説明

ICカードリーダ

【課題】ケース内にICカードを上から載置状にセットするものにあって、ICカードの接触電極やリーダ側のコンタクトの表面の汚れに起因する接触不良を防止する。
【解決手段】ロアケース18のカード収容部14に、ETCカード13を、セット位置と、接触電極13aがコンタクト24aに接触する使用位置との間でスライド移動可能に収容する。押圧部材20を有するアッパケース19、アッパケース19を閉塞状態にロックするロック部材22、押圧ピン35等を設ける。ユーザがETCカード13をセット位置に載置し、アッパケース19を閉塞し、ロック部材22をロック位置に回動すると、押圧ピン35がETCカード13を使用位置にスライド移動させ、その際に、接触電極13aとコンタクト24aとが摺動し、相互の表面の汚れを払拭する自浄作用が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触型のICカードが着脱可能に装着され、該ICカードの情報を読取るICカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路等の有料道路の料金所ゲートに設置されたETC路側機と、車両に搭載されたETC車載器との間での、路車間通信によって自動的に通行料金を決済し、車両が停止することなく料金所を通過できるようにしたETC(Electronic Toll Collection)システムが普及してきている。前記ETC車載器は、ユーザが所有する料金決済機能を有したETCカードがセットされることにより、使用可能となる。
【0003】
周知のように、ETCカードは、接触型のICカードからなり、そのICチップのメモリ内には、契約情報(ID情報、契約者情報、クレジット情報等)が記憶されている。ETC車載器は、ETCカードから契約情報を読取り、また使用履歴情報等を書込むICカードリーダ(ICカードリーダライタ)としての機能を備えている。この場合、一般に、四輪車用のETC車載器は、ETCカードをスリットから差込んでセットするスライド挿入式のカードコネクタを備えているものが多い。これに対し、二輪車用のETC車載器は、蓋を有する防水(密閉)構造のケース内に、ETCカードを載置してセットする構成を備えているものが多い(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図4(a)〜(c)は、従来の一般的な二輪車用のETC車載器1の構成を示している。即ち、上面が開口した薄型矩形箱状をなすケース部2には、カバー部(蓋)3がヒンジ3aを介して開閉可能に設けられている。このカバー部3の内面には、弾性シート4が設けられている。さらに、ケース部2には、前記ヒンジ3aとは反対側に位置して、カバー部3を閉じた状態で保持するためのバックル5が設けられている。
【0005】
前記ケース部2内には、コンタクト6を有する回路基板7が設けられ、回路基板7の上部に、ETCカード8が載置される載置部が設けられている。このとき、ケース部2の周囲の側壁が、ETCカード8の位置を規制する包囲壁とされている。尚、図示はしないが、ケース部2内の回路基板7には、ETCカード8の読み書きを行うカード処理回路、全体を制御する制御回路、アンテナを介してETC路側機と無線通信を行う無線通信部なども設けられている。
【0006】
これにて、ETC車載器1にETCカード8をセットする作業は次のように行われる。まず、図4(a)に示すように、カバー部3を開放した状態で、ケース部2内の載置部に対し、上方からETCカード8を載置する。このとき、ETCカード8は、表面(接触電極8aを有する面)を下側にして、コンタクト6上に接触電極8aが位置するように載置される。次に、図4(b)に示すように、カバー部3を閉塞することにより、弾性シート4がETCカード8を下方に押圧して、接触電極8aをコンタクト6に接触させると共に、必要な接圧が得られる。そして、図4(c)に示すように、バックル5によって、カバー部3を閉塞状態にロックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したような接触型のICカード(ETCカード8)を読取るICカードリーダ(ETC車載器1)にあっては、ICカードの接触電極の表面や、リーダ側のコンタクトの表面に、金属酸化層が生じたり、埃や油塵等の汚れが付着していたりすると、それら接触電極とコンタクトとの間の接触不良が生じ、電気的な接続が正しくなされなくなる虞がある。
【0009】
この場合、スライド挿入式のカードコネクタにあっては、ICカードのセット時や取出し時に、ICカードの接触電極とリーダ側のコンタクトとが、相互間で摺動することによって、それらの表面の汚れを払拭する作用(いわゆる自浄機能)が得られる。ところが、上記したETC車載器1のような、ケース内にICカードを上から載置状にセットするタイプのものにあっては、そのような自浄機能が得られない事情があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ケース内にICカードを上から載置状にセットするものにあって、ICカードの接触電極やリーダ側のコンタクトの表面の汚れに起因する接触不良を効果的に防止することができるICカードリーダを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のICカードリーダは、ケース内にICカードを上から載置状にセットするものであって、上面に開口部を有すると共に、その開口部の内側に、ICカードがその接触電極を下向きにして載置されるセット位置と、そのセット位置から該ICカードの長手方向にずれた使用位置との間で、前記ICカードをスライド移動可能に収容するカード収容部を有するロアケースと、前記ロアケース内に設けられ、前記ICカードの使用位置にて該ICカードの各接触電極と接触するコンタクトと、前記ロアケースの開口部を開閉可能に閉塞し、閉塞状態で前記ICカードに対し、前記接触電極を前記コンタクトに接触させる接触圧力を付与する押圧部材を備えるアッパケースと、前記アッパケースを前記ロアケースに対して閉塞状態にロックするもので、ロック位置とロック解除位置との間で操作可能に設けられたロック部材と、前記ロック部材がロック解除位置からロック位置に操作されることに連動して、前記ICカードを前記セット位置から使用位置にスライド移動させる移動手段とを具備するところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0012】
上記構成によれば、ICカードをセットするにあたっては、まず、アッパケースを開放状態にしたロアケースに対し、ICカードを、カード収容部のセット位置に載置する。次いで、アッパケースを閉塞することにより、押圧部材が、ICカードに対してコンタクト側への押圧力を付与するようになり、その後、ロック部材を、ロック解除位置からロック位置に操作することにより、アッパケースが閉塞状態にロックされる。
【0013】
このロック部材の操作に伴い、移動手段により、ICカードは、押圧部材による押え付け力を受けた状態で、セット位置から使用位置までスライド移動し、使用位置でその接触電極がコンタクトと接触するようになる。このときのICカードのスライド移動により、ICカードの接触電極の表面と、コンタクトの表面とが相互間で摺動するようになり、もって、それら表面の汚れを払拭する作用(自浄機能)が得られる。従って、ICカードの接触電極やリーダ側のコンタクトの表面の汚れに起因する接触不良を効果的に防止することができる。尚、上記スライド移動の移動量としては、数mm程度の微量であっても十分な効果が得られる。
【0014】
本発明においては、上記移動手段を、ロアケースにカード収容部に対して出没方向に移動可能に支持され、ICカードの縁部を使用位置側に押圧する押圧ピンを備え、前記押圧ピンが、ロック部材のロック位置への操作によってカード収容部内に突出して前記ICカードをスライド移動させるように構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、移動手段を比較的簡単な構成で済ませながら、ICカードを確実にスライド移動させることができる。
【0015】
また、上記アッパケースに、使用位置においてICカードの移動を規制する位置決め部を設けることもできる(請求項3の発明)。これによれば、使用中に振動等を受けるようなことがあっても、位置決め部によって、使用位置のICカードがずれ動くことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、ETCカードを載置した状態(a)及びアッパケースを閉じてロックした状態(b)を示すETC車載器の縦断正面図
【図2】アッパケースを開いた状態のETC車載器の斜視図
【図3】ETC車載器の電気的構成を示すブロック図
【図4】従来例を示すもので、ETCカードを載置した状態(a)、カバー部を閉じた状態(b)、カバー部をロックした状態(c)を示すETC車載器の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、二輪車のハンドル等に取付けられる二輪車用のETC車載器に適用した一実施例について、図1ないし図3を参照しながら説明する。図1及び図2は、本実施例に係るICカードリーダとしてのETC車載器11の構成を概略的に示している。このETC車載器11は、やや横長な薄型矩形箱状をなすケース(筐体)12内に、ETCカード13が出し入れ可能に収容されるカード収容部14を備えると共に、後述するカード処理回路15(図3参照)等の各種回路を備えて構成される。尚、本実施例では、前後左右といった方向をいう場合には、便宜上、ケース12の長手方向、即ち矢印B及び矢印A方向を左右方向(後述するヒンジのある側を右)として説明する。
【0018】
前記ETCカード13は、周知のように、接触型のICカードからなり、ICチップを内蔵したプラスチック製のカードの表面の所定位置(表面の左上部寄り位置)に、例えば合計6個(或いは8個)の接触電極13aを有して構成されている。前記接触電極13aは、縦に3列(或いは4列)、横に2列に並んで設けられている。このETCカード13(ICチップ)は、図3に示すように、マイコン(CPU)を主体とした制御部16や、フラッシュメモリ等からなる記憶部17を備えている。記憶部17には、契約情報(ID情報や利用者情報、クレジット機能に関する情報)が予め記録されていると共に、利用履歴情報(通過したETCゲートの情報)等が書き込まれる。
【0019】
図1及び図2に示すように、前記ケース12は、上面が開口したロアケース18と、このロアケース18の上面開口部を開閉可能に塞ぐアッパケース19とから構成されている。前記アッパケース19は、ロアケース18の図で右側の側壁部に対し、ヒンジ部19aを介して回動可能に設けられている。アッパケース19の閉塞状態(図1(b)参照)では、図示しないパッキンなどによって、ロアケース18とアッパケース19との間が密閉(防水)構造とされるようになっている。アッパケース19の開放状態(図2参照)では、カード収容部14に対するETCカード13の出し入れ(着脱)が可能となる。
【0020】
このとき、前記アッパケース19の内面(下面)側には、先端側(左側)寄りの部位に位置して、押圧部材20が設けられている。この押圧部材20は、例えばゴムやスポンジ材などの軟質材料(弾性材料)から四角い板状に構成され、後述するように、ETCカード13を下方に弾性的に押圧することにより、接触電極13aをコンタクトに接触させる接触圧力を付与させるようになっている。さらに、アッパケース19の内面(下面)には、基端側(右端側)に位置して、断面三角形状をなす位置決め部21が突出するように設けられている。これも後述するように、この位置決め部21は、使用位置におけるETCカード13の移動を規制する機能を有している。
【0021】
また、前記ロアケース18の図で左側の側壁部18aには、ロック部材22が設けられている。このロック部材22は、正面ほぼL字型の板状をなし、その下端が、ロアケース18の左側の側壁部18aにヒンジ22aを介して回動可能に取付けられている。詳しく図示はしていないが、ロック部材22の先端には係止爪部が設けられていると共に、アッパケース19の左辺部上面のそれに対応する位置には、前記係止爪部が係止される係止凹部が設けられている。
【0022】
これにて、ロック部材22は、図1(a)及び図2に示すような、左方に開いてアッパケース19に作用しない状態のロック解除位置と、図1(b)に示すような、右方に回動して先端部(係止爪部)が閉塞状態のアッパケース19の左辺部(係止凹部)に係止するロック位置との間で操作可能とされている。このロック部材22のロック位置においては、前記アッパケース19がロアケース18に対して閉塞状態にロックされる。
【0023】
前記ロアケース18内には、回路基板23が該ロアケース18の底壁と平行になるように設けられ、その回路基板23の上部側(ロアケース18の開口部の内側)が、ETCカード13が開口部を通して裏向きで(接触電極13aを有する面を下向きにして)載置されるカード収容部14とされている。前記回路基板23の上面には、前記ETCカード13の使用位置(後述)において、前記各接触電極13aに接触(電気的接続)する6個(或いは8個)のコンタクト24aを有するカードコンタクト部24が設けられている。
【0024】
本実施例では、前記カード収容部14は、ETCカード13をセット位置と使用位置との間でスライド移動可能に収容するようになっている。また、ロアケース18には、ETCカード13をセット位置から使用位置までスライド移動させる移動手段が設けられている。これらカード収容部14及び移動手段の詳細な構造は後述する。また、図3にのみ図示するように、ロアケース18内(回路基板23)には、マイコン等からなり全体を制御する制御回路25を備えると共に、この制御回路25に接続された、前記カード処理回路15、無線通信部26、電源部27、記憶部28、表示部29を備えている。
【0025】
前記カード処理回路15は、前記カードコンタクト部24を介して前記ETCカード13に対するデータの読取り及び書込みを行うようになっている。前記無線通信部26は、前記アンテナ26aを介してETC路側機(図示せず)と無線通信を行う。前記電源部27は、二輪車のACCオン時に車載バッテリ30からケーブル31を介して電源が供給されるようになっており、所定の直流電圧を生成して各部に給電する。前記記憶部28は、例えばフラッシュメモリ等からなり、車両情報等の予め登録されたデータが記憶されると共に、課金処理に必要な各種のデータが記憶される。前記表示部29は、例えばETC路側機との通信が正常に行われたかどうか等をLEDの点灯により表示する。
【0026】
また、前記制御回路25は、例えばETC車載器11の電源がオンされたときに、前記ETCカード13のセットの有無を確認し、カードコンタクト部24にETCカード13が正しく電気的に接続されている状態で、ETC車載器11とETCカード13との間で互いに正規の相手であるかを確認する相互認証動作を実行する。認証が正しく行われた場合に、ETCカード13に対するアクセスが可能な活性化状態となって、ETCシステムの利用(ETC路側機との間の通信)が可能となる。
【0027】
さて、前記カード収容部14及び移動手段の構成について、図1及び図2を参照しながら詳述する。前記カード収容部14は、ロアケース18の左側壁部18aと、ロアケース18の前後の壁部と、ロアケース18の内部に前後方向に延びて設けられた可動壁32とで囲まれた領域に構成される。ロアケース18の前後の壁部間の幅寸法は、ETCカード13の縦方向(前後方向)の幅寸法にほぼ合致する。
【0028】
前記可動壁32は、その上端に、左右両側に下降傾斜する山形の傾斜面を有した板状に構成され、ロアケース18の前後の壁部間に位置して、図で左右方向にスライド移動可能に設けられる。これと共に、可動壁32は、ロアケース18の右側壁部との間に設けられたばね33により図で左方(矢印B方向)に付勢されている。ロアケース18内には、回路基板23の右側に位置して、ストッパ34が設けられている。ストッパ34の上面は、カード収用部14に臨み、ETCカード13が載置される載置面とされている。
【0029】
これにより、可動壁32は、通常時には、図1(a)及び図2に示すように、ばね33の付勢力により、ストッパ34に当接した通常位置に位置される。この通常位置にある可動壁32と、ロアケース18の左側壁部18aとの間の寸法は、ETCカード13の長手方向、即ち横(左右)方向の寸法にほぼ合致する。従って、図1(a)に示すように、可動壁32が通常位置にある状態で、ETCカード13がカード収容部14内にほぼ密に嵌まり込む形態で載置され、この位置がセット位置とされる。
【0030】
そして、可動壁32は、後述するようにETCカード13が図で右方(矢印A方向)にスライド移動されることに伴い、ばね33の付勢力に抗して図で右方に変位可能とされる。このとき、図1(b)に示すように、可動壁32の上端が、閉塞状態のアッパケース19に設けられた前記位置決め部21に当接することにより、右方へのそれ以上の移動が規制される。このときのETCカード13の停止位置が使用位置とされる。
【0031】
これにて、カード収容部14は、ETCカード13をセット位置(図1(a)参照)と使用位置(図1(b)参照)との間でスライド移動可能に収容するのである。尚、このETCカード13のセット位置から使用位置への矢印A方向のスライド移動は、アッパケース19の閉塞状態で行われる。このとき、押圧部材20により、ETCカード13は、下方(接触電極13aをコンタクト24aに接触させる方向)に押圧力が付与された状態で、スライド移動される。
【0032】
一方、ロアケース18の左側壁部18aには、ETCカード13が載置される高さに位置して、図で左右に貫通する貫通孔18bが形成されていると共に、この貫通孔18b内に、ETCカード13の側縁部を右方に押圧するための押圧ピン35が移動自在に挿通されている。この押圧ピン35は、コイルばね36により通常時は左方に付勢されており、図1(a)及び図2に示すように、前記ロック部材22がロック解除位置にあるときには、押圧ピン35の基端側(左端側)が左側壁部18aから左方に突出している。このとき、押圧ピン35の先端側(右端側)はカード収容部14から引っ込んでいる。
【0033】
これに対し、ロック部材22がロック位置に回動されると、図1(b)に示すように、押圧ピン35が、該ロック部材22によりコイルばね36のばね力に抗して図で右方に押圧され、先端側がカード収容部14内に突出する。これにより、カード収容部14内のセット位置に位置されていたETCカード13が押圧ピン35によって右方(矢印A方向)に押圧され、使用位置にスライド移動されるようになっている。従って、押圧ピン35等から、ETCカード13をセット位置から使用位置までスライド移動させる移動手段が構成されている。
【0034】
次に、上記構成の作用について述べる。ユーザがETC車載器11にETCカード13をセットするにあたっては、まず、図2に示すように、ロック部材22をロック解除位置に位置させた状態で、アッパケース19を開放状態とさせる。この状態では、ロアケース18において、可動壁32が通常位置にあると共に、押圧ピン35の先端はカード収容部14内に突出することなく左側壁部18a内に引込んでいる。ユーザは、ETCカード13を裏向き(接触電極13aのある面を下向き)にしてロアケース18のカード収容部14に載置するのであるが、このとき、図1(a)に示すように、ETCカード13は、必然的にセット位置に載置される。
【0035】
次いで、ユーザは、アッパケース19を閉塞させる。これにより、アッパケース19の裏面に設けられた押圧部材20が、ETCカード13に対し、下方への押圧力を付与するようになる。また、アッパケース19の裏面の位置決め部21が可動壁32の右方に位置されるようになる。引続き、ユーザは、ロック部材22をロック位置に回動操作し、アッパケース19を閉塞状態にロックさせる。
【0036】
すると、押圧ピン35が右方に変位し、その先端が、セット位置のETCカード13の左側縁に当接し、右方(矢印A方向)に押圧する。これにて、図1(b)に示すように、ETCカード13は、押圧部材20よる下方への押え付け力を受けたままの状態で、セット位置から使用位置までスライド移動する。このETCカード13の使用位置においては、各接触電極13aが、カードコンタクト部24の各コンタクト24aと接触するようになる。この場合、可動壁32が位置決め部22に接触する位置決め効果によって、例えば二輪車の走行時における、ケース12に対するETCカード13(可動壁32)のがたつきなどが効果的に防止される。
【0037】
尚、ETC車載器11(ケース12)から、ETCカード13を取出す場合には、上記とは逆に、ユーザは、まず、ロック部材22をロック位置からロック解除位置に回動操作する。すると、押圧ピン35がコイルばね36のばね力によって、左方(矢印B方向)に変位する。これと共に、可動壁32がばね33のばね力により通常位置に戻り、ETCカード13もセット位置にスライド移動する。この後、ユーザがアッパケース19を開放させることにより、セット位置にあるETCカード13を取出すことができる。
【0038】
ここで、接触型のICカードであるETCカード13を読取るETC車載器11にあっては、ETCカード13の接触電極13aの表面や、ETC車載器11のコンタクト24aの表面に、金属酸化層が生じたり、埃や油塵等の汚れが付着することがある。このような金属酸化層や埃や油塵等の汚れの付着をそのままにしておくと、接触電極13aとコンタクト24aの間の接触不良が生じ、ひいては、例えば料金所で正常な課金処理が行われず、ゲートのバーが開かない等の不具合を招く虞がある。
【0039】
ところが、本実施例のETC車載器11においては、ケース12(カード収容部14)にETCカード13をセットする際(あるいは取出す際)に、ETCカード13が、押圧部材20による押え付け力を受けた状態で、セット位置から使用位置までスライド移動する構成とした。このときのETCカード13のスライド移動により、ETCカード13の接触電極13aの表面と、コンタクト24aの表面とが相互間で摺動するようになり、もって、それら表面の汚れを払拭する作用(自浄機能)が得られるのである。
【0040】
このように本実施例のETC車載器11によれば、ケース12内(カード収容部14)にETCカード13を上から載置状にセットするものにあって、ETCカード13のセット時に、押圧部材20による押え付け力を受けた状態で、セット位置から使用位置までスライド移動するように構成したので、ETCカード13の接触電極13aやETC車載器11のコンタクト24aの表面の汚れに起因する接触不良を効果的に防止することができる。尚、このときのETCカード13のスライド移動の移動量としては、数mm程度の微量であっても十分な自浄効果が得られる。
【0041】
また、特に本実施例では、ETCカード13をスライド移動させるための移動手段を、ロック部材22のロック位置への回動操作によってカード収容部14内に突出してETCカード13をスライド移動させる押圧ピン35等から構成したので、移動手段を比較的簡単な構成で済ませることができる。更に、本実施例では、アッパケース19に、使用位置のETCカード13の移動を規制する位置決め部22を設けたので、使用中に振動等を受けるようなことがあっても、ETCカード13のがたつき(ずれ動き)等を効果的に防止することができる。
【0042】
尚、上記実施例では、押圧ピン35等から移動手段を構成するようにしたが、例えば、複数本の押圧ピンを用いたり、板状の部材を用いてICカードをスライド移動させるように構成しても良く、また、ロック部材にICカードを押圧する部分を一体的に設けるようにしても良い。ロック部材を回動でなくスライド移動させるようなロック構造を採用することも可能である。更には、ケース全体の構成としても、長辺側にアッパケースを支持するヒンジを設けるなど、様々な変更が可能である。
【0043】
その他、上記実施例では、ETCシステムに用いられる二輪車用のETC車載器を具体例としてあげたが、それ以外にも、例えば駐車場の駐車料金を、路側機と、クレジットカードをセットした車載器との間での通信により自動で精算するシステムなど、各種システムに用いられるICカードリーダに本発明を適用することができる等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0044】
図面中、11はETC車載器(ICカードリーダ)、13はETCカード(ICカード)、13aは接触電極、14はカード収容部、15はカード処理回路、18はロアケース、18aは左側壁部、18bは貫通孔、19はアッパケース、20は押圧部材、21は位置決め部、22はロック部材、23は回路基板、24aはコンタクト、32は可動壁、33はばね、34はストッパ、35は押圧ピン、36はコイルばねを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触型のICカードが着脱可能に装着され、該ICカードの情報を読取るICカードリーダであって、
上面に開口部を有すると共に、その開口部の内側に、ICカードがその接触電極を下向きにして載置されるセット位置と、そのセット位置から該ICカードの長手方向にずれた使用位置との間で、前記ICカードをスライド移動可能に収容するカード収容部を有するロアケースと、
前記ロアケース内に設けられ、前記ICカードの使用位置にて該ICカードの各接触電極と接触するコンタクトと、
前記ロアケースの開口部を開閉可能に閉塞し、閉塞状態で前記ICカードに対し、前記接触電極を前記コンタクトに接触させる接触圧力を付与する押圧部材を備えるアッパケースと、
前記アッパケースを前記ロアケースに対して閉塞状態にロックするもので、ロック位置とロック解除位置との間で操作可能に設けられたロック部材と、
前記ロック部材がロック解除位置からロック位置に操作されることに連動して、前記ICカードを前記セット位置から使用位置にスライド移動させる移動手段とを具備することを特徴とするICカードリーダ。
【請求項2】
前記移動手段は、前記ロアケースに前記カード収容部に対して出没方向に移動可能に支持され、前記ICカードの縁部を使用位置側に押圧する押圧ピンを備え、前記押圧ピンは、前記ロック部材のロック位置への操作によって前記カード収容部内に突出して前記ICカードをスライド移動させることを特徴とする請求項1記載のICカードリーダ。
【請求項3】
前記アッパケースには、前記使用位置において前記ICカードの移動を規制する位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のICカードリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−88769(P2012−88769A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232501(P2010−232501)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】