説明

H因子結合部位に基づく免疫原性組成物およびワクチンの開発方法

本発明は免疫原性組成物に関する。より詳細には、本発明は、薬剤として許容される担体中に少なくとも一つのHIV糖タンパク質上の少なくとも1つのH因子結合部位の有効量を含む、HIVに対する免疫反応を導き出す組成物である。本発明は、3つのカテゴリーの実施形態、すなわちタンパク質またはタンパク質断片、メッセンジャーRNAまたはDNA/RNAを企図する。DNA/RNA組成物は、むきだしでも組換えでもよい。本発明は、さらに様々な免疫刺激剤との使用を企図する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年10月23日に出願の米国仮出願第60/513,827号の優先権を請求する。
【0002】
本発明は、ウイルス学および免疫学の分野に関する。特に、それだけに限定するものではないが、本発明は免疫反応を誘導する方法、およびそれを達成するための特定の糖タンパク質H因子結合部位に基づく物質に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫抑制疾患は、たのものの中で、宿主のウイルス侵襲に対する防御能力を攻撃するため、医学的に挑戦中の疾患である。免疫系は、非特異的な側面と特異的な側面を有するものと考慮できる。非特異的な側面は、マクロファージ及び好中球のような成分を含み、それらは外来生物を単純に襲撃し、抗体の必要なくそれらを殺傷する。特異的な側面は、外来抗原に結合する可溶性タンパク質または抗体の生産を含む。次いで特定の他の細胞が、外来生物を認識してそれらを破壊する。免疫応答が抑制されると、患者は日和見感染に感受性となる。
【0004】
HIV-1のような免疫系を攻撃するレトロウイルスのあるものは、可変的で容易に突然変異し、有効な治療を開発する努力を妨げる多様な遺伝学的組成を有する多くの株を形成する(Cohen P.T., The AIDS Knowledge Base, 15-18, 21 (第3版, 1999))。これらの株は、グループやサブタイプに分類されて良いが、個々の生物学的特徴を有する。サブタイプ内の配列は、場合によりそれらの共通の祖先を明らかにする遺伝学的クラスタリングまたは相同性を有して良い。しかしながら、進化速度のバリエーションにより、サブタイプ内ですら突然変異の間で差異が存在する。更に、関連するレトロウイルスと組換えを行なうレトロウイルスの傾向は、ウイルスのゲノムを複雑化する。
【0005】
今日まで、免疫抑制レトロウイルスHIV-1に対する有効な免疫応答を促進するワクチンは研究によって見出されていない。ほとんどのHIVワクチンは、ウイルスのエンベロープスパイクに対する中和抗体の生産を誘導する試みにおいて、ウイルスの表面等タンパク質(gp160,gp120及びgp41)のエンベロープの一部を使用している(Johnston等, 2001)。あるものは、中和抗体の高い力価を生産するのに成功している。このアプローチの背景にある考えは、これらの糖タンパク質に結合する抗体がウイルスを中和し、感染を予防するであろうというものである。次いで機能化している免疫系は、補体系を活性化し、それがウイルスを溶解して破壊するようにカスケードを作動するであろう。補体系は、抗体の役割を「補う」一連の循環タンパク質である。補体系の成分は、整列してまたは順番に活性化し、それが補体カスケードを構成する。補体の終着点はタンパク質複合体、細胞膜傷害複合体(MAC)であり、それが侵入性の生物表面を攻撃し、その細胞膜に孔を開けることにより破壊するように求めている(Hoffman, Ronald等, Hematology Basic Principles and Practice, 第37章, (第3版, 2000)。更にHIV成分は、表面シアル酸を有することができ、それが不活性化HIVの保存表面に残存できる。シアル酸は典型的に、宿主タンパク質及び細胞構造に見出される;ウイルスが不活性化されていてさえ、ウイルス上の高いシアル酸含量は、ウイルスを認識して正確に応答する宿主の能力を制限するであろう(Michalek, Michael T等, “Inhibition of the Alternative Pathway of Human Complement by Structural Analogues of Sialic Acid”, J. Immunology, Vol 140, pp 1588-1594 (1988))。
【0006】
HIVの高頻度の突然変異は、適当な中和抗体の選択を更に複雑化すると解される。更に、ヒト補体因子Hとして既知の物質は、免疫応答補体カスケードを遅延または破壊する。H因子は、カスケード整列の中枢である分子であるC3bの活性を阻害することにより、これを実行する(Jokiranta, T., FEBS Lett., 393(2-3): 297-302(1996年9月16日))(Jokiranta, T., J of Biological Chemistry, Vol 275 #36, 27657-27662(2000年9月8日))(Hellwage, J., FEBS Lett., 462(3): 345-352 (1999年12月3日))(Pangburn, M., Immun., Vol 164, pp 4742-4751 (2000))。従来のHIVワクチンは、少なくとも部分的にH因子により、その有効性が制限されていた。H因子の役割の記載は、HIVとそれに対する特異的な免疫応答の要約を必要とする。
【0007】
1965年に、H因子はヒトの血清で単離されるそのタイプの第一のタンパク質となった(Nilsson, U.R.等., J. Exp. Med. 122, 277-298 (1965))。次いでH因子様タンパク質1(FHL-1/レコネクチン)が単離された。FHL-1は、H因子と同様のゲノム配列からコードされるが、ずっと小さい分子であり、ヒト細胞による選択的遺伝子スプライシングの産物である。FHL-1は、H因子と同様の免疫学的活性を有する(Friese, M.A., Molecular Immunology, Vol 36, pp 809-818 (1999))(Zipfel, P.F., Immunology Today, (3): 121-126 (1994))(Skerka, Kuhn, Immun., 155(12): 5663-5670 (1995))。
【0008】
更に、H因子関連タンパク質として既知である一群のタンパク質(FHR1, FHR2, FHR3, FHR4,及びFHR5)が単離されており、ヒトの血漿で特徴づけされている(Zipfel, P.F., Immunopharmacology, May 41 (1-3): 53-60 (1999))(McRae, Jennifer, Biological Chemistry, Vol 276, #9, Iss March 2, pp 6747-6754 (2001))。FHRタンパク質は、別個の遺伝子配列によってコードされているが、第1染色体、特に1q31-32.1のH因子タンパク質にリンクしている。H因子、FHL-1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4、及びFHR5は構造的に相同である。それぞれは、補体コントロールタンパク質(CCP)または”sushi”ユニットとして既知でもある短いコンセンサス/補体リピート(SCR)ドメインからなる。各SCRは、約60のアミノ酸からなる。二つのジスルフィド結合が、第一と第三、及び第二と第四のアミノ酸を結合するように各SCRに存在する。FHRの挙動は現在未知であるが、FHRタンパク質のあるものは、H因子のものと同様の免疫学的活性を有すると解される。
【0009】
H因子ファミリーのタンパク質は、主に肝臓で生産される。他の合成部位としては、胃腸管の整列、生殖尿管の整列、及び各種の白血球細胞が含まれる。
【0010】
免疫系の液性部門は、刺激により抗体を産生する形質細胞に分化するB細胞からなる。最初に出現する抗体はIgMであり、次に血中のIgGまたは分泌組織中のIgAである。これらの抗体の主要機能は、感染症およびそれらの毒素から保護することである。抗体はウイルスおよび毒素を中和するだけでなく、微生物をオプソニン化する。オプソニン作用は、抗体が、ウイルスまたは細菌が食細胞によってより簡単に摂取され、破壊されるようにする過程である。食細胞としては、多形核好中球(PMN)および組織マクロファージがある。PMNは、非感染性患者の血液で白血球の約60%を構成する。PMNおよび組織マクロファージの数は、ある種の感染障害により増減する可能性がある。例えば、腸チフスは白血球数の減少を特徴とする(すなわち白血球減少症)。PMNおよびマクロファージの両方とも、細菌およびウイルスを貪食により消費する。PMNはヘルパーT細胞に抗原を提示しないが、マクロファージおよび樹状細胞はする。
【0011】
食作用は、(1)マイグレーション、(2)摂取および(3)殺滅を含む。感染領域の組織細胞は、ケモカインとして知られている小さなポリペプチドを生産する。ケモカインは、PMNおよびマクロファージを感染部位に引き寄せる。その後、細菌は細菌周囲のPMN細胞膜の陥入によって摂取され、液胞またはファゴソームが形成される。この貪食またはオプソニン作用は、細菌の表面へのIgG抗体(オプソニン)の結合によって強化される。補体系のC3b成分は、オプソニン作用を強化する。(Hoffman.R.、Hematology Basic Principles and Practice、Ch.37(3rd ed.、2000))PMNおよびマクロファージの細胞膜は、C3bおよびIgGのFc部分のための受容体を有する。
【0012】
貪食では、呼吸バーストとして知られている代謝経路が誘導される。その結果、2つの殺菌性作用物質、スーパーオキシドラジカルおよび過酸化水素がファゴソーム内で生産される。しばしば活性酸素中間体と呼ばれているこれらの非常に反応性の化合物は、以下の化学反応によって合成される。
O2+e-→O2-
2O2-+2H+→H2O2(過酸化水素)+O2
【0013】
第1の反応は分子酸素を還元して、弱い殺菌剤であるスーパーオキシドラジカルを形成する。第2の反応はファゴソーム中の酵素スーパーオキシドジスムターゼによって触媒され、過酸化水素を生産する。一般に、過酸化水素はスーパーオキシドラジカルよりも有効な殺菌物質である。呼吸バーストは他の殺菌剤である亜酸化窒素(NO)も生産する。NOは好中球およびマクロファージによって貪食されて摂取された、ウイルスおよび細菌の酸化的殺滅に加わるフリーラジカルを含む。ファゴソーム内のNO合成は、食作用の過程によって誘導される酵素、NO合成酵素によって触媒される。
【0014】
ファゴソーム内の生物の殺滅は、脱顆粒とそれに続く殺菌性作用物質で最も有効な次亜塩素酸塩イオンの生産からなる、2段階の過程である。2つの型の顆粒が、好中球またはマクロファージの細胞質の中で見られる。これらの顆粒は、ファゴソームと融合してファゴリソソームを形成する。顆粒の内容物は、次に空にされる。これらの顆粒は、殺滅および分解に必須の様々な酵素を含むリソソームである。大きさによって区別される2つの型のリソソーム顆粒が特定されている。全体の約15%を構成する大きい方のリソソーム顆粒は、ミエロペルオキシダーゼ、リゾチームおよび他の分解酵素を含むいくつかの酵素を含む。残りの85%はより小さな顆粒であり、それらはラクトフェリンおよび他の分解酵素、例えばプロテアーゼ、ヌクレアーゼおよびリパーゼを含む。微生物の実際の殺滅または破壊は様々なメカニズムによって起こり、これらは酸素依存性のものもあれば酸素非依存性のものもある。最も重要な酸素依存性メカニズムは、ミエロペルオキシダーゼによって触媒される次亜塩素酸塩イオンの生産である。
Cl-+H2O2→ClO+H2O
【0015】
抗体は軽(L)および重(H)ポリペプチド鎖から構成される糖タンパク質である。最も単純な抗体は「Y」形を示し、2つのH鎖および2つのL鎖の4つのポリペプチドからなる。ジスルフィド結合がこれら4つの鎖を結合する。個々の抗体分子は、同一のH鎖および同一のL鎖を有する。L鎖およびH鎖は、可変および定常の2つの領域に再分割される。これらの領域は、三次元的にフォールドされて繰り返されているセグメントまたはドメインを有する。L鎖は、1可変(V1)および1定常(C1)ドメインからなる。大部分のH鎖は、1可変(VH)および3定常(CH)ドメインからなる。可変部は、抗原(ウイルス、細菌または毒素)との結合を担う。定常部は、補体結合および細胞表面受容体への結合を含むいくつかの必要な生物学的機能をコードする。補体結合部位は、CH2ドメインに位置する。
【0016】
L鎖およびH鎖両方の可変部は、抗原結合部位を構成するアミノ末端部分に3つの非常に可変性の(または超可変性の)アミノ酸配列を有する。各超可変部の5〜10のアミノ酸だけがこの部位を形成する。抗原抗体結合には、静電力およびファンデルワールス力が含まれる。さらに、抗原および抗体の超可変部の間で水素結合および疎水結合が形成される。各抗体の特異性または「ユニークさ」は、超可変部に存在する。超可変部は、抗体の指紋である。
【0017】
各L鎖のアミノ末端部分は、抗原結合に関与する。カルボキシ末端の部分は、Fcフラグメントに寄与する。Fcフラグメント(抗原結合部位を残りの分子またはFcフラグメントから分離している抗体分子のヒンジ部のタンパク分解性切断によって生産される)は、定常部の生物学的活性、特に補体結合反応を発現する。H鎖は、5つの免疫グロブリンクラスのそれぞれで異なっている。IgG、IgA、IgM、IgEおよびIgDの重鎖は、それぞれγ、α、μ、εおよびδと称される。IgG免疫グロブリンクラスは、微生物をオプソニン化する。したがって、このクラスのIg(免疫グロブリン)は、食作用を強化する。(Hoffman,Ronaldら、Hematology Basic Principles & Practice、第36章と39章(第3版、2000))(Levinson,Warren、Medical Microbiology & Immunology、Ch.59 & 63(7th ed.、2002))IgGのγH鎖のための受容体は、PMNおよびマクロファージの表面で見られる。μH鎖のための受容体が貪食細胞表面に存在しないので、IgMは微生物を直接オプソニン化しない。しかしIgMは補体を作動させ、貪食細胞の表面にC3bのための結合部位が存在するので、C3bタンパク質はオプソニン化することができる。(Levinson、2002)IgGおよびIgMは、補体カスケードを開始することができる。実際、IgMの単一分子は、補体を活性化することができる。IgGによる補体の活性化は、2つの架橋IgG分子を必要とする(IgG1、IgG2またはIgG3サブクラス、IgG4は補体活性を有しない)。細菌内毒素などの様々な非免疫性の分子も、直接補体系を活性化することができる。
【0018】
補体系は、通常血清中にある約20のタンパク質からなる。用語「補体」は、これらのタンパク質がどのように免疫系の他の成分、例えば抗体および免疫グロブリンを補足または増加させるかを示す。補体カスケードは、3つの重要な免疫効果を有する。(1)微生物の溶解;(2)炎症に関与してPMNを引き寄せる媒介者の生成、および(3)オプソニン作用。
【0019】
補体カスケードは、3つの経路の1つを通して起こる。(1)古典経路、(2)レクチン経路、および(3)第2経路。(Prodinger,Wm.ら、Fundamental Immunology、Ch.29(1998))これらの経路は、図1で図示する。破線は、矢印の先端の分子のタンパク分解性切断が起こったことを示す。複合体の上の線は、それが酵素的に活性であることを示す。C2の大きな断片は慣例上、時々C2aまたはC2bと互換的に呼ばれるが、ここでは小断片は「a」と、すべての大きな断片は「b」と命名される。それ故に、C3コンバターゼはC4b,2bである。マンノース結合レクチンと関連するプロテアーゼはC2と同様にC4も切断する点に注意する。これらの経路のそれぞれは、膜侵襲複合体(MAC)の生成をもたらす。
【0020】
ウイルスまたは細菌の特定の成分と結合した抗体では、MACは微生物の保護カバーに穴をあけて血漿および電解質が微生物に入れるようにすることが可能であり、また同時に、微生物の内部構造成分の排出手段を提供する。
【0021】
古典的な経路では、抗原抗体複合体は、C2およびC4を切断してC4b,2b複合体を形成するプロテアーゼを形成するように、C1を活性化する。C1は、3つのタンパク質、C1q、C1rおよびC1sから構成される。C1qは、IgGおよびIgMのFc部分と結合する18のポリペプチドから構成される。Fcは多価で、いくつかの免疫グロブリン分子を架橋させることができる。C1sは切断されて活性プロテアーゼを形成するプロ酵素である。カルシウムは、C1の活性化のコファクターとして必要である。さらに、C1の活性化は、IgGおよび/またはIgMのFcドメインの複数箇所への、C1qの少なくとも2つの球状ヘッドの結合を必要とする。複数のFc免疫グロブリンの結合によりC1qで誘導された変化はC1rsサブユニットに伝達され、その結果C1r二量体のタンパク分解性自己活性化をもたらし、これは次にC1sをタンパク分解的に活性化または切断する。上で見られるように、活性化されたC1sはC4およびC2のタンパク分解性スプライシングのための触媒部位を有する。酵素複合体C4b,2bが生産される。これはC3コンバターゼとして機能し、これはC3分子を2つの断片C3aおよびC3bに切断する。C3bはC4bおよびC2bと複合体を形成して、C5コンバターゼである新しい酵素(C4b,2b,3b)を生産する。
【0022】
レクチン経路では、マンナン結合レクチン(MBLまたはマンノース結合タンパク質)は、マンナンを発現している微生物表面と結合する。MBPはC1qのそれと類似した構造を有し食作用を強化するC1q受容体と結合する、血漿中のC型レクチンである。マンノースは、様々な微生物の表面で見られるアルドヘキソースである。レクチン経路の第1の成分は、マンノース(またはマンナン)結合タンパク質(MBP)と称される。C末端の糖認識ドメインはN-アセチルグルコサミンへの親和性を有し、MBPがマンノースの豊富な表面被覆を発現している微生物を直接オプソニン化する能力を賦与する。血液内で、MBPはC1r様プロ酵素およびC1s様プロ酵素(それぞれMBP関連セリンプロテアーゼまたはMASP-1およびMASP-2と称される)との安定複合体として循環する。MBP-MASP-1、MASP-2複合体は、適当な糖表面と結合する。この結果、MASP-1を活性セリンプロテアーゼに変換する内部ペプチド切断によるMASP-1の自己活性化をもたらす、MBPタンパク質の高次構造変化が起こる。C1rと同様に、活性MASP-1はそれを活性化するMASP-2を切断する。活性MASP-2は、C4およびC2をタンパク分解的に活性化してC4b,2b(C3コンバターゼ)酵素複合体の集合を開始する能力を示す。古典経路と同様に、これはC5コンバターゼの生産をもたらす。
【0023】
第2経路では、多くの無関係な細胞表面構造、例えば細菌性リポ多糖(エンドトキシン)、糸状菌細胞壁およびウイルスエンベロープは、C3(H20)およびB因子に結合することによってその過程を開始することができる。この複合体はプロテアーゼ、D因子によって切断されてC3b,Bbを生産し、これはより多くのC3bを生成するC3コンバターゼとして作用する。古典経路の逐次的な酵素カスケードと対照的に、第2経路は正のフィードバックを使用する。主要な活性化産物C3bは、C3b,Bbのためのコファクターとして作用し、これはそれ自身の生産も担う。したがって、第2経路は爆発的なC3活性化のために連続的に刺激される。C3活性化速度は、C3b,Bb酵素複合体の安定性によって支配される。D因子によるB因子のタンパク質分解からは、小断片(Ba)および大断片(Bb)が生じる。大きな方のBb断片は、C3(H20)またはC3bと結合する。Bbの触媒部位を通して、複合体C3(H20),BbはC3をC3aおよびC3bにタンパク分解的に変換することができる。このメカニズムで生成される発生期のC3bは、更なるB因子との結合が可能である。したがって、補体活性化第2経路は、C3bの生産を強化する少なくとも2つの正のフィードバックループを有する。図1で示すように、この経路はC5コンバターゼの生産ももたらす。
【0024】
各経路では、C5コンバターゼ(C4b,2b,3bまたはC3b,Bb,C3b)がC5をC5aおよびC5bに切断する。C5bはC6およびC7と結合してC8およびC9と相互作用する複合体を形成し、MAC(C5b,6,7,8,9)を最終的に生産する。(Hoffman、2000)
【0025】
どの補体経路が活性化されるかに関係なく、C3b複合体は補体カスケードの中心的分子である。免疫学的に、C3bは3つの役割を果たす。
1.他の補体成分と逐次的に結合してMAC(C5b,6,7,8,9)の生産をもたらす酵素C5コンバターゼを生成する
2.微生物のオプソニン化。貪食細胞はその細胞表面にC3bの受容体を有する。
3.抗体産生を大きく強化する、活性化されたB細胞表面のその受容体への結合。(Parham,Peter、The Immune System、Ch.7(2nd ed.、2004))
【0026】
更に、補体系の他のタンパク質は、免疫学的機能を有する。C5a及びC5b67複合体は好中球を引き付ける。C5aもまた、内皮に対する好中球の接着を促進する。C3a、C4a、及びC5aは、増大した血管透過性と平滑筋収縮を導くヒスタミンのようなメディケーターの放出を有するマスト細胞の脱顆粒化を引き起こすアナフィラトキシンである(Hoffman, 2000)。
【0027】
補対カスケードは、いくつかの固有の免疫学的機能を有する。これらの機能を調節するある種の宿主タンパク質が同定されている(Hoffman, 2000)(William, 1999)(Speth, 1999)。補体カスケードのインヒビターまたはレギュレーターは、重荷血漿で見出され、以下のものを含む:
1. C1-INH:C1qによってタンパク質溶解的に切断されており活性であるC1r及びC1sに不可逆的に結合する肝細胞及びマクロファージによって合成されるセリンプロテアーゼインヒビター。これはそれらの固有の酵素活性をブロックし、C1qに対する結合を破壊する。
2. カルボキシペプチダーゼN:C3a、C4a、及びC5aの遊離カルボキシル末端で末端アミノ酸(アルギニン)を除去する血漿ヒドロラーゼ。これは、これらのアナフィラトキシン(C3a、C4a、及びC5a)の固有の活性を除去または減少し、有意に損傷する。しかしながら、C5aは、アルギニン部分の除去の後、化学走性及び好中球刺激活性を約10%維持する。
3. C3b/C4b結合タンパク質:細胞表面に結合しない、即ちヒトの血漿に溶解しているC3bまたはC4bを結合する血漿タンパク質。それ故、それらはC3/C5コンベルターゼのアセンブリーを調節する。更に、これらのタンパク質のいくつかは、細胞膜レセプターである。これらのタンパク質は、H因子及びC4b結合たんぱく質を含む:
a.H因子:二つの基本的な阻害機能を示す血漿タンパク質。(1)C3bの結合及びB因子とC3bまたはC3(H2O)の会合の阻害。C3,bBプロ酵素のアセンブリーを制限することにより、C3コンベルターゼは形成されない。これは崩壊促進として既知である。(2)H因子はまた、アセンブリーしたC3b,Bb酵素複合体の解離を促進し、1因子によるC3bのタンパク質分解性の分解のための補因子として機能する。1因子による制限された鎖間タンパク質分解は、最初にC3bを不活性化C3b(iC3b)に変換し、それはその元々のアクセプター表面に共有結合を維持する。これはH因子のための補因子活性である。
b.C4b結合タンパク質(C4b-bp):3のレベルでの補体活性を調節する急性炎症反応において記載される、血漿様のCRPにおける急性反応タンパク質。(1)C2との会合をブロックするC4bへの結合。(2)アセンブリーしたC4b,2b酵素複合体の解離の促進。(3)セリンプロテアーゼ1因子によるC4bのタンパク質溶解性分解に対する補因子。C4b-bpはSタンパク質との複合体として血漿中で循環し、後者は補体系と凝固系を伸すビつける凝固のための調節機能を有するビタミンK依存性タンパク質である。
4. CD59(HRF-20)。非と血液細胞及び血管内皮細胞で見出されるタンパク質であり、細胞膜へのC9の挿入というMAC複合体の形成で最終工程を阻害する。
【0028】
細胞膜結合性である補体活性のインヒビターまたはレギュレーター:
1. 崩壊促進因子(DAF,CD55):一本鎖糖タンパク質(William, Paul, Fundamental Immunology, pp 967-995 (第4版, 1999))。赤血球、血小板、白血球、内皮細胞、及び他の宿主細胞の表面で通常発現される。DAFは、宿主細胞を補体活性化から保護する膜アセンブリーしたC4b,2bとC3b,Bb酵素複合体のサブユニットの分解を加速する。DAFは、1因子によるC4bまたはC3bの不活性化のための補因子としては機能しない。
2. 膜補因子タンパク質(MCP,CD46):赤血球以外の全てのヒト白血球及び血小板の細胞膜で見出される糖タンパク質。MCPは、C3b、C4b、及びiC3bを結合し、C3bとC4bの1因子介在性のタンパク質分解の捕因子活性を促進する。DAFとMCPは互いに補い合う:DAFは崩壊促進活性を有するが、1因子に対する捕因子活性を有さない一方、MCPは1因子のための捕因子として機能するが、C3コンベルターゼ酵素の崩壊を促進しない。
3. CR1(CD35):赤血球、単球/マクロファージ、好塩球、好中球、濾胞樹状細胞、T細胞、及びB細胞に見出されるC3bとC4bのための主要な細胞レセプター。34までの短いコンセンサスリピートユニットを含む4種の多型形態が同定されている。CR1赤血球は免疫複合体を吸収し、それらを除去のため肝臓と脾臓に輸送する。マクロファージ上のCR1は、オプソニンレセプターとして機能する。CR1は、C3b,Bb酵素の崩壊を促進する。最後にCR1は、1因子によるC3bよC4bのタンパク質分解のための重要な補因子であり、それ故宿主細胞上の代替的な古典的補体経路を阻害する(William, 1999)。
4. ビトロネクチン(Sタンパク質)及びクルステリン。互いの結合を妨げ、MAC複合体を形成するC5,6,7を結合する血漿中のスカベンジャータンパク質。
【0029】
上述のいずれか一つは、補体系の有効性を減少しうる(William,1999)(Hoffman,2000)。特に、H因子、C4b-bp、DAF、MCP、及びCR1についての遺伝子は、第1染色体の長腕にリンクしており、補体活性のレギュレーター(RCA)と名づけられる緊密に関連した遺伝子のファミリーを構成する。補体カスケードの活性を制限する能力を有するいずれの微生物も、免疫系の体液性の側面に対して自身を理論的に保護できる(William, 1999)(Joiner, K.A., “Complement Evasion”, Annu, Rev. Microbio. Vol 42, pp 201-230 (1988))。かくして、補体カスケードは、体液性の側面のアキレス腱である。
【0030】
HIVの液性反応との相互作用
レトロウイルスは、抗体の非存在下において補体系を活性化する事ができる(Haurum, J., AIDS, Vol. 7 (10), pp. 1307-13 (1993))。HIVエンベロープの糖タンパク質による補体の活性化は、ウイルス感染した細胞で生産される天然のエンベロープタンパク質上、並びにグリコシル化された組換えエンベロープタンパク質上の糖に対するMBPの結合によって仲介されると見られている(Haurum, John, AIDS, Vol 7(10), pp. 1307-13 (1993)) (Speth, C., Immunology Reviews, Vol. 157, pp. 49-67 (1997) )。レトロウイルスエンベロープによる古典的補体経路及びレクチン経路の活性化は、エンベロープ糖タンパク質の糖側鎖に対するMBPの結合によって開始されうる。HIV-1の膜貫通タンパク質であるgp41は、gp120と非共有結合的に結合することが示されている。補体構成成分であるC1qもgp41に結合する。gp41の細胞外部分(細胞外ドメイン)において、3つの部位(aa 526-538、aa 601-613、及びaa 625-655)がgp120及びC1qの両者に結合する。この様に、C1q及びgp120は、構造及び機能の両者に相同性が存在する。カルシウム非依存性であるgp41とgp120の結合とは異なり、gp41とC1qの間の相互作用は、カルシウム依存性である。
【0031】
HIVが、抗体非依存的な様式で古典的及びレクチン経路を開始させ、この事がHIVによる補体レセプター陽性細胞の感染を引き起こす。C1qのgp41に対する結合は、異なる方法で感染を容易にする可能性がある。C1qは、HIV-1にも感染しているHIV感染細胞に直接結合する。C1qは、コレクチンレセプターとしても知られるC1qレセプターに結合する能力を保持する。更に、gp41は、マクロファージの細胞膜に固定されたC1qと直接相互作用する。いずれの場合も、HIVは、C1qを介してCD4非依存的に細胞に接触するための機会を有する。
【0032】
gp120とC1qの相同性は、gp120がC1qレセプターと直接相互作用する可能性を高め、それによりCD4非依存的な様式でHIVのマクロファージへの進入を容易にする(Stoiber, Heribert, European Journal of Immunology, Vol 24, pp. 294-300 (1994))。gp120に対する抗体は、C1qと交差反応でき、少なくとも部分的には、HIV-1患者における有意に低いC1qの濃度に関与する可能性がある。C1qは、不溶性の免疫複合体のクリアランスに関与する因子の1つであり、その欠如は、HIV感染者で認められる不溶性の免疫複合体の有意に高い濃度に関与するであろう(Procaccia, S., AIDS Vol 5, p. 1441 (1991))。HIV病を特徴付ける低補体血症は、HIVに関連した日和見感染及びウイルスに関連した悪性度と関係する。
【0033】
補体活性の調節因子は、細胞膜に結合した状態で見られうる。他のものは、ヒトの血漿及びリンパ液において自由に循環する。多くの補対活性の調節因子(RCA)は、特徴付けられており、3つの経路全てにおける殆ど全ての過程は、正及び負の調節の影響を受ける。3つの酵素複合体(C3転換酵素、C5転換酵素、MAC複合体)は、補体カスケード内の焦点であり、多数のインヒビターまたは触媒の影響を受ける。
【0034】
補体活性化経路を調節する幾つかのタンパク質は、遊離の可溶性の分子として血漿中を循環し、流体相におけるC3活性化の調節または細胞表面でのMACの形成の阻害のどちらかを行える。補体因子H及び低分子量因子H様タンパク質の様な補体の調節因子が、この機能を仲介することが示されている。補体因子Hは、gp120と相互作用し、シンシチウムの形成及びエンベロープ糖タンパク質(env)複合体の可溶性CD4(sCD4)誘導性の解離を促進する。補体因子Hは、CD4に関わった後に活性化したgp120にのみ結合する。この事は、結合部位がenv複合体に隠されており、gp120とCD4の相互作用後にのみ露出される事を示す(Pinter, C., AIDS Research in Human Retroviruses, Vol. 11, (1995) )。gp120分子は、ヘルパーT細胞のCD4レセプターに結合する。次いで、前記ウイルスは、T細胞と融合する。前記融合ドメインは、gp41に位置する。融合の際に、gp120フラグメントは、分離される。gp41の細胞外ドメインは、gp120の分離後に露出される。gp41上のC1q及び補体因子Hの結合部位が、露出される
【0035】
HIVは、特定の抗体の非存在下においてもヒトの補体系を活性化する(Stoiber, H, J. Ann. Rev. Immunology, Vol. 15,649-674 (1997) )。この事は、補体が妨げられなければ、ウイルスの不活化を引き起こすであろう。補体の過程は、妨げられなければ、細胞膜障害複合体(MAC)を生産し、ウイルス溶解を引き起こすであろう。しかしながら、HIVは、自身の構造に補体を調節する宿主の各種の分子(例えばDAF/CD55)を組み込む事によってウイルス溶解を避けている。HIVは、感染細胞からの出芽の際、つまりgp41及びgp120構造に対する結合によってウイルス膜にこれらの分子を含む(Stoiber, H. , J. Ann. Rev. Immunology, Vol. 15,649-674 (1997) )。この補体構成成分との相互作用は、感染性、濾胞への局在、及び標的細胞の範囲を促進する補体構成成分のHIVによる利用を可能にする。同時に、HIVは、液性の部門に対して防御する。
【0036】
補体因子H及びCR1の様なタンパク質は、C3転換酵素における補因子と分解促進活性の両者を有する(Stoiber, H, J. Ann. Rev. Immunology, Vol. 15,649- 674 (1997) )。C3bの完全性は、細胞溶解を達成するために補体カスケードにとって必須である。C3bは、適当な補体レセプターとの相互作用後にセリンプロテアーゼ(補体因子1-CF1)によって急速に切断される。この反応を仲介するタンパク質は、CF1の補因子活性を有する。幾つかのタンパク質は、C3b及びC4bを産生する酵素(転換酵素)の組み立ての阻害、及び/または解離を支持することによって補体活性を下方制御する。この活性は、分解促進と称されており、CD55(DAF)タンパク質分子の特徴である。
【0037】
補体因子Hを欠損している血清は、HIV及び感染細胞を溶解するが、未感染の細胞は溶解しない(Stoiber, H. , J. Exp. Med. , 183: 307-310 (1996))。補体因子Hの存在下では、補体因子Hの結合がgp41における補体因子H結合部位を標的とするモノクローナル抗体によって阻害された際に、HIVの溶解が起こる事が示されている。補体因子Hを欠くヒト血清は、HIVビリオンを効果的に溶解する。しかし、今までに、ヒトの補体に対するHIV及び補体因子Hの関係のこうした増大する知識を実行する手段を指示するものは存在していない。
【0038】
Streptococcus pyrogenes、Borrelia burgdorferi、Neisseria gonorrhea、Neisseria meningitides、Yersinia enterocolitica、Echinococcus granulosus、及びOnchocerca volvulusのような多くの微生物が、その構造中にH因子及び/またはFHL-1を吸収することにより免疫系を妨害する(William, Paul, Fundamental Immunology pp. 967-995 (第4版, 1999))(Joiner, K.A., “Complement Evasion”, Annu, Rev. Microbio, Vol 42, pp 201-230 (1988))(Septh C.,等, The Middle European Journal of Medicine, 111/10: 378-391 (1999))。H因子は、血中の3Cbの活性を阻害することによってHIVでの補体カスケードを阻害する。H因子は、gp120とgp41の両者に直接結合し、沈着するや否やC3bを実質的に不活性化する(Pinter, Claudia等, AIDS Research and Human Retroviruses, Vol 11, #5, 577-588頁, (1995))(Pinter Claudia等, AIDS Research and Human Retroviruses, Vol 11, #8, 971-980頁, (1995))(Stoiber Heribert等, “Human Complement Proteins C3b, C4b, factor H and Properdin react with specific sites in gp120 and gp 41, The Envelope Proteins of HIV 1”, Immunobiology, Vol 193, pp 98-113 (1995))。gp120とgp41の両者は、C3b上のH因子結合部位の一つに相同である配列を含む。H因子がgp120またはgp41に沈着した際、それは共有結合したC3bと相互作用し、不活性断片C3dg及びiC3bへのその切断を促進する。各種の度合い、免疫抑制ウイルスは、宿主細胞の膜から出芽する際に、その膜にCD55(DAF)及びCD59のような細胞由来の補体制御タンパク質を取り組むことにより、補体破壊を減少してよい。
【0039】
上述のようにHIVは、宿主免疫系を逃れるための複数の手段を有する。その一つは、補体系を妨げる外部等タンパク質へのシアル酸の取り込みである。HIVは、宿主補体系を逃れるための複数のメカニズムを有する。HIVは、表面糖タンパク質へ宿主血漿タンパク質H因子を取り込むことにより、補体の抗菌活性を中和でき、それが免疫系の体液性の側面による破壊からウイルスを保護する。更にHIVウイルスは、モノクローナル抗体を使用してDAFとH因子の活性を阻害することにより、in vitroでヒトの血清中で破壊できる(Stoiber Heribert等, J. Exp. Med., Vol 183, pp 307-310 (1996))。in vivoでの補体介在性溶解に対するHIVとHIV観戦細胞の耐性がDAFとH因子に依存性であり、前記耐性はDAFとH因子の機能を阻害することによって弱化できる。本発明は、HIVに対する細胞障害性Tリンパ球と抗体液性応答を促進することによって免疫系を刺激する。
【0040】
HIV及びHIV感染細胞は、ヒトの補体の潜在的な破壊効果に耐性であるが、他の動物の血清により容易に破壊される。実際HIVは、ほとんどの動物モデルにおいて補体を活性化し、それが動物モデルをある形態の研究のための不適切なものとする(Spear G.T.等, Immunology, Vol 73, pp 377-382 (1991))。ヒトにおいては補体経路はC3b沈着のレベルで妨害されるが、動物においては補体はMACの生産と有効なビリオン溶解に先行する(Spear, 1991)。
【0041】
H因子の構造は定義されている(Ripoche, Jean等, Biochem. J., Vol 249, pp 593-602 (1988))(Aslam, Mohammed等, Molecular Biology, Vol 309, Issue 5, pp 1117-1138 (2002))。それは各61アミノ酸長である20の短い相補的/コンセンサスリピート(SCR)から完全になる。SCRドメインは、相補的タンパク質中のほとんど豊富なタイプのドメインを構成し、システインリッチである。補因子及び崩壊促進活性は、完全なC3bに結合する4のN末端ドメインSCR-1からSCR-4内に位置する。第二のC3部位は、C3bのC3c領域に結合するSCR-6からSCR-10内に位置し、第三の部位は、C3bのC3d領域に結合するSCR-16及びSCR-20内に位置する。H因子に対するC3bの結合の発見は、gp41及びgp120の主要な結合活性がH因子とのものであり、C3とH因子のある組合せとのものではないことを明らかにする。それは更に、シアル酸残基が、H因子のgp41とgp120に対する結合を容易にすることを明らかにする(Meri, Seppo等, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, Vol 87, pp 3982-3986 (1990))。これらの発見は、細胞毒性におけるH因子の役割に鑑みて、gp41とgp120に対する結合からH因子を阻害するサブユニットワクチンが免疫原性であろうことを示す。
【0042】
H因子はまた、その活性を促進し、それ故H因子の補体調節機能を調節するヘパリン及び他のポリアニオン性物質に結合する(Aslam, 2002)(Hellwage, 1999)(Blackmore, T.K.等, Immunology, Vol. 157, Iss 12, pp 5422-5427 (1996))。ヘパリン結合部位はSCR-7とSCR-20に位置しており、第三のヘパリン結合部位は、恐らくSCR-13またはその近傍に位置しているであろう。SCRドメインは、H因子が補体活性化の各種のコントロールを達成可能であるように協同的に機能する。19の柔軟なペプチド結合が20のSCRドメインを連結している。この柔軟性は、H因子がC3とヘパリンに対する複数のH因子結合部位を非常に緊密に近づけさせるベントバック構造を推定させる。
【0043】
ヘパリンは、アンチスロンビンIII(ATIII)の反応部位で構造変化を誘導し、標的プロテアーゼをこの部位とより効果的に相互作用させる。ヘパリンは、H因子内の同様な構造変化を誘導し、1因子によるC3bのタンパク質溶解切断を促進する能力を増大する(Giannakis, Eleni等, Int’l. Immunopharmacology, pp 433-443 (2001))(Meri, 1990)。ヘパリンと1因子の両者はセリンプロテアーゼである。硫酸ヘパリンは、ウイルス感染を増大する高いアフィニティーでHIVに結合する。H因子が、ヒトの血清で見出される物質であるヘパリンに結合すると、H因子活性を増大知ることによりウイルス感染性が増大する。血漿中の1因子に対する補因子として機能して、C3bは1因子により不活性化され、C3bのα鎖から断片を切断し、iC3bを生成する。1因子によるタンパク質分解は、血漿成分H因子または膜レセプターCR1若しくはMCPのいずれかに対するC3bの結合を必要とする。1因子による更なるタンパク質分解は、大きな断片のC3cを遊離し、内部チオエステルのカルボニルを介した標的表面に共有結合したC3dgを残す。
【0044】
更にヘパリンは、抗補体活性及び抗凝固活性の両者で特徴付けられる(Weiler, John M.等, J. Exp. Med., Vol. 147, pp 409-421 (1978))。ヘパリンは、C1qが免疫複合体に結合するのを阻害し、同様にC4及びC2とC1sとの相互作用を阻害する。ヘパリン分子の抗補体活性は、その抗凝固活性とは構造的に別個である。
【0045】
H因子によって生産されるC3bの不活性断片は、C3dg及びiC3bを含む。これらの断片の両者は、gp120とgp41に共有結合し、並びに補体レセフ゜ターCR1、CR2及びCR3に共有結合する。これらのレセプターは、樹状細胞(APC)、単球、マクロファージ、B細胞、及びT細胞で見出される。C3dg及びiC3bは通常、補体によって以前に破壊されているウイルス断片にのみ結合する。リンパ節に局在する場合、これらの断片は樹状細胞に結合し、天然のT細胞及びB細胞の活性化を開始する。HIV感染では、ウイルスが補体カスケードを避けられるため、生きたウイルスがリンパ節と胸腺に濃縮される(Stoiber Heribert,等, Ann. Rev. Immunology, Vol. 15, pp 649-674 (1997))。HIV疾患以外のウイルス病原体での通常の環境下では、生きたウイルスはリンパ節または胸腺には凝縮されないものである(Thieblemont.等, Immunology, Vol 155, p. 4861 (1995))。
【0046】
リンパ節内では、C3dgとiC3bに結合した生きたウイルスが、APC、T細胞、B細胞、及びマクロファージによって標的化される(Doepper, Susi等, Current Molecular Medicine, Vol, 2, Iss 8, pp 703-711 (2002))(Stoiber H.等, Ann. Rev. Immunology, Vol. 15, pp 649-674 (1997))(Dierich, M.P.等, Immunology Today, Vol 14, Iss 9, pp 435-440 (1993))。不活性なC3dgとiC3bがマクロファージCR1とCR3レセプターを誘引する場合、細胞転写因子NF−ΚBが活性化し、平行感染したT細胞においてウイルスの複製の促進を導く。最後に、C3dgとiC3bによるCR3レセプターの活性化がin vivoで示されており、二つのサイトカイン、IL-12とγインターフェロンの抑制を引き起こす。
【0047】
活性化した樹状細胞は、免疫応答を増幅し、ヘルパーT1リンパ球サブセットの分化を促進するサイトカインであるIL-12を生産する。これは次いで、固有の免疫系のナチュラルキラー(NK)細胞活性を維持する。HIV感染では最初にタイプ1パターンが優勢である。疾患が進行するにつれて、IL-12の減少が、タイプ1からタイプ2へとサイトカイン環境をシフトする(Cohen, P.T., 1999, The AIDS Knowledge Base, 第18章(第3版, 1999))。
【0048】
CR1とCR3はまた、補体オプソニン化HIVでの単球、マクロファージ、及び胸腺T細胞のHIV感染を介在する。それ故CD4は、HIVが標的細胞に結合して新入するために使用する唯一の細胞表面分子というわけではない(Stoiber Heribert等, Ann. Rev. Immunology, Vol. 15, pp 649-674 (1997))(Doepper, 2002)。補体断片で被覆されたウイルスは、各種のタイプの補体レセプターを有する細胞と有効に相互作用する。このメカニズムは、低濃度のウイルスで最も関連することを示す。HIV-1は、低ウイルス力価によって促進するHIV疾患で感染されていない細胞に感染できるという、ユニークな機能によって特徴づけされる。低いウイルス力価は、抗レトロウイルス治療の一つの目的である。この目的の達成は、増大したHIV標的化、結合、および非感染細胞への侵入という過程を取る(Legendre C.,等, Febs Lett. 381: 227-232 (1996))(Reisenger, E.C.,等, AIDS, Vol 4, pp 961-965 (1990))。興味深いことに、HIV特異的治療はウイルスの力価を減少するが、ウイルスの毒性を増大する。樹状細胞は補体断片に対するレセプターを通じてHIVに結合でき、これらの細胞は互いにHIVを伝播でき、CD4+T細胞と相互作用した際に、過度のウイルス複製を促進する。
【0049】
ヒトC3とのホモロジーのため、HIV表面でのCR3とウイルスエンベロープ等タンパク質の直接的相互作用または間接的相互作用(即ち固定化したC3断片、または免疫複合体-特異的抗体プラス補体断片を介して)が可能である。これは、CD4+細胞の感染を容易にし、及び/またはCD4を有さない細胞を、またはCD4の使用がCD4に対する抗体によりブロックされた細胞を含むように宿主の範囲を広げる。
【0050】
HIVは、HIV患者の脳で各種のサイトカイン(TNF-a, IL-1, IL-6)の生産を誘導する(Gasque, P., Immunol., 149: 1381-87 (1992))。次いでこれらのサイトカインは、中枢神経系内の補体タンパク質の生産と放出を誘導する。脳ではHIVは、補対断片でオプソニン化される。末梢血細胞のHIV感染の環境によれば、小膠細胞のようなCR陽性CNS細胞についての増大した感染性が可能である。これらの細胞は、CNSにおけるHIVの主な標的の一つである。CR3は小膠細胞で見出され、gp41と直接相互作用できるので、gp120を介したレセプターに対する結合の後、細胞内へのウイルスの侵入が容易に可能である(Levy, J.A., Microbiol., Rev. 57: 183-289 (1993))。
【0051】
HIVは、C1q、C3、プロペルジン、及びC4bpを含む各種の補体タンパク質を模倣する(Morrow, W.J., Clin. Immunol. Immunopathol. 40: 515-24 (1996))。HIVによって、または組換えタンパク質でのワクチン化によって誘導された抗体は、ウイルスタンパク質を認識するだけでなく、補体系の各種のメンバーと交差反応する。免疫複合体のクリアランスに関与するC1qは、gp120を誘導する自己抗体によってブロックされて良い。これは、C1qがgp120分子に直接結合するために生ずる。これは、HIV感染患者で見出される高濃度の免疫複合体に貢献する(Morrow, 1996)。gp41における4の部位はC3に対するホモロジーを有する。補体カスケードにおけるC3の中枢の役割のため、HIV陽性血清で検出可能なC3に対する自己抗体は、補大会財政の免疫応答に負に影響する。
【0052】
HIVでの感染に対する第一の標的は、皮膚、直腸、及び膣の粘膜における上皮細胞及びランゲルハンス細胞である;これは、補体が向けられた濾胞/APCウイルス局在のためである(Stoiber, Heribert等, Ann. Rev. Immunology, Vol. 15, pp 649-674 (1997))。感染に対するそれらの感受性は、クレード依存的であるようである;クレードEタイプのウイルスがもっとも有効である(Stoiber Heribert等, Ann. Rev. Immunology, Vol. 15, pp 649-674 (1987))。
【0053】
HIV感染の早期の段階における有効な細胞応答は、ウイルス血症の迅速な減少と相関する(Stoiber H等, Ann. Rev. Immunology, Vol. 15, p 649-674 (1997))。しかしながら、HIVに感染したCD4+細胞は、免疫系の一部が他者を除去するという、従来のウイルス特異的なCD8細胞介在性メカニズムを通じて殺傷されるかもしれないので、この有利な点は不利であるかもしれない。更に、細胞傷害性のTリンパ球(CTL)応答は、ほとんどのウイルス感染細胞、及びウイルスタンパク質のペプチドを提示する細胞を有効に除去するかもしれない(Stoiber, Heribert,等, Ann. Rev. Immunology, Vol. 15, 649-674頁, (1997))。これは、認識を逃れる平行形態でHIVを有する細胞を選択するであろう。
【0054】
HIVは、補体カスケードの不活性化によりドミノ効果を誘引する。HIVの中枢の免疫効果は、H因子をその表面糖タンパク質に同化する能力である(Pinter, Claudia, AIDS Research in Human Retroviruses, Vol 11, Nov 8 (1995))(Printer Claudia.等, AIDS Research and Human Retroviruses, Vol 11, #5, pp 577-588 (1995))(Stoiber, Heribet.等, Immunology, Vol 193, pp 98-113 (1995))。HIVは補体カスケードを逃れ、それ自身の複製を促進し、ヒトの身体のリンパ節内にそれ自体を隠す。これは基本的なリンパ節の構造及び機能を歪ませるまたは破壊する。更に不活性なC3b断片は、ウイルス複製を促進する。
【0055】
H因子は宿主または細胞タンパク質であるため、HIVに共通であるウイルス突然変異に感受性ではない(Ripoche, 1988)(Aslam, 2002)(Kirkitadze, Marina等, Immun. Rev., Vol 180, pp 146-151 (2001))(Feifel, Elisabeth等, Immunogenetics, Vol 36, pp 104-109 (1992))(Discipio, R.G., J. Immunology, Vol 149, Iss 8, pp 2592-2599 (1992))(Ault, Bettina等, Biological Chemistry, Vol 272, #40, pp 25, 168-25, 175 (1997))。H因子の一次工青うを服務アミノ酸配列は一定であり突然変異しない。従って、gp120及びgp41上のH因子及び関連タンパク質に対する結合部位も保存されている(Pinter, 1995)。結合部位で突然変異が存在したならば、免疫系の液性の側面は、ウイルスを不活性化するように普通に進行するであろう。かくしてHIVは、H因子結合部位での突然変異に耐えることができず、これはサブユニットワクチンにおける使用のための別の利点を提供する。
【0056】
本発明は、糖タンパク質gp120、gp41、または好ましくはgp120とgp41の組み合わせのH因子結合エピトープからなる組成物及びサブユニットワクチンである。前記免疫原性組成物は、H因子、FHL-1、及び同時に挙動するFHR1-5に対する結合部位を含んでも良い。循環中のH因子は、二つの別個の立体構造状態、または二つの別個の三次元構造、Φ及びΦが仮定される。前記組成物は、gp120とgp41等タンパク質の両者上のこれらの立体状態の両者に対する結合部位を含んでも良い。H因子をウイルス表面から遠ざけることによって、ヒトの補体に対するHIV体制を弱化し、ヒトの補体を機能化可能である。
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【非特許文献51】Saphire,Andrew C.S.ら、European Molecular Bio.J.18:6771〜6785(1999)
【非特許文献52】Furie,Bruce、Oral Anticoagulant Therapy、Hematology Basic Principles & Practice、Ch.121(3rd ed.2000)
【非特許文献53】Liang J.Fら、Biochemistry、Vol.68、pp116〜120(2002)
【非特許文献54】Hoffman,Ronald、Hematology Basic Principles and Practice、2177(3rd ed.2000)
【非特許文献55】Burger,R.ら、Immunology、Vol.29.pp549〜554(1975)
【非特許文献56】Burger,R.ら、Immunology 33:827(1977)
【非特許文献57】Burger,R.ら、European J.Immunology、pp.291〜295(1981)
【非特許文献58】Seppo Meriら、Proc.Natl.Acad.Sci、Vol87、pp3982〜3986(1990)
【非特許文献59】Gardner,William D.、Biochemical and Biophysical Research Communications、Vol.94、pp61〜67(1980)
【非特許文献60】Alper,C.A.ら、Science、Vol.191、pp1275〜1276(1976)
【非特許文献61】Kock,Michael A.ら、J.of Biol.Chemistry、Vol.279 pp30836〜30843(2004)
【非特許文献62】Vogel,Carl W.、Immunoconjugates、Ch.9(1987)
【非特許文献63】Hoffman,Ronald、Hematology Basic Principles and Practice、Ch.27(3rd ed.2000)
【非特許文献64】Gowda,D.C.ら、「Immunoreactivity and function of Oligosaccharides in Cobra Venom Factor」、J.of Immun.、pp.2977〜2986、(Dec21、1993)
【非特許文献65】Fishelson,Z.ら、J.of Immun.、Vol.129、pp2603〜2607(1982)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0057】
本発明は、ヒト補体成分H因子、FHL-1、及び同時に挙動するH因子のFHR(1-5)(ここで一般的にH因子と称する)と結合するであろうgp120及び/またはgp41等タンパク質またはその一部のウイルスエピトープからなる免疫原性組成物及びワクチンである。前記組成物(HIV上のH因子に対する結合部位)が外来であることを宿主に明らかにし、H因子結合を妨害するためにシアル酸が除去される。
【0058】
別法として、H因子結合部位をコードする核酸(RNA及び/またはDNA)が、免疫原またはワクチンとして使用できる。前記核酸は、裸のRNAまたはDNA分子プラス、必要であれば免疫原性を増大するために適切なアジュバントとして投与されて良い。前記核酸は、天然のウイルスDNAまたはRNAまたは相補的DNA(cDNA)のいずれかであって良い。
【0059】
別の実施態様では、gp120及び/またはgp41上のH因子結合部位をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)が、免疫原またはワクチンとして使用できる。
【0060】
最後に前記方法体系は、互いに独立に、多価免疫源として、または連続的に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
B.サブユニット組成物
本発明のサブユニット免疫原は、免疫反応及び免疫記憶を形成するために、ペプチド若しくはその一部、またはタンパク質若しくはタンパク質セグメントをコードする遺伝子配列を含む。本発明では、望ましい免疫反応は、HIVの必須の表面H因子結合部位若しくはその一部に向けられたものである。重要なことに、前記組成物は、免疫系に適切に提示されるべきである。核酸、ペプチド、及びタンパク質の単離及び使用は、当業者に既知であり、本明細書で記載される様なものである。
【0062】
サブユニット組成物の利点の1つは、治療上の応用における感染性の欠如である。そのため、サブユニット組成物は、HIVの様にウイルスが非常に悪性である際に働く可能性がある。HIVの様な幾つかのウイルスは、非常な変異を遂げるため、ワクチンまたは治療に使用される弱毒化株は、より毒性の強い株へと自然な復帰変異を遂げうる。そのため、HIVに関しては、生ウイルスベクターは危険であろう。サブユニット組成物またはワクチンは、ウイルスが容易に培養物において生育できない際にも、使用されうる。サブユニット組成物は、急速及び比較的安価に生産される可能性がある。
【0063】
例えば、サブユニットワクチンは、現在は酵母細胞におけるクローン遺伝子の発現によって得られるB型肝炎ウイルス表面抗原の使用に適用されている。このワクチンは、台湾において成功裏に使用されており、幼児における原発性肝癌の発生を減少させている様である(Wagner, 1999)。
【0064】
タンパク質の直接投与は、生ウイルスワクチンと同様には細胞性反応を誘導しないであろう。しかし、サブユニットワクチンの利点は、弱毒化株の場合の穏やかなものまたは毒性ウイルスの場合の厳しいもののどちらかの潜在的な感染性の欠如を含む。更に、本発明は、免疫刺激剤及び他の免疫原性組成物との併用のために意図される。
【0065】
B細胞の強い刺激及び抗体反応は、感染の直後に全ての主なHIVタンパク質に対して認められる(Goudsmit, 1988)。未知の理由のために、この事は、効果的な中和抗体の生産を引き起こさない。一方、これらの抗体は、ウイルス表面上の補体フラグメントの沈着により、CD4リンパ球以外の細胞によるHIVの取り込みを促進する可能性があり、それにより、抗原提示細胞(APC)におけるより効率的な局在を促進する(Stoiber, 1997)。中和抗体の促進抗体への転換において、濾胞樹状突起細胞は、重要な役割を担う可能性がある。これまでのワクチン接種により中和抗体を産生する試みは成功していない(Cohen, P. T. , et al.,The AIDS Knowledge Base, Ch 22 (3rd ed. 1999))。
【0066】
したがって、本発明の組成物は、ヒトまたは他の動物における免疫反応を誘導する方法を含む。「動物」に対する一般参照は、ヒトを含む。前記方法は、前記組成物の調製及び液性または細胞性免疫反応を開始する能力を有する動物に対する投与を含む。免疫反応は、当該技術分野で既知の測定の一般的な方法を使用して検出されて良い。本発明は、実験ツールの開発及び免疫反応の研究のために使用されて良い。更に、本発明は、HIVに感染した対象に投与するため、または感染していないが免疫反応が望まれている対象における免疫反応を生産するためのワクチンの開発の助けとなるだろう。
【0067】
C.調製の方法
開発、調製、及び投与の各種の方法が、本発明によって意図される。その様な方法は、特定の株に対する効力及び対象動物の反応に基づいて選択されるであろう事が予想される。図6に示される様に、このサブユニット組成物は、タンパク質若しくはペプチドの単離、メッセンジャーRNA、または核酸DNA/RNA発現の様な調製の目的のために分類されて良い。
【0068】
したがって、本発明は、1つ以上の当業者に利用可能な各種の方法のいずれかを使用して調製されて良く、以下を含むが、それらに限らない。
1.HIVからのH因子結合部位の精製及び単離。
2.escherichia coli、酵母、またはウイルスのような適切なバクテリアへのH因子結合部位のメッセンジャーRNAクローニング及び発現;別法として、前記mRNAは、必要であれば適切なアジュバントとともに裸の核酸ワクチンとして使用できる
3.escherichia coli、または酵母、またはウイルスのような適切なバクテリアへのH因子結合部位の裸のまたは組換えDNA/RNAクローニング及び発現
(Aroeti, 1993)
抗原提示細胞は、ファゴサイトーシスによって外来性のタンパク質を取り込み、免疫原の提示及び免疫反応を引き起こす。上記のリストを参照すると、実施態様1は、タンパク質フラグメントによるものであり、一方、実施態様2-3は、核酸及び組換え技術によるものである。実施態様2-3は、核酸のin vitroにおける製造による合成を含んでも良い(Aroeti, 1993)。
【0069】
C.1.タンパク質に基づく組成物
前記タンパク質のエピトープは、単一のウイルス粒子またはウイルス培養物から単離されて良い。単一の粒子の場合では、酵素性の(タンパク質分解性の)分解が使用されて良い。例えば、成熟Fタンパク質は、成熟ウイルス粒子を各タンパク質構成成分に分解及び酵素消化する事によってウイルス粒子から単離されて良い。「精製」は、タンパク質が、治療上の使用が可能となるように他の細胞サブユニットまたは汚染物質を実質的に含んでいないことを単に意味する。前記組成物は、完全に純粋である必要は無い。H因子結合部位は、ウイルス培養物から単離されても良い。In vivoで、ウイルス構造の各タンパク質は、ウイルスの複製のために必要な量を超えて生産される。そのため、各ウイルスタンパク質は、タンパク質の特徴的なサイズ、形状、溶解特性、静電ポテンシャル、濃度、並びに/または各種の培地における浮力及び沈降速度に基づいてウイルス分離株から単離及び分離されて良い。そのため、この方法は、免疫反応を誘導するための特定のタンパク質フラグメントまたはペプチドの使用を含む。
【0070】
C.2.核酸に基づく組成物
一般的には、核酸に基づく組成物は、裸のDNA/RNA、組換えDNA/RNA、またはメッセンジャーRNAを含んで良い。裸のDNAに基づく組成物は、通常、界面活性剤またはフェノールに対する曝露によってヒストン(折りたたまれていない小さい染色体タンパク質)またはタンパク質が取り除かれているH因子結合部位をコードするウイルス抗原のDNAを使用するであろう。組換えDNAは、以下に詳細が議論される様に、異なる生物由来のDNAのフラグメントを再結合することによって作製される遺伝子組換えDNAである。両実施態様のためのDNA/RNAまたはmRNAは、当該技術分野で既知であり、本明細書で一部記載されている方法を使用して単離、精製、及び増幅されて良い。
【0071】
一般的に、DNA/RNAに基づく免疫原性組成物またはワクチンは、抗原自体の単離の代わりに、ウイルス抗原の遺伝子を使用する。核酸に基づく組成物は、成熟の最終工程では不可能であるタンパク質を生ずるであろうHIVのH因子結合部位についての遺伝配列を使用して良く、前記工程は全ウイルス粒子への挿入の際または挿入の後にのみ生ずる。この実施態様は完全なHIVビリオンを生ぜずに、十分に成熟したH因子結合部位を実現するであろう。しかしながら、宿主細胞酵素はグリコシル化し、タンパク質の三次元構造を変性し、その態様はHIV感染患者でタンパク質変性が生じるのと同様である。従って、一つの実施態様では、H因子結合部位またはその免疫原性断片は、H因子結合部位配列をコードするゲノム部分の群から選択することによって選択されて良い。好ましくはHIVの株は、感染であれ曝露の可能性であれ、最高の関心を有する株のものにマッチするであろう
更に、以下に記載されている様に、mRNAに基づく免疫原性組成物及びワクチンは、裸のDNA/RNAまたはタンパク質をコードするrDNA配列の使用に対する代替的な概念であって良い。メッセンジャーRNA(mRNA)は、その2つ(DNA及びタンパク質)の間の手段であり、細胞にトランスフェクトするために使用されることができ、問題のウイルスタンパク質を生産するために宿主細胞内で翻訳を遂げる。
【0072】
C2.1.DNA及びRNAの単離
核酸の入手は、(1)処理に好ましい核酸を露出するための細胞の溶解(2)他の細胞構成成分から核酸の分離(3)精製した形態における核酸の回収、という3つの基本的な工程を必要とする(Nicholls, Desmond, An Introduction to Genetic Engineering, Ch. 3 (2d ed. 2002))。「精製」は、核酸が、治療上の使用が可能となるように他の細胞サブユニットまたは汚染物質を実質的に含んでいない事を単に意味する。
【0073】
多くの方法が、核酸を回収するために使用されて良い。多くは、数工程のみを必要とするかなり単純なものである。幾つかの異なる工程を含む更に複雑な精製方法は、当業界で標準的なものである。市販されているキットは、容易に幅広いソースから核酸を精製する事ができる。
【0074】
いずれの単離手順においても第1の工程は、出発物質の破壊である。細胞壁を開くために使用される方法は、可能な限り穏やかであるべきであり、好ましくは、細胞壁物質の酵素性の分解及び細胞膜の界面活性剤による溶解を利用する。細胞破壊のより強力な方法が必要な際は、大きなDNA分子を切断する危険があり、この事が後の処理の間の代表的な組換え分子の生産を妨害しうる。
【0075】
細胞の破壊後、細胞のタンパク質は除去される。フェノールまたはフェノール/クロロホルム混合物は、抽出方法において通常使用される。相を分離するための遠心分離の際に、タンパク質分子は、フェノール相に分けられ、中間相に集積する。それらの固有の親水性によって、核酸は、殆どが上の水相に留まっており、イソプロパノールまたはエタノールを使用して溶液から沈殿させて良い。
【0076】
DNAの調製が必要な際は、酵素リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)が調製物におけるRNAの消化に使用されうる。cDNA合成のためにmRNAが必要な際は、真核生物のmRNAのポリ(A)テールに結合するオリゴ(dT)-セルロースを使用して、更なる精製が実施されうる。この事は、mRNAの実質的な濃縮を提供し、殆どの汚染DNA、rRNA、及びtRNAを除去する事が可能である。
【0077】
勾配遠心分離は、DNA、特にプラスミド(pDNA)を単離するために頻繁に使用される。DNAは、塩化(Cl)セシウム(Cs)溶液に溶解され、超遠心器において高い速度で回転される。経時的に(ある場合では48時間まで)濃度勾配が形成される。pDNAは、遠心管において1つの位置に容易に確認できるバンドまたは線を形成する。このバンドは、細胞の汚染物を含まず、移されて良い。pDNAの純粋な生成物を提供するために、透析を使用して、CsClが除去される。サイズ排除クロマトグラフィーは、超遠心器の代替物として使用されうる。しかしながら、多くのプラスミドDNAは市販されている(Nicholls, 2002)。
【0078】
好ましいDNA配列の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって達成されうる(Nicholls, 2002)。簡単、正確、及び高い特異性は、伝統的なクローニング方法体系に置き換わっているPCRを特徴付ける。PCRの過程では、DNA二本鎖は、加熱され、変性して、二重らせんを解き、DNA鎖を分離する。各一本鎖は、DNAポリメラーゼによって複製される。前記過程は、多数回繰り返され、複製物の数における指数関数的増加を引き起こす。
【0079】
C.2.2組換え技術
組換えDNAの生産において使用される方法は、理論的には容易であり、当該技術分野において既知である。HIVマトリックスタンパク質の遺伝子は、Escherichia coliの様な担体のDNAに処理されて良い。推奨される担体のリストは図8に示す。図9に示される様に、バクテリア担体は、プラスミド、染色体への挿入、またはその組み合わせによってrDNAを含んで良い。図9に示される様に、ウイルス担体は、染色体への挿入、ウイルス外被へのタンパク質の挿入、または両者の組み合わせによって、組か恵方のために使用されて良い。担体が再生産する際に、免疫原が宿主の染色体に挿入されると、免疫原が伝播される。プラスミドDNAは、複製していない細胞内で複製を遂げる事ができる。制限酵素を使用する遺伝子の切断または単離は、本明細書で記載されている様なものであり、既知でもある。
【0080】
rDNAの調製
電気泳動は、DNAフラグメントの分離、同定、及び精製を可能にする。マトリックスの空隙率が、達成される分離度を決定する。アガロース及びポリアクリルアミドという二つのゲルタイプが、当該技術分野で一般的に使用されている。海草から抽出されるアガロースは、乾燥粉末として市販されており、適当な濃度で緩衝液中において溶解する。冷やすと、アガロースは、固化またはゲル化する。ポリアクリルアミドゲルは、その細孔のサイズがアガロースよりも小さいため、小さい核酸分子を分離するために使用される。ポリアクリルアミドは、1つのヌクレオチドのみにより長さが異なるDNA分子を分離する事ができる。電気泳動は、ゲル中に核酸サンプルを置いて、その全体に電位を加えることよって実施されて良い。DNAは、負電荷のリン酸基を含むため、正電極に向かって移動するであろう。通常ブロモフェノールブルー(充填の前にサンプルに加えられる)であるマーカー色素がゲルの端に届く際に、電位が除去される。ゲル中の核酸は、挿入色素臭化エチジウムを使用する染色によって可視化され、UV光下で試験されて良い(Nicholls, 2002)。100,000塩基対ほどのものを含む大きいDNAフラグメントは、パルスゲル電気泳動として知られる他の過程によって分離されうる。
【0081】
パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)及び単純なゲル電気泳動は、DNAフラグメントのサイズに基づく分離を可能にする。より小さいフラグメントは、より速く移動する。分離のための移動の全体の速度及びサイズの最適な範囲は、ゲルの化学的性質及び架橋の度合いによって決定される。高度に架橋されたゲルは、小さいDNAフラグメントの分離に最適である。前記の色素の臭化エチジウムは、DNAと結合すると明るい蛍光性の付加化合物を形成する。少量の分離されたDNAフラグメントは、ゲル上で単離されうる。この色素は、DNA塩基の間に結合し(挿入)、紫外線光に照射されるとオレンジに蛍光発光する(Nicholl, 2002)。特定のDNAフラグメントの同定は、相補的な配列を含むプローブによって達成されうる。
【0082】
電気泳動の全ての方法は、中性pHにおける核酸(RNA及びDNA、一本鎖及び二本鎖)のポリアニオン性の特徴に依存する。つまり、核酸は、リン酸基に多価の負電荷を有する。この事は、電場に置いた際に、分子が正電極に向かって移動するであろう事を意味する。負電荷は、DNA分子に沿って均等に配分されるので、電荷/質量の比は一定であり、そのため、移動度はフラグメントの長さに依存する。前記技術は、サイズによって核酸分子を分離するゲルマトリックス上で好ましく実行される(Nicholls, 2002)。
【0083】
制限酵素またはエンドヌクレアーゼは、バクテリアによる同族及び異種起源のDNA間の区別を可能にする。これらの酵素は、制限酵素認識部位として知られている特異的な部位でDNAを加水分解及び切断する。この配列認識の特異性は、DNAワクチンの基礎であるDNAフラグメント調製の正確な選択性を可能にする。制限酵素系を有するバクテリアは、修飾することによって自身のDNAにおける制限酵素認識部位を隠す。切断部位またはその付近のアデニンまたはシトシン残基に対するメチル基の付加が、自身の核酸を保護する(Brooks, Geo., Medical Microbiology 102 (23rd ed. 2004))。
【0084】
バクテリアの制限修飾系は、2つの幅広いクラスに分類される。タイプ1系では、制限及び修飾活性が、単一の複数のサブユニットからなるタンパク質に組み合わされている。タイプ2系は、別々のエンドヌクレアーゼ及びメチラーゼから成る(Brooks, 2004)。
【0085】
標準的な研究室の手段となっている制限エンドヌクレアーゼとメスの間の類似性は、明らかである。制限エンドヌクレアーゼは、その酵素が単離された名前の付いた生物の3または4文字の省略形によって通常名付けられる(Brooks, 2004)。総称名の初めの文字を含み、種名の初めの二文字である名称の初めの部分を提供するために、前記酵素が形成される生物の総称名及び種名が、使用される。したがって、Escherichia coliの株由来の酵素は、Ecoと名付けられ、Bacillus amyloliquefaciems由来のものはBamと名付けられる(Nichollls, 2002)。
【0086】
制限エンドヌクレアーゼは、通常、鏡像様式で両DNA鎖のホスホジエステル結合を切断する。制限酵素は、同じDNA配列を認識して切断し、特定の配列でのみ切断する。制限酵素によって認識される多くのDNA配列は、回文構造である。つまり、両DNA鎖は、5'から3'方向に読む際に対称軸の両側に逆方向に向かって同じ塩基配列を有する(自己相補性)。これらの酵素によって作製される切断は、通常「突出」である(すなわち、生産物は、1つの鎖が他方から張り出す末端を有する一本鎖である。)しかしながら、生産物が、二本鎖末端を有する平滑末端である事がある。異なる特異性を有する500を超える制限酵素が、単離され、特徴付けられている。その殆どが、容易に研究室のツールとして入手可能である。
【0087】
DNAの制限断片は、遺伝子の塩基配列における多型を同定するために使用されて良い。しかしながら、それらは、in vitroで再結合されている異なるソース由来のDNA分子から成るキメラDNAとも呼ばれる組換えDNAを合成するためにも使用されうる。2つの関連の無いDNAフラグメントの突出末端が、相補的な突出末端を有する場合には、互いに接合される可能性がある。相補的な末端は、制限酵素が回文構造を有する鎖を認識する場合に、同じ制限酵素を使用して関連の無いDNA鎖を切断する事によって得られる可能性がある。フラグメントの突出末端が互いに塩基対を形成した後に、DNAリガーゼの働きによって共有結合されうる(Smith, Coleen, Basic Medical Biochemistry: A Clinical Approach, Ch. 17 (2d ed. 1996) )。DNAリガーゼは、ランダムまたはDNA複製若しくは再結合の後に生じる可能性のある壊れたホスホジエステル結合を修復する細胞性酵素である(Nicholls, 2002)。最も良く使用されるDNAリガーゼは、バクテリオファージT4の感染したE. coli細胞から精製されて良いT4 DNAリガーゼである。突出末端によって共に保持されているフラグメントにおける隙間を塞ぐ際に、前記酵素は、最も効率的であるが、適当な条件下で平滑末端DNA分子も接合するであろう。DNAリガーゼは、5'リン酸基と3'ヒドロキシル(OH)基の間にホスホジエステル結合を生産する。前記酵素は、37℃で最も効率的であるが、より低い温度で使用されて良い。しかしながら、一本鎖末端の熱変性が、より高い温度(37℃)で生じる。そのため、この酵素の過程は、ある程度遅くはなるが、より高い精製度を達成するために、より低い温度で達成されて良い(Nicholls, 2002)。
【0088】
DNA配列の個性のために制限酵素によって生産されるDNAフラグメントの長さは、激しく異なる。殆どの制限酵素は、ある程度ランダムに生じる回文構造を有する配列を認識する。更に、DNAフラグメントの平均長が、その大部分は、制限酵素によって認識される特異的な塩基対の数によって決定される。15塩基配列まで認識する制限酵素が、特徴付けられているが、その殆どは4つ、6つ、または8つの塩基配列を認識する。4塩基の認識は、250塩基対の平均長を有するフラグメントを生産するため、一般的には遺伝子フラグメントの分析または操作に有用である。制限酵素に認識される塩基対の数が増大するにつれて、ヌクレオチド配列の平均長は対数的に増大する。例えば、6塩基を認識する制限酵素は、約4,000塩基対の平均サイズを有するフラグメントを生産する。8塩基を認識する制限酵素は、64,000塩基対の典型的なサイズを有するフラグメントを生産するため、大きな遺伝子領域の分析に有用である(Brooks, 2004)。
【0089】
DNAワクチンの生産において、バクテリア及び酵母の様な真核細胞由来のプラスミドDNAは、頻繁に供与媒体として使用される。プラスミドは、宿主細胞の核から物理的に分離される遺伝粒子である。原核細胞の核は、エンベロープを有さない。プラスミドは、独立して機能及び複製する事ができる。つまり、プラスミドは細胞の核から独立している。プラスミドは、通常宿主細胞に対して幾つかの生存または増殖の利点を与えるが、細胞の基本的な機能に対して必須ではない。例えば、耐性プラスミドは、抗生剤または抗菌剤耐性に関与する遺伝子を保有する。プラスミドは、DNAの小さい環であるが、三次元構造は、頻繁に数字の8の構造または複雑な構造の形態をとる。それにも関わらず、小さいサイズのプラスミドは、それらに対するin vitroにおける遺伝子操作を受け入れさせる。更に、遺伝子操作後に、それらの小さいサイズが他の細胞への進入を可能にする。そのため、プラスミドは、遺伝子工学において頻繁に使用され、殆どのDNAワクチンの基礎となる(Brooks, 2004)。
【0090】
多くの制限酵素は、非対称に切断し、突出(付着)末端を有するDNAフラグメントを生産するため、DNAのハイブリダイゼーションが可能である。このDNAは、遺伝子工学による組換えプラスミドを形成するためにプラスミド受容体と共に供与体として使用されうる。同じ制限酵素を使用するプラスミドの切断は、互いに一致する突出末端を有する線状のフラグメントを生産する。プラスミドの2つの末端が再びアニーリングすることを防ぐために、これらの末端から遊離のリン酸基の酵素処理による除去が実施される。この事が、元の環状プラスミドが構造的に無能であり、機能できない事を保障する。遊離のリン酸基を含む他のソース由来の他のDNAフラグメントの存在下におけるライゲーションは、共有結合的な環状DNAにおけるインサートとしてDNAフラグメントを含む組換えプラスミドまたはキメラプラスミドを生産する。プラスミドは、宿主バクテリアにおいて複製するためには環状形態でなければならない(Brooks, 2004)。
【0091】
本発明のサブユニットのアミノ酸配列である、H因子結合部位が推定されている。各アミノ酸は、別々のコドンによってコードされる。1つのコドンは、タンパク質鎖に組み込まれる特異的なアミノ酸をコードする、または終結シグナルとして働くであろう遺伝情報を提供するDNAまたはRNA鎖における3つの連続したヌクレオチドのセットである。そのため、本発明のサブユニットの知識が、H因子結合部位DNA及び/またはRNAのヌクレオチド配列の推定を可能にする。DNA配列の伸長の起点は、化学的なオリゴヌクレオチド合成のための既知のヌクレオチド合成手段によって合成されうるDNAプライマーによって決定される。その様な合成手段は、75以上のオリゴヌクレオチドを含むDNA鎖を生産する事ができる(Brooks, 2004)。
【0092】
化学的に合成されたオリゴヌクレオチドは、プライマーの間のDNAの増幅及び塩基配列決定を可能にする方法であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のためのプライマーとして働く事ができる。したがって、多くの場合、DNAは、塩基配列を決定するため、または遺伝子工学に使用できる様にするためにクローンが作製される必要が無い。
【0093】
DNAの塩基配列決定は、異なるヌクレオチド結合の相対的な化学的性質に依存するマクサム・ギルバート法、及び配列中にジデオキシヌクレオチドを含ませることによってDNA配列の伸長を妨害するサンガー法(ジデオキシターミネーション法)を使用して実施されうる。更に、ショットガン法として知られる方法は、ウイルスの全ゲノムの塩基配列決定及び分析を可能にする。この方法では、DNAは、ランダムフラグメントライブラリーを作製するためにランダムにフラグメント化される。これらの不規則なフラグメントは、自動DNAシークエンサーによって塩基配列決定され、当該技術分野において入手可能なコンピューターソフトを使用して正しい順序に組み立て直されて良い(Brooks, 2004)。
【0094】
ワクチン接種のために設計されたプラスミドDNAの必須の構成成分は、開始シグナル(プロモーター-エンハンサー)及び停止シグナル(ポリアデニル化シグナル/転写停止配列)を含む。前記開始及び停止シグナルは、ウイルス、バクテリア、または哺乳動物の各種のソースから選択されうる。抗生物質耐性または特異的な酵素活性の様なプラスミドの活性のマーカーが、含まれる可能性があり、完全に機能的なプラスミドが開発されている事を示すには有利である可能性がある。イントロンを含む配列を含む事も有利であり、イントロンは最終的にタンパク質に翻訳されない配列を含むが、多くのコンストラクトのトランスフェクトされた細胞株内における発現を大幅に改善する事が示されている。主にDNAワクチンに使用されているプロモーター/エンハンサーは、CMV前初期プロモーター(pCMVIE)エンハンサー及びラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRである。数百のプラスミドが、異なる製造業者から市販されている。基本的なプラスミドワクチンベクターは、V1Jとして知られている。このベクターは、pCMVIE、CMV由来のイントロンA、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化/転写停止配列、及びアンピシリン耐性をコードする遺伝子(ampr)を含む。lacオペロン及びマルチクローニングサイトが欠失されているpUCプラスミドDNAの配列は、この組換えプラスミドの構造の基本的なコンストラクトとして働く。2つの別々の制限酵素認識部位は、供与DNAの挿入のために位置づけられている。V1Jは、哺乳動物細胞では複製せず、宿主ゲノムDNAへのプラスミドの挿入を促進する事が知られている配列のいずれも含まず、この事が幅広い安全限界を保障している。更に、V1Jは、E. coliにおける増殖によって大量に生産されうる。これらの性質は、細胞が形質転換する挿入が起こる可能性を最小にする事によって、組換えDNAの過程の安全の保障に役立つ。
【0095】
動物におけるワクチン接種の最高の結果は、プラスミドの通常の塩水溶液を使用する事によって得られている。ブピバカイン及びスクロースの溶液を含む他の媒体が使用されているが、動物においてこれらの方法体系に伴う免疫原性は促進されていない(Kaufman, Stefan, Concepts in Vaccine Development, ch2 3. 7. 3, (1996) )。プラスミド塩製剤の筋肉内注射に続き、小さい割合の筋管がDNAを取り込み、発現させる。しかしながら、この事が、有意な免疫反応を得るために十分であった(Kaufman, Stefan, Concepts in Vaccine Development, Ch. 3. 7 (1996) )。
【0096】
液性及び細胞障害性T細胞反応の両者は、裸のDNAワクチンに伴って生じる事が既知である。測定可能な抗原特異的血清抗体反応の非存在下においてさえ、T細胞の強い増殖は、1μgに至るまで少ない動物モデルにおける低いDNA投与量で認められた。この事は、DNAワクチンによってT細胞反応を誘導するために抗体産生よりも少ない抗原が必要とされる可能性がある事を示す。そのため、HIV病に対する免疫の最も可能性のある関連は、HIV病に対して向けられた強い細胞障害性T細胞反応であろうために、HIVワクチン技術に伴うより少ない事(抗原)は、より重要なことを意味する。HIV病に対する強い液性反応の開発は、より悪い予後と関連している。低い投与量のDNAワクチンは、タイプ1ヘルパーT細胞(TH1)の生産を刺激する。TH1細胞は、CD8+活性を刺激する事により細胞性免疫反応を促進する事が示されているサイトカインII-2及びガンマ-インターフェロンを産生する(Kaufmann, 1996)。
【0097】
HIV感染のためには、強いTH1様の反応が、高いCD4細胞数及び低いウイルスの力価の維持、並びに2次的な日和見感染の防止において重要となっている(Kaufmann, 1996)。
【0098】
不活化ウイルス、組換えタンパク質、またはペプチドの様な抗原を投与する事よりも宿主において抗原を発現する事の利点は、以下を含む、(1)宿主細胞における固有の不活化の過程(例えば化学的架橋)による抗原性の潜在的な損失を避ける、(2) 宿主細胞によってコードされる立体配座並びに糖及び脂質結合を含む翻訳後修飾を有するタンパク質の合成、(3)細胞障害性Tリンパ球(CTL)反応の誘導を引き起こす細胞内抗原処理及びMHCクラスI分子による提示、(4)MHC抗原決定基の選択を可能にする(Kiyono, Hiroshi, Mucosal Vaccines. Ch. 8 (1996))。
【0099】
IM DNAワクチン接種後の抗原提示は、強い細胞障害性T細胞反応を生じさせる。IM DNAワクチンの使用によりCTL反応を誘導するための3つのモデルが提唱されている。
1.樹状細胞、マクロファージ、及びランゲルハンス細胞を含む抗原提示細胞によるDNAの取り込み及び抗原の発現。
2.抗原提示細胞として働く、またはその役割を果たすトランスフェクトされたミオサイトによる抗原の提示。
3.トランスフェクトされたミオサイトから次に適当なT細胞に抗原を提示する抗原提示細胞への抗原の移動(Kiyono,1996)。
【0100】
DNAワクチンは、複数の動物種における各種の抗原に対する特異的な免疫反応、抗体、CD8細胞、及びCD4細胞を誘導するために使用されており、以下を含むが、それらに限らない。
1.マウスにおけるB型肝炎表面抗原(Davis, et. al., 1993,1994)。
2.マウスにおける単純ヘルペスウイルス1糖タンパク質B(Manickan et. al., 1995)
3.ウシにおけるウシヘルペスウイルス1糖タンパク質IV(Cox et. al., 1993)
4.マウスにおける狂犬病ウイルス糖タンパク質(Xiang, et. al., 1994,. 1995)
5.マウスにおけるマラリアスポロゾイト周囲タンパク質(Sedegah, et. al., 1994; Hoffman et. al., 1994)
6.マウスにおけるリーシュマニアgp63(Xu and Liew 1995)
7.マウスにおけるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)NP(Pedroz Martins, et al. 1995; Yokoyama et. al., 1995)
8.マウスにおける癌胎児性抗原(Conry, et. al., 1994)
9.ラットにおけるMHCクラスI抗原(Geissler, et. al., 1994)
10.ウサギにおけるワタオウサギパピロマウイルス(CRPV)L1(Donnelly et. al., 1996)
11.マウスにおけるM結核抗原85複合体タンパク質(Huygen et. al., 1996) (Kaufmann, 1996)
【0101】
より具体的には、CTL反応を誘導するDNAワクチンの能力は、数回示されてもいる。インフルエンザNP(核タンパク質)での使用が初めに示された。NPは、ウイルスの保存された内部のタンパク質であり、交差反応するCTLの標的である。前記NPのDNAは、マウスにおいてCTL反応を誘導し、ワクチン接種の潜在能力を示す寿命の要素を示した。興味深いことに、インフルエンザNPまたはマトリックスタンパク質をコードするDNAによって誘導される細胞性免疫は、鼻汁におけるウイルスの排出の減少によって測定される様なフェレットの保護にも役割を果たした。DNAワクチンによって誘導されるCTL反応は、以下にも同様に示されている。
1.狂犬病ウイルス糖タンパク質(Xiang, et al., 1994)
2.マラリアスポロゾイト周囲タンパク質(Sedegah, et al., 1994)
3.リンパ性脈絡髄膜炎ウイルスNP(Pedroz Martins, et al., 1995; Yokoyama, et. al., 1995; Zarozinski et al., 1995)
4.HIVエンベロープタンパク質(Wang, et al., 1994; Shiver et al., 1995)
5.ヒト第IX因子(Katsumi, et al., 1994)
6.MHCクラスI(Geissler, et al., 1994; Plautz, et al., 1994; Hui et al., 1994)
【0102】
免疫処置後1から2年間のCTL反応の検出が、上記のモデルの幾つかで示されている。DNAワクチンの投与は、1mcgで開始するべきである。CTL試験が実施されるべきであり、十分なCTL反応が記録される最も低い投与量が好ましい。
【0103】
以下に議論される様に、IM DNAワクチンと共に製剤されたカチオン性脂質が、低レベルの遺伝子発現を実際に生じさせた。しかしながら、DNAの取り込みを促進するカチオン性脂質の使用は、粘膜投与系に関して記載されている。カチオン性脂質は、非特異的な機構またはまだ特徴付けられていない特異的な細胞膜輸送機構を介して粘膜表面のDNAの取り込みを促進する。DNAの粘膜投与は、HIV複製の好ましい部位である胃腸及び尿生殖器管内膜の多くの細胞タイプ、並びにパイエル板を含む各基底膜下の細胞に潜在的にトランスフェクトする事ができる。粘膜表面における細胞による取り込みの潜在的な促進に加え、カチオン性脂質は、DNAの分解からの保護も行う。in vitroの研究は、DNA/カチオン性脂質が複合体でないDNAよりも長い半減期を有する事を示している(Puyal, et al., 1995)。そのため、粘膜のDNAワクチンのための好ましい実施態様は、カチオン性脂質を含むであろう。
【0104】
DNAワクチンの非経口の投与は、強い全身の液性及び細胞性免疫反応を誘導するが(用量依存的に)、有意な粘膜免疫反応の産生を生じさせない。そのため、特定の場合において、粘膜及び全身の免疫反応の両者を誘導するであろうワクチンを設計する事が望ましい可能性がある(Kiyono, 1996)。この事は、異なる経路(非経口及び粘膜)で投与されるDNAワクチンによって達成されうる。この方法は、非経口の初回免疫に続いて粘膜刺激を使用(Keren, et al., Infect. Immun., 56: 910-915 (1988) ) 及び逆に使用して (Forrest, et al., Infect. Immun. 60: 465-471 (1992) ) 幾つかの系において試験されている。幾つかのベクターを使用して、DNA/カチオン性脂質の粘膜への投与は、局所的及び全身の免疫反応の両者を生じさせた。組換えBCGワクチンは、異種抗原に対する局所的なIgA及び血清IgG抗体を誘導し (Langerman, et al., 1994)、経口で投与された組換えサルモネラベクターは、細胞性免疫を誘導した(Aggarwal, et al., 1990)。
【0105】
DNAワクチン技術を利用する好ましい実施態様は、非経口的(好ましくは筋肉内)に投与される裸のDNAワクチンと粘膜に投与されるカチオン性脂質/DNAワクチンの組み合わせであろう。
【0106】
そのため、要約すると、組換えバクテリアDNAワクチンを生産するためには、以下の工程であろう。
1.市販されている供給源から適切なプラスミドベクターの選択
2.目的のHIV DNAの単離
3.プラスミドDNA及びHIV DNAの制限酵素による切断/修飾の達成
4.HIVから特定の遺伝子の単離
5.選択されたHIV DNA遺伝子のPCRによる増幅
6.プラスミドDNAから遊離のリン酸(PO4)基の酵素による除去
7.E. coliの様なバクテリア細胞にプラスミドDNAを形質転換
8.DNA鎖を共に封じるためのリガーゼの投与
【0107】
形質転換の過程を達成するために、受容細胞は、コンピテントにされる必要がある。コンピテンスは、外来性のRNAまたはDNAを吸収する細胞の能力に関する。これを達成する工程は、
1.塩化カルシウムの氷冷溶液に受容細胞を浸透させる(この事が、まだ完全に理解されていない方法でコンピテンシーを誘導する)
2.細胞とプラスミドDNAを混合し、20から30分間氷上でインキュベート
DNAが細胞に進入する事を可能にするためにヒートショック(42℃で2分)
4.形質転換された細胞をブイヨン中で37℃、60から90分間インキュベート。この事が、プラスミドを確立させて、究極的には、プラスミド核酸の表現型の発現を可能にする。
5.複製に適切な選択培地上にプラスミドベクターを有する細胞をセットする
図7に示される様に、rDNA/RNAは、バクテリアまたはウイルス媒体によって投与されて良い。
【0108】
C2.3組換え担体
C2.3.1バクテリア担体
生弱毒化バクテリアは、DNA/RNAの担体として働いて良い。バクテリアは、キャプシドタンパク質上のH因子結合部位またはそれらの一部をコードする遺伝子を運び、発現する。前記バクテリアは、キャプシドタンパク質DNA/RNAが増幅、精製、及び投与されて良い環境を提供する。バクテリア担体は、当該技術分野で慣例のもの、サルモネラ属、BCG、E. Coli、Streptococcus gordonii、Lactocci/Lactobacilli、コレラ菌、Yersinia enterocholitica、フレクスナー赤痢菌、及びリステリア菌といった典型的なタイプを含んで良い。サルモネラ属、BCG、及びE. coliは好ましい。
【0109】
組換えのためにこれまで探索されたバクテリアの間で、弱毒化サルモネラ種は、最も激しく精査されている。Bacillus Calmette Guerin(BCG)を含む他のバクテリアも研究されている。E. coli、ビブリオ属、エルジニア属、及び赤痢菌属を含む弱毒化腸内病原菌は、組換えワクチン技術の基盤として使用されている。グラム陽性Streptococcus gordonii、Staphylococcus xylosus、及びlactococciまたはlactobacilliを含む共生生物として一般的に解される他の生物は、組換え方法体系において使用されている。最近、リステリア菌が、潜在的な組換えワクチンベクターとして導入されている。これらの生物の多くは、コロニーを作る及び/または粘膜表面に感染する能力に基づいて、これらの表面への投与を可能にする。そのため、消化管関連リンパ系組織(GALT)は、非経口摂取後の血清からの抗体の拡散よりも粘膜への免疫を介して直接的に刺激される。パイエル板を含むGALTは、病気の性的な伝播におけるHIVの感染及び複製の主な部位である。
【0110】
圧倒的多数の注意が、腸内病原菌、特にサルモネラに向けられている。前記バクテリアは、組換えが生じうる前に弱毒化の過程を遂げる。それを実施する際において、バクテリアは無毒になり、腸チフスまたは他のサルモネラ由来の病気を引き起こす事が不可能になる。その様な変異の第一の記載は、1951年にp-アミノ安息香酸(pab)の代謝経路において明らかにされた。その後、細胞の溶解を引き起こすガラクトース-1-ホスフェートの細胞質への蓄積を生じさせるS. typhimurium及びS. typhi(Ty21a株) のgal E変異体が、単離された。S. typhimuriumにおけるHoiseth及びStockerは、芳香族経路において必須な成分である酵素、5-エノールピルビル-シキミ酸-3-ホスフェートシンテターゼをコードする幅広く使用されるサルモネラ栄養要求性変異体であるaro Aを発表した。S.typhimuriumのaro C及びaro D遺伝子を含むこの経路において作製される更なる変異体は、高度に弱毒化された生物を生じる。アデニル酸シクラーゼ及びサイクリックAMPレセプタータンパク質をコードする調節遺伝子cya、crpの変異は、各々非常に成功する事が証明されてもいる。更に、cya及びcrp変異は、ペプチドグリカン合成に必須であるアスパラギン酸ガンマ-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするasdの変異と併用して使用されても良い。更に、phoP(ホスファターゼ)及びompR(外膜タンパク質)の様な他の調節遺伝子の変異は、ワクチンベクター株の弱毒化要素として成功することが証明されている (Hughes, Huw, Bacterial Vectors for Vaccine Delivery, Designer Vaccines Principles for Successful Prophylaxis, Ch. 8 (1998)) 。
【0111】
3つの個別の方法が、サルモネラにおける異種抗原の発現に使用されており、(1)プラスミド、(2)外来性の遺伝子のサルモネラ染色体への挿入、(3)フラゲリン、ナイセリア、IgAプロテアーゼ前駆体、1anB、phoE、ompAを含むサルモネラバクテリアの各種担体タンパク質による細胞表面への異種抗原の輸送と記載されている。代替的な細胞画分を標的とするエピトープの他の担体は、マルトース結合タンパク質(malE)、LTB、破傷風毒素のCフラグメント(tetC)、ガラクトシダーゼ、pagC、及びB型肝炎のコア抗原(HBcAg)との融合を含む(Hughes, 1998)。
【0112】
組換えサルモネラは、動物研究において異種抗原に対する液性及び細胞性反応の両者を誘導する多くのウイルス抗原の発現に成功裏に使用されている。インフルエンザの各種タンパク質が、動物においてサルモネラバクテリアベクターを使用して成功裏に発現されており、それらは、核タンパク質(NP)及びヘマグルチニンタンパク質(HA)のエピトープを含む。サルモネラに成功裏に挿入されている他のウイルスDNA配列は、B型肝炎ウイルス、HIV、及び単純ヘルペスを含む。
【0113】
殆どの研究は、異種抗原のために経口投与系を使用しているが、他のものは、非経口免疫方法を使用している。それら両者は、組換えワクチンと同時またはその後に使用されうる。HIV病の組換えバクテリアワクチンを使用して取り組まれる必要のある他の変形例は、特異的な細胞画分に対する異種抗原の標的を含む。興味深いことに、BCG及びリステリア属は、細胞性反応を誘導するためにより有利な様であるため、HIV病の組換えワクチン技術のための好ましい経路であろう(Hughes, 1998)。
【0114】
弱毒化サルモネラバクテリアの使用は、大腸において最初に複製し、大腸末端の内側の免疫原性の媒体であり、ウイルスが性的に伝播する殆どの場合において最初のHIV複製の部位であるパイエル板において免疫反応が生じる点で有利性を確かに有する。そのため、サルモネラバクテリアは、HIV病に関する組換えワクチン技術の好ましい方法体系を提供するであろう。
【0115】
形質転換及びトランスフェクションの技術は、組換えDNAを細胞内に導入するために利用可能である最も単純な方法を表す。E. coli細胞のクローニングに関して、形質転換は、プラスミドDNAの取り込みを意味し、トランスフェクションは、バクテリオファージDNAの取り込みを意味する。バクテリオファージは、バクテリアに感染するウイルスである。他のウイルスの様に、それらは、RNAまたはDNAのどちらか(両者ではない)を含み、一見単純な繊維状バクテリアウイルスから収縮性の末端を有する比較的複雑な形態へと構造において変化する。宿主バクテリアとのそれらの関係は、非常に特異的である。形質転換は、任意の細胞による任意のDNAの取り込みを記述するためにより一般的な使用もなされる(Nicholls, 2003)。
【0116】
コンピテント細胞の少ない割合のみが、形質転換を遂げられる。したがって、前記過程は、多くの個別の組換え体が必要である、または出発物質が制限される場合のクローニング実験において律速段階になりうる。厳密に実施されると、投入したDNAの1μg当たり109個の形質転換された細胞(形質転換体)が認められうるが、1μg当たり約106から107個の形質転換体の形質転換の頻度が、より現実的である(Nicholls, 2003)。
【0117】
形質転換方法の別法は、物理的方法による細胞へのDNAの導入である。1つの典型的な技術は、マイクロインジェクション、つまり極細針を使用して、DNAを直接核に注入する事である。この技術は、植物及び動物細胞の両者に成功裏に使用されている。前記細胞は、穏やかな吸引によってガラス管に固定され、前記針は、膜に穴を開けるために使用される。前記技術は、機械的なマイクロマニピュレーター及び顕微鏡を必要とし、手動で実施される(Nicholls 2003)。マイクロインジェクションは、HIV病のDNAバクテリア組換えワクチン生産物のための好ましい実施態様を提供する。
【0118】
C.2.3.2ウイルス担体
組換えウイルスワクチンは、宿主が保護されるべき病原菌由来の遺伝子を発現するために操作されて良い。前記ベクターは、外来性の遺伝子を宿主に運ぶための媒体として働き、核酸の転写及び翻訳後に、核酸にコードされるタンパク質を宿主の免疫系に提示する。いずれのワクチンについても、当然、許容性の主な基準は、安全性及び効力である。安全性は、2つの観点から取り組まれて良い。免疫原の安全性は、事前の弱毒化または担体ウイルスに対する宿主の事前のワクチン接種により、良い安全の記録を有するウイルスベクターの使用によって、確実にされうる。第二に、ウイルスは、合理的及び信頼できる方法で安全性を改善するために操作されて良い(Hughes, 1998)。既に免疫を受けている宿主へのウイルスベクターの使用は、免疫原が記憶免疫反応によって急速に破壊されるであろうという不利性を確かに有する。それにも拘らず、幾らかの組換えDNAまたはRNAの転写及び翻訳が生じるであろう。好ましい方法体系は、組換えワクチンのための担体としての弱毒化された無毒のウイルス(担体ウイルスに対する事前の免疫無しで)の使用であろう。
【0119】
したがって、バクテリアまたは酵母の様にウイルスも、組換え技術において使用されて良い。担体として、ウイルスは、容易に細胞に感染し、細胞障害性T細胞免疫反応を刺激する。担体ウイルスは複製できて良いため、全体及び完全な免疫反応が産生される可能性がある。次いで、免疫系の液性及び細胞性の部門の両者が、活性化されるであろう。一般的なウイルス担体は、ポリオウイルス、アデノウイルス株2、4、5、及び7、並びにポックスウイルスを含んで良い。組換え技術において使用されるポックスウイルスの幾つかは、ワクシニア、カナリア痘、ALVAC(カナリア痘由来)、鶏痘、きゅう痘、及び豚痘を含む。組換え技術において使用される他のウイルスベクターは、ヘルペスウイルス(HSV-1、VZV(帯状ヘルペス)、EBV(エプスタインバーウイルス))、アルファウイルス、パラミクソウイルス、インフルエンザ、及びD型肝炎を含む。これらの内、好ましい実施態様は、そのウイルス構造及び生活環の知識が大量に存在しているため、ポリオウイルスに基づく。ポリオウイルスに対する事前の免疫は、免疫反応の制限において考慮すべき事柄であろう。HSV-1の様な慢性のウイルス感染は、宿主免疫系が細胞障害性活性を刺激する少量の背景に存在する免疫原を受けるであろうために魅力的な別法を提供する。
【0120】
1つの微生物から他の微生物のゲノムへの遺伝子の導入は、有毒な株を生じる可能性がある。これを避けるために、前記担体ウイルスは、治療における組成物の使用のいずれもが実際に無毒であることを確実にするために、改変されるべきである。この事は、開発される無数のウイルスモザイクの組み合わせを可能にするだろう。ワクチンとして使用される、またはウイルスゲノムに加えられるであろう際に、導入される遺伝子は、担体ウイルスの複製には必要ない遺伝子と置き換わって良い(Wagner, 1999)。ウイルス感染のための免疫原性組成物またはワクチンの生産及び使用において慣用されている組換え技術の方法は、当業者に既知であり、容易に利用可能である(Porter, 1995)(Stahl, 1997)。
【0121】
組換えウイルスワクチンベクターに使用されるウイルスは、ポックスウイルス(鶏痘、カナリア痘、きゅう痘、粘液腫、及び豚痘を含むワクシニアウイルス)、アデノウイルス(特に塩基配列決定されているタイプ2及び5、並びにアデノウイルスタイプ4及び7は、副作用の証明がされずに商業的にではなく米国軍隊のために広く使用されている)、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、及びインフルエンザウイルスである。HIV遺伝子は、ワクシニアウイルスベクターに接合されており、動物において幾つかの制限される成功を伴っている。アデノウイルスを使用して、遺伝子は、必須ではないE3領域(4kb以下)また必須のE1領域に挿入されうる。興味深いことに、E3領域から単純ヘルペスウイルス(HSV)の糖タンパク質Bを発現する組換えアデノウイルスのコンストラクションが、McDermott et alによって実施されている。この組換えウイルスを使用して摂取されたマウスは、in vitroでHSVを中和したgBに特異的な抗体を生産した。更に、マウスは、アデノウイルス組換え体を使用した一回の摂取の後に致死性のHSVの攻撃から保護された。Jacobs, et al.は、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス由来の非構造遺伝子であるNS1を発現するためにE1領域を利用している。彼らは、この複製欠損系を使用したマウスのモデルにおける致死性の攻撃に対する保護を明らかにしている。E1欠損アデノウイルスは、複製が欠損した性質よって導入される特別な安全因子を有する。前記E3遺伝子は、ウイルスに対する免疫保護を提供する。そのため、E3遺伝子を欠く組換えアデノウイルスベクターは、弱毒化されて無毒であり、組換えウイルス技術と共にアデノウイルスベクターを使用する好ましい実施態様を表す。E3領域にコードされているgp19タンパク質は、感染細胞において主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI抗原の発現を減少させる。前記gp19タンパク質は、転写、翻訳、小胞体若しくはゴルジ体におけるタンパク質修飾、またはそれらの組み合わせのレベルで働く可能性がある。この遺伝子が欠損しているアデノウイルスベクターは、より強いCD8細胞障害性反応を誘導するより効果的な方法で、外来性の遺伝子にコードされるタンパク質を免疫系に提示できる可能性がある。更に、B型肝炎表面抗原は、E3の欠損の存在及び非存在下の両者において、アデノウイルス株4及び7から発現されており、動物モデルにおいて、良い抗体反応が、E3配列が欠損しているこれらのベクターにおいて認められている。機能的なE3配列を含むベクターは、弱いまたはごくわずかな反応のみを生産した(Hughes, 1998)。
【0122】
ヘルペスウイルスは、大きいゲノムを有しており、幾つかの遺伝子は、in vitroでは必須でなく、in vivoにおいてより重要であるものとして同定されている。必須ではない遺伝子の欠損は、幾つかの部位での組換えを可能にし、ビリオン当たり一回より多い組換えを可能にするであろう。ヘルペスウイルスワクチンベクターの制限された数の例が、天然の宿主で試験されており、幾らかの成功を伴っている。例えば、Dan Ziji, et al.は、偽狂犬病ウイルス並びに豚コレラウイルスに対するブタの保護を報告している。
【0123】
インフルエンザは、組換えワクチン技術における潜在的なウイルスワクチンベクターのリストに最近加えられている。難感染性の宿主におけるインフルエンザは、比較的無毒である。インフルエンザの核酸の操作は、逆遺伝学を使用して達成されうる。Castrucci, et al.は、シアル酸を切断するインフルエンザノイラミニダーゼ酵素の主成分のLCMV核タンパク質由来のCTLエピトープを発現する組換えインフルエンザウイルスを構築している。この組換えワクチンの単回投与が、有毒性の無毒化していないLCMVによる将来的な攻撃に対してマウスを保護した。多くのインフルエンザ株が、特徴付けられており、それらの多くは、発現するヘマグルチニン及びノイラミニダーゼタンパク質においてのみ異なる。そのため、繰り返しの摂取の効果を制限するであろうウイルスベクター自身に対する免疫を開発するという問題が無く、異なるインフルエンザ株は、特異的なウイルスタンパク質に対する宿主のワクチン接種に続いて使用されうる。低温に適応した弱毒化インフルエンザウイルスは、ワクチンとして数年間大規模に使用されている。これらのワクチンの蓄えが、組換えウイルスワクチンのため、特に複数回の摂取が必要である際に使用されるであろう。
【0124】
Rodriguez, et al.は、組換えインフルエンザベクターの効力を試験した。げっ歯類マラリア寄生体であるPlasmodium yoeliiのスポロゾイド周囲タンパク質のCD8+ T細胞エピトープは、同じビリオンにおけるヘマグルチニン及びノイラミニダーゼの2つの異なるインフルエンザタンパク質において発現された。更に、同じエピトープのただ1つのコピーを発現するワクシニアウイルス組換え体が、構築された。その両者のベクター系は、エピトープ特異的T細胞のかなりのレベルを誘導する事が見られた。殆どの有効な方法は、インフルエンザ組換え体を使用する初回投与に続いてワクシニア組換え体を使用する追加投与から成る(Hughes, 1998)。
【0125】
2つの別々の組換えウイルスベクターが、HIV病に関する最適な免疫反応のために続いてまたは同時に使用されて良い。
【0126】
ポリオ(Sabin)に対する生ワクチンは、そのウイルス自身の弱毒化株である。これらのワクチンは非常に安全及び効果的であることが証明されているが(1961年に初めて導入された)が、有毒性への不定期の復帰変異が方法体系を複雑にした。米国小児科学会は、活発に複製する能力が無い古いソールクワクチン(1955年に導入された)を支持した。しかしながら、その安全性にも拘らず、ソールクワクチンは、より少ない適当な免疫反応を生産する。ポリオウイルスビリオンの厳格な区画化のために、少ないアミノ酸をコードする小さいDNA配列のみがウイルスゲノムに切断されうる。
【0127】
ポリオウイルスは、その糞便/経口伝播経路のためにエンテロウイルスとして分類される。ポリオは、HIV病のようにプラス鎖RNAウイルスである。2つの間で区別するために、両者共にプラス鎖RNAであるが、レトロウイルスは、ビリオン関連酵素(逆転写酵素)によってDNAに転換されるRNAを必要とする。しかしながら、ポリオは、逆転写酵素を必要としない。ポリオRNAは、細胞のメッセンジャーRNAの様に機能する。それらのウイルスの両者は、二十面体構造に覆われている。ポリオは、エンベロープを有さないが、HIVはエンベロープを有するウイルスである。
【0128】
ポリオ特異的細胞性免疫反応は、最近研究されている。ポリオウイルスに対する細胞性反応の産生は、経口的にワクチン接種されたボランティアにおいて示されている(Simmons, et al., 1993; Graham et al., 1993)。この事は、前記のような理由のため、重要であり、T細胞免疫は、HIV病に対する免疫保護と最も関連するであろう(Kiyono, 1996)。
【0129】
興味深いことに、ポリオウイルスは、全身及び粘膜の抗体の両者を刺激するために経口だけでなく経鼻的にも投与されうる。ポリオウイルスに基づく組換えワクチンベクターの開発は、ウイルスについての莫大な知識が入手可能であるため取り組まれている。完全なウイルスRNAゲノムは、塩基配列決定されており、ウイルスタンパク質が同定されている(Kitamura, 1981)(Racaniello, 1981)。ウイルスゲノムの感染性cDNAが産生されており、その事が、ウイルスを遺伝学的に操作することを可能にしている(Racaniello, 1981)(Semler, 1984)。完全なウイルスの三次元構造は既知であり、主な抗原性エピトープは、分子レベルで同定されている(Hogle, 1985)。ポリオウイルスが細胞への進入を得るために利用するレセプター(PVR)は、クローンが作製され、核酸配列が決定されている(Mendelsohn, 1989; Ren, 1992)。更に、発現されたポリオウイルスレセプターを有するトランスジェニックマウスが、繁殖されており、そのため、そのマウスにはポリオウイルス感染に対する感受性が存在する。そのため、全ての病気、特にHIV病に関する組換えポリオウイルスベクターの研究のための動物モデルが存在する。
【0130】
ポリオウイルスの入手可能な膨大な情報が、そのウイルスを組換えポリオウイルス/HIVベクターの開発のための理想的な標的にする。ポリオウイルスワクチンが、粘膜部位に投与されうるため、及び扁桃腺組織への初めの投与後にポリオがパイエル板において複製するために、組換えポリオワクチンが、HIV病の組換えウイルスワクチンのための好ましい実施態様である。
【0131】
感染性ポリオウイルスcDNAの有用性は、RNAの複製能を損なうこと無く欠失されうるポリオウイルスゲノムの領域に対する更なる研究を促進している(Racaniello, 1981)(Semler, 1984)。これらのRNA分子またはレプリコンは、細胞に導入された際の自己複製の性質を保持している。Kaplan及びRacanielloによる初期の研究は、P1領域の大部分を含む欠失を有するポリオウイルスレプリコンを示している(Kaplan, 1988)。HIV-1のgag、pol、またはenv遺伝子の1.5kb以下のフラグメントを含むポリオウイルスレプリコンは、研究室の実験の対象とされている(Choi, 1991)。外来性の遺伝子が挿入され、翻訳されるリーディングフレームが、P2-及びP3-タンパク質をコードする残存するキャプシド配列の間に保持された。これらのRNAの細胞へのトランスフェクションは、これらのゲノムの複製、並びに側方のキャプシドタンパク質との融合タンパク質として外来性のタンパク質の発現を生じさせた(Kiyono, 1996)。
【0132】
ポリオウイルスcDNAは、組換えタンパク質を発現する大きな遺伝子に適応させるために改変されている。これらのベクターでは、ポリオウイルスの完全なP1領域は欠失されており、HIV-1 gag(約1.5kb)の完全な遺伝子を含むレプリコンが構築された。このレプリコンの細胞へのトランスフェクションは、HIV-1 Gag前駆体タンパク質であるPr55gagの生産を生じさせ、そのタンパク質は遠心分離後に細胞の上清から溶出され、電子顕微鏡を使用して視覚化された(Porter, 1996)(Kiyono, 1996)。
【0133】
要するに、ポリオウイルスレプリコン系を使用してグリコシル化タンパク質をコードする遺伝子を含む幅広い種類の外来性の遺伝子を発現する事が可能である(Kiyono, 1996)。
【0134】
C2.4 mRNA発現
宿主細胞の活性化は、ウイルスDNAのメッセンジャーRNA(mRNA)へのHIVの転写を生じさせる。HIVにおいて、ウイルスRNAは、メッセンジャー及びゲノムRNAの両者として働く。ウイルスDNAは、mRNAに転写される。ウイルスmRNAは、細胞質に移動し、そこで、ウイルスタンパク質を生産するために細胞のリボソーム及びトランスファーRNAと会合する様になる。メッセンジャーRNAは、ウイルスの遺伝情報を伝達する遺伝物質の安定な鎖である。メッセンジャーRNAは、その安定性及び効率性のために免疫原性組成物における使用にとって魅力的なものである。メッセンジャーRNAは、タンパク質のコードにとってDNAよりも効率的である。
【0135】
RNAまたはDNAは、各種のタンパク質をコードする。その途中の工程は、mRNAの生産である。タンパク質またはタンパク質群のmRNAは、DNAにおけるチミジンがRNAにおいてウラシルに置き換えられるという例外を含むが、それをコードするDNA鎖(またはRNA鎖)と一致する。また、DNAにおける糖部分は、デオキシリボースであり、RNAにおける糖部分は、リボースである。mRNAは、キャッピングの過程を遂げ、その過程で、5'末端に7-メチルグアノシン3ホスフェートが付加され、3'末端の非翻訳領域に約100塩基のポリ(A)テールが付加される。キャップは、リボソームの適切な結合のために必要であり、テールは、リボソームの翻訳の終結のシグナルを伝える。転写は、DNAがmRNAに「書き換えられる」過程である。翻訳は、mRNAがタンパク質に「翻訳される」過程である。
【0136】
免疫原性組成物内におけるmRNAに対する多くの理論的な利点が存在する。これらは、以下を含むが、それらに限らない。(1)mRNAは、核膜を越える必要が無い(2)mRNAは、核質に進入する必要が無い(3)mRNAは、宿主DNAに挿入する必要が無い(4)mRNAは、転写の過程を遂げる必要が無い(5) mRNAのタンパク質への翻訳を可能にするために、宿主の翻訳酵素及びリボソームは、細胞質内でmRNAに利用可能である(6)ウイルスタンパク質の生産における多くの工程が妨害されるため、細胞内DNAと比べてmRNAを使用すると、速い免疫反応が、示されるべきである(7)mRNAは、複数回再利用されうるため、多くのタンパク質配列が1つのmRNA鋳型から翻訳されうる。そのため、極少量のmRNAのみが、細胞質に進入する必要がある(8) タンパク質の細胞内での生産はmRNAを使用して達成されるであろうため、細胞表面のMHCクラスIタンパク質と会合し、CD8+細胞障害性T細胞反応を誘導するであろう。
【0137】
mRNAの生産は、直接的である。特定のHIVタンパク質の特異的なアミノ酸配列の知識を使用して、その相補的なRNA配列が、推定されうる。次いで、RNA配列は、5'及び3'末端がそれぞれキャップされ、テールが付加されうる。更に、当該技術分野において既知である様に、メッセンジャーRNAは、それ自身で、自動核酸配列合成によって生産されうる。
【0138】
C.2.5 裸のDNA/RNAに基づく組成物のためのCD8+T細胞反応の促進
DNAに基づく組成物は、従来のワクチンを超える多くの潜在的な利点を提供して良い。単回投与、長期持続免疫、細胞性免疫、並びに液性免疫は、組換えDNA技術によって導入されるウイルス粒子の細胞内生産を使用して明らかにされうる。対照的に、エンドサイトーシスによって取り込まれるタンパク質に基づくサブユニットワクチンは、一般的にCD8+T細胞認識のために細胞を刺激しない。
【0139】
HIV及び他のウイルス病原体の1つの回避する戦略は、非免疫細胞に進入し、複製する事である。例えば、上皮細胞は、クラミジア種及びリケッチア種によって侵入され、肝細胞は、プラスモディウム種及びリステリア菌の標的である。上記の様に、HIVは、主にCD4細胞を標的とするが、中枢神経系の様な他の非免疫組織は侵入される。促進されるCD8細胞障害性反応の刺激において、標的細胞の幅広い範囲が免疫系によって認識される可能性がある。上記の様に、CD8+T細胞は、全ての有核細胞に存在するMHCクラスI分子と関連して抗原を認識し、CD8+T細胞にいずれのタイプの感染宿主細胞の検出も可能にさせる。対照的に、CD4+T細胞は、MHCクラスIIを発現する宿主細胞に制限され、適用範囲においてより制限される。マクロファージ、樹状細胞、及びB細胞は、MHCクラスI及びMHCクラスIIを有する。更に、皮膚のランゲルハンス細胞は、クラスI及びクラスII両者のMHCタンパク質を有する(Kaufmann, 1996)。したがって、CD8+T細胞反応を促進する構成要素は、本発明のために意図される。図10に示される様に、各種の構成要素は、CD8+T細胞反応を促進するために裸のDNA/RNAの実施態様と組み合わされて良く、その幾つかは本明細書で記載されている。
【0140】
例えば、バクテリア由来のDNA内における特異的な低メチル化CpGモチーフが強力なアジュバント効果を示しうる事が示されており、その効果は、部分的に、DNAに基づくワクチンの特性であるTh1-タイプの反応の誘導に関与する。DNAに基づくワクチンの有意な特徴は、殆どの従来のワクチンとは異なり、免疫接種を受けた動物において、液性、細胞性反応を刺激する特有の能力を有する。強力なTh1-タイプ免疫反応を誘導する能力は、多くの病原体(ウイルス、バクテリア、及び寄生虫による病気)に関して、抗体の存在ではなく細胞性免疫が保護と関連するため、非常に重要である(Lewis, 1999)。
【0141】
細胞障害性T細胞活性を促進する更なる方法は、結核菌ヒートショックタンパク質70(HSP70)とサブユニットをコードする現実の裸のDNA/RNAとの結合である。HSP70は、タンパク質の折りたたみ、移行、及び分解において機能する細胞質のHSPである(Chen, 2000)。HSP反応性T細胞は、接合したペプチドとの反応によって強いヘルパー効果を及ぼしうる。HSPは、T-ヘルパー前炎症反応を誘導し、TNF-α及びIFNの分泌を誘導する(Chen, 2000)。免疫学的には、小胞体に位置するCa2+結合タンパク質であるカルレティキュリン(CRT)は、HSPと関連する。そのタンパク質は、抗原プロセシング及び提示と関連するトランスポーターによって小胞体に輸送されたペプチドと会合する(Wen-fang Cheng, 2002)。CRTは、CD8活性を促進する。
【0142】
抗原のプロテアソームによる分解は、MHCクラスI提示を促進しうる(Chien-fu-hung, 2003)。したがって、細胞障害性T細胞活性を促進する更なる方法は、ガンマ-チューブリンとDNA/RNA配列との結合である。中心体は、プロテアソームにおいて豊富である細胞画分である。中心体は、有糸分裂及び小管の生産において重要である。中心体は、MHCクラスI抗原プロセシングのための重要な部位でもある。ガンマ-チューブリンのDNA/RNAへの結合は、タンパク質の中心体への細胞内局在を生じさせ、CD8+T細胞免疫反応を促進するであろう(Chan, 2000)。同様に、本発明の組成物は、B細胞反応を促進するためにマトリックスタンパク質のDNA/RNA配列に結合されたリソソーム結合膜タンパク質(LAMP-1)をコードするDNA/RNA配列を使用して良い(Chen, 2000)(Chien-fu-hung, 2003)。
【0143】
C.2.6 サブユニットに基づく組成物のためのCD8+T細胞反応の促進
上記の様に、サブニットタンパク質ワクチンは、CD8+T細胞認識のための細胞を刺激しない可能性がある。しかしながら、完全なタンパク質を使用するCTL反応の初回刺激は、ISCOM(抗原を細胞質に輸送し、細胞障害性T細胞の誘導を可能にするウイルスタンパク質を含む脂質ミセルのマトリックス)またはリポソームの様な免疫刺激性の複合体への抗原の混入によって達成されている。更に、カチオン性脂質は、動物における抗原提示細胞のクラスIMHC経路を促進するために使用されている。使用される1つのカチオン性脂質は、DNAトランスフェクションに使用される市販されているカチオン性脂質であるDOTAP(N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム硫酸メチル)である。標的細胞を刺激する事ができる他のカチオン性脂質は、市販されている。これらの脂質は、1つ以上の正に荷電したアンモニウム基と結合している2つの長い疎水性アルキル鎖を有するDOTAPと構造的に類似している。カチオン性脂質の働きの提案されている機構は、細胞膜との融合へと続く、全体として正電荷を有する高分子脂質複合体と負に荷電した細胞表面との相互作用を含む。対照的に、pH感受性のリポソームは、エンドソームの酸性環境との接触で不安定化し、エンドソームの膜を破裂及び/またはそれと融合して、その内容物を細胞質に放出すると解される(Walker, 1992)。
【0144】
ISCOMは、植物で見られる複雑なグリコシドであるサポニンを含む。サポニンは、アジュバント特性を有する。サポニンは、約8から10モノサッカリドの親水性オリゴサッカリド配列を有する。ISCOMの調製は、当業者に既知である。ISCOMは、ステロイドまたはトリテルペンも有するために、その基本的な構造は、両親媒性である。この事が、ISCOMによる疎水性タンパク質と会合される脂質マトリックスの形成を可能にする。ISCOMの脂質の特性は、標的細胞との膜融合を可能にする。ISCOMの脂質マトリックスにおいて懸濁されたタンパク質は、標的細胞に取り込まれる様になり、免疫排除にさらされる(Kiyono, 1996)。
【0145】
サブユニットワクチンの可溶性タンパク質とDOTAPの間の複合体の形成は、タンパク質の負電荷とカチオン性脂質との間のイオン性相互作用によって生じる。したがって、サブユニットワクチンの成熟または改変は、必要でない。そのため、会合は、細胞への適用または実験動物若しくはヒトへの注射の事前にDOTAP溶液または他のカチオン性脂質におけるサブユニットタンパク質の混合のみを必要とする。したがって、カチオン性脂質は、クラスIMHCの抗原の提示を引き起こす細胞内の事象の研究のための容易に利用可能な投与媒体であり、ウイルスに対するCD8+T細胞反応を促進するための組換えウイルスの代替物として働く(Walker, 1992)。
【0146】
ISCOMまたは脂質担体は、最小限の毒性を有するアジュバントとして働く。それらは、タンパク質及びペプチドを細胞質に輸送し、ペプチドに対するクラスIに制限されるT細胞反応を可能にする。そのため、それらは、CD8活性を促進するためサブユニットワクチンと共に使用されうる。細胞質への侵入を得るために、ISCOMの脂質ミセルは、上記の様に細胞膜に融合し、ISCOM内に捕らえられた粒子は、小胞体に輸送されうる。小胞体の内部に輸送されると、これらの粒子は新しく合成されたMHCクラスI分子に結合する。最終的なタンパク質の修飾のために、前記粒子は、ゴルジ体を介する。次いで、それらは、ペプチドMHCクラスI複合体として細胞表面に輸送される(Parham, Peter, The Immune System, Ch. 12 (2004))。
【0147】
そのため、本発明の組成物は、好ましくは、T細胞活性の促進またはCTL反応の初回刺激のために、ISCOM、リポソームに含ませる、及び/またはカチオン性脂質に溶解されるべきである。
【0148】
C.3. 結論-調製の方法
したがって、本発明は、キャプシドタンパク質上のH因子結合部位に対する免疫反応を誘導するため、及びその免疫記憶を創出するために使用されるであろうタンパク質に基づく組成物と核酸に基づく組成物の両者を含む。核酸に基づく組成物は、DNA、RNA、またはmRNAであって良い。組換え核酸担体は、バクテリアまたはウイルスであって良い。好ましくは、組成物は、CD8+T細胞反応を促進するための1つ以上の構成成分を含む。
【0149】
タンパク質に基づく組成物は、当該技術分野で既知である方法を使用して開発及び投与されて良い。核酸に基づく、動物に投与される組成物またはワクチンの目的のためには、市販されている遺伝子銃は好ましい投与の方法である。この技術は、表皮及び真皮内の細胞にDNAに覆われた金粒子を直接侵入させるために設計された器具を利用する。DNAは、樹状細胞に直接侵入し、CD8+T細胞の直接初回刺激を引き起こす(Chen, 2000)。特に、DNAに覆われた金粒子による遺伝子銃の投与は、核酸に基づくサブユニット組成物のためのCD8+T細胞免疫反応を促進する組成物構成成分に関する使用のために好ましいものであって良い(Chien-Fu Hung, 2003)。核酸に基づく組成物の投与の経路は、図11及び以下に要約されている。
【0150】
D.更なる代替的な実施態様及び免疫刺激剤の記載
本発明によって意図される免疫反応は、免疫反応を刺激する非特異的または特異的な物質の使用によって促進されて良い。本発明は、以下の代替的な実施態様として記載されているものを含む適当な免疫刺激剤またはアジュバントと混合されて良い。その様な組成物は、応用のために適当なものとして使用されて良い。当該技術分野で既知である慣用されている刺激剤またはアジュバントは、フロイント不完全アジュバント、リポソーム等を含む。好ましい実施態様は、慣用されているアジュバント及び/または更に本明細書で記載される組成物から選択される1つ以上の刺激剤を含む。さらに、DNAは補体活性を増大させるため、DNAワクチンおよびアジュバントとして同時に使用されて良い。(DPTワクチンは、三つの別々のワクチン粒子からなる。百日咳構成成分は、他の二つのためのアジュバントとして働く(Parham, 2004)。HIV病のDNAワクチン(好ましくは、H因子結合部位の配列をコードしている)が、H因子サブユニットワクチンにおけるマトリックスタンパク質(p17MA)のアミノ末端及びミリステート共有結合部位のためのアジュバントとして働くであろう類似した状況が存在する。)
【0151】
組換えバクテリアまたはウイルスベクターの免疫原性を促進するために、シアル酸は、バクテリアの細胞膜、またはウイルスのタンパク質被膜及び/若しくはエンベロープ(ウイルスがエンベロープを有する場合)構造から除去される必要がある。ノイラミニダーゼを使用する処理は、バクテリアまたはウイルスのタンパク質構造を変化させること無く、シアル酸残基を効果的に除去するであろう。
【0152】
代替的な実施態様では、組成物は、マンノースまたはマンナンから成るポリサッカリドに共有または別の様式で結合されて良い。結合または共役は、当業者に既知の方法を使用して達成されて良い。マンノースは、微生物及び病原体でのみ見られる糖であり、人体においては通常は見られない。マンノース結合タンパク質(MBP)は、コラーゲン性の構造の領域を含むC-タイプレクチンであるコレクチンである。このタンパク質は、正常のヒトの血清に存在し、3つのポリペプチド鎖から成る各サブユニットから成り、コラーゲン様の三重らせん及び3つのC末端に球状の糖認識ドメイン(CRD)を形成する。6つのサブユニットが、共に、古典的補体経路のC1qのチューリップ様の構造の花束に似た全体の構造を形成する。MBPの糖への結合は、C1r2 C1s2の活性化へと続く古典的補体経路を開始する。この事は、直接的に末端細胞膜障害複合体の挿入、または微生物表面の補体の沈着によるオプソニン化のどちらかを介する補体による殺滅を生じさせる。MBPは、MASP(1及び2)セリンプロテアーゼと呼ばれる他の新規に記載されるセリンプロテアーゼを介して、C2及びC4を活性化する可能性もある。したがって、MBPは、おそらく食細胞のコレクチンレセプターに対するコラーゲン性のストークの結合によって介される補体から独立したオプソニン化活性も示す(Presanis J. S. , et al., Biochemistry and Genetics of Mannan-binding Lectin (MBL) , Biochemical Society Transactions, Vol. 31, pp 748- 752 (2003))。表面にマンノースまたはマンナンを有する生物のいずれもが、補体活性化のレクチン経路を刺激するであろう。その様なポリサッカリドに結合される組成物は、血清中のマンノース結合レクチンと結合し、補体系のレクチン経路を活性化するであろう。したがって、この代替的な実施態様は、それによりワクチンに対する全体的な免疫反応を促進するであろう。
【0153】
他の代替的な実施態様では、組成物は、補体副経路を刺激または活性化する物質と組み合わせられて良い。例えば、テイコ酸の特定の形態が、補体副経路の強力なアクチベーターである事が既知である(Winkelstein J. A. , J. of Immun., Vol. 120, pp 174-178 (1978))。更に、酵母細胞由来であって良いザイモサンは、サイトカインを誘導し、補体副経路系と同時に免疫反応を刺激しうる。ザイモサンは、オプソニン化を伴って、または伴わずにマクロファージによってファゴサイトーシスされるため、補体副経路を活性化するという有用な免疫の性質を有する。ザイモサンとマクロファージの相互作用は、Th-1反応を促進すると解されている。CD4細胞は、Th-1細胞とTh-2細胞に分類されうる。Th-1細胞は、IL-2の生産によって細胞障害性T細胞を活性化し、Th-2細胞は、主にIL-4及びIL-5の生産によってB細胞を活性化する。ザイモサンによって生産されるTh-1反応のレベルは、C3切断フラグメントであるC3b及びiC3bによって調節される。増幅されたC3bは、ザイモサンの受容される表面に沈着し、マクロファージ、樹状細胞、または他の抗原提示細胞を集める。マクロファージ、樹状細胞、及び抗原提示細胞は、ザイモサンのオプソニン化後、抗原特異的なマクロファージの活性化が生じた後に、Th-1細胞に対して抗原を提示する(Fearon D. T. , et al., Proc. Natl. Acad. Sci, Vol. 74, pp 1683-1687 (1977) )。そのため、ザイモサンは、HIV病に対する液性及び細胞性免疫反応の両者を促進するアジュバントとして使用されうる。したがって、前記組成物は、テイコ酸またはザイモサンの様な補体副経路を刺激する物質に共有または他の様式で結合されて良い。
【0154】
HIV特異的なDNAワクチンにおけるザイモサンのアジュバント効果は、プラズマベクター(pCMV160IIIb)を使用して最近示されている。実験用マウスにおいて、前記プラスミドワクチンが、ザイモサンの存在または非存在条件で接種された。プラスミドベクターだけを使用した際に対して、ザイモサンがプラスミドベクターと共に接種された際に、高レベルの液性免疫反応及びHIV特異的遅延型超過敏症(DTH)反応の両者が、確認された。HIV特異的細胞障害性T細胞リンパ球活性も促進された。前記効果は、補体の活性化、特に副経路を介した、その(ザイモサンの)リクルート、及びマクロファージ、樹状細胞、または抗原提示細胞の活性化の結果に基づく事が示されている。これらの結果は、ザイモサンが効果的な免疫刺激剤である事を示す(Ara, 2001)。
【0155】
そのため、組成物の免疫原性を促進するために、マンノース、テイコ酸、ザイモサン、またはそれらの幾つかの組み合わせは、サブユニットワクチンのタンパク質構成成分に結合されて良い。好ましくは、ポリサッカリドは、16個の別々のサッカリド単位から成るであろう(Pangburn, Michael K., Immun., Vol. 142, pp 2766- 2770 (1989) )。サブユニットワクチンの糖/アジュバント構成成分の好ましいソースは、Cryptococcus neoformans血清型Cという酵母細胞の莢膜ポリサッカリドであろう(Sahu Arvind, et al., Biochem. J., Vol 302, pp 429-436 (1994))。この酵母細胞は、各トリマンノース繰り返し単位から4つの分岐したキシロース糖を提示する。C3補体構成成分のチオールエステル部位は、特異的な糖配列への強い選択性を示す。この事は、C3のC3aフラグメント及びC3bへの切断を生じさせる。C3b分子は、3つの補体経路の全てにおける焦点である。
【0156】
更に、全てのグルコース分子及びポリサッカリドは、組成物から除去されるべきである。細胞培養物へのインスリンの添加は、細胞外グルコースの細胞膜を越える細胞質への輸送を促進する。遊離の可溶性グルコース分子は、C3b沈着の速度及び程度の両者を阻害する(Sahu Arvind, 1994)。
【0157】
代替的な実施態様では、ヘパリンの効果が阻害されて良い。ヘパリンは、効果的な補体因子Hの機能に必須な補因子である(Maillet, Francoise, et al., Mol. Immun., Vol. 25, pp 917-923 (1988)) (Maillet, Francoise, et al., Molecular Immun., Vol. 20, pp 1401-1404 (1983) )。上記の様に、補体因子Hは、補体副経路において、主要な制限するタンパク質である。補体副経路は、微生物またはワクチンに対して反応する免疫系の第一の部門である。プロタミンは、ヘパリンに結合し、抗凝血を起こしている患者において効果的なヘパリンを減少させるために使用される(Furie, Bruce, Oral Anticoagulant Therapy, Hematology Basic Principles & Practice, Ch. 121 (3rd ed. 2000) )。最近では、より少ない毒性のヘパリンアンタゴニストである低分子量プロタミン(LMWP)が、入手可能になっている。プロタミン、またはこの実施態様のために好ましくはLMWPが、補体副経路の制限における補体因子Hの活性を弱めるために、組成物の構成成分として含まれて良い(Liang J. F, et al., Biochemistry, Vol. 68, pp 116-120 (2002))。あるいは、ヘパリナーゼがヘパリンを酵素的に分解する事が知られている。
【0158】
デキストランとして知られている、グルコースの、分岐され、部分的に加水分解されたポリサッカリドは、効果的な血漿増量剤として使用されている(Hoffman, Ronald, Hematology Basic Principles and Practice, 2177 (3rd ed. 2000) )。硫酸デキストランは、ポリサッカリドデキストランの硫酸エステルのナトリウム塩である。5×103より大きい分子量を有する可溶性硫酸デキストランは、補体副経路の誘導物質である。デキストラン中の100グルコース残基あたりの硫酸基の数が、補体副経路におけるデキストランの活性化潜在能力を決定する。硫酸化の最適な程度は、50-60SO4/100グルコース分子であった(Burger, R. , et al., Immunology, Vol. 29. pp 549-554 (1975))。
【0159】
硫酸化セファデックス(SS)は、デキストランの架橋された不溶性形態である。可溶性の硫酸デキストランの様に、SSは、補体の古典的経路と同様に補体副経路も活性化する。3つの変数が、補体活性の両経路に対するSSの活性を調節する。
(1)硫酸化の量;15.6重量%以下の高い硫酸化含有量は、高い補体の活性化を生じさせる。2.43%未満の硫酸エステル含有量では、補体活性化は示されなかった。
(2)SSの濃度;40-50μg/mlで最大のC3代謝回転となり、より高い濃度は、補体活性化を生じさせる。
(3)温度;4℃で活性の全損失であり、最大のC3代謝回転は、37℃で示された(Burger, R., et al., Immunology, 33:827 (1997))。デキストラン(>5000分子量)の可溶性及び不溶性形態の両者は、補体副経路を活性化する。この事は、補体因子Hの効果の阻害によって達成される(Burger, R. , et al., European J. Immunology, pp. 291-295 (1981) ) 。低分子量硫酸デキストラン(<5000)は、補体因子Hの結合を促進するため、補体副経路の活性を制限する(Seppo Meri, et. al., Proc. Natl. Acad. Sci, Vol 87, pp 3982-3986 (1990) )。DNA様ヘパリンも補体因子Hの結合を誘導する(Gardner, William D. , Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol. 94, pp 61-67 (1980))。
【0160】
そのため、分子量>5000で50-60SO4/100グルコース分子である硫酸デキストランの免疫原性を促進する事は、組成物に含まれうる。同様に、37℃で濃度40-50μg/mlである15.6重量%のSO4を有するSSは、組成物の免疫原性を促進するであろう。低分子量のデキストランは、補体因子Hの結合を誘導し、補体活性を減少するため組成物に含まれないであろう。
【0161】
更なる代替的な実施態様では、C3転換酵素を安定化する物質が本発明と共に使用されて良い。三つの補体経路の全てが、C3bの産生を引き起こし、そのC3bは、微生物の表面または免疫原性組成物に存在する微生物の構成成分に共有結合する。C3bは、C3転換酵素として知られている酵素によって生産される。ヘビNaja kaouthia由来のコブラ毒因子(CVF)は、この酵素を安定化する(Alper, C. A., et al., Science, Vol. 191, pp. 1275-1276 (1976))。内生の補体副経路のC3転換酵素(C3b,Bb)の半減期は1.5分であるのに対して、CVF C3b,Bb C3/C5転換酵素の半減期は、7時間である。C3b,Bbは、補体因子Hによって分解され、C3bは、補体因子Hと第I因子の組み合わせた働きによって不活化される。対照的に、因子CVF,C3,Bbは、全ての調節的補体タンパク質に耐性を示す(Kock, Michael A., et al., J. of Biol. Chemistry, Vol. 279 pp. 30836-30843 (2004))。C3b,Bbは、C5に作用するために更なるC3bを必要とするが、CVF,Bbは、直接C5を切断できる。そのため、CVF,Bb酵素は、連続してC3及びC5を活性化する(Kock, 2004)。
【0162】
コブラ毒におけるCVFの生物学的機能には、毒の構成成分を血流中に進入させる働きがあると解されている。この事は、血管透過性を増大するアナフィラトキシンC3a、C5a、及びBbの放出を引き起こす補体活性化によって達成される(Vogel, Carl W., Immunoconjugates, Ch. 9 (1987))。コブラ毒由来であるにも拘らず、CVFは、非毒性のタンパク質である。CVFは、毒を含むコブラ毒由来の他の酵素、ポリペプチド等から単離されうる。
【0163】
したがって、CVFの投与は、C3bの爆発的な生産を生じさせる(Vogel, 1987)(Kock, 2004)。図13は、C3とCVFの間の構造的な相同性を図示している。微生物の表面上のC3bは、末梢循環、及びリンパ節の胚中心内のT細胞及びB細胞並びにリンパ節内の濾胞樹状細胞によって認識される。C3bは、強力なオプソニンである。オプソニンは、同時に免疫系の幾つかの部門を引き起こす(Hoffman, Ronald, Hematology Basic Principles and Practice, Ch. 27 (3rd ed. 2000)。したがって、他の実施態様では、CVFは、組成物の構成成分として使用されて良い。
【0164】
CVFの好ましい形態は、dCVF(De-α-ガラクトシル化 CVF)である(Gowda, D. C., et al., "Immunoreactivity and function of Oligosaccharides in Cobra Venom Factor," J. of Immn., pp. 2977-2986, (Dec 21 1993))。自然に分泌されるCVFは、αガラクトシル化LeX抗原エピトープであるGalα1-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ1を含むフコシル化された二分岐の複合型N結合型鎖である独特のポリサッカリドによって特徴付けられる。このポリサッカリドの除去は、37℃、18から23時間、Ph8.0の条件で、CVFをペプチドNグリコシダーゼF(N-グリカナーゼ)とインキュベートすることによって達成される。この新規なポリサッカリドのCVFからの除去は、ヒトIgGの1%がCVFの末端Galα1-3Galβ1配列と反応するために必要である。しかしながら、このポリサッカリドの除去は、分子の補体結合性質を妨げることも分子の半減期を短くすることも無い。dCVFは、免疫原性組成物を含むポリサッカリド単位に共有結合する。
【0165】
他の実施態様では、ニッケル化合物が、組成物に加えられて良い。ニッケルは、レクチン及び補体副経路の両者におけるC3転換酵素活性の促進において効果的であることが示されている(Fishelson, Z., et al., J. of Immun., Vol. 129, pp. 2603-2607 (1982))。平均的な成人の平均的なニッケルの取り込みは、一日に60から260μgであると見積もられており、その環境衛生基準用量は、0.02 mg/kg(体重)/日(mg/kg/d)である(U.S. EPA, 2003)。本発明は、基準用量を十分に下回るほぼ平均的な1日ごとの取り込み量のニッケル、好ましくはニッケル塩化物を含むであろうことが意図されている。そのため、本発明は、免疫反応を促進するためのニッケルの使用により生産されて良い。
【0166】
要約
本発明のためのワクチン剤を構成する組成物の調製のために、精製、合成、または遺伝子工学の既知の方法が使用されて良い。当業者は、H因子のためのそのようなキャプシドタンパク質結合部位のフラグメントを単離及び精製、またはそれをコードする配列を調製して良い。タンパク質フラグメント、裸のDNA/RNA、組換えDNA/RNA、またはメッセンジャーRNAは、担体または賦形剤の様な投与の予想される方法のために適当に製薬組成物に含まれて良い。本発明に従う免疫反応が望まれる動物または対象に、組成物を投与して良い。治療上効果的な投与量は、望まれる程度まで特異的な免疫抑制を後進させるために必要な量であり、クロム遊離試験、細胞内サイトカイン試験、リンパ増殖試験(LPA)、インターフェロンガンマ(IFN-ガンマ)ELISpot試験、及びMHC四量体結合試験の様な標準的な方法を使用して決定されるであろう。MHC四量体結合試験が好ましい。これらと同様の臨床試験が非感染性の対象の免疫反応の測定に適用されるであろう。
【0167】
免疫原性組成物の分析及び開発は、評価のために不活化粒子の広範囲の投与を含むべきである。動物試験は、サイズ、種、及び免疫学的特徴の相違を考慮すべきである。ヒトと動物の間の免疫学的相違が、毒性分析を動物試験に委ねる事が予想される。臨床試験は、少人数における安全性と投与量から、数百人のボランティアの第二段階における安全性及び免疫原性、大規模な有効性試験まで少なくとも標準的な3段階のモデルを含むであろう。臨床試験は、他の免疫抑制疾患、妊娠、劇薬の使用等のための除外の様な慣例の適当な除外基準を含むべきである。サブユニットタンパク質を使用する試験のための開始用量は、年少者には10μg/株であり、成人には20μg/株である。裸のDNAワクチンのためには、全年齢において1μg/株の開始用量が適当であろう。
【0168】
投与は、各種の経路においてなされて良く、例えば、経口、経頬、経粘膜、経舌、経鼻、経直腸、経膣、眼内、筋肉内、リンパ内、静脈内、皮下、経皮、皮内、腫瘍内、局所、経肺、吸入によって、注射によって、または移植によって等により投与されて良い。組成物の各種の形態は、カプセル、ジェルキャップ、錠剤、腸溶カプセル、被包性粒子、粉、坐薬、注射、軟膏、クリーム、インプラント、パッチ、液体、吸入、またはスプレー、全身、局所的、または他の口腔媒体、溶液、懸濁液、輸液などを含んで良いが、それらに制限されない。HIV感染の第一の標的の幾つかは、皮膚並びに直腸及び膣の粘膜における上皮細胞及びランゲルハンス細胞であるため、投与の好ましい実施態様は、直腸及び/または膣の坐薬と組み合わせた経皮的なものである。HIVは、主に直腸及び膣の交わりによって罹患される。そのため、ワクチンの直腸及び/または膣の坐薬投与は、好ましい投与方法体系であろう。更に、本発明は、天然の形態、組換えた形態、変異した形態、断片、融合タンパク質、及びサイトカインの他のアナログと誘導体を含むサイトカイン、混合物、他の生理活性物質、並びに製剤補助剤等の様な他の治療剤と組み合わせて良い。当業者は、注射のためには、リンガー溶液または塩緩衝液のような水溶液における製剤が適当であって良いことを認識している。リポソーム、エマルション、及び溶剤は、投与媒体の他の例である。経口投与は、カプセル、錠剤、液体、丸薬などに適切である、スクロース、セルロース等の様な担体を必要とするであろう。
【0169】
上の記載は、本発明の特定の実施態様について述べているが、本発明の精神から逸脱すること無く、他の変形例が作り出されて良い事は理解されるであろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲及び精神に含まれるものとして、その様な変形例を含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】IgG抗体を示す。
【図2】古典的な、レクチン、及び代替的な補体系の経路を示す。
【図3】アミノ酸510-665で埋め込まれるgp41の膜貫通タンパク質のモデルである。融合ドメイン(アミノ酸510-526)、免疫抑制ドメイン(アミノ酸570-585)、及び免疫優勢ドメイン(アミノ酸587-605)が示されている。更にH因子とプロペルジンに対する結合部位が説明されている。
【図4】gp120糖タンパク質のモデルである。C3bタンパク質、C4bタンパク質、及びH因子についての補体結合部位が示されている。
【図5】Stoiber, H.等, J of Experimental Medicine, Vol 183, 307-310に示されたような、H因子枯渇血清に対するH因子の添加の効果を示す。
【図6】本免疫原性組成物中の実施形態のカテゴリーを表す図である。
【図7】組換えDNAが利用できる例示的な担体のグラフである。
【図8】組換え細菌組成物またはワクチンへのH因子結合部位の遺伝物質をコードしている遺伝物質のスプライシングを示しているチャートである。
【図9】組換えウイルス組成物またはワクチンへのH因子結合部位の遺伝物質をコードしている遺伝物質のスプライシングを示しているチャートである。
【図10】裸のDNA組成物用の免疫刺激剤のリストである。
【図11】通常のDNA投与経路を記載する図である。
【図12】ポリサッカリド長の増大が、最大で16のモノサッカリドまで免疫原性を促進する方法を示す。
【図13】C3およびCVFの鎖状構造およびそれらの関係を示している概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIVに対する免疫反応を導き出す組成物であって、薬剤として許容される担体中に少なくとも一つのHIV糖タンパク質上の少なくとも1つのH因子結合部位の有効量を含む組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一つのHIV糖タンパク質がgp120及びgp41の群から選択される、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記結合部位は組換え担体によって発現される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組換え担体はウイルスである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ウイルスはヘルペスウイルスである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヘルペスウイルスはエプスタイン-バーウイルスである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ウイルスはポリオウイルスである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
ノイラミニダーゼ、トリプシンまたは他の適当なシアル酸を除去する酵素で処理されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記組換え担体は細菌である、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記細菌はBacillus Calmette Guerinである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記細菌はListeria monocytogenesである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
ノイラミニダーゼ、トリプシンまたは他の適当なシアル酸を除去する酵素で処理されている、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記組換え担体は酵母である、請求項3に記載の組成物。
【請求項14】
前記酵母はSaccharomyces cerevisiaeである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記結合部位はメッセンジャーRNAによって発現される請求項2に記載の組成物。
【請求項16】
HIVに対する免疫反応を導き出す医薬品を調製するための請求項2に記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記医薬品がC3bの不活性細胞断片へのH因子による切断を阻害する、請求項16に記載の組成物の使用。
【請求項18】
動物において免疫反応を導き出す方法であって、薬剤として許容される担体中に少なくとも一つのHIV糖タンパク質の少なくとも1つの結合部位エピトープの有効量を含む組成物を投与することを含み、前記少なくとも一つのHIV糖タンパク質がgp120及びgp41の群から選択される方法。
【請求項19】
前記組成物は経口、口腔内、経粘膜、舌下、経鼻、直腸内、経膣、眼内、筋肉内、リンパ内、静脈内、皮下、経皮、皮内、腫瘍内、局所、肺内、吸入、注射、または体内移植により投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物はカプセル、ゲルキャップ、錠剤、腸溶カプセル剤、カプセル化粒子、散剤、坐薬、注射、軟膏、クリーム、インプラント、パッチ、液剤、吸入薬またはスプレー剤によって投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
免疫刺激剤と組み合わされている、請求項2に記載の組成物。
【請求項22】
前記免疫刺激剤がアジュバントである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記免疫刺激剤が前記組成物に結合できる形の少なくとも1つのマンノースから構成される多糖類を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記免疫刺激剤は前記組成物に結合できる形のタイコ酸を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記免疫刺激剤は前記組成物に結合できる形のザイモサンを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記免疫刺激剤は前記組成物に結合できる多糖類カプセルを有するcryptococcus neoformans血清型Cを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記免疫刺激剤はヘパリンに結合できる形のプロタミンを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記免疫刺激剤はヘパリナーゼを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫刺激剤はC3bの生成を強化するように適応された形のコブラ毒因子を含む請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
前記コブラ毒因子はdCVFである請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記免疫刺激剤はC3コンバターゼ活性を強化するように適応された形のニッケルを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項32】
前記免疫刺激剤はH因子を吸収できる硫酸化ポリアニオンを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項33】
H因子を強化できる前記組成物中のポリアニオンは前記組成物から実質的に除去されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項34】
少なくとも一つのHIV糖タンパク質上のH因子結合部位に対する免疫応答を提供することができる組成物であって、
薬剤として許容される担体中に少なくとも一つのHIV糖タンパク質上の少なくとも1つのH因子結合部位の治療上の有効量を含み、
前記少なくとも一つのHIV糖タンパク質がgp120及びgp41の群から選択され、
前記組成物がC3bの不活性細胞断片へのH因子による切断を阻害する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−533645(P2007−533645A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536893(P2006−536893)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/035315
【国際公開番号】WO2005/040352
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506137619)エヌエムケー・リサーチ・エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】