説明

ICカード式の現場操作器

【課題】 現場機器を現場で操作する現場操作器を小型化する。
【解決手段】 現場操作器受信部4と、カードリーダー側アンテナコイル5と、外部ケーブル端子台6と、外線ケーブル9とを備えるカードリーダー式現場操作器3で、現場操作器受信部4に非接触式ICカード13をかざすと、ICカード側アンテナコイル14とカードリーダー側アンテナコイル5が電磁的に結合して、ICカード13内に組み込まれたICチップ15に記憶された現場制御権利情報を、カードリーダー式現場操作器3に受信する。カードリーダー式現場操作器3に受信された現場制御権利情報は、外部ケーブル端子台6と外線ケーブル9を介し、制御室23内に設置された中央制御装置10の入出力装置に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラントを構成する現場機器を現場で操作する現場操作器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントは、遠く離れた現場に点在する多数の現場機器の運転状態を中央制御装置で監視し、各現場機器を中央制御装置から遠隔制御することが行われている。
現場機器は、通常、中央制御装置で遠隔制御するが、試験・点検等の現場で周囲状況を確認しながら作業する場合、現場操作器で制御する。
従来の現場操作器は、現場機器と中央制御装置との間に接続され、現場機器の運転制御を中央制御から現場制御に切換えるスイッチ、(起動/停止の)操作指令を入力するスイッチ、運転状態を表示する表示燈などの各種器具が実装された(例えば、特許文献1を参照)。
また、特許文献2のように、現場に設置された現場機器に対して、可搬式現場操作盤をプラグで接続して、現場機器を操作する現場操作器も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−236605号公報(第2図、第3図)
【特許文献2】特開平8−234834号公報(第3〜4頁、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の従来技術にある現場操作器は、運転制御の切換スイッチ、操作指令の入力スイッチ等の多くのスイッチが実装されるため、現場操作器の盤サイズが大きくなり、広い据え付け場所が必要で、狭隘な場所での設置が困難になる問題点があった。
【0005】
この発明は、現場操作器の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る現場操作器は、非接触式ICカードと電磁的に結合して信号を受信する受信回路と、この受信回路が受信する信号を中央制御装置に伝達する伝達回路を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る現場操作器は、非接触式ICカードと電磁的に結合して信号を受信する受信回路と、この受信回路が受信する信号を中央制御装置に伝達する伝達回路を備えることで、従来技術のように多くのスイッチを実装する必要がなくなり、小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1を示すICカード式の現場操作器の全体構成図。
【図2】この発明の実施の形態1を示す現場機器の運転制御方法の説明図。
【図3】この発明の実施の形態2を示す非接触式ICカードの構成図。
【図4】この発明の実施の形態3を示すICカード式の現場操作器の全体構成図。
【図5】この発明の実施の形態4を示すICカード式の現場操作器の全体構成図。
【図6】この発明の実施の形態5を示すICカード式の現場操作器の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1を示すICカード式の現場操作器の全体構成図である。図2は、実施の形態1を示す現場機器の運転制御方法の説明図である。
図1で図示しないが、プラントは、通常、多数の現場機器が中央制御装置に接続され、遠隔制御されている。
図1において、1は現場機器、2は電源装置、3はカードリーダー式現場操作器、4は現場操作器受信部、5はカードリーダー側アンテナコイル、6は外部ケーブル端子台、7a・7bはLED表示灯、8a・8bは表示灯リード線、9は外線ケーブル、10は中央制御装置、11は制御ケーブル、12は動力ケーブル、13はICカード、14はICカード側アンテナコイル、15はICチップ、21は現場機器エリア、22は電気室、23は制御室である。
【0010】
次に動作について、図1をもとに説明する。
通常は、制御室23において、作業員が、中央制御装置10の操作盤から操作指令を入力して、現場機器1を遠隔制御して、中央制御装置10のモニタ画面で確認する。
試験・点検等の現場で周囲状況を確認しながら作業する場合は、現場機器エリア21において、作業員が、現場機器1の傍に設置したカードリーダー式現場操作器3の現場操作器受信部4にICカード13をかざすと、ICカード側アンテナコイル14とカードリーダー側アンテナコイル5が電磁的に結合して、ICカード13内に組み込まれたICチップ15に記憶された現場制御権利情報を、カードリーダー式現場操作器3に受信する。
【0011】
カードリーダー式現場操作器3に受信された現場制御権利情報は、外部ケーブル端子台6と外線ケーブル9を介し、制御室23内に設置した中央制御装置10の入出力装置に伝達され、中央制御装置10の演算装置で処理され、その処理結果である制御情報が中央制御装置10の入出力装置から制御ケーブル11を介し、電気室22内に設置した電源装置2に伝達される。この制御情報に従って電源装置2が動作し、動力ケーブル12を介して、現場機器1は起動/停止する。また、制御情報は、中央制御装置10の入出力装置から外線ケーブル9と外部ケーブル端子台6を介し、カードリーダー式現場操作器3にも伝達され、表示灯リード線8a・8bを介して、LED表示灯7a・7bを点灯させ、現場機器1の起動/停止状態を表示する。
【0012】
次に現場機器1の運転制御方法について、図2をもとに説明する。
最初に、ICカード13を現場操作器受信部4に瞬時、かざすと、中央制御装置10の演算装置で処理され、現場機器1が「停止ロック」の状態を保持、現場以外から起動/停止ができない状態で、試験・点検等が可能となる。現場機器1が「停止ロック」の状態で、ICカード13を現場操作器受信部4に2秒以上、かざすと、中央制御装置10の演算装置で処理され、起動の制御情報が中央制御装置10の入出力装置から制御ケーブル11を介して電源装置2に伝達され、電源装置2が動作し、動力ケーブル12を介して、現場機器1が「起動」の状態となる。
【0013】
現場機器1が「起動」の状態で、ICカード13を現場操作器受信部4に瞬時、かざすと、中央制御装置10の演算装置で処理され、停止の制御情報が中央制御装置10の入出力装置から制御ケーブル11を介して電源装置2に伝達され、電源装置2が動作し、現場機器1が「停止」の状態となる。
前記のように、中央制御装置10の演算装置で処理することで、ICカード13を現場操作器受信部4に、かざしている時間の長さにより、現場機器1の運転制御ができる。
また、現場機器の運転制御方法は、前記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の精神の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0014】
実施の形態1によれば、非接触式ICカードと電磁的に結合して信号を受信する受信回路と、この受信回路が受信する信号を中央制御装置に伝達する伝達回路を備えることで、従来のように多くのスイッチを実装する必要がなくなり、現場操作器が小型化できる。
また、ICカードが無ければ、現場側での起動/停止の制御ができないため、現場機器の悪戯防止など、保守管理が容易になり、信頼性の高い現場操作器を提供できる。
また、現場機器とカードリーダー式現場操作器は、1対1で現場エリアに設置するが、ICカードは、現場機器に対する現場制御権利情報を持つものなので、複数台のカードリーダー式現場操作器に共通で使用できるため、現場機器の台数が増えても、1枚のICカードで、複数台ある現場機器の起動/停止の制御が可能となり、保守管理が容易になる。
【0015】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2を示す非接触式ICカードの構成図である。
図3において、16は指令選択キー、17は選択リード線である。
実施の形態1は、ICカード13を現場操作器受信部4に、かざしている時間の長さにより、起動/停止/停止ロックの操作指令を入力する。
実施の形態2では、ICカード13の指令選択キー16を押すことで、起動/停止/停止ロック等の操作指令を選択して、ICカード13を現場操作器受信部4にかざすと、指令選択キー16の選択結果が、選択リード線17からICチップ15に伝達され、ICカード側アンテナコイル14とカードリーダー側アンテナコイル5が電磁的に結合して、ICカード13内のICチップ15にある選択された操作指令の情報を、カードリーダー式現場操作器3が受信する。
【0016】
カードリーダー式現場操作器3に受信された操作指令の情報は、外部ケーブル端子台6と外線ケーブル9を介し、制御室23内に設置した中央制御装置10の入出力装置に伝達され、中央制御装置10の演算装置で処理され、操作指令の情報に対する制御情報が中央制御装置10の入出装置から制御ケーブル11を介し、電気室22内に設置した電源装置2に伝達される。この制御情報に従って電源装置2が動作し、動力ケーブル12を介して、現場機器1は起動/停止する。
実施の形態2によれば、ICカードの指令選択キーを使うことで、操作指令をすばやく、確実に出すことができるため、更に信頼性の高い現場操作器を提供できる。
【0017】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3を示すICカード式の現場操作器の全体構成図である。
図4において、30はICカード機能付き携帯電話であり、例えば、おサイフケータイ(登録商標)である。
実施の形態1では、専用のICカード13を使用する構成である。
実施の形態3では、ICカード機能付き携帯電話30のICカードに、現場制御権利情報を登録することにより、専用のICカード13を準備することなく、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0018】
実施の形態4.
図5は、実施の形態4を示すICカード式の現場操作器の全体構成図である。
図5において、9aはカードリーダー側外線ケーブル、9bは制御装置側外線ケーブル、21aは防爆現場機器エリア、24は中継端子台である。
実施の形態1では、カードリーダー式現場操作器3と中央制御装置10との間の外線ケーブル9が、カードリーダー式現場操作器3内に設けた外線ケーブル端子台6に接続するため、カードリーダー式現場操作器3は、開放可能な構造とする必要があった。
実施の形態4では、図5に示すように、カードリーダー式現場操作器3の外側に中継端子台24を設けて、中央制御装置10と接続する外線ケーブルをカードリーダー側外線ケーブル9aと制御装置側外線ケーブル9bに分割することで、カードリーダー式現場操作器3とカードリーダー側外線ケーブル9aを一体化して、カードリーダー式現場操作器3を密閉構造とする。
【0019】
実施の形態4によれば、カードリーダー式現場操作器3を密閉構造とし、防爆現場機器エリア21aの外に中継端子台24を設けることで、外線ケーブルの接続時に現場エリアで、防爆仕様の加工作業が不要になり、簡単に安価で信頼性の高い防爆型現場操作器を提供できる。
また、密閉構造としたため、防塵・防水等に優位であり、設置環境の影響を受け難い現場操作器を提供できる。
【0020】
実施の形態5.
図6は、実施の形態5を示すICカード式の現場操作器の全体構成図である。
図6において、31は現場操作器1の無線通信装置、32は現場操作器1の通信アンテナ、33は中央制御装置10の無線通信装置、34は中央制御装置10の通信アンテナである。
実施の形態4では、カードリーダー式現場操作器3と中央制御装置10との間を、外線ケーブルで信号伝達する構成である。
実施の形態5では、中央制御装置10に無線通信装置33と通信アンテナ34を内蔵し、カードリーダー式現場操作器3にも、同様に、無線通信装置31と通信アンテナ32を内蔵して、カードリーダー式現場操作器3を密閉構造とし、カードリーダー式現場操作器3と中央制御装置10との間を、無線通信で信号伝達する構成である。
実施の形態5によれば、外線ケーブルの代わりに、無線通信を信号伝達に使用したので、配線工事費の低減を図りながら、実施の形態4と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0021】
1...現場機器、 2...電源装置、 3...カードリーダー式現場操作器、
4...現場操作器受信部、 5...カードリーダー側アンテナコイル、
6...外部ケーブル端子台、 7a・7b...LED表示灯、
8a・8b...表示灯リード線、 9...外線ケーブル、 10...中央制御装置、
11...制御ケーブル、 12...動力ケーブル、 13...ICカード、
14...ICカード側アンテナコイル、 15...ICチップ、
16...指令選択キー、 17...選択リード線、 21...現場機器エリア、
21a...防爆現場機器エリア、 22...電気室、 23...制御室、
24...中継端子台、 30...ICカード機能付き携帯電話、
31・33...無線通信装置、 32・34...通信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを構成する複数の現場機器を遠隔制御する中央制御装置と接続され、現場で前記現場機器を制御する現場操作器において、
非接触式ICカードと電磁的に結合して信号を受信する受信回路と、前記受信回路が受信する信号を前記中央制御装置に伝達する伝達回路とを備えることを特徴とするICカード式の現場操作器。
【請求項2】
前記非接触式ICカードに、操作指令の切替えキーを備えることを特徴とする請求項1記載のICカード式の現場操作器。
【請求項3】
前記非接触式ICカードに、ICカード機能付き携帯電話を使用することを特徴とする請求項1記載のICカード式の現場操作器。
【請求項4】
前記伝達回路に、前記中央制御装置と接続する中継端子台を前記現場操作器の外側に備え、前記現場操作器を密閉構造とすることを特徴とする請求項1記載のICカード式の現場操作器。
【請求項5】
前記伝達回路が、無線通信で信号伝達することを特徴とする請求項1記載のICカード式の現場操作器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−120068(P2011−120068A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276543(P2009−276543)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】