説明

EU(II)−活性化された蛍光体を有する発光装置

本発明は、480nm未満の波長の一次光を放出することができる発光構造と一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体を有する発光スクリーンとを有する発光装置に関する。本発明は、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体を有する発光スクリーンにも関する。本発明は、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 .0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、480nm以下の波長の一次光を放射することができる発光構造を有する発光装置に関する。好ましくは、発光装置は発光ダイオードを有する。、構造を放出している光及びEu(II)−活性化された蛍光体を含んでいる発光の画面のための発光ダイオードまたはいろいろな他の蛍光体によるこのような蛍光体が蛍光体ブレンドと記述した組合せを含む。特に、発光装置は、白色光を作るため、青色LED及び赤の蛍光体と緑の蛍光体との混合物を使用する。
【背景技術】
【0002】
この開示において、蛍光体混合物は、2つ以上のフォトルミネセント材料の任意の組合せとして規定され、その出力は、発光ダイオードの放射と協働して、高い演色評価数値を伴なう白色放射又は規定された色座標を伴なう特別のブロードバンド若しくはマルチバンドの放射を含む色放射を生成することができる。
【0003】
蛍光体又は蛍光体混合物は、発光ダイオードによって発せられる一次光を完全に又は部分的に吸収し、一次光よりも長い波長の二次光を放出する。蛍光体は、europium(II)で活性化され、グループM=Sr、Ca、Ba、Ma、Znから選択される少なくとも1つの元素を無機ホスト格子に含む少なくとも1つのフォトルミネセント材料を有する。
【0004】
特に白色光の生成において、発光装置における効率及び色品質を改良するために新しい蛍光体組成物を生成する必要性が現在ある。蛍光体は、励起エネルギー(通常、放射エネルギー)を吸収し一定期間このエネルギーを蓄えることができるルミネセント材料である。蓄えられたエネルギーは、初期の励起エネルギーとは異なるエネルギーの放射として放出される。例えば、「ダウン変換」は、放出された放射が初期の励起放射より少ない量子エネルギーを有する状況のことを指している。従って、エネルギー波長は効率よく増加し、この増加は「ストークスシフト」と呼ばれる。「アップ変換」は、放出された放射が励起放射よりも大きな量子エネルギーを有する状況のことを指している(「アンチストークスシフト」)。
【0005】
蛍光体ベースの装置における効率及び色品質の改良が、絶えず発展している。「効率」は、励起エネルギーとして最初に供給される多数のフォトンに対して放出されるフォトンの一部に関連がある。エネルギーの少なくとも一部が非放射性プロセスによって消費されるとき非効率な変換が起きる。色「品質」は、たくさんの異なるレーティングシステムによって測定することができる。「色度」は、色合い及び飽和によって色を規定する。「CIE」は、Commission Internationale de l’Eclairage(照明の国際的委員会)によって創り出される色度座標系である。CIE色度座標は、「1931CIE」色空間に色を規定する座標である。これらの座標はx,y,zとして規定され、三刺激値の合計に対する3つの標準原色X、Y、Z(三刺激値)の比である。CIEチャートは、三刺激値の合計対三刺激値の比x,y及びzのプロットを含む。換算された座標x,y,zが1の状況では、典型的には、二次元CIE(x、y)プロットが使用される。
【0006】
白っぽい色は、「相関色温度」(CCT)によって記載することができる。例えば、金属が熱されると、最初は赤色に輝く光が放出される。金属がますます高い温度に熱されると、放出された光は高い量子エネルギーにシフトし、赤らんだ光から始まって、白色光及び最終的には青っぽい白色光にシフトする。黒体放射体として知られている標準オブジェクト上での3つの色の変化を求めるために、システムが開発された。温度に依存して、黒体放射体は、白っぽい放射を放出する。この白っぽい放射の色は、CIE色度チャートに記載することができる。従って、評価されるべき光源の相関色温度は、黒体放射体が光源の色度と最も似ている色度を作り出す温度である。色温度及びCCTは、絶対温度で表される。
【0007】
「演色評価数」(CRI)は、視覚的実験によって確立される。評価されるべき光源の相関色温度が決定される。8個の標準色サンプルが、先ず光源で、次に同じ色温度を有する黒体からの光で照射される。標準色サンプルの色が変化しない場合、光源は理論的に完全な特別のCRI値100を有する。一般的な演色評価数は「Ra」と呼ばれ、それは8つの全ての標準色サンプルのCRIの平均である。
【0008】
古い白色ランプは、幅広い波長範囲に渡る光の放出を伴なったものである。2、3の異なる光の色の混合が、白っぽい色を励起できることが発見され、そこでは各放出が比較的狭い波長範囲を有していた。これらのランプは、個々の赤、緑、及び青の光源の放射特性(発光エネルギー及び発光強度)を個々に調整できるので、白色を操作するために更なる制御を提供した。従って、この方法は、改善された演色特性を達成する可能性を提供した。
【0009】
2色ランプの一例は、1つの蛍光体と480nm以下の波長の一次光を放出することができる発光構造とを有する。蛍光体によって放出される光は、発光構造からの吸収されていない光と結合し、白っぽい色を作り出す。蛍光ランプの他の改良されたものは、より高い効率で白色光をもたらす3つの異なる光の色(即ち、三色ランプ)を含んだものである。三色ランプの1つの例は、青、赤及び緑の発光蛍光体を含んだものである。他の以前の三色ランプは、2つの蛍光体(緑及び赤の蛍光体)からの光と水銀プラスマ励起源からの吸収されていない光との結合を有している。
【0010】
しかしながら、水銀プラスマ励起源を含む以前の三色ランプは、以下の(1)乃至(3)を含む多くの不利な点を被る。(1)高エネルギーイオンを伴なう気体放電をもたらすことが可能な高電圧の必要性(2)高エネルギーUV量子の放出、及び(3)その結果としての短い寿命。従って、現在、これらの不備を克服する装置の必要性がある。
【0011】
WO01/24229号は、白色を発生させるための三色ランプを開示している。特に、WO01/24229号は、発光ダイオード(特に青色LED)によって放出される放射を吸収することができるホストサルファイド材料を有する2つの蛍光体を有する蛍光体混合物に関する。これは、3つの光源(LEDが放出した放射に対して蛍光体のマッチングを可能とするための、2つの希土類イオンから放出される光)の混合を提供する。光源の各々のパワーフラクション(power fraction)は、良好な演色を達成するために変えることができる。WO01/24229号は、青色LEDからの放射を吸収する単一の緑色蛍光体を有する緑色LEDの代替品にも関する。得られる装置は、高い吸収効率及び高い輝度等価値(luminous equivalent value)の緑の光を提供する。
【0012】
向上した効果、(例えば、高い演色評価数によって測定されるような)演色、及び特に3色の白色ランプでの輝度(の強さ)を含む向上した特性を提供するために、蛍光体組成物及びそれら組成物の混合物を発見するという絶えない課題が残っている。
【0013】
蛍光体は高温で動作するとき、蛍光体の輝きの低減が生じる。高温における輝度の斯かる低減は熱クエンチング(thermal quenching)と呼ばれる。通常、熱クエンチングは、温度の増加に伴なってフォトン密度が増加するので、蛍光体の放射再結合効率の減少が原因である。従って、熱クエンチングは、放射再結合効率の温度依存に関連する光学的な影響のせいである。
【0014】
光ルミネセント蛍光体化合物が発光クエンチング温度の特徴範囲を有することが観察された。つまり、蛍光体が、例えば紫外線のソースからの放射を受けることによって、発光へと励起するとき、発光の強度は、蛍光体の温度が特定の温度範囲で上昇するので、徐々に減少する。例えば、化合物Zn.80Cd.20S:AgClは、温度が95℃から105℃に増加するにつれて、明るい緑から、くすんだ緑、グリーングレー、グレー、黒へと徐々に消失する。先に記載された基本蛍光体系によって提供される化合物の温度範囲は、そのアニオン成分の組成物によって決定されることがわかった。従って、蛍光体化合物は、異なるクエンチング温度範囲及び異なる色特性を有するようにすることができる。高温における熱クエンチングは、特に高いチップ温度においてLED効率を低減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、より高い熱クエンチング温度で、硫化物蛍光体を非硫化物蛍光体に置き換えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの態様は、480nm未満の第1の波長の一次光のパターンを放出することが可能な発光部を有する発光装置を提供する。この装置は、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eu(ここで、0.002≦a≦0.2、0.0≦b≦0.25、0.0≦c≦0.25、0.0≦d≦0.25、0.0≦e≦0.25、1.5≦x≦2.5,1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体又は蛍光体を有する蛍光体混合物を有する発光スクリーンを更に有する。
【0017】
斯かる装置は、斯かる蛍光体の高いクエンチング温度のために、特に200℃より上の動作温度において高効率を示す。更に、斯かる発光装置は、以下の利点を提供する。
a) 発光組成物の高い化学的安定性
b) 飽和をほとんどもたらさない短い減衰時間
c) 非常に低い放射の熱クエンチング
d) 非常に高いルーメン当量
e) 非中毒性の材料、安い出発材料
好ましくは、本発明は、発光構造が青色スペクトル範囲内において450nmから480nmまでの波長の一次光を放出することができる発光装置を提供する。
【0018】
特に、本発明は発光構造が青色発光LEDである発光装置を提供する。
【0019】
特に、蛍光体が薄膜層に含まれるとき、蛍光体の高いクエンチング温度に有利である。
【0020】
本発明の別の態様は、480nmより小さい波長の一次光を放出することが可能な発光構造と、第1の緑の蛍光体及び第2の赤の蛍光体を有する発光スクリーンとを有する発光装置を提供する。第1の緑の蛍光体は、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)を有する。第2の赤の蛍光体は、(Sr1-x-yBaxCay)S:Eu(ここで、0≦x<1及び0≦y<1);CaS:Ce,Cl;Li2Sr SiO4:Eu;(Sr1-xCax)SiO4:Eu(ここで、0≦x<1);(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ce(ここで、0≦x<1及び0≦y<1)、及び(Sr1-x-yBaxCay)2Si5N8:Eu(ここで、0≦x<1及び0≦y<1)のグループから選択することができる。斯かる蛍光体組成物の発光スペクトルは、LEDの青色光とともに、必要な色温度において良好な演色を有する高品質な白色光を得るための適切な波長を有する。
【0021】
特に、本発明は、低圧水銀放電ランプ、高圧水銀放電ランプ、硫黄放電ランプ、分子放射体放電ランプ、及び白色光LEDランプのようなランプに関する。
【0022】
本発明は、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、0.0≦b≦0.25、0.0≦c≦0.25、0.0≦d≦0.25、0.0≦e≦0.25、1.5≦x≦2.5、1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体を有する発光スクリーンにも関する。
【0023】
斯かる発光スクリーンは、低圧水銀放電ランプ、高圧水銀放電ランプ、硫黄放電ランプ、分子放射体放電ランプ、及び白色光LEDランプにおいて有用である。
【0024】
本発明の別の態様は、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体を有し且つホスト格子としてアルカリ土類オキシナイトライドシリケート格子を有しドーパントとして二価のユーロピウムを有する蛍光体組成物を提供する。一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5< z < 2.5)の蛍光体は、効率的にフォトン(特に450nmにおいて動作する青色LEDのフォトン)を吸収し、斯かる波長の励起のときに高い量子効率を示す。斯かる蛍光体は、275℃においてTQ50%の高いクエンチング温度を示す。蛍光体は、ホストとしてアルカリ土類オキシナイトライドシリケート格子を有しドーパントとして二価のユーロピウムを有し、蛍光体又は蛍光体混合物は、光パターン状に位置する。
【0025】
本発明の他の利点、新しい特徴、及び目的は、添付図面(概略的であり、一律の縮尺では描かれていない)とともに考察するときに、本発明の以下の詳細な記載から明らかになる。図において、種々の図面に示されている同一又はほぼ同一の各要素は、単一の数字によって表されている。明確のため、あらゆる図においてあらゆる要素に符号が付されてはおらず、当業者が本発明を理解するのに必要ではないイラストに本発明の各実施例のあらゆる要素が示されているわけでもない。
【0026】
本発明は、その一部において、共通発光構造によって励起可能な特別の緑及び赤の蛍光体を使用する発光装置が、より高効率で以前の蛍光ランプよりも優れた演色を伴なう白色光を達成でき、蛍光体が200℃を超える動作温度であって275℃までの動作温度において実質的に消失しやすくないという発見に関する。
【0027】
本発明の有利な特徴は、LEDの使用を発光構造として含んでいる。LEDは、ドープされた半導体領域の間に、PN接合を有する。
【0028】
電流の印加のとき、電子及び正孔の再結合が放射の放出を引き起こすように電子及び正孔がPN接合を横切ることを可能にする十分なエネルギーを存在させることができる。他の励起エネルギー源を超えるLEDの利点は、小さいサイズ、低電力消費、長寿命、及び放出される熱エネルギーの量が低いことを含む。加えて、LEDは装置の小型化を可能にする小さい寸法を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
1つの実施例では、共通LEDは、青色LEDである。青色光の励起放射としての使用は、他の光源と比較して、可視光への変換効率がより高いという点で特に有利であることがわかった。1つの実施例では、各蛍光体は、約450nmから約480nmまでの波長における放射を放出する共通LEDによって励起することが可能である。演色は、450nmより小さい励起エネルギーにおいて減少することができ、一方、蛍光体による吸収は、480nmを超える励起エネルギーにおいて減少することが分かった。上記のエネルギー範囲の放射を放出する青色LEDの例は、(In,Ga)Nダイオードである。
【0030】
青の光源は、電力効率が青色光によって励起される赤及び緑の蛍光体に対して増加するという点で、UV励起源を超える固有の利点を提供できる。現在の蛍光体材料は、一般に、以前の装置の蛍光体よりも小さいストークスシフトを必要とする。例えば、特別の3色の従来の蛍光ランプは水銀プラスマを取り入れ、それは約4.9eVを中心にしたUV放射を供給する。このUV光は、生じる発光スペクトルが約2.8eV(吸収されていない光)、2.3eV(緑)及び2.0eV(赤)のエネルギーでそれぞれ最大強度を示すように青、赤、及び緑の蛍光体を励起する。重大なストークスシフトは、明らかにこの状況に含まれる。しかし、電力効率は量子欠損によって制限される。量子欠損は励起の量子エネルギーと放射の量子エネルギーとの差である。従って、上で記載された例に対しては、緑の光の電力効率は、平均して(4.9eV-2.3eV)/4.9eV=53%である。対照的に、約2.7eV(〜460nm)の放射を伴なう青色LEDによって励起される緑(2.3eV)及び赤{2.0eV}の蛍光体は、より小さいストークスシフト及び量子欠損を示し、その結果、電力効率が高い。
【0031】
斯かる発光装置の詳細な構成が、図1に示されている。
【0032】
図1は、本発明の装置の概略図を示す。この装置はLED1を有する。LED1は、反射体カップ2内に位置している。LED1は、或るパターンの光を放出する。蛍光体組成物4,5は、そのパターンに位置している。蛍光体組成物は樹脂3に埋め込まれている。この例では、反射体カップ2は光のパターンを修正することができ、初期の光のパターンによっては覆われない空間に光が反射する(例えば、放物線状反射体の場合)。当業者は、効果的な変換のための光パターンを提供するために、光の蛍光体組成物4,5への反射を最適化する又はLED1の位置を最適化する任意の形の反射体カップ2を備えることができることが理解される。例えば、反射体カップ2の壁は、放物線状とすることができる。
【0033】
それら及び同様の構成を使用することができる。更に、本発明は、低圧水銀放電ランプ、高圧水銀放電ランプ、硫黄放電ランプ、及び分子放射体放電(molecular radiator discharge)において特に有用である。
【0034】
重点は、より詳細には、本発明において使用されるべき蛍光体及び蛍光体混合物に置かれている。
【0035】
蛍光体は、一般に、ホスト格子とドーパントイオンとを有する。典型的には、ホスト材料は、格子イオンがドーパントイオンに置き換わっている無機のイオン格子構造(「ホスト格子」)を有する。ドーパントは、励起放射を吸収するときに光を放出することができる。理想ドーパントは、励起放射を十分に吸収しこのエネルギーを放射に効率的に変換する。ドーパントが希土類イオンである場合、それは4f−4f遷移(即ち、f−軌道のエネルギーレベルを含む電子遷移)を通じて放射を吸収し放出する。f−f遷移が量子機械的に禁じられ弱い発光強度をもたらす一方、特定の希土類イオン(例えば、二価のユーロピウム)が(d軌道/f軌道の混合を介した)許容された4f−5df遷移を通じて放射を十分に吸収し結果として高い発光強度を生成する。
【0036】
希土類ドーパント(例えば、二価のユーロピウム)の放射は、ドーパントイオンが存在するホスト格子に依存して、エネルギーシフトする。従って、本発明のこの態様は、その一部において、適切なホスト材料に組み込まれるときに特定の希土類ドーパントが青の光を可視光に効率的に変換するという発見にある。本発明による蛍光体はホスト格子を有し、それはアルカリ土類オキシナイトライドシリケート(即ち、オキシナイトライドシリケート及びアルカリ土類金属イオンを含むホスト格子)である。
【0037】
蛍光体は、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)を有する。
【0038】
好ましくは、ホスト格子に存在するドーパント量は、0.02mol%から20mol%までである。
【0039】
オキシナイトライドシリケートタイプの新しいホスト格子は、アルカリ土類イオン(カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、及びユーロピウム(II))が組み込まれるSiN3O−四面体の3次元ネットワークに基づくと考えられる。ホスト格子は、Si+Si02の混合物を5パーセントNを含むアルゴンストリーム中で1450℃に加熱することによって作られる耐火性のオキシナイトライドSi2N2Oに関連がある。Si2N2Oは、構造的にSi02とSi3N4との両方に関連がある。それは2つの結晶形状を有し、両方ともフェナサイト状構造を伴ない、その構造ではSiが4つの四面体隣接部を有し、Nは3つのSiに結合されている(Si−N、1.74Å)に結合される。オキシナイトライドはSiN30の四面体から構成され、その四面体は三次元フレームワークを形成するためにリンクされている。同数のSi原子及びN原子からなるpuckered六方晶ネット(puckered hexagonal net)は、Si原子のまわりで四面体を完成するO原子を通じて、互いにリンクされる。Si原始の半分は上の層にリンクされ、残りは下の層にリンクされる。結果として得られる構造において、あらゆるO原子が2つのSiに接続され(Si02として)、N及びSiはそれぞれ、Siとして、3つ及び4つ接続されている。
【0040】
図2に示されているようなSr0.96Si2N2O2:Eu0.04のX線回折は、ストロンチウムからユーロピウムへの置換えのために位置及び強度が少しずれて、SrO.Si2N2O[W.H.Zhu et al., J.Mat.Sci.Lett. 13 (1994) 560]の構造に一致している。
【0041】
本発明の別の有利な特徴は、比較的狭いライン幅の1つの共通青色エネルギー源によって励起可能な蛍光体混合物であって、2つの異なるエネルギーレンジ(例えば、赤及び緑)において光を発する蛍光体混合物を提供することである。適切な蛍光体を提供する戦略が、ここに開示されている。一実施例では、ドーパントは第1及び第2の蛍光体において同じである。2つの蛍光体の赤及び緑の放射は、適切なホスト材料を選択することによって調整できる。緑の蛍光体は、好ましくはSr0.096Si2O2N2:Eu0.04である。赤の蛍光体は以下のものからなるグループから選択される。(Sr1-x-yBaxCay)S:Eu(ここで、0≦x<1及び0≦y<1);CaS:Ce,Cl;Li2Sr SiO4:Eu;(Sr1-xCax)SiO4:Eu(ここで、0≦x<1);(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ce(ここで、0≦x<1及び0≦y<1)、及び(Sr1-x-yBaxCay)2Si5N8:Eu(0≦x<1及び0≦y<1)。
【0042】
本発明の実施例の動作において、発光構造の放射は、蛍光体を励起し、発光スクリーンの全面に、明るく且つ均一な発光を作り出す。
【0043】
本発明の発光装置が、低圧力水銀放電ランプ、高圧水銀放電ランプ、硫黄放電ランプ、分子放射体放電ランプ(molecular radiator discharge lamp)、及び白色光LEDランプのように白色光である場合、演色特性は以前の白色ランプよりもはるかに優れているという点で、特に有利である。一実施例では、ランプは、約2700Kから約8000Kの色温度において少なくとも約60の演色評価数Ra、好ましくは少なくとも約70のRa、より好ましくは少なくとも約80のRa、及び更により好ましくは少なくとも約90のRaを有する放射を放出することが可能である。好適実施例では、ランプは6000K未満のCCT値に対して70を超えるRaである、CRIを発生する。
【0044】
装置の各発光構造の光学的特性を変えることによって、装置は、特定のアプリケーションに依存する所望の特性を有するように設計できる。例えば、特定の装置は強度の大きい光を発生させることが必要とされる場合があり、適切な演色のみが必要とされ、一方、他のアプリケーションは、効率を犠牲にして、高い演色特性を必要とする場合がある。あるいは、演色を、より高い効率のために犠牲にすることができる。例えば、効率の50%の増加は、Raを約60に減少させることによって達成できる。各光源の相対パワーフラクション(relative power fraction)を変えると、斯かる特性を変えることができる。「パワーフラクション」は、最終的な光の色を提供する各光源からの光のフラクションである。パワーフラクションは、例えば、装置に存在する蛍光体材料の相対的な量を変える、又はドーパント濃度を変えることによって、変えることができる。
【0045】
最適の演色特性が達成される限り、蛍光体組成物は2つ以上の蛍光体を有することができることが理解される。
【0046】
一実施例では、装置は蛍光体又は蛍光体混合物をカプセル化するためのポリマーを更に有する。この実施例では、蛍光体又は蛍光体混合物は、カプセルの材料の中で高い安定特性を示さなければならない。好ましくは、ポリマーは、重大な光散乱を防止するために、光学的にクリヤーである。一実施例では、ポリマーはエポキシ樹脂及びシリコーン樹脂からなるグループから選択される。種々のポリマーが、5mmのLEDランプを作るLED産業界で既知である。ポリマー先駆体である液体に蛍光体混合物を加えることにより、カプセル化を実行することができる。例えば、蛍光体混合物は、粉末とすることができる。蛍光体粒子をポリマー先駆体液に導入することは、スラリー(即ち、粒子の懸濁)の形成をもたらす。重合において、蛍光体混合物は、カプセル化によって所定の位置に正確に固定される。一実施例では、組成物とLEDとの両方が、ポリマーにカプセル化される。
【0047】
一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、
0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体の使用は、蛍光体組成物が薄膜又は少さい体積として設けられる場合、特に有利である。その理由は、強い吸収及び従って非常に小さい光浸透深さとともにストークスシフトによって発生する熱のために薄層に発生する高温の影響を受けにくいからである。
【0048】
蛍光体を有する組成物は適切なブレンダーで蛍光体を最終的にはドライブレンドすることによって作ることができ、そして液体懸濁媒体に加えられる、又は個々の蛍光体若しくは複数の蛍光体を液体懸濁(例えば、商用のラッカーにおいて使われるnitrocellulose/butyl
acetateバインダー及び溶媒溶液)に加えられることができる。適切な分散剤及び増粘剤又はバインダー(例えば、ポリスチレン)とともに水を含む多くの他の液体を使用することができる。蛍光体を含む組成物は、LED上にペイントされ、コーティングされ、そうでなければ塗布されて、乾燥される。
【0049】
別の方法では、蛍光体組成物を作るために、蛍光体は、適切なポリマー系(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はポリテトラフルオロエチレン)に結合することができ、蛍光組成物はLEDにコートされ又は塗布され、乾燥され、凝固し、固まり又は硬化する。液体ポリマー系は、LEDへの熱損傷を最小にするため、任意にUV硬化又は室温で硬化することができる。
【0050】
別の方法では、適切なプラスチック(例えば、ポリカーボネート、又は他の堅い透明なプラスチック)から作られるクリヤーポリマーレンズがLED上に成形される。レンズは、光が装置を脱することを促進するため、反射防止層で更に覆うことができる。
【0051】
蛍光体の粒度(蛍光体粒子の直径を意味する)の役割は完全には理解されていないけれども、重量は特定の粒度に依存して変化することができる。好ましくは、粒度は、蛍光体を配する装置をふさぐことを避けるために、15μm未満、より好ましくは12μm未満である。一実施例では、各蛍光体タイプの粒度がばらつく。或る特定の実施例では、(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の粒度は、約10μm未満である。しかし、大きい粒度を用いる他の装置を準備することができる。
【0052】
LEDから放出される吸収されない光は、演色に寄与するけれども、吸収されなかった光は、ときどき、蛍光体から放出される光と混合せずに漏れてしまい、装置の全体的効率が低減する結果になる。従って、一実施例では、LED及び組成物は、反射体カップ内に配される。反射体カップは、反射材料から作成される任意のへこみ又はくぼみとすることができる。LED及び蛍光体粒子を反射体カップに位置させることによって、吸収されていない/混合されていないLED発光が、反射して蛍光体粒子に戻り結局は吸収される、又は蛍光体から放出される光と混合することができる。
【0053】
本発明のこれら及び他の実施例の機能及び利点は、以下の例から更に十分に理解されるだろう。以下の例は、本発明の利点を示すものであるが、本発明の全範囲を例証するものではない。
【0054】
例1:
Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04の準備
【0055】
208.9g(1.415mol)のSrCO3を、アルゴン下で、乾燥エタノール中において、12.3g(0.059mol)のEuF3及び206.8g(4.423mol)のSi3N4(最小で98%の純度)と混合する。エタノールは、アルゴンストリーム中で蒸発させ、乾燥した粉末混合物がタングステンボートにおいてチャコール上でH/N雰囲気のもとで1400℃で1時間加熱される。粉砕後、粉末はH/N雰囲気下において1500℃で1時間加熱され、粉砕され、数時間水で洗浄される。
【0056】
例2
【0057】
Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04及びSr2Si5N8:Euを有する白色LED
【0058】
Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04とSr2Si5N8:Euとを有する蛍光体混合物は、シリコーンモノマーオイル中で懸濁され、懸濁液の液滴が、InGaNダイ上に被着される。重合工程を開始するために触媒がシリコーンモノマーに加えられ、その結果、シリコーンが硬化する。最後に、LEDはプラスチックキャップでシールされる。
【0059】
例3
Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04及びSrS:Euを有する白色LED
【0060】
Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04及びSrS:Euを有する蛍光体混合物はシリコーンモノマーオイル中で懸濁され、懸濁液の液滴はInGaNダイ上に被着される。重合工程を開始するために触媒がシリコーンモノマーに加えられ、その結果、シリコーンが硬化する。最後に、LEDはプラスチックキャップでシールされる。
【0061】
例4
Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04及びCaS:Euを有する白色LED
【0062】
Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04及びCaS:Euを有する蛍光体混合物はシリコーンモノマーオイル中で懸濁され、懸濁液の液滴はInGaNダイ上に被着される。重合工程を開始するために触媒がシリコーンモノマーに加えられ、その結果、シリコーンが硬化する。最後に、LEDはプラスチックキャップでシールされる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】LED構造によって放出される光の経路に位置するSr2Si5N8:Euと、(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)との2つの蛍光体混合物を有する3色カラーLEDランプの概略図を示す。
【図2】Sr0.96Si2N2O2:Eu0.04のX線回折図を開示する。
【図3】460nmにおける青色LEDによる励起のSr0.96Si2N2O2:Eu0.04の発光スペクトル及び励起スペクトルのオーバレイを開示する。
【図4】430nmの励起下で観測されたSr0.96Si2N2O2:Eu0.04のホトルミネセンスの熱クエンチングを開示する。
【図5】異なる色温度において、青色LEDによって430nmで励起したときのSr0.96Si2N2O2:Eu0.04とCaSとの混合物のスペクトルのシミュレーションを開示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
480nm未満の波長の一次光を放出することができる発光構造と一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体を有する発光スクリーンとを有する発光装置。
【請求項2】
前記発光構造が、450nmから480nmまで波長の一次光を放出することができる、請求項1による発光装置。
【請求項3】
前記発光構造は青色発光LEDである、請求項1による発光装置。
【請求項4】
前記蛍光体は薄膜層に備えられる、請求項1による発光装置。
【請求項5】
前記発光スクリーンが、一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、 0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の緑の蛍光体と赤の蛍光体とを有する、請求項1による発光装置。
【請求項6】
前記赤の蛍光体は、(Sr1-x-yBaxCay)S:Eu(ここで、0≦x<1及び0≦y<1);CaS:Ce,Cl;Li2Sr SiO4:Eu;(Sr1-xCax)SiO4:Eu(ここで、0≦x<1);(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ce(ここで、0≦x<1及び0≦y<1)、及び(Sr1-x-yBaxCay)2Si5N8:Eu(ここで、0≦x<1及び0≦y<1)のグループから選択される、請求項5による発光装置。
【請求項7】
前記装置がランプである、請求項1による発光装置。
【請求項8】
一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、
0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体を有する発光スクリーン。
【請求項9】
一般式(Sr1-a-bCabBacMgdZne)SixNyOz:Eua(ここで、0.002≦a≦0.2、 0.0≦b≦0.25、
0.0≦c≦0.25、 0.0≦d≦0.25、 0.0≦e≦0.25、 1.5≦x≦2.5、 1.5≦y≦2.5、及び1.5<z<2.5)の蛍光体。
【請求項10】
1.9≦x≦2.1、1.9≦y≦2.1、及び1.9<z<2.1である、請求項9による蛍光体。
【請求項11】
一般式Sr1-aSi2N2O2:Euaである、請求項9による蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−503431(P2006−503431A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544567(P2004−544567)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004403
【国際公開番号】WO2004/036962
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【出願人】(500507009)ルミレッズ ライティング ユーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー (197)
【Fターム(参考)】