説明

GRK阻害剤からなる強心薬

【課題】新規な強心薬の提供。
【解決手段】G protein-coupled receptor kinase(G蛋白共役型受容体リン酸化酵素;GRK)阻害作用を有する化合物もしくはそのプロドラッグ、またはその塩(GRK阻害剤)を含有してなる強心薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、G protein-coupled receptor kinase(G蛋白共役型受容体リン酸化酵素;GRK)阻害作用を有する化合物もしくはそのプロドラッグ、またはその塩(以下、GRK阻害剤と略称することがある)を含有してなる強心薬(急性心収縮力改善薬)に関する。
【背景技術】
【0002】
心不全とは、心機能の異常のために、末梢臓器組織の需要に見合う血液を拍出できないことに起因して生じる病的状態の総称である。循環器系疾患の中でも極めて予後が悪い疾患のひとつであり、5年生存率は約 50% (米国心臓学会統計 1997)、65歳以上の男性患者の 8年生存率は 20% (米国心臓学会統計 2004)と言われている。米国では全人口の 2%を超える 500万人がこの疾患に罹患しており、患者数は更に増加傾向にある。心不全治療には急性の症状改善と慢性の生命予後改善の 2つの目的が存在しており、現在、薬物療法としては、急性の症状改善作用を期待して、カテコラミン・利尿薬・ジギタリス・PDE阻害薬などの薬剤が、慢性の予後・生存率の改善作用を期待して、アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシン受容体拮抗薬・βブロッカー・アルドステロン拮抗薬などが用いられている。しかし、それらの薬剤による治療効果は満足出来るものからはほど遠く、真の意味で心不全状態から回復させることができる根治療法は、心臓移植だけである。
【0003】
心臓に直接作用し、薬物投与直後から急性に心収縮力を改善する薬剤は「強心薬」と呼ばれ、前述のジギタリス・カテコラミン・PDE阻害薬などを中心に、心不全治療の、特に急性期の症状の改善に必須の薬剤として一つのカテゴリーを形成している。しかし、カテコラミンや PDE阻害薬などは、心不全の病態進行を加速し、あるいは致死性の心室性不整脈の発生頻度を上げることで、長期的にはむしろ生命予後を増悪することが知られている。また、ジギタリスには「ジギタリス中毒」と呼ばれる致死性の重篤な副作用が知られており、更に、心不全患者6800例を対象にしたプラセボ対照,二重盲検、他施設大規模臨床試験である DIGトライアルにおいても、生存率の改善作用は認められていない (非特許文献1)。すなわち、現状では、慢性投与による安全性や生命予後改善作用を明確に有する「強心薬」は存在せず、新しい作用機序に基づき、より優れた薬効プロファイルを示す新規強心薬の創製が求められている。
【0004】
一方、近年、心不全病態における心機能低下の原因の一つと考えられているβ受容体の脱感作は、GRK2 (G蛋白共役受容体リン酸化酵素-2、別名β受容体リン酸化酵素-1)による受容体リン酸化によって生じることが明らかとなり、遺伝子改変手法を用いて心臓の GRK2の働きを長期的に抑制することで、心不全モデル動物における心機能と生存率の両者の改善作用が得られるという知見が多数報告されている (非特許文献2および3)。更に、心不全モデル動物やヒト心不全患者において心臓 GRK2蛋白発現量の増加が報告されていること (非特許文献4)などから、GRKの阻害は既存の心不全治療薬とは異なり、心機能改善と長期予後改善の両立が可能な新しいメカニズムとして注目されている。例えば、ハーディングらは、拡張型心筋症のモデル動物であるカルセクエストリン心筋過剰発現心不全マウスに、GRKの阻害蛋白である βARKctを心筋で過剰発現したマウスを掛け合わせ、誕生時から慢性的に心臓 GRKを阻害することで、生後 7週目には心収縮性および心弛緩性の改善が認められ、長期的には生存日数の延長が認められたことを報告している(非特許文献5)。また、ホワイトら、およびシャハらは、心筋梗塞後心不全ウサギの心臓に βARKctを遺伝子導入して心臓の GRKを阻害すると遺伝子導入 1-3週間後に心機能の改善が認められたことを、それぞれ報告している(非特許文献6および7)。
【0005】
しかしながら、これらの遺伝子改変手法を用いた研究では、導入した遺伝子が阻害蛋白質を発現して実際に阻害作用を示すまでに数時間〜数日を必要とするため、観察された事象が GRKの阻害により直接生じたものなのか、別の経路を介して間接的に得られたものなのかを同定することができない。特に、心臓 GRKを急性に阻害することにより直接的に急性の心収縮力改善作用が得られること、すなわち、GRK阻害が新しい「強心薬」のメカニズムとなるかどうかについては、臓器や生体に投与して、急性に選択的に GRKの働きを阻害することができる低分子化合物が存在しなかったため確認することは不可能であり、全く不明であった。
【0006】
従って、長期間の GRKの阻害が複数の経路を介して、結果的に心機能の改善に結び付くという漠然とした期待はあったが、GRK阻害剤が直接心臓に作用して薬物投与直後から急性に心収縮力を改善するという「強心薬」としての医薬用途を有することは、当業者には知る由も無かったのである。
【非特許文献1】ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン、336巻、525-533頁
【非特許文献2】ネイチャーバイオテクノロジー,第14巻, 283-286頁
【非特許文献3】トレンズ・イン・カルディオバスキュラーメディシン,第9巻, 77-81頁
【非特許文献4】サーキュレーションリサーチ,第74巻,206-213頁
【非特許文献5】米国科学アカデミー紀要,第98巻,5809-5814頁
【非特許文献6】米国科学アカデミー紀要,第97巻,5428-5433頁
【非特許文献7】サーキュレーション,第103巻、1311-1316頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、現状では、慢性投与における安全性や生命予後改善作用を明確に有する「強心薬」は存在せず、新しい作用機序に基づき、より優れた薬効プロファイルを示す新規強心薬の創製が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、細胞、臓器標本、ならびに生体に適用することで、選択的に GRKを阻害できる薬剤を鋭意探索する過程において、トリアゾール骨格を有する化合物が、酵素アッセイにおいて、強い GRK阻害作用と高い選択性を有し、細胞の外から適用した際にも、細胞膜を通過して細胞内に存在する GRKを阻害できることを見いだした。更に、この化合物を摘出灌流心臓標本に直接適用することで、薬物投与直後から心収縮力が増加し、その作用はカテコラミンの共存下に置いて更に増加すること、およびその際心拍数の増加がほとんど生じないことを明らかにした。また、その化合物を麻酔ラットに静脈内持続投与することで、薬物投与直後より、血圧や心拍数にほとんど影響せずに心収縮力のみが選択的に増強され、投与中断により回復することを見いだした。
以上の結果に基づいて、GRK阻害が、心臓に直接作用し薬物投与直後から急性に心収縮力を改善する、いわゆる「強心薬」の新しいメカニズムとなることを明確にし、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)GRK阻害剤を含有してなる強心薬;
(2)GRK阻害剤がGRK2阻害剤である、(1)に記載の強心薬;
等に関する。
【発明の効果】
【0010】
既知の薬剤とは異なる新しいメカニズムに基づいて、GRK阻害剤が、心臓に直接作用し薬物投与直後から急性に心収縮力を改善する「強心薬」としての薬効を有することを初めて明らかにしたことに基づいて、「GRK阻害剤を含有してなる強心薬」を提供することができた。
また、GRK阻害剤は、心拍数の増加をほとんど伴わないとの特性を有することが併せて確認されており、慢性の生命予後改善作用を併せ持つことがその作用メカニズムから期待される。
即ち、本発明により、従来にはない優れた「強心薬」が提供され、GRK阻害剤を、その「強心薬」としての薬効に基づいて、心不全(特に、症候性心不全)の予防・治療剤、心不全の症状緩解剤、心不全患者における左室機能改善剤、等として実際に適用できることが初めて実証された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられる「GRK阻害剤」としては、GRK阻害作用を有する化合物であれば特に限定はされず、低分子化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、もしくはそれらのプロドラッグ、またはそれらの塩、等のいずれでも用いることができるが、GRK阻害作用が強いものを用いることが、本発明の実施上有利である。例えば、後述される試験例1に開示された方法でGRK2の阻害活性を測定した場合に、IC50値が、2μM以下のもの、より好ましくは、0.1μM以下のものを用いることが本発明の実施上有利であるが、これに限定されるものではない。
また、本発明で用いられる「GRK阻害剤」は、GRK阻害作用以外の薬理作用を有していても構わないが、GRK阻害作用への選択性が高いもの、取り分け、GRK2阻害作用への選択性の高いものを用いるのが本発明の実施上有利である。
【0012】
本発明で用いられるGRK阻害剤としては、例えば、国際出願番号第PCT/JP2005/005995号に記載された、以下の式(I)で表される化合物、等を挙げることができる。これらの中から適宜GRK阻害剤を選択して、本発明を実施することができる。なお、以下の化合物はあくまでGRK阻害剤の一例として挙げたものであり、これに限定する趣旨ではない。
【0013】
式(I):
【化1】


〔式中、
環Aは置換されていてもよい芳香環を示し、
環Bは置換されていてもよい5員の含窒素芳香族複素環を示し、
環Cは置換されていてもよい含窒素芳香族複素環を示し、
Xは置換されていてもよいC1-4アルキレン基を示し、
Yは置換されていてもよいイミノ基、−O−または−S(O)n−(nは0、1または2を示す。)を示す。〕
で表される化合物もしくはその塩。
【0014】
式(I)中、環Aは置換されていてもよい芳香環を示す。
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環としては、例えば、(i) 芳香族環状炭化水素、(ii) 炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれた1種または2種のヘテロ原子を好ましくは1個ないし3個含む芳香族複素環等が挙げられる。
【0015】
該「芳香族環状炭化水素」としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、等のC6-14芳香族環状炭化水素等が挙げられる。
該「芳香族複素環」としては、例えば、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等の5ないし6員の芳香族単環式複素環;例えば、ベンゾフラン、インドール、等の8〜16員(好ましくは、8〜12員)の芳香族縮合複素環(好ましくは、前記した5ないし6員の芳香族単環式複素環1〜2個(好ましくは、1個)がベンゼン環1〜2個(好ましくは、1個)と縮合した複素環、または前記した5ないし6員の芳香族単環式複素環の同一または異なった複素環2〜3個(好ましくは、2個)が縮合した複素環);等が挙げられる。
ここで、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいイミドイル基、置換されていてもよいアミジノ基、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいチオール基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいスルファモイル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、アシル基等が挙げられ、これらの任意の置換基は置換可能な位置に1ないし5個(好ましくは1ないし3個)置換していてもよい。
【0016】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基(非芳香族環状炭化水素基)、アリール基(芳香族炭化水素基)等が挙げられる。
【0017】
炭化水素基の例としての「脂肪族鎖式炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
ここで、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、等のC1-10アルキル基(好ましくはC1-6アルキル等)等が挙げられる。
「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、等のC2-6アルケニル基等が挙げられる。
「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、等のC2-6アルキニル基が挙げられる。
【0018】
炭化水素基の例としての「脂環式炭化水素基」としては、例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基等の飽和または不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられる。
ここで、「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、等のC3-9シクロアルキル基等が挙げられる。
「シクロアルケニル基」としては、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、等のC3-9シクロアルケニル基等が挙げられる。
「シクロアルカジエニル基」としては、例えば、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル等のC4-6シクロアルカジエニル基等が挙げられる。
【0019】
炭化水素基の例としての「アリール基」としては、単環式または縮合多環式芳香族炭化水素基が挙げられ、例えば、フェニル、ナフチル、等のC6-14アリール基等が好ましく、中でもC6-12アリール基等が特に好ましい。
また、炭化水素基の例として、1,2−ジヒドロナフチル、等のように、前記した脂環式炭化水素基およびアリール基から選ばれる基を構成する同一または異なった2〜3個の環(好ましくは2種以上の環)の縮合から誘導される二または三環式炭化水素基等も挙げられる。さらに、アダマンチル等の橋かけ式炭化水素基も挙げられる。
【0020】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」が有していてもよい置換基としては、例えば、
(i) ニトロ基;
(ii) ヒドロキシ基、オキソ基;
(iii) シアノ基;
(iv) カルバモイル基;
(v) モノ−またはジ−C1-4アルキル−カルバモイル基(該アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1-4アルコキシ基等で置換されていてもよい)、モノ−またはジ−C2-4アルケニル−カルバモイル基(該アルケニル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1-4アルコキシ基等で置換されていてもよい)、モノ−またはジ−フェニル−カルバモイル基、モノ−またはジ−アラルキル−カルバモイル基、C1-4アルコキシ−カルボニル−カルバモイル基、C1-4アルキルスルホニル−カルバモイル基、C1-4アルコキシ−カルバモイル基、アミノ−カルバモイル基、モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ−カルバモイル基、モノ−またはジ−フェニルアミノ−カルバモイル基;
(vi) カルボキシル基;
(vii) C1-4アルコキシ−カルボニル基;
(viii) スルホ基;
(ix) ハロゲン原子;
(x) ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ基、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基、カルボキシル基で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−カルボニル基で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−C1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−C1-4アルコキシ−C1-4アルコキシ基;
(xi) フェノキシ基、フェノキシ−C1-4アルキル基、フェノキシ−C1-4アルコキシ基、C1-4アルキル−カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、モノ−またはジ−C1-4アルキル−カルバモイルオキシ基;
(xii) ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル基、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ基およびヒドロキシで置換されていてもよいC1-4アルキル基から選ばれる置換基で置換されていてもよいC6-12アリール基;
(xiii) ハロゲン化されていてもよいフェニル−C1-4アルキル基、ハロゲン化されていてもよいフェニル−C2-4アルケニル基、ハロゲン化されていてもよいフェノキシ基、ピリジルオキシ基、C3-10シクロアルキル−C1-4アルコキシ基、C3-10シクロアルキル−C1-4アルキル基;
(xiv) ヒドロキシル基で置換されていてもよいC3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル基とベンゼン環とが縮合した二環式炭化水素基(例えば、インダニル等)、橋かけ式炭化水素基(例えば、アダマンチル等);
(xv) ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル基、ハロゲン化されていてもよいC2-6アルケニル基、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルチオ基、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-4アルキル基、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-4アルキルチオ基;
(xvi) メルカプト基、チオキソ基;
(xvii) ハロゲン原子、カルボキシル基およびC1-4アルコキシ−カルボニル基から選ばれる置換基でそれぞれ置換されていてもよいベンジルオキシ基またはベンジルチオ基;
(xviii) ハロゲン化されていてもよいフェニルチオ基、ピリジルチオ基、フェニルチオ−C1-4アルキル基、ピリジルチオ−C1-4アルキル基;
(xix) ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルフィニル基;
(xx) ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、フェニルスルホニル−C1-4アルキル基;
(xxi) スルファモイル基、モノ−またはジ−C1-4アルキルスルファモイル基(該アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1-4アルコキシ基等で置換されていてもよい);
(xxii) アミノ基、C1-10アシル−アミノ基[C1-10アシルはハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基等で置換されていてもよい]、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ−カルボニルアミノ、カルバモイルアミノ基、モノ−またはジ−C1-4アルキル−カルバモイルアミノ基;
(xxiii) モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ基(該アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1-4アルコキシ基等で置換されていてもよい)、フェニルアミノ、ベンジルアミノ;
(xxiv) 4ないし6員環状アミノ基、4ないし6員環状アミノ−カルボニル基、4ないし6員環状アミノ−カルボニル−オキシ基、4ないし6員環状アミノ−カルボニル−アミノ基、4ないし6員環状アミノ−スルホニル基、4ないし6員環状アミノ−C1-4アルキル基;
(xxv) ハロゲン原子、カルボキシル基およびC1-4アルコキシ−カルボニル基から選ばれる置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1-6アシル基またはベンゾイル基;
(xxvi) ハロゲン原子で置換されていてもよいベンゾイル基;
(xxvii) 5ないし10員複素環基(該複素環基はC1-4アルキル基等で置換されていてもよい);
(xxviii) 5ないし10員複素環−カルボニル基(該複素環基はC1-4アルキル基等で置換されていてもよい);
(xxix) ヒドロキシイミノ基、C1-4アルコキシイミノ基;
(xxx) ハロゲン化されていてもよい直鎖状または分枝状のC1-4アルキレンジオキシ基;
等が挙げられる。
【0021】
該「炭化水素基」は、置換可能な位置に、これらの置換基を1ないし5個(好ましくは1ないし3個、より好ましくは1または2個)有していてもよく、2以上を有する場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0022】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい複素環基」における「複素環基」としては、例えば、環系を構成する原子(環原子)として、酸素原子、硫黄原子および窒素原子等から選ばれたヘテロ原子1ないし3種(好ましくは1ないし2種)を少なくとも1個(好ましくは1ないし4個、さらに好ましくは1ないし2個)含む芳香族複素環基、飽和あるいは不飽和の非芳香族複素環基(脂肪族複素環基)等が挙げられる。
【0023】
「芳香族複素環基」としては、例えば、フリル、チエニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル等の5ないし6員の芳香族単環式複素環基;例えば、ベンゾフラニル、インドリル、イミダゾ〔1,5−a〕ピリジル、等の8〜16員(好ましくは8〜12員)の芳香族縮合複素環基(好ましくは、前記した5ないし6員の芳香族単環式複素環基がベンゼン環と縮合した複素環基、または前記した5ないし6員の芳香族単環式複素環基の同一または異なった複素環が縮合した複素環基であり、より好ましくは前記した5ないし6員の芳香族単環式複素環基がベンゼン環と縮合した複素環基である);等が挙げられる。
【0024】
「非芳香族複素環基」としては、例えば、ピロリジニル、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル(硫黄原子は酸化されていてもよい)、ピペラジニル等の3〜8員(好ましくは5〜6員)の飽和あるいは不飽和(好ましくは飽和)の非芳香族複素環基(脂肪族複素環基)等;あるいは1,2,3,4−テトラヒドロキノリル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリル、等のように前記した芳香族単環式複素環基または芳香族縮合複素環基の一部または全部の二重結合が飽和した非芳香族複素環基等が挙げられる。
【0025】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい複素環基」における「複素環基」が有していてもよい置換基としては、例えば、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」の置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」が有していてもよい置換基と同様な数の同様の基等が挙げられる。
【0026】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよいアミノ基」、「置換されていてもよいイミドイル基」、「置換されていてもよいアミジノ基」、「置換されていてもよいヒドロキシ基」、「置換されていてもよいチオール基」におけるアミノ基、イミドイル基、アミジノ基、ヒドロキシ基およびチオール基がそれぞれ有していてもよい置換基としては、例えば、
(i) ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ、フェニル(該フェニルは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ等で置換されていてもよい)、ハロゲン化されていてもよいナフチルおよびC3-10シクロアルキルから選ばれた置換基等で置換されていてもよい低級アルキル基;
(ii) ハロゲン化されていてもよいフェニル基;
(iii) ハロゲン化されていてもよいC3-10シクロアルキル基;
(iv) アシル基[ハロゲン化されていてもよいC1-6アルカノイル、フェニルアセチル(該フェニルは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル等で置換されていてもよい)、ハロゲン化されていてもよいベンゾイル、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、ハロゲン化されていてもよいベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル等];
(v) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ−カルボニル基、フェニルで置換されていてもよいC1-6アルコキシ−カルボニル基;
(vi) モノ−またはジ−アラルキル−カルバモイル基、モノ−またはジ−C1-6アルキル−カルバモイル基、フェニル−カルバモイル基;
(vii) 複素環基(例えば、前記した「置換されていてもよい複素環基」における「複素環基」と同様のもの等);
等が挙げられる。置換基としての「置換されていてもよいアミノ基」における「アミノ基」は、置換されていてもよいイミドイル基(例えば、C1-6アルキルイミドイル、C1-6アルコキシイミドイル、C1-6アルキルチオイミドイル、アミジノ等)、1〜2個のC1-6アルキルで置換されていてもよいアミノ基等で置換されていてもよい。
また、「置換されていてもよいアミノ基」、「置換されていてもよいイミドイル基」および「置換されていてもよいアミジノ基」の場合、2個の置換基が窒素原子と一緒になって「環状アミノ基」を形成する場合もあり、この様な場合の環状アミノ基としては、例えば、1−アゼチジニル、1−ピロリジニル、ピペリジノ、チオモルホリノ、モルホリノ、1−ピペラジニル、および4位に低級アルキル基、アラルキル基、アリール基等を有していてもよい、1−ピペラジニル、1−ピロリル、1−イミダゾリル等の3〜8員(好ましくは5〜6員)の環状アミノ基等が挙げられる。
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環上に隣接して存在する二つの置換基が一体となって、直鎖状または分枝状のC1-4アルキレンジオキシ基等を形成していてもよい。
【0027】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよいカルバモイル基」としては、無置換のカルバモイル基のほか、N−モノ置換カルバモイル基およびN,N−ジ置換カルバモイル基が挙げられる。
「N−モノ置換カルバモイル基」の置換基としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ等が挙げられる。
「N−モノ置換カルバモイル基」の置換基の例としての「置換されていてもよい炭化水素基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基等が挙げられる。
「N−モノ置換カルバモイル基」の置換基の例としての「置換されていてもよい複素環基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい複素環基」と同様の基等が挙げられる。
「N−モノ置換カルバモイル基」の置換基の例としての「置換されていてもよいアミノ基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよいアミノ基」と同様の基等が挙げられる。
「N,N−ジ置換カルバモイル基」は、窒素原子上に2個の置換基を有するカルバモイル基を意味し、該置換基の一方の例としては、上記した「N−モノ置換カルバモイル基」における置換基と同様のものが挙げられ、他方の例としては、例えば、低級アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C7-10アラルキル基等が挙げられる。また、2個の置換基が窒素原子と一緒になって環状アミノ基を形成する場合もあり、この様な場合の環状アミノカルバモイル基としては、例えば、1−アゼチジニルカルボニル、1−ピロリジニルカルボニル、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル(硫黄原子は酸化されていてもよい)、1−ピペラジニルカルボニル、および4位に低級アルキル基、アラルキル基、アリール基等を有していてもよい、1−ピペラジニルカルボニル等の3〜8員(好ましくは5〜6員)の環状アミノ−カルボニル基等が挙げられる。
【0028】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよいスルファモイル基」としては、無置換のスルファモイル基のほか、N−モノ置換スルファモイル基およびN,N−ジ置換スルファモイル基が挙げられる。
「N−モノ置換スルファモイル基」の置換基としては、「N−モノ置換カルバモイル基」の置換基と同様の基等が挙げられる。
「N,N−ジ置換スルファモイル基」は、窒素原子上に2個の置換基を有するスルファモイル基を意味し、該置換基の一方の例としては、上記した「N−モノ置換スルファモイル基」における置換基と同様のものが挙げられ、他方の例としては、例えば、低級アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C7-10アラルキル基等が挙げられる。また、2個の置換基が窒素原子と一緒になって環状アミノ基を形成する場合もあり、この様な場合の環状アミノスルファモイル基としては、例えば、1−アゼチジニルスルホニル、1−ピロリジニルスルホニル、ピペリジノスルホニル、モルホリノスルホニル、チオモルホリノスルホニル(硫黄原子は酸化されていてもよい)、1−ピペラジニルスルホニル、および4位に低級アルキル基、アラルキル基、アリール基等を有していてもよい、1−ピペラジニルスルホニル等の3〜8員(好ましくは5〜6員)の環状アミノ−スルホニル基等が挙げられる。
【0029】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「エステル化されていてもよいカルボキシル基」としては、遊離のカルボキシル基のほか、例えば、低級アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
「低級アルコキシカルボニル基」としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、等のC1-6アルコキシ−カルボニル等が挙げられ、中でもC1-3アルコキシ−カルボニル等が好ましい。
「アリールオキシカルボニル基」としては、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフトキシカルボニル、2−ナフトキシカルボニル等のC6-12アリール−オキシカルボニル等が好ましい。
「アラルキルオキシカルボニル基」としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル等のC7-10アラルキル−オキシカルボニル等(好ましくは、C6-10アリール−C1-4アルコキシ−カルボニル等)が好ましい。
該「低級アルコキシカルボニル基」、「アリールオキシカルボニル基」、「アラルキルオキシカルボニル基」は置換基を有していてもよく、その置換基としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」が有していもよい置換基として挙げたものと同様の基が同様な数用いられる。
【0030】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「アシル基」としては、カルボン酸由来のアシル基、スルフィン酸由来のアシル基、スルホン酸由来のアシル基およびホスホン酸由来のアシル基等が挙げられる。
該「カルボン酸由来のアシル基」としては、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基(例えば、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基等)または置換されていてもよい複素環基(例えば、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい複素環基」と同様の基等)とカルボニル(-C(O)-)とが結合した基であり、例えば、ホルミル;アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル、クロトニル、トリフルオロアセチル等のハロゲン化されていてもよい鎖状もしくは環状のC2-8アルカノイル;ベンゾイル、ニコチノイル、イソニコチノイル等が挙げられ、中でも、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ピバロイル等のC2-5アルカノイル等が好ましい。
該「スルフィン酸由来のアシル基」としては、置換されていてもよい炭化水素基(例えば、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基等)または置換されていてもよい複素環基(例えば、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい複素環基」と同様の基等)とスルフィニル(-S(O)-)とが結合した基であり、例えば、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、プロパンスルフィニル、シクロプロパンスルフィニル、シクロペンタンスルフィニル、シクロヘキサンスルフィニル等のハロゲン化されていてもよい鎖状もしくは環状のC1-6アルキルスルフィニル;ベンゼンスルフィニル、トルエンスルフィニル等が挙げられる。
該「スルホン酸由来のアシル基」としては、置換されていてもよい炭化水素基(例えば、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基等)または置換されていてもよい複素環基(例えば、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基としての「置換されていてもよい複素環基」と同様の基等)とスルホニル(-S(O)-)とが結合した基であり、例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、シクロプロパンスルホニル、シクロペンタンスルホニル、シクロヘキサンスルホニル等のハロゲン化されていてもよい鎖状もしくは環状のC1-6アルキルスルホニル;ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル等が挙げられる。
該「ホスホン酸由来のアシル基」としては、例えば、ジメチルホスホノ、ジエチルホスホノ、ジイソプロピルホスホノ、ジブチルホスホノ、2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスフィナン−2−イル等の、環を形成していてもよいモノ−もしくはジ−C1-4アルキルホスホノ等が挙げられる。
【0031】
環Aにおける芳香環が有していてもよい置換基としては、
ハロゲン原子;
1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、カルバモイル、モノ−またはジ−ベンジルカルバモイル、モノ−またはジ−フェネチルカルバモイル、カルボキシル、C1-4アルコキシ−カルボニル、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ、C1-6アルカノイルアミノ、ハロゲン化されていてもよいフェニル、ハロゲン化されていてもよいベンゾイル等で置換されていてもよい);
1-6アルケニル基(該C1-6アルケニル基は、ハロゲン化されていてもよいベンゾイル等で置換されていてもよい);
フェニル基(該フェニルは、ハロゲン原子、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、スルホ基、C1-4アルコキシ−カルボニル、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル、アミノ、モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ、C1-6アルカノイルアミノ等で置換されていてもよい);
非芳香族複素環基(好ましくは、オキサゾリン、該非芳香族複素環基は、オキソ基等で置換されていてもよい);
アミノ基[該アミノ基は、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルカノイル、ハロゲン化されていてもよいベンゾイル、フェニルアセチル(該フェニルは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル等で置換されていてもよい)、モノ−またはジ−ベンジルカルバモイル基、モノ−またはジ−フェネチルカルバモイル基、フェニルで置換されていてもよいC1-6アルコキシ−カルボニル基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル等で置換されていてもよい];
ヒドロキシ基[該ヒドロキシ基は、フェニル(該フェニルは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル等で置換されていてもよい)およびハロゲン化されていてもよいナフチルから選ばれた置換基で置換されていてもよいC1-6アルキル、ハロゲン化されていてもよいフェニル等で置換されていてもよい];
1-4アルキレンジオキシ基;
チオール基(該チオール基は、ハロゲン原子もしくはハロゲン化されていてもよいフェニルで置換されていてもよいC1-6アルキル、ハロゲン化されていてもよいフェニル等で置換されていてもよい);
カルバモイル基;
N−モノ置換カルバモイル基[例えば、
N−C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン原子、ヒドロキシ等で置換されていてもよい)−カルバモイル基;
N−フェニル(該フェニルは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル等で置換されていてもよい)−カルバモイル基;
N−非芳香族複素環(好ましくは、テトラヒドロピラニル)−カルバモイル基;
N−二または三環式炭化水素(好ましくは、テトラヒドロナフチル、インダニル、フルオレニル、該二または三環式炭化水素は、ヒドロキシ等で置換されていてもよい)−カルバモイル基;
N−C6-12アリール(該アリールは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ、ヒドロキシで置換されていてもよいC1-4アルキル等で置換されていてもよい)−C1-6アルキル(該C1-6アルキルは、ヒドロキシ、カルバモイル等で置換されていてもよい)−カルバモイル基;
N−5ないし10員複素環(好ましくは、ピリジル、フリル、チエニル、インドリルであり、該複素環はC1-4アルキル等で置換されていてもよい)−C1-6アルキル−カルバモイル基;
N−C3-10シクロアルキル(該C3-10シクロアルキルは、ヒドロキシ等で置換されていてもよい)−C1-6アルキル−カルバモイル基;
N−二環式炭化水素−C1-6アルキル−カルバモイル;
N−アダマンチル−C1-6アルキル−カルバモイル基;
N−フェノキシ−C1-6アルキル−カルバモイル基;
N−フェニルアミノ−C1-6アルキル−カルバモイル基等];
N−ジ置換カルバモイル基[例えば、N−C1-6アルキル−N−フェニル−C1-6アルキル−カルバモイル基;
5〜6員環状アミノ(好ましくは、ピペリジン環を形成)−カルボニル基(好ましくは、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イルカルボニル)等];
スルファモイル基;
N−モノ置換スルファモイル基[例えば、N−フェニル(該フェニルは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル等で置換されていてもよい)−C1-6アルキル−スルファモイル];
カルボキシル基;
1-6アルコキシ−カルボニル基;
ハロゲン化されていてもよいC2-8アルカノイル基;
ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルフィニル基;
ベンジルスルフィニル基;
ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基;
ベンジルスルホニル基;
等が好ましい。
【0032】
環Aとしては、置換されていてもよいベンゼン環または置換されていてもよいピリジン環等が好ましく、中でも、置換されていてもよいベンゼン環がより好ましく、置換されていてもよいカルバモイル基で3位が置換されていてもよいベンゼン環が特に好ましい。とりわけ、N−モノ置換カルバモイル基で3位が置換されていてもよいベンゼン環が最も好ましい。
【0033】
式(I)中、Xは置換されていてもよいC1-4アルキレン基を示す。
Xで示される「置換されていてもよいC1-4アルキレン基」におけるC1-4アルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等が挙げられる。
該C1-4アルキレン基が有していてもよい置換基としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」における炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基等が挙げられ(但し、オキソ基ではないことが好ましい)、これらの置換基は置換可能な任意の位置に1ないし3個(好ましくは1個)置換していてもよい。該C1-4アルキレン基が有していてもよい置換基としては、
ハロゲン原子;
ヒドロキシ基;
カルバモイル基;
カルボキシル基;
1-4アルコキシ−カルボニル基;
ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ基;
ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキル基;
ハロゲン化されていてもよいフェニル基;
アミノ基;
モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ基;
等が好ましい。
Xとしては置換されていてもよいメチレンが好ましく、無置換のメチレンが特に好ましい。
【0034】
式(I)中、環Bは置換されていてもよい5員の含窒素芳香族複素環を示す。
該「5員の含窒素芳香族複素環」としては、例えば、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピピラゾール、オキサジアゾール(1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール)、フラザン、オキサジアゾール(1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール)、トリアゾール(1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール)、テトラゾール等が挙げられる。好ましくは、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾールおよびチアジアゾールである。
【0035】
該「5員の含窒素芳香族複素環」が有していてもよい置換基としては、前記した環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基と同様の基等が挙げられ、これらの置換基は置換可能な任意の位置に1ないし3個(好ましくは1個)置換していてもよい。該「5員の含窒素芳香族複素環」が有していてもよい置換基としては、
ハロゲン原子;
1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、ハロゲン化されていてもよいフェニル、C1-4アルコキシ−カルボニル、スルファモイル、スルホ基、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ、ベンジルオキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ、C1-6アルカノイルアミノ、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルチオ、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルフィニル、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルホニル等で置換されていてもよい);
ハロゲン化されていてもよいフェニル;
等が好ましい。
【0036】
環Bは該「5員の含窒素芳香族複素環」の置換可能ないずれの位置で環CおよびXと結合していてもよく、中でも、該「5員の含窒素芳香族複素環」の構成炭素原子に環CおよびXが結合することが好ましい。
中でも、式(I)中、式:
【化2】

で表される基が、
【化3】

(式中、Rは水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい複素環基またはアシル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基またはアシル基を示し、Xは前記と同意義を示す)であることが好ましい。
【0037】
で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基等が挙げられる。
で示される「置換されていてもよい複素環基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい複素環基」と同様の基等が挙げられる。
で示される「アシル基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「アシル基」と同様の基等が挙げられる。
【0038】
としては、
水素原子;
1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、ハロゲン化されていてもよいフェニル、C1-4アルコキシ−カルボニル、スルファモイル、スルホ基、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ、ベンジルオキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ、C1-6アルカノイルアミノ、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルチオ、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルフィニル、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルホニル等で置換されていてもよい);
ハロゲン化されていてもよいフェニル;
等が好ましい。
【0039】
およびRで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基等が挙げられる。
およびRで示される「置換されていてもよい複素環基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい複素環基」と同様の基等が挙げられる。
およびRで示される「置換されていてもよいアミノ基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよいアミノ基」と同様の基等が挙げられる。
およびRで示される「置換されていてもよいヒドロキシ基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよいヒドロキシ基」と同様の基等が挙げられる。
およびRで示される「エステル化されていてもよいカルボキシル基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「エステル化されていてもよいカルボキシル基」と同様の基等が挙げられる。
およびRで示される「置換されていてもよいカルバモイル基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよいカルバモイル基」と同様の基等が挙げられる。
およびRで示される「アシル基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「アシル基」と同様の基等が挙げられる。
【0040】
およびRとしては、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基等が好ましく、中でも、
水素原子;
ハロゲン原子;
1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、ハロゲン化されていてもよいフェニル、C1-4アルコキシ−カルボニル、スルファモイル、スルホ基、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルコキシ、ベンジルオキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1-4アルキルアミノ、C1-6アルカノイルアミノ、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルチオ、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルフィニル、ハロゲン化されていてもよいC1-4アルキルスルホニル等で置換されていてもよい);
ハロゲン化されていてもよいフェニル;
等が特に好ましい。
【0041】
式(I)中、Yは置換されていてもよいイミノ基、−O−または−S(O)n−(nは0、1または2を示す。)を示す。
Yで示される「置換されていてもよいイミノ基」としては、式:−N(R)−(式中、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい複素環基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基またはアシル基を示す。)で表される2価の基が好ましい。
で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基等が挙げられる。
で示される「置換されていてもよい複素環基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよい複素環基」と同様の基等が挙げられる。
で示される「エステル化されていてもよいカルボキシル基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「エステル化されていてもよいカルボキシル基」と同様の基等が挙げられる。
で示される「置換されていてもよいカルバモイル基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「置換されていてもよいカルバモイル基」と同様の基等が挙げられる。
で示される「アシル基」としては、環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における芳香環が有していてもよい置換基としての「アシル基」と同様の基等が挙げられる。
【0042】
Yとしては、置換されていてもよいイミノ基(例えば、式:−N(R)−で表される基)が好ましく、中でも、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基、カルバモイル基、ハロゲン化されていてもよいC2-8アルカノイル基、ベンゾイル基等で置換されていてもよいイミノ基(即ち、−N(R)−において、Rが、水素原子、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基、カルバモイル基、ハロゲン化されていてもよいC2-8アルカノイル基、ベンゾイル基等)がより好ましく、Rが、水素原子、C1-4アルキル基であることが特に好ましい。
Yが置換されたイミノ基である場合、イミノ基が有する置換基と環Aにおける「芳香環」が有する置換基とが結合して環(例えば、テトラヒドロキノリン)を形成してもよい。
【0043】
式(I)中、環Cは置換されていてもよい含窒素芳香族複素環を示す。
環Cで示される「置換されていてもよい含窒素芳香族複素環」における「含窒素芳香族複素環」としては、例えば、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール)、トリアゾール(1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール)、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン(1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン)環等の5ないし6員の含窒素芳香族単環式複素環;例えば、インドール、イソインドール、ピラゾロ〔1,5−a〕ピリジン、イミダゾ〔1,2−a〕ピリジン、イミダゾ〔1,5−a〕ピリジン、イミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン、イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジン、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−a〕ピリジン、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−b〕ピリダジン等の8〜16員(好ましくは8〜12員)の含窒素芳香族縮合複素環等が挙げられ、5ないし6員の含窒素芳香族単環式複素環が好ましい。
【0044】
該「含窒素芳香族複素環」が有していてもよい置換基としては、前記した環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における置換基と同様の基等が挙げられ、これらの置換基は置換可能な任意の位置に1ないし4個(好ましくは1ないし2個)置換していてもよい。該「含窒素芳香族複素環」が有していてもよい置換基としては、
ハロゲン原子;
ヒドロキシ基;
カルバモイル基;
カルボキシル基;
1-6アルコキシ−カルボニル基
スルファモイル基;
スルホ基;
ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基;
1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルバモイルオキシ基等で置換されていてもよい);
ハロゲン化されていてもよいフェニル基;
アミノ基;
モノ−またはジ−C1-6アルキルアミノ基[該アルキル基は、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ、フェニル(該フェニルは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ等で置換されていてもよい)、C3-10シクロアルキルから選ばれる置換基で置換されていてもよい];
モノ−またはジ−フェニルアミノ基(該フェニルは、ハロゲン化されていてもよい);
モノ−またはジ−C3-10シクロアルキルアミノ基;
ハロゲン化されていてもよいC1-6アルカノイルアミノ基;
ハロゲン化されていてもよいベンゾイルアミノ基;
フェニルアセチルアミノ基;
モノ−またはジ−C1-6アルキル−カルバモイルアミノ基;
ハロゲン化されていてもよいフェニル−カルバモイルアミノ基;
ハロゲン化されていてもよいフェニル−カルバモイル基;
芳香族複素環(好ましくは、チオフェン)−カルバモイル基;
ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ基;
ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルフィニル基;
ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基;
等が好ましい。
【0045】
また、環Cで示される「置換されていてもよい含窒素芳香族複素環」における「含窒素芳香族複素環」が互いに隣接する2以上の置換基を有する場合、置換基同士が結合して環(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等のC4-8シクロアルカン環、ベンゼン環等)を形成していてもよい。
環Cは、該「含窒素芳香族複素環」の置換可能ないずれの位置で環Bと結合していてもよく、中でも、該「含窒素芳香族複素環」の構成炭素原子で環Bと結合することが好ましい。
【0046】
環Cとしては、置換されていてもよいピリジン環または置換されていてもよいピリミジン環が好ましく、中でも、式(I)中、式:
【化4】

で表される基が、
【化5】

〔式中、環C’および環C”はそれぞれ置換されていてもよい。〕であることが好ましい。
環C’および環C”がそれぞれ有していてもよい置換基としては、環Cが有していてもよい置換基と同様の基が挙げられる。
ピリジン環を構成する窒素原子は、酸化されていてもよい。
【0047】
式(I)で表される化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
N−ベンジル−3−[[[5−(4−ピリジル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
4−クロロ−3−フェニルアセトアミド−N−[[5−(4−ピリジル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アニリン、
N−ベンジル−3−[[[5−(4−ピリジル)イソオキサゾール−3−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
N−ベンジル−N’−[3−[[[5−(4−ピリジル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アミノ]フェニル]ウレア、
4−クロロ−N−[[5−(4−ピリジル)ピラゾール−3−イル]メチル]アニリン、
N−ベンジル−3−[[[5−(4−ピリジル)ピラゾール−3−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
3−(メチルチオ)−N−[[5−(4−ピリジル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アニリン、
N−(3−メトキシベンジル)−3−[[[5−(4−ピリジル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
3−[[[4−メチル−5−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アミノ]−N−[2−(トリフルオロメチル)ベンジル]ベンズアミド、
N−ベンジル−3−[[[4−メチル−5−(4−ピリジル)ピラゾール−3−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
N−(1−インダニル)−3−[[[4−(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−5−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
N−[2,6−ジフルオロベンジル]−3−[[[4−メチル−3−(4−ピリミジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−5−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
N−(2,6−ジフルオロベンジル)−3−[[[4−プロピル−3−(4−ピリミジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−5−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、
N−[(R)−1−フェニルエチル]−3−[[[5−(4−ピリジル)チアゾール−2−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド、および
N−[(R)−1−フェニルエチル]−3−[[[5−(4−ピリジル)−1,3,4−チアジアゾール−2−イル]メチル]アミノ]ベンズアミド
【0048】
化合物(I)の塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)等の無機塩、アンモニウム塩等、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0049】
上記の化合物(I)は、例えば、後述の参考例1で開示された方法、その他有機合成において通常用いられる方法を適宜適応して製造することができる。
【0050】
化合物(I)はプロドラッグとして用いてもよい。化合物(I)のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により化合物(I)に変換する化合物、すなわち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物をいう。
【0051】
本発明に基づいてGRK阻害剤を強心薬として用いる場合には、GRK阻害剤を単独で、または常法(例えば、日本薬局方記載の方法等)に従って、薬理学的に許容される担体を混合した医薬組成物、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、坐剤、徐放剤、貼布剤等として、経口的または非経口的(例、局所、直腸、静脈内投与、静脈内持続投与、等)に安全に投与することができる。
GRK阻害剤の医薬組成物中での含有量は、組成物全体の約0.01ないし11重量%、好ましくは約2ないし85重量%である。
GRK阻害剤の投与量は、投与対象、投与ルート、疾患等によっても異なるが、例えば、成人(体重約60kg)に対し、経口剤として投与する場合、有効成分であるGRK阻害剤として約1ないし1000mg、好ましくは約3ないし300、さらに好ましくは約10ないし200であって、1日1ないし数回に分けて投与することができる。これらは、使用されるGRK阻害剤の作用強度、分子量などに応じて、個別に適宜調整され得る。
また、本発明の「GRK阻害剤からなる強心薬」は、適宜、通常心不全治療に用いられる薬剤、例えば、ジギタリス、カテコラミン (例、ドブタミン、ドパミン、デノパミン、ザモテロール等)、β遮断薬 (ビソプロロール、カルベジロール等)、硝酸薬 (ニトログリセリン等)、ヒドララジン、Ca拮抗薬 (アムロジピン等)、ACE阻害薬 (エナラプリル等)、AII拮抗薬 (カンデサルタン等)、利尿薬 (フロセミド等)、PDE阻害薬 (ミルリノン等)、Ca感受性増加薬 (ピモベンダン等)、血栓溶解薬 (t-PA等)、抗凝固薬 (ヘパリン、ワルファリン等)、抗血小板薬 (アスピリン等)、抗不整脈薬 (アミオダロン等)、HMG-CoA還元酵素阻害薬 (アトロバスタチン、シンバスタチン等)、α遮断薬 (プラゾシン等)、心房利尿ペプチド、NEP阻害薬 (ファシドトリル等)、エンドセリン拮抗薬 (ボセンタン等)、アルドステロン拮抗薬 (スピロノラクトン等)、バソプレシン拮抗薬 (コニバプタン等)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬、等と併用して、あるいはこれらの医薬成分を適宜配合して使用することが出来る。かかる併用により、単独で投与した場合に比較して相乗的な効果が期待できる。更に、重症心不全に対する非薬物療法、例えば、補助循環法 (大動脈内バルーンパンピング、補助人工心臓等)、バチスタ術、心臓移植等と併用して使用することができる。
【0052】
さらに、本発明の「GRK阻害剤からなる強心薬」を、上記各疾患に適用する際に、生物製剤(例:抗体、ワクチン製剤等)と併用することも可能であり、また、遺伝子治療法等と組み合わせて、併用療法として適用することも可能である。抗体およびワクチン製剤としては、例えば、アンジオテンシンIIに対するワクチン製剤、CETPに対するワクチン製剤、CETP抗体、TNFα抗体や他のサイトカインに対する抗体、アミロイドβワクチン製剤、1型糖尿病ワクチン(Peptor社のDIAPEP-277等)等の他、サイトカイン、レニン・アンジオテンシン系酵素およびその産物に対する抗体あるいはワクチン製剤、血中脂質代謝に関与する酵素や蛋白に対する抗体あるいはワクチン製剤、血中の凝固・線溶系に関与する酵素や蛋白に関する抗体あるいはワクチン、糖代謝やインスリン抵抗性に関与する蛋白に対する抗体あるいはワクチン製剤等が挙げられる。また、遺伝子治療法としては、例えば、サイトカイン、レニン・アンジオテンシン系酵素およびその産物に関連する遺伝子を用いた治療法、β受容体やアデニレートサイクレース等のシグナル伝達系に関連する遺伝子を用いた治療法、βARKctやβアレスチン等 GRKと関連する遺伝子を用いた治療法、NFκBデコイ等のDNAデコイを用いる治療方法、アンチセンスを用いる治療方法、血中脂質代謝に関与する酵素や蛋白に関連する遺伝子(例えば、コレステロールまたはトリグリセリドまたはHDL-コレステロールまたは血中リン脂質の代謝、排泄、吸収に関連する遺伝子等)を用いた治療法、末梢血管閉塞症等を対象とした血管新生療法に関与する酵素や蛋白(例えば、HGF,VEGF等の増殖因子等)に関連する遺伝子を用いた治療法、糖代謝やインスリン抵抗性に関与する蛋白に関連する遺伝子を用いた治療法、TNF等のサイトカインに対するアンチセンス等が挙げられる。また、心臓再生、腎再生、膵再生、血管再生等各種臓器再生法や骨髄細胞(骨髄単核細胞、骨髄幹細胞等)や筋肉への分化能を有する他の細胞 (胚幹細胞、筋芽細胞等)の移植を利用した血管および心筋新生療法と併用することも可能である。
【0053】
投与形態としては、例えば、(1)GRK阻害剤と併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)GRK阻害剤と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)GRK阻害剤と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)GRK阻害剤と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)GRK阻害剤と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、GRK阻害剤投与後、併用薬物の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、GRK阻害剤と併用薬物との配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、GRK阻害剤1重量部に対し、併用薬物を0.01〜100重量部用いればよい。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明の剤の一例を用いた薬理試験結果を示す。なお、この実施例は単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0055】
参考例1
薬理試験において用いられた試験化合物(1)の製造方法を以下に示す。
3−[[[4−メチル−5−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アミノ]−N−[2−(トリフルオロメチル)ベンジル]ベンズアミド
試験化合物(1)
【化6】

3−[[[4−メチル−5−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]メチル]アミノ]安息香酸(155 mg)、2−(トリフルオロメチル)ベンジルアミン(175 mg)、WSC(144 mg)および1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール一水和物(7.7 mg)をDMF(2.0 mL)に混合させ、室温で18時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル(100 mL)を加え混合物を水(2×30 mL)ついで飽和食塩水(20 mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル→酢酸エチル:メタノール=2:1)で精製し題記化合物225 mg(収率96%)を無色非結晶性物質として得た。
1H-NMR (300 MHz, Me2SO-d6) δ 3.78 (3H, s), 4.55 (2H, d, J = 5.7 Hz), 4.64 (2H, d, J = 5.4 Hz), 6.50 (1H, t, J = 5.4 Hz), 6.95 (1H, d, J = 6.6 Hz), 7.16 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.22 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.29 (1H, s), 7.47 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.51 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.66 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.72-7.75 (3H, m), 8.76 (2H, dd, J = 5.3, 0.8 Hz), 8.94 (1H, t, J = 5.7 Hz). Anal. Calcd. for C24H21F3N6O・1.2H2O: C, 59.06; H, 4.83; N, 17.22. Found: C, 59.16; H, 4.84; N, 16.84.
【0056】
以下に述べる試験例により、実質的にGRK阻害作用のみを有し、細胞あるいは臓器灌流標本で細胞外から適用することにより、GRK阻害作用を示すことが確認された試験化合物(1)が直接心臓に作用して、心収縮力を改善したこと、が実証された。
従って、GRK阻害作用が心収縮力改善の本質的作用であることが明らかであり、GRK阻害剤が強心薬として有用であることが実証された。
【0057】
試験例1
試験化合物(1)の GRK2、PKCα、PKA、ROKαに対する酵素レベルのキナーゼ阻害作用を評価する目的で以下の実験を行った。
GRK2に対する酵素阻害活性は、ピッチャーらの報告 (ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー、273巻、12316-12324頁)を参考に、チューブリンを基質として測定した。すなわち、0.15μMの精製ウシ GRK2、0.9μMの精製ウシチューブリン、0.5μMの ATP (0.1μCiの [γ-32P]ATPを含む)、2mMの EDTA、10mMの MgCl2、1mMの DTTを含む 20mM Tris-HCl (pH7.5)に適当な濃度の被検化合物を加えて25μLの混合液とし、30℃、1時間で反応させた。20% トリクロロ酢酸溶液 (TCA) を加えて反応を停止した後、生成した TCA沈殿を GF/Cフィルター上に捕集した。フィルター上の放射能をシンチレーションカウンターを用いて測定し、チューブリンリン酸化量の指標とした。GRK2非共存下のカウントを 0%、被検化合物非共存下のカウントを100%としてチューブリンリン酸化量を正規化し、50%のリン酸化阻害作用を示す被検化合物の濃度を IC50値として算出した。また、PKCα、PKA、ROKαに対する酵素阻害活性は、酵素として 6μg/mLの精製ヒト PKCαもしくは 8μg/mLの精製ウシ PKA触媒サブユニット、または 0.4U/mLの精製ラット ROKαを、基質として 20μg/mLの精製ウシミエリンベーシックプロテインを用いて上記と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
表1 試験化合物(1)のGRK2、PKCα、PKA、ROKαに対するキナーゼ阻害作用
キナーゼ IC50
GRK2 35nM
PKCα >2000nM
PKA >2000nM
ROKα >2000nM

表1の結果から、化合物(1)は、選択的なGRK阻害作用を示すことがわかる。
【0059】
試験例2
試験化合物(1)のアドレナリンβ受容体、ドパミン受容体、エンドセリン受容体、カルシウムチャネル (CaCh)およびナトリウムチャネル (NaCh)に対する親和性を評価する目的で以下の実験を行った。すなわち、ヒトβ受容体を高発現した Rex 16細胞から膜標本を調製し、1.4mMのアスコルビン酸、0.001%のウシ血清アルブミン、1.5mM CaCl2、5mM EDTA、120mM NaClを含む 50mM Tris-HCl (pH7.4)中、0.03nMの 125I-Cyanopindololと、25℃で 2時間インキュベーションした。試験化合物(1)は DMSOに溶解し (最終濃度 1%)、最終濃度 10μMとなるように添加した。インキュベーションの後、反応液を GF/Bフィルターで濾過し、フィルター上の放射能をシンチレーションカウンターを用いて測定した。非特異的結合は 100μMの S(-)-Propranolol存在下での結合量として定義し、被検化合物非共存下での特異的結合量に対する阻害率を求めた。β2受容体、D1受容体、D2L受容体、D2S受容体、D3受容体、D5受容体、ETA受容体、ETB受容体、CaChおよび NaChに対する親和性も同様の方法で測定した。標本のソースとしては、それぞれ、ヒトβ2、D1、D2L、D2S、D3、D5、ETAおよび ETB受容体を高発現した CHO細胞またはラット大脳(CaChおよびNaCh)を用い、標識リガンドはそれぞれ、0.2nM 3H-CGP-12177 (β2)、1.4nM 3H-SCH-23390 (D1)、0.16nM 3H-Spiperone (D2L、D2S)、0.7nM 3H-Spiperone (D3)、2nM 3H-SCH-23390 (D5)、0.03nM 125I-Endothelin-1 (ETA)、0.1nM 125I-Endothelin-1 (ETB)、2nM 3H-Diltiazem (CaCh)および 5nM 3H-Batrachotoxin (NaCh)を用いた。また、インキュベーション条件は、それぞれ 25℃ 1時間、 (β2)、37℃ 2時間(D1、D3、D5、ETA)、25℃ 2時間 (D2L、D2S、ETB)、4℃ 3時間 (CaCh)および 37℃ 1時間 (NaCh)を用いた。更に、非特異的結合は、それぞれ 10μM ICI-118,551 (β2)、10μM (+)-Butaclamol(D1)、10μM Haloperidol (D2L、D2S)、25μM S(-)-Sulpiride (D3)、10μM cis-Flupentixol (D5)、0.1μM Endothelin-1 (ETA、ETB)、10μM Diltiazem(CaCh)および 100μM Veratridine (NaCh)を用いて定義した。その結果を表2に示す。
【0060】
表2 試験化合物(1)のアドレナリンβ受容体、ドパミン受容体およびエンドセリン受容体に対する親和性
受容体 阻害率
β1 <5%
β2 <5%
D1 <5%
D2L <5%
D2S <5%
D3 <5%
D5 <5%
ETA <5%
ETB <5%
CaCh 6%
NaCh <5%

表2の結果から、試験化合物(1)は、心筋の収縮性に関与する種々の受容体やイオンチャネルへの親和性を全く有しないことがわかる。
【0061】
試験例3
試験化合物(1)のNa/K-ATPaseならびにホスホジエステレース (PDE)に対する阻害活性を評価する目的で以下の実験を行った。すなわち、イヌ腎臓より調製した Na/K-ATPaseを 1.3mM EDTA、25mM KCl、5.3mM MgCl2、160mM NaClを含む 80mM Tris-HCl (pH7.4)中、37℃で 15分間プレインキュベートし、その後 2mMの ATPを添加することで、酵素反応を開始した。試験化合物(1)は DMSOに溶解し (最終濃度 1%)、最終濃度 10μMとなるように添加した。15分の反応時間の後、2.5Nの HClO4を添加することで反応を停止し、(NH4)6Mo7O24・H2SO4と Fiske-Subbarow試薬を加えることで、反応で生じた Piを比色定量し、酵素活性の指標とした。被検化合物非共存下での酵素活性を 100%として、化合物の阻害率を算出した。また、PDEに対する阻害活性は以下のごとく測定した。すなわち、ヒト血小板より調製した PDE3を 1mM MgCl2を含む 10mM Tris-HCl (pH7.5)中、25℃で 15分間プレインキュベートし、その後 3H-cAMPを含む cAMP 1μMを加えて酵素反応を開始した。試験化合物(1)は DMSOに溶解し (最終濃度 1%)、最終濃度 10μMとなるように添加した。20分の反応時間の後、100℃で 2分間加温して反応を停止し、ヘビ毒を加え 37℃で 10分間インキュベートすることで、酵素反応で生成した 3H-AMPを 3H-Adenosineへと変換した。未反応の cAMPを AG1-X2 resinで除いた後、反応液中の放射活性を測定し、酵素活性の指標とした。被検化合物非共存下での酵素活性を 100%として、化合物の阻害率を算出した。また、PED4、PDE5の酵素活性は、酵素のソースとして、ヒト U931細胞 (PDE4)およびヒト血小板 (PDE5)を用い、PED5アッセイの場合には 3H-cAMP/cAMPの代わりに3H-cGMPを含む 1μM cGMPを用いて同様に測定した。
その結果を表3に示す。
【0062】
表3 試験化合物(1)のNa/K-ATPaseならびにホスホジエステレースに対する酵素阻害活性
酵素 阻害率
Na/K-ATPase <5%
PDE3 <5%
PDE4 <5%
PDE5 <5%

表3の結果から、試験化合物(1)は、心筋の収縮性に関与する Na/K-ATPaseならびに PDEに対する酵素阻害活性を全く有しないことがわかる。
【0063】
試験例4
試験化合物(1)の細胞系における GRK阻害作用を評価する目的で、以下の実験を行った。
GRK阻害蛋白である βARKctを用いた検討から、充分なβ受容体脱感作反応を引き起こす濃度のイソプロテレノールによって生じる細胞内 cAMPの蓄積は、GRK依存性の脱感作反応を抑制することによって、増強されることが示されている (ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション、99巻、288-296頁)。そこで、ヒトβ2受容体を高発現させた HEK293細胞 (HEK-B2細胞)におけるイソプロテレノール刺激後の cAMP蓄積に対する増強作用を評価することで、細胞系における GRK阻害作用の指標とした。すなわち、3-isobutyl-1-methyl-xantine(IBMX、1mM)およびL-アスコルビン酸(0.01%)を含んだ D-PBS(+)溶液中に懸濁した HEK-B2細胞に種々の濃度の化合物を添加し、37℃で 20分間インキュベーションした。その後、充分なβ受容体脱感作反応を引き起こす濃度のイソプロテレノール (1nM)を添加し 37℃で 20分間インキュベーションすることで、脱感作条件下で cAMP産生反応を惹起した (アッセイ容量20μL)。この cAMP産生反応は、同容量のTris-EDTAバッファー (pH8.0)を加え 95℃で加熱することにより停止した。産生された cAMP量は ALPHA-Screen cAMP detection kit (パーキンエルマー社)を用いて測定した。対照として被検化合物を含まない溶媒 (N,N-ジメチルホルムアミド。最終濃度 0.3%)のみを添加して、同様の反応を行った。結果は化合物非存在下に蓄積された cAMP量を 100%として cAMP蓄積量を正規化して示した。その結果を表4に示す。
【0064】
表4 ヒトβ2受容体を高発現させた HEK293細胞におけるイソプロテレノール刺激後の cAMP蓄積に対する試験化合物(1)の増強作用
化合物濃度 cAMP蓄積量
1μM 9%
3μM 24%
10μM 52%
30μM 137%

表4の結果から、試験化合物(1)は、細胞外適用によって濃度依存的な cAMP蓄積増強作用、すなわち GRK阻害作用を示すことがわかる。
【0065】
試験例5
試験例4で確認された試験化合物(1)の GRK阻害によるβ受容体脱感作阻害作用が、心臓臓器レベルでも生じることを確認する目的で、ラット摘出灌流心臓標本を用いて以下の実験を行った。
10-11週齢の雄性ウイスターラットの心臓を摘出し、大動脈基始部にカテーテルを挿入して、37℃に保温されたランゲンドルフ装置に取り付け、混合ガス (95 % O2-5 % CO2)を通気したクレブス液(組成(mM):NaCl 113、KCl 4.6、CaCl2 1.2、NaH2PO4 2.5、MgCl2 1.2、NaHCO3 22、glucose 10)を定圧灌流(75 mmHg)した。安定期間の後、溶媒 (N,N-ジメチルホルムアミド、最終濃度 0.1%)もしくは化合物(1) 10μMを 20分間適用し、その後β受容体脱感作を生じさせるために 10μMのイソプロテレノール (Iso)を更に20分間併用して適用した。β受容体脱感作を生じさせない対照 (コントロール)群では、イソプロテレノールを適用しなかった。薬物適用後の心臓は液体窒素で凍結し、以下の実験に供するまで -80℃で保存した。心臓膜標本の調製はドラズナーらの方法 (ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション、99巻、288-296頁)に従った。すなわち心臓をライシスバッファー (25 mM Tris-HCl、5 mM EDTA、5 mM EGTA、pH 7.4 at 37℃)中で解凍し、ホモジナイズした後、500xgで遠心することで核画分を除き、得られた上清を40,000xgで遠心して膜画分を沈殿させた。得られた膜画分をバインディングバッファー (75 mM Tris-HCl、12.5 mM MgCl2、2 mM EDTA、pH 7.4 at 37℃)で再懸濁した。膜標本のβ受容体反応性はイソプロテレノール依存性のアデニル酸シクラーゼ (AC)活性を指標に測定した。すなわち 0.5mM IBMX、53μM GTP、2.7mMピルビン酸、4IU/mLピルビン酸キナーゼ、20IU/mLミオキナーゼ存在下に膜標本を懸濁し、溶媒、0.3μMのイソプロテレノールあるいは 10mMのフッ化ナトリウム (NaF)の存在下に 0.12mMの ATPを添加し、37℃で保温することで、cAMPを産生させた。トリクロロ酢酸添加により反応を停止し、除蛋白および TCAの除去を行った後、産生された cAMPを ALPHA-Screen cAMP detection kitを用いて測定した。結果は NaF存在下に得られた cAMP量を 100%として正規化し、8例の平均値と標準誤差で示した。その結果を表5に示す。
【0066】
表5 ラット摘出灌流心臓標本における高濃度イソプロテレノール適用によるβ受容体反応性低下 (脱感作)に対する化合物(1)の阻害作用
AC活性
処置 (% of 10mM NaF)
コントロール 5.7±0.6 %
溶媒+Iso 3.3±0.6 %
試験化合物(1)+Iso 5.3±0.2 %

表5に示すように、ラット摘出灌流心臓標本において高濃度イソプロテレノール適用によって生じるβ受容体反応性低下(脱感作)は、10μMの試験化合物(1)の前処置によって著しく抑制された。このことは試験例4で確認された試験化合物(1)の GRK阻害によるβ受容体脱感作阻害作用が、心臓臓器レベルでも生じることを示している。
【0067】
試験例6
試験化合物(1)を用いた急性の GRK阻害が摘出灌流心臓標本の心収縮性に及ぼす影響を観察する目的で、以下の実験を行った。
10-11週齢の雄性ウイスターラットの心臓を摘出し、大動脈基始部にカテーテルを挿入して、37℃に保温されたランゲンドルフ装置に取り付け、混合ガス (95 % O2-5 % CO2)を通気したクレブス液(組成(mM):NaCl 113、KCl 4.6、CaCl2 1.2、NaH2PO4 2.5、MgCl2 1.2、NaHCO3 22、glucose 10)を定圧灌流(75 mmHg)した。心収縮力の指標である左室発生圧は左心耳より挿入したバルーンカテーテルから圧トランスデューサーを介して測定した。心拍数は、左心室内圧からタコメーター(日本光電)を介して測定した。安定期間の後、N,N-ジメチルホルムアミドに溶解した化合物 (1)を、灌流液に0.1 %の割合で混合して適用した。15分間の薬物灌流を行った後、更に蒸留水に溶解したイソプロテレノール 1nMを同時に15分間灌流し、カテコラミン共存下での化合物(1)の作用を検討した。対照として溶媒のみを 15分間灌流し、さらにその後 1nMのイソプロテレノールを 15分間併用して、同様の観察を行った。化合物(1)単独適用時、およびイソプロテレノール併用時 (+Iso)に生じた各パラメータの変化を、薬物投与前値からの変化率として 4-5例の平均値で示した。その結果を表6に示す。
【0068】
表6 ラット摘出灌流心臓標本における試験化合物(1)の心収縮力増強作用
左室発生圧 心拍数
単独 +Iso 単独 +Iso
溶媒 9% 33% 2% 28%
試験化合物(1) 1μM 20% 39% 4% 22%
試験化合物(1) 10μM 45% 97% 2% 35%

表5に示すように、試験化合物(1)によって心臓の GRKを選択的に抑制することで、化合物濃度に依存した心収縮力増強作用が薬物投与直後から発現し、その作用はカテコラミンの共存下において更に増加することが明らかとなった。試験化合物(1)の作用濃度は細胞系で得られた GRK阻害作用の薬効濃度と矛盾しなかった。また、興味深いことに、急性の GRK阻害によるこの心収縮力増強作用は心拍数の増加をほとんど伴わなかった。
【0069】
試験例7
試験化合物(1)を用いた急性の GRK阻害が in vivoの心循環動態に与える影響を観察する目的で、以下の実験を行った。
雄性ウイスターラット (350-450g)をイナクチン (100mg/kg, i.p.)で麻酔し、左大腿動脈および静脈に血圧 (MBP)測定用および薬物投与用のカニューレをそれぞれ留置した。右頚動脈より圧センサー付きミラーカテーテルを左心室内に留置し、左心室内圧 (LVP)を測定した。LVPを微分することで、心収縮力の指標である最大左室内圧一次微分値 (LVdP/dtmax)および心弛緩性の指標である最小左室内圧一次微分値 (LVdP/dtmin)を算出した。心拍数 (HR)は左心室内圧からタコメーターを介して測定した。安定期間の後、試験化合物(1)を 1N HClを含むポリエチレングリコール(PEG)400に溶解した後、生理食塩水で希釈して 10mg/mLの溶液 (最終PEG濃度30%、HCl濃度 0.02N)を作製し、1mg/kg/minの用量で 30分間静脈内持続投与して、更に投与終了 20分後まで心循環動態変化を記録した。対照群には化合物を含まない溶媒 (30%PEG/HCl/生理食塩水)を同様に投与した。図1に得られたデータを薬物投与開始前値からの変化率として 4例の平均値と標準誤差で示した。図1に示すように、試験化合物(1)の静脈内持続投与によって in vivoで GRKを選択的に抑制することで、摘出灌流心臓標本での成績 (試験例5)と同様に、薬物投与直後より、血圧や心拍数にほとんど影響せずに心収縮力のみが増強され、その作用は投与中断により回復した。この結果は、GRKの阻害が、急性に心収縮力を改善する「強心薬」の新しいメカニズムとなることを明確に示している。
【0070】
製剤例1
本発明における「GRK阻害剤を含有してなる強心薬」は、例えば、次のような具体的な処方を有する医薬組成物の形態で実施することができる(但し、これらに限定されるものではない)。
なお、以下の処方において活性成分以外の成分(添加物)は、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格における収載品等を用いることができる。
【0071】
1.カプセル剤
(1)試験化合物(1) 40mg
(2)ラクトース 70mg
(3)微結晶セルロース 9mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 1mg
1カプセル 120mg
(1)、(2)と(3)および(4)の1/2を混和した後、顆粒化する。これに残りの(4)を加えて全体をゼラチンカプセルに封入する。
【0072】
2.錠剤
(1)試験化合物(1) 40mg
(2)ラクトース 58mg
(3)コーンスターチ 18mg
(4)微結晶セルロース 3.5mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
1錠 120mg
(1)、(2)、(3)、(4)の2/3および(5)の1/2を混和した後、顆粒化する。残りの(4)および(5)をこの顆粒に加えて錠剤に加圧成型する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
GRK阻害剤は、優れた強心作用を有することが、本発明により初めて明らかにされた。GRK阻害剤からなる本発明の剤は、強心薬として有用であり、医薬品産業の分野での利用価値が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、試験化合物(1)による急性のGRK阻害がラットの心循環動態に与える影響を観察した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GRK(G protein-coupled receptor kinase)阻害剤を含有してなる強心薬。
【請求項2】
GRK阻害剤がGRK2阻害剤である請求項1に記載の強心薬。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−303145(P2008−303145A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276782(P2005−276782)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】