説明

GnTIIIと同時発現する組換え抗体

【課題】新生物、自己免疫その他の疾患を治療するための抗体を含む方法、組成物及びキットが提供される。
【解決手段】GnTIII及び組換え抗体を発現する真核細胞系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2001年4月2日に提出された米国仮出願60/280,139号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に基づく優先権を主張する。
【0002】
広汎な態様では、本発明は、一般に、GnTIIIと組換え抗体を発現する真核細胞系により生産される抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
組換え遺伝子の発現を最大にするための改良手法は、当技術分野において現在努力の的となっている。特に関心を持たれているのは、生物学的に活性なタンパク質を商業的に有用な量で生産するのに適した哺乳類遺伝子の組換え発現を最大化する手法の開発である。原核生物、典型的にはバクテリアでは、宿主細胞系によって大量の組換えタンパク質を生成し得ることが明らかになっているが、これらの宿主には、タンパク質のグリコシル化ができない、タンパク質からの「プレ」又は「プレプロ」配列の開裂が有効に進まない(例えば、翻訳後修正が有効に進まない)、一般にタンパク質を分泌することができないなどの点を含む多くの問題がある。したがって、当技術分野では哺乳類タンパク質生産のために真核生物の宿主系(典型的には哺乳類の宿主細胞系)が求められている。そのようなシステムの1つの特徴は、生産されたタンパク質が自然なタンパク質種とほぼ同様の構造を有することであり、生物学的に活性な形で培地にタンパク質を分泌できるため精製は多くの場合より容易である。
【0004】
しかし、哺乳類培養システムには未だ多くの問題が存在する。特に、哺乳類システムでは、通常、高レベルの発現が容易に得られない。さらに、真核生物の宿主細胞は、通常、培養のための必要条件がより厳しく、成長速度も遅い。したがって、大量の組換えタンパク質の生産には、発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞を単に培養する以上のことが必要である。これは特に、対象とする遺伝子が発現の弱い遺伝子である場合、すなわち、自然な生理学的条件下では、多量には生産されないか一時的にしか発現されない場合に当てはまる。これらのタンパク質をコードする遺伝子は、しばしば発現システムにおける1つ又は複数のレベルで、例えば、転写、翻訳、翻訳後修正、分泌及び/又は活性化のレベルにおいて、通常、多重的な調節レベルを有する。典型的には、これらの遺伝子は、非増殖(unamplified)不死細胞に安定的に組み込んだ場合、ml当たり生産量が約10〜100ナノグラムのタンパク質/106細胞未満である。これらのタンパク質生産の最大化はこれらの調節レベルを回避する手段を見つけ出すことを意味する。
【0005】
タンパク工学によって、様々な方法で抗体を作成することが可能になった。免疫性、親和性、結合価及びエフェクター機能の変化はすべて、標準的分子生物学技術(総説として(ガヴィロンドとラリック(Gavilondo and Larrick)、2000;ホーリンガーとボーエン(Hollinger and Bohlen)、1999参照)によって達成されている。さらに、このような技術により、抗体の治療への使用(ホーリンガーとボーエン(Hollinger and Bohlen)、1999;ニューマンとリスカンプ(Newman and Ryskamp)、1999)の承認も、より容易に認められるようになった。Rituxan(登録商標)は、そのような抗体の例であり、再発性又は難治性の低悪性度濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫に対して使用が承認されたキメラマウスヒトIgGI−κ抗体である(マロニーら(Maloney et al.)、1997;レフら(Reff et al.)、1994)。この抗体は、CD20(新生B細胞上で発現される35kD細胞表面リンタンパク質(ヴァレンタインら(Valentine et al.)、1989)を認識し、媒介補体依存性細胞毒性(CDC:complement dependent cytotoxicity)、抗体依存性細胞毒性(ADCC:antibody dependent cellular cytotoxicity)をインビトロで示し(レフら(Reff et.al.)、1994)、架橋時に癌細胞系のアポトーシスを引き起こす(マロニーら(Maloney et.al.)、1997;シャンら(Shan et al.)、1998)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、抗体の生産、発現及び安定化の強化された方法が、依然必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、GnTIII及び組換え抗体を発現する真核細胞系を提供する。真核細胞系は好ましくは哺乳類の細胞系であり、最も好ましくはCHO細胞系である。抗体はヒト抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体であり、好ましくは抗CD20抗体である。特に好ましい抗体はRITUXAN(登録商標)である。
【0008】
特に好ましい実施形態では、抗体は腫瘍関連抗原と反応する。さらに特定して言えば、腫瘍関連抗原は、CD2、CD3、CD5、CD6、CD7、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6、HPV E7、TAG−72、CEA、L6−抗原、CD19、CD20、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターからなる群から選択される。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、GnTIIIを発現する細胞系真核細胞系によって生産される抗体、及び組換え抗体を提供する。
【0010】
また別の実施形態においては、本発明は、GnTIII及び組換え抗体を発現する真核細胞系によって提供生産される抗体の投与を含む治療を提供する。特に、本発明は、再発性ホジキン病、難治性ホジキン病高悪性度、低悪性度及び中悪性度の非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)、リンパ形質細胞様リンパ腫(LPL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、バーキット(Burkitt)リンパ腫(BL)、AIDS関連リンパ腫、単球B細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症、小リンパ球;濾胞性;びまん性大細胞;小開裂細胞;大細胞免疫芽胞リンパ腫;小非開裂細胞;バーキット及び非バーキット;濾胞性(主に大細胞);濾胞性(主に小開裂細胞);及び濾胞性(小開裂細胞と大細胞の混合型)リンパ腫からなる群から選択される疾病などの新生物性疾病の治療を提供する。本発明による治療は、免疫疾患の治療も含む。
【0011】
さらに別の実施形態において、本発明はまた、疾病に罹患した又はその傾向のある哺乳動物の治療に有用なキットであって、GnTIII及び組換え抗体を発現する真核細胞系によって提供生産される抗体をその中に入れた少なくとも1つの容器及び前記抗体が前記疾病の治療に用い得ることを示すラベル又は挿入物を含むキットを提供する。
【0012】
また、さらに別の実施形態において、本発明は、
GnTIII及び組換え抗体抗体をコードするDNA配列を含む原核生物又は真核生物の宿主細胞(ここで宿主細胞はGnTIII及び組換え抗体を発現するもの)を培養する工程;
宿主細胞にGnTIII及び組換え抗体を発現させる工程;及び
宿主細胞培養物から前記抗体を回収する工程
を含む抗体形成方法を提供する。
【0013】
また、別の実施形態において、本発明は、真核生物の宿主細胞においてGnTIII及び機能性抗体を発現するためにポリシストロン性ベクターであって、GnTIIIをコードするDNA配列及び以下の要素:
(i)真核細胞において機能する(operable)プロモーター;
(ii)真核細胞中で機能するシグナルペプチドコード配列を最適には5’末端に含み、3’末端にポリA配列を含まず、5’及び3’末端に開始コドン及び停止コドンを含む、抗体軽鎖をコードするDNA配列;
(iii)カルジオウイルス、疱疹ウイルス及びポリオウイルスからなる群から選択されるメンバーから得られる内部リボソームエントリーサイト(IRES);及び
(iv)次の要素(a)
(a):真核細胞中で機能するシグナルペプチドコード配列を最適には5’末端に含み、DNA配列がポリシストロン中最も3’末端寄りであるときに限って3’末端にポリA配列を含み、さらに5’及び3’末端に開始コドン及び停止コドンを含む、抗体重鎖をコードするDNA配列
を含む少なくとも1つのDNA配列
を5’から3’の方向に機能的に連結するポリシストロン性転写システムを含み、
ここで、抗体軽鎖をコードするDNA配列が、抗体重鎖をコードするDNA配列に対して10:1〜1:1の範囲の比率で発現されるベクターを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は様々な形で具体化され得るが、ここでは、本発明の原理を例示するため、その具体例である実施形態を示す。もっとも、本発明は例示される特定の実施形態に制限されるものではない点を強調すべきであろう。
【0015】
本発明は、少なくとも部分的には、有用で高度に生産的な、グリコトランスフェラーゼと共同発現する組換細胞系を単離することが可能であるという本発明者らの予期しない発見に基づく。さらに、酵素の触媒現象の活性が十分に高いため、成長又は発現のレベルに大きく影響せずに、共同発現された組換えタンパク質の生物学的活性を達成できることを発明者らは見出した。より具体的には、本明細書に記載するADCCの増加によれば、免疫グロブリンを低用量で使用しても野生種の親と同様の治療的効果を得ることが可能となるという驚くべき知見が得られた。
【0016】
CD20の発現レベルは低く、現在の抗体で効果を得るためには高用量が必要なB細胞腫瘍を例として本発明の特長を以下に示す。本発明でもたらされる相乗効果の結果、著しく低レベルでの抗CD20抗体の使用が可能となり、これにより、高用量の治療投薬計画に伴う毒性関連副作用が低減される。
【0017】
最近の研究は、免疫グロブリンのグリコフォーム(glycoform)を造り出すことで最適化されたエフェクター機能も生じ得ることを示している。N−アセチルグルコサミニル転移酵素III(GnTIII)酵素が抗神経芽細胞腫IgGIを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系で発現され、より大きな抗体依存細胞毒性(ADCC)活性がもたらされている(ウマナら(Umana et al.)、1999a)。GnTIIIはゴルジ体に局在する酵素で、N結合オリゴ糖鎖の2分鎖(bisecting)位置へのN−アセチルグルコサミン(G1cNAC)残基の添加に触媒作用を及ぼす(ナリシマン(Narisimhan)、1982)。この特定的な修正は、一般にヒトIgGのN結合糖残基及び2分鎖糖で見られるが他の哺乳類類では見られず、2分鎖糖は治療用抗体の生物学的活性が暗示されている(ライフリーら(Lifely et al.)、1995)。しかし、公表された研究は、非常に少量の抗体を生産する細胞系に集中しており、大量の抗体を生産する細胞系(生産細胞系)での酵素の共同発現は報告されていない。さらに、最近の報告では、成長阻害効果があるため、生産細胞系における発現を成功させるためには、酵素発現の規制が必要であることが示されている(ウマナら(Umana et al.)、1999b)。
【0018】
以下により詳細に議論するように、生産細胞系におけるGnTIII過剰発現の使用については、本発明者らがここに初めて記載する。Rituxan(登録商標)は、現在、CHO細胞中で高レベルの生産がなされているが、CHO細胞では内生的なハムスターGnTIIIが発現されない。したがって、野生型抗体は、2分鎖G1cNAc残基を有しないバイアンテナリー型オリゴ糖(oligosacchraide)を含む。生産細胞系でのGnTIIIの共同発現に続けて、細胞成長動力学、抗体産生レベル、グリコフォーム構成及びADCC活性中における機能変化への影響を測定した。
【0019】
組換え哺乳類細胞中でGnTIIIを共同発現させようという最近の努力は、組換えタンパク質を少量のみ発現する細胞系に集中している(ベイリーら(Bailey et al.)、1997;ウマナら(Umana et al.)、1999a)。最近の報告は、哺乳類細胞のグリコトランスフェラーゼの過剰発現が細胞成長の阻害をもたらすことをさらに示した(ウマナら(Umana et al.)、1999b)。そこで、本発明者らは、生産細胞系で効率的な発現を達成するためには、規制された遺伝子発現が必要とされるかもしれないとの仮説を立てた。以下に論じるように、細胞系は、GnTIIIが誘導可能な方法で制御できるように構築した。本発明者らは予想外にも、このような細胞系の低レベルな基礎的発現が抗体グリコシル化に十分な効果があり、これは細胞成長に対して大きく影響することがないため構成的発現システムの使用が保証されることを見出した。
【0020】
実施例1に関して議論するように、本発明者らは、GnTIIIのための構成的発現プラスミドを構築した。プラスミドpCIPGnT3(図1)は、構成的CMVプロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化領域の下にあるラットGnTIII遺伝子を含む。プラスミドはさらにプロマイシン抵抗性遺伝子を含み、これにより、プロマイシンを含む培地中での選択が可能となる。Rituxan(登録商標)生産細胞系(50C9)へのプラスミドのエレクトロポレーションに続いて、耐プロマイシン性コロニーを取得した。その後、我々は、どのクローンをさらに検討すべきか決定するために、抵抗性コロニーにおけるメッセージRNAレベルを検出するために相対的QPCRアッセイを用いた。分離されたクローンは大部分がGnTIIIメッセージを高レベルで発現したが、いくつかのクローンでは発現がはるかに低いレベルであった。相対的QPCR実験の例を図2に示す。クローン50C9−IA7は低レベルで発現するクローンの例であり、50C9−1A12及び50C9−1B9はずっと高いレベルで発現するクローンである。親細胞系(pCIPGnT3プラスミドでトランスフェクトされていない)ではGnTIIIメッセージは検出されず、この細胞系では内生的GnTIIIの発現がないことを示していた。
【0021】
その後、HPLC分析により精製された抗体のグリコフォームに対するGnTIIIのインビボでの触媒効果を検討するために、3つのクローンを選択した。親(50C9)細胞系と比較すると、これら3つはすべて相当なグリコフォーム変異を示した。親及び1つのGnTIIIトランスフェクタントクローンについての典型的なHPLCトレースを図3に示す。2分鎖グリコフォームは、50C9細胞系には見られなかった。しかし、GnTIII陽性細胞系については、大多数のグリコフォーム(48〜71%)が2分鎖GlcNac残基を含む。これら3つの細胞系についての全結果を表1に示す。このデータは、GnTIIIトランスフェクトクローンのグリコフォーム構成には小さな違いがあるが、3つすべてについては、見出される支配的なグリコフォーム種は1つのガラクトース残基(G1+G1cNAc)を備えた2分鎖バイアンテナリー型オリゴ糖であったことを示している。少量ではあるが、2つのガラクトース残基を備えた2分鎖バイアンテナリー型オリゴ糖(3〜5%)が検出された(G2+G1cNAc)。
【0022】
上記のように、従前の報告は、哺乳類細胞におけるグリコトランスフェラーゼの過剰発現は、成長動力学を低め、これが細胞系中で発現され得るグリコシルトランスフェラーゼ量に上限を定めることを示唆している(ウマナら(Umana et al.)、1999b)。そこで、我々は、3つのGnTIII陽性細胞系において成長動力学及び生産レベルを研究し、それらを、免疫グロブリン(pcd)を大量に生産し非常に良好な成長動力学(td)を有する50C9と比較した。我々は、3つの細胞系がすべて、免疫グロブリンについて非常に良好な発現レベルを有することを見出した。さらに、3つの細胞系はすべてさらに好ましい成長動力学を有する。また、1つのクローン(50C9−1A12)は親抗体に非常に似た成長動力学(つまり2倍になるための時間)を有する(表II)。表IIに示すデータは、要約すれば、細胞系でのmRNAレベルとGnTIII活性又は2倍になる時間との間に相関性を示していない。
【0023】
クローン50C9−1A12で見られる高いmRNAレベル及びGnTIII活性は、成長動力学又は抗体発現レベルに影響しているようには見えない。この結果は、GnTIII発現のレベルが成長阻害に関連しているこれまでに公表された結果と異なるものである(ウマナら(Umana et al.)、1999b)。何らかの説明又は理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、成長阻害効果に2つの可能な理由を提示する。すなわち、タンパク質の過剰発現がGnTIII触媒活性に依存しない阻害をもたらす直接的影響又は内生的なタンパク質に対するインビボでのGnTIIIの触媒活性の直接的影響のいずれかである。この分野での従前の研究は、組換えタンパク質の発現が少量しかない細胞系におけるグリコトランスフェラーゼ共同発現を使用してきた。本明細書において示す研究では、大量の免疫グロブリンを生産する生産細胞系を使用し、成長阻害についての後者の提示案を支持している。生産細胞系は、追加的タンパク質の過剰発現による成長阻害により敏感なはずなので、前者の提示案は可能性が低いように思われる。ここで、観察されるような成長阻害がなかったという点が、細胞による免疫グロブリンの高い生産(これは過剰発現されたGnTIIIを占め、他の内生的なタンパク質へのその触媒活性を防止する)と関係しているのかもしれない。
【0024】
実施例1で使用される抗CD20抗体は、非ホジキンリンパ腫の中の治療剤として承認されており、およそ50%の患者で正常及び悪性B細胞の消耗による有効な応答を生じることが示されている。可能性のあるメカニズムには補体依存細胞毒性(CDC)、抗体依存細胞毒性(ADCC)及び抗体結合時におけるCD20陽性細胞のアポトーシス誘導が含まれる。GnTIIIの過剰発現は、親には存在しない2分鎖グリコフォームハイブリッドを備えたクローンの単離をもたらす。これらの2分鎖グリコフォームは、いくつかの抗体の生物学的活性に関与していることが示唆されているため、50C9/GnTIIIクローンから精製された抗体を、生物学的活性の変化について研究した。補体結合又は抗体結合時のCD20陽性細胞のアポトーシスによる違いは、グリコフォームの変化した抗体(データは示していない)について観察された。しかし、これら3つのGnTIIIにトランスフェクトした細胞系のいずれによって生産される抗体も、CD20陽性標的細胞を殺す点では野生体細胞系によって生産される抗体と同程度に、しかし、10〜20倍低い濃度で有効であった。これは、抗神経芽細胞腫免疫グロブリンGを発現する細胞系でGnTIIIの過剰発現について報告された結果(ウマナら(Umana et al.)、1999a)と合致する。前記報告では、低いADCC活性を有する抗体のグリコフォームは変化しており、この結果、より高いADCC活性をもたらし、これを治療に用いる上でより魅力的にしている(ウマナら(Umana et al.)、1999a)。
【0025】
本発明において、我々は、良好なADCC活性を備えた承認された治療用抗体を採用し、それをさらに改善した。これは、効能を低減することなく、より低用量で抗体の使用を可能にするであろう。さらに、より低い抗体濃度によるより高いADCC活性は、CD20抗原の発現レベルが低いリンパ腫及び白血病において増強された応答をもたらすであろう。これらの疾病のうちのあるタイプでは、現在の薬剤では効果を得るために高用量が必要である。2分鎖グリコフォームを欠いた他の抗体は、インビボでの細胞溶解機能を改善し得ると予想される。
【0026】
抗CD20抗体について観察されたADCC活性は、FcγRIIIレセプターへのIgG1 Fc領域の結合を介してNK細胞が抗原陽性細胞を特異的に殺害する結果であると考えられる。したがって、我々は、特にNK細胞上のFcγRIIIレセプターを特異的にブロックし、ADCC活性に対する影響を検討するために抗FcγRIII抗体(Fc結合をブロックすると報告されている)を使用した。抗FcγRIII抗体によるNK細胞のブロックは、50C9及び50C9−1A7の両方のADCC活性を喪失させた。図5は、50C9−1A7抗体調製物から得られた結果を示す。ADCCの阻害は、FcγRIレセプターに結合するFcをブロックすると報告されているFcγRIに対する抗体とともにPBMC細胞はプレインキュベートした実験では観察されなかった。したがって、このデータは、FcγRIレセプターは2分鎖バイアンテナリー型オリゴ糖を備えた50C9−IA7抗体調製物のADCC活性に関与していないことを示唆する。
【0027】
何らかの説明又は理論に拘束されるものではないが、なぜ2分鎖バイアンテナリー型オリゴ糖を備えた抗体が、グリコフォームが存在しないものより良好なADCC活性を生じさせるかという点については、本明細書が与える結果から2つの可能性のある説明が示唆される。第1に、FcγRIIIレセプターについて変更された抗体の親和性が単純に増加していることによるかもしれない。第2に、より良好なADCCも、NK細胞の表面上のFcγRIIIレセプターのよりよい架橋(これは標的細胞の脱顆粒のプロセスを開始する)に起因するかもしれない。
【0028】
全細胞ELISAを使用して、親及びGnTIII陽性クローン50C9−1A7の結合特性を評価した。50C9−1A7からの抗体は、親50C9(図6)から調製された抗体よりNK細胞により良好に結合した。抗体はまた、FcγRI及びFcγRII発現細胞により良好に結合した(結果は示していない)。しかし、ADCCにおけるFcγRIの役割は以前に記述された実験よりも小さくなった(図5)。したがって、ADCC活性の増加は、NK細胞上のFcγRIIIへの抗体結合の増加が最もありそうな原因である。ELISAではCD20抗原はなかったので、IgGのより良好な架橋による増加した結合は除外することができる。推測するに、結合の増加は、抗体のFc構造上の2分鎖グリコフォームによって特定されるコンフォメーションの結果による。親抗体が既に良好なADCC活性を持つので、それは恐らくFcγRIIIの結合のために最適に近いコンフォメーションを有するが、それが、今度はN結合バイアンテナリー型オリゴ糖構造における2分鎖G1cNAcの追加によって「微調整」される。
【0029】
「修飾された抗体」という用語は、以下により詳細に議論するように、任意の抗体もしくは結合力のある断片又はそれらの組換体であって、1もしくは複数の定常領域ドメインの少なくとも1つの部分が除去されるかさもなければ所望の生化学的特性(ほぼ同様な結合特異性を有する全体かつ変更されていない抗体と比較して、同様の分子に非共有結合的に結合し、腫瘍局在化が増加し又は血清半減期が減少するなど)を与えるように変更された腫瘍関連抗原と免疫反応性なものを意味すると理解されるべきである。好ましい実施形態では、本発明の修飾された抗体は、除去された定常領域ドメインのうちの1つの少なくとも一部を有する。そのような構成体を本開示では「ドメイン欠失抗体」と呼ぶものとする。より好ましくは、修飾された抗体の定常領域の1つのドメイン全体が除去され、さらにより好ましくは、CH2ドメイン全体が削除される。ここに議論するように、所望の変形の各々はよく知られた技術を使用して、全体の前駆体か親抗体から容易に作成又は構築することができる。
【0030】
本発明の遺伝子操作された抗体は、従来の構成体よりも増大した結合親和性を有するため、細胞の消耗や殺害を必要とはしないが(例えば、配位子/レセプター相互作用を防ぐために)標的抗原の遮断を必要とする治療用途において有用であろう。典型的な用途は、抗CD4抗体又はB7相互作用を使用して、B7又はそのT細胞レセプター、CTLA−4もしくはCD80をブロックすることによりCD4細胞をブロックすることであろう。他の例は、IDEC 152(抗CD23抗体)のバージョンを使用してCD23抗原をブロックするか、IDEC 131(抗CD40L抗体)のバージョンを使用してCD40−CD40L相互作用をブロックすることを含み得る。
【0031】
構成体はまた、モノマーの抗体に優るその高い結合親和性、及び肝臓中でのその迅速な蓄積及び消化という点で、ウイルスやバクテリアの無力化にも治療用途も有する。抗RSV抗体、抗HPV抗体及び抗HIV抗体を含め多数の例を考えることができる。
【0032】
上に挙げた用途に加え、当業者は、本発明の化合物、組成物及び方法が新生物疾患又は免疫(自己免疫を含む)疾患を含む様々な病気を治療するのに特に有用であることを認識するであろう。この点では、本発明は、腫瘍関連抗原を示す任意の新生物病気、腫瘍又は悪性腫瘍を治療するために用いることができる。同様に、本発明の方法及び組成物は、全体的に又は部分的に自己抗原を示す細胞集団によって引き起こされる何らかの自己免疫疾患又は異常も治療するために用いることができる。
【0033】
上に議論するように、本発明の抗体は、腫瘍抗原又は免疫疾患に関連する抗原と免疫反応性であり得る。新生物疾患については、本発明で開示する抗体の抗原結合部分(つまり可変領域もしくは免疫反応性の断片又はそれらの組換体)は、悪性腫瘍部において選択された腫瘍関連抗原に結合する。同様に、免疫(自己免疫を含む)疾患においては、本発明で開示する抗体は、攻撃性細胞上の選択されたマーカーに結合するであろう。新生物疾患と免疫疾患に関連した多数の抗原、また、関連する多数の抗体が報告されており、したがって、当業者は、本発明で開示する抗体は、多数の全体抗体のうちの任意の1つから誘導し得ることを認識するであろう。より一般的には、本発明において有用な抗体は、選択された症状に関連する抗原又はマーカーと反応するすべての抗体(これまでに文献中で報告されたものを含む)から得ることができるし誘導できる。さらに、本発明で開示する抗体を生成するために使用される親抗体もしくは前駆体抗体又はそれらの断片は、マウス、ヒト、キメラ、ヒト化、非ヒト霊長類又は霊長類化(primatized)されたものでもよい。他の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、ここに記載するようにして定常領域ドメインを変更した単鎖抗体構成体(米国特許第5,892,019号−参照により本明細書に組み込まれている−に開示されているようなもの)を含んでもよい。したがって、本明細書での開示に従って修正されたこれらの抗体のタイプのうちのいずれも、本発明と適合性を有する。
【0034】
本明細書において「腫瘍関連抗原」という用語は、一般に腫瘍細胞に伴うすべての抗原、すなわち、正常な細胞と比較した場合同程度又はそれ以上に存在する抗原を意味する。より一般的には、腫瘍関連抗原は、それが非悪性細胞上で発現するか否かに関係なく、新生物細胞に免疫反応性抗体の局在をもたらすすべての抗原を含む。このような抗原は相対的には腫瘍特異的であり得るし、その発現が悪性細胞表面に限定されていてもよい。あるいは、そのような抗原は悪性細胞と非悪性細胞の両方で見られるものでもよい。例えば、CD20は悪性、非悪性の両方のB細胞の表面に見出される汎B抗原であるが、これは非ホジキンリンパ腫の治療のためには免疫療法的抗体の非常に有効な標的であると判明している。この点でCD2、CD3、CD5、CD6及びCD7などの汎T細胞抗原も、本発明の意味では腫瘍関連抗原を含む。まだ、他の典型的な腫瘍関連抗原にはMAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6及びE7、TAG−72、CEA、L6抗原、CD19、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターが含まれるが、これらに限定されない。多くの場合、これらの抗原の各々についての免疫反応的抗体が文献に報告されている。当業者は、これらの抗体の各々が本発明に従って修飾された抗体のための前駆体として機能し得ることを認識するであろう。
【0035】
本発明の抗体は、好ましくは、腫瘍又は上記免疫関連抗原に会合又は結合する。したがって、以下にある程度詳細に論じるように、本発明の抗体は、腫瘍関連抗原と反応する多くの抗体のうちの任意の1つに由来するものでもよいし、それらから生成又は作り上げられるものでもよい。好ましい実施形態では、抗体は、通常の遺伝子工学技術を使用して誘導される、修正されているか領域が除去された抗体であり、それによって血清半減期の低減などの所望の生化学的特性をもたらすように1つ又は複数の定常領域ドメインの少なくとも一部が除去されている。特に言えば、当業者は対象抗体の可変及び/又は定常領域ドメインに対応する遺伝子配列を容易に単離し、本発明に従ってモノマーサブユニットとして使用するように修飾された抗体を与えるべく適当なヌクレオチドを除去又は変更することができる。適合性を持つ修飾された抗体は、十分に確立されたプロトコルを使用して、臨床的又は商用規模で発現され生産され得るということも認識されるであろう。
【0036】
選択された実施形態では、本発明において有用な修飾された抗体は、既知の抗体から新生物又は免疫疾患(例えば自己抗原)に関連した抗原へと誘導されるであろう。これは、親抗体のヌクレオチド又はアミノ酸配列のいずれかを得、ここに議論するような修正を行うことにより容易に遂行できる。他の実施形態について言えば、既知の抗体の抗原結合領域(例えば可変領域又は補体決定領域)のみを使用し、これを修正された定常領域ドメインと組み合わせて、所望の修飾された抗体を生産し、開示する構成体を構築するために使用することが望ましいかもしれない。適合性を持つ単鎖モノマーサブユニットは同様の方法で生成できる。いずれの場合も、親和性を改善するか又は免疫性を低減するために、当技術分野においてよく行われるようにして本発明の抗体を遺伝子操作して作成し得ることが認識されるであろう。例えば、本発明の抗体は、ヒト化又はキメラ抗体から誘導してもよいし作り上げてもよい。したがって、本発明と合致する抗体は、天然に存在するマウス、霊長類(ヒトを含む)又は他の哺乳類の単クローン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、二重特異的抗体又は単鎖抗体構成体並びに各タイプの免疫反応性の断片から誘導もしくは組み立てられ及び/又はこれらを含むものでもよい。
【0037】
上に示唆されるように、本発明の抗体を提供するためには、以前に報告された抗体をここに記載するように変更してもよい。抗原結合領域を提供し、開示される抗体を生成又は誘導するために使用できる典型的な抗体としては、Y2B8及びC2B8(Zevalin(商標)及びRituxan(登録商標)、IDEC Pharmaceuticals社、サンディエゴ)、Lym 1及びLym 2(Techniclone)、LL2(Immunomedics社、ニュージャージー)、HER2(Herceptin(登録商標)、Genentech社、サウスサンフランシスコ)、B1(Bexxar(登録商標)、Coulter Pharm.、サンフランシスコ)、Campath(登録商標)(Millennium Pharmaceuticals、ケンブリッジ)、MB1、BH3、B4、B72.3(Cytogen社)、CC49(国立癌研究所)及び5E10(アイオワ大学)が含まれる。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、すぐ上に挙げた抗体と同じ腫瘍関連抗原に結合するであろう。特に好ましい実施形態では、抗体は、Y2B8、C2B8、CC49及びC5E10と同じ抗原から誘導されるかこれらに結合し、そして、さらに好ましくはドメイン欠失抗体(つまりΔCH2抗体)を含むであろう。
【0038】
第1の好ましい実施形態では、抗体は、Rituxan(登録商標)と同じ腫瘍関連抗原に結合するであろう。Rituxan(登録商標)(IDEC−C2B8及びC2B8としても知られている)は、FDAによって初めて承認されたヒトB細胞リンパ腫治療用の単クローン抗体であった(米国特許第5,843,439号、第5,776,456号及び第5,736,137号参照;各々が参照により本明細書に組み込まれている)。Y2B8はC2B8のマウス系の親である。Rituxan(登録商標)はキメラな、抗CD20単クローン抗体であり、成長阻害剤であるとともに、伝えられるところによれば、インビトロで化学療法剤によるアポトーシスのためのある種のリンパ腫細胞系を感作する。抗体は効率的にヒトの補体を結合し、強いFcR結合を有し、インビトロで、補体依存性(CDC)また抗体依存性(ADCC)メカニズムの両方で有効にヒトリンパ細胞を殺すことができる(レフら(Reff et al.)、Blood 83:435−445(1994))。当業者は、本開示によって修正されたC2B8又はY2B8の変種(ホモダイマー又はヘテロダイマー)が、結合形又は非結合形で、有効にCD20+悪性腫瘍を示す患者を治療するために使用できることを認識するであろう。より一般的には、本明細書によって開示される修飾された抗体は、「裸の」すなわち非結合状態でも細胞毒性剤と結合した状態のいずれでも、多くの病気のうちの任意の1つを有効に治療するために使用できるという点を強調すべきであろう。
【0039】
本発明の他の好ましい実施形態では、抗体は、CC49と同じ腫瘍関連抗原に由来するか又はこれに結合する。これまでに示唆されているように、CC49はヒト起源のある種の腫瘍細胞、具体的にはLS174T癌細胞系の表面に結合するヒトの腫瘍関連抗原TAG−72に結合する。LS174T[アメリカンタイプカルチャーコレクション(本明細書ではATCC)番号CL 188]は、LS180(ATCC番号:CL 187)大腸腺癌系の変種である。
【0040】
TAG−72に結合特異性を有する多数のマウス単クローン抗体が開発されてきたこともさらに理解されるであろう。これらの単クローン抗体のうちの1つ(B72.3と呼ばれる)は、ハイブリドーマB72.3(ATCC番号:HB−8108)によって生産されるマウスIgGIである。B72.3はヒトの乳癌抽出物を免疫原として使用して開発された第1世代の単クローン抗体である(コルチャーら(Colcher et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、78:3199−3203(1981);及び米国特許第4,522,918号及び第4,612,282号参照。各々が参照により本明細書に組み込まれている)。TAG−72に対する他の単クローン抗体は「CC」(結腸癌(「colon cancer」に因む)と呼ばれる。シュロームら(Schlom et al.)(米国特許第5,512,443号。参照により本明細書に組み込まれている)に記載されるように、CC単クローン抗体は、B72.3で精製されたTAG−72を使用して調製された第2世代のマウス単クローン抗体ファミリーである。TAG−72へのその比較的良好な結合親和性のために、以下のCC抗体は、アクセス制限の要請を伴ってATCCに寄託された:CC49(ATCC番号:HB 9459);CC83(ATCC番号:HB 9453);CC46(ATCC番号:HB 9458);CC92(ATTCC番号:HB 9454);CC30(ATCC番号:HB 9457);CC11(ATCC番号:9455);及びCC15(ATCC番号:HB 9460)。米国特許第5,512,443号はさらに、開示された抗体が置換(例えば、当技術分野で知られた組換えDNA技術によって、ヒトの定常領域(Fc)ドメインをマウス定常領域で)することによりそのキメラ形式に変更され得ることを教示する。マウス及びキメラな抗TAG−72抗体を開示することに加えて、シュロームら(Schlom et al.)は、PCT/US99/25552に開示されるようなヒト化CC49抗体の変種及び米国特許第5,892,019号に開示されるような単鎖構成体も作り出した(これらの各々も参照により本明細書に組み込まれている)。これまでに述べた抗体、構成体又は組換体、及びそれらの変種の各々が、本発明に従って抗体を提供するために改変し使用できることを当業者は認識するであろう。
【0041】
上に議論された抗TAG−72抗体に加えて、ドメイン欠失CC49及びB72.3抗体の構築及び部分的同定についても様々なグループが報告している(例えば、カルボら(Calvo et al.)、Cancer Biotherapy、8(1):95−109(1993)、スラヴィン−キオリーニら(Slavin−Chiorini et al.)、Int.J.Cancer 53:97−103(1993)及びスラヴィン−キオリーニら(Slavin−Chiorini et al.)、Cancer.Res.55:5957−5967(1995))。開示された構成体を改変し使用して、本発明の方法及び組成物と適合性を持つ抗体を提供し得ることを理解すべきである。
【0042】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、C5E10と同じ腫瘍関連抗原に由来するか又はこれに結合する修飾抗体を含む。同時係属している米国特許出願連続番号09/104,717に述べられているように、C5E10は、前立腺癌細胞系(例えばDU145、PC3又はND1)に特異的に現われるおよそ115kDaの糖タンパク質決定要素を認識する抗体である。したがって、本発明との関連では、C5E10抗体によって認識されるのと同じ腫瘍関連抗原に特異的に結合する修飾抗体(例えばCH2ドメイン欠失抗体)を生産し、修飾抗体を形成するために組み立て、新生物疾患の治療のために結合形又は非結合形で使用することができる。特に好ましい実施形態では、修飾抗体は、ATCC寄託番号PTA−865のハイブリドーマ細胞系から分泌されるような、C5E10抗体の抗原結合領域のすべて又は一部から誘導されるか、これらを含むであろう。次いで、生じる修飾抗体を後述する方法に従って放射性核種に結合させ、本発明の方法に従って、前立腺癌に罹患した患者に投与することができる。
【0043】
上に論じた抗体に加え、慣用の免疫学的技術と免疫化とを結び付けて使用して生成した新規な抗体の抗原結合領域から誘導されるかこれらを含む修飾抗体を含む組立体を提供することが望ましいかもしれない。当技術分野で知られたプロトコルを使用し、適当な抗原(例えば、精製した腫瘍関連抗原又はそのような抗原を含む細胞又は細胞抽出物)及びアジュバントを、複数回、皮下又は腹腔内に注入することによって哺乳動物中で抗体を形成させることが好ましい。この免疫化は、典型的には、活性化された脾細胞又はリンパ球から抗原反応性抗体の生産を含む免疫応答を誘導する。生じた抗体は動物血清から収穫できポリクローナルな調製物が提供されるが、多くの場合、脾臓、リンパ節又は末梢血から個々のリンパ球を単離して単クローン抗体(MAbs:monoclonal antibodies)の均一調製物を提供することが望ましい。好ましくは、リンパ球は脾臓から得られる。
【0044】
よく知られたこの方法(コーラーら(Kohler et al.)、Nature、256:495(1975))では、抗原を注入された哺乳動物から得られ比較的短命又は致死性のリンパ球を、不死性の腫瘍細胞系(例えば、骨髄腫細胞系)と融合させ、これにより、不死であるとともに、B細胞の遺伝学的にコードされた抗体の生産ができるハイブリッド細胞すなわち「ハイブリドーマ」を生成することができる。生じるハイブリッドは、選択、希釈及び単一抗体を形成する特定の遺伝子を含む個別株それぞれの再成長によって遺伝的に単一の株に単離される。したがって、それらは、所望の抗原に対して均質で、その純粋な遺伝的系統に鑑みて「単クローン」と呼ばれる抗体を生産する。
【0045】
このように調製したハイブリドーマ細胞を、適当な培地(好ましくは融合されていない親の骨髄腫細胞の成長や生存を阻害する1つ又は複数の物質を含む)中に播種して成長させる。当業者は、ハイブリドーマの形成、選択及び成長のための試薬、細胞系及び培地が多くの供給元から市販されており、標準化されたプロトコルが十分に確立されていることを認識するであろう。一般に、ハイブリドーマ細胞が成長している培地を、所望の抗原に対する単クローン抗体の生産について分析する。好ましくはハイブリドーマ細胞によって生産された単クローン抗体の結合特異性を、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのインビトロアッセイによって測定する。所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を生産するハイブリドーマ細胞の識別後、希釈操作を制限してクローンをサブクローニングし、標準的方法(ゴーディング(Goding)、単クローン抗体:原理と実際(「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、pp 59−103(Academic Press、1986))により成長させればよい。サブクローンによって分泌された単クローン抗体は、例えばタンパク質A、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなどの慣用の精製操作によって培地、腹水液又は血清から単離することができるという点もさらに理解されるであろう。
【0046】
他の適当な実施形態としては、所望の単クローン抗体をコードするDNAを慣用の操作を使用して(例えば、マウス抗体の軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離され配列決定することができる。単離され、サブクローニングされたハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい源として有用である。単離後、DNAを発現ベクターに入れ、次いで、それを大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はそうでなければ免疫グロブリンを生産しない骨髄腫細胞などの原核生物又は真核生物の宿主細胞にトランスフェクトさせればよい。より詳細に言えば、単離されたDNA(本明細書に記載するようにそれは改変してもよい)は、ニューマンら(Newman et al.)の米国特許第5,658,570号(出願日:1995年1月25日。それらは参照により本明細書に組み込まれている)に記載されるような抗体の製造の定常領域及び可変領域配列をクローニングするために使用することができる。実質的に、これは、選択された細胞に由来するRNAの抽出、cDNAへの転換及びIg特異的プライマーを使用したPCRによるその増幅を要する。この目的のための適当なプライマーも米国特許第5,658,570号に記載されている。以下により詳細に論じるように、所望の抗体を発現する変形された細胞は、比較的大量に成長させることができ、免疫グロブリンの臨床上及び商用の供給源となり得る。
【0047】
当業者は、抗体又は抗体断片をコードするDNAが、例えば、ヨーロッパ特許EP 368684(B1)号及び米国特許第5,969,108号(各々、参照により本明細書に組み込まれている)に述べられるような抗体ファージライブラリーに由来するものでもよい点を認識するであろう。いくつかの出版物(例えば、マークスら(Marks et al.)、Bio/Technology 10:779−783(1992))は、チェーンシャッフリングによる高親和性ヒト抗体の生産、並びに大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてコンビナトリアルインフェクションとインビボでの組み換えとについて記載している。このような操作は、単クローン抗体の単離及びその後のクローニングについて、従来のハイブリドーマ技術に対する実行可能な代案をもたらすものであるが、明らかに本発明の範囲内に含まれる。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態は、内生的な免疫グロブリン生産ができない遺伝子組換え動物(例えばマウス)(例えば米国特許第6,075,181号、第5,939,598号、第5,591,669号及び第5,589,369号参照。各々が参照により本明細書に組み込まれている)中における実質的なヒト抗体の生成を含む。例えば、キメラ及び生殖系変異マウスにおける抗体重鎖連結領域同型的欠失は、内生的な抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系変異マウスにヒト免疫グロブリン遺伝子配列を転送すれば、抗原を作用させた際にヒト抗体の生産をもたらすであろう。SCIDマウスを使用したヒト抗体を生成させるために好適な別の手段は、本明細書出願人が保有する米国特許第5,811,524号(参照により本明細書に組み込まれている)に開示されている。これらのヒト抗体に関連する遺伝物質も本明細書に記載するように単離され操作され得ることが理解されるであろう。
【0049】
組換え抗体を生成するためのさらに別の高度に効率的な手段は、ニューマン(Newman)、Biotechnology、10:1455−1460(1992)に開示されている。具体的には、この技術は、サルの可変領域及びヒトの定常配列を含む霊長類化抗体の生成をもたらす。この文献も参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。さらに、この技術は米国特許第5,658,570号、第5,693,780号及び第5,756,096号(同様に本明細書出願人に譲渡された)に記載されており、これら各々が参照により本明細書に組み込まれている。
【0050】
本明細書から明白なように、本発明の抗体を生産するのに有用な遺伝配列は、多種多様な出所から得ることができる。例えば、広範囲に上に議論するように、様々なヒトの抗体遺伝子は公にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。抗体及び抗体をコードする遺伝子の配列は多数が公表されており、前記のようにしてこれらの配列から適当な抗体遺伝子を合成できる。あるいは、当業者にはよく知られた技術を使用して抗体を生産する細胞系を選択し、培養してもよい。このような技術は様々な実験マニュアル及び主要な出版物に記載される。この点で、後述するような本発明で使用するに適した技術は、コリガンら(Coligan et al.)編「免疫学における現在のプロトコル」(Current Protocols in Immunology)、Green Publishing Associates及びWiley−Interscience、John Wiley and Sons、New York(1991)(補足部分を含むその全体が本明細書に組み込まれている)に記載されている。
【0051】
本発明の範囲は、さらに本明細書に記載されるDNA配列の対立遺伝子、変種及び変異種をすべて包含することもさらに理解されるであろう。
【0052】
よく知られているように、RNAは、イソチオシアン酸グアニジニウム抽出及びそれに続く遠心分離による沈殿又はクロマトグラフィーなどの標準的技術によって、本来のハイブリドーマ細胞又は他の形質転換細胞から単離することができる。望ましくは、mRNAは、オリゴdTセルロースを用いたクロマトグラフィーなどの標準的技術によって全RNAから単離することができる。これらの目的に適した技術は当技術分野においてよく知られており、これまでに挙げた参照文献中に記載されている。
【0053】
抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAsは、よく知られた方法に従って逆転写酵素とDNAポリメラーゼを使用して、同時又は別個のいずれで作成してもよい。それは、コンセンサス定常領域プライマーによって、又は、公表されている重鎖及び軽鎖のDNA及びアミノ酸配列に基づく、より特異的なプライマーによって始めることができる。上に論じたように、PCRは抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用してもよい。この場合、コンセンサスプライマー又はより大きな相同プローブ(マウス定常領域プローブなど)によってライブラリーをスクリーニングできる。
【0054】
DNA、典型的にはプラスミドDNAは、本明細書に記載されるような細胞から単離し、組換えDNA技術に関する前記したような参照文献に記載された標準的かつよく知られた手法に従って制限酵素認識部位のマッピングを行い、配列決定することができる。もちろん、DNAは単離プロセス又は後の分析の任意の時点で本発明によって改変してもよい。
【0055】
好ましい抗体配列を本明細書に示す。本発明のこの態様に適合するオリゴヌクレオチド合成技術は当業者によく知られており、いくつかの市販自動シンセサイザーのうちのどれを使用しても実行できる。さらに、本明細書で述べるいくつかのタイプの重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列は、商用DNA合成ベンダーのサービスによって得ることができる。その後、先の方法のうちのいずれかを使用して得られた遺伝物質は、本発明に適した抗体を提供するために変更してもよいし改変してもよい。
【0056】
種々の多様タイプの抗体が本発明によって得られ改変され得るが、本発明の構成体を組立てに用いる修飾抗体は様々な共通の特性を共有しているであろう。その目的のために、「免疫グロブリン」という用語は、適当な特異的免疫反応性を有するか否かに関わらず、2本の重鎖と2本の軽鎖の組合せ(H22)を指すものとする。「抗体」は、軽鎖と重鎖とを含み(それらの間の共有結合の連結があるかどうかを問わない)、抗原(例えば、腫瘍関連抗原)に対して重要な既知の特異的免疫反応活性を有するそうした組立体を指す。上に論じたように、本発明による「修飾抗体」は、免疫グロブリン、抗体又はその免疫反応性の断片か組換体であって、定常領域ドメインの1つ又は複数の少なくとも一部が除去されているか、さもなければ、所望の生化学的特性(ほぼ同じ免疫原性を有する全体かつ変更されていない抗体と比較して、非共有結合的に2量化する、腫瘍局在化が増加する、又は血清半減期が減少するなど)を与えるように変更されたものを意味すると理解されるべきである。本明細書の目的のために、定常領域ドメインが変更又は除去されている免疫反応性の一本鎖抗体構成体は、修飾抗体とみなしてよい。上に論じたように、本発明の好ましい修飾抗体又はドメイン欠失抗体は、定常ドメインの1つの少なくとも一部が除去されている。より好ましくは、修飾抗体の定常領域の1つのドメイン全体が除去され、さらにより好ましくは、CH2ドメイン全体が除去される。
【0057】
脊椎動物システムでの基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている。以下により詳細に論じるように、総称的な用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別できる5つの別個の抗体クラスを含む。5つのクラスは明らかにすべてが本発明の範囲内に含まれるが、以下の議論は一般にIgG分子のクラスについてのものである。IgGに関しては、免疫グロブリンは、分子量がおよそ23,000ドルトンの2本の同一の軽ポリペプチド鎖及び分子量53,000〜70,000の2本の同一の重鎖を含む。4つの鎖は、ジスルフィド結合によって「Y」字型に連結され、ここで軽鎖は、「Y」の口からスタートし、可変領域を通って続き重鎖をまとめている。
【0058】
より具体的には、軽鎖と重鎖の両方は構造と機能が相同の領域に分割される。「定常」という用語及び「可変」という用語は機能的に使用される。この点では、軽鎖(VL)と重鎖(VH)の両方の可変ドメインが、抗原認識及び特異性を決定することが理解されるであろう。反対に、軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fcレセプター結合、補体結合などの重要な生物学的特性を与える。慣習によって、定常領域ドメインの番号は、それらが抗体の抗原結合部位すなわちアミノ末端からより遠位に行くに従い増加する。したがって、CH3ドメインとCLドメインはそれぞれ現実には重鎖と軽鎖のカルボキシル基末端を含む。
【0059】
軽鎖はカッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスはカッパ又はラムダの軽鎖のいずれかと結合できる。一般に、軽鎖及び重鎖は互いに共有結合で結合し、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞又は遺伝子的に操作された宿主細胞のいずれかによって生成される場合、2本の重鎖の「尾」部分が共有結合であるジスルフィド結合によって互いに結合される。重鎖では、アミノ酸配列は、Y字の分岐端のN末端から始まり、各鎖の最下部のC末端まで続く。N末端には可変領域があり、C末端には定常領域がある。当業者は、そのいくつかのサブクラスと共に、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として重鎖が分類されることを認識するであろう。免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンE、免疫グロブリンG又は免疫グロブリンMとして抗体の「クラス」を決定するのはこの鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、よく特徴づけられ、特殊な機能性を与えることが知られている。これらのクラス及びアイソタイプの各々の修飾型は、本開示を考慮すれば当業者には容易に認識可能で、従って、本発明の範囲内にある。
【0060】
上に示すように、可変領域は抗体が選択的に免疫反応性の抗原上のエピトープを認識し特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVLドメインとVHドメインは組み合わさって可変領域を形成し、3次元的抗原結合部位を規定する。この4重抗体構造は、Yの各腕の端部に存在する抗原結合部位をもたらす。
【0061】
個々のモノマー抗体(H22)上に存在する6個のCDRは、アミノ酸の短く非連続的配列であり、抗体が水性環境中でその3次元配置を取るときに、特異的に配されて抗原結合部位を形成する。重鎖及び軽鎖可変ドメインの残りの部分は、アミノ酸配列において分子間でそれ程の変化を示さず、フレームワーク領域と呼ばれる。フレームワーク領域は概ねβシート構造を取っており、CDRは、このβシート構造を接続して(場合によってはその一部となって)ループを形成する。したがって、これらのフレームワーク領域は鎖相互間及び非共有結合的な相互作用により、6個のCDRの位置を正しい向きで定めるための足場を形成するように機能する。どのような場合も、位置付けられたCDRによって形成された抗原結合部位は免疫反応性の抗原上のエピトープに相補的な表面を定める。この相補的な表面により、免疫反応性抗原エピトープへの抗体の非共有結合的結合が促進される。
【0062】
本発明の目的では、開示される修飾抗体は、選択された抗原と抗体との結合をもたらす、任意のタイプの可変領域を含み得ることが理解されるべきである。この点では、可変領域は、体液性応答を起動し、かつ所望の抗原に対する免疫グロブリンを生成するように誘導され得る任意のタイプの哺乳動物を含んでもよいし、それらに由来するものでもよい。そのため、修飾抗体の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル、マカークなど)又はイヌ科起源でもよい。特に好ましい実施形態では、適合性を有する修飾抗体の可変領域と定常領域の両方がヒトである。他の選択された実施形態では、適合性をもつ抗体(通常非ヒト源に由来したもの)の可変領域は、結合特性を改善するか又は分子の免疫原性を低減するために操作又は具体的に調整してもよい。この点で、本発明において有用な可変領域はヒト化されたものか、導入されたDNA又はアミノ酸配列の包含を通じて変更され得る。
【0063】
本明細書の目的のために、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト抗体、典型的にはマウス抗体に由来する抗体であって、親抗体の抗原結合特性を保持するか実質的に保持するが、それはヒトにおいてそれほど免疫原性でないものを意味するものとする。これは様々な方法によって達成することができ、例えば、(a)非ヒト可変ドメイン全体をヒトの定常領域上に接ぎ木してキメラ抗体を生成すること;(b)重要なフレームワーク残基を保持し又は保持せずに、ヒトのフレームワーク及び定常領域へ非ヒトの相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数の少なくとも一部を接ぎ木すること;又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面の残基の置換によってそれをヒト親和性部分で「覆う」ことが含まれる。このような方法は、モリソンら(Morrison et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−5(1984);モリソンら(Morrison et al.)、Adv.Immunol.44:65−92(1988);ヴェルホイエンら(Verhoeyen et al.)、Science 239:1534−1536(1988);パドラン(Padlan)、Molec.Immun.28:489−498(1991);パドラン(Padlan)、Molec.Immun.31:169−217(1994)、並びに米国特許第5,585,089号、第5,693,761号及び第5,693,762号(すべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に開示されている、
【0064】
当業者は、上のオプション(a)で述べた技術が「古典的な」キメラ抗体を生産するだろうということを認識するであろう。本明細書においては、「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性の領域又は部位が第1の種から得られるか誘導され、定常領域(それは完全でもよいし部分的なものでも、又は本発明に従って修正されたものでもよい)が、第2の種から得られるすべての抗体を意味するように用いられる。好ましい実施形態では、抗原結合領域又は部位は、非ヒト源(例えばマウス)から誘導され、定常領域はヒトであろう。また。可変領域の免疫原特異性は、一般にその源(出所)によって影響されないが、ヒトの定常領域は、非ヒト源に由来する定常領域よりもヒト被験者から免疫反応を誘発する可能性が低い。
【0065】
好ましくは、重・軽鎖の両方の中の可変ドメインは、1つ又は複数のCDRの少なくとも部分的な置換によって変更され、必要ならば、部分的なフレームワーク領域置換及び配列変更によって変更される。CDRは、フレームワーク領域の由来する抗体とクラス又はさらにサブクラスが同一の抗体に由来するものでもよいが、異なるクラスの抗体、好ましくは異なる種に由来する抗体に由来することが意図される。CDRをすべて、ドナー可変領域に由来する完全なCDRに取り替えて可変ドメインの抗原結合能力を1つのものから別のものに変換してしまうことは必要ない、という点を強調すべきであろう。もっと正確に言えば、抗原結合部位の活性を維持するのに必要な残基を転換することだけが必要であろう。米国特許第5,585,089号、第5,693,761号及び第5,693,762号に記載された説明を前提とすれば、低減された免疫原性を備えた機能性抗体を得ることは、日常的な実験の実行により、又は試行錯誤試験により当業者の能力内で十分になし得ることである。
【0066】
可変領域への変更にもかかわらず、当業者は、本発明に適する修飾抗体が、抗体、又はその免疫反応性の断片(定常領域ドメインの1つ又は複数の少なくとも一部が除去されているか、さもなければ、所望の生化学的特性(ほぼ同じ免疫原性の天然又は未変更の抗体と比較して、腫瘍局在化が増加する、又は血清半減期が減少するなど)を与えるように変更されたもの)を含むであろうということを認識するであろう。好ましい実施形態では、修飾抗体の定常領域はヒトの定常領域を含むであろう。本発明と適合性を持つ定常領域の改変は、1つ又は複数のドメインにおける1つ又は複数のアミノ酸の付加、除去又は置換を含む。すなわち、本明細書で開示する修飾抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)の1つ又は複数への、及び/又は軽鎖定常ドメイン(CL)への変更又は改変を含み得る。以下により詳細に論じ実施例に示すように、本発明の好ましい実施形態は、1つ又は複数のドメインが部分的に又は完全に除去された改変定常領域(「ドメイン欠失抗体」)を含む。特に好ましい実施形態においては、適する修飾抗体は、CH2ドメイン全体が除かされたドメイン欠失構成体又は変種(ΔCH2構成体)を含むであろう。他の好ましい実施形態については、可変領域が運動の柔軟性及び自由度をもたらすために、欠失ドメインを短いアミノ酸スペーサーで置換してもよい。
【0067】
前に示したように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造及び3次元配置はよく知られている。例えば、ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、通常慣用の番号付けシステムを使用して残基約231〜残基340まで延びている。CH2ドメインはそれが別のドメインと緊密な対になっていないという点で独特である。より正確に言えば、2つのN結合分岐炭水化物鎖が、完全な天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間に入っている。また、CH3ドメインはCH2ドメインからIgG分子のC末端まで延びておよそ108の残基を含み、IgG分子のヒンジ領域がCH2ドメインをCH1ドメインにつないでいることも十分にドキュメント化されている。このヒンジ領域は約25の残基を包含し柔軟で、そのために、2つのN末端の抗原結合領域は独立して動くことができる。
【0068】
その配置に加えて、定常領域がいくつかのエフェクター機能を媒介することが当技術分野で知られている。例えば、抗体に補体のC1コンポーネントが結合することで補体システムが活性化する。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化及び溶解において重要である。補体の活性化はさらに炎症反応を刺激し、自己免疫の過剰にも関係している可能性がある。さらに、抗体は、細胞にFc領域を介して結合するが、この場合、抗体Fc領域上のFcレセプターサイトが細胞上のFcレセプター(FcR)に結合する。免疫グロブリンG(ガンマレセプター)、免疫グロブリンE(イータレセプター)、免疫グロブリンA(アルファレセプター)及び免疫グロブリンM(ミューレセプター)を含む様々なクラスの抗体に特異的な多くのFcレセプターが存在する。細胞表面上のFcレセプターに抗体が結合すると、これがトリガとなって、抗体被覆された粒子の呑食及び破壊、免疫複合体のクリアランス、抗体被覆された標的細胞のキラー細胞による溶解(抗体依存性細胞媒介細胞毒性、又はADCCと呼ばれる)、炎症メディエーターの放出、経胎盤輸送及び免疫グロブリン生産の制御を含む、多くの重要で種々の生物学的応答が起こる。様々なFcレセプター及びレセプターサイトがある程度まで研究されているが、それらの位置、構造及び機能に関しては未知の部分が未だ多い。
【0069】
さらに、本発明の範囲を限定するものではないが、本明細書に記載するように改変した定常領域を含む抗体はエフェクター機能が変わり、次いでこれが、投与された抗体の生物学的プロフィールに影響すると考えられる。例えば、定常領域ドメインの除去や不活性化(点突発変異又は他の手段による)は、血中修飾抗体のFcレセプター結合を低減し、腫瘍局在化を増加させるかもしれない。他の場合には、本発明と合致する定常領域改変が補体結合を緩和し、結合した細胞毒素の血清半減期を、従って非特異的結合を低減させるかもしれない。定常領域のさらに別の改変を用いて、ジスルフィド結合又はオリゴ糖部分を除去し、抗体特異性又は抗体柔軟性を増大させることにより、局在化を向上させてもよい。より一般的には、本明細書に記載される修飾抗体は、容易に認識されるか定かでない多くの微妙な効果を示し得ることは、当業者であれば認識するであろう。しかし、それらの修飾の結果生じる生理学的プロフィール、生物学的利用能及び他の生化学的影響(腫瘍局在化及び血清半減期など)は、過度な実験を経なくてもよく知られた免疫学的技術を用いて容易に定量され得る。
【0070】
同様に、本発明に従う定常領域への改変は、当業者の範囲内ではよく知られた生化学的又は分子工学的技術を使用して容易になし得る。
【0071】
単離された遺伝物質を操作して上に述べるような修飾抗体を提供した後、修飾抗体の所望の量を生産するために使用され得る宿主細胞に導入するべく、典型的には遺伝子を発現ベクターに挿入し、これにより特許請求の範囲に記載した構成体を提供する。
【0072】
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、明細書及び特許請求の範囲のために、本発明に従って使用されるベクター(細胞中に所望の遺伝子を導入し、発現させる媒体)を意味するものとして本明細書では使用される。当業者には知られているように、このようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス及びレトロウイルスからなる群から容易に選択され得る。一般に、本発明と適合性を持つベクターは、選択マーカー、適当な制限部位(所望の遺伝子のクローニングを容易にする)及び真核生物又は原核細胞に入り及び/又は増殖する能力を含むであろう。
【0073】
本発明のために、多数の発現ベクターシステムが使用され得る。例えば、ベクターの1つのクラスは、ウシ乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、牛痘ウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV又はMOMLV)又はシミアンウイルス40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNA要素を利用する。他のものとしては、内部リボソーム結合サイトを有するポリシストロン性システムの使用が含まれる。さらに、それらの染色体へDNAを組み込んだ細胞は、トランスフェクトした宿主細胞の選択を可能にする1つ又は複数のマーカーの導入により選択できる。マーカーは、栄養要求性の宿主に原栄養性、生命損壊(例えば抗生物質)への抵抗性又は銅などの重金属に対する抵抗性などをもたらす。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるべきDNA配列に直接結合してもよいし、又は同じ細胞に同時形質転換によって導入してもよい。mRNAの最適な合成のためには追加的要素も必要かもしれない。これらの要素には、スプライスシグナル、さらに転写プロモーター、エンハンサー及び終了シグナルが含まれ得る。
【0074】
特に好ましい実施形態では、クローン化された可変領域遺伝子を、上に論じたように改変した重鎖及び軽鎖定常領域遺伝子(好ましくはヒト)と共に発現ベクターに挿入する。好ましくは、これは、NEOSPLAと呼ばれるIDEC社の固有発現ベクターを使用して行う。このベクターはサイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスベータグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエクソン1及びエクソン2、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子及びリーダー配列を含む。下記の例で見られるように、このベクターは可変及び定常領域遺伝子を組み込んでCHO細胞にトランスフェクションした後、G418含有培地での選択し、メトトレキサート増幅すると、抗体を非常に高レベルで発現することが判明した。このベクターシステムは、共通して譲渡されている米国特許第5,736,137号及び第5,658,570号で実質的に開示されており、これらは各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。このシステムは高い発現レベル、つまり>30pg/細胞/日を与える。
【0075】
他の好ましい実施形態において、本発明の修飾抗体は、2001年11月16日に出願され同時係属中の米国仮出願第60/331,481号(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に開示されているようなポリシストロン性構成体を使用して発現させることができる。これらの新規発現システムでは、抗体の重鎖及び軽鎖などの対象とする多数の遺伝生成物が、単一のポリシストロン性構成体から生産できる。これらのシステムでは、真核生物の宿主細胞中で修飾抗体を比較的高レベルで得るために、内部リボソームエントリーサイト(IRES)を使用するのが有利である。適合性をもつIRES配列は、米国特許第6,193,980号(これも本明細書に組み込まれている)に開示されている。当業者は、本明細書で開示された修飾抗体を全範囲で有効に生産するためには、このような発現システムを使用してもよいことを認識するであろう。
【0076】
より具体的には、本発明の抗体は、単一のポリシストロン性構成体から、対象とする多数の遺伝生成物生産のための新規発現システムによって有利に生産されるであろう。好ましい実施形態では、発現システムは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、繊維芽細胞細胞系、骨髄腫細胞などの真核細胞、好ましくは哺乳類細胞において抗体を生産する。好ましくは、CHO細胞はGnYIIIをコードするDNA及び、5’から3’への向きで、少なくとも次の配列を含むポリシストロンを含む発現システムのための宿主として用いられる:CMV、SV40、初期又はアクチンプロモーター配列、好ましくはCMVなどの強い真核生物プロモーター配列;抗体軽鎖をコードするDNA配列、及び好ましくは、その5’末端に真核生物分泌リーダー配列;内部リボソームエントリーサイト(IRES)(好ましくはカルジオウイルス、ポリオウイルス又は疱疹ウイルスのそれ)であって抗体軽鎖配列に続くように位置したもの;抗体重鎖をコードする少なくとも1つのDNA配列であって、好ましくは真核生物の分泌リーダー配列がその前に先行し、開始及び停止コドンで挟まれたもの(ここで抗体重鎖をコードする各DNAは、それに続く重鎖配列からIRESによって分離され、最終の抗体重鎖コード配列はその3’末端にポリA配列を含む)。
【0077】
本明細書で説明する場合、真核細胞は好ましくは哺乳類の細胞、より好ましくはCHO細胞を含む。好ましい実施形態では、プロモーターはCMVプロモーターであり、IRESは脳心筋炎ウイルス、メンゴ(Mengo)ウイルス、Mous−Elberfiellウイルス、MMウイルス及びコロンビアSKウイルスのようなカルジオウイルス、最も好ましくはヒトの脳心筋炎ウイルス(hEMCV)に由来する。
【0078】
本発明によるポリシストロンは、好ましくは1つ又は2つの抗体重鎖コード配列を含む。しかし、3つ又は4つの遺伝子配列(例えば1つの軽鎖、3つの重鎖)を含むポリシストロンの組合せも考えられる。さらに、対象とするポリシストロンは、好ましくはウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリA配列を含むであろう。ポリシストロンシステムはIRESを備えた同族組換体中で使用してもよい。
【0079】
好ましい実施形態においては、本発明によるポリシストロンは、遺伝子発現の化学量論に依存して重鎖コード配列の1つ又は2つのコピーを含む。この点では、ポリシストロン発現システムでは、第1の遺伝子より第2の遺伝子が発現効率は劣っていることがよく知られている。従って、本発明によるポリシストロン(第1のシストロンは抗体軽鎖をコードする)は、軽鎖に対して重鎖の十分な発現を促進するために、もし必要であると考えられるのであれば、2又はそれ以上の重鎖コード配列をコードする第2のシストロンを包含してもよい。一般に、重・軽鎖の非ポリシストロン性の同時発現で観察されるレベルと少なくとも等しいレベルで重鎖が発現されることが好ましい。
【0080】
重鎖と比較してより多くの抗体軽鎖が発現するのも許容可能であるし、また、実際にはそれが望ましい。というのも、これは、哺乳動物の内生的な細胞で生じていることと同様だからである。軽鎖は、抗体重鎖及び軽鎖の適当な組立体を指図するのに有用なので、異種の発現レベルは存在し、また、対となっていない重鎖の過剰は細胞毒性を引き起こすと考えられる。また、軽鎖は、組み立てられた抗体重鎖及び軽鎖のフォールディングを指図して小胞体中で機能的な(抗原結合)抗体を生産するのに重要である。
【0081】
しかし、重鎖のレベルは最小であってはならないし、商業的に許容可能なレベルで機能的かつ分泌可能な抗体の生成を可能にするため軽鎖に関しても十分な割合で存在すべきである。したがって、過少発現は機能的抗体の生成量を不適当なものにするので、重鎖発現が軽鎖に比べて低すぎることは望ましくない。産業上の利用目的のために、機能的な抗体の生成量が不適当であると、発現システムが商業的に期待しにくいものとなり、またバッチ培養から完全な抗体分子を回収することが達成困難になる。好ましくは、機能的な抗体は、約10〜50ピコグラム/細胞に及ぶ量で培養細胞から回収される。
【0082】
上記に関して言えば、所与のポリシストロン発現システムが他の発現システムに対して適当なレベルの抗体産生をもたらすかどうかは一般に予測不能である。いくつかの例では、ポリシストロン複合体中の第2の所望の遺伝子の発現が、第1の遺伝子に対して非常に低レベルな場合もあり、この予測不能性が発生する。したがって、好ましいポリシストロン性ベクターの実施形態では、抗体重鎖発現に対する抗体軽鎖発現の比率が、約10:1〜約1:1範囲内となるべきである。好ましくは、軽鎖と重鎖遺伝子発現の比率は約3:1〜約2:1である。
【0083】
初期のIRES構成体は、第1シストロン中に抗体軽鎖配列を含むために作られ、これに2つのIRES抗体CH2ドメイン欠失重鎖配列対が続き、これにより十分な重鎖タンパク質が確実に生産されるようにして、適切なレベルの抗体が宿主細胞から生産され分泌されることを可能にする。ポリシストロン性ベクター中の第2のシストロン発現が予言できないことは知られているが、それがこのようなベクターの構築を促した。驚くべきことに、このポリシストロン性ベクターによって両方の重鎖配列を発現することができるかもしれない。
【0084】
本発明のポリシストロン性ベクターは、適当な重鎖抗体配列の賢明な選択によって、hEMCVなどの効率的なIRESの選択によって、又は抗体重鎖遺伝子の複数のコピーの編入によって、重鎖発現及び軽鎖発現が必要なレベルで達成されることを可能にする。またさらに、部位特異的変異生成によりATGコドン付近、典型的には最初の10個のコドンでコード構造が変わらないように重鎖遺伝子の5’末端に対応するDNAを改変してもよい。この方法では、異なる重鎖コード配列の発現レベルが合成し、そのために、抗体軽鎖分子に対する抗体重鎖分子の生成が最適になる重鎖DNAが選択される。
【0085】
完全な細胞の典型的な発現関係のように、重鎖生成は軽鎖の生成量未満になるであろう。重鎖に対する軽鎖の生成比は、タンパク質分泌及びフォールディングを可能にするのに十分なものとなるであろう。軽鎖の重鎖に対する発現比は、例えば、第1のシストロンの軽鎖配列に続くIRESをリンクした下流の遺伝子配列の数を増加させることで、変えることができる。特定のIRES及び発現細胞の組合せを選択することで、システムにおける第2のシストロン発現量を最適に増加させることができる。
【0086】
より一般的には、抗体をコードするベクター又はDNA配列を調製した後、発現ベクターを適当な宿主細胞に導入すればよい。すなわち、宿主細胞を形質転換すればよい。宿主細胞の中へのプラスミドの導入は当業者にはよく知られた様々な技術によって達成できる。これらには、トランスフェクション(電気泳動及びエレクトロポレーションを含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープドDNAとの細胞融合、マイクロインジェクション及び完全なウイルスによる感染を含むが、これらに限定されないA.A.G.リッジウェイ(Ridgway,A.A.G.)「哺乳類発現ベクター」(「Mammalian Expression Vectors」)24.2章、pp.470−472、ベクター(Vectors)、ロドリゲス及びデンハルト(Rodriguez and Denhardt)編(Butterworths、Boston、Mass.1988)参照。最も好ましくは、宿主の中へのプラスミド導入はエレクトロポレーションによる。形質転換された細胞は、軽鎖及び重鎖の生産に適した条件下で成長させ、重鎖及び/又は軽鎖タンパク質合成について分析した。典型的な分析技術は、酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は蛍光活性化細胞分別分析(FACS)、免疫組織化学などを含む。
【0087】
本明細書において「形質転換」という用語は広い意味で用いるものとし、遺伝子型を変更し、従ってレシピエント細胞の変化をもたらすレシピエント宿主細胞中へのDNAの導入のいずれをも指す。
【0088】
それと同趣旨で、「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、かつ、少なくとも1つの異種起源の遺伝子をコードするベクターで形質転換された細胞を指す。本明細書で定義されるように、宿主細胞によって生産される抗体又はその改変体は、この形質転換によれば、組換体である。組み換えの宿主に由来する抗体の単離のプロセスの記載で、「細胞」及び「細胞培養物」という用語は、もしそれが明白に別義に定められない限り、抗体の源を示すように交換可能に使用される。言いかえれば、「細胞」からの抗体の回収は、細胞全部からの遠心、又は培地と懸濁された細胞の両方を含む細胞培養物からの遠心のいずれをも意味し得る。
【0089】
タンパク質発現のために使用される宿主細胞系は、最も好ましくは哺乳類起源である;当業者は、所望の遺伝産物を発現させるために最も適している特定の宿主細胞系を優先的に決定する能力を有する。典型的な宿主細胞系は、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣細胞系、DHFRマイナス)、HELA(ヒト頚部癌)、CVI(サル腎臓細胞系)、COS(SV40T抗原によるCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター繊維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス繊維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓細胞系)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.×63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ細胞)及び293(ヒト腎臓)を含むが、これらに限定されない。CHO細胞が特に好ましい。宿主細胞系は典型的には商用サービスである、アメリカンティッシューカルチャーコレクション又は公表された文献から入手可能である。
【0090】
インビトロ生産によって、所望のモノマーサブユニット及びその延長として構成体を大量に与えるスケールアップが可能になる。組織培養条件下での哺乳類細胞培養物技術は当技術分野において知られており、例えば、エアリフトリアクター中もしくは連続撹拌リアクター中の均質懸濁培養、又は固定化もしくは捕捉した細胞の培養(例えば、中空ファイバー、マイクロカプセル又はアガロースマイクロビーズ上かセラミックカートリッジ上)を含む。前記のように、少なくともモノマーのサブユニットのうちのいくつかは自然に非共有結合的に会合して抗体を形成する。抗体の単離及び回収については、最初に、例えば、硫酸アンモニウムによる沈殿、PEGなどの含水材料に対する透析、選択的薄膜によるろ過などにより、培養上清中の免疫グロブリンを濃縮すればよい。
【0091】
修飾抗体遺伝子はバクテリアや酵母などの非哺乳類細胞中で発現させることもできる。この点では、バクテリアなどの単細胞の非哺乳類微生物(すなわち、培養液又は発酵液中において成長する能力を有するもの)も形質転換することができると理解されるであろう。バクテリア(それらは形質転換され易い)は、大腸菌菌株などの腸内細菌科(enterobacteriaceae);サルモネラ菌;枯草菌などのバシラス科(Bacillaceae);肺炎双球菌;連鎖球菌、及びヘモフィルスインフルエンザエ(Haemophilus influenzae)のメンバーを含む。バクテリアの中で発現させた時、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が典型的には封入体の一部になることも理解されるであろう。次いで、チェーンを単離、精製、次に、組み立てて機能的なモノマーサブユニットとする必要がある。
【0092】
原核生物に加えて真核生物の微生物も使用できる。真核生物の微生物中では、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、すなわち通常のパン酵母が最も広く使用されるが、多くの他の株も一般に利用可能である。
【0093】
サッカロミセス(Saccharomyces)中の発現については、例えば、プラスミドYRp7が一般に使用される(スティンチコームら(Stinchcomb et al.)、Nature、282:39(1979);キングズマンら(Kingsman et al.)、Gene、7:141(1979);ツェンパーら(Tschemper et al.)、Gene、10:157(1980))。このプラスミドは、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の突然変異種(例えば、ATCC No.44076又はPEP4−1)(ジョーンズ(Jones)、Genetics、85:12(1977))で選択マーカーとなるtrpl遺伝子を既に含む。この場合、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrpl損傷の存在は、トリプトファンが欠如した状態での成長によって形質転換を発見するのに有効な環境をもたらす。
【0094】
臨床的に有用な量がどれくらい得られるかにかかわらず、本発明の抗体は、いくつかの結合した(つまりイムノコンジュゲート)又は結合していない形のうちの任意の1つとして使用できる。特に、本発明の抗体は、放射性同位元素、治療剤、細胞増殖抑制剤、生物学的毒素又はプロドラッグなどの細胞毒素と結合させることができる。あるいは、悪性腫瘍細胞を除去する対象の自然な防衛機構を利用するために、本発明の抗体は非結合形、すなわち本来の形で使用してもよい。特に好ましい実施形態では、修飾抗体は、多数のよく知られたキレート剤のいずれかを使用するか、直接標識化して、90Y、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re及び188Reなどの放射性同位元素と結合させてもよい。他の実施形態では、開示される組成物は、薬剤、プロドラッグ又は生物反応修飾物質(メトトレキサート、アドリアマイシン及びインターフェロンなどのリンホカイン)につながれた修飾抗体を含んでもよい。本発明のさらに別の実施形態は、リシンやジフテリア毒素などの特異的バイオトキシン(biotoxin)と結合した修飾抗体の使用を含む。本発明のさらに別の実施形態では、修飾抗体を他の免疫学的に活性な配位子(例えば、その抗体又はその断片)と複合させ、生じる分子が新生物細胞及びT細胞などのエフェクター細胞の両方と結合するようにする。使用する修飾抗体が結合しているか結合していないかの選択は、癌のタイプ及び段階、付属的治療(例えば、化学療法又は外部放射線)の使用及び患者の状態に依存するであろう。当業者であれば、本明細書の教示を考慮して容易にそのような選択を行うことができることが理解されるであろう。
【0095】
本明細書で使用する場合、「細胞毒素又は細胞毒性剤」は、細胞の成長及び増殖に有害で、それに暴露されたときに細胞又は悪性腫瘍を縮小するか、阻害するか、破壊するように作用するすべての薬剤を意味する。典形的な細胞毒素は、放射性核種、バイオトキシン、酵素によって活性化される毒素、細胞増殖抑制剤又は細胞毒性剤、プロドラッグ、サイトカインなどの免疫学的に活性な配位子及び生物反応修飾物質を含むがこれらに限定されない。以下により詳細に論じるように、本発明で使用するものとして放射性核種細胞毒素が特に好ましい。しかし、免疫反応性細胞又は悪性腫瘍細胞の成長を遅らせるか又はこれらの細胞を除去するために作用し、本明細書に開示される抗体に結合し得るどのような細胞毒素も、本発明の範囲内にある。
【0096】
従来の研究では、動物モデルにおいて及び場合によってはヒトにおいて、同位体で標識された抗腫瘍抗体を使用して固形腫瘍及びリンパ腫/白血病中の細胞破壊が成功裡になされていることが理解されるであろう。放射性核種は、電離放射線を生じて作用するが、これにより核DNAが多数のストランドに切断されて細胞死をもたらす。治療用複合体を生成するために使用される同位体は、典型的には、経路長の短い高エネルギーα又はβ粒子を生じる。このような放射性核種は、近接(例えば複合体が付着したか入った新生物細胞)状態にある細胞を殺す。それらは局在化されていない細胞にはほとんどあるいは全く効果がない。放射性核種には実質的に免疫原性はない。
【0097】
従来の研究では、動物モデルにおいて及び場合によってはヒトにおいて、同位元素で標識された抗腫瘍抗体を使用して固形腫瘍及びリンパ腫/白血病中の細胞破壊が成功裡になされていることが理解されるであろう。放射性核種は、電離放射線を生じて作用するが、これにより核DNAが多数のストランドに切れて細胞死をもたらす。治療用複合体を生成するために使用される同位体は、典型的には、経路長の短い高エネルギーα、γ又はβ粒子を生じる。このような放射性核種は、近接(例えば複合体が付着したか入った新生物細胞)状態にある細胞を殺す。それらは局在化されていない細胞にはほとんどあるいは全く効果がない。放射性核種には実質的に免疫原性はない。
【0098】
本発明に関しての放射標識複合体の使用については、修飾抗体を直接標識(ヨウ素化などによる)してもよいし、キレート剤の使用を通じて間接的に標識してもよい。本明細書において、「間接的に標識する」という句及び「間接標識手法」は両方とも、キレート剤が抗体に共有結合的に付けられ、少なくとも1つの放射性核種がキレート剤に結合していることを意味する。このようなキレート剤はポリペプチド及び放射性同位元素の両方に結合するため、典型的にはそれらは二官能性キレート剤と呼ばれる。特に好ましいキレート剤は1−イソチオシスマトベンジル−3−メチルジオテレントリアミン五酢酸(isothiocycmatobenzyl−3−methyldiothelene triaminepentaacetic acid)(「MX−DTPA」)及びジエチレントリアミン五酢酸シクロヘキシル(「CHX−DTPA」)誘導体を含む。他のキレート剤はP−DOTA及びEDTA誘導体を含む。間接的に標識するための特に好ましい放射性核種は111In及び90Yである。
【0099】
本明細書で使用する場合、「直接標識」という句及び「直接標識手法」は両方とも、放射性核種が共有結合により抗体に直接(典型的にはアミノ酸残基による)付けられることを意味する。より具体的には、これらの結合技術はランダムな標識化と部位指向的標識化とを含む。後者の場合は、標識化は複合体(コンジュゲート)のFc部分上にのみ存在するN結合糖残基などの抗体上の特定の部位に向け行われる。さらに、様々な直接的標識化技術及びプロトコルが、本発明と適合性を有する。例えば、テクネチウム−99m標識化抗体は、配位子交換プロセスによるものであり、スズイオン溶液でパーテクネート(TcO4-)を還元し、セファデックスカラム上に還元されたテクネチウムをキレート化し、このカラムに抗体を適用することによって、あるいはバッチ標識化技術(例えば、パーテクネート、SnCl2のような還元剤、フタル酸ナトリウムカリウム溶液などのような緩衝液及び抗体をインキュベートする)によって調製できる。いずれの場合も、抗体を直接標識するための好ましい放射性核種は当技術分野においてよく知られており、直接標識するための特に好ましい放射性核種は、チロシン残基によって共有結合で結合される131Iである。本発明による修飾抗体は、例えば、放射性のヨウ化ナトリウム又はヨウ化カリウム及び次亜塩素酸ナトリウム、クロラミンT又などの化学的酸化剤又はラクトペルオキシダーゼ、グルコース酸化酵素などの酵素的酸化剤とグルコースを用いて誘導してもよい。しかし、本発明の目的では、間接標識手法は特に好ましい。
【0100】
キレート剤とキレート剤複合体に関する特許は、当技術分野において知られている。例えば、ガンソウ(Gansow)の米国特許第4,831,175号は、多置換ジエチレントリアミン五酢酸キレート化合物及びこれを含むタンパク質複合体、並びにそれらの調製方法を対象とする。ガンソウ(Gansow)の米国特許第5,099,069号、第5,246,692号、第5,286,850号、第5,434,287号及び第5,124,471号も、多置換DTPAキレート化合物を対象としている。これらの特許は、その全体が本明細書に組み込まれている。適合性を持つ金属キレート剤の他の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、1,4,8,11−テトラアザテトラデカン、1,4,8,11−テトラアザテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸、1−オキサ−4,7,12,15−テトラアザヘプタデカン−4,7,12,15−四酢酸(DPTA)などである。シクロヘキシル−DTPA又はCHX−DTPAが特に好ましく、以下において広範囲に例として挙げる。さらに他の適合性をもつキレート剤は、未発見のものも含め、当業者によって容易に識別されるであろうし、明らかに本発明の範囲内である。
【0101】
本明細書と同時係属の出願連続番号08/475,813、08/475,815及び08/478,967でキレート化を促進するために用いられている特定の二官能性キレート剤を含め、適合性を持つキレート剤は、好ましくは3価の金属に高い親和性をもたらすように、腫瘍−非腫瘍比率がより大きく、骨吸収がより低く、標的部位(つまりB細胞リンパ腫腫瘍部位)でのインビボの放射性核種の保持がより大きくなるように選択される。しかし、これらの特性のすべてを有するかもしれないし、有しないかもしれない、他の二官能性のキレート剤も当技術分野で知られており、腫瘍治療においてさらに有益かもしれない。
【0102】
さらに、本明細書の教示に従って、修飾抗体は、診断及び治療の目的のために様々な放射標識と複合させ得ることも理解されるであろう。この目的のために、前記の同時係属出願(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)は、治療用抗体の投与前に腫瘍を診断のために「イメージング」するための放射標識した治療用複合体を開示する。「In2B8」複合体は、マウス単クローン抗体(ヒトのCD20抗原に特異的な2B8)を含み、これは二官能性キレート剤(つまりMX−DTPA)(ジエチレントリアミン五酢酸)を介して111Inに結合される。なお、これは、1−イソチオシアナートベンジル3−メチル−DTPAと1−メチル−3−イソチオシアナートベンジル−DTPAの1:1混合物を含む。111Inは約1mCiから約10mCiまでの間で検知できる毒性なしに安全に投与でき、また、イメージングデータは、後の90Y標識化抗体の分布を概ね予測させるので診断用放射性核種として特に好ましい。ほとんどのイメージング研究では5mCiの111In標識化抗体を利用するが、これは、その用量が安全で、かつ、より低用量と比較してイメージング効率が大きいためである。イメージングは、抗体投与後3〜6日で行うことが最適である。例えば、マレー(Murray)、J.Nuc.Med.26:3328(1985)及びカラギーロら(Carraguillo et al.)、J.Nuc.Med.26:67(1985)参照。
【0103】
上に示すように、本発明では様々な放射性核種が利用できる。また、当業者は、様々な状況下でどの放射性核種が最も適切か容易に決める能力を有する。例えば、131Iは標的免疫療法で用いられる放射線核種としてよく知られている。しかし、131Iの臨床の有用性は次の点を含むいくつかの要因により制限され得る:物理的な半減期が8日間である点;ヨード化抗体の血中及び腫瘍部位での脱ハロゲン化;及び腫瘍中に局在的に付着した服用量が最適よりも劣る可能性のある放射特性(例えば大きなガンマ部分)。より優れたキレート剤の出現に伴い、タンパク質に金属キレート基を結合させる機会により、111Inや90Yなどの他の放射性核種を利用する機会を増加させた。90Yには放射免疫療法に適用して利用する上でいくつかの長所がある:90Yの64時間の半減期は腫瘍による抗体蓄積を可能にする程度に十分に長く、例えば131Iと異なり、90Yは崩壊に際しガンマ放射のない高エネルギーの純粋なベータ放射体であり、組織中の範囲は100〜1,000細胞直径である。さらに、透過放射線が最小であることから、90Y標識化抗体を外来患者に投与することも考えられる。さらに、細胞殺害のために標識化抗体が吸収される必要はなく、イオン化放射線の局所的放射は、標的抗原を欠く隣接した腫瘍細胞にも致死的でなければならない。
【0104】
90Y標識化修飾抗体の有効な単回投薬量(つまり治療上有効な量)は、約5と約75mCiの間であり、より好ましくは約10と約40mCiの間である。131I標識化抗体の有効な非骨髄切除単回投与量は、約5と約70mCiの間に、より好ましくは約5と約40mCiの間である。131I標識化抗体の有効な切除単回投与量(つまり、自家骨髄移植を必要としてよい)は、約30と約600mCiの間に、より好ましくは約50と約500mCi未満の間である。キメラ抗体と複合した場合、血中半減期がマウス抗体に対してより長いため、ヨウ素131標識化キメラ抗体の有効な単一治療非骨髄切除投薬は、約5と約40mCiの間、より好ましくは約30mCi未満である。イメージングの基準は、例えば111In標識では、典型的には約5mCi未満である。
【0105】
131Iと90Yでは非常に多くの臨床経験が得られているが、他の放射標識も当技術分野の中で知られており、同様の目的のために使用されている。さらに他の放射性同位元素がイメージングのために使用される。例えば、本発明の範囲と適合性を持つ追加的な放射性同位元素は、123I、125I、32P、57Co、64Cu、67Cu、77Br、81Rb、81Kr、87Sr、113In、127Cs、129Cs、132I、197Hg、203Pb、206Bi、177Lu、186Re、212Pb、212Bi、47Sc、105Rh、109Pd、153Sm、188Re、199Au、225Ac、214At及び213Biを含むが、これらに限定されない。この点で、アルファ、ガンマ及びベータ放射体はすべて本発明と適合する。さらに、本開示を考慮すれば、どの放射性核種が治療の選択されたコースと適合性を持つかを、当業者は過度の実験を行うことなく容易に決定できると考えられる。この目的のために言えば、臨床の診断において既に使用されている追加的な放射性核種は125I、123I、99Tc、43K、52Fe、57Ga、68Ga及び111Inを含む。抗体はまた、標的化免疫療法で使用することを見込んで、様々な放射性核種で標識されてきた(ペイレルスら(Peirersz et al.)、Immunol.Cell Biol.65:111−125(1987)。これらの放射性核種は188Re及び186Reを含み、程度はより少ないが199Au及び67Cuも含まれる。米国特許第5,460,785号はこのような放射性同位元素に関する追加のデータを提供するものであり、参照により本明細書に組み込まれている。
【0106】
放射性核種に加えて、本発明の抗体は、多数の生物反応修飾物質、医薬剤、毒素又は免疫学的に活性な配位子のうちの任意の1つと複合又は結合してもよい。当業者は、これらの非放射性複合体は、選択された細胞毒素により様々な技術を使用して作成され得ることを理解するであろう。例えば、ビオチンとの複合体は、例えば、ビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのビオチンの活性化されたエステルと抗体を反応させることによって調製される。同様に、蛍光性のマーカーとの複合体は、例えば、上に挙げたようなカップリング剤の存在下に、イソチオシアネート、好ましくは、フルオレセイン−イソチオシアネートとの反応によって調製できる。本発明の抗体の細胞増殖抑制性/細胞毒素物質及び金属キレート化合物との複合体は、同様の方法で調製される。
【0107】
本発明で使用される好ましい薬剤は細胞毒性剤であり、特に癌治療のために使用されるものである。そのような薬は一般に、細胞増殖抑制剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗増殖剤、チューブリン結合剤、ホルモン及びホルモンアンタゴニストなどを含む。本発明と適合性をもつ典型的な細胞増殖抑止剤はメクロレタミン(mechlorethamine)、トリエチレンホスホラミド(triethylenephosphoramide)、シクロフォスファミド、イフォスファミド(ifosfamide)、クロラムブチル、ブスルファン、メルファラン又はトリアジクオン(triaziquone)などのアルキル化物質、さらにカルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)又はセムスチン(semustine)などのニトロソ尿素化合物を含む。細胞毒性剤の他の好ましいクラスは、例えば、アントラサイクリン(anthracycline)ファミリーの薬剤、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒素性ヌクレオシド、プテリジンファミリーの薬剤、ジインエン(diynenes)及びポドフィロトキシン(podophyllotoxins)を含む。それらのクラスの特に有用なメンバーは例えば、アドリアマイシン、カルミノマイシン(carminomycin)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン(methopterin)、ミトラマイシン、ストレプトニグリン、ジクロロメトトレキサート(dichloromethotrexate)、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、5−フルオロウラシル、フルオキシウリジン(floxuridine)、フトラフール(ftorafur)、6−メルカプトプリン、シタラビン(cytarabine)、シトシンアラビノシッド、ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)又はエトポシド(etoposide)もしくはエトポシドリン酸塩などのポドフィロトキシン誘導体、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、リューロシジン(leurosidine)、ビンデシン(vindesine)、リューロシン(leurosine)などを含む。本明細書の教示と適合性を持つさらに別の細胞毒素はタキソール及びタキサン(taxane)、サイトカラシン(cytochalasin)B、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、テノポシド(tenoposide)、コルヒチン(colchicin)、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びプロマイシン並びにこれらのアナログもしくはホモローグを含む。コルチコステロイドなどのホルモン及びホルモンアンタゴニスト、例えばプレドニゾン、プロゲスチン、例えばヒドロキシプロゲステロン、メドロプロゲステロン(medroprogesterone)、エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロール、抗エストロゲン、例えばタモキシフェン、アンドロゲン、例えばテストステロン、アロマターゼ(aromatase)阻害剤、例えば、アミノグルテチミド(aminogluthetimide)も本明細書の教示と適合性を有する。前記のように、当業者は、本発明の複合体の調製をする目的において化合物の反応をより便利にするために所望の化合物に対し化学的修飾を行ってもよい。
【0108】
特に好ましい細胞毒素の1つの例は、カリケアミシン(calicheamicin)、エスペラミシン類(esperamicins)又はダイネミシン類(dynemicins)を含む抗腫瘍抗生物質のエンジイン(enediyne)ファミリーのメンバー又は誘導体を含む。これらの毒素は非常に有力で、核のDNAに開裂作用を及ぼして細胞死をもたらす。インビボで開裂して多数の不活性ではあるが免疫原性を有するポリペプチド断片を生じるタンパク質毒素と異なり、カリケアミシン、エスペラミシン類その他のエンジイン類などの毒素は、実質的に免疫原性でない小さな分子である。これらの非ペプチド毒素は、単クローン抗体及び他の分子を標識化するために上に使用した技術によって抗体に化学的に結合される。これらの結合技術は、構成体のFc部分上にのみ存在するN結合糖残基による部位特異的結合を含む。このような部位指向的結合方法は、構成体の結合特性に及ぼす恐れのある結合の効果を弱めるという長所を有する。
【0109】
前に示唆したように、適合性をもつ細胞毒素はプロドラッグを含み得る。本明細書において「プロドラッグ」という用語は、親薬剤と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素で活性化することができるか、より活性な親形式に変換することができる、薬剤として活性な物質の前駆体か派生的な形を指す。本発明と適合性をもつプロドラッグは、リン酸塩含有プロドラッグ、チオリン酸塩含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及びより活性な細胞毒性のない薬に変換することができる他の5−フルオロウリジンプロドラッグを含むが、これらに限定されない。本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導化できる、細胞毒性剤のさらなる例は、上に記載された化学療法剤を含む。
【0110】
他の細胞毒素の中で、抗体が、リシンサブユニットA、アブリン、ジフテリア毒素、ボツリヌス菌、シアンギノーシン類(cyanginosins)、サキシトキシン、シガトキシン(shigatoxin)、破傷風毒素、河豚毒、トリコテシン、ヴェルコローゲン(verrucologen)又は有毒酵素などのバイオトキシンと結合し得ることは理解されるであろう。好ましくは、そのような構成体は、抗体毒素構成体の直接的発現を可能にするように遺伝子工学技術を使用して作成されるであろう。本発明の修飾抗体と結合させ得る他の生物反応修飾物質はリンホカインやインターフェロンなどのサイトカインを含む。本明細書の開示を考慮すれば、当業者は慣用の技術を使用して容易にそのような構成体を形成することができると考えられる。
【0111】
開示された抗体と共に使用できる適合性をもつ細胞毒素の別のクラスは、腫瘍又は免疫反応性の細胞に有効に誘導し得る放射線増感薬である。このような薬剤は、電離放射線への感度を増強し、そのために、放射線療法の効能を増加させる。腫瘍細胞によって取り込まれた抗体複合体は、核の近く(ここで放射線増感が最大となろう)でこの放射線増感薬を伝達するであろう。放射線増感薬結合修飾抗体の中、未結合のものは血液から速やかに取り除かれるため、残った放射線増感薬を標的腫瘍中に局在化し、正常な組織中への取り込みを最小にするであろう。血液からの迅速な除去後に、補助的な放射線治療剤が、3つの方法のうちの1つとして採られるであろう:1.)腫瘍に特異的に誘導した外部ビーム放射線、2.)腫瘍に直接埋め込んだ放射能、又は3.)同一の標的化抗体を用いた全身的な放射線免疫療法。この手法の潜在的に魅力的な変法は、放射線増感されたイムノコンジュゲート(免疫複合体)に治療用放射性同位元素を結合し、それにより、患者に単一の薬を投与するという便宜をもたらすものである。
【0112】
開示された抗体を結合した形で使用するか結合していない形で使用するにせよ、本発明の主な利点が、骨髄抑制(myelosuppressed)された患者、特に放射線療法又は化学療法などの付属的治療を受けているか経験した人々においてこれらの構成体が使用できる点にあることが理解されるであろう。すなわち、抗体の有利な送達プロフィール(すなわち、比較的血清中存在時間が比較的短く、高い結合親和性、及び増強された局在化)のため、赤色骨髄貯蔵量が低減しており骨髄毒性に敏感な患者を治療するのに特に有用となる。この点に関して、抗体のユニークな送達プロフィールのために、放射標識した複合体を骨髄抑制された癌患者に投与するには非常に有効となる。そのため、修飾抗体は、結合した形でも結合していない形でも、以前に外部ビーム放射線又は化学療法のような付属的治療を経験した患者において有用である。他の好ましい実施形態では、抗体(やはり結合した形でも結合していない形でもよい)は、化学療法剤と組み合わせた治療法で使用してもよい。当業者は、そのような治療法が、開示された抗体と1又は複数の化学療法剤との逐次的、同時的、同期的、同延的(coextensive)投与を含み得ることを理解するであろう。発明のこの態様の特に好ましい実施形態は、放射標識で識別された抗体の投与を含むであろう。
【0113】
本発明の抗体はすぐ上に記載したように投与してもよいが、他の実施形態においては、結合した形でも結合していない形でも抗体を健康な患者に最初の防御線として投与し得る点は強調しておくべきであろう。このような実施形態では、抗体は、正常であるか平均赤色骨髄貯蔵量を有する患者に、及び/又は有していない患者に投与してもよいし、外部ビーム放射線又は化学療法のような付属的治療を経験してない患者に投与してもよい。
【0114】
しかし、上に論じたように、本発明の選択された実施形態は、骨髄抑制された患者への抗体の投与、又は放射線療法又は化学療法などの1つ又は複数の付属的治療と組合せもしくは複合された抗体の投与(つまり組合せ治療法)を含む。本明細書において、付属的治療と組合せもしくは複合された抗体の投与は、治療及び開示された抗体の逐次的、同時的、同延的、同期的、付随的、同時間的投与又は適用を意味する。当業者は、治療の全体的な効果を増するように組合せ治療法の様々な成分の投与又は適用のタイミングを設定できることを認識するであろう。例えば、化学療法剤を標準的なよく知られた治療過程で投与した後、数週間以内に本発明の放射性イムノコンジュゲートを投与する。逆に、細胞毒素結合抗体を静脈投与した後に、続けて、腫瘍局限的外部ビーム放射線照射を行う。さらに別の実施形態では、患者が診療室を1回訪れた際に1種又は複数の選択さた化学療法剤と同時に、抗体を投与してもよい。当業者(例えば経験を積んだ腫瘍学者)は、選択された付属的治療及び本明細書の教示に基づいて過度な実験を行うことなく有効な組合せ治療法を容易に識別できるであろう。
【0115】
この点では、抗体(細胞毒素を備えた、又は細胞毒素を伴わない)と化学療法剤との組合せは、任意の順で、患者に治療上有利であるような時間的な枠組みで投与すればよいことが理解されるであろう。すなわち、化学療法剤及び抗体は任意の順又は同時に投与すればよい。選択された実施形態では、本発明の抗体は、以前に化学療法を経験した患者に投与されるであろう。しかし、他の実施形態では、抗体及び化学療法の治療は実質的に同時に又は同時的に投与されるであろう。例えば、患者が化学療法コースを受ける間に修飾抗体を与えてもよい。好ましい実施形態では、修飾抗体は、任意の化学療法剤又は治療から1年以内に投与されるであろう。他の好ましい実施形態では、抗体は、任意の化学療法剤又は治療から10、8、6、4、又は2カ月以内に投与されるであろう。さらに別の好ましい実施形態では、任意の化学療法剤又は治療の4、3、2又は1週以内に抗体が投与されるであろう。他の実施形態では、抗体は選択された化学療法剤又は治療から5、4、3、2又は1日以内に投与されるであろう。2種類の薬剤又は治療を数時間又は数分以内に(すなわち、実質的に同時に)患者に投与してもよいということもさらに認識されるであろう。
【0116】
さらに、本発明において、骨髄抑制された患者とは血球数の低下を示す任意の患者を意味するものとする。当業者は、骨髄抑制の臨床的指標として慣用されるいくつかの血球数測定パラメーターがあり、骨髄抑制が患者中で起こっている程度を容易に測定することができることを理解するであろう。当技術分野で認められている骨髄抑制測定法の例は、絶対的好中球数(ANC)又は血小板計数である。このような骨髄抑制又は部分的な骨髄消耗(myeloablation)は様々な生化学的障害又は疾病の結果、又は、よりありがちなものとして先行する化学療法又は放射線療法の結果起こり得る。この点で、当業者は、従来の化学療法を経験したその患者が赤色骨髄埋蔵量の低減を典型的に示すことを理解するであろう。上に論じたように、そのような被験者では、多くの場合、細胞毒素(つまり放射性核種)の最適のレベルは、貧血や免疫抑制(これは死亡や病的状態を高める)などの許容できない副作用をもたらすため、治療に使用できない。
【0117】
本発明のより特異的に結合しているか結合していない抗体は、ANCで約2000/mm3未満又は血小板数で約150,000/mm3未満の患者の治療に使用できる。より好ましくは、本発明の抗体はANCで約1500/mm3未満、約1000/mm3未満、さらに好ましくは約500/mm3未満の患者の治療に使用できる。同様に、本発明の抗体は血小板数で約75,000/mm3未満、約50,000/mm3未満、又は約10,000/mm3未満の患者の治療に使用できる。より一般的な意味では、当業者は、政府が制定したガイドライン及び手順を使用して患者が骨髄抑制状態にある場合を容易に判断できるであろう。
【0118】
上に示すように、多くの骨髄抑制された患者は、化学療法、インプラント放射線療法又は外部ビーム放射線療法を含む治療コースを経験している。後者の場合には、外部放射線源が悪性腫瘍への局限的照射を目的としている。放射線治療薬埋込法については、放射性の試薬が、外科的に悪性腫瘍内に配置され、そのため、選択的に疾病部位を照射する。いずれの場合も、開示された抗体は原因に関わらず骨髄抑制を示す患者における疾病を治療するために使用できる。
【0119】
この点では、本発明の抗体は、インビボで新生物細胞の成長を除去、低減、阻害又は抑制する、すべての化学療法剤(単数)又は化学療法剤(複数)(例えば組合せ治療法を提供するため)と複合させ又は組み合わせて使用することができることがさらに理解できよう。上に論じたように、このような薬剤はしばしば赤色骨髄貯蔵量の低減をもたらす。この低減は、本発明の化合物の骨髄毒性が低下しているために全体的又は部分的に相殺されるため、そのような患者における新生物への積極的な治療を有利に進めることができる。他の好ましい実施形態では、本明細書に開示された、放射標識されたイムノコンジュゲートは、新生物細胞の放射性核種への感受性を増加させる放射線増感薬と共に使用するのも有効である。例えば、放射標識された修飾抗体が血流からは大部分は取り除かれた後でも、未だ腫瘍(複数可)部位には治療上有効なレベルに残っているならば、放射線増感化合物を投与することができる。
【0120】
本発明のこれらの態様に関して、本発明と適合性をもつ典型的な化学療法剤はアルキル化剤、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)、プロカルバジン、メトトレキサート及びプレドニゾンを含む。4薬剤組合せMOPP(メクレタミン(mechlethamine)(ナイトロジェンマスタード)、ビンクリスチン(オンコビン)、プロカルバジン及びプレドニゾン)は、様々なタイプのリンパ腫を治療するのに非常に有効で、本発明の好ましい実施形態を含む。耐MOPP性の患者では、ABVD(例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン及びダカルバジン(dacarbazine))、ChlVPP(クロラムブシル(chlorambucil)、ビンブラスチン、プロカルバジン及びプレドニゾン)、CABS(ロムスチン(lomustine)、ドキソルビシン、ブレオマイシン及びストレプトゾトシン(streptozotocin))、MOPP+ABVD、MOPP+ABV(ドキソルビシン、ブレオマイシン及びビンブラスチン)又はBCVPP(カルムスチン(carmustine)、シクロフォスファミド、ビンブラスチン、プロカルバジン及びプレドニゾン)の組合せを使用することができる。アーノルドS.フリードマン及びリーM.ナドラー(Arnold S.Freedman and Lee M.Nadler)「悪性リンパ腫」(Malignant Lymphomas)、「ハリソンの内科学原理」(HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE)、1774−1788(Kurt J.Isselbacher et al.、eds.、13th ed.1994)及びV.T.デヴィタら(V.T.DeVita et al.)(1997)及びこれらの中で標準的投薬及びスケジュールとして挙げられた参照文献。これらの治療法はそのまま用いてもよいし、本明細書に記載されるような1つ又は複数の修飾抗体と組み合わせて、特定の患者の必要に応じて変更して使用することができる。
【0121】
本発明において有用な追加的治療法は、シクロフォスファミドもしくはクロラムブシルのような単一のアルキル化剤、又はCVP(シクロフォスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾン)、CHOP(CVPとドキソルビシン)、C−MOPP(シクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン及びプロカルバジン)、CAP−BOP(CHOP+プロカルバジンとブレオマイシン)、m−BACOD(CHOP+メトトレキサート、ブレオマイシン及びロイコボリン(leucovorin))、ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、エトポシド及びロイコボリン+標準的MOPP)、ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、メトトレキサート及びロイコボリン)及びMACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ビンクリスチン、固定服用量プレドニゾン、ブレオマイシン及びロイコボリン)などの組合せの使用を含む。当業者はこれらの治療法の各々について容易に標準的投薬及びスケジュールを決定できるであろう。CHOPも、ブレオマイシン、メトトレキサート、プロカルバジン、ナイトロジェンマスタード、シトシンアラビノシッド及びエトポシドと組み合わせられている。他の適合性を持つ化学療法剤は、2−クロロデオキシアデノシン(2−chlorodeoxyadenosine)(2−CDA)、2’−デオキシコフォルマイシン(2’−deoxycoformycin)及びフルダラバイン(fludarabine)を含むがこれらに限定されない。
【0122】
中程度及び高度のNHLを伴う患者については、寛解を達成しないか再発している場合、サルベージ治療が使用される。サルベージ治療は、単独で又は組合せの中で与えられたシトシンアラビノシッド、シスプラチン、エトポシド及びイホスファミドなどの薬剤を使用する。ある種の新生物疾患の再発形又は進行形では、次のプロトコルがしばしば使用される:IMVP−16(イホスファミド、メトトレキサート及びエトポシド)、MIME(メチル−ギャグ(methyl−gag)、イホスファミド、メトトレキサート及びエトポシド)、DHAP(デクサメタゾーン、高用量シタラビン及びシスプラチン)、ESHAP(エトポシド、メチルプレディゾロン(methylpredisolone)、HDシタラビン、シスプラチン)、CEPP(B)(シクロフォスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン及びブレオマイシン)及びCAMP(ロムスチン、ミトキサントロン(mitoxantrone)、シタラビン及びプレドニゾン)(いずれもよく知られた投薬率及びスケジュールで行う)。
【0123】
本発明の抗体と組み合わせて使用される化学療法剤の量は、対象によって変わり得る。又は、その薬剤は、当技術分野で知られているものに従って投与することができる。例えば、ブルースAチャブナー他(Bruce A Chabner et al.)、「抗新生物剤」(Antineoplastic Agents)、「グッドマン及びギルマン:治療法の薬学的基礎」(GOODMAN & GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS)1233−1287((Joel G.Hardman et al.、eds.、9th ed.1996))参照。
【0124】
前に論じたように、本発明の抗体、その免疫反応性断片又は組換体は、哺乳類疾病のインビボでの治療のために薬剤として有効な量を投与することができる。この点では、開示された抗体は投与を容易にし、かつ活性剤の安定を促進するように処方されるであろうことが理解されるであろう。好ましくは、本発明による医薬組成物は、生理的塩類など薬剤として許容可能な無毒で無菌のキャリアー、無毒なバッファー、保存剤などを含む。本明細書では、薬剤として有効な量の抗体、その免疫反応性の断片又は組換体は、治療剤と結合した場合も結合しない場合も、新生物又は免疫反応性細胞上の選択された免疫反応性抗原と有効な結合を達成し、かつそれらの細胞死の増加をもたらすのに十分な量を意味するものとする。もちろん、本発明の医薬組成物は、薬剤として有効な量の抗体に供給すべき1回又は多数の服用量で投与することができる。
【0125】
より具体的には、それら(開示された抗体)及び方法は、腫瘍サイズを縮小し、腫瘍成長を阻害し、かつ/又は、腫瘍を有する動物の生存期間を延長するのに有用でなければならない。従って、本発明はまた、ヒト又は他の動物の中の腫瘍を治療する方法であって、そのようなヒト又は動物に有効かつ無毒な量の抗体を投与することによる方法に関する。当業者は日常的な実験によって、悪性腫瘍を治療する目的で、抗体の有効かつ無毒な量がどれくらいかを決定できるであろう。例えば、治療上活性な量の抗体は、疾病段階(例えば、段階I対段階IV)、年齢、対象の性別、医学的な複合的要素(例えば免疫抑制された症状又は疾病)及び体重などの要因及び抗体が対象の所望の反応を誘導する能力によって変わり得る。投薬法は最適な治療応答を得るように調節してもよい。例えば、いくつかに分割した服用量を毎日投与してもよいし、又は、治療状況の必要不可欠量によって示されるように、服用量を比例的に低減してもよい。しかし、一般に、体重キログラム当たり日量約0.05〜100ミリグラム、より好ましくは体重キログラム当たり日量約0.5〜10ミリグラムの範囲に有効量があると予想される。
【0126】
明確さのために言えば、「哺乳動物」は、ヒト、家畜と農場動物及び動物園用、スポーツ用又はペット用動物を含む哺乳動物(犬、馬、猫、雌牛など)として分類される任意の動物を指す。好ましくは哺乳動物はヒトである。
【0127】
「治療」は治療用の処置と予防又は予防的手段の両方を指す。治療を必要とする者は、既に疾病もしくは疾患に罹患しているもの及び疾病又は疾患を予防すべきものを含む。従って、哺乳動物は疾病又は疾患を患っていると診断された者でもよいし、又は疾病傾向にあるか、それに敏感である者でもよい。
【0128】
本開示の範囲と一致して、本発明の抗体は、治療又は予防する程度にそのような効果を生じるのに十分な量で治療する前記方法に従ってヒト又は他の動物に投与することができる。本発明の抗体は、慣用の薬剤として許容可能なキャリアー又は既知の技術による希釈剤と本発明の抗体とを組み合わせることにより調製された慣用の投薬形式においてこうしたヒトその他の動物に投与できる。薬剤として許容可能なキャリアー又は希釈剤の形式及び特性が、組み合わせられる活性成分の量、投与ルート及び他のよく知られた可変条件によって指示されることは当業者には理解されるであろう。また、当業者は、本発明による抗体の1つ又は複数の種を含むカクテルが特に有効であると判明するかもしれないことを理解するであろう。
【0129】
抗体、その免疫反応性の断片又は組換体の複合体及び治療剤を調製し投与する方法は、当業者にはよく知られているか、又は容易に当業者によって決定される。本発明の抗体(又はその断片)の投与ルートは経口、腸管外、吸入によって又は局所とすることができる。本明細書において用いられる腸管外という用語は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、膣投与を含む。腸管外投与の静脈内、動脈内、皮下及び筋肉内の形式が、一般に好ましい。投与のこれらの形式はすべて明らかに本発明の範囲内のものとして考えられるが、好ましい投与形式は、注入のための溶液、特に静脈内又は動脈内注入もしくは点滴であろう。通常、注入用の適当な医薬組成物は、バッファー(例えば酢酸塩、リン酸塩又はクエン酸塩バッファー)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、場合によっては任意に安定剤(例えばヒトアルブミン)などを含んでもよい。しかし、本明細書での教示と適合性を持つ他の方法において、抗体を有害細胞集団部位に直接に送達してもよく、それにより疾病組織の治療剤への暴露を増加させることができる。
【0130】
腸管外投与用調製物は無菌の水性溶液又は非水性の溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性キャリアーは水、アルコール/水性溶液、乳剤又は懸濁液を含み、食塩水や緩衝培地を含む。本発明においては、薬剤として許容可能なキャリアーは、0.01〜0.1M、好ましくは0.05Mリン酸塩バッファー又は0.8%食塩水を含むがこれらに限定されない。他の一般的な腸管外溶剤はリン酸ナトリウム溶液、リンゲル(Ringer)ブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル又は不揮発性油を含む。静脈内溶剤は、流体と栄養補給剤、電解質補給剤、リンゲルブドウ糖に基づくものなどを含む。保存剤や、例えば、抗生物質、酸化防止剤、キレート剤、及び不活性ガスその他の添加剤をさらに含有させてもよい。
【0131】
より詳細には、注射可能な使用に適した医薬組成物は、無菌の水溶液(水溶性の場合)、又は分散液及び無菌の注射可能な溶液又は分散液の即席調製物のため無菌パウダーを含む。そのような場合、組成物は無菌でなければならないし、容易に注射可能である程度に流動性でなければならない。それは製造及び保存条件下で安定でなければならず、バクテリアや真菌類などの微生物の汚染作用に抗して保存されることが好ましいであろう。キャリアーは、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、液体のポリエチレングリコールなど)及びそれらの適当な混合物を含む溶媒又は分散媒とすることができる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合は必要とされる粒子径の維持により、及び界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持することができる。
【0132】
様々な抗菌剤や殺菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって、微生物作用の予防を達成できる。多くの場合、等張剤(例えば砂糖、マンニトール、ソルビトール又は塩化ナトリウムのような多価アルコール)を組成物中に含むことが好ましいであろう。組成物に吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)を含有させることにより注射可能な組成物の吸収を長引かせることができる。
【0133】
いずれの場合も、無菌の注射可能な溶液は、必要量の活性化合物(例えば単独で又は他の活性薬剤と組み合わせられた抗体)を本明細書に挙げた成分の1種又は組合せとともに適当な溶媒中に組み入れ、必要であれば、その後にろ過殺菌を行うことにより調製できる。一般に、分散液は、無菌の溶剤(これは基礎となる分散媒及び上に挙げたものから必要な他の成分を含む)に活性な化合物を組み入れることにより調製される。無菌の注射可能溶液調製物のための無菌のパウダーの場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥及び真空凍結乾燥であり、これにより、活性成分、及びその前段階の無菌ろ過溶液に由来する任意の所望により追加された成分の粉末を生じる。当技術分野で知られた方法により無菌条件下で、注入調製物を加工し、アンプル、バッグ、ボトル、注射器又はガラス瓶などの容器に充填し封止する。さらに、この調製物は、本明細書と同時係属の米国特許出願連続番号第09/259,337号及び米国特許出願連続番号第09/259,338号(各々が参照により本明細書に組み込まれている。)に記載したようなキットの形でパッケージングし販売することができる。このような製造物品は好ましくは、添付組成物が、自己免疫疾患又は新生物疾患に罹患した、あるいはその傾向にある患者をその疾患から治療するのに有用であることを示すラベル又はパッケージ挿入物を有するであろう。
【0134】
上に詳細に論じたように、本発明の好ましい実施例は、それの治療を必要とする哺乳類の対象の新生物疾患の治療用に化合物、組成物、キット及び方法を供給する。好ましくは、対象はヒトである。新生物疾患(例えば癌及び悪性腫瘍)は、黒色腫、神経膠腫、肉腫及び癌腫などの固形腫瘍、並びにリンパ腫や白血病などの脊髄性又は血液の悪性腫瘍を含み得る。一般に、開示された発明は、修飾抗体による癌細胞を標的とすることを可能にする、抗原マーカーを含むものであればいずれの新生物についても、その予防的又は治療的な処置に用いることができる。治療され得る典型的な癌としては、限定的なものではないが、前立腺、大腸などのような消化器の癌腫、皮膚、胸、卵巣、肺、及び膵臓が含まれる。より具体的には、本発明の抗体は、カポシ肉腫、CNS新生物(毛細血管芽腫、髄膜腫及び大脳の転移)、黒色腫、胃腸及び腎臓の肉腫、横紋筋肉腫、膠芽腫(好ましくは膠芽腫多重形式)、平滑筋肉腫、網膜芽細胞腫、卵巣乳頭状嚢胞腺癌、ウィルム(Wilm)腫瘍又は小細胞肺癌を治療するために使用できる。本開示を考慮すれば過度な実験をすることなく、上記新生物の各々と関係する腫瘍関連抗原用の適当な抗体が誘導され得ることが理解されるであろう。
【0135】
開示された発明による治療が効果を示す典型的な血液の悪性腫瘍は、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫並びにALL−L3(バーキットタイプ白血病)、慢性リンパ性白血病(CLL)及び単球細胞白血病を含む白血病を含む。本発明の化合物及び方法が、低悪性度/濾胞性の非ホジキンリンパ腫(NHL)、細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度/びまん性NHL、高悪性度/免疫芽球性NHL、高悪性度/リンパ芽球性NHL、高悪性度/小非開裂細胞NHL、巨大腫瘤病変(bulky disease)NHL及びワルデンシュトローム(Waldenstrom)マクログロブリン血症を含む種々のB細胞リンパ腫の治療に有効であることが理解できるであろう。分類システムが変わるとこれらのリンパ腫は異なる名前を持つことも多いが、異なる名称で分類されたリンパ腫に罹患している患者も本発明の組合せ治療法から利益を得ることは当業者には明らかであるはずである。さらに、前記新生物疾患に加えて、適合する腫瘍関連抗原を有する別の悪性腫瘍を治療するために、開示された発明が有利に使用され得ることが、理解されるであろう。
【0136】
新生物疾患に加え、本発明の抗体は、自己免疫疾患又は異常な免疫反応の治療に特に有効である。この点では、外部及び自己抗原の両者に対し望ましくない免疫反応を制御、抑制、調整、除去するために、本発明の抗体が使用され得ることが、理解されるであろう。例えば、一実施形態では、抗原は自己抗原である。別の実施形態では、抗原はアレルゲンである。さらに別の実施形態では、抗原は同種抗原(alloantigen)又は異種抗原(xenoantigen)である。同種抗原及び異種抗原に対する免疫反応を低減するために開示された抗体を使用することは、移植において、例えば、ドナー移植片の移植レシピエントによる拒絶(例えば、組織や器官移植、又は骨髄移植)を抑制するために特に有用である。さらに、骨髄移植片内のドナーT細胞の抑制又は消失は、移植片対宿主病を阻止するのに有用である。
【0137】
さらに別の実施形態では、本発明の抗体は以下の免疫疾患(但し、これらに限定されない)の治療に用いることができる。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アレルギー鼻炎自己免疫性溶血性貧血;黒色表皮症;アレルギー性接触皮膚炎;アジソン病;アトピー性皮膚炎;円形脱毛症;全身性脱毛症;アミロイドーシス;アナフィラキシー性紫斑病;アナフィラキシー反応;再生不良性貧血;遺伝性血管浮腫;特発性血管浮腫;強直性脊椎炎;頭部動脈炎;巨細胞性動脈炎;動脈炎(Takayasu);一時的動脈炎;喘息;機能傷害毛細管拡張症;自己免疫性卵巣炎;自己免疫性精巣炎;自己免疫性ポリエンドクリン不全;ベーチェット病;バーガー(Berger)病;バーガー病;気管支炎;水疱性天疱瘡;カンジダ症(慢性、皮膚及び粘膜);カプラン(Caplan)症候群;心筋梗塞後症候群;心膜切開術後症候群;心臓炎;セリアック病(Celiac sprue);シャガ(Chagas)病;シェディアック−東(Chediak−Higashi)症候群;シュラグ−シュトラウス(Churg−Strauss)病;コーガン(Cogan)症候群;寒冷凝集素症;CREST症候群;クローン病;クリオグロブリン血症;原因不明の線維化性肺胞炎;疱疹状皮膚炎;皮膚筋炎;糖尿病;ダイヤモンド−ブラックファン(Diamond−Blackfan)症候群;ディジョージ(DiGeorge)症候群;円盤状紅斑性狼瘡;好酸球性筋膜炎;上鞏膜炎;持久性隆起性紅斑(Drythema elevatum diutinum);有縁性紅斑;多形性紅斑;結節性紅斑;家族性地中海熱;フェルティ(Felty)症候群;肺線維症;アナフィラキシー症様糸球体腎炎;糸球体腎炎、自己免疫;糸球体腎炎(連鎖球菌感染後);移植後糸球体腎炎;膜質糸球体症;グッドパスチャ(Goodpasture)症候群;免疫媒介性顆粒球減少症;環状肉芽腫;アレルギー性肉芽腫症;肉芽腫様筋炎;グレイブ(Grave)病;橋本甲状腺炎;新生児溶血性疾患;特発性血色素沈着症;ヘノッホ−シェーンライン(Henoch−Schoenlein)紫斑病;肝炎(慢性かつ活性、慢性かつ進行性);ヒスチオサイトーシスX(Histiocytosis X);好酸球増多症候群;特発性血小板減少性紫斑病;ジョブ(Job)症候群;若年性皮膚筋炎;若年性慢性関節リウマチ(若年性慢性関節炎);川崎病;角膜炎;角結膜炎シッカ;ランドリー−ギラン−バール−シュトロール(Landry−Guillain−Barre−Strohl)症候群;ハンセン病、癩腫;レフラー(Loeffler)症候群;自己免疫疾患;ライエル症候群;ライム病;リンパ腫様肉芽腫症;肥満細胞症(全身性);混合結合組織疾病;多発単神経炎;マックル−ウェルズ(Muckle−Wells)症候群;粘膜皮膚リンパ節症候群;粘膜皮膚リンパ節症候群;多中心性細網組織球症;多発性硬化症;重症筋無力症;菌状息肉腫;壊死性血管炎(全身性);ネフローゼ症候群;オーバーラップ症候群;脂肪組織炎;発作性寒冷血色素尿症;発作性夜間血色素尿症;類天疱瘡;天疱瘡;紅斑性天疱瘡;落葉状天疱瘡;尋常性天疱瘡;鳩飼病;過敏性肺臓炎;結節性多発性動脈炎;リウマチ性多発性筋痛;多発性筋炎;多発性特発性神経炎;ポルトガル家族性多発ネフロパチー;前子癇/子癇;原発性胆汁性肝硬変;全身性進行性硬化症(強皮症);乾癬;乾癬性関節炎;肺胞タンパク症;肺線維症(レイノー症/症候群);ライデル(Reidel)甲状腺炎;ライター症候群、再発性多発性軟骨炎;リウマチ熱;慢性関節リウマチ;サーコイドーシス;鞏膜炎;硬化性胆管炎;血清病;セザリー(Sezary)症候群;ショーグレン(Sjogren)症候群;スティーヴンズ−ジョンソン症候群;若年性慢性関節リウマチ;亜急性硬化性汎脳炎;交感性眼炎;全身エリテマトーデ;移植拒絶;潰瘍性大腸炎;未分化結合組織疾患;慢性じんましん;寒冷じんましん;葡萄膜炎;白斑;ヴェーバークリスチャン疾病;ウェゲナー肉芽腫症及びウィスコット−オールドリッチ症候群。
【0138】
これまでの記載は、次の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかし、このような例は、本発明を実行する好ましい方法を示すものであって、本発明の範囲又はそれに添付された請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0139】
材料及び方法
細胞系
ラットGnTIIIを用いた同時発現研究には、抗CD20のキメラ抗体Rituxan(登録商標)を発現する組換えCHO生産細胞(50C9)を用いた。全体細胞結合の研究では、我々の研究所で構築され膜結合FcγRIを発現するCHO細胞系及びFcγRIIa(ref)を発現するマウス繊維芽細胞細胞系を使用した。分別されたNK細胞は、AllCells社SKW6.4(ラルフら(Ralph et al.)、1983)細胞から得たものであり、ADCC活性アッセイにおいて標的としてCD20を発現する細胞系を使用した。
【0140】
GnTIII/抗CD20細胞系の確立
抗CD20生産細胞系(50C9)にベクターpCIPGnT3(これは構成的CMVプロモーター及びプロマイシン抵抗遺伝子の下にラットGnTIII遺伝子を有する(図1))をエレクトロポレートした。およそ0.2〜1μgのDNAをBiorad社のエレクトロポレーション装置を使用して、4×106細胞にエレクトロポレートした。プラスミドは事前にPvuI及びBst11071(New England Biolabs)で消化し、CHO細胞中で発現する遺伝子をバクテリア中のプラスミドを広めるために使用される部分から分離した。エレクトロポレーションのための条件は210V、400μF、13ωとした。エレクトロポレーション産物をそれぞれ、96ウェルプレートに移し、CHO SfMII培地(Gibco BRL)、50nM MTX及び5μg/mLプロマイシン(Invitrogen)を2日後、及び2〜3日ごとに与え、耐プロマイシン性コロニーを発生させた。耐性コロニーを、6ウェルプレート次いでT25フラスコに移した。次いで、耐プロマイシン性コロニーのGnTIIIメッセージRNAレベルを相対的QPCRキット(Ambion)を使用して定量した。簡単に言えば、RNEASYミニ調製物キット(Qiagen)を使用して1×107細胞からmRNAを調製し、オリゴdt及びcDNAサイクル(登録商標)RT PCRキットで逆転写した。次いで、cDNAを、GnTIII特異的プライマーによる相対的QPCRにおいてテンプレートとして使用した。内部標準を増幅するためには18sRNAプライマーを使用した。
【0141】
IgG発現レベル
100mLのスピナーフラスコ中、3日目の発現レベルを酵素結合免疫吸着アッセイを使用して計算した。細胞系の上清からIgGをマイクロタイタープレート上に塗った抗ヒトの免疫グロブリンG(Roche)で捕捉し抗ヒトIgG(Fab’)2ホースラディシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Roche)を使用して検出した。検量線は精製単クローンIgGIの稀釈液を使用して生成した。次いで、ELISAの結果に基づいて発現レベルを日量細胞1個当たりのピコグラム量(pcd)に変換し、実行可能な細胞密度を測定した。
【0142】
グリコシル化分析
抗体サンプル(300μg)を、Microcon−30コンセントレータを使用して、50mM EDTA及び0.02%(w/v)アジ化ナトリウムを含む20mMリン酸ナトリウム(pH7.5)中にバッファー交換した。組換えのペプチドN−グリコシダーゼF(Glyko)5単位をサンプルに加え、37℃でおよそ15時間インキュベートした。消化後、20mMリン酸ナトリウム50uL、50mM EDTA、0.02%(w/v)アジ化ナトリウム、pH7.5を各サンプルに加えた。5分間95℃で加熱することにより脱グリコシル化タンパク質を沈殿させ、10分間9,000×gの遠心分離によって除去した。放出されたオリゴ糖を含む上清を、遠心真空蒸発乾燥装置中で乾燥し、10mg/mLの9−アミノピレン−1,4,6−三硫酸(APTS、Beckman)の15%酢酸溶液15uL及び1Mナトリウムシアノボロヒドリドのテトラヒドロフラン溶液5μLに標識化した。標識反応物を水500gLで希釈し、次いで、55℃でおよそ2時間インキュベートした。サンプルはHPLC分析に先立ちアセトニトリルで1:4に希釈した。
【0143】
PNGAse放出N結合オリゴ糖をNP−HPLCによって分析した。この方法では、Gold Nouveauソフトウェア及びJasco FP−920蛍光検出器を備えたBeckman 126 HPLCシステム上でTosoHaasアミド−80カラム(4.6×250mM、5μm粒径、900Å孔径)を使用した。溶離剤系は、0.1%の酢酸アセトニトリル溶液(バッファーA);0.2%酢酸、0.2%のトリエチルアミンの水溶液(バッファーB)からなり、流速1.0mL/分とした。溶離プロフィールは励起波長488nm、放出光520nmの蛍光検出によってモニターした。カラムは28%のバッファーBで平衡に保ち、IgGのN結合オリゴ糖のサンプル(50uL)を28%バッファーBで15分間注入し保持した。N結合オリゴ糖は、28%のバッファーBから38%のバッファーBまで線形の勾配(50分間)、90%まで1分 (保持9分)、28%バッファーBまで1分で溶解させ、次の注入に先立つ平衡のために14分保持した。
【0144】
ADCC活性分析
末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll/Hypaque(シグマ)を用いた標準的遠心分離操作により、ヘパリン処理された新鮮なヒト血液(又はバフィーコート)から分離した。PBMCをエフェクター細胞として使用し、IL−2(Roche)10U/mLを含むRPMI(Gibco.BRL)中10%FBSの中で一夜培養することにより活性化した。SKW6.4細胞を対数フェーズで成長させ、分析培地(フェノールレッドを含まないRPMI倍地中2%FBS)で洗った後、4×105/mLに再懸濁させた。標的細胞(SKW6.4)を96ウェルの平底組織培養プレートに50μL/ウェルで加えた。抗体を、分析培地で連続的に希釈し、次に、50μL/ウェルでプレート中三重ウェルに加えた。プレートを室温で10分間インキュベートし、しかる後、16×106/mLの濃度のPBMCエフェクター細胞100μLを添加した。抗体との細胞混合物を高湿度COZインキュベーター中37℃で4時間インキュベートした。各ウェルから100μLの上清を取り、ダメージを受けた標的細胞から放されたLDH活性を測定して分析した(LDH細胞毒性検出キット、Roche Molecular Biochemicals、ドイツ)。エフェクター細胞又は/及び標的細胞のみも対照として含めた。対照の全溶解量に対する特異的溶解量を、100μLの2%トリトンX−100とともに標的細胞をインキュベートした結果から計算した。
【0145】
ADCCブロック実験に関しては、抗FcγRIII(クローンLNK16、Serotec)又は抗FcγRI(クローン10.1 Serotec)を5μg/mLの濃度で20分間PBMCエフェクター細胞とともにプレインキュベートし、分析に使用する前に分析培地で2度洗ったほかは、上に概説したのと同じ操作を行った。
【0146】
全体細胞ELISA
FcγRI発現CHO細胞、FcγRIIaを発現するマウス繊維芽細胞細胞系、及び分別されたFcγRIII陽性NK細胞を、グルタルアルデヒドを架橋剤として使用してウェル当たり1×105細胞でマイクロタイタープレートに共有結合的に結合させた。抗体希釈液を遮断バッファー(リン酸塩バッファー食塩水、0.5%粉ミルクパウダー及び0.01%チメルゾール(Thimersol))中プレートに三重で加え、37℃で1時間置いて結合させた。PBSで数回洗った後、ホースラディシュペルオキシダーゼ(Roche)と結合した抗ヒトIgGFab断片を使用して、結合抗体を検出し、テトラメチルベンジジン(Sigma)を添加して可視化した。抗体は両者とも、関連するレセプターへのIgGFcの結合をブロックしたことが報告される。
【0147】
我々はGnTIII用の構成的発現プラスミドを構築した。プラスミドpCIPGnT3(図1)は、構成的CMVプロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化領域の下にラットGnTIII遺伝子を含む。プラスミドはさらにプロマイシン抵抗性遺伝子を含み、これによりプロマイシンを含む培地中での選択が可能となる。Rituxan(登録商標)生産細胞系(50C9)にプラスミドをエレクトロポレートし、耐プロマイシン性コロニーを得た。次いで、我々は、相対的QPCR分析を使用し耐性コロニーにおけるメッセージRNAレベルを検出してどのクローンについてさらに検討するかを決定した。単離されたほとんどのクローンは、GnTIIIメッセージを高レベルで発現したが、少数のクローンははるかに低いレベルに発現した。相対的なQPCR実験の例を図2に示す。50C9−1A12及び50C9−1B9がはるかに高いレベルに発現するクローンであり、クローン50C9−1A7はより低いレベルに発現するクローンの例である。GnTIIIメッセージは親細胞系(pCIPGnT3プラスミドでトランスフェクトしていないもの)では検出されず、この細胞系では内生的なGnTIII発現が欠如していることを示している。
【0148】
次いで、HPLC分析による精製された抗体のグリコフォームに対するGnTIIIの生体内の触媒効果を検討するために3つのクローンを選んだ。3つはすべて、親(50C9)細胞系と比較すると相当なグリコフォーム変化を示した。親及び1つのGnTIIIトランスフェクタントクローンについての典型的なHPLCトレースを図3に示す。2分鎖グリコフォームは、50C9細胞系には見つからなかった。しかし、GnTIII陽性細胞系については、大多数のグリコフォーム(48〜71%)は2分鎖GIcNac残基を含む。3つの細胞系についての全結果を表1に示す。データは、GnTIIIトランスフェクトしたクローンのグリコフォーム組成には小さな違いがあることを示す。しかし、3つすべてについて、支配的なグリコフォーム種は1つのガラクトース残基を備えた2分鎖バイアンテナリー型オリゴ糖(G1+G1cNAc)であった。2のガラクトース残基を備えた2分鎖バイアンテナリー型オリゴ糖(G2+G1cNAc)も少量(3〜5%)のみであるが検出された。
【0149】
さらに、我々は3つのGnTIII陽性細胞系で成長動力学及び生産レベルを検討し、大量の免疫グロブリン(pcd)を生産し、非常に良好な成長動力学(td)を有する50C9とそれらを比較した。我々は、3つの細胞系すべてが非常に良好な免疫グロブリンの発現レベルを有することを見出した。さらに、3つの細胞系もすべて好ましい成長動力学を有する。また、1つのクローン(50C9−1A12)は親抗体(表II)に非常に似た成長動力学(つまり2倍になる時間)を有する。表IIのデータの要約によれば、mRNAレベル及びGnTIII活性又は細胞系における2倍になる時間との間に相関を示さない。
【0150】
クローン50C9−1A12で見出された高いmRNAレベル及びGnTIII活性は、成長動力学又は抗体発現レベルに影響しているようには見えない。これらの結果は、GnTIII発現のレベルが成長阻害に関連するという以前に公表された結果(ウマナら(Umana et al.)、1999b)と異なる。成長阻害効果については、可能な2つの理由が示唆される。阻害をもたらすタンパク質過剰発現の直接的影響(これはGnTIIIの触媒活性には依存しない)又は内生的なタンパク質に対するGnTIIIのインビボでの触媒活性の直接的影響のいずれかである。この分野でのこれまでの研究では、組換えタンパク質を少量しか発現しない細胞系の中でのグリコトランスフェラーゼの同時発現を使用している。
【0151】
FcγRIIIへの結合増加に対するADCC増加の相関
この研究で使用される抗CD20抗体は、非ホジキンリンパ腫の治療剤として承認され、正常及び悪性B細胞の消耗によって患者のおよそ50%で有効な応答を生じることが開示されている。可能性のあるメカニズムには補体依存細胞毒性(CDC)、抗体依存細胞毒性(ADCC)及び抗体結合時におけるCD20陽性細胞のアポトーシス誘導が含まれる。GnTIIIの過剰発現は、親には存在しない2分鎖グリコフォームハイブリッドを備えたクローンの単離をもたらす。これらの2分鎖グリコフォームは、いくつかの抗体の生物学的活性に関与していることが示唆されているため、50C9/GnTIIIクローンから精製された抗体を、生物学的活性の変化について研究した。補体結合又は抗体結合時のCD20陽性細胞のアポトーシスによる違いは、グリコフォームの変化した抗体(データは示していない)について観察されなかった。しかし、これら3つのGnTIIIにトランスフェクトされた細胞系のいずれによって生産される抗体も、CD20陽性標的細胞を殺す点では野生体細胞系によって生産される抗体と同程度に、しかし、10〜20回低い濃度で有効であった。これは、抗神経芽細胞腫免疫グロブリンGを発現する細胞系でGnTIIIの過剰発現について報告された結果(ウマナら(Umana et al.)、1999a)と合致する。前記報告では、低いADCC活性を有する抗体のグリコフォームは変化しており、この結果、より高いADCC活性をもたらし、これを治療に用いる上でより魅力的にしている(ウマナら(Umana et al.)、1999a)。
【0152】
本発明において、我々は、良好なADCC活性を備えた承認された治療用抗体を採用し、それをさらに改善した。これは、効能を低減することなく、より低用量で抗体を使用することを可能にするであろう。さらに、より低い抗体濃度によるより高いADCC活性は、CD20抗原の発現レベルが低いリンパ腫及び白血病において増強された応答をもたらすであろう。これらの疾病のうちのあるタイプでは、現在の薬剤では効果を得るために高用量が必要である。この研究はまた、2分鎖グリコフォームが欠けている他の抗体が、それらのインビボでの細胞毒性機能を改善し得ることを示唆している。
【0153】
我々は、特にNK細胞上のFcγRIIIレセプターを特異的にブロックし、ADCC活性に対する影響を検討するために抗FcγRIII抗体(Fc結合をブロックすると報告されている)を使用した。抗FcγRIII抗体によるNK細胞のブロックは、50C9及び50C9−1A7の両方のADCC活性を解消した。図5は、50C9−1A7抗体調製物から得られた結果を示す。ADCCの阻害は、FcγRIレセプターに結合するFcをブロックすると報告されているFcγRIに対する抗体とともにPBMC細胞はプレインキュベートした実験では観察されなかった。したがって、このデータは、FcγRIレセプターは2分鎖バイアンテナリー型オリゴ糖を備えた50C9−1A7抗体調製物のADCC活性に関与していないことを示唆する。
【0154】
全細胞ELISAを使用して、親及びGnTIII陽性クローン50C9−1A7の結合特性を評価した。50C9−1A7からの抗体は、親50C9(図6)から調製された抗体よりNK細胞により良好に結合した。抗体はまた、FcγRI及びFcγRII発現細胞によりよく結合した(結果は示していない)。しかし、ADCCにおけるFcγRIの役割は以前に記述された実験よりも小さくなった(図5)。したがって、ADCC活性の増加は、NK細胞上のFcγRIIIへの抗体結合の増加が最もありそうな原因である。ELISAではCD20抗原はなかったので、IgGのよりよい架橋による増加した結合は除外することができる。推測するに、結合の増加は、抗体のFc構造上の2分鎖グリコフォームによって特定されるコンフォメーションの結果による。親抗体が既に良好なADCC活性を持つので、それは恐らくFcγRIIIの結合のために最適に近いコンフォメーションを有するが、それが、今度はN結合バイアンテナリー型オリゴ糖構造における2分鎖G1cNAcの追加によって「微調整」される。
【0155】
表I。HPLCによるグリコフォーム分析結果。説明で述べたようにサンプルについて試行した。各種のパーセンテージは、ピーク面積によって計算した。G0=ガラクトース残基を有しない非2分鎖バイアンテナリー型複合体。G0+G1cNAc=ガラクトースを有しない2分鎖バイアンテナリー型複合体。G1=ガラクトース残基を1個有する非2分鎖バイアンテナリー型複合体。G1+G1cNAc=ガラクトース残基を1個有する2分鎖バイアンテナリー型複合体。G2=ガラクトース残基を2個有する非2分鎖バイアンテナリー型複合体。G2+G1cNAc=ガラクトース残基を2個有する2分鎖バイアンテナリー型複合体。構造は図3に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
表II。GnTIIIクローンの要約。Td=クローンの倍化時間(時間);Pcd=(細胞当たり1日当たりピコグラム。ELISAによって測定された抗体発現レベル;%G1cNAc=2分鎖G1cNAcを備えた抗体オリゴ糖のパーセンテージはG0+G1cNAc、G1+G1cNAc及びG2+G1cNAcの添加(表1から)によって決定される。GnTIII mRNA=相対的QPCR(図2)によって測定されるmRNAレベル;50%溶解のための[Ab]=ADCC分析において標的細胞の50%溶解のための抗体濃度。図4(ナノグラム/mL)から外挿法で測定。
【0158】
【表2】

【0159】
当業者は、本発明の精神又は中央的属性から外れずに、他の具体的な形で本発明を具体化し得ることをさらに理解するであろう。本発明のこれまでの記載はその典型的な実施形態を示すだけであるという点で、他の変形も本発明の範囲内として考えられるということが理解されるべきである。従って、本発明は、本明細書に詳細に記載した具体的実施形態に制限されない。より正確に言えば、本発明の範囲及び内容を示すものとして、添付された特許請求の範囲が参照されるべきである。
【0160】
発明のさらなる実例は、「組換え抗CD20 CHO生産細胞系におけるGnTIIIの発現:変更されたグリコフォームを有する抗体の発現はFCガンマRIIIへのより高い親和性を通してADCCの増加をもたらす」(Expression of antibodies with altered glycoforms leads to an increase in ADCC through higher affinity for FC gamma RIII、「Davies J、Jiang L、Pan LZ、LaBarre MJ、Anderson D、Reff M.;Biotechnol Bioeng、2001 August 20;74(4):288−94)。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0161】



【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】ラットGnTIIIを哺乳類細胞中で構成的に発現させるように構築されたベクターの模式図(CMV、サイトメガロウイルスプロモーター;BGH、ウシ成長ホルモンポリアデニル化;SV、シミアンウイルス40の初期のポリアデニル化;SVO、SV40 Ori複製起点、GnIIIラットGnTIII遺伝子;Pur Rプロマイシン抵抗遺伝子;ベータLac、ベータラクタマーゼ遺伝子;F1 Ori、F1複製起点;ColE1 Ori、ColE1適合群複製起点)である。
【図2】RT相対QPCRの結果を示す図である。(下方バンドによるGnTIII mRNAの検出は18Sの内部標準のそれである。上方バンドはGnTIIIの断片による500のそれである。18S強度を基準として用いたところ、いくつかのクローンはGnTIIIに対して高レベルのmRNAを有するものとしてスコアされ(例えば、50C9−1AI2)、1つのクローン(50C9−1A7)は低レベルのGnTIII mRNAレベルを有するものとしてスコアされた。6B4は、以前に我々の研究所で単離され、GnTIIIに対し誘導可能な免疫グロブリン発現細胞系であり、ここでは陽性対照として使用した。50C9はトランスフェクトされていない親細胞系である。C=PCR中にcDNAテンプレートを含まない陰性対照)。
【図3】A)50C9及びB)50C9−1B9からの抗体調製物から単離されたオリゴ糖のHPLC分析結果を示すグラフである。(図中に挿入した式はピークに関連する構造を示す。GN*=2分鎖G1cNAc、GN=G1cNac、G=ガラクトース(Galctose)、M=マンノース、F=フコース)。
【図4】B細胞抗原CD20に対する2分鎖グリコフォームmAbs 50C9−1A12、50C9−1A7、50C9−1B9 mAbs及び親mAb 50C9を備えた調製物のADCCにおける比較を示すグラフである。(50C9−1A12、50C9−1A7、50C9−1B9 mAbs及び50C9 mAbを、E:Tを80:1として、SKW6.4標的細胞に対するADCCを媒介するその能力において比較した。健康なドナーから採ったエフェクター細胞PBMCを、10u/mlのIL−2で一夜治療した。図に示すように無関係なmAbを備えたエフェクター細胞集団は標的細胞を殺すことができなかった。50C9抗CD20 mAb及び2分鎖グリコフォーム調製物mAbs 50C9−1A12、50C91A7、50C9−1B9は標的細胞を殺す著しい媒介されるエフェクター細胞であった。2分鎖グリコフォーム変更mAbsイベントは、親mAb 50C9よりも、SKW6.4細胞に対するADCC媒介させる、より高い能力を持っている。最大有効機能の半値は、10〜20倍高い。結果は平均値±sem(エラーバーによって示す)として示される)。
【図5】50C9−1A7 mAb媒介されるADCCアッセイにおけるFcγRレセプターのPBMCに対する阻害を示すグラフである。(エフェクター細胞(PBMC)を、抗FcγRIII mAb又は抗FcγRI mAbとともにプレインキュベートした。抗FcγRIII mAbは50C9−1A7媒介されるADCC活性を喪失させた。抗FcγRI mAbで前もって処理されたPBMCは、50C9−1A7 mAb媒介されるADCCには何ら効果がない)。
【図6】FcγRIII陽性NK細胞上の50C9及び50C9−1A7の結合を示すグラフである。(FcγRIII陽性NK細胞を96ウェル水平底プレートに共有結合で結合させ、0.5%のグルタルアルデヒドで固定した。50C9及び50C9−1A7を遮断バッファーに希釈し、三連ウェルにおいてプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。数回洗浄した後に、ホースラディシュペルオキシダーゼと結合させた抗ヒト免疫IgG Fab断片を使用して検出し、テトラメチルベンジジンで現像した。結果は平均値±semとして示される)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GnTIII及び組換え抗体を発現する真核細胞系。
【請求項2】
哺乳類である請求項1記載の真核細胞系。
【請求項3】
CHO細胞系である請求項2記載の哺乳類細胞系。
【請求項4】
抗体がヒト、キメラ又はヒト化抗CD20抗体である請求項3記載のCHO細胞系。
【請求項5】
前記抗体がIgG1又はIgG3アイソタイプである請求項6記載のCHO細胞系。
【請求項6】
前記抗体がRITUXAN(登録商標)である請求項7記載のCHO細胞系。
【請求項7】
前記抗体が腫瘍関連抗原と反応する請求項1記載の真核細胞系。
【請求項8】
前記腫瘍関連抗原が、CD2、CD3、CD5、CD6、CD7、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6、HPV E7、TAG−72、CEA、L6抗原、CD19、CD20、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターからなる群から選択される請求項7記載の真核細胞系。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞系によって生産される抗体。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞系によって生産される抗CD20抗体。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞系によって生産される抗CD20抗体の投与を含む抗CD20抗体の使用を含む治療。
【請求項12】
B細胞リンパ腫、悪性腫瘍又は白血病を治療することである請求項11記載の治療。
【請求項13】
非ホジキンリンパ腫又は慢性リンパ性白血病を対象とする請求項12記載の治療。
【請求項14】
自己免疫疾患、移植又は移植片対宿主病を対象とする請求項11記載の治療法。
【請求項15】
B細胞媒介自己免疫疾患を対象とする請求項14記載の治療。
【請求項16】
前記疾病がITP又は狼瘡である請求項15記載の治療。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞系から生産される抗体を含有する医薬組成物。
【請求項18】
治療を必要とする哺乳動物中の疾病を治療する方法であって、請求項1記載の細胞系によって生産される抗体の治療上有効な量を前記哺乳動物に投与することを含む上記方法。
【請求項19】
前記抗体が修飾された抗体である請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記修飾された抗体が、1つの定常領域ドメインの少なくとも一部が除去されたものである請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記修飾された抗体がドメイン欠失抗体を含む請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記ドメイン欠失抗体がCH2ドメインを欠く請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が腫瘍関連抗原と反応する請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍関連抗原が、CD2、CD3、CD5、CD6、CD7、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6、HPV E7、TAG−72、CEA、L6抗原、CD19、CD20、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターからなる群から選択される請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が細胞毒性剤と結合している請求項18記載の方法。
【請求項26】
前記細胞毒性剤が放射性同位元素を含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記放射性同位元素が90Y、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re及び188Reからなる群から選択される請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記疾病が新生物疾病である請求項18記載の方法。
【請求項29】
前記新生物疾病が、再発性ホジキン病、難治性ホジキン病高悪性度、低悪性度及び中悪性度の非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)、リンパ形質細胞様リンパ腫(LPL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、バーキット(Burkitt)リンパ腫(BL)、AIDS関連リンパ腫、単球B細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症、小リンパ球;濾胞性;びまん性大細胞;小開裂細胞;大細胞免疫芽胞リンパ腫;小非開裂細胞;バーキット及び非バーキット;濾胞性大型優性細胞;濾胞性小型優性開裂細胞;及び濾胞性・小開裂細胞及び大細胞の混合型リンパ腫からなる群から選択される請求項28記載の方法。
【請求項30】
化学療法剤の投与をさらに含む請求項18記載の方法。
【請求項31】
前記化学療法剤がRituxan(登録商標)を含む請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記疾病が免疫疾患である請求項18記載の方法。
【請求項33】
疾病に罹患した又はその傾向のある哺乳動物の治療に有用なキットであって、請求項1記載の細胞系によって生産される抗体をその中に入れた少なくとも1つの容器及び前記抗体が前記疾病の治療に用いることができることを示すラベル又は挿入物を含む上記キット。
【請求項34】
前記抗体が腫瘍関連抗原と反応する請求項33記載のキット。
【請求項35】
前記腫瘍関連抗原が、CD2、CD3、CD5、CD6、CD7、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6、HPV E7、TAG−72、CEA、L6抗原、CD19、CD20、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターからなる群から選択される請求項34記載のキット。
【請求項36】
前記抗体が、1つの定常領域ドメインの少なくとも一部が除去されたものである請求項35記載のキット。
【請求項37】
前記抗体がドメイン欠失抗体を含む請求項35記載のキット。
【請求項38】
前記ドメイン欠失抗体がCH2ドメインを欠く請求項37記載のキット。
【請求項39】
請求項1記載の細胞系によって生産される抗体。
【請求項40】
前記抗体が自己抗原と反応する請求項39記載の抗体。
【請求項41】
抗体が腫瘍関連抗原と反応する請求項39記載の抗体。
【請求項42】
前記腫瘍関連抗原が、CD2、CD3、CD5、CD6、CD7、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6、HPV E7、TAG−72、CEA、L6抗原、CD19、CD20、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターからなる群から選択される請求項40記載の抗体。
【請求項43】
前記抗体が、1つの定常領域ドメインの少なくとも一部が除去されたものである請求項39記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体がドメイン欠失抗体を含む請求項39記載の抗体。
【請求項45】
前記ドメイン欠失抗体がCH2ドメインを欠く請求項43記載の抗体。
【請求項46】
前記抗体が細胞毒性剤と結合している請求項39記載の抗体。
【請求項47】
前記細胞毒性剤が放射性同位元素を含む請求項46記載の抗体。
【請求項48】
前記放射性同位元素が、90Y、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re及び188Reからなる群から選択される請求項47記載の抗体。
【請求項49】
GnT11及び組換え抗体抗体をコードするDNA配列を含む原核生物又は真核生物の宿主細胞(ここで宿主細胞はGnT11及び組換え抗体を発現するもの)を培養する工程;
宿主細胞にGnT11及び組換え抗体を発現させる工程;及び
宿主細胞培養物から前記抗体を回収する工程
を含む抗体形成方法。
【請求項50】
前記抗体が、1つの定常領域ドメインの少なくとも一部が除去されたものである請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記抗体がドメイン欠失抗体を含む請求項49記載の方法。
【請求項52】
前記ドメイン欠失抗体がCH2ドメインを欠く請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記抗体が腫瘍関連抗原と反応する請求項49記載の方法。
【請求項54】
前記腫瘍関連抗原が、CD2、CD3、CD5、CD6、CD7、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6、HPV E7、TAG−72、CEA、L6抗原、CD19、CD20、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターからなる群から選択される請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記腫瘍関連抗原がTAG−72である請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記宿主細胞がCHO細胞を含む請求項49記載の方法。
【請求項57】
真核生物の宿主細胞においてGnTIII及び機能性抗体を発現するためのポリシストロン性ベクターであって、GnTIIIをコードするDNA配列及び以下の要素:
(i)真核細胞において機能するプロモーター;
(ii)真核細胞中で機能するシグナルペプチドコード配列を最適には5’末端に含み、3’末端にポリA配列を含まず、5’及び3’末端に開始コドン及び停止コドンを含む、抗体軽鎖をコードするDNA配列;
(iii)カルジオウイルス、疱疹ウイルス及びポリオウイルスからなる群から選択されるメンバーから得られる内部リボソームエントリーサイト(IRES);及び
(iv)次の要素
(a)真核細胞中で機能するシグナルペプチドコード配列を最適には5’末端に含み、DNA配列がポリシストロン中最も3’末端寄りであるときに限って3’末端にポリA配列を含み、さらに5’及び3’末端に開始コドン及び停止コドンを含む、抗体重鎖をコードするDNA配列、
を含む少なくとも1つのDNA配列;
を5’から3’の方向に機能的に連結するポリシストロン性転写システムを含み、
ここで、抗体軽鎖をコードするDNA配列が、抗体重鎖をコードするDNA配列に対して10:1〜1:1の範囲の比率で発現される、
上記ベクター。
【請求項58】
抗体重鎖及び軽鎖定常領域をコードするDNA配列が、霊長類起源である請求項57記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項59】
抗体重鎖及び軽鎖定常領域がヒト起源である請求項58記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項60】
抗体重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNA配列が霊長類起源である請求項57記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項61】
抗体重鎖及び軽鎖可変領域がヒト起源である請求項60記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項62】
抗体重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNA配列がネズミ起源である請求項57記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項63】
真核生物用プロモーターが、哺乳類のプロモーター又はウイルスのプロモーターである請求項57記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項64】
プロモーターがCMVプロモーターである請求項63記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項65】
IRESがカルジオウイルスから得られる請求項57記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項66】
カルジオウイルスがヒト脳心筋炎ウイルスである請求項65記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項67】
ポリシストロン性ベクターによって発現される機能性抗体が、腫瘍抗原、B細胞上で発現される抗原又はT細胞上で発現される抗原に特異的に結合する請求項57記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項68】
ポリシストロン性ベクターによって発現される機能性抗体が、CD2、CD3、CD5、CD6、CD7、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6、HPV E7、TAG−72、CEA、L6抗原、CD19、CD20、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプター及びHER2レセプターからなる群から選択される抗原に特異的に結合する請求項57記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項69】
抗原がCD20である請求項68記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項70】
機能性抗体が、CD20に特異的なヒト、ヒト化又はキメラ抗体である請求項68記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項71】
抗体はリタクシマブ(rituximab)である請求項68記載のポリシストロン性ベクター。
【請求項72】
約10〜50ピコグラムの機能性抗体を分泌する、請求項57記載のポリシストロン性ベクターを含む哺乳類細胞。
【請求項73】
哺乳類細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である請求項72記載の哺乳類細胞。
【請求項74】
哺乳類細胞がベビーハムスター腎臓細胞、繊維芽細胞及び骨髄腫細胞からなる群から選択されるメンバーである請求項72記載の哺乳類細胞。
【請求項75】
機能性抗体が、バッチで供給される細胞培養物中に生産される請求項68記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−55913(P2009−55913A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245928(P2008−245928)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【分割の表示】特願2002−577879(P2002−577879)の分割
【原出願日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【出願人】(502440595)バイオジェン アイデック インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】