説明

I/O拡張回路

【課題】 汎用ロジックICのシフトレジスタを使ってI/Oポートを拡張すると共に、動作速度を向上させることができるI/O拡張回路を提供する。
【解決手段】 ワンチップマイコン1と汎用シフトレジスタIC2との間で連続出力モードを持つクロック同期方式を用いて、ワンチップマイコン1から汎用シフトレジスタIC2にシリアルデータ、同期クロック、ラッチタイミングの信号を送信し、汎用シフトレジスタIC2では、汎用ロジックICをカスケード接続した構成であり、受信した同期クロック、ラッチタイミングの信号に従って、シリアルデータを複数ビットのパラレルデータに変換するI/O拡張回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用ロジックIC(Integrated Circuit:集積回路)を使ってI/O(Input/Output:入出力)を拡張するI/O拡張回路に係り、特に、汎用ロジックICのシフトレジスタを用いても高速処理を可能とするI/O拡張回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
多くの制御信号を必要とする組み込みシステム等において、ワンチップマイコンが持つ汎用ポート出力端子だけでは不足となる場合がある。
そのような場合、専用のI/O拡張用ICも存在するが、コスト高になり、入手が困難といった不利な場合がある。
【0003】
そこで、汎用ロジックICのシフトレジスタ(例えば、テキサスインストルメント社製のSN74AHC595等)を用いれば、機能及びパッケージ互換品が複数存在し、入手が容易でコスト安で有利となる。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平07−064903号公報「直列データローディングポート拡張回路」(特許文献1)がある。
特許文献1には、直列データローディングポート拡張回路において、マイクロコンピュータから出力される直列データ信号をクロック信号に従って8ビット単位に並列データに変換するシフトレジスタと、8ビット並列出力をラッチするストレージラッチとを設け、その出力を2つのデコーダに分配し、バイナリコード、データ、クロックに割り当てて被制御装置にロードすることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−064903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、汎用ロジックICのシフトレジスタICを、ワンチップマイコンを使ってI/O拡張する場合、汎用ポート出力からソフト制御で操作することもできるが、動作速度の向上が難しいという問題点があった。
【0007】
尚、特許文献1では、3つのI/Oポート入力を32のポートに拡張する構成であるが、汎用ロジックICのシフトレジスタを使ってI/Oポートを拡張すると共に、動作速度を向上させるものとはなっていない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、汎用ロジックICのシフトレジスタを使ってI/Oポートを拡張すると共に、動作速度を向上させることができるI/O拡張回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、I/O拡張回路において、連続出力モードを持つクロック同期方式のシリアルインタフェースを備えるワンチップマイコンと、ワンチップマイコンから出力されるシリアルデータを複数ビットのパラレルデータに変換する汎用シフトレジスタICとを備え、ワンチップマイコンが、シリアルデータ、同期クロック、タイミング信号を汎用シフトレジスタICに出力し、汎用シフトレジスタICが、複数ビットのパラレルデータを出力する複数の汎用ロジックICがカスケード接続されており、各汎用ロジックICには同期クロックとタイミング信号が入力され、カスケード接続された一番目の汎用ロジックICにシリアルデータが入力され、各汎用ロジックICが、同期クロックとタイミング信号に従ってシリアルデータをラッチして複数ビットのパラレルデータとして出力すると共に、ラッチのタイミング前に入力されたシリアルデータを後段の汎用ロジックICに出力することを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記I/O拡張回路において、汎用ロジックICが、入力されたシリアルデータをラッチする複数のラッチ回路をカスケード接続しており、ラッチのタイミング前に入力されたシリアルデータを出力する端子を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記I/O拡張回路において、汎用シフトレジスタICにおけるラッチのタイミングが、シリアルデータが汎用ロジックIC内にある状態でラッチが為されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連続出力モードを持つクロック同期方式のシリアルインタフェースを備えるワンチップマイコンと、ワンチップマイコンから出力されるシリアルデータを複数ビットのパラレルデータに変換する汎用シフトレジスタICとを備え、ワンチップマイコンが、シリアルデータ、同期クロック、タイミング信号を汎用シフトレジスタICに出力し、汎用シフトレジスタICが、複数ビットのパラレルデータを出力する複数の汎用ロジックICがカスケード接続されており、各汎用ロジックICには同期クロックとタイミング信号が入力され、カスケード接続された一番目の汎用ロジックICにシリアルデータが入力され、各汎用ロジックICが、同期クロックとタイミング信号に従ってシリアルデータをラッチして複数ビットのパラレルデータとして出力すると共に、ラッチのタイミング前に入力されたシリアルデータを後段の汎用ロジックICに出力するI/O拡張回路としているので、汎用ロジックICのシフトレジスタを使ってI/Oポートを拡張すると共に、動作速度を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るI/O拡張回路の概略図である。
【図2】汎用シフトレジスタICの概略図である。
【図3】汎用ロジックICの概略図である。
【図4】シフトレジスタ制御タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るI/O拡張回路は、連続出力モードを持つクロック同期方式シリアルI/F(Interface)を備えるワンチップマイコンを用いることで、汎用ロジックICのシフトレジスタを利用して高速な処理を実現できると共に、更に、原理的に無制限の拡張を実現できるものである。
【0015】
クロック同期方式は、クロックに同期した送信用のシリアルデータを当該クロック(同期クロック)と共に送信し、受信側では、受信した同期クロックを用い、クロックの立ち上がりに同期して送信用のシリアルデータを取り込むようになっている。
尚、シリアルデータの送信時は、同期クロックの立ち下りから次の立ち上がりまで出力する。
【0016】
また、連続出力モードは、送信側で連続的なシリアルデータと、それに対応する同期クロック、タイミング信号を送信すると、受信側で受信した同期クロックとタイミング信号に従って連続的なシリアルデータを連続受信できるモードである。
【0017】
[I/O拡張回路:図1]
本発明の実施の形態に係るI/O拡張回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るI/O拡張回路の概略図である。
本発明の実施の形態に係るI/O拡張回路(本回路)は、図1に示すように、ワンチップマイコン1と、汎用シフトレジスタIC2とを有している。
【0018】
ワンチップマイコン1は、連続送信可能なクロック同期方式のシリアル通信I/Fを備えたプロセッサである。
ワンチップマイコン1は、汎用シフトレジスタIC2に対して同期クロック(SCK0:クロック同期シリアルI/Fクロック出力)、シリアルデータ(TXD0:クロック同期シリアルI/Fデータ出力)、タイミング信号(SREG_LE:汎用ポート出力)、リセット信号(RESET)を出力する。
【0019】
汎用シフトレジスタIC2は、ワンチップマイコン1からの信号を入力し、後述するように、複数の汎用ロジックICをカスケード接続して複数bitに対応するI/O拡張を実現している。
【0020】
[汎用シフトレジスタIC2の概略:図2]
次に、汎用シフトレジスタIC2の概略について図2を参照しながら説明する。図2は、汎用シフトレジスタICの概略図である。
汎用シフトレジスタICは、図2に示すように、4つの汎用ロジックIC2a,2b,2c,2dを有している。
【0021】
ワンチップマイコン1からの同期クロック(SCK0)、タイミング信号(SREG_LE)、リセット信号(RESET)は、各汎用ロジックIC2a〜2dに入力されるが、シリアルデータ(TXD0)は、一番目の汎用ロジックIC2aに入力され、汎用ロジックIC2aからの出力の一部は汎用ロジックIC2bに入力され、汎用ロジックIC2bからの出力の一部は汎用ロジックIC2cに入力され、汎用ロジックIC2cからの出力の一部は汎用ロジックIC2dに入力されるようになっている。
【0022】
ここで、汎用ロジックICからの出力の一部とは、各汎用ロジックIC内でシリアルデータがラッチされずにスルーして出力されるデータを示している。
また、上記出力の一部以外の汎用ロジックICからの出力は、当該汎用ロジックICでラッチされたデータ(8bitデータ)となる。
【0023】
つまり、汎用シフトレジスタIC2は、複数の汎用ロジックICの出力の一部をカスケード接続したものである。
図2では、汎用ロジックICを4つ用いて4フレーム32bit出力を実現しているが、必要に応じてカスケード接続の汎用ロジックICを任意の数にすることで、任意のフレーム出力を実現できる。
また、8bit単位での出力であるが、シリアルデータの中に使用しないデータを含め、汎用ロジックICから使用しないデータを選択しないようにすれば、8の倍数ではなく、任意のビット数にすることができる。
【0024】
[汎用ロジックIC:図3]
次に、汎用シフトレジスタIC2を構成する汎用ロジックICについて図3を参照しながら説明する。図3は、汎用ロジックICの概略図である。尚、図3は、一番目の汎用ロジックIC2aを示している。
汎用ロジックIC2aは、図3に示すように、ワンチップマイコン1のタイミング信号(SREG_LE)がRCLK端子に、リセット信号(RESET)が反転SRCLR端子に、同期クロック(SCK0)がSRCLK端子に、シリアルデータ(TXD0)がSER端子に入力される。
【0025】
また、3.3Vの電圧がVCC端子に印加され、反転OE端子とGND端子が接地されている。
そして、QA端子からデータD31(MSB:Most Significant bit:最上位ビット)が、QB端子からデータD30が、QC端子からデータD29が、QD端子からデータD28が、QE端子からデータD27が、QF端子からデータD26が、QG端子からデータD25が、QH端子からデータD24が出力され、QH´端子からの出力が次の段(第2番目)の汎用ロジックIC2bのSER端子に入力される。
【0026】
汎用ロジックICの内部構成は、複数のラッチ回路が設けられ、それらラッチ回路がカスケード接続されてシフトレジスタを構成している。
そして、入力されたシリアルデータは、各ラッチ回路をシフトしながら、ラッチタイミングでシリアルデータがラッチされるとQA〜QH端子で8bitデータが出力され、ラッチされなかったシリアルデータは、QH´端子から次段の汎用ロジックICのSER端子に出力される。
【0027】
[汎用ロジックICの動作]
汎用ロジックICは、SRCLK端子に同期クロック(SCK0)が入力されると、当該クロックが基準クロックとなってIC内で動作し、SER端子に入力されるシリアルデータ(TXD0)をRCLK端子に入力されるタイミング信号(SREG_LE)でラッチし、基準クロックでサンプリングして複数bit(図3では32bit)のパラレルデータを出力する。
【0028】
[汎用シフトレジスタ制御タイミング:図4]
汎用シフトレジスタIC2における制御について図4を参照しながら説明する。図4は、シフトレジスタ制御タイミングチャートである。
図4に示すように、同期クロック(SCK0)が4バイト(32bit)連続送信され、その同期クロックに対応するシリアルデータ(TXD0)とタイミング信号(SREG_LE)が送信される。
【0029】
汎用シフトレジスタIC2における各汎用ロジックIC2a〜2dに同期クロックとタイミング信号が入力されると共に、汎用ロジックIC2aにシリアルデータが入力される。
【0030】
図4では、送信用のシリアルデータは32bitでLSB(Least Significant bit:最下位ビット)ファーストでMSBラストで送信される。
また、有効データ送信開始前に汎用ポート出力(SREG_LE)を「L」(Low)に変化させ、データ送出後に「H」(High)に戻すようにし、「L」の区間でシリアルデータをラッチするタイミングとするものである。
【0031】
連続出力モードが可能なクロック同期式シリアルI/Fを有するワンチップマイコンとしては、例えばルネサスエレクトロニクス社製のH8/300H Tinyシリーズ、H8SX/1600シリーズなどがある。
H8SX/1635シリーズワンチップマイコンを内蔵周辺モジュールクロック20MHzで動作させた場合には、最高2.5Mbit/sのビットレートで汎用シフトレジスタICへのシリアルデータ出力が可能となり、更に動作クロックの速いワンチップマイコンを用いれば、汎用シフトレジスタICが動作可能な最高クロック速度(SN74AHC595を電源電圧+3.3V、負荷容量50pFで使用した場合で最高50MHz)に更に近いデータレートでのシリアルデータ出力へと動作速度を高速化することが可能となる。
【0032】
[実施の形態の効果]
本回路によれば、ワンチップマイコン1と汎用シフトレジスタIC2との間で連続出力モードを持つクロック同期方式を用いて、ワンチップマイコン1から汎用シフトレジスタIC2にシリアルデータ、同期クロック、ラッチタイミングの信号を送信し、汎用シフトレジスタIC2では、汎用ロジックICをカスケード接続した構成であり、受信した同期クロック、ラッチタイミングの信号に従って、シリアルデータを複数ビットに変換するものであり、汎用ロジックICのシフトレジスタを使ってI/Oポートを拡張すると共に、動作速度を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、汎用ロジックICのシフトレジスタを使ってI/Oポートを拡張すると共に、動作速度を向上させることができるI/O拡張回路に好適である。
【符号の説明】
【0034】
1…ワンチップマイコン、 2…汎用シフトレジスタIC、 2a,2b,3c,2d…汎用ロジックIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続出力モードを持つクロック同期方式のシリアルインタフェースを備えるワンチップマイコンと、
前記ワンチップマイコンから出力されるシリアルデータを複数ビットのパラレルデータに変換する汎用シフトレジスタICとを備え、
前記ワンチップマイコンは、シリアルデータ、同期クロック、タイミング信号を前記汎用シフトレジスタICに出力し、
前記汎用シフトレジスタICは、複数ビットのパラレルデータを出力する複数の汎用ロジックICがカスケード接続されており、前記各汎用ロジックICには前記同期クロックと前記タイミング信号が入力され、前記カスケード接続された一番目の汎用ロジックICに前記シリアルデータが入力され、
前記各汎用ロジックICは、前記同期クロックと前記タイミング信号に従って前記シリアルデータをラッチして複数ビットのパラレルデータとして出力すると共に、ラッチのタイミング前に入力されたシリアルデータを後段の汎用ロジックICに出力することを特徴とするI/O拡張回路。
【請求項2】
汎用ロジックICは、入力されたシリアルデータをラッチする複数のラッチ回路をカスケード接続しており、ラッチのタイミング前に入力されたシリアルデータを出力する端子を備えていることを特徴とする請求項1記載のI/O拡張回路。
【請求項3】
汎用シフトレジスタICにおけるラッチのタイミングは、シリアルデータが汎用ロジックIC内にある状態でラッチが為されることを特徴とする請求項1又は2記載のI/O拡張回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−197981(P2011−197981A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63494(P2010−63494)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】