説明

HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互作用に必要なペプチド領域

本発明は、HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互作用に必要なペプチド領域であってN終点とC終点とを含有するペプチド領域に関する。該ペプチド領域はそのN末端で、複数アミノ酸(Z)α−プロリン−システイン−X−システイン(但しZは任意のアミノ酸であり、αは2〜30の整数であり、Xは任意のアミノ酸である)によって形成されるパターンによって特定され、そのC末端で、複数アミノ酸セリン−アスパラギン酸−Xa−Xb−Xc−Xd−Xe−アスパラギン酸−Xf−Xg−(Z)β(但しXa、Xb、Xc、Xd、Xe、Xf、Xgは任意のアミノ酸であり、Zは任意のアミノ酸であり、βは15〜25の整数、好ましくは20である)によって形成されるパターンによって特定される。該ペプチド領域はN末端とC末端との間で、次のパターン;即ち複数アミノ酸システイン−チロシン−X2−X3−X4−X5−X6−システイン(但しX2、X3、X4、X5、X6は任意のアミノ酸である)によって形成されるパターン及び複数アミノ酸システインX7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−システイン−トリプトファン(但しX7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15は任意のアミノ酸である)によって形成されるパターンから選んだ少なくとも1つのパターンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HERV−W干渉群(interference group)のレトロウィルス包膜(envelope)とhASCTファミリーの受容体(レセプター)との間の相互作用に起因するポリペプチド領域に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの内因性レトロウィルス(HERVs)はヒトゲノムの8%を構成し、病理学と非病理学現象との両方で包含される。
【0003】
ヒトの内因性レトロウィルスファミリーW(HERV−W)は、2500万〜4000万年前に生殖系列に統合された感染症レトロウィルス要素から誘導される。シンシチン(syncytin)とも呼ばれるHERV−W包膜タンパク質は、胎盤の栄養細胞合胞体層の形成に伴なう融合誘導糖タンパク質である。該タンパク質はプロウィルス遺伝子座ERVW1のエンブ(env)遺伝子によってコード化され、gPr73前駆体の形で合成され、該前駆体は2つの成熟タンパク質、表面サブユニットgp50(SU)及び貫膜サブユニットgp24(TM)に特異的に切断される。
【0004】
試験管内では、HERV−WファミリーのシンシチンはそれとASCTファミリー(h−ASCT2、hASCT1)のアミノ酸の受容体(レセプター)−輸送体との相互作用に応じて決まる細胞−細胞融合を誘発する。次いで系統発生の研究が示す処によれば、シンシチンは、特にネコの内因性ウィルスRD114、サルの内因性ウィルスBaEV、類人猿のレトロウィルス及び鳥類のレトロウィルス;鳥類の細網内皮症ウィルスREV−A及び脾臓壊死ウィルスSNVを包含するレトロウィルス群に類縁であり、全てのレトロウィルスは型式2のナトリウム依存性中性アミノ酸受容体−輸送体又はhASCT2を共通して有している(ラスコ等のProc. Natl. Acad. Sci. 1999年、米国、96巻、2129〜2134頁;テイラー等のウィルス学雑誌(Journal of Virology)1999年 73(5)巻4470〜4474頁)。即ち、このレトロウィルス群のウィルスに細胞が感染するとアミノ酸の輸送に特異的な低下を生起する(ラスコ等の前記文献1999年参照)。これらのレトロウィルスのうちの1つに細胞が感染すると(又は細胞中のこれらの包膜のうちの1つが発現すると)、ASCTファミリーの受容体に関連する干渉(相互作用)によって、これらのレトロウィルスの別のウィルスによってこの同じ細胞が感染するのを防止しあるいは別の包膜を発現する別の細胞と融合するのを防止する。ASCTファミリーの受容体に関連する干渉によって、これらのレトロウィルスのうちの1つのレトロウィルスによって細胞が感染すると、これらのレトロウィルスのうちの別のレトロウィルスによって感染するのを防止する。全てのこれらのレトロウィルスは同じHERV−Wウィルス干渉群に属する。
【0005】
包膜とASCT受容体との間で結合するメカニズムは不明瞭なままであり、今日までASCT受容体に結合するための領域は同定されておらずしかもHERV−W包膜タンパク質のSU又は同じ干渉群のレトロウィルスのSUcの何れかでも特定されていない。然しながら、この課題は必須である。何故ならば、包膜/ASCT受容体の相互作用の抑制は、更に細胞中へのレトロウィルスの進入を防止することができ、それ故その複製周期を阻止することができ、腫瘍の形成、転移細胞の増殖又は薬剤耐性現象に伴ない得る包膜/ASCT受容体相互作用の現象及び/又は細胞融合の現象を阻止することができ(例示として刊行物「細胞融合:隠れた敵?ガン細胞:」2003年3巻参照)、神経系疾患に伴ない得る包膜/ASCT受容体相互作用の現象及び/又は細胞融合の現象を阻止することができ、しかも栄養胚葉分化(避妊薬死滅)に伴なう細胞−細胞融合を抑制さえすることができる。更には、包膜/hASCT受容体相互作用の抑制は、包膜/hASCT受容体相互作用から得られる局所的な免疫抑制に反作用することにより腫瘍増殖を防止できる。実際上、このレトロウィルス群のウィルス(特に免疫不全を誘発するウィルス)に細胞が感染するとアミノ酸の輸送に特異的な低下を生起することが一方では示され(ラスコ等のProc. Natl. Acad. Sci. 96巻 2129〜2134頁(1999)参照)、しかも他方では、アミノ酸の輸送障害と免疫抑制との間で直接的な連鎖が提案されることが示されている(Espinosa A, Villarreal L.P., T−AgはEC細胞で誘導される胚子葉体により着床を抑制する。ウィルス遺伝子(Virus Genes) 2000年、20(3)巻、195〜200頁;JE, Battini JL, Gottschalk RJ, Mazo I, Miller AD., RD114/類人猿型Dレトロウィルス受容体は中性のアミノ酸輸送体である。Proc. Natl. Acad. Sci, 米国(1999);96(5)巻 2129〜2134頁参照)。即ち、神経系疾患に関しては、hASCT受容体は中性アミノ酸の特異的な輸送に関与していることは既知でありしかも情報を伝達するための神経細胞は主としてポリペプチド性状の神経メジエーターを用いることは既知である。即ち、神経メジエーターの合成に必要なアミノ酸を通常輸送しなければならない受容体にEnv−HERV−Wタンパク質を結合することは、ASCT受容体を介してアミノ酸の如き生理的作用薬の進入を低減することにより神経メジエーターを合成するニューロンの能力に影響してしまう。更には、ニューロンの細胞間ネットワークが脳及び脊髄で循環する情報の伝達に必須である結合部を形成するニューロンがEnv−HERV−Wタンパク質によって誘発される幾つかのニューロンの融合に続いて合胞体(syncytia)を形成するならば、情報の伝達のための全てのネットワークは分裂されしかも同じ融合した「細胞パッケージ」に接続され、しかも各々の細胞の神経メジエーター産生活性はもはや個別化されずあるいは該活性に特異的である上流側又は下流側の伝導経路(樹状突起及び軸索)に接続されない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことには、本発明者は、HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜(envelope)とhASCT受容体との間の相互作用に起因するポリペプチド領域を同定した。
【0007】
この趣旨で本発明はHERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互反応に必要なペプチド領域に関し、次の要件で特定されたペプチド領域に関する;
ペプチド領域はN−末端を開始とし、C−末端で終了し;
(イ)N−末端は複数アミノ酸 (Z)α−プロリン−システイン−X−システイン(但しZは任意のアミノ酸であり、αは2〜30の整数であり、Xは任意のアミノ酸である)よりなる部位(motif)によって特定され、前記の部位はSEQ ID No.1〜SEQ ID No.29及びSEQ ID No.44〜SEQ ID No.72から選択され、
(ロ)C−末端は複数アミノ酸 セリン−アスパラギン酸−Xa−Xb−Xc−Xd−Xe−アスパラギン酸−Xf−Xg−(Z)β(但しXa、Xb、Xc、Xd、Xe、Xf、Xgは任意のアミノ酸であり、βは15〜25の整数、好ましくは20である)よりなる部位によって特定され、前記の部位はSEQ ID No.30〜SEQ ID No.40から選択され;
前記のペプチド領域は、N−末端とC−末端との間に、次の部位;
(i)複数アミノ酸 システイン−チロシン−X2−X3−X4−X5−X6−システイン(但しX2、X3、X4、X5、X6は任意のアミノ酸である)よりなる部位であってSEQ ID No.41に対応する部位、
(ii)複数アミノ酸 システイン−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−システイン−トリプトファン(但しX7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15は任意のアミノ酸である)よりなる部位であってSEQ ID No.42又はSEQ ID No.73に対応する部位
から選んだ少なくとも1つの部位を含有する。
【0008】
本発明による「ペプチド領域(peptide domain)」なる表現は、hASCT受容体(レセプター)の認識に必要なHERV−W干渉群のウィルスの包膜の最低領域を意味すると理解される。
【0009】
本発明のペプチド領域は次の工程;
(イ)本発明によるヌクレオチド配列を用いて形質転換した微生物又は真核細胞を培養し、
(ロ)該微生物又は該真核細胞によって製造したペプチド領域を回収する、
工程からなる遺伝子工学技術によって得られる。
【0010】
この技術は当業者には周知である。これに関する更なる詳細のためには、以下の文献;組換えDNA工業技術(Recombinant DNA Technology)I、編集者Ales Prokop, Raskesh K Bajpai;科学のニューヨークアカデミーの年報(Annals of the New York Academy of Sciences)、646巻(1991)を参照できる。本発明のペプチド領域は当業者に周知の慣用のペプチド合成によっても製造できる。
【0011】
「干渉群(interference group)なる表現は、ウィルスメンバーの1つによる細胞の感染(発現)が受容体干渉群の別のウィルスメンバーによる感染を防止する全てのウィルスを意味する。
【0012】
「任意のアミノ酸」なる表現は特に、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、システイン、グリシン、プロリンから選んだアミノ酸を意味すると理解される。
【0013】
「hASCT受容体」なる表現は任意のナトリウム−依存性の中性アミノ酸輸送体を意味すると理解される。
【0014】
「部位」なる表現は、HERV−Wウィルス干渉群の全てのウィルスによって発現される、本発明のペプチド領域の当該特定領域に対応する連続したアミノ酸を意味すると理解される。
【0015】
αは3〜18の整数であるのが好ましい。
【0016】
SEQ ID No.1〜SEQ ID No.29中のPro Cys Xaa Cys部位のX又はXaaはアスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンから選んだアミノ酸であるのが好ましく、これらの配列はSEQ ID No.44〜SEQ ID No.72から選んだ配列であるのが好ましい。
【0017】
Xa、Xb、Xc又はSEQ ID Nos.30〜40の3位、4位及び5位のアミノ酸はグリシンであり、Xd又はSEQ ID Nos.30〜40の6位のアミノ酸Xaaはプロリン及びバリンから選んだアミノ酸であり;Xe又はSEQ ID Nos.30〜40の7位のアミノ酸Xaaはグルタミン、ロイシン及びトレオニンから選んだアミノ酸であり;Xf又はSEQ ID Nos.30〜40の9位のアミノ酸Xaaはリシン、トレオニン、メチオニン及びグルタミンから選んだアミノ酸であり;Xg又はSEQ ID Nos.30〜40の10位のアミノ酸はアラニン、リシン、イソロイシン、トレオニン及びバリンから選んだアミノ酸であるのが好ましい。
【0018】
βは20に等しい整数であるのが好ましい。
【0019】
X2又はSEQ ID No.41の3位のアミノ酸Xaaはアスパラギン、トレオニン、グルタミン酸、ヒスチジンから選んだアミノ酸であり;
X3又はSEQ ID No.41の4位のアミノ酸Xaaはヒスチジン、アラニン、セリン、リシン、グルタミン酸から選んだアミノ酸であり;X4又はSEQ ID No.41の5位のアミノ酸Xaaはチロシン、トレオニン、アラニンから選んだアミノ酸であり;X5又はSEQ ID No.41の6位のアミノ酸Xaaはグルタミン、アルギニン、トレオニンから選んだアミノ酸であり;X6又はSEQ ID No.41の7位のアミノ酸Xaaはロイシン、グルタミン、グルタミン酸から選んだアミノ酸であるのが好ましい。
【0020】
X7即ちSEQ ID No.42の2位のアミノ酸Xaaはプロリン、トレオニン、アルギニン及びアスパラギンから選んだアミノ酸であり;X8即ちSEQ ID No.42の3位のアミノ酸Xaaはグリシン、グルタミン酸、アスパラギンから選んだアミノ酸であり;X9即ちSEQ ID No.42の4位のアミノ酸Xaaはグリシン、アスパラギン、イソロイシン、トレオニン、セリンから選んだアミノ酸であり;X10即ちSEQ ID No.42の5位のアミノ酸Xaaはリシンであり又は欠失され;X11即ちSEQ ID No.42の6位のアミノ酸Xaaはリシン、バリン、イソロイシン、ロイシンから選んだアミノ酸であり;X12即ちSEQ ID No.42の7位のアミノ酸Xaaはグリシン、アスパラギンから選んだアミノ酸であり;X13即ちSEQ ID No.42の8位のアミノ酸Xaaはグルタミン、リシン、バリンから選んだアミノ酸であり;X14即ちSEQ ID No.42の9位のアミノ酸Xaaはバリン、プロリン、セリン、トレオニンから選んだアミノ酸であり;X15即ちSEQ ID No.42の10位のアミノ酸Xaaはバリン、イソロイシンから選んだアミノ酸であるのが好ましい。
【0021】
SEQ ID No.73の2位のアミノ酸Xaaはプロリン、トレオニン、アルギニン及びアスパラギンから選ばれ;
SEQ ID No.73の3位のアミノ酸Xaaはグリシン、グルタミン酸、アスパラギンから選ばれ;
SEQ ID No.73の4位のアミノ酸Xaaはグリシン、アスパラギン、イソロイシン、トレオニン、セリンから選ばれ;
SEQ ID No.73の5位のアミノ酸Xaaはリシン、バリン、イソロイシン、ロイシンから選ばれ;
SEQ ID No.73の6位のアミノ酸Xaaはグリシン、アスパラギンから選ばれ;
SEQ ID No.73の7位のアミノ酸Xaaはグルタミン、リシン、バリンから選ばれ;
SEQ ID No.73の8位のアミノ酸Xaaはバリン、プロリン、セリン、トレオニンから選ばれ;
SEQ ID No.73の9位のアミノ酸Xaaはバリン、イソロイシンから選ばれるのが好ましい。
【0022】
欠失は本発明の前述した領域で可能である。本発明の特定の具体例によると、X10は欠失される。
【0023】
本発明はまた本発明のペプチド領域をコード化するヌクレオチド配列に関する。
【0024】
かかる配列は当業者に周知の技術、例えばSambrook J.等の分子クローニング(Molecular Cloning); A Labaratory Manual (1989) に記載された技術を用いて化学合成及び遺伝子工学により製造できる。
【0025】
本発明はまた、HERV−W干渉群に属するウィルスに対して免疫応答を誘発することを特徴とする、本発明のペプチド領域から誘導したエピトープに関する。
【0026】
「エピトープ」なる表現は、Bリンパ球又はTリンパ球の表面又は循環抗体の表面に位置した受容体によって認識される、本発明のペプチド領域の全て又は一部を意味すると理解される。
【0027】
「免疫応答」なる表現は、多細胞生物が該生物を構成する細胞及び組織の合着性(コヒーレンス)を維持することができしかも該生物の成分の分子構造を変性するか又は異質分子を該生物に導入する何れかの攻撃に応答して該生物の保全性を確保することができる全ての生物学的メカニズムを意味すると理解される。
【0028】
本発明はまた前述したエピトープをコード化するヌクレオチド配列に関する。前述した如く、かかる配列は当業者に周知の技術、例えばSambrook J.等の分子クローニング;A. Laboratory Manual (1989) に記載された技術を用いて化学合成及び遺伝子工学によって製造できる。
【0029】
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列及びその発現に必要な手段を含有してなることを特徴とする発現ベクターに関する。
【0030】
「発現ベクター」としては例えば、プラスミド、ワクシニア ウィルス、アデノウィルス、バキュロウィルス、ポックスウィルス又はレトロウィルス型のウィルスベクター、サルモネラ又はBDG.型の細菌性ベクターを挙げ得る。
【0031】
「その発現に必要な手段」なる表現は、ヌクレオチド配列からペプチドを得ることができる何れかの手段、例えば特にプロモーター、転写ターミネーター、複製起点及び好ましくは選択性のマーカーを意味すると理解される。
【0032】
本発明のベクターはまたペプチドを特定の細胞区室に標的とさせるに必要な配列を含有できる。
【0033】
本発明はまた本発明の少なくとも1つの発現ベクターで形質転換した宿主微生物又は細胞に関する。
【0034】
本発明の目的に適当な「微生物」の例としては、酵母菌例えば次のファミリー;酵母菌属(Saccharomyces)、スキゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、クルベロミセス(Kluveromyces)、ピキア(Pichia)、ハンセヌラ(Hansenula)、ヤロウィア(Yarowia)、シュワニオミセス(Schwaniomyces)、接合酵母菌(Zygosaccharomyces)、ビール酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlbergensis)及び好ましくはクルベロミセス ラクチス(Kluveromyces lactis)の酵母菌;及び大腸菌(E. coli)の如き細菌及び次のファミリー;乳酸桿菌(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、サルモネラ菌(Salmonella)、連鎖球菌(Streptococcus)、桿菌(Bacillus)及び放線菌(Streptomyces)の細菌を挙げることができる。
【0035】
「形質転換した宿主細胞」の例としては、哺乳動物、爬虫類、昆虫等の如き動物から誘導される細胞を挙げ得る。好ましい真核細胞は中国ハムスターから誘導した細胞(CHO細胞)、サルから誘導した細胞(COS及びベロ細胞)、若いハムスターの腎臓から誘導した細胞(BHK細胞)、豚の腎臓から誘導した細胞(PK15細胞)、ウサギの腎臓から誘導した細胞(RK13細胞)、ヒトの骨肉腫細胞系列から誘導した細胞(143 B細胞)、ヒトのHeLa細胞系列及びヒトの肝ガン細胞系列から誘導した細胞(Hep G2細胞型の細胞)、昆虫細胞系列から誘導した細胞(例えばスポドプテラ フルギペルダ;Spodoptera frugiperda)、ヒトの胚腎臓細胞系列から誘導した細胞(例えばHEK 293T)である。宿主細胞は懸濁物中の培養物又はフラスコ中の培養物として、組織培養物、器官培養物等として提供できる。
【0036】
本発明はまた本発明のペプチド領域に対して又は本発明のエピトープに対して指向した抗体に関する。
【0037】
「抗体」なる表現は全抗体と抗体フラグメントとの両方を意味すると理解される。
【0038】
組換え抗体は原核生物例えば細菌から又は真核生物例えば酵母、哺乳動物、植物、昆虫又は動物細胞から又は細胞外製造方式により、当業者に公知の常法により得られる。
【0039】
モノクローナル抗体は、以下に一般的な原理を記載するハイブリドーマ技術の如き当業者に知られた慣用技術により生産できる。
【0040】
第1の場合には動物、一般にはマウス(又は試験管内免疫感作の環境で培養した細胞)を当該の標的抗原で免疫化し、該動物のB−リンパ球は次いで前記抗原に対して抗体を産生し得る。これらの抗体産生リンパ球は次いでハイブリドーマを生じるのに「不滅の」骨髄腫細胞(例えばマウス)と融合する。かくして得られた細胞の異種混合物から、特定の抗体を生産することができしかも該抗体を無限に増殖することができる細胞の選択を次いで行なう。各々のハイブリドーマをクローン形で増殖させ、各々はモノクローナル抗体の生産を生じ、該抗体の当該抗原に関する認識特性は例えばエリザ法(ELISA)により、一次元又は二次元の免疫移動により、免疫蛍光によりあるいはバイオセンサーを用いて試験し得る。かくして選択したモノクローナル抗体は続いて特にアフィニティ クロマトグラフィー技術により精製する。
【0041】
「抗体フラグメント」なる表現は、HERV−W干渉群に属するウィルスに対しての免疫反応に続いての何れかの抗体フラグメントを意味すると理解される。これらの抗体フラグメントは例えばタンパク質分解によって得られる。即ち、抗体フラグメントは酵素消化によって得られ、これによってFab型のフラグメント(パパインでの処理;Porter, RR. (1959), Biochem. J. 73;199〜126頁)又はF(ab)'2型のフラグメント(ペプシンでの処理;Nisonoff A.等のScience(1960)132;1770〜1771頁)が生起する。抗体フラグメントは組換え方式によっても調製し得る(Skerra A., Cuur. Opin. Immunol., (1993). 5;256〜262頁)。本発明の提案に適当である別の抗体フラグメントは、Fabフラグメントの可変軽質(VL)領域と可変重質(VH)領域との非共融結合よりなる二量体であるFvフラグメントよりなり、それ故2つのポリペプチド鎖の組合せよりなる。2つのポリペプチド鎖の解離によるFvフラグメントの安定性を改良するために、このFvフラグメントは遺伝子工学によりVL領域とVH領域との間に適当なリンカーペプチドを挿入することにより変性できる(Huston P.等のProc. Natl. Acad. Sci. (1988) 米国、85;5879〜5883頁)。次いで発現scFvフラグメント(「一本鎖可変フラグメント」を用いる。何故ならば該フラグメントは一本鎖ポリペプチドよりなるからである。好ましくは15〜25個のアミノ酸から成るリンカーペプチドを用いると、1つの領域のC−末端を別の領域のN−末端に結合させることができ、かくして、その完全な形で抗体の結合特性と同様な結合特性を賦与したモノマー分子を構成する。VL及びVH領域の両方の配向が適当である(VL−リンカー−VH及びVH−リンカー−VL)。何故ならば、これらは同一の官能特性を示すからである。勿論、当業者に知られておりしかも前述した免疫特性を示す何れかのフラグメントが本発明の目的に適当である。
【0042】
本発明はまた、動物好ましくはヒトにおいてHERV−W干渉群に属するウィルスによって生起される感染の抑制、予防又は治療に意図した医薬を製造するために、本発明による少なくとも1つのペプチド領域の使用、本発明による少なくとも1つのエピトープの使用、本発明による少なくとも1つの抗体の使用あるいは本発明による少なくとも1つのヌクレオチド配列の使用に関する。本発明のペプチド領域は、信号を変換し且つアミノ酸の流れを調節する(モジュレート)ためにhASCTファミリーのレセプターを発現する細胞を標的とするのに特に用い得る(ガンの治療)。
【0043】
「ペプチドの構成発現に必要な要素」なる表現は、真核細胞に特異的な扁在プロモーターを意味すると理解される。ペプチドの誘発性発現に必要な要素としては、テトラサイクリン耐性のE. coliオペロンを制御する要素を挙げ得る(Gossen M.等のProc. Natl. Acad. Sci. (1992) 米国、89;5547〜5551頁)。
【0044】
本発明による少なくとも1つのペプチド領域の使用、本発明による少なくとも1つのエピトープの使用又は本発明による少なくとも1つのヌクレオチド配列の使用は、動物好ましくはヒトにおいてHERV−W干渉群に属するウィルスによって生起される感染の予防に意図した医薬を調製するのに特に適当である。本発明による少なくとも1つの抗体の使用は、動物、好ましくはヒトにおいてHERV−W干渉群に属するウィルスによって誘発される病害感染の抑制又は処置に意図した医薬を調製するのに特に適当である。
【0045】
本発明はまた製薬上適当な担体(ビヒクル)と組合せて、特にペプチド領域又はエピトープの構成及び/又は誘発性発現に必要な要素の制御下に置かれた、本発明による少なくとも1つのペプチド領域、本発明による少なくとも1つのエピトープあるいは別法として本発明によるヌクレオチド配列の少なくとも1つを活性成分として含有する製薬組成物に関する。本発明はまた製薬上適当な担体と組合せて本発明による少なくとも1つの抗体を活性成分として含有する製薬組成物に関する。
【0046】
勿論、当業者は製薬上適当な担体及び製薬組成物の諸成分によって用いるべきペプチド領域の量、エピトープの量、ヌクレオチド酸の量又は抗体の量を容易に決定するものである。
【0047】
経口投与、舌下投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、局所投与、気管内投与、直腸投与又は経皮投与用の本発明の製薬組成物において、有効成分は、投与用の単位形で又は慣用の製薬担体との混合物として投与でき、しかも当業者に周知の慣用の指示書により、経口方式により例えば錠剤、ゼラチンカプセル、経口溶液等の形であるいは座薬の形での直腸方式によりあるいは非経口方式により特に注射用溶液の形で特に静脈内、皮内又は皮下方式等により投与に意図した形で投与できる。局所施用については、活性成分はクリーム、軟膏、ローション、点眼薬として用い得る。
【0048】
錠剤形の固体組成物を調製する時、活性成分は製薬ビヒクルとも呼ばれる製薬上許容し得る賦形剤と混合し、例えばゼラチン、澱粉、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴム等と混合する。錠剤はショ糖で被覆でき、セルロース誘導体又は別の適当な材料で被覆できる。錠剤が長期の活性又は遅発の活性を有するように錠剤を処理することもでき、しかも既定量の活性成分を連続的に放出するように錠剤を処理することもできる。活性成分を希釈剤と混合し且つ該混合物を軟質又は硬質のゼラチンカプセルにそそぐことにより、ゼラチンカプセルとして製剤を得ることもできる。活性成分が甘味料、防腐剤例えば特にメチルパラベン及びプロピルパラベン、及び味覚促進剤又は適当な着色料と一緒に存在するシロップ形で又は球薬の形で投与するため製剤を得ることもできる。粉末又は水分散性顆粒は、当業者に周知の分散剤又は湿潤剤又は懸濁剤との混合物の形で活性成分を含有できる。非経口投与については、分散剤、医薬上相溶性の湿潤剤例えば特にポリエチレングリコール又はブチレングリコールを含有する水性懸濁液、等張塩水溶液又は無菌溶液又は注射用溶液を用いる。
【0049】
本発明による医薬又は製薬組成物は、主たる薬物の特に生体利用性を増大することにより薬物の効果を誘発するか又は主たる薬物の効果を増強又は補足する賦活化剤を追加的に含有し得る。
【0050】
投薬量は症状の重大性に応じて決まり、慣用の指示書により適合するものである。1つの目安として、活性成分がモノクローナル抗体である時は、毎週の投薬量は、製薬上許容し得る賦形剤と組合せて1〜10mg/kgである。
【0051】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのペプチド領域、本発明による少なくとも1つのエピトープ、本発明による少なくとも1つのヌクレオチド配列又は本発明による少なくとも1つの抗体を含有してなり、HERV−W干渉群に属するウィルスの検知及び/又は定量化のためあるいは該ウィルスに対する免疫反応の検知及び/又は定量化のための診断組成物に関する。
【0052】
本発明による少なくとも1つのペプチド領域、本発明による少なくとも1つのエピトープ、又は本発明によるヌクレオチド配列の少なくとも1つを含有する診断組成物は、患者がHERV−W干渉群に属するウィルスに対して免疫反応を有するかどうかを測定するのが望ましいならば特に適当であり、然るに本発明による少なくとも1つの抗体を含有する診断組成物はHERV−W干渉群に属するウィルスの検知及び/又は定量化に特に適当である。
【0053】
本発明はまた、次の工程;
(イ)HERV−W干渉群に属するウィルスと抗体との間で複合体を形成し得る条件下に生体試料を本発明による少なくとも1つの抗体と接触させ、
(ロ)何れか適当な手段により該複合体の形成を検出するか及び/又は定量化する
工程からなることを特徴とする、該ウィルスに感染され易い個体から採取した生体試料において該ウィルスを検知及び/又は定量化する方法に関する。
【0054】
「生体試料」なる表現は前記ウィルスを含有し易いヒト又は動物起源の生体試料例えば血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液又は組織例えば胎盤、精巣、前立腺及び胸の生体試料を意味すると理解される。
【0055】
接触工程(イ)は当業者に慣用上知られた工程である。
【0056】
検出/定量化工程(ロ)は、きわめて小さな分子の免疫検定の分野で知られた何れかの検出手段によって行なうことができ、例えば直接検出即ち単数又は複数の結合パートナー(partner(s))の仲介なしに及び間接検出即ち単数又は複数の結合パートナーの仲介を介して行なうことができる。
【0057】
本発明の抗体又は抗体フラグメントとウィルスとの間の結合の直接検出は例えば表面プラズマ(plasmon)共鳴又は伝導性ポリマー含有電極上での環式ボルタンメトリーによって行ない得る。この場合には、本発明の抗体はウィルスの全部又は一部を免疫捕捉するのに役立ち次いでこれを溶離する。溶離は当業者に知られた任意の溶離法例えばpHショックにより行ない得る。
【0058】
間接検出の場合には、本発明の方法の第二工程(ロ)は慣用のエリザ(ELISA)競合検定技術により行ない得る。本発明の抗体は次いで試料中のウィルスの全部又は一部を捕捉するのに役立つ結合パートナーとして役立つ。次いで検出は、試験すべき試料中に含有し得るウィルスの全部又は一部と前もって標識した既知量のウィルスとの間の競合により行ない得る。
【0059】
「標識付け(labeling)」なる表現は検出し得る信号を直接的に又は間接的に発生し得るマーカーの取付けを意味すると理解される。これらのマーカーの一覧は次の成分よりなるが、これに限定されない:
i)例えば比色法、蛍光法、発光法により検出し得る信号を生ずる酵素、例えばワサビのペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アセチルコリン エステラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−ホスフェート デヒドロゲナーゼ、
ii)発色団例えば発光、着色化合物、
iii)放射性分子例えば32P、35S又は125I
iv)蛍光分子例えばフルオレセイン、ロードマイン、アレクサ又はフィコシアニン、及び
v)粒子例えば金又は磁気ラテックス粒子、リポソーム。
【0060】
例えば別の配位子(リガンド)/抗−配位子対を介しての如く間接的な標識付け系をも用い得る。配位子/抗−配位子対は当業者には周知であり、例えば次の対を挙げ得る;ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/アビジン、ハプテン/抗体、抗原/抗体、ペプチド/抗体、糖/レクチン、ポリヌクレオチド/ポリヌクレオチド用の補完ストランド。この場合には、結合パートナーに結合される配位子である。抗−配位子は前述のマーカーによって直接検出でき、あるいは配位子/抗−配位子によってそれ自体検出できる。
【0061】
これらの間接標識系は或る条件下では信号の増幅を生起し得る。この信号増幅技術は当業者には周知であり、本出願人による先行特許出願仏国98/10084号又はWO 95/08000号又は文献J. Histochem. Cytochem., (1997)、45巻;481〜491頁が参照される。
【0062】
分子の標識付けは当業者には周知であり、例えば文献Greg T. HermansonのBioconjugate Techniques, (1996) アカデミック プレス社、米国により記載されている。
【0063】
例えば酵素を用いる如き、用いた標識付けの型式に応じて当業者は標識付けの目視化を可能とする試薬を添加するものである。
【0064】
かかる試薬は当業者に周知であり、特に文献「免疫検定の原理及び実施(Principles and Practice of Immunoassay)」第2版、C. Price, D. G. Newman編、ストックトンプレス社(1997)米国に記載されている。
【0065】
本発明はまた生体試料又は被検物中のHERV−W干渉群に属するウィルスの試験管内スクリーニングのため前記組成物の使用に関する。特にSRV1及びSRV2の如きウィルス、サルの免疫不全メカニズムに伴なうウィルスの初期スクリーニングは免疫不全の出現前に宿主に適当な処置を提供することができる。更には、胎盤病理学に伴なうHERV−Wの初期スクリーニングは、例えば子癇前症中にその発現を調節することができる。
【0066】
本発明はまたHERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とASCTレセプターとの間の相互作用を阻害するため、本発明によるペプチド領域の使用又は本発明によるエピトープの使用又は本発明による抗体の使用に関する。これは特に避妊薬の免疫療法を得ることができる。
【0067】
本発明はまた、化学分子又は生体分子とペプチド領域の全部又は一部との相互作用がHERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とASCTレセプターとの間の相互作用を阻止する、化学分子又は生体分子を同定するため本発明によるペプチド領域の使用に関する。例えば、HERV−Wの本発明によるペプチド領域を用いる時、これによって避妊薬の処置を得るのに高度に適当である化学分子又は生体分子を特に得ることができる。HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とASCTレセプターとの間の相互作用を阻害するのにかかる化学分子を使用することは治療上の有用性を有するものである。
【0068】
1つの目安として、包膜/レセプターの相互作用を阻害し得る化学分子又は生体分子のスクリーニングを可能とする2つの一般的な方法を以下に記載する。
【0069】
可溶性包膜を生産し得る環境では、捕捉相中に少なくとも1つのhASCTレセプターを発現する細胞を用いるエリザ法により、化学分子又は生体分子が包膜/レセプター相互作用を変化させるかどうかを測定するのが適当である。即ち96個の凹み板上で、当該のhASCTレセプターを発現する細胞を培養又は吸着させ、包膜/レセプターの相互作用は標識した可溶性包膜(ヒスチンタダ、GPF融合)の使用を介して検出し、それ故該包膜は検定し得る対照信号(reference signal)を発生し得る。前記の可溶性包膜と化学分子又は生体分子との予備インキュベーション後に信号の低下が見られるならば、これは化学又は生体分子が包膜/レセプター相互作用を変更させることを意味する。別法として、当該の包膜によってシュードタイプとされ(pseudotyped)しかも検出し得るマーカー(LacZ)を発現するレトロウィルスベクターを用いることができ、しかも同じ試験を行なうことができる。融合阻害の測定を介して当該の分子を選択することもできる。当該のレセプターを発現する細胞(細胞−レセプター)例えばHeLa又はXC−RDR細胞、及びマーカー(例えばLacZ)を構成的に発現する細胞及び当該の包膜を一時的に又は安定に発現する細胞(細胞−包膜−LacZ)を用い;当該包膜を、その細胞質体内の尾部のレベルでそれを構成的に融合誘導とさせるようにHERV−W包膜(env)の細胞質体領域との交換により前もって変性する(Cheynet等、79(9);5586〜5593頁(2005参照)。2つの細胞型式、過剰量での「細胞−レセプター(cell−resept)」と不足量での「細胞−包膜−LacZ」とを接触させると、「細胞−包膜−LacZ」から誘導される1個又は2個の青色核と「細胞−レセプター」から誘導される数十個の白色核とを含有する多核巨大細胞即ち合胞体の形成を生ずる。包膜/レセプター相互作用を変化させる化学分子又は生体分子の存在下で行なった同一の同時培養は合胞体の個数の低下及びそれらの核含量の低下をもたらす。CCDカメラを用いてかかる測定の自動化は可能である。
【0070】
本発明はまたHERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCTレセプターとの間の相互作用を阻止する抗体を生成するため本発明によるペプチド領域の使用に関する。
【0071】
本発明はまた、
(イ)HERV−W干渉群に属するウィルスの前駆体包膜のヌクレオチド及び/又はペプチド配列を同定し、
(ロ)信号部分を除外し、
(ハ)セリン−アスパラギン酸−Xa−Xb−Xc−Xd−Xe−アスパラギン酸−Xf−Xg領域(但しXa、Xb、Xc、Xd、Xe、Xf、XgはSEQ ID No.43に対応する任意のアミノ酸である)を検出し、
(ニ)SEQ ID No.43に対応するセリン−アスパラギン酸−Xa−Xb−Xc−Xd−Xe−アスパラギン酸−Xf−Xg領域後に15〜25個のアミノ酸好ましくは20個のアミノ酸の間でC−末端を除外する
ことを特徴とする、HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCTレセプターとの間の相互作用に必要なポリペプチド領域を決定する方法に関する。
【0072】
好ましくは、Xa、Xb、Xcはグリシンであるアミノ酸であり、Xdはプロリン及びバリンから選んだアミノ酸であり、Xeはグルタミン、ロイシン及びトレオニンから選んだアミノ酸であり、Xfはリシン、トレオニン、メチオニン及びグルタミンから選んだアミノ酸であり、Xgはアラニン、リシン、イソロイシン、トレオニン及びバリンから選んだアミノ酸である。
【0073】
本発明の目的には、前記ウィルスの前駆体包膜から生ずるヌクレオチド配列及び/又はペプチドは、特にマニアチス(Maniatis)(ed,1989) を参照し得る、当業者に既知の任意手段により同定する。
【0074】
信号部分は、特に「Inproved Prediction of Signal Peptide: Signal P 3.0」Jannick, Dyrlov Bendtsen, Henrik Nielsen, Gunnar, von Hiejne及びSoren Brunak, J. Mol. Biol., 340; 783〜795頁(2004)に記載される如く当業者に既知の任意手段により除外する。
【0075】
前記の領域は当業者に既知の任意手段により、即ちブラスト又はファスタ型のソフトウェアを用いて検出する(特にAltschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ. のBasic local alignment search tool, J. Mol. Biol. (1990), 215(3); 403〜10頁参照)。
【0076】
本発明はまた前記方法によって得られるペプチド領域に関する。
【0077】
添付の図面は例示として与えられており、限定的特徴を有しない。本発明をより良く理解しうるように与えてある。
【0078】
図1はEnv-Wから誘導される可溶性組換えタンパク質の表現型特徴及び性質を説明する。特に図1aはSU及びTMサブユニットの全部又は一部を含有する最大可溶性組換えタンパク質(Env−Gp60)及びSUサブユニットに対応する可溶性組換えタンパク質(EnvSU)を例示する。図1bは、hASCT2及びhASCT1レセプターをそれぞれ発現するXC hASCT2及びXC hASCT1細胞にEnvSU組換えタンパク質が結合するための試験の流れ細胞計算(flow cytometry)分析を表わす。図1cはTE671細胞(対照のhASCT2)、TE671RD細胞(阻止したhASCT2)及びTE671galv細胞(阻止したPit1)への結合を干渉する試験を表わす。
【0079】
図2はhASCT2レセプターへのERV−W包膜の最低結合領域の特定(レセプター結合領域用のRBD)を説明する。特に、図2aはEnvSUから設計した全ての欠失突然変異体を記載する。図2bはEnvSUから誘導した組換えタンパク質がhASCT2レセプターを発現するXC hASCT2細胞に結合する試験の流れ細胞計算分析を表わし、特にEnv197、Env168及びEnv144突然変異体の結合及びEnv69−317、Env169−317及びEnv117突然変異体の結合欠失(binding defect)試験の流れ細胞計算分析を表わす。
【0080】
図3aはHERV−W包膜タンパク質の前駆体の領域21〜144に相当する本発明による領域内部の免疫原性ペプチド(RBD)の特定を説明する。図3bは免疫原性ペプチドから生じた抗体(anti Su−EnvW)を用いてRBDのそのレセプターへの結合の阻害と非特異抗体(antiTM−EnvW)の存在下にRBD−レセプター結合の阻害不在とを示す。
【0081】
図4は同じ干渉群に属するレトロウィルス包膜配列の整列(アラインメント)を表わし且つ信号ペプチドの境界、SU(表面単位)サブユニットの境界及びTM(トランス膜)サブユニット及びレセプター結合部位の境界を示す。配列はHERV−W(ヒトの内因性レトロウィルスファミリーW)、RD114(ネコの内因性レトロウィルス)、REV(鳥類の細網内皮症ウィルス)、BAEV(ヒヒの内因性ウィルス(菌株M7))、SRV1(サルのレトロウィルスSRV−1)、SRV2(サルのレトロウィルスSRV−2)及びMPMV(サルのメイソンファイザー(Mason-Pfizer)ウィルス)である。
【0082】
次の実施例は例示として与えてあり、限定的特性を有しない。本発明をよりよく理解し得るように与えてある。
【0083】
実施例1:組換え包膜の分子特徴付け及び表現型特徴付け
HERV−W包膜SUサブユニットの構成及び生産
可溶性組換え包膜タンパク質を発現し得るベクターphCMVEnv−Gp60を、HERV−W包膜遺伝子(538個のアミノ酸)(クローンPH74、Blond等のJ. Virol、73(2)巻;1175〜1185頁(1999))含有発現ベクターphCMV−Env−W(BlondのJ. Virol、74(7)巻;3321〜3329頁(2000))から設計した。
【0084】
可溶性包膜(Gp60、1〜435)は以下に記載の如く構成される;
(1)SUサブユニットとTMサブユニットとの間の自然の切断部位(AA314〜317)をAAARに変異させて融合タンパク質を生産し、該タンパク質は安定であって、切断され且つ次いでジスルフィド架橋によって再結合した2個のSU−TMサブユニットを有しない。
【0085】
(2)アミノ酸436〜538に対応する貫膜(tm)及び細胞質内(CYT)領域を欠失させて可溶性タンパク質を得る。
【0086】
(3)ポリヒスチジン尾部(RGS−HHHHHH)に続いて組成(GGGS)3を有するスペーサーアームをC−末端位置に付加してIMACによるこのタンパク質の精製及び抗−ヒスチジンEモノクローナル抗体(Qiagen, RGS H6)による検出を可能とする。
【0087】
可溶性包膜を発現するベクターph CMV Env−Gp60を原料として、ベクターph CMV−Env SUを構成し、SUタンパク質の生産を可能とする。可溶性SUは配列AAARの下流側直後に配列RGS−HHHHHHを有するC−末端ポリヒスチジン尾部を含有する融合タンパク質であり、IMACによるこのタンパク質の精製及び抗−ヒスチジンモノクローナル抗体(Qiagen, RGS H6)による検出を可能とする。
【0088】
ベクターph CMV−Env−W、ph CMV−Env−Gp60及びph CMV−Env SUから生産した種々のタンパク質の図解構造は図1aに例示する。
【0089】
可溶性包膜の生産
リン酸カルシウムでの沈降により発現プラスミドph CMV−Env−Gp60又はph CMV−Env SUをHEK293T細胞に移入する。GP60又はSU包膜を含有する上澄み液を血清無含有培地での生産の48時間後に収集し、0.45μm膜上で濾過して細胞廃棄物を除去する。20μlの上澄み液をポリアクリルアミドゲル上でしかも抗−ヒスチジンモノクローナル抗体(Quiagen, RGS H6)でのウエスタン ブロッティングにより直接分析する。GP60及びSUタンパク質は可溶形で正確に発現される。
【0090】
結合試験及び流れ細胞計算(flow cytometry)による分析
hASCT2(XC hASCT2)又はhASCT1(XC hASCT1)レセプターを構成的に発現する安定な細胞系列XChASCT2及びXChASCT1は、XC細胞(ラットの肉腫)を前記の如くクローンの選択に続いて何れかのヒトのレセプターhASCTを発現するベクターに移入後に確立される(Frendo等のMol. Cell Biol., 23(10)巻;3566〜3574頁(2003))。次のヒト細胞はBlondのJ. Virol, 74(7) 巻;3321〜3329頁(2000)に記載されている。TE671細胞はhASCT2を発現する。TE671RD細胞は、同じ干渉群に属し、それ故hASCT2レセプターを認識するRD114包膜(ネコの内因性レトロウィルス)を構成的に発現する。TE671galv細胞は、別の干渉群に属し且つPiT1レセプターを認識するGALV(手長ザルの白血病ウィルス)包膜を構成的に発現する。
【0091】
細胞はPBS中で洗浄し、PBS中の0.02%ベルセンで脱離することにより収穫する。全部で106個の細胞を、37℃で1時間可溶性包膜(Gp60又はSU)を含有する濾過済み上澄み液1mlと共にインキュベートする。細胞を、2%子牛胎児血清含有PBA(PBS及び0.5%ナトリウムアジド)で洗浄し、4℃で1時間抗−ヒスチジンモノクローナル抗体(RGSH6、Quiagen)で標識する。細胞をPBAで1回洗浄し、4℃で1時間フルオレセインイソシアネートに結合した二次抗体と共にインキュベートする。細胞をPBAで2回洗浄し、流れ細胞計算により分析した。
【0092】
標的細胞XC hASCT2を用いて、本発明者は可溶形の包膜に対応する組換えタンパク質Gp60が野生型包膜の表現型特性と同一の表現型特性を有し、即ちhASCT2レセプターを発現するXC細胞に結合し得ることを証明した。
【0093】
標的細胞XChASCT2、XChASCT1、TE671、TE671RD、TE671galvを用いて、本発明者は包膜のSUサブユニットに対応する組換えタンパク質が野生型包膜の表現型特性と同一の表現型特性を示すことを証明した。先ず第一に、SUサブユニットは2個のレセプターhASCT1及びhASCT2に結合し得る(図1b)。更には、このタンパク質はヒトの細胞TE671及び誘導細胞TE671RD及びTE671galvに関して試験する。hASCT2レセプターを発現するTE6781細胞及びTE671galv細胞に結合した可溶性SUタンパク質は、PiT1レセプターを阻止するが、hASCT2レセプターを阻止したTE671RD細胞には結合しなかった(図1c)。SU組換えタンパク質及びRD114レトロウィルスの包膜は特異的に干渉した。
【0094】
実施例2:N包膜のSU部分とそのhASCT2レセプターとの相互作用のための領域の同定
hASCT2レセプターに結合する包膜の領域の境界を同定するために、本発明者はN−末端及びC−末端の端部から一組の欠失突然変異体を構成した。SUサブユニットの領域はPCRによって得られ、発現ベクターphCMV−EnvSU中にサブクローン化し、配列させた。発現プラスミドphCMV−EnvSU、Env69−317、Env197、Env168、Env169−317、Env117及びEnv144(図2a)を、リン酸カルシウムでの沈降によりHEK293T細胞中に移入した。タンパク質の生産及び分析の条件は実施例1に詳細したのと同一である。
【0095】
EnvSU、Env69−317及びEnv197タンパク質は可溶形で正確に発現される。hASCT2を構成的に発現するXC細胞を用いて、本発明者はEnv197タンパク質がSUサブユニット(1〜317)と同様に細胞の表面で発現されるレセプターに結合し得ることを証明した。即ち、成熟SUサブユニット(それ故その信号ペプチドを欠失する)の最初の176残基はhASCT2レセプターを発現する細胞の表面に結合するのに十分である。21〜68領域の欠失はレセプターへの結合の減損を生じまたレセプター結合領域(RBD)中へのその取込みを示している。他方、切頭Env168タンパク質はhASCT2レセプターに結合する能力がより低いことを示した。
【0096】
種々の切頭タンパク質間の上澄み液で同量を得るためには、本発明者はSUのN−末端領域の2つのより小さな領域(Env117及びEnv144)をSUサブユニットのC−末端領域(Env169−317)に融合させ、後者の領域はhASCT2に結合しない。Env117及びEnv144タンパク質の発現の程度は同様であり、該タンパク質は可溶形で発現される。結合試験はEnv144タンパク質のみがhASCT2レセプターを発現する細胞に結合し得ることを示した。Env117タンパク質が細胞の表面に結合しないことは117〜144領域内部で結合の少なくとも1つの決定基が減損していることを示す。
【0097】
従って、W包膜とそのレセプターとの相互作用に対する領域の境界はアミノ酸21〜144によって特定される。
【0098】
一般に、分泌又は膜発現に意図したタンパク質(包膜タンパク質を含めて)は顆粒状の小胞体(ER)で合成されることに注目すべきである。ERにおける新規合成したタンパク質の転移はN−末端信号ペプチドによって左右される(Walter及びLingappa 1986)。信号ペプチドの疎水領域は、小胞体のうしろに新規合成したペプチドの残部を生起しながら、小胞体の膜への浸透を開始させる。転移は合成と同時に開始するので、ER膜を交差するのはホン訳されるペプチドである。タンパク質がERのルーメン(lumne)に進行する間に、信号配列は特異な細胞酵素、信号ペプチダーゼによって切断される(Walter P, Johnson AE; 信号配列認識及び小胞体膜を標的とするタンパク質、Annu. Rev. Cell Biol. (1994) 10巻;87〜119頁)。EnvのER中への転移は、リン脂質膜で係留される糖タンパク質の疎水性貫膜領域によって停止される。ERルーメンにおいては、細胞質外となるように意図される領域(SU及びTMの一部)は折りたたまれ(ジスルフィド架橋が形成した)、グリコシル化され、しかもオリゴマー化された。オリゴマー化後に、成熟を受けるタンパク質はゴルジ装置に運搬され、そこでタンパク質は、新たなグリカン成熟プロセス及び2つのSU及びTMサブユニットを生起する部位R/KXXRを認識するフリン型エンドプロテアーゼによる切断を受ける。
【0099】
成熟タンパク質は、チロシンを含有する細胞質内尾部に存在する部位(脂肪族/芳香族(Y−X−X))によって血漿膜に対して標的とされる。
【0100】
実施例3:包膜とそのレセプターとの結合を試験管内阻害する試験(ペプチドの特定及びラビッド抗体の生成)
ペプチド(112〜129、TGMSDGGGVQDQAREKHV+C、19個のアミノ酸)を、実施例2で限定した領域から及びSUサブユニットの潜在的に抗原性の領域から特定する。システインを、KLH(スカシガイヘモシアニン、Frendoび等のMol. Cell Biol. (2003) 23(10) 巻;3566〜3574頁参照)結合用にC−末端の位置で添加する。このペプチドを用いてラビットを免疫化し次いでこのラビットの血清中に含有される領域112〜119に指向されるポリクローナル抗体を親和性により精製する。
【0101】
Env144タンパク質を37℃で1時間抗−SUポリクローナル抗体又は抗−TMポリクローナル抗体の何れかと共に予備インキュベートした。Env144タンパク質−抗−SU抗体複合体の形成は、hASCT2レセプターを発現する細胞への包膜の結合を大幅に低下させた。対照的に、RBDに対して指向されない抗体を用いると、hASCT2レセプターへの包膜の結合に不利に影響しなかった。
【0102】
実施例4:HERV−W包膜タンパク質に対して指向されたモノクローナル抗体の生産
DNAでマイスの免疫化
3匹の雌の6週齢BALB/cマイス(IFFA−Credo)を、HERV−W包膜用の遺伝子を含有する裸のプラスミドDNA(phCMV−env−W)の直接注射により免疫化する。注射は遺伝子ガンを用いて皮内方式により行なった。2μgのDNAの5回の注射を各々のマウスについて行ない続いて4μgのDNAの2回の注射で促進した。血清を収集し各々の血清について抗体力価を測定した。抗体力価は余りにも低いので、細胞溶菌液を調製した。
【0103】
細胞溶菌液(lysate)の調製
黄紋筋肉腫細胞Tel Ce B6 (ATCC CRL8805) にプラスミドphCMV−env−Wを移入した。20時間後に且つ合胞体の存在後に、0.5%のトリトンを含有するPBS緩衝剤中に細胞抽出物を調製した。タンパク質抽出物はブラッドフォーム法により検定した。env−W抗原濃度は全タンパク質の1μl当り9.5μgに相当した。
【0104】
細胞溶菌液の抽出物でのマイスの免疫化
同じマイスは先ず第1に腹腔内方式により10μgの細胞溶菌液の注射を受け続いて腹腔内方式により2×100μgの細胞溶菌液の促進注射を受けた。骨髄腫細胞との融合の3日前に実施例1に記載の如くプラスミドphCMV−Env−Gp60から得られしかも次の要件;リン酸塩緩衝剤pH8中での結合、リン酸塩緩衝剤pH8及び酢酸アンモニウムpH6中での洗浄、酢酸アンモニウム緩衝剤pH3.5中での溶離及び高速真空(speed vac.)での濃縮によりNi−NTA樹脂(Quiagen)上に注射前に前もって精製した可溶性包膜タンパク質Gp60の22μgで別の注射を静脈内方式により行なった。かくして得られた真核Gp60タンパク質47μgは前記した静脈内方式による注射用に保存した。融合後に、ハイブリドーマの上澄み液は移入且つ結合した細胞(TelCeb6)について免疫蛍光法により試験し、抗体は9.2μg/μl全タンパク質の濃度でのEnv−Wタンパク質及び13.3μg/μl全タンパク質の濃度での負の対照としてEnvASタンパク質を用いて官能性エリザ試験によりふるい分けし、最も有効な抗体を選択した。
【0105】
モノクローナル抗体2H1H8、12C7A3及び1F11B10をかくして得た。モノクローナル抗体2H1H8及び12C7A3をEnv−HERV−Wタンパク質のSU領域の非グリコシル化N−末端部分に対して指向する。該抗体はEnv144を用いてウェスタンブロット検定法により示される如くRDBに対して指向される。モノクローナル抗体1F11B10はEnv169−317を用いてウェスタンブロット検定法により示される如くEnv−HERV−Wタンパク質のSU領域のグリコシル化C−末端部分に対して指向される。該抗体はEnv144を認識しない。
【0106】
実施例5: 包膜とそのレセプターとの結合の試験管内阻害の試験及び細胞−細胞融合試験(同時培養)によりモノクローナル抗体を用いて合胞体の形成阻害の試験
包膜タンパク質を発現するためのプラスミドを、2つの量100及び500ngでリン酸カルシウムでの沈降により細胞TELCeB6に移入した(Cosset等のウィルス学雑誌:Journal of Virology 69 (10) 巻;6314〜6322頁(1995))。移入の20時間後に包膜を発現する細胞を支持体から脱離し、それぞれ抗−HIV23A5モノクローナル抗体、、抗−TM Env−HERV −W 6A2B2モノクローナル抗体(前もって得られた)、抗−SU Env−HERV−W 2H1H8 12C7A3及び1F11B10モノクローナル抗体(希釈率1/50)と共に37℃で1時間予備インキュベートした。次いで、該細胞を12個の凹みプレート中に等しい濃度(0.4×105細胞/凹み)で再接種した。類上皮ガン腫指示用のヒトの細胞(Hela、ATCC CCL−2)を2×105細胞/凹みの量で、移入した細胞に添加し、同時培養を24時間続行する。XGal(5−ブロモ−4−クロロ−3−イソドリル−β−D−ガラクトピラノシド)染色を次いで行なって細胞TEL CeB6の核を染色する(Cosset等のウィルス学雑誌、69(10)巻;6314〜6322頁(1995))。続いて供給者の推奨により行なったメイ−グリーンワルド及びギザム溶液(MERCK社)での染色を行なった。観察された融合は、ビリオン−細胞(群)の融合に従って合胞体の形成に相当する「フロム ウイズアウト(from without)」融合とは対照的に「フロム ウイズイン(from within)」融合即ち細胞−細胞融合に相当する。
【0107】
以下の表1に表わした結果は融合した細胞の算出数を表わす。
【0108】
表1

ND:測定せず
前記した結果が示す処によれば、Envタンパク質−抗−SU 2H1H8と12C7A3抗体との複合体の形成は、包膜とhASCT2レセプターを発現する細胞との結合及び細胞融合を大幅に低下させる。対照的に、rdb(6A2B2又は1F11B10)に対して指向されない抗体を用いると抗−HIV23A5対照抗体で得られた結果と比較することにより見られる通り、有意な程に包膜の結合及び細胞の融合に不利には影響しない。
【0109】
実施例6: 包膜タンパク質とhASCT2レセプターとの間の生体内相互作用及び合胞体の生体内形成の研究
試験管内で得られた結果を立証するために、動物モデルを設計した。南米血清を補充したDMEM培地(Gibco Invitrogen 41966−029)で培養してある黄紋筋肉腫細胞TelCeB6(ATCC CRL8805)に、以下に詳述した実験様式により、2μg/μlの濃度でセンス配向にクローン化したHERV−W env遺伝子に対応するDNA(DNA409)、1.5μg/μlの濃度でアンチ−センス配向にクローン化したHERV−W env遺伝子に対応するDNA(DNA410)及び1.3μg/μlの濃度で突然変異したHERV−W env遺伝子に対応するDNA(DNA LQMV)を、リポフェクトアミン プラス(Lipofect AMINE PLUS;登録商標)キット(Gibco Invitrogen社)を用いて、それぞれ移入した。DNA409を移入した細胞は融合誘導W包膜タンパク質を発現することができ、DNA410を移入した細胞は包膜タンパク質を発現することができず、DNA LQMVを移入した細胞は非融合誘導の突然変異したW包膜タンパク質を発現することができる。
【0110】
1) 実験様式
1日目:TelCeB6細胞の培養;
(イ)直径100mmの皿の接種 → 50〜70%の合流(confluence);
(ロ)5%のCO2下に37℃で24時間補充したDMEM培地(1皿当り6ml)でのインキュベーション。
【0111】
2日目: リポフェクトアミン プラス(登録商標)キットを用いての移入;
1.DNAの予備複合化
(イ)15mlのファルコン管(参照2096)中で補充されていない培地750μlと前記のDNA即ち2μlの409又は3μlの410又は3μlのLQMVとの混合;
(ロ)プラス試薬の渦流下の攪拌及びDNA溶液へのプラス試薬20μlの添加;
(ハ)1400rpmで直ちに10秒間渦流下での攪拌;
(ニ)室温で15分間インキュベーション。
【0112】
2.細胞の調製
(イ)5mlの補充されていない培地での取替え。
【0113】
3.リポフェクトアミンの希釈
皿の代りの管体中で30μlのリポフェクトアミン試薬を750μlの補充されていない培地と混合する。
【0114】
4.DNAの複合化
780μlの希釈リポフェクトアミンと772μlの予備複合化DNAの溶液との混合(全部で1552μl);
1400rpmで直ちに10秒間渦流下に攪拌、
室温で15分間インキュベーション。
【0115】
5.標的細胞を移植した且つ抗−Env抗体の注射により処理した又は処理されない受容動物の移入及び製造
皿に1552μlの沈着;
5%のCO2下に37℃で2〜3時間インキュベーション。
【0116】
6mlの補充した培地で移入培地の取替え;
5%のCO2下に37℃で1時間インキュベーション。
【0117】
静脈内方式(IP)によりSCIDマイスに70%の合流で各々の皿の1/5(1mlの容量で)の注射、抗−Envタンパク質抗体(1/100でモノクローナル抗体2H1H8、ポリクローナル抗体69(アンチ−SU)及び71(アンチ−TM))の追加の注射あり又はなし。
【0118】
腹腔における偽腹水の確立と並行して、移植体に耐えしかも体内における移植した細胞の伝染を可能とする動物の製造。
【0119】
3日目;
腹膜洗浄により各々の動物からの細胞の収集; 2mlの空気の注入続いて2mlの生理食塩水の注入、次いでマッサージ及び2mlの腹膜液の回収(実験様式は移植動物において腹腔に移植した細胞の回収を開発した);
合胞体の計数と共に及び/又はスライド上での着色後に「反転相」顕微鏡下での観察;
トリパンブルー(死滅細胞の排除)の存在下に格子付き室でスライド上の各サンゴに行なった即時の読み取り。互いに融合した細胞の個数は「広角」レンズ(40)での視野当りで計数し、これによって約100個以上の細胞の計数を確立でき、こうして一連の統計学的に代表的な計数値を有する。
【0120】
各々の試料の細胞分量をメタノール/アセン(v/v)の存在下に固定し、次いでクリスタルバイオレット染色が得られるまで−20℃で貯蔵する。染色したスライドについて写真を撮る。
【0121】
2)マイス
2匹のマイスの複数群に次の細胞を接種する;
抗体を有しない3つの形式のプラスミド(DNA 409、410およびLQMV)を移入した細胞(3×2=6匹のマイス)
モノクローナル抗体2H1H8を有する3つの型式のプラスミド(DNA 409、410およびLQMV)を移入した細胞(3×2=6匹のマイス)。
【0122】
3)結果;
100個の細胞当り格子付きの計数室での直接読み取りにより測定した融合細胞の個数を以下の表2に示す;
表2
ECP(トリパンブルー)読み取り;合胞体の直接読み取り

S1*及びS2*=マウス1及びマウス2
各々の数字は研究した視野当りの融合した且つ目視された細胞の個数を表わす。若干の細胞は光学経路で重なり得るので、対照で融合したと見られる細胞の計数は零より大きい。次いで合胞体の実在及び細胞集合体の識別は、単独で唯一の細胞膜の連続により境界を定めた空間に収容された複数の細胞核を目視しながら、スライド上の細胞を染色することにより確認された。更には、融合中の細胞を示す写真によって、位相差顕微鏡検査により分析による融合の実在及び対照における同等の現象の全不在を客観的にすることができる。
【0123】
表2に示した数字によって表わされる主要な分析を統計上客観的にするのに、Chi−2試験を行なって表2のデータを比較する。
【0124】
スライド上での染色後の二次分析なしに又は対照では決して見られない融合中の典型的な細胞の調査なしに、一次読み取りの「背景ノイズ」を考慮しながら統計的な分析の結果は次の通りである;
i)生体内での病原作用の特異性の統計的確実性(validation);
発現したEnv(409);100個の細胞から平均して計数した20.5個のポジティブ(positives)、
アンチ−センスEnv(410);100個の細胞から平均して計数した9.5個のポジティブ
突然変異したEnv(LQMV);100個の細胞から平均して計数した6.5個のポジティブ
対照の平均値(410及びLQMV);9.5+6.5/2=8%。
【0125】
Env対(versus)対照410;Chi−2=5.89(p<0.02)
Env対 対照LQMV;Chi−2=9.83(p<0.002)
Env対2個の対照(410及びLQMV);chi−2=7.69(p<0.01)
対照410対 対照LQMV;Chi−2=0.61(差異は有意でない)。
【0126】
それ故対照は統計上同等であり、対照の型式に関連した「真の」差異はない。
【0127】
この分析段階から得られた結果(人工産物的なイメージに関連した背景ノイズを除外せずにしかも同等であると判明した2型式の対照を比較することにより)は統計上きわめて有意である(全体でp<0.01)。それ故染色による病原作用の特異性の次後の分析は、Envタンパク質の存在下に生体内で得られた病原作用の特異性を単に確認し、これによって融合がHERV−W Envによって誘発される合胞体の生体内研究の動物モデルを確実にする。
【0128】
ii)生体内の病原作用で試験した抗体の治療活性の統計的確実性;
発現したEnv(409);100個の細胞から平均して計数した20.5個のポジティブ、
発現したEnv(409)+モノクローナル抗体2H1H8;100個の細胞から平均して計数した3.5個のポジティブ。
【0129】
Env単独 対 抗体2H1H8の注射;Chi−2=15.38(p<0.001)。
【0130】
得られた結果はモノクローナル抗体に対して統計上有意な作用を示す(0.001より小さいチャンス(p)による結果の確率)。
【0131】
染色による病原作用の特異性の次後の分析は、Envタンパク質及び抗体の存在下に生体内で得られた病原作用の特異性を単に確認し、これによって動物モデルにおける治療効果を確実にする。
【0132】
実施例7: 型式1又は2hASCTレセプターを有する又は有しない細胞へのHERV−W Envタンパク質の結合及びHERV−W Envに対して指向した抗体の注射によるこの結合の阻害の生体内研究
1)材料
可溶性タンパク質; 可溶性タンパク質を含有する上澄み液は0.45μm上で濾過した(293T細胞はプラスミド460を移入した)(包膜−スペーサー−His6)。
【0133】
発現はアンチ−RGS−His抗体でのウェスタンブロッティングにより証明した。
【0134】
抗体;モノクローナル抗体2H1H8(IgG、5.50mg/ml)。
【0135】
細胞;hASCT2レセプターを発現するXC hASCT2、細胞クローンXC(ATCC CCL−165、ラット細胞。
【0136】
南米血清を有するDMEM培地(Gibco Invitrogen社41966−029)。
【0137】
1.5mlのエッペンドルフ管中の予備インキュベーション、インキュベーション、標識付け。
【0138】
2)実験様式
1.XC hASCT1、XC hASCT2細胞及び対照細胞XC hASCTのSCIDマイスへの腹腔内(IP)接種
容量2mlで70%の密集でフラスコの1/5のマイスへの注射。
【0139】
2.予備インキュベーション
時々攪拌しながら(15分毎)細胞培養器中で37℃で1時間モノクローナル抗体2H1H8と共に可溶性タンパク質上澄み液(293T系列の濾過した上澄み液)のインキュベーション(10μlの抗体と共に990μlの上澄み液(1/100希釈率))。
【0140】
3.接種
細胞を移植したマイス(ポイント当り1×106個の細胞、即ち直径100mmの融合皿の1/5)にタンパク質単独又は抗体と共にタンパク質のIP(腹腔内)接種。抗体(200μl)の注射に、時々腹膜マッサージしながら(30〜60分毎)6時間IPとして維持した。
【0141】
4.移植したマイスの腹膜洗浄による細胞の回収
(イ)+4℃で5分間3000回転の遠心分離。
【0142】
(ロ)細胞ペレットの回収及び標識化培地での希釈(固定まで+4℃で維持した)。
【0143】
5.標識化
(イ)一次抗体;
ペレットを、+4℃に維持したPBA緩衝剤(2%の子牛胎児血清及び0.1%のナトリウムアジドと共にPBS)中で100μlのアンチ−RGS His抗体(100倍の希釈率−Quiagen社)に溶解させる。
【0144】
時々攪拌しながら(15分毎)氷中で1時間維持した。
【0145】
+4℃に維持したPBA緩衝剤(管体当り1ml)中で洗浄した。
【0146】
(ロ)二次抗体;
+4℃で5分間3000回転で遠心分離した。
【0147】
ペレットを、+4℃に維持した100μlのアンチ−マウス抗体−FITC(1/20の希釈率−DAKO社、PBA干渉剤中の参照F0479)に溶解させる。
【0148】
時々攪拌しながら(15分毎)、氷中で1時間維持した。
【0149】
PBA緩衝剤(管体当り1ml)中で2回洗浄し、+4℃に維持した。
【0150】
ペレットを500μのPBAに溶解させ、+4℃に維持し、FACSにより分析した。
【0151】
別法として、−20℃でアセトン/メタノール(50%/50%)中でスライド上に固定し且つエバンスブルーで対比染色後にIFにより分析する。
【0152】
3)マイス;
2匹のマイスの複数群に次の細胞を接種した;
抗体を有しない各々の型式の細胞(2型式のレセプターhASCT1及びhASCT2を発現し且つ対照としてレセプターhASCTを発現しない細胞)(3×2=6マイス)
Envタンパク質及びモノクローナル抗体2H1H8を有する3型式の細胞(3×2=6マイス)。
【0153】
4)結果
顕微鏡での免疫蛍光(IF)読み取りによる結果を以下の表3に表わす;
表3
IF読み取り;同じ視野での蛍光細胞の個数/全細胞数(NF/NT)

各々の個数は、研究した視野当りの蛍光体として目視された細胞の個数を表わす。若干の細胞は非特異的な要領で結合した蛍光を有し得るので、対照条件下で蛍光が見られる細胞についての計数はそれ故算出した2つの視野の1つで零よりも大きい(2つの視野の平均=1/28即ち0.036%、これはかかる読み取り技術の背景ノイズについては全く適当である)。次いでEnvタンパク質を細胞のhASCT1又はhASCT2レセプターに結合した細胞の実在は細胞蛍光定量分析により証明された。
【0154】
表3に提示した分析を統計上客観的にするために、Chi−2試験を行なって以下の条件下で得られたデータを比較する(i)SCIDマイスに注射したEnvタンパク質が結合できない即ちアンチ−Env抗体の存在下に膜蛍光を与えない、レセプターを有しない移植対照細胞(対照X)に対して、Envタンパク質はSCIDマイスに移植した細胞の表面に存在するレセプターhASCT1(対照のhASCT1)又はhASCT2(対照のhASCT2)に結合できる
(ii)Env−SUに対して指向したモノクローナル抗体の注射に対して、Envタンパク質は、SCIDマイスに移植した細胞の表面に存在するレセプターhASCT1(対照のhASCT1)又はhASCT2(対照のhASCT2)に結合できる。
【0155】
統計的な分析の結果は以下に示す;
i)生体内病原作用の特異性の統計的確実性;
対照のhASCT1;77個の細胞から平均して計数した24個のポジティブ、
対照のhASCT2;57個の細胞から平均して計数した23個のポジティブ、
h−ASCT−細胞; 28個の細胞から平均して計数した1個のポジティブ、
Env+移植hASCT1対hASCT−;Chi−2=8.62(p<0.01)
Env+移植hASCT2対hASCT−;Chi−2=12.53(p<0.001)
Env+移植hASCT1対Env+移植hASCT2;Chi−2=1.25(差異は有意でない)。
【0156】
それ故細胞の表面でhASCT1又はhASCT2レセプターを発現する細胞は、実際上統計的に同等であり、実験の条件下でサブタイプ1又は2に関連したレセプターへのEnv結合に差異はない。
【0157】
膜レセプターhASCT1又はhASCT2を発現する細胞を移植した動物で得られた結果は、細胞の表面でこれらレセプターの何れをも発現しない細胞を移植した対照動物で得られた結果から見て統計上有意義である。
【0158】
これらの結果は動物モデルにおいてEnvタンパク質の存在下に生体内で得られた作用の特異性を確認する。
【0159】
ii)生体内病原作用で試験した抗体の治療活性の統計的な確実性;
Env+移植 対照 hASCT1;77個の細胞から平均して計数した24個のポジティブ
Env+移植hASCT1+モノクローナル抗体2H1H8;73個の細胞から平均して計数した2個のポジティブ。
【0160】
Env+移植hASCT1単独 対 注射抗体2H1H8;Chi−2=21.14(p<0.001)。
【0161】
得られた結果はモノクローナル抗体について統計上有意な作用を示す(0.001より小さいチャンス(p)による結果の確率)。
【0162】
Env+移植hASCT2;57個の細胞から平均して計数した23個のポジティブ、
Env+移植hASCT2+モノクローナル抗体2H1H8;45個の細胞から平均して計数した1個のポジティブ、
Env+移植hASCT2単独 対 注射抗体2H1H8:Chi−2=20.31(p<0.001)。
【0163】
得られた結果はモノクローナル抗体について統計上有意な作用を示す(全体で0.01より小さいチャンス(p)による結果の確率)。
【0164】
適当な対照に対する動物モデルの確実性は、抗体がHERV−W Envタンパク質の病原作用を有意なほどに阻害することにより治療活性を有し得ることを証明している。
【0165】
実施例8: 干渉群の配列の整合
レトロウィルスHERV−W(スイス−プロットQ9UQF0)、RD114(スイス−プロットQ98654)、REV(スイス−プロットP31796)、BAEV(スイス−プロットP10269)、SRV1(スイス−プロットP04027)、SRV2(スイス−プロットP51515)及びMPMV(スイス−プロットP07575)の包膜のタンパク質配列を、クラスタルW法を用いてマックベクター(MacVector)ソフトウェアの使用により整合させた。信号ペプチド、SU(表面ユニット)サブユニット及びTM(貫膜)サブユニットが示される。レセプター結合部位に下線を引く。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図2a】

【図2b】

【図3a】

【図3b】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互作用に必要なペプチド領域であって、N−末端を開始としC−末端で終点とし、N−末端はSEQ ID No.1〜SEQ ID No.29から選ばれた部位によって特定され、C−末端はSEQ ID No.30〜SEQ ID No.40から選ばれた部位によって特定され、前記のペプチド領域はN−末端とC−末端との間にSEQ ID No.41、SEQ ID No.42及びSEQ ID No.73から選んだ少なくとも1つの部位を含有することで特定されたペプチド領域。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド領域をコード化するヌクレオチド配列。
【請求項3】
HERV−W干渉群に属するウィルスに対して免疫応答を誘発することを特徴とする請求項1記載のペプチド領域から誘導されるエピトープ。
【請求項4】
請求項3に記載のエピトープをコード化するヌクレオチド配列。
【請求項5】
請求項2及び4の何れかに記載のヌクレオチド配列と、その発現に必要な手段とを含有することを特徴とする発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の少なくとも1つの発現ベクターで形質転換された微生物又は宿主細胞。
【請求項7】
請求項1に記載のペプチド領域又は請求項3に記載のエピトープに対して指向された抗体。
【請求項8】
動物好ましくはヒトにおけるHERV−W干渉群に属するウィルスによって生起される感染の抑制、防止又は処置に意図される医薬を製造するために、ペプチド領域又はエピトープの構成性発現及び/又は誘導発現に必要な要素の調節下に配置された、請求項1に記載の少なくとも1つのペプチド領域の使用又は請求項3に記載の少なくとも1つのエピトープの使用又は請求項7に記載の少なくとも1つの抗体の使用又は請求項2又は4に記載の少なくとも1つのヌクレオチド配列の使用。
【請求項9】
製薬上適当なビヒクルと組合せて、ペプチド領域又はエピトープの構成性発現及び/又は誘導発現に必要な要素の調節下に配置された、請求項1に記載の少なくとも1つのペプチド領域又は請求項3に記載の少なくとも1つのエピトープ又は別法として請求項2又は4に記載のヌクレオチド配列の少なくとも1つ、あるいは別法として請求項7に記載の少なくとも1つの抗体を活性物質として含有してなる製薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の少なくとも1つのペプチド領域、請求項3に記載の少なくとも1つのエピトープ、又は請求項2又は4に記載のヌクレオチド配列の少なくとも1つあるいは請求項7に記載の少なくとも1つの抗体を含有してなり、HERV−W干渉群に属するウィルスの検出及び/又は定量化用の診断組成物及び/又はHERV−W干渉群に属するウィルスに対する免疫応答の定量化用の診断組成物。
【請求項11】
次の工程即ち;
(イ)ウィルスと抗体との間で複合体を形成し得る条件下で生物学的試料を請求項7記載の少なくとも1つの抗体と接触させ、しかも
(ロ)何れか適当な手段により前記複合体の形成を検出及び/又は定量化する工程からなることを特徴とする、ウィルスによって感染され易い個体から採取した生物学的試料においてHERV−W干渉群に属するウィルスを検出及び/又は定量化する方法。
【請求項12】
生物学的試料又は試験片においてHERV−W干渉群に属するウィルスを試験管内スクリーニングするため請求項10に記載の診断組成物の使用。
【請求項13】
HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互作用を抑制するため、請求項1に記載のペプチド領域又は請求項3に記載のエピトープ又は請求項7に記載の抗体の使用。
【請求項14】
化学分子又は生物学的分子とペプチド領域の全部又は一部との相互作用がHERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互作用を阻止する、化学分子又は生物学的分子を同定するため、請求項1に記載のペプチド領域の使用。
【請求項15】
HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互作用を阻止する抗体を発生するため、請求項1に記載のペプチド領域の使用。
【請求項16】
HERV−W干渉群に属するウィルスの包膜とhASCT受容体との間の相互作用に必要なポリペプチド領域を測定する方法において、
(イ)前記ウィルスの前駆体包膜のヌクレオチド及び/又はペプチド配列を同定し、
(ロ)信号部分を除外し、
(ハ)SEQ ID No.43に相当するセリン−アスパラギン酸−Xa−Xb−Xc−Xd−Xe−アスパラギン酸−Xf−Xg部位(但しXa、Xb、Xc、Xd、Xe、Xf、Xgは任意のアミノ酸である)を検出し、
(ニ)SEQ ID No.43に相当する前記のセリン−アスパラギン酸−Xa−Xb−Xc−Xd−Xe−アスパラギン酸−Xf−Xg部位後に15個目のアミノ酸と25個目のアミノ酸との間でC−末端を除外することを特徴とする、ポリペプチド領域の測定方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって得られるペプチド領域。

【公表番号】特表2009−525741(P2009−525741A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553798(P2008−553798)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000236
【国際公開番号】WO2007/090967
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(592011479)
【Fターム(参考)】