GDF−8の抗体インヒビターおよびその使用
【課題】増殖および分化因子−8(GDF−8)に対する新規抗体(抗体フラグメントを含む)を提供すること。
【解決手段】本開示は、増殖および分化因子−8(GDF−8)に対する新規抗体(抗体フラグメントを含む)を提供し、この抗体は、GDF−8活性をインビトロおよびインビボで阻害する。本開示はまた、筋肉の変性障害、骨の変性障害、またはインシュリン代謝の変性障害を、診断、予防、または処置する方法を提供する。ここで、このGDF−8タンパク質は、アミノ酸配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)を含み、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpであり、この抗体は、該同じ抗体によって結合されないGDF−8タンパク質に比べて、該GDF−8タンパク質と関連する1つ以上の生物学的活性を減少する。
【解決手段】本開示は、増殖および分化因子−8(GDF−8)に対する新規抗体(抗体フラグメントを含む)を提供し、この抗体は、GDF−8活性をインビトロおよびインビボで阻害する。本開示はまた、筋肉の変性障害、骨の変性障害、またはインシュリン代謝の変性障害を、診断、予防、または処置する方法を提供する。ここで、このGDF−8タンパク質は、アミノ酸配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)を含み、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpであり、この抗体は、該同じ抗体によって結合されないGDF−8タンパク質に比べて、該GDF−8タンパク質と関連する1つ以上の生物学的活性を減少する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年9月26日に出願された、米国仮特許出願第60/324,528の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、増殖分化因子−8(GDF−8)タンパク質のインヒビターに関し、そしてこのようなインヒビターを使用する方法に関する。より具体的には、本発明は、インビトロおよびインビボでGDF−8タンパク質と特異的に反応性である新規抗体および抗体フラグメントを提供する。本発明は、筋肉組織の増加が治療に有益であるヒトまたは動物の障害を、診断、予防、または処置するのに特に有用である。例示的な障害としては、神経筋障害(例えば、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症)、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、および悪液質;脂肪組織障害(例えば、肥満);II型糖尿病;ならびに骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症)が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ミオスタチンとしても公知である、増殖および分化因子−8(GDF−8)は、構造的に増殖因子と関連するトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーであり、これらの全ては、生理学的に重要な増殖制御特性および形態形成特性を保持する(非特許文献1:Kingsleyら、(1994)Genes Dev.,8:133−46;非特許文献2:Hoodlessら、(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.,228:235−72)。GDF−8は、骨格筋量の負の制御因子であり、その生物学的活性を制御する因子を同定することにおいてかなり関心が存在する。例えば、GDF−8は、発育中の骨格筋および成人骨格筋において高度に発現される。トランスジェニックマウスにおけるGDF−8ヌル変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成を特徴とする(非特許文献3:McPherronら、(1997)Nature,387:83−90)。骨格筋量の同様の増加は、ウシにおいてGDF−8の天然に存在する変異において明らかである(非特許文献4:Ashmoreら、(1974)Growth,38:501−507;非特許文献5:SwatlandおよびKieffer(1994)J.Anim.Sci.,38:752−757;非特許文献6:McPherronおよびLee(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461;非特許文献7:ならびにKambadurら、(1997)Genome Res.,7:910−915)。GDF−8は、発育中の筋肉および成人筋肉の両方において発現されるので、このGDF−8が、発育中または成人における筋肉量を制御するかどうかは明らかではない。従って、成人においてGDF−8が筋肉量を制御するかどうかの疑問は、科学的展望および治療的展望から重要である。最近の研究はまた、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋るいそうが、GDF−8タンパク質発現を増加することによって達成されることを示した(非特許文献8:Gonzalez−Cadavidら、(1998)PNAS,95:14938−43)。さらに、GDF−8は、筋特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の産生および筋芽細胞増殖を調節し得る(特許文献1:WO00/43781)。
【0004】
ヒトおよび動物障害の多くは、筋組織の損失または機能的損傷(筋ジストロフィー、筋萎縮症、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、および悪液質が挙げられる)に関連する。現在までのところ、非常にわずかな信頼できかつ有効な治療が、これらの治療に対して存在する。しかし、これらの障害に関連するものすごい症状が、この障害を罹患する患者における筋組織の量を増加する治療を使用することによって実質的に減少し得る。状態を治癒しないが、このような療法は、これらの患者の人生の質を有意に改善し、そしてこれらの疾患の効果のいくつかを回復し得る。従って、当該分野において、これらの障害を罹患する患者における筋組織の全体的な増加に寄与し得る新規治療を同定する必要性が存在する。
【0005】
骨格筋におけるその増殖制御特性および形態形成特性に加えて、GDF−8はまた、他の多くの生理学的プロセス(II型糖尿病の進行におけるグルコース恒常性および脂肪組織障害(例えば、肥満)が挙げられる)に関連し得る。例えば、GDF−8は、脂肪細胞に分化する脂肪前駆細胞を調節する(非特許文献9:Kimら、(2001)BBRC,281:902−906)。
【0006】
骨の損失に関連する多くの状態(骨粗鬆症(特に、年老いた女性および/または閉経後の女性における)が挙げられる)もまた存在する。これらの疾患に対して現在使用可能な治療は、骨再吸収を阻害することによって働く。新規の骨形成を促進する治療は、これらの治療の代替として、またはこれらの治療に加えて望ましい。
【0007】
TGF−β−1、TGF−β−2、およびTGF−β−3のように、GDF−8タンパク質は、アミノ末端プロペプチドおよびカルボキシ末端成熟ドメインからなる前駆体タンパク質として合成される(非特許文献10:McPherronおよびLee,(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461)。切断の前は、前駆体GDF−8タンパク質は、ホモダイマーを形成する。次いで、アミノ末端プロペプチドは、成熟ドメインから切断される。この切断されたプロペプチドは、成熟ドメインダイマーに非共有結合的に結合したままであり得、その生物学的活性を不活性化する(非特許文献11:Miyazonoら、(1988)J.Biol.Chem.,263:6407−6415;非特許文献12:Wakefieldら、(1988)J.Biol.Chem.,263:7646−7654;および非特許文献13:Brownら、(1990)Growth Factors,3:35−43)。2つのGDF−8プロペプチドがGDF−8成熟ダイマーに結合すると考えられる(非特許文献14:Thiesら、(2001)Growth Factors,18:251−259)。この不活性化特性によって、このプロペプチドは、「潜伏関連ペプチド」(LAP)として公知であり、成熟ドメインとプロペプチドとの複合体は、通常、「小潜伏複合体」といわれる(非特許文献15:GentryおよびNash(1990)Biochemistry,29:6851−6857;非特許文献16:Derynckら、(1995)Nature,316:701−705;ならびに非特許文献17:Massague(1990)Ann.Rev.Cell Biol.,12:597−641)。他のタンパク質がまた、GDF−8または構造的に関連するタンパク質に結合し、これらの生物学的活性を阻害することは公知である。このような阻害タンパク質は、フォリスタチン(follistatin)を含み、潜在的にフォリスタチン関連タンパク質を含む(非特許文献18:Gamerら、(1999)Dev.Biol.,208:222−232)。この成熟ドメインは、プロペプチドが除去されたとき、ホモダイマーとして活性であると考えられる。
【0008】
GDF−8は、種間にわたって配列および機能が高度に保存される。マウスGDF−8およびヒトGDF−8のアミノ酸配列は、同一であり、mRNAの発現パターンも同様である(非特許文献19:McPherronら、(1997)Nature 387:83−90;非特許文献20:Gonzalez−Cadavidら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14938−14943)。この配列および機能の保存は、ヒトにおけるGDF−8の阻害が、マウスにおいてGDF−8の阻害に対して同様の効果を有するようであることを示唆する。
【0009】
GDF−8は、多くの重大な生物学的プロセスの制御に関連する。これらのプロセスにおいてのこの重要な機能に起因して、GDF−8は、治療介入についての所望の標的であり得る。上記されるように、特に、GDF−8の活性を阻害する治療剤は、筋肉組織の増加が治療に有効である、ヒトまたは動物の障害(特に筋肉組織障害および脂肪組織障害、骨変性疾患、神経筋障害、および糖尿病)を処置するために使用され得る。
【特許文献1】WO00/43781)。
【非特許文献1】Kingsleyら、(1994)Genes Dev.,8:133−46
【非特許文献2】Hoodlessら、(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.,228:235−72
【非特許文献3】McPherronら、(1997)Nature,387:83−90
【非特許文献4】Ashmoreら、(1974)Growth,38:501−507
【非特許文献5】SwatlandおよびKieffer(1994)J.Anim.Sci.,38:752−757
【非特許文献6】McPherronおよびLee(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461
【非特許文献7】ならびにKambadurら、(1997)Genome Res.,7:910−915
【非特許文献8】Gonzalez−Cadavidら、(1998)PNAS,95:14938−43
【非特許文献9】Kimら、(2001)BBRC,281:902−906
【非特許文献10】McPherronおよびLee,(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461
【非特許文献11】Miyazonoら、(1988)J.Biol.Chem.,263:6407−6415
【非特許文献12】Wakefieldら、(1988)J.Biol.Chem.,263:7646−7654
【非特許文献13】Brownら、(1990)Growth Factors,3:35−43
【非特許文献14】Thiesら、(2001)Growth Factors,18:251−259
【非特許文献15】GentryおよびNash(1990)Biochemistry,29:6851−6857
【非特許文献16】Derynckら、(1995)Nature,316:701−705
【非特許文献17】Massague(1990)Ann.Rev.Cell Biol.,12:597−641
【非特許文献18】Gamerら、(1999)Dev.Biol.,208:222−232
【非特許文献19】McPherronら、(1997)Nature 387:83−90
【非特許文献20】Gonzalez−Cadavidら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14938−14943
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、成熟GDF−8タンパク質と特異的に反応性である抗体および抗体フラグメントを含む新規タンパク質インヒビターを提供し、このGDF−8タンパク質は、モノマー形態、活性ダイマー形態、またはGDF−8潜伏複合体中に複合された状態のいずれかである。本発明の実施形態において、抗体は、成熟GDF−8タンパク質上のエピトープに結合し、このことは、同じ抗体が結合しない成熟GDF−8タンパク質に比べて、GDF−8に関連する1つ以上の生物学的活性の減少を生じる。本発明の実施形態において、本開示された抗体は、骨格筋量および/または骨密度の負の制御と関連するGDF−8活性を減少する。
【0011】
本開示された抗体は、特有かつ所望されない生物学的特性を保有する。例えば、当業者は、代表的に、良好な中和性抗体が、インビトロで活性なGDF−8タンパク質に強く結合し、このタンパク質と安定な阻害性複合体を形成することを予想する。中和性抗体はまた、阻害性抗体と呼ばれ、これは、特定のタンパク質に対して高い親和性を有し、代表的に、同じタンパク質に対してより低い親和性の抗体に比べて、より高い中和レベルを提供すると予想される。しかし、非常に予想外であることに、本発明者らは、インビトロで活性GDF−8タンパク質に弱く結合しかつ中和するだけであるが、インビボで有効である抗体を発見した。このような抗体の発見は、次いで、抗体が結合する、GDF−8上の特定の部位の同定をもたらす。従って、同定された部位に特異的に結合する任意の抗体が、インビボ中和特性を同様に保有することが予想される。
【0012】
さらに、本開示の抗体は、特有かつ予想外の特性を保有する。例えば、抗体は、成熟GDF−8タンパク質をそのモノマー形態およびダイマー形態において認識するだけでなく、インタクトなGDF−8潜伏複合体もまた認識する。
【0013】
本開示の抗体は、治療有効用量で投与され、筋肉組織量または骨密度の増加が、治療に有効である医療状態を処置または予防し得る。これらのGDF−8抗体によって処置され得る疾患および障害としては、筋肉または神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮症、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、および悪液質);脂肪組織障害(例えば、糖尿病);代謝性障害(例えば、II型糖尿病、損傷されたグルコース寛容性、代謝症候群(例えば、X症候群)、外傷によって誘導されるインシュリン耐性(例えば、熱傷));および骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症(特に、年老いた女性および/または閉経後の女性における))が挙げられる。これらのGDF−8抗体での処置の影響を受けるさらなる代謝性骨疾患および障害としては、慢性的グルココルチコイド療法に起因する低骨量、成熟前性腺不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠損症、二次上皮小体機能亢進症、栄養失調、および神経性食欲不振が挙げられる。
【0014】
さらに、本開示の抗体は、それがモノマー形態、ダイマー活性形態、またはGDF−8潜伏複合体に複合された状態のいずれにも関わらず、成熟GDF−8タンパク質またはそのフラグメントを定量的または定性的に検出するために、診断用具として使用され得る。例えば、抗体は、細胞、体液、組織、または器官において成熟GDF−8タンパク質を定量的または定性的に検出するために使用され得る。次いで、検出される成熟GDF−8タンパク質の存在または量は、上に列挙される1つ以上の医療状態と相関する。
【0015】
本開示される抗体は、診断キット中に提供され得る。本キットは、成熟GDF−8タンパク質の検出を補助する他の成分を含み得、上記される1つ以上の医療状態と結果を関連付けさせる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
GDF−8タンパク質に特異的に結合する単離された抗体であって、ここで、該GDF−8タンパク質は、アミノ酸配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)を含み、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpであり、ここで該抗体は、該同じ抗体によって結合されないGDF−8タンパク質に比べて、該GDF−8タンパク質と関連する1つ以上の生物学的活性を減少する、抗体。
(項目2)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸50までの領域に結合する、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸25までの領域に結合する、項目1に記載の抗体。
(項目4)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)を結合し、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである、項目1に記載の抗体。
(項目5)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号8)を結合する、項目1に記載の抗体。
(項目6)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)を結合する、項目1に記載の抗体。
(項目7)
前記GDF−8タンパク質が、少なくとも75%配列番号15に同一であるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目8)
前記GDF−8タンパク質が、配列番号15である、項目7に記載の抗体。
(項目9)
前記抗体が、GDF−8潜伏複合体、フォリスタチンとの複合体中のGDF−8、またはフォリスタチン関連タンパク質との複合体中のGDF−8を認識する、項目1に記載の抗体。
(項目10)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目11)
前記抗体が、ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞によって産生される、JA−16モノクローナル抗体である、項目10に記載の抗体。
(項目12)
項目10に記載のモノクローナル抗体を産生する細胞。
(項目13)
項目1に記載の抗体を含む薬学的組成物。
(項目14)
薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、項目13に記載の組成物。
(項目15)
医療障害に罹患する患者を処置するための方法であって、ここで、該患者は、筋肉組織量の増加から治療的に利益を得、該方法は、GDF−8タンパク質に特異的に結合し得る抗体の治療有効用量を哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで、該GDF−8タンパク質は、アミノ酸配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)を含み、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpであり、ここで該抗体は、該同じ抗体を受容しない患者に比べて、該患者においてGDF−8タンパク質と関連する1つ以上の生物学的活性を減少する、方法。
(項目16)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸50までの領域の該GDF−8タンパク質に結合する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸25までの領域の該GDF−8タンパク質に結合する、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)を結合し、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号8)を結合する、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)を結合する、項目15に記載の方法。
(項目21)
前記GDF−8タンパク質が、少なくとも75%配列番号15に同一であるアミノ酸配列を含む、項目15に記載の方法。
(項目22)
前記GDF−8タンパク質が、配列番号15である、項目15に記載の方法。
(項目23)
前記抗体が、GDF−8潜伏複合体、フォリスタチンとの複合体中のGDF−8、またはフォリスタチン関連タンパク質との複合体中のGDF−8を認識する、項目15に記載の方法。
(項目24)
前記抗体が、ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞によって産生される、JA−16モノクローナル抗体である、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記医療障害が、筋障害、神経筋障害、脂肪組織障害、糖尿病、または骨変性障害である、項目15に記載の方法。
(項目26)
前記医療障害が、筋障害または神経筋障害である、項目15に記載の方法。
(項目27)
前記医療障害が、筋ジストロフィー、筋萎縮症、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、または悪液質である、項目15に記載の方法。
(項目28)
前記医療障害が、筋ジストロフィーである、項目15に記載の方法。
(項目29)
前記医療障害が、糖尿病、II型糖尿病、または骨粗鬆症である、項目15に記載の方法。
(項目30)
項目1に記載のモノクローナル抗体を産生する細胞。
(項目31)
項目1に記載の抗体をコードする核酸。
(項目32)
項目1に記載の抗体を含む診断キット。
(項目33)
ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞によって産生される抗体。
(項目34)
配列番号1に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体。
(項目35)
前記アミノ酸配列が配列番号1である、項目34に記載の抗体。
(項目36)
配列番号1に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をコードする核酸。
(項目37)
前記核酸分子が配列番号6を含む、項目36に記載の核酸。
(項目38)
配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する単離された抗体。
(項目39)
前記抗体が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する、項目38に記載の抗体。
(項目40)
前記抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する、項目38に記載の抗体。
(項目41)
前記抗体が、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する、項目40に記載の抗体。
(項目42)
ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞株を使用して作製される、項目38に記載の抗体。
(項目43)
配列番号1のアミノ酸配列30〜35、配列番号1のアミノ酸配列50〜66、および配列番号1のアミノ酸配列99〜102から選択される少なくとも単鎖CDRを含む、項目38に記載の抗体。
(項目44)
筋肉量を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目38に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉量を増加する工程を包含する、方法。
(項目45)
海綿質密度を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目38に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって海綿質密度を増加する工程を包含する、方法。
(項目46)
筋肉強度を増強する方法であって、該方法は、治療有効量の項目38に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉強度を増強する工程を包含する、方法。
(項目47)
項目38に記載の抗体をコードする核酸。
(項目48)
GDF−8活性を阻害する方法であって、該方法は、項目1の抗体を提供する工程および該抗体でGDF−8活性を阻害する工程を包含する、方法。
(項目49)
タンパク質を特異的に結合する単離された抗体であって、ここで該タンパク質が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、抗体。
(項目50)
前記タンパク質が、BMP−11または該BMP−11のフラグメントである、項目49に記載の抗体。
(項目51)
ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞株を使用して作製される、項目49に記載の抗体。
(項目52)
筋肉量を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目49に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉量を増加する工程を包含する、方法。
(項目53)
海綿質密度を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目49に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって海綿質密度を増加する工程を包含する、方法。
(項目54)
筋肉強度を増強する方法であって、該方法は、治療有効量の項目49に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉強度を増強する工程を包含する、方法。
【0016】
(配列の簡単な説明)
【0017】
【数1】
(定義)
用語「抗体」は、1つ以上の、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体組成物、単一特異性または多特異性を有する抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植片抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、および親抗体の抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメント)をいう。
【0018】
用語「キメラ抗体」は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来の(または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する)対応する配列に同一または相同的である分子をいうのに対して、その鎖の残りは、異なる種に由来する(または異なる抗体クラスまたはサブクラスに属する)対応する配列に同一であるかまたは相同である。このようなキメラ抗体は、Morrisonら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855に記載される。
【0019】
用語「エピトープ」は、抗GDF−8モノクローナル抗体と特異的に反応し得る分子または分子の一部をいう。エピトープは、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、炭水化物、脂質、または他の分子を含み得るが、最も一般的には、タンパク質、短いオリゴペプチド、またはこれらの組み合わせである。
【0020】
用語「GDFポリペプチド」および「GDFタンパク質」は、一般的に、GDF−8に構造的または機能的に関連する任意の増殖因子および分化因子をいう。
【0021】
用語「GDFインヒビター」は、GDFタンパク質の活性、発現、プロセシング、または分泌を阻害し得る任意の因子を含む。このようなインヒビターとしては、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチド類似物、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、およびGDFタンパク質を特異的に阻害する他の低分子が挙げられる。
【0022】
用語「GDF−8」または「GDF−8タンパク質」は、特異的な増殖および分化因子をいう。これらの用語は、タンパク質の全長未プロセス前駆体形態ならびに翻訳後切断から得られる成熟形態およびプロペプチド形態を含む。これらの用語はまた、本明細書中に議論されるように、アミノ酸配列に対する保存的変化または非保存的変化で改変された配列を含む、タンパク質と関連する公知の生物学的活性を維持するGDF−8の任意のフラグメントをいう。
【0023】
これらのGDF−8分子は、任意の供給源(天然供給源または合成供給源)から由来し得る。成熟GDF−8タンパク質のヒト形態は、配列番号15に提供される。しかし、本発明はまた、全ての他の供給源(ウシ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、およびサカナ由来のGDF−8を含む)からのGDF−8分子を含む。これらの種々のGDF−8分子は、McPherronら、(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461に記載される。
【0024】
「成熟GDF−8」は、GDF−8前駆体タンパク質のカルボキシ末端ドメインから切断されたタンパク質をいう。成熟GDF−8は、モノマー、ホモダイマー、またはGDF−8潜伏複合体として存在し得る。インビボ条件またはインビトロ条件に依存して、任意のまたは全てのこれらの異なる形態の間の平衡が存在する。GDF−8は、ホモダイマーとして生物学的に活性であると考えられる。その生物学的に活性な形態において、成熟GDF−8はまた、「活性なGDF−8」ともいわれる。
【0025】
「GDF−8プロペプチド」は、GDF−8前駆体タンパク質のアミノ末端ドメインから切断されたポリペプチドをいう。GDF−8プロペプチドは、成熟GDF−8上のプロペプチド結合ドメインに結合し得る。
【0026】
「GDF−8潜伏複合体」は、成熟GDF−8ホモダイマーとGDF−8プロペプチドとの間に形成されるタンパク質の複合体をいう。2つのGDF−8プロペプチドがGDF−8ホモダイマーと結合し、不活性なテトラマー複合体を形成すると考えられる。潜伏複合体は、1つ以上のGDF−8プロペプチドの代わりに、またはそれらに加えて他のGDF−8インヒビターを含み得る。
【0027】
句「GDF−8インヒビター」としては、GDF−8タンパク質の活性、発現、プロセシング、または分泌を阻害し得る任意の薬剤が挙げられる。このようなインヒビターとしては、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチド類似物、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、およびGDF−8タンパク質の活性を特異的に阻害する他の低分子が挙げられる。このようなインヒビターは、GDF−8タンパク質の生物学的活性を「中和」または「低減」するといわれる。
【0028】
句「GDF−8活性」は、活性なGDF−8タンパク質に関連する1以上の増殖制御活性または形態形成活性をいう。例えば、活性なGDF−8は、骨格筋のネガティブな制御因子である。活性なGDF−8はまた、筋肉特異的酵素(クレアチンキナーゼ)の産生を調節し得、筋芽細胞増殖を刺激し得、そして脂肪細胞への前脂肪細胞の分化を調節し得る。
【0029】
用語「単離された」または「精製された」は、その天然の環境から実質的に隔離された分子をいう。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来する細胞供給源または組織供給源由来の細胞物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まない。句「実質的に細胞物質を含まない」は、単離されたタンパク質が少なくとも70%〜80%(w/w)純粋であり、必要に応じて少なくとも80%〜89%(w/w)純粋であり、必要に応じて90〜95%純粋であり、そして必要に応じて少なくとも96%、97%、98%、99%または100%(w/w)純粋である調製物をいう。
【0030】
処置の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家庭動物および農場動物、ならびに動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなど)を含む哺乳動物として分類される任意の動物をいう。本発明の1つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0031】
用語「モノクローナル抗体」は、単一の抗原エピトープに対して指向された実質的に一様な抗体集団由来の1つ以上の抗体をいう。この用語は、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植片抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、および親抗体の抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメント)を含む。
【0032】
さらに、用語「モノクローナル抗体」は、任意の特定の種または抗体の供給源、あるいは抗体を作製した様式に限定されない。モノクローナル抗体は、慣例的なハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein(1975)Nature,256:495−499)、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)、またはファージ抗体ライブラリー(Clacksonら、(1991)Nature,352:624−628;Marksら、(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597)によって作製され得る。任意の哺乳動物種または非哺乳動物種のモノクローナル抗体が、本発明において使用され得る。例えば、抗体は、霊長類(例えば、ヒト、オランウータンなど)、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウなど)、ウシ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジまたはサカナに由来し得る。本発明の1つの実施形態において、抗体は、ラット起源、マウス起源、またはヒト起源である。
【0033】
用語「中和する」または「中和」は、GDF−8インヒビターによって結合されないGDF−8分子の活性に対する、同じインヒビターによるGDF−8の活性の低減をいう。従って、「中和」抗体は、同じ抗体によって結合されないGDF−8分子の活性に比べて、GDF−8の活性を低減する。1つ以上の本明細書中で開示されたGDF−8インヒビター(例えば、本明細書中で開示される抗体)によって結合される場合、GDF−8タンパク質の活性は、1つ以上の本明細書中で開示されるGDF−8インヒビターによって結合されないGDF−8タンパク質に比べて、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、または55%低減し、必要に応じて、少なくとも60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、72%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、または88%低減し、必要に応じて、少なくとも約90%、91%、92%、93%、または94%低減し、そして必要に応じて少なくとも95%〜100%低減する。
【0034】
用語「特異的相互作用」または「特異的に結合」などは、2つの分子が生理的条件下で比較的安定である複合体を形成することをいう。この用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが、多くの抗原により保持される特定のエピトープに特異的である場合に適用可能であり、この場合、この抗原結合ドメインを保持する特異的結合メンバーは、このエピトープを保持する種々の抗原に結合し得る。特異的結合は、高い親和性および低〜中程度の能力により特徴付けられる。非特異的結合は、通常、中程度〜高い能力で低親和性を有する。代表的には、結合は、親和定数Kaが106M−1より高いか、または108M−1より高くあり得るとき、特異的であると考えられる。必要であれば、非特異的結合は、結合条件を変えることによって、特異的結合に実質的に影響することなく低減され得る。このような条件は、当該分野で公知であり、そして慣用的な技法を用いる当業者は、適切な条件を選択し得る。これら条件は、通常、抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合を可能にする時間、非関連分子の濃度(例えは、血清アルブミン、乳カゼイン)などに関して規定されている。例示の条件は、実施例4に提示されている。
【0035】
用語「TGF−βスーパーファミリー」は、構造的に関連した成長因子のファミリーをいい、そのすべては、生理学的に重要な成長調節および形態形成性質をもつ。関連する成長因子のこのファミリーは、当該分野で周知である(Kingsleyら(1994)Gnens Dev.、8:133〜146;Hoodlessら、(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.、228:235〜272)。このTGF−βスーパーファミリーは、骨形態形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビン、ミュラー(Mullerian)阻害物質、神経膠由来神経栄養因子、およびGDF−8(ミオスタチン)のような、なお増加する数の成長および分化因子(GDF)を含む。これらタンパク質の多くは、BMP−11のように、構造において;および/またはアクチビンのように、活性において、GDF−8に関連している。
【0036】
用語「処置」は、治療処置および予防または防止処置の両方をいう。処置が必要な者は、特定の医療疾患をすでに有する個体および最終的にこの疾患を獲得し得る者(すなわち、防止処置を必要とする者)を含み得る。
【0037】
(発明の詳細な説明)
(抗体)
インタクトの抗体は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。軽鎖の各々は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結し、その一方、ジスルフィト結合の数は、異なる免疫グロブリンのアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を置いて配置された鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、1つの端部に、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を有する。各軽鎖は、1つの端部に可変ドメイン(VL)を、そしてそのもう1つの端部に定常ドメインを有する;この軽鎖の定常ドメインは、重鎖の最初の定常ドメインと整列し、そして軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が、これら軽鎖および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている(Clothiaら(1985)J.Mol.Biol.、186:651〜663;NovotnyおよびHaber(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:4592〜4596)。
【0038】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。これらは、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、ヒトにおけるIaAに対するIgA1およびIgA2;ヒトにおけるIgGに対するIG1、IG2、IG3、IG4、ならびにマウスにおけるIgGに対するIgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3にさらに分割され得る。免疫グロブリンの主要クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造は当該分野で周知である。
【0039】
抗体構造の総説には、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlowら編を参照のこと。要約すれば、各軽鎖は、N末端可変(V)ドメイン(VL)および定常(C)ドメイン(CL)から構成される。各重鎖は、N末端Vドメイン、3または4のCドメイン、およびヒンジ領域から構成される。VHに最も近接するCHドメインは、CH1と称される。VHおよびVLドメインは、フレームワーク領域と呼ばれる比較的保存された配列の4つの領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)から構成され、これは、超可変配列(相補性決定領域、CDR)の3つの領域のための足場を形成する。このCDRは、抗原との特異的相互作用の原因である大部分の残基を含む。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と称される。従って、重鎖上のCDR成分は、H1、H2、およびH3と称され、その一方、軽鎖上のCDRは、L1、L2、およびL3と称される。CDR3は、抗体結合部位内で分子多様性の最大の供給源である。例えば、H3は、2アミノ酸残基と同じ程短くあり得るか、26アミノ酸残基より大きくあり得る。所定の抗体中の免疫グロブリン可変ドメインの位置は、例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、Kabatら編、1991に記載されるように決定され得る。
【0040】
抗体多様性は、可変の領域をコードする複数の生殖系列遺伝子および種々の体細胞事象の使用により創製される。この体細胞事象は、完全VH領域を作製するための多様性(D)を有する可変遺伝子セグメントと遺伝子セグメントの連結(J)の組換え、および完全VL領域を作製するための可変および連結遺伝子セグメントの組換えを含む。この組換えプロセスそれ自身は不正確であり、V(D)J連結部におけるアミノ酸の損失または付加を生じる。多様性のこれらの機構は、抗原に曝す前に、発達するB細胞中で生じる。抗原刺激の後、B細胞中で発現された抗体遺伝子は、体細胞変異を受ける。生殖系列遺伝子セグメントの推定された数、これらセグメントのランダムな組換え、およびランダムVH−VL対合に基き、1.6×107までの異なる抗体が産生され得る(Fundamental Immunology、第3版、Paul編、Raven Press、New York、NY、1993)。抗体多様性に寄与するその他のプロセス(体細胞変異など)を考慮するとき、1×1010までの異なる抗体が産生され得ると考えられている(Immunoglobulin Genes、第2版、Jonioら編、Academic
Press、San Diego、CA、1995)。抗体多様性を産生することで多くのプロセスが関与しているので、同じ抗原特異性を有する独立に派生するモノクローナル抗体が同じアミノ酸配列を有することはありそうもない。
【0041】
抗体は、抗原エピトープを提供するタンパク質の任意の部分に対して惹起され得る。本発明の1つの実施形態では、現在開示される抗体は、TGF−βタンパク質のスーパーファミリーに属するタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。このタンパク質は、必要に応じて、骨形態形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビン、ミュラー阻害物質、神経膠由来神経栄養因子、または成長および分化因子(GDF)である。必要に応じて、このタンパク質は、BMP−11、アクチビン、またはGDF−8である。このタンパク質、必要に応じて成熟GDF−8タンパク質である。
【0042】
1つの実施形態では、現在開示される抗体は、配列番号15に提示される成熟GDF−8タンパク質;必要に応じて配列番号15のアミノ酸1とアミノ酸50との間;必要に応じてアミノ酸1とアミノ酸25との間;そして必要に応じてアミノ酸1とアミノ酸15との間に結合する。
【0043】
別の実施形態では、現在開示される抗体は、TGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質の任意の1つ中の配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、GDF−8中のペプチド配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、成熟GDF−8タンパク質(配列番号15)中のAsp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)に特異的に結合する。
【0044】
必要に応じて、現在開示される抗体は、TGF−βスーパーファミリーに属する任意の1つのタンパク質中のペプチド配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、GDF−8中のペプチド配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、成熟GFD−8タンパク質(配列番号15)中のペプチド配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号8)に特異的に結合する。
【0045】
現在開示される抗体が特異的に結合し得るGDF−8タンパク質は、必要に応じて配列番号15と少なくとも約75%〜80%同一であり、必要に応じて配列番号15と少なくとも約81%〜85%同一であり、必要に応じて配列番号15と少なくとも約86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、または94%同一であり、そして必要に応じて配列番号15と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。このGDF−8タンパク質は、必要に応じて配列番号15を含む。
【0046】
代替の実施形態では、現在開示される抗体は、BMP−11タンパク質に特異的に結合し得る。このBMP−11タンパク質は、必要に応じて配列番号16と少なくとも約75%〜80%同一であり、必要に応じて配列番号16と少なくとも約81%〜85%同一であり、必要に応じて配列番号16と少なくとも約86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、または94%同一であり、そして必要に応じて配列番号16と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。このBMP−11タンパク質は、必要に応じて配列番号16を含む。
【0047】
特定の実施形態では、JA−16と称される抗体は、重鎖の可変領域の一部分として配列番号1のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、この抗体は、配列番号1のアミノ酸30〜35、配列番号1のアミノ酸50〜66、および配列番号1のアミノ酸99〜102から選択される少なくとも1つの単鎖CDRを含む。
【0048】
当業者は、本発明の抗体がそれらの生物学的性質を改変することなく、それらの個々のアミノ酸配列に対する任意の数の保存的または非保存的変化を含み得ることを認識する。これらの変化は、フレームワーク領域(FR)中またはCDR領域中のいずれかでなされ得る。フレームワーク領域中の変化は、通常、抗体の安定性および免疫原性を改善するために設計され、CDR中の変化は、通常、その標的に対する抗体の親和性を増大するために設計される。このような親和性が増大する変化は、代表的には、CDR領域を改変すること、および抗体を試験することにより実験的に決定され得る。このような改変は、Antibody Engineering、第2版、Oxford University
Press、Borrebaeck、1995中に記載される方法に従ってなされ得る。保存的アミノ酸改変は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、荷電、サイズなどに基づく。種々の先行する特徴を考慮する例示の-保存的置
換は、当業者に周知であり、そして:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;およびバリン、ロイシン、およびイソロイシンを含む。このような変化のさらなる詳細は、以下のセクションに記載されている。CDR中とは異なり、より実質的な構造フレームワーク(FR)中の非保存的変化が、抗体の結合性質に悪影響を与えることなくなされ得る。FRへの変化は、制限されずに、非ヒト由来のフレームワークをヒト化すること、または抗体接触もしくは結合部位を安定化するために重要である特定のフレームワーク残基を操作すること、例えば、定常領域のクラスもしくはサブクラスを変えること、Fcレセプター結合のようなエフェクター機能を改変し得る特定アミノ酸残基を変えること(Lundら(1991)J.Immun.147:2657〜2662およびMorganら(1995)Immunology 86:319〜324)、もしくは以下に記載のように定常領域が由来する種を変えることを含む。
【0049】
1つの実施形態では、現在開示される抗体は、成熟GDF−8タンパク質に、それが、モノマー形態、活性ダイマー形態、またはGDF−8潜伏複合体中の複合形態であるかにかかわらず、約106と約1011M−1との間、必要に応じて約108と約1011M−1との間の親和性で特異的に結合する。
【0050】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体組成物、モノ特異性またはポリ特異性を有する抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、CDRグラフト抗体、Fab、F(ab’)2、Fv、および親抗体の抗原結合機能を保持するその他の抗体フラグメントのような抗体フラグメントを含み得る。現在開示される抗体はまた、キメラ抗体に改変され得る。例えば、ヒトFc領域は、マウス抗体からのGDF−8結合領域に融合され得、キメラ抗体を生成し得る。マウス抗体のその他の部分(抗原結合領域の外側)を、対応するヒト抗体フラグメントで置換することにより、ヒト化抗体が産生され得る。このようなキメラまたはヒト化抗体は、増加した生物学的特異性またはインビボ安定性を提示し得る。それらは、ヒト治療のための抗体を設計するのに特に有用である。実施者は、抗体の構築、操作、産生、および単離のための詳細な条件および手順を記載する標準的な資源材料に精通している(例えば、HarlowおよびLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、New Yorkを参照のこと)。
【0051】
本発明はまた、現在開示される抗体のいずれかを産生する、ハイブリドーマのような細胞を提供する。当業者は、抗体を産生するために適切である多くの細胞に精通している。本発明に適合する任意の細胞を用いて現在開示される抗体を産生し得る。1つの実施形態では、現在開示される抗体は、ハイブリドーマ細胞により産生される。マウス抗−GDF−8 JA−16抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、American Tissue Culture Collection(受託指定番号PTA−4236)に2002年、4月18日に寄託されている。寄託機関の住所は、バージニア州20110、マナサス、10801 University Blvdである。
【0052】
(疾患の処置の方法)
本発明の抗体は、ヒトまたは動物における種々の医学的障害を予防、診断または処置するのに有用である。この抗体を用いて、同じ抗体が結合しなかったGDFタンパク質に対して相対的に、一つ以上のGDFタンパク質関連活性を阻害するか、または減少させる。必要に応じて、抗体は、同じ抗体が結合しなかった成熟GDF−8に対して相対的に、成熟GDF−8(モノマー形態、活性ダイマー形態、またはGDF−8潜伏複合体での複合体化に関わらず)の1つ以上の活性を阻害するかまたは減少させる。ある実施形態において、成熟GDF−8タンパク質の活性は、1種類以上の現在公開されている抗体が結合する場合、1種類以上の現在公開されている抗体によって結合されない成熟GDF−8に対して相対的に、少なくとも50%、必要に応じて、少なくとも60%、少なくとも62%、少なくとも64%、少なくとも66%、少なくとも68%、少なくとも70%、少なくとも72%、少なくとも72%、少なくとも76%、少なくとも78%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、または少なくとも88%阻害され、必要に応じて少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%阻害され、そして必要に応じて少なくとも95%〜100%阻害される。
【0053】
現在公開されている抗体によって、診断、処置または予防される医学的障害は、必要に応じて、以下のようである:筋肉障害または神経筋障害;肥満症のような脂肪組織障害;II型糖尿病、損傷されたグルコース寛容性、代謝症候群(例えば、症候群X)、火傷のような外傷によって誘導されるインシュリン耐性;または骨粗鬆症のような骨変性疾患。医学的状態は、必要に応じて、筋肉障害または神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症)、または悪質液および骨の損失に関する障害(特に年配および/または閉経後の女性における骨粗鬆症、グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症、骨減少症、および骨粗鬆症関連の骨折を含む)である。本発明のGDF−8抗体での処置により改善可能な他の標的骨代謝疾患および障害としては、慢性的なグルココルチコイド療法、未熟性腺不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD不足、二次的な副甲状腺機能亢進症、栄養不足、および神経性拒食症に起因する低骨質量が挙げられる。この抗体は、必要に応じて、哺乳動物における(必要に応じてヒトにおける)そのような医学的障害の予防、診断、または治療に用いられる。
【0054】
本発明の抗体または抗体組成物は、治療的有効量で投与される。本明細書中で用いられる場合、抗体の「有効量」は、GDFタンパク質の活性を減少させ、所望の生物学的成果を達成する(例えば、筋肉量または強度を増大させる)のに十分な投薬量のことである。一般に、治療的有効量は、被験体の年齢、状態、および性別、ならびに被験体における医学的状態の重篤度に伴って変化し得る。投薬量は、医師(physcian)により決定され得、必要に応じて、観察される処置の効果に合わせて調整され得る。一般に、その組成物は、抗体が1μg/kgと20mg/kgの用量を与えるように投与される。必要に応じて、抗体を、大量瞬時投薬量で与え、投与後の最長時間にわたり抗体の循環レベルを最大にする。継続的な注入がまた、大量瞬時投与後に用いられ得る。
【0055】
現在公開されている抗体を用いて、上記の医学的状態を処置、診断、または予防する方法はまた、TGF−βスーパーファミリーの他のタンパク質に関して用いられ得る。これらのタンパク質の多く(例えば、BPM−11)は、構造的に、GDF−8に関連がある。従って、別の実施形態において、本発明は、BPM−11またはアクチビンを阻害する能力のある抗体を、単独または他のTGF−βインヒビター(例えば、GDF−8に対する中和抗体)との組合せで被験体に投与することによって、上記の障害を処置する方法を提供する。
【0056】
本発明の抗体を用いて、TGF−βスーパーファミリー(例えば、BPM−11およびGDF−8)に属するタンパク質の存在を検出し得る。これらのタンパク質の存在またはレベルを医学的状態を相関させることによって、当業者は、関連する医学的状態を診断し得る。本発明で公開される抗体により診断され得る医学的状態は、上に記載される。
【0057】
このような検出方法は、当該分野において周知であり、ELISA、放射イムノアッセイ、イムノブロット、ウェスタンブロット、免疫蛍光法、免疫沈降、および他の類似の技術を含む。抗体は、タンパク質(例えば、GDF−8)を検出するためのこれらの技術の1つ以上を取り入れた診断キットをさらに供給し得る。このようなキットは、他の組成、パッケージ、使用説明書、またはタンパク質の検出およびキットの使用を補助する他の材料を含み得る。
【0058】
これらの抗体が、診断目的を意図する場合、それらの抗体を改変する(例えば、リガンド基(例えば、ビオチン)を有する、または検出マーカー基(例えば、蛍光基、放射性同位体または酵素)を有する)ことが所望され得る。所望される場合、これらの抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)は、従来技術を用いて標識される。適切な標識としては、フルオロフォア、発色団、放射活性原子、高電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。酵素は、代表的には、その活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、通常、その3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を青色色素に変換する能力によって検出され、分光光度計を用いて定量し得る。他の適切な標識には、例えば、結合パートナー(例えば、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、IgGとプロテインA)、および当該分野に公知の種々のレセプターリガンド結合のうちの1つが挙げられる。他の手順および可能性が、当業者に容易に明らかであり、本発明の範囲内で、等価物として考慮される。
【0059】
(抗体の組成物)
本発明は、現在公開されている抗体を含む組成を提供する。その組成は、薬学的使用および患者に対する投与に適し得る。その組成物は、代表的に、1種類以上の本発明の抗体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。本明細書中で使用される場合、句「薬学的に受容可能な賦形剤」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張性剤および吸収遅延剤などを全て含み、薬学的投与に対して適合性である。薬学的に活性のある基質に対してそのような媒体および試薬の使用は、当該分野で周知である。その組成物はまた、補充的な、追加的な、または増強された治療的機能を提供する他の活性化合物を含み得る。薬学的組成物はまた、投与のための指示書と共に、容器内、パック内またはディスペンサー内に含まれ得る。
【0060】
本発明の薬学的組成物は、意図される投与経路に適合性であるように処方される。投与を達成する方法が、当業者に公知である。局所的または経口的に投与され得る組成物、または粘膜を通して送達する能力を有し得る組成物を得ることがまた、可能であり得る。この投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下または経皮的であり得る。
【0061】
皮内適用または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、代表的に、以下の組成をのうち1種類以上を含む:注射ための水のような滅菌希釈液、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗真菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸塩ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸のような緩衝液;および塩化ナトリウムまたはグルコースのような張性の調整のための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩を用いて調整され得る。このような調製物は、ガラスまたはプラスチックで作製したアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量のバイアルの中に封入され得る。
【0062】
注射に適した薬学的組成物としては、滅菌水溶液または滅菌水性分散液、および滅菌注射用液または滅菌注射分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のための適切なキャリアとしては、生理的食塩水、静菌性水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、この組成物は、滅菌されていなければならず、かつ容易にシリンジ注射可能に存在する程度の流動性であるべきである。製造および保存の条件下で安定でなければならず、かつ微生物(例えば、細菌および真菌)の混入作用に対して保護されなければならない。キャリアは、溶媒または分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物)であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散の場合、必要とされる粒子サイズの保持によって、そして界面活性剤の使用によって保持され得る。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトール、塩化ナトリウム)は、組成物中に含まれる。注射可能な組成物の長期の吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)を含ませることによってなされ得る。
【0063】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用に適するキャリアを含む。経口組成物は、ゼラチンカプセル中に封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の目的で、抗体は、賦形剤を用いて組み込まれ得、錠剤、口内錠、またはカプセルの形態で用いられ得る。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント剤は、組成物の一部として含まれる得る。錠剤、丸薬、カプセル、口内薬などは、以下の任意の成分、または同様の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロースのような結合剤;ガムトラガントまたはゼラチン;デンプンまたはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSteroteのような潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動性促進剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味料のような香味料。
【0064】
吸入による投与のために、圧縮容器または適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素のような気体)を備えたディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾル噴霧形態で送達される。
【0065】
全身投与は、経粘膜的手段または経皮的手段によるものであり得る。経粘膜投与または経皮投与のために、バリヤーに浸透させるのに適した浸透剤が、処方において用いられる。そのような浸透剤は、一般に、当該分野に公知であり、例えば、経粘膜投与のための界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻噴霧または坐薬の使用により達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、該分野で一般に公知の軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、または当クリームに処方される。
【0066】
抗体はまた、直腸送達のために、坐薬(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような従来の坐薬基剤)または保留浣腸の形態で調製され得る。
【0067】
1つの実施形態において、現在公開されている抗体は、移植および微小カプセル化送達システムを含む制御放出処方物のような、体からの急速な排出から化合物を保護するキャリアと共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性ポリマー、生体適合性ポリマーが用いられ得る。このような処方物の調製方法は、当業者に明らかである。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceticals,Incから商業的に入手し得る。現在公開されている抗体を含むリポソーム懸濁物もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして用いられ得る。これらは、当業者に公知の方法(例えば、米国特許第4,522,811号に記載される)に従って調製され得る。
【0068】
容易な投与および一様な投薬量のために、経口組成物または非経口組成物を、投薬量単位形態で処方するのに特に有利である。本明細書中で用いられる場合
、「投薬量単位形態」は、処置すべき被験体に対する単位投薬量として適切な、物理的に分離した単位のことをいう;各単位は、必要とされる薬学的キャリアと共に、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含む。本発明の投薬量単位形態に関する詳細は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のための活性化合物のような、配合技術における本質的な制限によって、およびそれらに依存して直接的に決定される。
【0069】
それらの化合物の毒性効力および治療効力は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順(例えば、LD50(集団の50%までの致死量)およびED50(集団の50%における治療的な有効量))によって決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量の比率は、治療係数であり、LD50/ED50と表し得る。大きな治療係数を示す抗体は、本発明の実施形態である。
【0070】
細胞培養物アッセイおよび動物実験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投薬量範囲の処方において用いられ得る。このような化合物の投薬量は、必要に応じて、小さな毒性を有するED50または毒性のないED50を有する循環濃度の範囲内である。投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化され得る。本発明において用いられる任意の抗体について、治療的有効量が、始めに細胞培養物アッセイから推定され得る。細胞培養物にて決定されたIC50を含む循環血漿濃度(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験抗体濃度)範囲を達成するための用量が、動物モデルで処方され得る。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニタリングし得る。適切なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、転写ベースのアッセイ、GDFタンパク質/レセプター結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前脂肪細胞の分化に基くアッセイ、脂肪細胞におけるグルコース取込みに基くアッセイ、および免疫学的アッセイが挙げられる。
【0071】
(改変された抗体)
特定のアミノ酸は、タンパク質の活性(例えば、抗体の結合特性)に悪影響を与えることなく、タンパク質構造中の他のアミノ酸と置換され得ることが、当業者により理解される。従って、本明細書中に開示される抗体のアミノ酸配列、またはこの抗体をコードするDNA配列において、それらの生物学的有用性または活性がかなり損失することなく、種々の変化が作製され得ることが、本発明者らにより意図される。このような変化としては、欠失、挿入、切断、置換、融合、モチーフ配列のシャッフリングなどが挙げられ得る。
【0072】
このような変化を作製する際、アミノ酸の疎水性親水性指数(hydropathic
index)が考慮され得る。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を与える際のこの疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、一般に、当該分野で理解されている(KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.,157:105−132)。アミノ酸の相対疎水性親水性特性は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、従って、この二次構造は、このタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定することが認められている。
【0073】
各アミノ酸は、その疎水性親水性および電荷特性に基づいて疎水性親水性指数を割り当てられている(KyteおよびDoolittle,1982);これらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)およびアルギニン(−4.5)である。
【0074】
このような変化を作製する際、その疎水性親水性指数が±2以内であるアミノ酸の置換は、本発明の一実施形態であり、±1以内であるアミノ酸の置換が任意であり、±0.5以内であるアミノ酸の置換もまた任意である。
【0075】
類似のアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効率的に行われ得ることもまた当該分野で理解されている。米国特許第4,554,101号は、タンパク質の最も大きな局所平均親水性は、その隣接するアミノ酸の親水性により支配される場合、そのタンパク質の生物学的特性と相関すると記載している。
【0076】
米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性値が、各アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、およびトリプトファン(−3.4)。
【0077】
このような変化を作製する際、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換は、本発明の一実施形態であり、±1以内であるアミノ酸の置換は任意であり、そして±0.5以内であるアミノ酸の置換は任意である。
【0078】
改変は、タンパク質の構造または生物学的機能が、その変化により影響を受けないように、保存的であり得る。このような保存的アミノ酸改変は、アミノ酸側鎖置換基の相対類似性(例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなど)に基づく。種々の上記特徴を考慮する例示的な保存的置換は、当業者に周知であり、そして以下が挙げられる:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン。本明細書中で開示される抗体のアミノ酸配列は、その標的抗原に対するこの抗体の結合が悪影響を受けない限り、任意の数の保存的変化を有するように改変され得る。このような変化は、抗体の抗原結合部分の内側または外側に導入され得る。例えば、抗体の抗原結合部分の内側に導入された変化は、その標的に対するこの抗体の親和性を増加するように設計され得る。
【0079】
上記のアミノ酸配列に対する変化に加えて、これらの抗体は、グルコシル化されるか、ペグ化されるか、またはアルブミンもしくは非タンパク質性ポリマーに連結され得る。例えば、本明細書中で開示される抗体は、種々の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン)のうちの1つに、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に記載される様式で、連結され得る。これらの抗体は、例えば、その循環半減期を増加するために、ポリマーへの共有結合によって化学的に改変される。特定のポリマー、およびこのポリマーをペプチドに結合するための方法は、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号;および同第4,609,546号にも示されている。
【0080】
別の実施形態において、この抗体は、変更されたグリコシル化パターン(すなわち、元のまたはネイティブのグリコシル化パターンから変更される)を有するように改変され得る。本明細書中で使用する場合、「変更された(altered)」とは、1つ以上の糖質部分の欠失を有すること、および/または元の抗体に加えられた1つ以上のグリコシル化部位を有することを意味する。
【0081】
抗体のグリコシル化は、代表的に、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖に対する糖質部分の結合をいう。トリペプチド配列である、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖に対する糖質部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、強力なグリコシル化部位が生じる。O結合グリコシル化とは、糖である、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうち1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合をいうが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた使用され得る。
【0082】
本明細書中で開示される抗体にグリコシル化部位を加えることは、この抗体が上記のトリペプチド配列の1つ以上(N結合グリコシル化部位について)を含むようにアミノ酸配列を変更することによって、都合良く達成される。この変更はまた、(O結合グリコシル化部位について)1つ以上のセリン残基またはスレオニン残基を元の抗体の配列に加えることによって、または1つ以上のセリン残基またはスレオニン残基を置換することによって、行われ得る。簡便さのために、この抗体のアミノ酸配列は、必要に応じて、DNAレベルでの変化により変更される。
【0083】
この抗体上の糖質部分の数を増加する別の手段は、グリコシドとこの抗体のアミノ酸残基との化学的カップリングまたは酵素的カップリングによるものである。これらの手順は、この手順がN結合グリコシル化またはO結合グリコシル化についてのグリコシル化能力を有する宿主細胞においてGDFペプチドインヒビターの産生を必要としないという点で、有利である。使用されるカップリング様式に依存して、これらの糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインの遊離スルフヒドリル基)、(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基)、(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンの芳香族残基、あるいは(f)グルタミンのアミド基、に結合され得る。これらの方法は、WO87/05330、ならびにAplinおよびWriston(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.,22:259−306に記載される。
【0084】
抗体上に存在する任意の糖質部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物への抗体の曝露を必要とする。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたは全ての糖の切断を生じる。
【0085】
化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら(1987)Arch.Biochem.Biophys.、259:52およびEdgeら(1981)Anal.Biochem.、118:131に記載される。GDFペプチドインヒビター上の糖質部分の酵素的切断は、Thotakuraら(1987)Meth.Enzymol.、138:350に記載されるような、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0086】
(配列分析)
常に必要なわけではないが、所望される場合、当業者は、本発明により開示された抗体のアミノ酸配列または核酸配列を決定し得る。本発明は、これらのアミノ酸配列および核酸配列を含む。本発明はまた、これらの核酸配列およびアミノ酸配列の改変体、ホモログおよびフラグメントを含む。例えば、この抗体は、配列番号1を含む重鎖可変領域配列、または配列番号1をコードする核酸配列(例えば、配列番号6)を含み得る。この核酸配列またはアミノ酸配列は、本発明により開示される重鎖可変領域の核酸配列またはアミノ酸配列に、少なくとも70%〜79%同一である配列、必要に応じて、少なくとも80%〜89%同一である配列、必要に応じて、少なくとも90%〜95%同一である配列、そして必要に応じて少なくとも96%〜100%同一である配列を、必要に応じて含む。当業者は、抗体の抗原結合特性を決定するCDR領域が、抗原結合に関与しない抗体の他の部分よりも、配列バリエーションを許容し得ないことを認識する。従って、抗体のこれらの非結合領域は、抗体の結合特性を有意に変更することなしに、かなりのバリエーションを含み得る。しかし、当業者はまた、その標的に対する抗体の親和性を増大させるように特に設計されたCDR領域に対して、多くの変化がなされ得ることを認識する。このような親和性を増大させる変化は、代表的に、CDR領域を変更し、そして抗体を試験することによって、実験的に決定される。CDR内であろうとCDR外であろうと、このような変更の全ては、本発明の範囲内に含まれる。
【0087】
相対的な配列の類似性または同一性は、Sequence Analysis Software PackageTM(Version 10;Genetics Computer Group,Inc.、University of Wisconsin Biotechnology Center、Madison、WI)の「Best Fit」プログラムまたは「Gap」プログラムを使用して決定され得る。「Gap」は、NeedlemanおよびWunsch(NeedlemanおよびWunsch、1970)のアルゴリズムを使用して、一致の数を最大化し、そしてギャップの数を最小化する、2つの配列のアラインメントを見出す。「BestFit」は、2つの配列間の最も類似性のあるセグメントの最適なアラインメントを実施する。最適なアラインメントは、SmithおよびWaterman(SmithおよびWaterman、1981;Smithら、1983)の局所的相同性アルゴリズムを使用して、一致の数を最大化するためにギャップを挿入することによって、見出される。
【0088】
上記のSequence Analysis Software Packageは、本発明により開示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の相同性を同定するための、多数の他の有用な配列分析ツールを含む。例えば、「BLAST」プログラム(Altschulら、1990)は、特定のデータベース(例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)、Bethesda、MDにて維持される配列データベース)中の問い合わせ配列(ペプチドまたは核酸のいずれか)に対する配列類似性について検索し;「FastA」(LipmanおよびPearson、1985;PearsonおよびLipman、1988;Pearsonら、1990もまた参照のこと)は、問い合わせ配列と同じ型(核酸またはタンパク質)の配列の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する;「TfastA」は、タンパク質問い合わせ配列とヌクレオチド配列の任意の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する(これは、比較を行う前に、6つ全てのリーディングフレームでヌクレオチド配列を翻訳する);「FastX」は、フレームシフトを考慮して、ヌクレオチド問い合わせ配列とタンパク質配列の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する。「TfastX」は、フレームシフトを考慮して、タンパク質問い合わせ配列とヌクレオチド配列の任意の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する(これは、比較を行う前に、ヌクレオチド配列の両方の鎖を翻訳する)。
【0089】
以下の実施例は、本発明の実施形態を提供する。当業者は、多数の改変およびバリエーションが本発明の精神および範囲を変更することなく実施され得ることを、認識する。このような改変およびバリエーションは、本発明の範囲内に包含されると考えられる。これらの実施例は、本発明を決して限定しない。
【0090】
本出願を通じて引用される全ての参考文献、特許および公開された特許出願の全内容は、本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0091】
(実施例1:GDF−8の精製)
全長ヒトGDF−8タンパク質を発現する選択された細胞株由来の馴化培地(成熟GDF−8+GDF−8プロペプチド)を、pH6.5まで酸性化し、そして80×50mm
POROS SPカチオン交換カラム(PerSeptive Biosystems、Foster City、CA)と直列の80×50mm POROS HQアニオン交換カラムにアプライした。フロースルーを、pH5.0に調節し、そして75×20mm POROS SPカチオン交換カラム(PerSeptive Biosystems)にアプライし、そしてNaCl勾配で溶出した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって示される、GDF−8を含む画分をプールし、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いてpH2〜3に酸性化し、次いで、粘性を低減させるために、0.1%TFAで200mlにした。次いで、このプールを、60×21.2mmのガードカラム(Phenomenex)にアプライし、その後250×21.2mmのC5カラム(Phenomenex、Torrance、CA)にアプライし、次いで、TFA/CH3CN勾配を用いて溶出して、GDF−8プロペプチドから成熟GDF−8を分離した。成熟GDF−8を含むプールした画分を、凍結乾燥によって濃縮して、アセトニトリルを除去し、そして20mlの0.1%TFAを添加した。次いで、このサンプルを、分離を補助するために60℃に加熱した250×10mmのC5カラム(Phenomenex)にアプライした。これを、さらなる分離が達成され得なくなるまで繰り返した。次いで、成熟GDF−8を含む画分をプールし、そして40%のアセトニトリルまでにし、そして60×21.2ガードカラムにアプライした後に、600×21.2 BioSep S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)にアプライした。精製された成熟GDF−8を含む画分をプールし、そして引き続く実験における使用のために濃縮した。
【0092】
GDF−8プロペプチドを含むC5カラム画分をプールし、アセトニトリルをエバポレーションによって除去し、20mlの0.1%TFAを添加し、次いで、サンプルを250×10mmC5カラムに60℃で注入した。さらなる分離がもはや達成されなくなるまで、これを繰り返した。次いで、GDF−8プロペプチドを含む画分をプールし、40%アセトニトリルにし、60×21.2ガードカラムが先行する600×21.1BioSep S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)に適用した。精製GDF−8プロペプチドを含む画分をプールし、そして引き続く実験において使用するために濃縮した。
【0093】
SDS−PAGEにおいて、精製成熟GDF−8は、非還元条件下で25kDaに、還元条件下で13kDaに幅広いバンドとして移動した。類似のSDS−PAGEプロフィールが、マウスGDF−8(McPherronら、1997、上記)に報告されており、成熟タンパク質のダイマーの性質を反映する。
【0094】
精製GDF−8プロペプチドの見かけの分子量は、還元条件下および非還元条件下の両方で、38kDaであった。これは、GDF−8プロペプチド自体がモノマーであることを示す。見かけの分子量とGDF−8プロペプチドの予測された分子量(約26kDa)との間の差異は、炭水化物の追加を反映し得る。なぜなら、そのアミノ酸配列が、潜在的なN−結合グリコシル化部位を含むからである(McPherronら、1997、上記)。
【0095】
(実施例2.精製組換えヒトGDF−8の特徴付け)
50μgの各々精製された成熟GDF−8および精製GDF−8プロペプチドを混合し、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)中に透析し、そして300×7.8mm BioSep S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)でクロマトグラフィーを行った。成熟GDF−8:プロペプチド複合体の分子量を、同じカラムでクロマトグラフィーを行った分子量標準(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を使用して、溶出時間から決定した。
【0096】
精製されたGDF−8を、精製成熟GDF−8と、中性pHでインキュベーションした場合、2つのタンパク質は、サイズ排除プロフィールによって示されるように、複合体であるようである。12.7分に溶出した第1のタンパク質ピークは、同じカラムでクロマトグラフィーを行った分子量標準(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)から、78kDaの推定分子量を有した。この複合体のサイズは、プロペプチドの2つのモノマーと会合する成熟GDF−8の1つのダイマーと最も一致する。
【0097】
この観察を確認するために、成熟GDF−8およびGDF−8プロペプチドの両方を含む調製物を、100mM 1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,Pierce)を伴うかまたは伴わないで、1時間、室温(RT)でインキュベートし、HClでpH2〜3に酸性化し、そしてトリシン(tricine)緩衝化10%アクリルアミドゲルを使用するSDS−PAGEのために、Micron−10 Amicon コンセントレーター(Millipore,Bedford,MA)を用いて濃縮した。ゲルのクーマシーブルー染色によって、タンパク質を可視化した。EDCの存在下において、75kDaの見かけの分子量を有する架橋複合体を観察した。
【0098】
GDF−8プロペプチドのDNAおよびアミノ酸配列は、McPherronおよびLee(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461に記載される。
【0099】
(実施例3:抗GDF−8抗体の産生)
GDF−8活性を阻害し得る抗体を開発するために、1群のGDF−8ノックアウトマウスを、2週間毎に、成熟GDF−8タンパク質(実施例1に記載されるように精製された)を、最初の2回の免疫についてフロイント完全アジュバントに混合して、その後、不完全フロイントアジュバントに混合して、免疫した。免疫期間を通して、血液をサンプリングし、そして循環する抗体の存在について試験した。9週目に、循環する抗体を有する動物を選択し、3日の連続した日の間、免疫し、そして屠殺した。脾臓を取り出し、そして細胞中にホモジナイズした。脾臓細胞を、確立された手順(OiおよびHerzenberg(1980)Selected Method in Celluar Immunology,W.J.Freeman Co.,San Francisco、CA、p351)によって、50%PEG1500を使用して、骨髄腫融合パートナー(株P3−x63−Ag8.653)に融合した。この融合細胞を、2×105細胞/ウェルの密度で、96ウェルマイクロタイタープレートにプレートした。24時間後、細胞を、HAT選択に供し(Littlefield(1964)Science,145:709)、任意の非融合および非産生的融合骨髄腫細胞を効果的に殺傷した。
【0100】
抗GDF−8抗体を分泌する、首尾良く融合されたハイブリドーマ細胞を、固相および溶液相ELISAによって同定した。成熟GDF−8タンパク質を、上記のように、CHO細胞から調製し、そしてポリスチレン上に(固相アッセイのため)コーティングするか、またはビオチン化(溶液ベースのアッセイのため)した。ActRIIBレセプターをポリスチレンプレート上にコーティングし、そしてビオチンGDF−8結合を、ハイブリドーマ上清の添加によって阻害する、中和アッセイをまた使用した。結果として、GDF−8抗体を発現するハイブリドーマが同定された。これらの陽性クローンを培養し、そしてさらなる研究のために増殖させた。増殖した場合、これらの培養物を保持し、そして細胞株を、限界希釈によってクローニングし、凍結保存した。
【0101】
これらの細胞培養物から、成熟GDF−8を特異的に認識するパネルの抗体を、開発した。抗体のアイソタイプを、マウス免疫グロブリンアイソタイプ決定キット(Zymed
Laboratories,San Francisco,CA)を使用して決定した。抗体クローンの1つ(JA−16と指定される)を、さらに研究した。
【0102】
(実施例4:JA−16結合特異性の特徴付け)
JA−16の結合特異性を決定するために、GDF−8タンパク質配列の一部に対応する合成ペプチドのパネルを作製した。図1は、この研究において使用されたGDF−8合成ペプチドを示す。偶数のペプチド(N2−N14)を、第1級アミン上でビオチン化した。ビオチン化ペプチドN2、N4、N6、N8、N10、N12、N14、および無関係なペプチドDAE−10を、製造業者のプロトコルに従って、1μg/mlで2時間、室温で、Reacti−BindTMStreptavidinコートしたポリスチレン96ウェルプレート(Pierce,Rockford,IL,カタログ番号15124)上でコーティングした。
【0103】
ブロッキング後、JA−16または無関係のモノクローナル抗体コントロールを、100nM、10nMおよび1nM(JA−16のみ)で、ELISAプレートに添加し、そして30分間インキュベートした。プレートを洗浄後、二次抗体(ヤギ抗マウスIgG(H+L)−HRP,Calbiochem,San Diego,CA,カタログ番号401215)を、1:1000の希釈で添加し、そして30分間室温でインキュベートした。プレートを4回洗浄し、そしてTMB基質を添加した(KPL,Gaithersburg,MD,カタログ番号50−76−04)。比色測定を、Molecular Devicesマイクロプレートリーダーで、450nmで示す。結果を図2に示す。JA−16は、ビオチン化N末端ペプチドN8(配列番号65)に強力に、そして特異的に結合する。
【0104】
成熟GDF−8およびBMP−11は、アミノ酸レベルにおいて90%相同である(図3)。これらの変化のうちの3つが、N8ペプチド内に存在する。GDF−8およびBMP−11に対するJA−16の特異性を比較するために、より短いペプチドを、それぞれ、GDF−8およびBMP−11に対して特異的なG1およびB1と指定した。G1とB1との間の差異は、下線で示した。
【0105】
【数2】
ペプチドG1およびB1を、製造業者のプロトコルに従って、PIERCE結合キット(カタログ番号77116ZZ)を使用して、BSAに結合させた。G1−BSAおよびB1−BSAを、4℃で一晩、0.2M炭酸ナトリウム緩衝液中、1μg/mlで、96ウェル平底アッセイプレート(Costar,NY,カタログ番号3590)にコーティングした。プレートを洗浄し、そしてPBS、1mg/ml BSA、0.05% Tweenとともに、1時間、室温でブロックした。JA−16(5nM)を連続的に希釈した(1:2)。希釈物を、ELISAプレートに添加し、そして30分間室温でインキュベートした。4回の洗浄後、二次抗体(ヤギ抗マウスIgG(H+L)−HRP,Calbiochem、カタログ番号401215)を、1:1000の希釈で添加し、そして30分間室温でインキュベートした。プレートを4回洗浄し、そしてTMB基質を展開した(KPL,カタログ番号50−76−04)。比色測定を、Molecular Devicesマイクロプレートリーダーで、450nmで行った。図4は、JA−16が、濃度依存性の様式でG1−BSAに結合するが、最も高い濃度でさえ、B1−BSAに結合しないことを示す。
【0106】
JA−16特異性に対してさらに研究するために、G1−BSAを、上記のようにコーティングしたが、このとき、JA−16を、5nMで、G1ペプチドまたはB1ペプチド、GDF−8、またはBMP−11のいずれかと、種々の濃度で、プレインキュベートした。結果を図5に示す。BMP−11特異的ペプチドB1は、JA−16がG1−BSAに結合することを阻害しないが、G1への結合を阻害する。GDF−8に対するIC50は、0.8μg/mlであるが、一方、BMP−11のIC50は、3.8μg/mlであり、JA−16が、BMP−11よりも5倍高い親和性を有するGDF−8を認識することを示す。
【0107】
(実施例5:JA−16エピトープのマッピング)
JA−16の正確なエピトープをマッピングするために、GDF−8配列の一部に対応する重複する13マーペプチド(配列番号17〜64、図6Aを参照のこと)を、スポット合成技術(Molinaら、(1996)Peptide Research,9:151−155;Frankら、(1992)、Tetrahedron,48:9217−9232)を使用して、セルロース紙上で直接的に合成した。このアレイにおいて、システイン残基を、システインの存在によって引き起こされる化学的複雑さを減少させるために、セリンで置換した。ポリエチレングリコールおよびFmoc保護アミノ酸で改変したセルロース膜を、Abimed(Lagenfeld,Germany)から購入した。β−アラニンスペーサーおよびペプチドを結合させることによって膜に規定されたアレイを、先に記載される(Molinaら、(1996)Peptide Research,9:151−155;Frankら、(1992)、Tetrahedron,48:9217−9232)ように、標準的なDIC(ジイソプロピルカルボジイミド)/HOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)結合化学を使用して、合成した。
【0108】
活性化アミノ酸を、Abimed ASP 222ロボットを使用してスポットした。洗浄および脱保護工程を手動で行い、そして最終合成サイクル後に、このペプチドをN末端アセチル化した。ペプチド合成に続いて、膜を、メタノール中で10分間、そしてブロッカー(TBST(0.1%(v/v)Tween20を用いた、Tris緩衝化生理食塩水)+1%(w/v)カゼイン)中で10分間、洗浄した。次いで、膜を、穏やかに振盪しながら、1時間、ブロッカー中で2.5μg/mlのJA−16とともにインキュベートした。ブロッカーで3回、10分間洗浄後、膜をHRP標識した二次抗体(ブロッカー中0.25μg/ml)とともに30分間、インキュベートした。次いで、膜を、3回、10分間、それぞれブロッカーとともに、そして2回、10分間、それぞれ、TBSTとともに洗浄した。結合した抗体を、SuperSignal West試薬(Pierce)およびデジタルカメラ(Alphalnnotech FluorImager)を使用して、視覚化した。結果を図6Bに示す。JA−16は、アレイの第1の4つのペプチド(配列番号17〜20)に結合し、これは、GDF−8のN末端上の18残基に対応する。
【0109】
JA−16エピトープをさらに特徴付けるために、ペプチドGly−Leu−Asp−Ser−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Ser(配列番号18)の欠失および置換の分析を、スポット合成を使用して実施した。置換分析において、このペプチドの各残基を、システインを除いて、20の天然のアミノ酸のそれぞれで個々に置換し、配列番号3、18、66〜104、106〜113、および115〜128を作製した。合成および結合アッセイを、上記のように実施した。結果は、図7に示される。4個のN末端アミノ酸および4個のC末端アミノ酸における置換は、十分に耐性であり、これは、これらのアミノ酸が、成熟GDF−8に対するするJA−16結合に必要ではなかったことを示した。しかし、このペプチドの中間セグメント、Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)では、セリン残基における少しの置換を除いて、変化が耐性でなく、これは、このペプチド配列が、JA−16結合に必要とされることを示唆する。さらに、配列Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)は、検出分析において結合が検出され得る最も小さなペプチドであった。従って、この結果は、JA−16が、GDF−8中の、エピトープAsp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)を認識し、Asp、Glu、HisおよびThr残基(Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2))が結合に重要であることを示す。
【0110】
(実施例6:インビボでのJA−16の特徴付け)
JA−16がGDF−8活性をインビトロで中和する能力を決定するために2つのアッセイを実施した。第1に、JA−16を、ActRIIBレセプターに対する成熟GDF−8タンパク質の結合を阻害するその能力について試験した。組換えActRIIB.Fcキメラ(R&D Systems,Minneapolis,MN,カタログ番号339−RB/CF)を、4℃で一晩、0.2M 炭酸ナトリウム緩衝液中で、1μg/mlで、96ウェル平底アッセイプレート(Costar,カタログ番号3590)上でコーティングした。次いで、プレートを、1mg/mlウシ血清アルブミンを用いてブロックし、そして標準的なELISA技術に従って、洗浄した。
【0111】
種々の濃度のビオチン化成熟GDF−8タンパク質(100μl)を、ブロッキングしたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、そして洗浄した。結合した成熟GDF−8タンパク質の量を、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP,BD PharMingen,San Diego,CA,カタログ番号13047E)、続いて、TMB(KPL,カタログ番号50−76−04)の添加によって検出した。比色測定を、Molecular Devicesマイクロプレートリーダーで、450nmで行った。結果を図8に示す。成熟GDF−8は、12ng/mlのED50を示した。
【0112】
同じプロトコルをまた、30分間、5ng/mlでビオチン化成熟GDF−8タンパク質とともに、JA−16抗体をプレインキュベートした後に実施した。無関係なモノクローナル抗体を、ネガティブコントロールとして含めた。図9は、JA−16が、約1μMの非常に弱いインビトロ中和活性を有することを示す。このインビトロのデータは、JA−16が、特に、あまり制御されないインビボの条件下で、活性GDF−8の非常に良好な中和物でないようであることを示唆する。
【0113】
第2のセットのアッセイにおいて、レポーター遺伝子アッセイを、活性なGDF−8タンパク質の生物学的活性をインビトロで評価するために実施した。このアッセイは、ルシフェラーゼに結合した、レポーターベクター、pGL3(CAGA)12を使用する。CAGA配列は、TGF−β誘導遺伝子、PAI−1のプロモーター内のTGF−β応答配列であることが以前に報告された。
【0114】
12CAGAボックスを含むレポーターベクターを、基礎的なレポータープラスミド、pGL3(Promega Corporation,Madision,WI,カタログ番号E1751)を使用して作製した。TATAボックスおよびアデノウイルス主要後期プロモーター由来の転写開始部位(−35/+10)を、BgIII部位とHindIII部位との間に挿入した。CAGAボックスAGCCAGACAの12個の反復を含むオリゴヌクレオチドをアニールし、そしてXhoI部位にクローニングした。ヒト横紋筋肉腫細胞株、A204(ATCC HTB−82)を、FuGENE 6トランスフェクション試薬(Roche Diagnostics,Indianapolis,MN,カタログ番号1 814 443)を使用して、pGL3(CAGA)12を、一過性トランスフェクトした。トランスフェクションに続いて、細胞を、16時間、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100μg/mlペニシリンおよび10%ウシ胎仔血清を補充したMcCoys 5A培地(Life Technologies,Rockville,MD,カタログ番号21500−079)中で、48ウェルプレート上で培養した。次いで、細胞を、37℃で6時間、グルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリン、および1mg/mlウシアルブミンを有するMcCoy’s 5A培地中の成熟GDF−8、BMP−11、またはアクチビンを用いて処理した。ルシフェラーゼを、Luciferase Assay System(Promega Corporation,Madison,WI,カタログ番号E1483)を使用して、処理した細胞中で定量化した。GDF−8は、最大で、レポーター構築物を10倍、活性化し、10ng/mlのGDF−8のED50を有した。BMP−11(これは、アミノ酸レベルで、GDF−8と90%同一である(Gamerら、(1999)Dev.Biol.,208(1):222−32;Nakashimaら、(1999)Mech.Dev.,80(2):185−9)、およびアクチビンは、類似の生物学的応答を誘発した。
【0115】
JA−16の中和活性は、A204細胞の添加の前に、30分間、成熟GDF−8タンパク質とともに、JA−16をプレインキュベートすることによって、決定された。無関係な抗体(モノクローナルコントロール)ならびにファージディスプレイ技術(Myo−19)を使用してscFvライブラリーから誘導されたヒトGDF−8抗体をまた、試験した。
【0116】
図10は、このアッセイにおいて同様に、JA−16が、約1μMのIC50で弱く中和するのに対して、Myo−19のIC50が、約100nMであることを示す。このインビトロのデータに基づいて、Myo−19抗体が、本明細書中で示されるように、インビボでJA−16(これは、そうではない)よりも、活性GDF−8タンパク質のより良い中和物であることが予期された。
【0117】
(実施例7:JA−16を用いたGDF−8の免疫沈降)
成熟GDF−8およびGDF−8複合体に対するJA−16の結合を評価するために、一連の免疫沈降研究を行った。
【0118】
最初に、JA−16がGDF−8潜伏複合体を免疫沈降し得るか否かを決定するために、GDF−8を発現するCHO細胞を、35S−メチオニンおよび35S−システインで放射標識した。GDF−8潜伏複合体を含むこれらの細胞由来の100μlの馴化培地を、1時間、4℃で、1mg/mlのJA−16とともにインキュベートした。プロテインAセファロースを、この混合物に添加し、次いで、これを、一晩4℃でインキュベートした。免疫沈降物を収集し、PBS/Triton−X100緩衝液で3回洗浄し、還元サンプル緩衝液中に再懸濁させ、そしてSDS−PAGEによって分析した。ゲルを一晩固定し、オートラジオグラフィーエンハンサー溶液を用いて増強し、乾燥し、そしてオートラジオグラムを行った。図18、レーン2は、JA−16が、GDF−8潜伏複合体および未処理GDF−8を免疫沈降し得ることを示す。
【0119】
第2に、JA−16がGDF−8とフォリスタチンとの間に形成される複合体を免疫沈降し得るか否かを決定するために、CHO細胞が発現するフォリスタチンを、35S−メチオニンおよび35S−システインで放射標識した。放射標識したフォリスタチンを含む100μlの馴化培地を、成熟GDF−8と混合して、GDF−8とフォリスタチンとの複合体を形成した。この混合物を、1mg/mlのJA−16とともに、1時間、4℃でインキュベートした。プロテインAセファロースをこの混合物に添加し、次いで、一晩4℃でインキュベートした。免疫沈降物を収集し、そして上記のように分析した。図18、レーン6は、JA−16が、GDF−8を複合体化した標識フォリスタチンを同時免疫沈降させ得ることを示す。
【0120】
第3に、JA−16が成熟GDF−8タンパク質を免疫沈降し得るか否かを調査するために、放射標識したGDF−8潜伏複合体を含むCHO細胞由来の馴化培地を酸活性化して、GDF−8プロペプチドおよび成熟GDF−8を解離させた(van Waardeら、(1997)Analytical Biochemistry,247,45−51を参照のこと)。次いで、この物質を、JA−16とともに、1時間、4℃でインキュベートした。プロトコールの残りを、上記のように実施した。図18、レーン3は、JA−16が、成熟GDF−8を免疫沈降し得ることを示す。
【0121】
この結果は、JA−16が、GDF−8潜伏複合体、GDF−8:フォリスタチン複合体、および成熟GDF−8を認識し得ることを示す。対照的に、Myo−19は、いずれのGDF−8複合体(図18、レーン4および7)にも結合し得ず、そして成熟GDF−8のみを免疫沈降し得る(図18、レーン5)。
【0122】
(実施例8:JA−16のインビボでの特徴付け)
抗体JA−16が成体マウスにおいて筋肉量を増加するか否かを決定するために、7週齢の雌性BALB/cマウスを用いてインビボ研究を実施した。マウスを秤量し、そして体重に関して、7または8匹の群に均一に分配した。PBS中のJA−16またはヘビ毒に対してアイソタイプの一致した抗体(コントロール)を、毎週2回、50mg/kgで腹腔的にマウスに注射した。この処置を4週間続けた。処置期間の前後に、動物をデキサスカン(dexascan)分析に供することによって、痩せたボディーマスの進行について、動物を評価した。筋肉量を、腓腹筋および四頭筋を切り出し、そして秤量することによって評価した。子宮周囲脂肪パッドもまた取り出し、そして秤量した。この研究の結果は、JA−16が、GDF−8活性をインビボで有意に阻害し、増加した筋肉量を生じたことを示した(図11)。
【0123】
抗体が、14週間、60mg/kg/週で腹腔的に投与される、より長い研究を実施した。これらのマウスに、研究の始めに、60mg/kgで腹腔的に、そして10mg/kgで静脈内的に、負荷した。この研究においてマウスは、雄性C57BLマウスであり、これは、アグーチ遺伝子座(a)において野生型であるか、またはその遺伝子座において、致死性の黄色変異(Ay)を有するかのいずれかであった。Ay変異は、成体発症肥満および糖尿病を引き起こし、これによって、本発明者らは、糖尿病の背景下での筋肉、過剰な脂肪および血液グルコースに対するJA−16の影響を決定し得た。全ボディーマスを、毎週、測定した(図12)。筋肉量を、腓腹筋および四頭筋を切り出し、そして秤量することによって評価した(図13)。精巣上体および鼡径部の脂肪パッドもまた取り出し、そして秤量した(図14)。この研究の12週目に、マウスを絶食させ、そして血液グルコースレベルを測定した(図15)。4週の研究とともに、この研究の結果は、JA−16が、インビボでGDF−8活性を阻害し、筋肉量の増加を引き起こすことを示す。さらに、この研究は、肥満マウスおよび糖尿病マウスにおいて、GDF−8の阻害が、改善した血中グルコースレベルをもたらすことを示す。
【0124】
JA−16のインビボ活性をまた、別のGDF−8抗体(Myo−19)のインビボ活性と比較した。C57B6/scidマウスに、本発明者らは、腹腔的に、4週間、ビヒクルコントロール、または60mg/kg負荷用量および60mg/kg/週のJA−16またはMyo−19を注射した。全ボディーマスを、毎週測定し、そして筋肉量を、腓腹筋および四頭筋を切り出し、そして秤量することによって評価した(図17)。JA−16での5週の処置は、筋肉量の増加をもたらしたが、Myo−19での処置は、筋肉量に影響しなかった。別の実施形態において、Myo−19処置は、10週および15週まで延長し、これらの時点の間、ボディーマスおよび筋肉量における増加は、見られなかった。
【0125】
従って、インビトロのデータが、JA−16がMyo−19抗体よりも弱い中和物であることを示唆するという事実にも関わらず、マウスの研究は、JA−16が、インビボでGDF−8活性を効果的に減少させるが、一方Myo−19は減少させないことを明らかに、しかし予想外に実証する。これらの結果は、JA−16が結合するGDF−8上の特定の部位が、インビボで安定な阻害性GDF−8:抗体複合体の形成を担うという点で、この部位が独特であることを示す。従って、実施例4において同定されるように、任意の抗体特異的結合部位が、JA−16と類似するかまたはそれより良いインビボの中和特性を有することが予期される。
【0126】
(実施例9:JA−16が、筋肉強度を増加する)
ヒトにおいて、筋肉サイズおよび強度は、毎年約1%減少する(これは、30代で開始する)。多くの老人について、筋肉量の減少は、有意に衰弱している。この状態は、サルコペニア(sarcopenia)、または年齢関連筋肉喪失として公知である。抗GDF−8処置がサルコペニアに有効であるか否かを決定するために、老齢のマウス(研究の開始時に19ヶ月齢であり、研究の最後に21ヶ月齢である)に、毎週一度、60mg/kgで8週間JA−16で処置した。同じ実験において、若いマウス(研究の開始時に2ヶ月齢であり、研究の最後に4ヶ月齢である)を、同じ用量のJA−16で処置した。研究の最後において、両方の群のマウスが、例えば、四頭筋の質量比較から分かるように、ビヒクル処置コントロールよりも多くの筋肉量を有した(図19A)。
【0127】
筋肉サイズの増加が、筋肉量の増加を導くことを確認するために、本発明者らは、Columbia Instrumentsから購入した計器(Columbus,Ohio;model 1027csx)を使用して、8週間JA−16で処置した老齢マウスおよび若いマウスを用いて、握り強度試験を実施した。マウスに格子を握り引っ張らせ、そして引っ張りのピーク強度を記録した。休憩なしに連続して、非訓練マウスを5回試験した。各試験についてのピーク力を記録し、そして5つの試験の結果を各マウスについて平均化した。7週の処置の後、若いJA−16処置したマウスについてのピーク力は、ビヒクル処置したマウスについてのピーク力よりも、10%高く、そして老齢JA−16処置したマウスは、13%高かった(図19B)。さらに、7週間の処置の前後に取られた長手軸の測定は、老齢のマウスの強度が、JA−16処置で17%(p、0.01)増加し、一方、ビヒクル処置した老齢マウスの強度は、有意に変化しなかった(3.3%、p=0.66)ことを示した。これらの結果は、GDF−8阻害が、若いマウスと老齢のマウスの両方における筋肉サイズおよび強度の増加を導くこと、およびそれがサルコペニアの有効な治療であり得ることを確証した。
【0128】
(実施例10:JA−16は、ジストロフィー性筋肉における筋肉量および強度を増加する)
GDF−8のインビボ阻害が筋ジストロフィーを改善する能力を、Duchenneの筋ジストロフィー(DMD)のmdxマウスモデルにおいて試験した。DMDモデルは、例えば、Torresら(Brain(1987)110,269−299)およびHoffmanら(Science(1987)238,347−350)によって、記載されている。
【0129】
4週齢の雄性mdxマウスを、3ヶ月間、JA−16(60mg/kg)、およびビヒクル単独(コントロール群)の毎週の腹腔的注射で処置した。筋肉量の増加を定量化するために、動物を屠殺し、足の長指伸筋(EDL)筋を切り出し、そして秤量した。図20Aで示されるように、処置群の動物由来のEDL筋は、コントロールよりも有意に重く秤量された。注目すべきことに、筋肉量の相対的増加は、図20Bに示されるように、体重の増加よりも大きかった。このデータと一致して、腓腹筋、前脛骨筋および四頭筋を含む他の筋肉群は、類似の重量の増加を有することを見出した。
【0130】
絶対的な力の生成または筋肉強度を定量化するために、本発明者らは、電場電極を使用して、筋肉を脱分極した際に生成される最大の等尺(isometric)力を記録した。図20Cおよび20Dは、JA−16処置したmdxマウスが、単収縮またはテタヌスのいずれかの間に有意により高い最大力を及ぼし得たことを示す。筋肉強度の増加は、筋肉量の増加に比例した(図20A、20C、および20D)。これらの結果は、筋ジストロフィーおよび関連する疾患の処置におけるJA−16のようなGDF−8阻害剤の予測される治療効力についての生理学的な証拠を提供する。
【0131】
mdx横隔膜において観測されたジストロフィー表現型の改善を独立して確認し、そして全体としてmdx骨格筋の病理学的状態における改善を確認するために、本発明者らは、これらのマウスから血清クレアチンキナーゼ(CK)レベルを分析した。非常に高いレベルのCKは、筋細胞膜の損傷に起因する、mdxマウスおよびヒトにおけるジストロフィン欠乏と一貫して注目されている(Bulfieldら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,1189−1192およびMatsudaら、(1995)J.Biochem.(Tokyo)118,959−64)。試行の開始時に、mdxマウスの処置群およびコントロール群の両方が、正常マウスと比較して血清CKの顕著な上昇を有した。しかし、インビボのミオスタチン遮断の3ヶ月後に、処置されたmdxマウスの血清CKレベルの劇的な減少が存在した(図4c)。筋肉退化の減少およびCKの減少と連関した繊維症は、インビボでのミオスタチン遮断によって産生されるmdx筋肉における機能的改善の組織学的および生化学的証拠を提供する。
【0132】
(実施例11:海綿質におけるGDF−8のインビボの役割)
増加した筋肉活性または増加した体重のいずれかに起因する増加した機械的負荷は、増加した骨量および骨密度に関連する。従って、GDF−8ノックアウト(KO)マウスを、変化した骨量および微細構造について評価した。成体マウスの最初の評価は、KOマウスの脊柱における骨密度が、野生型同腹子の骨密度よりも2倍近く高かったことを示した。この増加は、GDF−8KOマウスにおける増加した筋肉量のみに起因することが予測され得た場合よりも、かなり大きく超えた。
【0133】
高解像度マイクロトモグラフィー画像(μCT40、Scanco Medical,Switzerland)を使用して、成体GDF−8野生型(WT)マウスおよびKOマウスの、第5腰椎および遠位大腿における海綿質容量画分および微細構造、ならびに大腿中部骨幹における皮質性骨形状を評価した。9〜10ヶ月齢のGDF−8雄性および雌性KO、ならびに同腹子コントロール(各遺伝子型および性別について4匹のマウス)から試料を取った。椎体および大腿全体を、12μm解像度で、マイクロコンピュータートモグラフィーを使用して走査した。椎体の海綿質または遠位大腿骨幹端の海綿質(すなわち、第2海綿質(secondary spongiosa))を含む目的の領域を、半自動化輪郭(contouring)アルゴリズムを使用して同定した。以下のパラメーターを、直接3次元評価を使用して計算した:骨容量画分(%)、海綿質の厚み(μm)、分離(μm)および数(1/mm)。さらに、結合性密度(小柱網がどれだけ結合するかの指標)、ならびに大腿の中間骨幹領域の皮質骨領域(領域全体、骨領域、および皮質の厚みを含む)パラメーターを評価した。
【0134】
雄および雌両方のKOマウスは、WT同腹子と比較して、椎体中の海綿質密度を劇的に増大した(n=4、それぞれ、+93%および+70%、p<0.0001)。この増加した海綿質密度は、小柱厚さにおける14%の増加(p=0.03)、小柱数における38%の増加(p=0.0002)、および小柱分離における10%の減少(p=0.009)をともなった。構築および密度におけるこれらの変化の組み合わせた効果は、雄および雌のKOにおいて、これらのWT同腹子と比較して、結合性においてそれぞれ3.4倍および1.7倍の増加を生じた(p<0.0001)。さらに、海綿質の鉱質化のレベルのおおまかな測定は、小柱の平均鉱質含量が、コントロールに対しKOマウスにおいてより8%高かったことを示した(p<0.0001)。雌マウスよりも雄マウスでこの影響が大きいというヒントが存在するが、明確な結論をするにはサンプルサイズが小さすぎる。高解像度のマイクロコンピューター化された断層撮影法により評価された椎骨海綿体特徴を表1に示す。
【0135】
脊椎における観察とは対照的に、雄および雌のKOマウスは、WT同腹子より、遠位大腿におけるより低い海綿体密度を有していた(n=4、総遺伝子型効果に対してp=0.05)(表2)。骨密度におけるこの減分は、雄KOマウスにおけるより雌KOでより目立った。GDF−8KOマウスは、それらのWT同腹子と類似の小柱厚さを有していたが、同腹子コントロールと比較してより少ない小柱および増加した小柱分離を有していた。しかし、大腿軸中央における皮質厚さは、雄マウスGDF−8 KOおよびそれらの同腹子コントロールにおいてと同様であり、それは、GDF−8 KO雌マウス中でそれらのWT同腹子より約10%大きかった(n=4、p=0.04)(表3を参照のこと)。2つの遺伝子型の間で、皮質骨領域または骨領域フラクションにおける差異はなかった。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
(実施例12:筋肉および骨変性障害の処置)
例えば、阻害性抗体のような、GDF−8のインヒビターは、増加した筋肉量に向けた処置に、そしてまた骨粗鬆症の予防および処置のために有用である。さらに、GDF−8のインヒビターは、骨の同化効果が所望される、骨治癒(すなわち、骨折修復、脊椎固定など)の増強のようなその他の事例で有用であり得る。本発明の抗GDF−8抗体を用いて、疾患発症時の被験体または確立された筋肉疾患または骨変性疾患を有する被験体を処置する
骨障害、例えば、骨粗鬆症の処置に対する抗GDF−8抗体の効目は、骨粗鬆症の良好に確立されたモデルを用いて確認される。例えば、卵巣摘出されたマウスを用いて新たな骨粗鬆症薬物処置の効目が試験されている(Alexanderら(2001)J.Bone Min.Res.16:1665〜1673;およびAndersonら(2001)J.Endocrinol.170:529〜537)。ヒトと同様に、これらのげっ歯類は、卵巣摘出術の後に、骨、特に癌の骨の迅速な損失を示す。成果の評価は、骨鉱質密度、血清および尿中の骨代謝回転の生化学的マーカー、骨強度、および組織学/組織形態学に基づく。
【0139】
1つの研究では、正常および/または免疫寛容雌マウスが、12〜16週令で卵巣摘出され、そして4〜6週の間骨を損失させる。この骨損失期間の後、JA−16のような抗GDF−8抗体(IP注射)またはビヒクルでの処置が1〜6ヶ月の間行われる。この処置プロトコールは、異なる用量および処置レジメンの試験で変動し得る(例えば、毎日、毎週、または2週間毎の注射)。非処置卵巣摘出マウス(またはラット)は、インタクト(すなわち、非卵巣摘出)の年令が一致するマウスに対し、約10〜30%の骨密度を損失し得ることが予期される。抗GDF−8抗体で処置したマウスは、偽薬を受けたようなマウスより10〜50%大きい骨量および骨密度を有し、そしてさらに骨密度におけるこの増加は、特に、皮質骨と比較して癌の骨のより大きな比率をもつ領域において、増加した骨強度と関連することが予期される。
【0140】
別の研究の目的は、JA−16のような、抗GDF−8抗体が、エストロゲン欠損にともなう、骨量、微小構築および強度の減少を防ぐことで有効であることを示すことである。従って、この研究は、抗GDF−8抗体が、骨損失期間後ではなく、卵巣摘出術の直後に開始される処置を除いて、上記のデザインと同様のデザインを有する。この抗体で処置したマウスは、ビヒクルで処置したマウスより卵巣摘出術後に有意により少ない骨量を損失することが予期される。
【0141】
GDF−8に対する阻害抗体はまた、この疾患の重篤度および/または症状を予防および/または低減するために用いられる。抗GDF−8抗体は、1日に一度の頻度、および1月に一度の頻度で皮下注射として投与されることが予期される。処置持続期間は、1月〜数年の範囲であり得る。
【0142】
ヒトにおける抗GDF−8の臨床的効目を試験するために、低骨量の閉経後の女性を、骨密度試験により同定し、そしてランダムに処置群に分けた。処置群は、偽薬群、および抗体を受ける1〜3群(異なる用量)を含む。個体は、将来に向かって1〜3年間追従されて、骨代謝回転の生化学的マーカーにおける変化、骨鉱質密度の変化、および虚弱骨折の発症が評価される。処置を受ける個体は、近位大腿骨および腰椎脊柱において、ベースラインに対し2〜30%の骨鉱質密度における増加を示し、そして虚弱骨折の減少した発症率を有することが予期される。骨形成の生化学的マーカーが増加することが予期される。
【0143】
これら抗体は、単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与される。単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与されるとき、用量は、症状の重篤度および疾患の進行に依存して、約1μg/kgと20mg/kgとの間であり得る。適切な効率的用量は、処置する臨床医により以下の範囲:1μg/kgと20mg/kgとの間、1μg/kgと10mg/kgとの間、1μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと100μg/kgとの間、100μg/kgと1mg/kgとの間、および500μg/kgと1mg/kgとの間で選択される。例示の処置レジメンおよび結果は、表4中に要約される。
【0144】
【表4】
(実施例13:代謝障害の処置)
例えば、阻害抗体のようなGFD−8のインヒビターは、II型糖尿病、損傷したグルコース耐性、代謝症候群(例えば、X症候群)、外傷(例えば、火傷)により誘導されたインシュリン耐性、および脂肪組織障害(例えば、肥満)のような代謝障害の処置に有用である。本発明の抗GDF−8抗体は、疾患発症時の被験体または確立された代謝障害を有する被験体を処置するために用いられる。
【0145】
代謝障害(例えば、II型糖尿病および/または肥満)の処置のための抗GDF−8抗体の効目は、肥満、インシュリン耐性およびII型糖尿病の良好に確立されたマウスモデルを用いて確認され、これには、ob/ob、db/db、および致死的黄色突然変異を保持する株が含まれる。インシュリン耐性はまた、C57BL/6Jを含むマウスの特定の株の高脂肪または高カロリー摂取により誘導され得る。ヒトと同様に、これらのげっ歯類は、インシュリン耐性、高インスリン血症、異常脂血症、および高血糖症を生じるグルコース恒常性の悪化を発症する。結果の評価は、グルコース、インシュリン、および脂質の血清測定に基づく。改善されたインシュリン感受性は、インシュリン耐性試験およびグルコース耐性試験により決定され得る。より高感度の技法は、血糖症コントロールおよびインシュリン感受性における改善を評価するためのオイグリセミック−高インスリンクランプの使用を含む。さらに、このクランプ技法は、改善された血糖症コントロール中の、主要なグルコース処理組織(例えば、筋肉、脂肪、および肝臓)の役割の定量的評価を可能にする。
【0146】
1つの研究では、JA−16のような抗GDF−8抗体(IP注射)またはビヒクルでの処置は、1週間〜6ヶ月の間実施される。この処置プロトコールは、異なる用量および処置レジメンの試験で変動し得る(例えば、毎日、毎週、または2週間毎の注射)。抗GDF−8抗体で処置したマウスは、偽薬処置を受けたマウスと比較して、より大きなグルコース摂取、増加した解糖およびグリコーゲン合成、血清中のより少ない脂肪酸およびトリグリセリドを有することが予期される。
【0147】
GDF−8に対する阻害抗体はまた、疾患の重篤度および/または症状を予防および/または低減するために用いられる。抗GDF−8抗体は、1日に一度の頻度、および1ヶ月に一度の頻度で皮下注射として投与されることが予期される。処置持続期間は1月〜数年の範囲であり得る。
【0148】
ヒトにおける抗GDF−8の臨床的効目を試験するために、II型糖尿病に罹患したか、またはそのリスクにある患者が同定され、そして処置群にランダム化される。処置群は、偽薬群および抗体を受ける1〜3群(異なる用量)を含む。個体は、将来に向かって1月〜3年間追従されて、グルコース代謝における変化が評価される。処置を受ける個体は、改善を示すことが予期される。
【0149】
これら抗体は、単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与される。単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与されるとき、用量は、症状の重篤度および疾患の進行に依存して、約1μg/kgと20mg/kgとの間であり得る。適切な効率的用量は、処置する臨床医により以下の範囲:1μg/kgと20mg/kgとの間、1μg/kgと10mg/kgとの間、1μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと100μg/kgとの間、100μg/kgと1mg/kgとの間、および500μg/kgと1mg/kgとの間で選択される。例示の処置レジメンと結果は、表5中に要約される。
【0150】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、JA−16の結合特異性を特徴付けるために使用されるGDF−8合成ペプチド(配列番号11〜13、65、105、114、および129、全て配列番号14に由来する)を示す。下線を付されたアミノ酸は、ネイティブなシステインが、セリンに置換されている位置を示す。
【図2】図2は、JA−16のGDF−8合成ペプチドへの結合を示す。
【図3】図3は、成熟GDF−8(配列番号15)とBMP−11(配列番号16)とのアミノ酸配列の違いを示す。
【図4】図4は、JA−16の、ウシ血清アルブミン(BSA)に結合体化されたG1ペプチド(配列番号10、GDF−8に由来するペプチド)に対する結合特性とBSAに結合体化されたB1ペプチド(配列番号9、BMP−11に由来するペプチド)に対する結合特性の比較を示す。
【図5】図5は、JA−16がG1,B1、GDF−8、またはBMP−11とプレインキュベートされた後の、JA−16のG1−BSAに対する結合特性の比較を示す。
【図6A】図6Aは、GDF−8に由来する重複13マー合成ペプチド配列を使用する、JA−16結合のマッピング研究を示す。
【図6B】図6Bは、GDF−8に由来する重複13マー合成ペプチド配列を使用する、JA−16結合のマッピング研究を示す。
【図7A】図7Aは、スポット合成を使用する、GDF−8に由来するJA−16エピトープ領域(Gly−Leu−Asp−Ser−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Ser(配列番号18))の欠失分析および置換分析の結果を示す。
【図7B】図7Bは、スポット合成を使用する、GDF−8に由来するJA−16エピトープ領域(Gly−Leu−Asp−Ser−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Ser(配列番号18))の欠失分析および置換分析の結果を示す。
【図8】図8は、ビオチン化GDF−8のActRIIBレセプターへの結合を示す。
【図9A】図9Aは、JA−16の存在下および非存在下での、ActRIIBレセプターに対するビオチン化GDF−8結合の阻害を示す。
【図9B】図9Bは、JA−16の存在下および非存在下での、ActRIIBレセプターに対するビオチン化GDF−8結合の阻害を示す。
【図10】図10は、インビトロでの、GDF−8の活性に対するJA−16の中和効果を評価するレポーター遺伝子アッセイを示す。
【図11】図11は、4週間の研究の間の、マウスにおけるJA−16のインビボ効果を示す。7週齢の雌性BALB/cマウスを、1週間に2回の50mg/kgでの腹腔内注射によって、JA−16で4週間処置した。左のグラフは、デキサスキャン(dexascan)(二重エネルギーX線)分析によって測定される処置期の間の赤身量および脂肪量の変化を示す。右のグラフは、解剖された組織の量を示す。スチューデント検定に対する統計的に有意な差異(p<0.01)を、アステリスクで示す。
【図12】図12は、14週間の研究の間の、マウスの全体重に対するJA−16のインビボ効果を示す。本研究において使用される雌性C57BLマウスは、アグーチ遺伝子坐(a)での野生型またはその位置での致死黄色突然変異(Ay)を有するかのいずれかであった。Ay変異は、成体に肥満および糖尿病を発生させる。若い成体マウスを、60mg/kgのJA−16またはコントロール抗体の一週間毎の腹腔内注射で処置した。さらに、処置期間の最初において、マウスに、60mg/kgの抗体を腹腔内に与え、10mg/kgで同じ抗体を静脈的に与えた。これらのグラフは、各群のマウスについての一週間ごとの体重を示す。エラーバーは、各データ点に対する平均の標準誤差を示す。
【図13】図13は、14週間研究の間、マウスの全筋肉量に対するJA−16のインビボ効果を示す。研究の最後において、筋肉を切開し、秤量した。これらのグラフは、各群のマウスに対する平均筋肉量を示す。スチューデント検定に対する統計的に有意な差異(p<0.01)を、アステリスクで示す。
【図14】図14は、14週間研究の間、マウスの全脂肪量に対するJA−16のインビボ効果を示す。研究の最後において、脂肪球を切開し、秤量した。これらのグラフは、各群のマウスに対する平均脂肪球量を示す。
【図15】図15は、14週間研究の間、マウスの血糖値に対するJA−16のインビボ効果を示す。処置の12週間後、C57BL−Al/aマウスを、一晩絶食し、これらの血糖を測定した。
【図16】図16は、JA−16重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。相補性決定領域(CDR)に下線を付す。対応する核酸配列を、配列番号6に提供する。
【図17】図17は、Myo−19およびJA−16のインビボ比較を示す。7週齢の雌性C57B6/重症複合型免疫不全マウスを、腹腔内注射によって、JA−16、Myo−19、またはビヒクルで5週間処置した。研究の最後において、筋肉を切開し、秤量した。これらのグラフは、各群のマウスに対する平均筋肉量を示す。スチューデントt検定に対する統計的に有意な差異(p<0.01)を、アステリスクで示す。
【図18】図18は、JA−16およびMyo−19でのGDF−8の免疫沈降からの結果を示す。
【図19A】図19Aは、8週間のBALB/c雌性マウスにおけるJA−16処置の結果を示す。マウスは、研究の最後には、21月齢または4月齢であった。研究の最後のJA−16処理された切開四頭筋の量およびビヒクル処理された切開四頭筋の量。各バーまたはデータ点は、示された群についての平均値±標準誤差を示し;(**)は、スチューデントt検定に対するp<0.01の、JA−16群のビヒクル群に対する比較を示し;各群についてn=8である。
【図19B】図19Bは、8週間のBALB/c雌性マウスにおけるJA−16処置の結果を示す。マウスは、研究の最後には、21月齢または4月齢であった。処置7週間後のJA−16処置マウスおよびビヒクル処置マウスに対するグリップ試験によって決定された前肢強度。各バーまたはデータ点は、示された群についての平均値±標準誤差を示し;(**)は、スチューデントt検定に対するp<0.01の、JA−16群のビヒクル群に対する比較を示し;各群についてn=8である。
【図20A】図20Aは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、mdxコントロールに比べて有意に増加したEDL重量を有した(19.72±0.50mg対14.63±0.69mg;n=12;p<0.0001)。
【図20B】図20Bは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、コントロールに比べて有意に増加した筋肉量 対 体重比(EDL重量/体重)を有した(0.6±0.02mg対0.5±0.02mg;n=12;p<0.014)。
【図20C】図20Cは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、等尺単収縮の間、コントロールに比べて有意により大きな力を発生した(177.32±8.37mg対132.38±12.45mN;n=12;p<0.03)。
【図20D】図20Dは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、等尺テタヌス性攣縮の間、コントロールに比べて有意により大きな力を発生した(491.23±16.34mN対370.74±19.21mN;n=12;p<0.003)。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年9月26日に出願された、米国仮特許出願第60/324,528の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、増殖分化因子−8(GDF−8)タンパク質のインヒビターに関し、そしてこのようなインヒビターを使用する方法に関する。より具体的には、本発明は、インビトロおよびインビボでGDF−8タンパク質と特異的に反応性である新規抗体および抗体フラグメントを提供する。本発明は、筋肉組織の増加が治療に有益であるヒトまたは動物の障害を、診断、予防、または処置するのに特に有用である。例示的な障害としては、神経筋障害(例えば、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症)、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、および悪液質;脂肪組織障害(例えば、肥満);II型糖尿病;ならびに骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症)が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ミオスタチンとしても公知である、増殖および分化因子−8(GDF−8)は、構造的に増殖因子と関連するトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーであり、これらの全ては、生理学的に重要な増殖制御特性および形態形成特性を保持する(非特許文献1:Kingsleyら、(1994)Genes Dev.,8:133−46;非特許文献2:Hoodlessら、(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.,228:235−72)。GDF−8は、骨格筋量の負の制御因子であり、その生物学的活性を制御する因子を同定することにおいてかなり関心が存在する。例えば、GDF−8は、発育中の骨格筋および成人骨格筋において高度に発現される。トランスジェニックマウスにおけるGDF−8ヌル変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成を特徴とする(非特許文献3:McPherronら、(1997)Nature,387:83−90)。骨格筋量の同様の増加は、ウシにおいてGDF−8の天然に存在する変異において明らかである(非特許文献4:Ashmoreら、(1974)Growth,38:501−507;非特許文献5:SwatlandおよびKieffer(1994)J.Anim.Sci.,38:752−757;非特許文献6:McPherronおよびLee(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461;非特許文献7:ならびにKambadurら、(1997)Genome Res.,7:910−915)。GDF−8は、発育中の筋肉および成人筋肉の両方において発現されるので、このGDF−8が、発育中または成人における筋肉量を制御するかどうかは明らかではない。従って、成人においてGDF−8が筋肉量を制御するかどうかの疑問は、科学的展望および治療的展望から重要である。最近の研究はまた、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋るいそうが、GDF−8タンパク質発現を増加することによって達成されることを示した(非特許文献8:Gonzalez−Cadavidら、(1998)PNAS,95:14938−43)。さらに、GDF−8は、筋特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の産生および筋芽細胞増殖を調節し得る(特許文献1:WO00/43781)。
【0004】
ヒトおよび動物障害の多くは、筋組織の損失または機能的損傷(筋ジストロフィー、筋萎縮症、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、および悪液質が挙げられる)に関連する。現在までのところ、非常にわずかな信頼できかつ有効な治療が、これらの治療に対して存在する。しかし、これらの障害に関連するものすごい症状が、この障害を罹患する患者における筋組織の量を増加する治療を使用することによって実質的に減少し得る。状態を治癒しないが、このような療法は、これらの患者の人生の質を有意に改善し、そしてこれらの疾患の効果のいくつかを回復し得る。従って、当該分野において、これらの障害を罹患する患者における筋組織の全体的な増加に寄与し得る新規治療を同定する必要性が存在する。
【0005】
骨格筋におけるその増殖制御特性および形態形成特性に加えて、GDF−8はまた、他の多くの生理学的プロセス(II型糖尿病の進行におけるグルコース恒常性および脂肪組織障害(例えば、肥満)が挙げられる)に関連し得る。例えば、GDF−8は、脂肪細胞に分化する脂肪前駆細胞を調節する(非特許文献9:Kimら、(2001)BBRC,281:902−906)。
【0006】
骨の損失に関連する多くの状態(骨粗鬆症(特に、年老いた女性および/または閉経後の女性における)が挙げられる)もまた存在する。これらの疾患に対して現在使用可能な治療は、骨再吸収を阻害することによって働く。新規の骨形成を促進する治療は、これらの治療の代替として、またはこれらの治療に加えて望ましい。
【0007】
TGF−β−1、TGF−β−2、およびTGF−β−3のように、GDF−8タンパク質は、アミノ末端プロペプチドおよびカルボキシ末端成熟ドメインからなる前駆体タンパク質として合成される(非特許文献10:McPherronおよびLee,(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461)。切断の前は、前駆体GDF−8タンパク質は、ホモダイマーを形成する。次いで、アミノ末端プロペプチドは、成熟ドメインから切断される。この切断されたプロペプチドは、成熟ドメインダイマーに非共有結合的に結合したままであり得、その生物学的活性を不活性化する(非特許文献11:Miyazonoら、(1988)J.Biol.Chem.,263:6407−6415;非特許文献12:Wakefieldら、(1988)J.Biol.Chem.,263:7646−7654;および非特許文献13:Brownら、(1990)Growth Factors,3:35−43)。2つのGDF−8プロペプチドがGDF−8成熟ダイマーに結合すると考えられる(非特許文献14:Thiesら、(2001)Growth Factors,18:251−259)。この不活性化特性によって、このプロペプチドは、「潜伏関連ペプチド」(LAP)として公知であり、成熟ドメインとプロペプチドとの複合体は、通常、「小潜伏複合体」といわれる(非特許文献15:GentryおよびNash(1990)Biochemistry,29:6851−6857;非特許文献16:Derynckら、(1995)Nature,316:701−705;ならびに非特許文献17:Massague(1990)Ann.Rev.Cell Biol.,12:597−641)。他のタンパク質がまた、GDF−8または構造的に関連するタンパク質に結合し、これらの生物学的活性を阻害することは公知である。このような阻害タンパク質は、フォリスタチン(follistatin)を含み、潜在的にフォリスタチン関連タンパク質を含む(非特許文献18:Gamerら、(1999)Dev.Biol.,208:222−232)。この成熟ドメインは、プロペプチドが除去されたとき、ホモダイマーとして活性であると考えられる。
【0008】
GDF−8は、種間にわたって配列および機能が高度に保存される。マウスGDF−8およびヒトGDF−8のアミノ酸配列は、同一であり、mRNAの発現パターンも同様である(非特許文献19:McPherronら、(1997)Nature 387:83−90;非特許文献20:Gonzalez−Cadavidら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14938−14943)。この配列および機能の保存は、ヒトにおけるGDF−8の阻害が、マウスにおいてGDF−8の阻害に対して同様の効果を有するようであることを示唆する。
【0009】
GDF−8は、多くの重大な生物学的プロセスの制御に関連する。これらのプロセスにおいてのこの重要な機能に起因して、GDF−8は、治療介入についての所望の標的であり得る。上記されるように、特に、GDF−8の活性を阻害する治療剤は、筋肉組織の増加が治療に有効である、ヒトまたは動物の障害(特に筋肉組織障害および脂肪組織障害、骨変性疾患、神経筋障害、および糖尿病)を処置するために使用され得る。
【特許文献1】WO00/43781)。
【非特許文献1】Kingsleyら、(1994)Genes Dev.,8:133−46
【非特許文献2】Hoodlessら、(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.,228:235−72
【非特許文献3】McPherronら、(1997)Nature,387:83−90
【非特許文献4】Ashmoreら、(1974)Growth,38:501−507
【非特許文献5】SwatlandおよびKieffer(1994)J.Anim.Sci.,38:752−757
【非特許文献6】McPherronおよびLee(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461
【非特許文献7】ならびにKambadurら、(1997)Genome Res.,7:910−915
【非特許文献8】Gonzalez−Cadavidら、(1998)PNAS,95:14938−43
【非特許文献9】Kimら、(2001)BBRC,281:902−906
【非特許文献10】McPherronおよびLee,(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461
【非特許文献11】Miyazonoら、(1988)J.Biol.Chem.,263:6407−6415
【非特許文献12】Wakefieldら、(1988)J.Biol.Chem.,263:7646−7654
【非特許文献13】Brownら、(1990)Growth Factors,3:35−43
【非特許文献14】Thiesら、(2001)Growth Factors,18:251−259
【非特許文献15】GentryおよびNash(1990)Biochemistry,29:6851−6857
【非特許文献16】Derynckら、(1995)Nature,316:701−705
【非特許文献17】Massague(1990)Ann.Rev.Cell Biol.,12:597−641
【非特許文献18】Gamerら、(1999)Dev.Biol.,208:222−232
【非特許文献19】McPherronら、(1997)Nature 387:83−90
【非特許文献20】Gonzalez−Cadavidら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14938−14943
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、成熟GDF−8タンパク質と特異的に反応性である抗体および抗体フラグメントを含む新規タンパク質インヒビターを提供し、このGDF−8タンパク質は、モノマー形態、活性ダイマー形態、またはGDF−8潜伏複合体中に複合された状態のいずれかである。本発明の実施形態において、抗体は、成熟GDF−8タンパク質上のエピトープに結合し、このことは、同じ抗体が結合しない成熟GDF−8タンパク質に比べて、GDF−8に関連する1つ以上の生物学的活性の減少を生じる。本発明の実施形態において、本開示された抗体は、骨格筋量および/または骨密度の負の制御と関連するGDF−8活性を減少する。
【0011】
本開示された抗体は、特有かつ所望されない生物学的特性を保有する。例えば、当業者は、代表的に、良好な中和性抗体が、インビトロで活性なGDF−8タンパク質に強く結合し、このタンパク質と安定な阻害性複合体を形成することを予想する。中和性抗体はまた、阻害性抗体と呼ばれ、これは、特定のタンパク質に対して高い親和性を有し、代表的に、同じタンパク質に対してより低い親和性の抗体に比べて、より高い中和レベルを提供すると予想される。しかし、非常に予想外であることに、本発明者らは、インビトロで活性GDF−8タンパク質に弱く結合しかつ中和するだけであるが、インビボで有効である抗体を発見した。このような抗体の発見は、次いで、抗体が結合する、GDF−8上の特定の部位の同定をもたらす。従って、同定された部位に特異的に結合する任意の抗体が、インビボ中和特性を同様に保有することが予想される。
【0012】
さらに、本開示の抗体は、特有かつ予想外の特性を保有する。例えば、抗体は、成熟GDF−8タンパク質をそのモノマー形態およびダイマー形態において認識するだけでなく、インタクトなGDF−8潜伏複合体もまた認識する。
【0013】
本開示の抗体は、治療有効用量で投与され、筋肉組織量または骨密度の増加が、治療に有効である医療状態を処置または予防し得る。これらのGDF−8抗体によって処置され得る疾患および障害としては、筋肉または神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮症、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、および悪液質);脂肪組織障害(例えば、糖尿病);代謝性障害(例えば、II型糖尿病、損傷されたグルコース寛容性、代謝症候群(例えば、X症候群)、外傷によって誘導されるインシュリン耐性(例えば、熱傷));および骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症(特に、年老いた女性および/または閉経後の女性における))が挙げられる。これらのGDF−8抗体での処置の影響を受けるさらなる代謝性骨疾患および障害としては、慢性的グルココルチコイド療法に起因する低骨量、成熟前性腺不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠損症、二次上皮小体機能亢進症、栄養失調、および神経性食欲不振が挙げられる。
【0014】
さらに、本開示の抗体は、それがモノマー形態、ダイマー活性形態、またはGDF−8潜伏複合体に複合された状態のいずれにも関わらず、成熟GDF−8タンパク質またはそのフラグメントを定量的または定性的に検出するために、診断用具として使用され得る。例えば、抗体は、細胞、体液、組織、または器官において成熟GDF−8タンパク質を定量的または定性的に検出するために使用され得る。次いで、検出される成熟GDF−8タンパク質の存在または量は、上に列挙される1つ以上の医療状態と相関する。
【0015】
本開示される抗体は、診断キット中に提供され得る。本キットは、成熟GDF−8タンパク質の検出を補助する他の成分を含み得、上記される1つ以上の医療状態と結果を関連付けさせる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
GDF−8タンパク質に特異的に結合する単離された抗体であって、ここで、該GDF−8タンパク質は、アミノ酸配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)を含み、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpであり、ここで該抗体は、該同じ抗体によって結合されないGDF−8タンパク質に比べて、該GDF−8タンパク質と関連する1つ以上の生物学的活性を減少する、抗体。
(項目2)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸50までの領域に結合する、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸25までの領域に結合する、項目1に記載の抗体。
(項目4)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)を結合し、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである、項目1に記載の抗体。
(項目5)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号8)を結合する、項目1に記載の抗体。
(項目6)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)を結合する、項目1に記載の抗体。
(項目7)
前記GDF−8タンパク質が、少なくとも75%配列番号15に同一であるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目8)
前記GDF−8タンパク質が、配列番号15である、項目7に記載の抗体。
(項目9)
前記抗体が、GDF−8潜伏複合体、フォリスタチンとの複合体中のGDF−8、またはフォリスタチン関連タンパク質との複合体中のGDF−8を認識する、項目1に記載の抗体。
(項目10)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目11)
前記抗体が、ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞によって産生される、JA−16モノクローナル抗体である、項目10に記載の抗体。
(項目12)
項目10に記載のモノクローナル抗体を産生する細胞。
(項目13)
項目1に記載の抗体を含む薬学的組成物。
(項目14)
薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、項目13に記載の組成物。
(項目15)
医療障害に罹患する患者を処置するための方法であって、ここで、該患者は、筋肉組織量の増加から治療的に利益を得、該方法は、GDF−8タンパク質に特異的に結合し得る抗体の治療有効用量を哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで、該GDF−8タンパク質は、アミノ酸配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)を含み、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpであり、ここで該抗体は、該同じ抗体を受容しない患者に比べて、該患者においてGDF−8タンパク質と関連する1つ以上の生物学的活性を減少する、方法。
(項目16)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸50までの領域の該GDF−8タンパク質に結合する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記抗体が、前記GDF−8タンパク質配列のアミノ酸1〜アミノ酸25までの領域の該GDF−8タンパク質に結合する、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)を結合し、ここでXaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号8)を結合する、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記抗体が、GDF−8タンパク質中のアミノ酸配列Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)を結合する、項目15に記載の方法。
(項目21)
前記GDF−8タンパク質が、少なくとも75%配列番号15に同一であるアミノ酸配列を含む、項目15に記載の方法。
(項目22)
前記GDF−8タンパク質が、配列番号15である、項目15に記載の方法。
(項目23)
前記抗体が、GDF−8潜伏複合体、フォリスタチンとの複合体中のGDF−8、またはフォリスタチン関連タンパク質との複合体中のGDF−8を認識する、項目15に記載の方法。
(項目24)
前記抗体が、ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞によって産生される、JA−16モノクローナル抗体である、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記医療障害が、筋障害、神経筋障害、脂肪組織障害、糖尿病、または骨変性障害である、項目15に記載の方法。
(項目26)
前記医療障害が、筋障害または神経筋障害である、項目15に記載の方法。
(項目27)
前記医療障害が、筋ジストロフィー、筋萎縮症、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症、または悪液質である、項目15に記載の方法。
(項目28)
前記医療障害が、筋ジストロフィーである、項目15に記載の方法。
(項目29)
前記医療障害が、糖尿病、II型糖尿病、または骨粗鬆症である、項目15に記載の方法。
(項目30)
項目1に記載のモノクローナル抗体を産生する細胞。
(項目31)
項目1に記載の抗体をコードする核酸。
(項目32)
項目1に記載の抗体を含む診断キット。
(項目33)
ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞によって産生される抗体。
(項目34)
配列番号1に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体。
(項目35)
前記アミノ酸配列が配列番号1である、項目34に記載の抗体。
(項目36)
配列番号1に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をコードする核酸。
(項目37)
前記核酸分子が配列番号6を含む、項目36に記載の核酸。
(項目38)
配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する単離された抗体。
(項目39)
前記抗体が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する、項目38に記載の抗体。
(項目40)
前記抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する、項目38に記載の抗体。
(項目41)
前記抗体が、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的に結合する、項目40に記載の抗体。
(項目42)
ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞株を使用して作製される、項目38に記載の抗体。
(項目43)
配列番号1のアミノ酸配列30〜35、配列番号1のアミノ酸配列50〜66、および配列番号1のアミノ酸配列99〜102から選択される少なくとも単鎖CDRを含む、項目38に記載の抗体。
(項目44)
筋肉量を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目38に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉量を増加する工程を包含する、方法。
(項目45)
海綿質密度を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目38に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって海綿質密度を増加する工程を包含する、方法。
(項目46)
筋肉強度を増強する方法であって、該方法は、治療有効量の項目38に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉強度を増強する工程を包含する、方法。
(項目47)
項目38に記載の抗体をコードする核酸。
(項目48)
GDF−8活性を阻害する方法であって、該方法は、項目1の抗体を提供する工程および該抗体でGDF−8活性を阻害する工程を包含する、方法。
(項目49)
タンパク質を特異的に結合する単離された抗体であって、ここで該タンパク質が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、抗体。
(項目50)
前記タンパク質が、BMP−11または該BMP−11のフラグメントである、項目49に記載の抗体。
(項目51)
ATCC寄託登録番号PTA−4236を有する細胞株を使用して作製される、項目49に記載の抗体。
(項目52)
筋肉量を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目49に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉量を増加する工程を包含する、方法。
(項目53)
海綿質密度を増加する方法であって、該方法は、治療有効量の項目49に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって海綿質密度を増加する工程を包含する、方法。
(項目54)
筋肉強度を増強する方法であって、該方法は、治療有効量の項目49に記載の抗体を哺乳動物に投与し、それによって筋肉強度を増強する工程を包含する、方法。
【0016】
(配列の簡単な説明)
【0017】
【数1】
(定義)
用語「抗体」は、1つ以上の、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体組成物、単一特異性または多特異性を有する抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植片抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、および親抗体の抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメント)をいう。
【0018】
用語「キメラ抗体」は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来の(または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する)対応する配列に同一または相同的である分子をいうのに対して、その鎖の残りは、異なる種に由来する(または異なる抗体クラスまたはサブクラスに属する)対応する配列に同一であるかまたは相同である。このようなキメラ抗体は、Morrisonら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855に記載される。
【0019】
用語「エピトープ」は、抗GDF−8モノクローナル抗体と特異的に反応し得る分子または分子の一部をいう。エピトープは、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、炭水化物、脂質、または他の分子を含み得るが、最も一般的には、タンパク質、短いオリゴペプチド、またはこれらの組み合わせである。
【0020】
用語「GDFポリペプチド」および「GDFタンパク質」は、一般的に、GDF−8に構造的または機能的に関連する任意の増殖因子および分化因子をいう。
【0021】
用語「GDFインヒビター」は、GDFタンパク質の活性、発現、プロセシング、または分泌を阻害し得る任意の因子を含む。このようなインヒビターとしては、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチド類似物、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、およびGDFタンパク質を特異的に阻害する他の低分子が挙げられる。
【0022】
用語「GDF−8」または「GDF−8タンパク質」は、特異的な増殖および分化因子をいう。これらの用語は、タンパク質の全長未プロセス前駆体形態ならびに翻訳後切断から得られる成熟形態およびプロペプチド形態を含む。これらの用語はまた、本明細書中に議論されるように、アミノ酸配列に対する保存的変化または非保存的変化で改変された配列を含む、タンパク質と関連する公知の生物学的活性を維持するGDF−8の任意のフラグメントをいう。
【0023】
これらのGDF−8分子は、任意の供給源(天然供給源または合成供給源)から由来し得る。成熟GDF−8タンパク質のヒト形態は、配列番号15に提供される。しかし、本発明はまた、全ての他の供給源(ウシ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、およびサカナ由来のGDF−8を含む)からのGDF−8分子を含む。これらの種々のGDF−8分子は、McPherronら、(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461に記載される。
【0024】
「成熟GDF−8」は、GDF−8前駆体タンパク質のカルボキシ末端ドメインから切断されたタンパク質をいう。成熟GDF−8は、モノマー、ホモダイマー、またはGDF−8潜伏複合体として存在し得る。インビボ条件またはインビトロ条件に依存して、任意のまたは全てのこれらの異なる形態の間の平衡が存在する。GDF−8は、ホモダイマーとして生物学的に活性であると考えられる。その生物学的に活性な形態において、成熟GDF−8はまた、「活性なGDF−8」ともいわれる。
【0025】
「GDF−8プロペプチド」は、GDF−8前駆体タンパク質のアミノ末端ドメインから切断されたポリペプチドをいう。GDF−8プロペプチドは、成熟GDF−8上のプロペプチド結合ドメインに結合し得る。
【0026】
「GDF−8潜伏複合体」は、成熟GDF−8ホモダイマーとGDF−8プロペプチドとの間に形成されるタンパク質の複合体をいう。2つのGDF−8プロペプチドがGDF−8ホモダイマーと結合し、不活性なテトラマー複合体を形成すると考えられる。潜伏複合体は、1つ以上のGDF−8プロペプチドの代わりに、またはそれらに加えて他のGDF−8インヒビターを含み得る。
【0027】
句「GDF−8インヒビター」としては、GDF−8タンパク質の活性、発現、プロセシング、または分泌を阻害し得る任意の薬剤が挙げられる。このようなインヒビターとしては、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチド類似物、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、およびGDF−8タンパク質の活性を特異的に阻害する他の低分子が挙げられる。このようなインヒビターは、GDF−8タンパク質の生物学的活性を「中和」または「低減」するといわれる。
【0028】
句「GDF−8活性」は、活性なGDF−8タンパク質に関連する1以上の増殖制御活性または形態形成活性をいう。例えば、活性なGDF−8は、骨格筋のネガティブな制御因子である。活性なGDF−8はまた、筋肉特異的酵素(クレアチンキナーゼ)の産生を調節し得、筋芽細胞増殖を刺激し得、そして脂肪細胞への前脂肪細胞の分化を調節し得る。
【0029】
用語「単離された」または「精製された」は、その天然の環境から実質的に隔離された分子をいう。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来する細胞供給源または組織供給源由来の細胞物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まない。句「実質的に細胞物質を含まない」は、単離されたタンパク質が少なくとも70%〜80%(w/w)純粋であり、必要に応じて少なくとも80%〜89%(w/w)純粋であり、必要に応じて90〜95%純粋であり、そして必要に応じて少なくとも96%、97%、98%、99%または100%(w/w)純粋である調製物をいう。
【0030】
処置の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家庭動物および農場動物、ならびに動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなど)を含む哺乳動物として分類される任意の動物をいう。本発明の1つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0031】
用語「モノクローナル抗体」は、単一の抗原エピトープに対して指向された実質的に一様な抗体集団由来の1つ以上の抗体をいう。この用語は、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植片抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、および親抗体の抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメント)を含む。
【0032】
さらに、用語「モノクローナル抗体」は、任意の特定の種または抗体の供給源、あるいは抗体を作製した様式に限定されない。モノクローナル抗体は、慣例的なハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein(1975)Nature,256:495−499)、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)、またはファージ抗体ライブラリー(Clacksonら、(1991)Nature,352:624−628;Marksら、(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597)によって作製され得る。任意の哺乳動物種または非哺乳動物種のモノクローナル抗体が、本発明において使用され得る。例えば、抗体は、霊長類(例えば、ヒト、オランウータンなど)、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウなど)、ウシ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジまたはサカナに由来し得る。本発明の1つの実施形態において、抗体は、ラット起源、マウス起源、またはヒト起源である。
【0033】
用語「中和する」または「中和」は、GDF−8インヒビターによって結合されないGDF−8分子の活性に対する、同じインヒビターによるGDF−8の活性の低減をいう。従って、「中和」抗体は、同じ抗体によって結合されないGDF−8分子の活性に比べて、GDF−8の活性を低減する。1つ以上の本明細書中で開示されたGDF−8インヒビター(例えば、本明細書中で開示される抗体)によって結合される場合、GDF−8タンパク質の活性は、1つ以上の本明細書中で開示されるGDF−8インヒビターによって結合されないGDF−8タンパク質に比べて、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、または55%低減し、必要に応じて、少なくとも60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、72%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、または88%低減し、必要に応じて、少なくとも約90%、91%、92%、93%、または94%低減し、そして必要に応じて少なくとも95%〜100%低減する。
【0034】
用語「特異的相互作用」または「特異的に結合」などは、2つの分子が生理的条件下で比較的安定である複合体を形成することをいう。この用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが、多くの抗原により保持される特定のエピトープに特異的である場合に適用可能であり、この場合、この抗原結合ドメインを保持する特異的結合メンバーは、このエピトープを保持する種々の抗原に結合し得る。特異的結合は、高い親和性および低〜中程度の能力により特徴付けられる。非特異的結合は、通常、中程度〜高い能力で低親和性を有する。代表的には、結合は、親和定数Kaが106M−1より高いか、または108M−1より高くあり得るとき、特異的であると考えられる。必要であれば、非特異的結合は、結合条件を変えることによって、特異的結合に実質的に影響することなく低減され得る。このような条件は、当該分野で公知であり、そして慣用的な技法を用いる当業者は、適切な条件を選択し得る。これら条件は、通常、抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合を可能にする時間、非関連分子の濃度(例えは、血清アルブミン、乳カゼイン)などに関して規定されている。例示の条件は、実施例4に提示されている。
【0035】
用語「TGF−βスーパーファミリー」は、構造的に関連した成長因子のファミリーをいい、そのすべては、生理学的に重要な成長調節および形態形成性質をもつ。関連する成長因子のこのファミリーは、当該分野で周知である(Kingsleyら(1994)Gnens Dev.、8:133〜146;Hoodlessら、(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.、228:235〜272)。このTGF−βスーパーファミリーは、骨形態形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビン、ミュラー(Mullerian)阻害物質、神経膠由来神経栄養因子、およびGDF−8(ミオスタチン)のような、なお増加する数の成長および分化因子(GDF)を含む。これらタンパク質の多くは、BMP−11のように、構造において;および/またはアクチビンのように、活性において、GDF−8に関連している。
【0036】
用語「処置」は、治療処置および予防または防止処置の両方をいう。処置が必要な者は、特定の医療疾患をすでに有する個体および最終的にこの疾患を獲得し得る者(すなわち、防止処置を必要とする者)を含み得る。
【0037】
(発明の詳細な説明)
(抗体)
インタクトの抗体は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。軽鎖の各々は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結し、その一方、ジスルフィト結合の数は、異なる免疫グロブリンのアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を置いて配置された鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、1つの端部に、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を有する。各軽鎖は、1つの端部に可変ドメイン(VL)を、そしてそのもう1つの端部に定常ドメインを有する;この軽鎖の定常ドメインは、重鎖の最初の定常ドメインと整列し、そして軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が、これら軽鎖および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている(Clothiaら(1985)J.Mol.Biol.、186:651〜663;NovotnyおよびHaber(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:4592〜4596)。
【0038】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。これらは、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、ヒトにおけるIaAに対するIgA1およびIgA2;ヒトにおけるIgGに対するIG1、IG2、IG3、IG4、ならびにマウスにおけるIgGに対するIgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3にさらに分割され得る。免疫グロブリンの主要クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造は当該分野で周知である。
【0039】
抗体構造の総説には、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlowら編を参照のこと。要約すれば、各軽鎖は、N末端可変(V)ドメイン(VL)および定常(C)ドメイン(CL)から構成される。各重鎖は、N末端Vドメイン、3または4のCドメイン、およびヒンジ領域から構成される。VHに最も近接するCHドメインは、CH1と称される。VHおよびVLドメインは、フレームワーク領域と呼ばれる比較的保存された配列の4つの領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)から構成され、これは、超可変配列(相補性決定領域、CDR)の3つの領域のための足場を形成する。このCDRは、抗原との特異的相互作用の原因である大部分の残基を含む。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と称される。従って、重鎖上のCDR成分は、H1、H2、およびH3と称され、その一方、軽鎖上のCDRは、L1、L2、およびL3と称される。CDR3は、抗体結合部位内で分子多様性の最大の供給源である。例えば、H3は、2アミノ酸残基と同じ程短くあり得るか、26アミノ酸残基より大きくあり得る。所定の抗体中の免疫グロブリン可変ドメインの位置は、例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、Kabatら編、1991に記載されるように決定され得る。
【0040】
抗体多様性は、可変の領域をコードする複数の生殖系列遺伝子および種々の体細胞事象の使用により創製される。この体細胞事象は、完全VH領域を作製するための多様性(D)を有する可変遺伝子セグメントと遺伝子セグメントの連結(J)の組換え、および完全VL領域を作製するための可変および連結遺伝子セグメントの組換えを含む。この組換えプロセスそれ自身は不正確であり、V(D)J連結部におけるアミノ酸の損失または付加を生じる。多様性のこれらの機構は、抗原に曝す前に、発達するB細胞中で生じる。抗原刺激の後、B細胞中で発現された抗体遺伝子は、体細胞変異を受ける。生殖系列遺伝子セグメントの推定された数、これらセグメントのランダムな組換え、およびランダムVH−VL対合に基き、1.6×107までの異なる抗体が産生され得る(Fundamental Immunology、第3版、Paul編、Raven Press、New York、NY、1993)。抗体多様性に寄与するその他のプロセス(体細胞変異など)を考慮するとき、1×1010までの異なる抗体が産生され得ると考えられている(Immunoglobulin Genes、第2版、Jonioら編、Academic
Press、San Diego、CA、1995)。抗体多様性を産生することで多くのプロセスが関与しているので、同じ抗原特異性を有する独立に派生するモノクローナル抗体が同じアミノ酸配列を有することはありそうもない。
【0041】
抗体は、抗原エピトープを提供するタンパク質の任意の部分に対して惹起され得る。本発明の1つの実施形態では、現在開示される抗体は、TGF−βタンパク質のスーパーファミリーに属するタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。このタンパク質は、必要に応じて、骨形態形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビン、ミュラー阻害物質、神経膠由来神経栄養因子、または成長および分化因子(GDF)である。必要に応じて、このタンパク質は、BMP−11、アクチビン、またはGDF−8である。このタンパク質、必要に応じて成熟GDF−8タンパク質である。
【0042】
1つの実施形態では、現在開示される抗体は、配列番号15に提示される成熟GDF−8タンパク質;必要に応じて配列番号15のアミノ酸1とアミノ酸50との間;必要に応じてアミノ酸1とアミノ酸25との間;そして必要に応じてアミノ酸1とアミノ酸15との間に結合する。
【0043】
別の実施形態では、現在開示される抗体は、TGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質の任意の1つ中の配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、GDF−8中のペプチド配列Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、成熟GDF−8タンパク質(配列番号15)中のAsp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)に特異的に結合する。
【0044】
必要に応じて、現在開示される抗体は、TGF−βスーパーファミリーに属する任意の1つのタンパク質中のペプチド配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、GDF−8中のペプチド配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Xaa−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号5)に特異的に結合し、ここで、Xaaは、Ala、Gly、His、Met、Asn、Arg、Ser、Thr、またはTrpである。必要に応じて、これら抗体は、成熟GFD−8タンパク質(配列番号15)中のペプチド配列Asp−Phe−Gly−Leu−Asp−Cys−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Cys(配列番号8)に特異的に結合する。
【0045】
現在開示される抗体が特異的に結合し得るGDF−8タンパク質は、必要に応じて配列番号15と少なくとも約75%〜80%同一であり、必要に応じて配列番号15と少なくとも約81%〜85%同一であり、必要に応じて配列番号15と少なくとも約86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、または94%同一であり、そして必要に応じて配列番号15と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。このGDF−8タンパク質は、必要に応じて配列番号15を含む。
【0046】
代替の実施形態では、現在開示される抗体は、BMP−11タンパク質に特異的に結合し得る。このBMP−11タンパク質は、必要に応じて配列番号16と少なくとも約75%〜80%同一であり、必要に応じて配列番号16と少なくとも約81%〜85%同一であり、必要に応じて配列番号16と少なくとも約86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、または94%同一であり、そして必要に応じて配列番号16と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。このBMP−11タンパク質は、必要に応じて配列番号16を含む。
【0047】
特定の実施形態では、JA−16と称される抗体は、重鎖の可変領域の一部分として配列番号1のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、この抗体は、配列番号1のアミノ酸30〜35、配列番号1のアミノ酸50〜66、および配列番号1のアミノ酸99〜102から選択される少なくとも1つの単鎖CDRを含む。
【0048】
当業者は、本発明の抗体がそれらの生物学的性質を改変することなく、それらの個々のアミノ酸配列に対する任意の数の保存的または非保存的変化を含み得ることを認識する。これらの変化は、フレームワーク領域(FR)中またはCDR領域中のいずれかでなされ得る。フレームワーク領域中の変化は、通常、抗体の安定性および免疫原性を改善するために設計され、CDR中の変化は、通常、その標的に対する抗体の親和性を増大するために設計される。このような親和性が増大する変化は、代表的には、CDR領域を改変すること、および抗体を試験することにより実験的に決定され得る。このような改変は、Antibody Engineering、第2版、Oxford University
Press、Borrebaeck、1995中に記載される方法に従ってなされ得る。保存的アミノ酸改変は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、荷電、サイズなどに基づく。種々の先行する特徴を考慮する例示の-保存的置
換は、当業者に周知であり、そして:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;およびバリン、ロイシン、およびイソロイシンを含む。このような変化のさらなる詳細は、以下のセクションに記載されている。CDR中とは異なり、より実質的な構造フレームワーク(FR)中の非保存的変化が、抗体の結合性質に悪影響を与えることなくなされ得る。FRへの変化は、制限されずに、非ヒト由来のフレームワークをヒト化すること、または抗体接触もしくは結合部位を安定化するために重要である特定のフレームワーク残基を操作すること、例えば、定常領域のクラスもしくはサブクラスを変えること、Fcレセプター結合のようなエフェクター機能を改変し得る特定アミノ酸残基を変えること(Lundら(1991)J.Immun.147:2657〜2662およびMorganら(1995)Immunology 86:319〜324)、もしくは以下に記載のように定常領域が由来する種を変えることを含む。
【0049】
1つの実施形態では、現在開示される抗体は、成熟GDF−8タンパク質に、それが、モノマー形態、活性ダイマー形態、またはGDF−8潜伏複合体中の複合形態であるかにかかわらず、約106と約1011M−1との間、必要に応じて約108と約1011M−1との間の親和性で特異的に結合する。
【0050】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体組成物、モノ特異性またはポリ特異性を有する抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、CDRグラフト抗体、Fab、F(ab’)2、Fv、および親抗体の抗原結合機能を保持するその他の抗体フラグメントのような抗体フラグメントを含み得る。現在開示される抗体はまた、キメラ抗体に改変され得る。例えば、ヒトFc領域は、マウス抗体からのGDF−8結合領域に融合され得、キメラ抗体を生成し得る。マウス抗体のその他の部分(抗原結合領域の外側)を、対応するヒト抗体フラグメントで置換することにより、ヒト化抗体が産生され得る。このようなキメラまたはヒト化抗体は、増加した生物学的特異性またはインビボ安定性を提示し得る。それらは、ヒト治療のための抗体を設計するのに特に有用である。実施者は、抗体の構築、操作、産生、および単離のための詳細な条件および手順を記載する標準的な資源材料に精通している(例えば、HarlowおよびLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、New Yorkを参照のこと)。
【0051】
本発明はまた、現在開示される抗体のいずれかを産生する、ハイブリドーマのような細胞を提供する。当業者は、抗体を産生するために適切である多くの細胞に精通している。本発明に適合する任意の細胞を用いて現在開示される抗体を産生し得る。1つの実施形態では、現在開示される抗体は、ハイブリドーマ細胞により産生される。マウス抗−GDF−8 JA−16抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、American Tissue Culture Collection(受託指定番号PTA−4236)に2002年、4月18日に寄託されている。寄託機関の住所は、バージニア州20110、マナサス、10801 University Blvdである。
【0052】
(疾患の処置の方法)
本発明の抗体は、ヒトまたは動物における種々の医学的障害を予防、診断または処置するのに有用である。この抗体を用いて、同じ抗体が結合しなかったGDFタンパク質に対して相対的に、一つ以上のGDFタンパク質関連活性を阻害するか、または減少させる。必要に応じて、抗体は、同じ抗体が結合しなかった成熟GDF−8に対して相対的に、成熟GDF−8(モノマー形態、活性ダイマー形態、またはGDF−8潜伏複合体での複合体化に関わらず)の1つ以上の活性を阻害するかまたは減少させる。ある実施形態において、成熟GDF−8タンパク質の活性は、1種類以上の現在公開されている抗体が結合する場合、1種類以上の現在公開されている抗体によって結合されない成熟GDF−8に対して相対的に、少なくとも50%、必要に応じて、少なくとも60%、少なくとも62%、少なくとも64%、少なくとも66%、少なくとも68%、少なくとも70%、少なくとも72%、少なくとも72%、少なくとも76%、少なくとも78%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、または少なくとも88%阻害され、必要に応じて少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または少なくとも94%阻害され、そして必要に応じて少なくとも95%〜100%阻害される。
【0053】
現在公開されている抗体によって、診断、処置または予防される医学的障害は、必要に応じて、以下のようである:筋肉障害または神経筋障害;肥満症のような脂肪組織障害;II型糖尿病、損傷されたグルコース寛容性、代謝症候群(例えば、症候群X)、火傷のような外傷によって誘導されるインシュリン耐性;または骨粗鬆症のような骨変性疾患。医学的状態は、必要に応じて、筋肉障害または神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮、鬱血閉塞性肺動脈障害、筋るいそう症候群、筋肉減少症)、または悪質液および骨の損失に関する障害(特に年配および/または閉経後の女性における骨粗鬆症、グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症、骨減少症、および骨粗鬆症関連の骨折を含む)である。本発明のGDF−8抗体での処置により改善可能な他の標的骨代謝疾患および障害としては、慢性的なグルココルチコイド療法、未熟性腺不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD不足、二次的な副甲状腺機能亢進症、栄養不足、および神経性拒食症に起因する低骨質量が挙げられる。この抗体は、必要に応じて、哺乳動物における(必要に応じてヒトにおける)そのような医学的障害の予防、診断、または治療に用いられる。
【0054】
本発明の抗体または抗体組成物は、治療的有効量で投与される。本明細書中で用いられる場合、抗体の「有効量」は、GDFタンパク質の活性を減少させ、所望の生物学的成果を達成する(例えば、筋肉量または強度を増大させる)のに十分な投薬量のことである。一般に、治療的有効量は、被験体の年齢、状態、および性別、ならびに被験体における医学的状態の重篤度に伴って変化し得る。投薬量は、医師(physcian)により決定され得、必要に応じて、観察される処置の効果に合わせて調整され得る。一般に、その組成物は、抗体が1μg/kgと20mg/kgの用量を与えるように投与される。必要に応じて、抗体を、大量瞬時投薬量で与え、投与後の最長時間にわたり抗体の循環レベルを最大にする。継続的な注入がまた、大量瞬時投与後に用いられ得る。
【0055】
現在公開されている抗体を用いて、上記の医学的状態を処置、診断、または予防する方法はまた、TGF−βスーパーファミリーの他のタンパク質に関して用いられ得る。これらのタンパク質の多く(例えば、BPM−11)は、構造的に、GDF−8に関連がある。従って、別の実施形態において、本発明は、BPM−11またはアクチビンを阻害する能力のある抗体を、単独または他のTGF−βインヒビター(例えば、GDF−8に対する中和抗体)との組合せで被験体に投与することによって、上記の障害を処置する方法を提供する。
【0056】
本発明の抗体を用いて、TGF−βスーパーファミリー(例えば、BPM−11およびGDF−8)に属するタンパク質の存在を検出し得る。これらのタンパク質の存在またはレベルを医学的状態を相関させることによって、当業者は、関連する医学的状態を診断し得る。本発明で公開される抗体により診断され得る医学的状態は、上に記載される。
【0057】
このような検出方法は、当該分野において周知であり、ELISA、放射イムノアッセイ、イムノブロット、ウェスタンブロット、免疫蛍光法、免疫沈降、および他の類似の技術を含む。抗体は、タンパク質(例えば、GDF−8)を検出するためのこれらの技術の1つ以上を取り入れた診断キットをさらに供給し得る。このようなキットは、他の組成、パッケージ、使用説明書、またはタンパク質の検出およびキットの使用を補助する他の材料を含み得る。
【0058】
これらの抗体が、診断目的を意図する場合、それらの抗体を改変する(例えば、リガンド基(例えば、ビオチン)を有する、または検出マーカー基(例えば、蛍光基、放射性同位体または酵素)を有する)ことが所望され得る。所望される場合、これらの抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)は、従来技術を用いて標識される。適切な標識としては、フルオロフォア、発色団、放射活性原子、高電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。酵素は、代表的には、その活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、通常、その3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を青色色素に変換する能力によって検出され、分光光度計を用いて定量し得る。他の適切な標識には、例えば、結合パートナー(例えば、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、IgGとプロテインA)、および当該分野に公知の種々のレセプターリガンド結合のうちの1つが挙げられる。他の手順および可能性が、当業者に容易に明らかであり、本発明の範囲内で、等価物として考慮される。
【0059】
(抗体の組成物)
本発明は、現在公開されている抗体を含む組成を提供する。その組成は、薬学的使用および患者に対する投与に適し得る。その組成物は、代表的に、1種類以上の本発明の抗体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。本明細書中で使用される場合、句「薬学的に受容可能な賦形剤」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張性剤および吸収遅延剤などを全て含み、薬学的投与に対して適合性である。薬学的に活性のある基質に対してそのような媒体および試薬の使用は、当該分野で周知である。その組成物はまた、補充的な、追加的な、または増強された治療的機能を提供する他の活性化合物を含み得る。薬学的組成物はまた、投与のための指示書と共に、容器内、パック内またはディスペンサー内に含まれ得る。
【0060】
本発明の薬学的組成物は、意図される投与経路に適合性であるように処方される。投与を達成する方法が、当業者に公知である。局所的または経口的に投与され得る組成物、または粘膜を通して送達する能力を有し得る組成物を得ることがまた、可能であり得る。この投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下または経皮的であり得る。
【0061】
皮内適用または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、代表的に、以下の組成をのうち1種類以上を含む:注射ための水のような滅菌希釈液、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗真菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸塩ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸のような緩衝液;および塩化ナトリウムまたはグルコースのような張性の調整のための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩を用いて調整され得る。このような調製物は、ガラスまたはプラスチックで作製したアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量のバイアルの中に封入され得る。
【0062】
注射に適した薬学的組成物としては、滅菌水溶液または滅菌水性分散液、および滅菌注射用液または滅菌注射分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のための適切なキャリアとしては、生理的食塩水、静菌性水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、この組成物は、滅菌されていなければならず、かつ容易にシリンジ注射可能に存在する程度の流動性であるべきである。製造および保存の条件下で安定でなければならず、かつ微生物(例えば、細菌および真菌)の混入作用に対して保護されなければならない。キャリアは、溶媒または分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物)であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散の場合、必要とされる粒子サイズの保持によって、そして界面活性剤の使用によって保持され得る。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトール、塩化ナトリウム)は、組成物中に含まれる。注射可能な組成物の長期の吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)を含ませることによってなされ得る。
【0063】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用に適するキャリアを含む。経口組成物は、ゼラチンカプセル中に封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の目的で、抗体は、賦形剤を用いて組み込まれ得、錠剤、口内錠、またはカプセルの形態で用いられ得る。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント剤は、組成物の一部として含まれる得る。錠剤、丸薬、カプセル、口内薬などは、以下の任意の成分、または同様の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロースのような結合剤;ガムトラガントまたはゼラチン;デンプンまたはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSteroteのような潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動性促進剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味料のような香味料。
【0064】
吸入による投与のために、圧縮容器または適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素のような気体)を備えたディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾル噴霧形態で送達される。
【0065】
全身投与は、経粘膜的手段または経皮的手段によるものであり得る。経粘膜投与または経皮投与のために、バリヤーに浸透させるのに適した浸透剤が、処方において用いられる。そのような浸透剤は、一般に、当該分野に公知であり、例えば、経粘膜投与のための界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻噴霧または坐薬の使用により達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、該分野で一般に公知の軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、または当クリームに処方される。
【0066】
抗体はまた、直腸送達のために、坐薬(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような従来の坐薬基剤)または保留浣腸の形態で調製され得る。
【0067】
1つの実施形態において、現在公開されている抗体は、移植および微小カプセル化送達システムを含む制御放出処方物のような、体からの急速な排出から化合物を保護するキャリアと共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性ポリマー、生体適合性ポリマーが用いられ得る。このような処方物の調製方法は、当業者に明らかである。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceticals,Incから商業的に入手し得る。現在公開されている抗体を含むリポソーム懸濁物もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして用いられ得る。これらは、当業者に公知の方法(例えば、米国特許第4,522,811号に記載される)に従って調製され得る。
【0068】
容易な投与および一様な投薬量のために、経口組成物または非経口組成物を、投薬量単位形態で処方するのに特に有利である。本明細書中で用いられる場合
、「投薬量単位形態」は、処置すべき被験体に対する単位投薬量として適切な、物理的に分離した単位のことをいう;各単位は、必要とされる薬学的キャリアと共に、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含む。本発明の投薬量単位形態に関する詳細は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のための活性化合物のような、配合技術における本質的な制限によって、およびそれらに依存して直接的に決定される。
【0069】
それらの化合物の毒性効力および治療効力は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順(例えば、LD50(集団の50%までの致死量)およびED50(集団の50%における治療的な有効量))によって決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量の比率は、治療係数であり、LD50/ED50と表し得る。大きな治療係数を示す抗体は、本発明の実施形態である。
【0070】
細胞培養物アッセイおよび動物実験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投薬量範囲の処方において用いられ得る。このような化合物の投薬量は、必要に応じて、小さな毒性を有するED50または毒性のないED50を有する循環濃度の範囲内である。投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化され得る。本発明において用いられる任意の抗体について、治療的有効量が、始めに細胞培養物アッセイから推定され得る。細胞培養物にて決定されたIC50を含む循環血漿濃度(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験抗体濃度)範囲を達成するための用量が、動物モデルで処方され得る。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニタリングし得る。適切なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、転写ベースのアッセイ、GDFタンパク質/レセプター結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前脂肪細胞の分化に基くアッセイ、脂肪細胞におけるグルコース取込みに基くアッセイ、および免疫学的アッセイが挙げられる。
【0071】
(改変された抗体)
特定のアミノ酸は、タンパク質の活性(例えば、抗体の結合特性)に悪影響を与えることなく、タンパク質構造中の他のアミノ酸と置換され得ることが、当業者により理解される。従って、本明細書中に開示される抗体のアミノ酸配列、またはこの抗体をコードするDNA配列において、それらの生物学的有用性または活性がかなり損失することなく、種々の変化が作製され得ることが、本発明者らにより意図される。このような変化としては、欠失、挿入、切断、置換、融合、モチーフ配列のシャッフリングなどが挙げられ得る。
【0072】
このような変化を作製する際、アミノ酸の疎水性親水性指数(hydropathic
index)が考慮され得る。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を与える際のこの疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、一般に、当該分野で理解されている(KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.,157:105−132)。アミノ酸の相対疎水性親水性特性は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、従って、この二次構造は、このタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定することが認められている。
【0073】
各アミノ酸は、その疎水性親水性および電荷特性に基づいて疎水性親水性指数を割り当てられている(KyteおよびDoolittle,1982);これらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)およびアルギニン(−4.5)である。
【0074】
このような変化を作製する際、その疎水性親水性指数が±2以内であるアミノ酸の置換は、本発明の一実施形態であり、±1以内であるアミノ酸の置換が任意であり、±0.5以内であるアミノ酸の置換もまた任意である。
【0075】
類似のアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効率的に行われ得ることもまた当該分野で理解されている。米国特許第4,554,101号は、タンパク質の最も大きな局所平均親水性は、その隣接するアミノ酸の親水性により支配される場合、そのタンパク質の生物学的特性と相関すると記載している。
【0076】
米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性値が、各アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、およびトリプトファン(−3.4)。
【0077】
このような変化を作製する際、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換は、本発明の一実施形態であり、±1以内であるアミノ酸の置換は任意であり、そして±0.5以内であるアミノ酸の置換は任意である。
【0078】
改変は、タンパク質の構造または生物学的機能が、その変化により影響を受けないように、保存的であり得る。このような保存的アミノ酸改変は、アミノ酸側鎖置換基の相対類似性(例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなど)に基づく。種々の上記特徴を考慮する例示的な保存的置換は、当業者に周知であり、そして以下が挙げられる:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン。本明細書中で開示される抗体のアミノ酸配列は、その標的抗原に対するこの抗体の結合が悪影響を受けない限り、任意の数の保存的変化を有するように改変され得る。このような変化は、抗体の抗原結合部分の内側または外側に導入され得る。例えば、抗体の抗原結合部分の内側に導入された変化は、その標的に対するこの抗体の親和性を増加するように設計され得る。
【0079】
上記のアミノ酸配列に対する変化に加えて、これらの抗体は、グルコシル化されるか、ペグ化されるか、またはアルブミンもしくは非タンパク質性ポリマーに連結され得る。例えば、本明細書中で開示される抗体は、種々の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン)のうちの1つに、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に記載される様式で、連結され得る。これらの抗体は、例えば、その循環半減期を増加するために、ポリマーへの共有結合によって化学的に改変される。特定のポリマー、およびこのポリマーをペプチドに結合するための方法は、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号;および同第4,609,546号にも示されている。
【0080】
別の実施形態において、この抗体は、変更されたグリコシル化パターン(すなわち、元のまたはネイティブのグリコシル化パターンから変更される)を有するように改変され得る。本明細書中で使用する場合、「変更された(altered)」とは、1つ以上の糖質部分の欠失を有すること、および/または元の抗体に加えられた1つ以上のグリコシル化部位を有することを意味する。
【0081】
抗体のグリコシル化は、代表的に、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖に対する糖質部分の結合をいう。トリペプチド配列である、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖に対する糖質部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、強力なグリコシル化部位が生じる。O結合グリコシル化とは、糖である、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうち1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合をいうが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた使用され得る。
【0082】
本明細書中で開示される抗体にグリコシル化部位を加えることは、この抗体が上記のトリペプチド配列の1つ以上(N結合グリコシル化部位について)を含むようにアミノ酸配列を変更することによって、都合良く達成される。この変更はまた、(O結合グリコシル化部位について)1つ以上のセリン残基またはスレオニン残基を元の抗体の配列に加えることによって、または1つ以上のセリン残基またはスレオニン残基を置換することによって、行われ得る。簡便さのために、この抗体のアミノ酸配列は、必要に応じて、DNAレベルでの変化により変更される。
【0083】
この抗体上の糖質部分の数を増加する別の手段は、グリコシドとこの抗体のアミノ酸残基との化学的カップリングまたは酵素的カップリングによるものである。これらの手順は、この手順がN結合グリコシル化またはO結合グリコシル化についてのグリコシル化能力を有する宿主細胞においてGDFペプチドインヒビターの産生を必要としないという点で、有利である。使用されるカップリング様式に依存して、これらの糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインの遊離スルフヒドリル基)、(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基)、(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンの芳香族残基、あるいは(f)グルタミンのアミド基、に結合され得る。これらの方法は、WO87/05330、ならびにAplinおよびWriston(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.,22:259−306に記載される。
【0084】
抗体上に存在する任意の糖質部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物への抗体の曝露を必要とする。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたは全ての糖の切断を生じる。
【0085】
化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら(1987)Arch.Biochem.Biophys.、259:52およびEdgeら(1981)Anal.Biochem.、118:131に記載される。GDFペプチドインヒビター上の糖質部分の酵素的切断は、Thotakuraら(1987)Meth.Enzymol.、138:350に記載されるような、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0086】
(配列分析)
常に必要なわけではないが、所望される場合、当業者は、本発明により開示された抗体のアミノ酸配列または核酸配列を決定し得る。本発明は、これらのアミノ酸配列および核酸配列を含む。本発明はまた、これらの核酸配列およびアミノ酸配列の改変体、ホモログおよびフラグメントを含む。例えば、この抗体は、配列番号1を含む重鎖可変領域配列、または配列番号1をコードする核酸配列(例えば、配列番号6)を含み得る。この核酸配列またはアミノ酸配列は、本発明により開示される重鎖可変領域の核酸配列またはアミノ酸配列に、少なくとも70%〜79%同一である配列、必要に応じて、少なくとも80%〜89%同一である配列、必要に応じて、少なくとも90%〜95%同一である配列、そして必要に応じて少なくとも96%〜100%同一である配列を、必要に応じて含む。当業者は、抗体の抗原結合特性を決定するCDR領域が、抗原結合に関与しない抗体の他の部分よりも、配列バリエーションを許容し得ないことを認識する。従って、抗体のこれらの非結合領域は、抗体の結合特性を有意に変更することなしに、かなりのバリエーションを含み得る。しかし、当業者はまた、その標的に対する抗体の親和性を増大させるように特に設計されたCDR領域に対して、多くの変化がなされ得ることを認識する。このような親和性を増大させる変化は、代表的に、CDR領域を変更し、そして抗体を試験することによって、実験的に決定される。CDR内であろうとCDR外であろうと、このような変更の全ては、本発明の範囲内に含まれる。
【0087】
相対的な配列の類似性または同一性は、Sequence Analysis Software PackageTM(Version 10;Genetics Computer Group,Inc.、University of Wisconsin Biotechnology Center、Madison、WI)の「Best Fit」プログラムまたは「Gap」プログラムを使用して決定され得る。「Gap」は、NeedlemanおよびWunsch(NeedlemanおよびWunsch、1970)のアルゴリズムを使用して、一致の数を最大化し、そしてギャップの数を最小化する、2つの配列のアラインメントを見出す。「BestFit」は、2つの配列間の最も類似性のあるセグメントの最適なアラインメントを実施する。最適なアラインメントは、SmithおよびWaterman(SmithおよびWaterman、1981;Smithら、1983)の局所的相同性アルゴリズムを使用して、一致の数を最大化するためにギャップを挿入することによって、見出される。
【0088】
上記のSequence Analysis Software Packageは、本発明により開示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の相同性を同定するための、多数の他の有用な配列分析ツールを含む。例えば、「BLAST」プログラム(Altschulら、1990)は、特定のデータベース(例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)、Bethesda、MDにて維持される配列データベース)中の問い合わせ配列(ペプチドまたは核酸のいずれか)に対する配列類似性について検索し;「FastA」(LipmanおよびPearson、1985;PearsonおよびLipman、1988;Pearsonら、1990もまた参照のこと)は、問い合わせ配列と同じ型(核酸またはタンパク質)の配列の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する;「TfastA」は、タンパク質問い合わせ配列とヌクレオチド配列の任意の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する(これは、比較を行う前に、6つ全てのリーディングフレームでヌクレオチド配列を翻訳する);「FastX」は、フレームシフトを考慮して、ヌクレオチド問い合わせ配列とタンパク質配列の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する。「TfastX」は、フレームシフトを考慮して、タンパク質問い合わせ配列とヌクレオチド配列の任意の群との間の類似性についてのPearsonおよびLipman検索を実施する(これは、比較を行う前に、ヌクレオチド配列の両方の鎖を翻訳する)。
【0089】
以下の実施例は、本発明の実施形態を提供する。当業者は、多数の改変およびバリエーションが本発明の精神および範囲を変更することなく実施され得ることを、認識する。このような改変およびバリエーションは、本発明の範囲内に包含されると考えられる。これらの実施例は、本発明を決して限定しない。
【0090】
本出願を通じて引用される全ての参考文献、特許および公開された特許出願の全内容は、本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0091】
(実施例1:GDF−8の精製)
全長ヒトGDF−8タンパク質を発現する選択された細胞株由来の馴化培地(成熟GDF−8+GDF−8プロペプチド)を、pH6.5まで酸性化し、そして80×50mm
POROS SPカチオン交換カラム(PerSeptive Biosystems、Foster City、CA)と直列の80×50mm POROS HQアニオン交換カラムにアプライした。フロースルーを、pH5.0に調節し、そして75×20mm POROS SPカチオン交換カラム(PerSeptive Biosystems)にアプライし、そしてNaCl勾配で溶出した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって示される、GDF−8を含む画分をプールし、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いてpH2〜3に酸性化し、次いで、粘性を低減させるために、0.1%TFAで200mlにした。次いで、このプールを、60×21.2mmのガードカラム(Phenomenex)にアプライし、その後250×21.2mmのC5カラム(Phenomenex、Torrance、CA)にアプライし、次いで、TFA/CH3CN勾配を用いて溶出して、GDF−8プロペプチドから成熟GDF−8を分離した。成熟GDF−8を含むプールした画分を、凍結乾燥によって濃縮して、アセトニトリルを除去し、そして20mlの0.1%TFAを添加した。次いで、このサンプルを、分離を補助するために60℃に加熱した250×10mmのC5カラム(Phenomenex)にアプライした。これを、さらなる分離が達成され得なくなるまで繰り返した。次いで、成熟GDF−8を含む画分をプールし、そして40%のアセトニトリルまでにし、そして60×21.2ガードカラムにアプライした後に、600×21.2 BioSep S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)にアプライした。精製された成熟GDF−8を含む画分をプールし、そして引き続く実験における使用のために濃縮した。
【0092】
GDF−8プロペプチドを含むC5カラム画分をプールし、アセトニトリルをエバポレーションによって除去し、20mlの0.1%TFAを添加し、次いで、サンプルを250×10mmC5カラムに60℃で注入した。さらなる分離がもはや達成されなくなるまで、これを繰り返した。次いで、GDF−8プロペプチドを含む画分をプールし、40%アセトニトリルにし、60×21.2ガードカラムが先行する600×21.1BioSep S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)に適用した。精製GDF−8プロペプチドを含む画分をプールし、そして引き続く実験において使用するために濃縮した。
【0093】
SDS−PAGEにおいて、精製成熟GDF−8は、非還元条件下で25kDaに、還元条件下で13kDaに幅広いバンドとして移動した。類似のSDS−PAGEプロフィールが、マウスGDF−8(McPherronら、1997、上記)に報告されており、成熟タンパク質のダイマーの性質を反映する。
【0094】
精製GDF−8プロペプチドの見かけの分子量は、還元条件下および非還元条件下の両方で、38kDaであった。これは、GDF−8プロペプチド自体がモノマーであることを示す。見かけの分子量とGDF−8プロペプチドの予測された分子量(約26kDa)との間の差異は、炭水化物の追加を反映し得る。なぜなら、そのアミノ酸配列が、潜在的なN−結合グリコシル化部位を含むからである(McPherronら、1997、上記)。
【0095】
(実施例2.精製組換えヒトGDF−8の特徴付け)
50μgの各々精製された成熟GDF−8および精製GDF−8プロペプチドを混合し、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)中に透析し、そして300×7.8mm BioSep S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)でクロマトグラフィーを行った。成熟GDF−8:プロペプチド複合体の分子量を、同じカラムでクロマトグラフィーを行った分子量標準(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を使用して、溶出時間から決定した。
【0096】
精製されたGDF−8を、精製成熟GDF−8と、中性pHでインキュベーションした場合、2つのタンパク質は、サイズ排除プロフィールによって示されるように、複合体であるようである。12.7分に溶出した第1のタンパク質ピークは、同じカラムでクロマトグラフィーを行った分子量標準(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)から、78kDaの推定分子量を有した。この複合体のサイズは、プロペプチドの2つのモノマーと会合する成熟GDF−8の1つのダイマーと最も一致する。
【0097】
この観察を確認するために、成熟GDF−8およびGDF−8プロペプチドの両方を含む調製物を、100mM 1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,Pierce)を伴うかまたは伴わないで、1時間、室温(RT)でインキュベートし、HClでpH2〜3に酸性化し、そしてトリシン(tricine)緩衝化10%アクリルアミドゲルを使用するSDS−PAGEのために、Micron−10 Amicon コンセントレーター(Millipore,Bedford,MA)を用いて濃縮した。ゲルのクーマシーブルー染色によって、タンパク質を可視化した。EDCの存在下において、75kDaの見かけの分子量を有する架橋複合体を観察した。
【0098】
GDF−8プロペプチドのDNAおよびアミノ酸配列は、McPherronおよびLee(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12457−12461に記載される。
【0099】
(実施例3:抗GDF−8抗体の産生)
GDF−8活性を阻害し得る抗体を開発するために、1群のGDF−8ノックアウトマウスを、2週間毎に、成熟GDF−8タンパク質(実施例1に記載されるように精製された)を、最初の2回の免疫についてフロイント完全アジュバントに混合して、その後、不完全フロイントアジュバントに混合して、免疫した。免疫期間を通して、血液をサンプリングし、そして循環する抗体の存在について試験した。9週目に、循環する抗体を有する動物を選択し、3日の連続した日の間、免疫し、そして屠殺した。脾臓を取り出し、そして細胞中にホモジナイズした。脾臓細胞を、確立された手順(OiおよびHerzenberg(1980)Selected Method in Celluar Immunology,W.J.Freeman Co.,San Francisco、CA、p351)によって、50%PEG1500を使用して、骨髄腫融合パートナー(株P3−x63−Ag8.653)に融合した。この融合細胞を、2×105細胞/ウェルの密度で、96ウェルマイクロタイタープレートにプレートした。24時間後、細胞を、HAT選択に供し(Littlefield(1964)Science,145:709)、任意の非融合および非産生的融合骨髄腫細胞を効果的に殺傷した。
【0100】
抗GDF−8抗体を分泌する、首尾良く融合されたハイブリドーマ細胞を、固相および溶液相ELISAによって同定した。成熟GDF−8タンパク質を、上記のように、CHO細胞から調製し、そしてポリスチレン上に(固相アッセイのため)コーティングするか、またはビオチン化(溶液ベースのアッセイのため)した。ActRIIBレセプターをポリスチレンプレート上にコーティングし、そしてビオチンGDF−8結合を、ハイブリドーマ上清の添加によって阻害する、中和アッセイをまた使用した。結果として、GDF−8抗体を発現するハイブリドーマが同定された。これらの陽性クローンを培養し、そしてさらなる研究のために増殖させた。増殖した場合、これらの培養物を保持し、そして細胞株を、限界希釈によってクローニングし、凍結保存した。
【0101】
これらの細胞培養物から、成熟GDF−8を特異的に認識するパネルの抗体を、開発した。抗体のアイソタイプを、マウス免疫グロブリンアイソタイプ決定キット(Zymed
Laboratories,San Francisco,CA)を使用して決定した。抗体クローンの1つ(JA−16と指定される)を、さらに研究した。
【0102】
(実施例4:JA−16結合特異性の特徴付け)
JA−16の結合特異性を決定するために、GDF−8タンパク質配列の一部に対応する合成ペプチドのパネルを作製した。図1は、この研究において使用されたGDF−8合成ペプチドを示す。偶数のペプチド(N2−N14)を、第1級アミン上でビオチン化した。ビオチン化ペプチドN2、N4、N6、N8、N10、N12、N14、および無関係なペプチドDAE−10を、製造業者のプロトコルに従って、1μg/mlで2時間、室温で、Reacti−BindTMStreptavidinコートしたポリスチレン96ウェルプレート(Pierce,Rockford,IL,カタログ番号15124)上でコーティングした。
【0103】
ブロッキング後、JA−16または無関係のモノクローナル抗体コントロールを、100nM、10nMおよび1nM(JA−16のみ)で、ELISAプレートに添加し、そして30分間インキュベートした。プレートを洗浄後、二次抗体(ヤギ抗マウスIgG(H+L)−HRP,Calbiochem,San Diego,CA,カタログ番号401215)を、1:1000の希釈で添加し、そして30分間室温でインキュベートした。プレートを4回洗浄し、そしてTMB基質を添加した(KPL,Gaithersburg,MD,カタログ番号50−76−04)。比色測定を、Molecular Devicesマイクロプレートリーダーで、450nmで示す。結果を図2に示す。JA−16は、ビオチン化N末端ペプチドN8(配列番号65)に強力に、そして特異的に結合する。
【0104】
成熟GDF−8およびBMP−11は、アミノ酸レベルにおいて90%相同である(図3)。これらの変化のうちの3つが、N8ペプチド内に存在する。GDF−8およびBMP−11に対するJA−16の特異性を比較するために、より短いペプチドを、それぞれ、GDF−8およびBMP−11に対して特異的なG1およびB1と指定した。G1とB1との間の差異は、下線で示した。
【0105】
【数2】
ペプチドG1およびB1を、製造業者のプロトコルに従って、PIERCE結合キット(カタログ番号77116ZZ)を使用して、BSAに結合させた。G1−BSAおよびB1−BSAを、4℃で一晩、0.2M炭酸ナトリウム緩衝液中、1μg/mlで、96ウェル平底アッセイプレート(Costar,NY,カタログ番号3590)にコーティングした。プレートを洗浄し、そしてPBS、1mg/ml BSA、0.05% Tweenとともに、1時間、室温でブロックした。JA−16(5nM)を連続的に希釈した(1:2)。希釈物を、ELISAプレートに添加し、そして30分間室温でインキュベートした。4回の洗浄後、二次抗体(ヤギ抗マウスIgG(H+L)−HRP,Calbiochem、カタログ番号401215)を、1:1000の希釈で添加し、そして30分間室温でインキュベートした。プレートを4回洗浄し、そしてTMB基質を展開した(KPL,カタログ番号50−76−04)。比色測定を、Molecular Devicesマイクロプレートリーダーで、450nmで行った。図4は、JA−16が、濃度依存性の様式でG1−BSAに結合するが、最も高い濃度でさえ、B1−BSAに結合しないことを示す。
【0106】
JA−16特異性に対してさらに研究するために、G1−BSAを、上記のようにコーティングしたが、このとき、JA−16を、5nMで、G1ペプチドまたはB1ペプチド、GDF−8、またはBMP−11のいずれかと、種々の濃度で、プレインキュベートした。結果を図5に示す。BMP−11特異的ペプチドB1は、JA−16がG1−BSAに結合することを阻害しないが、G1への結合を阻害する。GDF−8に対するIC50は、0.8μg/mlであるが、一方、BMP−11のIC50は、3.8μg/mlであり、JA−16が、BMP−11よりも5倍高い親和性を有するGDF−8を認識することを示す。
【0107】
(実施例5:JA−16エピトープのマッピング)
JA−16の正確なエピトープをマッピングするために、GDF−8配列の一部に対応する重複する13マーペプチド(配列番号17〜64、図6Aを参照のこと)を、スポット合成技術(Molinaら、(1996)Peptide Research,9:151−155;Frankら、(1992)、Tetrahedron,48:9217−9232)を使用して、セルロース紙上で直接的に合成した。このアレイにおいて、システイン残基を、システインの存在によって引き起こされる化学的複雑さを減少させるために、セリンで置換した。ポリエチレングリコールおよびFmoc保護アミノ酸で改変したセルロース膜を、Abimed(Lagenfeld,Germany)から購入した。β−アラニンスペーサーおよびペプチドを結合させることによって膜に規定されたアレイを、先に記載される(Molinaら、(1996)Peptide Research,9:151−155;Frankら、(1992)、Tetrahedron,48:9217−9232)ように、標準的なDIC(ジイソプロピルカルボジイミド)/HOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)結合化学を使用して、合成した。
【0108】
活性化アミノ酸を、Abimed ASP 222ロボットを使用してスポットした。洗浄および脱保護工程を手動で行い、そして最終合成サイクル後に、このペプチドをN末端アセチル化した。ペプチド合成に続いて、膜を、メタノール中で10分間、そしてブロッカー(TBST(0.1%(v/v)Tween20を用いた、Tris緩衝化生理食塩水)+1%(w/v)カゼイン)中で10分間、洗浄した。次いで、膜を、穏やかに振盪しながら、1時間、ブロッカー中で2.5μg/mlのJA−16とともにインキュベートした。ブロッカーで3回、10分間洗浄後、膜をHRP標識した二次抗体(ブロッカー中0.25μg/ml)とともに30分間、インキュベートした。次いで、膜を、3回、10分間、それぞれブロッカーとともに、そして2回、10分間、それぞれ、TBSTとともに洗浄した。結合した抗体を、SuperSignal West試薬(Pierce)およびデジタルカメラ(Alphalnnotech FluorImager)を使用して、視覚化した。結果を図6Bに示す。JA−16は、アレイの第1の4つのペプチド(配列番号17〜20)に結合し、これは、GDF−8のN末端上の18残基に対応する。
【0109】
JA−16エピトープをさらに特徴付けるために、ペプチドGly−Leu−Asp−Ser−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Ser(配列番号18)の欠失および置換の分析を、スポット合成を使用して実施した。置換分析において、このペプチドの各残基を、システインを除いて、20の天然のアミノ酸のそれぞれで個々に置換し、配列番号3、18、66〜104、106〜113、および115〜128を作製した。合成および結合アッセイを、上記のように実施した。結果は、図7に示される。4個のN末端アミノ酸および4個のC末端アミノ酸における置換は、十分に耐性であり、これは、これらのアミノ酸が、成熟GDF−8に対するするJA−16結合に必要ではなかったことを示した。しかし、このペプチドの中間セグメント、Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)では、セリン残基における少しの置換を除いて、変化が耐性でなく、これは、このペプチド配列が、JA−16結合に必要とされることを示唆する。さらに、配列Asp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)は、検出分析において結合が検出され得る最も小さなペプチドであった。従って、この結果は、JA−16が、GDF−8中の、エピトープAsp−Glu−His−Ser−Thr(配列番号3)を認識し、Asp、Glu、HisおよびThr残基(Asp−Glu−His−Xaa−Thr(配列番号2))が結合に重要であることを示す。
【0110】
(実施例6:インビボでのJA−16の特徴付け)
JA−16がGDF−8活性をインビトロで中和する能力を決定するために2つのアッセイを実施した。第1に、JA−16を、ActRIIBレセプターに対する成熟GDF−8タンパク質の結合を阻害するその能力について試験した。組換えActRIIB.Fcキメラ(R&D Systems,Minneapolis,MN,カタログ番号339−RB/CF)を、4℃で一晩、0.2M 炭酸ナトリウム緩衝液中で、1μg/mlで、96ウェル平底アッセイプレート(Costar,カタログ番号3590)上でコーティングした。次いで、プレートを、1mg/mlウシ血清アルブミンを用いてブロックし、そして標準的なELISA技術に従って、洗浄した。
【0111】
種々の濃度のビオチン化成熟GDF−8タンパク質(100μl)を、ブロッキングしたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、そして洗浄した。結合した成熟GDF−8タンパク質の量を、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP,BD PharMingen,San Diego,CA,カタログ番号13047E)、続いて、TMB(KPL,カタログ番号50−76−04)の添加によって検出した。比色測定を、Molecular Devicesマイクロプレートリーダーで、450nmで行った。結果を図8に示す。成熟GDF−8は、12ng/mlのED50を示した。
【0112】
同じプロトコルをまた、30分間、5ng/mlでビオチン化成熟GDF−8タンパク質とともに、JA−16抗体をプレインキュベートした後に実施した。無関係なモノクローナル抗体を、ネガティブコントロールとして含めた。図9は、JA−16が、約1μMの非常に弱いインビトロ中和活性を有することを示す。このインビトロのデータは、JA−16が、特に、あまり制御されないインビボの条件下で、活性GDF−8の非常に良好な中和物でないようであることを示唆する。
【0113】
第2のセットのアッセイにおいて、レポーター遺伝子アッセイを、活性なGDF−8タンパク質の生物学的活性をインビトロで評価するために実施した。このアッセイは、ルシフェラーゼに結合した、レポーターベクター、pGL3(CAGA)12を使用する。CAGA配列は、TGF−β誘導遺伝子、PAI−1のプロモーター内のTGF−β応答配列であることが以前に報告された。
【0114】
12CAGAボックスを含むレポーターベクターを、基礎的なレポータープラスミド、pGL3(Promega Corporation,Madision,WI,カタログ番号E1751)を使用して作製した。TATAボックスおよびアデノウイルス主要後期プロモーター由来の転写開始部位(−35/+10)を、BgIII部位とHindIII部位との間に挿入した。CAGAボックスAGCCAGACAの12個の反復を含むオリゴヌクレオチドをアニールし、そしてXhoI部位にクローニングした。ヒト横紋筋肉腫細胞株、A204(ATCC HTB−82)を、FuGENE 6トランスフェクション試薬(Roche Diagnostics,Indianapolis,MN,カタログ番号1 814 443)を使用して、pGL3(CAGA)12を、一過性トランスフェクトした。トランスフェクションに続いて、細胞を、16時間、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100μg/mlペニシリンおよび10%ウシ胎仔血清を補充したMcCoys 5A培地(Life Technologies,Rockville,MD,カタログ番号21500−079)中で、48ウェルプレート上で培養した。次いで、細胞を、37℃で6時間、グルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリン、および1mg/mlウシアルブミンを有するMcCoy’s 5A培地中の成熟GDF−8、BMP−11、またはアクチビンを用いて処理した。ルシフェラーゼを、Luciferase Assay System(Promega Corporation,Madison,WI,カタログ番号E1483)を使用して、処理した細胞中で定量化した。GDF−8は、最大で、レポーター構築物を10倍、活性化し、10ng/mlのGDF−8のED50を有した。BMP−11(これは、アミノ酸レベルで、GDF−8と90%同一である(Gamerら、(1999)Dev.Biol.,208(1):222−32;Nakashimaら、(1999)Mech.Dev.,80(2):185−9)、およびアクチビンは、類似の生物学的応答を誘発した。
【0115】
JA−16の中和活性は、A204細胞の添加の前に、30分間、成熟GDF−8タンパク質とともに、JA−16をプレインキュベートすることによって、決定された。無関係な抗体(モノクローナルコントロール)ならびにファージディスプレイ技術(Myo−19)を使用してscFvライブラリーから誘導されたヒトGDF−8抗体をまた、試験した。
【0116】
図10は、このアッセイにおいて同様に、JA−16が、約1μMのIC50で弱く中和するのに対して、Myo−19のIC50が、約100nMであることを示す。このインビトロのデータに基づいて、Myo−19抗体が、本明細書中で示されるように、インビボでJA−16(これは、そうではない)よりも、活性GDF−8タンパク質のより良い中和物であることが予期された。
【0117】
(実施例7:JA−16を用いたGDF−8の免疫沈降)
成熟GDF−8およびGDF−8複合体に対するJA−16の結合を評価するために、一連の免疫沈降研究を行った。
【0118】
最初に、JA−16がGDF−8潜伏複合体を免疫沈降し得るか否かを決定するために、GDF−8を発現するCHO細胞を、35S−メチオニンおよび35S−システインで放射標識した。GDF−8潜伏複合体を含むこれらの細胞由来の100μlの馴化培地を、1時間、4℃で、1mg/mlのJA−16とともにインキュベートした。プロテインAセファロースを、この混合物に添加し、次いで、これを、一晩4℃でインキュベートした。免疫沈降物を収集し、PBS/Triton−X100緩衝液で3回洗浄し、還元サンプル緩衝液中に再懸濁させ、そしてSDS−PAGEによって分析した。ゲルを一晩固定し、オートラジオグラフィーエンハンサー溶液を用いて増強し、乾燥し、そしてオートラジオグラムを行った。図18、レーン2は、JA−16が、GDF−8潜伏複合体および未処理GDF−8を免疫沈降し得ることを示す。
【0119】
第2に、JA−16がGDF−8とフォリスタチンとの間に形成される複合体を免疫沈降し得るか否かを決定するために、CHO細胞が発現するフォリスタチンを、35S−メチオニンおよび35S−システインで放射標識した。放射標識したフォリスタチンを含む100μlの馴化培地を、成熟GDF−8と混合して、GDF−8とフォリスタチンとの複合体を形成した。この混合物を、1mg/mlのJA−16とともに、1時間、4℃でインキュベートした。プロテインAセファロースをこの混合物に添加し、次いで、一晩4℃でインキュベートした。免疫沈降物を収集し、そして上記のように分析した。図18、レーン6は、JA−16が、GDF−8を複合体化した標識フォリスタチンを同時免疫沈降させ得ることを示す。
【0120】
第3に、JA−16が成熟GDF−8タンパク質を免疫沈降し得るか否かを調査するために、放射標識したGDF−8潜伏複合体を含むCHO細胞由来の馴化培地を酸活性化して、GDF−8プロペプチドおよび成熟GDF−8を解離させた(van Waardeら、(1997)Analytical Biochemistry,247,45−51を参照のこと)。次いで、この物質を、JA−16とともに、1時間、4℃でインキュベートした。プロトコールの残りを、上記のように実施した。図18、レーン3は、JA−16が、成熟GDF−8を免疫沈降し得ることを示す。
【0121】
この結果は、JA−16が、GDF−8潜伏複合体、GDF−8:フォリスタチン複合体、および成熟GDF−8を認識し得ることを示す。対照的に、Myo−19は、いずれのGDF−8複合体(図18、レーン4および7)にも結合し得ず、そして成熟GDF−8のみを免疫沈降し得る(図18、レーン5)。
【0122】
(実施例8:JA−16のインビボでの特徴付け)
抗体JA−16が成体マウスにおいて筋肉量を増加するか否かを決定するために、7週齢の雌性BALB/cマウスを用いてインビボ研究を実施した。マウスを秤量し、そして体重に関して、7または8匹の群に均一に分配した。PBS中のJA−16またはヘビ毒に対してアイソタイプの一致した抗体(コントロール)を、毎週2回、50mg/kgで腹腔的にマウスに注射した。この処置を4週間続けた。処置期間の前後に、動物をデキサスカン(dexascan)分析に供することによって、痩せたボディーマスの進行について、動物を評価した。筋肉量を、腓腹筋および四頭筋を切り出し、そして秤量することによって評価した。子宮周囲脂肪パッドもまた取り出し、そして秤量した。この研究の結果は、JA−16が、GDF−8活性をインビボで有意に阻害し、増加した筋肉量を生じたことを示した(図11)。
【0123】
抗体が、14週間、60mg/kg/週で腹腔的に投与される、より長い研究を実施した。これらのマウスに、研究の始めに、60mg/kgで腹腔的に、そして10mg/kgで静脈内的に、負荷した。この研究においてマウスは、雄性C57BLマウスであり、これは、アグーチ遺伝子座(a)において野生型であるか、またはその遺伝子座において、致死性の黄色変異(Ay)を有するかのいずれかであった。Ay変異は、成体発症肥満および糖尿病を引き起こし、これによって、本発明者らは、糖尿病の背景下での筋肉、過剰な脂肪および血液グルコースに対するJA−16の影響を決定し得た。全ボディーマスを、毎週、測定した(図12)。筋肉量を、腓腹筋および四頭筋を切り出し、そして秤量することによって評価した(図13)。精巣上体および鼡径部の脂肪パッドもまた取り出し、そして秤量した(図14)。この研究の12週目に、マウスを絶食させ、そして血液グルコースレベルを測定した(図15)。4週の研究とともに、この研究の結果は、JA−16が、インビボでGDF−8活性を阻害し、筋肉量の増加を引き起こすことを示す。さらに、この研究は、肥満マウスおよび糖尿病マウスにおいて、GDF−8の阻害が、改善した血中グルコースレベルをもたらすことを示す。
【0124】
JA−16のインビボ活性をまた、別のGDF−8抗体(Myo−19)のインビボ活性と比較した。C57B6/scidマウスに、本発明者らは、腹腔的に、4週間、ビヒクルコントロール、または60mg/kg負荷用量および60mg/kg/週のJA−16またはMyo−19を注射した。全ボディーマスを、毎週測定し、そして筋肉量を、腓腹筋および四頭筋を切り出し、そして秤量することによって評価した(図17)。JA−16での5週の処置は、筋肉量の増加をもたらしたが、Myo−19での処置は、筋肉量に影響しなかった。別の実施形態において、Myo−19処置は、10週および15週まで延長し、これらの時点の間、ボディーマスおよび筋肉量における増加は、見られなかった。
【0125】
従って、インビトロのデータが、JA−16がMyo−19抗体よりも弱い中和物であることを示唆するという事実にも関わらず、マウスの研究は、JA−16が、インビボでGDF−8活性を効果的に減少させるが、一方Myo−19は減少させないことを明らかに、しかし予想外に実証する。これらの結果は、JA−16が結合するGDF−8上の特定の部位が、インビボで安定な阻害性GDF−8:抗体複合体の形成を担うという点で、この部位が独特であることを示す。従って、実施例4において同定されるように、任意の抗体特異的結合部位が、JA−16と類似するかまたはそれより良いインビボの中和特性を有することが予期される。
【0126】
(実施例9:JA−16が、筋肉強度を増加する)
ヒトにおいて、筋肉サイズおよび強度は、毎年約1%減少する(これは、30代で開始する)。多くの老人について、筋肉量の減少は、有意に衰弱している。この状態は、サルコペニア(sarcopenia)、または年齢関連筋肉喪失として公知である。抗GDF−8処置がサルコペニアに有効であるか否かを決定するために、老齢のマウス(研究の開始時に19ヶ月齢であり、研究の最後に21ヶ月齢である)に、毎週一度、60mg/kgで8週間JA−16で処置した。同じ実験において、若いマウス(研究の開始時に2ヶ月齢であり、研究の最後に4ヶ月齢である)を、同じ用量のJA−16で処置した。研究の最後において、両方の群のマウスが、例えば、四頭筋の質量比較から分かるように、ビヒクル処置コントロールよりも多くの筋肉量を有した(図19A)。
【0127】
筋肉サイズの増加が、筋肉量の増加を導くことを確認するために、本発明者らは、Columbia Instrumentsから購入した計器(Columbus,Ohio;model 1027csx)を使用して、8週間JA−16で処置した老齢マウスおよび若いマウスを用いて、握り強度試験を実施した。マウスに格子を握り引っ張らせ、そして引っ張りのピーク強度を記録した。休憩なしに連続して、非訓練マウスを5回試験した。各試験についてのピーク力を記録し、そして5つの試験の結果を各マウスについて平均化した。7週の処置の後、若いJA−16処置したマウスについてのピーク力は、ビヒクル処置したマウスについてのピーク力よりも、10%高く、そして老齢JA−16処置したマウスは、13%高かった(図19B)。さらに、7週間の処置の前後に取られた長手軸の測定は、老齢のマウスの強度が、JA−16処置で17%(p、0.01)増加し、一方、ビヒクル処置した老齢マウスの強度は、有意に変化しなかった(3.3%、p=0.66)ことを示した。これらの結果は、GDF−8阻害が、若いマウスと老齢のマウスの両方における筋肉サイズおよび強度の増加を導くこと、およびそれがサルコペニアの有効な治療であり得ることを確証した。
【0128】
(実施例10:JA−16は、ジストロフィー性筋肉における筋肉量および強度を増加する)
GDF−8のインビボ阻害が筋ジストロフィーを改善する能力を、Duchenneの筋ジストロフィー(DMD)のmdxマウスモデルにおいて試験した。DMDモデルは、例えば、Torresら(Brain(1987)110,269−299)およびHoffmanら(Science(1987)238,347−350)によって、記載されている。
【0129】
4週齢の雄性mdxマウスを、3ヶ月間、JA−16(60mg/kg)、およびビヒクル単独(コントロール群)の毎週の腹腔的注射で処置した。筋肉量の増加を定量化するために、動物を屠殺し、足の長指伸筋(EDL)筋を切り出し、そして秤量した。図20Aで示されるように、処置群の動物由来のEDL筋は、コントロールよりも有意に重く秤量された。注目すべきことに、筋肉量の相対的増加は、図20Bに示されるように、体重の増加よりも大きかった。このデータと一致して、腓腹筋、前脛骨筋および四頭筋を含む他の筋肉群は、類似の重量の増加を有することを見出した。
【0130】
絶対的な力の生成または筋肉強度を定量化するために、本発明者らは、電場電極を使用して、筋肉を脱分極した際に生成される最大の等尺(isometric)力を記録した。図20Cおよび20Dは、JA−16処置したmdxマウスが、単収縮またはテタヌスのいずれかの間に有意により高い最大力を及ぼし得たことを示す。筋肉強度の増加は、筋肉量の増加に比例した(図20A、20C、および20D)。これらの結果は、筋ジストロフィーおよび関連する疾患の処置におけるJA−16のようなGDF−8阻害剤の予測される治療効力についての生理学的な証拠を提供する。
【0131】
mdx横隔膜において観測されたジストロフィー表現型の改善を独立して確認し、そして全体としてmdx骨格筋の病理学的状態における改善を確認するために、本発明者らは、これらのマウスから血清クレアチンキナーゼ(CK)レベルを分析した。非常に高いレベルのCKは、筋細胞膜の損傷に起因する、mdxマウスおよびヒトにおけるジストロフィン欠乏と一貫して注目されている(Bulfieldら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,1189−1192およびMatsudaら、(1995)J.Biochem.(Tokyo)118,959−64)。試行の開始時に、mdxマウスの処置群およびコントロール群の両方が、正常マウスと比較して血清CKの顕著な上昇を有した。しかし、インビボのミオスタチン遮断の3ヶ月後に、処置されたmdxマウスの血清CKレベルの劇的な減少が存在した(図4c)。筋肉退化の減少およびCKの減少と連関した繊維症は、インビボでのミオスタチン遮断によって産生されるmdx筋肉における機能的改善の組織学的および生化学的証拠を提供する。
【0132】
(実施例11:海綿質におけるGDF−8のインビボの役割)
増加した筋肉活性または増加した体重のいずれかに起因する増加した機械的負荷は、増加した骨量および骨密度に関連する。従って、GDF−8ノックアウト(KO)マウスを、変化した骨量および微細構造について評価した。成体マウスの最初の評価は、KOマウスの脊柱における骨密度が、野生型同腹子の骨密度よりも2倍近く高かったことを示した。この増加は、GDF−8KOマウスにおける増加した筋肉量のみに起因することが予測され得た場合よりも、かなり大きく超えた。
【0133】
高解像度マイクロトモグラフィー画像(μCT40、Scanco Medical,Switzerland)を使用して、成体GDF−8野生型(WT)マウスおよびKOマウスの、第5腰椎および遠位大腿における海綿質容量画分および微細構造、ならびに大腿中部骨幹における皮質性骨形状を評価した。9〜10ヶ月齢のGDF−8雄性および雌性KO、ならびに同腹子コントロール(各遺伝子型および性別について4匹のマウス)から試料を取った。椎体および大腿全体を、12μm解像度で、マイクロコンピュータートモグラフィーを使用して走査した。椎体の海綿質または遠位大腿骨幹端の海綿質(すなわち、第2海綿質(secondary spongiosa))を含む目的の領域を、半自動化輪郭(contouring)アルゴリズムを使用して同定した。以下のパラメーターを、直接3次元評価を使用して計算した:骨容量画分(%)、海綿質の厚み(μm)、分離(μm)および数(1/mm)。さらに、結合性密度(小柱網がどれだけ結合するかの指標)、ならびに大腿の中間骨幹領域の皮質骨領域(領域全体、骨領域、および皮質の厚みを含む)パラメーターを評価した。
【0134】
雄および雌両方のKOマウスは、WT同腹子と比較して、椎体中の海綿質密度を劇的に増大した(n=4、それぞれ、+93%および+70%、p<0.0001)。この増加した海綿質密度は、小柱厚さにおける14%の増加(p=0.03)、小柱数における38%の増加(p=0.0002)、および小柱分離における10%の減少(p=0.009)をともなった。構築および密度におけるこれらの変化の組み合わせた効果は、雄および雌のKOにおいて、これらのWT同腹子と比較して、結合性においてそれぞれ3.4倍および1.7倍の増加を生じた(p<0.0001)。さらに、海綿質の鉱質化のレベルのおおまかな測定は、小柱の平均鉱質含量が、コントロールに対しKOマウスにおいてより8%高かったことを示した(p<0.0001)。雌マウスよりも雄マウスでこの影響が大きいというヒントが存在するが、明確な結論をするにはサンプルサイズが小さすぎる。高解像度のマイクロコンピューター化された断層撮影法により評価された椎骨海綿体特徴を表1に示す。
【0135】
脊椎における観察とは対照的に、雄および雌のKOマウスは、WT同腹子より、遠位大腿におけるより低い海綿体密度を有していた(n=4、総遺伝子型効果に対してp=0.05)(表2)。骨密度におけるこの減分は、雄KOマウスにおけるより雌KOでより目立った。GDF−8KOマウスは、それらのWT同腹子と類似の小柱厚さを有していたが、同腹子コントロールと比較してより少ない小柱および増加した小柱分離を有していた。しかし、大腿軸中央における皮質厚さは、雄マウスGDF−8 KOおよびそれらの同腹子コントロールにおいてと同様であり、それは、GDF−8 KO雌マウス中でそれらのWT同腹子より約10%大きかった(n=4、p=0.04)(表3を参照のこと)。2つの遺伝子型の間で、皮質骨領域または骨領域フラクションにおける差異はなかった。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
(実施例12:筋肉および骨変性障害の処置)
例えば、阻害性抗体のような、GDF−8のインヒビターは、増加した筋肉量に向けた処置に、そしてまた骨粗鬆症の予防および処置のために有用である。さらに、GDF−8のインヒビターは、骨の同化効果が所望される、骨治癒(すなわち、骨折修復、脊椎固定など)の増強のようなその他の事例で有用であり得る。本発明の抗GDF−8抗体を用いて、疾患発症時の被験体または確立された筋肉疾患または骨変性疾患を有する被験体を処置する
骨障害、例えば、骨粗鬆症の処置に対する抗GDF−8抗体の効目は、骨粗鬆症の良好に確立されたモデルを用いて確認される。例えば、卵巣摘出されたマウスを用いて新たな骨粗鬆症薬物処置の効目が試験されている(Alexanderら(2001)J.Bone Min.Res.16:1665〜1673;およびAndersonら(2001)J.Endocrinol.170:529〜537)。ヒトと同様に、これらのげっ歯類は、卵巣摘出術の後に、骨、特に癌の骨の迅速な損失を示す。成果の評価は、骨鉱質密度、血清および尿中の骨代謝回転の生化学的マーカー、骨強度、および組織学/組織形態学に基づく。
【0139】
1つの研究では、正常および/または免疫寛容雌マウスが、12〜16週令で卵巣摘出され、そして4〜6週の間骨を損失させる。この骨損失期間の後、JA−16のような抗GDF−8抗体(IP注射)またはビヒクルでの処置が1〜6ヶ月の間行われる。この処置プロトコールは、異なる用量および処置レジメンの試験で変動し得る(例えば、毎日、毎週、または2週間毎の注射)。非処置卵巣摘出マウス(またはラット)は、インタクト(すなわち、非卵巣摘出)の年令が一致するマウスに対し、約10〜30%の骨密度を損失し得ることが予期される。抗GDF−8抗体で処置したマウスは、偽薬を受けたようなマウスより10〜50%大きい骨量および骨密度を有し、そしてさらに骨密度におけるこの増加は、特に、皮質骨と比較して癌の骨のより大きな比率をもつ領域において、増加した骨強度と関連することが予期される。
【0140】
別の研究の目的は、JA−16のような、抗GDF−8抗体が、エストロゲン欠損にともなう、骨量、微小構築および強度の減少を防ぐことで有効であることを示すことである。従って、この研究は、抗GDF−8抗体が、骨損失期間後ではなく、卵巣摘出術の直後に開始される処置を除いて、上記のデザインと同様のデザインを有する。この抗体で処置したマウスは、ビヒクルで処置したマウスより卵巣摘出術後に有意により少ない骨量を損失することが予期される。
【0141】
GDF−8に対する阻害抗体はまた、この疾患の重篤度および/または症状を予防および/または低減するために用いられる。抗GDF−8抗体は、1日に一度の頻度、および1月に一度の頻度で皮下注射として投与されることが予期される。処置持続期間は、1月〜数年の範囲であり得る。
【0142】
ヒトにおける抗GDF−8の臨床的効目を試験するために、低骨量の閉経後の女性を、骨密度試験により同定し、そしてランダムに処置群に分けた。処置群は、偽薬群、および抗体を受ける1〜3群(異なる用量)を含む。個体は、将来に向かって1〜3年間追従されて、骨代謝回転の生化学的マーカーにおける変化、骨鉱質密度の変化、および虚弱骨折の発症が評価される。処置を受ける個体は、近位大腿骨および腰椎脊柱において、ベースラインに対し2〜30%の骨鉱質密度における増加を示し、そして虚弱骨折の減少した発症率を有することが予期される。骨形成の生化学的マーカーが増加することが予期される。
【0143】
これら抗体は、単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与される。単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与されるとき、用量は、症状の重篤度および疾患の進行に依存して、約1μg/kgと20mg/kgとの間であり得る。適切な効率的用量は、処置する臨床医により以下の範囲:1μg/kgと20mg/kgとの間、1μg/kgと10mg/kgとの間、1μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと100μg/kgとの間、100μg/kgと1mg/kgとの間、および500μg/kgと1mg/kgとの間で選択される。例示の処置レジメンおよび結果は、表4中に要約される。
【0144】
【表4】
(実施例13:代謝障害の処置)
例えば、阻害抗体のようなGFD−8のインヒビターは、II型糖尿病、損傷したグルコース耐性、代謝症候群(例えば、X症候群)、外傷(例えば、火傷)により誘導されたインシュリン耐性、および脂肪組織障害(例えば、肥満)のような代謝障害の処置に有用である。本発明の抗GDF−8抗体は、疾患発症時の被験体または確立された代謝障害を有する被験体を処置するために用いられる。
【0145】
代謝障害(例えば、II型糖尿病および/または肥満)の処置のための抗GDF−8抗体の効目は、肥満、インシュリン耐性およびII型糖尿病の良好に確立されたマウスモデルを用いて確認され、これには、ob/ob、db/db、および致死的黄色突然変異を保持する株が含まれる。インシュリン耐性はまた、C57BL/6Jを含むマウスの特定の株の高脂肪または高カロリー摂取により誘導され得る。ヒトと同様に、これらのげっ歯類は、インシュリン耐性、高インスリン血症、異常脂血症、および高血糖症を生じるグルコース恒常性の悪化を発症する。結果の評価は、グルコース、インシュリン、および脂質の血清測定に基づく。改善されたインシュリン感受性は、インシュリン耐性試験およびグルコース耐性試験により決定され得る。より高感度の技法は、血糖症コントロールおよびインシュリン感受性における改善を評価するためのオイグリセミック−高インスリンクランプの使用を含む。さらに、このクランプ技法は、改善された血糖症コントロール中の、主要なグルコース処理組織(例えば、筋肉、脂肪、および肝臓)の役割の定量的評価を可能にする。
【0146】
1つの研究では、JA−16のような抗GDF−8抗体(IP注射)またはビヒクルでの処置は、1週間〜6ヶ月の間実施される。この処置プロトコールは、異なる用量および処置レジメンの試験で変動し得る(例えば、毎日、毎週、または2週間毎の注射)。抗GDF−8抗体で処置したマウスは、偽薬処置を受けたマウスと比較して、より大きなグルコース摂取、増加した解糖およびグリコーゲン合成、血清中のより少ない脂肪酸およびトリグリセリドを有することが予期される。
【0147】
GDF−8に対する阻害抗体はまた、疾患の重篤度および/または症状を予防および/または低減するために用いられる。抗GDF−8抗体は、1日に一度の頻度、および1ヶ月に一度の頻度で皮下注射として投与されることが予期される。処置持続期間は1月〜数年の範囲であり得る。
【0148】
ヒトにおける抗GDF−8の臨床的効目を試験するために、II型糖尿病に罹患したか、またはそのリスクにある患者が同定され、そして処置群にランダム化される。処置群は、偽薬群および抗体を受ける1〜3群(異なる用量)を含む。個体は、将来に向かって1月〜3年間追従されて、グルコース代謝における変化が評価される。処置を受ける個体は、改善を示すことが予期される。
【0149】
これら抗体は、単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与される。単一の活性化合物として、あるいは別の化合物または組成物と組み合わせて投与されるとき、用量は、症状の重篤度および疾患の進行に依存して、約1μg/kgと20mg/kgとの間であり得る。適切な効率的用量は、処置する臨床医により以下の範囲:1μg/kgと20mg/kgとの間、1μg/kgと10mg/kgとの間、1μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと1mg/kgとの間、10μg/kgと100μg/kgとの間、100μg/kgと1mg/kgとの間、および500μg/kgと1mg/kgとの間で選択される。例示の処置レジメンと結果は、表5中に要約される。
【0150】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、JA−16の結合特異性を特徴付けるために使用されるGDF−8合成ペプチド(配列番号11〜13、65、105、114、および129、全て配列番号14に由来する)を示す。下線を付されたアミノ酸は、ネイティブなシステインが、セリンに置換されている位置を示す。
【図2】図2は、JA−16のGDF−8合成ペプチドへの結合を示す。
【図3】図3は、成熟GDF−8(配列番号15)とBMP−11(配列番号16)とのアミノ酸配列の違いを示す。
【図4】図4は、JA−16の、ウシ血清アルブミン(BSA)に結合体化されたG1ペプチド(配列番号10、GDF−8に由来するペプチド)に対する結合特性とBSAに結合体化されたB1ペプチド(配列番号9、BMP−11に由来するペプチド)に対する結合特性の比較を示す。
【図5】図5は、JA−16がG1,B1、GDF−8、またはBMP−11とプレインキュベートされた後の、JA−16のG1−BSAに対する結合特性の比較を示す。
【図6A】図6Aは、GDF−8に由来する重複13マー合成ペプチド配列を使用する、JA−16結合のマッピング研究を示す。
【図6B】図6Bは、GDF−8に由来する重複13マー合成ペプチド配列を使用する、JA−16結合のマッピング研究を示す。
【図7A】図7Aは、スポット合成を使用する、GDF−8に由来するJA−16エピトープ領域(Gly−Leu−Asp−Ser−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Ser(配列番号18))の欠失分析および置換分析の結果を示す。
【図7B】図7Bは、スポット合成を使用する、GDF−8に由来するJA−16エピトープ領域(Gly−Leu−Asp−Ser−Asp−Glu−His−Ser−Thr−Glu−Ser−Arg−Ser(配列番号18))の欠失分析および置換分析の結果を示す。
【図8】図8は、ビオチン化GDF−8のActRIIBレセプターへの結合を示す。
【図9A】図9Aは、JA−16の存在下および非存在下での、ActRIIBレセプターに対するビオチン化GDF−8結合の阻害を示す。
【図9B】図9Bは、JA−16の存在下および非存在下での、ActRIIBレセプターに対するビオチン化GDF−8結合の阻害を示す。
【図10】図10は、インビトロでの、GDF−8の活性に対するJA−16の中和効果を評価するレポーター遺伝子アッセイを示す。
【図11】図11は、4週間の研究の間の、マウスにおけるJA−16のインビボ効果を示す。7週齢の雌性BALB/cマウスを、1週間に2回の50mg/kgでの腹腔内注射によって、JA−16で4週間処置した。左のグラフは、デキサスキャン(dexascan)(二重エネルギーX線)分析によって測定される処置期の間の赤身量および脂肪量の変化を示す。右のグラフは、解剖された組織の量を示す。スチューデント検定に対する統計的に有意な差異(p<0.01)を、アステリスクで示す。
【図12】図12は、14週間の研究の間の、マウスの全体重に対するJA−16のインビボ効果を示す。本研究において使用される雌性C57BLマウスは、アグーチ遺伝子坐(a)での野生型またはその位置での致死黄色突然変異(Ay)を有するかのいずれかであった。Ay変異は、成体に肥満および糖尿病を発生させる。若い成体マウスを、60mg/kgのJA−16またはコントロール抗体の一週間毎の腹腔内注射で処置した。さらに、処置期間の最初において、マウスに、60mg/kgの抗体を腹腔内に与え、10mg/kgで同じ抗体を静脈的に与えた。これらのグラフは、各群のマウスについての一週間ごとの体重を示す。エラーバーは、各データ点に対する平均の標準誤差を示す。
【図13】図13は、14週間研究の間、マウスの全筋肉量に対するJA−16のインビボ効果を示す。研究の最後において、筋肉を切開し、秤量した。これらのグラフは、各群のマウスに対する平均筋肉量を示す。スチューデント検定に対する統計的に有意な差異(p<0.01)を、アステリスクで示す。
【図14】図14は、14週間研究の間、マウスの全脂肪量に対するJA−16のインビボ効果を示す。研究の最後において、脂肪球を切開し、秤量した。これらのグラフは、各群のマウスに対する平均脂肪球量を示す。
【図15】図15は、14週間研究の間、マウスの血糖値に対するJA−16のインビボ効果を示す。処置の12週間後、C57BL−Al/aマウスを、一晩絶食し、これらの血糖を測定した。
【図16】図16は、JA−16重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。相補性決定領域(CDR)に下線を付す。対応する核酸配列を、配列番号6に提供する。
【図17】図17は、Myo−19およびJA−16のインビボ比較を示す。7週齢の雌性C57B6/重症複合型免疫不全マウスを、腹腔内注射によって、JA−16、Myo−19、またはビヒクルで5週間処置した。研究の最後において、筋肉を切開し、秤量した。これらのグラフは、各群のマウスに対する平均筋肉量を示す。スチューデントt検定に対する統計的に有意な差異(p<0.01)を、アステリスクで示す。
【図18】図18は、JA−16およびMyo−19でのGDF−8の免疫沈降からの結果を示す。
【図19A】図19Aは、8週間のBALB/c雌性マウスにおけるJA−16処置の結果を示す。マウスは、研究の最後には、21月齢または4月齢であった。研究の最後のJA−16処理された切開四頭筋の量およびビヒクル処理された切開四頭筋の量。各バーまたはデータ点は、示された群についての平均値±標準誤差を示し;(**)は、スチューデントt検定に対するp<0.01の、JA−16群のビヒクル群に対する比較を示し;各群についてn=8である。
【図19B】図19Bは、8週間のBALB/c雌性マウスにおけるJA−16処置の結果を示す。マウスは、研究の最後には、21月齢または4月齢であった。処置7週間後のJA−16処置マウスおよびビヒクル処置マウスに対するグリップ試験によって決定された前肢強度。各バーまたはデータ点は、示された群についての平均値±標準誤差を示し;(**)は、スチューデントt検定に対するp<0.01の、JA−16群のビヒクル群に対する比較を示し;各群についてn=8である。
【図20A】図20Aは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、mdxコントロールに比べて有意に増加したEDL重量を有した(19.72±0.50mg対14.63±0.69mg;n=12;p<0.0001)。
【図20B】図20Bは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、コントロールに比べて有意に増加した筋肉量 対 体重比(EDL重量/体重)を有した(0.6±0.02mg対0.5±0.02mg;n=12;p<0.014)。
【図20C】図20Cは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、等尺単収縮の間、コントロールに比べて有意により大きな力を発生した(177.32±8.37mg対132.38±12.45mN;n=12;p<0.03)。
【図20D】図20Dは、mdxマウスにおけるJA−16処置の結果を示す。JA−16処置マウスは、等尺テタヌス性攣縮の間、コントロールに比べて有意により大きな力を発生した(491.23±16.34mN対370.74±19.21mN;n=12;p<0.003)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される単離されたモノクローナル抗体。
【請求項1】
本明細書に記載される単離されたモノクローナル抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【公開番号】特開2009−67798(P2009−67798A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263289(P2008−263289)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【分割の表示】特願2003−530820(P2003−530820)の分割
【原出願日】平成14年9月26日(2002.9.26)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【分割の表示】特願2003−530820(P2003−530820)の分割
【原出願日】平成14年9月26日(2002.9.26)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
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