「A」の上流にある、siRNAの2つのヌクレオチド;
siEPAS1A−1:上記の表4における配列番号31および32として示されるhEPAS1の元の部位「A」の上流にある、siRNAの1つのヌクレオチド;
siEPAS1A:上記の表2における配列番号5および6として示されるhEPAS1の元の部位「A」を中心とするsiRNA;
siEPAS1A+1:上記の表4における配列番号33および34として示されるhEPAS1の元の部位「A」の下流にある、siRNAの1つのヌクレオチド;
siEPAS1A+2:上記の表4における配列番号35および36として示されるhEPAS1の元の部位「A」の下流にある、siRNAの2つのヌクレオチド;
siEPAS1A+3:上記の表4における配列番号37および38として示されるhEPAS1の元の部位「A」の下流にある、siRNAの3つのヌクレオチド;
siEPAS1A+4:上記の表4における配列番号39および40として示されるhEPAS1の元の部位「A」の下流にある、siRNAの4つのヌクレオチド;
siEPAS1A+5:上記の表4における配列番号41および42として示されるhEPAS1の元の部位「A」の下流にある、siRNAの5つのヌクレオチド;
「siEPAS1B」:上記の表2および5における配列番号7、8、および43〜62として示されるhEPAS1の部位「B」にわたるsiRNA二重鎖;
siEPAS1B−5:上記の表5における配列番号43および44として示されるhEPAS1の元の部位「B」の上流にある、siRNAの5つのヌクレオチド;
siEPAS1B−4:上記の表5における配列番号45および46として示されるhEPAS1の元の部位「B」の上流にある、siRNAの4つのヌクレオチド;
siEPAS1B−3:上記の表5における配列番号47および48として示されるhEPAS1の元の部位「B」の上流にある、siRNAの3つのヌクレオチド;
siEPAS1B−2:上記の表5における配列番号49および50として示されるhEPAS1の元の部位「B」の上流にある、siRNAの2つのヌクレオチド;
siEPAS1B−1:上記の表5における配列番号51および52として示されるhEPAS1の元の部位「B」の上流にある、siRNAの1つのヌクレオチド;
siEPAS1B:上記の表2における配列番号7および8として示されるhEPAS1の元の部位「B」を中心とするsiRNA;
siEPAS1B+1:上記の表5における配列番号53および54として示されるhEPAS1の元の部位「B」の下流にある、siRNAの1つのヌクレオチド;
siEPAS1B+2:上記の表5における配列番号55および56として示されるhEPAS1の元の部位「B」の下流にある、siRNAの2つのヌクレオチド;
siEPAS1B+3:上記の表5における配列番号57および58として示されるhEPAS1の元の部位「B」の下流にある、siRNAの3つのヌクレオチド;
siEPAS1B+4:上記の表5における配列番号59および60として示されるhEPAS1の元の部位「B」の下流にある、siRNAの4つのヌクレオチド;
siEPAS1B+5:上記の表5における配列番号61および62として示されるhEPAS1の元の部位「B」の下流にある、siRNAの5つのヌクレオチド;
「siEPAS1C」:上記の表2および6における配列番号9、10、および63〜82として示されるhEPAS1の部位「C」にわたるsiRNA二重鎖;
siEPAS1C−5:上記の表6における配列番号63および64として示されるhEPAS1の元の部位「C」の上流にある、siRNAの5つのヌクレオチド;
siEPAS1C−4:上記の表6における配列番号65および66として示されるhEPAS1の元の部位「C」の上流にある、siRNAの4つのヌクレオチド;
siEPAS1C−3:上記の表6における配列番号67および68として示されるhEPAS1の元の部位「C」の上流にある、siRNAの3つのヌクレオチド;
siEPAS1C−2:上記の表6における配列番号69および70として示されるhEPAS1の元の部位「C」の上流にある、siRNAの2つのヌクレオチド;
siEPAS1C−1:上記の表6における配列番号71および72として示されるhEPAS1の元の部位「C」の上流にある、siRNAの1つのヌクレオチド;
siEPAS1C:上記の表2における配列番号9および10として示されるhEPAS1の元の部位「C」を中心とするsiRNA;
siEPAS1C+1:上記の表6における配列番号73および74として示されるhEPAS1の元の部位「C」の下流にある、siRNAの1つのヌクレオチド;
siEPAS1C+2:上記の表6における配列番号75および76として示されるhEPAS1の元の部位「C」の下流にある、siRNAの2つのヌクレオチド;
siEPAS1C+3:上記の表6における配列番号77および78として示されるhEPAS1の元の部位「C」の下流にある、siRNAの3つのヌクレオチド;
siEPAS1C+4:上記の表6における配列番号79および80として示されるhEPAS1の元の部位「C」の下流にある、siRNAの4つのヌクレオチド;
siEPAS1C+5:上記の表6における配列番号81および82として示されるhEPAS1の元の部位「C」の下流にある、siRNAの5つのヌクレオチド
の各々を用いて、無血清培地(OptiMEM、Invitrogen社製)内で複合体を調製した。
【0186】
タイリング実験の実験設計の説明については、図3Bを参照されたい。
【0187】
10nMの最終核濃度で4時間にわたりこれらの複合体を細胞に曝露し、その後、吸引により該複合体を除去し、完全培地で置換した。トランスフェクションの2日(48時間)後、Trizolによりすべての細胞から全RNAを単離し、cDNAへと逆転写させた。qRT−PCRによりEPAS1 mRNAの相対レベル(トランスフェクトされていないA498細胞と比べた)を決定し、GAPDHに対してデータを標準化した。
【0188】
この実験で検討した二重鎖のうち、以下の6つの二重鎖:siEPAS1A−2、siEPAS1A−1、siEPAS1A、siEPAS1A+3、siEPAS1B−4、siEPAS1C−4が最も強力な抗EPAS1活性を示した。これらの二重鎖については、以下でさらに検討した。
【0189】
(実施例3)
EPAS1に対するsiRNAは培養されたA498細胞の増増殖能を低下させる
図4で示す通り、siEPAS1A−2、siEPAS1A−1、siEPAS1A、siEPAS1A+3、siEPAS1B−4、siEPAS1C−4のsiRNA二重鎖を、それらが、培養されたヒトA498細胞の増殖能を低下させる能力について検討した。siCON1は、非標的化対照として用いた。siEPAS1A−2およびsiEPAS1Aが、A498細胞の増殖において最も著明な阻害を誘発した(RT−CES)。
【0190】
図4で示される実験を実施するため、A498(ヒト腎癌)細胞を、American Type Culture Collection社から入手した。トランスフェクションの24時間前に、6ウェル組織培養プレートに細胞を播種した(ウェル当たりの細胞250,000個)。トランスフェクションには、製造元の推奨に従い、Lipofectamine(商標)RNAiMAX(Invitrogen社製)および以下の核酸の各々を用いて、無血清培地(OptiMEM、Invitrogen社製)内で複合体を調製した。
【0191】
(実施例4)
siEPAS1A−2は細胞内におけるEPAS1 mRNAレベルを低下させる
培養されたヒト腎細胞癌(A498、786−O、およびCaki−1)細胞にsiEPAS1A−2(配列番号29および30による配列対)をトランスフェクションした後で、qRT−PCRにより該細胞内におけるEPAS1 mRNAレベルを検討した。3つの細胞株すべてにおいて、EPAS1 mRNAレベルの極めて強力な配列特異的低下が見られた(図5を参照されたい;誤差バーは、3連による測定の標準偏差を表す)。
【0192】
市販されるトランスフェクション試薬(Lipofectamine(商標)RNAiMAX;Invitrogen社製)を用い、20nMのsiRNA濃度、4時間の曝露時間で、siEPAS1A−2または対照の非標的化siRNA二重鎖(siCONTROL)を各細胞株にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞内RNAを単離して逆転写させ、トランスフェクトされないか、siEPAS1A−2をトランスフェクトされたか、または対照の非標的化siRNA(siCONTROL)をトランスフェクトされたA498細胞、Caki−1細胞、および786−O細胞において、EPAS1 mRNAレベル(GAPDHに対して標準化された)を測定した。
【0193】
(実施例5)
siEPAS1A−2は細胞増殖速度を低下させる
有効な抗癌剤であるために、siEPAS1A−2は、細胞内EPAS1レベルを低下させるだけでなく、細胞増殖も阻害すべきである。フォンヒッペル−リンダウヌル(VHL−/−)の細胞では、EPAS1のノックダウンに基づく抗増殖効果が期待される。786−OおよびA498のヒトRCC細胞が野生型のpVHLを欠くのに対し、Caki−1細胞はVHL+/+である。
【0194】
細胞増殖速度に対するsiEPAS1A−2の効果を検討するため、これら3つのヒトRCC細胞株の各々に、siEPAS1A−2または対照の非標的化siRNA(siCONTROL)を、各々10nM(A498およびCaki−1)または20nM(786−O)でトランスフェクトして4時間置き、リアルタイム細胞電子センシング(RT−CES)アッセイシステムを用いて、それらのその後の増殖速度を測定した。トランスフェクション後の数日間にわたり定期的に(60分間ごとに)細胞密度をモニタリングし、「細胞指数」として定量化した。3つの異なる細胞株についての、トランスフェクション後の時間の関数としての細胞指数のプロットを図6A〜6C(誤差バーは、4連ウェルの標準偏差を表す)において示す。VHL状態に基づき予測される通り、siEPAS1A−2により、A498細胞および786−O細胞においては著明な抗増殖効果が達成されたが、Caki−1細胞においてはこれが達成されなかったことは、VHLを欠損する癌細胞が、細胞内におけるHIFレベルを低下させる治療の良好な候補細胞であることを示す。
【0195】
当業者は、日常的な実験だけを用いながら、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、またはこれらを確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。
【0196】
引用された参考文献および刊行物のすべては、参照により、その全体において本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号2〜4から選択される配列を含む、約15〜約30ヌクレオチドの長さの第1鎖と、
(ii)約15〜約30ヌクレオチドの長さの第2鎖と
を含み、
前記第1鎖および第2鎖のうちの少なくとも12ヌクレオチドが互いに相補的であり、生理学的条件下で二本鎖核酸を形成し、前記二本鎖核酸が、RNA干渉機構を介して細胞内における内皮PASドメインタンパク質1(EPAS1)の発現を低下させうる核酸。
【請求項2】
二本鎖RNAである、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記二本鎖部分が、場合によって、約15〜約30ヌクレオチドの長さである、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
ヘアピンRNAである、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
前記ヘアピンRNAが、約4〜約10ヌクレオチドの長さのループ領域を含む、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記第1鎖がDNAポリヌクレオチドであり、前記第2鎖がRNAポリヌクレオチドである、請求項1から5のいずれかに記載の核酸。
【請求項7】
前記第1鎖および/または第2鎖が、3’突出領域、5’突出領域、または3’突出領域および5’突出領域の両方をさらに含む、請求項6に記載の核酸。
【請求項8】
前記突出領域が、約1〜約10ヌクレオチドの長さである、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
前記第1鎖が、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81から選択される配列を含む、請求項1から8のいずれかに記載の核酸。
【請求項10】
前記第2鎖が、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、および82から選択される配列を含む、請求項1から9のいずれかに記載の核酸。
【請求項11】
生理学的条件下で、配列番号1のヌクレオチド655〜718、2878〜2929、または4978〜5039に対応するEPAS1転写物の領域とハイブリダイズし、細胞内におけるEPAS1の発現を低下させる配列を含む単離核酸。
【請求項12】
配列番号1のヌクレオチド665〜708、2888〜2919、または4988〜5029に対応するEPAS1転写物の領域とハイブリダイズする配列を含む、請求項11に記載の単離核酸。
【請求項13】
配列番号1のヌクレオチド670〜703、2893〜2914、または4992〜5024に対応するEPAS1転写物の領域とハイブリダイズする配列を含む、請求項11に記載の核酸。
【請求項14】
一本鎖である、請求項11から13のいずれかに記載の核酸。
【請求項15】
二本鎖である、請求項11から13のいずれかに記載の核酸。
【請求項16】
前記EPAS1の領域のうちの1つに相補的な少なくとも10の連続ヌクレオチドを含む、請求項11から15のいずれかに記載の核酸。
【請求項17】
約14〜約50ヌクレオチドの長さである、請求項11から16のいずれかに記載の核酸。
【請求項18】
RNA分子である、請求項11から17のいずれかに記載の核酸。
【請求項19】
DNA分子である、請求項11から17のいずれかに記載の核酸。
【請求項20】
DNA鎖およびRNA鎖を含む、請求項11から17のいずれかに記載の核酸。
【請求項21】
配列番号2〜4から選択される配列を含むRNAi構築物である、請求項11から20のいずれかに記載の核酸。
【請求項22】
配列番号5〜82から選択される配列を含むRNAi構築物である、請求項11から20のいずれかに記載の核酸。
【請求項23】
酵素性核酸である、請求項11から22のいずれかに記載の核酸。
【請求項24】
前記酵素性核酸がリボザイムである、請求項23に記載の核酸。
【請求項25】
前記酵素性核酸がDNA酵素である、請求項23に記載の核酸。
【請求項26】
RNAi構築物である、請求項1から25のいずれかに記載の核酸。
【請求項27】
前記RNAi構築物がdsRNAである、請求項26に記載の核酸。
【請求項28】
前記RNAi構築物がヘアピンRNAである、請求項27に記載の核酸。
【請求項29】
前記RNAi構築物の二重鎖部分が、約15〜約30ヌクレオチドの長さである、請求項27に記載の核酸。
【請求項30】
場合によって、1つまたは複数の修飾骨格部分または修飾塩基部分を含む、請求項1から29のいずれかに記載の核酸。
【請求項31】
前記修飾骨格部分または修飾塩基部分が、以下:アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシルメチルエステル、カーボネート、およびリン酸トリエステルのうちの1つまたは複数を含む、請求項30に記載の核酸。
【請求項32】
前記修飾骨格部分または修飾塩基部分が、場合によって、少なくとも1つの2’−O−アルキル化リボヌクレオチドを含む、請求項30に記載の核酸。
【請求項33】
生理学的条件下、10ナノモルの濃度で細胞と接触させると、細胞におけるEPAS1発現を50%以上阻害する、請求項1から32のいずれかに記載の核酸。
【請求項34】
請求項1から33のいずれかに記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項35】
前記薬学的に許容される担体に、陽イオンポリマーが含まれる、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記薬学的に許容される担体に、シクロデキストリンポリマーが含まれる、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記シクロデキストリン構造がim−CDPである、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
シクロデキストリンポリマー、および請求項1から33のいずれかに記載の核酸を包含する粒子を含み、PEG化される、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記粒子が、アダマンタンをさらに含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
特定の組織または細胞型を標的とするリガンドをさらに含む、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記リガンドがトランスフェリンを含む、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
約10〜約100nmの直径のナノ粒子を含む、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記ナノ粒子が、約50〜約70nmの直径である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記ナノ粒子が、場合によって、約50nmの直径である、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
薬学的に許容される担体が、
イミダゾール修飾された、シクロデキストリンを含有する陽イオンポリマーと、
アダマンタン−PEG−リガンドを含む標的化部分と
を含み、
前記ポリマーおよび標的化部分が、前記核酸を封入するナノ粒子を形成する、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記ナノ粒子が、約50〜約120nmの直径である、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記ナノ粒子が、約50〜約100nmの直径である、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記ナノ粒子が、約50〜約70nmの直径である、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記ナノ粒子が、約50の直径である、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記標的化リガンドが、ガラクトースを含む、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記標的化リガンドが、トランスフェリンを含む、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項52】
細胞の望ましくない増殖と関連する疾患または状態を治療するための医薬の製造における、請求項1から33のいずれかに記載の核酸の使用。
【請求項53】
前記細胞が癌性細胞または腫瘍細胞である、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
前記細胞が病原性細胞である、請求項52に記載の使用。
【請求項55】
前記細胞が、その望ましくない増殖により疾患または状態がもたらされる正常細胞である、請求項52に記載の使用。
【請求項56】
癌を有する患者を治療する方法であって、治療有効量の、請求項1から33のいずれかに記載の核酸を前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項57】
前記核酸と共に相加的または相乗作用的な形で癌細胞の増殖を阻害する、少なくとも1つのさらなる抗癌化学療法剤をさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記化学療法剤が、場合によって、フルオロウラシル(5FU)である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
癌細胞が、同等の組織に由来する非癌性細胞と比較してより高レベルのEPAS1を発現する、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
癌を有する患者を治療する方法であって、RNAi機構を介してEPAS1の発現を低下させる治療有効量の二本鎖核酸と、EPAS1発現を誘導する1つまたは複数の抗癌剤とを前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項61】
前記核酸が、薬学的に許容される担体と共に製剤化される、請求項56から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記核酸が、癌細胞を標的とするリガンドと共に製剤化される、請求項56から60のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記癌細胞が腎明細胞癌であり、前記リガンドがトランスフェリンを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記リガンドがガラクトースである、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記核酸が、ポリマーナノ粒子による成分として製剤化される、請求項56から60のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記ナノ粒子が、約10〜約120nmの直径である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ナノ粒子が、約50〜約120nmの直径である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ナノ粒子が、約50〜約100nmの直径である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記ナノ粒子が、約50nmの直径である、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記治療有効量の核酸が全身投与される、請求項56から69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記核酸を投与するステップの前に、患者におけるフォンヒッペル−リンダウ(VHL)タンパク質活性のレベルを決定するステップをさらに含む、請求項56から70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記活性が、健康な対象におけるVHLのRNAレベルまたはタンパク質レベルと比較した、前記患者における前記レベルの低下を測定することにより決定される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記活性が、VHL遺伝子における1つまたは複数の突然変異を同定する遺伝子スクリーニングにより決定される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記1つまたは複数の突然変異が、切断を引き起こす突然変異または対立遺伝子喪失を引き起こす突然変異を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記1つまたは複数の突然変異が、ノンセンス突然変異、フレームシフトの突然変異、プロモーターの突然変異、エンハンサーの突然変異、スプライス部位の突然変異、ヌル突然変異、またはポリAテールの突然変異を含む、請求項73に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2011−516065(P2011−516065A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502994(P2011−502994)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/002125
【国際公開番号】WO2009/123764
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(509166766)カランド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】