説明

HIVインテグラーゼ阻害剤

式Iの化合物の立体異性体が開示されている。式中の、V、V、R5a、R5b、R5c、RおよびR9bは本文中に定義されており、立体異性体は8員環の環に2つのキラル中心を含んでおり、キラル中心の1つは、キラル環炭素の存在が原因である。異性体は、HIVインテグラーゼの阻害剤およびHIV複製の阻害剤であり、HIV感染の予防または治療、および、AIDSの予防、治療または発症もしくは進行の遅延に有用である。化合物は、HIV感染およびAIDSに対抗するために、化合物自体としてまたは医薬的に許容される塩の形態で使用される。化合物およびそれらの塩は、医薬組成物中の成分として、場合によっては他の抗ウイルス薬、免疫調節薬、抗生物質またはワクチンと組合せて使用できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種のヘキサヒドロ−ジアゾシノナフチリジントリオン化合物および医薬的に許容されるそれらの塩、それらの合成、ならびに、HIVインテグラーゼ酵素の阻害剤としてのそれらの使用を目的とする。本発明の化合物および医薬的に許容されるそれらの塩は、HIV感染の予防または治療、および、AIDSの予防または治療または発症もしくは進行の遅延に有用である。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と称されるレトロウイルス、特にHIV1型(HIV−1)ウイルスおよびHIV2型(HIV−2)ウイルスとして知られた菌株は、免疫系の進行性破壊(後天性免疫不全症候群;AIDS)ならびに中枢および末梢の神経系の変性を含む複合疾患の病因物質である。このウイルスはこれまでLAV、HTLV−IIIまたはARVとして知られていた。レトロウイルス複製に共通の特徴は、ウイルスにコードされた+プロウイルスDNAのインテグラーゼが宿主細胞ゲノムに挿入されることであり、これは、ヒトTリンパ球様細胞および単球様細胞中のHIV複製において必要な段階である。組込みは、インテグラーゼによって媒介される3つの段階、すなわち、ウイルスDNA配列と共に安定な核タンパク質複合体を組立てる段階、直鎖状プロウイルスDNAの3’末端から2つのヌクレオチドを開裂する段階、宿主の標的部位に形成された段違い切断(staggered cut)にプロウイルスDNAの凹状3’OH末端を共有結合させる段階を含むと考えられている。プロセスの第四段階、すなわち、生じたギャップの修復合成は細胞性酵素によって果たされ得る。
【0003】
HIVのヌクレオチド配列決定により、1つのオープンリーディングフレーム内にpol遺伝子が存在していることが示されている[Ratner,L.ら,Nature,313,277(1985)]。アミノ酸配列の相同性により、pol配列が逆転写酵素、インテグラーゼおよびHIVプロテアーゼをコードするという証拠が得られている[Toh,H.ら.,EMBO J.4,1267(1985);Power,M.D.ら,Science,231,1567(1986);Pearl,L.H.ら,Nature,329,351(1987)]。3つの酵素全部がHIV複製に必須であることが分かっている。
【0004】
HIV複製阻害剤として作用するいくつかの抗ウイルス性化合物がAIDSおよび同様の疾患の治療に有効な薬剤であることは知られており、たとえば、アジドチミジン(AZT)およびエファビレンツのような逆転写酵素阻害剤ならびにインジナビルおよびネルフィナビルのようなプロテアーゼ阻害剤がある。本発明の化合物はHIVインテグラーゼの阻害剤およびHIV複製阻害剤である。インビトロのインテグラーゼ阻害および細胞中のHIV複製阻害は、HIV感染細胞中でインビトロの組換えインテグラーゼによって触媒される鎖転移反応が阻害されることの直接的な結果である。本発明の特筆すべき利点は、HIVインテグラーゼおよびHIV複製を極めて特異的に阻害することである。
【0005】
以下の参考文献が背景技術として重要である。
【0006】
US 6380249、US 6306891およびUS 6262055は、HIVインテグラーゼ阻害剤として有用な2,4−ジオキソ酪酸および酸エステルを開示している。
【0007】
WO 01/00578は、HIVインテグラーゼ阻害剤として有用な1−(芳香族−またはヘテロ芳香族−置換)−3−(ヘテロ芳香族置換)−1,3−プロパンジオンを開示している。
【0008】
US 2003/0055071(WO 02/30930に対応)、WO 02/30426およびWO 02/55079のおのおのは、ある種の8−ヒドロキシ−1,6−ナフチリジン−7−カルボキサミドをHIVインテグラーゼ阻害剤として開示している。
【0009】
WO 02/036734はある種のアザ−およびポリアザ−ナフタレニルケトンがHIVインテグラーゼ阻害剤であると開示している。
【0010】
WO 03/016275は、インテグラーゼ阻害活性を有しているある種の化合物を開示している。
【0011】
WO 03/35076はある種の5,6−ジヒドロキシピリミジン−4−カルボキサミドをHIVインテグラーゼ阻害剤として開示しており、WO 03/35077はある種のN−置換5−ヒドロキシ−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−4−カルボキサミドをHIVインテグラーゼ阻害剤として開示している。
【0012】
WO 03/062204は、HIVインテグラーゼ阻害剤である、ある種のヒドロキシナフチリジノンカルボキサミドを開示している。
【0013】
WO 04/004657は、HIVインテグラーゼ阻害剤として有用なある種のヒドロキシピロール誘導体を開示している。
【0014】
WO 2005/016927は、HIVインテグラーゼ阻害剤である、ある種の窒素含有縮合環化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6380249号明細書
【特許文献2】米国特許第6306891号明細書
【特許文献3】米国特許第6262055号明細書
【特許文献4】WO01/00578
【特許文献5】米国特許第2003/0055071号明細書(WO02/30930に対応)
【特許文献6】WO02/30426
【特許文献7】WO02/55079
【特許文献8】WO02/036734
【特許文献9】WO03/016275
【特許文献10】WO03/35076
【特許文献11】WO03/35077
【特許文献12】WO03/062204
【特許文献13】WO04/004657
【特許文献14】WO2005/016927
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】ラトナー(Ratner,L.)ら,ネイチャー(Nature),313,277(1985);
【非特許文献2】トー(Toh,H.)ら.,EMBO J.4,1267(1985);
【非特許文献3】パワー(Power,M.D.)ら,サイエンス(Science),231,1567(1986);
【非特許文献4】パール(Pearl,L.H.)ら,ネイチャー(Nature),329,351(1987)
【発明の概要】
【0017】
本発明は、ある種のヒドロキシ−置換3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン化合物を目的とする。これらの化合物はHIVインテグラーゼの阻害、HIV感染の予防、HIV感染の治療、AIDSおよび/またはARCの予防、治療および発症もしくは進行の遅延に、化合物の形態でまたはそれらの医薬的に許容される塩もしくは水和物(適宜)または医薬組成物成分の形態で、他のHIV/AIDS抗ウイルス薬、抗感染薬、免疫調節薬、抗生物質またはワクチンと併用されてまたは非併用で有用である。より特定的には本発明は、8員環の環に2つのキラリティソースを有している式I:
【0018】
【化1】

[式中、
5aはHまたはOHであり、
5bおよびR9bは双方がHであるかまたは双方がCHであり、
5cはHまたはCHであり、
はC1−3アルキルであり、
およびVはおのおの独立にBr、Cl、FまたはIであり、
付帯条件として、
(A)R5bおよびR9bの双方がHであるとき、R5aはHおよびR5cはCHであり、また、
(B)R5bおよびR9bの双方がCHであるとき、R5aはOHおよびR5cはHである]
の化合物の個別の立体異性体および医薬的に許容されるそれらの塩を包含する。
【0019】
上記付帯条件の結果として、式Iの立体異性化合物の8員環の環にキラル炭素の存在が必要になる。付帯条件AではR5cが結合した環炭素がキラルになり、付帯条件BではR5aが結合した環炭素がキラルになる。
【0020】
本発明はまた、式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩の立体異性体を含有する医薬組成物を含む。本発明はさらに、AIDSの治療方法、AIDSの発症または進行の遅延方法、AIDSの予防方法、HIV感染の予防方法およびHIV感染の治療方法を含む。
【0021】
本発明のその他の実施態様および特徴は、以下の記載、実施例および特許請求の範囲により詳細に記載されており、これらの記載から明らかにされるであろう。
【0022】
本発明は前出の式Iの化合物の個々の立体異性体および医薬的に許容されるそれらの塩を含む。これらの異性体および医薬的に許容されるそれらの塩はHIVインテグラーゼ阻害剤(例えば、HIV−1インテグラーゼ阻害剤)である。
【0023】
本発明の第一の実施態様(この文中で代替的に“実施態様E1”と呼ぶ)は、式中のRがCHであり他のすべての可変要素が原定義通りである(すなわち、発明の概要に定義された通りである)式Iの化合物の立体異性体(この文中で代替的に“立体異性体I”と略称する)または医薬的に許容されるその塩である。この実施態様および以後のすべての実施態様において、そうでないと明記されていなければ、発明の概要の項の立体異性体Iの原定義中に提示した付帯条件が適用される。
【0024】
本発明の第二の実施態様(実施態様E2)は、式中のVがFであり、VがBr、ClまたはFであり、他のすべての可変要素が原定義通りであるかまたは実施態様E1の定義通りである立体異性体Iまたは医薬的に許容されるその塩である。
【0025】
本発明の第三の実施態様(実施態様E3)は、式中のVがFであり、VがClであり、他のすべての可変要素が原定義通りであるかまたは実施態様E1の定義通りである立体異性体Iまたは医薬的に許容されるその塩である。
【0026】
本発明の第四の実施態様(実施態様E4)は、式中のVがFであり、Vがベンジル部分のメタ位に存在するClであり、他のすべての可変要素が原定義通りであるかまたは実施態様E1の定義通りである立体異性体Iまたは医薬的に許容されるその塩である。実施態様E3のベンジル部分は、
【0027】
【化2】

によって表すことができ、式中の*印は、化合物の残部に対する3−クロロ−4−フルオロベンジル部分の結合点を表す。
【0028】
本発明の第五の実施態様(実施態様E5)は、キラリティソースの1つがアトロプ異性であり、他のすべての可変要素が原定義通りであるかまたは実施態様E1からE4のいずれかの定義通りである立体異性体Iまたは医薬的に許容されるその塩である。
【0029】
本発明の第六の実施態様(実施態様E6)は、立体異性体Iが以下のグループ:
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A−1(この文中で代替的に“異性体A−1”と略称する);
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体B−1(この文中で代替的に“異性体B−1”と略称する);
(4S)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A(この文中で代替的に“異性体A−2”と略称する));
(4S)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体B(この文中で代替的に“異性体B−2”と略称する));
11−(3−クロロ−4−fiuorobenzylフルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマー1(この文中で代替的に“異性体A−3”と略称する);
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーB(この文中で代替的に“異性体B−3”と略称する);
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーC(この文中で代替的に“異性体C−3”と略称する);
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーD(この文中で代替的に“異性体D−3”と略称する);および医薬的に許容されるそれらの塩から選択される立体異性体Iである。
【0030】
本発明の第七の実施態様(実施態様E7)は、立体異性体Iが以下のグループ:
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A−1;
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーB−3;および医薬的に許容されるそれらの塩から選択される立体異性体Iである。
【0031】
本発明の第八の実施態様(実施態様E8)は、立体異性体Iが(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(1lH)−トリオンの立体異性体A−1または医薬的に許容されるその塩を表す立体異性体Iである。
【0032】
本発明の第九の実施態様(実施態様E9)は、立体異性体Iが11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーB−3または医薬的に許容されるその塩を表す立体異性体Iである。
【0033】
本発明の第十の実施態様(実施態様E10)においては、立体異性体または医薬的に許容されるその塩が実質的に純粋である原定義通りまたは先行実施態様のいずれかに定義された立体異性体Iまたは医薬的に許容されるその塩である。この文中に使用した“実質的に純粋”という用語は、化合物またはその塩が(例えば、化学反応または代謝プロセスから単離された生成物中に)少なくとも約90重量%(例えば約95重量%から100重量%)、好ましくは少なくとも約95重量%(例えば約98重量%から100重量%)、より好ましくは少なくとも約99重量%、もっとも好ましくは100重量%の量で存在することを意味する。化合物および塩の純度レベルは標準分析方法を使用して測定できる。100%純度の化合物または塩は代替的に、1つ以上の標準分析方法によって測定したときに検出可能な不純物が存在しないものであると記述することもできる。
【0034】
本発明の他の実施態様は以下を含む。
(a)有効量の立体異性体Iを医薬的に許容される担体と共に含む医薬組成物、
(b)有効量の立体異性体Iを医薬的に許容される担体と組合せる(例えば混合する)ことによって調製された生成物を含む医薬組成物、
(c)さらに、抗HIVウイルス薬、免疫調節薬および抗感染薬から成るグループから選択された抗HIV薬を有効量で含む(a)または(b)の医薬組成物、
(d)抗HIV薬が、HIVプロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤およびHIV融合阻害剤から成るグループから選択された抗ウイルス薬である(c)の医薬組成物、
(e)(i)立体異性体Iと、(ii)抗HIVウイルス薬、免疫調節薬および抗感染薬から成るグループから選択された抗HIV薬との組合せから成り、該組合せ中の式Iの化合物および抗HIV薬のおのおのは、該組合せがHIVインテグラーゼの阻害、HIV感染の治療または予防、AIDSの治療、予防または発症もしくは進行の遅延に有効となる量で使用されている医薬組合せ、
(f)抗HIV薬が、HIVプロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤およびHIV融合阻害剤から成るグループから選択された抗ウイルス薬である(e)の組合せ、
(g)有効量の立体異性体Iを対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のHIVインテグラーゼの阻害方法、
(h)有効量の立体異性体Iを対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のHIV感染の治療または予防方法、
(i)立体異性体Iを、HIVプロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤およびHIV融合阻害剤から成るグループから選択された少なくとも1種類の有効量の抗ウイルス薬と組合せて投与する(h)の方法、
(j)有効量の立体異性体Iを対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のAIDSの治療、予防または発症もしくは進行の遅延方法、
(k)立体異性体Iを、HIVプロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシドHIV逆転写酵素阻害剤およびHIV融合阻害剤から成るグループから選択された少なくとも1種類の有効量の抗ウイルス薬と組合せて投与する(j)の方法、(l)医薬組成物(a)、(b)、(c)もしくは(d)、または、組合せ(e)もしくは(f)を対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のHIVインテグラーゼの阻害方法、
(m)医薬組成物(a)、(b)、(c)もしくは(d)、または、組合せ(e)もしくは(f)を対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のHIV感染の治療または予防方法、
(n)医薬組成物(a)、(b)、(c)もしくは(d)、または、組合せ(e)もしくは(f)を対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のAIDSの治療、予防または発症もしくは進行の遅延方法。
【0035】
本発明はまた、(a)HIVインテグラーゼの阻害、(b)HIV感染の治療または予防、(c)AIDSの治療、予防または発症もしくは進行の遅延の目的で、(i)使用するため、(ii)医薬中で使用するため、または、(iii)医薬の製造に使用するための本発明の立体異性化合物を含む。これらの使用において、本発明の化合物は場合により、抗HIVウイルス薬、抗感染薬および免疫調節薬から選択された1種以上の抗HIV薬と併用できる。
【0036】
本発明の追加の実施態様は、使用される式Iの化合物の個別の立体異性体が上述の実施態様E1からE9のいずれか1つに定義した立体異性体である上記の(a)から(n)に提示した医薬組成物、組合せおよび方法と、前文節に提示した使用とを含む。これらのすべての実施態様において化合物は、場合により医薬的に許容される塩の形態で使用され、場合により実質的に純粋であろう。
【0037】
本発明はまた、異性体A−1または医薬的に許容されるその塩と異性体B−1または医薬的に許容されるその塩との混合物を含む組成物(この文中で代替的に“組成物AB”として表す)を包含する。組成物ABの第一の実施態様(実施態様AB−E1)において、異性体A−1は異性体B−1との混合物の多量成分である。すなわち、異性体A−1の量が(異性体A−1と異性体B−1との重量に基づく)混合物の50重量%超を構成する。組成物ABの第二の実施態様(実施態様AB−E2)において、異性体A−1は異性体B−1との混合物の少なくとも70重量%を構成する。組成物ABの第三の実施態様(実施態様AB−E3)において、異性体A−1は異性体B−1との混合物の少なくとも90重量%(たとえば、約90重量%から約99重量%)を構成する。組成物ABの第四の実施態様(実施態様AB−E4)において、異性体A−1は異性体B−1との混合物の少なくとも95重量%(たとえば、約95重量%から約99重量%)を構成する。一方または双方の異性体の医薬的に許容される塩が混合物に使用されるとき、この文節に提示した重量パーセントが異性体の遊離形態(すなわち、遊離酸または遊離塩基)に基づくことは理解されよう。
【0038】
原形として上記に提示された組成物ABおよび上記のその実施態様のおのおのの特徴によれば、異性体A−1と異性体B−1との混合物が、組成物の少なくとも約90重量%(たとえば、約95重量%から100重量%)、好ましくは少なくとも約95重量%(たとえば、約98重量%から100重量%)、より好ましくは少なくとも約99重量%、もっとも好ましくは少なくとも100重量%を構成する。
【0039】
本発明の追加の実施態様は、立体異性体Iの代わりに組成物ABが使用されている上記の(a)から(n)に提示したものに類似の医薬組成物、組合せおよび方法と、上記に提示した使用とを含む。
【0040】
この文中に使用した“アルキル”という用語は、特定した範囲の炭素原子数を有している直鎖状または分枝状アルキル基を表す。従って、たとえば“C1−3アルキル”(または、“C−Cアルキル”)はn−およびイソプロピル、エチルおよびメチルを表す。
【0041】
結合の末端の“*”記号は、分子を構成している官能基または他の化学部分と分子の残りの部分との結合点を表す。
【0042】
置換基および/または可変要素の組合せは、このような組合せが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。
【0043】
“安定な”化合物は、調製および単離でき、また、この文中に記載の目的(たとえば、対象への治療的または予防的投与)で化合物を使用できるように十分な期間にわたってその構造および特性が本質的に不変に維持されるかまたは維持させることができる化合物である。
【0044】
平均的な当業者には理解されるであろうが、本発明の化合物は互変異性体として存在できる。これらの化合物のすべての互変異性形態は、単離されているかまたは混合物であるかにかかわりなく本発明の範囲に包含される。
【0045】
立体異性体Iの8員環の環の第二のキラリティソースの原因はアトロプ異性にある。アトロプ異性は、(たとえば、嵩高い置換基の存在によって)そうでなければ自由な結合周囲の回転が十分に制限されるときに観察され、得られる回転鏡像異性体は相互変換が十分に遅いのでそれらの分離およびキャラクタリゼーションが可能でありアトロプ異性体と呼ばれる。アトロプ異性のより詳細な記載については、J.March,Advanced Organic Chemistry,4th Edition,John Wiley & Sons,1992,pp.101−102;およびAhmedら,Tetrahedron 1998,13277を参照するとよい。より詳細には、以下の構造Aを代表とする本発明の化合物は、矢印で示された結合周囲の回転が、(たとえばキラル固定相にカラムクロマトグラフィーを使用して)鏡像異性体を分離できるほど十分に束縛されており、本発明の立体異性体で観察される第二のキラリティの起原はこれによって説明できる。
【0046】
【化3】

【0047】
本発明の立体異性化合物は、HIVインテグラーゼ(たとえばHIV−1インテグラーゼ)の阻害、HIV感染の予防または治療、その結果として生じるAIDSのような病的状態の予防、治療または発症もしくは進行の遅延に有用である。AIDSの予防、AIDSの治療、AIDSの発症もしくは進行の遅延、HIV感染の予防またはHIV感染の治療は非限定的に、多様な範囲のHIV感染状態、すなわち、症候性および非症候性のAIDS、ARC(AIDS関連コンプレックス)、ならびに、現実的または潜在的HIV接触を含む。例えば、本発明の化合物は、輸血、体液交換、咬み傷、針刺し事故または手術中の患者血液との接触のような過去のHIV接触疑惑があるときのHIV感染の治療に有用である。
【0048】
本発明の化合物は医薬的に許容される塩の形態で投与できる。“医薬的に許容される塩”という用語は、親化合物の有効性を有しており望ましくない生物学的またはその他の特性のない(例えばそのレシピエントに対する毒性またはその他の有害特性のない)塩を意味する。適当な塩は、たとえば本発明の化合物の溶液を塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸または安息香酸のような医薬的に許容される酸の溶液と混合することによって形成される酸付加塩を含む。本発明の化合物はまた、アルカリ金属塩(たとえばナトリウムまたはカリウムの塩)、アルカリ土類金属塩(たとえば、カルシウムまたはマグネシウムの塩)の形態で、または、第四級アンモニウム塩のような適当な有機配位子と共に形成された塩の形態で使用できる。
【0049】
本発明の化合物に関する“投与”という用語およびその変化形(たとえば、“投与された”または“投与する”)は、治療または予防を必要とする個体に化合物を与えることを意味する。本発明の化合物が1種以上の他の有効薬剤(たとえば、HIV感染またはAIDSの予防または治療に有用な抗ウイルス薬)と組合せて与えられるとき、“投与”およびその変化形のおのおのは、化合物および他の薬剤が同時にまたは異なる時期に与えられることを包含すると理解される。組合せた複数の薬剤が同時に投与されるとき、それらは単一組成物として統合された形態で投与されてもよくまたは個別形態で投与されてもよい。
【0050】
この文中に使用した“組成物”という用語は、特定した成分を含む生成物、および、特定した成分の組合せから直接または間接に得られた生成物を含意する。
【0051】
“医薬的に許容される”という表現は、医薬組成物の成分が互いに適合性でなければならないこと、および、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0052】
この文中に使用した“対象”(または、代替的に“患者”)という用語は、治療、観察または実験の対象となる動物、好ましくは哺乳動物、もっとも好ましくはヒトを表す。
【0053】
この文中に使用した“有効量”という用語は、組織、系、動物またはヒトの体内で、研究者、獣医、内科医または他の臨床医が求める生物学的または医学的応答を誘発する有効化合物または医薬剤の量を意味する。1つの実施態様において、有効量は、治療されている疾患または状態の症状を軽減するための“治療有効量”である。別の実施態様において、有効量は、予防されている疾患または状態の症状を予防するための“予防有効量”である。この文中でこの用語はまた、HIVインテグラーゼを阻害しこれによって求められている応答を誘発するために十分な有効化合物の量(たとえば、“阻害有効量”)を包含する。有効化合物(すなわち、有効成分)が塩として投与されるとき、有効成分の量は遊離酸形態または遊離塩基形態の化合物の量を表す。
【0054】
本発明の化合物は、HIVインテグラーゼの阻害、HIV感染の予防または治療、AIDSの予防または治療または発症もしくは進行の遅延の目的で、場合によっては塩の形態で、有効薬剤と薬剤の作用部位との接触を生じさせる何らかの手段によって投与できる。化合物は、医薬品関連の使用に利用できる何らかの慣用の手段によって個別治療薬としてまたは統合治療薬として投与できる。化合物は単独でも投与できるが、典型的には、選択投与経路および標準薬物療法に基づいて選択される医薬担体と共に投与される。本発明の化合物は、有効量の化合物を医薬的に許容される慣用の無毒性担体、アジュバントおよびビヒクルと共に含有する医薬組成物の単位用量形態で、たとえば経口的に、非経口的に(皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射または注入技術)、吸入スプレーによって、または、直腸内に投与できる。経口投与に適した液体製剤(たとえば、懸濁液、シロップ、エリキシル剤など)は、当業界で公知の技術に従って調製でき、水、グリコール、油、アルコールなどのような常用の媒体のいずれかを使用し得る。経口投与に適した固体製剤(たとえば、散剤、丸剤、カプセルおよび錠剤)は当業界で公知の技術に従って調製でき、デンプン、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体賦形剤を使用できる。親組成物は当業界で公知の技術に従って調製でき、典型的には担体として滅菌水を使用し、場合によっては溶解助剤のような他の成分を使用できる。注射用溶液は当業界で公知の方法に従って調製でき、担体は生理食塩水溶液、ブドウ糖溶液または生理食塩水とブドウ糖との混合物を含有する溶液から成る。本発明の医薬組成物の調製に使用するための適当な方法および該組成物に使用するための適当な成分に関するより詳細な記載は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R.Gennaro編,Mack Publishing Co.,1990およびRemington−The Science and Practice of Pharmacy,21st edtion,Lippincott Williams & Wilkins,2005に提供されている。
【0055】
本発明の化合物は、哺乳動物(たとえばヒト)の体重に対して1日あたり約0.001から約1000mg/kgの投薬量範囲で一回用量または分割用量で経口投与できる。1つの好ましい投薬量範囲は体重に対して1日あたり約0.01から約500mg/kgの一回用量または分割用量の経口投与である。別の好ましい投薬量範囲は体重に対して1日あたり約0.01から約100mg/kgの一回用量または分割用量の経口投与である。治療される患者の症状に応じて投薬量を調節できるように、経口投与用の組成物は、約1.0から約500ミリグラムの有効成分、特に、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400および500ミリグラムの有効成分を含有する錠剤またはカプセルの形態で提供され得る。個々の患者に対する具体的な投薬量レベルおよび投薬頻度は一様でなく、使用される具体的化合物の活性、該化合物の代謝安定性および作用期間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与モードおよび時間、排泄速度、併用薬剤、個々の状態の重篤度および治療を受けている宿主を含む様々な要因に左右されるであろう。
【0056】
上記に指摘したように、本発明はまた、HIV感染またはAIDSの治療に有用な1種以上の抗HIV薬と組合せた本発明のHIVインテグラーゼ阻害化合物の使用を目的とする。“抗HIV薬”は、HIVインテグラーゼの阻害、または、HIVの複製もしくは感染に必要な別の酵素の阻害、HIV感染の治療もしくは予防、および/または、AIDSの治療、予防または発症もしくは進行の遅延に直接または間接に有効ないずれかの薬剤である。抗HIV薬は、HIV感染またはAIDS、および/または、それらを原因としてまたはそれらに付随して生じる疾患または状態の治療、予防または発症もしくは進行の遅延に有効であると理解される。たとえば、本発明の化合物は、WO 01/38332の表1またはWO 02/30930の表1に開示されているHIV感染またはAIDSの治療に有用な1種以上の抗HIVウイルス薬、免疫調節薬、抗感染薬またはワクチンと組合せて、接触前および/または接触後のいずれかの時期に効果的に投与され得る。本発明の化合物と併用できる適当な抗HIVウイルス薬はたとえば以下の表Aに挙げる薬剤を含む。
【0057】
【表1】

【0058】
本発明の化合物と抗HIVウイルス薬、免疫調節薬、抗感染薬またはワクチンとの組合せの範囲が前述の物質または前出の参考文献WO 01/38332およびWO 02/30930の表に挙げられた物質に限定されないこと、原則としてHIV感染またはAIDSの治療に有用ないかなる医薬組成物との組合せも包含することは理解されよう。これらの組合せにおいて抗HIVウイルス薬および他の薬剤は典型的には、Physicians’ Desk Reference,58th edition,Thomson PDR,2004,または、同書、59th edition,2005に記載の投薬量を含む当業界で報告されたそれらの慣用の投薬量範囲および用法で使用されるであろう。これらの組合せ中の本発明の化合物の投薬量範囲は上記に提示した範囲と同じである。本発明の化合物および/または他の薬剤(たとえば、硫酸インジナビル)の医薬的に許容される塩も同様に使用できると理解される。
【0059】
本発明はまた、式II:
【0060】
【化4】

の化合物の製造方法(プロセスP1)を含み、該方法は、
(A)式III:
【0061】
【化5】

の化合物を酸で処理して化合物IIを得る段階を含む。式中の“a”はR配置またはS配置を表し、RはC1−3アルキルを表し、VおよびVのおのおのは独立にBr、Cl、FまたはIを表す。
【0062】
WO (2006年5月5日出願の国際出願No.PCT/US2005/017369に対応)の実施例38は、D(−)−パントラクトンから製造される(3R)−3−(ベンジルオキシ)−4,4−ジメチルジヒドロフラン−2(3H)−オンを経由する(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの製造を開示している。実施例39は、D(−)−パントラクトンの代わりにL−(+)−パントラクトンを使用する以外は同様にして行う(4S)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの製造を開示している。実施例38および39に開示された製造経路は4Rおよび4S鏡像異性体それぞれを生成するのではなく、それらのラセミ混合物を生成することが知見された。また、実施例38および39に使用された光学的に純粋なLおよびD−パントラクトンのヒドロキシル基にベンジル保護基を組込むとキラル中心がラセミ化されるが、プロセスP1で使用した2−テトラヒドロピラニル保護基の組込みはそのような現象を生じないことが知見される。後出の実施例1、段階10以後参照。
【0063】
プロセスP1の第一の実施態様(実施態様P1−E1)は原定義通りでありさらに
(B)式IV:
【0064】
【化6】

の化合物を、最初に第一塩基の存在下で無水硫酸またはハロゲン化スルホニルによって、次いで第二塩基によって順次処理して化合物IIIを得る段階を含むプロセスP1である。式中の他のすべての可変要素は原定義通りである。
【0065】
プロセスP1の第二の実施態様(実施態様P1−E2)は、原定義通りであり、化合物IIが式II−A:
【0066】
【化7】

の化合物を表し、化合物IIIが式III−A:
【0067】
【化8】

の化合物を表すプロセスP1である。
【0068】
プロセスP1の第三の実施態様(実施態様P1−E3)は原定義通りでありさらに
(B)式IV−A:
【0069】
【化9】

の化合物を、最初に第一塩基の存在下で無水硫酸またはハロゲン化スルホニルによって、次いで第二塩基によって順次処理して化合物III−Aを得る段階を含むプロセスP1である。
【0070】
プロセスP1の第四の実施態様(実施態様P1−E4)は、原定義通りであるかまたは実施態様P1−E1からP1−E3のいずれかに定義された通りのプロセスP1であり、式中のRはCHであり、他のすべての可変要素は原定義通りである。
【0071】
プロセスP1の第五の実施態様(実施態様P1−E5)は、原定義または先行実施態様のいずれかに定義された通りのプロセスP1であり、式中のVはFであり、Vはベンジル部分のメタ位のClである。
【0072】
プロセスP1の段階Aは、環のエーテル置換基を酸の存在下でOH基に変換する脱保護段階である。酸はプロトン酸またはルイス酸でよい。適当な酸はたとえば、ハロゲン化ホウ素(たとえば、BBrまたはMeBBr)、ハロゲン化トリアルキルシリル(たとえば、ヨウ化トリメチルシリル)、ハロゲン化アルミニウム(たとえば、塩化アルミニウム)およびハロゲン化水素(たとえば、HBr)を含む。
【0073】
段階Aは典型的には溶媒中で行う。段階Aの溶媒は使用される反応条件下で液相であり、化学的に不活性であり、反応体を溶解、懸濁および/または分散させて反応体を互いに接触させ反応を進行させるいかなる有機化合物でもよい。使用される酸がハロゲン化ホウ素、ハロゲン化トリアルキルシリルまたはハロゲン化アルミニウムのとき、溶媒は好適にはハロ炭化水素(たとえば、メチレンクロリドまたはクロロホルム)またはジアルキルスルフィド(たとえば、ジメチルスルフィド)またはそれらの組合せである。酸がハロゲン化水素のとき、溶媒は好適にはアルキルカルボン酸(たとえば、酢酸のようなC1−4アルキルカルボン酸)である。
【0074】
段階Aは反応が検出可能に進行するいかなる温度で行ってもよい。段階Aは好適には約−78℃から約50℃の範囲の温度で行うとよく、典型的には約0から約40℃の範囲の温度で行う。1つの実施態様において、温度は約15℃から約30℃(たとえば、約18℃から約25℃)の範囲である。
【0075】
段階Aの酸は化合物IIIに対して、化合物IIの形成が得られるような何らかの割合で使用できる。しかしながら典型的には酸は化合物IIIから化合物IIへの変換が最適になる量で使用する。1つの実施態様において、段階Aの酸は、1当量の化合物IIIに対して少なくとも1当量(たとえば、約1当量から約15当量)の量で使用する。別の実施態様において、酸は1当量の化合物IIIに対して約4から約10当量の量で使用する。
【0076】
段階Aは、溶媒に溶解した酸(たとえば、メチレンクロリド中のBBr)を、同じ溶媒中の化合物IIIの低温(たとえば、約0℃未満)溶液に添加し、得られた混合物を反応温度に加温し、反応が完了するかまたは反応体が所望の変換度に達するまで混合物を反応温度に維持することによって行う。反応容器への反応体および試薬の添加順序は重要ではない。すなわち、同時に充填してもよくまたは何らかの順序で順次に充填してもよい。反応は一般に不活性雰囲気(たとえば、窒素またはアルゴンガス)下で行う。反応時間は、特に反応温度、反応体および試薬の選択および相対量次第で大きく変わり得るが、典型的な反応時間は約0.5から約24時間の範囲である。化合物IIは、反応混合物を追加量の溶媒および水で希釈し、得られた有機相と水相を分離し、次いで有機相を洗浄、乾燥、濾過および濃縮するような慣用の技術を使用して反応混合物から分離できる。化合物IIのアトロプ異性体はクロマトグラフィーによって分離できる。
【0077】
プロセスP1の段階Bで化合物IIIが形成される。段階Bは、化合物IVを最初に第一塩基の存在下で無水スルホン酸またはハロゲン化スルホニルによって処理してOH基をスルホネートエステルに変換し、次に第二塩基によって処理してスルホネートエステルを環化して化合物IIIを得る順次反応を含む。適当な無水スルホン酸は、無水アルカンスルホン酸、無水ハロアルカンスルホン酸および無水アレーンスルホン酸を含む。適当なハロゲン化スルホニルは、ハロゲン化アルカンスルホニル、ハロゲン化ハロアルキルスルホニルおよびハロゲン化アレーンスルホニルを含む。無水スルホン酸はたとえば、無水メタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸、無水p−トルエンスルホン酸または無水ベンゼンスルホン酸でよい。ハロゲン化スルホニルはたとえば、メタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリドまたはベンゼンスルホニルクロリドでよい。第一塩基は好適には、TEA、DIPEA、ピリジンまたは4−N,N−ジメチルアミノピリジンのような第三級アミンである。第二塩基は好適には、炭酸セシウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩である。
【0078】
段階Bは典型的には1種以上の溶媒中で行う。段階Bの(1種以上の)溶媒は、使用される反応条件下で液相であり、化学的に不活性であり、反応体を溶解、懸濁および/または分散させて反応体を互いに接触させ反応を進行させるいかなる有機化合物でもよい。スルホン化反応に好適な溶媒は、ハロ炭化水素(たとえば、メチレンクロリドまたはクロロホルム)またはピリジンである。環化反応に好適な溶媒は、第三級アミド、エーテルまたはジアルキルスルホキシドである。溶媒はたとえば、DMF、DMA、DMSO、THF、DMEまたはジオキサンでよい。
【0079】
段階Bは反応が測定可能に進行するいかなる温度で行ってもよい。段階Bのスルホン化は好適には約−78℃から約50℃の範囲の温度で行うとよく、典型的には約0から約40℃の範囲の温度で行う。段階Bの環化は好適には約80℃から約160℃の範囲の温度で行うとよく、典型的には約100から約160℃の範囲の温度で行う。
【0080】
段階Bの無水スルホン酸またはハロゲン化スルホニル、第一塩基および第二塩基は、化合物IVに対して、少なくともある程度の化合物IIIが形成される何らかの割合で使用できる。しかしながら典型的にはこれらのおのおのは、化合物IVから化合物IIIへの変換が最適になる量で使用される。1つの実施態様において、スルホン化剤は1当量の化合物IVに対して少なくとも2当量(たとえば、約2から約4当量)の量で使用され、第一塩基は1当量の化合物IVに対して少なくとも2当量(たとえば、約2から約4当量)の量で使用され、第二塩基は1当量の化合物IVに対して少なくとも2当量(たとえば、約2から約6当量)の量で使用される。
【0081】
段階Bは、溶媒中の化合物IVおよび第一塩基の溶液を収容した反応容器に無水スルホン酸(またはスルホニルクロリド)を添加し、得られた混合物を反応温度に加温し、反応が完了するかまたは反応体が所望の変換度に達するまで混合物を反応温度に維持することによって行う。反応容器への反応体および試薬の添加順序は重要ではない。すなわち、同時に充填してもよくまたは何らかの順序で順次に充填してもよい。反応は一般に不活性雰囲気(たとえば、窒素またはアルゴンガス)下で行う。反応時間は、特に反応温度、反応体および試薬の選択および相対量次第で大きく変わり得るが、典型的な反応時間は約0.5から約24時間の範囲である。得られたスルホネートエステル生成物は次に、たとえば生成物の混合物を有機溶媒(たとえば、クロロホルム)で希釈し、希釈混合物を水洗し、有機相と水相とを分離し、次いで有機相を乾燥し、濾過し、濃縮することによって回収できる。次にスルホン化生成物を溶媒(たとえば、無水DMF)中で第二塩基と混合し、混合物を反応温度に加熱し(たとえば、マイクロ波オーブン内または油浴のような別の慣用の熱源によって)、次いで反応が完了するかまたは反応体が所望の変換度に達するまで混合物を反応温度に維持する。環化のための反応時間は上記のスルホン化反応時間を記述する文中に示した要因と同じ要因次第で大きく変わり得るが、典型的な反応時間は約0.5から約12時間の範囲である。次に、慣用の技術を使用して環化生成物を回収できる。
【0082】
本発明はさらに、式IIIの化合物、式IVの化合物またはそれらの塩(すなわち、この文脈では塩は医薬的に許容される塩に限定されない)である化合物を含む。第一の実施態様において、化合物は式III−Aの化合物、式IV−Aの化合物またはそれらの塩である。第二の実施態様において、化合物は、6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−N−[(2R)−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ブチル]−4−メトキシ−N−メチル−3,5−ジオキソ−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキサミド;(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−メトキシ−2,5,5−トリメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン;またはそれらの塩である。
【0083】
この文中に使用した略号は、以下を含む:Bu=ブチル;DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン;DMA=N,N−ジメチルアセトアミド;DME=1,2−ジメトキシエタン;DMF=N,N−ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;EDCまたはEDAC=1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;ES MS=エレクトロスプレー質量分光分析;Et=エチル;EtOAc=酢酸エチル;FBS=ウシ胎仔血清;HOAT=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール;HPLC=高性能液体クロマトグラフィー;Me=メチル;MeOH=メタノール;MTBE=メチルtert−ブチルエーテル;NMR=核磁気共鳴;TEA=トリエチルアミン;TFA=トリフルオロ酢酸;THF=テトラヒドロフラン。
【0084】
以下の実施例は本発明とその実施を示す単なる代表例である。実施例が本発明の範囲または要旨を限定すると解釈されてはならない。
【実施例1】
【0085】
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A−1およびB−1
【0086】
【化10】

【0087】
段階1:1−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)ピペリジン−2−オン
無水1−メチル−2−ピロリジノン(3.5L)およびTHF(350mL)の混合物中のバレロラクタム(153.30g,1.54mol)の低温(0℃)溶液に、水素化ナトリウム(67.7g,1.69mol,60%の油分散液)を5分間で添加した。反応混合物を30分間撹拌し、1−メチル−2−ピロリジノン(200mL)中の3−クロロ−4−フルオロベンジルブロミド(345.5g,1.54mol)の溶液を0℃で30分にわたって添加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、室温に加温して一夜撹拌した。蒸留水(5L)で反応混合物を反応停止させ、ジクロロメタンで抽出した(3回;2L,1L,1L)。有機抽出物を集めて、水洗した(3×;毎回4L)。残留油を酢酸エチル(4L)に溶解し、水で抽出した(3×;毎回2L)。有機層を分離し、真空下で濃縮すると、静置によって凝固する標題化合物が得られた。
【0088】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.24(m,2H),7.0(m,2H),7.1(m,1H),4.56(s,2H),3.19(t,J=4.9Hz,2H),2.46(t,J=6.4Hz,2H),1.8−1.75(m,4H)。
【0089】
段階2:1−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−5,6−ジヒドロピリジン−2(1H)−オン
【0090】
【化11】

【0091】
窒素雰囲気下の無水テトラヒドロフラン(5L)中の1−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)ピペリジン−2−オン(340g,1.41mol)の低温(−20℃)溶液に、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液(3.09L,3.09mol;1MのTHF溶液)を、−20℃の反応温度を維持しながら40分間で添加した。添加の完了後、反応混合物を−20℃で1時間撹拌した。メチルベンゼンスルホネート(231mL,1.69mol)を反応混合物に30分間で添加した。反応混合物を−20℃で30分間撹拌した。生成混合物を酢酸エチル(4L)で希釈し、水洗した(4回;毎回2L)。有機抽出物を真空下で濃縮した。残渣をトルエン(4L)に溶解し、固体炭酸ナトリウム(500g)で処理し、100℃で1時間加熱した。生成混合物を酢酸エチル(4L)で希釈し、水洗した(4回;毎回2L)。有機抽出物を真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘプタン中の0−60%EtOAc勾配で溶出させた。適正画分を収集し、濃縮すると、標題化合物が油として得られる。
【0092】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.3(m,1H),7.15(m,1H),7.1(t,1H),6.6(m,1H),6.0(m,1H),4.55(s,2H),3.33(t,2H),1.38(m,2H)。ES MS M+1=240.13。
【0093】
段階3:2−ブトキシ−2−オキソエタナミニウムクロリド
【0094】
【化12】

【0095】
n−ブタノール(8L)中の塩酸グリシン(400g,3.58mol)の懸濁液に、チオニルクロリド(1.37L,18.84mol)をゆっくりと滴下した。添加の完了後、反応混合物を70℃で一夜加熱した。生成混合物を真空下で濃縮し、残渣をヘプタン/酢酸エチル混合物と粉末に(triturated)した。沈殿した白色固体を濾過し、無水窒素流下で乾燥すると、標題化合物が得られた。
【0096】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.5(br s,3H),4.18(t,J=6.7Hz,2H),4.0(br s,2H),1.62(m,2H),1.38(m,2H),0.92(t,J=7.4Hz,3H)。ES MS M+1=132。
【0097】
段階4:ブチル N−[エトキシ(オキソ)アセチル]グリシネート
【0098】
【化13】

【0099】
エタノール(7L)中の2−ブトキシ−2−オキソエタナミニウムクロリド(573.5g,3.42mol)、トリエチルアミン(415g,4.1mol)およびジエチルオキサレート(1.0kg,6.8mol)の混合物を50℃で3時間加熱した。生成混合物を冷却し、真空下で濃縮した。残渣をメチレンクロリドに溶解し、4Lの水で2回洗浄した。有機画分を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残留油をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘプタン/酢酸エチル勾配で溶出させた。適正画分を収集し、濃縮すると、標題材料が得られた。
【0100】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.56(br s,1H),4.37(q,J=7.2Hz,2H),4.2(t,J=6.6Hz,2H),4.12(d,J=5.5Hz,2H),1.64(p,J=6.8Hz,2H),1.39(t,J=7.15Hz,3H),1.37(m,2H),0.94(t,J=7.4Hz,3H)。ES MS M+1=232。
【0101】
代替方法。グリシネートはまた、ジエチルオキサレートの代わりにエチルオキサリルクロリドを使用して以下の手順で製造した。2−ブトキシ−2−オキソエタナミニウムクロリド(1.48Kg,8.85mol),ジクロロメタン(10.6L)および脱イオン水(10.6L)の室温混合物に、炭酸水素カリウム(2.2Kg,22.1mol)を3回に分けて添加した。吸熱混合物の温度を16℃に戻した。エチルオキサリルクロリド(1.08L,9.74mol)を添加漏斗から45分間で添加し、室温で2時間撹拌した。水層を分離し、ジクロロロメタンで抽出した(2×2L)。有機画分を集めて、脱イオン水(10L)とブライン(1.5L)との混合物で洗浄した。有機画分を真空下で濃縮すると、標題材料が得られた。
【0102】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.56(br s,1H),4.37(q,J=7.2Hz,2H),4.2(t,J=6.6Hz,2H),4.12(d,J=5.5Hz,2H),1.64(p,J=6.8Hz,2H),1.39(t,J=7.15Hz,3H),1.37(m,2H),0.94(t,J=7.4Hz,3H)。ES MS M+1=232。
【0103】
段階5:エチル 5−ブトキシ−1,3−オキサゾール−2−カルボキシレート
【0104】
【化14】

【0105】
オーバーヘッド撹拌器を備えた50L容のガラス反応装置に入れたアセトニトリル(80L)中のブチル N−[エトキシ(オキソ)アセチル]グリシネート(783g,3.38mol)の溶液に、五酸化リン(415g,2.92mol)を部分量ずつ添加した。反応混合物を60℃で1時間加熱した。生成混合物を冷却し、混合物を20℃に維持しながら水(8L)を添加した。得られた混合物をジクロロメタン(8Lおよび2Lで3回)で洗浄した。有機抽出物を集めて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し(合計8L)、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残留油をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、0−30%ヘプタン/酢酸エチル勾配で溶出させた。適正画分を収集し、濃縮すると、標題材料が得られた。
【0106】
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.33(s,1H),4.42(q,J=7.2Hz,2H),4.18(t,J=6.4Hz,2H),1.8(p,J=6.4Hz,2H),1.47(p,J=7.4Hz,2H),1.41(t,J=7.15Hz,3H),0.97(t,J=7.4Hz,3H)。ES MS M+1=214。
【0107】
段階6:エチル 6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−ヒドロキシ−5−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキシレート
【0108】
【化15】

【0109】
ステンレススチール高圧反応装置のガラスライナー(ライナーと圧力容器との間の間隙スペースに水を満たしておく)に入れたエチル 5−ブトキシ−1,3−オキサゾール−2−カルボキシレート(248g,1.16mol;段階5)、1−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−5,6−ジヒドロピリジン−2(1H)−オン(199.2g,0.83mol;段階2)および脱イオン水(22.5mL,1.25mol)の混合物を135℃で撹拌しながら72時間加熱した。生成混合物を氷水浴で冷却し、気体状副生物を丁寧に排気した。オレンジ色の固体生成物をメチル tert−ブチルエーテル(300mL)と研和し、濾過によって収集した。生成物を沸騰エタノール−水(〜500mL,9:1 v/v)から再結晶させ、濾過によって収集し、少量のエタノール、メチル tert−ブチルエーテル(300mL)およびヘプタン(200mL)を順次に用いて洗浄し、風乾すると標題化合物が得られた。
【0110】
H NMR(400MHz,CDCl)δ12.79(s,1H),8.42(s,1H),7.4(dd,J=2,7Hz,1H),7.2(m,1H),7.15(t,J=8.6Hz,1H),4.7(s,2H),4.4(q,J=7Hz,2H),3.5(m,4H),1.4(t,J=7Hz,3H)。(ES MS M+1=379.0)。
【0111】
段階7:エチル 6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−メトキシ−5−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキシレート
【0112】
【化16】

【0113】
ジクロロメタン(830mL)およびメタノール(410mL)の混合物中のエチル 6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−ヒドロキシ−5−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキシレート(208g,0.55mol)の10℃の撹拌溶液に、(トリメチル−シリル)ジアゾメタンのヘキサン溶液(600mL,1.2mol;2M)、15℃以下の反応温度に維持しながら1時間で添加した。反応混合物(撹拌せず)を10℃で一夜静置し、次いで20℃でさらに4時間静置した。反応混合物を再度10℃に冷却し、酢酸(〜75mL)で反応停止させた。生成混合物を真空下で濃縮し、残渣を沸騰メチル tert−ブチルエーテルおよびヘプタンで再結晶させた。再結晶した固体を濾過によって収集し、メチル tert−ブチルエーテルとヘプタンとの(1:1,v/v)混合物で洗浄し、風乾すると、標題化合物が得られた。
【0114】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.42(s,1H),7.41(dd,J=2,7Hz,1H),7.24(m,1H),7.11(t,J=8.6Hz,1H),4.70(s,2H),4.42(q,J=7Hz,2H),4.12(s,3H),3.4(m,4H),1.42(t,J=7Hz,3H)。(ES MS M+1=392.9)。
【0115】
段階8:エチル 3−(アセチルオキシ)−6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−メトキシ−5−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキシレート
【0116】
【化17】

【0117】
ジクロロメタン(1.5L)中のエチル 6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−メトキシ−5−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキシレート(199g,0.51mol)およびウレア過酸化水素(100g,1.06mol)の低温(5℃)混合物に、無水トリフルオロ酢酸を45分間で滴下した。得られた均質溶液を20℃で30分間撹拌し、再度5℃に冷却した。反応混合物をリン酸水素カリウム水溶液で処理し(水性抽出物のpHは〜8に上昇した)、次いで生成混合物の温度を20℃以下に維持しながら、新しく調製した亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加した。有機抽出物を分離し、水性画分をトルエンで抽出した(2×)。有機抽出物を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。それ以上は精製しないで、トルエン(2L)中のこの中間体N−オキシド(〜280g)および無水酢酸(239mL,2.5mol)の溶液を110℃で16時間加熱した。生成混合物を真空下で濃縮した。得られた油をトルエンから濃縮し(300mL,2回)、真空下で一夜保管した。酢酸塩生成物をそれ以上精製しないで次段階に使用した。(ES MS M+1=408.9)。
【0118】
段階9:6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−メトキシ−3,5−ジオキソ−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボン酸
【0119】
【化18】

【0120】
エタノール(1.8L)中のエチル 3−(アセチルオキシ)−6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−メトキシ−5−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキシレート(217g,0.48mol)、水素化リチウム一水和物(70.7g,1.67mol)および水(320mL)の混合物を20分間超音波処理した。反応混合物を氷水浴で冷却し、塩酸(425mL,3M)で処理した。得られた淡黄色固体を濾過し、水(1L)、3:2 v/vの水エタノール混合物(500mL)、MTBE(750mL)を順次に用いて洗浄し、風乾した。黄色固体を無水DMF(700mL)に溶解し、真空下で濃縮した。この手順を2回繰り返して残留水を除去した。黄色固体をMTBEと研和し、濾過し、真空下で一夜保管すると、標題の酸が得られた。
【0121】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.54(dd,J=2,7Hz,1H),7.3(m,2H),4.65(s,2H),3.89(s,3H),3.43(t,J=5.5Hz,2H),3.00(t,J=5.5Hz,2H)。(ES MS M+1=380.9)。
【0122】
段階10:(3R)−4,4−ジメチル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ジヒドロフラン−2(3H)−オン
【0123】
【化19】

【0124】
窒素雰囲気下、室温の無水メチレンクロリド(130mL)中のD(−)−パントラクトン(10.0g,76.8mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(0.1g,0.5 mmol)の混合物に、3,4−ジヒドロ−2H−ピランを20分間で滴下した。(参照:Itoら,Synthesis 1993,pp137−140;Szaboら,Tetrahedron Asymmetry 1999,10:pp61−76)。反応混合物を同じ温度で45分間撹拌した。生成混合物を水(150mL)で処理し、ジクロロメタン(150mL)で希釈した。有機抽出物をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をヘプタン中の0−40%EtOAcで勾配で溶出させることによって精製した。適正画分を収集し、濃縮すると、標題化合物がジアステレオ異性体の混合物として得られた。
【0125】
H NMR(400MHz,CDCl)δ5.16(t,J=3.7Hz,0.73 H),4.86(t,J=2.9Hz,0.27 H),5.24−3.53(m),1.22(s,2.2H),1.20(s,0.8H),1.14(s,2.2H),1.11(s,0.8H)。
【0126】
段階11:(2R)−4−ヒドロキシ−N,3,3−トリメチ−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−ブタンアミド
【0127】
【化20】

【0128】
メタノール(70mL)中のメチルアミン(7.6mL;40%水溶液)の低温(0℃)溶液に、(3R)−4,4−ジメチル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ジヒドロフラン−2(3H)−オン(15g,70mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。生成混合物を真空下で濃縮した。残渣をヘキサン中の20−100%酢酸エチルで溶出させることによって精製した。適正画分を収集し、濃縮すると、標題化合物がジアステレオ異性体の混合物として得られた。
【0129】
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.76(br signal,0.27 H),6.35(br signal,0.73 H),4.38−3.18(m),2.86(d,J=5.1Hz,2.2H),2.85(d,J=5.6Hz,0.8H),1.03(s,3H),0.88(s,3H)。
【0130】
段階12:(3R)−2,3−ジメチル−4−(メチルアミノ)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−ブタン−1−オール
【0131】
【化21】

【0132】
窒素雰囲気下の無水THF(90mL)中の(2R)−4−ヒドロキシ−N,3,3−トリメチル−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−ブタンアミド(11.6g,47.3mmol)の溶液を、水素化アルミニウムリチウムのTHF溶液(142mL,1M,142mmol)で処理した。反応混合物を油浴に入れ77℃で72時間加熱した。生成混合物を氷水浴で冷却し、水(5.4mL)、15%NaOH水溶液(5.4mL)および水(16.2mL)を順次に用いて処理した。得られたスラリーを室温で1時間撹拌し、セライトパッドで濾過した。固体をTHFで洗浄した。集めた濾液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣を真空下でベンゼンから濃縮すると、標題化合物がジアステレオ異性体の混合物として得られた。
【0133】
H NMR(400MHz,CDCl)δ4.68(m,0.73 H),4.47(m,0.27 H),3.9−2.4(m),2.46(s,0.8 H),2.43(s,2.2H),0.97(s,0.8H),0.95(s,2.2H),0.93(s,2.2H),0.85(s,0.8H)。ES−MS M+1=232。
【0134】
段階13:6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−N−[(2R)−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ブチル]−4−メトキシ−N−メチル−3,5−ジオキソ−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキサミド
【0135】
【化22】

【0136】
無水メチレンクロリド(300mL)中の6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4−メトキシ−3,5−ジオキソ−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボン酸(15.8g,41.5mmol)、3R)−2,3−ジメチル−4−(メチルアミノ)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−ブタン−1−オール(9.6g,41.5mmol)、EDC(9.6g,49.8mmol)、HOAt(0.28g,2.1mmol)およびN−メチルモルホリン(22.9mL,207mmol)の混合物を室温で一夜撹拌した。生成溶液をメチレンクロリドで希釈し、水およびブラインを順次に用いて洗浄した。有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、0−10%のメタノール/クロロホルム勾配で溶出させた。適正画分を収集し、濃縮すると、標題化合物がジアステレオ異性体の混合物として得られた。双方の異性体のES−MS M+H=594。
【0137】
段階14:(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−メトキシ−2,5,5−トリメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン
【0138】
【化23】

【0139】
ジクロロメタン(34mL)中の6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−N−[(2R)−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ブチル]−4−メトキシ−N−メチル−3,5−ジオキソ−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキサミド(4.0g,6.7mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(2.6mL,14.8mmol)の室温溶液に、無水メタンスルホン酸(2.3g,13.5mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。生成混合物をメチレンクロリドで希釈し、水洗した。有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。この中間体モノ−およびビス−メシラート混合物をそれ以上精製しないで次の環化反応に使用した。
【0140】
無水DMF(18mL)中の上記メシラート(0.88g,1.17mmol)と炭酸セシウム(1.52g,4.69mmol)との混合物を150℃のマイクロ波オーブンで30分間加熱した。反応混合物をセライトパッドで濾過し、濾過した固体をDMFで洗浄した。継続的な5つの処理で得られた濾液を集めて真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチルとブラインに分配した。有機抽出物をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、0−5%のメタノール/クロロホルム勾配で溶出させた。適正画分を収集し、濃縮すると、標題化合物が2つのジアステレオ異性体の混合物として得られた。
【0141】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.37(dd,J=1.8,6.8Hz,1H),7.21(m,1H),7.10(t,J=8.6Hz,1H),4.86−4.49(m),4.08(s),4.07(s),4.2−2.8(m),3.17(s),3.13(s),1.8−1.4(br m),1.25(s),1.10(s),0.95(s),0.91(s)。双方の異性体のES−MS M+H=576。
【0142】
代替方法。標題中間体はまた以下の手順で製造した。ジクロロメタン(168mL)中の6−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−N−[(2R)−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ブチル]−4−メトキシ−N−メチル−3,5−ジオキソ−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−2,6−ナフチリジン−1−カルボキサミド(20.0g,33.7mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(12.9mL,74.1mmol)の室温溶液に、無水メタンスルホン酸(12.3g,70.7mmol)を滴下した。発熱反応を氷水浴で冷却した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。生成混合物をメチレンクロリドで希釈し、水洗した。有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。この中間体モノ−およびビス−メシラート混合物をそれ以上精製しないで次の環化反応に使用した。
【0143】
無水DMF(600mL)中の上記メシラート(13.1g)および炭酸セシウム(13.1g,40mmol)の混合物を激しく撹拌しながら105℃で6時間加熱した。反応混合物をセライトパッドで濾過し、濾過した固体をDMFで洗浄した。濾液を集めて真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチルとブラインに分配した。有機抽出物をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、標題化合物が2つのジアステレオ異性体の混合物として得られた。混合物をそれ以上精製しないで次段階に使用した。
【0144】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.37(dd,J=1.8,6.8Hz,1H),7.21(m,1H),7.10(t,J=8.6Hz,1H),4.86−4.49(m),4.08(s),4.07(s),4.2−2.8(m),3.17(s),3.13(s),1.8−1.4(br m),1.25(s),1.10(s),0.95(s),0.91(s)。双方の異性体のES−MS M+H=576。
【0145】
段階15:(4R)−11(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン
無水メチレンクロリド(35mL)中の(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−メトキシ−2,5,5−トリメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン(3.3g,5.7mmol)の低温(0℃)溶液に、三フッ化ホウ素のメチレンクロリド溶液(22.9mL,1.0M,22.9mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を氷水浴で冷却し、水(20mL)で反応停止させ、室温で30分間撹拌した。生成混合物をメチレンクロリド(100mL)および水(50mL)で希釈した。少量のメタノールを添加して有機相のガム状材料を溶解させた。水相を分離し、メチレンクロリドで抽出した。有機抽出物を集めてブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣を50×250mm Xterra 10ミクロンカラムの分取HPLCにかけ、100mL/分の20−35%アセトニトリル/水勾配で50分間溶出させた。早く溶出する多量異性体の画分を集めて凍結乾燥すると、多量異性体が白色固体として得られた。
【0146】
異性体A−1:H NMR(500MHz,CDCl)δ13.1(br s,1H),7.35(dd,J=2.2,6.8Hz,1H),7.20(m,1H),7.13(t,J=8.8Hz,1H),4.84(d,J=14.6Hz,1H),4.74(d,J=14.6Hz,1H),4.59(d,J=14.6Hz,1H),3.73(dd,J=14.9,9.5Hz,1H),3.43(m,3H),3.18(s,3H),3.13(d,J=14.6Hz,1H),3.01(d,J=14.9Hz,1H),2.92(m,1H),2.52(dt,J=15.6,4.9Hz,1H),1.21(s,3H),0.94(s,3H)。(ES MS M+1=478.1)。
【0147】
遅く溶出する少量異性体の画分を集めて凍結乾燥した。固体を、50×250mm Xterra 10ミクロンカラムの分取HPLCにかけ、100mL/分の20−37%アセトニトリル/水勾配で50分間溶出させることによってさらに精製した。適正画分を収集し、凍結乾燥すると、少量異性体が淡黄色固体として得られた。
【0148】
異性体B−1:H NMR(500MHz,CDCl)δ13.0(br s,1H),7.36(dd,J=2.0,6.8Hz,1H),7.20(m,1H),7.13(t,J=8.6Hz,1H),4.76(d,J=14.6Hz,1H),4.60(d,J=10.0Hz,1H),4.57(d,J=10.0Hz,1H),3.74(d,J=14.9Hz,1H),3.61(d,J=14.4Hz,1H),3.45−3.35(m,4H),3.25(s,3H),2.92(m,1H),2.48(dt,J=15.8,4.6Hz,1H),1.15(s,3H),0.87(s,3H)。(ES MS M+1=478.2)。
【0149】
CDClに溶解した個別の異性体AおよびBの純粋サンプルで24時間かけて行ったNMR検査から、8員環の環にキラル(R)ヒドロキシ基が存在すること、および、8員環の環のアミド基が二環式コアに対するこのアミド基の制限回転の結果として異なる配向(すなわちアトロプ異性)を有することを理由として、異性体AとBとの関係がジアステレオマーであると判定された。NMR検査で2つの異性体の間に平衡は全く観察されなかった。アトロプ異性体用のHelical命名法(参照:Prelogら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1992,21:567−583)を採用すると、適正名称は、
異性体Aが、M−(4R)−11(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンであり、
異性体Bが、P−(4R)−11(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンである。
【実施例2】
【0150】
(4S)−11(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン
【0151】
【化24】

【0152】
D(−)−パントラクトンの代わりにL(+)−パントラクトンを使用し、実施例1に記載の手順に従って標題化合物を製造した。ES MS M+1=478.2。
【0153】
標題の4S異性体は、実施例1に記載の方法と同様の方法で、さらに2つの異性体A−2およびB−2に分割できる。
【実施例3】
【0154】
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの立体異性体
【0155】
【化25】

【0156】
段階1:5−(メチルアミノ)ペンタン−2−オール
メタノール(50mL)中のγ−バレロラクトン(5.0g,49.9mmol)およびメチルアミン(75mL,2Mのメタノール溶液)の混合物を室温で一夜撹拌した。生成混合物を真空下で一夜濃縮した。この中間体メチルアミドをベンゼンから濃縮して残留メタノールを除去し、それ以上精製しないで次段階に使用した。無水THF中の上記アミド(2.0g,15.3mmol)の低温(0℃)溶液に、水素化アルミニウムリチウムのTHF溶液(15.2mL,2M)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、65℃で一夜加熱した。生成混合物を0℃に冷却し、順次に水(1.2mL)、15%水酸化ナトリウム水溶液(1.2mL)および水(3.6mL)で処理した。得られた懸濁液をエーテルで希釈し、セライトパッドで濾過した。濾過した固体をメチレンクロリドで洗浄した。有機濾液を集めて真空下で濃縮すると、標題化合物が得られた。
【0157】
段階2:11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−メトキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H−[1,4]ジアゾシノ[2,1 −a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン
【0158】
【化26】

【0159】
段階13でT(3R)−2,3−ジメチル−4−(メチルアミノ)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−ブタノールの代わりに5−(メチルアミノ)ペンタン−2−オールを使用し、実施例1、段階13から14の記載と同様にして標題化合物を製造した。生成物は4つの立体異性体の混合物であり、8員環の環状ラクタムのアミド部分でアトロプ異性であり、6−メチル位で鏡像異性である。これらをChiralPak AD,10ミクロン,2×25cmカラム上で90%二酸化炭素/10%メタノールを溶出剤とする超臨界流体クロマトグラフィー(SCF)によって分離した。
【0160】
段階3:11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオン
【0161】
【化27】

【0162】
段階2で得られた4つのジアステレオマーのおのおのを個別に、30%HBrの酢酸溶液中で室温で1時間撹拌し次いで反応混合物を抜き出して乾固することによって脱保護した。生成混合物をPhenomenex Synergi Polar−RP 8OA,4ミクロン,100×21.2mmカラム上で0.1%TFA含有の70:30水/アセトニトリルから0.1%TFA含有の60:40の水/アセトニトリルの勾配を30分間使用する逆相HPLCによって精製した。
【0163】
ジアステレオマーA−3:H NMR(400MHz,CDCl)δ7.35(d,J=6.6Hz,1H),7.18(br signal,1H),7.13(t,J=8.4Hz,1H),4.77(d,J=14.7Hz,1H),4.55(d,J=14.7Hz,1H),4.05−4.09(m,1H),3.46−3.53(m,1H),3.32−3.42(m,2H),3.14(s,3H),3.01−3.08(m,1H),2.55−2.72(m,2H),1.86(br signal),1.72(d,J=6.8Hz,3H)。(ES MS 正確質量M+1=448.1428)。
【0164】
ジアステレオマーB−3:H NMR(400MHz,CDCl)δ7.35(dd,J=6.8,2.1Hz,1H),7.18(br signal,1H),7.12(t,J=8.6Hz,1H),4.76(d,J=14.8Hz,1H),4.56(d,J=14.8Hz,1H),4.01−4.03(m,1H),3.46−3.69(m,1H),3.33−3.40(m,2H),3.08(s,3H),3.11−3.16(m,1H),3.01−3.07(m,1H),2.52−2.74(m,2H),1.85(br signal),1.70(d,J=6.8Hz,3H)。(ES MS 正確質量M+1=448.1427)。
【0165】
ジアステレオマーC−3:H NMR(400MHz,CDCl)δ7.35(dd,J=7.0,2.0Hz,1H),7.18(br signal,1H),7.12(t,J=8.6Hz,1H),5.71(br signal,1H),4.77(d,J −14.8Hz,1H),4.55(d,J=14.8Hz,1H),3.45−3.51(m,1H),3.27−3.40(m,2H),3.12−3.17(m,1H),3.06(s,3H),2.93−3.00(m,1H),2.50−2.57(m,1H),1.99−2.01(m,2H),1.72−1.79(m,2H),1.33(d,J=7.1Hz,3H)。(ES MS 正確質量M+1=448.1428)。
【0166】
ジアステレオマーD−3:H NMR(400MHz,CDCl)δ7.35(dd,J=6.8,1.8Hz,1H),7.19(br signal,1H),7.12(t,J=8.5Hz,1H),5.70(br signal,1H),4.77(d,J=14.6Hz,1H),4.55(d,J=14.8Hz,1H),3.45−3.51(m,1H),3.287−3.40(m,2H),3.11−3.15(m,1H),3.05(s,3H),2.92−3.00(m,1H),2.49−2.57(m,1H),1.96−2.01(m,2H),1.73−1.77(m,2H),1.33(d,J=7.1Hz,3H)。(ES MS 正確質量M+1=448.1457)。
【実施例4】
【0167】
経口組成物
本発明の化合物の経口組成物の具体的実施態様として、50mgの実施例1の異性体A−1を、サイズ0の硬質ゼラチンカプセルに充填される総量580から590mgを得るために十分な量の微粉砕ラクトンに配合する。実施例1の異性体B−1、実施例2の化合物の単離アトロプ異性体、または、実施例3のジアステレオマーA−3からD−3のいずれかを含有するカプセル化経口組成物も同様にして調製できる。
【実施例5】
【0168】
HIVインテグラーゼアッセイ:組換えインテグラーゼによって触媒された鎖転移
組換えインテグラーゼに関するインテグラーゼの鎖転移活性のアッセイはWO 02/30930に従って行った。本発明の代表的な化合物はこのアッセイで鎖転移活性の阻害を示す。たとえば、実施例1から3で製造された化合物をインテグラーゼアッセイで試験すると、以下のIC50値を有することが知見された。
【0169】
【表2】

【0170】
予め組立てた複合体を使用するアッセイの実施に関するより詳細な記載は、Wolfe,A.L.ら,J.Virol.1996,70:1424−1432;Hazudaら,J.Virol.1997,71:7005−7011;Hazudaら,Drug Design and Discovery 1997,15:17−24;およびHazudaら,Science 2000,287:646−650に見出される。
【実施例6】
【0171】
HIV複製阻害アッセイ
Tリンパ球様細胞の急性HIV感染阻害アッセイは、Vacca,J.P.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1994,91:4096に従って行った。本発明の代表的化合物はこのアッセイ(この文中で“スプレッドアッセイ”とも呼ぶ)でHIV複製阻害を示す。たとえば、実施例1から3で製造された化合物をこのアッセイで試験すると、以下のIC95値を有することが知見された。
【0172】
【表3】

【実施例7】
【0173】
HIVインテグラーゼ突然変異ウイルス複製阻害アッセイ
単サイクル感染力アッセイでHeLa P4−2細胞による急性HIV感染の阻害を測定するアッセイは、Joyceら,J.Biol.Chem.2002,277:45811;Hazudaら,Science 2000,287:646およびKimptonら,J.Virol.1992,66:2232に記載された方法を使用して行った。インテグラーゼ遺伝子中に特異的突然変異(T66I/S153Y,N155SまたはF121Y)を含有するウイルスをコードするプロウイルスプラスミドを部位特異的突然変異誘発によって作製し、適当なプロウイルスプラスミドを293T細胞にトランスフェクトすることによってウイルスを産生させた。本発明の代表的化合物は突然変異体アッセイでHIV複製の阻害を示す。たとえば、実施例1から3の化合物はこれらのアッセイで以下のIC50値を有することが知見された。
【0174】
【表4】

【実施例8】
【0175】
細胞毒性
細胞毒性は、スプレッドアッセイの各ウェルの細胞の顕微鏡観察によって判定した。熟練の分析者が各培養物について対照培養物に比較した以下の形態学的変化のいずれかを観察した:pH不平衡、細胞異常、細胞分裂停止、細胞変性または結晶化(すなわち、ウェル内の化合物が可溶性でないかまたは結晶を形成する)。所与の化合物に指定された毒性値は上記変化の1つが観察される化合物の最低濃度である。スプレッドアッセイで試験した本発明の代表的化合物(実施例6参照)の細胞毒性を、10マイクロモルの濃度まで試験したが、細胞毒性は全く観察されなかった。特に、実施例1から3に提示した化合物は10マイクロモルまでの濃度で細胞毒性を全く示さなかった。
【0176】
上記の明細書は例示目的の実施例を伴って本発明の原理を教示しているが、本発明の実施は以下の特許請求の範囲に含まれる一般的な変更、応用および/または修正のすべてを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8員環の環に2つのキラリティソースを有している式I:
【化28】

[式中、
5aはHまたはOHであり、
5bおよびR9bは双方がHであるかまたは双方がCHであり、
5cはHまたはCHであり、
はC1−3アルキルであり、
およびVはおのおの独立にBr、Cl、FまたはIであり、
付帯条件として、
(A)R5bおよびR9bの双方がHであるとき、R5aはHおよびR5cはCHであり、また、
(B)R5bおよびR9bの双方がCHであるとき、R5aはOHおよびR5cはHである]
の化合物の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
がCHである請求項1に記載の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項3】
がFでありVがBr,ClまたはFである請求項1または2に記載の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項4】
がFでありVがClである請求項1または2に記載の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項5】
がFでありVがベンジル部分のメタ位のClである請求項1または2に記載の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項6】
キラリティソースの1つがアトロプ異性である請求項1から5のいずれか一項に記載の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項7】
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A−1;
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体B−1;
(4S)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A−2;
(4S)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体B−2;
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーA−3;
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーB−3;
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4] ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーC−3;
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーD−3;
および医薬的に許容されるそれらの塩から成るグループから選択される請求項1に記載の個別の立体異性体。
【請求項8】
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A−1;
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーB−3;
および医薬的に許容されるそれらの塩から成るグループから選択される請求項7に記載の個別の立体異性体。
【請求項9】
(4R)−11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−4,9−ジヒドロキシ−2,5,5−トリメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンの異性体A−1である請求項8に記載の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項10】
11−(3−クロロ−4−フルオロベンジル)−9−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3,4,5,6,12,13−ヘキサヒドロ−2H[1,4]ジアゾシノ[2,1−a]−2,6−ナフチリジン−1,8,10(11H)−トリオンのジアステレオマーB−3である請求項8に記載の個別の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の立体異性体または医薬的に許容されるその塩を治療有効量で医薬的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の立体異性体または医薬的に許容されるその塩を治療有効量で対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のHIVインテグラーゼ阻害方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の立体異性体または医薬的に許容されるその塩を治療有効量で対象に投与する段階を含む、その必要がある対象のHIV感染の治療または予防、AIDSの治療、予防または発症もしくは進行の遅延方法。
【請求項14】
その必要がある対象のHIV感染の治療または予防、AIDSの治療、予防または発症もしくは進行の遅延を目的とするHIVインテグラーゼ阻害用医薬の製造に使用するための請求項1から10のいずれか一項に記載の立体異性体または医薬的に許容されるその塩。
【請求項15】
式II:
【化29】

の化合物を製造するために、(A)式III:
【化30】

の化合物を酸で処理して式IIの化合物を得る段階を含み、式中の、立体中心“a”はR配置またはS配置であり、RはC1−3アルキルであり、VおよびVのおのおのは独立にBr、Cl、FまたはIである製造方法。
【請求項16】
さらに、(B)式IV:
【化31】

の化合物を、最初に第一塩基の存在下で無水スルホン酸またはハロゲン化スルホニルによって、次いで第二塩基によって順次に処理して化合物IIIとする段階を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化合物IIが式II−A:
【化32】

の化合物であり、化合物IIIが式III−A:
【化33】

の化合物である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
さらに、(B)式IV−A:
【化34】

の化合物を、最初に第一塩基の存在下で無水スルホン酸またはハロゲン化スルホニルによって、次いで第二塩基によって順次に処理して化合物III−Aとする段階を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
がCHでありVがFでありVがベンジル部分のメタ位のClである請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
式III:
【化35】

の化合物、式IV:
【化36】

の化合物またはその塩[式中、立体中心“a”はR配置またはS配置であり、RはC1−3アルキルであり、VおよびVのおのおのは独立にBr、Cl、FまたはIを表す]である化合物。

【公表番号】特表2010−506913(P2010−506913A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533332(P2009−533332)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/021982
【国際公開番号】WO2008/048538
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】