説明

HIV阻害剤化合物の塩

本発明は、抗ウイルス化合物の塩、そうした塩を含む組成物、およびそうした塩の投与を含む治療法、ならびにそうした塩の調製に有用なプロセスおよび中間体に関する。本発明は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基形よりも物理的により安定で、かつ単離および製剤化しやすい、この化合物の安定な塩を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的には抗ウイルス活性を持つ化合物の塩に関し、さらに詳しくは抗HIV特性を持つ化合物の塩に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immunodeficiency virus)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、すなわち、ヒトにおいて免疫系を弱め、生命を脅かす日和見感染症を呈するようになる状態を引き起こす恐れがあるレトロウイルスである。HIVの阻害剤は、哺乳動物のHIV感染の処置(たとえば、HIVによる感染の確立および進行の抑制および制限)のほか、HIVの診断アッセイにも有用である。現在販売されているHIVの阻害剤の有用性には、毒性および他の副作用によりある程度限界がある。このため、新しいHIV治療薬が求められている。
【0003】
治療薬の医薬製剤は、治療薬を、それを必要としている患者に再現性よく、確実に送達しなければならない。こうした送達の確実性は、安定で可溶性の固体形態の治療薬を医薬組成物に組み込むことで少なくともある程度達成することができる。さらに、所望の固体形態の治療薬の合成は、技術的および経済的に実現可能なものである必要があり、大規模な商業生産に好適である必要もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
インビボおよびインビトロでHIVウイルスの複製を阻止し、ヒトに投与した際に、抑制された望ましくない副作用を有する逆転写酵素阻害剤として、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートがある。エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの構造を下記式Pに示す:
【0005】
【化1】

エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートは、単離、精製、長時間の保存、および医薬組成物としての製剤化が困難な低融点、非晶質の固体である。エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートはまた、酸と塩を形成できる弱塩基でもある。したがって、一態様では、本発明は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基形よりも物理的により安定で、かつ単離および製剤化しやすい、この化合物の安定な塩を提供する。
【0006】
本発明の塩は、たとえば、AIDSを引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV−1またはHIV−2株)に感染したヒト患者の処置に有用である。本発明の塩はまた、たとえば、HIVまたはHIV関連障害を処置する薬物の調製にも有用である。さらに、本発明の塩は、たとえば、インビトロでのHIVウイルスの複製の阻害にも有用であり、したがって、他の逆転写酵素阻害剤を特定する、あるいはHIV逆転写酵素およびその阻害の作用機序を調べる対照化合物として生物学的アッセイで使用することもできる。
【0007】
このため、一態様では、本発明は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩、コハク酸塩およびマロン酸塩およびこれらの塩を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の塩は無水であり、他の実施形態では本発明の塩は少なくとも部分的に水和されている。いくつかの実施形態では、本発明の塩は結晶形として存在する。
【0008】
したがって、本発明は、式Pの化合物のクエン酸塩、コハク酸塩およびマロン酸塩のほか、それらの水和物も含む。本発明の水和物は、部分的に水和した状態(たとえば、半水和物)でも、または完全に水和した状態(たとえば、一水和物)でもよい。本発明はまた、無水または本質的に無水状態の本塩も含む。同様に、本発明の塩およびその水和物は、非晶質状態および結晶状態のほか、非晶質特性と結晶特性とを共に含む状態も含む。本明細書で使用する場合、「結晶」とは、秩序だった長距離分子構造を持つ材料を意味する。これに対し、「非晶質」材料は長距離秩序を有さない。結晶材料は一般に同じ物質の非晶質形態より熱力学的に安定していることが理解される。このため、明らかな例外がわずかにあるものの、医薬品用途では一般に結晶材料を使用することが好ましい。本発明の化合物の結晶化度の程度の指標は、たとえば、DSCおよびXRPD(吸収バンド(ピーク)の鋭さで確認できる。ピークが鋭いほど、結晶化度の程度が高くなる。これに対し、ピーク幅が広いほど、結晶化度の程度は低くなる。
【0009】
本明細書の実施例12に詳細に記載するように、特定の実施形態では、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩は、面間隔スペクトルが4.48、3.12および6.05オングストロームのX線粉末回折パターンから得られる吸収バンドにより特徴付けられ;エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩は、面間隔スペクトルが3.57、4.80および4.99オングストロームのX線粉末回折パターンから得られる吸収バンドにより特徴付けられ;エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩は、面間隔スペクトルが4.99、5.93および4.72オングストロームのX線粉末回折パターンから得られる吸収バンドにより特徴付けられる。別の特定の実施形態では、本発明は、融点が142℃〜150℃である、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩を提供する。
【0010】
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートは、プロトン性溶媒と反応して分解されるアミデートプロドラッグである。反応の速度は、pHおよび温度に依存する。したがって、アミデートプロドラッグと、各々がプロドラッグとの反応(たとえば、プロドラッグのアミデート部分との反応)が可能な求核部分を含むクエン酸、コハク酸および/またはマロン酸との間で安定な塩が形成されることは、驚くべきかつ予想外の結果である。
【0011】
別の態様では、本発明は、各々が治療有効量の本発明の塩および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物はまた、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌薬または抗癌剤など別の治療薬をさらに含んでもよい。本発明の医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤などの単位剤形の形態でもよい。単位剤形は典型的には、本発明の塩の有効1日用量を、それを必要としているヒトに与える。本発明の塩の有効1日用量は典型的には10mg〜30mgなどのように1mg〜100mgである。
【0012】
別の態様では、本発明は、本発明のクエン酸塩、コハク酸塩およびマロン酸塩を製造する方法を提供する。したがって、たとえば、本発明は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩の調製プロセスであって、好適な溶媒(たとえば、アセトニトリル)中の約1当量のエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基を、約1当量から約1.2当量のクエン酸と約55℃〜約75℃の範囲の温度で接触させるステップを含むプロセスを提供する。
【0013】
本発明はまた、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩を調製するプロセスであって、好適な溶媒(たとえば、2−ブタノン)中の約1当量のエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基を、約1当量から約1.2当量のコハク酸と約60℃〜約70℃の範囲の温度で接触させてエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩を形成するステップを含むプロセスを提供する。
【0014】
さらに、本発明は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩の調製プロセスであって、好適な溶媒(たとえば、2−ブタノン)中の約1当量のエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基を、約1当量から約1.2当量のマロン酸と約50℃〜約70℃の範囲の温度で接触させてエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩を形成するステップを含むプロセスを提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、AIDSを処置または予防的に阻止する方法であって、AIDSに罹患しているヒトに治療有効量の本発明の塩またはその水和物を投与するステップを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩の特徴的な示差走査熱量測定(DSC)のトレースを示す。
【図2】エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩の特徴的なDSCのトレースを示す。
【図3】エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩の特徴的なDSCのトレースを示す。
【図4】エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩の特徴的なX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【図5】エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩の特徴的なXRPDパターンを示す。
【図6】エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩の特徴的なXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で商品名を使用する場合、出願人らは、商品名の製品および商品名の製品の医薬活性成分(単数または複数)を独立に含むことを意図している。
【0018】
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの塩。
【0019】
一態様では、本発明は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩、コハク酸塩およびマロン酸塩を提供する。
【0020】
クエン酸塩を以下の式Iに示す。
【0021】
【化2】

コハク酸塩を以下の式IIに示す。
【0022】
【化3】

マロン酸塩を以下の式IIIに示す。
【0023】
【化4】

エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの合成方法については、本明細書の実施例1に記載する。エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩、コハク酸塩およびクエン酸塩の製造方法についてはそれぞれ、本明細書の実施例3、4および5に記載する。前述の塩の物理的性質の一部を本明細書の実施例6に記載し、たとえば、40℃および相対湿度75%で保存する場合、これらの塩の各々が物理的に安定であることを示す。
【0024】
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩、コハク酸塩およびマロン酸塩は、たとえば、インビトロおよびインビボでのHIVの複製を阻害するのに有用である。この点で、本明細書の実施例8で詳細に説明しているように、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートは、人体で代謝されて親化合物となり、その後体内でリン酸化されてHIVの複製を阻害する活性代謝物を提供するプロドラッグである。本発明の実施例8は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの方が、親化合物よりHIVウイルスを保有する細胞である白血球中の活性代謝物の蓄積を増加させることを示す。さらに、本発明の実施例9は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートが、インビトロアッセイで評価したとき、親化合物より作用の強い抗HIV剤であることを示すことをインビトロデータを提示する。加えて、本明細書の実施例10は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩を含む錠剤は、ビーグル犬の血流に対して、この薬物に、経口投与される液体の薬剤調製物と同様の薬物動態を提供することを示すデータを提供する。したがって、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩は、物理的および化学的に安定な組成物であり、これを生体に経口投与すれば親化合物より効果的な抗HIV薬であるエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートを治療有効量で与えることができる。
【0025】
医薬組成物
別の態様では、本発明は、治療有効量の1種または複数種の本発明の塩および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む、医薬製剤とも呼ばれる医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明の塩は単独投与することもできるが、典型的には医薬組成物として投与する方が好ましい。本発明の医薬組成物は、通常の慣行に従って選択される従来のキャリアおよび賦形剤と共に製剤化する。キャリア(単数または複数)は、製剤の他の成分と適合性があり、その被投与者に生理的に無害であるという意味で「許容可能」でなければならない。錠剤は、こうした成分を賦形剤、流動促進剤、充填剤、バインダーなどとして含む。水性製剤は、無菌形態で調製するものであり、経口投与以外の送達を意図している場合、一般に等張である。どの製剤も任意に、Handbook of Pharmaceutical Excipients(R.C.Rowe et al.,Pharmaceutical Press,5th ed.,2006)に記載されているような賦形剤を含む。賦形剤は、アスコルビン酸および他の酸化防止剤、EDTAなどのキレート化剤、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、などの炭水化物、ステアリン酸などを含む。製剤のpHは約3〜約11の幅があるが、通常は約7〜10である。
【0027】
本製剤は、単位剤形(たとえば、錠剤)で提供されると都合がよい場合があり、薬学の技術分野において周知のどのような方法で調製してもよい。技法および製剤の全般については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA)に掲載されている。こうした方法は、1種または複数種の副成分を構成するキャリアに活性成分を会合させるステップを含む。一般に、製剤は、液体キャリアもしくは微粉化した固体キャリアまたはその両方に活性成分を均一かつ密接に会合させ、その後必要に応じて、その生成物を成形することにより調製する。
【0028】
活性成分を含む医薬製剤は、意図した投与方法に好適であればどのような形態であってもよい。たとえば経口用に使用する場合、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、硬もしくは軟カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤を調製すればよい。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物製造の技術分野で公知のどのような方法に従って調製してもよく、そうした組成物は、食味のよい調製物を提供するため甘味剤、着香剤、着色剤および保存剤などの1種または複数種の薬を含んでいてもよい。錠剤の製造に好適な薬学的に許容される無毒の賦形剤との混合物中に活性成分を含む錠剤は、許容可能である。こうした賦形剤は、たとえば、炭酸カルシウムもしくは炭酸ナトリウム、ラクトース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈液;トウモロコシデンプンまたはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤;セルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ゼラチンまたはアカシアなどの結合剤;およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの滑沢剤(lubricating agent)であってもよい。錠剤はコーティングされていなくてもよいし、あるいは胃腸管での崩壊および吸着を遅延させることにより、より長時間にわたり作用を持続させるマイクロカプセル化など既知の技法によりコーティングされていてもよい。たとえば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独で、またはワックスと共に使用してもよい。
【0029】
また、経口用の製剤は、活性成分が不活性な固体状の希釈剤、たとえばリン酸カルシウムまたはカオリンなどと混合された硬質ゼラチンカプセルとして提供してもよいし、あるいは活性成分が水またはピーナッツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油などの油媒体と混合された軟質ゼラチンカプセルとして提供してもよい。
【0030】
本発明の塩の水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に好適な賦形剤との混合物中に活性材料を含む。こうした賦形剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびゴムアカシアなどの懸濁化剤、および天然ホスファチド(たとえば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(たとえば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(たとえば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物(たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)などの分散剤または湿潤剤を挙げることができる。水性懸濁剤は、エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシ−ベンゾアートなどの1種または複数種の防腐剤、1種または複数種の着色剤、1種または複数種の着香剤、およびスクロースまたはサッカリンなどの1種または複数種の甘味剤を含んでいてもよい。
【0031】
油性懸濁液は、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油などの植物油、あるいは流動パラフィンなどの鉱油に活性成分を懸濁することにより製剤化することができる。経口懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールなどの糊料をさらに含んでもよい。食味のよい経口用調製物を提供するため、上述したような甘味剤、および着香剤を加えてもよい。こうした組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えて保存してもよい。
【0032】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに好適な本発明の分散性散剤および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1種または複数種の防腐剤との混合物として活性成分を提供する。好適な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤として、上記に開示したものが挙げられる。追加の賦形剤、たとえば甘味剤、香味料および着色剤が存在してもよい。
【0033】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、オリーブ油またはラッカセイ油などの植物油、流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの混合物としてもよい。好適な乳化剤として、ゴムアカシアおよびトラガントゴムなどの天然ゴム、大豆レシチンなどの天然ホスファチド、ソルビタンモノオレアートなどの脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなど、こうした部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物であってもよい。エマルジョンはまた、甘味剤および着香剤を含んでもよい。シロップ剤およびエリキシル剤は、グリセロール、ソルビトールまたはスクロースなどの甘味剤と共に製剤化してもよい。こうした製剤はまた、粘滑薬、防腐剤、香味料または着色剤を含んでいてもよい。
【0034】
本発明の医薬組成物は、注射用無菌水性または油性懸濁剤など注射用無菌調製物の形態であってもよい。こうした懸濁剤は、上述してきた好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して従来技術に従って製剤化することができる。注射用無菌調製物はまた、1,3−ブタン−ジオール溶液など非経口的に許容される無毒の希釈剤または溶媒中の注射用無菌液剤または懸濁剤であってもよいし、あるいは凍結乾燥粉末として調製してもよい。使用してもよい許容されるビヒクルおよび溶媒として水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、溶媒または懸濁媒体として無菌の不揮発性油を慣習的に使用する場合がある。このため、合成のモノまたはジグリセリドなど、どのような不揮発性油を使用してもよい。さらに、注射剤の調製の際には、オレイン酸などの脂肪酸も同様に使用してもよい。
【0035】
キャリア材料と組み合わせて単一剤形を形成してもよい活性成分の量は、たとえば、個々の投与モードによって異なる。たとえば、ヒトへの経口投与を意図した徐放性製剤は、適切な都合のよい量のキャリア材料と配合された活性材料を約1〜1000mg含んでいてもよく、その量は全組成物の約5〜約95%(重量:重量)の幅があってもよい。
【0036】
眼への投与に好適な製剤として、活性成分を好適なキャリア、特に活性成分については水性溶媒に溶解または懸濁した点眼薬がある。
【0037】
口の局所投与に好適な製剤として、スクロースおよびアカシアまたはトラガントなど風味を付けた基剤に活性成分を含ませたロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性な基剤に活性成分を含ませた香錠;および好適な液体キャリア中に活性成分を含む含嗽剤がある。
【0038】
直腸投与用の製剤は、たとえばカカオバターまたはサリチラートを含む好適な基剤もちいた坐剤として提供してもよい。
【0039】
肺内または鼻腔投与に好適な製剤は、粒度が、たとえば0.1〜500ミクロン(0.5、1、30ミクロン、35ミクロンなどのミクロン単位で大きくなる0.1〜500ミクロンの範囲の粒度を含む)であり、肺胞嚢に達するように鼻腔からの急速吸入または口からの吸入により投与される。好適な製剤として、活性成分の水性または油性液剤がある。エアロゾルまたは乾燥粉末の投与に好適な製剤は、従来の方法に従って調製することができ、HIV活性に関連する状態の処置または予防にこれまで使用された化合物など他の治療薬と共に送達してもよい。
【0040】
膣内投与に好適な製剤は、活性成分に加えて当該技術分野において適切であることが公知のキャリアを含むペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡またはスプレー製剤として提供することができる。
【0041】
非経口投与に好適な製剤として、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、および製剤を意図される被投与者の血液と等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性の無菌注射液;および懸濁化剤および糊料を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液がある。
【0042】
本製剤は、単位用量または複数用量容器、たとえば密封アンプルおよびバイアルに入れて提供され、使用の直前に無菌の液体キャリア、たとえば注射用水を加えることのみを必要とする凍結乾燥(freeze−dried)(凍結乾燥(lyophilized)状態で保存できる。必要に応じて調合される注射液および懸濁剤は、前述したような無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製される。好ましい単位用量製剤は、活性成分の1日用量または1日当たり数回の分割用量またはその適切な一部を含むものである。したがって、たとえば、本発明の塩の1日用量は、単一の錠剤で提供しても、あるいは複数の錠剤(たとえば、2または3錠)で提供してもよい。
【0043】
本発明の製剤は、具体的に上述した成分に加えて、対象となる製剤の種類を考慮して当該技術分野において慣用される他の薬を含んでもよいことを理解すべきであり、たとえば経口投与に好適なものとして、着香剤がある。
【0044】
活性成分の放出制御を行い投与頻度を減らしたり、活性成分の薬物動態プロファイルまたは毒性プロファイルを改善したりする医薬製剤も本発明の範囲内にある。したがって、本発明はまた、持続放出または制御放出用に製剤化された、1種または複数種の本発明の塩を含む医薬組成物も提供する。
【0045】
本発明の塩の有効用量は、たとえば、塩が予防的に使用されているかどうか(典型的には同じ塩を治療に使用するのと比べて必要とされる用量は少ない)、送達方法、および医薬製剤によって左右され、従来の用量漸増試験により臨床医が決定する。有効用量は、1日約0.0001mg/kg体重から1日約100mg/kg体重の範囲と予想できる。典型的には、1日約0.01〜約10mg/kg体重である。より典型的には、1日約.01〜約5mg/kg体重である。より典型的には、1日約.05〜約0.5mg/kg体重である。たとえば、体重約70kgの成人ヒトの1日用量は典型的には、1mg〜1000mg、好ましくは5mg〜500mgの範囲であり、単一用量の形態とっても、あるいは複数用量の形態とってもよい。一例として、1日1回投与される単一用量製剤における本発明の塩の用量は、1日用量30mgまたは1日用量60mgなど30mg〜60mgのように1mg〜100mgの範囲であればよい。
【0046】
併用療法
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩、コハク酸塩およびマロン酸塩は各々、AIDSおよび/またはAIDSに罹患しているヒト被験者に現れる1つまたは複数の他の疾患(たとえば、細菌および/または真菌感染、B型肝炎またはC型肝炎などの他のウイルス感染、またはカポジ肉腫などの癌)の処置または予防のため他の治療薬と組み合わせて使用してもよい。1種または複数種の本発明の塩と追加の治療薬(単数または複数)を一緒に製剤化(たとえば、錠剤中で一緒に製剤化)してもよい。
【0047】
そうした追加の治療薬の例として、ウイルス感染、寄生虫感染もしくは細菌感染またはそれと関連する状態の処置または予防、あるいは腫瘍またはそれと関係する状態の処置に有効な薬があり、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(ジドブジン、AZT)、2’−デオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドロアデノシン(D4A)、2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドロチミジン(D4T)、カルボビル(炭素環式2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドログアノシン)、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシウリジン、5−フルオロチミジン、(E)−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジン(BVDU)、2−クロロデオキシアデノシン、2−デオキシコホルマイシン、5−フルオロウラシル、5−フルオロウリジン、5−フルオロ−2’−デオキシウリジン、5−トリフルオロメチル−2’−デオキシウリジン、6−アザウリジン、5−フルオロオロト酸、メトトレキサート、トリアセチルウリジン、1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−1−β−アラビノシル)−5−ヨードシチジン(FIAC)、テトラヒドロ−イミダゾ(4,5,1−jk)−(1,4)−ベンゾジアゼピン−2(1H)−チオン(TIBO)、2’−ノル−サイクリックGMP、6−メトキシプリンアラビノシド(ara−M)、6−メトキシプリンアラビノシド2’−O−吉草酸;シトシンアラビノシド(ara−C)、2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC)、2’,3’−ジデオキシアデノシン(ddA)および2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)などの2’,3’−ジデオキシヌクレオシド;アシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、HPMPC、PMEA、PMEG、PMPA、PMPDAP、FPMPA、HPMPA、HPMPDAP、(2R,5R)−9−>テトラヒドロ−5−(ホスホノメトキシ)−2−フラニルアデニン、(2R,5R)−1−>テトラヒドロ−5−(ホスホノメトキシ)−2−フラニルチミンなどの非環状ヌクレオシド;リバビリン(アデニンアラビノシド)、2−チオ−6−アザウリジン、ツベルシジン、アウリントリカルボン酸、3−デアザネオプラノシン、ネオプラノシン、リマンチジン、アダマンチンおよびホスカルネット(ホスホノギ酸三ナトリウム)などの他の抗ウイルス薬;殺菌性のフルオロキノロン(シプロフロキサシン、ペフロキサシンなど)などの抗菌薬;殺菌性のアミノグリコシド系抗生物質(ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、アミカシンおよび同種のもの);β−ラクタマーゼ阻害剤(セファロスポリン、ペニシリンなど);テトラサイクリン、イソニアジド、リファンピン、セフォペラゾン、クライスロマイシンおよびアジスロマイシンなどの他の抗菌剤、ペンタミジン(1,5−ビス(4’−アミノフェノキシ)ペンタン)、9−デアザ−イノシン、スルファメトキサゾール、スルファジアジン、キナピラミン、キニーネ、フルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、アムホテリシンB、5−フルオロシトシン、クロトリマゾール、ヘキサデシルホスホコリンおよびニスタチンなどの抗寄生虫剤または抗真菌薬;プロベニシドなどの腎排泄阻害剤;ジピリダモール、ジラゼプおよびニトロベンジルチオイノシンなどのヌクレオシド輸送阻害剤、FK506、シクロスポリンA、チモシンα−1などの免疫調節剤;TNFおよびTGF−βなどのサイトカイン;IFN−α、IFN−βおよびIFN−γなどのインターフェロン;様々なインターロイキンなどのインターロイキン、GM−CSF、G−CSF、M−CSFなどのマクロファージ/顆粒球コロニー刺激因子、抗TNF抗体、抗インターロイキン抗体、可溶性インターロイキン受容体、プロテインキナーゼC阻害剤などのサイトカインアンタゴニストなどが挙げられる。
【0048】
本発明の塩と組み合わせることができ、かつHIVに対する活性を持つ好適な活性治療薬または成分の例として、1)HIVプロテアーゼ阻害剤、たとえば、アンプレナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、インジナビル、ロピナビル、リトナビル、ロピナビル+リトナビル、ネルフィナビル、サキナビル、チプラナビル、ブレカナビル、ダルナビル、TMC−126、TMC−114、モゼナビル(DMP−450)、JE−2147(AG1776)、AG1859、DG35、L−756423、RO0334649、KNI−272、DPC−681、DPC−684およびGW640385X、DG17、PPL−100、2)非ヌクレオシド系のHIV逆転写酵素阻害剤、たとえば、カプラビリン、エミビリン、デラビリジン、エファビレンツ、ネビラピン、(+)カラノリドA、エトラビリン、GW5634、DPC−083、DPC−961、DPC−963、MIV−150およびTMC−120、TMC−278(リルピビリン)、エファビレンツ、BILR 355 BS、VRX 840773、UK−453,061、RDEA806、3)ヌクレオシド系のHIV逆転写酵素阻害剤、たとえば、ジドブジン、エムトリシタビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ラミブジン、アバカビル、アムドキソビル、エルブシタビン、アロブジン、MIV−210、ラシビル(−FTC)、D−d4FC、エムトリシタビン、ホスファジド、ホジブジンチドキシル、ホサルブジンチドキシル、アプリシチビン(AVX754)、アムドキソビル、KP−1461、アバカビル+ラミブジン、アバカビル+ラミブジン+ジドブジン、ジドブジン+ラミブジン、4)ヌクレオチド系のHIV逆転写酵素阻害剤、たとえば、テノホビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル+エムトリシタビン、フマル酸テノホビルジソプロキシル+エムトリシタビン+エファビレンツおよびアデホビル、5)HIVインテグラーゼ阻害剤、たとえば、クルクミン、クルクミンの誘導体、チコリ酸、チコリ酸の誘導体、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸の誘導体、アウリントリカルボン酸、アウリントリカルボン酸の誘導体、カフェ酸フェネチルエステル、カフェ酸フェネチルエステルの誘導体、チロホスチン、チロホスチンの誘導体、ケルセチン、ケルセチンの誘導体、S−1360、ジンテビル(AR−177)、L−870812およびL−870810、MK−0518(ラルテグラビル)、BMS−707035、MK−2048、BA−011、BMS−538158、GSK364735C、6)gp41阻害剤、たとえば、エンフビルチド、シフビルチド、FB006M、TRI−1144、SPC3、DES6、Locus gp41、CovXおよびREP9、7)CXCR4阻害剤、たとえば、AMD−070、8)エントリー阻害剤、たとえば、SP01A、TNX−355、9)gp120阻害剤、たとえば、BMS−488043およびBlockAide/CR、10)G6PDおよびNADH−オキシダーゼ阻害剤、たとえば、イムニチン、10)CCR5阻害剤、たとえば、アプラビロック、ビクリビロック、INCB9471、PRO−140、INCB15050、PF−232798、CCR5mAb004およびマラビロック、11)インターフェロン、たとえば、ペグ化rIFN−α 2b、ペグ化rIFN−α 2a、rIFN−α 2b、IFN α−2b XL、rIFN−α 2a、コンセンサスIFN α、インファーゲン、レビフ、ロクテロン、AVI−005、PEG−インファーゲン、ペグ化IFN−β、経口インターフェロンα、フエロン、レアフェロン、インターマックスα、r−IFN−β、インファーゲン+アクティミューン、DUROSを含むIFN−ωおよびアルブフェロン、12)リバビリンアナログ、たとえば、レベトール、コペガス、レボビリン、VX−497およびビラミジン(タリバビリン)13)NS5a阻害剤、たとえば、A−831およびA−689、14)NS5bポリメラーゼ阻害剤、たとえば、NM−283、バロピシタビン、R1626、PSI−6130(R1656)、HIV−796、BILB 1941、MK−0608、NM−107、R7128、VCH−759、PF−868554、GSK625433およびXTL−2125、15)NS3プロテアーゼ阻害剤、たとえば、SCH−503034(SCH−7)、VX−950(テラプレビル)、ITMN−191およびBILN−2065、16)α−グルコシダーゼ1阻害剤、たとえば、MX−3253(セルゴシビル)およびUT−231B、17)肝保護剤、たとえば、IDN−6556、ME3738、MitoQおよびLB−84451、18)非ヌクレオシド系HIVの阻害剤、たとえば、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾ−1,2,4−チアジアジン誘導体およびフェニルアラニン誘導体、19)HIV処置用の他の薬剤、たとえば、ザダキシン、ニタゾキサニド(アリネア)、BIVN−401(ビロスタット)、DEBIO−025、VGX−410C、EMZ−702、AVI 4065、バビツキシマブ、オグルファニド、PYN−17、KPE02003002、アクチロン(CPG−10101)、KRN−7000、シバシル、GI−5005、ANA−975(イサトリビン)、XTL−6865、ANA 971、NOV−205、タルバシン、EHC−18およびNIM811、19)薬物動態改善剤、たとえば、BAS−100およびSPI452、20)RNAseH阻害剤、たとえば、ODN−93およびODN−112、21)他の抗HIV薬、たとえば、VGV−1、PA−457(ベビリマット)、アンプリゲン、HRG214、シトリン、ポリムン、VGX−410、KD247、AMZ 0026、CYT 99007、A−221HIV、BAY 50−4798、MDX010(イプリムマブ)、PBS119、ALG889およびPA−1050040が挙げられる。
【0049】
さらに一例として、以下のリストに、本発明の塩と組み合わせることができる例示的なHIV抗ウイルス薬と、その対応する米国特許番号を開示する。
【0050】
例示的なHIV抗ウイルス薬および特許番号
ザイアジェン(硫酸アバカビル、米国特許第5,034,394号)
エプジコム(硫酸アバカビル/ラミブジン、米国特許第5,034,394号)
ヘプセラ(アデホビルジピボキシル、米国特許第4,724,233号)
アゲネラーゼ(アンプレナビル、米国特許第5,646,180号)
レイアタッツ(硫酸アタザナビル、米国特許第5,849,911号)
レスクリプター(メシル酸デラビルジン、米国特許第5,563,142号)
ハイビッド(ジデオキシシチジン;ザルシタビン、米国特許第5,028,595号)
ヴァイデックス(ジデオキシイノシン;ジダノシン、米国特許第4,861,759号)
サスティバ(エファビレンツ、米国特許第5,519,021号)
エムトリバ(エムトリシタビン、米国特許第6,642,245号)
レクシヴァ(ホスアンプレナビルカルシウム、米国特許第6,436,989号)
ビルジン;トリアプテン;ホスカビル(ホスカルネットナトリウム、米国特許第6,476,009号)
クリキシバン(硫酸インジナビル、米国特許第5,413,999号)
エピビル(ラミブジン、米国特許第5,047,407号)
コンビビル(ラミブジン/ジドブジン、米国特許第4,724,232号)
アルビラン(ロピナビル)
カレトラ(ロピナビル/リトナビル、米国特許第5,541,206号)
ビラセプト(メシル酸ネルフィナビル、米国特許第5,484,926号)
ビラミューン(ネビラピン、米国特許第5,366,972号)
ノルビル(リトナビル、米国特許第5,541,206号)
インビラーゼ;フォルトバーゼ(メシル酸サキナビル、米国特許第5,196,438号)
ゼリット(スタブジン、米国特許第4,978,655号)
ツルバダ(フマル酸テノホビルジソプロキシル/エムトリシタビン、米国特許第5,210,085号)
アプティバス(チプラナビル)
レトロビル(ジドブジン;アジドチミジン、米国特許第4,724,232号)
HIVの阻害方法
さらなる態様では、本発明は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を処置する方法であって、各方法が、AIDSに罹患しているヒトに治療有効量の本発明の塩または本発明の塩の水和物を投与するステップを含む方法を提供する。AIDSの処置は、AIDSの少なくとも1つの症状の軽減および/またはこの疾患の進行の遅延または予防を含む。典型的には、治療有効量の塩を、見出し「医薬組成物」に記載する医薬組成物の形態でヒトに投与する。典型的には、たとえば錠剤の形態で医薬組成物を経口投与する。本発明の1種または複数種の塩またはその水和物の治療上有効な1日用量の例は、10mg〜30mgなど1mg〜100mgである。本発明の塩については、たとえば人体内の水性媒体中で解離すると有効量、たとえば10mgまたは30mgまたは60mgなどの遊離塩基になる一定量の塩を含む1つまたは複数の錠剤の形態で毎日投与してもよい。
【0051】
投与経路
本発明の1種または複数種の塩は、処置対象の状態に適した任意の経路で投与する。好適な経路としては、経口、直腸、経鼻、局所(頬および舌下など)、経膣および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄膜内および硬膜外)などが挙げられる。好ましい経路は、たとえば、被投与者の状態によって変わる場合があることが理解される。本発明の塩の利点は経口で生物学的に利用可能であり、経口で投与できることにある。
【実施例】
【0052】
実施例および例示的な実施形態:
開示内容の全体を参照によって本明細書に援用する国際公開第2006/110157号、特にp.167−174も参照されたい。
【0053】
(実施例1)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの合成。
【0054】
【化5】

2−デオキシ−2−フルオロ−3,5−ジ−O−ベンゾイル−a−D−アラビノフラノシルブロミド(2)
Tann et.al.,JOC,1985,Vol.50 pg.3644およびHowell et.al.,JOC,1988,Vol.53,pg.85に開示された合成スキームに従って化合物(2)を合成した。
【0055】
DavosまたはCMS chemicalsから市販されている1.3.5−トリ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−アラビノフラノース(1)(120g、258mmol)のCHCl(1L)中の溶液に33%HBr/酢酸(80mL)を加えた。この混合物を室温で16時間撹拌し、氷水で冷却し、NaHCO(150g/1.5L溶液)で1〜2時間かけてゆっくりと中和した。
【0056】
CHCl層を分離し、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解させ、酸がなくなるまでNaHCOで洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して生成物2を黄色油として得た(約115g)。
【0057】
【化6】

2−デオキシ−2−フルオロ−3,5−ジ−O−ベンゾイル−β−D−アラビノフラノシル−9H−6−クロロプリン(3)
Ma et.al.,J.Med.Chem.,1997,Vol.40,pg.2750;Marquez et.al.,J.Med.Chem.,1990,Vol.33,pg.978;Hildebrand et.al.,J.Org.Chem.,1992,Vol.57,pg.1808およびKazimierczuk et.al.,JACS,1984,Vol.106,pg.6379に開示された合成スキームに従って化合物(3)を合成した。
【0058】
NaH(14g、60%)のアセトニトリル(900mL)懸濁液に、6−クロロプリン(52.6g)を3回に分けて加えた。この混合物を室温で1.5時間撹拌した。2(258mmol)のアセトニトリル溶液(300mL)を滴下して加えた。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応を酢酸(3.5mL)でクエンチし、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をCHClと水に分配した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をCHCl、次いでEtOH(全体で約1:2)で処理し、所望の生成物3を黄色がかった固体として析出させた(83g、1から65%)。
【0059】
【化7】

2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル−6−メトキシアデニン(4)
0℃の3(83g、167mmol)のメタノール(1L)懸濁液に、NaOMe(25%wt、76mL)を加えた。この混合物を室温で2時間撹拌してから、酢酸(約11mL、pH=7)でクエンチした。この混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣をヘキサンと水(約500mLのヘキサンおよび300mLの水)に分配した。水層を分離し、有機層を再度水(約 300mL)と混合した。水画分を合わせ、減圧下で約100mLまで濃縮した。析出したこの生成物4を、濾過により集めた(42g、88%)。
【0060】
【化8】

2−デオキシ−2−フルオロ−5−カルボキシ−β−D−アラビノフラノシル−6−メトキシアデニン(5)
Moss et.al.,J.Chem.Soc.,1963,pg.1149に開示された合成スキームに従って化合物(5)を合成した。
【0061】
Pt/C(水スラリーとして10%、15g(20〜30%モル当量))とNaHCO(1.5g、17.94mmol)のHO(500mL)中の混合物をH下、65℃で0.5時間撹拌した。次いでこの反応混合物を放冷し、真空下に置き、Nで数回フラッシュして全Hを除去した。次いで化合物4(5.1g、17.94mmol)を室温で加えた。LC−MSで反応の終了を確認するまで(典型的には24〜72時間)、この反応混合物をO(バルーン)下65℃で撹拌した。この混合物を室温まで冷却し、濾過した。このPt/CをHOで十分に洗浄した。合わせた濾液を約30mLまで濃縮し、HCl(4N)を0℃で加えて酸性化(pH4)した。黒い固体を析出させ、濾過により集めた。この粗生成物を最少量のメタノールに溶解させ、シリカゲルパッドで濾過(メタノールで溶出)した。濾液を濃縮し、水から結晶化させて化合物5(2.5g)をオフホワイトの固体として得た。
【0062】
【化9】

(2’R,3’S,4’R,5’R)−6−メトキシ−9−[テトラヒドロ4−ヨード−3−フルオロ−5−(ジエトキシホスフィニル)メトキシ−2−フラニル]プリン(6)
Zemlicka et.al.,J.Amer.Chem.,Soc.,1972,Vol.94,pg.3213に開示された合成スキームに従って化合物(6)を合成した。
【0063】
5(22g、73.77mmol)のDMF(400mL)溶液に、DMFジネオペンチルアセタール(150mL、538mmol)およびメタンスルホン酸(9.5mL、146.6mmol)を加えた。この反応混合物を80〜93℃(内部温度)で30分間撹拌してから、室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルと水に分配した。有機相を分離し、NaHCO、続いてブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣およびジエチル(ヒドロキシメチル)ホスホナート(33mL、225mmol)をCHCl(250mL)に溶解させ、−40℃まで冷却した。CHC1(100mL)中の一臭化ヨウ素(30.5g、1.1mol)の溶液を滴下して加えた。この混合物を−20〜−5℃で6時間撹拌した。次いで反応をNaHCOおよびNaでクエンチした。有機相を分離し、水層をCHClで抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して生成物6を得た(6g、15.3%)。
【0064】
6を調製する別の手順
5(2.0g、6.7mmol)のTHF(45mL)溶液をN下トリフェニルホスフィン(2.3g、8.7mmol)で処理した。ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(1.8g、8.7mmol)をゆっくりと加えた。得られた混合物を室温で1時間撹拌してから、減圧下で濃縮乾固した。残渣をCHCl(20ml)に溶解させ、次いでジエチル(ヒドロキシメチル)ホスホナート(4.5g、27mmol)で処理した。この混合物を−60℃まで冷却してから、一臭化ヨウ素2g、9.6mmol)をCHCl中の冷たい溶液(10ml)を加えた。この反応混合物を−10℃まで加温し、次いで−10℃に1時間保温した。反応混合物をCHClで希釈し、飽和水性NaHCO、次いで水性チオ硫酸ナトリウムで洗浄した。有機相を分離し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮乾固した。反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(25%酢酸エチルを含むCHCl、その後3%メタノールを含むCHClに切り換えて溶出)で精製して生成物6を得た(0.9g、33%)。
【0065】
【化10】

(2’R,5’R)−6−メトキシ−9−[3−フルオロ−2,5−ジヒドロ−5−(ジエトキシホスフィニル)メトキシ−2−フラニル]プリン(7)
化合物6(6g、11.3mmol)の酢酸(2.5mL)およびメタノール(50mL)中の溶液に、NaClO(10〜13%)(50mL)を滴下して加えた。次いでこの反応混合物を0.5時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルで処理し、次いで濾過して固体を除去した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して生成物7を得た(4g、88%)。
【0066】
【化11】

(2’R,5’R)−9−(3−フルオロ−2,5−ジヒドロ−5−ホスホノメトキシ−2−フラニル)アデニン二ナトリウム塩(8)
化合物7(2.3g、5.7mmol)のメタノール(6mL)溶液を水酸化アンモニウム(28〜30%)(60mL)と混合した。得られた混合物を120℃で4時間撹拌し、冷却してから減圧下で濃縮した。残渣を真空下で12時間乾燥させた。残渣をDMF(40mL)に溶解させ、ブロモトリメチルシラン(3.5mL)を加えた。この混合物を室温で16時間撹拌してから、減圧下で濃縮した。残渣を水性NaHCO(水100mL中に2.3g)に溶解させた。この溶液を蒸発させ、残渣をC−18(40μm)カラムで精製し、水で溶出した。水性画分を凍結乾燥して二ナトリウム塩8を得た(1.22g、57%)。
【0067】
【化12】

モノアミデート調製物の例(9)
二ナトリウム塩8(25mg、0.066mmol)、(S)−Ala−O−シクロブチルエステルヒドロクロリド(24mg、2当量、0.133mmol)およびフェノール(31mg、0.333mmol)を無水ピリジン(1mL)中で混合した。トリエチルアミン(111μL、0.799mmol)を加え、得られた混合物を窒素下60℃で撹拌した。セパレートフラスコ中で2’−アルドリチオール(122mg、0.466mmol)およびトリフェニルホスフィン(103mg、0.466mmol)を無水ピリジン(0.5mL)に溶解させ、得られた黄色溶液を15〜20分間撹拌した。次いでこの溶液を8の溶液に一度に加えた。合わせた混合物を窒素下60℃で16時間撹拌して黄色から淡褐色の透明な溶液を得た。次いでこの混合物を減圧下で濃縮した。得られた油をCHClに溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィー(CHC1中0〜5%MeOHの線形勾配で溶出)により精製して油を得た。得られた油をアセトニトリルおよび水に溶解させ、分取HPLC(線形勾配、水中5〜95%アセトニトリル)により精製した。純粋な画分を合わせ、凍結乾燥してモノアミデート9を白色粉末として得た。
【0068】
【化13】

ビスアミデート調製物の例(10)
二ナトリウム塩8(12mg、0.032mmol)および(S)−Ala−O−n−Prエステルヒドロクロリド(32mg、6当量、0.192mmol)を無水ピリジン(1mL)中で混合した。トリエチルアミン(53μL、0.384mmol)を加え、得られた混合物を窒素下60℃で撹拌した。セパレートフラスコ中で2’−アルドリチオール(59mg、0.224mmol)およびトリフェニルホスフィン(49mg、0.224mmol)を無水ピリジン(0.5mL)に溶解させ、得られた黄色溶液を15〜20分間撹拌した。次いでこの溶液を8の溶液に一度加えた。合わせた混合物を窒素下60℃で16時間撹拌して黄色から淡褐色の透明な溶液を得た。次いでこの混合物を減圧下で濃縮した。得られた油をCHClに溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl中0〜5%MeOHの線形勾配で溶出)により精製して油を得た。得られた油をアセトニトリルおよび水に溶解させ、分取HPLC(線形勾配、水中5〜95%アセトニトリル)により精製した。純粋な画分を合わせ、凍結乾燥してビスアミデートを白色粉末として得た。
【0069】
【化14】

モノアミデート調製物の例(11)
化合物8(1.5g、4mmol)をエチルアラニンエステルHCl塩(1.23g、8mmol)およびフェノール(1.88g、20mmol)と混合した。無水ピリジン(35mL)、続いてTEA(6.7mL、48mmol)を加えた。この混合物を窒素下60℃で15〜20分間撹拌した。セパレートフラスコ中で2’−アルドリチオール(7.3g)を、無水ピリジン(5mL)中のトリフェニルホスフィン(6.2g)と混合し、得られた混合物を10〜15分間撹拌して透明な淡黄色の溶液を得た。次いでこの溶液を上記の混合物に加え、60℃で一晩撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮してピリジンを除去した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過してから減圧下で濃縮した。得られた油をジクロロメタンに溶解させ、乾燥CombiFlashカラム、40gに充填し、10分かけてジクロロメタン中0〜5%メタノールの線形勾配、その後7〜10分間、ジクロロメタン中5%メタノールで溶出した。所望の生成物を含む画分を合わせ、減圧下で濃縮して泡状物質を得た。泡状物質をアセトニトリルに溶解させ、分取HPLCにより精製して11を得た(0.95g)。
【0070】
11(950mg)を少量のアセトニトリルに溶解させ、室温で一晩放置した。固体を濾過により集め、少量のアセトニトリルで洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、次いで緩衝液A、アセトニトリル中2%エタノールで平衡化したChiralpak AS−Hカラムに充填した。緩衝液Aで17分間10mL/分として異性体A、12を溶出した。その後緩衝液B、アセトニトリル中50%メタノールを用いて8分かけてカラムから異性体B、13を別に溶出した。溶媒をすべて除去してから別々にアセトニトリルおよび水に再び溶解させた。このサンプルを別々に凍結乾燥した(質量−348mg)。異性体12を以下に示す
【0071】
【化15】

(実施例2)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの塩形のスクリーニング
以下の酸をスクリーニングしてエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの好適な結晶塩を形成するかどうかを判定した:鉱酸(HX、式中、X=ハロゲンである;HPO);有機スルホン酸(RSOH、式中、R=Me、Et、Ph、(+)−カンファー−10−スルホン酸;ナフタレン−2−スルホン酸;ナフタレン−1,5−ジスルホン酸);モノカルボン酸(RCOH、式中、R=H、Me、Et、Ph、トランス−PhCH=CH、ClCH、PhCONHCH)およびジカルボン酸(マロン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、シュウ酸、マレイン酸)。
【0072】
前述の酸の3つを使用してエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートと混合したところ固体を得た:トリフルオロ酢酸、マロン酸およびコハク酸。トリフルオロ酢酸は薬学的に許容されないと思われる。
【0073】
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートは、酸性または塩基性条件下、プロトン性溶媒中で分解されるアミデートプロドラッグである。このため、求核部分を含む可能性がある酸は、初回のスクリーニングに含めなかった。
【0074】
続いて、クエン酸、グリコール酸、(S)−(+)−乳酸、サリチル酸、(S)−(−)−リンゴ酸、(S)−(+)−マンデル酸および(S)−(+)−グルタミン酸を評価した。意外にもエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートはクエン酸と安定な結晶塩を形成した。クエン酸はヒドロキシル基を含むため、これは予想外の結果であった。ヒドロキシル基は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのアミデート部分に求核試薬として作用することができ、これと反応を起こして、フェノールまたはアラニンエチルエステルを脱離してエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートとクエン酸のヒドロキシル基との間で共有結合が形成される可能性がある。
【0075】
(実施例3)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩の合成
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基形を温かい2−ブタノン(15部)に溶解させ、撹拌しながらマロン酸(0.26部)を加えて溶液を形成した。この溶液にヘプタン(5部)を加え、約5℃までゆっくりと冷却し、集めて、冷たい2−ブタノン/ヘプタンでリンスした。この結果、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩が生成され、収率は約80%であった。
【0076】
マロン酸塩のNMRスペクトルは、以下の特徴を持っていた:H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)ppm=8.27(s,1H),8.26(s,1H),7.32−7.20(m,3H),7.15(d,J=7.8Hz,2H),6.78(m,1H),5.88(br.s.,1H),5.78(s,1H),4.17(m,2H),4.15−4.07(m,3H),3.85(dd,J=8.0,8.0,1H),3.38(s,2H),1.31(d,J=7.0Hz,3H),1.23(t,J=7.0Hz,3H)
31P NMR(162MHz,CHLOROFORM−d)ppm=20.64(s)
19F NMR(376MHz,ACETONITRILE−d3)ppm=−135.19(s)
(実施例4)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩の合成。
【0077】
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基形を温かい2−ブタノン(15部)に溶解させ、撹拌しながらコハク酸(0.28部)を加えて溶液を形成した。この溶液を約5℃までゆっくりと冷却し、集めて、冷たい2−ブタノンでリンスすることにより、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩を収率80%で得た。
【0078】
コハク酸塩のNMRスペクトルは以下の特徴を持っていた:H NMR(400MHz,ACETONITRILE−d3)ppm=8.26(s,1H),8.15(s,1H),7.29(dd,J=7.6,7.6Hz,2H),7.16(d,J=7.6Hz,1H),7.12(d,J=8.0Hz,2H),6.78(m,1H),6.17(br s,1H),5.89(m,2H),4.12−3.95(重なった多重線,6 H),2.53(s,4H),1.24(d,J=6.8,3H),1.18(t,J=7.2,3H).
31P NMR(162MHz,Acetonitrile−d3)ppm=21.60(s)
19F NMR(376MHz,Acetonitrile−d3)ppm=−135.19(s)。
【0079】
(実施例5)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩の合成。
【0080】
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基形(約30g)を熱いアセトニトリル(16部)に溶解させ、撹拌しながらクエン酸(0.38部)を加えた。得られた溶液を約5℃までゆっくりと冷却し、集めて、冷たいアセトニトリルでリンスし、乾燥させてエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩を収率約84%で得た。
【0081】
クエン酸塩のNMRスペクトルは以下の特徴を持っていた:H NMR(400MHz,DMSO−d6)ppm=8.20(s,2H),7.45(2H,br s),7.29(dd,J=7.6,7.6Hz,2H),7.13(dd,J=7.2Hz,J=7.2Hz H),7.12(dd,J=8.0Hz,J=8.0Hz 2H),6.86(d,J=2.4Hz,1H),6.14(s,1H),5.97(d,J=3.6Hz,1H),5.78(dd,J=12.2,10.4Hz,1H),4.05(m,1H),4.02(m,2H),3.98(m,1H),3.89(m,H),2.76(d,J=15.6Hz,2H),2.66(d,J=15.6Hz,2H),1.16(d,J=7.2Hz,1H).
31P NMR(162MHz,DMSO−d6)ppm=22.29(s)
19F NMR(376MHz,ACETONITRILE−d3)ppm=−133.88(s)
HRMS:m/z:507.1561;C2124FNPに対する計算値:507.1557.
2124FNPに対する元素分析の計算値:C:46.42;H:4.62;N:12.03;P:4.43;F:2.72;実測値:C:45.83;H:4.74;N:11.81;P:4.45;F:2.80。
【0082】
(実施例6)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの塩の物理化学的特性
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩、コハク酸塩およびクエン酸塩の代表的なバッチを調製した。これら塩の融点を測定して、融点が高いと安定性レベルが高いことを示す安定性の大まかな目安とする。表1に示すように、クエン酸塩の融点が最も高かった。さらに、3つの塩各々の融解熱(ΔH(融解))を表1に示す。クエン酸塩の融解熱が最も高いことから、他の2つの塩より固体の結晶化度の程度が高いことが示唆される。
【0083】
【表1】

エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基形は40℃および75%相対湿度(RH:relative humidity)の開放条件で保存する場合、非晶質で吸湿性があり、化学的に不安定である。表2に示すように、対応するコハク酸塩、マロン酸塩およびクエン酸塩は室温で数日間相対湿度92%にさらしても吸湿性がなかった。
【0084】
【表2】

エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの遊離塩基、コハク酸塩、マロン酸塩およびクエン酸塩の固体の化学的安定性を40℃および75%相対湿度の開放条件で調べた。表3に示すように、クエン酸塩は、コハク酸塩およびマロン酸塩に比べて優れた化学的安定性を示した。
【0085】
【表3】

(実施例7)
10mgおよび30mgのエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナート遊離塩基に相当する量を提供する錠剤の組成
ローラー圧縮法によりエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩を10mgおよび30mgの錠剤に製剤化した。最初に活性成分、無水ラクトース、微結晶性セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムをブレンドし、次いでこの混合物をステアリン酸マグネシウムの総量の3分の1で流動性をよくしてから、ローラー圧縮、続いて粉砕を行った。得られた顆粒をステアリン酸マグネシウムの残量で流動性をよくし、錠剤に圧縮した。
【0086】
表4は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩を含み、かつクエン酸塩が水性媒体中で解離すると、この化合物の10mgあるいは30mgの遊離塩基形を与える錠剤の組成を示す。
【0087】
【表4】

(実施例8)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナート (プロドラッグ)または親化合物をリンパ球へ投与した後の活性代謝物のリンパ球への負荷の比較。
【0088】
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートはプロドラッグであり、人体内で加水分解され、以下「親化合物」という加水分解生成物を与える。親化合物は人体内でリン酸化され、逆転写酵素の活性を阻害する生物活性のあるリン酸化生成物(以下「活性代謝物」)を与える。
【0089】
プロドラッグおよび親化合物の細胞内代謝の特徴付けを行うため、1μMのプロドラッグあるいは100μMの親化合物のいずれかで2時間、6時間および24時間リンパ球細胞を処理した。製造者の手順に従いFicoll Paque Plus(GE Healthcare,Piscataway,NJ)中で遠心分離により末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)をヒトバフィーコート(Stanford Blood Bank,Palo Alto,CA)から単離した。3〜4人の別々のドナーから単離したPBMCを、実験の開始前に20%ウシ胎仔血清および抗生物質を含むRPM1−1640培地で維持するか(休止状態)、またはインターロイキン2(20単位/mL、Roche Biochemicals,Indianapolis,IN)およびフィトヘマグルチニンPHA−P(1μg/mL、Sigma)の存在下で3〜4日間活性化した。
【0090】
ヒト形質転換CCRF−CEM T細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(Manassas,VA)から入手し、10%FBSおよび抗生物質を補充したRPMI−1640培地で培養した。細胞のアリコート(2〜3×10細胞)を各時点で採取し、カウントし、遠心分離によりペレット状にし、最初の処理培地0.5mLに再懸濁し、0.5mLのNyosil M25油に積層した。このサンプルを微量遠心機にて20秒間最高速度で遠心した(約800×g)。培地の最上層を除去し、油層を0.8mLのリン酸塩緩衝生理食塩水で2回洗浄した。洗浄緩衝液および油層を慎重に取り除き、この細胞ペレットを0.5mLの70%メタノールに再懸濁し、一晩−70℃でインキュベートして細胞溶解を促進した。細胞ライセートを遠心し、上清を集め、真空乾燥させ、内部標準として[5−(6−アミノ−プリン−9−イル)−2,5−ジヒドロ−フラン−2−イルオキシメチル]−ホスホン酸のジホスファート(活性代謝物の非フッ素化アナログ)を含む10μLのテトラブチル酢酸アンモニウムに再懸濁した。
【0091】
一過性イオンペア高速液体クロマトグラフィー/陽イオンエレクトロスプレータンデム質量分析法(LC/MS/MS)を使用して細胞内ヌクレオチドを定量した。その方法については、非環式ホスホナートヌクレオチドアナログであるアデホビル、そのリン酸化代謝物および天然ヌクレオチドに関して記載された方法を改変した(Vela,J.E.et al.Simultaneous quantitation of the nucleotide analog adefovir,its phosphorylated anabolites and 2’−deoxyadenosine triphosphate by ion−pairing LC/MS/MS.Journal of Chromatography B Anal.Technol.Biomed.Life Sci.,vol.848,2007,pp 335−343)。未処理細胞からの抽出物を使用してすべての分析物について検量線および精度管理サンプルを作製した。7点検量線は全般的に0.03〜20pmol/百万細胞の範囲であり、すべての分析物でrが0.99を超える直線性を示した。全分析物の定量下限は0.05〜0.1pmol/百万細胞の範囲であった。各分析ランの開始時および終了時に低濃度および高濃度の精度管理サンプル(典型的にはそれぞれ0.2および10pmol/百万細胞)を各分析物で実施して確度および精度が20%以内であることを確認した。
【0092】
リンパ球と親化合物とのインキュベーション後に観察される代謝物の非常に少ない細胞内蓄積の正確な分析を容易にするように親化合物をプロドラッグ(1μM)より100倍高い濃度(100μM)でインキュベートした。表5に示すように、プロドラッグはCEM−CCRF、休止PBMCおよび活性化PBMCとのインキュベーション後、親化合物と比較して活性代謝物のレベルがそれぞれ76倍、290倍および140倍高かった。活性代謝物のレベルは、1μMのプロドラッグまたは100μMの親化合物とのインキュベーション後の細胞外の濃度を基準に較正した。
【0093】
【表5】

(実施例9)
プロドラッグおよび親化合物の抗HIV活性の比較。
「プロドラッグ」および「親化合物」という用語は実施例8に示す意味を持つ。
【0094】
MT−2細胞を、抗生物質および10%ウシ胎仔血清(FBS:fetal bovine serum)を補充したRPMI−1640培地で維持した。MT−2細胞にHIV−1 IIIBを感染多重度(moi:multiplicity of infection)0.01で感染させ、被検化合物の希釈系列を含む96ウェルプレートに20,000細胞/ウェルの密度で加えた。5日間のインキュベーション後、CellTiter−GloTM細胞生存率アッセイ(Promega,Madison,WI)を使用して、ウイルスによる細胞変性効果を判定し、ウイルス複製が十分に抑制されたサンプルのシグナルから未処理対照のシグナルを差し引いた値に対する割合で表した。ウイルスに誘発される細胞変性効果を50%阻害する各薬剤の濃度(EC50)は非線形回帰により決定した。野生型の対照ウイルスと同時に、NRTI耐性変異体に対する活性も判定し、EC50の倍率変化を算出した。
【0095】
Ficoll Paque Plus中で遠心分離によりドナーバフィーコートからヒト末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、20%FBS、抗生物質、インターロイキン−2(20単位/mL)およびフィトヘマグルチニンPHA−P(1μ/mL)を含むRPMI−1640培地で4〜5日間活性化した。活性化PBMCにHIV−1 BaLを3時間感染させ、洗浄し、96ウェルプレート(250,000細胞/ウェル)に播種し、希釈系列の被検化合物と5日間インキュベートし、この時点で細胞上清を集め、ウイルスの産生を、市販のHIV−1 p24 ELISA(Beckman Coulter,Miami,FL)により判定した。p24抗原の産生を50%阻害する各薬剤の濃度(EC50)は、回帰分析により決定した。
【0096】
MT−2およびHIV−1を感染させ刺激したPBMCにおいてプロモエティの添加が抗HIV活性に与える作用を評価した。表6に示すように、MT−2および活性化PBMCにおいてプロドラッグは、親化合物よりそれぞれ71倍、2,300倍作用が強かった。
【0097】
【表6】

(実施例10)
錠剤形態でビーグル犬に投与後の、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩の経口バイオアベイラビリティー
投与群は、実験に使ったことのある雄のビーグル犬3頭から構成された。用量の投与前一晩、および投与後最大4時間この動物を絶食させた。イヌには、プロドラッグのクエン酸塩41.38mgを含む錠剤1錠(1錠当たり30mgのプロドラッグを含む)を投与した。錠剤の組成は、重量比でプロドラッグのクエン酸塩13.79%、無水ラクトース66%、微結晶性セルロース15.21%、クロスカメロースナトリウム3.5%およびステアリン酸マグネシウム1.5%であった。血漿サンプルを、投与前(0時間)、および0.083時間、0.25時間、0.50時間、1.0時間、2.0時間、4.0時間、8.0時間、12時間、24時間に採取した。血液サンプルを、EDTA−Kを含むVacutainer(商標)チューブに集めた。血液サンプルを4℃で遠心して血漿を分離した。最初に100μlの各血漿サンプルのアリコートを、200nMの内部標準を含む300μlの80%アセトニトリル/水で希釈した。タンパク質沈殿物の遠心分離後、上清100μlを取り除き分析に使用した。プロドラッグを投与していない動物のイヌ血漿を用いて検量線および精度管理サンプルを作製した。サンプルは、ある程度性能が確認された、液体クロマトグラフィーと三連四重極質量分析法とを連結した方法より解析した。
【0098】
錠剤としてプロドラッグのクエン酸塩を投与すると、プロドラッグおよびプロドラッグ由来の親化合物が急速に吸収された。表7にまとめたように、投与後に血漿がプロドラッグおよび親化合物に曝露されることが観察された。未変化のプロドラッグの経口バイオアベイラビリティーは11.4%であった。こうした結果は、溶液製剤のプロドラッグの経口投与後に観察されるものと著しく異なるものではなく、プロドラッグおよびその代謝物を体循環に送達する、プロドラッグのクエン酸塩を含む錠剤の有効性を示すものである。
【0099】
【表7】

(実施例11)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩、マロン酸塩およびコハク酸塩の示差走査熱量測定(DSC)。
【0100】
示差走査熱量測定は、温度および材料中の熱転移に伴う熱流量を正確に測定する。エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの本発明の塩のDSCのトレースは、走査速度5℃ min−1でTA Instrument(New Castle,DE)DSC 2010を使用して作成した。図1は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのマロン酸塩の特徴的なDSCのトレースを示す。DSCサーモグラムから、マロン酸塩の融点(120.43℃、ΔH=73.72J/g)に相当する単一の吸熱、それに続くマロン酸塩の分解に相当する単一の発熱が明らかになった。
【0101】
図2は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのコハク酸塩の特徴的なDSCのトレースを示す。GS−9131のコハク酸塩のDSCサーモグラムから、融点(137.44℃、ΔH=66.18J/g)に相当する単一の吸熱、それに続くこの塩の分解に相当する単一の発熱が明らかになった。
【0102】
図3は、エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩の特徴的なDSCのトレースを示す。クエン酸塩のDSCサーモグラムから、クエン酸塩の融点(149.41℃、ΔH=85.72J/g)に相当する単一の吸熱、それに続く分解に相当する単一の発熱が明らかになった。
【0103】
クエン酸塩は、マロン酸塩およびコハク酸塩より融解熱が極めて大きく、固体の結晶化度の程度が高いことが示唆される。
【0104】
(実施例12)
エチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートのクエン酸塩、マロン酸塩およびコハク酸塩のX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)解析。
【0105】
2つの方法を用いてエチルN−[(S)({[(2R,5R)−5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]オキシ}メチル)フェノキシホスフィノイル]−L−アラニナートの本発明の塩のX線粉末回折(XRPD)パターンを作成した。最初の方法では、以下の特性を備えたShimadzu XRD6000装置を使用した:Cu X線管、2.2KW、NF(ノーマルフォーカス);グラファイト湾曲モノクロメーター;垂直ゴニオメーター、半径185mm;発散スリット:0.5°、1.0°、0.05mm;ソーラースリット:0.05°、1°、2°;受光スリット:0.15mm、0.3mm;シンチレーション検出器(NaI)HV500−1200。
【0106】
第2の方法では、以下の特性を備えたShimadzu XRD6000装置を使用した:CuターゲットX線管、35kv、電流40ma;連続走査、モノクロメーター、発散スリット、1°;ソーラースリット 1°、受光スリット 0.3mm。
【0107】
マロン酸塩およびコハク酸塩のXRPDデータは方法1により取得した。クエン酸塩のXRPDデータは方法2により取得した。
【0108】
当然のことながら、実験の偏差によりXRPD吸収バンド(ピーク)の情報が若干変化する場合がある。このため、本特許で報告される、本発明の塩のXRPDパターンから得られた数字は、試験の反復時に得られる数字と同一か、あるいは本質的に同一となる。この文脈において「本質的に同一」とは、典型的なピーク位置および強度のばらつきが考慮されることを意味する(ばらつきは通常どのような分析手法でも考慮されると考えられるため)。たとえば、当業者であれば、ピーク位置が装置間である程度ばらつきを示すことを理解するであろう。たとえば、2θのピーク位置は典型的には0.1°もずれる。さらに、当業者であれば、相対ピーク強度も結晶化度の程度、好ましい配向、調製サンプルの表面および当該技術分野において公知の他の要因によってばらつきを示すことを理解するであろう。したがって、相対ピーク強度は定性的指標に過ぎないとみなすべきである。
【0109】
図4は、マロン酸塩の特徴的なXRPDパターンを示す。このマロン酸塩の結晶形を決める主要な特徴的ピークを表8Aおよび8Bに示す。
【0110】
【表8A】

【0111】
【表8B】

図5は、コハク酸塩の特徴的なXRPDパターンを示す。このコハク酸塩の結晶形を決める主要な特徴的ピークを表9Aおよび9Bに示す。
【0112】
【表9A】

【0113】
【表9B】

図6は、クエン酸塩の特徴的なXRPDパターンを示す。このクエン酸塩の結晶形を決める主要な特徴的ピークを表10Aおよび10Bに示す。
【0114】
【表10A】

【0115】
【表10B】

上記に引用した文献および特許はすべて、参照によってその引用箇所を本明細書に明示的に援用する。上記に引用した著作物で具体的に引用したセクションまたはページは、参照によって個々に援用する。本発明は、当業者が以下の特許請求の範囲の主題を製造および使用できるよう十分詳細に記載されており、以下の特許請求の範囲にある種の変形を施すことも可能であるが、そうした変形も依然として本発明の範囲および精神内にあるも意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I
【化16】

のクエン酸塩またはその水和物。
【請求項2】
結晶であることを特徴とする、請求項1に記載の塩または水和物。
【請求項3】
4.48オングストローム、3.12オングストロームおよび6.05オングストロームと同一または本質的に同一である、X線粉末回折パターンから得られる面間隔スペクトル吸収バンドを特徴とする、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
19.81°、28.63°および14.64°と同一または本質的に同一である、X線粉末回折パターンから得られる回折角2θ吸収バンドを特徴とする、請求項2に記載の塩。
【請求項5】
部分的にまたは完全に水和されていることを特徴とする、請求項2に記載の水和物。
【請求項6】
無水または本質的に無水であることを特徴とする、請求項2に記載の塩。
【請求項7】
治療有効量の、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩または水和物および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項8】
追加の治療薬をさらに含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記追加の治療薬が抗HIV剤である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が単位剤形である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記単位剤形が錠剤である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
治療有効量の、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩または水和物を薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤と組み合わせて調製される、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩または水和物の使用であって、HIV感染を処置または予防的に阻止するための、使用。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩または水和物の使用であって、HIV感染を処置または予防的に阻止する薬物を製造するための、使用。
【請求項15】
前記塩または水和物が請求項7〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物の形態で存在する、請求項13〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
下記式II
【化17】

のコハク酸塩またはその水和物。
【請求項17】
結晶であることを特徴とする、請求項16に記載の塩または水和物。
【請求項18】
3.57オングストローム、4.80オングストロームおよび4.99オングストロームと同一または本質的に同一である、X線粉末回折パターンから得られる面間隔スペクトル吸収バンドを特徴とする、請求項17に記載の塩。
【請求項19】
24.91°、18.46°および17.76°と同一または本質的に同一である、X線粉末回折パターンから得られる回折角2θ吸収バンドを特徴とする、請求項17に記載の塩。
【請求項20】
治療有効量の、請求項16〜19のいずれか1項に記載の塩または水和物および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項21】
追加の活性成分をさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
治療有効量の、請求項16〜19のいずれか1項に記載の塩または水和物を薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤と組み合わせて調製される、医薬組成物。
【請求項23】
請求項16〜19のいずれか1項に記載の塩または水和物の使用であって、HIV感染を処置または予防的に阻止するための、使用。
【請求項24】
下記式III
【化18】

のマロン酸塩またはその水和物。
【請求項25】
結晶であることを特徴とする、請求項24に記載の塩または水和物。
【請求項26】
4.99、5.93および4.72オングストロームと同一または本質的に同一である、X線粉末回折パターンから得られる面間隔スペクトル吸収バンドを特徴とする、請求項25に記載の塩。
【請求項27】
17.76°、14.92°および18.80°と同一または本質的に同一である、X線粉末回折パターンから得られる回折角2θ吸収バンドを特徴とする、請求項25に記載の塩。
【請求項28】
治療有効量の、請求項24〜27のいずれか1項に記載の塩または水和物および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項29】
追加の活性成分をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
治療有効量の、請求項24〜27のいずれか1項に記載の塩または水和物を薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤と組み合わせて調製される、医薬組成物。
【請求項31】
請求項24〜27のいずれか1項に記載の塩または水和物の使用であって、HIV感染を処置または予防的に阻止するための、使用。
【請求項32】
特許請求の範囲に記載するような組成物または方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−527687(P2011−527687A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517525(P2011−517525)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/049838
【国際公開番号】WO2010/005986
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】