FMCWレーダ装置
【課題】実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができるFMCWレーダ装置を得ることを目的とする。
【解決手段】FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっている。
【解決手段】FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PLL(Phase Locked Loop)で構成されているFMCW信号源を実装しているFMCWレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載ミリ波レーダの方式として、比較的簡易な構成で、被測定物(目標物)までの距離と、被測定物との相対速度を同時に高精度に計測することができるFMCW(Frequency Modulated Continuous Waves)方式が数多く用いられている。
このFMCW方式では、周波数変調(FM:Frequency Modulation)された高周波の連続波信号(CW:Continuous Wave)である送信波を空間に放射するとともに、空間に存在する被測定物に反射して戻ってくる上記連続波信号(受信波)を受信して、その送信波と受信波の差周波を有するビート信号を生成することで、そのビート信号の周波数スペクトラムから被測定物までの距離及び被測定物との相対速度を算出することができる。
【0003】
FMCW方式によるFMCWレーダ装置の構成と動作原理については、以下の特許文献1に開示されている。
図13は特許文献1に開示されているFMCWレーダ装置を示す構成図である。
このFMCWレーダ装置では、以下のようにして、目標物までの距離と、目標物との相対速度を算出している。
【0004】
まず、FMCW信号源101がFM変調された高周波信号を発生する。
方向性結合器102は、FMCW信号源101から発生された高周波信号を分配して、一方の高周波信号を送信アンテナ103に出力し、他方の高周波信号をミキサ105に出力する。
送信アンテナ103は、方向性結合器102から出力された高周波信号を、FMCWレーダ装置の前方の空間に送信波として放射する。
【0005】
受信アンテナ104は、FMCWレーダ装置の前方の空間に目標物が存在する場合、その目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号(受信波)を受信して、その受信波をミキサ105に出力する。受信波は、送信波より時間遅れを生じている。
ミキサ105は、受信アンテナ104から受信波を受けると、方向性結合器102から出力された送信波と受信波の差周波を有するビート信号を生成し、そのビート信号をAD変換器106に出力する。
【0006】
AD変換器106は、ミキサ105からビート信号を受けると、そのビート信号をアナログ信号形式からデジタル信号形式に変換して周波数分析部107に出力する。
周波数分析部107は、AD変換器106からデジタル化されたビート信号を受けると、そのビート信号に対するFFT(高速フーリエ変換)等の処理を実行して、そのビート信号の周波数分布(周波数スペクトラム)を算出する。
距離・速度算出部108は、周波数分析部107がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルが所定の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する。
【0007】
以下、目標物までの距離及び目標物との相対速度の算出方法を説明する。
図14は送信波及び受信波の周波数の時間変化を示す説明図であり、図15はビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
図14において、FtxはFMCW信号源101から発生される送信波の周波数であり、Frxは受信アンテナ104により受信される受信波の周波数である。
FMCW信号源101から発生される送信波は、図14に示すように、周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープの区間と、周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープの区間とがある。
【0008】
ここでは、説明の便宜上、測定対象である目標物が、FMCWレーダ装置に対して、相対速度Vr、相対距離Rで存在しているものとする。
このとき、光速がC[m/s]、送信波長がλ[m]、アップチャープ区間及びダウンチャープ区間の時間がT1であるとして、時間T1の間に、送信波の周波数FtxをF1だけ変化させると、ドップラー周波数Fdは下記の式(1)で表される。
【0009】
また、目標物までの距離に比例して、送信周波数と受信周波数の時間差により生じる距離周波数Frは下記の式(2)で表され、アップチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Uは下記の式(3)で表され、ダウンチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Dは下記の式(4)で表される。
【0010】
また、距離周波数Frがドップラー周波数Fdよりも大きい場合、下記の式(5)が成立し、式(2)を式(5)に代入すると、FMCWレーダ装置から目標物までの相対距離を求める式(6)が導出される。
【0011】
式(6)より、アップチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Uと、ダウンチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Dから、目標物までの距離Rが求められる。
また、距離周波数Frを算出すると、式(1)と式(3),(4)により、目標物との相対速度Vrを求めることもできる。
【0012】
ここで、FMCW信号源101の回路方式の一つとして、PLLで構成されている回路方式が考えられる(例えば、特許文献2を参照)。
この方式では、PLLの設定周波数がステップ状に切り替えられることで、FM変調された高周波信号が生成される。
【0013】
図16はPLLで構成されているFMCW信号源を示す構成図である。
図16のFMCW信号源は、基準信号生成部(RFF)111、位相周波数検出器(PFD:Phase Frequency Detector)112、チャージポンプ(CP:Charge Pump)113、ループフィルタ(LF:Loop Filter)114、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)115、分周数制御回路(CNT)116及び分周器(DIV:Divider)117から構成されているが、PLLの設定周波数は、分周数制御回路116により設定される分周器117の分周数で定まる。
【0014】
図17は従来のPLLで構成されている回路方式において、FM変調時の周波数変移状態を示す説明図である。
この回路方式では、F1の範囲内で、時間T2毎にPLLの設定周波数をF2ずつステップ状にN回切り替えている。Nは、1より大きい任意の自然数である。
このときのステップ数Nと、F1,F2,T1,T2とは、下記の式(7),(8)の関係になる。
F1=N×F2 (7)
T1=N×T2 (8)
F2をF1と比べて十分に小さくすることで、図14に示すような高周波信号(FMCW信号)を生成することができる。
【0015】
しかしながら、従来のPLLで構成されているFMCW信号源をFMCWレーダ装置に実装すると、ビート信号における目標信号成分のピークの近傍に、PLLの設定周波数の切替間隔T2に応じたスプリアスが発生する。
ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb、不要成分であるスプリアス発生周波数をFspとすると、目標信号成分のピーク周波数Fbとスプリアス発生周波数Fspの関係は、下記の式(9)で表すことができる。
図18はビート信号の目標信号成分と、不要成分であるスプリアスの周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【0016】
このように、ビート信号の目標信号成分と不要成分が混在し、不要成分の電力レベルがピーク検出用の閾値より高い場合、距離・速度算出部108が、スペクトラムのピーク周波数から目標物までの距離等を算出する際、目標信号成分と不要成分を区別することができなくなる。
その結果、実際には目標物が存在していなくても、FMCWレーダ装置が、目標物が存在していると誤判定してしまう可能性がある。
【0017】
なお、ピーク検出用の閾値を高くすれば、不要成分を除去することができるが、目標物までの距離が離れる程、受信波の信号電力レベルが低下するため、ピーク検出用の閾値を高くすると、遠方に存在している目標物から戻ってきている受信波の信号電力レベルが低下し、その結果、ビート信号の電力レベルがピーク検出用の閾値を超えなくなり、FMCWレーダ装置での検出範囲が狭くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−127664号公報(図16)
【特許文献2】特開2010−71899号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来のFMCWレーダ装置は以上のように構成されているので、ピーク検出用の閾値を低い値に設定すると、不要成分のスプリアスの影響を受けて、実際には存在していない目標物を誤検出してしまうことがあり、ピーク検出用の閾値を高い値に設定すると、遠方に存在している目標物を検出することができなくなるなどの課題があった。
【0020】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができるFMCWレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明に係るFMCWレーダ装置は、周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、信号送信手段から放射された高周波信号と信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備え、上記高周波信号発生手段がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、信号送信手段から放射された高周波信号と信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備え、上記高周波信号発生手段がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているように構成したので、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離を算出することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置を示す構成図である。
【図2】PLLで構成されているFMCW信号源1を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図4】アップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【図5】アップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図7】奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【図8】奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図10】1番目、q番目及びk番目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図12】実施の形態4の制御方法が用いられる場合のビート信号の周波数スペクトラムの一例を簡易的に示す説明図である。
【図13】特許文献1に開示されているFMCWレーダ装置を示す構成図である。
【図14】送信波及び受信波の周波数の時間変化を示す説明図である。
【図15】ビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【図16】PLLで構成されているFMCW信号源を示す構成図である。
【図17】従来のPLLで構成されている回路方式において、FM変調時の周波数変移状態を示す説明図である。
【図18】ビート信号の目標信号成分と、不要成分であるスプリアスの周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置を示す構成図である。
図1において、FMCW信号源1はPLLで構成されており、FM変調された高周波信号を発生する。
即ち、FMCW信号源1は、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返され、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっている。なお、FMCW信号源1は高周波信号発生手段を構成している。
【0025】
方向性結合器2はFMCW信号源1から発生された高周波信号を分配して、一方の高周波信号を送信アンテナ3に出力し、他方の高周波信号をミキサ5に出力する。
送信アンテナ3は方向性結合器2から出力された高周波信号を、FMCWレーダ装置の前方の空間に送信波として放射する。なお、送信アンテナ3は信号送信手段を構成している。
【0026】
受信アンテナ4はFMCWレーダ装置の前方の空間に目標物が存在する場合、その目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信して、その受信波(受信波は、送信波より時間遅れを生じている)をミキサ5に出力する。なお、受信アンテナ4は信号受信手段を構成している。
ミキサ5は方向性結合器2から出力された送信波と受信アンテナ4から出力された受信波の差周波を有するビート信号を生成し、そのビート信号をAD変換器6に出力する。
なお、方向性結合器2及びミキサ5からビート信号生成手段が構成されている。
【0027】
AD変換器6はミキサ5から出力されたビート信号をアナログ信号形式からデジタル信号形式に変換して周波数分析部7に出力する。
周波数分析部7はAD変換器6によりデジタル化されたビート信号に対するFFT等の処理を実行して、そのビート信号の周波数スペクトラムを算出する。
距離・速度算出部8は周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、電力レベルが所定の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する。
なお、AD変換器6、周波数分析部7及び距離・速度算出部8から距離速度算出手段が構成されている。
【0028】
図2はPLLで構成されているFMCW信号源1を示す構成図である。
図2において、基準信号生成部11(図中、「REF」と表記)は基準信号を生成して、その基準信号を位相周波数検出器12に出力する。
位相周波数検出器12(図中、「PFD」と表記)は基準信号生成部11から出力された基準信号と分周器17により分周された高周波信号の位相差を検出する。
チャージポンプ13(図中、「CP」と表記)は位相周波数検出器12により検出された位相差を電圧信号に変換し、その電圧信号をローパスフィルタ14(図中、「LF」と表記)に出力する。
ローパスフィルタ14はチャージポンプ13から出力された電圧信号に含まれている不要な短周期の変動を遮断する。
【0029】
電圧制御発振器15(図中、「VCO」と表記)はローパスフィルタ14から出力された電圧信号に対応する周波数の高周波信号を発振する。
分周数制御回路16(図中、「CNT」と表記)はアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なるように、分周器17の分周数を設定する。
分周器17(図中、「DIV」と表記)は分周数制御回路16により設定された分周数で、電圧制御発振器15から出力された高周波信号を分周し、分周後の高周波信号を位相周波数検出器12に出力する。
【0030】
次に動作について説明する。
この実施の形態1のFMCWレーダ装置は、従来のFMCWレーダ装置と比較して、FMCW信号源1から発生される高周波信号が相違している。
FMCW信号源1及び距離・速度算出部8以外の部分は、従来のFMCWレーダ装置と同様であるため、ここでは、FMCW信号源1及び距離・速度算出部8の処理内容を説明する。
【0031】
図3はこの発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
ここでは、目標物との相対速度Vrがゼロである条件の下で、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープにおける周波数の切替ステップ数と、ダウンチャープにおける周波数の切替ステップ数とを変えている。
即ち、FMCW信号源1の分周数制御回路16は、アップチャープでは、図3に示すように、時間T2U毎に、F2Uずつステップ状にNU回だけ設定周波数を切り替えている。NUは、1より大きい任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数NU、時間T2U、周波数F2Uが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(10),(11)の関係を満足するように設定する。
F1=NU×F2U (10)
T1=NU×T2U (11)
【0032】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_U、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_Uとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_Uとスプリアス発生周波数Fsp_Uの関係は、下記の式(12)で表すことができる。
【0033】
一方、ダウンチャープでは、図3に示すように、時間T2D毎に、F2Dずつステップ状にND回だけ設定周波数を切り替えている。NDは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、NUと異なる値である。
分周数制御回路16では、ステップ数ND、時間T2D、周波数F2Dが、周波数変動範囲F1、ダウンチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(13),(14)の関係を満足するように設定する。
F1=ND×F2D (13)
T1=ND×T2D (14)
その結果、時間T2Dは時間T2Uと異なる時間となり、周波数F2Dは周波数F2Uと異なる周波数となる。
【0034】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_D、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_Dとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_Dとスプリアス発生周波数Fsp_Dの関係は、下記の式(15)で表すことができる。
【0035】
図4はアップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
目標物との相対速度Vrがゼロである場合、図4に示すように、アップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Uと、ダウンチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Dは同一になる。
一方、アップチャープとダウンチャープでは、設定周波数の切替間隔が異なるため、不要成分であるアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_Uと、ダウンチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_Dは異なる。
【0036】
したがって、距離・速度算出部8では、周波数分析部7がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、従来例と同様に、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出するが、アップチャープのスペクトラムと、ダウンチャープのスペクトラムとを比較することで、ピーク周波数が同一のスペクトルは目標信号成分のピーク周波数であって、ピーク周波数が異なるスペクトルは不要成分のピーク周波数であると判別することができる。
このため、距離・速度算出部8は、従来例と異なり、周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外(目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外)し、ピーク周波数が同一のスペクトラムだけから距離を算出することで、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避するようにしている。
【0037】
なお、距離・速度算出部8は、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、アップチャープにおけるスペクトラムと、ダウンチャープにおけるスペクトラムとを合算して平均化するようにする。
これにより、ビート信号の目標信号成分の電力レベルは、合算・平均化前と同等であるが、不要成分の電力レベルは、合算・平均化前の半分になる。
図5はアップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
このように、不要成分の電力レベルが合算・平均化前の半分になることで、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる。
【0038】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているように構成したので、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離を算出することができる効果を奏する。
【0039】
また、この実施の形態1によれば、距離・速度算出部8がアップチャープでのスペクトラムとダウンチャープでのスペクトラムを比較して、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外し、ピークの周波数が同一のスペクトラムから目標物までの距離を算出するように構成したので、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避することができる効果を奏する。
【0040】
また、この実施の形態1によれば、距離・速度算出部8が、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、アップチャープにおけるスペクトラムと、ダウンチャープにおけるスペクトラムとを合算して平均化するように構成したので、ピーク検出用の閾値を下げることができるようになり、その結果、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる効果を奏する。
【0041】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、目標物との相対速度Vrがゼロのときにビート信号の目標信号成分を正しく検出するために、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているものを示したが、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合には、アップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Uと、ダウンチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Dとが異なる。
【0042】
上記実施の形態1の方法では、ビート信号の目標信号成分を正しく検出するには、アップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Uと、ダウンチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Dとが同一である必要があるため、相対速度Vrがゼロでない場合には、目標信号成分を正しく検出することができない。
そこで、この実施の形態2では、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合に、ビート信号の目標信号成分と不要成分とを判別することができるようにするため、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープとダウンチャープを交互に繰り返す際、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なるようにしている。
具体的には、以下の通りである。
【0043】
図6はこの発明の実施の形態2によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、奇数回目のアップチャープでは、時間T20D毎に、F2ODずつステップ状にNOD回だけ設定周波数を切り替えている。NODは、1より大きい任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数NOD、時間T2OD、周波数F2ODが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(16),(17)の関係を満足するように設定する。
F1=NOD×F2OD (16)
T1=NOD×T2OD (17)
【0044】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_OD、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_ODとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_ODとスプリアス発生周波数Fsp_ODの関係は、下記の式(18)で表すことができる。
【0045】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、偶数回目のアップチャープでは、時間T2EV毎に、F2EVずつステップ状にNEVだけ設定周波数を切り替えている。NEVは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、NODと異なる値である。
分周数制御回路16では、ステップ数NEV、時間T2EV、周波数F2EVが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(19),(20)の関係を満足するように設定する。
F1=NEV×F2EV (19)
T1=NEV×T2EV (20)
その結果、時間T2EVは時間T2ODと異なる時間となり、周波数F2EVは周波数F2ODと異なる周波数となる。
【0046】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_EV、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_EVとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_EVとスプリアス発生周波数Fsp_EVの関係は、下記の式(21)で表すことができる。
【0047】
図7は奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
目標物との相対速度Vrがゼロでないとき、奇数回目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_ODと、偶数回目回目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_EVは同一になる。
一方、奇数回目のアップチャープと偶数回目回目のアップチャープでは、設定周波数の切替間隔が異なるため、不要成分である奇数回目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_ODと、偶数回目回目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_EVは異なる。
【0048】
したがって、距離・速度算出部8では、周波数分析部7がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、従来例と同様に、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出するが、奇数回目のアップチャープのスペクトラムと、偶数回目のアップチャープのスペクトラムとを比較することで、ピーク周波数が同一のスペクトルは目標信号成分のピーク周波数であって、ピーク周波数が異なるスペクトルは不要成分のピーク周波数であると判別することができる。
このため、距離・速度算出部8は、従来例と異なり、周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外(目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外)し、ピーク周波数が同一のスペクトラムだけから距離及び相対速度を算出することで、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避するようにしている。
【0049】
なお、距離・速度算出部8は、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、奇数回目のアップチャープにおけるスペクトラムと、偶数回目のアップチャープにおけるスペクトラムとを合算して平均化するようにする。
これにより、ビート信号の目標信号成分の電力レベルは、合算・平均化前と同等であるが、不要成分の電力レベルは、合算・平均化前の半分になる。
図8は奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
このように、不要成分の電力レベルが合算・平均化前の半分になることで、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる。
【0050】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているように構成したので、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合でも、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができる効果を奏する。
【0051】
なお、この実施の形態2では、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているものを示したが、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているようにしても、同様の原理で、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合に、ビート信号の目標信号成分と不要成分とを判別することができる。
【0052】
また、この実施の形態2では、アップチャープとダウンチャープが交互に繰り返されるものを示したが、アップチャープだけが繰り返される場合には、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、ダウンチャープだけが繰り返される場合には、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0053】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、FMCW信号源1の分周数制御回路16によりPLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるものを示したが、PLLの設定周波数の切替間隔は2種類である。
PLLの設定周波数の切替間隔が2種類である場合、上述したように、スペクトラムを合算して平均化することで、不要成分の電力レベルを半分まで低減することができる。
【0054】
この実施の形態3では、不要成分の電力レベルを半分より小さい電力レベルまで下げることができるようにするために、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープとダウンチャープを交互にK回ずつ実行する際、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしている。
具体的には、以下の通りである。
【0055】
図9はこの発明の実施の形態3によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
ここでは、アップチャープとダウンチャープを交互にK回ずつ実行し、アップチャープにおけるPLLの設定周波数を切り替えるステップ数をKパターンとしている。Kは、1より大きい任意の自然数である。
【0056】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、1番目のアップチャープでは、時間T2k1毎に、F2k1ずつステップ状にNk1回だけ設定周波数を切り替えている。Nk1は、1より大きい任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数Nk1、時間T2k1、周波数F2k1が、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(22),(23)の関係を満足するように設定する。
F1=Nk1×F2k1 (22)
T1=Nk1×T2k1 (23)
【0057】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_k1、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_k1とすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_k1とスプリアス発生周波数Fsp_k1の関係は、下記の式(24)で表すことができる。
【0058】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、k番目のアップチャープでは、時間T2kk毎に、F2kkずつステップ状にNkk回だけ設定周波数を切り替えている。Nkkは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、Nk1と異なる値である。
分周数制御回路16では、ステップ数Nkk、時間T2kk、周波数F2kkが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(25),(26)の関係を満足するように設定する。
F1=Nkk×F2kk (25)
T1=Nkk×T2kk (26)
その結果、時間T2kkは時間T2k1と異なる時間となり、周波数F2kkは周波数F2k1と異なる周波数となる。
【0059】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_kk、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_kkとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_kkとスプリアス発生周波数Fsp_kkの関係は、下記の式(27)で表すことができる。
【0060】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、q番目のアップチャープでは、時間T2kq毎に、F2kqずつステップ状にNkq回だけ設定周波数を切り替えている。Nkqは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、Nk1及びNkkと異なる値である。
また、qは1<q<kの範囲にある任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数Nkq、時間T2kq、周波数F2kqが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(28),(29)の関係を満足するように設定する。
F1=Nkq×F2kq (28)
T1=Nkq×T2kq (29)
その結果、時間T2kqは時間T2k1,T2kkと異なる時間となり、周波数F2kqは周波数F2k1,F2kkと異なる周波数となる。
【0061】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_kq、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_kqとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_kqとスプリアス発生周波数Fsp_kqの関係は、下記の式(30)で表すことができる。
【0062】
図10は1番目、q番目及びk番目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
1番目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_k1と、q番目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_kqと、k番目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_kkは同一になる。
一方、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているため、不要成分である1番目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_k1と、q番目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_kqと、k番目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_kkは異なる。
【0063】
したがって、距離・速度算出部8では、周波数分析部7がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、従来例と同様に、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出するが、K回のアップチャープにおけるスペクトラムを比較することで、ピーク周波数が同一のスペクトルは目標信号成分のピーク周波数であって、ピーク周波数が異なるスペクトルは不要成分のピーク周波数であると判別することができる。
このため、距離・速度算出部8は、従来例と異なり、周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外(目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外)し、ピーク周波数が同一のスペクトラムだけから距離及び相対速度を算出することで、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避するようにしている。
【0064】
なお、距離・速度算出部8は、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、K回のアップチャープにおけるスペクトラムを合算して平均化するようにする。
これにより、ビート信号の目標信号成分の電力レベルは、合算・平均化前と同等であるが、不要成分の電力レベルは、合算・平均化前の1/Kになる。
このため、ビート信号の目標信号成分と不要成分の電力比は、1回のアップチャープで得られる結果のK倍となる。
よって、チャープ回数Kを増やすことで、スペクトラム合算後の不要成分の電力レベルを、半分より小さい電力レベルまで低減することができる。
【0065】
図10は1番目、q番目及びk番目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
このように、不要成分の電力レベルが合算・平均化前の1/Kになることで、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる。
【0066】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互にK回ずつ実行されるものであり、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているように構成したので、上記実施の形態1,2と同様の効果を奏するほか、ピーク検出用の閾値を更に下げることができるため、更に遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができる効果を奏する。
【0067】
この実施の形態3では、複数の目標物が存在しているために、ビート信号の目標信号成分のピーク周波数と、不要成分であるスプリアス発生周波数が複数組生じ、その結果、チャープのステップ条件によって、不要成分であるスプリアス発生周波数のピークが重なることがある場合でも、チャープ回数Kを増やすことで、スペクトラム合算後の不要成分の電力レベルを低減することができる。
【0068】
なお、この実施の形態3では、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているものを示したが、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしても、同様の原理で、ビート信号の目標信号成分と不要成分とを判別することができるとともに、スペクトラム合算後の不要成分の電力レベルを合算・平均化前の1/Kにすることができる。
【0069】
また、この実施の形態3では、アップチャープとダウンチャープが交互に繰り返されるものを示したが、アップチャープだけが繰り返される場合には、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、ダウンチャープだけが繰り返される場合には、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0070】
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3では、FMCW信号源1の分周数制御回路16によりPLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるものを示したが、アップチャープ期間中又はダウンチャープ期間中には、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられずに一定である。
この実施の形態4では、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープ期間中又はダウンチャープ期間中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしている。
具体的には、以下の通りである。
【0071】
図11はこの発明の実施の形態4によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
ここでは、1つのアップチャープの実行中に、各周波数切替ステップで、切り替える周波数幅を変えるようにしている。
【0072】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、1つのアップチャープの実行中に、時間T2G(g)毎に、F2G(g)ずつステップ状にH回だけ設定周波数を切り替えている。Hは、1より大きい任意の自然数であり、gは1からHまでの連続した自然数である。
分周数制御回路16では、時間T2G(g)、周波数F2G(g)が、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(31),(32)の関係を満足するように設定する。
【0073】
また、分周数制御回路16は、各周波数切替ステップにおけるT2G(g)、F2G(g)が、下記の式(33)の関係を満足するように設定し、各周波数切替ステップにおける周波数変化の傾きを一定にする。
【0074】
さらに、分周数制御回路16は、各周波数切替ステップにおけるF2G(g)が、下記の式(34)の関係を満足するように、全て異なる値に設定する。
【0075】
図12は実施の形態4の制御方法が用いられる場合のビート信号の周波数スペクトラムの一例を簡易的に示す説明図である。
1つのアップチャープの実行中に、各周波数切替ステップで、切り替える周波数幅を変えた場合、アップチャープ全体での周波数変化の傾きは一定であるため、従来の制御方法と同様に、周波数Fb_Uの目標信号成分のピークが生じる。
一方、1つのアップチャープの実行中におけるPLLの設定周波数の切替間隔が一定でないため、アップチャープ時に発生するスプリアスが拡散する。
その結果、ビート信号の目標信号成分のピーク電力レベルは、従来の制御方法と同等となるが、不要成分であるスプリアスのスペクトラムは拡散するため、不要成分の電力レベルを従来の制御方法と比べて低減することができる。
【0076】
この実施の形態4の制御方法が用いられる場合でも、上記実施の形態1〜3と同様に、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができる。
【0077】
なお、この実施の形態4では、式(34)において、各周波数切替ステップにおけるF2G(g)が全て異なる値に設定されるものを示したが、いくつかの周波数切替ステップにおけるF2G(g)が同一のものであっても、不要成分の電力レベルが、遠方にある目標物からの受信波によるピーク電力レベルより低減することができれば、同等の効果を得ることができる。
【0078】
この実施の形態4では、1つのアップチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるものを示したが、1つのダウンチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしても、同様の原理で、同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、この実施の形態4では、アップチャープとダウンチャープが交互に繰り返されるものを示したが、アップチャープだけが繰り返される場合には、1つのアップチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、ダウンチャープだけが繰り返される場合には、1つのダウンチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0080】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 FMCW信号源(高周波信号発生手段)、2 方向性結合器(ビート信号生成手段)、3 送信アンテナ(信号送信手段)、4 受信アンテナ(信号受信手段)、5 ミキサ(ビート信号生成手段)、6 AD変換器(距離速度算出手段)、7 周波数分析部(距離速度算出手段)、8 距離・速度算出部(距離速度算出手段)、11 基準信号生成部、12 位相周波数検出器、13 チャージポンプ、14 ローパスフィルタ、15 電圧制御発振器、16 分周数制御回路、17 分周器、101 FMCW信号源、102 方向性結合器、103 送信アンテナ、104 受信アンテナ、105 ミキサ、106 AD変換器、107 周波数分析部、108 距離・速度算出部、111 基準信号生成部、112 位相周波数検出器、113 チャージポンプ、114 ループフィルタ、115 電圧制御発振器、116 分周数制御回路、117 分周器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、PLL(Phase Locked Loop)で構成されているFMCW信号源を実装しているFMCWレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載ミリ波レーダの方式として、比較的簡易な構成で、被測定物(目標物)までの距離と、被測定物との相対速度を同時に高精度に計測することができるFMCW(Frequency Modulated Continuous Waves)方式が数多く用いられている。
このFMCW方式では、周波数変調(FM:Frequency Modulation)された高周波の連続波信号(CW:Continuous Wave)である送信波を空間に放射するとともに、空間に存在する被測定物に反射して戻ってくる上記連続波信号(受信波)を受信して、その送信波と受信波の差周波を有するビート信号を生成することで、そのビート信号の周波数スペクトラムから被測定物までの距離及び被測定物との相対速度を算出することができる。
【0003】
FMCW方式によるFMCWレーダ装置の構成と動作原理については、以下の特許文献1に開示されている。
図13は特許文献1に開示されているFMCWレーダ装置を示す構成図である。
このFMCWレーダ装置では、以下のようにして、目標物までの距離と、目標物との相対速度を算出している。
【0004】
まず、FMCW信号源101がFM変調された高周波信号を発生する。
方向性結合器102は、FMCW信号源101から発生された高周波信号を分配して、一方の高周波信号を送信アンテナ103に出力し、他方の高周波信号をミキサ105に出力する。
送信アンテナ103は、方向性結合器102から出力された高周波信号を、FMCWレーダ装置の前方の空間に送信波として放射する。
【0005】
受信アンテナ104は、FMCWレーダ装置の前方の空間に目標物が存在する場合、その目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号(受信波)を受信して、その受信波をミキサ105に出力する。受信波は、送信波より時間遅れを生じている。
ミキサ105は、受信アンテナ104から受信波を受けると、方向性結合器102から出力された送信波と受信波の差周波を有するビート信号を生成し、そのビート信号をAD変換器106に出力する。
【0006】
AD変換器106は、ミキサ105からビート信号を受けると、そのビート信号をアナログ信号形式からデジタル信号形式に変換して周波数分析部107に出力する。
周波数分析部107は、AD変換器106からデジタル化されたビート信号を受けると、そのビート信号に対するFFT(高速フーリエ変換)等の処理を実行して、そのビート信号の周波数分布(周波数スペクトラム)を算出する。
距離・速度算出部108は、周波数分析部107がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルが所定の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する。
【0007】
以下、目標物までの距離及び目標物との相対速度の算出方法を説明する。
図14は送信波及び受信波の周波数の時間変化を示す説明図であり、図15はビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
図14において、FtxはFMCW信号源101から発生される送信波の周波数であり、Frxは受信アンテナ104により受信される受信波の周波数である。
FMCW信号源101から発生される送信波は、図14に示すように、周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープの区間と、周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープの区間とがある。
【0008】
ここでは、説明の便宜上、測定対象である目標物が、FMCWレーダ装置に対して、相対速度Vr、相対距離Rで存在しているものとする。
このとき、光速がC[m/s]、送信波長がλ[m]、アップチャープ区間及びダウンチャープ区間の時間がT1であるとして、時間T1の間に、送信波の周波数FtxをF1だけ変化させると、ドップラー周波数Fdは下記の式(1)で表される。
【0009】
また、目標物までの距離に比例して、送信周波数と受信周波数の時間差により生じる距離周波数Frは下記の式(2)で表され、アップチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Uは下記の式(3)で表され、ダウンチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Dは下記の式(4)で表される。
【0010】
また、距離周波数Frがドップラー周波数Fdよりも大きい場合、下記の式(5)が成立し、式(2)を式(5)に代入すると、FMCWレーダ装置から目標物までの相対距離を求める式(6)が導出される。
【0011】
式(6)より、アップチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Uと、ダウンチャープ区間でのビート信号の周波数Fb_Dから、目標物までの距離Rが求められる。
また、距離周波数Frを算出すると、式(1)と式(3),(4)により、目標物との相対速度Vrを求めることもできる。
【0012】
ここで、FMCW信号源101の回路方式の一つとして、PLLで構成されている回路方式が考えられる(例えば、特許文献2を参照)。
この方式では、PLLの設定周波数がステップ状に切り替えられることで、FM変調された高周波信号が生成される。
【0013】
図16はPLLで構成されているFMCW信号源を示す構成図である。
図16のFMCW信号源は、基準信号生成部(RFF)111、位相周波数検出器(PFD:Phase Frequency Detector)112、チャージポンプ(CP:Charge Pump)113、ループフィルタ(LF:Loop Filter)114、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)115、分周数制御回路(CNT)116及び分周器(DIV:Divider)117から構成されているが、PLLの設定周波数は、分周数制御回路116により設定される分周器117の分周数で定まる。
【0014】
図17は従来のPLLで構成されている回路方式において、FM変調時の周波数変移状態を示す説明図である。
この回路方式では、F1の範囲内で、時間T2毎にPLLの設定周波数をF2ずつステップ状にN回切り替えている。Nは、1より大きい任意の自然数である。
このときのステップ数Nと、F1,F2,T1,T2とは、下記の式(7),(8)の関係になる。
F1=N×F2 (7)
T1=N×T2 (8)
F2をF1と比べて十分に小さくすることで、図14に示すような高周波信号(FMCW信号)を生成することができる。
【0015】
しかしながら、従来のPLLで構成されているFMCW信号源をFMCWレーダ装置に実装すると、ビート信号における目標信号成分のピークの近傍に、PLLの設定周波数の切替間隔T2に応じたスプリアスが発生する。
ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb、不要成分であるスプリアス発生周波数をFspとすると、目標信号成分のピーク周波数Fbとスプリアス発生周波数Fspの関係は、下記の式(9)で表すことができる。
図18はビート信号の目標信号成分と、不要成分であるスプリアスの周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【0016】
このように、ビート信号の目標信号成分と不要成分が混在し、不要成分の電力レベルがピーク検出用の閾値より高い場合、距離・速度算出部108が、スペクトラムのピーク周波数から目標物までの距離等を算出する際、目標信号成分と不要成分を区別することができなくなる。
その結果、実際には目標物が存在していなくても、FMCWレーダ装置が、目標物が存在していると誤判定してしまう可能性がある。
【0017】
なお、ピーク検出用の閾値を高くすれば、不要成分を除去することができるが、目標物までの距離が離れる程、受信波の信号電力レベルが低下するため、ピーク検出用の閾値を高くすると、遠方に存在している目標物から戻ってきている受信波の信号電力レベルが低下し、その結果、ビート信号の電力レベルがピーク検出用の閾値を超えなくなり、FMCWレーダ装置での検出範囲が狭くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−127664号公報(図16)
【特許文献2】特開2010−71899号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来のFMCWレーダ装置は以上のように構成されているので、ピーク検出用の閾値を低い値に設定すると、不要成分のスプリアスの影響を受けて、実際には存在していない目標物を誤検出してしまうことがあり、ピーク検出用の閾値を高い値に設定すると、遠方に存在している目標物を検出することができなくなるなどの課題があった。
【0020】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができるFMCWレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明に係るFMCWレーダ装置は、周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、信号送信手段から放射された高周波信号と信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備え、上記高周波信号発生手段がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、信号送信手段から放射された高周波信号と信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備え、上記高周波信号発生手段がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているように構成したので、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離を算出することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置を示す構成図である。
【図2】PLLで構成されているFMCW信号源1を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図4】アップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【図5】アップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図7】奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【図8】奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図10】1番目、q番目及びk番目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
【図12】実施の形態4の制御方法が用いられる場合のビート信号の周波数スペクトラムの一例を簡易的に示す説明図である。
【図13】特許文献1に開示されているFMCWレーダ装置を示す構成図である。
【図14】送信波及び受信波の周波数の時間変化を示す説明図である。
【図15】ビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【図16】PLLで構成されているFMCW信号源を示す構成図である。
【図17】従来のPLLで構成されている回路方式において、FM変調時の周波数変移状態を示す説明図である。
【図18】ビート信号の目標信号成分と、不要成分であるスプリアスの周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置を示す構成図である。
図1において、FMCW信号源1はPLLで構成されており、FM変調された高周波信号を発生する。
即ち、FMCW信号源1は、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返され、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっている。なお、FMCW信号源1は高周波信号発生手段を構成している。
【0025】
方向性結合器2はFMCW信号源1から発生された高周波信号を分配して、一方の高周波信号を送信アンテナ3に出力し、他方の高周波信号をミキサ5に出力する。
送信アンテナ3は方向性結合器2から出力された高周波信号を、FMCWレーダ装置の前方の空間に送信波として放射する。なお、送信アンテナ3は信号送信手段を構成している。
【0026】
受信アンテナ4はFMCWレーダ装置の前方の空間に目標物が存在する場合、その目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信して、その受信波(受信波は、送信波より時間遅れを生じている)をミキサ5に出力する。なお、受信アンテナ4は信号受信手段を構成している。
ミキサ5は方向性結合器2から出力された送信波と受信アンテナ4から出力された受信波の差周波を有するビート信号を生成し、そのビート信号をAD変換器6に出力する。
なお、方向性結合器2及びミキサ5からビート信号生成手段が構成されている。
【0027】
AD変換器6はミキサ5から出力されたビート信号をアナログ信号形式からデジタル信号形式に変換して周波数分析部7に出力する。
周波数分析部7はAD変換器6によりデジタル化されたビート信号に対するFFT等の処理を実行して、そのビート信号の周波数スペクトラムを算出する。
距離・速度算出部8は周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、電力レベルが所定の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出する。
なお、AD変換器6、周波数分析部7及び距離・速度算出部8から距離速度算出手段が構成されている。
【0028】
図2はPLLで構成されているFMCW信号源1を示す構成図である。
図2において、基準信号生成部11(図中、「REF」と表記)は基準信号を生成して、その基準信号を位相周波数検出器12に出力する。
位相周波数検出器12(図中、「PFD」と表記)は基準信号生成部11から出力された基準信号と分周器17により分周された高周波信号の位相差を検出する。
チャージポンプ13(図中、「CP」と表記)は位相周波数検出器12により検出された位相差を電圧信号に変換し、その電圧信号をローパスフィルタ14(図中、「LF」と表記)に出力する。
ローパスフィルタ14はチャージポンプ13から出力された電圧信号に含まれている不要な短周期の変動を遮断する。
【0029】
電圧制御発振器15(図中、「VCO」と表記)はローパスフィルタ14から出力された電圧信号に対応する周波数の高周波信号を発振する。
分周数制御回路16(図中、「CNT」と表記)はアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なるように、分周器17の分周数を設定する。
分周器17(図中、「DIV」と表記)は分周数制御回路16により設定された分周数で、電圧制御発振器15から出力された高周波信号を分周し、分周後の高周波信号を位相周波数検出器12に出力する。
【0030】
次に動作について説明する。
この実施の形態1のFMCWレーダ装置は、従来のFMCWレーダ装置と比較して、FMCW信号源1から発生される高周波信号が相違している。
FMCW信号源1及び距離・速度算出部8以外の部分は、従来のFMCWレーダ装置と同様であるため、ここでは、FMCW信号源1及び距離・速度算出部8の処理内容を説明する。
【0031】
図3はこの発明の実施の形態1によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
ここでは、目標物との相対速度Vrがゼロである条件の下で、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープにおける周波数の切替ステップ数と、ダウンチャープにおける周波数の切替ステップ数とを変えている。
即ち、FMCW信号源1の分周数制御回路16は、アップチャープでは、図3に示すように、時間T2U毎に、F2Uずつステップ状にNU回だけ設定周波数を切り替えている。NUは、1より大きい任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数NU、時間T2U、周波数F2Uが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(10),(11)の関係を満足するように設定する。
F1=NU×F2U (10)
T1=NU×T2U (11)
【0032】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_U、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_Uとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_Uとスプリアス発生周波数Fsp_Uの関係は、下記の式(12)で表すことができる。
【0033】
一方、ダウンチャープでは、図3に示すように、時間T2D毎に、F2Dずつステップ状にND回だけ設定周波数を切り替えている。NDは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、NUと異なる値である。
分周数制御回路16では、ステップ数ND、時間T2D、周波数F2Dが、周波数変動範囲F1、ダウンチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(13),(14)の関係を満足するように設定する。
F1=ND×F2D (13)
T1=ND×T2D (14)
その結果、時間T2Dは時間T2Uと異なる時間となり、周波数F2Dは周波数F2Uと異なる周波数となる。
【0034】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_D、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_Dとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_Dとスプリアス発生周波数Fsp_Dの関係は、下記の式(15)で表すことができる。
【0035】
図4はアップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
目標物との相対速度Vrがゼロである場合、図4に示すように、アップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Uと、ダウンチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Dは同一になる。
一方、アップチャープとダウンチャープでは、設定周波数の切替間隔が異なるため、不要成分であるアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_Uと、ダウンチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_Dは異なる。
【0036】
したがって、距離・速度算出部8では、周波数分析部7がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、従来例と同様に、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出するが、アップチャープのスペクトラムと、ダウンチャープのスペクトラムとを比較することで、ピーク周波数が同一のスペクトルは目標信号成分のピーク周波数であって、ピーク周波数が異なるスペクトルは不要成分のピーク周波数であると判別することができる。
このため、距離・速度算出部8は、従来例と異なり、周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外(目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外)し、ピーク周波数が同一のスペクトラムだけから距離を算出することで、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避するようにしている。
【0037】
なお、距離・速度算出部8は、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、アップチャープにおけるスペクトラムと、ダウンチャープにおけるスペクトラムとを合算して平均化するようにする。
これにより、ビート信号の目標信号成分の電力レベルは、合算・平均化前と同等であるが、不要成分の電力レベルは、合算・平均化前の半分になる。
図5はアップチャープ及びダウンチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
このように、不要成分の電力レベルが合算・平均化前の半分になることで、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる。
【0038】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているように構成したので、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離を算出することができる効果を奏する。
【0039】
また、この実施の形態1によれば、距離・速度算出部8がアップチャープでのスペクトラムとダウンチャープでのスペクトラムを比較して、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外し、ピークの周波数が同一のスペクトラムから目標物までの距離を算出するように構成したので、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避することができる効果を奏する。
【0040】
また、この実施の形態1によれば、距離・速度算出部8が、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、アップチャープにおけるスペクトラムと、ダウンチャープにおけるスペクトラムとを合算して平均化するように構成したので、ピーク検出用の閾値を下げることができるようになり、その結果、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる効果を奏する。
【0041】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、目標物との相対速度Vrがゼロのときにビート信号の目標信号成分を正しく検出するために、アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているものを示したが、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合には、アップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Uと、ダウンチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Dとが異なる。
【0042】
上記実施の形態1の方法では、ビート信号の目標信号成分を正しく検出するには、アップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Uと、ダウンチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_Dとが同一である必要があるため、相対速度Vrがゼロでない場合には、目標信号成分を正しく検出することができない。
そこで、この実施の形態2では、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合に、ビート信号の目標信号成分と不要成分とを判別することができるようにするため、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープとダウンチャープを交互に繰り返す際、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なるようにしている。
具体的には、以下の通りである。
【0043】
図6はこの発明の実施の形態2によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、奇数回目のアップチャープでは、時間T20D毎に、F2ODずつステップ状にNOD回だけ設定周波数を切り替えている。NODは、1より大きい任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数NOD、時間T2OD、周波数F2ODが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(16),(17)の関係を満足するように設定する。
F1=NOD×F2OD (16)
T1=NOD×T2OD (17)
【0044】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_OD、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_ODとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_ODとスプリアス発生周波数Fsp_ODの関係は、下記の式(18)で表すことができる。
【0045】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、偶数回目のアップチャープでは、時間T2EV毎に、F2EVずつステップ状にNEVだけ設定周波数を切り替えている。NEVは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、NODと異なる値である。
分周数制御回路16では、ステップ数NEV、時間T2EV、周波数F2EVが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(19),(20)の関係を満足するように設定する。
F1=NEV×F2EV (19)
T1=NEV×T2EV (20)
その結果、時間T2EVは時間T2ODと異なる時間となり、周波数F2EVは周波数F2ODと異なる周波数となる。
【0046】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_EV、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_EVとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_EVとスプリアス発生周波数Fsp_EVの関係は、下記の式(21)で表すことができる。
【0047】
図7は奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
目標物との相対速度Vrがゼロでないとき、奇数回目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_ODと、偶数回目回目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_EVは同一になる。
一方、奇数回目のアップチャープと偶数回目回目のアップチャープでは、設定周波数の切替間隔が異なるため、不要成分である奇数回目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_ODと、偶数回目回目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_EVは異なる。
【0048】
したがって、距離・速度算出部8では、周波数分析部7がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、従来例と同様に、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出するが、奇数回目のアップチャープのスペクトラムと、偶数回目のアップチャープのスペクトラムとを比較することで、ピーク周波数が同一のスペクトルは目標信号成分のピーク周波数であって、ピーク周波数が異なるスペクトルは不要成分のピーク周波数であると判別することができる。
このため、距離・速度算出部8は、従来例と異なり、周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外(目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外)し、ピーク周波数が同一のスペクトラムだけから距離及び相対速度を算出することで、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避するようにしている。
【0049】
なお、距離・速度算出部8は、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、奇数回目のアップチャープにおけるスペクトラムと、偶数回目のアップチャープにおけるスペクトラムとを合算して平均化するようにする。
これにより、ビート信号の目標信号成分の電力レベルは、合算・平均化前と同等であるが、不要成分の電力レベルは、合算・平均化前の半分になる。
図8は奇数回目のアップチャープ及び偶数回目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
このように、不要成分の電力レベルが合算・平均化前の半分になることで、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる。
【0050】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているように構成したので、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合でも、実際には存在していない目標物を誤検出することなく、遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができる効果を奏する。
【0051】
なお、この実施の形態2では、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているものを示したが、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているようにしても、同様の原理で、目標物との相対速度Vrがゼロでない場合に、ビート信号の目標信号成分と不要成分とを判別することができる。
【0052】
また、この実施の形態2では、アップチャープとダウンチャープが交互に繰り返されるものを示したが、アップチャープだけが繰り返される場合には、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、ダウンチャープだけが繰り返される場合には、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0053】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、FMCW信号源1の分周数制御回路16によりPLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるものを示したが、PLLの設定周波数の切替間隔は2種類である。
PLLの設定周波数の切替間隔が2種類である場合、上述したように、スペクトラムを合算して平均化することで、不要成分の電力レベルを半分まで低減することができる。
【0054】
この実施の形態3では、不要成分の電力レベルを半分より小さい電力レベルまで下げることができるようにするために、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープとダウンチャープを交互にK回ずつ実行する際、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしている。
具体的には、以下の通りである。
【0055】
図9はこの発明の実施の形態3によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
ここでは、アップチャープとダウンチャープを交互にK回ずつ実行し、アップチャープにおけるPLLの設定周波数を切り替えるステップ数をKパターンとしている。Kは、1より大きい任意の自然数である。
【0056】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、1番目のアップチャープでは、時間T2k1毎に、F2k1ずつステップ状にNk1回だけ設定周波数を切り替えている。Nk1は、1より大きい任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数Nk1、時間T2k1、周波数F2k1が、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(22),(23)の関係を満足するように設定する。
F1=Nk1×F2k1 (22)
T1=Nk1×T2k1 (23)
【0057】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_k1、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_k1とすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_k1とスプリアス発生周波数Fsp_k1の関係は、下記の式(24)で表すことができる。
【0058】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、k番目のアップチャープでは、時間T2kk毎に、F2kkずつステップ状にNkk回だけ設定周波数を切り替えている。Nkkは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、Nk1と異なる値である。
分周数制御回路16では、ステップ数Nkk、時間T2kk、周波数F2kkが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(25),(26)の関係を満足するように設定する。
F1=Nkk×F2kk (25)
T1=Nkk×T2kk (26)
その結果、時間T2kkは時間T2k1と異なる時間となり、周波数F2kkは周波数F2k1と異なる周波数となる。
【0059】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_kk、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_kkとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_kkとスプリアス発生周波数Fsp_kkの関係は、下記の式(27)で表すことができる。
【0060】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、q番目のアップチャープでは、時間T2kq毎に、F2kqずつステップ状にNkq回だけ設定周波数を切り替えている。Nkqは、1より大きい任意の自然数であり、かつ、Nk1及びNkkと異なる値である。
また、qは1<q<kの範囲にある任意の自然数である。
分周数制御回路16では、ステップ数Nkq、時間T2kq、周波数F2kqが、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(28),(29)の関係を満足するように設定する。
F1=Nkq×F2kq (28)
T1=Nkq×T2kq (29)
その結果、時間T2kqは時間T2k1,T2kkと異なる時間となり、周波数F2kqは周波数F2k1,F2kkと異なる周波数となる。
【0061】
このとき、ビート信号における目標信号成分のピーク周波数をFb_kq、不要成分であるスプリアス発生周波数をFsp_kqとすると、目標信号成分のピーク周波数Fb_kqとスプリアス発生周波数Fsp_kqの関係は、下記の式(30)で表すことができる。
【0062】
図10は1番目、q番目及びk番目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトルを簡易的に示す説明図である。
1番目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_k1と、q番目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_kqと、k番目のアップチャープでの目標信号成分のピーク周波数Fb_kkは同一になる。
一方、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているため、不要成分である1番目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_k1と、q番目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_kqと、k番目のアップチャープでのスプリアス発生周波数Fsp_kkは異なる。
【0063】
したがって、距離・速度算出部8では、周波数分析部7がビート信号の周波数スペクトラムを算出すると、従来例と同様に、その周波数スペクトラムの中で、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出し、そのピーク周波数から目標物までの距離及び目標物との相対速度を算出するが、K回のアップチャープにおけるスペクトラムを比較することで、ピーク周波数が同一のスペクトルは目標信号成分のピーク周波数であって、ピーク周波数が異なるスペクトルは不要成分のピーク周波数であると判別することができる。
このため、距離・速度算出部8は、従来例と異なり、周波数分析部7により算出されたビート信号の周波数スペクトラムの中で、ピーク周波数が異なるスペクトラムを除外(目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外)し、ピーク周波数が同一のスペクトラムだけから距離及び相対速度を算出することで、実際には存在していない目標物までの距離等を誤って算出する状況の発生を回避するようにしている。
【0064】
なお、距離・速度算出部8は、電力レベルがピーク検出用の閾値より高いスペクトラムのピーク周波数を検出する際、K回のアップチャープにおけるスペクトラムを合算して平均化するようにする。
これにより、ビート信号の目標信号成分の電力レベルは、合算・平均化前と同等であるが、不要成分の電力レベルは、合算・平均化前の1/Kになる。
このため、ビート信号の目標信号成分と不要成分の電力比は、1回のアップチャープで得られる結果のK倍となる。
よって、チャープ回数Kを増やすことで、スペクトラム合算後の不要成分の電力レベルを、半分より小さい電力レベルまで低減することができる。
【0065】
図10は1番目、q番目及びk番目のアップチャープにおけるビート信号の周波数スペクトル及び合算・平均化後の周波数スペクトルの一例を簡易的に示す説明図である。
このように、不要成分の電力レベルが合算・平均化前の1/Kになることで、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、目標信号成分のピーク周波数を検出することができる。
【0066】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、FMCW信号源1がPLLで構成されて、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互にK回ずつ実行されるものであり、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているように構成したので、上記実施の形態1,2と同様の効果を奏するほか、ピーク検出用の閾値を更に下げることができるため、更に遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができる効果を奏する。
【0067】
この実施の形態3では、複数の目標物が存在しているために、ビート信号の目標信号成分のピーク周波数と、不要成分であるスプリアス発生周波数が複数組生じ、その結果、チャープのステップ条件によって、不要成分であるスプリアス発生周波数のピークが重なることがある場合でも、チャープ回数Kを増やすことで、スペクトラム合算後の不要成分の電力レベルを低減することができる。
【0068】
なお、この実施の形態3では、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているものを示したが、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしても、同様の原理で、ビート信号の目標信号成分と不要成分とを判別することができるとともに、スペクトラム合算後の不要成分の電力レベルを合算・平均化前の1/Kにすることができる。
【0069】
また、この実施の形態3では、アップチャープとダウンチャープが交互に繰り返されるものを示したが、アップチャープだけが繰り返される場合には、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、ダウンチャープだけが繰り返される場合には、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっているようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0070】
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3では、FMCW信号源1の分周数制御回路16によりPLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるものを示したが、アップチャープ期間中又はダウンチャープ期間中には、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられずに一定である。
この実施の形態4では、FMCW信号源1の分周数制御回路16が、アップチャープ期間中又はダウンチャープ期間中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしている。
具体的には、以下の通りである。
【0071】
図11はこの発明の実施の形態4によるFMCWレーダ装置におけるPLLの設定周波数の切替制御方法の一例を示す説明図である。
ここでは、1つのアップチャープの実行中に、各周波数切替ステップで、切り替える周波数幅を変えるようにしている。
【0072】
FMCW信号源1の分周数制御回路16は、1つのアップチャープの実行中に、時間T2G(g)毎に、F2G(g)ずつステップ状にH回だけ設定周波数を切り替えている。Hは、1より大きい任意の自然数であり、gは1からHまでの連続した自然数である。
分周数制御回路16では、時間T2G(g)、周波数F2G(g)が、周波数変動範囲F1、アップチャープ区間の時間T1に対して、下記の式(31),(32)の関係を満足するように設定する。
【0073】
また、分周数制御回路16は、各周波数切替ステップにおけるT2G(g)、F2G(g)が、下記の式(33)の関係を満足するように設定し、各周波数切替ステップにおける周波数変化の傾きを一定にする。
【0074】
さらに、分周数制御回路16は、各周波数切替ステップにおけるF2G(g)が、下記の式(34)の関係を満足するように、全て異なる値に設定する。
【0075】
図12は実施の形態4の制御方法が用いられる場合のビート信号の周波数スペクトラムの一例を簡易的に示す説明図である。
1つのアップチャープの実行中に、各周波数切替ステップで、切り替える周波数幅を変えた場合、アップチャープ全体での周波数変化の傾きは一定であるため、従来の制御方法と同様に、周波数Fb_Uの目標信号成分のピークが生じる。
一方、1つのアップチャープの実行中におけるPLLの設定周波数の切替間隔が一定でないため、アップチャープ時に発生するスプリアスが拡散する。
その結果、ビート信号の目標信号成分のピーク電力レベルは、従来の制御方法と同等となるが、不要成分であるスプリアスのスペクトラムは拡散するため、不要成分の電力レベルを従来の制御方法と比べて低減することができる。
【0076】
この実施の形態4の制御方法が用いられる場合でも、上記実施の形態1〜3と同様に、ピーク検出用の閾値を下げることができるため、遠方に存在している目標物についても、正確に距離及び相対速度を算出することができる。
【0077】
なお、この実施の形態4では、式(34)において、各周波数切替ステップにおけるF2G(g)が全て異なる値に設定されるものを示したが、いくつかの周波数切替ステップにおけるF2G(g)が同一のものであっても、不要成分の電力レベルが、遠方にある目標物からの受信波によるピーク電力レベルより低減することができれば、同等の効果を得ることができる。
【0078】
この実施の形態4では、1つのアップチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるものを示したが、1つのダウンチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしても、同様の原理で、同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、この実施の形態4では、アップチャープとダウンチャープが交互に繰り返されるものを示したが、アップチャープだけが繰り返される場合には、1つのアップチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、ダウンチャープだけが繰り返される場合には、1つのダウンチャープの実行中に、PLLの設定周波数の切替間隔が切り替えられるようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0080】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 FMCW信号源(高周波信号発生手段)、2 方向性結合器(ビート信号生成手段)、3 送信アンテナ(信号送信手段)、4 受信アンテナ(信号受信手段)、5 ミキサ(ビート信号生成手段)、6 AD変換器(距離速度算出手段)、7 周波数分析部(距離速度算出手段)、8 距離・速度算出部(距離速度算出手段)、11 基準信号生成部、12 位相周波数検出器、13 チャージポンプ、14 ローパスフィルタ、15 電圧制御発振器、16 分周数制御回路、17 分周器、101 FMCW信号源、102 方向性結合器、103 送信アンテナ、104 受信アンテナ、105 ミキサ、106 AD変換器、107 周波数分析部、108 距離・速度算出部、111 基準信号生成部、112 位相周波数検出器、113 チャージポンプ、114 ループフィルタ、115 電圧制御発振器、116 分周数制御回路、117 分周器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、上記アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、上記ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項2】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項3】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項4】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープが繰り返されるものであり、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項5】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープが繰り返されるものであり、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項6】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互にK回ずつ実行されるものであり、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項7】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互にK回ずつ実行されるものであり、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項8】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープがK回繰り返されるものであり、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項9】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープがK回繰り返されるものであり、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項10】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、上記アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、アップチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項11】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、上記ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項12】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープが繰り返されるものであり、上記アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、アップチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項13】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープが繰り返されるものであり、上記ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項14】
距離速度算出手段は、複数回のチャープ動作時にビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムを比較して、目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外することを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載のFMCWレーダ装置。
【請求項15】
距離速度算出手段は、複数回のチャープ動作時にビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムを比較して、ピークの周波数が異なるスペクトラムを除外し、ピークの周波数が同一のスペクトラムから目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出することを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載のFMCWレーダ装置。
【請求項16】
距離速度算出手段は、複数回のチャープ動作時にビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムを合算して平均化することを特徴とする請求項1から請求項15のうちのいずれか1項記載のFMCWレーダ装置。
【請求項1】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが実行されるものであり、上記アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、上記ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項2】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項3】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項4】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープが繰り返されるものであり、奇数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項5】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープが繰り返されるものであり、奇数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、偶数番目のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔と異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項6】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互にK回ずつ実行されるものであり、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項7】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互にK回ずつ実行されるものであり、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項8】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープがK回繰り返されるものであり、K回のアップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項9】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープがK回繰り返されるものであり、K回のダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が相互に異なっていることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項10】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、上記アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、アップチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項11】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープと、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープとが交互に繰り返されるものであり、上記ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項12】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に上昇するアップチャープが繰り返されるものであり、上記アップチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、アップチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項13】
周波数変調されている高周波信号を発生する高周波信号発生手段と、上記高周波信号発生手段により発生された高周波信号を空間に放射する信号送信手段と、空間に存在する目標物に反射して戻ってくる上記高周波信号を受信する信号受信手段と、上記信号送信手段から放射された高周波信号と上記信号受信手段により受信された高周波信号の差周波を有するビート信号を生成するビート信号生成手段と、上記ビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムから上記目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出する距離速度算出手段とを備えたFMCWレーダ装置において、
上記高周波信号発生手段はPLLで構成されて、上記高周波信号の周波数の時間変化が直線的に下降するダウンチャープが繰り返されるものであり、上記ダウンチャープにおけるPLLの設定周波数の切替間隔が、ダウンチャープ中に切り替えられることを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項14】
距離速度算出手段は、複数回のチャープ動作時にビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムを比較して、目標物に係るスペクトラム以外のスペクトラムを除外することを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載のFMCWレーダ装置。
【請求項15】
距離速度算出手段は、複数回のチャープ動作時にビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムを比較して、ピークの周波数が異なるスペクトラムを除外し、ピークの周波数が同一のスペクトラムから目標物までの距離及び上記目標物との相対速度を算出することを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載のFMCWレーダ装置。
【請求項16】
距離速度算出手段は、複数回のチャープ動作時にビート信号生成手段により生成されたビート信号のスペクトラムを合算して平均化することを特徴とする請求項1から請求項15のうちのいずれか1項記載のFMCWレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−202699(P2012−202699A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64539(P2011−64539)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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