説明

ICカード

【課題】積層構成を加熱圧着する時に、最外側に設けられた印刷層の品質が損なわれないICカードを提供することにある。
【解決手段】少なくとも、アンテナパターン層の上にICチップが接合されてなるインレットと、前記インレットのICチップ側に、外側から順に印刷層、外装シート、中間シート、コアシートAを具備し、該インレットの反対側に、外側から順に外装シート、中間シート、コアシートBを具備するICカードにおいて、該外装シートが結晶性樹脂シートからなり、該中間シートと該コアシートAと該コアシートBとが非晶性樹脂シートからなるか、あるいは、該外装シートが荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなり、該中間シートと該コアシートAと該コアシートBとが荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いセキュリティ性と大量の情報量を有するICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードは高いセキュリティ性と大量の情報量を有することにより、従来の磁気カードに代わって各種の分野で広く使用されている。ICカードの種類は、接触型カードと非接触型カードに大別されるが、さらに接触式と非接触式の機能を一枚のカードに合体させたデュアルインターフェースカードやハイブリッドカードがある。また、ICカードの片面または両面には、通常、意匠性を高めるために印刷層が設けられる。さらに、表面には、種々の情報、例えば、文字やバーコード等が印字されたり、磁気ストライブやホログラムなどが設けられる場合もある。ICカードの構造は、非接触型カードの場合、その基本構成は、アンテナパターン層とICチップからなるインレットを複数枚の樹脂シートで両側から挟み込んで加熱圧着した積層構成になっている。図5は従来の非接触型のICカードの一実施形態を示す断面の模式図であり、ICカード(30)は、アンテナパターン層(38b)の上にICチップ(38a)を接合してなるインレット(38)のICチップ(38a)側に、外側から順に、印刷層(31)、外装シート(32)、中間シート(33)、コアシートA(34)を具備し、該インレット(38)のアンテナパターン層(38b)側に、外側から順に、外装シート(37)、中間シート(36)、コアシートB(35)を具備する積層構成で、前記外装シート(32、37)、中間シート(33、36)、コアシートA(34)、コアシートB(35)はすべて、ガラス転移温度が120℃のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂からなっており、積層構成を加熱温度130℃で加熱圧着して製造したものであり、加熱圧着時にコアシートA(34)とコアシートB(35)はアンテナパターン層(38b)の両端に近隣する部分に内部歪み(40)が生じ、さらに、外装シート(32)と中間シート(33)とコアシートA(34)はICチップ(38a)の両端に近隣する部分に内部歪み(42)が生じており、前記内部歪み(42)に主に起因して、印刷層(31)の前記内部歪み(42)と相対する部分に亀裂(50、51)が発生し、最終製品のICカードの商品価値を損なってしまう問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、積層構成を加熱圧着する時に、最外側に設けられた印刷層の品質が損なわれないICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、アンテナパターン層の上にICチップが接合されてなるインレットと、前記インレットのICチップ側に、外側から順に印刷層、外装シート、中間シート、コアシートAを具備し、該インレットの反対側に、外側から順に外装シート、中間シート、コアシートBを具備するICカードにおいて、該外装シートが結晶性樹脂シートからなり、該中間シートと該コアシートAと該コアシートBとが非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカードである。
【0005】
本発明の請求項2に係る発明は、少なくとも、アンテナパターン層の上にICチップが接合されてなるインレットと、前記インレットのICチップ側に、外側から順に印刷層、外装シート、中間シート、コアシートAを具備し、該インレットの反対側に、外側から順に外装シート、中間シート、コアシートBを具備するICカードにおいて、該外装シート
が荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなり、該中間シートと該コアシートAと該コアシートBとが荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカードである。
【0006】
本発明の請求項3に係る発明は、少なくとも、印刷層、外装シート、コアシート、アンテナパターン層、コアシート、外装シートを前記順序で積層してなる積層シートの印刷層側にICモジュールを接触用端子面が表面に出ており、且つ前記アンテナパターン層と接合する状態で埋設してなるICカードにおいて、該外装シートが結晶性樹脂シートからなり、該コアシートが非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカードである。
【0007】
本発明の請求項4に係る発明は、少なくとも、印刷層、外装シート、コアシート、アンテナパターン層、コアシート、外装シートを前記順序で積層してなる積層シートの印刷層側にICモジュールを接触用端子面が表面に出ており、且つ前記アンテナパターン層と接合する状態で埋設してなるICカードにおいて、該外装シートが荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなり、該コアシートが荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカードである。
【0008】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1又は請求項3に係る発明に於いて、前記結晶性樹脂シートが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートであり、前記非晶性樹脂シートがグリコール変性ポリエチレンテレフタレートシート、又は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイシートであることを特徴とするICカードである。
【0009】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項2又は請求項4に係る発明に於いて、前記荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートがグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイシートであり、前記荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートがグリコール変性ポリエチレンテレフタレートシートであることを特徴とするICカードである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のICカードは、請求項1または請求項3記載の構成によれば、外装シートが結晶性樹脂シートからなり、中間シートとコアシートAとコアシートB、あるいはコアシートが非晶性樹脂シートからなることで、積層構成を加熱圧着して製造する時に、中間シートとコアシートAとコアシートB、若しくは、コアシートは非晶性樹脂シートからなるが故に加熱流動して、内部歪みが発生するが、外装シートは結晶性樹脂シートからなるが故に加熱流動を生じないので、最外側の印刷層には亀裂などの欠陥が発生せず、本来の品質を保持する。また、請求項2または請求項4記載の構成によれば、外装シートが荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなり、中間シートとコアシートAとコアシートB、若しくは、コアシートが荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートからなることで、積層構成を加熱圧着して製造する時に加熱温度を適切に設定すれば、中間シートとコアシートAとコアシートB、若しくは、コアシートは荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートからなるが故に加熱流動して、内部歪みが発生するが、外装シートは荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなるが故にほとんど加熱流動を生じないので、最外側の印刷層には亀裂などの欠陥が発生せず、本来の品質を保持する。また、請求項5または請求項6の構成によれば、カードとして要求される種々の物性が非常に優れるICカードが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のICカードを実施の形態に沿って、以下に説明する。図1は本発明のICカードの一実施形態を示す断面の模式図であり、ICカード(10)は、厚み方向に順に、印
刷層(11)、外装シート(12)、中間シート(13)、ICチップ(18a)を通せる大きさの貫通孔(図示せず)を有するコアシートA(14)、アンテナパターン層(18b)の上にICチップ(18a)を接合してなるインレット(18)、コアシートB(15)、中間シート(16)、外装シート(17)を積層した積層構成になっており、図示していないがICチップ(18a)とアンテナパターン層(18b)とは導電性接着剤を介して接合されている。中間シート(13)とコアシートA(14)はICチップ(18a)の両端の近隣付近にそれぞれ、加熱圧着して積層する時に生ずる内部歪み(41)を有しており、さらに、コアシートA(14)とコアシートB(15)はアンテナパターン層(18b)の両端の近隣付近にそれぞれ、加熱圧着して積層する時に生ずる内部歪み(40)を有しているが、外装シート(12)には内部歪みを有していない。よって、印刷層(11)には亀裂などの損傷が発生せず、本来の機能を保持する。
【0012】
図2は本発明のICカードの他の実施形態を示す断面の模式図であり、ICカード(20)は、厚み方向に順に、印刷層(21)、外装シート(22)、コアシート(23)、アンテナパターン層(26)、コアシート(24)、外装シート(25)を積層してなる積層シート(27)の印刷層(21)側に、印刷層(21)からコアシート(24)迄刻設した凹部(28)が設けられ、該凹部(28)にICモジュール(29)がその接触用端子面を表面にむき出しにする状態で埋設されている。コアシート(23)とコアシート(24)はアンテナパターン層(26)の両端の近隣付近にそれぞれ、加熱圧着して積層する時に生ずる内部歪み(40)を有しているが、外装シート(22)には内部歪みを有していない。よって、印刷層(21)には亀裂などの損傷が発生せず、本来の機能を保持する。なお、図示していないが、アンテナパターン層(26)とICモジュール(29)とは導電性接着剤(図示せず)を介して接合されている。
【0013】
前記印刷層(11、21、31)は、公知のオフセット印刷法やスクリーン印刷法で印刷する。
【0014】
前記外装シート(12、17、22、25)は、結晶性樹脂シートまたは荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなっている。結晶性樹脂シートとしては、結晶性樹脂からなるシートであれば限定されないものの、特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートが好ましく、非晶性樹脂シートとしては荷重たわみ温度が90〜120℃の樹脂シートであれば限定されないものの、特に、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイシートが好ましい。厚みは50〜150μmが好ましい。
【0015】
前記中間シート(13、16)、コアシートA(14)、コアシートB(15)、コアシート(23、24)は、荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートまたは荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなっている。荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートとしては、荷重たわみ温度が60〜70℃の樹脂からなるシートであれば限定されないものの、特に、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートシートが好ましく、荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートとしては、荷重たわみ温度が90〜120℃の樹脂シートであれば限定されないものの、特に、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイシートが好ましい。厚みは50〜150μmである。
【0016】
本発明の荷重たわみ温度とは、JIS K7207−1983の硬質プラスチックの荷重たわみ温度試験方法で測定した測定値のことを指している。
【0017】
前記アンテナパターン層(18b、26、38b)に使用する材質としては、銅、鉄、アルミニウム、金、銀、錫、ニッケル、亜鉛、チタン、合金などが使用可能であり、形成
方法は、エッチング法や、スクリーン印刷あるいはオフセット印刷などの印刷法で形成する。
【0018】
以下に、本発明のICカードの製造方法について説明する。図3(a)〜(d)は、本発明の一実施形態のICカードの製造方法の主な製造工程を示す説明図である。図3(a)は、外装シート(12)の片面に印刷層(11)を形成する工程を示す図である。図3(b)はコアシートB(15)の片面にアンテナパターン層(18b)を形成する工程を示す図である。図3(c)は、図3(b)の工程後、さらにアンテナパターン層(18b)の上にICチップ(18a)を導電性接着剤(図示せず)を介して接合する工程を示す図である。なお、前記アンテナパターン層(18b)の上にICチップ(18a)を接合したものをインレット(18)と言っている。図3(d)は、片面に印刷層(11)を形成した外装シート(12)と、中間シート(13)と、ICチップ(18a)を通せる大きさの貫通孔(14a)を有するコアシートA(14)と、インレット(18)を設けたコアシートB(15)と、中間シート(16)と、外装シート(17)と、を前記順序で重ね合わせ、両側から温度(T)と応力(P)で加熱圧着する工程を示す図である。
【0019】
図4(a)〜(f)は、本発明の他の実施形態のICカードの製造方法の主な工程を示す概要説明図である。図4(a)は、外装シート(22)の片面に印刷層(21)を形成する工程を示す図である。図4(b)は、コアシート(24)の片面にアンテナパターン層(26)を形成する工程を示す図である。図4(c)は、印刷層(21)を形成した外装シート(22)と、コアシート(23)と、アンテナパターン層(26)を形成したコアシート(24)と、外装シート(25)と、を前記順序で重ね合わせ、両側から温度(T)と応力(P)で加熱圧着する工程を示す図である。図4(d)は、図4(c)の工程で得られた積層シートの側断面図であり、積層シート(27)は厚み方向に順に、印刷層(21)、外装シート(22)、コアシート(23)、アンテナパターン層(26)、コアシート(24)、外装シート(25)を積層した構成になっている。図4(e)は積層シート(27)に印刷層(21)側からコアシート(24)迄刻設して凹部(28)を設ける工程を示す図である。図4(f)は、図4(e)で設けた積層シート(27)の凹部(28)にICモジュール(29)を埋設する工程を示す図である。なお、ICモジュール(29)は接触用端子面が表面にむき出しになり、かつ、アンテナパターン層(26)と導電性接着剤(図示せず)を介して接合されて埋設される。
【0020】
なお、加熱、加圧する時の温度(T)及び応力(P)は外装シート(12、17、22、25)の種類によって変化させ、外装シート(12、17、22、25)が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートの場合は、温度(T)は120〜140℃の範囲が好ましく、応力(P)は0.15〜0.35MPaが好ましく、外装シート(12、17、22、25)がグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイシートの場合は、温度(T)は110〜130℃の範囲が好ましく、応力(P)は0.15〜0.35MPaが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のICカードの一実施形態を示す断面の模式図である。
【図2】本発明のICカードの他の実施形態を示す断面の模式図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明の一実施形態のICカードの製造方法の主な工程を示す概要説明図である
【図4】(a)〜(f)は本発明の他の実施形態のICカードの製造方法の主な工程を示す概要説明図である
【図5】従来のICカードの一実施形態を示す断面の模式図である。
【符号の説明】
【0022】
10,20,30…ICカード
11,21,31…印刷層
12,17,22,25,32,37…外装シート
13,16,33,36…中間シート
14,34…コアシートA
15,35…コアシートB
23,24…コアシート
18a,38a…ICチップ
18b、38b…アンテナパターン層
18,38…インレット
26…アンテナパターン層
27…積層シート
28…凹部
29…ICモジュール
40,41,42…内部歪み
50,51…亀裂
T…温度
P…応力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、アンテナパターン層の上にICチップが接合されてなるインレットと、前記インレットのICチップ側に、外側から順に印刷層、外装シート、中間シート、コアシートAを具備し、該インレットの反対側に、外側から順に外装シート、中間シート、コアシートBを具備するICカードにおいて、該外装シートが結晶性樹脂シートからなり、該中間シートと該コアシートAと該コアシートBとが非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカード。
【請求項2】
少なくとも、アンテナパターン層の上にICチップが接合されてなるインレットと、前記インレットのICチップ側に、外側から順に印刷層、外装シート、中間シート、コアシートAを具備し、該インレットの反対側に、外側から順に外装シート、中間シート、コアシートBを具備するICカードにおいて、該外装シートが荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなり、該中間シートと該コアシートAと該コアシートBとが荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカード。
【請求項3】
少なくとも、印刷層、外装シート、コアシート、アンテナパターン層、コアシート、外装シートを前記順序で積層してなる積層シートの印刷層側にICモジュールを接触用端子面が表面に出ており、且つ前記アンテナパターン層と接合する状態で埋設してなるICカードにおいて、該外装シートが結晶性樹脂シートからなり、該コアシートが非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカード。
【請求項4】
少なくとも、印刷層、外装シート、コアシート、アンテナパターン層、コアシート、外装シートを前記順序で積層してなる積層シートの印刷層側にICモジュールを接触用端子面が表面に出ており、且つ前記アンテナパターン層と接合する状態で埋設してなるICカードにおいて、該外装シートが荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートからなり、該コアシートが荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートからなることを特徴とするICカード。
【請求項5】
前記結晶性樹脂シートが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートであり、前記非晶性樹脂シートがグリコール変性ポリエチレンテレフタレートシート、又は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイシートであることを特徴とする請求項1又は請求項3記載のICカード。
【請求項6】
前記荷重たわみ温度が90〜120℃の非晶性樹脂シートがグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイシートであり、前記荷重たわみ温度が60〜70℃の非晶性樹脂シートがグリコール変性ポリエチレンテレフタレートシートであることを特徴とする請求項2又は請求項4記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−99014(P2009−99014A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271094(P2007−271094)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】