説明

Fasリガンドの変異体形態およびその使用

【課題】本発明は、FasリガンドムテインおよびキメラをコードするDNAならびにコードされるタンパク質を提供する。変異体またはキメラFasリガンドを発現する形質転換した細胞を産生するためのDNAおよびベクターの提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、FasリガンドムテインおよびキメラをコードするDNAならびにコードされるタンパク質、変異体またはキメラFasリガンドを発現する形質転換した細胞を産生するためのDNAおよびベクターを提供する。本発明はまた、Fasリガンド治療剤を投与することによって自己免疫疾患また移植拒絶について患者を処置するための方法に関する。治療剤は、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または小分子である。ポリペプチドは、全長Fasリガンドポリペプチド、またはその生物学的に活性な改変体、誘導体、部分、融合物、もしくはペプチドを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Fasリガンドアゴニストとして作用するFasリガンドムテイン(mutein)およびキメラタンパク質、ならびにそれをコードするDNAに関する。より特定すると、本発明は、Fasリガンドの新規形態に関し、これは、形質転換された宿主細胞で発現される場合、従来型IIプロホルモン形態で表面結合するが、表面から切断され得ない。Fasリガンドのこれらの非切断性形態およびそれを発現する形質転換された宿主細胞は、診断アッセイにならびにインビトロおよびインビボの両方でFas発現細胞(例えば、活性化T細胞および活性化B細胞)の集団を減少させることに有用である。本発明のFasリガンドおよび形質転換された宿主細胞は、移植拒絶および当該技術分野で周知である種々の自己免疫疾患の処置において薬学的薬剤として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腫瘍壊死因子スーパーファミリーは、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーの対応するメンバーのレセプターを結合するリガンドを含む。このようなレセプタースーパーファミリーのメンバーには、例えば、腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)(I型すなわち55KすなわちTNFR60またはII型すなわち75KすなわちTNFR80)、CD30、神経成長因子レセプター、CD27、CD40、CD95/APO-1またはFas、CD120a、CD120b、リンホトキシンβレセプター(LTβR)、およびTRAILレセプターが挙げられる。このファミリーのレセプターは膜結合し、そして多様な細胞性応答を媒介する可溶性または膜結合リガンドを認識する。これらのレセプターに対応するリガンドは、いくつかの場合には膜または可溶性形態を含み、そして例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)、CD30リガンド、神経成長因子、CD70/CD27リガンド、CD40リガンド、Fasリガンド、およびTNF関連アポトーシス誘導リガンドTRAIL(Wileyら,Immunity 3:673-82 (1995)に記載のとおり)を含む。Fasリガンドを含む、スーパーファミリーのリガンドは、Lotzら, J. ofLeukocyte Biol 60: 1-7 (1996)(これは参考として本明細書に援用される)に記載のようなゼリーロール(jelly-roll)βサンドイッチを形成するβ鎖を有するII型膜貫通糖タンパク質である。自己免疫疾患の処置は、分子生物学および医学的研究に固有の挑戦を示す。自己免疫疾患は、5と7%との間の人口に罹患し、Kuby,IMMUNOLOGY, (W.H. Freeman, NY 1992)に記載のように、しばしば慢性的な消耗性疾患を引き起こす。
【0003】
自己免疫応答の厳密な詳細は完全には理解されていないが、抗原性刺激の結果は、抗体形成または活性化T細胞のいずれにせよ、あるいは耐性は、THE MERCK MANUAL, 第16版 (Merck & Co. Inc. 1992)に記載のように、自己抗原または外因性抗原のいずれかに対する反応の同じ因子に依存するようである。4つのクラスの自己抗原もまた、THEMERCK MANUALに記載されている。クラス1は、免疫系からのそれらの隔離によって、一旦分泌された体内で「自己」として認識されない体の細胞の細胞内領域からの抗原である。例えば、交感性眼炎は、眼抗原の放出、および抗原に対するその後の自己反応を引き起こす。クラス2は、例えば、化学薬品が自己抗原に結合し、そして例えば、接触皮膚炎および薬物に対する過敏性において、「外来」反応を生じる場合、化学的、物理的、および生物学的変更によって免疫原性になり得る自己抗原によって表される。クラス3は、自己抗原と交叉反応し、そして例えば、狂犬病ワクチン接種後の脳炎の発生とともに示されるような自己抗原への自己反応を誘導する外来抗原によって表される。クラス4は、リンパ腫を有する哺乳動物で見られる自己免疫現象のような、免疫非コンピテント細胞における変異によって表される。最後に、自己免疫反応は、不明な抗原(例えば、ウイルス)に対する免疫応答後に二次的に発現する付帯徴候であり得る。すべての自己免疫疾患は、免疫系の併発を有し、そして多くは、活性化B細胞、活性化T細胞、または両方のいずれかを含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
種々の改良的および軽減的治療は、いくつかの自己免疫疾患について存在するが、そして自己免疫疾患は自発的に緩和に戻り得るが、効果的処置は、さらに、自己免疫疾患を処置するために開発されなければならない。自己免疫疾患の分子生物学を標的する新しい方法および新しい薬剤の発見によって自己免疫疾患の効果的処置を開発するための医学および臨床的調査の能力を進展させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨
本発明は、複数の局面を有する。第1の局面では、本発明は、FasリガンドムテインおよびFasリガンドキメラを含むFasリガンドの非切断性形態、ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドに関する。好ましくは、Fasリガンド欠失ムテインは、配列番号12の約残基139〜残基146から始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に非切断性のペプチド結合によって連結される配列番号12の残基129までの有効長のFasリガンドの膜貫通領域を含み、そしてFasリガンドキメラは、配列番号12の約残基139〜残基146から始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に非切断性のペプチド結合によって連結される細胞表面タンパク質の膜貫通領域を含む。
【0006】
第2の局面は、膜結合した場合に実質的に非切断性であるFasリガンドムテインまたはキメラをコードする遺伝子に作動可能に連結したプロモーターを含むベクター(DNAまたはRNA)に関する。好ましくは、ベクターは、Fasリガンド欠失ムテインまたはFasリガンドキメラをコードする組換え遺伝子に作動可能に連結したプロモーターを含み、Fasリガンド欠失ムテインは、配列番号12の約残基139〜残基146から始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に非切断性のペプチド結合によって連結される配列番号12の残基129までの有効長のFasリガンドの膜貫通領域を含み、このFasリガンドキメラは、配列番号12の約残基139〜残基146から始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に非切断性のペプチド結合によって連結される細胞表面タンパク質の膜貫通領域を含む。
【0007】
第3の局面は、形質転換された宿主細胞に関し、ここで宿主細胞は、細胞で発現される場合に膜に結合したままであるFasリガンドムテインまたはキメラタンパク質をコードするベクター(DNAまたはRNA)で形質転換される。
【0008】
第4の局面は、上記の宿主細胞およびキャリアを含む組成物に関する。好ましい実施態様では、組成物は、薬学的組成物であり、そしてキャリアは、薬学的に受容可能なキャリアである。
【0009】
本発明の他の局面は、試料中のFasを発現する細胞の存在を決定するための方法に関し、この方法は、
a)表面結合した組換えFasリガンドを有する形質転換された細胞を提供する工程であって、この表面結合した組換えFasリガンドが切断に抵抗性である、工程;
b)表面結合したFasを有すると疑われる細胞を含む試料と、上記形質転換された細胞とを接触させて、細胞混合物を得る工程;
c)上記細胞結合したFasを、上記表面結合した組換えFasリガンドに結合させる工程;および
d)ロゼット形成または凝集について上記細胞混合物を観察する工程であって、これによって、上記試料から上記形質転換された細胞への細胞の結合が、上記試料中の細胞の表面上のFasの存在を示す、工程、
を包含する。
【0010】
他の局面では、本発明は、Fas発現細胞の集団を減少させる方法に関し、この方法は、
a)表面結合した組換えFasリガンドを有する形質転換された細胞を提供する工程であって、この表面結合した組換えFasリガンドが切断に対して抵抗性である、工程;および
b)Fas発現細胞の集団をこの形質転換された細胞と接触させる工程であって、これによってこのFasリガンドがこのFas発現細胞上のFasに結合し、この集団が減少するように、このように結合したFas発現細胞にアポトーシス起こさせる、工程、
を包含する。上記の方法の好ましい実施態様では、Fas発現細胞は、活性化T細胞および/またはB細胞であり、そして上記形質転換された細胞は、この活性化T細胞および/またはB細胞によって認識される第2のリガンドを発現する。
【0011】
他の局面では、本発明は、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ペプチド、ペプトイド、または有機低分子アゴニストを含み得るFasリガンド治療剤を提供する工程、および有効量のFasリガンド治療剤を自己免疫疾患を有する哺乳動物に投与する工程による、活性化T細胞または活性化B細胞または両方を呈する自己免疫疾患を有する患者を処置する方法に関する。
【0012】
本発明の別の局面は、Fasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現し得る遺伝子送達ビヒクルを含む組成物である。
【0013】
さらに、本発明の別の局面は、自己免疫疾患を処置するための治療剤であり、ここで、この治療剤は、Fasリガンドに由来し、そしてこの薬剤を自己免疫疾患を有する哺乳動物に投与するために薬学的に受容可能なキャリアもまた有する。
【0014】
本発明の別の局面は、天然ののFasリガンドよりも長く細胞膜に残存し得るFasリガンドポリペプチドである。
【0015】
本発明の別の局面は、天然ののFasリガンドよりも長く細胞膜に残存し得るFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0016】
本発明の別の局面は、全長Fasリガンドポリペプチド、Fasリガンドポリペプチドの生物学的に活性な部分、膜結合したFasリガンドポリペプチド、または可溶性Fasリガンドポリペプチドをコードする配列のいずれかであるFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞である。
【0017】
本発明の別の局面は、形質転換された細胞がまた、活性化T細胞または活性化B細胞によって認識される第2のリガンドを有する、膜に結合したままである非切断性Fasリガンドポリペプチドを発現するように細胞を形質転換する工程、および活性化T細胞または活性化B細胞の集団にこの形質転換された細胞を再導入する工程を包含する、活性化T細胞または活性化B細胞の集団を減少させるための方法である。
【0018】
したがって、本願は、以下を提供する。
1.Fasリガンド欠失ムテインおよびFasリガンドキメラからなる群から選択されるFasリガンドアゴニストをコードするDNAであって、該Fasリガンド欠失ムテインが、プロFasリガンド(配列番号12)の残基130位から始まる10〜17アミノ酸残基の連続セグメントを欠くプロFasリガンドの欠失ムテインであって、該Fasリガンドキメラが、細胞表面タンパク質の切断不能な膜貫通ドメインのカルボキシ末端とFasリガンドの細胞外ドメインのアミノ末端との間で融合された融合産物に対応するアミノ酸配列を有する融合タンパク質であって、該細胞外ドメインが、プロFasリガンドの残基130位から始まる10〜17アミノ酸残基の連続セグメントを欠く、DNA。
2.Fasリガンド欠失ムテインまたはFasリガンドキメラをコードするDNAであって、該Fasリガンド欠失ムテインが、配列番号12の残基139あたりから残基146あたりで始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に切断不能なペプチド結合によって連結されている、有効長の配列番号12の残基129までのFasリガンドの膜貫通領域を含み、該Fasリガンドキメラが、配列番号12の残基139あたりから残基146あたりで始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に切断不能なペプチド結合によって連結される細胞表面タンパク質の膜貫通領域を含む、DNA。
3.配列番号5または配列番号7のDNA。
4.配列番号6または配列番号8のFasリガンドアゴニストをコードするDNA。
5.Fasリガンド欠失ムテインまたはFasリガンドキメラをコードする組換え遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターであって、該Fasリガンド欠失ムテインが、配列番号12の残基139あたりから残基146あたりで始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に切断不能なペプチド結合によって連結されている、有効長の配列番号12の残基129までのFasリガンドの膜貫通領域を含み、該Fasリガンドキメラが、配列番号の残基139あたりから残基146あたりで始まるヒトFasリガンドのFas結合ドメインへの実質的に切断不能なペプチド結合によって連結される細胞表面タンパク質の膜貫通領域を含む、ベクター。
6.前記組換え遺伝子が前記Fasリガンド欠失ムテインをコードする、項目5に記載のベクター。
7.前記Fasリガンド欠失ムテインが、配列番号12における番号付に関して、130-139、130-140、130-141、130-142、130-143、130-144、130-145、130-146、131-140、131-141、131-142、131-143、131-144、131-145、および131-146からなる群から選択される欠失を有する、項目6に記載のベクター。
8.前記ベクターが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ベクターからなる群から選択される、項目7に記載のベクター。
9.前記Fasリガンド欠失ムテインが130-142欠失を有する、項目7に記載のベクター。
10.前記Fasリガンド欠失ムテインが130-145欠失を有する、項目7に記載のベクター。
11.前記Fasリガンドキメラが、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのメンバーから選択される膜貫通ドメインを有する、項目6に記載のベクター。
12.前記膜貫通ドメインが、腫瘍壊死因子レセプター、CD30、神経成長因子レセプター、CD27、CD40、CD120a、CD120b、リンホトキシンβレセプター、およびTRAILレセプターからなる群のメンバーから選択される、項目11に記載のベクター。
13.天然のFasリガンドより長く細胞膜上に残留し得るFasリガンドポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
14.Fasリガンド欠失ムテインおよびFasリガンドキメラからなる群から選択されるFasリガンドアゴニストであって、該Fasリガンド欠失ムテインが、プロFasリガンド(配列番号12)の残基130位から始まる10〜17アミノ酸残基の連続セグメントを欠くプロFasリガンドの欠失ムテインであって、該Fasリガンドキメラが、細胞表面タンパク質の切断不能な膜貫通ドメインのカルボキシ末端とFasリガンドの細胞外ドメインのアミノ末端との間で融合された融合産物に対応するアミノ酸配列を有する融合タンパク質であって、該細胞外ドメインが、プロFasリガンドの残基130位から始まる10〜17アミノ酸残基の連続セグメントを欠く、アゴニスト。
15.前記膜結合Fasリガンドムテインである、項目14に記載のFasリガンドアゴニスト。
16.前記膜結合Fasリガンドムテインが、配列番号6または配列番号10のアミノ酸配列と同様であるアミノ酸配列を有する、項目15に記載のFasリガンドアゴニスト。
17.前記膜結合Fasリガンドキメラからなる、項目14に記載のFasリガンドアゴニスト。
18.前記キメラが、Fasリガンドの細胞外ドメインに融合された切断不能な膜結合タンパク質の細胞内および/または膜貫通ドメインを含み、該細胞外ドメインが配列番号12のプロFasリガンドの130位以上の残基で開始する、項目14に記載のFasリガンドアゴニスト。
19.前記キメラが、CD30の膜貫通ドメインのカルボキシ末端と残基130位〜147位で始まるFasリガンドフラグメントのアミノ末端との間の融合産物に対応するアミノ酸配列を有する、項目18に記載のFasリガンドアゴニスト。
20.前記キメラが、CD30の残基1〜86がそのアミノ末端で、Fasリガンドの残基130〜281とそのカルボキシ末端で融合されたものに対応するアミノ酸配列を有する、項目19に記載のFasリガンドアゴニスト。
21.前記キメラが、CD40の膜貫通ドメインのカルボキシ末端と残基130位〜147位で開始するFasリガンドフラグメントのアミノ末端との間の融合産物である、項目18に記載のFasリガンドアゴニスト。
22.前記キメラが、CD40の残基1〜107がそのアミノ末端で、Fasリガンドの残基130〜281とそのカルボキシ末端で融合されたものに対応するアミノ酸配列を有する、項目21に記載のFasリガンドアゴニスト。
23.前記膜結合Fasリガンドムテインまたは前記膜結合Fasリガンドキメラが宿主細胞の膜に結合している、項目14に記載のFasリガンドアゴニスト。
24.前記宿主細胞がヒト宿主細胞である、項目23に記載のFasリガンドアゴニスト。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本明細書に記載の発明は、これまでに公表された研究および係属中の特許出願を参考にする。例えば、このような研究は、科学論文、特許、または継続中の特許出願からなる。本明細書で引用されるすべてのこのような研究および係属中の特許出願は、全体が明らかに参考として本明細書に援用される。
【0020】
定義
「Fasリガンド」とは、細胞の表面で発現されるFas抗原に結合することによってFas抗原提示細胞のアポトーシスを誘導する活性が提供される物質をいう。このような細胞でのアポトーシスは、Fasリガンドが細胞表面で発現されるFasを結合する場合に生じると考えられる。Fasリガンドは、膜結合または可溶性であり得る。ヒトFasリガンドについてのDNA(配列番号11)およびアミノ酸(配列番号12)配列の両方とも周知であり、そしてEP675 200、Sudaら, Cell, 75:1169-1178 (1993)、Takahashiら, Int lImmunol. 6(10):1567-74 (1994)、およびNagata, Adv. in Immun. 57:129-144(1994)に開示され、これらはすべて全体が参考として本明細書に援用される。Fasリガンドは、膜型の腫瘍壊死因子(TNF)サイトカインファミリーのメンバーである。このファミリーのメンバーの多くは、アポトーシス活性に関連する。Fasリガンドの活性は、Fasに結合する能力を含み、そしてFasを発現する細胞においてアポトーシスを誘導する。膜結合したヒトFasリガンドは、マトリクスメタロプロテイナーゼ様酵素の細胞によって可溶性形態に変換される。Tanakaら,Nature Medicine 2(3):317-22 (1996)に記載のように、健常ヒトからの血清は、検出可能なレベルの可溶性Fasリガンドを含まない。健常個体におけるFasリガンドの哺乳動物発現は、リンパ様器官(甲状腺、リンパ節、脾臓)、肺、および小腸で低レベルの発現を示し、一般免疫系および粘膜免疫におけるFasリガンドの関連を示す。精巣は、T細胞Fasリガンドよりも短いFasリガンドのスプライス改変体を発現する。PMAおよびイオノマイシンのようなT細胞アクチベーター、ConA、抗CD3、またはIL-2単独での脾細胞の活性化は、Fasリガンド発現を誘導する。CD8脾細胞は、Sudaら, J. of Immunol.154(8):3806-13 (1995)に記載のように、活性化の際にCD4脾細胞よりも豊富なFasリガンドを発現する。さらに、機能的可溶性Fasリガンドは、40kDaタンパク質として活性化リンパ球で発現され、そしてTanakaら,EMBO J. 14(6):1129-35 (1995)に記載のように、可溶性形態において三量体としてヒトに存在すると考えられる。
【0021】
「Fasリガンドポリペプチド」は、Fasリガンドの天然のの配列の改変体、誘導体、類似体、フラグメント、キメラ、および変異体を含む。ポリペプチドは、宿主細胞における発現が意図される特定のFasリガンドポリペプチドをコードするように設計された組換え産生されたポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0022】
「Fasリガンド治療剤」は、Fasリガンド天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に由来する分子、ならびにこのようなFasリガンドポリヌクレオチドまたはポリペプチドの改変体、変異体、類似体、キメラ、およびフラグメントを含む。ポリヌクレオチドFasリガンド治療剤は、一般的に、宿主細胞で組み換え発現され得るFasリガンドポリペプチドをコードする配列である。さらに、Fasリガンド治療剤は、Fasリガンド活性の低分子アゴニストであり得る。他のFasリガンド治療剤は、FasリガンドをもたらしそしてFasリガンド活性またはその非存在に関連する治療効果を生じるFasリガンド活性のモデュレーターを含み得る。Fasリガンドのモデュレーターは、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または低分子であり得る。
【0023】
「Fas抗原」または「Fas」とは、Fasリガンドと結合しそしてFasを有する細胞のアポトーシスすなわち細胞死を誘導し得る、抗原提示細胞で発現される膜結合ポリペプチドをいう。Fas抗原は、Itohら,Cell 66:233-243 (1991)、およびNagata, Adv. in Immun. 57:129-144(1994)に記載され、両方とも全体が参考として本明細書に援用される。活性化ヒトTおよびB細胞、例えば、APCは、Trauthら, Science245:301-305 (1989)に記載のように、Fasを豊富に発現する。Fasは、腫瘍壊死因子(TNF)/神経成長因子レセプターファミリーに属する細胞表面レセプターである。Fasは、細胞質領域における死ドメインを通るアポトーシスシグナルを伝達し得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「診断剤」とは、本発明の診断使用の1つ以上に寄与する任意の薬剤をいう。これらの診断使用は、Fas提示細胞の存在を決定するための方法を含む。診断剤は以下を含む:Fasリガンドムテイン(好ましくは、発現される細胞の表面から実質的に非切断性であるムテイン)をコードするDNA、非切断性Fasリガンドムテイン(Fasに特異的に結合し得る)、および表面結合した非切断性Fasリガンドムテインを有する細胞または細胞膜。
【0025】
本明細書で使用される場合、「治療剤」は、本発明の治療の要素の1つ以上を達成するかまたは達成に寄与する任意の薬剤であり得る。例えば、治療剤がFasリガンドポリペプチドを発現するように設計されたポリヌクレオチドである場合、その薬剤は、哺乳動物に投与されそして細胞で発現され得るポリヌクレオチドである。したがって、薬剤の活性形態は、まず、発現されたポリペプチドである。Fasリガンド治療剤は、Fasリガンドの生物活性を有する治療剤、または天然ののFasリガンドよりも長く膜結合したままであり得るFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのような、天然ののFasリガンドに由来する治療剤である。治療剤は、単独でまたは他の薬剤(例えば、Fasリガンドの投与と関連して使用される特的の自己免疫のための他の公知の処置の使用、または哺乳動物におけるFasリガンドの発現を容易にし得る遺伝子送達ビヒクル)と組み合わせて、治療目的、を達成する。例えば、他の目的のために開発されたFasリガンドまたは薬物のアゴニストを含む治療剤は、例えば、有機低分子、ペプチド、ペプトイド(以下に定義)、Fasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドFasリガンド治療剤、または表面結合しそして実質的に非切断性であるFasリガンド変異体を発現する形質転換された細胞であり得る。
【0026】
「組み合わせ治療剤」は、一緒に投与した場合にそれらの別々の効果を生じるいくつかの成分または薬剤を有する治療組成物であり、そして疾患を処置するために一緒に投与された場合に相乗効果を生じ得る。好ましくは、組み合わせ治療剤の別々の効果は、より大きな治療効果、例えば、自己免疫疾患からの回復および長期生存をもたらすために組み合わせる。組み合わせ治療剤の投与から得られる別々の効果の例は、短期または長期緩和、あるいは患者における特定の型の細胞に対する自己免疫応答の減少のような効果の組み合わせである。本発明の組み合わせ治療剤の例は、変異体または天然ののFasリガンドおよびHSVチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子送達ビヒクルの投与である。あるいは、2つの遺伝子送達ベクターが使用され得、1つはFasリガンドを発現しそして1つはHSVチミジンキナーゼをコードする。また、例によって、IFNγ、またはIFNγを発現する遺伝子送達ビヒクルは、Fas発現細胞においてアポトーシスを誘導するためのFasリガンドの投与を見越してFas発現をアップレギュレートするために投与され得る。種々の治療剤は、同時に、次いで、例えば、治療効率をもたらす、必要に応じて個々の薬剤の1つまたはすべての繰り返し投与で、同じ薬学的に受容可能なキャリア中で投与され得る。
【0027】
「遺伝子送達ビヒクル」とは、細胞におけるポリペプチドの発現のためのコード配列の細胞への送達を容易にする成分をいう。細胞は、インビボ遺伝子治療におけるように哺乳動物内にあり得るか、またはトランスフェクションのために哺乳動物から除去され、そしてエキソビボ遺伝子治療におけるようにポリペプチドの発現のために哺乳動物に戻され得る。遺伝子送達ビヒクルは、細胞への遺伝子送達を達成し得る任意の成分またはビヒクル、例えば、リポソーム、粒子、またはベクターであり得る。遺伝子送達ビヒクルは、組換えビヒクル(例えば、組換えウイルスベクター)、核酸ベクター(例えば、プラスミド)、裸の核酸分子(例えば、遺伝子)、核酸分子上で負電荷を中和しそして緻密な分子に核酸分子を凝縮し得るポリカチオン分子に複合体化された核酸分子、リポソームと結合した核酸(米国特許5,166,320、1992年11月24日に発行された;およびWangら, PNAS 84:7851, 1987)、および細菌である。遺伝子送達ビヒクルは、プロデューサー細胞のような特定の真核生物細胞を含み、これらは生物において宿主細胞に1つ以上の所望の特性を有する核酸分子を送達し得る。さらに以下に論議するように、所望の特性は、例えば、タンパク質、酵素、または抗体のような所望の物質を発現する能力、および/または生物学的活性を提供する能力を含み、これは遺伝子送達ビヒクルによって運ばれる核酸分子が、所望の物質の発現を必要とせずに、それ自体活性薬剤である場合である。このような生物学的活性の1つの例は、遺伝子治療であり、ここで、遺伝子を不活性化しそして遺伝子が作製する産物を「遮断する(turnoff)」ように、送達された核酸分子が特定化した遺伝子に組込む。遺伝子送達ビヒクルとは、目的の1つまたは複数の配列または遺伝子の発現を指示し得るアセンブリをいう。遺伝子送達ビヒクルは、一般的に、プロモーターエレメントを含み、そしてポリアデニル化を指示するシグナルを含み得る。さらに、遺伝子送達ビヒクルは、転写される場合に、目的の1つまたは複数の配列または遺伝子に作動可能に連結され、そして翻訳開始配列として作用する配列を含む。遺伝子送達ビヒクルはまた、Neo、SVNeo、TK、ハイグロマイシン、フレオマイシン、ヒスチジノール、またはDHFRのような選択可能マーカー、ならびに1つ以上の制限部位および翻訳終結配列を含み得る。本発明で使用される場合、遺伝子送達ビヒクルとは、ウイルスベクター(Jolly,Cancer Gen. Therapy 1:51-64, 1994)、核酸ベクター、裸の DNA、リポソームDNA、コスミド、細菌、および特定の真核生物細胞(プロデューサー細胞を含む;米国出願番号第08/240,030号および米国出願番号第07/800,921号を参照のこと)のような組換えビヒクルをいい、これらは動物内で免疫応答を誘発し得る。
【0028】
「生物学的活性な」とは、特異的活性を保持する分子についていう。例えば、生物学的に活性なFasリガンドポリペプチドは、細胞表面でFas抗原を結合する能力を保持し、そしてFas抗原発現細胞のアポトーシスを導くアポトーシス経路を活性化する。
【0029】
「B細胞」または「Bリンパ球」とは、骨髄中で成熟するリンパ球をいい、そしてKuby,IMMUNOLOGY, (W.H. Freeman, NY 1992)に記載のように、抗体分泌血漿細胞の前駆体である。B細胞は、抗原によって活性化されて抗原提示細胞(APC)になり、そしてこのような活性化の際にFasを発現し得る。活性化B細胞は、可溶性または細胞膜結合したいずれかのFasリガンドの存在下でアポトーシスを受ける。
【0030】
「T細胞」または「Tリンパ球」とは、胸腺において成熟するリンパ球をいい、そこでこれらは分化を受ける。T細胞は、再配置されたT細胞レセプターを有する。「CD4T細胞」とは、Tリンパ球またはリンパ球のサブセットとしてのT細胞を同定する細胞膜分子を有するT細胞をいう。CD4は、Kuby,IMMUNOLOGY, (W.H. Freeman&Co., NY 1992)に記載のように、MHCクラスIIに複合体化した抗原性ペプチドを認識するT細胞のサブセットで見られる細胞表面糖タンパク質である。CD4T細胞は、細胞傷害活性を発現し得る。CD4 CTL(細胞傷害性Tリンパ球)の活性化はMHC-クラスII-制限されるが、標的細胞死滅活性は、抗原に対して非制限的かつ非特異的である。CD4CTLは、優先的に、Fas-Fasリガンド相互作用を介して標的を溶解し、これは、顆粒エキソサイトーシスを使用したCD8T細胞によって使用されるものとは異なるメカニズムである。CD8T細胞はまた、Fasリガンドを発現し得るが、Fasとの相互作用によるその溶解活性はほとんど重要ではない。
【0031】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」とは、特定のアミノ酸配列またはその相補鎖をコードするRNAまたはDNAのいずれかの分子をいう。本明細書で使用される場合、「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列またはその相補鎖をコードするRNAまたはDNAのいずれかをいう。ポリヌクレオチドは、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはリボザイムを含み得、そしてまた遺伝子の3'または5'非翻訳領域のようなアイテム、または遺伝子のイントロン、または遺伝子のコード領域を作製しない遺伝子の他の領域を含み得る。DNAまたはRNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。合成核酸または合成ポリヌクレオチドは、化学的に合成した核酸配列であり得、そして変性に対する抵抗性を分子に与えるために化学部分で改変され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または相補的DNAもしくはRNAの組換え発現によって、あるいは化学合成によって、生成され得る。
【0032】
用語「発現制御配列」または「調節配列」とは、ポリペプチドをコードする遺伝子の発現に影響し、そして転写および翻訳のシグナルを含む発現に影響を及ぼす1つ以上の成分を含むように従来より使用される配列をいう。本発明のポリペプチドの発現に適切である発現制御配列は、ポリペプチドが発現されるべき宿主系に依存して異なる。
【0033】
Fasリガンドポリペプチドを含む本発明の任意の「ポリペプチド」は、成熟タンパク質を含むFasリガンドタンパク質の任意の部分を含み、そしてさらにその短縮型、改変体、対立遺伝子、アナログ、および誘導体を含む。改変体は、関連タンパク質と同じ遺伝子から発現されるスプライスされた改変体であり得る。他に特に指示がない限り、このようなポリペプチドは、例えば、特異的パートナーへの結合活性を含む、タンパク質の1つ以上の生物活性を有する。この用語は、遺伝子の産物の特定の長さに限定されない。したがって、標的タンパク質または成熟タンパク質と同一、あるいは少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、および最も好ましくは90%の相同性を含むポリペプチドは、ヒトまたは非ヒト供給源に由来する場合はいつでも、ポリペプチドのこの定義内に含まれる。したがって、対立遺伝子、ならびにアミノ酸置換、欠失、または挿入を含む遺伝子の産物の改変体も含まれ得る。アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換、またはグリコシル化部位、リン酸化部位、アセチル化部位を改変するように、あるいは機能に必要ではないシステイン残基の位置を改変することによって折り畳みパターンを改変するように非必須アミノ酸残基を排除するための置換であり得る。保存的アミノ酸置換は、一般的電荷、疎水性/親水性、および/または置換されたアミノ酸の立体的な嵩を保存する置換であり、例えば、以下の群のメンバー間の置換が保存的置換である:Gly/Ala、Val/Ile/Leu、Asp/Glu、Lys/Arg、Asn/Gln、Ser/Cys/Thr、およびPhe/Trp/Tyr。アナログは、標的タンパク質様活性を有する、ペプトイドとしても公知の、1つ以上のペプチド模倣物を有するペプチドを含む。この定義内には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含むポリペプチド、置換された連結を有するポリペプチド、ならびに天然に存在するおよび天然に存在しない両方の当該技術分野で公知の他の改変が含まれる。用語「ポリペプチド」はまた、ポリペプチドの発現後改変、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、ミリストイル化などを排除しない。
【0034】
用語「裸の DNA」とは、哺乳動物における発現のための哺乳動物への投与のためのポリヌクレオチドDNAをいう。ポリヌクレオチドは、例えば、コード配列であり得、そしてポリヌクレオチドDNAは、一旦DNAが細胞内に入るとコード配列の発現を容易にし得る発現制御配列に直接的または間接的に結合され得る。直接的または間接的な結合は、哺乳動物細胞におけるDNAの発現を容易にする見込みから等価であり、そして調節領域と、さらなる発現を容易にし得るか、または非ウイルスベクターを形成するために2つのポリヌクレオチド領域を一緒に結合することを容易にするようにリンカーまたはスペーサーを単に果たし得るコード配列との間の、他の配列の包括の可能性を許容するに過ぎない。
【0035】
「ベクター」とは、目的の1つまたは複数の配列または遺伝子の発現を指示し得るアセンブリをいう。ベクターは、転写プロモーター/エンハンサーまたは1または複数の遺伝子座規定エレメント、あるいは代替スプライシング、核RNA輸送、メッセンジャーの翻訳後改変、もしくはタンパク質の転写後改変のような他の手段によって遺伝子発現を制御する他のエレメントを含まなければならない。さらに、ベクターは、転写される場合に、目的の1つ以上の配列または遺伝子に作動可能に連結され、そして翻訳開始配列として作用する配列を含まなければならない。必要に応じて、ベクターはまた、ポリアデニル化を指示するシグナル、Neo、TK、ハイグロマイシン、フレオマイシン、ヒスチジノール、またはDHFRのような選択可能マーカー、ならびに1つ以上の制限部位および翻訳終結配列を含み得る。さらに、ベクターがレトロウイルス中に配置される場合、ベクターは、パッケージングシグナル、長末端反復配列(LTR)、ならびに(まだ存在していないならば)使用されるレトロウイルスに適切な正および負の鎖のプライマー結合部位を含まなければならない。
【0036】
「組織特異的プロモーター」とは、転写プロモーター/エンハンサーまたは遺伝子座規定エレメント、または上記のように遺伝子発現を制御する他のエレメントをいい、これらは限定数の組織タイプで優先的に活性である。このような組織特異的プロモーターの代表的例には、PEPCKプロモーター、HER2/neuプロモーター、カゼインプロモーター、IgGプロモーター、絨毛性胚抗原プロモーター、エラスターゼプロモーター、ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター、インスリンプロモーター、成長ホルモン因子プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、αフェトプロテインプロモーター、アセチルコリンレセプタープロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、aまたはbグロビンプロモーター、T細胞レセプタープロモーター、あるいはオステオカルシンプロモーターが挙げられる。
【0037】
「事象特異的プロモータ」とは、転写プロモーター/エンハンサーまたは遺伝子座規定エレメント、または上記のように遺伝子発現を制御する他のエレメントをいい、これらの転写活性は、細胞性刺激に対する応答の際に変化される。このような事象特異的プロモーターの代表的例には、チミジンキナーゼもしくはチミジレートシンターゼプロモーター、αもしくはβインターフェロンプロモーター、ならびにホルモン(天然、合成、または他の非宿主生物からのいずれか、例えば、昆虫ホルモン)の存在に応答するプロモーターが挙げられる。
【0038】
用語「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」とは、ベクターにおけるポリペプチドの発現が、1つより多くのタンパク質または1つより多くのタンパク質の部分を含む1つのポリペプチドの発現を生じるような、ベクターまたは連続結合中の1つより多くの異種コード配列の組換え発現をいう。最も最適には、融合タンパク質は、それが構築されるものからの少なくとも1つのポリペプチド単位の生物学的活性を保持し、そして好ましくは、融合タンパク質は、シグナルポリペプチドを形成するために別々のタンパク質の部分を組み合わせることによって相乗的に改良された生物学的活性を生じる。発現された場合に機能を有するポリペプチドおよび機能を有さないペプチドもしくはポリペプチドを有する融合タンパク質もまた生成され得るが、これは活性を有するポリペプチドの発現のための目的を果たす。本発明に有用な融合タンパク質の例には、治療のためのいくつかの利点のために遺伝子操作された任意のFasリガンド融合ポリペプチドが挙げられる。用語「キメラ」または「キメラタンパク質」は、融合タンパク質または融合ポリペプチドと等価である。「キメラ分子」は、融合ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド融合分子であり得る。したがって、例えば、融合タンパク質は、Fasリガンドの細胞外レセプター結合ドメイン、ならびに別のタンパク質(例えば、Fasリガンド(例えば、TNFまたはCD30リガンド)のような同じファミリー中のタンパク質)の膜貫通基部および膜貫通ドメインを有し得る。キメラは、連結されたDNAコード配列から構築され、そして細胞系で発現されるか、または動物においてインビボ発現のためのベクターで投与され得る。例えば、膜結合Fasリガンドを含むキメラまたは融合タンパク質は、インビボまたはエキソビボでの遺伝子治療プロトコルで投与され得る。キメラポリペプチドは、例えば、膜から切断され得ない別の膜貫通部分に融合したFasリガンドのFas結合部分を含む融合ポリペプチドであり得る。キメラポリペプチドはまた、細胞膜から切断され得ない融合ポリペプチドを提供する合成的に誘導されたアミノ酸配列に融合したFasリガンドのFas結合部分の融合ポリペプチドであり得る。
【0039】
句「膜結合したFasリガンドをコードする配列」は、FasリガンドムテインまたはFasリガンドキメラ分子をコードするポリヌクレオチド配列を含むことを意味し、ポリヌクレオチドは、Fasリガンドまたは膜結合レセプターの細胞内(および膜貫通)領域をコードする第2のDNA配列に連結したFasリガンドのFas結合ドメインをコードする第1のDNA配列を含む。例えば、膜結合Fasリガンドは、Fas結合ドメイン、およびFasリガンド切断部位の置換を含む別の膜貫通タンパク質のポリペプチド配列、または、細胞膜から切断されない配列を有する融合タンパク質を含み得る。膜結合したFasリガンドを作製する融合タンパク質はまた、例えば、FasリガンドポリペプチドのFas結合ドメイン、および融合の細胞外部分の基部が細胞膜から切断され得ないような、およびアミノ酸の配列が膜貫通配列について十分な疎水性を含むような、および細胞内の基部のアミノ酸の配列がまた発現され得るが細胞膜から切断されない融合ポリペプチドを構築するために電荷を有して適切に配置されるような、合成アミノ酸配列であり得る。例えば、膜結合Fasリガンドは、Fasリガンドの細胞外かつFas結合部分を有するキメラ、Fasリガンドと同じファミリーの別のタンパク質の非切断ドメインかつ膜貫通部分、ならびにFasリガンドと同じファミリーにおいて同じかまたはさらに別のタンパク質の細胞質部分を含み得る。したがって、例えば、膜結合Fasリガンドをコードする配列は、TNFレセプターファミリーのメンバーの細胞内かつ膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド配列に連結したFasリガンドの細胞外かつFas結合部分をコードするポリヌクレオチド配列を含む。FasリガンドおよびTNFスーパーファミリーの他のメンバーの部分で作製されるFasリガンドキメラの他に、細胞で発現した場合にFasリガンドが膜結合を維持し得るFasリガンドキメラはまた、膜からのFasリガンドの切断を防ぎ、そしてFasリガンドポリペプチドが膜結合を保持するようなFasリガンドおよび任意の他の膜貫通タンパク質の一部から作製され得る。
【0040】
「患者」は、任意の処置可能な生きている生物であり得、真核生物または原核生物を含むが、これらに限定されない。例えば、患者である真核生物は、脊椎動物または無脊椎動物であり得る。したがって、例えば、患者は、魚、鳥、蠕虫、昆虫、哺乳動物、爬虫類、両生類、菌類、または植物であり得、好ましくは哺乳動物であり得る。哺乳動物は、例えば、ヒトであり得る。
【0041】
Fasリガンド治療剤および/または診断剤を製造および使用の一般的方法
1つの局面では、本発明は、Fasリガンド治療剤を提供する工程、および自己免疫疾患を有する哺乳動物に有効量のFasリガンド治療剤を投与する工程の両方による、活性化T細胞または活性化B細胞またはその両方が顕著な自己免疫疾患を処置する方法を包含する。「自己免疫疾患」、「自己免疫疾患」、および「自己免疫」とはすべて、哺乳動物での自己免疫によって特徴づけられる障害(これは、自己成分に対する免疫系の応答である)をいう。自己免疫応答は、臨床的兆候を現す症状に進展し得る。厳密にいえば移植拒絶は自己免疫反応ではないが、患者の症状が細胞、組織、または器官を置換または移植するための外科手術を記載する場合、同種移植を受ける体は、外来移植に対して免疫学的に反応し得る。種の1つのメンバーから他の種への、細胞、組織、または器官の同種移植中に、移植された細胞、組織、または器官を拒絶するために十分な、レシピエントでの免疫応答が生じる場合に、「移植拒絶」が起こる。
【0042】
本発明の方法および治療剤によって処置され得る「自己免疫疾患」の例には、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、グッドパスチャー症候群、天疱瘡、レセプター自己免疫、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少性紫斑病、変形性関節症、慢性関節炎リウマチ、抗コラーゲン抗体での強皮症(schleroderma)、複合化結合組織病、多発性筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、自発性不妊症、糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、アドレナリン作用性薬物耐性、慢性活性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫ベースの内分泌腺不全、白斑、脈管炎、後心筋梗塞(post-myocardialinfarction)、心臓切開症候群、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、自己免疫ベースの喘息、自己免疫ベースの炎症性反応、肉芽腫症障害、強直性(alkylizing)脊椎炎、連鎖球菌後(poststreptococcal)糸球体腎炎、自己免疫溶血性貧血、脳炎、リンパ腫に対する二次的自己免疫反応、変性障害、および萎縮性障害が挙げられる。レセプター自己免疫を表す自己免疫疾患には、例えば、グレーブス病、重症筋無力症、およびインスリン耐性が挙げられる。アドレナリン性薬物耐性の自己免疫疾患には、例えば、喘息および嚢胞性線維症が挙げられる。
【0043】
本発明に適切な他の自己免疫疾患には、例えば、動物モデルが存在するものが挙げられ、例えば、シェーグレン症候群(自己免疫涙腺炎(dacryodentis)または免疫媒介唾液腺炎)、自己免疫心筋炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、炎症性心臓病、水銀誘導性腎自己免疫、インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病またはIDD)、胸腺切除術後自己免疫、中枢神経系(CNS)脱髄障害、CNS狼瘡、睡眠発作、免疫媒介PNS障害、変形性関節症、慢性関節炎リウマチ、ブドウ膜炎、髄質嚢胞性線維症、自己免疫溶血性疾患、自己免疫脈管炎、卵巣自己免疫疾患、およびヒト強皮症(scheroderma)を含む。中枢神経系(CNS)脱髄障害によって特徴づけられる自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症(MS)であり得る。末梢神経系(PNS)自己免疫疾患は、例えば、ギヤン−バレー症候群(GBS)であり得る。
【0044】
Fasリガンド治療剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小有機分子、ペプチド、またはペプトイドであり得る。Fasリガンド治療剤は、Fasリガンドポリペプチド、Fasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、天然Fasリガンドポリペプチドの一部を含む融合ポリペプチド、天然Fasリガンドポリペプチドの一部を含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、Fasリガンドポリペプチドの生物学的に活性なペプチド誘導体、Fasリガンドポリペプチドに由来する生物学的に活性なペプトイド、またはFasリガンド活性の小有機分子アゴニストであり得る。Fasリガンドポリペプチドは、Fasリガンドポリペプチド改変体、Fasリガンドポリペプチド誘導体、変異したFasリガンドポリペプチド、または短縮型Fasリガンドポリペプチドのような生物学的に活性なFasリガンドポリペプチドであり得る。Fasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、全長Fasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、Fasリガンドポリペプチドの生物学的に活性な部分をコードする配列、Fasリガンドポリペプチドに由来する生物学的に活性なペプチドをコードする配列、膜結合Fasリガンドポリペプチドをコードする配列、または可溶性Fasリガンドポリペプチドをコードする配列であり得る。本発明の別の実施態様は、Fasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現し得る遺伝子送達ビヒクルを有する組成物である。
【0045】
本発明の組成物のFasリガンドポリペプチドは、膜結合したFasリガンドポリペプチドを含む。好ましい実施態様では、Fasリガンドポリペプチドは、天然のFasリガンドよりも長く細胞膜に残存し得る組換えFasリガンドであり、より好ましくは、膜結合した組換えFasリガンドは、発現細胞の表面から実質的に非切断性である。したがって、本発明はまた、全長Fasリガンドポリペプチド、Fasリガンドポリペプチドの生物学的に活性な部分、膜結合したFasリガンドポリペプチド、および可溶性Fasリガンドポリペプチドをコードする配列からなる群より選択されるFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列で形質転換された、宿主細胞、好ましくはヒト宿主細胞を含む。好ましくは、宿主細胞はT細胞である。したがって、その治療実施態様では、本発明はまた、膜結合したままであるFasリガンドポリペプチドで宿主細胞を形質転換する工程であって、宿主細胞がまた活性化T細胞または活性化B細胞によって認識される別のリガンドを有する、工程、および活性化T細胞または活性化B細胞の集団に形質転換細胞を再導入する工程によって、活性化T細胞または活性化B細胞の集団を減少させる方法に関する。この方法は、自己免疫疾患(活性化T細胞またはB細胞によって媒介される)または移植拒絶の処置に特に適切である。この方法では、他のリガンドは細胞によって天然に発現され、または他のリガンドをコードするポリヌクレオチドがそこでの発現のために宿主細胞を形質転換するために使用される。本発明の方法によって処置可能な自己免疫疾患のいくつかの例には、慢性関節リウマチ(RA)、原発性胆汁性肝硬変(PBS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、および特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が挙げられる。
【0046】
治療実施態様で使用される場合、宿主細胞は、より好ましくは同種宿主細胞であり、そして最も好ましくは同系宿主細胞である。宿主細胞の形質導入または形質転換は、当該分野で周知である技法およびベクターを使用して、インビボまたはエクスビボで、より好ましくは、エクスビボで行われる。米国特許第5,399,346号(Anderson)および米国特許出願第08/463,122号(1995年6月5日に出願され、現在許可された)を参照のこと、両方とも、これにより、この技法およびベクターの開示について、明らかに参考として本明細書に援用される。
【0047】
表面上に非切断性(または実質的に非切断性)のFasリガンドを有する同じ宿主細胞は、表面で発現されるFas(抗原)を有する活性化T細胞またはB細胞を検出するために診断実施態様で使用され得る。特に、この実施態様の診断方法は、
a)表面結合した組換えFasリガンドを有する形質転換した宿主細胞を提供する工程であって、この表面結合したFasリガンドムテインが切断に抵抗性である、工程;
b)細胞混合物を得るために表面結合したFasを有する疑いのある過剰の細胞を含む試料と、上記形質転換した細胞を接触させる工程;
c)上記細胞結合したFasを、細胞結合した組換えFasリガンドに結合させる工程;および
d)ロゼット形成または凝集について上記細胞混合物を観察する工程であって、これによって、ロゼット形成または凝集が、上記試料中の表面上にFasを有する細胞の存在を示す、工程、
を包含する。
【0048】
本発明(inventory)でテストされる細胞は、代表的には、任意の可溶性妨害物質から分離するために遠心分離される。遠心分離した細胞は、ハンクス、イーグル生理食塩液、またはダルベッコ緩衝化生理食塩液を含むような、種々の平衡化塩溶液のいずれかに再懸濁される。ロゼット形成を得るために、表面で発現したFasを有する疑いのある細胞が、RFL細胞に対して、過剰に、代表的には25:1、好ましくは40:1、より好ましくは100:1で提供される。Smithら,「AModified Assay For The Detection Of Human Adult Active T Rosette FormingLymphocytes」J. Immunol. Methods, 8:175-184 (1975);Fandenbergら,「T-rosette-FormingCells: Cellular Immunity and Cancer」N. Eng. J. Of Med., 292:465-475(1975);およびKermanら,「Active T Rosette Forming Cells in the Peripheral Blood ofCancer Patients」Cancer Res., 36:3274-3278 (1976)を参照のこと。
【0049】
上で引用した参考文献が反映するように、ロゼット形成を観察するための種々の方法が当該分野で周知である。
【0050】
活性化T細胞およびB細胞を検出する上記の方法がヒトT細胞およびB細胞で行われる場合、形質転換宿主細胞は、好ましくはヒト宿主細胞である。
【0051】
最終的に、細胞結合したFasが、Fasリガンド(本発明の膜結合したFasリガンドを含む)に結合する場合、表面結合したFasを有する細胞はアポトーシスを起こしそして死ぬ。したがって、本発明はまた、活性化T細胞および/またはB細胞の集団を減少させる方法に関し、この方法は、
a)活性化T細胞および/またはB細胞の集団を、表面結合される組換えFasリガンドを発現する形質転換細胞と接触させる工程であって、この活性化T細胞および/またはB細胞が、そこに発現したFasを有する細胞膜を有し、この細胞上のFasリガンドが、活性化T細胞および/またはB細胞上のFasに結合し、そして活性化T細胞および/またはB細胞でアポトーシスを誘導し、それによってこの集団が減少する、工程、
を包含する。本発明で使用される場合、用語「膜結合したFasリガンド」は、非切断性である(そしてそのため膜結合したままである)Fasリガンドのムテインを含むだけでなく、Fasリガンドのキメラまたは融合タンパク質も含む。
【0052】
本発明はまた、FasリガンドがFasに結合しそしてFas発現細胞のアポトーシスを誘導するある自己免疫疾患の処置の目的で、活性化T細胞およびB細胞においてアポトーシスを誘導する膜結合したFasリガンドを提供するためのキメラまたは融合タンパク質に関する。Fasリガンドが、Fasリガンドの可溶性形態を産生するために細胞表面から切断されることが示されている。Fasリガンド配列の一部を含むキメラまたは融合タンパク質の構築の目的は、CTL(細胞障害性T細胞リンパ球)媒介した殺傷から発現細胞、組織、または器官を保護するためにFasリガンド発現を細胞表面に制限することである。このような非切断性レセプタータンパク質TNFおよびCD30リガンドならびに同じスーパーファミリーの他のリガンドがまた、II型膜貫通タンパク質であるので、これらは、Fasリガンドに天然のFasリガンドと類似の膜貫通および細胞質成分を保持させる、Fasリガンドを有するキメラを形成するように適合される。しかし、例えば、膜貫通および細胞質部分についてTNFを使用する有利点は、TNFでの切断部位が十分定義され、そして融合タンパク質のTNF部分が実質的に非切断性であるように変異され得ることである。融合は、Fasリガンドの細胞外ドメインから作製され得、Fasに結合する少なくともFasリガンドの部分、ならびに、例えば、改変されたTNF配列の非切断性膜貫通および細胞内ドメイン、または他のポリペプチド(例えば、そのリガンドスーパーファミリーの他のメンバーの非切断性膜貫通および細胞内ドメイン)を保持する。したがって、記載のようなキメラは、Fasを結合し、そしてFas発現細胞でアポトーシスを誘導するが、キメラが発現される細胞の表面から切断されない。Fasリガンドキメラはまた、膜結合したままでなければFasを結合し、そしてFas発現細胞でアポトーシスを誘導し得るキメラのFasリガンド細胞外部分を作製する目的で、任意の他の膜貫通タンパク質の部分を使用して構築され得る。Fasを結合する能力だけでなく膜結合したままの能力もまた有するFasリガンド融合タンパク質を構築するために適切なポリペプチド配列に由来し得るこのような膜貫通タンパク質の例には、膜結合した抗体のような膜結合した膜貫通タンパク質、膜結合したままであるウイルス抗原、または他の公知の膜貫通タンパク質の近位細胞外/膜貫通/および細胞内部分が挙げられる。さらに、タンパク質配列と、合成設計された配列、例えば、膜において融合タンパク質をつなぐための疎水性アミノ酸の配列との任意の作動可能な組み合わせは、Fasリガンド融合ポリペプチドの設計に計算され得る。
【0053】
膜結合したFasリガンドキメラを発現するキメラ分子または融合タンパク質が作出され得る。例えば、プロタンパク質(すなわち、配列番号2)のM1からQ130までの129残基にわたるプロFasリガンド(配列番号12)の領域は、細胞膜での発現を可能にし、そしてFasへの結合を可能にするだけでなく、天然のFasリガンドよりも長く細胞膜に残存し得る、融合タンパク質を提供する別のポリペプチド配列によって置換され得る。FasリガンドのFas結合部分との融合に使用されるポリペプチド配列は、別の膜貫通タンパク質、好ましくは、細胞膜から通常切断されないタンパク質、あるいは、近位細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および近位細胞内ドメインに適切なアミノ酸含量を提供する合成的に同化した配列を含むポリペプチド配列であり得る。
【0054】
例えば、I131からL281のFasリガンドの細胞外配列は、Fasと結合し、これは融合タンパク質のFas結合部分として保持され得る。約14アミノ酸(天然のFasリガンドタンパク質中)に対応する(融合ポリペプチドの)近位細胞外ドメインは、多プロリン配列、あるいはプロリンのアミノ酸またはプロテアーゼまたはコンベルターゼによって細胞膜から通常切断されない配列を形成するアミノ酸を大部分に有する配列であり得る。融合ポリペプチドの膜貫通部分の配列は、非極性側鎖を有する疎水性アミノ酸からであり得、例えば、アミノ酸のアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。近位細胞内のアミノ酸の融合ポリペプチドの配列は、荷電側鎖を有するアミノ酸であり得、例えば、pH6.0で負電荷を有するアスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびにpH6.0で正電荷を有するリジン、アルギニン、およびヒスチジンを含む。融合ポリペプチドの残りは、膜貫通ポリペプチドの細胞内部分に適切な配列であり得、そして好ましくは、Fasリガンドの配列またはリガンドのTNFファミリーのメンバーの配列であり得、これは、Fasリガンド由来のポリペプチド融合物から所望される生物学的活性に対する、分子の細胞内部分が有し得る何らかの効果が、保持され得るような配列である。
【0055】
Fasリガンド融合ポリペプチドはまた、Fasを結合しそしてシグナリングを促進するFasリガンドの部分を含むFasリガンド細胞外部分、ならびに同じファミリー(腫瘍壊死因子ファミリー)の別のメンバーの膜貫通および細胞内部分から構成され得る。融合タンパク質構築物は、Fasリガンドの細胞内領域およびFasリガンド切断部位が、例えば、TNFR、CD30、またはCD40のようなタンパク質のTNFレセプターファミリーのメンバーの1つの細胞内および膜貫通ドメインのような、非切断性ドメインで置換される場合に、特に効果的である。結果は、Fas発現細胞においてアポトーシスを活性化するためにFasを結合し得るFasリガンドを有する膜結合したポリペプチドである。このようなキメラは、遺伝子送達ビヒクルを使用することによる遺伝子治療投与に十分適しており、そしてしたがって、自己免疫疾患または移植拒絶の状況において標的細胞/組織/器官を保護するために関連する、例えば活性化T細胞または活性化B細胞のようなFas発現細胞において、アポトーシスを活性化することを容易にし得る。TNFレセプターファミリーの種々のメンバーについてのDNA配列は、当該分野で周知である。特に、TNFRおよびCD40のクローニングは、以下の参考文献に開示され、そのそれぞれはこれにより参考として本明細書に援用される:Schallら,「MolecularCloning and Expression of a Receptor for Human Tomor Necrosis Factor」Cell 61:361-370(1990);およびStamenkovicら,「A B-lymphocyte Activation Molecule Related to the NerveGrowth Factor Receptor and Induced by Cytokines in Carcinomas」EMBO J 8(5):1403-1410(1989)。
【0056】
融合タンパク質は、例えば、Fasリガンドのフラグメントを、細胞表面レセプター(例えば、CD30、CD40、またはTNFR)からの非切断性フラグメントで、または別の膜貫通タンパク質の非切断性部分でさえで置換することによって構築される。例えば、L127からR144までのFasリガンドのフラグメントの、S83からA100までのCD30リガンドのフラグメントまたはE104からQ121までのCD40リガンドのフラグメントとの置換は、変異体が膜結合したままであることを提供する切断部位における置換を有する変異体または融合タンパク質Fasリガンドを生じる。
【0057】
さらに別の変更は、M1からL86までのN末端CD30リガンドまたはM1からK107までのCD40リガンドのN末端に融合したI131からL281までのFasリガンドからのC末端のキメラ分子の構築である。得られるキメラは、膜結合しそして非切断性である。
【0058】
当該分野で周知である標準的遺伝子スプライシング技法を使用して、遺伝子構築物は、膜結合形態で発現されるキメラFasリガンドポリペプチドをコードする遺伝子構築物を作製する。このような構築物では、Fasリガンドの細胞外領域のほぼ最初の14アミノ酸領域が欠失または置換され得る。細胞膜からの天然の配列のFasリガンドの切断は、この領域内で生じると考えられるので、この領域をコードするDNAの欠失は、切断されないFasリガンド分子を提供する。この領域で切断されない任意の膜貫通レセプタータンパク質の対応するコード領域とのこのコード領域の置換は、切断も受けにくく、したがって膜結合したままである融合タンパク質をコードするDNAを作出する。
【0059】
あるいは、上記のように、Fasリガンドが、膜結合Fasリガンド、可溶性Fasリガンドを放出するプロテアーゼについての切断部位(好ましくは細胞外領域の最初の14アミノ酸)であると考えられるFasリガンドの細胞外領域の部分の置換で開始する、キメラであるが、非切断性であることを基本とし得、そしてFasリガンドのN末端領域の残りは、CD30またはCD40の対応する配列と、あるいはTNFレセプターが置換した配列で切断されず、または置換した配列が切断を妨げるように変更されるとすれば、TNFレセプターファミリーの他のメンバーと、置換され得る。最後に、Gilmanら,Gene, 8:81 (1979)およびRobertsら, Nature, 328:731 (1987)によって教示されるような標準的変異誘発技法を使用して、切断の可能性を抑制または減少させるために、Fasリガンド配列は、膜結合した分子のクリッピングが生じると考えられる領域で変異誘発され得る。得られるFasリガンド変異体はまた、天然のFasリガンドの切断抵抗性改変体であり、したがって、宿主細胞で発現される場合により長く膜結合したままである。形質導入した宿主細胞で発現されるときの得られる膜結合したリガンドは、Fasを発現する細胞/組織/器官を保護し、そして膜から切断される場合の可溶性Fasリガンドの副作用を排除する。
【0060】
宿主細胞で発現される場合に実質的に非切断性である膜結合したFasリガンドアゴニストになるFasリガンド欠失ムテインもまた、本発明の範囲内にある。本発明の1つの実施態様では、Fasリガンド欠失ムテインは、プロFasリガンド(配列番号12)の約残基位置127で始まる4から17アミノ酸残基のセグメントを欠くプロFasリガンドの欠失ムテインである。好ましくは、プロFasリガンドの欠失ムテインは、プロFasリガンド(配列番号12)の約残基130で始まる10から17アミノ酸の連続セグメントを欠く。より好ましくは、Fasリガンド欠失ムテインは、130-139、130-140、130-141、130-142、130-143、130-144、130-145、130-146、131-140、131-141、131-142、131-143、131-144、131-145、および131-146からなる群より選択される欠失を有する。
【0061】
膜結合した非切断性Fasリガンドを作製するために、Fasリガンド天然配列の残基位置L127からR144までの4から17残基をコードするDNAは、ゲノムまたはcDNA(配列番号11)から欠失される。Fasリガンドのこの欠失ムテインの発現は、実質的に非切断性であるFasリガンドアゴニストを生じる。Fasリガンドの特異的欠失ムテインの調製は、実施例5および6で本明細書に開示される。実施例5では、Fasリガンドの最初の129アミノ酸残基(配列番号2)をコードするポリヌクレオチド(配列番号1)を、Fasリガンドの残基143〜282をコードする第2のポリヌクレオチド(配列番号3)に連結した。得られるポリヌクレオチド(配列番号5)は、非切断性Fasリガンド1306142欠失ムテイン(配列番号6)をコードした。実施例6では、Fasリガンドの最初の129アミノ酸残基(配列番号2)をコードするポリヌクレオチド(配列番号1)を、Fasリガンドの残基146〜282をコードする第2のポリヌクレオチド(配列番号7)に連結した。得られるポリヌクレオチド(配列番号9)は、非切断性Fasリガンド130-146欠失ムテイン(配列番号10)をコードした。
【0062】
アミノ酸残基R144〜L281のFas結合部分を有するFasリガンド融合タンパク質、および細胞表面分子結合部分が、構築され得る。例えば、細胞表面分子結合部分はヘパリンであり得、そして結合する細胞表面分子は、グリコサミノグリカン分子であり得る。例えば、ヘパリンおよびFasリガンドを使用して、このようなポリペプチド融合タンパク質は、米国特許出願第07/608,539号(1990年11月1日に出願された)および米国特許出願第07/608,569号(1990年11月2日に出願された)に記載のように構築され得る。このFasリガンド融合ポリペプチドは、組換えタンパク質の十分な量を産生するために、および任意の必要な翻訳後改変のために適切な、任意の標準的発現系で発現および精製され得る。一旦精製されると、ポリペプチドは、例えば、移植レシピエントに侵入する前に、移植されるべき器官または組織を浸すために使用され得る。Fasリガンドポリペプチドは、そのヘパリン部分、器官または組織の外部細胞の細胞表面で結合する。このように処置された器官が患者に配置される場合、外来器官または組織に対する免疫拒絶を生成することを試みる任意の活性化T細胞は、Fasリガンドコートした細胞に遭遇する。細胞をコートするFasリガンド部分のFasへの結合の際、Fasを発現する活性化T細胞はアポトーシスを受け、したがって、器官または組織の免疫拒絶を減少させる。
【0063】
上記の融合ポリペプチドの全てならびにこれらの融合ポリペプチドの全ての明らかなバリエーションおよび変更の場合、構築は、所望のポリペプチド融合物を発現し得るポリヌクレオチドキメラを構築することによって容易に行われ得る。このようなポリヌクレオチド構築物における任意の変異および欠失は、標準的な変異誘発(例えば、Gilmanら、Gene、8:81(1979)およびRobertsら、Nature、328:731(1987))、および制限消化切断、および標準的なプラスミドまたはベクターにおける連結を使用して行われ得る。多くの場合において、融合ポリペプチドは、天然のFasリガンドをコードするDNAおよび別の膜貫通タンパク質をコードするDNAを用いて開始されることによって作製され得る。合成配列の付加はまた、標準的な技術によって達成され得る。TNFファミリーのリガンドの任意のメンバー、およびいくつかの場合においては任意の膜貫通タンパク質は、別の細胞(例えば、活性化されたT細胞またはB細胞)のFasを介する結合およびシグナル伝達のために膜結合したままであるFasリガンドシグナル伝達ポリペプチドを作製するために記載された工程に沿って、キメラまたは変異体をアレンジするために適切であり得る。
【0064】
細胞における発現のための、生物に対して有害な、活性化されたT細胞もしくはB細胞、または他のFas発現細胞を標的化するFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの場合、ポリヌクレオチドの構築物は、例えば本明細書中で記載されるように、一旦設計されると、標準的な組換えDNA技術および操作によって構築され得る。例えば、欠失、変異、置換、融合を有するポリヌクレオチド構築物、およびそうでなければFasリガンドのポリペプチド改変体、誘導体、変異体、アナログ、またはキメラをコードするポリヌクレオチド構築物は、当業者の範囲内の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術の従来技術によって構築され得る。Fasリガンドポリヌクレオチドは、その発現を指向するベクター中に配置され得る。
【0065】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構築および発現のためのこのような技術は、例えば以下の文献において十分に説明されている:Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版(1989);DNACLONING、第I巻および第II巻(D.N Glover編、1985);OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS(M.J. Gait編、1984);NUCLEICACID HYBRIDIZATION(B.D. HamesおよびS.J. Higgins編、1984);TRANSCRIPTION ANDTRANSLATION(B.D. HamesおよびS.J. Higgins編、1984);B. Perbal、A PRACTICAL GUIDE TOMOLECULAR CLONING(1984);シリーズ、METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press、Inc.);GENETRANSFER VECTORS FOR MAMMALIAN CELLS(J.H. MillerおよびM.P. Calos編、1987、Cold SpringHarbor Laboratory)、Methods in Enzymology、第154巻および第155巻(それぞれ、WuおよびGrossman、ならびにWu編)、MayerおよびWalker編(1987)IMMUNOCHEMICALMETHODS IN CELL AND MOLECULAR BIOLOGY(Academic Press、London)、Scopes(1987)、PROTEINPURIFICATION:PRINCIPLES AND PRACTICE、第2版(Springer-Verlag、N.Y.)、HANDBOOK OFEXPERIMENTAL IMMUNOLOGY、第I〜IV巻(D.M. WeirおよびC.C. Blackwell編、1986);ならびにVACCINES(R.W.Ellis編、1992、Butterworth-Heinemann、London)。ヌクレオチドおよびアミノ酸についての標準的な略号が、本明細書中で使用される。本明細書中で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願が、参考として援用される。さらに、上記の遺伝子をコードする配列はまた、例えば、AppliedBiosystems Inc.のDNA合成機(例えば、ABI DNA synthesizer model 392(Foster City、California))で合成され得る。さらに、ポリヌクレオチドが、PCRPROTOCOLS、Cold Spring Harbor、NY、1991に記載されるように構築され、そしてクローニングされ得る。所望の遺伝子はまた、その遺伝子を含有する細胞および組織から、フェノール抽出、cDNAまたはゲノムDNAのPCRを使用して単離され得る。目的の遺伝子はまた、以下に記載されるように、クローニングされるよりもむしろ合成によって産生され得る:Edge、Nature292:756(1981)、Nambairら、Science 223:1299(1984)、およびJayら、J. Biol. Chem. 259:6311(1984)。さらに、任意のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのバリエーションが、PCRまたは部位特異的変異誘発(例えば、Glimanら、Gene、8:81(1979)およびRobertsら、Nature、328:731(1987)によって教示される)を含む従来技術によって作製され得る。このように合成されるDNA構築物は、所望の宿主発現系における発現のために適切なプロモーターを含む発現プラスミドに連結され得る。宿主系は、インビトロ、インビボ、またはエキソビボであり得る。全ての場合において、Fasリガンドポリペプチド(インビボ、エキソビボ、またはインビトロで発現される)が細胞上で発現された場合にFasの結合に関して機能的であるかどうか、およびさらに詳細には、任意のFasリガンド融合ポリぺプチドが天然のFasリガンドよりも長く膜に結合したままでであり得るかどうかについてのアッセイは、標準的なアッセイ(例えば、本明細書中で記載される)によって決定され得る。
【0066】
Fasリガンドポリペプチドの改変体、誘導体、変異体、キメラ、もしくはアナログを含むFasリガンド治療薬、または生物学的に活性なFasリガンド由来ペプチド治療薬が、以下の例示的な発現系を使用して作製され得る。以下は、細菌、酵母、昆虫、および哺乳動物におけるいくつかの例示的な発現系である。本発明の任意のFasリガンドポリペプチドの特定の場合、ポリペプチドは、例えば、本明細書中に記載される発現系を使用することを含む、当該分野で標準的な方法によって組換え的に発現され得る。
【0067】
発現系
以下に記載する方法論は、当業者が本発明を実施し得るために十分な詳細を含むと考えられるが、他の構築物が、例えば、Sambrookら(1989)、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版(ColdSpring Harbor Press、Cold Spring Harbor、New York)に記載されるような標準的な組換えDNA技術を使用し、そしてUnitedStates Dept.of HHS、NATIONAL INSTITUTE OF HEALTH (NIH) GUIDELINES FORRECOMBINANT DNA RESEARCHに記載されている現行の規定のもとで、構築および精製され得る。本発明のポリペプチドは、例えば、細菌、酵母、昆虫、両生類、および哺乳動物系を含む任意の発現系において発現され得る。細菌における発現系として、以下に記載されているものが挙げられる:Changら、Nature(1978)275:615、Goeddelら、Nature(1979)281:544、Goeddelら、NucleicAcid Res.(1980)8:4057、EP 36,776、U.S.4,551,433、deBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983)80:21−25、およびSiebenlistら、Cell(1980)20:269。酵母における発現系として、以下に記載されているものが挙げられる:Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1978)75:1929;Itoら、J.Bacteriol.(1983)153:163;Kurtzら、Mol.Cell.Biol.(1986)6:142;Kunzeら、J.BasicMicrobiol.(1985)25:141;Gleesonら、J.Gen.Microbiol.(1986)132:3459、Roggenkampら、Mol.Gen.Genet(1986)202:302;Dasら、J.Bacteriol.(1984)158:1165;DeLouvencourtら、J.Bacteriol.(1983)154:737、Van den Bergら、Bio/Technology(1990)8:135;Kunzeら、J.BasicMicroBiol.(1985)25:141;Creggら、Mol.Cell.Biol.(1985)5:3376、U.S.4,837,148、US4,929,555;BeachおよびNurse、Nature(1981)300:706;Davidowら、Curr.Genet.(1985)10:380、Gaillardinら、Curr.Genet.(1985)10:49、Ballanceら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1983)112:284−289:Tilburnら、Gene(1983)26:205−221、Yaltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1984)81:1470−1474、KellyおよびHynes、EMBOJ.(1985)4:475479;EP 244,234、ならびにWO 91/00357。昆虫における異種遺伝子の発現は、以下に記載されるように達成され得る:U.S.4,745,051、Friesenら(1986)「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」、THEMOLECULAR BIOLOGY OF BACULOVIRUSES(W. Doerfler編)、EP 127,839、EP 155,476、およびVlakら、J.Gen. Virol.(1988)69:765−776、Millerら、Ann.Rev.Microbiol.(1988)42:177、Carbonellら、Gene(1988)73:409、Maedaら、Nature(1985)315:592−594、Lebacq-Verheydenら、Mol.Cell. Biol.(1988)8:3129;Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:8404、Miyajimaら、Gene(1987)58:273;ならびにMartinら、DNA(1988)7:99。多数のバキュロウイルス株および改変体、ならびに宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が、以下に記載されている:Luckowら、Bio/Technology(1988)6:47−55、Millerら、GENERICENGINEERING(Serlow,J.K.ら編)第8巻(Plenum Publishing、1986)277−279頁、およびMaedaら、Nature(1985)315:592−594。哺乳動物発現は、以下に記載されているように達成され得る:Dijkemaら、EMBOJ.(1985)4:761、Gormanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1982b)79:6777、Boshartら、Cell(1985)41:521、およびU.S.4,399,216。哺乳動物発現の他の特徴は、以下に記載されるように容易にされ得る:HamおよびWallace、Meth. Enz.(1979)58:44、BarnesおよびSato、Anal.Biochem.(1980)102:255、U.S.4,767,704、US4,657,866、US 4,927,762、US 4,560,655、WO 90/103430、WO 87/00195、ならびにU.S. RE 30,985。
【0068】
低分子ライブラリーの合成
Fasリガンド由来治療薬は、低分子模倣物またはFasリガンド活性のアゴニストを含み得る。これらは、Fasに結合する能力、または細胞に発現されるFasに結合しそして活性化する能力についてスクリーニングされ得る。活性化は、低分子のFasリガンドアゴニストが接触した細胞の死によって示され得る。Fasリガンド活性の低分子アゴニスト(例えば、ペプチド、ペプトイド、または有機低分子)が、Fas抗原に結合する能力について、またはさらに、Fas発現細胞においてアポトーシスを誘導するために、細胞に発現されるFas抗原に結合しそして活性化する能力について、ライブラリーからスクリーニングされ得る。
【0069】
本発明の治療薬は、Fasリガンドポリペプチド配列に由来するペプチドおよびペプトイドを含み得、そしてFasリガンドポリペプチドを超える改善された生物学的活性(例えば、Fasリガンドレセプターに対するより高い親和性、または哺乳動物における分解に対する抵抗性)を達成するように設計または改変され得る。ペプチドおよびペプトイドは、好ましい生物学的活性(例えば、Fasリガンドへの増大した結合)についてのスクリーニングのためのライブラリーで合成によって調製され得る。これらの低分子のいくつかの例示的な合成が、以下に記載される。FasリガンドポリペプチドのFasリガンドレセプター結合部位におけるバリエーションに基づいて設計された低分子ライブラリーが、Fasリガンドレセプターに結合し、そしてアポトーシスを誘導する能力について、例えば、マイクロウェルプレートでの細胞ベースのアッセイにおいてスクリーニングされ得る。
【0070】
Fasリガンドのペプチドおよびペプトイド誘導体である低分子ライブラリーは、以下のように作製される。ペプチドの「ライブラリー」は、米国特許第5,010,175号(以下、'175特許)およびPCTWO91/17823に開示されている方法に従って合成され、そして使用され得る。'175特許の方法において、適切なペプチド合成支持体(例えば、樹脂)は、適切に保護された活性化されたアミノ酸の混合物に結合される。WO91/17823に記載されている方法は同様であるが、どのペプチドが応答性細胞における遺伝子発現の観察されるいずれの変化を担っているかを決定するプロセスが単純化されている。WO91/17823および米国特許第5,194,392号に記載されている方法は、自動化された技術によってこのようなプールおよびサブプールを並列に調製することを可能にし、その結果、全ての合成および再合成が、数日のうちに行われ得る。
【0071】
さらに別の試薬には、遺伝子発現の刺激因子または阻害因子として作用し得るか、あるいはリガンドまたはアンタゴニストである、ペプチドアナログおよび誘導体を含む、低分子が挙げられる。ペプチド、アナログ、または誘導体の産生のために意図されるいくつかの一般的な手段が、CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS、PEPTIDES、AND PROTEINS−ASURVEY OF RECENT DEVELOPMENTS、Weinstein,B.編、Marcell Dekker,Inc.、publ. New York(1983)に概説されている。さらに、通常のL立体異性体からのDアミノ酸への置換が、分子の半減期を増大させるために行われ得る。
【0072】
ペプトイド(少なくともいくつかの置換されたアミノ酸のモノマー単位から構成されるポリマー)は、本明細書中で低分子刺激因子または阻害因子として作用し得、そしてPCT 91/19735に記載されているように合成され得る。現在好ましいアミノ酸置換基は、グリシンのNアルキル化誘導体であり、これは、容易に合成され、そしてポリペプチド鎖に容易に取り込まれ得る。しかし、多様な分子のプールの配列特異的合成を可能にする任意のモノマー単位が、ペプトイド分子を産生することにおける使用に適切である。本発明の目的に関するこれらの分子の利点は、これらがペプチドとは異なる構造的空間を占め、その結果、プロテアーゼの作用に対してより抵抗性であることである。
【0073】
ペプトイドは、標準的な化学的方法によって容易に合成される。好ましい合成方法は、R.Zuckermannら、J.Am.Chem.Soc.(1992)114:10646−7によって記載されている「サブモノマー」技術である。複素環式有機化合物(ここで、N置換されたグリシンモノマー単位が骨格を形成する)の固相技術による合成が、1995年6月7日に出願された、ASynthesis of N-Substituted Oligomersと題される同時係属中の出願に記載されており、これは本明細書中でその全体が参考として援用される。次いで、このような複素環式有機化合物の混合物のコンビナトリアルライブラリーが、遺伝子発現を変化させる能力についてアッセイされ得る。
【0074】
コンビナトリアルライブラリー中の他の複素環式有機化合物の固相による合成はまた、1995年6月7日に出願された、ACombinatorial Libraries of Substrate-Bound Cyclic Organic Compoundsと題される同時系属中の出願である米国出願第08/485,006号に記載されている。これは、その全体が本明細書中で参考として援用される。高度に置換された環状構造は、サブモノマー法と強力な溶液相化学とを併用することによって固体支持体上で合成され得る。1、2、3、またはそれ以上の融合された環を含む環式化合物は、同出願に記載されているように、最初に直鎖状骨格の合成、続いてその後の分子内または分子間の環化によって、サブモノマー法により形成される。
【0075】
Fasリガンド治療薬の活性についてのアッセイ
本発明のFasリガンド治療薬は、FasとFasリガンド治療薬とを接触させることによって、インビトロアッセイまたはインビボアッセイにおいて、Fasの結合について試験され得る。Fasリガンド治療薬は、インビボでの細胞ベースのアッセイにおいてFasの活性化について試験され得る。細胞ベースのアッセイにおいて、Fasを発現する細胞は、候補のFasリガンド治療薬の存在下で培養され、そして細胞のアポトーシスが、機能的なFasリガンド治療薬を示す。細胞傷害活性についてのこのようなアッセイは、例えば、Tanakaら、NatureMedicine 2(3):317−322(1996)に記載されているように行われ得る。あるいは、Fas経路の活性化によってアップレギュレートされることが知られている遺伝子の転写が、リガンドに対する結合によるFasの活性化の指標として測定され得る。
【0076】
Fasリガンド治療薬がFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチドは、Fasを発現する細胞において発現され得る。Fasの活性化は、記載されている通りに検出され得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、細胞の異なる集団において発現され得、そしてFas発現細胞と同時培養され得るか、またはFasリガンドポリペプチドを発現する細胞の上清がFas発現細胞に添加され得るかのいずれかである。
【0077】
標準的な結合アッセイが、Fasに結合し得る分子(好ましくは、Fasの細胞外部分)を検出するために使用され得る。このような結合は、標識した抗体、または標識したFasポリペプチド、または標識した候補分子を含む、標準的な技術によって検出され得る。Fasに結合しそしてこれを活性化し得る分子を検出するための標準的なインビボ細胞アッセイは、Fas発現細胞株を使用して構築され得、そしてFasに結合しそしてこれを活性化する能力について陽性である分子と接触させた細胞においてアポトーシスを同定し得る。おそらく、このスクリーニングアッセイは、Fasに結合する分子についてまずスクリーニングし、そしてこれらの分子から、次いで細胞に発現されるFasをまた活性化する分子についてスクリーニングすることによって行われ得る。
【0078】
天然のFasリガンドよりも長く細胞膜に残存し得るFasリガンドポリペプチドが構築されているかどうかを決定するためのアッセイは、Tanakaら、NatureMedicine 2(3):317−322(1996)に記載されているように、抗Fasリガンド抗体を使用し、そして例えば、同じ細胞型において発現される天然のFasリガンドと、変異体Fasリガンドポリペプチドとの染色強度の比較によって行われ得る。
【0079】
診断および治療手順
本発明の実施は、それらが示しているかもしれない特定の自己免疫について適切であるように、哺乳動物を診断することによって開始され得る。診断はまた、処置の進行をモニターするため、および例えば、継続された処置における投与量または頻度のようなパラメーターの改変を導くために、治療手順(therametric procedure)として処置の間継続され得る。Fasリガンド治療薬の投与についての適切性を決定することを補助し得るさらなる診断として、哺乳動物のリンパ球におけるFasの発現レベルの分析、および自己免疫の部位から離れたリンパ球と自己免疫の部位に近接するリンパ球との間のこれらのレベルの比較が挙げられる。処置されるべき哺乳動物の自己免疫疾患は、細胞表面のFas抗原を検出することによってモニターされ得る。このモニタリングは、哺乳動物リンパ球のサンプルをFas特異的抗体を接触させ、そしてサンプルとの抗体の結合を検出することを含み得る。
【0080】
遺伝子送達ビヒクル
哺乳動物における発現のために哺乳動物に送達されるべき本発明の治療薬のコード配列(例えば、Fasリガンドコード配列)を含むか、または送達のためのFasリガンドの全てもしくは部分の核酸配列をまた含む、構築物の送達のための遺伝子治療ビヒクルが、局所的または全身的のいずれかで投与され得る。これらの構築物は、インビボまたはエキソビボでの様式で、ウイルスベクターアプローチまたは非ウイルスベクターアプローチを利用し得る。このようなコード配列の発現は、内因性の哺乳動物プローモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導され得る。インビボでのコード配列の発現は、構成的であり得るか、または調節され得るかのいずれかである。Fasリガンドが哺乳動物において発現される場合、これは、可溶性のFasリガンドとして発現され得るか、または膜結合Fasリガンドとして発現され得、これらの両方またはいずれかは、例えば、全てのFasリガンド、またはFasリガンドの生物学的に活性な部分、改変体、誘導体、もしくは融合体を含む。
【0081】
本発明は、意図されるFasリガンドの核酸配列を発現し得る遺伝子送達ビヒクルを含む。遺伝子送達ビヒクルは、好ましくは、ウイルスベクターであり、そしてより好ましくは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、またはアルファウイルスベクターである。ウイルスベクターはまた、アストロウイルス、コロナウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、トガウイルスのウイルスベクターであり得る。一般には、Jolly、CancerGene Therapy 1(1994)51−64、Kimura、Human Gene Therapy 5(1994)845−852、Connelly、HumanGene Therapy 6(1995)185−193、およびKaplitt、Nature Genetics 6(1994)148−153を参照のこと。
【0082】
レトロウイルスベクターは当該分野で周知であり、そして本発明者らは、以下を含む任意のレトロウイルス遺伝子治療ベクターが本発明において使用可能であることを意図した:B型、C型、およびD型レトロウイルス、異種栄養性レトロウイルス(例えば、NZB-X1、NZB-X2、およびNZB9-1(O'Neill,J.Vir.53(1985)160を参照のこと))、多栄養性(polytropic)レトロウイルス(例えば、MCFおよびMCF-MLV(Kelly,J.Vir.45(1983)291を参照のこと))、スプマウイルス、ならびにレンチウイルス。RNATumor Viruses、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、1985を参照のこと。
【0083】
レトロウイルス遺伝子治療ベクターの一部は、異なるレトロウイルス由来であり得る。例えば、レトロベクターのLTRはマウス肉腫ウイルスであり得、tRNA結合部位はラウス肉腫ウイルス由来であり得、パッケージングシグナルはマウス白血病ウイルス由来であり、そして第二鎖合成起点はニワトリ白血病ウイルス由来であり得る。
【0084】
これらの組換えレトロウイルスベクターは、それらを適切なパッケージング細胞株に導入することによって形質導入可能なレトロウイルスベクター粒子を作製するために使用され得る(1991年11月29に出願された、米国出願第07/800,921号を参照のこと)。レトロウイルスベクターは、宿主細胞のDNA中への部位特異的組み込みのために、レトロウイルス粒子へのキメラインテグラーゼ酵素の組み込みによって、構築され得る。1995年5月22日に出願された米国出願第08/445,446号を参照のこと。組換えウイルスベクターが複製欠損組換えウイルスであることが好ましい。
【0085】
上記のレトロウイルスベクターとの使用に適切なパッケージング細胞株は、当該分野で周知であり、容易に調製され(1994年5月9日に出願された、米国出願第08/240,030号を参照のこと;WO 92/05266もまた参照のこと)、そして組換えベクター粒子の産生のためのプロデューサー細胞株(ベクター細胞株または「VCL」とも呼ばれる)を作製するために使用され得る。好ましくは、パッケージング細胞株は、ヒト血清中での不活化を排除するヒトの親細胞(例えば、HT1080細胞)またはミンクの親細胞株から作製される。
【0086】
レトロウイルス遺伝子治療ベクターの構築に好ましいレトロウイルスとして、ニワトリ白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、マウス白血病ウイルス、ミンク細胞フォーカス形成ウイルス、マウス肉腫ウイルス、網細内皮症ウイルス、およびラウス肉腫ウイルスが挙げられる。特に好ましいマウス白血病ウイルスとして以下が挙げられる:4070Aおよび1504A(HartleyおよびRowe,J.Virol 19(1976)19-25)、Abelson(ATCC No.VR-999)、Friend(ATCCNo.VR-245)、Graffi、Gross(ATCC No.VR-590)、Kirsten、ハーベイ肉腫ウイルスならびにラウシャー白血病ウイルス(ATCCNo.VR-998)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(ATCC No.VR-190)。このようなレトロウイルスは、Rockville、Marylandのアメリカンタイプカルチャーコレクション(「ATCC」)のような寄託機関または保存機関から入手可能であり得るか、または一般に利用可能な技術を使用して既知の供給源から単離され得る。
【0087】
本発明で使用可能な例示的な公知のレトロウイルス遺伝子治療ベクターとして、以下に記載するものが挙げられる:GB 2200651、EP 0415731、EP0345242、WO 89/02468:WO 89/05349、WO 89/09271、WO90/02806、WO 90/07936、WO 94/03662、WO 93/25698、WO 93/25234、WO 93/11230、WO 93/10218、WO93/10218、WO 91/02805、米国特許第5,219,740号、同第4,405,712号、同第4,861,719号、同第4,980,289号、および同第4,777,127号、米国出願第07/800,921号、Vile、CancerRes 53(1993)3860-3864、Vile Cancer Res 53(1993)962-967、Ram、Cancer Res 53(1993)83-88、Takamiya、JNeurosci Res 33(1992)493-503、Baba、J Neurosurg 79(1993)729-735、Mann、Cell 33(1983)153、Cane、ProcNatl Acad Sci 81(1984)6349、およびMiller、Human Gene Therapy 1(1990)。
【0088】
ヒトのアデノウイルス遺伝子治療ベクターもまた当該分野で公知であり、本発明で使用可能である。例えば、Berkner、Biotechniques 6(1988)616、およびRosenfeld、Science 252(1991)431、およびWO93/07283、WO 93/06223、およびWO 93/07282を参照のこと。本発明で使用可能な例示的な既知のアデノウイルス遺伝子治療ベクターとして、上記の参考文献に記載されているもの、および以下に記載されているものが挙げられる:WO94/12649、WO 93/03769、WO 93/19191、WO 94/28938、WO 95/11984、WO 95/00655、WO95/27071、WO 95/29993、WO 95/34671、WO 96/05320、WO 94/08026、WO 94/11506、WO93/06223、WO 94/24299、WO 95/14102、WO 95/24297、WO 95/02697、WO 94/28152、WO94/24299、WO 95/09241、WO 95/25807、WO 95/05835、WO 94/18922、およびWO 95/09654。あるいは、Curiel、Hum.Gene Ther.3(1992)147-154に記載されるように死滅アデノウイルスに連結されたDNAの投与が使用され得る。
【0089】
本発明の遺伝子送達ビヒクルはまた、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。本発明での使用のためのこのようなベクターの優れた好ましい例は、Srivastava、WO93/09239に開示されているAAV-2に基づくベクターである。最も好ましいAAVベクターは、2つのAAV逆末端反復を含む。ここで、天然のD配列がヌクレオチドの置換によって改変されており、その結果少なくとも5つの天然のヌクレオチドおよび18個までの天然のヌクレオチドが(好ましくは、少なくとも10個の天然のヌクレオチドおよび18個までの天然のヌクレオチド、最も好ましくは、10個の天然のヌクレオチド)が、維持されており、D配列の残りのヌクレオチドが欠失しているかまたは非天然のヌクレオチドで置換されている。AAV逆末端反復の天然のD配列は、各AAV逆末端反復中に20個の連続するヌクレオチドの配列(すなわち、各末端に1つの配列が存在する)である。これは、HP形成には関連しない。非天然の置換ヌクレオチドは、同じ部位で天然のD配列中に見出されるヌクレオチドとは異なる任意のヌクレオチドであり得る。他の使用可能な例示的なAAVベクターは、pWP-19、pWN-1であり、これらの両方が、Nahreini、Gene124(1993)257-262に開示されている。このようなAAVベクターの別の例は、psub201である。Samulski、J.Virol.61(1987)3096を参照のこと。別の例示的なAAVベクターは、Double-DITRベクターである。Double D ITRを作製する方法は、Carter、米国特許第5,478,745号に開示されている。なお他のベクターは、以下に開示されているベクターである:Carter、米国特許第4,797,368号、およびMuzyczka、米国特許第5,139,941号、Chartejee、米国特許第5,474,935号、およびKotin、PCT特許公開WO94/288157号。本発明で利用可能なAAVベクターのなおさらなる例は、SSV9AFABTKneoであり、これは、AFPエンハンサーおよびアルブミンプロモーターを含み、そして肝臓での優先的な発現を指向する。その構造および作製方法は、Su、HumanGene Therapy 7(1996)463−470に開示されている。さらなるAAV遺伝子治療ベクターが、US 5,354,678、US 5,173,414、US5,139,941、およびUS 5,252,479に記載されている。
【0090】
本発明の遺伝子治療ベクターはまた、ヘルペスベクターを含む。主なおよび好ましい例は、チミジンキナーゼポリペプチドをコードする配列を含む単純ヘルペスウイルスベクター(例えば、U.S.5,288,641およびEP 0176170(Roizman)に開示されるベクター)である。さらなる例示的な単純ヘルペスウイルスベクターは、WO95/04139(Wistar Institute)に開示されるHFEM/ICP6-LacZ、Geller,Science241(1988)1667-1669ならびにWO 90/09441およびWO 92/07945に記載されるpHSVlac、Fink,Human GeneTherapy 3(1992)11-19に記載されるHSV Us3::pgC-lacZ、ならびにEP 0453242(Breakefield)に記載されるHSV7134,2RH105およびGAL4、ならびに受託番号ATCC VR-977およびATCC VR-260としてATCCに寄託されるベクターを含む。
【0091】
本発明者らはまた、アルファウイルス遺伝子治療ベクターが本発明において使用され得ることを意図する。好ましいアルファウイルスベクターは、シンドビスウイルスベクター、トガウイルス、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67;ATCC VR-1247)、ミドルバーグウイルス(ATCC VR-370)、ロス川ウイルス(ATCCVR-373;ATCC VR-1246)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス((ATCC VR923;ATCC VR-1250;ATCC VR-1249;ATCCVR-532)、ならびに米国特許第5,091,309号、同第5,217,879号、およびWO 92/10578に記載されるベクターである。より特に、1995年3月15日に出願された米国特許出願第08/405,627号および米国特許出願第08/198,450号、ならびにPCT特許公報WO94/21792、WO 92/10578、WO 95/07994、US 5,091,309、およびUS 5,217,879に記載されるアルファウイルスベクターは使用可能である。このようなアルファウイルスは、寄託物またはコレクション(例えば、Rockville,MarylandにおけるATCC)から得られ得るか、または一般的に利用可能な技術を用いて既知の供給源から単離され得る。好ましくは、低減された細胞傷害性を有するアルファウイルスベクターが使用される(共同所有の米国特許出願第08/679640号を参照のこと)。
【0092】
DNAベクター系(例えば、真核生物階層(layered)発現系)はまた、本発明のFasリガンド核酸を発現するために有用である。真核生物階層発現系の詳細な説明についてはWO95/07994を参照のこと。好ましくは、本発明の真核生物階層発現系はアルファウイルスベクター、そして最も好ましくは、シンドビスウイルスベクターに由来する。
【0093】
本発明における使用に適した他のウイルスベクターは、ポリオウイルス(例えば、ATCCVR-58ならびにEvans,Nature 339(1989)385およびSabin,J.Biol.Standardization 1(1973)115に記載されるウイルス);ライノウイルス(例えば、ATCCVR-1110およびArnold,J.Cell Biochem(1990)L401に記載されるウイルス);ポックスウイルス(例えば、カナリア痘ウイルス)またはワクシニアウイルス(例えば、ATCCVR-111およびATCC VR-2010、ならびにFisher-Hoch,Proc Natl Acad Sci 86(1989)317、Flexner,AnnNY Acad Sci 569(1989)86、Flexner,Vaccine 8(1990)17;US 4,603,112およびU.S.4,769,330ならびにWO89/01973に記載されるウイルス);SV40ウイルス(例えば、ATCC VR-305およびMulligan,Nature 277(1979)108およびMadzak,J.Gen.Vir73(1992)1533に記載されるウイルス);インフルエンザウイルス(例えば、ATCC VR-797)ならびにUS 5,166,057およびEnami,ProcNatl Acad Sci 87(1990)3802-3805、EnamiおよびPalese,J Virol 65(1991)2711-2713、ならびにLuytjes,Cell59(1989)110(McMicheal.,NE J Med 309(1983)13、ならびにYap,Nature 273(1978)238およびNature277(1979)108もまた参照のこと)に記載される逆遺伝学技術を用いて作製された組換えインフルエンザウイルス;EP 0386882およびBuchschacher,J.Vir.66(1992)2731に記載されるヒト免疫不全ウイルス;麻疹ウイルス(例えば、ATCCVR-67およびVR-1247、ならびにEP 0440219に記載されるウイルス);アウラウイルス(例えば、ATCC VR-368);ベバルウイルス(例えば、ATCCVR-600およびATCC VR-1240);キャバスー(Cabassou)ウイルス(例えば、ATCC VR-922);チクングニヤウイルス(例えば、ATCCVR-64およびATCC VR-1241);フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス(例えば、ATCC VR-924);ゲタウイルス(例えば、ATCCVR-369およびATCC VR-1243);キジラガク(Kyzylagach)ウイルス(例えば、ATCC VR-927);マヤロウイルス(例えば、ATCCVR-66);ムカンボウイルス(例えば、ATCC VR-580およびATCC VR-1244);ヌヅムウイルス(例えば、ATCC VR-371);ピクスナウイルス(例えば、ATCCVR-372およびATCC VR-1245);トナテ(Tonate)ウイルス(例えば、ATCC VR-925);トリニティウイルス(例えば、ATCCVR-469);ユナウイルス(例えば、ATCC VR-374);ワトロアウイルス(例えば、ATCC VR-926);Y-62-33ウイルス(例えば、ATCCVR-375);O’Nyongウイルス、東部脳炎ウイルス(例えば、ATCC VR-65およびATCC VR-1242);西部脳炎ウイルス(例えば、ATCCVR-70、ATCC VR-1251、ATCC VR-622、およびATCC VR-1252);ならびにコロナウイルス(例えば、ATCC VR-740およびHamre,ProcSoc Exp Biol Med 121(1966)190に記載されるウイルス)に由来するベクターを含む。
【0094】
本発明の組成物の細胞への送達は、上述のウイルスベクターに限定されない。他の送達方法および媒体(例えば、核酸発現ベクター、殺傷アデノウイルス単独に連結されたまたは連結されていないポリカチオン性凝縮DNA(例えば、1994年12月30日に出願された米国特許出願第08/366,787号およびCuriel,Hum Gene Ther3(1992)147-154を参照のこと)、リガンド連結DNA(例えば、Wu,J Biol Chem 264(1989)16985-16987を参照のこと)、真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、1994年5月9日に出願された米国特許出願第08/240,030号および米国特許出願第08/404,796号を参照のこと)、光重合されたヒドロゲル物質の沈殿、米国特許第5,149,655号に記載される携帯型遺伝子導入パーティクルガン、US5,206,152およびWO 92/11033に記載される電離放射線、核電荷中和、または細胞膜との融合)が使用され得る。さらなるアプローチは、Philip,MolCell Biol 14(1994)2411-2418およびWoffendin,Proc Natl Acad Sci 91(1994)1581-585に記載される。
【0095】
粒子媒介遺伝子導入が使用され得る(例えば、米国特許出願第60/023,867号を参照のこと)。簡単には、配列は、高レベル発現のための従来の制御配列を含む従来のベクターに挿入され得、次いで合成遺伝子導入分子(例えば、細胞標的リガンド(例えば、WuおよびWu,J.Biol.Chem.262(1987)4429-4432に記載されるアシアロオロソムコイド、Hucked,BiochemPharmacol 40(1990)253-263に記載されるインシュリン、Plank,Bioconjugate Chem 3(1992)533-539に記載されるガラクトース、ラクトース、またはトランスフェリン)に連結された、ポリリジン、プロタミン、およびアルブミンのようなポリマー性DNA結合カチオン)とインキュベートされ得る。
【0096】
裸のDNAもまた使用され得る。例示的な裸のDNAの導入方法は、WO 90/11092およびUS5,580,859に記載される。取り込み効率は、生分解性ラテックスビーズを用いて改善され得る。DNAコートラテックスビーズは、ビーズによるエンドサイトーシス開始後に効率的に細胞に輸送される。この方法は、疎水性を増大させ、それによりエンドソーム破裂およびDNAの細胞質への放出を容易にするためのビーズ処理によりさらに改善され得る。
【0097】
遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、U.S.5,422,120、WO95/13796、WO 94/23697、WO 91/144445およびEP 524,968に記載される。非ウイルス送達において、共同所有の米国特許出願第60/023,867号に記載されるように、Fasリガンドポリペプチドをコードする核酸配列は、高レベル発現のための従来の制御配列を含む従来のベクターに挿入され得、次いで合成遺伝子導入分子(例えば、細胞標的リガンド(例えば、アシアロオロソムコイド、インシュリン、ガラクトース、ラクトース、またはトランスフェリン)に連結された、ポリリジン、プロタミン、およびアルブミンのようなポリマー性DNA結合カチオン)とインキュベートされ得る。他の送達系は、種々の組織特異的または偏在的に活性なプロモーター制御下の遺伝子を含むDNAをカプセル化するためのリポソーム使用を含む。使用に適したさらなる非ウイルス送達は、機械的送達系(例えば、Woffendinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91(24):11581-11585に記載されるアプローチ)を含む。さらに、コード配列およびこのような発現の産物は、光重合されたヒドロゲル物質の沈殿により送達され得る。コード配列送達に使用され得る遺伝子送達のための他の従来方法は、例えば、U.S.5,149,655に記載される携帯型遺伝子導入パーティクルガンの使用、US5,206,152およびWO 92/11033に記載される、導入される遺伝子を活性化するための電離放射線の使用を含む。
【0098】
例示的なリポソームおよびポリカチオン性遺伝子送達ビヒクルは、US 5,422,120および同4,762,915、WO95/13796、WO 94/23697およびWO 91/14445、EP 0524968、ならびにStryer,Biochemistry,236-240頁(1975)、W.H.Freeman,SanFrancisco,Szoka,Biochem Biophys Acta 600(1980)1、Bayer,Biochem Biophys Acta550(1979)464、Rivnay,Meth Enzymol 149(1987)119、Wang,Proc Natl Acad Sci84(1987)7851、Plant,Anal Biochem 176(1989)420に記載されるものである。
【0099】
薬学的組成物および治療方法
本発明は、活性化リンパ球(活性化T細胞または活性化B細胞を含む)を含む自己免疫疾患に悩む哺乳動物を、FasリガンドまたはFasリガンド由来治療剤(例えば、治療剤としてのFasリガンドポリペプチドもしくは哺乳動物における発現のためのFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または低分子Fasリガンドアゴニスト治療剤のいずれか)の投与により処置する方法を開示する。本発明の方法および組成物により処置され得る自己免疫疾患は、任意の自己免疫疾患または移植拒絶(例えば、本明細書中に列挙される自己免疫疾患を含むがそれらに限定されない)を含む。
【0100】
Fasリガンドは、例えば、組換え的に発現されたポリペプチド、またはFasリガンドポリペプチドの改変体、誘導体、もしくは融合タンパク質として投与され得、哺乳動物に局所的または全身的のいずでかで送達され得る。Fasリガンド、Fasリガンドの誘導体もしくは改変体、またはFasリガンド融合体をコードするDNAもしくはRNAは、遺伝子治療プロトコルにおいて、哺乳動物における発現のための調節領域を含む裸のプラスミドDNAとして、または哺乳動物における発現のためのウイルスベクターにおいて投与され得る。発現のためのFasリガンドポリペプチドの送達は、送達を容易にし得る薬学的に受容可能なキャリアを用いて達成され得る。自己免疫疾患を有する哺乳動物のFasリガンド由来治療剤での処置は、自己免疫疾患の改善もしくは寛解、または自己免疫に起因する臨床徴候の非存在をもたらし得る。
【0101】
本発明は、本発明がどのように働くかという理論に限定されないが、自己認識を引き起こし、続いて自己免疫を傷つける活性化T細胞およびB細胞はFasを発現することが発明者により断定される。Fasリガンドを発現するか、もしくはFasリガンドを発現させることにより、またはFasリガンド由来治療剤を投与することにより、Fasを発現する活性化リンパ球は、利用可能にされたFasリガンド部分を結合することによるアポトーシスのために優先的に標的化される。FasリガンドポリペプチドまたはFasリガンド由来治療剤は、自己免疫を示す領域(例えば、処置される特定の自己免疫疾患を特徴付けた局在化領域)に投与され得る。これは、投与されるFasリガンドまたは他の治療剤と、その領域の細胞で発現される自己抗原に特異的なFas発現活性化T細胞およびB細胞との間の接触を最適化する。従って、この領域の細胞はまた、遺伝子送達ビヒクルの補助により、領域に投与されるFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するための良好な候補物である。従って、本発明の種々の変更および適用において、Fasリガンドポリペプチドの発現は、活性化T細胞およびB細胞による攻撃下にある細胞における発現を容易にするために組換え操作され得る。移植拒絶の場合、本発明者は、多くの細胞型の細胞表面上で偏在的に発現されるタンパク質を結合し得る分子の結合部分とのFasリガンドポリペプチド融合を提案する。この結合部分は、例えば、ヘパリンであり得、そして結合する細胞表面上の分子は、グリコサミノグリカンであり得る。あるいは、結合部分は、任意の選択された細胞表面抗原に特異的な単鎖抗体の結合ドメインであり得る。FasリガンドのFas結合部分およびヘパリンのグリコサミノグリカン結合部分の発現され、そして精製された融合タンパク質は、移植片の調製において器官、組織、または細胞に投与され得、そして移植の際に、この器官、組織、または細胞は、活性化T細胞またはB細胞(同種異系移植片を別の方法で攻撃し、そして免疫学的に拒絶する)に対する防御の第一線として利用可能なFasリガンドポリペプチド部分を有する。
【0102】
本明細書中で使用する投与または投与することは、治療剤または治療剤の組合せを哺乳動物に送達するプロセスをいう。投与プロセスは、治療剤(単数または複数)および所望の効果に依存して変えられ得る。投与は、例えば、非経口送達または経口送達により、治療剤に適した任意の手段により達成され得る。非経口送達は、例えば、皮下的、静脈内的、筋肉内的、動脈内的、器官組織への注射、粘膜的、肺的、局所的、またはカテーテルベースであり得る。経口手段(錠剤または他の胃腸送達手段(飲用可能な液体を含む)を含む)は、口によるものである。粘膜送達は、例えば、鼻腔内送達を含み得る。肺送達は、薬剤の吸入を含み得る。カテーテルベース送達は、イオン導入カテーテルベース送達による送達を含み得る。投与はまた、一般的に、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、緩衝液、ポリペプチド、ペプチド、多糖、結合体、リポソーム、および液体)を用いた送達を含む。遺伝子治療プロトコルは、治療剤が、哺乳動物において転写物またはポリペプチドとして発現された場合に治療目的を達成し得るポリヌクレオチドである投与とみなされ、そして非経口送達手段および経口送達手段の両方に適用され得る。このような投与手段は、処置される疾患に適切であるように選択される。例えば、疾患が器官ベースである場合、送達は局所的であり得、例えば、疾患が全身的である場合、送達は全身的であり得る。
【0103】
共同投与は、患者の所定処置の経過における1つ以上の治療剤の投与をいう。薬剤は、同じ薬学的キャリアまたは異なるキャリアを用いて投与され得る。それらは、同じまたは異なる投与手段により投与され得る。薬剤は、同じ型の薬剤または異なる型の薬剤であり得、例えば、異なる型は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または低分子を含み得る。投与時間は、正確に同じ時間であり得るか、または1つの治療剤は、別の薬剤の前または後に投与され得る。従って、共同投与は、同時または連続的であり得る。治療剤の所定の組み合わせのための正確なプロトコルは、他の考慮の中で薬剤および処置される状態を考慮して決定される。
【0104】
用語インビボ投与は、哺乳動物における発現のための、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの患者(例えば、哺乳動物)への投与をいう。特に、直接的なインビボ投与は、細胞を哺乳動物から取り出すことなく、哺乳動物細胞をコード配列でトランスフェクトすることを含む。従って、直接的インビボ投与は、患者細胞における発現をもたらす、自己免疫疾患に悩む領域における目的のポリペプチドをコードするDNAの直接注射を含み得る。
【0105】
用語エクスビボ投与は、細胞が患者(例えば、哺乳動物)から取り出された後、細胞(例えば、自己免疫攻撃下にある細胞集団に由来する細胞)をトランスフェクトすることをいう。トランスフェクション後、次いで、細胞は、哺乳動物に戻される。エクスビボ投与は、細胞を哺乳動物から取り出し、必要に応じて形質転換すべき細胞(すなわち、自己免疫機構による攻撃下の細胞)について選択し、選択された細胞を複製不可能にし、選択された細胞を発現のための遺伝子(すなわち、Fasリガンド)をコードするポリヌクレオチド(発現を容易にするための調節領域もまた含む)で形質転換し、そしてFasリガンド発現のために形質転換された細胞を患者に戻し置くことにより達成され得る。
【0106】
治療的に有効な量は、所望の治療結果を生じるその量である。例えば、所望の治療効果が自己免疫からの寛解である場合、治療的に有効な量は、寛解を容易にするその量である。治療的に有用な量は、例えば、数日または数週間の投与を含む投薬プロトコルにおいて投与される量であり得る。治療効果が、例えば、自己免疫疾患徴候の出現間の哺乳動物における自己免疫応答影響の低減である場合、哺乳動物においてこれを達成するための薬剤の有効な量は、自己免疫徴候の低減をもたらすその量である。
【0107】
用語薬学的に受容可能なキャリアは、治療剤(例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、低分子、ペプトイド、またはペプチド)投与のためのキャリアをいい、組成物を受ける個体に有害な抗体の産生をそれ自体が誘導せず、そして過度な毒性なく投与され得る任意の薬学的に受容可能なキャリアをいう。本発明の別の局面では、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組合せて上記のような組換えウイルスベクターを含む、薬学的組成物が提供される。このような薬学的組成物は、液体溶液または投与前に溶液に懸濁される(例えば、凍結乾燥された)固体形態のいずれかとして調製され得る。さらに、組成物は、表面投与、注射、経口投与、または直腸投与のいずれかに適したキャリアまたは希釈剤を用いて調製され得る。薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに無毒である。注射可能な溶液のためのキャリアまたは希釈剤の代表的な例は、水、等張生理食塩水溶液(好ましくは、生理学的pHに緩衝化される)(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水またはTris緩衝化生理食塩水)、マンニトール、デキストロース、グリセロール、およびエタノール、ならびにポリペプチドまたはタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)を含む。特に好ましい組成物は、10mg/mlマンニトール、1mg/mlHSA、20mM Tris(pH7.2)、および150mM NaCl中にベクターまたは組換えウイルスを含む。この場合、組換えベクターは約1mgの物質を示すので、高分子量物質の1%未満、および総物質(水を含む)の1/100,000未満であり得る。この組成物は、少なくとも6ヶ月間-70ECで安定である。
【0108】
本発明の薬学的組成物はまた、細胞分裂、故に組換えレトロウイルスベクターの取込みおよび組込みを刺激する因子をさらに含み得る。組換えウイルスを保存することは、本明細書中に全体が参考として援用される、「組換えウイルスを保存するための方法」という表題の米国出願(1993年10月12日に出願された、米国特許出願第08/135,938号)に記載される。
【0109】
本発明の提案された治療を構成する治療剤の全ては、薬剤のための薬学的に受容可能なキャリアを含む適切な薬学的組成物に組込まれ得る。薬剤のための薬学的キャリアは、同じであり得るか、または各薬剤と異なり得る。適切なキャリアは、大きなゆっくりと代謝される巨大分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および粒子中の不活性ウイルス)であり得る。このようなキャリアは、当業者に周知である。薬学的に受容可能な塩(例えば、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など);および有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩など))がそのキャリア中で使用され得る。薬学的に受容可能な賦形剤の完全な議論は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.1991)において入手可能である。治療組成物中の薬学的に受容可能なキャリアは、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール)を含み得る。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤)、pH緩衝化物質などは、このようなビヒクルに存在し得る。代表的に、治療組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとして注射可能なように調製される;注射前の液体ビヒクル中の液体または懸濁物に適した固体形態もまた調製され得る。リポソームは、薬学的に受容可能なキャリアの定義内に含まれる。
【0110】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組合せて、組換えレトロウイルスまたは上記のベクター構築物のうちの1つを有するウイルスを含む、薬学的組成物が提供される。組成物は、液体溶液または投与前に溶液に懸濁される(例えば、凍結乾燥された)固体形態のいずれかとして調製され得る。さらに、組成物は、表面投与、注射、経口投与、または直腸投与のいずれかに適したキャリアまたは希釈剤を用いて調製され得る。
【0111】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに無毒である。注射可能な溶液のためのキャリアまたは希釈剤の代表的な例は、水、等張生理食塩水溶液(好ましくは、生理学的pHで緩衝化される)(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水またはTris緩衝化生理食塩水)、マンニトール、デキストロース、グリセロール、およびエタノール、ならびにポリペプチドまたはタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)を含む。ベクターまたは組換えウイルスは、10mg/mlマンニトール、1mg/mlHSA、20mM Tris(pH7.2)、および150mM NaClで薬学的組成物中で送達され得る。この場合、組換えベクターは約1gの物質を示すので、高分子量物質の1%未満および総物質(水を含む)の1/100,000未満であり得る。この組成物は、少なくとも6ヶ月間-70ECで安定である。
【0112】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、液体溶液または投与前に溶液に懸濁され得る(例えば、凍結乾燥された)固体形態のいずれかとして組成物を提供するために、遺伝子送達ビヒクルと組み合わされ得る。2つ以上の遺伝子送達ビヒクルは、代表的に、伝統的な直接経路(例えば、頬/舌下、直腸、経口、経鼻、局所(例えば、経皮および眼)、膣、肺、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、眼内、鼻腔内、または静脈内)を介して、あるいは間接的に投与される。
【0113】
本発明の任意の治療薬(therapeutic)(例えば、哺乳動物における発現のためのポリヌクレオチドを含む)は、当該分野で公知の方法に従って腸溶性錠剤またはゲルカプセルに処方され得る。これらは、以下の特許:US4,853,230、EP 225,189、AU 9,224,296、AU 9,230,801、およびWO 92144,52に記載される。このようなカプセルは、空腸に標的化されるために経口的に投与される。経口投与後1〜4日で、ポリペプチド発現、または例えば、リボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドによる発現阻害は、例えば、発現されるかまたは発現されないタンパク質に対する抗体により血漿および血液中で測定される。
【0114】
遺伝子送達ビヒクルは、U.S.4,411,648およびU.S.5,222,936、U.S.5,286,254;ならびにWO94/05369に記載されるように、例えば、注射、パーティクルガン、局所的投与、非経口投与、吸入、またはイオン導入送達により哺乳動物に導入され得る。
【0115】
治療組成物または治療剤は、自己免疫疾患を改善し得るか、またはFasリガンド治療剤投与の治療利益を増強し得る、他の治療剤と共に投与され得る。例えば、アレルギー反応処置のための投与は、粘膜、鼻、気管支、または肺組織に存在する細胞における発現のためのFasリガンドポリヌクレオチドのエアロゾル投与によるものであり得、そして最も有利には、例えば、アレルギー反応が静まるまでの時間の間、毎日数回、鼻またはエアロゾルスプレーによる反復投与で投与され得る。
【0116】
遺伝子送達ビヒクルは、哺乳動物に直接的に(例えば、直接注射により)、あるいはエクスビボ形質導入された標的細胞の使用により単一部位または複数部位で投与され得る。本発明はまた、遺伝子送達ビヒクルの投与に適切な薬学的組成物(例えば、種々の賦形剤を含む)を提供する。
【0117】
Fasリガンドポリペプチド、改変体、誘導体、アナログ、変異体、またはキメラの発現を指向するベクター構築物は、自己免疫を示す部位(例えば、膵臓、腎臓、肝臓、関節、脳、脊髄液、皮膚、または身体の他の領域もしくは器官)に直接的に投与され得る。種々の方法は、ベクター構築物を直接的に投与するために、本発明の状況内で使用され得る。例えば、その領域で作用する動脈が同定され得、そしてベクターは、ベクターをこの部位に直接的に送達するためにこのような動脈に注射され得る。同様に、ベクター構築物は、例えば、ベクター構築物を含む局所的薬学的組成物の適用により、皮膚表面に直接的に投与され得る。
【0118】
直接投与において、Fasリガンド治療剤および他の抗自己免疫薬剤を含む組み合わせ治療剤は、共に投与され得る。共同投与は同時に起こり得、例えば、同じベクターに薬剤をコードするポリヌクレオチドを置くことによるか、またはポリヌクレオチド、ポリペプチド、もしくは他の薬物を問わず、薬剤を同じ薬学的組成物中に入れることによるか、またはほぼ同じ時間でかつ恐らく同じ位置に注射される、異なる薬学的組成物中の薬剤を投与することにより達成され得る。共同投与が同時に起こらない場合(例えば、プロドラックアクチベーター投与後のプロドラック投与の場合)、第2の薬剤は、治療目的に適切なように、直接注射により投与され得る。従って、例えば、プロドラックの投与の場合、プロドラックは、プロドラックアクチベーターと同じ位置に投与される。従って、共同投与プロトコルは、治療目的を達成するための投与の組み合わせを含み得る。さらに、共同投与は、必要な場合、後の投与を含み得る(例えば、Fasリガンドのインビボ直接注射投与を反復する)。
【0119】
本発明の状況では、取り出された細胞は、同じ動物に、または別の同種異系の動物もしくは哺乳動物に戻され得ることが理解されるべきである。このような場合、一般的に、組織適合性を動物に合わせることが好ましい(必ずしもそうとは限らないが、例えば、Yamamotoら、「実験FIVワクチンの効力」1st International Conference of FIVResearchers,University of California at Davis,September 1991を参照のこと)。
【0120】
細胞は、患者の種々の位置から取り出され得る。さらに、本発明の他の実施態様では、ベクター構築物は、例えば、皮膚由来の細胞(皮膚繊維芽細胞)または血液由来の細胞(例えば、末梢血白血球)に挿入され得る。所望であれば、細胞の特定の画分(例えば、T細胞部分集合または幹細胞)はまた、血液から特異的に取り出され得る(例えば、PCT WO 91/16116、「免疫選択デバイスおよび方法」という表題の出願を参照のこと)。次いで、ベクター構築物は、任意の上記の技術を利用して取り出された細胞と接触され得、続いて細胞は、温血動物(好ましくは、自己免疫を示す領域の付近へまたは付近内)に戻され得る。
【0121】
一旦患者(例えば、哺乳動物)が診断されると、本発明の実施は、Fasリガンド治療剤を提供すること、および処置される特定の自己免疫疾患に適した様式および用量でそれを哺乳動物に投与すること、ならびに治療剤の連続したまたは改変された投与の必要性を決定するために哺乳動物をモニターすることを含む。本発明の実施は、処置される疾患を同定し、そして標的化遺伝子治療が適用され得る有望な細胞型または身体領域を決定することにより達成される。Fasリガンドポリヌクレオチド(哺乳動物における発現のための調節領域を有するプラスミド、または発現のためのウイルスベクターのいずれかを含む)は構築される。哺乳動物細胞のいくつかは取り出され、Fasリガンドをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、そしてFasリガンド発現のために哺乳動物に配置され得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、哺乳動物に、例えば、疾患が明白な領域において、その領域の哺乳動物細胞における発現のために投与され得る。
【0122】
従って、例えば、慢性関節炎リウマチの場合、洞(sinovoid)細胞は、Fasリガンドを用いてエキソビボでトランスフェクトされ得るか、または遺伝子送達ビヒクル中のFasリガンドは、大集団の洞細胞を含む関節に、これらの細胞におけるFasリガンドポリペプチド発現のために投与され得る。
【0123】
例えば、多発性硬化症処置において、Fasリガンドは、影響を受ける脳領域へ、または自己免疫反応型の活性化T細胞もしくはB細胞による攻撃下にある細胞でのFasリガンド発現を容易にするために脊髄液中に注射され得る。また、一例として、多発性硬化症の場合、FasリガンドDNAは哺乳動物脳に局所的に注射され得るか、または脊髄液に由来する乏突起膠細胞(oligodendrite)が取り出され、FasリガンドDNAでトランスフェクトされ、そして脊髄領域に戻され得る。
【0124】
さらに一例として、シェーグレン症候群を有する哺乳動物を処置するために、この疾患により標的化された器官は、注射によるFasリガンドポリペプチド投与のために選択される。また、一例として、シェーグレン症候群を患う哺乳動物について、冒された器官(例えば、腎臓)は同定され得、そしてFasリガンドDNAは器官に直接的に投与され得るか、または器官に由来する細胞は取り出され、トランスフェクトされ、そして哺乳動物のそれらの細胞におけるFasリガンド発現のために身体に戻され得る。
【0125】
例えば、移植拒絶を予防する場合、移植を受ける動物は、外来細胞、組織、または器官を攻撃するFasを発現するいずれの活性化患者細胞をも殺傷するために、Fasリガンド治療剤の局在的もしくは全身的投与を受け得るか、またはFasリガンドポリペプチドは、患者身体内で一旦器官を保護するために、移植の直前に器官外表面上の細胞において発現され得る。Fasリガンド治療剤の連続投与は、レシピエント免疫系が外来細胞、組織、または器官に順応する間、必要であり得る。
【0126】
Fasリガンド治療剤は、天然のFasリガンドに類似して作用することが期待される。従って、Fasを発現する細胞においてアポトーシス反応を引き起こすためにFasを3量体化する。従って、化学量論的に、臨床医は、Fasの所望の活性化およびFasを発現した細胞の後の死を達成するために、発現されるかさもなければ哺乳動物に投与される必要があるFasリガンドの量を知り得る。Fasリガンドの種々の提案された作用機構が説明され、そしてFasリガンド生成は、全体が参考として援用されるEP675 200に記載される。本発明の他の局面では、本明細書中に記載されるベクター構築物はまた、さらなる非ベクター由来遺伝子の発現を指向し得る。
【0127】
例えば、Fasリガンド投与と共に適用されるプロドラック系は、遺伝子治療のために安全な機構として作用し得るか、または組合せ治療剤として作用し得る。安全な機構として、プロドラックアクチベーター(例えば、HSVTK)は、Fasリガンドと共にベクターにおいて発現される。系が止められるべきと決定されると、プロドラック(例えば、ガンシクロビル)が投与され、そしてHSVTKはガンシクロビル(これはFasを発現する細胞を殺傷する)を活性化する。これは、臨床医に遺伝子治療間の制御手段を与える。HSV TK/ガンシクロビル系は、哺乳動物(そこで例えば、自己免疫がFasリガンド発現により悪化させられる)においてトランスフェクト細胞を不活化するために有用であり得る。HSVTK/ガンシクロビル系はまた、ちょうど記載されたようなHSV TK/ガンシクロビル系により提供されるプロドラック活性化を用いた細胞殺傷を達成するための、組合せ治療プロトコルにおける組み合わせ治療剤として投与され得る。
【0128】
プロドラックアクチベーターおよびプロドラックと共に、Fasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与を含む治療はまた免疫調節性であり得る。免疫調節性は、免疫応答に関与する1つ以上の細胞により製造される場合、または細胞に外因的に添加される場合、性質または効力が因子の非存在下で起こった免疫応答とは異なる免疫応答を引き起こす因子の使用をいう。応答の性質または効力は、当業者に公知の種々のアッセイ(例えば、細胞増殖(例えば、3Hチミジンの取り込み)を測定するインビトロアッセイおよびインビトロ細胞傷害アッセイ(例えば、51Cr放出を測定する)を含む)により測定され得る(Warnerら、AIDSRes.and Human Retroviruses 7:645-655,1991を参照のこと)。免疫調節因子は、インビボおよびエキソビボの両方で活性であり得る。このような因子の代表的な例は、サイトカイン(例えば、インターロイキン2、4、6、12および15(特に))、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、GM-CSF、G-CSF、ならびに腫瘍壊死因子(TNF)を含む。他の免疫調節因子は、例えば、CD3、ICAM-1、ICAM-2、LFA-1、LFA-3、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、B7.1-.3、b2-ミクログロブリン、シャペロン、またはそのアナログを含む。しかし、遺伝子送達ビヒクルが、サイトカインである免疫調節補因子を発現しない場合、このサイトカインは上記の組成物中に含まれ得るか、または上記の組成物とは別々に(同時にまたは後で)投与され得る。簡単には、このような実施態様で、免疫調節補因子は、好ましくは、ThePhysician’s Desk Referenceに指示されるような標準的なプロトコルおよび投薬量に従って投与される。例えば、αインターフェロンは、2〜4ヶ月間、100〜500万単位/日の投薬量で投与され得、そしてIL-2は、2〜12週間、1〜3回/日、10,000〜100,000単位/kg体重の投薬量で投与され得る。γインターフェロンは、例えば、Fasリガンド投与でより効果的な治療を達成するために、活性化T細胞においてFas発現をアップレギュレートするために2〜12週間、2〜3回/週、150,000〜1,500,000単位の投薬量で投与され得る。
【0129】
組み合わせ治療剤として、プロドラックアクチベーターは、そのベクターから、またはFasリガンドポリペプチドと同じベクターから発現され得る。いずれかのベクター系(単一ベクターまたは2つのベクター)は、インビボまたはエキソビボ手段により投与され得る。自己免疫治療において、例えば、HSVTKまたは他のプロドラックアクチベーターの添加は、Fasリガンドにより達成される効果を支持する免疫調節効果をさらに促進し、そしてさらにプロドラック添加は、トランスフェクト細胞の殺傷を活性化し得る。
【0130】
シャペロン分子は、ポリヌクレオチド治療薬の投与前、投与と同時に、または投与後に投与され得、そしてシャペロン分子は、例えば、熱ショックタンパク質(例えば、hsp70)であり得る。さらに、哺乳動物において発現されるポリヌクレオチドは、例えば、所望の標的細胞だけのポリヌクレオチド発現を確実にする目的のための、誘導プロモーター(例えば、組織特異的プロモーター)に連結され得る。さらに、ポリヌクレオチドを組織に効果的に送達する目的のために、ポリヌクレオチドは、その組織の細胞ゲノムへの組込みに適したヌクレオチド配列に隣接し得る。
【0131】
本発明のこのおよび多くの局面のために、ヒトを処置する有効性は、所定の自己免疫疾患の動物モデルにおいて最初に試験され得る。このような現存する動物モデルは、以下の自己免疫疾患の動物モデルを含む:シェーグレン症候群(自己免疫涙腺炎または免疫媒介唾液腺炎)、自己免疫心筋炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、炎症性心疾患、水銀誘導性腎臓自己免疫、インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病またはIDD)、胸腺摘出後自己免疫、中枢神経系(CNS)脱髄障害、CNS狼瘡、ナルコレプシー、重症筋無力症(MG)、グレーヴズ病、免疫媒介PNS障害、変形性関節症、慢性関節リウマチ、ブドウ膜炎、髄質嚢胞性線維症、自己免疫溶血性疾患、自己免疫脈管炎、卵巣自己免疫疾患、およびヒト強皮症(schleroderma)。
【0132】
複数の遺伝子送達ビヒクルは、動物または植物に投与され得る。好ましい実施態様において、動物は温血動物であり、さらに好ましくは、マウス、ニワトリ、ウシ、ブタ、ペット(例えば、ネコおよびイヌ)、ウマ、およびヒトからなる群より選択される。
【0133】
ポリペプチド治療薬(例えば、Fasリガンドまたは他のサイトカイン)について、投薬量は、約5μg〜約50μg/kg哺乳動物体重、また約50μg〜約5mg/kg、また約100μg〜約500μg/kg哺乳動物体重、および約200〜約250μg/kgの範囲であり得る。
【0134】
ポリペプチド治療薬(例えば、天然または変異体のFasリガンドポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)について、組織標的化投与のために、患者(例えば、哺乳動物)におけるポリヌクレオチド発現に依存して、コード配列または非コード配列の発現可能構築物を含むベクターは、遺伝子治療プロトコルにおける局所的投与のために約100ng〜約200mgDNA、また約500ng〜約50mg、また約1μg〜約2mg DNA、約5μg DNA〜約500μg DNA、および遺伝子治療プロトコルにおける局所投与間で約20μg〜約100μgの範囲、および例えば、注射または投与あたり約500μgの投薬量で投与され得る。より多くの発現が所望される場合、組織のより広い領域にわたって、連続プロトコル投与で再投与されるより多くの量もしくは同じ量のDNA、または例えば、腫瘍部位の異なる近接または密接した組織部分へのいくつかの投与は、陽性の治療結果をもたらすために必要とされ得る。
【0135】
低分子治療薬の投与について、低分子の効力に依存して、投薬量は変化し得る。非常に強力なインヒビターについて、哺乳動物キログラムあたりマイクログラム(μ)量は、例えば、約1μg/kg〜約500mg/kg哺乳動物体重、および約100μg/kg〜約5mg/kg、および約1μg/kg〜約50μg/kg、ならびに例えば、約10μg/kgの範囲で十分であり得る。ペプチドおよびペプトイドの投与について、効力はまた投薬量に影響し、そして約1μg/kg〜約500mg/kg哺乳動物体重、および約100μg/kg〜約5mg/kg、および約1μg/kg〜約50μg/kgの範囲であり得、そして通常用量は約10μg/kgであり得る。
【0136】
全ての場合において、臨床試験での日常的な実験は、各治療薬について最適治療効果のための治療範囲を限定し、各投与プロトコルおよび特定の哺乳動物への投与はまた、哺乳動物の状態および最初の投与に対する応答に依存して、効果的かつ安全な範囲内で調整される。
【0137】
本発明のさらなる目的、特性、および利点は、詳細な説明から明らかになる。しかし、本発明の精神および範囲内での種々の変化および改変がこの詳細な説明から当業者には明らかになるので、詳細な説明は、本発明の好ましい実施態様を示す一方、例示のみのために与えられることが理解されるべきである。また、本発明は、本発明の方法の機構のいずれの理論によっても限定されない。
【0138】
本発明は、特に有利な実施態様を示す以下の実施例を参照して例示される。しかし、これらの実施態様は例示であり、そしていかなる方法でも本発明を限定すると解釈されるべきではないことが留意されるべきである。
【実施例】
【0139】
実施例1
慢性関節リウマチを有するヒト患者を診断する。患者の洞細胞(sinovoidcell)を治療のために標的化する。患者の洞細胞集団を取り出し、そして温度感受性プロモーター制御下の、切断不能なFasリガンド(例えば、配列番号6または10)をコードするポリヌクレオチド(配列番号5または9)でトランスフェクトする。トランスフェクトされたエキソビボ細胞を、それらが取り出された患者関節の領域に戻す。加熱パッドを、切断不能な膜結合Fasリガンドの発現を誘導するために患者関節に適用する。患者を、徴候の低減についてモニターする。
【0140】
実施例2
多発性硬化症を有する患者を診断する。天然のFasリガンドより長く細胞膜上に残り得るFasリガンドポリペプチド融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターおよびその必要な成分を調製する。このAAVを患者の髄液に注射し、そして脳領域にも注射する。患者を改善についてモニターする場合、反復投与を指示する。
【0141】
実施例3
腎臓に現れたシェーグレン症候群を有するヒト患者を診断する。Fasリガンドポリヌクレオチドを、腎臓特異的プロモーターの調節制御下でプラスミドに調製する。プラスミドDNAをリポソームにカプセル化し、そして組成物を腎臓のいくつかの領域に直接的に投与する。患者を、改善について、および進行により指示されるようなFasリガンドの再投与についてモニターする。
【0142】
実施例4
Fasリガンドキメラを、Fasリガンドの推定切断部分を、同じファミリーポリペプチドの類似領域に由来する切断不能なフラグメントで置換することにより構築する。残基L127〜R144間のFasリガンドの17残基位置を、S83〜A100のCD30リガンド野生型フラグメントに対応する、17残基Fasリガンド分子で置換する。Fasリガンド分子の残りは、野生型Fasリガンド配列に対応する。得られた融合ポリペプチドは、天然のFasより長く膜結合性のままである。
【0143】
実施例5
(Fasリガンド130 6 142欠失ムテイン)
Fasリガンドの最初の129残基(M1〜Q130)をコードするcDNAフラグメント(配列番号1)(「MQ」フラグメントと呼ばれる)を単離し、そして標準的なPCR技術を用いて増幅した。Fasリガンドの残基143〜281(L143〜終止コドン)をコードする第2のcDNAフラグメント(配列番号3)(「LT」フラグメントと呼ばれる)を単離し、そして標準的なPCR技術を用いて増幅した。
【0144】
MQフラグメントの33末端を、Fasリガンド130 6 142欠失ムテインをコードするポリヌクレオチド(配列番号5)を生じる標準的なリガーゼ反応を用いてLTフラグメントMQ/LTの53末端に連結した。
【0145】
MQ/LTポリヌクレオチドを、適切な高力価レトロウイルスベクター(例えば、pLNL6(Benderら(1987)J.Virol.,61(5):1639-1646もしくは米国特許第5,324,655号、これらは本明細書中に参考として本明細書により援用される)、または哺乳動物宿主細胞(好ましくは、ヒト宿主細胞)に感染し得る市販のベクターにクローニングする。トランスフェクトまたは形質導入された宿主細胞を培養し、そこで切断不能なFasリガンド1306 142欠失ムテイン(すなわち、P1部位から残基+1〜+12を欠くムテイン)が上記の宿主細胞において発現され、そしてそれに表面結合したままである。
【0146】
実施例6
(Fasリガンド130 6 145欠失ムテイン)
Fasリガンドの最初の129残基(M1〜Q130)をコードするcDNAフラグメント(配列番号1)(「MQ」フラグメントと呼ばれる)を単離し、次いで標準的なPCR技術を用いて増幅した。Fasリガンドの残基146〜281(V146〜終止コドン)をコードする第2のDNAフラグメント(配列番号7)(「VT」フラグメントと呼ばれる)。
【0147】
MQフラグメントの33末端を、Fasリガンド130 6 145欠失ムテインをコードするMQ/VTポリヌクレオチド(配列番号9)を生じる標準的なリガーゼ反応を用いてVTフラグメントの53末端に連結した。
【0148】
MQ/VTポリヌクレオチドを、適切な高力価レトロウイルスベクター(例えば、pLNL6(Benderら(1987)J.Virol.,61(5):1639-1646もしくは米国特許第5,324,655号、これらの両方は本明細書中に参考として本明細書により援用される)、または哺乳動物宿主細胞に感染し得る市販の発現ベクターにクローニングする。トランスフェクトまたは形質導入された宿主細胞を培養し、そこで切断不能なFasリガンド1306 145欠失ムテイン(すなわち、P1部位から残基+1〜+15を欠くムテイン)が宿主細胞において発現され、そしてそれに表面結合したままである。
(配列表)
【0149】
【化1】


【0150】


【0151】


【0152】


【0153】


【0154】


【0155】


【0156】


【0157】


【0158】


【0159】


【0160】


【0161】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2008−104464(P2008−104464A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299883(P2007−299883)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【分割の表示】特願平10−522864の分割
【原出願日】平成9年11月13日(1997.11.13)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】