説明

G蛋白質共役型受容体のリガンド

本発明は、G-蛋白質共役型受容体(GPCR)のメンバーのための、アゴニスト及びアンタゴニストに富む化合物のライブラリーの生成に関する。当該ライブラリーは、下記一般式(I):


[式中、yは、1〜8の整数であり;
zは、0〜8の整数であり、但し、y及びzは同時に1でない;
Xは、-CO-(Y)k-(R1)n、又は-SO2-(Y)k-(R1)nであり;
kは、0又は1であり;
Yは、シクロアルキル又はポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;
又は、Yは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル又は荷電したアルキルカルボキシレート基から選ばれ;
又は各R1は、独立に、フルオロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノジアルキル、荷電したアミノトリアルキル又はカルボキシレート基であり;並びに
nは、1〜Mの任意の整数であり、ここで、mはシクロ-基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、例えばペプチド結合によって結合される1〜4のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、G蛋白質共役型受容体(GPCR)のメンバーのためのアゴニスト及びアンタゴニストに豊富に存在する化合物ライブラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
膜タンパク質のG蛋白質共役型受容体(GPCR)(7回-膜貫通型又は7TM受容体、及びサーパンタイン受容体としても知られている)のメンバーは、ホルモン、神経伝達物質、サイトカイン及び更に環境的物質例えば香り及び風味を含む、非常に幅広い細胞外シグナルに反応して細胞シグナリングを調節する。当受容体の細胞外部分(最も一般的には、受容体タンパク質のN-末端の端部)と相互作用するリガンドに反応して、該受容体は、一時的に活性化状態に変換される(この変換は、通常、R + L → R*L(Rは不活性受容体であり、R*は活性受容体であり、Lはリガンドである。)で示される)。
【0003】
その結果、受容体の活性化(又はR*)配置は、G-タンパク質ファミリーのメンバーと相互作用することができる。G-タンパク質は、グアニンヌクレオチドに結合する三量体の細胞内タンパク質の大ファミリーである。(おそらく「衝突共役」と称されるメカニズムによる)活性化受容体との相互作用において、G-タンパク質は、結合されたグアノシン二リン酸(GDP)をグアノシン三リン酸(GTP)と交換する。このGTP-結合体において、G-タンパク質は分解して、遊離のGαサブユニット及びβγダイマーを与える。Gα及びβγサブユニットは、カスケードの更なるシグナリングに関与できる。例えば、Gαサブユニットは、アデノシン三リン酸から環状アデノシン一リン酸(cAMP)を生成する、アデニル酸シクラーゼ(AC)酵素を活性化する。βγサブユニットは、PI-3-キナーゼ酵素ファミリーのメンバーを活性化できる。結局のところ、これらのシグナルは、収縮から運動、代謝、更にシグナリングまでの細胞挙動のほとんど全ての局面を調節できる。
【0004】
一旦活性化された場合には、シグナルは、多数のメカニズムによってゆっくりと停止する。Gαサブユニットに関連するGTPは、加水分解されてGDPに戻り、Gα及びβγサブユニットの再結合を生じ、不活性な三量体GDP-結合G-タンパク質を形成する。GPCR自体はまた、細胞内C-末端上でリン酸化され、G-タンパク質との更なる相互作用を抑制する。最後に、結合されたリガンドが分解してもよい。
【0005】
この一般的なシグナリング経路は、哺乳動物の生理機能の中心でかつ至るところに存在するため、認可された医薬の40%が分子標的中のGPCRを有する。同様に、宿主生理機構及び免疫性を崩壊するために、細菌は、G-タンパク質シグナリングを標的にするように進化してきた:例えば、コレラ菌(コレラの原因となる微生物)、Gsと称される幅広く分布するG-タンパク質のGαサブユニットを不可逆的に阻害するコレラ毒として知られているタンパク質を産生する。同様に、百日咳菌(百日咳の原因となる微生物)は、異なったG-タンパク質であるGiに同様な効果を有する百日咳毒として知られているタンパク質を産生する。
【0006】
GPCRシグナリングを調節する医薬を同定する1つのアプローチは、組換え又は生成GPCRを含む膜調製物に結合するリガンドと相互作用する能力について、非常にランダムな化合物ライブラリーを選別することである。かかるハイスループットスクリーニングにおいて、結合の検出を促進する様々な方法が採用されてきた。例えば、シンチレーション近接アッセイにおいて、放射性同位体標識リガンドの受容体への結合は、放射性核種を、核種崩壊(nucleide decay)のような受容体に結合されたシンチレーション分子に近接させ、検出及び定量され得る光が放射される。あるいは、リガンドは、蛍光的に標識することができ、結合は、(リガンドが受容体への結合に固定される場合には、蛍光タグの回転自由度の減少に依拠する)蛍光偏光によって検出される。
【0007】
これらの技術は場合によっては成功しており、ヒト医薬(例えば、片頭痛を治療するために用いられている、5HT3受容体アンタゴニストオンダンセトロン(Ondansetron))としてその後に開発されているリード化合物を与えたが、製薬工業での徹底的なスクリーニングにもかかわらず、もしあれば、少数の好適な非-ペプチド性アゴニスト又はアンタゴニスト化合物が特定されている非常に多くのGPCRが存在する。例えば、GPCRのケモカイン受容体ファミリーに特異的な非-ペプチド性アンタゴニストはほとんど存在せず、またアゴニストは全くない。ケモカインは、免疫調節に中心的な役割を果たすので、かかる分子は、炎症性成分で幅広い疾患を治療するのに有用な免疫調節性を有する極めて有用な医薬であると期待される。
【0008】
2つの因子は、ランダムスクリーニングプログラムの起こり得る可能性を制限する:第一に、スクリーニングされるべき非常に大きな化合物空間があり、最良の利用可能なハイスループット技術及び様々なライブラリーを生じるための最良のコンビナトリアルケミストリーアプローチをもってさえ、全ての可能性のある分子構造の小部分のみが研究できるにすぎない。第二に、リード化合物がコアを成功的に特定している場合でさえ、ファーマコフォアは、in vivoでの使用には一般的に好適でなく、リード化合物及びそのアナログは非常に毒性を有することがある。
【0009】
(標識化リガンドの結合を妨害する試験ライブラリーの能食を検出する場合には)かかる「ネガティブスクリーニング」の実例を有する別の主な問題は、特定されたリード化合物のほとんどが受容体アンタゴニストである点である。ほとんどのリード化合物は、アゴニスト活性(予測される-アゴニスト活性が受容体に結合する能力を要求し、次いで受容体を活性化形態に変換し、これに対して、アンタゴニストは、その相互作用を抑制するような方法で、受容体又はリガンドに結合する能力を単に活発に必要とする)を有さず、そひて、初期のアンタゴニストのアナログを生成してそれらをアゴニストに変換することは、比重に成功率の低い「行き当たりばったりの」出来事である。
【0010】
この問題を回避する1つのアプローチは、ランダム化合物ライブラリーを、高い割合のGPCR結合化合物を含むように予め選択される分子構造のライブラリーで置換することであろう。かかるライブラリーはまた、理想的には、アゴニスト又はアンタゴニストのいずれか一方が容易に確認できるような同一の割合で、アゴニスト及びアンタゴニストを含むことになる。理想的には、ライブラリーで用いられる基本的な分子構造は非-毒性であろう。
【0011】
これらの理想的な性質に近づく本当のライブラリーが構築できるか又は否かは、少しも明確ではない。もしそうであるならば、その天然リガンドの選択とは無関係に多くの異なったGPCRと相互作用することになる想定上の「理想的な」GPCR基質の存在を必要とすることになる。この理想化基質の置換を変更することによって、他の全ての部類において1つの受容体に対して選択性を付与することができる。
【0012】
本明細書に、我々は、アゴニスト及び/又はアンタゴニストを異なったGPCRの範囲で生じるように様々に置換することができる3次元骨格として使用できる、「理想的な」GPCR基質を記載する。本発明はまた、明細書の任意の指示されたセットでGPCRリガンドを生成させるために、スクリーング方法で適用されるべき上記置換化合物のライブラリーの調製を提供する。このようにして、公知の一群の性質を有するGPCRリガンドを「呼び出す」ことができる(例えば、セロトニン5FT1a(受容体)でのアンタゴニスト活性と同程度の、ドーパミンD2受容体でのアゴニスト活性を有するリガンドである)。反対に、ランダムライブラリーから予期せずにかかる混合リガンドを同定することは、非常に稀な事象である。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、下記一般式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、
yは、1〜8の整数であり;
zは、0〜8の整数であり、但し、y及びzは同時に1でない;
Xは、-CO-(Y)k-(R1)n、又は-SO2-(Y)k-(R1)nであり;
kは、0又は1であり;
Yは、シクロアルキル又はポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;
又は、Yは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル又は荷電したアルキルカルボキシレート基から選ばれ;
又は各R1は、独立に、フルオロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノジアルキル、荷電したアミノトリアルキル又はカルボキシレート基であり;並びに
nは、1〜mの任意の整数であり、ここで、mはシクロ-基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、例えばペプチド結合によって結合される1〜4のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物及びその塩を提供する。
【0016】
この種類の化合物は、α-アミノシクロラクタムとして記載されている。この分子の重要な構造的特徴は、シクロアルキル環系のラクタムアミドであり、これは、ラクタムカルボニル基に隣接する炭素原子(α-炭素原子と称される)に結合されたアミノ基を有する。
【0017】
本明細書で用いられる用語「α-アミノシクロラクタム」及び「シクロアルキル環系」は、単-環式及び二環式環をカバーする;
式(I)でz = 0の場合、化合物は、α-アミノモノシクロラクタムであり;
式(I)でz = 1〜8の場合、化合物は、α-アミノビシクロラクタムである。
【0018】
α-アミノシクロラクタムのα-炭素原子は、非対称でもよい(一般式(I)でy zの場合)、従って、本発明に従う化合物の中には、2つの可能な鏡像異性体、すなわち「R」及び「S」配置、を含む。本発明は、2つの鏡像異性体、及びラセミである「RS」混合物を含む全てのこれらの形態の組み合わせを包含する。簡単に言えば、構造式において特定の配置が示されていない場合には、2つの鏡像異性体及びそれらの混合物が提供される、ことを理解されたい。
【0019】
一般式(I)の化合物は、N-置換α-アミノシクロラクタム又はその薬学的に許容される塩である。N-置換体は、炭素アミド又はスルホンアミドのいずれでもよい。炭素アミドのカルボニル又はスルホンアミドのスルホニル基に隣接する炭素原子(「鍵」炭素原子)の幾何学構造は、分子の生物活性には重要であるかもしれない。N-置換体の性質は、Yの環又は環(複数)が「鍵」-炭素原子での結合角を本質的に四面体型(すなわち、sp3混成軌道結合)に束縛するようなものである。置換基R1は、シクロ-基Yの環又は環状(複数)上の任意の許容される位置での置換基でよい。特に、本発明は、「炭素原子」がシクロ基の一部であり、かつそれ自身置換される化合物を含む、ことに留意されたい。(R1)nの定義は、非置換(すなわち、R1=水素原子)の本発明の化合物、1置換(すなわち、R1は水素原子でなくかつn=1である)の本発明の化合物、及び多置換(すなわち、少なくとも2つのR1基は水素原子でなくかつn=2以上である)の本発明の化合物を包含する。
【0020】
本発明はまた、活性成分として、下記一般式(I):
【0021】
【化2】

【0022】
[式中、
yは、1〜8の整数であり;
zは、0〜8の整数であり、但し、y及びzは同時に1でない;
Xは、-CO-(Y)k-(R1)n、又は-SO2-(Y)k-(R1)nであり;
kは、0又は1であり;
Yは、シクロアルキル又はポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;
又は、Yは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル又は荷電したアルキルカルボキシレート基から選ばれ;
又は各R1は、独立に、フルオロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノジアルキル、荷電したアミノトリアルキル又はカルボキシレート基であり;並びに
nは、1〜mの任意の整数であり、ここで、mはシクロ-基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、例えばペプチド結合によって結合される1〜4のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
薬学的に許容される塩とは、特に無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩及び硝酸塩、又は有機酸例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、パモン酸及びステアリン酸、の付加塩を意味する。それらが使用されるときに、塩基例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから形成される塩も本発明の範囲内にある。薬学的に許容される塩の他の例として、「Salt selection for basic drugs」, Int. J. Pharm. (1986), 33, 201-217を参照されたい。
【0024】
医薬組成物は、固体形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、ゼラチンカプセル、リポソーム又は座薬であってもよい。好適な固体支持体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストラン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン及びワックスである。他の好適な薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体は、当業者に公知であろう。
【0025】
本発明従う医薬組成物は、液体形態、例えば溶液、エマルション、懸濁液又はシロップでも提供できる。好適な液体支持体は、例えば水、有機溶媒例えばグリセロール又はグリコール、及び水中の様々な割合のそれらの混合物でよい。
【0026】
本発明はまた、G蛋白質共役型受容体(GPCR)の1以上のメンバーの活性を調節する医薬の製造のための、下記一般式(I):
【0027】
【化3】

【0028】
[式中、
yは、1〜8の整数であり;
zは、0〜8の整数であり、但し、y及びzは同時に1でない;
Xは、-CO-(Y)k-(R1)n、又は-SO2-(Y)k-(R1)nであり;
kは、0又は1であり;
Yは、シクロアルキル又はポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;
又は、Yは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル又は荷電したアルキルカルボキシレート基から選ばれ;
又は各R1は、独立に、フルオロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノジアルキル、荷電したアミノトリアルキル又はカルボキシレート基であり;並びに
nは、1〜mの任意の整数であり、ここで、mはシクロ-基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、例えばペプチド結合によって結合される1〜4のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0029】
本発明は、R1基が、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル及びアルキルアミノ基から選択される同一又は異なった基で二-置換される「鍵」炭素原子を有する、化合物、組成物及び一般式(I)又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0030】
本発明は、「鍵」炭素原子がキラルである、化合物、組成物及び使用を提供する。
【0031】
本発明は、「鍵」炭素原子がsp3混成軌道結合を有する、化合物、組成物及び使用を提供する。
【0032】
本発明は、「鍵」炭素原子が本質的に四面体型結合角を有する、化合物、組成物及び使用を提供する。
【0033】
本発明で用いられる一般式(I)の化合物又はその塩は、Yの環又は環(複数)が「鍵」炭素原子での結合角を本質的に四面体型(すなわち、sp3混成軌道結合)に束縛するものである。
【0034】
本発明の代替的な実施態様では、一般式(I)は、C3-C7アルキルブリッジ -(CH2)y-が1〜8の炭素鎖長を有するアルケニル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル、荷電したアルキルカルボキシレート及びアルキルヒドロキシ部分からなる群より独立に選ばれる橋基によって置換されるように修飾される。
【0035】
本発明は、y及びzが1〜8の同一の整数であり、それによってビシクロラクタム環が非-キラルである、使用、組成物又は使用を提供する。
【0036】
本発明は、y及びzが1〜8の同一の整数であり、ビシクロラクタム環がキラルである、使用、組成物又は使用を提供する。
【0037】
zが3でありかつyが1、2又は4〜8であり、それによって化合物が7員であるラクタム環を含む、使用、組成物又は化合物を提供する。
【0038】
zが2でありかつyが1又は3〜8であり、それによって化合物が6員のラクタム環を含む、使用、組成物又は化合物を提供する。
【0039】
本発明に従う、一般式(I)及びその塩の例は以下のとおりである:
4-(アダマンタン-1-カルボニルアミノ)-3-オキソ-2-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタン、
5-(アダマンタン-1-カルボニルアミノ)-10-オキソ-9-アザ-ビシクロ[3.3.2]デカン、
4-(2',2'-ジメチルドデカノイルアミノ)-3-オキソ-2-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタン、
5-(2',2'-ジメチルドデカノイルアミノ)-10-オキソ-9-アザ-ビシクロ[3.3.2]デカン
及びその塩。
【0040】
本発明はまた、例示された化合物のスルホンアミドアナログ:すなわち、式(I)の化合物のスルホニル-α-アミノシクロラクタム等価物を提供する。
【0041】
本発明は、化合物が水和形態又は溶媒和形態である、定義された化合物、組成物及びその使用を含む。
【0042】
本明細書の記載されたα-アミノシクロラクタムのアミド及びスルホアミド誘導体は、機能性GPCRアゴニストである。それらは、ヒト血清中で安定であり、よって、優れた薬物動態学的性質を有する;それらは、経口的に生物学的利用可能である;それらは、非常に強力なGPCRアゴニストである;その投与は、最大の治療効果を達成するために必要な用量において、極めて急性の毒性に関連しない。総合すれば、これらの性質は、α-アミノビシクロラクタムのアミド及びスルホンアミド誘導体が、GPCRアゴニスト及びアンタゴニスト特性に富む一連の化合物を示す、こと示唆する。
【0043】
「鍵」炭素原子、カルボニル又はスルホニル基、α-アミノ基及びシクロラクタム系(特に、束縛されたビシクロラクタム環系)からなるコアは、「理想的な」GPCRリガンドの一例である。このコアの置換を変更することにより、ランダム化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより更により簡便に幅広い範囲の所望の性質を有するGPCRアゴニスト及びアンタゴニストを生成させることができる。
【0044】
結果として、本発明はまた、ライブラリーが、1(又はそれ以上)のGCPRでのシグナリングを調節することに関して特定の所望の性質群を有する分子を同定するために選別することができるように、一般式(I)によって示される化合物の種類の2以上のメンバーからなるライブラリーを提供する。次いで、前記ライブラリーは、当該分野で周知の方法を用いて、前記GPCR(複数)でのアンタゴニスト又はアゴニスト活性について選別されることになる。例えば、ライブラリーは、放射性同位体標識GPCRリガンドの、組換え又は精製GOCRを含む膜調製物への結合を妨害する個々のライブラリー要素の能力について選別され得る。あるいは、ライブラリーは、組換えGPCRを発現する細胞内でのcAMP産生を刺激する個々のライブラリー要素の能力について選別され得る。
【0045】
本発明はまた、GPCR活性を調節するようにデザインされた本発明の化合物、組成物又は医薬の有効量を患者に投与することによる、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、喘息、肥満、神経変性疾患、自己免疫疾患又は精神異常疾患からなる群より選ばれる疾患の症候又は症状の治療、緩和又は予防の方法を提供する。
【0046】
定義
用語「約」は、考慮している値の前後の一定間隔を意味する。本特許出願で用いる「約X」とは、XマイナスXの10%〜XプラスXの10%の間隔、好ましくはXマイナスXの5%〜XプラスXの5%の間隔を意味する。
【0047】
本明細書における数値範囲の使用は、明らかに、本発明の範囲内に当該範囲内の各々の整数を全て含み、所定の範囲の最も広い範囲内の上限及び下限の数の全ての組み合わせを含むことを意図する。よって、例えば、明確に例示していようといまいと、(特に)式Iの点から特定される1〜20個の炭素原子の範囲は、1〜20の全ての整数を含み、上限及び下限の数の各々の組み合わせの全ての部分的範囲を含む意図である。
【0048】
本明細書で用いる用語「含む」は、含む(comprising)及び成る(consisting of)の意味するものと読む。従って、本発明が、ある化合物を「活性成分として含む医薬組成物」に関する場合、この用語は、他の活性成分が存在してもよい組成物、及び定義された1つの活性成分のみからなる組成物の両方をカバーする意図である。
【0049】
本明細書で用いる用語「ペプチド部分」とは、以下の20種の天然タンパク新生アミノ酸残基を含む意図である。
【0050】
【表1】

【0051】
修飾及び非天然アミノ酸残基、並びにペプチド-模倣体も、「ペプチド部分」の定義に包含されると意図する。
【0052】
他に特定しない場合には、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野内の当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。同様に、本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、全ての特許及び全ての他の文献は、(法律的に許される場合には)参照として引用される。
【0053】
以下の実施例は、上記の手法を例証するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0054】
出発化合物の合成のための一般的手法
(R)及び(S)-3-アミノ-カプロラクタムの塩酸塩、及び(R,R)及び(S,S)-3-アミノ-カプロラクタムのヒドロ-ピロリジン-5-カルボキシレートを、文献に従って合成した(Boyle他, J. Org. Chem., (l979), 44, 4841-4847; Rezler他, J Med. Chem. (1997), 40, 3508-3515参照)。
【0055】
実施例 1
【0056】
【化4】

【0057】
実施例 2
【0058】
【化5】

【0059】
実施例 3
【0060】
【化6】

【0061】
実施例 4
【0062】
【化7】

【0063】
本発明の生成物の薬理学的試験
アッセイの原理
A: GPCRアンタゴニズム
原則として、本発明の化合物は、様々な濃度の試験化合物の非存在下及び存在下で、結合に好適な条件下で標識リガンドに受容体を曝露することにより、所与のGPCRでのアンタゴニスト活性について試験することができる。次いで、受容体に関連する標識の量を定量する。試験化合物が、結合について標識されたリガンドと競争することができるならば、受容体に会合した標識の量は、試験化合物の濃度が増加するに伴い、減少することになる。試験化合物濃度に対する結合したリガンドのプロットから、受容体への試験化合物の結合親和性を見積もることができる。
【0064】
そのため、かかるアッセイは以下を必要とする:
(1) 所定のGPCR源。ヒト由来のGPCRスーパーファミリーの全てのメンバーの配列は、現在、ヒトゲノム配列から入手可能である。かかる配列は、好適なベクターにクローニングし、好適な細胞種中(例えば、ケモカイン受容体CXCR4を除いて、実質的に内因性GCPRを発現することが既に知られているジャーカットT細胞)で発現することができる。使用されるベクターに好適な抗生物質を用いて選択した後、選択されたGPCRを高レベルで発現する安定な細胞株を樹立できる。
【0065】
選択されたGPCRを発現する細胞株由来の膜分画は、当該分野で周知の様々な方法を用いて調製できる。例えば、Kuo他(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77: 7039)によれば、細胞は、0.25 M スクロース、2.5 mM MgCl2、2.5 mM EGTA及び50 mM β-メルカプトエタノール、並びにプロテアーゼインヒビター例えばPMSF及びロイペプチンを含むpH 7.5の25 mM HEPES緩衝液に再懸濁し、ダウンス型ホモジナイザーを用いて分割することができる。次いで、懸濁液を120 x gの遠心分離に供し、破壊されてない細胞及び大細胞断片をペレット化し、小さな膜断片及び細胞質成分を含む上清を保持する。次いで、この上清を100,000 x gの超遠心分離に供し、選ばれたGPCRを豊富に含む膜断片のペレットを製造する。ペレットを好適な結合緩衝液中に再懸濁し、商業的に入手可能なタンパク質アッセイ例えばCoomassie Plus (Pierce) を用いて総タンパク質濃度を決定した。膜調製物は、標準的な総タンパク質濃度例えば1 mg/mlを与えるように体積で調整することができる。標準化された調製物は、必要な時までアリコートで-85℃で保存することができる。
【0066】
(2) 選ばれたGPCRに高い親和性を有する標識化リガンド。ほとんどのGPCRに好適なリガンドは、文献で周知である。かかるリガンドは、受容体に対する天然リガンド(例えばドーパミン)でもよく、又は薬理学的ツール(例えばドンペリドン)でもよい。様々な一般的に試験されたGPCRに好適なリガンドのリストを表1に挙げるが、これらの受容体の多くについて他の好適なリガンドが存在することは当業者には自明であろう。この目的に有用なリほとんどのリガンドは、少なくとも1μM、好ましくは100 nM未満、及びより好ましくは10 nM未満の選ばれた受容体への結合に関する親和性定数を有することになる。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
リガンドが一旦選択されると、(リガンドを標識することなく、非結合リガンドの量を決定する感度のよいかつ厳密な方法が利用できる−例えば非結合リガンドを測定するためにELISAアッセイを用いることもできる、との条件で、そして結合リガンドの量を推定計算することにより、アッセイを実行することもできるが)、その後、選ばれたGPCRへの結合量が決定できるように、リガンドに標識する必要があるだろう。リガンドを標識する好適な方法は、リガンドの性質に依拠して変化する:小分子は、放射性核種例えば3H、14C又は35Sでほとんど容易に標識することができる;ペプチドは、共-合成ビオチンでほとんど容易に標識することができ、(次いでストレプトアビジン)、蛍光タグ(例えばフルオレセインイソチオシアネート)又は放射性核種(例えば、ペプチド中のチロシン残基の125I-ヨウ素化)で標識することができる;タンパク質は、蛍光タグ(例えばフルオレセインイソチオシアネート)又は放射性核種(例えば、タンパク質中のチロシン残基の125I-ヨウ素化)でほとんど容易に標識することができる。標識の程度(すなわち、標識を有する試料中の分子の割合)は、受容体に結合するリガンド量が最終的に定量されるくらいに十分でなければならない。
【0072】
これらの2つの成分を用いて、本発明の化合物が任意の所与のGPCRに結合するリガンドを調節するか否かを当該分野で周知の方法を用いて試験することができる。例えば、一群の試験管で、選ばれたGPCRへのリガンドの結合の親和性定数に近い濃度で、膜調製物を放射性リガンドと混合する。いくつかの試験管おいては、本発明の化合物も、様々な濃度で添加される。更に他の試験管においては、(但し放射性核種タグの非存在下で、放射性リガンドとして大過剰量の同一のリガンドでもよい)陽性対照インヒビターが添加される。典型的には、各条件セット下で3つの試験管が調製あれることになる。次いで、遊離の放射性リガンドと結合放射性リガンドとの間に平衡を到達させるための時間、典型的には、4℃〜37℃、より典型的には室温で、試験管をインキュベートする。典型的には、これには20分〜4時間かかるだろう、そして、任意の所与の反応条件に必要とされる時間は、当該分野で周知の方法(例えば、時間-経過的実験を実行することにより)により決定することができる。平衡が一旦達成されると、結合された放射性リガンドの量を決定する必要がある。例えば、膜-結合受容体(及び任意の結合放射性リガンド)は、フィルター(例えば、1% ポリエチレンイミンで処理したGF/Cフィルター)による濾過によって溶液中の遊離の放射性リガンドから分離される。次いで、フィルターは、空気-乾燥して、受容体に結合されることになる添加された放射性リガンドの分画を決定するためにシンチレーションカウンターに供することができる。
【0073】
あるいは、本発明の化合物は、商業的に入手可能な受容体スクリーニング手法を用いてスクリーニングに供することができる(例えば、Cerep, 128 Rue Danton, Paris, Franceにより提供されるサービス)。かかるサービスは、1以上のGPCRに結合するリガンドを調節するライブラリー、例えば本発明において提供されるライブラリー、のメンバーを容易に特定させる。
【0074】
上記に概略した方法を用いて1以上のGPCRに結合するリガンドを調節するものとして同定される化合物は、通常、完全なアンタゴニストであろう。しかしながら、化合物のアンタゴニストの性質を確認するために機能性アッセイを実行することが必要である。例えば、用いるGPCR及び/又はリガンドに依拠して、あるセカンドメッセンジャーシグナルは、リガンドが存在するシグナルを変換するために刺激される(又は阻害される)だろう。細胞は、リガンドの提示に反応して、環状アデノシン1リン酸(cAMP)、様々なリン酸化イノシトール-含有化合物(I(1,4,5)P3及びI(1,3,5)P3を含む)、カルシウムイオン、ポリアデニン又は当該分野で公知のその他の細胞内メッセンジャーの細胞内濃度の増加(又は減少)を示すことがある。完全なアンタゴニストは、自然リガンド(複数)によって引き起こる細胞内メッセンジャーでの変化を取り消し、自然リガンドの非存在下で何の効果も有さない。好対照に、完全アゴニストは、自然リガンド(複数)が添加されるときには何の効果も有さないだろうが、自然リガンドの非存在下で添加されるときには、自然リガンド(複数)によって起こる細胞内メッセンジャーでの変化を模倣するだろう。本発明の化合物を含むいくつかの化合物は、細胞内メッセンジャーに対する効果のパターンに依拠して、部分的アンタゴニストでも、部分的アゴニストでも又は混合アゴニスト/アンタゴニストでもよい。かかる化合物の複雑な薬理学的定義にもかかわらず、それらは、ある疾患において有用な治療的性質を有し、多数の確立されたヒト医薬は、1以上のGPCRにおいて、部分的アゴニスト、部分的アンタゴニスト又は混合アゴニスト/アンタゴニストであることが知られている。
【0075】
B: GPCRアゴニスム
特にハイスループットスクリーニング技術を用いて、アンタゴニスト活性よりもアゴニスト活性について試験するのは、本質的にかなり困難である。そのため、本発明の化合物は、ライブラリー要素の中でもGPCRアゴニストのより高い発生率のため、一般的なリード発見ライブラリーよりもアゴニストの検索に特に有用であるようである。
【0076】
GPCRアゴニストについての試験は、原則的に、所望の生化学的又は生理学的反応を有する選ばれたGPCR(複数)の自然リガンドに反応する細胞又は臓器培養系を必要とする。かかる反応の例は、特に限定されないが、細胞内メッセンジャー(例えば、cAMP、IP(1,4,5)P3、カルシウムイオン又はポリアデノシン)での変化、酵素活性(例えば、プロテインキナーゼ、フォスファターゼ、代謝型酵素又は輸送タンパク質の活性化)での変化、遺伝子発現パターンの変化、変化した食作用、変化したタンパク質分泌、増殖の変化率、筋肉細胞/組織の縮小、神経伝達等を含む。このような反応は、自然リガンド(複数)の選ばれたGPCRへの結合よりも、測定が本質的により複雑であり、これは、なぜGPCRアゴニストのアッセイがアンタゴニストよりもより問題であるかという理由である。
【0077】
本発明の化合物が1以上の選ばれたGPCRのアンタゴニストであるか否かを試験するために必要とされる一般的な方法は、当該分野で成功的に確立されている。細胞は、例えば、一定の時間(例えば、1分〜48時間、これは、測定されるべき反応の時間経過に依拠する)、典型的には37℃で、細胞培養媒体中の様々な濃度(例えば、約0.1 nM〜約10 mM)で好適なビヒクル(例えばDMSO、エタノール又はメタノール)中の化合物を添加することにより、試験化合物の様々な濃度に曝露する。並行して、細胞は、自然リガンドにも曝露し、(対照細胞としての)任意の追加の化合物(複数)には曝露されない。インキュベーション期間の最後には、選ばれるGPCR(複数)に結合する自然リガンドに反応して起こる当該分野で公知の反応を測定する。本発明の化合物が選ばれたGPCRのアゴニストである場合には、(ある濃度での)試験化合物に対する反応は、自然リガンドに対する反応と定量的に同一であろう。
【0078】
特定のGPCRのアゴニストについての好適なアッセイ系の例は以下である:
単離された下垂体細胞により成長ホルモンの分泌を阻害するので、ソマトスタチンは、sstr2及びsstr5のアゴニストである。本発明の化合物がsstr2及び/又はsstr5のアゴニストであるか否かを決定するために、ラット下垂体細胞を単離し、培養中に入れる。次いで、細胞を、単独で、又は33 nMのソマトスタチンの存在下もしくは約0.1 nM〜約10 mMの様々な濃度の試験化合物(複数)の存在下で、37℃で24時間、インキュベートする。実験の最後に、細胞培養媒体を除き、遠心分離により浄化し、例えば、商業的に入手可能なELISA又はライジオイムノアッセイを実行することによって、成長ホルモン(GH)のアッセイに供する。ソマトスタチンに曝露された細胞は、単独でインキュベートされた細胞よりも、30%〜90%少なくGHを産生するだろう。本発明の化合物がソマトスタチン受容体のアゴニストである場合には、GHレベルは、単独でインキュベートされた細胞由来の培地中よりも、(少なくともある濃度の)試験化合物に曝露された細胞由来の培地中ではより低いだろう。典型的には、培地は、各々の実験条件下で等しく処理された細胞を含む3つの同型のウェルから回収する。これは、好適な統計的検定(例えば、ANOVA又は対応のないスチューデントt-検定)は、試験化合物がGH分泌の統計的に有意な減少を生じたことを証明するために使用でき、そのため、選ばれた受容体、すなわちsstr2及び/又はsstr5のアゴニスト活性を有するようであるからである。
【0079】
エンドセリン-1は、ET-A及び/又はET-B受容体を介して信号を送り、血管収縮を引き起こすペプチドである。本発明の化合物がET-A及び/又はET-Bのアゴニストであるか否かを決定するために、(移植ドナーの心臓から得られた)ヒト大動脈環を臓器培養中に置くことができる。次いで、37℃で、約5分毎に好適な薬剤の濃度を上昇させながら、環を、エンドセリン-1の高い濃度(0.01 nM〜100 nM)か又は試験化合物(複数)の高い濃度(約0.1 nM〜約10 mM)に曝露する。実験を通じて、大動脈環の縮小は、かかる目的のため設計かつ商業的に入手できるひずみゲージによって測定する。エンドセリン-1に曝露された環は、エンドセリン-1の濃度が増えるに従い、縮小するだろう。最大濃度に近づく時間までに、ひずみゲージに及ぼす力は、エンドセリン-1の添加前よりも著しく高いだろうからである。本発明の化合物がエンドセリン受容体のアゴニストである場合には、ひずみゲージにかかる力も、試験化合物の添加前よりも(少なくともある濃度では)より高いだろう。好適な統計的検定(例えば、ANOVA又は対応のないスチューデントt-検定)は、試験化合物が大動脈縮小の統計的に有意な増加を生じたことを証明するために使用でき、そのため、選ばれた受容体、すなわちET-A及び/又はET-Bのアゴニスト活性を有すると考えられるため、典型的には、3以上の分離した大動脈環を、同一の実験条件下で同一の薬剤の高い濃度で処理する。
【0080】
ケモカインSDF-1aは、CXCR4受容体を介して情報を伝達し、白血球転移を生じるペプチドである。本発明の化合物がCXCR4であるか否かを決定するために、培養ヒト不滅T-細胞(例えば、ジャーカットT細胞)を、目的に適った商業的に入手可能なトランスウェル転移器具の上部ウェルに置く。次いで、同型ウェルは、培養培地のみを含む下方チャンバーに曝露するか、又はSDF-1aを75 nMを含む下方チャンバーに曝露するか、又は試験化合物(複数)の様々な濃度(0.1 nM〜約10 mM)を含む下方チャンバーに曝露し、37℃で一定時間(典型的には30分〜3時間)インキュベートする。インキュベーションの最後に、下方チャンバーに存在する細胞数は、生じる転移数の指標である。下方チャンバーの細胞数は、直接、目で見ることにより、又は、様々な周知の方法、例えば存在する細胞数に比例して不溶性の青ホルマザン生成物に変換されるMTT色素でのインキュベーションにより、カウントできる。SDF-1aを含む下方チャンバーに曝露されたウェルでは、下方チャンバー内の細胞数は、培養培地のみを含む下方チャンバー内の細胞数よりも2-倍〜10-倍高いだろう。本発明の化合物がCXCR4のアゴニストである場合には、試験化合物(複数)を含む下方チャンバー内の細胞数も、培地のみを含む下方チャンバー中よりも(少なくともある濃度では)高いだろう。好適な統計的検定(例えば、ANOVA又は対応のないスチューデントt-検定)は、試験化合物が白血球転移において統計的に有意な増加を生じたことを証明するために使用でき、そのため、選ばれた受容体、すなわちET-A及び/又はET-Bのアゴニスト活性を有すると考えられるため、典型的には、培地は、各々の実験条件下で等しく処理された細胞を含む3つの同型のウェルから回収する。
【0081】
生物活性アミンアドレナリンは、血管平滑筋細胞内でcAMPの細胞内濃度を増加する。本発明の化合物がβ-アドレナリン様受容体のアゴニストであるか否かを決定するために、胸大動脈由来のラット血管平滑筋細胞を単離し、培養中に置く。次いで、細胞を単独で、又はアドレナリンアゴニストである33 nMのサルブタモールの存在下で、又は約0.1 nM〜約10 mMの様々な濃度で試験化合物(複数)の存在下で37℃で15分間インキュベートする。実験の最後に、細胞培養媒体を除き、細胞を氷冷緩衝液で3回洗浄し、そして、例えば、商業的に入手可能なELISA又はラジオイムノアッセイを実行することによりcAMPの細胞内濃度を測定する前に、好適な溶解緩衝液中で溶解する。サルブタモールに曝露された細胞は、培地単独に曝露された細胞よりも15%〜150%高い細胞内cAMP濃度を有するだろう。本発明の化合物がβ-アドレナリン様受容体のアゴニストである場合には、cAMPの細胞内濃度は、嘆息でインキュベートされた細胞中よりも、(少なくともある濃度の)試験化合物に曝露された細胞中で高いだろう。好適な統計的検定(例えば、ANOVA又は対応のないスチューデントt-検定)は、試験化合物が細胞内cAMP濃度で統計的に有意な増加を生じたことを証明するために使用でき、そのため、選ばれたβ-アドレナリン様受容体のアゴニスト活性を有すると考えられるため、典型的には、細胞溶解物は、各々の実験条件下で等しく処理された細胞を含む3つの同型ウェルから調製する。
【0082】
上記の例のアッセイは、選ばれたGPCRのアゴニストを同定し、本発明の化合物を不活性化合物及び選ばれたGPCRのアンタゴニスト又は部分的アンタゴニスト活性を有する化合物と識別するだろうことは明らかであるが、選ばれたGPCRを本発明の化合物の分子標的として必ずしも独自に同定することにはならないだろう。例えば、β-アドレナリン様受容体アゴニストであるサルブタモールと同程度に、血管平滑筋細胞中でcAMPを増加させることが証明された本発明の化合物は、β-アドレナリン様受容体アゴニストGPCRのアゴニストでもよく、又はcAMPも増加させる別のGPCRのアゴニストでもよい(例えば、ドーパミンD2受容体)。あるいは、SDF-1aと同程度に白血球の転移を刺激する本発明の化合物は、CXCRのアゴニストでもよく、又は白血球転移を刺激する別のGPCRのアゴニストでもよい(例えば、C5a受容体)。本発明の化合物がアゴニストとして働く分子標的GPCRの評価は、選ばれたGPCRに対して既に同定された特定のアンタゴニストを用いる追加の実験の遂行、又は選ばれたGPCRのみを発現する組換え細胞株の使用を必要とすることになる。例えば、本発明の化合物によって誘導される白血球転移が、CXCR4-特異的アンタゴニスト AMD3100の好適な濃度の添加によって阻害される場合には、CXCR4が本発明の化合物の分子標的であると結論付けるのが合理的であろう。同様に、本発明の化合物によって誘導される白血球転移が、CXCR4を発現する細胞株を用いて観察されたが、CXCR4を発現しない同一の細胞株では観察されない場合には、CXCR4が本発明の化合物の分子標的であると結論付けるのが合理的であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

[式中、
yは、1〜8の整数であり;
zは、0〜8の整数であり、但し、y及びzは同時に1でない;
Xは、-CO-(Y)k-(R1)n、又は-SO2-(Y)k-(R1)nであり;
kは、0又は1であり;
Yは、シクロアルキル又はポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;
又は、Yは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル又は荷電したアルキルカルボキシレート基から選ばれ;
又は各R1は、独立に、フルオロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノジアルキル、荷電したアミノトリアルキル又はカルボキシレート基であり;並びに
nは、1〜mの任意の整数であり、ここで、mはシクロ-基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、例えばペプチド結合によって結合される1〜4のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物。
【請求項2】
活性成分として、下記一般式(I):
【化2】

[式中、
yは、1〜8の整数であり;
zは、0〜8の整数であり、但し、y及びzは同時に1でない;
Xは、-CO-(Y)k-(R1)n、又は-SO2-(Y)k-(R1)nであり;
kは、0又は1であり;
Yは、シクロアルキル又はポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;
又は、Yは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル又は荷電したアルキルカルボキシレート基から選ばれ;
又は各R1は、独立に、フルオロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノジアルキル、荷電したアミノトリアルキル又はカルボキシレート基であり;並びに
nは、1〜mの任意の整数であり、ここで、mはシクロ-基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、例えばペプチド結合によって結合される1〜4のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項3】
G蛋白質共役型受容体(GPCR)の1以上のメンバーの活性を調節する医薬の製造のための、下記一般式(I):
【化3】

[式中、
yは、1〜8の整数であり;
zは、0〜8の整数であり、但し、y及びzは同時に1でない;
Xは、-CO-(Y)k-(R1)n、又は-SO2-(Y)k-(R1)nであり;
kは、0又は1であり;
Yは、シクロアルキル又はポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;
又は、Yは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル又は荷電したアルキルカルボキシレート基から選ばれ;
又は各R1は、独立に、フルオロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノジアルキル、荷電したアミノトリアルキル又はカルボキシレート基であり;並びに
nは、1〜mの任意の整数であり、ここで、mはシクロ-基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、例えばペプチド結合によって結合される1〜4のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項4】
前記R1基が、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル及びアルキルアミノ基から選ばれる同一又は異なった基で二-置換される「鍵」炭素原子を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物、組成物及び使用。
【請求項5】
前記「鍵」炭素原子が、キラルである、請求項4記載の化合物、組成物及び使用。
【請求項6】
前記「鍵」炭素原子が、sp3混成軌道結合を有する、請求項4記載の化合物、組成物及び使用。
【請求項7】
前記「鍵」炭素原子が、本質的に四面体型結合角を有する、請求項4記載の化合物、組成物及び使用。
【請求項8】
前記Yの環又は複数の環が、前記「鍵」炭素原子での結合角を本質的に四面体型(すなわちsp3混成軌道結合)に束縛する、請求項1〜7のいずれか1項記載の化合物、組成物及び一般式(I)又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
C3-C7アルキルブリッジ -(CH2)y-が、1〜8の炭素鎖長を有する、アルケニル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アルキルアミノジアルキル、荷電したアルキルアミノトリアルキル、荷電したアルキルカルボキシレート及びアルキルヒドロキシ部分からなる群より独立に選ばれる架橋基によって置換されるように、一般式(I)が修飾される、請求項1記載の化合物、請求項2記載の医薬組成物、又は請求項3記載の使用。
【請求項10】
y及びzが同一の整数であり、それによってα-アミノビシクロラクタム環が非-キラルである、請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物、組成物又は使用。
【請求項11】
y及びzが同一の整数でなく、それによってα-アミノビシクロラクタム環がキラルである、請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物、組成物又は使用。
【請求項12】
zが3でありかつyが1、2又は4〜8であり、それによって化合物が7員であるラクタム環を含む、請求項11記載の化合物、組成物又は使用。
【請求項13】
zが2でありかつyが1、又は3〜8であり、それによって化合物が6員であるラクタム環を含む、請求項11記載の化合物、組成物又は使用。
【請求項14】
調節されるべき前記GPCRが、アドレナリン受容体、エンドセリン受容体、ケモカイン受容体、EDG受容体、VIP/PECAP受容体、ドーパミン受容体、セロトニン受容体、プリン受容体、代謝型グルタミン酸受容体、アセチルコリン受容体、C5a受容体、fMLP受容体、グルカゴン又はGLP受容体、NPY受容体、MSH受容体、糖タンパク質ホルモン受容体、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)、ソマトスタチン受容体、アンギオテンシン受容体、コレシストキニン受容体又はメラトニン受容体からなる群より選ばれる、請求項3又は9記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項記載のGPCR活性を調節するようにデザインされた化合物、組成物又は医薬の有効量の患者への投与による、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、喘息、肥満、神経変性疾患、自己免疫疾患又は精神異常疾患からなる群より選ばれる疾患又は症状の症候の治療、緩和又は予防方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項記載の化合物であるライブラリー要素からなるか又は当該ライブラリー要素を豊富に含む、ライブラリー。
【請求項17】
GPCRを介してシグナリングを調節する薬剤(複数)を特定するスクリーニングのためのアッセイにおいて、請求項16に記載のライブラリーの使用を含む方法。
【請求項18】
特定される薬剤(複数)が、1以上のGPCRのアンタゴニストである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
特定される薬剤(複数)が、1以上のGPCRのアゴニストである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記GPCRが、アドレナリン受容体、エンドセリン受容体、ケモカイン受容体、EDG受容体、VIP/PECAP受容体、ドーパミン受容体、セロトニン受容体、プリン受容体、代謝型グルタミン酸受容体、アセチルコリン受容体、C5a受容体、fMLP受容体、グルカゴン又はGLP受容体、NPY受容体、MSH受容体、糖タンパク質ホルモン受容体、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)、ソマトスタチン受容体、アンギオテンシン受容体、コレシストキニン受容体又はメラトニン受容体からなる群より選ばれる、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2008−511595(P2008−511595A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528955(P2007−528955)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003134
【国際公開番号】WO2006/024815
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】