GPS信号発生装置及び中継システム
【課題】端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にする。
【解決手段】GPS衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信部11と、自装置の位置に関する特定地点の位置情報を保持する位置情報記憶部15と、受信したGPS信号の送信タイミングを位置情報に基づいて調整し、GPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ擬似GPS信号を生成する擬似GPS信号生成部18とを備える。擬似GPS信号生成部18は、航法メッセージタイミング生成部17で自装置の位置情報と受信GPS信号の航法メッセージに基づき生成されるタイミングにより、擬似GPS信号の送信タイミングを決定し、受信GPS信号と同等の内容でタイミングが調整された擬似GPS信号を生成する。
【解決手段】GPS衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信部11と、自装置の位置に関する特定地点の位置情報を保持する位置情報記憶部15と、受信したGPS信号の送信タイミングを位置情報に基づいて調整し、GPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ擬似GPS信号を生成する擬似GPS信号生成部18とを備える。擬似GPS信号生成部18は、航法メッセージタイミング生成部17で自装置の位置情報と受信GPS信号の航法メッセージに基づき生成されるタイミングにより、擬似GPS信号の送信タイミングを決定し、受信GPS信号と同等の内容でタイミングが調整された擬似GPS信号を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を屋内等で受信可能とするGPS信号発生装置及び中継システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話端末のような携帯端末においては、GPSによる位置検出機能を搭載しているものが多い。また、日本国内では、2007年4月以降に発売される3G携帯電話端末には、この位置検出機能を実現するGPSモジュールの内蔵が原則として義務付けられている。
【0003】
GPSによる位置検出機能は、システムを構成している複数の衛星(GPS衛星と呼ばれる)からそれぞれ到来する複数の電波を受信して、これらの電波に含まれている複数のGPS信号に基づいて電波受信点の位置、すなわちユーザ位置の緯度、経度、高さを計算により特定するものである。
【0004】
このような位置検出機能は、一般的には端末のユーザが屋外を歩行する場合や自動車等の乗り物を利用して移動する場合のナビゲーションに利用される。また、他の用途として、例えば端末のユーザが何らかの犯罪に巻き込まれた場合などに、端末の位置情報を通報してユーザの現在位置の特定などに利用することも想定されている。しかし、屋内、特に鉄筋が埋め込まれた建物や鉄骨造りの建物の内部のように、金属で囲まれている空間では、もともと微弱なGPS衛星からの電波が更に大きく減衰するため、非常に受信しにくい状態になるのは避けられない。携帯端末においては、ビルなどの屋内や地下、高架下等のGPS衛星からの電波を受信しにくい環境であっても、位置検出を可能にすることが望まれている。特に、端末の位置情報によってユーザの現在位置を特定したい場合などには、受信環境によらず位置検出ができることは重要である。
【0005】
屋内における位置検出を可能にするための従来技術としては、例えば特許文献1及び特許文献2が知られている。
【0006】
特許文献1においては、建物の屋外に設置したGPSアンテナが受信したGPS信号をケーブルで屋内に引き込み、このGPS信号を屋内に設置したGPS発信器によってそのまま電波として再輻射することが開示されている。この特許文献1の構成では、GPSモジュールを搭載した携帯電話端末が屋内に存在する場合には、この携帯電話端末がGPS衛星から送出される電波を直接受信することは困難であるが、屋内にあるGPS発信器からの電波を受信することにより、位置検出に必要なGPS信号を携帯電話端末が取得でき、屋内でも位置の特定が可能になる。
【0007】
特許文献2においては、GPS衛星から送出されるGPS信号と同じメッセージ構造を有し、GPS信号に含まれる衛星軌道データ(航法メッセージ)の代わりに送信機設置場所の位置データを含む疑似GPS信号を電波として送信する送信機を設けることが開示されている。この特許文献2の構成では、GPS衛星からの電波を受信できない屋内であっても、疑似GPS信号の送信機からの電波を受信できる場所であれば、位置の検出が可能になる。
【特許文献1】特開2005−244625号公報
【特許文献2】特開2006−201151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術においては、屋内に設置されるGPS発信器を経由してGPS衛星からのGPS信号を携帯電話端末が受信する場合には、携帯電話端末が検出する位置は、GPS衛星からの電波を受信する屋外のGPSアンテナの位置になる。従って、屋外のGPSアンテナから大きく離れた位置の屋内で携帯電話端末を使用している場合には、検出位置に大きな測定誤差が発生する。
【0009】
また、屋外のGPSアンテナで受信したGPS信号を長い同軸ケーブル等を用いて屋内の様々な箇所に導くような場合には、反射等の影響によってマルチパスが発生する可能性がある。この場合、マルチパスの影響を受けたGPS信号がそのまま屋内のGPS発信器から再輻射されることになるので、携帯電話端末における位置検出の際にマルチパスの影響が現れて位置検出誤差が発生する可能性がある。
【0010】
また、特許文献2の技術においては、屋内等に設置される送信機から送信される疑似GPS信号は、GPS衛星が送信するGPS信号とは情報の形式が異なっている。そのため、GPS衛星から送信されるGPS信号を処理することを想定して作られている現在の携帯電話端末等に搭載されている位置検出機能では、送信機から送信される疑似GPS信号を処理することができない。つまり、GPS信号を受信する回路のハードウェアをそのまま利用できる場合であっても、信号処理の内容、すなわち信号処理用のソフトウェアを疑似GPS信号に含まれている情報の形式に合わせて変更しない限り、この疑似GPS信号から位置を検出することはできない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできるGPS信号発生装置及び中継システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信部と、自装置の位置に関する特定地点の位置情報を保持する位置情報保持部と、前記受信したGPS信号の送信タイミングを前記位置情報に基づいて調整した信号であり、前記GPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ擬似GPS信号を生成する擬似GPS信号生成部と、を備えるGPS信号発生装置を提供する。
これにより、当該GPS信号発生装置の位置に関する位置情報に基づいて送信タイミングを調整した擬似GPS信号が生成される。ここで、位置情報としては、少なくとも緯度と経度を含み、さらに高さを含む情報としてもよい。GPS受信機を有する端末は、擬似GPS信号を受信することによって、衛星からのGPS信号を直接受信した場合と同様に現在位置の測位が可能となる。このため、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることができる。
【0013】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記GPS信号受信部は、少なくとも4つの前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号生成部は、前記4つの衛星の位置情報をXn、Yn、Zn(nは1〜4の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、Uz、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2))/c+CB
ΔT4=(√((X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するものを含む。
これにより、当該GPS信号発生装置の位置に関する緯度、経度、高さを含む位置情報に基づいて算出した時間差により、擬似GPS信号の送信タイミングを決定して生成することができ、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても、擬似GPS信号によって精度良く緯度、経度、高さの位置検出が可能になる。
【0014】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記GPS信号受信部は、少なくとも3つの前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号生成部は、前記3つの衛星の位置情報をXn、Yn(nは1〜3の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するものを含む。
これにより、当該GPS信号発生装置の位置に関する緯度、経度を含む位置情報に基づいて算出した時間差により、擬似GPS信号の送信タイミングを決定して生成することができ、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても、擬似GPS信号によって精度良く緯度、経度の位置検出が可能になる。
【0015】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記GPS信号受信部は、前記衛星からC/A(Coarse and Acquisition)コードによって符号化された航法メッセージを含むGPS信号を受信して前記GPS信号に適合するC/Aコードを判別し、前記擬似GPS信号生成部は、前記判別したC/Aコードと同じC/Aコードが割り当てられた擬似GPS信号を生成するものを含む。
これにより、衛星からのGPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ、GPS信号と同等に扱える擬似GPS信号を生成可能である。
【0016】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記擬似GPS信号を電波により送信する送信部と、所定位置で前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号と前記GPS信号との干渉を検出する干渉検出用GPS受信部とを備え、前記送信部は、前記干渉検出用GPS受信部で受信されたGPS信号の受信強度に応じて、前記擬似GPS信号の送信出力を調整するものを含む。
これにより、例えば擬似GPS信号の送信範囲のエリアの境界近傍など、所定位置での衛星からのGPS信号の受信強度に応じて、擬似GPS信号の送信出力を調整することで、擬似GPS信号とGPS信号との干渉を抑制することが可能である。
【0017】
また、本発明は、上記いずれかのGPS信号発生装置と、前記衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、を備える中継システムを提供する。
これにより、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできるGPS信号の中継システムを実現可能になる。
【0018】
また、本発明は、受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、移動体通信の基地局からの通信信号を受信する通信用受信アンテナと、前記受信したGPS信号の周波数を300MHz以下に変換する周波数変換部と、前記通信用受信アンテナ及び前記GPSアンテナとケーブルを介して接続され、前記受信した通信信号と前記周波数変換後のGPS信号とを再送信する中継局親機と、上記いずれかのGPS信号発生装置と、前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、前記通信信号を所定の領域に送出する通信中継用アンテナとを有する中継局子機と、を備える中継システムを提供する。
これにより、移動体通信用の中継システムにGPS信号の中継システムを含めた中継システムを構成でき、屋内等の電波が受信しにくい環境にあっても、携帯電話等の端末において移動体通信とGPSによる位置検出とを良好な状態で行うことが可能になる。この場合、ケーブル等を共用できるので、構成の簡略化、コスト削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできるGPS信号発生装置及び中継システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明の実施の形態において前提となる技術として、GPSによる測位システムに関する一般的な技術について説明する。
【0021】
(GPSによる測位システム)
GPS(Global Positioning System;全(汎)地球測位システム)とは、米軍が運用している衛星航法システムのことであり、18〜24機のMEO衛星で構成されている。また、このGPSを含むシステムとして、GNSS(Global Navigation Satellite System;全世界的航法衛星システム)がある。GNSSは、ICAO(国際民間航空機関)が定義した衛星航法システムのことであり、民間航空航法に使用可能な性能(精度・信頼性)を持つ。具体的には、GPS/GLONASS+補強システムであり、一般には、GPS/GLONASS/Galileo/各種補強システムの総称である。
【0022】
GPS衛星から送出されるGPS信号には互いに周波数が異なる3波の信号(L1:1575.42MHz、L2:1227.60MHz、L3:1176.45MHz)があるが、一般的に使用されているのはL1のみである。複数のGPS衛星がそれぞれ送出するGPS信号は、CDMA(Code Division Multiple Access :符号分割多元接続)により同じ周波数に多重された状態で送出される。衛星数が24個の場合、L1の周波数に信号が24個多重されていることになる。GPS信号には、衛星自身の軌道情報や時計の補正情報などのデータ(エフェメリス:Ephemeris)や全衛星の概略の軌道情報(アルマナック:Almanac)などからなる航法メッセージ(Satellite Message)が含まれている。また、L1波にはC/A(Coarse and Acquisition)コードで符号化された信号と、P(Precision)コードで符号化された信号の2種類の信号が含まれている。L2波にはPコードで符号化された信号が含まれている。C/Aコードは、その乱数パターンが公表され一般に利用可能になっている。
【0023】
図10はGPS衛星と受信点との位置関係及びGPS信号のタイミングの例を示す模式図である。ここでは、図10(a)のように、位置を測定すべき受信点において、GPS受信機で4つのGPS衛星からの電波をそれぞれ受信できる場合を想定する。この場合、4つのGPS衛星が同時にGPS信号を送出した場合であっても、各GPS衛星の位置が互いに異なるため、受信点で各GPS信号を受信する時刻には時間差が生じる。
【0024】
図10(b)のように、1番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT1だけ遅延し、2番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT2だけ遅延し、3番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT3だけ遅延し、4番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT4だけ遅延しているものとする。この場合、受信点と各GPS衛星との距離(疑似距離)PR1、PR2、PR3、PR4は、それぞれ次式により求められる。
PR1=ΔT1×c
PR2=ΔT2×c
PR3=ΔT3×c
PR4=ΔT4×c ……(1)
ここで、c:光速に対応する定数
【0025】
しかし、このようにして求められる疑似距離には衛星とユーザ(受信点)の間の実際の距離の他に、衛星のクロックバイアス、大気による歪み、相対論的効果、レシーバ雑音、レシーバのクロックバイアスなどの誤差が含まれている。そこで、位置と時刻を決定するプロセスに入る前に、上記疑似距離に決定論的な補正を施して誤差を補償する。
【0026】
一方、各GPS衛星から送出されるGPS信号の航法メッセージには、各衛星の位置を表す情報も含まれている。そこで、
X1:1番目の衛星の位置に関するX座標(緯度)
Y1:1番目の衛星の位置に関するY座標(経度)
Z1:1番目の衛星の位置に関するZ座標(高さ)
X2:2番目の衛星の位置に関するX座標
Y2:2番目の衛星の位置に関するY座標
Z2:2番目の衛星の位置に関するZ座標
X3:3番目の衛星の位置に関するX座標
Y3:3番目の衛星の位置に関するY座標
Z3:3番目の衛星の位置に関するZ座標
X4:4番目の衛星の位置に関するX座標
Y4:4番目の衛星の位置に関するY座標
Z4:4番目の衛星の位置に関するZ座標
Ux:ユーザ位置に関するX座標
Uy:ユーザ位置に関するY座標
Uz:ユーザ位置に関するZ座標
CB:GPSレシーバのクロックバイアス
c:光速に対応する定数
と定義すれば、次式に示す4つの距離方程式による連立方程式が成立する。
(X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2=(PR1−CB×c)2
(X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2=(PR2−CB×c)2
(X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2=(PR3−CB×c)2
(X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2=(PR4−CB×c)2
……(2)
【0027】
従って、上記の連立方程式の各式のPR1〜PR4において検出されたGPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を当てはめて連立方程式を解くことにより、未知数であるユーザ位置の座標(Ux、Uy、Uz)を算出することができる。
【0028】
図11は衛星から送出されるGPS信号の構成を示す波形図である。この図11は、実際にGPS衛星から送出されるGPS信号(L1、C/A)を示したものである。このGPS信号は、周波数が1575.42MHzのL1搬送波を1.023McpsのPNコード(疑似雑音符号)で変調し、このPNコードを50bpsのビットレートの航法メッセージで変調している。
【0029】
図12に示すように、受信機においては、衛星から送出されたGPS信号(PNコード)を遅延した状態で受信する。図12は端末が受信したGPS信号の遅延時間を検出するための一般的な動作を示す模式図である。GPS信号の遅延時間を正しく測定するために、受信機において受信波と同じ符号のレプリカ信号を生成し、受信波とレプリカ信号との相関を求めて、時間差τが0となるようにレプリカ信号のタイミングを調整し、受信波のタイミングを検出する。
【0030】
一方、各GPS衛星からは、図13に示すようなGPS信号の航法メッセージが送出される。図13は衛星から送出されるGPS信号に含まれる航法メッセージの構成を示す模式図である。各GPS衛星からは、それぞれが300ビットの情報で構成される5つのサブフレームを合わせた1フレームで1500ビットの情報からなる航法メッセージが送出される。この場合、ビットレートが50bpsなので、1フレームの航法メッセージを受信するのに30秒間を要することになる。また、サブフレーム#1〜#3については、送信している衛星自身のクロック・軌道情報(エフェメリス情報)を含み、30秒毎に同じ内容が繰り返される。また、サブフレーム#4、#5については、他の衛星のおおまかなクロック・軌道情報(アルマナック情報)や、電離層補正情報などを含み、全体では25ページ(フレーム)の情報が各フレームで順番に送信される。従って、全衛星の情報を得るためには12.5分の時間が必要になる。
【0031】
複数のGPS衛星から送出されるGPS信号を受信して受信点の位置を測定するためには、上記のように様々な情報が必要になり、これらの情報を受信するのに比較的長い時間(初期位置算出時間(TTFF))が必要になる。ここで、以前に受信した情報を不揮発性メモリに記憶しておいてその情報を利用できる場合には、比較的短い時間で位置を測定することが可能である。一般的なGPS受信機においては、測位時間を短縮するため、以下に示す3つの状態を持っている。
【0032】
1.コールドスタート:不揮発性メモリに何の情報もない場合。測距信号の捕捉と航法メッセージの取得に数分程度かかる。
2.ウォームスタート:不揮発性メモリにアルマナック情報のみある場合。測距信号を捕捉後、航法メッセージの取得に30〜60秒かかる。
3.ホットスタート:不揮発性メモリ内のエフェメリス情報が有効な場合。数秒程度で測距信号を捕捉、位置を算出できる。
【0033】
(実施の形態)
次に、本発明のGPS信号発生装置及び中継システムに係る実施の形態を説明する。
【0034】
図1は本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの構成例を示すブロック図である。本実施の形態のGPS信号発生装置及び中継システムは、ビル等の屋内に配設され、GPS衛星からの電波を受信しにくい位置にある端末に対してGPS信号を中継するものである。この際、GPS信号発生装置は、中継用のGPS信号として、GPS衛星から送信されるGPSと同一の形式で、設置位置に合わせて信号の遅延時間を調整した擬似GPS信号を生成して送信する。
【0035】
本実施の形態の中継システムは、複数のGPS信号発生装置10−1、10−2、10−3が配設されて構成される。以下ではこれら複数の装置を代表してGPS信号発生装置10と記載することもある。このGPS信号発生装置10−1、10−2、10−3は、屋内の互いに異なる箇所に設置してあり、共通のGPS信号受信用のGPSアンテナ101と同軸ケーブル33を介して接続される。そして、GPS信号発生装置10−1、10−2、10−3は、それぞれGPS中継用アンテナとして機能する送信用のアンテナ102−1、102−2、102−3を備え、GPSアンテナ101で受信した衛星からのGPS信号を基に自装置で生成した擬似GPS信号をそれぞれの位置から送信する。
【0036】
GPS信号発生装置10−1は、アンテナ102−1から領域A1の範囲に届くように指向性を定めて、疑似GPS信号の電波を輻射する。同様に、GPS信号発生装置10−2はアンテナ102−2から領域A2の範囲に届くように疑似GPS信号の電波を輻射し、GPS信号発生装置10−3はアンテナ102−3から領域A3の範囲に届くように疑似GPS信号の電波を輻射する。ここで、各領域A1、A2、A3は互いに範囲が重ならないように位置及び大きさを予め決定してある。
【0037】
また、GPS信号発生装置10−1が生成する疑似GPS信号については、GPSアンテナ101でのGPS信号の受信タイミングと、このGPSアンテナ101の設置位置及び送信用のアンテナ102−1の設置位置の位置情報とに基づき、遅延時間を調整して生成する。同様に、GPS信号発生装置10−2が生成する疑似GPS信号についてはアンテナ102−2の位置情報に基づき、GPS信号発生装置10−3が生成する疑似GPS信号についてはアンテナ102−3の位置情報に基づいてそれぞれ生成する。これにより、GPS信号発生装置10がカバーするそれぞれの領域A1、A2、A3において、端末で擬似GPS信号を受信した場合に、遅延時間が実際の受信点の位置と対応するようになるため、衛星からのGPS信号を直接受信した場合と同様に、屋内であっても携帯電話端末等の端末において現在の正確な位置情報を得られるようになる。
【0038】
図2は本実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの配置構成例を示す模式図である。図1に示した本実施の形態のGPS信号発生装置及び中継システムは、ビル等の建物110内に配設され、屋内においてGPS信号の中継を行う。GPSアンテナ101は、GPS衛星からの電波を良好に受信可能なように、建物110の屋上等に配設される。複数のGPS信号発生装置10は、建物110内の各階層ごとなど、各エリアごとに複数配設され、建物110内の広範囲をカバーしている。全てのGPS信号発生装置10は、同軸ケーブル33を介してアンテナ101と共通に接続されている。このようにGPS信号発生装置を配置した中継システムによって、衛星からのGPS信号を直接受信できない建物110の内部においても、端末によりGPS信号を利用して正確な位置情報を取得することが可能になる。
【0039】
続いて、本実施の形態のGPS信号発生装置の具体的な構成及び動作について説明する。図3は本実施の形態のGPS信号発生装置の構成を示すブロック図である。
【0040】
本実施の形態のGPS信号発生装置10は、GPS信号受信部11、航法メッセージ抽出部12、基準タイミング抽出部13、航法メッセージ保存部14、位置情報記憶部15、航法メッセージタイミング生成部17、疑似GPS信号生成部18、無線部19、送信用のアンテナ102を備えている。GPS信号発生装置10は、GPSアンテナ101に接続され、GPSアンテナ101で受信した衛星からのGPS信号を入力する。GPSアンテナ101は、各GPS衛星から送出される電波(L1:1575.42MHzの信号)を受信するためのアンテナであり、建物の屋上等のように衛星からの電波を受信しやすい場所(屋外)に設置される。
【0041】
GPS信号受信部11は、GPSアンテナ101が受信したGPS信号を同軸ケーブルなどを経由して入力し、GPS信号(L1)の受信のための信号処理を行う。航法メッセージ抽出部12は、捕捉可能な衛星のうち、受信状態の良好な支配的な4つまたはそれ以上の数の衛星を検出すると共に、検出した衛星からの各GPS信号(L1)について航法メッセージの抽出をリアルタイムで実施する。また、各航法メッセージを符号化しているC/Aコードを判別する。航法メッセージ保存部14は、不揮発性メモリ等で構成された記憶装置を備えており、航法メッセージ抽出部12が抽出した各航法メッセージをそれに割り当てられたC/Aコードと共に保存する。保存する内容は、航法メッセージ抽出部12が新しい航法メッセージ情報を受信するたびに逐次更新される。
【0042】
基準タイミング抽出部13は、GPS信号受信部11が受信したGPS信号(L1)から基準となるタイミングを抽出する。この基準タイミングは、前述の各GPS衛星からのGPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を測定するための基準時刻に相当するあるタイミングである。また、この基準タイミング抽出部13により、GPS衛星の航法メッセージ送出タイミングがGPS信号発生装置の航法メッセージ送出タイミングと一致するように、ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4のオフセット値を決定する。
【0043】
位置情報記憶部15は、位置情報保持部の機能を実現するもので、不揮発性メモリ等による記憶装置を備えており、当該GPS信号発生装置10の送信用のアンテナ102の位置など、ユーザ位置に関する位置情報(緯度、経度、高さ)を保持している。この位置情報は、自装置でカバーする予め決めたエリアの場所(擬似GPS信号の送信位置)を表す情報であり、例えばパーソナルコンピュータ等の外部装置16からの指示に応じて、適切な位置の情報が割り当てられる。すなわち、このGPS信号発生装置10が設置される場所の所定地点の位置座標を表す情報が位置情報記憶部15に登録される。
【0044】
航法メッセージタイミング生成部17は、基準タイミング抽出部13がGPS信号から抽出した基準タイミングと、位置情報記憶部15が保持しているユーザ位置の位置情報と、航法メッセージ保存部14が保持している航法メッセージの内容とに基づいて、各GPS衛星からのGPS信号に対応する複数の疑似GPS信号のそれぞれに関するタイミングを決定して生成する。
【0045】
疑似GPS信号生成部18は、航法メッセージタイミング生成部17で生成されたタイミングに従って、各GPS衛星からのGPS信号に対応する複数の疑似GPS信号を生成する。無線部19は、疑似GPS信号生成部18で生成された擬似GPS信号の増幅等を行って送信信号として出力し、アンテナ102は、擬似GPS信号の電波をエリア内に送信する。この際、無線部19は、疑似GPS信号生成部18で生成された擬似GPS信号をGPS信号受信部11で受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する。アンテナ102の設置位置については、例えば屋内の天井など、GPS信号発生装置10本体の近傍で建物110内において端末での電波の受信環境が良い場所を選んで設定すればよい。
【0046】
図4は本実施の形態のGPS信号発生装置における疑似GPS信号生成部の構成を示すブロック図である。図4に示す例では、4つの独立した疑似GPS信号生成部18−1、18−2、18−3、18−4を用いて4つの疑似GPS信号を生成する場合を想定している。生成する疑似GPS信号の数に応じて、適宜疑似GPS信号生成部18を設ければよい。
【0047】
疑似GPS信号生成部18は、L1搬送波生成部21、C/Aコード生成部22、NAVメッセージ生成部23、クロック生成部24、90度移相器25、乗算器26、乗算器27、加算器28を有して構成される。
【0048】
L1搬送波生成部21は、受信したGPS信号と同じ周波数(1575.42MHz)のL1搬送波を生成する。C/Aコード生成部22は、生成しようとする疑似GPS信号と対応するGPS信号の符号化に用いられていたC/Aコードと同じC/Aコードを生成する。NAVメッセージ生成部23は、生成しようとする疑似GPS信号と対応するGPS信号の航法メッセージと同じ内容のメッセージを生成する。これらのC/Aコード及び航法メッセージは、航法メッセージ保存部14に保持されている。
【0049】
クロック生成部24は、OCXOのような高精度クロックを実装しても良いし、GPS衛星から抽出した高精度なクロックに同期することによって、高精度で安定したクロックを生成しても良い。このクロック生成部24で生成したクロックは、L1搬送波生成部21、C/Aコード生成部22、NAVメッセージ生成部23が動作するのに使用される。クロックパルスを生成するタイミングについては、航法メッセージタイミング生成部17が生成したタイミングによって決定される。乗算器26は、C/Aコード生成部22の出力とNAVメッセージ生成部23の出力とを乗算することにより、航法メッセージをC/Aコードで符号化する。90度移相器25、乗算器27、加算器28は、乗算器26の出力として得られる符号化された航法メッセージによってL1搬送波を変調する。これにより、加算器28の出力として1つの疑似GPS信号が生成される。
【0050】
つまり、各疑似GPS信号生成部18が生成する疑似GPS信号については、GPS信号発生装置10が受信したGPS信号(L1)と同じ搬送波を利用し、受信したGPS信号の符号化に用いられていたC/Aコードと同じ符号を用いて符号化され、受信したGPS信号の航法メッセージと同じ情報を含んでいる。ただし、疑似GPS信号のタイミングについては、位置情報記憶部15が保持している位置情報に合わせて修正されているので受信したGPS信号とは少し異なっている。
【0051】
なお、図4に示した疑似GPS信号生成部18においては、GPS信号のうちC/Aコードで符号化されたL1信号だけを疑似GPS信号として生成しているが、L1信号のP(Precision)コードで符号化された信号や、L2信号のPコードで符号化された信号を生成するように、疑似GPS信号生成部18の構成を変更してもよい。
【0052】
緯度、経度、高さの検出を可能にするためには、少なくとも4つのGPS信号または疑似GPS信号が必要になるので、疑似GPS信号生成部18については4つ以上の回路を実装する必要がある。しかし、例えば平地であれば高さの情報は定数で置き換えることもできるので、少なくとも3つのGPS信号または疑似GPS信号があれば緯度、経度の位置の測定が可能である。したがって、疑似GPS信号生成部18の回路の実装数は3つとしても構わない。
【0053】
次に、本実施の形態のGPS信号発生装置10において生成する疑似GPS信号のタイミングについて詳しく説明する。図5は本実施の形態に係るGPS信号発生装置が受信するGPS信号またはGPS信号発生装置が出力する疑似GPS信号のタイミングの例を示すタイムチャートである。
【0054】
例えば、GPS信号発生装置10が4つのGPS衛星からの4つのGPS信号を受信する場合には、図5に示すように基準タイミングに対する時間差として、4つのGPS信号から4つの時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を検出することになる。しかし、受信したGPS信号における時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4は受信点であるGPSアンテナ101の設置場所に対応するので、屋内の端末の現在位置との間には大きな差がある。そこで、GPS信号を中継して擬似GPS信号を送信するGPS信号発生装置10では、位置情報記憶部15に記憶した自装置(アンテナ102)の設置位置に相当する位置情報に合わせて、時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を修正した疑似GPS信号を生成する。このため、生成する4つの疑似GPS信号についても、図5に示す信号とよく似たタイミングで少しタイミングを調整したものになる。
また、時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4のオフセット値は、前述したように、GPS衛星の航法メッセージタイミングとGPS信号発生装置の航法メッセージ送出タイミングとが、ほぼ一致するように調整されて送出される。
【0055】
航法メッセージタイミング生成部17においては、実際には、次式のようにして各疑似GPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を決定する。
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2))/c+CB
ΔT4=(√((X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
……(3)
ここで、
c:光速(定数)
CB:クロックバイアス(時計の誤差を表す予め決定した定数)
Ux:位置情報記憶部15が保持しているX軸方向の位置
Uy:位置情報記憶部15が保持しているY軸方向の位置
Uz:位置情報記憶部15が保持しているZ軸方向の位置
X1:1番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y1:1番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z1:1番目の衛星に関するZ軸方向の位置
X2:2番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y2:2番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z2:2番目の衛星に関するZ軸方向の位置
X3:3番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y3:3番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z3:3番目の衛星に関するZ軸方向の位置
X4:4番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y4:4番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z4:4番目の衛星に関するZ軸方向の位置
【0056】
なお、GPS信号発生装置10におけるクロックバイアスCBが0ではないため、これに相当する時間の誤差が疑似GPS信号のタイミングに現れる。しかし、端末が位置を計算する際に、元々GPSレシーバに存在するクロックバイアスを補正する際に、GPS信号発生装置10におけるクロックバイアスCBも含めて計算することになるので、問題は生じない。
【0057】
疑似GPS信号生成部18は、航法メッセージ保存部14が保持している航法メッセージと、航法メッセージタイミング生成部17が生成した各タイミング(基準タイミングと、時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4)に基づいて、4つの疑似GPS信号を生成する。
【0058】
なお、高さを含まない緯度、経度のみを用いる場合で、3つの擬似GPS信号を生成する場合は、以下の式によって各疑似GPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3を決定すればよい。
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
……(4)
【0059】
図6は本実施の形態に係るGPS信号発生装置と複数のGPS衛星との位置関係を示す模式図である。図6の例のように、ビルなどの建物110の屋外にGPSアンテナ101を設置し、屋内にGPS信号発生装置10−1、10−2を設置した場合、GPS衛星41〜44からの電波をGPSアンテナ101で受信し、受信したGPS信号に基づいて各GPS信号発生装置10−1、10−2で疑似GPS信号を生成し、この疑似GPS信号を電波として屋内で輻射する。
【0060】
この場合、GPS信号発生装置10は、GPSアンテナ101の設置位置で各GPS衛星41〜44からのGPS信号を受信することになるが、屋内にあるGPS信号発生装置10のアンテナ102から送信される疑似GPS信号のタイミングについては、GPS信号発生装置10の位置で直接、GPS衛星41〜44からのGPS信号を受信したと仮定した場合のGPS信号のタイミング(位相差)と等価になる。従って、携帯電話端末等の端末は、衛星からのGPS信号の代わりに、GPS信号発生装置10から送信される疑似GPS信号を受信して測位を行うことにより、正確な現在位置の測定が可能になる。
【0061】
しかも、疑似GPS信号に含まれる航法メッセージ等の情報は、衛星から送信されるGPS信号と同等であるため、現在用いられているGPS受信機や携帯電話端末等のハードウェアの構成やソフトウェアに変更を加えることなく、そのまま疑似GPS信号をGPS信号と同様に受信して位置を測定することが可能になる。
【0062】
また、位置を測定する携帯電話端末等の端末が屋外と屋内との間を移動する際には、端末が受信する信号がGPS信号から疑似GPS信号に、或いは疑似GPS信号からGPS信号に切り替わることになる。しかし、GPS信号発生装置10から送出される疑似GPS信号については、タイミングの違いを除いて衛星から送信されるGPS信号と同等であるため、端末の受信する信号がGPS信号から疑似GPS信号、または疑似GPS信号からGPS信号に切り替わる際に、端末が特別な処理を実施する必要はなく、前述の「ホットスタート」状態で位置を測定することが可能である。このため、短時間で位置の測定を完了でき、携帯電話端末等の端末が屋外と屋内との間を移動する場合であっても、スムーズに(ほぼ連続的に)位置の測定を行うことができる。なお、もしも疑似GPS信号のC/AコードがGPS信号と違う場合には、航法メッセージを取得し直す必要があるため、「ホットスタート」状態を継続できず、「ウォームスタート」からの動作になる。
【0063】
次に、本実施の形態のGPS信号発生装置に関する変形例を示す。図7はGPS信号発生装置からの擬似GPS信号及び複数のGPS衛星からのGPS信号と端末との関係を示す模式図、図8は本実施の形態のGPS信号発生装置の変形例を示す模式図である。図8に示す変形例は、GPS信号発生装置の追加機能として、疑似GPS信号の出力調整機能を有するものである。
【0064】
図7に示すように、例えばGPS信号発生装置10が屋外との境界付近に設置されたような場合など、GPS信号発生装置10のカバーエリア内にある端末においてGPS衛星41〜43から到来するGPS信号が受信可能な場合、衛星からのGPS信号の電波52とGPS信号発生装置10からの疑似GPS信号の電波53の両方が携帯電話端末等の端末50に届くことになる。この場合、GPS信号と擬似GPS信号の周波数及び符号が共通であるため、2つの信号が干渉する。
【0065】
そこで、図8に示した変形例のGPS信号発生装置10Aは、送信部において疑似GPS信号の出力調整機能を有し、擬似GPS信号の干渉を防止する。GPS信号発生装置10Aには、干渉検出用GPS受信部として用いるモニタ用のGPS受信機55が接続される。GPS受信機55のGPSアンテナ103を設置する位置については、衛星からのGPS信号が受信可能な範囲の境界近傍や、GPS信号発生装置10Aによる擬似GPS信号の送信範囲のエリア境界近傍などとする。例えば、屋内の窓の近傍などにGPSアンテナ103を設置する。GPS受信機55は、GPSアンテナ103が受信した電波がGPS衛星からの信号かどうかを識別する機能と、受信強度を識別する機能とを有するものであればよい。この際、GPS信号発生装置10Aのアンテナ102からの疑似GPS信号の出力をオンオフするなどして、GPS信号と疑似GPS信号の受信強度を検出すればよい。
【0066】
GPS信号発生装置10Aは、GPS受信機55において衛星からのGPS信号の電波54を受信可能な場合、GPS受信機55における自装置からの疑似GPS信号の電波53の受信強度が所定値以下となるように、送信部において疑似GPS信号の出力電力を調整する。具体的には、無線部19に出力電力の制御機能を搭載し、GPS受信機55が出力する信号に応じて疑似GPS信号の出力を制御する。
【0067】
このように、屋内のGPS信号発生装置のカバーエリアと屋外との境界付近では、衛星から到来するGPS信号の電波54とGPS信号発生装置からの擬似GPS信号の電波53とが干渉するおそれがあるので、GPS信号発生装置の出力を小さくするかまたは停止して出力調整を行い、端末50における干渉を防止する。すなわち、GPS衛星から到来する電波を十分な強度で受信できる場合には、GPS信号発生装置からの擬似GPS信号の出力を抑制する。
【0068】
次に、本実施の形態のGPS信号発生装置を携帯電話等の移動体通信用の中継システムに適用した構成例を示す。ここでは携帯電話用のシステムを例示する。図9は本実施の形態のGPS信号発生装置の機能を含む携帯電話用の中継システムの構成例を示すブロック図である。図9に示す中継システムは、屋内に設置される携帯電話用の中継装置において本実施の形態のGPS信号発生装置の機能を搭載したものである。ビルなどの屋内や地下などでは、携帯電話の基地局からの電波が届きにくいので、基地局の中継装置を設置して屋外の基地局と携帯電話端末との間で携帯電話の無線信号を中継する。
【0069】
この中継システム30は、通信用受信アンテナとして機能する携帯電話用の屋外アンテナ31、GPSアンテナ101、中継局親機として機能するリピータ装置34(例えば特開2008−141408号公報参照)、周波数変換部として機能する周波数変換装置35、複数の中継局子機36−1、36−2、36−3、36−4を有して構成される。中継システム30は、屋内の広い範囲で無線信号を中継できるように、複数の中継局子機をはえなわ式に直列接続して配置してある。
【0070】
屋外アンテナ31及びGPSアンテナ101は、混合器32を介して共通の同軸ケーブル33と接続され、この同軸ケーブル33を介して屋内に信号が引き込まれ、リピータ装置34及び周波数変換装置35と接続されている。屋外アンテナ31で送受信される携帯電話の無線信号は、同軸ケーブル33を介してリピータ装置34に直接入出力される。また、GPSアンテナ101で受信されたGPS信号(1.5GHz)は、周波数変換装置35に入力される。周波数変換装置35は、入力された1.5GHzのGPS信号をそれよりも周波数の低い所定の周波数に変換し、増幅してリピータ装置34に出力する。リピータ装置34に入力するGPS信号の周波数については、リピータ装置に影響を与えないように、1.5GHzの周波数を別の周波数に変換して出力する。例えば、リピータ装置が2GHz用のリピータ装置である場合は、リピータ装置に影響を与えないように300MHz以下の周波数に変換しても良い。
【0071】
リピータ装置34の出力側には、複数の同軸分配子機37が共通の接続ケーブル39で接続されている。リピータ装置34は、携帯電話の通信信号を同軸ケーブルを介して送受信する。同軸分配子機37は分配器40を介してGPS信号発生装置10が接続される。GPS信号発生装置10は、GPSアンテナ101で受信したGPS信号を利用して疑似GPS信号を生成し、この疑似GPS信号を無線部で1.5GHzの無線信号に変換してGPS中継用アンテナとして機能するアンテナ102から送信する。
【0072】
このように携帯電話用の中継システムにGPS信号発生装置を設けることによって、携帯電話の通信信号とGPS信号の双方を電波の届きにくいエリアに中継することが可能になる。この場合、屋外のアンテナまでの同軸ケーブル等を共用できるので、構成の簡略化、コスト削減を図ることができる。また、携帯電話端末等では通信信号とGPS信号の両方を利用する機会も多いが、本システムによれば屋内においても通信と測位が可能になる。
【0073】
上述したように、本実施の形態のGPS信号発生装置によれば、GPS信号発生装置で生成した疑似GPS信号を、GPSモジュールのようなGPSによる位置測定機能を搭載した携帯電話端末等で受信することにより、屋内であっても良好な受信状態で正確な位置を検出することが可能になる。このとき、屋内では端末がGPS衛星からの電波を直接受信することは困難であるが、GPS信号発生装置が生成した疑似GPS信号を電波に乗せて再送信して中継することにより、疑似GPS信号を屋内で受信して衛星からのGPS信号と同様に使用し、測位を行うことができる。
【0074】
GPS信号を受信して位置を測定する際には、一般的には、受信した各GPS信号のタイミングから求められる時間差と受信したGPS信号から取得可能な各衛星の位置情報とを所定の連立方程式に当てはめることにより未知数である受信点の位置情報(緯度、経度、高さ)を求める。端末が屋内で疑似GPS信号を受信して位置を測定する場合にも、この疑似GPS信号のタイミングが受信点の位置を特定するために利用される。この場合、屋外に設置したGPSアンテナで受信したGPS信号を単に増幅して屋内で再送信するだけでは、測定される位置が受信点である屋外のGPSアンテナの設置位置になるため、端末の正確な位置を特定できない。そこで、正確な測位を可能にするためにGPS信号の代わりに送信タイミングを調整した疑似GPS信号を生成する。
【0075】
擬似GPS信号は、各衛星から受信したGPS信号の航法メッセージに割り当てられているC/Aコードと同じC/Aコードを割り当てる。これにより、端末がGPS信号または擬似GPS信号を用いて位置を測定する際に、屋外と屋内との間の移動に伴って受信する信号がGPS信号から擬似GPS信号に切り替わったり、擬似GPS信号からGPS信号に切り替わったりしても、共通のC/Aコードを用いて航法メッセージの取得を継続することができる。
【0076】
ここで、疑似GPS信号に含まれる情報や信号形式は衛星から送出されるGPS信号と同等であるが、疑似GPS信号の送信タイミングだけはGPS信号発生装置の設置位置に関する位置情報に基づいて修正される。従って、疑似GPS信号を受信して位置を測定するために必要とされる端末側における構成や動作については、通常のGPS信号を処理する場合と同じであり、ハードウェアやソフトウェアの変更を要しない。つまり、現在用いられている端末をそのまま利用して疑似GPS信号を受信することにより、屋内における位置の測定精度を高めることができる。しかも、GPS衛星から送出されるGPS信号とGPS信号発生装置が生成する疑似GPS信号とは送信タイミングを除いて同じであるため、端末を持つユーザが屋外と屋内との間を移動するのに伴ってGPS信号との受信と疑似GPS信号の受信とが切り替わる場合であっても、必要な情報を新たに取得し直す必要がなく、短時間で位置を測定できる。
【0077】
また、衛星からのGPS信号の受信強度をモニタして擬似GPS信号の送信出力を調整することにより、衛星からのGPS信号と擬似GPS信号とが干渉するのを抑制することができる。例えば、建物と屋外との境界付近などでは、衛星からのGPS信号とGPS信号発生装置から送信される疑似GPS信号との両方が受信可能な場合があり、GPS信号と疑似GPS信号とが干渉する可能性がある。そこで、GPS信号の受信強度に応じて擬似GPS信号の送信強度を自動的に変更することにより、干渉の発生を抑制できる。
【0078】
また、携帯電話等の移動体通信用の中継局に本実施の形態のGPS信号発生装置を適用することで、中継局にGPSの中継システムを一体的に組み込むことができる。この中継システムを用いることによって、電波が受信しにくい環境においても、端末において移動体通信とGPSによる測位とが良好な状態で行える。また、通信信号とGPS信号とを共通のケーブルを介して屋内に導くことで、ケーブルを共用でき、配線の数を最小限に抑制できる。この際、GPS信号の周波数帯を300MHz以下にずらして伝送することにより、通信信号とGPS信号との周波数の差が大きくなり、これらの干渉を大幅に抑制できる。
【0079】
このように、本実施の形態によれば、GPS信号を直接受信できない屋内等で端末を使用している場合であっても、GPS信号発生装置から出力される擬似GPS信号を端末で受信することで、良好な状態で正確な位置を測定することができる。擬似GPS信号は送信タイミング以外は通常のGPS衛星から送出されるGPS信号と同等であるため、端末側の構成や動作(ハードウェア及びソフトウェア)に変更を加えることなく、そのまま擬似GPS信号を用いて測位を行うことができる。しかも、GPS信号発生装置の送信用アンテナ等の設置位置に関する位置情報に基づいて擬似GPS信号のタイミングを修正するので、各GPS衛星からのGPS信号受信用のGPSアンテナを、建物の屋上等、端末の受信点から大きく離れた場所に設置した場合であっても、位置測定誤差の増大を抑制できる。
【0080】
なお、本発明は上記の実施の形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできる効果を有し、GPS衛星からのGPS信号を屋内等で受信可能とするGPS信号発生装置及び中継システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの構成例を示すブロック図
【図2】本実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの配置構成例を示す模式図
【図3】本実施の形態のGPS信号発生装置の構成を示すブロック図
【図4】本実施の形態のGPS信号発生装置における疑似GPS信号生成部の構成を示すブロック図
【図5】本実施の形態に係るGPS信号発生装置が受信するGPS信号またはGPS信号発生装置が出力する疑似GPS信号のタイミングの例を示すタイムチャート
【図6】本実施の形態に係るGPS信号発生装置と複数のGPS衛星との位置関係を示す模式図
【図7】本実施の形態に係るGPS信号発生装置からの擬似GPS信号及び複数のGPS衛星からのGPS信号と端末との関係を示す模式図
【図8】本実施の形態のGPS信号発生装置の変形例を示す模式図
【図9】本実施の形態のGPS信号発生装置の機能を含む携帯電話用の中継システムの構成例を示すブロック図
【図10】GPS衛星と受信点との位置関係及びGPS信号のタイミングの例を示す模式図
【図11】衛星から送出されるGPS信号の構成を示す波形図
【図12】端末が受信したGPS信号の遅延時間を検出するための一般的な動作を示す模式図
【図13】衛星から送出されるGPS信号に含まれる航法メッセージの構成を示す模式図
【符号の説明】
【0083】
10、10−1〜10−3、10A GPS信号発生装置
11 GPS信号受信部
12 航法メッセージ抽出部
13 基準タイミング抽出部
14 航法メッセージ保存部
15 位置情報記憶部
16 外部装置
17 航法メッセージタイミング生成部
18、18−1〜18−4 疑似GPS信号生成部
19 無線部
21 L1搬送波生成部
22 C/Aコード生成部
23 NAVメッセージ生成部
24 クロック生成部
25 90度移相器
26、27 乗算器
28 加算器
30 中継システム
31 屋外アンテナ
32 混合器
33 同軸ケーブル
34 リピータ装置
35 周波数変換装置
36−1〜36−4 中継局子機
37 通信信号中継部
38 アンテナ
39 接続ケーブル
39a 光ファイバ
39b 同軸ケーブル
41、42、43、44 GPS衛星
50 端末
52、53、54 電波
55 GPS受信機
101、103 GPSアンテナ
102、102−1〜102−3 アンテナ
110 建物
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を屋内等で受信可能とするGPS信号発生装置及び中継システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話端末のような携帯端末においては、GPSによる位置検出機能を搭載しているものが多い。また、日本国内では、2007年4月以降に発売される3G携帯電話端末には、この位置検出機能を実現するGPSモジュールの内蔵が原則として義務付けられている。
【0003】
GPSによる位置検出機能は、システムを構成している複数の衛星(GPS衛星と呼ばれる)からそれぞれ到来する複数の電波を受信して、これらの電波に含まれている複数のGPS信号に基づいて電波受信点の位置、すなわちユーザ位置の緯度、経度、高さを計算により特定するものである。
【0004】
このような位置検出機能は、一般的には端末のユーザが屋外を歩行する場合や自動車等の乗り物を利用して移動する場合のナビゲーションに利用される。また、他の用途として、例えば端末のユーザが何らかの犯罪に巻き込まれた場合などに、端末の位置情報を通報してユーザの現在位置の特定などに利用することも想定されている。しかし、屋内、特に鉄筋が埋め込まれた建物や鉄骨造りの建物の内部のように、金属で囲まれている空間では、もともと微弱なGPS衛星からの電波が更に大きく減衰するため、非常に受信しにくい状態になるのは避けられない。携帯端末においては、ビルなどの屋内や地下、高架下等のGPS衛星からの電波を受信しにくい環境であっても、位置検出を可能にすることが望まれている。特に、端末の位置情報によってユーザの現在位置を特定したい場合などには、受信環境によらず位置検出ができることは重要である。
【0005】
屋内における位置検出を可能にするための従来技術としては、例えば特許文献1及び特許文献2が知られている。
【0006】
特許文献1においては、建物の屋外に設置したGPSアンテナが受信したGPS信号をケーブルで屋内に引き込み、このGPS信号を屋内に設置したGPS発信器によってそのまま電波として再輻射することが開示されている。この特許文献1の構成では、GPSモジュールを搭載した携帯電話端末が屋内に存在する場合には、この携帯電話端末がGPS衛星から送出される電波を直接受信することは困難であるが、屋内にあるGPS発信器からの電波を受信することにより、位置検出に必要なGPS信号を携帯電話端末が取得でき、屋内でも位置の特定が可能になる。
【0007】
特許文献2においては、GPS衛星から送出されるGPS信号と同じメッセージ構造を有し、GPS信号に含まれる衛星軌道データ(航法メッセージ)の代わりに送信機設置場所の位置データを含む疑似GPS信号を電波として送信する送信機を設けることが開示されている。この特許文献2の構成では、GPS衛星からの電波を受信できない屋内であっても、疑似GPS信号の送信機からの電波を受信できる場所であれば、位置の検出が可能になる。
【特許文献1】特開2005−244625号公報
【特許文献2】特開2006−201151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術においては、屋内に設置されるGPS発信器を経由してGPS衛星からのGPS信号を携帯電話端末が受信する場合には、携帯電話端末が検出する位置は、GPS衛星からの電波を受信する屋外のGPSアンテナの位置になる。従って、屋外のGPSアンテナから大きく離れた位置の屋内で携帯電話端末を使用している場合には、検出位置に大きな測定誤差が発生する。
【0009】
また、屋外のGPSアンテナで受信したGPS信号を長い同軸ケーブル等を用いて屋内の様々な箇所に導くような場合には、反射等の影響によってマルチパスが発生する可能性がある。この場合、マルチパスの影響を受けたGPS信号がそのまま屋内のGPS発信器から再輻射されることになるので、携帯電話端末における位置検出の際にマルチパスの影響が現れて位置検出誤差が発生する可能性がある。
【0010】
また、特許文献2の技術においては、屋内等に設置される送信機から送信される疑似GPS信号は、GPS衛星が送信するGPS信号とは情報の形式が異なっている。そのため、GPS衛星から送信されるGPS信号を処理することを想定して作られている現在の携帯電話端末等に搭載されている位置検出機能では、送信機から送信される疑似GPS信号を処理することができない。つまり、GPS信号を受信する回路のハードウェアをそのまま利用できる場合であっても、信号処理の内容、すなわち信号処理用のソフトウェアを疑似GPS信号に含まれている情報の形式に合わせて変更しない限り、この疑似GPS信号から位置を検出することはできない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできるGPS信号発生装置及び中継システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信部と、自装置の位置に関する特定地点の位置情報を保持する位置情報保持部と、前記受信したGPS信号の送信タイミングを前記位置情報に基づいて調整した信号であり、前記GPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ擬似GPS信号を生成する擬似GPS信号生成部と、を備えるGPS信号発生装置を提供する。
これにより、当該GPS信号発生装置の位置に関する位置情報に基づいて送信タイミングを調整した擬似GPS信号が生成される。ここで、位置情報としては、少なくとも緯度と経度を含み、さらに高さを含む情報としてもよい。GPS受信機を有する端末は、擬似GPS信号を受信することによって、衛星からのGPS信号を直接受信した場合と同様に現在位置の測位が可能となる。このため、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることができる。
【0013】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記GPS信号受信部は、少なくとも4つの前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号生成部は、前記4つの衛星の位置情報をXn、Yn、Zn(nは1〜4の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、Uz、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2))/c+CB
ΔT4=(√((X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するものを含む。
これにより、当該GPS信号発生装置の位置に関する緯度、経度、高さを含む位置情報に基づいて算出した時間差により、擬似GPS信号の送信タイミングを決定して生成することができ、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても、擬似GPS信号によって精度良く緯度、経度、高さの位置検出が可能になる。
【0014】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記GPS信号受信部は、少なくとも3つの前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号生成部は、前記3つの衛星の位置情報をXn、Yn(nは1〜3の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するものを含む。
これにより、当該GPS信号発生装置の位置に関する緯度、経度を含む位置情報に基づいて算出した時間差により、擬似GPS信号の送信タイミングを決定して生成することができ、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても、擬似GPS信号によって精度良く緯度、経度の位置検出が可能になる。
【0015】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記GPS信号受信部は、前記衛星からC/A(Coarse and Acquisition)コードによって符号化された航法メッセージを含むGPS信号を受信して前記GPS信号に適合するC/Aコードを判別し、前記擬似GPS信号生成部は、前記判別したC/Aコードと同じC/Aコードが割り当てられた擬似GPS信号を生成するものを含む。
これにより、衛星からのGPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ、GPS信号と同等に扱える擬似GPS信号を生成可能である。
【0016】
また、本発明は、上記のGPS信号発生装置であって、前記擬似GPS信号を電波により送信する送信部と、所定位置で前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号と前記GPS信号との干渉を検出する干渉検出用GPS受信部とを備え、前記送信部は、前記干渉検出用GPS受信部で受信されたGPS信号の受信強度に応じて、前記擬似GPS信号の送信出力を調整するものを含む。
これにより、例えば擬似GPS信号の送信範囲のエリアの境界近傍など、所定位置での衛星からのGPS信号の受信強度に応じて、擬似GPS信号の送信出力を調整することで、擬似GPS信号とGPS信号との干渉を抑制することが可能である。
【0017】
また、本発明は、上記いずれかのGPS信号発生装置と、前記衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、を備える中継システムを提供する。
これにより、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできるGPS信号の中継システムを実現可能になる。
【0018】
また、本発明は、受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、移動体通信の基地局からの通信信号を受信する通信用受信アンテナと、前記受信したGPS信号の周波数を300MHz以下に変換する周波数変換部と、前記通信用受信アンテナ及び前記GPSアンテナとケーブルを介して接続され、前記受信した通信信号と前記周波数変換後のGPS信号とを再送信する中継局親機と、上記いずれかのGPS信号発生装置と、前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、前記通信信号を所定の領域に送出する通信中継用アンテナとを有する中継局子機と、を備える中継システムを提供する。
これにより、移動体通信用の中継システムにGPS信号の中継システムを含めた中継システムを構成でき、屋内等の電波が受信しにくい環境にあっても、携帯電話等の端末において移動体通信とGPSによる位置検出とを良好な状態で行うことが可能になる。この場合、ケーブル等を共用できるので、構成の簡略化、コスト削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできるGPS信号発生装置及び中継システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明の実施の形態において前提となる技術として、GPSによる測位システムに関する一般的な技術について説明する。
【0021】
(GPSによる測位システム)
GPS(Global Positioning System;全(汎)地球測位システム)とは、米軍が運用している衛星航法システムのことであり、18〜24機のMEO衛星で構成されている。また、このGPSを含むシステムとして、GNSS(Global Navigation Satellite System;全世界的航法衛星システム)がある。GNSSは、ICAO(国際民間航空機関)が定義した衛星航法システムのことであり、民間航空航法に使用可能な性能(精度・信頼性)を持つ。具体的には、GPS/GLONASS+補強システムであり、一般には、GPS/GLONASS/Galileo/各種補強システムの総称である。
【0022】
GPS衛星から送出されるGPS信号には互いに周波数が異なる3波の信号(L1:1575.42MHz、L2:1227.60MHz、L3:1176.45MHz)があるが、一般的に使用されているのはL1のみである。複数のGPS衛星がそれぞれ送出するGPS信号は、CDMA(Code Division Multiple Access :符号分割多元接続)により同じ周波数に多重された状態で送出される。衛星数が24個の場合、L1の周波数に信号が24個多重されていることになる。GPS信号には、衛星自身の軌道情報や時計の補正情報などのデータ(エフェメリス:Ephemeris)や全衛星の概略の軌道情報(アルマナック:Almanac)などからなる航法メッセージ(Satellite Message)が含まれている。また、L1波にはC/A(Coarse and Acquisition)コードで符号化された信号と、P(Precision)コードで符号化された信号の2種類の信号が含まれている。L2波にはPコードで符号化された信号が含まれている。C/Aコードは、その乱数パターンが公表され一般に利用可能になっている。
【0023】
図10はGPS衛星と受信点との位置関係及びGPS信号のタイミングの例を示す模式図である。ここでは、図10(a)のように、位置を測定すべき受信点において、GPS受信機で4つのGPS衛星からの電波をそれぞれ受信できる場合を想定する。この場合、4つのGPS衛星が同時にGPS信号を送出した場合であっても、各GPS衛星の位置が互いに異なるため、受信点で各GPS信号を受信する時刻には時間差が生じる。
【0024】
図10(b)のように、1番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT1だけ遅延し、2番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT2だけ遅延し、3番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT3だけ遅延し、4番目の衛星からのGPS信号を受信する時刻が所定の基準時刻に対して時間差ΔT4だけ遅延しているものとする。この場合、受信点と各GPS衛星との距離(疑似距離)PR1、PR2、PR3、PR4は、それぞれ次式により求められる。
PR1=ΔT1×c
PR2=ΔT2×c
PR3=ΔT3×c
PR4=ΔT4×c ……(1)
ここで、c:光速に対応する定数
【0025】
しかし、このようにして求められる疑似距離には衛星とユーザ(受信点)の間の実際の距離の他に、衛星のクロックバイアス、大気による歪み、相対論的効果、レシーバ雑音、レシーバのクロックバイアスなどの誤差が含まれている。そこで、位置と時刻を決定するプロセスに入る前に、上記疑似距離に決定論的な補正を施して誤差を補償する。
【0026】
一方、各GPS衛星から送出されるGPS信号の航法メッセージには、各衛星の位置を表す情報も含まれている。そこで、
X1:1番目の衛星の位置に関するX座標(緯度)
Y1:1番目の衛星の位置に関するY座標(経度)
Z1:1番目の衛星の位置に関するZ座標(高さ)
X2:2番目の衛星の位置に関するX座標
Y2:2番目の衛星の位置に関するY座標
Z2:2番目の衛星の位置に関するZ座標
X3:3番目の衛星の位置に関するX座標
Y3:3番目の衛星の位置に関するY座標
Z3:3番目の衛星の位置に関するZ座標
X4:4番目の衛星の位置に関するX座標
Y4:4番目の衛星の位置に関するY座標
Z4:4番目の衛星の位置に関するZ座標
Ux:ユーザ位置に関するX座標
Uy:ユーザ位置に関するY座標
Uz:ユーザ位置に関するZ座標
CB:GPSレシーバのクロックバイアス
c:光速に対応する定数
と定義すれば、次式に示す4つの距離方程式による連立方程式が成立する。
(X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2=(PR1−CB×c)2
(X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2=(PR2−CB×c)2
(X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2=(PR3−CB×c)2
(X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2=(PR4−CB×c)2
……(2)
【0027】
従って、上記の連立方程式の各式のPR1〜PR4において検出されたGPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を当てはめて連立方程式を解くことにより、未知数であるユーザ位置の座標(Ux、Uy、Uz)を算出することができる。
【0028】
図11は衛星から送出されるGPS信号の構成を示す波形図である。この図11は、実際にGPS衛星から送出されるGPS信号(L1、C/A)を示したものである。このGPS信号は、周波数が1575.42MHzのL1搬送波を1.023McpsのPNコード(疑似雑音符号)で変調し、このPNコードを50bpsのビットレートの航法メッセージで変調している。
【0029】
図12に示すように、受信機においては、衛星から送出されたGPS信号(PNコード)を遅延した状態で受信する。図12は端末が受信したGPS信号の遅延時間を検出するための一般的な動作を示す模式図である。GPS信号の遅延時間を正しく測定するために、受信機において受信波と同じ符号のレプリカ信号を生成し、受信波とレプリカ信号との相関を求めて、時間差τが0となるようにレプリカ信号のタイミングを調整し、受信波のタイミングを検出する。
【0030】
一方、各GPS衛星からは、図13に示すようなGPS信号の航法メッセージが送出される。図13は衛星から送出されるGPS信号に含まれる航法メッセージの構成を示す模式図である。各GPS衛星からは、それぞれが300ビットの情報で構成される5つのサブフレームを合わせた1フレームで1500ビットの情報からなる航法メッセージが送出される。この場合、ビットレートが50bpsなので、1フレームの航法メッセージを受信するのに30秒間を要することになる。また、サブフレーム#1〜#3については、送信している衛星自身のクロック・軌道情報(エフェメリス情報)を含み、30秒毎に同じ内容が繰り返される。また、サブフレーム#4、#5については、他の衛星のおおまかなクロック・軌道情報(アルマナック情報)や、電離層補正情報などを含み、全体では25ページ(フレーム)の情報が各フレームで順番に送信される。従って、全衛星の情報を得るためには12.5分の時間が必要になる。
【0031】
複数のGPS衛星から送出されるGPS信号を受信して受信点の位置を測定するためには、上記のように様々な情報が必要になり、これらの情報を受信するのに比較的長い時間(初期位置算出時間(TTFF))が必要になる。ここで、以前に受信した情報を不揮発性メモリに記憶しておいてその情報を利用できる場合には、比較的短い時間で位置を測定することが可能である。一般的なGPS受信機においては、測位時間を短縮するため、以下に示す3つの状態を持っている。
【0032】
1.コールドスタート:不揮発性メモリに何の情報もない場合。測距信号の捕捉と航法メッセージの取得に数分程度かかる。
2.ウォームスタート:不揮発性メモリにアルマナック情報のみある場合。測距信号を捕捉後、航法メッセージの取得に30〜60秒かかる。
3.ホットスタート:不揮発性メモリ内のエフェメリス情報が有効な場合。数秒程度で測距信号を捕捉、位置を算出できる。
【0033】
(実施の形態)
次に、本発明のGPS信号発生装置及び中継システムに係る実施の形態を説明する。
【0034】
図1は本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの構成例を示すブロック図である。本実施の形態のGPS信号発生装置及び中継システムは、ビル等の屋内に配設され、GPS衛星からの電波を受信しにくい位置にある端末に対してGPS信号を中継するものである。この際、GPS信号発生装置は、中継用のGPS信号として、GPS衛星から送信されるGPSと同一の形式で、設置位置に合わせて信号の遅延時間を調整した擬似GPS信号を生成して送信する。
【0035】
本実施の形態の中継システムは、複数のGPS信号発生装置10−1、10−2、10−3が配設されて構成される。以下ではこれら複数の装置を代表してGPS信号発生装置10と記載することもある。このGPS信号発生装置10−1、10−2、10−3は、屋内の互いに異なる箇所に設置してあり、共通のGPS信号受信用のGPSアンテナ101と同軸ケーブル33を介して接続される。そして、GPS信号発生装置10−1、10−2、10−3は、それぞれGPS中継用アンテナとして機能する送信用のアンテナ102−1、102−2、102−3を備え、GPSアンテナ101で受信した衛星からのGPS信号を基に自装置で生成した擬似GPS信号をそれぞれの位置から送信する。
【0036】
GPS信号発生装置10−1は、アンテナ102−1から領域A1の範囲に届くように指向性を定めて、疑似GPS信号の電波を輻射する。同様に、GPS信号発生装置10−2はアンテナ102−2から領域A2の範囲に届くように疑似GPS信号の電波を輻射し、GPS信号発生装置10−3はアンテナ102−3から領域A3の範囲に届くように疑似GPS信号の電波を輻射する。ここで、各領域A1、A2、A3は互いに範囲が重ならないように位置及び大きさを予め決定してある。
【0037】
また、GPS信号発生装置10−1が生成する疑似GPS信号については、GPSアンテナ101でのGPS信号の受信タイミングと、このGPSアンテナ101の設置位置及び送信用のアンテナ102−1の設置位置の位置情報とに基づき、遅延時間を調整して生成する。同様に、GPS信号発生装置10−2が生成する疑似GPS信号についてはアンテナ102−2の位置情報に基づき、GPS信号発生装置10−3が生成する疑似GPS信号についてはアンテナ102−3の位置情報に基づいてそれぞれ生成する。これにより、GPS信号発生装置10がカバーするそれぞれの領域A1、A2、A3において、端末で擬似GPS信号を受信した場合に、遅延時間が実際の受信点の位置と対応するようになるため、衛星からのGPS信号を直接受信した場合と同様に、屋内であっても携帯電話端末等の端末において現在の正確な位置情報を得られるようになる。
【0038】
図2は本実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの配置構成例を示す模式図である。図1に示した本実施の形態のGPS信号発生装置及び中継システムは、ビル等の建物110内に配設され、屋内においてGPS信号の中継を行う。GPSアンテナ101は、GPS衛星からの電波を良好に受信可能なように、建物110の屋上等に配設される。複数のGPS信号発生装置10は、建物110内の各階層ごとなど、各エリアごとに複数配設され、建物110内の広範囲をカバーしている。全てのGPS信号発生装置10は、同軸ケーブル33を介してアンテナ101と共通に接続されている。このようにGPS信号発生装置を配置した中継システムによって、衛星からのGPS信号を直接受信できない建物110の内部においても、端末によりGPS信号を利用して正確な位置情報を取得することが可能になる。
【0039】
続いて、本実施の形態のGPS信号発生装置の具体的な構成及び動作について説明する。図3は本実施の形態のGPS信号発生装置の構成を示すブロック図である。
【0040】
本実施の形態のGPS信号発生装置10は、GPS信号受信部11、航法メッセージ抽出部12、基準タイミング抽出部13、航法メッセージ保存部14、位置情報記憶部15、航法メッセージタイミング生成部17、疑似GPS信号生成部18、無線部19、送信用のアンテナ102を備えている。GPS信号発生装置10は、GPSアンテナ101に接続され、GPSアンテナ101で受信した衛星からのGPS信号を入力する。GPSアンテナ101は、各GPS衛星から送出される電波(L1:1575.42MHzの信号)を受信するためのアンテナであり、建物の屋上等のように衛星からの電波を受信しやすい場所(屋外)に設置される。
【0041】
GPS信号受信部11は、GPSアンテナ101が受信したGPS信号を同軸ケーブルなどを経由して入力し、GPS信号(L1)の受信のための信号処理を行う。航法メッセージ抽出部12は、捕捉可能な衛星のうち、受信状態の良好な支配的な4つまたはそれ以上の数の衛星を検出すると共に、検出した衛星からの各GPS信号(L1)について航法メッセージの抽出をリアルタイムで実施する。また、各航法メッセージを符号化しているC/Aコードを判別する。航法メッセージ保存部14は、不揮発性メモリ等で構成された記憶装置を備えており、航法メッセージ抽出部12が抽出した各航法メッセージをそれに割り当てられたC/Aコードと共に保存する。保存する内容は、航法メッセージ抽出部12が新しい航法メッセージ情報を受信するたびに逐次更新される。
【0042】
基準タイミング抽出部13は、GPS信号受信部11が受信したGPS信号(L1)から基準となるタイミングを抽出する。この基準タイミングは、前述の各GPS衛星からのGPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を測定するための基準時刻に相当するあるタイミングである。また、この基準タイミング抽出部13により、GPS衛星の航法メッセージ送出タイミングがGPS信号発生装置の航法メッセージ送出タイミングと一致するように、ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4のオフセット値を決定する。
【0043】
位置情報記憶部15は、位置情報保持部の機能を実現するもので、不揮発性メモリ等による記憶装置を備えており、当該GPS信号発生装置10の送信用のアンテナ102の位置など、ユーザ位置に関する位置情報(緯度、経度、高さ)を保持している。この位置情報は、自装置でカバーする予め決めたエリアの場所(擬似GPS信号の送信位置)を表す情報であり、例えばパーソナルコンピュータ等の外部装置16からの指示に応じて、適切な位置の情報が割り当てられる。すなわち、このGPS信号発生装置10が設置される場所の所定地点の位置座標を表す情報が位置情報記憶部15に登録される。
【0044】
航法メッセージタイミング生成部17は、基準タイミング抽出部13がGPS信号から抽出した基準タイミングと、位置情報記憶部15が保持しているユーザ位置の位置情報と、航法メッセージ保存部14が保持している航法メッセージの内容とに基づいて、各GPS衛星からのGPS信号に対応する複数の疑似GPS信号のそれぞれに関するタイミングを決定して生成する。
【0045】
疑似GPS信号生成部18は、航法メッセージタイミング生成部17で生成されたタイミングに従って、各GPS衛星からのGPS信号に対応する複数の疑似GPS信号を生成する。無線部19は、疑似GPS信号生成部18で生成された擬似GPS信号の増幅等を行って送信信号として出力し、アンテナ102は、擬似GPS信号の電波をエリア内に送信する。この際、無線部19は、疑似GPS信号生成部18で生成された擬似GPS信号をGPS信号受信部11で受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する。アンテナ102の設置位置については、例えば屋内の天井など、GPS信号発生装置10本体の近傍で建物110内において端末での電波の受信環境が良い場所を選んで設定すればよい。
【0046】
図4は本実施の形態のGPS信号発生装置における疑似GPS信号生成部の構成を示すブロック図である。図4に示す例では、4つの独立した疑似GPS信号生成部18−1、18−2、18−3、18−4を用いて4つの疑似GPS信号を生成する場合を想定している。生成する疑似GPS信号の数に応じて、適宜疑似GPS信号生成部18を設ければよい。
【0047】
疑似GPS信号生成部18は、L1搬送波生成部21、C/Aコード生成部22、NAVメッセージ生成部23、クロック生成部24、90度移相器25、乗算器26、乗算器27、加算器28を有して構成される。
【0048】
L1搬送波生成部21は、受信したGPS信号と同じ周波数(1575.42MHz)のL1搬送波を生成する。C/Aコード生成部22は、生成しようとする疑似GPS信号と対応するGPS信号の符号化に用いられていたC/Aコードと同じC/Aコードを生成する。NAVメッセージ生成部23は、生成しようとする疑似GPS信号と対応するGPS信号の航法メッセージと同じ内容のメッセージを生成する。これらのC/Aコード及び航法メッセージは、航法メッセージ保存部14に保持されている。
【0049】
クロック生成部24は、OCXOのような高精度クロックを実装しても良いし、GPS衛星から抽出した高精度なクロックに同期することによって、高精度で安定したクロックを生成しても良い。このクロック生成部24で生成したクロックは、L1搬送波生成部21、C/Aコード生成部22、NAVメッセージ生成部23が動作するのに使用される。クロックパルスを生成するタイミングについては、航法メッセージタイミング生成部17が生成したタイミングによって決定される。乗算器26は、C/Aコード生成部22の出力とNAVメッセージ生成部23の出力とを乗算することにより、航法メッセージをC/Aコードで符号化する。90度移相器25、乗算器27、加算器28は、乗算器26の出力として得られる符号化された航法メッセージによってL1搬送波を変調する。これにより、加算器28の出力として1つの疑似GPS信号が生成される。
【0050】
つまり、各疑似GPS信号生成部18が生成する疑似GPS信号については、GPS信号発生装置10が受信したGPS信号(L1)と同じ搬送波を利用し、受信したGPS信号の符号化に用いられていたC/Aコードと同じ符号を用いて符号化され、受信したGPS信号の航法メッセージと同じ情報を含んでいる。ただし、疑似GPS信号のタイミングについては、位置情報記憶部15が保持している位置情報に合わせて修正されているので受信したGPS信号とは少し異なっている。
【0051】
なお、図4に示した疑似GPS信号生成部18においては、GPS信号のうちC/Aコードで符号化されたL1信号だけを疑似GPS信号として生成しているが、L1信号のP(Precision)コードで符号化された信号や、L2信号のPコードで符号化された信号を生成するように、疑似GPS信号生成部18の構成を変更してもよい。
【0052】
緯度、経度、高さの検出を可能にするためには、少なくとも4つのGPS信号または疑似GPS信号が必要になるので、疑似GPS信号生成部18については4つ以上の回路を実装する必要がある。しかし、例えば平地であれば高さの情報は定数で置き換えることもできるので、少なくとも3つのGPS信号または疑似GPS信号があれば緯度、経度の位置の測定が可能である。したがって、疑似GPS信号生成部18の回路の実装数は3つとしても構わない。
【0053】
次に、本実施の形態のGPS信号発生装置10において生成する疑似GPS信号のタイミングについて詳しく説明する。図5は本実施の形態に係るGPS信号発生装置が受信するGPS信号またはGPS信号発生装置が出力する疑似GPS信号のタイミングの例を示すタイムチャートである。
【0054】
例えば、GPS信号発生装置10が4つのGPS衛星からの4つのGPS信号を受信する場合には、図5に示すように基準タイミングに対する時間差として、4つのGPS信号から4つの時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を検出することになる。しかし、受信したGPS信号における時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4は受信点であるGPSアンテナ101の設置場所に対応するので、屋内の端末の現在位置との間には大きな差がある。そこで、GPS信号を中継して擬似GPS信号を送信するGPS信号発生装置10では、位置情報記憶部15に記憶した自装置(アンテナ102)の設置位置に相当する位置情報に合わせて、時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を修正した疑似GPS信号を生成する。このため、生成する4つの疑似GPS信号についても、図5に示す信号とよく似たタイミングで少しタイミングを調整したものになる。
また、時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4のオフセット値は、前述したように、GPS衛星の航法メッセージタイミングとGPS信号発生装置の航法メッセージ送出タイミングとが、ほぼ一致するように調整されて送出される。
【0055】
航法メッセージタイミング生成部17においては、実際には、次式のようにして各疑似GPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4を決定する。
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2))/c+CB
ΔT4=(√((X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
……(3)
ここで、
c:光速(定数)
CB:クロックバイアス(時計の誤差を表す予め決定した定数)
Ux:位置情報記憶部15が保持しているX軸方向の位置
Uy:位置情報記憶部15が保持しているY軸方向の位置
Uz:位置情報記憶部15が保持しているZ軸方向の位置
X1:1番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y1:1番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z1:1番目の衛星に関するZ軸方向の位置
X2:2番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y2:2番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z2:2番目の衛星に関するZ軸方向の位置
X3:3番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y3:3番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z3:3番目の衛星に関するZ軸方向の位置
X4:4番目の衛星に関するX軸方向の位置
Y4:4番目の衛星に関するY軸方向の位置
Z4:4番目の衛星に関するZ軸方向の位置
【0056】
なお、GPS信号発生装置10におけるクロックバイアスCBが0ではないため、これに相当する時間の誤差が疑似GPS信号のタイミングに現れる。しかし、端末が位置を計算する際に、元々GPSレシーバに存在するクロックバイアスを補正する際に、GPS信号発生装置10におけるクロックバイアスCBも含めて計算することになるので、問題は生じない。
【0057】
疑似GPS信号生成部18は、航法メッセージ保存部14が保持している航法メッセージと、航法メッセージタイミング生成部17が生成した各タイミング(基準タイミングと、時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4)に基づいて、4つの疑似GPS信号を生成する。
【0058】
なお、高さを含まない緯度、経度のみを用いる場合で、3つの擬似GPS信号を生成する場合は、以下の式によって各疑似GPS信号の時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3を決定すればよい。
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
……(4)
【0059】
図6は本実施の形態に係るGPS信号発生装置と複数のGPS衛星との位置関係を示す模式図である。図6の例のように、ビルなどの建物110の屋外にGPSアンテナ101を設置し、屋内にGPS信号発生装置10−1、10−2を設置した場合、GPS衛星41〜44からの電波をGPSアンテナ101で受信し、受信したGPS信号に基づいて各GPS信号発生装置10−1、10−2で疑似GPS信号を生成し、この疑似GPS信号を電波として屋内で輻射する。
【0060】
この場合、GPS信号発生装置10は、GPSアンテナ101の設置位置で各GPS衛星41〜44からのGPS信号を受信することになるが、屋内にあるGPS信号発生装置10のアンテナ102から送信される疑似GPS信号のタイミングについては、GPS信号発生装置10の位置で直接、GPS衛星41〜44からのGPS信号を受信したと仮定した場合のGPS信号のタイミング(位相差)と等価になる。従って、携帯電話端末等の端末は、衛星からのGPS信号の代わりに、GPS信号発生装置10から送信される疑似GPS信号を受信して測位を行うことにより、正確な現在位置の測定が可能になる。
【0061】
しかも、疑似GPS信号に含まれる航法メッセージ等の情報は、衛星から送信されるGPS信号と同等であるため、現在用いられているGPS受信機や携帯電話端末等のハードウェアの構成やソフトウェアに変更を加えることなく、そのまま疑似GPS信号をGPS信号と同様に受信して位置を測定することが可能になる。
【0062】
また、位置を測定する携帯電話端末等の端末が屋外と屋内との間を移動する際には、端末が受信する信号がGPS信号から疑似GPS信号に、或いは疑似GPS信号からGPS信号に切り替わることになる。しかし、GPS信号発生装置10から送出される疑似GPS信号については、タイミングの違いを除いて衛星から送信されるGPS信号と同等であるため、端末の受信する信号がGPS信号から疑似GPS信号、または疑似GPS信号からGPS信号に切り替わる際に、端末が特別な処理を実施する必要はなく、前述の「ホットスタート」状態で位置を測定することが可能である。このため、短時間で位置の測定を完了でき、携帯電話端末等の端末が屋外と屋内との間を移動する場合であっても、スムーズに(ほぼ連続的に)位置の測定を行うことができる。なお、もしも疑似GPS信号のC/AコードがGPS信号と違う場合には、航法メッセージを取得し直す必要があるため、「ホットスタート」状態を継続できず、「ウォームスタート」からの動作になる。
【0063】
次に、本実施の形態のGPS信号発生装置に関する変形例を示す。図7はGPS信号発生装置からの擬似GPS信号及び複数のGPS衛星からのGPS信号と端末との関係を示す模式図、図8は本実施の形態のGPS信号発生装置の変形例を示す模式図である。図8に示す変形例は、GPS信号発生装置の追加機能として、疑似GPS信号の出力調整機能を有するものである。
【0064】
図7に示すように、例えばGPS信号発生装置10が屋外との境界付近に設置されたような場合など、GPS信号発生装置10のカバーエリア内にある端末においてGPS衛星41〜43から到来するGPS信号が受信可能な場合、衛星からのGPS信号の電波52とGPS信号発生装置10からの疑似GPS信号の電波53の両方が携帯電話端末等の端末50に届くことになる。この場合、GPS信号と擬似GPS信号の周波数及び符号が共通であるため、2つの信号が干渉する。
【0065】
そこで、図8に示した変形例のGPS信号発生装置10Aは、送信部において疑似GPS信号の出力調整機能を有し、擬似GPS信号の干渉を防止する。GPS信号発生装置10Aには、干渉検出用GPS受信部として用いるモニタ用のGPS受信機55が接続される。GPS受信機55のGPSアンテナ103を設置する位置については、衛星からのGPS信号が受信可能な範囲の境界近傍や、GPS信号発生装置10Aによる擬似GPS信号の送信範囲のエリア境界近傍などとする。例えば、屋内の窓の近傍などにGPSアンテナ103を設置する。GPS受信機55は、GPSアンテナ103が受信した電波がGPS衛星からの信号かどうかを識別する機能と、受信強度を識別する機能とを有するものであればよい。この際、GPS信号発生装置10Aのアンテナ102からの疑似GPS信号の出力をオンオフするなどして、GPS信号と疑似GPS信号の受信強度を検出すればよい。
【0066】
GPS信号発生装置10Aは、GPS受信機55において衛星からのGPS信号の電波54を受信可能な場合、GPS受信機55における自装置からの疑似GPS信号の電波53の受信強度が所定値以下となるように、送信部において疑似GPS信号の出力電力を調整する。具体的には、無線部19に出力電力の制御機能を搭載し、GPS受信機55が出力する信号に応じて疑似GPS信号の出力を制御する。
【0067】
このように、屋内のGPS信号発生装置のカバーエリアと屋外との境界付近では、衛星から到来するGPS信号の電波54とGPS信号発生装置からの擬似GPS信号の電波53とが干渉するおそれがあるので、GPS信号発生装置の出力を小さくするかまたは停止して出力調整を行い、端末50における干渉を防止する。すなわち、GPS衛星から到来する電波を十分な強度で受信できる場合には、GPS信号発生装置からの擬似GPS信号の出力を抑制する。
【0068】
次に、本実施の形態のGPS信号発生装置を携帯電話等の移動体通信用の中継システムに適用した構成例を示す。ここでは携帯電話用のシステムを例示する。図9は本実施の形態のGPS信号発生装置の機能を含む携帯電話用の中継システムの構成例を示すブロック図である。図9に示す中継システムは、屋内に設置される携帯電話用の中継装置において本実施の形態のGPS信号発生装置の機能を搭載したものである。ビルなどの屋内や地下などでは、携帯電話の基地局からの電波が届きにくいので、基地局の中継装置を設置して屋外の基地局と携帯電話端末との間で携帯電話の無線信号を中継する。
【0069】
この中継システム30は、通信用受信アンテナとして機能する携帯電話用の屋外アンテナ31、GPSアンテナ101、中継局親機として機能するリピータ装置34(例えば特開2008−141408号公報参照)、周波数変換部として機能する周波数変換装置35、複数の中継局子機36−1、36−2、36−3、36−4を有して構成される。中継システム30は、屋内の広い範囲で無線信号を中継できるように、複数の中継局子機をはえなわ式に直列接続して配置してある。
【0070】
屋外アンテナ31及びGPSアンテナ101は、混合器32を介して共通の同軸ケーブル33と接続され、この同軸ケーブル33を介して屋内に信号が引き込まれ、リピータ装置34及び周波数変換装置35と接続されている。屋外アンテナ31で送受信される携帯電話の無線信号は、同軸ケーブル33を介してリピータ装置34に直接入出力される。また、GPSアンテナ101で受信されたGPS信号(1.5GHz)は、周波数変換装置35に入力される。周波数変換装置35は、入力された1.5GHzのGPS信号をそれよりも周波数の低い所定の周波数に変換し、増幅してリピータ装置34に出力する。リピータ装置34に入力するGPS信号の周波数については、リピータ装置に影響を与えないように、1.5GHzの周波数を別の周波数に変換して出力する。例えば、リピータ装置が2GHz用のリピータ装置である場合は、リピータ装置に影響を与えないように300MHz以下の周波数に変換しても良い。
【0071】
リピータ装置34の出力側には、複数の同軸分配子機37が共通の接続ケーブル39で接続されている。リピータ装置34は、携帯電話の通信信号を同軸ケーブルを介して送受信する。同軸分配子機37は分配器40を介してGPS信号発生装置10が接続される。GPS信号発生装置10は、GPSアンテナ101で受信したGPS信号を利用して疑似GPS信号を生成し、この疑似GPS信号を無線部で1.5GHzの無線信号に変換してGPS中継用アンテナとして機能するアンテナ102から送信する。
【0072】
このように携帯電話用の中継システムにGPS信号発生装置を設けることによって、携帯電話の通信信号とGPS信号の双方を電波の届きにくいエリアに中継することが可能になる。この場合、屋外のアンテナまでの同軸ケーブル等を共用できるので、構成の簡略化、コスト削減を図ることができる。また、携帯電話端末等では通信信号とGPS信号の両方を利用する機会も多いが、本システムによれば屋内においても通信と測位が可能になる。
【0073】
上述したように、本実施の形態のGPS信号発生装置によれば、GPS信号発生装置で生成した疑似GPS信号を、GPSモジュールのようなGPSによる位置測定機能を搭載した携帯電話端末等で受信することにより、屋内であっても良好な受信状態で正確な位置を検出することが可能になる。このとき、屋内では端末がGPS衛星からの電波を直接受信することは困難であるが、GPS信号発生装置が生成した疑似GPS信号を電波に乗せて再送信して中継することにより、疑似GPS信号を屋内で受信して衛星からのGPS信号と同様に使用し、測位を行うことができる。
【0074】
GPS信号を受信して位置を測定する際には、一般的には、受信した各GPS信号のタイミングから求められる時間差と受信したGPS信号から取得可能な各衛星の位置情報とを所定の連立方程式に当てはめることにより未知数である受信点の位置情報(緯度、経度、高さ)を求める。端末が屋内で疑似GPS信号を受信して位置を測定する場合にも、この疑似GPS信号のタイミングが受信点の位置を特定するために利用される。この場合、屋外に設置したGPSアンテナで受信したGPS信号を単に増幅して屋内で再送信するだけでは、測定される位置が受信点である屋外のGPSアンテナの設置位置になるため、端末の正確な位置を特定できない。そこで、正確な測位を可能にするためにGPS信号の代わりに送信タイミングを調整した疑似GPS信号を生成する。
【0075】
擬似GPS信号は、各衛星から受信したGPS信号の航法メッセージに割り当てられているC/Aコードと同じC/Aコードを割り当てる。これにより、端末がGPS信号または擬似GPS信号を用いて位置を測定する際に、屋外と屋内との間の移動に伴って受信する信号がGPS信号から擬似GPS信号に切り替わったり、擬似GPS信号からGPS信号に切り替わったりしても、共通のC/Aコードを用いて航法メッセージの取得を継続することができる。
【0076】
ここで、疑似GPS信号に含まれる情報や信号形式は衛星から送出されるGPS信号と同等であるが、疑似GPS信号の送信タイミングだけはGPS信号発生装置の設置位置に関する位置情報に基づいて修正される。従って、疑似GPS信号を受信して位置を測定するために必要とされる端末側における構成や動作については、通常のGPS信号を処理する場合と同じであり、ハードウェアやソフトウェアの変更を要しない。つまり、現在用いられている端末をそのまま利用して疑似GPS信号を受信することにより、屋内における位置の測定精度を高めることができる。しかも、GPS衛星から送出されるGPS信号とGPS信号発生装置が生成する疑似GPS信号とは送信タイミングを除いて同じであるため、端末を持つユーザが屋外と屋内との間を移動するのに伴ってGPS信号との受信と疑似GPS信号の受信とが切り替わる場合であっても、必要な情報を新たに取得し直す必要がなく、短時間で位置を測定できる。
【0077】
また、衛星からのGPS信号の受信強度をモニタして擬似GPS信号の送信出力を調整することにより、衛星からのGPS信号と擬似GPS信号とが干渉するのを抑制することができる。例えば、建物と屋外との境界付近などでは、衛星からのGPS信号とGPS信号発生装置から送信される疑似GPS信号との両方が受信可能な場合があり、GPS信号と疑似GPS信号とが干渉する可能性がある。そこで、GPS信号の受信強度に応じて擬似GPS信号の送信強度を自動的に変更することにより、干渉の発生を抑制できる。
【0078】
また、携帯電話等の移動体通信用の中継局に本実施の形態のGPS信号発生装置を適用することで、中継局にGPSの中継システムを一体的に組み込むことができる。この中継システムを用いることによって、電波が受信しにくい環境においても、端末において移動体通信とGPSによる測位とが良好な状態で行える。また、通信信号とGPS信号とを共通のケーブルを介して屋内に導くことで、ケーブルを共用でき、配線の数を最小限に抑制できる。この際、GPS信号の周波数帯を300MHz以下にずらして伝送することにより、通信信号とGPS信号との周波数の差が大きくなり、これらの干渉を大幅に抑制できる。
【0079】
このように、本実施の形態によれば、GPS信号を直接受信できない屋内等で端末を使用している場合であっても、GPS信号発生装置から出力される擬似GPS信号を端末で受信することで、良好な状態で正確な位置を測定することができる。擬似GPS信号は送信タイミング以外は通常のGPS衛星から送出されるGPS信号と同等であるため、端末側の構成や動作(ハードウェア及びソフトウェア)に変更を加えることなく、そのまま擬似GPS信号を用いて測位を行うことができる。しかも、GPS信号発生装置の送信用アンテナ等の設置位置に関する位置情報に基づいて擬似GPS信号のタイミングを修正するので、各GPS衛星からのGPS信号受信用のGPSアンテナを、建物の屋上等、端末の受信点から大きく離れた場所に設置した場合であっても、位置測定誤差の増大を抑制できる。
【0080】
なお、本発明は上記の実施の形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、GPSによる位置検出機能を備えた端末の構成や動作に変更を加えることなく、屋内等のGPS衛星からの電波が受信しにくい環境にあっても精度良く位置検出可能にすることのできる効果を有し、GPS衛星からのGPS信号を屋内等で受信可能とするGPS信号発生装置及び中継システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの構成例を示すブロック図
【図2】本実施の形態に係るGPS信号発生装置及び中継システムの配置構成例を示す模式図
【図3】本実施の形態のGPS信号発生装置の構成を示すブロック図
【図4】本実施の形態のGPS信号発生装置における疑似GPS信号生成部の構成を示すブロック図
【図5】本実施の形態に係るGPS信号発生装置が受信するGPS信号またはGPS信号発生装置が出力する疑似GPS信号のタイミングの例を示すタイムチャート
【図6】本実施の形態に係るGPS信号発生装置と複数のGPS衛星との位置関係を示す模式図
【図7】本実施の形態に係るGPS信号発生装置からの擬似GPS信号及び複数のGPS衛星からのGPS信号と端末との関係を示す模式図
【図8】本実施の形態のGPS信号発生装置の変形例を示す模式図
【図9】本実施の形態のGPS信号発生装置の機能を含む携帯電話用の中継システムの構成例を示すブロック図
【図10】GPS衛星と受信点との位置関係及びGPS信号のタイミングの例を示す模式図
【図11】衛星から送出されるGPS信号の構成を示す波形図
【図12】端末が受信したGPS信号の遅延時間を検出するための一般的な動作を示す模式図
【図13】衛星から送出されるGPS信号に含まれる航法メッセージの構成を示す模式図
【符号の説明】
【0083】
10、10−1〜10−3、10A GPS信号発生装置
11 GPS信号受信部
12 航法メッセージ抽出部
13 基準タイミング抽出部
14 航法メッセージ保存部
15 位置情報記憶部
16 外部装置
17 航法メッセージタイミング生成部
18、18−1〜18−4 疑似GPS信号生成部
19 無線部
21 L1搬送波生成部
22 C/Aコード生成部
23 NAVメッセージ生成部
24 クロック生成部
25 90度移相器
26、27 乗算器
28 加算器
30 中継システム
31 屋外アンテナ
32 混合器
33 同軸ケーブル
34 リピータ装置
35 周波数変換装置
36−1〜36−4 中継局子機
37 通信信号中継部
38 アンテナ
39 接続ケーブル
39a 光ファイバ
39b 同軸ケーブル
41、42、43、44 GPS衛星
50 端末
52、53、54 電波
55 GPS受信機
101、103 GPSアンテナ
102、102−1〜102−3 アンテナ
110 建物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信部と、
自装置の位置に関する特定地点の位置情報を保持する位置情報保持部と、
前記受信したGPS信号の送信タイミングを前記位置情報に基づいて調整した信号であり、前記GPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ擬似GPS信号を生成する擬似GPS信号生成部と、
を備えるGPS信号発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記GPS信号受信部は、少なくとも4つの前記衛星からのGPS信号を受信し、
前記擬似GPS信号生成部は、前記4つの衛星の位置情報をXn、Yn、Zn(nは1〜4の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、Uz、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2))/c+CB
ΔT4=(√((X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するGPS信号発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記GPS信号受信部は、少なくとも3つの前記衛星からのGPS信号を受信し、
前記擬似GPS信号生成部は、前記3つの衛星の位置情報をXn、Yn(nは1〜3の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するGPS信号発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記GPS信号受信部は、前記衛星からC/A(Coarse and Acquisition)コードによって符号化された航法メッセージを含むGPS信号を受信して前記GPS信号に適合するC/Aコードを判別し、
前記擬似GPS信号生成部は、前記判別したC/Aコードと同じC/Aコードが割り当てられた擬似GPS信号を生成するGPS信号発生装置。
【請求項5】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記擬似GPS信号を電波により送信する送信部と、
所定位置で前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号と前記GPS信号との干渉を検出する干渉検出用GPS受信部とを備え、
前記送信部は、前記干渉検出用GPS受信部で受信されたGPS信号の受信強度に応じて、前記擬似GPS信号の送信出力を調整するGPS信号発生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のGPS信号発生装置と、
前記衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、
前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、
前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、
を備える中継システム。
【請求項7】
受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、
移動体通信の基地局からの通信信号を受信する通信用受信アンテナと、
前記受信したGPS信号の周波数を300MHz以下に変換する周波数変換部と、
前記通信用受信アンテナ及び前記GPSアンテナとケーブルを介して接続され、前記受信した通信信号と前記周波数変換後のGPS信号とを再送信する中継局親機と、
請求項1から5のいずれかに記載のGPS信号発生装置と、前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、前記通信信号を所定の領域に送出する通信中継用アンテナとを有する中継局子機と、
を備える中継システム。
【請求項1】
受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信部と、
自装置の位置に関する特定地点の位置情報を保持する位置情報保持部と、
前記受信したGPS信号の送信タイミングを前記位置情報に基づいて調整した信号であり、前記GPS信号と同じ情報及び信号形式を持つ擬似GPS信号を生成する擬似GPS信号生成部と、
を備えるGPS信号発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記GPS信号受信部は、少なくとも4つの前記衛星からのGPS信号を受信し、
前記擬似GPS信号生成部は、前記4つの衛星の位置情報をXn、Yn、Zn(nは1〜4の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、Uz、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3、ΔT4
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2+(Z1−Uz)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2+(Z2−Uz)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2+(Z3−Uz)2))/c+CB
ΔT4=(√((X4−Ux)2+(Y4−Uy)2+(Z4−Uz)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するGPS信号発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記GPS信号受信部は、少なくとも3つの前記衛星からのGPS信号を受信し、
前記擬似GPS信号生成部は、前記3つの衛星の位置情報をXn、Yn(nは1〜3の整数)、前記特定地点の位置情報をUx、Uy、光速をc、時計の誤差を表すクロックバイアスをCBとした場合、次式により算出される時間差ΔT1、ΔT2、ΔT3
ΔT1=(√((X1−Ux)2+(Y1−Uy)2))/c+CB
ΔT2=(√((X2−Ux)2+(Y2−Uy)2))/c+CB
ΔT3=(√((X3−Ux)2+(Y3−Uy)2))/c+CB
√()は()内の平方根を表す
に基づいて前記擬似GPS信号の送信タイミングを決定するGPS信号発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記GPS信号受信部は、前記衛星からC/A(Coarse and Acquisition)コードによって符号化された航法メッセージを含むGPS信号を受信して前記GPS信号に適合するC/Aコードを判別し、
前記擬似GPS信号生成部は、前記判別したC/Aコードと同じC/Aコードが割り当てられた擬似GPS信号を生成するGPS信号発生装置。
【請求項5】
請求項1に記載のGPS信号発生装置であって、
前記擬似GPS信号を電波により送信する送信部と、
所定位置で前記衛星からのGPS信号を受信し、前記擬似GPS信号と前記GPS信号との干渉を検出する干渉検出用GPS受信部とを備え、
前記送信部は、前記干渉検出用GPS受信部で受信されたGPS信号の受信強度に応じて、前記擬似GPS信号の送信出力を調整するGPS信号発生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のGPS信号発生装置と、
前記衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、
前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、
前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、
を備える中継システム。
【請求項7】
受信点の測位に利用可能な所定の衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナと、
移動体通信の基地局からの通信信号を受信する通信用受信アンテナと、
前記受信したGPS信号の周波数を300MHz以下に変換する周波数変換部と、
前記通信用受信アンテナ及び前記GPSアンテナとケーブルを介して接続され、前記受信した通信信号と前記周波数変換後のGPS信号とを再送信する中継局親機と、
請求項1から5のいずれかに記載のGPS信号発生装置と、前記GPS信号発生装置で生成された擬似GPS信号を前記受信したGPS信号と同じ周波数の無線信号に変換する無線部と、前記無線部から出力される擬似GPS信号を所定の領域に送出するGPS中継用アンテナと、前記通信信号を所定の領域に送出する通信中継用アンテナとを有する中継局子機と、
を備える中継システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−14485(P2010−14485A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173603(P2008−173603)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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