説明

ID媒体及びセンサを利用した作業進捗推定装置及び方法

【課題】作業の進捗の把握を効率的に実現する技術を提供する。
【解決手段】作業進捗推定装置100は、作業の対象1に対応付けられる、RFID101のデータ(D1)、及びセンサ103のデータ(D2)を取得する処理と、RFIDデータ(D1)に基づき、開始または完了した作業項目を特定する処理(141)と、センサデータ(D2)に基づき、作業項目の途中の状態を含む進捗度を推定する処理(142)と、これらに基づき、作業における作業項目とその進捗度とを対応付けた情報を出力する処理(144)とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業進捗管理の技術に関し、特に、ID媒体(例えばRFIDやバーコード等)やセンサ(例えば加速度センサや位置センサ等)が対象(作業者、部品、装置、工具、帳票など)に対して付加(または設置)された環境や状態において、作業者による所定の作業が進められ、リーダ等で読み取られるID媒体やセンサのデータを利用して、作業の進捗状況の把握や推定などを行い、その結果を集計・出力する装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(ICタグ)やバーコードなどのID媒体を用いて作業の進捗状況の把握や推定などを行う従来技術例は多数存在する。
【0003】
例えば、特開平7−113323号公報(特許文献1)では、作業者、工具などの対象にID媒体を付け、各作業(工事等の工程に対応付けられる作業)の終了時にID媒体のコード(ID)を読み取らせることにより作業の終了を記録し、終了した作業について予め定められた作業ごとの工数を集計することによって、工事等における工数単位の進捗を把握する方法が開示されている(ID媒体を用いた作業進捗管理技術例)。
【0004】
また、同じく特許文献1では、トルクレンチなどの工具にセンサを付け、トルクが予め定めた値に達すると当該作業が終了したと判断する方法も合わせて開示されている。これは、工具の主機能が目的通りに利用されたことを判定するものである(センサを用いた作業推定技術例)。
【0005】
また、特開平7−334571号公報(特許文献2)には、作業者に取り付けた位置センサによって作業場所の変化を把握し、作業手順と照らし合わせて作業の進捗を把握する手段が開示されている(センサを用いた作業進捗管理技術例)。
【0006】
一方、特開2008−93120号公報(特許文献3)には、センサの利用方法として、人に付けた加速度センサの値を用いて消費エネルギーを計算、出力する技術が開示されている(センサを用いた作業推定技術例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−113323号公報
【特許文献2】特開平7−334571号公報
【特許文献3】特開2008−93120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[ID媒体を用いた作業進捗管理技術について]
(1)前記ID媒体を用いて作業の進捗状況を把握する方法(例えば特許文献1)では、作業や工程等の単位の終了や開始の時ごと、あるいは途中の時に、人(作業者)が何らかの方法で、ID媒体をリーダ(読取装置)等で読み取らせる(IDデータを読み込ませる)動作ないし操作を行う必要がある。例えば、かざす動作や情報入力、あるいはリーダ等が作業場所から離れた位置にある場合はそのための移動などが必要である。進捗を把握したい細かさに応じた単位ごとに当該動作を行うことにより、当該単位での進捗(例えば開始、終了、あるいは途中の状態)を把握できる。しかしながら、人(作業者)が作業に集中している中で、このような動作を確実かつ遅延無く行うことは負担であり、作業効率を低下させるという問題がある。
【0009】
また特に、作業が長時間を要する場合には、当該作業の完了の時刻(予定)をできるだけ正確に見積もるために、当該作業の途中の状態を含む進捗の把握が望まれる。即ち、当該作業単位の途中のどの程度まで進んだか(終わったか)を把握することが望まれる。しかしながら、このためには、当該作業単位を細分化して(例えば複数の下位の作業単位に分割して)、上記人による読み取り動作の回数を増やす必要があり、作業者の負担が更に増大する。
【0010】
(2)また、上記方法の場合、ID媒体の読み取りには、リーダ等の機器や設備が必要である。しかしながら、作業の場として、固定された設備が存在しないフリーエリア等では、このようなリーダ等の設置は難しい。またこのようなリーダ等を作業者が保持する形態としても、作業の邪魔になるという問題がある。上記細分化する方法の場合、必要なリーダ等も増加する。
【0011】
(3)更に、作業者が作業に集中している時などには、上述のように作業の途中でID媒体を読み取らせる動作を忘れてしまう恐れがある。また、複数の作業(例えば工程等)に各々対応付けられる複数のID媒体を所定時刻などに一括で読み取らせる場合(読み取られたIDに対応する作業を終了したと判断する)、上記作業者の負担は減るものの、読み取りのミスやエラー等を起こす恐れがある。例えば、実際には終了している工程についての読み取り漏れにより未終了状態と判断される場合や、実際には終了していない工程についての読み取りにより終了状態と判断される場合などである。
【0012】
[センサを用いた作業進捗管理技術について]
(4)また、前記センサを用いて作業の進捗状況を把握する方法に係わり、センサで工具の主機能の利用を判定する方法(例えば特許文献1)は、主機能の判定がセンサで可能となる工具を利用する特定の作業にしか適用できない。例えば、水準器、メジャー、ハンマー、ドライバ、ペンチなどの工具は、利用されると場所や方向が変わるため、位置センサや方向センサ(加速度センサによる重力方向測定を含む)によって、当該工具が利用されたこと及びその時刻については検知・測定ができる。しかしながら、このような方法を作業進捗把握に利用する具体的な従来技術例は無い(または十分に効果的な実現はされていない)。例えば特許文献1,2等におけるセンサを用いた技術例では、作業の進捗(特に長時間を要する作業の途中の進捗状況)を把握することは難しい。
【0013】
(5)また、作業の場所(作業者の位置)の変化をセンサで検知することによって作業の進捗を判断する方法(例えば特許文献2)は、作業(工程等)に応じて場所(作業者の位置)が変化する作業の場合には適用できるが、変化しない作業の場合には適用できない。
【0014】
(6)また、上記作業者の位置の変化(移動)としては、作業に関係する予め決められた移動や動作の場合だけでなく、作業動作自体(実作業)ではない、あるいは関係性が小さい、不定的な移動や動作やその他偶発的な事象などが発生する場合も多々ある。例えばフリーエリア等での作業中に、一時的に、準備、打合せ、休憩、電話などのために作業者が何度か移動する場合が挙げられる。そのような場合、上記センサを用いても、(その移動等は検知しようと思えばできるものの)その移動等の間に存在する本来の作業動作自体(実作業)の進捗状況を把握することはできない。
【0015】
上記のように、従来技術では、ID媒体を用いた作業進捗管理、センサを用いた作業進捗管理のいずれにおいても、それぞれ問題があり、十分に効果的な作業進捗管理は実現されていない。特に、長時間の作業の場合や作業者の不定的な移動や動作がある場合などには実現が難しい。また従来、ID媒体とセンサを組み合わせて用いて上記作業進捗管理を実現する技術例は無い(または十分に検討されていない)。
【0016】
以上を鑑み、本発明の主な目的は、作業進捗管理に係わり、(1)作業者によるID媒体などの読み取り動作等の必要な回数を少なくでき(または少ないままで済み)、作業者の負担を低くできること、かつ、(2)長時間の作業の場合や作業者の不定的な移動等がある場合などにおいても、作業の進捗(作業の開始/終了、及び作業の途中の状態を含む)の把握が実現できること、更には、(3)作業者によるID媒体などの読み取り動作等の忘れや漏れなどがある場合にも適切に対処できること、といったことを実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。本発明の代表的な実施の形態は、作業者による作業の進捗状況を把握・推定しその結果情報を出力する処理を行う作業進捗推定装置であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0018】
前記作業における所定の対象物(作業者、工具、部品、装置、帳票など)に対して1つ以上のID媒体が対応付けられ、前記ID媒体に対してリーダが対応付けられ、前記作業における所定の対象物に対して1つ以上のセンサが対応付けられ、前記センサに対して中継装置が対応付けられる。本装置は、前記ID媒体による第1のデータ(前記リーダでの読み取りデータ)を前記リーダ(読み取り動作)を介して受信または取得する第1の手段と、前記センサによる第2のデータ(センサが出力する物理的値、測定データ)を前記中継装置を介して受信または取得する第2の手段とを有する。また本装置は、前記第1のデータに基づいて、前記作業を構成する作業項目における、開始または完了した作業項目を特定し、その結果の第5のデータ(作業特定データ)を作成する第1の処理を行う作業特定部(第1の処理部)と、前記第2のデータに基づいて、前記特定された作業項目における実施の途中の状態を含む当該作業項目の進捗度を推定し、その結果の第6のデータ(進捗データ)を作成する第2の処理を行う進捗推定部(第2の処理部)と、前記第5のデータが表す前記作業項目と、前記第6のデータが表す当該作業項目の進捗度とを対応付けた、前記作業の進捗状況を示す結果情報を出力する処理を行う出力制御部と、を有する。
【0019】
また更に、本装置は、前記作業の内容(規定)を表す第3のデータ(作業データ)を入力する処理を行い、前記第3のデータと前記第5のデータとを対応付けて比較することにより、前記作業項目の漏れ(実施と読み取り動作とのずれ)を検出し、当該漏れを示す情報を出力して警告する処理を行う警告部を有する。
【0020】
また更に、本装置(前記第2の処理部)は、前記作業項目の進捗度を推定するための判定用のルール情報を含む第4のデータを入力する処理と、前記第2のデータと前記第4のデータとに基づいて、前記作業項目の進捗度を推定し、前記第6のデータを作成する処理とを行う。
【発明の効果】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。本実施の形態によれば、作業の進捗の把握を効率的に実現することができる。特に、(1)作業者によるID媒体などの読み取り動作等の必要な回数を減らすことができ(又は少ないままで済み)、作業者の負担を低くできる。かつ、(2)長時間の作業の場合や作業者の不定的な移動等がある場合などにおいても、作業の進捗(作業の開始/終了、及び作業の途中の状態を含む)の把握ができる。更に、(3)作業者が上記必要な読み取り動作等を忘れた場合にも対処できる(例えばその事を検出して警告でき漏れ等を防止できる)。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態の作業進捗管理システム(作業進捗推定装置)における全体の概略構成を示す図である。
【図2】本実施の形態のシステム(装置)における作業進捗推定処理フローを示す図である。
【図3】(D1−1)RFIDデータにおけるRFID読み取りデータの例を示す図である。
【図4】(D1−2)RFIDデータにおけるRFIDタグ(取り付け先)データの例を示す図である。
【図5】(D1−3)RFIDデータにおけるRFIDリーダ(設置場所)データの例を示す図である。
【図6】(D2−1)センサデータにおける加速度センサによるデータの例(その1)を示すグラフである。
【図7】(D2−2)センサデータにおける加速度センサによるデータの例(その2)を示すテーブルである。
【図8】(D2−3)センサデータにおける位置センサによるデータの例を示す図である。
【図9】(D2−4)センサデータにおける加速度センサと位置センサによるデータの例を示す図である。
【図10】(D3)作業データの例を示す図である。
【図11】(D4)作業判定データの例を示す図である。
【図12】(D5−1)作業特定データの例(その1)を示す図である。
【図13】(D5−2)作業特定データの例(その2)を示す図である。
【図14】(D6−1)進捗データの例(その1)を示す図である。
【図15】(D6−2)進捗データの例(その2)を示す図である。
【図16】作業特定部の処理途中経過を示すデータ例(その1)を示す図である。
【図17】作業特定部の処理途中経過を示すデータ例(その2)を示す図である。
【図18】出力制御部の出力結果(第1の出力例)のイメージ例(その1)を示す図である。
【図19】出力制御部の出力結果(第1の出力例)のイメージ例(その2)を示す図である。
【図20】本実施の形態における、作業等の単位や概念についてのイメージや例を示す図である。
【図21】出力制御部の出力結果(第3の出力例)のイメージ例(その1)を示す図である。
【図22】出力制御部の出力結果(第3の出力例)のイメージ例(その2)を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態2の作業進捗管理システム(作業進捗推定装置)における、(D3)作業データの例を示す図である。
【図24】実施の形態2における、処理結果データ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
<概要>
本実施の形態の概要や特徴は以下である(符号は図1等を参照)。本装置(100)は、主に、第1の手段を構成するID媒体(101)と第2の手段を構成するセンサ(103)とを組み合わせて用いて作業進捗推定処理を行うことが特徴である。ID媒体(101)を用いた第1の処理の方では、作業(作業項目)の開始/終了を把握・特定し、これは基本的に作業者によるリーダ(102)での読み取り動作を必要とするが、センサ(103)と組み合わせることで、その動作の回数は少なくて済む。また、センサ(103)を用いた第2の処理の方では、自動的に、作業(作業項目)の途中の状態についての進捗度を推定により把握する。従って、上記第1と第2の処理・手段の組み合わせにより、長時間の作業などで作業者による実作業以外の付随作業や不定的な移動などがある場合などにおいても、作業全体における実施された作業項目及び作業項目の途中の状態の把握を含む作業進捗状況を把握できる。また、上記2つの処理・手段によるデータ等を照合することで、読み取り動作の忘れ等についても検出して警告することができる。
【0025】
(実施の形態1)
図1〜図22を用いて、本発明の実施の形態1の作業進捗管理システムについて説明する。本システムは、作業進捗推定装置100を含んで成る。
【0026】
<システム>
図1は、実施の形態1の作業進捗推定装置100(以下単に装置100ともいう)、及び関連要素を含むシステム全体の概略構成を示している。なお、図1のうち、作業項目選択部145は、後述する実施の形態2の作業進捗推定装置100で備える要素であり、実施の形態1では備えない。
【0027】
本システムは、作業進捗推定装置100、RFID101、リーダ102(RFIDリーダ)、センサ103、中継装置104(センサ受信部)、入出力装置105、等を有する。また、RFID101やセンサ103の付加・取り付け(または近接設置等)に関する対象(物)1として、作業者、工具、部品、装置、帳票(作業票)、等を有する。対象1は、人(作業者)を含み、作業の形態に応じる。
【0028】
また、作業の場2においては、対象(物)1、RFID101、センサ103等が存在する。また、場2の内部または外部近隣などに、リーダ102や中継装置104等が存在する。なお対象1とRFID101やセンサ103との対応関係に関する具体例については、後述する処理フローやデータテーブル等にて示される。
【0029】
RFID101は、例えばICタグなどのID媒体であり、作業(作業項目)の開始や終了を把握・特定する第1の処理のために利用する。RFID101に記録されているIDデータは、当該RFID101の対応するリーダ102によって読み取られ(公知のRFID技術による)、装置100中の通信装置110に送られる。この読み取りは、作業(作業項目)の開始時や終了時に、人(作業者)の動作(RFID101をリーダ102にかざす等)に基づいて行われる。
【0030】
RFID101及び対応するリーダ102は、作業の形態に応じて複数存在してよく、通常(多くの場合)は多数が用意される。各RFID101は、対応付けられる所定の対象1へ付加等された形で利用される。各RFID101に対応したリーダ102も所定の箇所へ設置される。リーダ102については、例えば、特定の場所へ設置される形、あるいは、対象1の作業者が保持する形、対象1の装置などへ取り付けられる形、等で利用される。
【0031】
リーダ102は、RFID101の読み取りの際のインタフェースとして画面や入力装置などを備えてもよい。その場合、リーダ102の画面等で操作者が情報を入力し、RFID101読み取りに伴う付加データ等を入力することができる。リーダ102と通信装置110との間の通信は無線通信であってもよい(作業者がリーダ102を保持する場合など)。
【0032】
センサ103は、所定の物理量を測定するセンサであり、作業(作業項目)の進捗度(特に作業項目の途中の状態)を把握・推定する第2の処理のために利用する。センサ103は、物理的値を測定データとして出力する。その出力データは、例えば電波によって中継装置104で受信され、中継装置104を介して、装置100中の通信装置110に送られる。
【0033】
センサ103及び対応する中継装置104についても、作業の形態に応じて複数存在してよく、通常(多くの場合)は多数が用意される。各センサ103は、対象1に対して取り付けられる形、あるいは、対象1の近隣などの所定の位置に設置される形、等で利用される。センサ103としては、作業の形態(推定の対象や方法)に応じて、加速度センサ、位置センサ、ジャイロセンサなど、各種のものが利用可能であり、この種類は特に限定されない。
【0034】
センサ103のデータの検知・受信等のために、センサ103が存在する位置に対する近隣などの所定の位置に、対応する中継装置104などが設けられる。中継装置104と通信装置110との間の通信は無線通信であってもよい(作業者が中継装置104を保持する場合など)。
【0035】
なお、第1の手段(RFID101−リーダ102)と、第2の手段(センサ103−中継装置104)とにおける違いとして、前者では作業者による読み取り動作(それによるRFIDデータ取得)が基本的に必要であり、後者では自動的な検知(それによるセンサデータ取得)が可能である。
【0036】
なお、RFID101やセンサ102によるデータ、及びその処理データ等は、必要に応じて暗号化等が施されてもよい。また、複数のRFID101のデータを1つのリーダ102で読み取る形態(リーダ102の共通化)や、複数のセンサ103のデータを1つの中継装置104で受信する形態(中継装置104の共通化)としてもよい。また、リーダ102と中継装置104を一体化した構成としてもよい。データ取得部50は、リーダ102と中継装置104を含み、すべてのRFID101及びセンサ103のデータを取得する。
【0037】
<装置>
作業進捗推定装置100は、通信装置110、入出力インタフェース120、記憶装置130、演算装置140、バス190、等を備える構成である。例えば演算装置140はCPU等であり、記憶装置130はRAMやHDD等である。また作業進捗推定装置100の処理機能は、プロセッサによるプログラムの実行による実現でもよいし、専用回路による実現などでもよい。
【0038】
記憶部130は、図示する各種データ記憶部(131〜136)を有する。演算装置140は図示する各種処理部(141〜145)を有する。作業進捗推定装置100には、入出力インタフェース120を介して入出力装置105が接続されており、通信装置110に対してはデータ取得部50(リーダ102、中継装置104)が接続されている。
【0039】
入出力装置105(例えばディスプレイやボタンキー等を備える機器)により、作業者等は、各種のデータや指示情報の入力、及び結果情報の出力などの操作ができる。作業及び進捗管理の形態に応じて当該操作が行われる。例えば、後述する付加データの入力を可能としてもよい。また、入出力装置105では、読み取り漏れに関する警告情報などを出力してもよい。
【0040】
<作業、進捗>
図20は、補足のために、本実施の形態における、作業、進捗、等の単位や概念についてのイメージや例を示している。横方向は時間軸である。
【0041】
(a)「作業(W)」は、進捗管理(推定)の対象となる、上位の作業単位を示す。例えば、「作業1(W1)」は、1日などの比較的長時間における作業(具体的には工事など)を示す。作業(W)の途中には、作業者による本来の作業動作自体(実作業)以外の動作や事象(例えば移動など)が不定的に発生する。
【0042】
(b)「作業項目(w)」は、「作業(W)」の下位の作業単位を示す。作業(W)は、1つ以上の作業項目(w)を含んで構成される。例えば、作業1(W1)は、図示する3つの作業項目(w1〜w3)(具体的には例えばパイプ曲げ作業、切断作業など)を途中に含んでいることを示す。それら作業項目(w1〜w3)の間にある時間枠は、上記不定的な動作や事象である。なお、「作業項目(w)」は、詳しくは具体的な作業に応じて異なるが、例えば「工程」「手順」等の単位であってもよい。なお作業項目(w)の途中でも、例えばw1で示すように、作業者による本来の作業動作自体(実作業)以外の動作や事象(例えば移動など)が不定的に発生することがある。
【0043】
(c)は、RFID101の利用による第1の処理を示す。RFID101及びリーダ102等の利用による処理によって、作業項目(w)について、丸印で示す開始または終了(完了)の状態が把握され(リーダ102での読み取り動作に基づく)、これにより作業項目(w)として特定される。なお、この第1の処理では、作業(W)全体のうちどの作業項目(w)が行われている状態であるか、あるいは、作業(W)全体のうち複数の作業項目(w)に順序が規定されている場合は、全体のうちどの作業項目(w)まで進んだか(終わったか)、を把握していると捉えることができる(第1の進捗の把握・推定)。
【0044】
(d)は、センサ103の利用による第2の処理を示す。センサ103及び中継装置104等の利用による処理によって、作業項目(w)毎における途中の状態が判断され、作業項目(w)の進捗度(p)が推定される。例えば、「作業項目1(w1)」の進捗度(p1)に関しては、w1の開始から終了までの途中、どの程度まで進んだか(終わったか)、を推定している(第2の進捗の把握・推定)。
【0045】
(e)は、上記第1と第2の処理の総合として、作業(W)全体における進捗度(P)の把握・推定を示す。例えば、(c)から「作業項目1(w1)」が開始状態であることが特定され、(d)からそのw1の進捗度(p1)が図示のように推定された場合、(e)では「作業1(W1)」の進捗度(P1)として図示のよう推定される結果になる。
【0046】
<データ>
図3〜図15等は、本システムで用いる各種データ(管理情報)の例を示す。図3〜図5はRFIDデータ(D1)であり、RFID101及びリーダ102を用いた第1の処理(141による作業項目特定処理)に関するデータである。図6〜図9はセンサデータ(D2)であり、センサ103及び中継装置104を用いた第2の処理(142による作業項目進捗度推定処理)に関するデータである。図10は作業データ(D3)であり、管理対象の作業(W)の内容に関する規定等のデータである。図11は作業判定データ(D4)であり、第2の処理で用いるルール等のデータである。図12,図13は作業特定データ(D5)であり、第1の処理による結果等を表すデータである。図14,図15は進捗データ(D6)であり、第2の処理による結果等を表すデータである。
【0047】
<データ(1)>
RFIDデータ記憶部131に記憶されるデータである「RFIDデータ」(D1)は、RFID101に関する各データであり、例えば、図3,図4,図5に示す各データ(テーブル)(D1−1,D1−2,D1−3)がある。図3(D1−1)はRFID読み取りデータ、図4(D1−2)はRFIDタグ(取り付け先)データ、図5(D1−3)はRFIDリーダ(設置場所)データである。なお、図3のデータは実際の作業実施時の処理中に作成される情報であり、図4,図5に示すデータは、作業の形態などに応じて予め規定(設定)される情報であり、例えば予め記憶装置130などに記録されるか入出力装置105などから入力される(例えばシステム管理者等が設定してもよい)。なお各テーブルで同じ名称の項目(列)は対応した同様のデータである。
【0048】
図3のデータ(D1−1:RFIDデータ(1):RFID読み取りデータ)は、リーダ102で読み取られたRFID101のデータ(RFID読み取りデータ)の例である。本テーブルでは、a:時刻(当該データがリーダ102で読み取られた日時情報)と、b:タグID(RFID101(ICタグ)の識別コード)と、c:リーダID(リーダ102の識別コード)と、d:付加データと、を含む情報で構成されている。
【0049】
dの付加データは、前述のように当該読み取り時に操作者(作業者)がリーダ102の画面等(あるいは入出力装置105の画面等)で指定・入力した情報である。付加データは、当該RFID101の読み取りの意味を指定する情報であり、即ち例えば、作業項目の「開始」または「終了」の状態を伝える。付加データの内容は、作業及び進捗管理の形態に応じる。また付加データの入力が無い場合は格納データ無し(空白)である。
【0050】
図3で、例えば1行目の時刻(a)において、タグID(b)が「T0150」のRFID101は、リーダID(c)が「R01」のリーダ102によりIDデータが読み取られており、付加データ(d)から当該作業が「開始」された状態であることがわかる。
【0051】
図4のデータ(D1−2:RFIDデータ(2):RFIDタグ(取り付け先)データ)は、RFID101(ICタグ)の取り付け先の箇所(対象1)に関するデータ(RFIDタグ(取り付け先)データ)の例である。本テーブルでは、a:タグIDと、b:取り付け種別(タグの取り付け先の対象1の種別)と、c:名称(取り付け種別(b)に関する名称)と、を含む情報で構成されている。
【0052】
図4で、例えば1行目、タグID(a)が「T0001」のRFID101は、取り付け先の対象1の種別(b)として部品(名称(c)は「パイプA」)に取り付けられていることがわかる。なおその他必要であれば部品IDなどの情報を適宜管理してもよい。
【0053】
本例では、RFID101は、対象1として、作業者(例えば作業者J)、部品(例えばパイプ)、工具(例えばハンマ)、装置(例えば切断装置)、作業票(例えばパイプ曲げ指示書)等に取り付け(付加)される。
【0054】
図5のデータ(D1−3:RFIDデータ(3):RFIDリーダ(設置場所)データ)は、リーダ102の設置場所(対象1や位置等)に関するデータ(RFIDリーダ(設置場所)データ)の例である。本テーブルでは、a:リーダIDと、b:設置種別(リーダ102の設置の対象1の種別や、場所等)と、c:名称(設置種別(b)に関する名称)と、を含む情報で構成されている。
【0055】
図5で、例えば1行目、リーダID(a)が「R01」のリーダ102は、設置の対象1の種別(b)として作業者(名称(c)は「作業者J」)に対して設置(取り付け)されており、また例えば4行目、リーダID(a)が「R04」のリーダ102は、対象1ではなく、所定の場所である「搬入口」に設置されていることがわかる。
【0056】
本例では、リーダ102は、対象1として、作業者(例えば作業者J)、装置(例えばパイプ曲げ装置)、等に設置されている。また、リーダ102は、場2における所定の位置(例えば搬入口)に設置されている。
【0057】
<データ(2)>
センサデータ記憶部132に記憶されるデータである「センサデータ」(D2)は、センサ103からの受信データ(測定データ)によるものである。図6〜図9は、センサデータ(D2)の例(D2−1〜D2−4)を示している。
【0058】
図6のデータ(D2−1:加速度センサによるデータ(1))において、加速度センサの場合のセンサ103で測定した3軸(x,y,z)の加速度のデータをグラフ化した例を示している。3軸に対応する3つの独立に測定された加速度(a,b,c)が重ねて表示されている。
【0059】
また図7のデータ(D2−2:加速度センサによるデータ(1))において、上記グラフ(図6)に関する実際の測定データは、例えばテーブルの形式で記録される。図7の例は、当該測定データの一部を取り出して示すものであり、縦に、a:時刻が並んでいる。各時刻(a)のデータは、b:センサID(センサ103を特定するID)と、c:右手加速度、及びd:腰加速度と、を含む。c,dは、例えば作業者の右手と腰のそれぞれに取り付けられたセンサ103における、(x,y,z)の3軸の各方向の加速度値のデータが並んでいる。
【0060】
図8のデータ(D2−3:位置センサによるデータ)において、位置センサの場合のセンサ103からの受信データ(測定データ)による位置データをテーブルの形式で記録した例を示している。加速度の場合と同様に、各時刻(a)のデータは、b:センサIDと、c:位置(空間的な位置を表すデータ)と、を含む。位置(c)のデータは、(x,y,z)の3軸の空間における位置座標のデータが並んでいる。
【0061】
また図9のデータ(D2−4:加速度センサと位置センサによるデータ)に示すように、上述した加速度センサデータ(図6,図7)と位置センサデータ(図8)をまとめてテーブルに記録してもよい。この場合、例えば、各センサ103のセンサIDの代わりに、当該センサ103が取り付けられる人(作業者)を表すIDを、b:人IDのように、テーブルに記録してもよい。なお図示していないが、図7,図8のテーブルに「人ID」項目を設けてもよいし、あるいはセンサIDと人IDとの対応関係データを別途設けてもよい。後者の場合は、センサID、人ID、取り付け部位(右手、腰など)などの項目で構成されるテーブルが適切である。
【0062】
本例では、センサ103は、対象1として、作業者に対して取り付けされる。図9等のセンサデータ(D2)から、例えば、人ID(b)が「H01」の作業者(例えば作業者J)における時間軸上の動き(加速度と位置)等が把握・推定される。
【0063】
また、中継装置104は、センサ103が取り付けられた作業者と、本装置100との間におけるいずれの位置に設置・取り付け等されても構わない。例えば無線発信機能の付属するセンサ103を利用すれば、遠方までデータを送信できるため、中継装置104はRFIDリーダ102よりも少数で済ませることができる。
【0064】
<データ(3)>
作業データ記憶部133に記憶されるデータである「作業データ」(D3)は、進捗管理対象の作業(図2のW,w)自体に関する規定の情報を示し、例えば入出力装置105から入力される。
【0065】
図10のデータ(D3:作業データ)においてテーブル構造及びデータ値の例を示している。データ(D3)の項目として、a:作業ID、b:開始予定時刻、c:作業種類、d:部品、e:作業者、f:利用装置、g:作業票、h:作業予定時間、等の情報で構成されている。aは、当該行の作業(作業項目(w))のIDである。bは、作業の開始予定の日時情報である。cは、作業の種類や名称である。dは、作業で用いる部品(対象1の1つ)の名称やIDなどである。eは、作業を担当(実施)する作業者(対象1の1つ)の名称やIDなどである。fは、作業に利用する装置(対象1の1つ)の名称やIDなどである。gは、作業の指示等が記載された作業票(対象1の1つ)の名称やIDなどである。hは、当該作業で予定される作業時間(見積もられる標準的な所要時間)である。
【0066】
図10で、例えば、1行目、作業ID(a)が「1」の作業(作業項目(w))では、所定の開始予定時刻(b)(7月1日14時)に、「パイプ曲げ」作業(「パイプA」使用、「作業者J」担当、「パイプ曲げ装置」利用、「パイプA曲げ指示作業票」で指示、作業予定時間「120(分)」等)を開始すべきことがわかる。
【0067】
図10の例では、全体の作業(W)は、作業ID「1」〜「11」等の行で示す複数の各作業項目(w)を含む。まず、3本のパイプ(A〜C)を、それぞれ、曲げ、切断、端面加工する(aの「1」〜「9」)。そして、それらを位置決めして(「10」)、溶接する(「11」)、というものである。各作業項目は工程などと言い換えることもできる。各作業の開始予定時刻(b)は、各作業に必要な時間(作業予定時間(h))や、作業者の勤務時間などを考慮して決められている。また例えば同一の作業であっても、対象1の部品の大きさや材質などの特性が異なる場合には、必要な時間は異なる。また本例では前半(「1」〜「9」)と後半(「10」,「11」)で作業者(J,K)が異なる。そのため、前半の完了と後半の開始を同期させてはいない(開始予定時刻(a)が午前と午後に分離されている)。作業者が同じ場合は同期させることができる。
【0068】
なお、各テーブルに保存するデータは、本例ではわかりやすいように名称で表現しているものが多いが、所定のコード等によって表現してもよい。また、本例では決められた作業(作業項目)の順序や時刻の順にデータ(「1」〜「11」等)が格納されている。これらが決められていない場合(例えば作業者が適宜作業項目を選んで実施すればよい場合)もあり、その場合は作業の開始予定時刻(b)等の情報が省略される。
【0069】
<データ(4)>
作業判定データ記憶部134に記憶されるデータである「作業判定データ」(D4)は、作業(作業項目)の実施状況(進捗状況)の判定(推定)のためのルール等を表すデータであり、例えば入出力装置105から入力される。作業判定データ(D4)は、各作業(作業項目)が行われている時間帯の中で、実作業(正味作業)の時間(即ち付随作業やその他の不定的な動作等の時間を除いた時間)や、その実作業の進捗度合いを判定するために利用する。実作業以外の動作等の時間として、例えば前述した、準備、打合せ、休憩、電話などがある。
【0070】
図11のデータ(D4:作業判定データ)においてテーブル構造及びデータ値の例を示している。作業判定データ(D4)の項目として、a:作業種類、b:判定項目、c:判定種類(判定方法の種類)、d:判定式、e:基準値(判定の基準値)、等の情報で構成されている。本データの詳細な利用方法については後述する(図2、S202)。
【0071】
<データ(5)>
作業特定データ記憶部135に記憶されるデータである「作業特定データ」(D5)は、作業者により実施された作業を表すデータであり、実施済みの作業項目(w)を特定した情報である。作業特定データ(D5)は、RFIDデータ(D1)及び作業データ(D3)等を利用して、作業特定部141により作成される。
【0072】
図12のデータ(D5−1:作業特定データ(1))においてテーブルの例(その1)を示している。作業特定データ(D5−1)の項目として、a:開始時刻、b:完了時刻、c:作業ID、等の情報で構成されている。aは作業ID(c)で示す各作業(作業項目(w))の開始時刻、bはその完了時刻である。
【0073】
また図13のデータ(D5−2:作業特定データ(2))においてテーブルの例(その2))を示している。図13のように、図12に示した項目(a〜c)のデータに対して、図10の作業データ(D3)等をもとに、他の項目(d〜i)のデータを追加して記憶してもよい。図13の例では、d:作業種類、e:部品、f:作業者、g:利用装置、h:作業票、i:作業予定時間、を有する。
【0074】
なお、図12,図13の例では、一連の作業(複数の各作業項目)が完了した状態のデータを示しているが、一連の作業の途中の段階では、例えば開始時刻(a)等の値は記録されていても完了時刻(b)の値は記録されていない、といった状態になる。
【0075】
<データ(6)>
進捗データ記憶部136に記憶されるデータである「進捗データ」(D6)は、作業(作業項目)の進捗状況、即ち、進捗度合いに関するデータである。このデータは、時々刻々更新されるため、ある時刻では各作業項目の実施の途中の状態を表し、ある時刻では実施の完了後の状態を表す。進捗データ(D6)は、各記憶部(131〜135)のデータ(D1〜D5)に基づいて、進捗推定部142により作成される。
【0076】
図14のデータ(D6−1:進捗データ(1))においてテーブルの例(その1)を示しており、図15のデータ(D6−2:進捗データ(2))においてテーブルの例(その2)を示している。図14のデータ(6−1)は、作業IDが「4」の作業(作業項目)を実施中の状態のデータであり、図15のデータ(D6−2)は、作業全体の複数の作業項目(「1」〜「11」等」)における最後の作業項目(例えば「11」)まで完了した状態である(なお空白部はデータ値無し)。
【0077】
進捗データ(D6)の項目として、a:開始時刻、b:完了時刻、c:作業ID、d:進捗判定基準、e:進捗判定係数、f:推定進捗度、g:進捗度、等の情報で構成されている。各項目の詳細な意味や作成方法については後述する(図2、S202)。
【0078】
また、図16,図17は、作業特定部141が行う処理の途中経過を示すデータであり、前述した各データを用いて作成される(後述)。
【0079】
<処理>
図1に戻って、演算装置140を構成する各処理部(141〜145)の処理について説明する。また併せて図2を用いて、本装置100の作業進捗推定処理フローについて説明する(Sは処理手順を示す)。
【0080】
(S10:データ読み込み処理) まず、RFIDデータ(D1)、センサデータ(D2)以外のデータ(D3,D4等)が、入出力装置105から読み込まれ、入出力インタフェース120を介して各記憶部(134,135等)に記録される。
【0081】
(S20:データ受信処理) S10の後、作業者による作業の実施に伴い、データ取得部50(102,104)での受信・取得等を通じて、RFIDデータ(D1)及びセンサデータ(D2)が順次読み込まれ、各記憶部(131,132)に記録される。そして、S30以下の処理が繰り返される。
【0082】
(S30:作業特定処理) 作業特定部141は、RFIDデータ記憶部131に記録されたRFIDデータ(D1)と、作業データ記憶部133に記録された作業データ(D3)とを用いて、作業項目を特定する処理(S201)を行うことにより、作業特定データ記憶部135に記録される作業特定データ(D5)を作成する。これにより、各作業(作業項目)が実施(開始〜終了)された時間帯が把握・特定される。S201(S30)は、前述した第1の進捗の把握・推定処理(図20の(c))に相当する。S30における作業特定部141によるデータ(D5)の作成処理は例えば以下の手順で行われる。
【0083】
(S30−1) まず、RFID読み取りデータ(D1−1)のタグID(b)、リーダID(c)の項目をキーにして、RFIDタグデータ(D1−2)、及びRFIDリーダデータ(D1−3)を付加する。これはリレーショナルデータベースのJOIN処理等によって行うことができる。結果は、図16に示すテーブルのようになる。このテーブルは、D1(D1−1,D1−2,D1−3)の各テーブルの項目を並べた構成になっている。
【0084】
(S30−2) 次に、図16のテーブルに対して、図10の作業データ(D3)を照らし合わせて、RFID読み込みの各タイミング(時刻)に対応する作業(作業項目)の候補を検索し、図17に示すテーブルのように、i:「作業候補1」、j:「作業候補2」、k:「作業候補」、l:「作業ID」の各列のデータを追加する。
【0085】
「作業候補1」(i)は、リーダ102で読み取ったRFID101(タグ)の取り付け先からわかる作業項目の候補を作業IDによって記している。これは、図17のデータの取付種別(c)の列のデータ(例えば最初の行のデータでは「作業票」)を取り出し、作業データ(D3)中でこの名称(「作業票」)の列のデータを取り出して、これが図16のデータのタグ(d)の列のデータ(例えば「パイプA曲げ指示書」)と合致する行の「作業ID」(l)(例えば「1」)を取り出すことによって導出する。
【0086】
上記最初の行のデータでは作業IDが一意に決まったが、3番目の行のデータでは、「作業者」(c)が「作業者J」(d)であるということがわかっても、作業データ(D3)にはこの条件を満たすデータが多数存在し(作業ID(a)が「1」〜「9」の行)、一意には決まらない。この場合、処理としては、それら複数の候補(例えば「1〜9」)を当該列(「作業候補1」(i))にそのまま記載する。
【0087】
「作業候補2」(j)は、RFID101の読み取りを行ったRFIDリーダ102の設置場所からわかる作業(作業項目)の候補を作業IDによって記している。利用するデータの列が異なるだけで、処理は上記「作業候補1」の場合と同様である。
【0088】
「作業候補」(k)の列は、上記「作業候補1」(i)、「作業候補2」(j)の列で絞り込んだ候補のうち両方に含まれるものを抽出し、両方の条件に合致する作業(作業項目)を取り出したものである。例えば最初の行では「1」(i)と「1〜9」(j)との両方に含まれるものは「1」であり、5行目のデータでは「1〜9」(i)と「1,4,7」(j)との両方に含まれるものは「1,4,7」である、といった具合である。
【0089】
(S30−3) 次に、「作業候補」(k)の列のデータから、「作業ID」(l)の列のデータを求める。具体的には、まず、作業項目が一意に決まっている箇所のデータを複写する。図17の例では、1行目及び2行目が「1」、6行目が「1」、7行目が「2」、といった具合である。次に、同一の作業IDで囲まれている部分にその作業IDを複写する。例えば2行目と6行目が「1」なので、それらに囲まれる3〜5行目を「1」にする。
【0090】
次に、上記で埋まらない部分を推測する。具体的には例えば、「付加データ」(図16,図17のh)の列で、空白部分に「開始」と「完了」があること、空白部分の前が「完了」、空白部分の後が「開始」であること、「作業ID」(l)の列で「3」が漏れていることから、空白部分の「開始」と「完了」の間は「3」であると推定する。この処理の方法としては、順序や空白部分の関係、対象業務やRFIDの読み取りルールなどに関する推定ルールを設け、それに基づいて推定するのが好ましい方法であるが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
【0091】
上記で説明した方法では、上記の通り空白部分の作業を周辺のデータから推定したが、上記作業IDが「3」の作業項目についても確定ができるように、当該作業項目に関するRFID101付きの作業票を対象1として用意し、リーダ102で読み込ませること(運用方法)にしてもよい。
【0092】
また、上記のように作業及び進捗管理に関する運用方法を決めていたとしても、作業者がRFID101をリーダ102で読み取らせる動作等を忘れてしまう可能性がある。このときは、存在するべきデータが存在しないことを、上記の推定方法によって判断・検出し、読み取り漏れ(忘れ)であることを、入出力インタフェース120経由で入出力装置105等(作業者や管理者等)に対して出力(警告)することができる。読み取り漏れ警告部143は、各データ(D1,D2,D3等)を用いて、上記の検出及び警告の処理を行う。また、上記警告を行う際には、例えば作業者がリーダ102を保持する場合における当該リーダ102の出力部(画面など)をその警告情報の出力手段として利用する形としてもよい。
【0093】
最後に、「作業ID」(l)の列に記録されたデータから、IDごとに最も早い時刻が「開始時刻」、最も遅い時刻が「完了時刻」として取り出され、図12,図13に示した作業特定データ(D5−1,D5−2)ができる。
【0094】
図12,図13に示した作業特定データ(D5)を参照すると、作業(W)全体のうちどの作業項目(w)を開始または完了した状態であるか(現在実施中の作業項目など)とった進捗状況(図20の(c)第1の進捗)を把握することができる。しかしながら、このようなデータのみでは、現在実施中の作業項目(w)がどの程度まで進んでいるかといった進捗状況(図20の(d)第2の進捗、作業項目(w)の進捗度(p))についてまでは判断することができない。
【0095】
これに対し、1つの方法(従来技術)としては、図10のような作業データ(D3)の作業予定時間(h)と作業の開始後経過した時間とを比較し、その割合で当該作業の進捗度合いを推定(計算)することが考えられる。しかしこの方法では、作業者による作業(実作業)の途中において、例えば素材の搬入、工具のメンテナンス、打合せ、調整などの付随作業が非定期に行われた場合や、あるいは実作業(正味作業)以外の不定的な動作等が発生した場合などには、当該進捗度合いを高精度に推定することはできない。
【0096】
上記に対する解決手段として、本実施の形態では、進捗推定部142は、より高精度に当該進捗度合いを推定するものであり、各記憶部(131〜135)のデータ(センサデータ(D2)を含む)に基づいて、各作業項目(w)の進捗度(p)を推定する処理を行う。
【0097】
S202(S40〜S70)は、前述した第2の進捗の把握・推定処理(図20の(d))に相当する。S40〜S70で進捗推定部142により作業項目(w)単位の進捗度(p)を推定する処理方法について以下である。例えば、各作業ごとに、過去の経験などによって、正味作業や付随作業の時間割合、作業中の消費エネルギー、作業中の歩行量などがわかっている。このような情報を推定(判定)に用いることができる。
【0098】
図11の作業判定データ(D4)は上記推定に関するデータの例を表している。例えば、作業種類(a)が「溶接」の場合は、その「実作業時間」(判定項目(b))を「時間条件」(判定種類(c))として用いて判定(推定)することができる。例えば、その判定式(d)は、(作業者の)腰の加速度(例えばxはx軸方向の加速度)を利用した判定式である、「x*x+y*y+z*z<2000000」(x+y+z<200万)とする。この判定式を満たす時間帯が「実作業時間」である(そのように推定することができる)。そして、例えば過去の経験値として、実時間の「60%」(基準値(e))が、この時間(実作業時間)に相当することがわかっている。図11の作業判定データ(D4)は、上記例のように、作業項目(w)の進捗度(p)を推定するための判定ルール等を規定している。
【0099】
上記推定(判定)の仕方は、上記過去の経験による方法に限らず、例えばモデルケースを設定してシミュレーションや計測をしてそのデータや基準値を得るといった他の方法を適用しても構わない。
【0100】
(S40:進捗判定基準計算) 本実施の形態では、進捗推定部142は、進捗データ(D6)に記録されている作業ID(例えば11行目の「11」)に基づいて作業データ(D3)を参照し、当該作業の作業種類(a)が「溶接」の場合には、作業予定時間(例えば「200」)とこの基準値(e)(「60%」)とを掛け合わせた値(例えば「120」)を、D14の進捗判定基準(d)の欄に記録する。
【0101】
(S50:進捗判定係数更新) そして、上記の作業が開始されると、加速度センサで測定したデータ(D2−2)から判定式(d)で利用する腰の加速度の部分の値を抽出し、各時刻のデータに対して、この式を満たすか否かを判定し、満たす場合はD6−1の「進捗判定係数」(e)の欄の値を測定データの時間周期分加える。
【0102】
(S60:推定進捗度更新) ここで更新された「進捗判定係数」(e)の値を「進捗判定基準」(d)の値で割った割合が、「推定進捗度」(推定される作業項目(w)の進捗度(p))であり、その計算結果が、図14のテーブル(D6−1)の「推定進捗度」(f)の欄に記録される(例えばp=85/90=94%)。
【0103】
(S70:進捗度更新) 各作業が完了するまではこのfの値が最も信頼できる値であり、これが「進捗度」(g)の欄に複写される。その後、RFID読み取りデータ(D1−1)で当該作業項目の完了が確認されると、「進捗度」(g)の欄には「100%」と書き換えられる。
【0104】
ここまで、作業種類が「溶接」の作業の例で説明したが、図11(D4)に示した他の作業種類(a)の場合についても以下に説明する。
【0105】
「パイプ曲げ」作業の場合は、判定項目(b)が「実作業時間」であり、判定種類(c)が「時間条件」である。そのため、判定式(d)や基準値(e)が異なるだけで、処理手順は「溶接」の場合と同様である。ただし利用するデータが位置データであり、図8のテーブル(D2−3)または図9のテーブル(D2−4)のデータを利用する。この判定式(d)の例では、(x=3,y=5)の座標にあるパイプ曲げ装置から2m以内にいる時間を、作業時間と判断(推定)する。
【0106】
「位置決め」作業の場合は、作業者の「歩数」をカウントした「歩行量」によって判定する。歩行は、腰の加速度などによって判定する方法が一般的に知られており、本実施の形態では、この歩行の判定処理部を進捗推定部142の中に有する。加速度データが入力されると、この歩行の判定処理部で歩数が判定され、その結果が進捗判定係数(e)の欄に加えられる。推定進捗度(f)、進捗度(g)の欄の処理は「溶接」の場合と同様である。
【0107】
「切断」作業については、本例では2種類の判定項目(b)が存在する。すなわち、作業中の作業者の運動に基づく「消費エネルギー」の「積算値」によるものと、作業中の作業者の「歩行量」によるものである。これは、2種類の判定方法が存在することを表しており、これら2種類の方法で推定され、それぞれの結果の平均値によって、最終的な推定が行われる。「消費エネルギー」の値は、測定データの周期ごとに図示する判定式(d)によって計算され、その結果が進捗判定係数(e)の欄に加えられる。また「歩行量」については上記「位置決め」作業の場合と同様に、進捗判定係数(e)が計算される。そして、上記消費エネルギーに基づく進捗度と、歩行に基づく進捗度とが計算され、それらの平均値が、推定進捗度(f)の欄に記録される。
【0108】
以上、いくつかの作業種類について進捗度の推定方法を示したが、本実施の形態は、これらの推定方法には限定されず、判定式や基準値も例示したものには限定されない。また、このような判定式や基準値の設定が困難な作業については、単純に経過時間の割合で推定する方法を利用してもよいし、それを本実施の形態の方法と組み合わせて利用してもよい。また例えば重要な作業項目については複数のセンサ103を用いて詳細に推定をしてもよい。
【0109】
<出力>
(S80) 出力制御部144は、上述した処理によって作成されたデータを、集計等して出力する制御を行う。これらのデータは、例えば入出力インタフェース120を介して入出力装置105等から作業者や管理者等に対して出力、例えば画面表示等がされる。出力方法の詳細は特に限定されないが、以下に好ましい出力例を示す。
【0110】
図18には第1の出力例(その1)を示す。これは、図10のような作業データ(D3)と図14,図15のような進捗データ(D6)に基づいて、時系列的に各作業の進捗状況を図示するものであり、一般的にガントチャートと呼ばれる形態である。各作業(作業項目)を1本の線または帯状の図形で表し、その付近にその作業を示す説明を示すのが好ましい。このとき、計画上のデータと実績のデータを併記すると進捗状態がわかりやすい。進行中の作業に関しては、前述で求めた進捗度に応じた長さで表示する。図18中、例えば「パイプB曲げ」の帯は、図10のテーブル(D3)及び図14のテーブル(D6−1)の値に基づいて表示されている。上側に表示されている計画では、7月2日10時に開始し、昼休み1時間を挟んで165分後の13時45分に完了する予定であることを表している。一方下側に表示されている実績では、7月2日11時に開始したが、表示を行っている現在時刻14時には完了しておらず、完了予想時刻は15時頃になりそうであることを表している。完了予想時刻は、図14のテーブル(D6−1)の開始時刻(a)、推定進捗度(f)、現在時刻に基づいて計算したものであり、進捗度合いによってずれる。なお本発明ではこの完了予想時刻の予想方法については限定するものではない。
【0111】
また図19には別の第1の出力例(その2)を示す。このように、現在時刻(この例では7月2日14時)を起点にして、計画を表す図形の対応する割合の部分をつなぐ折れ線で表す方法(既存の方法)も好ましい例である。図14のテーブル(D6−1)に示す進捗度に基づいて、現在作業進行中である作業IDが「4」の「パイプB曲げ」については、進捗度に相当する位置に折れ線を表示している。
【0112】
以上の説明では、作業(作業項目)の数が比較的少ない例で説明したが、多数の作業者が、多数の部品、多数の装置などを扱う作業(W)を行う場合においても同様に適用可能であり、この場合、出力としては、作業者ごと、作業場所ごと、対象の部品や製品ごと、利用する装置ごと、などに分類した形態で出力することも好ましい。
【0113】
以上のように、RFIDデータ(D1)を利用した進捗度(第1の進捗)に対して、センサデータ(D2)を利用した進捗度(第2の進捗)を利用(組み合わせ)する構成により、作業者がリーダ102での読み取り動作などの特別な動作を行わなくても、1単位の作業(作業項目)の途中の進捗度合いが把握(推定)できる。仮にセンサ103を利用せず、RFID101などのID媒体のみによる手段でこの1単位の作業の途中の進捗度合いを把握しようとすると、例えば「パイプB曲げ」という1単位の作業を更にいくつかの要素作業等の単位に分割(細分化)し、当該各単位の開始/完了ごとにID媒体のリーダ読み取り動作等を行わせるといった必要がある。
【0114】
また、第2の出力例として、前述した進捗データ(D6)(図14,図15等)をそのまま表の形で画面に出力する形態としてもよい。コンピュータ(装置100)上、作業IDを検索して該当する作業項目の進捗状況を見る場合などでは有益である。前述のテーブルのデータをそのまま出力して他のシステムで利用する形態としてもよい。
【0115】
また、第3の出力例として、正味作業時間の把握や、作業判定データ(D4)の基準値(e)の改善や更新を行うための情報を画面に出力する形態としてもよい。図21は、その好ましい出力例(その1)を示したものである。この表では、完了した作業の進捗データ(図15)の各項目に加えて、開始時刻(a)、完了時刻(b)から計算した経過時間(c)、作業ID(d)に対応する作業種類(e)、判定項目(f)、判定種類(g)、経過時間(c)と完了した作業の進捗判定係数(i)から計算した1分あたりの進捗判定係数の値(進捗判定係数/経過時間)(j)、等の情報が出力される。
【0116】
また図22は、図21のデータ値を作業種類(e)ごとに順序付けした出力例(その2)である(各項目の意味は同じ)。作業種類(e)、判定項目(f)、判定種類(g)ごとに、1分あたりの進捗判定係数の値(進捗判定係数/経過時間)(j)が比較しやすくなっている。作業種類(e)、判定項目(f)、判定種類(g)が同一で作業の効率が同一であれば、この値(j)はほぼ同一になるはずであるが、一般には各種のばらつき要因があり、この値(j)はばらつく。このようなデータを多数集め、作業種類(e)、判定項目(f)、判定種別(g)ごとにまとめて平均化などの統計的な処理を行うと、作業判定データ(D4)(図11)の基準値(e)との違いがわかり、これにより、作業判定データ(D4)の内容を更新することができる(即ち推定の精度を向上できる)。
【0117】
また、このとき、同一の作業種類(e)でも例えば部品の大きさなど作業対象の特性の違い、作業者の違い、利用設備・装置の違いなどによって経過時間(c)、進捗判定係数(i)などが異なることがあるので、これらの違いを考慮して細分化した別々の作業種類(e)とすることもできる。
【0118】
以上説明したように、本実施の形態によれば、RFIDデータ(D1)を利用した第1の処理による第1の進捗の把握(作業(W)における作業項目(w)の特定)と、センサデータ(D2)を利用した第2の処理による第2の進捗の把握(作業項目(w)の途中の進捗度(p)の推定)とを使い分けて組み合わせた構成であり、これにより作業(W)全体の進捗の把握を効率的に実現している。
【0119】
上記構成により特に、(1)作業(W)全体において、作業項目(w)の途中などの時に作業者によりRFID101をリーダ102で読み取らせる動作等の必要な回数を減らすことができ(又は少ないままで済み)、作業者の負担を少なくできる(作業者は本来の作業に集中できる)。(2)また、作業(W)全体において、作業項目(w)の開始/終了、及び作業項目(w)の途中の進捗を含む、進捗状況の把握ができる。例えば長時間で不定的な動作等がある作業(W)の場合においても、当該作業(W)を単位としてどの程度まで進んだかを把握することができる。(3)更に、作業者が上記必要な読み取り動作等を忘れた場合にも適切に対処できる。即ち例えばその忘れ(漏れ)を検出して警告でき、問題を防止することができる。
【0120】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の作業進捗管理システム(作業進捗推定装置)について説明する。実施の形態2は、実施の形態1との主な違いは以下である。
【0121】
(1)装置100において、演算装置140は、更に、図1の作業項目選択部145を追加的に備える。
【0122】
(2)管理対象となる作業の形態として、作業の実施日などの大枠の予定は所定の範囲で決まっているが、作業(作業項目)の開始時刻や順序などは決まっていない。即ち所定の範囲内で作業者が作業(作業項目)の開始時刻や順序などを適宜決めて実施することができる。このため、作業の予定(規定)を表す作業データ(D3)において、前記図10の開始予定時刻(b)は無く、図23のように作業予定日(b)となっている。
【0123】
(3)(作業者による)RFID101のリーダ102での読み取りは、対象1として作業票のみであり、かつ、それらは(個別の作業の開始等の時ではなく)完了した作業(作業項目)に対応したものだけ、例えば夕方に一括して読み取りが行われる。ただし、すべての作業(作業項目)に作業票(対応RFID101)が対応付けられている。作業予定日(b)の日内に完了しなかった作業(作業項目)については、例えば翌日以降、当該作業が完了した日に、対応する作業票(対応RFID101)が読み取りされる。
【0124】
実施の形態2では、上記のような方法において作業者が作業を行うと、読み込まれた各作業票(対応RFID101)に対応する作業(作業項目)は、読み込まれた日またはその前日に行われたことがわかる。そこで、当日及び前日のセンサデータ(D2)を読み込み、作業判定データ(D4)を利用すると、各作業(作業項目)がどの時間帯に行われたかを判定(推定)することができる。例えば「溶接」に対応する作業票(対応RFID101)がリーダ102等を介して読み込まれたとき、当日及び前日の作業者の腰のセンサデータ(D2)を取り出し、前記図11に示す判定式(d)で判定すると、「溶接」作業を実施していたと判断できる時間帯が特定できる。
【0125】
作業項目選択部145は、上記のような処理(即ち各作業項目(w)が実施された時間帯を特定(推定)する処理)を行う。まず、読み込まれた作業票(対応RFID101)に対応するRFIDデータ(D1)から、作業(作業項目)の種類の候補を特定する。候補として、例えば、パイプP、パイプQの曲げと、パイプPの溶接が行われたことがわかる。
【0126】
次に、判定の対象となる期間(例えば前日読み取りを行った時刻から当日読み取りを行なった時刻までの間)のセンサデータ(D2)を抽出し、そのデータを単位時間(例えば1時間とか10分)に分割する。図11に示す作業判定データ(D4)によるルールから、上記候補の作業(作業項目)の種類に対応する判定式(d)を抽出し、各時間帯(単位時間)に当該判定式によって計算する。
【0127】
図24に、上記作業項目選択部145による処理の結果のデータ例を示す。この例では、時間帯(開始時刻(a)〜完了時刻(b))を1時間とし、前日の9時から当日の10時までを対象とした。作業項目として「パイプ曲げ」と「溶接」の場合である。「実測値」(c,f)の部分は、各時間帯の測定データ(D2)に対し、上記候補の作業項目ごとに図11の判定式(d)でその時間帯分の値を計算したものである。「基準値」(d,g)の部分は、図11の「基準値」(e)を1時間当たりで計算した値である。「比率」(e,h)は、実測値(c,f)と基準値(d,g)の比率であり、100%に近いとその作業項目である可能性が高いと判断できる。例えば100%±20%の範囲で判定すると、9時から12時の時間帯(1〜3行目)、及び15時から17時の時間帯(6〜7行目)では、「パイプ曲げ」の可能性が高い。また、13時から15時の時間帯(4〜5行目)では、「溶接」の可能性が高い。また、当日の8時から10時の時間帯(8〜9行目)では、どちらの作業とも特性が異なっており、候補以外の作業が行われたか、あるいは当該作業に関するRFID101の読み取りが未完(忘れ等)であると推測できる。なお、上記よりも時間帯を細かく区切れば更に詳細な時間帯で特定ができ、詳細な進捗や作業ごとの所要時間を把握できる。
【0128】
上記処理の結果得られる作業(作業項目)と時間帯との対応関係のデータは、出力制御部144によって制御されて、入出力インタフェース120を介して、入出力装置105等に出力される。
【0129】
上記のように実施の形態2では、上記運用方法(複数のRFID101の一括の読み取り動作等)の場合に対応した処理を行うものであり、センサデータ(D2)等を用いて、作業(W)全体における各作業項目(w)が実施された時間帯を特定(推定)する処理(候補から作業項目を選択する処理)を行う構成によって、作業(W)の進捗の把握を効率的に実現している。
【0130】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、例えば工場や工事などにおける作業進捗管理システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0132】
1…対象(物)、2…場、50…データ取得部、100…作業進捗推定装置、101…RFID、102…リーダ(RFIDリーダ)、103…センサ、104…中継装置(センサ受信部)、105…入出力装置、110…通信装置、120…入出力インタフェース、130…記憶装置、131…RFIDデータ記憶部、132…センサデータ記憶部、133…作業データ記憶部、134…作業判定データ記憶部、135…作業特定データ記憶部、136…進捗データ記憶部、140…演算装置、141…作業特定部、142…進捗推定部、143…読取漏れ警告部、144…出力制御部、145…作業項目選択部、190…バス、D1…RFIDデータ、D2…センサデータ、D3…作業データ、D4…作業判定データ、D5…作業特定データ、D6…進捗データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業の進捗状況を推定しその結果情報を出力する作業進捗推定装置であって、
前記作業における所定の対象物に対してID媒体が対応付けられ、前記ID媒体に対してリーダが対応付けられ、
前記作業における所定の対象物に対してセンサが対応付けられ、前記センサに対して中継装置が対応付けられ、
前記ID媒体による第1のデータを前記リーダでの読み取り動作を介して受信または取得する第1の手段と、
前記センサによる第2のデータを前記中継装置を介して受信または取得する第2の手段と、
前記第1のデータに基づいて、前記作業を構成する作業項目における、開始または完了した作業項目を特定し、その結果の第5のデータを作成する第1の処理を行う第1の処理部と、
前記第2のデータに基づいて、前記特定された作業項目における実施の途中の状態を含む当該作業項目の進捗度を推定し、その結果の第6のデータを作成する第2の処理を行う第2の処理部と、
前記第5のデータが表す前記作業項目と、前記第6のデータが表す当該作業項目の進捗度とを対応付けた、前記作業の進捗状況を示す結果情報を出力する処理を行う出力制御部と、を有すること、を特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業進捗推定装置において、
前記作業の内容を表す、前記作業を構成する作業項目の情報を含む、第3のデータを入力する処理を行い、
前記第1の処理部は、前記第1のデータと前記第3のデータとを用いて前記第1の処理を行うこと、を特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項3】
請求項1記載の作業進捗推定装置において、
前記第2の処理部は、
前記作業項目の進捗度を推定するための判定用のルール情報を含む第4のデータを入力する処理と、
前記第2のデータと前記第4のデータとに基づいて、前記作業項目の進捗度を推定し、前記第6のデータを作成する処理と、を行うこと、を特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項4】
請求項3記載の作業進捗推定装置において、
前記第4のデータは、前記作業項目の各々が実作業の実施状態かその他の状態かを判定するための基準の情報を含んでおり、
前記第2の処理部による前記第6のデータを作成する処理では、前記第5のデータが表す前記作業項目に基づいて、対応する前記基準の情報を抽出し、当該基準と前記第2のデータに基づいて、前記作業項目の進捗度を推定し前記第6のデータを作成すること、を特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項5】
請求項1記載の作業進捗推定装置において、
前記作業の内容を表す、前記作業を構成する作業項目の情報を含む、第3のデータを入力する処理を行い、
前記第3のデータと前記第5のデータとを対応付けて照合することにより、前記作業項目の漏れを検出し、当該漏れを示す情報を出力して警告する処理を行う警告部を有すること、を特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項6】
請求項1記載の作業進捗推定装置において、
前記第1の処理部は、前記第1のデータに基づいて、前記作業項目の各々の開始及び完了の時刻を特定する処理を行い、
前記第2の処理部は、前記第2のデータに基づいて、前記作業項目の各々の実作業の時間を推定する処理を行い、
前記出力制御部は、前記特定した前記作業項目の各々の開始及び完了の時刻に関するデータと、前記推定した前記実作業の時間とを対応付けた情報を出力すること、を有することを特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項7】
請求項3記載の作業進捗推定装置において、
前記第4のデータ、前記第6のデータを用いて、前記作業項目ごと又はその種類ごとに、当該作業項目の実施の[経過時間]と、当該作業項目の[進捗判定係数]と、当該[進捗判定係数]/[経過時間]で表される単位時間当たりのデータ値と、を計算し、それらを含む情報を前記出力制御部により出力すること、を特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項8】
請求項1記載の作業進捗推定装置において、
前記第1の処理部により特定される作業項目として1または複数の候補を有し、
前記第2のデータに基づいて、前記候補から前記作業項目を選択する処理を行う選択部を有すること、を特徴とする作業進捗推定装置。
【請求項9】
コンピュータの情報処理を用いて、作業の進捗状況を推定しその結果情報を出力する作業進捗推定方法であって、
前記作業における所定の対象物に対してID媒体が対応付けられ、前記ID媒体に対してリーダが対応付けられ、
前記作業における所定の対象物に対してセンサが対応付けられ、前記センサに対して中継装置が対応付けられ、
前記ID媒体による第1のデータを前記リーダでの読み取り動作を介して受信または取得する第1の手順と、
前記センサによる第2のデータを前記中継装置を介して受信または取得する第2の手順と、
前記第1のデータに基づいて、前記作業を構成する作業項目における、開始または完了した作業項目を特定し、その結果の第5のデータを作成する第1の処理を行う手順と、
前記第2のデータに基づいて、前記特定された作業項目における実施の途中の状態を含む当該作業項目の進捗度を推定し、その結果の第6のデータを作成する第2の処理を行う手順と、
前記第5のデータが表す前記作業項目と、前記第6のデータが表す当該作業項目の進捗度とを対応付けた、前記作業の進捗状況を示す結果情報を出力する処理を行う手順と、を有すること、を特徴とする作業進捗推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図6】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−107836(P2011−107836A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260309(P2009−260309)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】