説明

HDLコレステロールセンサ

高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する方法であって、試料をPEG化タンパク質と反応させて、一般には試料中の非HDLリポタンパク質をPEG化タンパク質とで選択的に複合化させるか、あるいは高密度リポタンパク質と選択的に反応し得るPEG化酵素と選択的に複合化させたのち、高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を、例えば電気化学的技術によって計測することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度リポタンパク質(HDL)含有試料中の高密度リポタンパク質に結合したコレステロール(HDLコレステロール)の量を測定する方法に関する。本発明はまた、そのような方法で使用するための組成物及びキットに関する。
【0002】
発明の背景
多くの疫学的研究が、コレステロール又はアポAI含量に換算して計測される高密度リポタンパク質(HDL)と冠状動脈疾患(CAD)の危険性との強い非依存的な逆相関を実証している。HDLコレステロールが10mg/L低下するごとにCADの危険性が2〜3%増すといわれている。このように、高めのHDLコレステロール濃度が保護性であると考えられている。したがって、CADの危険性を特性決定し、異脂肪症の処置を管理する際のHDLコレステロールの計測が臨床研究室でますます一般的になった。
【0003】
研究技術から適合された、HDLコレステロール計測のための初期的な研究室的方法は、沈殿試薬を用いる手作業の分離ステップののち、たいていの場合には自動化化学分析装置によるコレステロール含量の分析を要するものであった。典型的な分離ステップは、沈殿試薬を低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)及びキロミクロン(CM)と反応させてこれらの成分の凝集塊を形成することを含むものであった。そして、凝集塊をたとえば遠心分離によって反応容器から除去して、HDL含有試料を分析に備えて残した。沈殿物の分離は、沈殿物がUV/Vis又は使用される比色分析技術に干渉しないようにするため、不可欠であった。
【0004】
また、いわゆる「均一法」が数多く開発されている。これらの方法では、たとえばHDLコレステロールとの反応が完了したのち除去試薬を加えて沈殿物を溶解させることにより、沈殿するリポタンパク質の分離を回避することができる。このようにして、LDL、VLDL及びCMは、HDLコレステロールとの選択的反応が保証されるようにブロックされ、かつ、UV/Vis分析を実施する前に除去される。あるいはまた、高い希釈度のような特定の反応条件又は特定の沈殿試薬が使用されて、分析技術に対する最小限の干渉が保証される。
【0005】
一般に、このような方法は、2種以上の試薬を試料に加え、試薬の添加ののちインキュベート期間をおいたのち、計測ステップ、たとえば比色発現又はUV/Vis分析を実施することを含む。しかし、これらの方法は今や自動化することができるが、それでもなお、完了させるべき比較的複雑な分析手順を要し、いくつかの異なる試薬を異なるタイミングで加えなければならない。したがって、分析は専用の器具を要し、一般に、熟練した技術者によって臨床研究室でしか実施することができない。さらには、試薬を反応させるための比較的長いインキュベート期間の潜在的必要性が、計測を得る際の時間遅延を招く。
【0006】
いくつかの公知のHDLコレステロール検出技術に伴うさらなる問題は、全血に対して実施することができないということである。ヘマトクリットがUV又は可視光線分析技術に干渉する傾向があり、信頼しうる結果を得ることができない。比色分析技術を使用した場合にも同様な問題が起こる。分光分析を使用する場合に遭遇される溶血がさらなる問題である。したがって、計測は一般に血清又は血漿試料に対して実施される。さらには、希釈されていない血清又は血漿の使用は、そのような系の吸光係数が吸着計測を実施するには高すぎるため、不可能である。したがって、高い希釈度の試料が必要である。したがって、はじめに一つ以上の前処理ステップを実施するか、高希釈度の試薬を使用するかしない限り、全血試料のHDLコレステロール含量の計測を完了することはできない。これはさらに、計測が熟練技術者によって実施されなければならない必要性を増す。
【0007】
したがって、体液、たとえば血液又は血漿のHDLコレステロール含量を分析するための簡単で効果的で速やかな方法が要望されている。このような方法は、HDLに結合したコレステロールと、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)及びキロミクロン(CM)に結合したコレステロールとを効果的に区別することができ、ひいては、HDLコレステロールに対して選択的である方法を提供するべきである。さらには、好ましい方法は、実施するために、専用の器具を使用したり、熟練技術者を要したりすることもない。また、手作業の分離ステップを回避させ、試料の前処理、たとえば希釈の要件を減らす技術が要望されている。
【0008】
発明の概要
本発明は、高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する方法であって、試料をPEG化タンパク質と反応させて、一般には試料中の非HDLリポタンパク質をPEG化タンパク質とで選択的に複合化させたのち、高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を計測することを含む方法を提供する。
【0009】
驚くことに、PEG化タンパク質が、試料中の非HDLリポタンパク質(一般にはLDL及びVLDL又はLDL、VLDL及びCM)とで複合化するのに特に効果的であり、HDLとは複合化しないということがわかった。したがって、試料へのPEG化タンパク質の添加が、実施されるコレステロール試験に非HDLリポタンパク質が関与することを阻止し、それにより、当業者がHDLコレステロールに関して選択的に試験することを可能にすると考えられる。そして、一般に、コレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させ、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応したコレステロールの量をたとえば電気化学的技術によって計測することにより、試料のHDLコレステロール含量を計測する。
【0010】
好ましい実施態様では、タンパク質は、酵素安定化タンパク質、たとえばアルブミン、特にウシ血清アルブミン(BSA)である。したがって、好ましいPEG化タンパク質としては、PEG化アルブミン、もっとも好ましくはPEG化BSAが挙げられる。この実施態様は、PEG化タンパク質が、コレステロール試験を実施するために使用される酵素試薬を安定化する効果と、非HDLリポタンパク質とで複合化する効果との二重の効果を有することができるため、特に有利である。
【0011】
代替態様で、本発明は、特定の沈殿剤の使用に限定されず、LDL、VLDL及びCMの沈殿のために特定の反応条件の使用を要しない、試料中のHDLコレステロールの計測のための電気化学的技術を提供する。この実施態様では、反応に関与する酵素の一つが、他のリポタンパク質よりもHDLとで選択的反応を提供するPEG化酵素である。望むならば、非HDLリポタンパク質とで複合体を形成し得るPEG化タンパク質及び/又は複合化試薬を使用してもよい。
【0012】
したがって、本発明はまた、高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する電気化学的方法であって、試料を、
(b)コレステロールエステル加水分解試薬、
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、
(d)補酵素、
(e)酸化又は還元されて生成物を形成し得る酸化還元剤、及び場合によっては
(f)界面活性剤、及び/又は
(h)低密度及び超低密度リポタンパク質とで複合体を形成し得る複合化試薬、及び/又は
(i)PEG化タンパク質
と反応させ、形成した生成物の量を電気化学的に検出することを含み、コレステロールエステル加水分解試薬及び/又はコレステロールオキシダーゼもしくはコレステロールデヒドロゲナーゼがポリエチレングリコールで修飾された(modify)ものである方法を提供する。
【0013】
電気化学的分析の使用は、HDLコレステロール含量の信頼しうる計測を与える速やかで非常に簡単な試験を提供する。試験は、単一ステップで実施することができ、別個の試薬の添加を要しない。さらには、専用の器具は不要である。
【0014】
本発明の一つの実施態様では、電気化学的試験は、ポータブルの手持ち型装置で実施することができ、したがって、医療環境、たとえば医師の診療室、病室もしくは病棟で、又は患者自身によって家庭で特に使用しやすい。熟練技術者は不要である。さらには、本発明の技術は、短期間で、場合によっては5分未満で結果を提供する。
【0015】
本発明はまた、希釈されていない試料、たとえば希釈されていない血漿又は血清試料に対して実施することができる。さらには、本発明の方法はまた、試料をろ過して全血から赤血球を除去するステップを含み、それにより、希釈されていない全血試料に対して方法を直接実施することが可能である。したがって、本発明の方法は、前処理ステップを要さず、熟練していないユーザでも容易に実施することができる。
【0016】
本発明はまた、本発明の試験を実施する際に使用するための試薬混合物であって、
(a)非HDLリポタンパク質とでたとえば選択的に複合化し得るPEG化タンパク質、
(b)コレステロールエステル加水分解試薬、
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、及び場合によっては
(f)界面活性剤
を含む試薬混合物を提供する。
【0017】
同じく本発明によって提供されるものは、高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する電気化学的方法で使用するための試薬混合物であって、
(b)コレステロールエステル加水分解試薬、
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、
(d)補酵素、
(e)酸化又は還元されて生成物を形成し得る酸化還元剤、及び場合によっては
(h)低密度及び/又は超低密度リポタンパク質とで複合体を形成し得る複合化試薬、及び/又は
(i)PEG化タンパク質
を含み、コレステロールエステル加水分解試薬及び/又はコレステロールオキシダーゼもしくはコレステロールデヒドロゲナーゼがポリエチレングリコールで修飾されたものである試薬混合物である。
【0018】
本発明はまた、高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定するためのキットであって、(a)非HDLリポタンパク質とで選択的に複合化し得るPEG化タンパク質、(b)コレステロールエステル加水分解試薬、(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、場合によっては(f)界面活性剤、及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応するコレステロールの量を計測するための手段を含むキットを提供する。
【0019】
同じく提供されるものは、
作用電極、参照又は疑似参照電極、及び場合によっては別個の対電極を有する、電気化学的セル、
上記のような試薬(たとえば、(a)非HDLリポタンパク質とで選択的に複合化し得るPEG化タンパク質、(b)コレステロールエステル加水分解試薬、(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、(d)補酵素、(e)酸化又は還元されて生成物を形成し得る酸化還元剤、及び場合によっては(f)界面活性剤及び/又は(g)レダクターゼ)、
セルに電位を印加するための電源、及び
得られる電気化学的応答、たとえばセルに流れる電流を計測するための計器
を含むキットである。
【0020】
したがって、本発明は、試料のHDLコレステロール含量を電気化学的手段によって測定するためのキットを提供する。このキットは特に使いやすい。ユーザはただ、試験する試料を加え、セルに電位を印加し、発生する電流を計測するだけでよい。したがって、特定量の試薬の添加を伴うさらなるステップは不要である。さらには、装置は、必要な各試薬の所定量を収容することができ、ユーザが特定量の材料を計量する必要を避けることができる。
【0021】
さらなる好ましい実施態様では、電気化学的セルは受け器又は部分的受け器の形態にあり、作用電極は受け器又は部分的受け器の壁にあり、試薬(たとえば試薬(a)〜(e)、ならびに場合によっては(f)及び/又は(g))は受け器又は部分的受け器内に少なくとも部分的に収容されている。好ましい代替態様では、装置は、その中に形成された少なくとも1個の受け器又は部分的受け器を有するストリップ(strip)を含み、受け器又は部分的受け器は、ストリップの第一の面に第一の開口部分を有して試料を受け器又は部分的受け器に入れることを可能にし、
電気化学的セルの作用電極は受け器又は部分的受け器の壁にあり、
電気化学的セルの参照又は疑似参照電極は、ストリップの第一の面の少なくとも一部に形成された参照又は疑似参照電極層を含み、
試薬(たとえば試薬(a)〜(e)、及び場合によっては(f)及び/又は(g))は受け器又は部分的受け器内に少なくとも部分的に収容されている。
【0022】
本発明はまた、本発明のキットを運用する方法であって、
(i)(1)上記のような試薬(たとえばPEG化タンパク質、コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、補酵素、酸化還元剤、ならびに場合によっては界面活性剤及び/又はレダクターゼ)及び(2)高密度リポタンパク質含有試料を互いに接触させ、次いで電極と接触させること、
(ii)電気化学的セルに電位を印加すること、及び
(iii)得られる電気化学的応答、たとえばセルに流れる電流を計測することにより、形成した生成物の量を電気化学的に検出すること
を含む方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに、高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する方法における、非HDLリポタンパク質の選択的複合化剤、一般にはLDL、VLDL及びCM複合化剤としてのPEG化タンパク質の使用を提供する。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、試料のHDLコレステロール含量を選択的に測定する方法であって、試料が、HDLだけでなく、コレステロールに結合する他のリポタンパク質をも含有し得る場合に試料のHDLコレステロール含量を選択的に測定する方法を提供する。一つの実施態様では、方法は、試料を、非HDLリポタンパク質とで選択的に複合化し得るPEG化タンパク質と反応させることを含む。一般に、PEG化タンパク質は、LDL、VLDL及びCMとで選択的に複合化し得る。試料中のHDLはそのようなPEG化タンパク質とで複合化しない。したがって、PEG化タンパク質の使用が、非HDLリポタンパク質がコレステロール試験に関与することを阻止し、その一方で、HDLを反応に利用可能にすると考えられる。PEG化タンパク質は、非HDLリポタンパク質とで1:1複合体を形成することもできるし、より大きな凝集塊、たとえば試料に不溶性である沈殿物を形成することもできる。
【0025】
PEG化タンパク質試薬で使用するためのタンパク質の例は、ポリアミノ酸(たとえばポリリシン)、ゼラチン、リゾチーム、ラクトアルブミン及び血清アルブミン(たとえばウシ血清アルブミン)を含む。PEG化タンパク質試薬で使用するのに好ましいタンパク質としては、酵素安定化活性を有するタンパク質が挙げられる。たとえば、アルブミン、特にウシ血清アルブミン(BSA)が、その酵素安定化性のおかげで、好ましいタンパク質である。そのようなタンパク質を使用する利点は、コレステロール試験で使用される酵素を、PEG化タンパク質により、さらなる安定剤を加えることなく安定化し得ることである(ただし、望むならば、さらなる安定剤を使用することもできる)。血液試料に対して試験が実施される場合、アルブミンタンパク質は、血液中に高い量で存在し、したがって、血液を試験するのに適切なコレステロール試験に対して一般に不活性であるというさらなる利点を有する。また、使用されるコレステロール試験に対して同じく不活性である、アルブミン以外のタンパク質が考えられる。
【0026】
一般に、試験される試料と混合される場合のPEG化タンパク質の濃度は、約1〜10%、たとえば約5%w/v(重量/容量)である。
【0027】
タンパク質のPEG化は一般に、当該技術で通常の手法にしたがって実施される。一般に、PEGは、タンパク質への添加を可能にするため、使用前に活性化される。たとえば、まずPEGを活性化してPEGプロピオン酸を形成することができ、次いでそれをスクシンイミジル基でエステル化する。このような活性化生成物は、たとえばNektar Therapeutics USAから市販されている。そして、PEGをタンパク質と一般に1:1〜1:8、好ましくは1:2の比で反応させる。一般に、2〜30k、たとえば4〜20k又は5〜10kの分子量を有するPEGが使用される。
【0028】
本発明の方法では、HDLを分解し、HDLに結合したコレステロール又はコレステロールエステルのすべてが反応に利用可能になることを保証するため、界面活性剤を使用することもできる。適当な界面活性剤の例は、ポリオキシエチレン誘導体、たとえばポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルを含む。好ましい界面活性剤はB66(花王株式会社)である。界面活性剤は一般に、試験される試料1mlあたり500mgまで、好ましくは200mg/mlまでの量、たとえば約50mg/mlで使用される。
【0029】
試料のHDLコレステロールの計測は、コレステロールを計測するのに適した技術によって実施することができる。好ましい技術は、試料をコレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させることを含む。HDLリポタンパク質に含まれるコレステロールは、遊離コレステロール又はコレステロールエステルの形態にあることができる。したがって、コレステロールエステル加水分解試薬を使用してコレステロールエステルを遊離コレステロールに分解する。そして、遊離コレステロールをコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させ、そのような反応を起こしたコレステロールの量を計測する。
【0030】
コレステロールエステル加水分解試薬は、コレステロールエステルをコレステロールに加水分解し得るいかなる試薬であってもよい。試薬は、コレステロールとコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼとの反応及び試験における後続のステップに干渉しない試薬であるべきである。好ましいコレステロールエステル加水分解試薬は、酵素、たとえばコレステロールエステラーゼ及びリパーゼである。適当なリパーゼは、たとえば、シュードモナス(pseudomonas)又はクロモバクテリウムビスコサム種(chromobacterium viscosum species)からのリパーゼである。場合によっては添加物、たとえば安定剤又は防腐剤を含有する市販の酵素、たとえばToyobo又はAmanoから市販されている酵素を使用することもできる。コレステロールエステル加水分解試薬は、試料100μlあたり0.1〜20mgの量、好ましくは100μlあたり0.5〜15mgの量で使用される。
【0031】
市販されている任意の形態のコレステロールオキシダーゼ及びコレステロールデヒドロゲナーゼを使用することができる。たとえば、コレステロールデヒドロゲナーゼは、たとえば、ノルカジア種(Norcardia species)のコレステロールデヒドロゲナーゼである。コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼは、試薬混合物100μlあたり0.01mg〜100mgの量で使用することができる。一つの実施態様では、コレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼは、試料100μlあたり0.1〜20mg、好ましくは0.5〜10mgの量で使用される。
【0032】
各酵素は、添加剤、たとえば安定剤又は防腐剤を含有することができる。PEG化BSAがPEG化タンパク質として使用されるならば、安定剤の必要性を軽減又は回避することができる。さらには、各酵素は化学的に修飾されていることができる。たとえば、これらは、以下に記すようなPEG化された酵素であることができる。
【0033】
PEG化タンパク質は、他の試薬の添加の前に試料に添加することもできるし、他の試薬の添加と同時に試料に添加することもできる。好ましい実施態様では、コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼ及びPEG化タンパク質が単一の試薬混合物中に存在し、その試薬混合物を単一ステップで試料と合わせる。
【0034】
本発明の計測は、HDLコレステロールを含有するいかなる適当な試料に対しても実施することができる。計測は一般に、全血又は血液成分、たとえば血清又は血漿に対して実施される。本発明の方法で使用するのに好ましい試料は血清及び血漿である。全血に対して計測が実施される場合、方法は、血液をろ過して赤血球を除去するさらなるステップを含むこともできる。
【0035】
本発明の好ましい実施態様では、HDLコレステロール含量を計測するために電気化学的技術が使用される。この実施態様では、一般に、試料を、PEG化タンパク質、コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと相互作用し得る補酵素、及び酸化又は還元されると、電極で電気化学的に検出し得る生成物を形成し得る酸化還元剤と反応させる。試料と試薬との混合物を電気化学的セルの作用電極と接触させて、発生する酸化還元反応を検出することができるようにする。電位をセルに印加し、得られる電気化学的応答、一般には電流を計測する。
【0036】
この好ましい実施態様では、HDLコレステロールの量は以下の試験にしたがって計測される。
【0037】
【化1】

【0038】
式中、ChDはコレステロールデヒドロゲナーゼである。この試験では、望むならば、コレステロールデヒドロゲナーゼをコレステロールオキシダーゼに換えることもできる。試験によって生成される還元された酸化還元剤の量は電気化学的に検出される。適切ならば、さらなる試薬をこの試験に含めることもできる。
【0039】
一般に、試料は単一ステップで試薬のすべてと接触する。したがって、試験を実施するために、必要な試薬すべてを含有し、試料と容易に接触させることができる試薬混合物が提供される。本発明の試薬混合物は一般に、PEG化タンパク質1〜10%v/w(100μlあたり1〜10mg)、好ましくは2〜8%(100μlあたり2〜8mg)、コレステロールエステル加水分解試薬100μlあたり0.1〜20mg、好ましくは0.5〜10mg及びコレステロールデヒドロゲナーゼ100μlあたり0.1〜20mg、好ましくは0.5〜10mgを含む。
【0040】
通常、補酵素はNAD+又はその類似体である。NAD+の類似体とは、NAD+と共通の構造的特徴を有し、同じくコレステロールデヒドロゲナーゼのための補酵素として働く化合物である。NAD+の類似体の例は、APAD(アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド)、TNAD(チオNAD)、AHD(アセチルピリジンヒポキサンチンジヌクレオチド)、NaAD(ニコチン酸アデニンジヌクレオチド)、NHD(ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチド)及びNGD(ニコチンアミドグアニンジヌクレオチド)を含む。酵素は一般に、試薬混合物中、1〜20mM、たとえば3〜15mM、好ましくは5〜10mMの量で存在する。
【0041】
一般に、酸化還元剤は、上記で示した試験にしたがって還元し得る酸化還元剤であるべきである。この場合、酸化還元剤は、補酵素から(又は以下に記すレダクターゼから)電子を受容し、その電子を電極に移送し得る酸化還元剤であるべきである。酸化還元剤は分子又はイオン複合体であることができる。天然の電子受容体、たとえばタンパク質であってもよいし、合成分子であってもよい。酸化還元剤は一般に、少なくとも二つの酸化状態を有する。
【0042】
好ましくは、酸化還元剤は無機複合体である。酸化還元剤は、金属イオンを含むことができ、好ましくは、少なくとも二つの原子価を有する。特に、酸化還元剤は遷移金属イオンを含むことができ、好ましい遷移金属イオンとしては、コバルト、銅、鉄、クロム、マンガン、ニッケル又はルテニウムの遷移金属イオンが挙げられる。酸化還元剤は、荷電していてもよく、たとえばカチオン性又はアニオン性であってもよい。適当なカチオン性酸化還元剤の例はルテニウム複合体、たとえばRu(NH363+であり、適当なアニオン性酸化還元剤の例はフェリシアン化物複合体、たとえばFe(CN)63-である。
【0043】
使用し得る複合体の例は、Cu(EDTA)2-、Fe(CN)63-、Fe(CN)5(O2CR)3-、Fe(CN)4(オキサレート)3-、Ru(NH363+及びそのキレートアミン配位子誘導体(たとえばエチレンジアミン)、Ru(NH35(py)3+、フェロセニウム及び2個のシクロペンタジエニル環の一方又は両方の中に置換された−NH2、−NHR、−NHC(O)R及び−CO2Hのような基1個以上を有するその誘導体を含む。好ましくは、無機複合体は、Fe(CN)63-、Ru(NH363+又はフェロセニウムモノカルボン酸(FMCA)である。
【0044】
酸化還元剤は一般に、試薬混合物中、10〜200mM、たとえば30〜150mM、好ましくは50〜100mMの量で存在する。
【0045】
本発明の一つの実施態様では、酸化還元剤は複合化剤としても働く。Ru3+化合物、たとえばRu(NH363+が本実施態様における使用に特に好ましい酸化還元剤である。したがって、PEG化タンパク質及び酸化還元剤を組み合わせて使用して非HDLリポタンパク質を選択的に複合化することができる。このように、酸化還元剤、特にRu3+化合物は、非電気化学的試験を含む本発明のいかなる試験ででも複合化剤として使用することができる。
【0046】
好ましい実施態様では、電気化学的試験に使用される試薬混合物はレダクターゼをさらに含む。レダクターゼは一般に、還元されたNADから2個の電子を移送し、2個の電子を酸化還元剤に移送する。したがって、レダクターゼの使用は速やかな電子移送を提供する。
【0047】
使用し得るレダクターゼの例は、ジアホラーゼ及びチトクロームP450レダクターゼ、特にPseudomonas putidaからのチトクロームP450cam酵素系のプチダレドキシンレダクターゼ、Bacillus megateriumからのP450BM-3酵素のフラビン(FAD/FMN)ドメイン、ホウレンソウフェロドキシンレダクターゼ、ルブレドキシンレダクターゼ、アドレノドキシンレダクターゼ、硝酸レダクターゼ、チトクロームb5レダクターゼ、トウモロコシ硝酸レダクターゼ、テルプレドキシンレダクターゼならびに酵母、ラット、ウサギ及びヒトNADPHチトクロームP450レダクターゼを含む。硝酸レダクターゼが使用される場合、好ましくは、トウモロコシ硝酸レダクターゼが使用される。本発明における使用に好ましいレダクターゼとしては、ジアホラーゼ及びプチダレドキシンレダクターゼがある。
【0048】
レダクターゼは、組換えタンパク質であってもよいし、精製又は単離された天然のタンパク質であってもよい。レダクターゼは、その性能を改善するために、たとえば電子移送を実施する速度又はその基質特異性を最適化するために、変異(mutated)されていてもよい。
【0049】
レダクターゼは一般に、試薬混合物中、0.5〜100mg/ml、たとえば1〜50mg/ml、1〜30mg/ml又は5〜20mg/mlの量で存在する。
【0050】
本発明の好ましい実施態様では、電気化学的試験の一般式は以下のとおりである。
【0051】
【化2】

【0052】
式中、
RdRはプチダレドキシンレダクターゼであり、
Diaはジアホラーゼであり、
ChDはコレステロールデヒドロゲナーゼである。
【0053】
試薬混合物は、場合によっては、1種以上のさらなる成分、たとえば上記のような界面活性剤及び/又は付形剤及び/又は緩衝液及び/又は安定剤を含有する。好ましくは、混合物を安定化し、場合によっては、試薬混合物を乾燥させて本発明の装置に付着させる場合、乾燥混合物中に気孔を提供するために付形剤が試薬混合物に含まれる。適当な付形剤の例は、糖、たとえばマンニトール、イノシトール及びラクトースならびにPEGを含む。また、グリシンを付形剤として使用することもできる。また、最適な酵素活性に必要なpHを提供するために緩衝液を含めてもよい。たとえば、トリス緩衝液(pH9)を使用してもよい。安定剤を加えて、たとえば酵素安定性を改善してもよい。適当な安定剤の例はアミノ酸、たとえばグリシン及びエクトインである。
【0054】
好ましい実施態様では、本発明の電気化学的試験のための試薬混合物は、ポリアミノ酸、ゼラチン、リゾチーム、ラクトアルブミン及び血清アルブミンから選択されるPEG化タンパク質、コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、NAD+又はその類似体、レダクターゼ及び酸化還元剤を含む。より好ましい実施態様では、試薬混合物は、PEG化BSA、コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、NAD+又はその類似体、ジアホラーゼ又はプチダレドキシンレダクターゼ及びRu(NH363+を含む。
【0055】
また、本発明の電気化学的試験で使用するための代替試薬混合物が提供される。この実施態様では、コレステロールエステル加水分解試薬及び/又はコレステロールオキシダーゼもしくはコレステロールデヒドロゲナーゼがPEG化されて、他のリポタンパク質よりもHDLに対する必要な選択性が提供される。したがって、さらなるPEG化タンパク質の包含がこの実施態様の任意の特徴である。試料はまた、コレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼに加えて、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと相互作用し得る補酵素、酸化又は還元されると、電極で電気化学的に検出し得る生成物を形成し得る酸化還元剤ならびに場合によって界面活性剤及び/又はレダクターゼと反応させる。これらのさらなる試薬は一般に、本発明の第一の実施態様に関して上記したとおりである。
【0056】
試料と試薬との混合物を電気化学的セルの作用電極と接触させて、発生する酸化還元反応を検出することができるようにする。電位をセルに印加し、得られる電気化学的応答を計測する。一般に、HDLコレステロールの量は、上記の酸化還元試験にしたがって計測される。一般に、試薬のすべてを単一ステップで試料と接触させる。したがって、必要な試薬すべてを含む試薬混合物が提供される。
【0057】
コレステロールエステル加水分解試薬は一般に、上記のような酵素、たとえばコレステロールエステラーゼ又はリパーゼである。コレステロールエステル加水分解試薬として使用される酵素及び/又はコレステロールオキシダーゼもしくはコレステロールデヒドロゲナーゼは、PEG、たとえば3000〜6000の分子量を有するPEGで修飾されている。好ましい実施態様では、コレステロールエステル加水分解試薬はPEG化酵素であり、修飾されていない又は修飾されているコレステロールデヒドロゲナーゼが使用される。さらなる好ましい実施態様では、コレステロールエステル加水分解試薬はPEG化コレステロールエステラーゼ又はリパーゼであり、修飾されている又は修飾されていないコレステロールデヒドロゲナーゼが使用される。
【0058】
試料はまた、上記のようなPEG化タンパク質及び/又は非HDLリポタンパク質、一般にはLDL及びVLDLとで複合体を形成し得る複合化試薬と反応させることができる。複合化試薬はまた、キロミクロン(CM)とで複合体を形成することができる。ひとたび複合化形態になると、LDL、VLDL及びCMは、酵素との反応に応じなくなり、したがって、上記の試験に干渉しない。このようにして、試験は、HDLコレステロールに対するさらなる選択性を有する。しかし、PEG化試薬の使用のおかげで、そのような複合化剤は不可欠ではない。
【0059】
複合化試薬は、LDL、VLDL又はCMとで1:1複合体を形成することもできるし、より大きな凝集塊、たとえば試料に不溶性である沈殿物を形成することもできる。このような不溶性沈殿物は電気化学的試験ステップに干渉しない。複合化剤の例は、ポリアニオン、ポリアニオンと二価金属塩との組み合わせ及びアポB含有リポタンパク質に結合し得る抗体を含む。ポリアニオンは、リンタングステン酸及びその塩、デキストラン硫酸及びその塩、ポリエチレングリコールならびにヘパリン及びその塩から選択することができ、一般に、試薬混合物中、200mMまで、たとえば10〜200mM、たとえば30〜150mM、好ましくは50〜100mMの量で存在する。リンタングステン酸及びその塩が好ましいポリアニオンである。二価金属塩は、IIA属金属、たとえばMg、Ca及びMnの塩を含み、一般に、試薬混合物中、10〜200mM、たとえば30〜150mM、好ましくは50〜100mMの量で存在する。Mgが好ましい金属である。アニオンは一般に、ハロゲン化物イオン、たとえば塩化物イオン又は硫酸イオンである。MgCl2及びMgSO4が好ましい二価金属塩である。
【0060】
本発明の好ましい態様では、試薬混合物は、PEG修飾コレステロールエステラーゼ又はPEG修飾リパーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、NAD+又はその類似体、レダクターゼ、酸化還元剤、及び場合によっては複合化試薬又はPEG化タンパク質を含む。より好ましい実施態様では、試薬混合物は、PEG修飾コレステロールエステラーゼ又はPEG修飾リパーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、NAD+又はその類似体、ジアホラーゼ又はプチダレドキシンレダクターゼ、Ru(NH363+ならびに場合によってはリンタングステン酸及び二価金属塩、たとえばMgCl2又はPEG化BSAを含む。
【0061】
本発明の試薬混合物は一般に、固体形態、たとえば乾燥形態で又はゲルとして提供される。あるいはまた、溶液又は懸濁液の形態にあることもできる。反応混合物中に存在する各成分の量は上記ではモル濃度又はw/vに換算して表されているが、当業者は、これらの量を、存在する各成分の相対量が同じであるよう、乾燥混合物又はゲルに適した単位に適合させることができよう。
【0062】
電気化学的計測が全血に対して実施される場合、得られる計測はヘマトクリットに依存するおそれがある。したがって、計測は、理想的には、この要因を少なくとも部分的に考慮するように調節されるべきである。あるいはまた、試験を実施する前に試料をろ過することによって赤血球を除去することもできる。
【0063】
本発明はまた、HDL含有試料のHDLコレステロール含量を選択的に測定するためのキットを提供する。キットは、必要な試薬、たとえばPEG化タンパク質、コレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼならびにオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼと反応するコレステロールの量を計測するための手段を含む。
【0064】
好ましい実施態様では、キットは、HDLコレステロール含量の電気化学的測定のための装置を含む。この実施態様では、反応したコレステロールの量を測定するための手段は、作用電極、参照電極又は疑似参照電極及び場合によっては別個の対電極を有する電気化学的セル、セルに電位を印加するための電源ならびに得られる電気化学的応答、一般にはセルに流れる電流を計測するための計器を含む。
【0065】
また、電気化学的測定のための装置は一般に、上記のような試薬混合物を含む。試薬は、キット中に個別に存在することもできるし、一つ以上の試薬混合物の形態で存在することもできる。単一の試薬混合物が好ましい。試薬混合物は、装置中、液体又は固体の形態で存在することができるが、好ましくは固体形態である。
【0066】
一般に、試薬混合物は、適当な液体(たとえば水又は緩衝液)中に懸濁/溶解した状態で装置中に挿入又は装置上に配置したのち、所定の場所で乾燥させる。材料を装置中/装置上で乾燥させるこのステップは、材料を所望の位置に維持するのに役立つ。乾燥は、たとえば、空気乾燥、真空乾燥、凍結乾燥又はオーブン乾燥(加熱)によって、好ましくは凍結乾燥によって実施することができる。試薬混合物は一般に、試料が試薬混合物と接触するとき電極との接触が同じく起こるよう、電極の近くに配置される。
【0067】
本発明の一つの実施態様では、電気化学的セルは受け器の形態にある。受け器は、その中に配置される液体を収容することができる限り、いかなる形状であってもよい。たとえば、受け器は円柱形であることができる。一般に、受け器は、ベース及びベースを包囲する壁を含む。この実施態様では、遷移金属塩を含む材料が一般に受け器の中に配置される。
【0068】
あるいはまた、セルは、部分的受け器の形態にあってもよい。この実施態様では、セルは、別個の支持体に対して配置されたとき、部分的受け器がその支持体といっしょになって受け器を形成するように設計されている。この実施態様では、部分的受け器は、第一の開口部分を第二の開口部分と接続する壁を含む。第二の開口部分が支持体に対して配置されて受け器を形成して、支持体が、そのように形成された受け器の真のベースを形成するようにすることができる。望むならば、第二の開口部分を透過性又は半透過性の膜によって覆ってもよい。
【0069】
電気化学的セルは少なくとも1個のマイクロ電極を有することが好ましい。一般に、作用電極がマイクロ電極である。本発明に関して、マイクロ電極とは、50μmを超えない少なくとも一つの作用寸法を有する電極である。本発明のマイクロ電極は、マクロのサイズ、すなわち50μmよりも大きい寸法を有することができる。
【0070】
電極の「作用寸法」とは、運用中に試験溶液と接触する寸法である。さらには、作用寸法は、電極が、真のマイクロ電極の典型的な応答に少なくとも部分的に対応する電気化学的応答を有するようにする寸法である。いかなる特定の理論によっても拘束されることは望まないが、電極は、その「ミクロ」固有応答(電極に対する半径方向拡散)とその「マクロ」固有応答(電極に対する半無限拡散)との和である電気化学的応答を有するものとみなすことができる。本発明に関連して、4cpの粘度を有する溶液を使用しての電位の印加から5秒後に電気化学的応答を測定する場合、「ミクロ電極」は一般に、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%が電極の「ミクロ」挙動によって決定される応答を有する。
【0071】
電気化学的セルは、2電極系であってもよいし、3電極系であってもよい。2電極系は、作用電極及び疑似参照電極を含む。3電極系は、作用電極、参照電極及び別個の対電極を含む。本明細書で使用する参照又は疑似参照電極とは、参照電位を提供し得る電極である。疑似参照電極はまた、対電極としても働き、参照電位を実質的に摂動させることなく電流を通すことができる。
【0072】
本発明の一つの実施態様の装置が図1に示されている。この実施態様では、作用電極5がマイクロ電極である。セルは、ベース1及び壁2を有する受け器又は容器の形態にある。一般に、受け器は、深さ(すなわち上下)が25〜1000μmである。一つの実施態様では、受け器の深さは50〜500μm、たとえば100〜250μmである。代替態様では、受け器の深さは50〜1000μm、好ましくは200〜800μm、たとえば300〜600μmである。受け器の長さ及び幅(すなわち壁から壁まで)又は、円柱形の受け器の場合、直径は、一般には0.1〜5mm、たとえば0.5〜1.5mm、たとえば1mmである。
【0073】
受け器3の開口端は、不透過性材料によって部分的に覆われていてもよいし、半透過性又は透過性材料、たとえば半透過性又は透過性膜によって覆われていてもよい。好ましくは、受け器の開口端は、半透過性又は透過性膜4で実質的に覆われている。膜4は、とりわけ、粉塵又は他の汚染物質が受け器に入るのを防ぐように働く。
【0074】
膜4は、試験される試料が透過し得る材料でできている。たとえば、試料が血漿であるならば、膜は、血漿に対して透過性であるべきである。また、膜は、好ましくは、低いタンパク質結合能力を有するべきである。膜としての使用に適した材料としては、ポリエステル、硝酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスルホン、微孔質ポリエーテルスルホンフィルム、PET、綿及びナイロン織布、コートされたガラス繊維ならびにポリアクリロニトリル布が挙げられる。これらの布は、場合によっては、使用前に親水又は疎水処理を施されることもある。また、所望により、膜の他の表面特性を変化させてもよい。たとえば、膜の水中接触角を変化させるための処理を使用して、膜を透過する所望の試料の流れを促進することもできる。膜は、同じであっても異なってもよい一つ、二つ又は三つ以上の材料層を含むことができる。たとえば、異なる膜材料の二つの層を含む従来の二層膜を使用することができる。
【0075】
膜はまた、セルに入ることが望まれない一部の成分をろ別するために使用することもできる。たとえば、一部の血液産物、たとえば赤血球及び/又はリンパ球をこの方法で分別してこれらの粒子がセルに入らないようにすることができる。血液ろ過膜をはじめとする適当なろ過膜が当該技術で公知である。血液ろ過膜の例は、Pall filtrationのPresence 200及びPALL BTS SP300、Whatman VF2、Whatman Cyclopore、Spectral NX及びSpectral Xである。ガラス繊維フィルタ、たとえばWhatman VF2は、全血から血漿を分離することができ、全血検体が装置に供給され、試験される試料が血漿である場合の使用に適している。
【0076】
本発明のこの実施態様に関して、試料は、作用電極と接触する(試薬混合物と混合された場合)材料である。一つの実施態様では、試料を含む検体が本発明の装置に供給され、検体が膜に通してろ過されたのち作用電極と接触する。たとえば、検体は全血であることができ、方法は、血漿又は血清だけが作用電極と接触するよう検体から赤血球を除去する(たとえば血液ろ過膜を使用して)ステップを含むことができる。この場合、試料は血漿又は血清である。
【0077】
本発明のこの実施態様の電気化学的セルは、受け器の壁に位置する作用電極5を含む。作用電極は、たとえば、受け器の壁の周囲の連続的な帯状物の形態にある。作用電極の厚さは、一般には0.01〜25μm、好ましくは0.05〜15μm、たとえば0.1〜20μmである。また、厚めの作用電極、たとえば厚さ0.1〜50μm、好ましくは5〜20μmの電極が考えられる。作用電極の厚さとは、受け器がそのベースを下にして配置された場合の垂直方向のその寸法である。作用電極の厚さはその有効作用寸法である。すなわち、電極のうち、試験される試料と接触する寸法である。作用電極は、好ましくは、炭素、パラジウム、金又は白金から、たとえば導電インクの形態で形成される。導電インクは、さらなる材料、たとえば白金及び/又はグラファイトを含有する改質インクであってもよい。同じ又は異なる材料で形成されている二つ以上の層を使用して作用電極を形成することもできる。
【0078】
セルはまた、たとえば受け器のベース、受け器の壁又は受け器を包囲する、もしくは受け器に近い装置区域に存在し得る疑似参照電極を含む。疑似参照電極は一般にAg/AgClから作られるが、他の材料を使用してもよい。疑似参照電極としての使用に適した材料は当業者に公知であろう。この実施態様では、セルは、疑似参照電極が対電極及び参照電極の両方として働く2電極系である。また、セルが参照電極及び別個の対電極を含む代替態様を考えることもできる。
【0079】
疑似参照(又は参照)電極は一般に、作用電極5の表面積と同程度であるか、それよりも小さい又は大きい、たとえば実質的に大きい表面積を有する。一般に、疑似参照(又は参照)電極の表面積と作用電極の表面積との比は、少なくとも1:1、たとえば少なくとも2:1又は少なくとも3:1である。好ましい比は少なくとも4:1である。疑似参照(又は参照)電極は、たとえば、マイクロ電極であってもよい。好ましい疑似参照(又は参照)電極は、0.01mm以上、たとえば0.1mm以上の寸法を有する。これは、たとえば、0.1mm以上の直径であってもよい。疑似参照(又は参照)電極の典型的な面積は、0.001mm2〜100mm2、好ましくは0.1mm2〜60mm2、たとえば1mm2〜50mm2である。作用電極と疑似参照(参照)電極との間の最小距離は、たとえば10〜1000μmである。
【0080】
セルが作動するためには、電極は、それぞれが絶縁材6によって切り離されなければならない。絶縁材は、一般にはポリマー、たとえばアクリレート、ポリウレタン、PET、ポリオレフィン、ポリエステル又は他の安定な絶縁材である。ポリカーボネート及び他のプラスチックならびにセラミックスもまた、適当な絶縁材である。絶縁層は、ポリマー溶液から溶剤蒸発によって形成することができる。また、塗布後に硬化する液体、たとえばワニスを使用してもよい。あるいはまた、たとえば熱もしくはUVへの暴露又は二成分架橋系の活性部分との混合によって架橋する架橋性ポリマー溶液を使用してもよい。また、適切な場合には、絶縁インクを使用して絶縁層を形成してもよい。代替態様では、絶縁層を装置に対して積層、たとえば熱的に積層させる。
【0081】
電気化学的セルの電極は、適当な手段によって必要な計器に接続することができる。一般に、電極は導電トラックに接続され、その導電トラック自体が必要な計器に接続されるか、接続されることができる。
【0082】
必要な試薬は一般に、図1の7で示すように受け器内に収容される。一般に、単一の試薬混合物の形態にある試薬を液体形態で受け器に挿入したのち、乾燥させて組成物を固定化しやくする。試薬混合物は、たとえば、空気乾燥、真空乾燥、凍結乾燥又はオーブン乾燥(加熱)させることができるが、もっとも好ましくは、凍結乾燥させる。試料が受け器に導入されると、乾燥材料が再懸濁して、試薬及び試料を含む液体を形成し、その液体が、受け器の壁に位置する作用電極と接触する。また、液体は一般に、参照及び対電極(3電極系)又は疑似参照電極(2電極系)と接触する。このようにして、セルに電圧が印加されると、電気化学的反応が起こることができ、計測可能な電流が発生する。一般には、電圧を印加する前にたとえば20秒又は、受け器の上に膜が存在する場合には、1秒〜5分の湿潤時間をおいて、乾燥材料を再懸濁させる。
【0083】
受け器は、たとえば、そのベース又はその壁(図1には示さず)に1個以上の小さな空気穴を含むことができる。これらの穴は、試料が受け器に入るとき受け器から空気を逃がす。そのような空気穴が存在しないならば、試料は、開口端上に流れたときでも、受け器に入ることができないか、入ることができるとしても困難である。空気穴は一般に、毛管的寸法を有し、たとえば、1〜600μm、たとえば100〜500μmのおおよその直径を有することができる。空気穴は、試料が空気穴を通って受け器から抜けることを表面張力により実質的に阻止されるのに十分なほど小さいべきである。一般に、1〜4個の空気穴を設けることができる。
【0084】
セルは、場合によっては、作用及び参照電極に加えて別個の対電極を含むことができる。対電極を製造するのに適した材料は当業者には公知である。Ag/AgClが適当な材料の例である。
【0085】
HDLコレステロールの電気化学的測定のための代替装置が図2に示されている。この実施態様の装置は、以下に述べることを除き、図1に示す、先に説明した装置と同じである。この実施態様では、装置はストリップSを含む。ストリップSは、任意の形状及びサイズを有することができるが、一般に、実質的に平坦である第一の表面61、62を有する。ストリップは、ベース1及び壁2によって画定される受け器10を含む。装置はさらに、受け器の壁に作用電極5を有する電気化学的セルを含む。作用電極は一般にマイクロ電極である。
【0086】
本実施態様の装置は、参照電極及び対電極として働く疑似参照電極を含む。あるいはまた、別個の対電極及び参照電極を使用してもよい。疑似参照(又は参照)電極は、ストリップ61、62の第一の面に存在する疑似参照(又は参照)電極層8を含む。ストリップの第一の面は外面である。すなわち、受け器の内部に露呈する面ではなく、装置の外側に露呈する面である。一般に、疑似参照(又は参照)電極層は受け器又は部分的受け器10を実質的に包囲する。図2に示すように、疑似参照(又は参照)電極層は第一の開口部分3の周囲と接触しないことが好ましい。一般に、疑似参照(又は参照)電極層は、第一の開口部分から少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.2mmの距離にある。しかし、疑似参照(又は参照)電極の少なくとも一部は、第一の開口部分の周囲から一般に2mm以下、たとえば1mm又は0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下の距離にある。一つの実施態様では、疑似参照(又は参照)電極は、第一の開口部分の周囲から0.01〜1.0mm、たとえば0.1〜0.5mm又は0.2〜0.4mmの距離のところで受け器又は部分的に受け器を実質的に包囲する。あるいはまた、この距離は、0.01〜0.3mm又は0.4〜0.7mmであってもよい。
【0087】
疑似参照(又は参照)電極の厚さは一般に、作用電極の厚さと同程度又はそれよりも大きい。適当な最小厚さは0.1μm、たとえば0.5、1、5又は10μmである。適当な最大厚さは50μm、たとえば20又は15μmである。
【0088】
疑似参照(又は参照)電極8は一般に、作用電極5の表面積と同程度(又はそれよりも小さい)又はそれよりも大きい、たとえば実質的に大きい表面積を有する。一般に、疑似参照(又は参照)電極の表面積と作用電極の表面積との比は、少なくとも1:1、たとえば少なくとも2:1又は少なくとも3:1、好ましくは少なくとも4:1である。疑似参照(又は参照)電極は、たとえば、マイクロ電極であってもよい。疑似参照(又は参照)電極の表面積と作用電極の表面積との比が1:1よりも大きい場合、それは、疑似参照(又は参照)電極で起こる電気化学的反応が電流制限性ではないことを保証するのに役立つ。疑似参照(又は参照)電極の実面積は、たとえば0.001mm2〜100mm2又は0.01mm2〜60mm2、たとえば0.1mm2〜60mm2、たとえば50mm2以下又は10mm2である。
【0089】
膜4は、適当な取付手段9、たとえば両面接着テープを使用して装置に取り付けることができる。一般に、取付手段は、膜をストリップの第一の面又は疑似参照(又は参照)電極層に取り付ける。図2に示す好ましい実施態様では、膜は、受け器そのものの周囲から離れた位置で疑似参照(又は参照)電極層8に取り付けられている。さらには、取付手段は、疑似参照(又は参照)電極層からよりも受け器3の第一の開口部分から大きく離れて、擬似参照(又は参照)電極層の表面の、受け器に近い又は受け器を包囲する少なくとも一部が、膜を透過した試料に露呈するようになっている。好ましくは、取付手段は、受け器の周囲から少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.3mm又は少なくとも0.4mmの距離にある。
【0090】
図2に示す実施態様では、受け器のベース1及び壁2、ストリップ61、62の表面の一部、疑似参照(又は参照)電極層8、取付手段9ならびに膜4によって反応容積が画定されている。この反応容積は、受け器の容積、擬似参照(又は参照)電極層の位置及び厚さならびに取付手段9の位置及び厚さを変化させることによって変えることができる。好ましい反応容積は、少なくとも0.05μl、たとえば少なくとも0.1μl又は0.2μlである。反応容積が25μl以下、好ましくは5μl以下、たとえば2μl以下又は1μl以下であることがさらに好ましい。一般的な反応容積は約0.8μlである。
【0091】
図1及び2に示す装置は、ベース1を有する受け器を含む。本発明の代替態様では、ベース1が存在せず、第二の開口部分が1に位置するものであってもよい。この実施態様では、装置は部分的受け器を含む。場合によっては、透過性又は半透過性の膜、たとえば疎水性の通気性膜、たとえばPall FiltrationによるPall Versaporが第二の開口部分の上に配置される。
【0092】
本発明の装置で使用し得る電気化学的セルに関するさらなる詳細は、国際出願PCT/GB05/002587(及びその優先権主張出願GB0414546.2)で見ることができる。この出願の内容をすべて引用例として本明細書に取り込む。
【0093】
本発明の装置は2個以上の電気化学的セルを含むことができる。各セルは、作用電極を含み、対電極をさらに含むこともできる。あるいはまた、2個以上の隣接するセルが同じ対電極を用いることもできる。本発明のこの実施態様は、多数の計測を同時に実施することを可能にする。多数のセルはすべてが同じ試薬混合物を収容することができ、その場合、別々の計測を使用して誤差の排除を支援することもできる。あるいはまた、異なる試薬混合物を各セル中に設けて、複数のパラメータの計測を提供することもできる。また、対照セルを設けてもよい。
【0094】
本発明のキットは、電気化学的セルを含むストリップS(たとえば図2に示し、先に説明したストリップ)及びストリップSとで電子的接触を形成し得る電子部品ユニット、たとえば手持ち型ポータブル電子部品ユニットを含むことができる。電子部品ユニットは、たとえば、電極に電位を提供するための電源ならびに電流を検出するための計器及び他の必要な計器を収容することができる。これらのシステムの1個以上はコンピュータプログラムによって作動することができる。
【0095】
本発明の装置は、作用電極材料層(たとえばグラファイト層)を二つの絶縁材料層の間に含む積層構造を形成することによって製造することができる。そして、この積層体に穴を開け(又は穿つもしくは切る)、それによって受け器の壁を形成する。そして、場合によっては対電極を含むベースを加える。あるいはまた、対電極は、受け器の開口部分を包囲する又はそれに近い絶縁材の上に適当な材料の層をプリントすることによって設けることもできる。受け器のベース又は壁に空気穴が望まれる場合、これは、適当な技術によって、たとえば穴を穿つ又は開けることによって、又は空気透過性膜をベースとして使用することによって形成することができる。図1及び2に示すセルを製造する方法に関する十分な詳細は、先に引用した国際出願PCT/GB05/002587(及びGB0414546.2)から得ることができる。
【0096】
本発明の装置は、試料を装置に提供し、試料を試薬混合物と接触させることによって作動させる。一般に、約20秒の湿潤時間をおいて、試薬混合物を試料中に溶解/懸濁させ、反応を起こさせる。試料/試薬混合物が作用電極と電子的に接触して、電気化学的反応がその電極で起こることができるようにするべきである。
【0097】
次いで、セルに電位を印加し、一般に、発生する電流を計測する。一般に、電位は、試料を装置に提供してから3分以内、たとえば2分以内に印加する。この期間は、好ましくは10秒〜180秒、たとえば10秒〜90秒、たとえば15秒〜1分、15秒〜30秒又は約20秒である。この好ましい範囲内の期間の使用は、HDLに結合したコレステロールのみを検出することを保証するのに役立つ。より長い期間が使用される場合、非HDLリポタンパク質、たとえばLDLに結合した一部のコレステロールが同じく反応して、HDLコレステロール含量の不正確な計測を招くおそれがある。
【0098】
一般に、Ru(II)が、作用電極で検出される生成物である場合、セルに印加される電位は、0.1V〜0.3V又は−0.4V以下、たとえば−0.4V〜−0.6Vである。好ましい印加電位は0.15V及び−0.45Vである。(本明細書で挙げるすべての電圧は、Ag/AgCl参照電極に対する数値である)。好ましい実施態様では、電位は、まず、約1秒間、プラスの印加電位、たとえば0.1〜0.2Vまでステップさせたのち、さらに1秒間、−0.4〜−0.6Vのマイナスの印加電位までステップさせる。二段階の電位ステップの使用が、WO03/097860(全体を引用例として本明細書に取り込む)に記載されているように、電極区域における電極ファウリング及び変動の修正を最小限にすることを可能にする。異なる酸化還元剤が使用される場合、印加電位は、酸化/還元ピークが起こる電位にしたがって異なることができる。
【0099】
実施例
実施例1
図2に示すタイプの、ベース1が膜(Pall Versapor)によって形成されている装置を使用した。作用電極は炭素電極であり、疑似参照電極はAg/AgCl電極であった。壁、ベース、接着剤及び膜4の下面によって画定される容積は約0.8μlであった。試薬混合物を装置の部分的受け器に挿入し、凍結乾燥させたのち、Whatman VF2膜を装置上4で取り付けた。
【0100】
試薬混合物は以下を含むものであった。
ルテニウムヘキサアミン(Mwt309.61)Sigma(Ru)(100mM)
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)(Mwt663.4)Sigma(8mM)
プチダレドキシンレダクターゼ(PDR)(2mg/100μl)
コレステロールデヒドロゲナーゼ―Toyobo(CHD)(6mg/100μl)
精製リポタンパク質リパーゼ(PEG修飾)((シュードモナス)(PEGリパーゼ)(12mg/100μl)
Emulgen B-66―KAO Chemicals(5%)
マンニトール/MgCl2(600mM)/NaOH(8mM)を含むトリス緩衝液(0.1M)
ミオイノシトール、最小99%―Sigma MW180.16(1%)
グリシン(0.1%)
エクトイン(0.1%)
PEG化BSA(5%)
【0101】
一連の実験で、未知のHDLコレステロール含量を有する多数の検体を装置に供給した。各実施例に関し、20秒の湿潤期間を経過させて試料への試薬の吸収及び試薬と試料との間の反応を可能にした。次いで、+0.15Vの電位を1秒間印加したのち、−0.45Vの電位をさらに1秒間印加した。電流を計測し、試料中のHDLに結合したコレステロールの量を計算した。
【0102】
実施例2
0.2μlの容積を有することを除き、実施例1に記載したタイプの装置を使用した。使用した試薬混合物は以下のとおりであった。
ルテニウムヘキサアミン(Mwt309.61)Sigma(Ru)
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)(Mwt663.4)Sigma
プチダレドキシンレダクターゼ(PDR)
コレステロールデヒドロゲナーゼ―Toyobo(CHD)
精製リポタンパク質リパーゼ(PEG修飾)((シュードモナス)(PEGリパーゼ)
1MトリスHCl pH8―Sigma
0.1MトリスpH9緩衝液
Emulgen B-66―KAO Chemicals
マンニトール/MgCl2を含むトリス緩衝液
ミオイノシトール、最小99%―Sigma MW180.16
D−マンニトール、SigmaUltra―Sigma MW182.17
MgCl2―Sigma Mw203.3
リンタングステン酸―Sigma(PTA)
【0103】
以下の濃度を有する溶液を提供した。
Ru=100mM トリスpH8(0.1M)
NAD=8mM 10%マンニトール
PDR=1mg/100μl MgCl2200mM
PEGリパーゼ=2mg/100μl 20%B66
CHD=2mg/100μl PTA=0.4%wt/vol
【0104】
一連の実験(実施例2a〜2i)で、未知のHDLコレステロール含量を有する多数の検体を装置に供給した。各実施例に関し、1分の湿潤期間を経過させて試料への試薬の吸収及び試薬と試料との間の反応を可能にした。次いで、+0.15Vの電位を1秒間印加したのち、−0.45Vの電位をさらに1秒間印加した。電流を計測し、試料中のHDLに結合したコレステロールの量を計算した。結果を以下の表1に示す。同じく表1には、市販されている非電気化学的試験(Randox HDL Direct、Randox Laboratories社)の結果を示す。この表は、電気化学的結果が、公知の技術を使用して達成される結果と十分に相関することを実証する。
【0105】
【表1】

【0106】
種々の具体的な実施態様及び実施例を参照して本発明を説明した。しかし、本発明が決してそのような具体的な実施態様及び実施例に限定されないということが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の一つの実施態様の装置を示す図である。
【図2】本発明の代替装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する方法であって、試料を(a)PEG化タンパク質と反応させたのち、高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を計測することを含む方法。
【請求項2】
試料を(b)コレステロールエステル加水分解試薬及び(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させ、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応したコレステロールの量を測定することによって高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を計測する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
試料をさらに(f)界面活性剤と反応させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
PEG化タンパク質がPEG化ポリアミノ酸、ゼラチン、リゾチーム、ラクトアルブミン又は血清アルブミンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
PEG化タンパク質がPEG化ウシ血清アルブミンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を電気化学的技術によって計測する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
試料を、
(a)PEG化タンパク質、
(b)コレステロールエステル加水分解試薬、
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、
(d)補酵素、
(g)酸化又は還元されて生成物を形成し得る酸化還元剤、及び場合によっては
(h)界面活性剤
と反応させ、形成した生成物の量を電気化学的に検出することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する電気化学的方法であって、試料を、
(b)コレステロールエステル加水分解試薬、
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、
(d)補酵素、
(e)酸化又は還元されて生成物を形成し得る酸化還元剤、及び場合によっては
(f)界面活性剤、
(h)低密度及び/又は超低密度リポタンパク質とで複合体を形成し得る複合化試薬、及び/又は
(i)PEG化タンパク質
と反応させ、形成した生成物の量を電気化学的に検出することを含み、コレステロールエステル加水分解試薬及び/又はコレステロールオキシダーゼもしくはコレステロールデヒドロゲナーゼがポリエチレングリコールで修飾されたものである方法。
【請求項9】
複合化剤(h)が、リンタングステン酸及びその塩、デキストラン硫酸及びその塩、ポリエチレングリコールならびにヘパリン及びその塩から選択されるポリアニオンを含み、場合によっては二価金属塩をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
複合化試薬(h)が、アポB含有リポタンパク質に結合し得る抗体を含む、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
コレステロールエステル加水分解試薬(b)が、場合によってはPEG化されているコレステロールエステラーゼ又はリパーゼである、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
成分(b)が、場合によってはPEG化されているコレステロールエステラーゼ又はリパーゼであり、成分(c)が、場合によってはPEG化されているコレステロールデヒドロゲナーゼである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
試料をさらに(g)レダクターゼと反応させる、請求項7〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
レダクターゼ(g)がジアホラーゼ又はプチダレドキシンレダクターゼである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
補酵素(d)がNAD+又はその類似体である、請求項7〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
酸化還元剤(e)がFe(CN)63-、Ru(NH363+又はフェロセニウムモノカルボン酸(FMCA)である、請求項7〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
試料を、コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ及び、使用されるならば、PEG化タンパク質又は複合化試薬と同時に反応させる、請求項2〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
高密度リポタンパク質含有試料が全血であり、方法が、試料をろ過して赤血球を除去するステップをさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する方法で使用するための試薬混合物であって、
(a)PEG化タンパク質、
(b)コレステロールエステル加水分解試薬、
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、及び場合によっては
(f)界面活性剤
を含み、成分(a)、(b)、(c)及び(f)が、請求項1〜5のいずれか1項に記載されたとおりである試薬混合物。
【請求項20】
(d)補酵素、(e)酸化又は還元されて生成物を形成し得る酸化還元剤、及び場合によっては(g)レダクターゼをさらに含み、成分(d)、(e)及び(g)が、請求項7又は13〜16のいずれか1項に記載されたとおりである、請求項19記載の試薬混合物。
【請求項21】
高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する電気化学的方法で使用するための試薬混合物であって、
(b)コレステロールエステル加水分解試薬、
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、
(d)補酵素、
(e)酸化又は還元されて生成物を形成し得る酸化還元剤、及び場合によっては
(h)低密度及び超低密度リポタンパク質とで複合体を形成し得る複合化試薬、及び/又は
(i)PEG化タンパク質
を含み、コレステロールエステル加水分解試薬及び/又はコレステロールオキシダーゼもしくはコレステロールデヒドロゲナーゼがポリエチレングリコールで修飾されたものであり、成分(b)〜(e)及び(h)が、請求項8〜12、15及び16のいずれか1項に記載されたとおりである試薬混合物。
【請求項22】
請求項13又は14記載の(f)界面活性剤及び/又は(g)レダクターゼをさらに含む、請求項21記載の試薬混合物。
【請求項23】
高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定するためのキットであって、(a)非HDLリポタンパク質とで選択的に複合化し得るPEG化タンパク質、(b)コレステロールエステル加水分解試薬、(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、場合によっては(f)界面活性剤、及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応するコレステロールの量を計測するための手段を含み、成分(a)、(b)、(c)及び(f)が、請求項1〜5のいずれか1項に記載されたとおりであるキット。
【請求項24】
高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定するためのキットであって、
作用電極、参照又は疑似参照電極、及び場合によっては別個の対電極を有する、電気化学的セル、
請求項20〜22の1項に記載された試薬、
セルに電位を印加するための電源、及び
得られる電気化学的応答を計測するための計器
を含むキット。
【請求項25】
試薬が単一の試薬混合物として存在する、請求項24記載のキット。
【請求項26】
試薬混合物が乾燥形態にある、請求項25記載のキット。
【請求項27】
作用電極が、50μm未満の少なくとも一つの寸法を有するマイクロ電極である、請求項24〜26のいずれか1項記載のキット。
【請求項28】
電気化学的セルが受け器又は部分的受け器の形態にあり、作用電極が受け器又は部分的受け器の壁にあり、試薬が受け器又は部分的受け器内に少なくとも部分的に収容されている、請求項24〜27のいずれか1項記載のキット。
【請求項29】
その中に形成された少なくとも1個の受け器又は部分的受け器を有するストリップを含み、受け器又は部分的受け器が、ストリップの第一の面に第一の開口部分を有して試料を受け器又は部分的受け器に入れることを可能にし、
電気化学的セルの作用電極が受け器又は部分的受け器の壁にあり、
電気化学的セルの参照又は疑似参照電極が、ストリップの第一の面の少なくとも一部に形成された参照又は疑似参照電極層を含み、
試薬が受け器又は受け器内に少なくとも部分的に収容されている、請求項24〜28のいずれか1項記載のキット。
【請求項30】
実質的に、添付図面を参照して明細書に記載したとおりである、請求項24〜29のいずれか1項記載のキット。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか1項記載のキットを運用する方法であって、
(i)(1)試薬及び(2)高密度リポタンパク質含有試料を互いに接触させ、次いで電極と接触させること、
(ii)電気化学的セルに電位を印加すること、及び
(iii)得られる電気化学的応答を計測することにより、形成した生成物の量を電気化学的に検出すること
を含む方法。
【請求項32】
高密度リポタンパク質含有試料中の高密度リポタンパク質中のコレステロールの量を測定する方法における、非HDLリポタンパク質の選択的複合化剤としての、請求項1、4又は5のいずれか1項記載のPEG化タンパク質の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−525780(P2008−525780A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547629(P2007−547629)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004952
【国際公開番号】WO2006/067424
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500472327)オックスフォード バイオセンサーズ リミテッド (19)
【Fターム(参考)】