説明

IL−17拮抗性抗体

IL−17介在性疾患または病気、例えば関節リウマチの処置における使用のための、重鎖および軽鎖の超可変領域が定義されているようなアミノ酸配列を有している、IL−17結合分子、特にヒトIL−17に対する抗体、より好ましくは、IL−17に対するヒト抗体が提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、IL−17結合分子、特にヒトIL−17に対する抗体、更に好ましくは、ヒトIL−17に対するヒト抗体(IL−17Aとも命名されている)およびIL−17介在性疾患および状態の処置におけるこうした抗体の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、関節リウマチ(RA)に存在する、T細胞によって誘導されるサイトカインであるIL−17は、特にIL−1およびTNF−αと共に炎症誘発性サイトカインとして作用する(Chabaud M & Miossec P (1999) Arthritis Rheum 42,963-970; Awane M et al(1999) J. Immunol 162, 5337-5344)。IL−17はMMP産生を誘発し、かつTIMPをダウンレギュレートし(Jovanovic DV et al(2001) J. Rheumatol. 28, 712-718)、そして、IL−1とIL−17のブロックは、イン・ビボにおいて、炎症および骨の破壊に対して相乗的な効果を有する(Chabaud M & Miossec(2001) Arthritis Rheum 44, 1293-1303)。不適切または過剰なIL−17産生は、関節リウマチ(Witowski et al., 2004 Cell Mol Life Sci 61:567-579)、骨関節炎、骨インプラントの緩み、急性移植拒絶反応(Antonysamy et al., 1999, J Immunol 162, 577-584; van Kooten et al., 1998, J Am Soc Nephrol 9 , 1526-1534)、敗血症、敗血症性またはエンドトキシンショック、アレルギー、喘息(Molet et al., 2001, J Allergy Clin Immunol 108, 430-438)、骨喪失、乾癬(Teunissen et al., 1998, J Invest Dermatol 111, 645-649)、虚血、全身性硬化症(Kurasawa et al., 2000, Arthritis Rheum 43, 2455-2463)、卒中、および他の炎症性疾患のような様々な疾患および障害の病因に関連する。IL−17に対する抗体は、IL−17介在性疾患および障害の処置における使用が提案されてきた;例えば、WO 95/18826およびその導入における考察参照。
【0003】
我々は、本発明により、IL−17介在性疾患および障害の処置における使用に適当なヒトIL−17に対する改善された抗体を調製した。
【発明の開示】
【0004】
従って、本発明は、順に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3{前記CDR1は、配列番号1のアミノ酸配列(N−Y−W−M−N)を有し、前記CDR2は、配列番号2のアミノ酸配列(A−I−N−Q−D−G−S−E−K−Y−Y−V−G−S−V−K−G)を有し、そして前記CDR3は、配列番号3のアミノ酸配列(D−Y−Y−D−I−L−T−D−Y−Y−I−H−Y−W−Y−F−D−L)を有する};またはその直接CDR等価物を含む、少なくとも一個の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含んでなる、抗原結合部位を含んでなるIL−17結合分子を提供する。
【0005】
従って、本発明は、また、少なくとも一個の免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)を含んでなるIL−17結合分子であって、順に、超可変領域CDR1'、CDR2'およびCDR3'{前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列(R−A−S−Q−S−V−S−S−S−Y−L−A)を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列(G−A−S−S−R−A−T)を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列(Q−Q−Y−G−S−S−P−C−T)を有する}またはその直接CDR'等価物を含む、IL−17結合分子を提供する。
【0006】
本発明の別の態様では、本発明は、順に超可変領域CDR1−x、CDR2−xおよびCDR3−x{前記CDR1−xは、配列番号11のアミノ酸配列(G−F−T−F−S−N−Y−W−M−N)を有し、前記CDR2−xは、配列番号12のアミノ酸配列(A−I−N−Q−D−G−S−E−K−Y−Y)を有し、そして前記CDR3−xは、配列番号13のアミノ酸配列(C−V−R−D−Y−Y−D−I−L−T−D−Y−Y−I−H−Y−W−Y−F−D−L−W−G)を有する};またはその直接CDR−x等価物を含む、少なくとも一個の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含んでなる、抗原結合部位を含んでなるIL−17結合分子を提供する。
【0007】
更に、本発明は、また、重鎖(V)および軽鎖(V)可変ドメインの両方を含んでなるIL−17結合分子であって;
前記IL−17結合分子は、
a)順に、超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3(前記CDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、前記CDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を有する)またはその直接CDR等価物を含む、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
b)順に超可変領域CDR1'、CDR2'およびCDR3'(前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列を有する)、またはその直接CDR'等価物を含む、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)
を含んでなる少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子も提供する。
【0008】
更に、本発明は、また、重鎖(V)および軽鎖(V)可変ドメインの両方を含んでなるIL−17結合分子であって;前記IL−17結合分子は、
a)順に超可変領域CDR1−x、CDR2−xおよびCDR3−x(前記CDR1−xは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、前記CDR2−xは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3−xは、配列番号13のアミノ酸配列をする)またはその直接CDR−x等価物を含む、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
b)順に超可変領域CDR1'、CDR2'およびCDR3'(前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列を有する)またはその直接CDR'等価物を含む、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)
を含んでなる少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子も提供する。
【0009】
別途記載のない限り、ポリペプチド鎖はいずれも、アミノ酸配列はN末端で始まり、C末端で終了するように本明細書中で記載されている。抗原結合部位が、VおよびVドメインの両方を含んでなる場合は、これらは、同一のポリペプチド分子上に位置してもよいし、または、好ましくは、それぞれのドメインは、異なった鎖上に存在してもよく、Vドメインは、免疫グロブリン重鎖部分またはその断片の一部であり、そしてVは、免疫グロブリン軽鎖部分またはその断片の一部である。
【0010】
“IL−17結合分子”とは、単独もしくは他の分子との組み合わせで、IL−17抗原に結合することができるすべての分子を意味する。この結合反応は、IL−17のその受容体との結合の阻害を測定するための、例えば、結合アッセイ、競合アッセイまたはバイオアッセイを含む標準的方法(定量的アッセイ)または他の任意の結合アッセイによって、無関係の特異性(unrelated specificity)であるが、同一のアイソタイプである抗体、例えば、抗CD25抗体が使用されるネガティブコントロール試験を対照とすることにより、示し得る(実施例1も参照)。
【0011】
抗原結合分子の例としては、B細胞またはハイブリドーマによって産生される抗体、およびキメラ、CDR移植またはヒト抗体またはそれらの任意の断片、例えば、F(ab')およびFab断片、ならびに一本鎖または単一ドメイン抗体が含まれる。
【0012】
一本鎖抗体は、通例10〜30個のアミノ酸、好ましくは、15〜25個のアミノ酸からなるペプチドリンカーによって共有結合される抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインから構成されている。それ故、こうした構造には重鎖および軽鎖の定常部は含まれず、小ペプチドスペーサーは、定常部全体に比べて抗原性は少ないであろうと考えられている。“キメラ抗体”とは、重鎖もしくは軽鎖またはその両方の定常領域がヒト起源であり、一方、重鎖と軽鎖の両方の可変ドメインは、非ヒト(例えば、マウス)起源かまたはヒト起源であるが、異なったヒト抗体に由来する、抗体を意味する。“CDR移植抗体”とは、超可変領域(CDR)が、非ヒト(例えば、マウス)抗体または異なったヒト抗体のようなドナーの抗体に由来し、一方、免疫グロブリンの他の部分の全部または実質的に全部、例えば、定常部および可変ドメインの高度に保存された部分、すなわち、フレームワーク領域が、アクセプター抗体、例えば、ヒト起源の抗体に由来する、抗体を意味する。しかしながら、CDR移植抗体は、フレームワーク領域中、例えば、超可変領域に隣接しているフレームワーク領域の部分中に、ドナー配列の数アミノ酸を含むことができる。“ヒト抗体”とは、例えば、EP 0546073 B1、USP 5545806、USP 5569825、USP 5625126、USP 5633425、USP 5661016、USP 5770429、EP 0438474 B1およびEP 0463151 B1に一般的に記載されているとおり、重鎖および軽鎖の両方の定常領域および可変領域が、すべてヒト起源であるか、または、必ずしも同一の抗体に由来するわけではなく、そしてマウスの免疫グロブリン可変および定常部遺伝子がヒトの対応物によって置き換えられているマウスによって産生される抗体を含むヒト起源の配列と実質的に同一である抗体を意味する。
【0013】
本発明の特に好ましいIL−17結合分子は、ヒト抗体であり、特に、以下の実施例1および2の中で述べられているAIN457抗体である。
【0014】
すなわち、好ましいキメラ抗体において、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインは、ヒト起源、例えば、配列番号10(=軽鎖の可変ドメイン、すなわち、配列番号10のアミノ酸1〜109)および配列番号8(=重鎖の可変ドメイン、すなわち、配列番号8のアミノ酸1〜127)中に示されているAIN457抗体の可変ドメインである。定常部ドメインは、また、適当なヒト定常部ドメイン、例えば、“Sequences of Proteins of Immunological Interest”, Kabat E. A. et al, US Department of Health and Human Services, Public Health Service, National Institute of Health中に記載されているようなドメインを含んでなるのが好ましい。
【0015】
超可変領域は、ヒト起源であることが好ましいが、任意の種類のフレームワーク領域に結合していてもよい。適当なフレームワーク領域は、Kabat E. A. et al, 前掲書中に述べられている。好ましい重鎖フレームワーク領域は、例えば、AIN457抗体のヒト重鎖フレームワーク領域であるヒト重鎖フレームワーク領域である。これは、順に、例えば、FR1(配列番号8のアミノ酸1〜30)、FR2(配列番号8のアミノ酸36〜49)、FR3(配列番号8のアミノ酸67〜98)およびFR4(配列番号8のアミノ酸117〜127)の領域から構成されている。AIN457のX線分析によって決定された超可変領域を考慮すると、別の好ましい重鎖フレームワーク領域は、順に、FR1−x(配列番号8のアミノ酸1〜25)、FR2−x(配列番号8のアミノ酸36〜49)、FR3−x(配列番号8のアミノ酸61〜95)およびFR4(配列番号8のアミノ酸119〜127)の領域から構成されている。同様な方法で、軽鎖フレームワーク領域は、順に、FR1'(配列番号10のアミノ酸1〜23)、FR2'(配列番号10のアミノ酸36〜50)、FR3'(配列番号10のアミノ酸58〜89)およびFR4'(配列番号10のアミノ酸99〜109)の領域から構成されている。
【0016】
従って、本発明は、また、1位のアミノ酸から始まって127位のアミノ酸で終了する配列番号8に示されているアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する第一のドメインまたは上記に述べた第一のドメインと、1位のアミノ酸から始まって109位のアミノ酸で終了する配列番号10に示されているアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する第二のドメインを含んでなる、少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなるIL−17結合分子を提供する。
【0017】
すべてのヒトにおいて天然に発見される蛋白質に対して惹起されるモノクローナル抗体は、通例、非ヒト系、例えば、マウスで作成され、そして、それ自身通常非ヒト蛋白質である。この直接的な結果として、ハイブリドーマによって産生される異種抗体が、ヒトに投与されたとき、大部分は異種免疫グロブリンの定常部によって介在される好ましくない免疫応答を誘出する。これにより、長期間にわたって投与することができないので、こうした抗体の使用が明らかに制限される。それ故、ヒトに投与したとき、実質的に同種異系応答を誘出しそうもない、一本鎖、単一ドメイン、キメラ、CDR移植、または特に、ヒト抗体を使用することが特に好ましい。
【0018】
上記を鑑みると、本発明のより好ましいIL−17結合分子は、少なくとも
a)(i)順に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3またはその直接CDR等価物を含む可変ドメインおよび(ii)ヒト重鎖の定常部またはその断片を含んでなる(前記CDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、前記CDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を有する)、免疫グロブリン重鎖またはその断片;および
b)(i)順に超可変領域および、所望により、また、CDR1'、CDR2'、およびCDR3'超可変領域またはその直接CDR'等価物を含む可変ドメインおよび(ii)ヒト軽鎖の定常部またはその断片を含んでなる(前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列を有する)、免疫グロブリン軽鎖またはその断片
を含んでなるヒト抗IL−17抗体から選択される。
【0019】
あるいは、本発明のIL−17結合分子は、
a)順に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3またはその直接CDR等価物(前記CDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、前記CDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を有する)を含んでなる第一のドメイン;および
b)超可変領域CDR1'、CDR2'およびCDR3'またはその直接CDR'等価物(前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列を有する)を含んでなる、第二のドメイン;および
c)第一のドメインのN末端と第二のドメインのC末端に、または第一のドメインのC末端と第二のドメインのN末端に結合しているペプチドリンカー
を含んでなる抗原結合部位を含んでなる、一本鎖結合分子から選択することができる。
【0020】
よく知られているように、一個の、ほんの少数のまたは数個でさえアミノ酸の欠失、付加または置換のようなアミノ酸配列の小さい変更は、実質的に同一の特性を有する元の蛋白質の対立形体に至り得る。
【0021】
従って、“その直接CDR等価物”という用語は、順に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3(CDR1、CDR2、およびCDR3の代わりに)を含んでなるIL−17結合分子を意味し、ここで
(i)超可変領域CDR1は配列番号1に示されている超可変領域CDR1と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(ii)超可変領域CDR2は配列番号2に示されている超可変領域CDR2と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(iii)超可変領域CDR3は配列番号3に示されている超可変領域CDR3と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(iv)順に超可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含んでなるこうした分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される。
【0022】
同様に、“その直接CDR−x等価物”という用語は、順に超可変領域CDR1−x、CDR2−xおよびCDR3−x(CDR1−x、CDR2−x、およびCDR3−xの代わりに)を含んでなるIL−17結合分子を意味し、ここで
(v)超可変領域CDR1−xは配列番号11に示されている超可変領域CDR1−xと3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(vi)超可変領域CDR2−xは配列番号12に示されている超可変領域CDR2−xと3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(vii)超可変領域CDR3−xは配列番号13に示されている超可変領域CDR3−xと3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(viii)順に超可変領域CDR1−x、CDR2−x、およびCDR3−xを含んでなるこうした分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される。
【0023】
同様に、“その直接CDR'等価物”という用語は、順に超可変領域CDR1'、CDR2'およびCDR3'を含んでなるドメインを意味し、ここで
(i)超可変領域CDR1'は配列番号4に示されている超可変領域CDR1'と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(ii)超可変領域CDR2'は配列番号5に示されている超可変領域CDR2'と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(iii)超可変領域CDR3'は配列番号6に示されている超可変領域CDR3'と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる;および
(iv)順に超可変領域CDR1'、CDR2'、およびCDR3'を含んでなるこうした分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される。
【0024】
あるいは、本発明のIL−17結合分子は、
順に、
a)超可変領域CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)およびCDR3(配列番号3);または
b)超可変領域CDR1、CDR2、CDR3
[前記超可変領域CDR1は、配列番号1に示されている超可変領域CDR1と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、
前記超可変領域CDR2は、配列番号2に示されている超可変領域CDR2と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして
前記超可変領域CDR3は、配列番号3に示されている超可変領域CDR3と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして
順に超可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含んでなる前記結合IL−17分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができる(前記阻害活性は、ヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される)]
を含む、少なくとも一個の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含んでなる、少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子であってもよい。
【0025】
同様に、本発明のIL−17結合分子は、
順に、
a)超可変領域CDR1−x(配列番号11)、CDR2−x(配列番号12)およびCDR3−x(配列番号13);または
b)超可変領域CDR1−x、CDR2−x、CDR3−x
[前記超可変領域CDR1−xは、配列番号11に示されているCDR1−xの超可変領域と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、
前記超可変領域CDR2−xは、配列番号12に示されているCDR2−xの超可変領域と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、そして
前記超可変領域CDR3−xは、配列番号13に示されているCDR3−xの超可変領域と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして
順に超可変領域CDR1−x、CDR2−x、およびCDR3−xを含んでなる前記結合IL−17分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される]
を含む、少なくとも一個の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含んでなる、少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子であってもよい。
【0026】
同様に、本発明のIL−17結合分子は、
順に、
a)超可変領域CDR'1(配列番号4)、CDR'2(配列番号5)およびCDR'3(配列番号6);または
b)超可変領域CDR1'、CDR2'、CDR3'
[前記超可変領域CDR'1は、配列番号4に示されている超可変領域CDR'1と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、
前記超可変領域CDR'2は、配列番号5に示されている超可変領域CDR'2と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、そして
前記超可変領域CDR'3は、配列番号6に示されている超可変領域CDR'3と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして
順に超可変領域CDR'1、CDR'2、およびCDR'3を含んでなる前記結合IL−17分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される]
を含む、少なくとも一個の免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)を含んでなる、少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子であってもよい。
【0027】
あるいは、本発明のIL−17結合分子は、重鎖(V)と軽鎖(V)部ドメインの両方の可変ドメインを含んでなるIL−17結合分子であってもよく、前記IL−17結合分子は、
a)順に超可変領域CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)およびCDR3(配列番号3)を含んでなる免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
順に超可変領域CDR1'(配列番号4)、CDR2'(配列番号5)およびCDR3'(配列番号6)を含んでなる免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);
または
b)順に超可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3(前記超可変領域CDR1は、配列番号1に示されている超可変領域CDR1と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、前記超可変領域CDR2は、配列番号2に示されている超可変領域CDR2と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして、前記超可変領域CDR3は、配列番号3に示されている超可変領域CDR3と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる)を含んでなる免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
順に超可変領域CDR1'、CDR2'、CDR3'(前記超可変領域CDR'1は、配列番号4に示されている超可変領域CDR'1と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、前記超可変領域CDR'2は、配列番号5に示されている超可変領域CDR'2と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして、前記超可変領域CDR'3は、配列番号6に示されている超可変領域CDR'3と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる)を含んでなる免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);
[順に超可変領域CDR1、CDR2、CDR3、CDR'1、CDR'2、およびCDR'3を含んでなる、b)中で定義されている前記結合IL−17分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される]
を含む、少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、前記IL−17結合分子である。
【0028】
あるいは、本発明のIL−17結合分子は、重鎖(V)と軽鎖(V)部ドメインの両方の可変ドメインを含んでなるIL−17結合分子であってもよく、前記IL−17結合分子は、
a)順に超可変領域CDR1−x(配列番号11)、CDR2−x(配列番号12)およびCDR3−x(配列番号13)を含んでなる免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
順に超可変領域CDR1'(配列番号4)、CDR2'(配列番号5)およびCDR3'(配列番号6)を含んでなる免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);または
b)順に超可変領域CDR1−x、CDR2−x、およびCDR3−x、前記超可変領域CDR1−x、CDR2−x、CDR3−x(前記超可変領域CDR1−xは、配列番号11に示されている超可変領域CDR1−xと3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、前記超可変領域CDR2−xは、配列番号12に示されている超可変領域CDR2−xと3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして、前記超可変領域CDR3−xは、配列番号13に示されている超可変領域CDR3−xと3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる)を含んでなる、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
順に超可変領域CDR1'、CDR2'、CDR3'(前記超可変領域CDR'1は、配列番号4に示されている超可変領域CDR'1と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり、前記超可変領域CDR'2が、配列番号5に示されている超可変領域CDR'2と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なり;そして、前記超可変領域CDR'3が、配列番号6に示されている超可変領域CDR'3と3個、好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が異なる)を含んでなる、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);
[順に超可変領域CDR1、CDR2、CDR3、CDR'1、CDR'2、およびCDR'3を含んでなる、b)中で定義されている前記結合IL−17分子は、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される]
を含んでなる、少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、前記IL−17結合分子である。
【0029】
IL−17のその受容体への結合を阻害することは、好都合なことに、本明細書中で以下に述べられているようなアッセイを含めて、様々なアッセイで試験することができる。“同一の程度まで”という用語は、参照および等価な分子が、統計に基づいて、本明細書で言及するアッセイの一つにおいて(実施例1参照)実質的に同一のIL−17阻害活性を示すことを意味する。例えば、本発明のIL−17結合分子は、通例、ヒトの皮膚線維芽細胞中のヒトIL−17によって誘発されるIL−6の産生に基づいてヒトIL−17の阻害のIC50を有しており、+/−5倍以内、すなわち、その10nM以下、より好ましくは、9、8、7、6、5、4、3または2nMであり、好ましくは、実施例1中で述べられているようにアッセイされた場合、対応する参照分子のIC50と実質的に同一である。
【0030】
あるいは、使用されるアッセイは、可溶性のIL−17受容体(例えば、実施例1のヒトIL−17 R/Fc構築物)および本発明のIL−17結合分子によるIL−17の結合の競合的阻害アッセイであってもよい。
【0031】
最も好ましくは、ヒトIL−17抗体は、少なくとも、
a)配列番号8中に示されている、1位のアミノ酸から始まって127位のアミノ酸で終了するアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメインとヒト重鎖の定常領域を含んでなる一個の重鎖;および
b)配列番号10中に示されている、1位のアミノ酸から始まって109位のアミノ酸で終了するアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメインとヒト軽鎖の定常領域を含んでなる一個の軽鎖
を含んでなる。
【0032】
ヒト重鎖の定常領域は、γ、γ、γ、γ、μ、α、α、δまたはεタイプであってもよいが、好ましくは、γタイプ、より好ましくは、γタイプであり、一方、ヒト軽鎖の定常領域は、κまたはλタイプ(λ、λおよびλのサブタイプを含む)であってもよいが、好ましくは、κタイプである。こうした定常領域のすべてのアミノ酸配列は、Kabat et al(前掲)中に提供されている。
【0033】
本発明の結合分子のコンジュゲート(conjugates)、例えば、酵素または毒素または放射性同位体のコンジュゲートもまた本発明の範囲内に含まれる。
【0034】
“ポリペプチド”は、本明細書で特記されない限り、ペプチド結合によって互いに結合しているアミノ酸を含んでなり、N末端で始まり、C末端で終了するアミノ酸配列を有する任意のペプチドまたは蛋白質を含む。好ましくは、本発明のポリペプチドは、モノクローナル抗体であり、より好ましくは、キメラ(V移植とも呼ばれる)またはヒト化(CDR移植とも呼ばれる)モノクローナル抗体であり、最も好ましいのは完全なヒト抗体であり、例えば、実施例1に例示されている技術によって得られる。このヒト化(CDR移植)または完全なヒトモノクローナル抗体は、アクセプター抗体のフレームワーク領域(FR)配列に導入される更なる変異体を含んでも含まなくてもよい。
【0035】
本明細書中で使用されるポリペプチドの機能的誘導体は、本発明のポリペプチドと同様に定性的な生物学的活性を有する、すなわち、ヒトIL−17と結合する能力を有している分子を含んでいる。機能的誘導体には、本発明のポリペプチドの断片およびペプチドアナログが含まれる。断片は、例えば、特定の配列の本発明のポリペプチドの配列内の部分を含んでなる。“誘導体”という用語は、例えば、特定の配列の本発明のポリペプチドのアミノ酸配列変異体、および共有結合的修飾を定義するために使用されている。例えば、特定の配列の、例えば、軽鎖および重鎖の超可変領域の本発明のポリペプチドの機能的誘導体は、好ましくは、例えば、特定の配列のアミノ酸配列の本発明のポリペプチドと、少なくとも約65%、より好ましくは、少なくとも約75%、更により好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約95、96、97、98、99%の全配列相同性を有し、そしてヒトIL−17を結合させる能力を実質的に維持し、または、例えば、IL−17誘発ヒト皮膚線維芽細胞のIL−6の産生を中和する。
【0036】
“共有結合修飾”という用語は、例えば、特定の配列の、本発明のポリペプチド;またはその断片の、有機蛋白質様または非蛋白質様誘導体化剤での修飾、異種ポリペプチド配列との融合、および翻訳後修飾を含む。例えば、特定の配列の共有結合修飾ポリペプチドの修飾は、依然としてヒトIL−17を結合させる能力を有するか、または、例えば、IL−17誘発ヒト線維芽細胞のIL−6の産生を架橋により中和する能力を有する。共有結合修飾は、伝統的に、標的アミノ酸残基を選択した側または末端残基と反応することができる有機誘導化剤と反応させること、または選択された組み換え宿主細胞において機能する、翻訳後修飾のメカニズムを利用することによって導入される。所定の翻訳後修飾は、発現ポリペプチドに対する組み換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、しばしば、翻訳後修飾により脱アミド化されて、対応するグルタミルおよびアスパルチル残基になる。あるいは、こうした残基は、緩和な酸性条件下で脱アミノ化される。別の翻訳後修飾には、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリル、チロシンまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、およびヒスチジンの側鎖のα−アミノ基のメチル化が含まれる(例えば、T.E. Creighton, 蛋白質(Proteins): 構造と分子特性(Structure and Molecular Properties), W. H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86(1983)参照)。共有結合修飾は、例えば、特定の配列の本発明のポリペプチド、およびイミュノアドヘシン(immunoadhesins)のようなそれらのアミノ酸配列変異体、および異種シグナル配列とのN−末端融合物を含んでなる融合蛋白質を例えば含む。
【0037】
天然ポリペプチドおよびその機能的誘導体に関する“相同性”は、最大相同性パーセントを達成させるために、必要ならば、この配列をアラインして、ギャップを挿入した後、対応する天然ポリペプチドの残基と一致する候補配列中でのアミノ酸残基の百分率として本明細書では定義されており、配列同一性の一部として同類置換(conservative substitutions)は何ら考慮されない。N末端またはC末端の延長または挿入は、いずれも同一性または相同性を減少させるものとして解釈されてはならない。アライメントの方法およびコンピュータープログラムは、よく知られている。
【0038】
“アミノ酸”は、天然に存在するL−α−アミノ酸のすべてを意味し、そして、例えばD−アミノ酸を含む。アミノ酸は、既知の一文字または三文字表記によって同定する。
【0039】
“アミノ酸配列変異体”という用語は、例えば、特定の配列の本発明のポリペプチドと比較してそれらのアミノ酸の配列の一部の相違を有する分子を意味する。例えば、特定の配列の本発明のポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、依然として、ヒトIL−17を結合させる能力を有するか、または、例えば、IL−17誘発ヒト皮膚線維芽細胞のIL−6の産生を中和する能力を有する。置換変異体は、少なくとも一個のアミノ酸残基が除かれ、異なるアミノ酸が、例えば、特定の配列の本発明のポリペプチドのポリペプチド中の同一位置のその場所に挿入されたものである。これらの置換は、分子中の一個のアミノ酸のみが置換されている一置換であってもよいし、二個またはそれ以上のアミノ酸が同一の分子中で置換されている多置換であってもよい。挿入変異体は、例えば、特定の配列の本発明のポリペプチドのポリペプチド中の特定の位置のアミノ酸に直接隣接して挿入されている一個またはそれ以上のアミノ酸を有する変異体である。アミノ酸に直接隣接しているとは、アミノ酸のα−カルボキシまたはα−アミノ官能基のどちらかに結合していることを意味する。欠失変異体は、例えば、特定の配列の本発明のポリペプチドのポリペプチド中で一個またはそれ以上のアミノ酸が除去されている変異体である。通例、欠失変異体は、分子の特定の領域で一個または二個のアミノ酸が欠失される。
【0040】
本発明のIL−17結合分子は、組み換えDNA技法によって製造することができる。これを考慮すると、本結合分子をコードしている一個またはそれ以上のDNA分子が構築され、適当な制御配列のもとにおかれ、そして、発現のために適当な宿主生物中に移入されなければならない。
【0041】
それ故、極めて一般的な方法では、
(i)本発明の単一ドメインIL−17結合分子、本発明の一本鎖IL−17結合分子、本明細書で定義されている重鎖および軽鎖を含んでなるIL−17結合分子、または本発明のIL−17結合分子の断片をコードしているDNA分子;および
(ii)組み換え手段によって本発明のIL−17結合分子を製造するための本発明のDNA分子の使用
が提供される。
【0042】
従って、本発明は上述したIL−17結合分子をコードしているDNA分子を提供する。
【0043】
更に、本発明は、配列番号7または配列番号9に実質的に相同であるDNA分子を含んでなるDNA構築物を提供する。
【0044】
更に、本発明は、一方が、配列番号7に実質的に相同であるか、またはその直接DNA等価物であり、他方が、配列番号9に実質的に相同であるか、またはその直接DNA等価物である、二個のDNA分子を含んでなるDNA構築物を提供する。
【0045】
この技術の現状は、当業者が本明細書中で提供された情報、すなわち、超可変領域のアミノ酸配列およびそれらをコードしているDNA配列を与えられたとすると、本発明のDNA分子を合成することができる。可変ドメイン遺伝子を構成する方法は、例えば、EPA 239400中で述べられており、次のように手短にまとめることができる:どんな特異性であれ、MAbの可変ドメインをコードしている遺伝子をクローン化する。フレームワーク領域および超可変領域をコードしているDNA断片が決定され、超可変領域をコードしているDNA断片が除去されると、その結果、フレームワーク領域をコードしているDNA断片は、接合部で適当な制限部位と一緒に融合される。制限部位は、標準的方法によってDNA分子の変異誘発によって適当な位置で引き起こすことができる。二本鎖合成CDRカセットは、配列番号1(CDR1)、配列番号2(CDR2)、配列番号3(CDR3)、配列番号4(CDR1')、配列番号5(CDR2')、配列番号6(CDR6')、配列番号11(CDR1−x)、配列番号12(CDR2−x)、配列番号13(CDR3−x)をコードしている配列に従ってDNA合成によって調製される。こうしたカセットは、粘着末端と共に提供されるので、その結果、それらはフレームワーク領域の接合部で結合することができる。
【0046】
更に、本発明のIL−17結合分子をコードするDNA構築物を得るために、産生性ハイブリドーマ細胞株からのmRNAを入手する必要がない。すなわち、遺伝子のヌクレオチド配列に関する記載情報のみが与えられたとしても、PCT出願 WO 90/07861は組み換えDNA技術による抗体の産生の十分な指示を与える。この方法は、所望のDNA配列を生成するために、多数のオリゴヌクレオチドの合成、PCR法によるそれらの増幅、およびそのスプライシングを含んでなる。
【0047】
適当なプロモーターまたは重鎖および軽鎖定常領域をコードしている遺伝子を含んでなる発現ベクターは、公に利用が可能である。従って、一旦、本発明のDNA分子が調製されれば、好都合なことに適当な発現ベクター中にそれを移入することができる。一本鎖抗体をコードしているDNA分子は、また、例えば、WO 88/1649に述べられているような標準的な方法によって調製できる。
【0048】
CDR等価物の場合に準じて、“その直接DNA等価物”という用語は、本発明のIL−17結合分子の重鎖またはその断片をコードしている最初のDNA構築物を示すことを意味し、そして、
a)交互に(alternatively)フレームワーク領域および超可変領域を含んでなる、可変ドメインをコードする第一部分(前記超可変領域は、順にCDR1、CDR2およびCDR3中に存在し、前記CDR1は、配列番号1に示されている超可変領域CDR1と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり、前記CDR2は、配列番号2に示されている超可変領域CDR2と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり、そしてCDR3は、配列番号3に示されている超可変領域CDR3と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり;この第一部分は、可変ドメインの第一のアミノ酸をコードしているコドンから始まって、可変ドメインの最後のアミノ酸をコードしているコドンで終了する);および
b)重鎖の定常領域の第一のアミノ酸をコードしているコドンから始まって、定常領域またはその断片の最後のアミノ酸をコードしているコドン、続いて終止コドンで終了する、重鎖の定常領域またはその断片をコードしている第二部分
を含んでなり;そして
c)前記DNA構築物は、単独でまたは別のポリペプチドと組み合わせて、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができるポリペプチドをコードしており、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される。
【0049】
同様に、“その直接DNA−x等価物”という用語は、本発明のIL−17結合分子の重鎖またはその断片をコードしている第一の別のDNA構築物を示すことを意味し、そして、
a)交互にフレームワーク領域および超可変領域を含んでなる、可変ドメインをコードする第一部分(前記超可変領域は、順にCDR1−x、CDR2−xおよびCDR3−x中に存在し、前記CDR1−xは、配列番号11に示されている超可変領域CDR1と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり、前記CDR2−xは、配列番号12に示されている超可変領域CDR2と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり、そしてCDR3−xは、配列番号13に示されている超可変領域CDR3と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり;この第一部分は、可変ドメインの第一のアミノ酸をコードしているコドンから始まって、可変ドメインの最後のアミノ酸をコードしているコドンで終了する);および
b)重鎖の定常領域の第一のアミノ酸をコードしているコドンから始まって、定常領域
またはその断片の最後のアミノ酸をコードしているコドン、続いて終止コドンで終了する、重鎖の定常領域またはその断片をコードしている第二部分
を含んでなり;そして
c)前記DNA構築物は、単独でまたは別のポリペプチドと組み合わせて、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができるポリペプチドをコードしており、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される。
【0050】
好ましくは、これらのDNA構築物は、交互にフレームワーク領域および超可変領域を含んでなる可変ドメインをコードしており、前記超可変領域は順にCDR1、CDR2およびCDR3であり、前記CDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、前記CDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。更に好ましくは、これらのDNA構築物は、交互にフレームワーク領域および超可変領域を含んでなる可変ドメインをコードしており、前記超可変領域は順にCDR1−x、CDR2−x、およびCDR3−xであり、前記CDR1−xは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、前記CDR2−xは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、前記CDR3−xは、配列番号13のアミノ酸配列を有する。更に好ましくは、この第一部分は、配列番号8中に示されている1位のアミノ酸から始まって、127位のアミノ酸で終了するアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有している可変ドメインをコードしている。更に好ましくは、第一部分は、配列番号7中で示されている1位のヌクレオチドから始まって、381位のヌクレオチドで終了するヌクレオチド配列を有している。また、好ましくは、この第二部分は、ヒト重鎖の定常領域、より好ましくは、ヒトγ1鎖の定常領域をコードしている。この第二部分は、ゲノム起源のDNA断片(イントロンを含んでなる)であっても、cDNA断片(イントロンは含んでいない)であってもよい。
【0051】
同様に、“その直接DNA等価物”という用語は、本発明のIL−17結合分子の軽鎖またはその断片をコードしている第二のDNA構築物を示すことを意味し、そして、
a)交互にフレームワーク領域および超可変領域を含んでなる、可変ドメインをコードする第一部分(前記超可変領域は、CDR3'であり、そして所望によりCDR1'およびCDR2'であり、前記CDR1'は、配列番号4に示されている超可変領域CDR1'と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり、前記CDR2'は、配列番号5に示されている超可変領域CDR2'と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり、そして前記CDR3'は、配列番号6に示されている超可変領域CDR3'と少なくとも50%相同性、好ましくは少なくとも60、70、80、85、または90%相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性があり;この第一部分は、可変ドメインの第一のアミノ酸をコードしているコドンから始まって、可変ドメインの最後のアミノ酸をコードしているコドンで終了する);および
b)軽鎖の定常領域の第一のアミノ酸をコードしているコドンから始まって、定常領域またはその断片の最後のアミノ酸をコードしているコドン、続いて終止コドンで終了する、軽鎖の定常領域またはその断片をコードしている第二部分
を含んでなり;そして
c)前記DNA構築物は、単独でまたは別のポリペプチドと組み合わせて、50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができるポリペプチドをコードしており、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される。
【0052】
好ましくは、この第二のDNA構築物は、交互にフレームワーク領域および超可変領域を含んでなる可変ドメインをコードしており、前記超可変領域は、順にCDR1'、CDR2'およびCDR3'であり、前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。より好ましくは、第二のDNA構築物のこの第一部分は、1位のアミノ酸から始まって、そして109位のアミノ酸で終了する配列番号10に示されているアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を有している可変ドメインをコードしている。更に好ましくは、第一部分は、1位のヌクレオチドから始まって、そして327位のヌクレオチドで終了する配列番号9で示されているヌクレオチド配列を有している。また、好ましくは、第二部分は、ヒト軽鎖の定常領域、より好ましくは、ヒトκの定常領域をコードしている。
【0053】
好ましくは、第一と第二のDNA構築物は、一緒に使用されるが、別々に使用されてもよい。
【0054】
本発明は、また、CDR1、CDR2、CDR3、CDR1−x、CDR2−x、CDR3−x、CDR1'、CDR2'またはCDR3'またはフレームワークの一個またはそれ以上のアミノ酸残基、通例ほんの少数(例えば、1−4個)が;例えば、突然変異、例えば、対応するDNA配列の部位特異的突然変異誘発により変更されているIL−17結合分子を含む。本発明は、こうした変更されたIL−17結合分子をコードするDNA配列を含む。特に、本発明は、CDR1'またはCDR2'の一個またはそれ以上の残基が配列番号4(CDR1'の場合)および配列番号5(CDR2'の場合)に示されている残基から変更されたIL−17結合分子を含む。
【0055】
第一および第二のDNA構築物において、第一および第二部分は、イントロンによって分離されていてもよく、そして、エンハンサーが第一と第二部分の間のイントロンに位置しているのが好都合であり得る。転写されるが、翻訳されないこうしたエンハンサーの存在は、効率的な転写を助け得る。特定の態様においては、第一および第二のDNA構築物は、ヒト起源の重鎖遺伝子のエンハンサーを含んでなるのが有利である。
【0056】
DNA構築物は、それぞれ、適当な制御配列の制御のもとに、特に適当なプロモーターの制御のもとに置かれる。DNA構築物が発現のために移入される宿主生物に適合される限り、全ての種類のプロモーターが使用され得る。
【0057】
所望の抗体は、細胞培養またはトランスジェニック動物で製造することができる。適当なトランスジェニック動物は、適当な制御配列のもとに置かれている第一および第二のDNA構築物を卵子中にマイクロインジェクションし、そのように調製された卵子を適当な偽妊娠雌中に移入し、そして所望の抗体を発現する子孫を選択することを含む標準的な方法で得ることができる。
【0058】
抗体の鎖は、細胞培養で製造され、DNA構築物は、最初に、単一発現ベクターか、または二個の別々であるが適合性のある発現ベクターの中に挿入しなければならないが、後者が好ましい可能性が高い。
【0059】
従って、本発明は、また、上記で述べた少なくとも一個のDNA構築物を含んでなる原核または真核細胞株中で複製することができる発現ベクターを提供する。
【0060】
次いで、DNA構築物を含んでいるそれぞれの発現ベクターは、適当な宿主生物に移入される。このDNA構築物が別々に二個の発現ベクターに挿入される場合は、それらは、別々に、すなわち、細胞あたり一種のベクターで、または共移入によって移入することができるが、後者が好ましい可能性が高い。適当な宿主生物は、細菌、酵母または哺乳類細胞株であり得るが、この後者が好ましい。より好ましくは、哺乳類の細胞株は、リンパ系起源のもの、例えば、骨髄腫、ハイブリドーマまたは通常の不死化B細胞(normal immortalised B-cell)であり、これは、好都合なことにいかなる内在性抗体の重鎖または軽鎖を発現しない。
【0061】
哺乳類細胞における発現のために、配列をコードしているIL−17結合分子は、IL−17結合分子の高レベルな発現を可能にするか、またはそれに有利な、宿主細胞DNAの遺伝子座内に組み込まれる。配列をコードしているIL−17結合分子が、こうした好都合に働く遺伝子座に組み込まれている細胞は、それらが発現するIL−17結合分子のレベルに基づいて同定し、選択することができる。任意の適当な選択可能なマーカーを、配列をコードしているIL−17結合分子を含んでいる宿主細胞の調製のために使用することができる;例えば、dhfr遺伝子/メトトレキサートまたは等価な選択系が使用可能である。本発明のIL−17結合分子の発現のための別系は、EP 0256055 B、EP 0323997 Bおよび欧州特許出願89303964.4中に述べられているもののようなGSをベースとした増幅/選択系を含む。
【0062】
本発明の更なる局面では、(i)上記で定義された発現ベクターを用いて形質転換される生物を培養すること、および(ii)培養物からIL−17結合分子を回収することを含んでなるIL−17結合分子を製造する方法が提供される。
【0063】
本記載の目的のために、抗体がIL−17のその受容体への結合をAIN457抗体と同程度まで実質的に阻害することができるならば、抗体は“AIN457のようにIL−17の結合を阻害することができる”とし、“同程度まで”とは上記に定義された意味を有する。
【0064】
このAIN457抗体は、以前に抗IL−17抗体、特に何らかの抗ヒトIL−17抗体について報告された親和性に比較して、IL−17に対して高い結合親和性を有している。すなわち、AIN457は、IL−17に結合する解離平衡定数Kとして約0.188±0.036nM(例えば、実施例2に示されているようにBIAcoreによって測定された)を有している。この高結合親和性によって、このAIN457の抗体は治療適用に特に適切である。
【0065】
本明細書において、“IL−17によって介在される疾患”という表現は、疾患または障害の原因、発症、進行、持続または病因を含む、疾患または医学的状態において、IL−17、が直接的であれ、間接的であれ役割を演じる疾患および医学的状態のすべてを包含する。
【0066】
本明細書では、“処置”または“処置し”という用語は、疾患に罹患するリスクを有するか、または疾患に罹患していると疑われる患者ならびに病気であるか、疾患または医学的状態を有すると診断された患者の処置を含んで、予防的または防止的処置ならびに治療的または疾患修飾的処置の両方を意味し、臨床的再発の抑制を含む。
【0067】
ヒトIL−17に対して結合特異性を有している上記に定義されたIL−17結合分子、特に、IL−17のその受容体への結合を阻害できる抗体;および50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、更に好ましくは5nMの前記分子の濃度で、1nM(=30ng/ml)のヒトIL−17の活性を50%阻害することができるIL−17に対する抗体(前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される)は、本明細書では本発明の抗体と称される。
【0068】
好ましくは、本発明の抗体は、ヒト抗体であり、最も好ましくは、AIN457抗体またはその直接等価物である。
【0069】
本発明の抗体は、その標的細胞でIL−17の作用を遮断し、従って、IL−17によって介在される疾患および障害の処置における使用に指示される。本発明の抗体のこれらの薬理学的活性および他の薬理学的活性は、下記に示す実施例の標準的試験方法において示すことができる:
【0070】
初代ヒト線維芽細胞によるインターロイキン−6のIL−17依存産生の中和:初代ヒト(皮膚)線維芽細胞におけるIL−6の産生は、IL−17に依存する(Hwang SY et al., (2004) Arthritis Res Ther; 6:R120-128)。
【0071】
手短に言えば、様々な濃度の本発明の抗体またはFc部を有するヒトIL−17受容体の存在下で、ヒトの皮膚線維芽細胞を組み換えIL−17で刺激する。キメラ抗CD25抗体、シムレクト(Simulect)(登録商標)(バシリキシマブ)をネガティブコントロールとして使用する。上清を、16時間の刺激の後に取得し、ELISA(ELISA)によってIL−6について試験する。本発明の抗体は、上記のとおり試験したとき、すなわち、前記阻害活性を、ヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生によって測定するとき、通例、IL−6産生阻害(1nM ヒトIL−17の存在下で)に対して約50nMまたはそれ以下(例えば、約0.01〜約50nM)のIC50を有している。好ましくは、本発明の抗体は、約20nMまたはそれ以下、より好ましくは約10nMまたはそれ以下、更に好ましくは約5nMまたはそれ以下、更に好ましくは約2nMまたはそれ以下、更により好ましくは約1nMまたはそれ以下の上記に定義したとおりのIL−6の産生の阻害に対するIC50を有している。
【0072】
上記のアッセイにおいて示されるとおり、本発明の抗体は、IL−17の作用を強力に遮断する。従って、本発明の抗体は、次のとおり薬学的有用性を有する:
【0073】
本発明の抗体は、IL−17によって介在される疾患または医学的障害、例えば、炎症性疾患、アレルギーおよびアレルギー状態、過敏性反応、自己免疫疾患、重症感染症、および臓器または組織移植拒絶の予防および処置に有用である。
【0074】
例えば、本発明の抗体は、同種移植片拒絶または異種移植片拒絶を含む心臓、肺、心肺複合、肝臓、腎臓、すい臓、皮膚または角膜移植のレシピエントの処置、および骨髄移植の後のような移植片対宿主疾患、および臓器移植関連動脈硬化症の予防のために使用できる。
【0075】
本発明の抗体は、自己免疫疾患および炎症性障害、特に、炎症状態ならびに骨喪失、炎症性疼痛、強直性脊椎炎(ankolsing spondylitis)を含む脊椎関節症、ライター症候群、反応性関節炎、乾癬性関節炎、および腸関連関節炎(enterophathis arthritis)が関与するリウマチ性疾患を含む関節炎(例えば、関節リウマチ、慢性進行性関節炎および変形性関節炎)およびリウマチ性疾患、過敏性反応(気道過敏症および皮膚過敏症の両方を含む)およびアレルギーのような自己免疫要素を含む病因の炎症性状態の処置、防止、または寛解のために特に有用である。本発明の抗体が使用できる特定の自己免疫疾患は、自己免疫血液疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆、および特発性血小板減少性紫斑病を含む)、全身性エリテマトーデス、炎症性筋疾患、多発性軟骨炎、強皮症、ウェグナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブンジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病および過敏性腸症候群を含む)、内分泌性眼障害、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁肝硬変、若年性糖尿病(I型真性糖尿病)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾性角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎および糸球体腎炎(例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化型腎症を含むネフローゼ症候群を伴うか伴わない)、腫瘍、多発性硬化症、皮膚および角膜の炎症性疾患、筋肉炎、骨インプラントの緩み、アテローム動脈硬化症、糖尿病、および脂質代謝異常のような代謝性疾患を含む。
【0076】
本発明の抗体は、また、喘息、気管支炎、塵肺症、肺気腫、および気道の他の閉塞性または炎症性疾患の処置、予防、または寛解に有用である。
【0077】
本発明の抗体は、IL−17によって介在されるか、またはIL−17の産生、IL−17によるTNF放出の促進に関与する望ましくない、急性および超急性の炎症性反応、例えば、急性感染症、例えば、敗血症ショック(例えば、エンドトキシンショックおよび成人急性呼吸促迫症候群)、髄膜炎、肺炎;および重症火傷の処置;および、感染症、がん、または臓器不全の結果として起こる病的なTNF放出に関連するカヘキシー、消耗症候群、特に、例えば、HIV感染に伴うか、HIV感染の結果として起こるAIDS関連カヘキシーの処置に有用である。
【0078】
本発明の抗体は、特に、骨関節炎、骨粗鬆症および他の炎症性関節炎、および加齢による骨喪失を含む一般的な骨喪失、および特に歯周病を含む骨代謝疾患を処置するのに有用である。
【0079】
このような適応症の場合、適当な投与量は、もちろん、例えば、使用される本発明の特定の抗体、宿主、投与方式および処置されている障害の特性および重症度に応じて異なる。しかしながら、予防的使用では、満足すべき結果は、通例、体重1キログラムあたり約0.05mg〜約10mg、より普通には、体重1キログラムあたり約0.1mg〜約5mgの投与量で得られることが示されている。予防的使用の投与の頻度は、通常、1週間あたり約1回から3ヶ月毎に約1回の範囲であり、より普通には、2週間毎に約1回から10週間毎に約1回の範囲、例えば、4〜8週間毎に1回である。本発明の抗体は、非経口的、静脈内、例えば、肘窩または他の末梢静脈中に、筋肉内または皮下投与するのが好都合である。予防的処置は、通例、本発明の抗体を1ヶ月あたり1回から2〜3ヶ月毎に1回、またはそれより少なく投与することを含んでなる。
【0080】
本発明の抗体は、例えば、上記に言及した疾患の処置または防止のために、唯一の有効成分として投与することもできるし、あるいは、例えば、他の薬剤(例えば、免疫抑制剤または免疫調節剤または他の抗炎症剤)のアジュバントとしてか、またはこうした薬剤と組み合わせて、他の薬剤と一緒に投与することができる。例えば、本発明の抗体は、DMARD、例えば、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、メトトレキサート、D−ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、サイクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、ミノサイクリン、レフルノミド、グルココルチコイド;例えば、サイクロスポリンAまたはFK 506であるカルシニューリン阻害剤;例えば、FTY720およびFTY720類似体であるリンパ球再循環調整剤;例えば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573またはTAFA−93であるmTOR阻害剤;例えば、ABT−281、ASM981などの免疫抑制特性を有するアスコマイシン;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン(azathioprene);メトトレキサート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリン(15-deoxyspergualine)またはその免疫抑制ホモログ、アナログまたは誘導体;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86またはそのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調節性化合物、例えば、CTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部、例えば非CTLA4蛋白質配列に結合したCTLA4またはその変異体の少なくとも細胞外部分を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えば、ATCC68629として呼ばれている)またはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、例えばパクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシンまたは5−フルオロウラシル;抗TNF剤、例えば、TNFの対するモノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、またはTNF−RIまたはTNF−RIIに対する受容体構築物、例えば、エタネルセプト、PEG−TNF−RI;炎症誘発性サイトカインブロッカー、IL−1ブロッカー、例えば、アナキンラまたはIL−1 トラップ(IL-1 trap)、AAL160、ACZ885、IL−6ブロッカー;ケモカインブロッカー、例えば、プロテアーゼ、例えば、メタロプロテアーゼの阻害剤または活性化剤、抗IL−15抗体、抗IL−6抗体、抗CD20抗体、アスピリンのようなNSAIDsまたは抗感染症剤と組み合わせて使用することができる(リストは、上記に言及した薬剤に限定されない)。
【0081】
上記に従って、本発明は更に別の局面において次に記載のことを提供する:
治療的に有効な量の例えば、本発明の抗体であるIL−17結合分子、および少なくとも一種の第二の薬剤物質を、例えば、同時または順に共投与することを含んでなる上記に定義される方法であって、ここで第二の薬剤物質とは、例えば、上記に示したような免疫抑制薬/免疫調節薬、抗炎症化学療法薬または抗感染症薬である。
【0082】
または、治療的に有効な量のa)例えば、本発明の抗体であるIL−17結合分子、およびb)例えば、上記に示したような免疫抑制薬/免疫調節薬、抗炎症化学療法薬または抗感染症薬から選択される少なくとも一種の第二の薬剤物質を含んでなる例えば、キットである治療的組み合わせ。このキットは、その投与のための指示を含み得る。
【0083】
本発明の抗体を、他の免疫抑制薬/免疫調節薬、抗炎症化学療法薬または抗感染症薬と組み合わせて投与するとき、共投与される組み合わせる化合物の投与量は、当然使用される共薬剤の種類、例えば、それが、DMARD、抗TNF、IL−1ブロッカーまたは他の薬剤であるかどうか、使用される特定の薬剤、処置される障害その他に応じて異なる。
【0084】
本発明の薬学的組成物は、従来の方法で製造することができる。本発明による組成物は凍結乾燥形態で提供されるのが好ましい。速やかに投与するためには、それを適当な水性の担体、例えば、注射用滅菌水または滅菌した緩衝生理食塩水に溶解する。ボーラス注射としてではなく、点滴による大量投与の溶液を作製することが望ましいと考えられるときは、ヒト血清アルブミンまたは患者自身のヘパリン処置した血液を製剤時に生理食塩水に組み込んでおくことが有利である。あるいは、皮下注射用の製剤が提供される。過剰なこうした生理的に不活性な蛋白質の存在によって、容器の壁および点滴溶液で使用される管に吸着することによる抗体の減少が防止される。アルブミンが使用されるときは、適当な濃度は生理食塩水の重量に対し、0.5%〜4.5%である。他の製剤は、液体または凍結乾燥製剤を含んでなる。
【実施例】
【0085】
本発明は更に次の実施例中の例証によって説明される:
実施例
マウスの免疫グロブリンレパートリーの代わりに、ヒトIgG/κレパートリーを発現させるために操作されたトランスジェニックマウス(Fishwild et al., 1996, Nat Biotechnol., 14, 845-851)が、ヒトIL−17に対する抗体を生成するために使用される。これらのマウスに由来するB細胞は、標準的なハイブリドーマ技術によって不死化され、そして、ヒトIgG1/κ抗体AIN457を分泌するマウスのハイブリドーマ細胞が得られる。
【0086】
実施例1:
ハイブリドーマの生成、抗体の精製、AIN457抗体の選択
組み換えヒトIL−17(huIL-17)の製造:組み換えhuIL−17を、大腸菌中、封入体で製造し、そして従来技術によって再折りたたみする(イン・ハウスキャリアフリーで製造された)(E. coli; Novartis Pharma, バッチBM-E-3141/98)か、または購入するか(キャリアフリー、E. coli; R&D Systems #317-IL/CF))、またはHEK.EBNA中に分泌され一部グリコシル化されたタンパク質として産生する(組み換えhuIL−17、キャリアフリー(トランスフェクトされたHEK/EBNA細胞に由来するIL−17 APP−C6;Novartis Pharma, バッチ En. E-3382/82;0.28mg/ml;組み換えhuIL−17、キャリアフリー(トランスフェクトされたHEK/EBNA細胞に由来するIL−17 APP−C4;Novartis Pharma, バッチ En. E-3382/83;0.29mg/ml))。後者の形態は、培養上清から免疫アフィニティークロマトグラフィーによって急速に精製するためにC末端に4個のアミノ酸延長を特徴とする。この場合、培養上清を、製造業者(Pharmacia)の指示に従って10mg/ml樹脂の密度で、CNBr活性化セファロース4Bと連結した特定の固定化抗tag抗体の適当なサイズのカラムに加える。PBSを用いて基本洗浄後、結合したhuIL−17を100mM グリシン、pH2.7で溶出し、そして、直ちに希釈NaOHを用いて中和する。
【0087】
huIL−17のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)への結合:大腸菌(E.coli)またはHEK.EBNAのどちらかで製造されたhuIL−17を過剰のホモ二機能性架橋剤スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)を用いて、予じめ活性化されたKLHに結合させる。手短に言えば、20mgの凍結乾燥したImject(登録商標) Mariculture KLH(Pierce #77600)を2mlのHOを用いて再構成させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2を含む10mg/ml溶液を作成する。この溶液にジメチルスルホキシド(DMSO)中の250mMのDSS400μlを加え、次にこの混合物を室温で約1時間撹拌する(試薬のすべてが溶解するわけではなく、一部沈殿物が形成される)。次いで短時間遠心分離し、ろ過(0.45μm)後、この溶液をPBS(流速 2ml/分)中でセファデックスG25ファイン(Sephadex G25 fine)(Pharmacia)を用いて脱塩すると、1.5mg/ml(Bradford)で活性化されたKLHが約11mg生じる。1mlの活性化されたKLH(1.5mg)を凍結乾燥された大腸菌(E.coli)によって誘導されたhuIL−17(バッチ BM−E3141/98)の水溶液(9mg/ml)の1mlと混和する。この溶液は透明のままであり、次にこれを室温で2時間インキュベートする。この結果生じる複合体の濃度は、1.4mg/ml(Bradfordによって測定される)である。1mlの活性化されたKLH(1.5mg)を1mlのHEK.EBNA huIL−17(水中で約3mg;バッチ En.E−3382/83)と混和する。この溶液は透明のままであり、次に室温で2時間インキュベートする。濃度は2.9mg/ml(Bradford)である。
【0088】
免疫化:マウスの免疫グロブリン可変および定常部遺伝子が機能的にそれらのヒト対応物(遺伝子型 Tgコード 221100−TgH(CMD)++;TgN(Hco7)11952+;TgH(JKD)++;TgN(KCO5)9272+(Sherie L. Morrison, 1994, Nature, Vol. 368, p. 812-813; Nils Lonberg et al., 1994, Nature, Vol. 368, p. 856-859も参照)によって置き換えられている、遺伝学的に操作されたマウス27340(雌性;MEDAREX Inc, Annandale, NJ)を表1に報告されているスキームに従って免疫化する。
【0089】
【表1】

血清サンプルは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって抗huIL−17抗体のレベルを測定するために、免疫プロトコールの開始から35日および99日後に得る。
【0090】
ハイブリドーマの生成:120日目に、マウス27340をCO吸入によって殺す。全脾臓細胞(1×10)をPEG 4000を用いてPAI−0細胞(5×10細胞)で融合する。融合細胞をHAT培地(2g/l重炭酸ナトリウム、5×10−5M β−メルカプトエタノール、10−4M ヒポキサンチン、1.6×10−5M チミジン、4×10−7M アミノプテリン、10%熱不活性FCSおよび50μg/ml ゲンタマイシンを含む、RPMI 1640)中で、マウス腹膜細胞(Balb/c mice)の支持細胞層を含む、720ウェル(1ml/ウェル)中でプレーティングする。14日目に、HAT培地をHT培地、すなわち、アミノプテリンを含まないHAT培地と交換する。10日目にスクリーニングを開始し、2週間続ける。プレートされた最初の720ウェルのうち、684ウェル(95%)でハイブリドーマ増殖がポジティブである。上清を集め、大腸菌(E.coli)およびHEK/EBNAによって誘導されるhuIL−17の両方を用いて、ELISAでhuIL−17反応性MAbについてスクリーニングする。52個の一次ウェルが、抗huIL−17抗体の存在に対してポジティブである。28個のハイブリドーマをクローン化し、残りのものは凍結する。クローニングは、4×96ウェルマイクロタイタープレートを用いて、HT培地およびマウス腹膜細胞の支持細胞層中で行われる。ハイブリドーマは、ウェルあたり、0.5細胞/100μlでプレーティングする。ウェルを顕微鏡的に増殖についてスクリーニングし、そして、ポジティブのものは、100μlのHT培地に入れる。翌日、上清をhuIL−17特異的ELISAで抗体産生について試験する。クローニングにより、大部分のクローン化ハイブリドーマは、抗huIL−17特異的モノクローナル抗体(MAb)を分泌する能力を保持している。
【0091】
抗体の産生と精製:選択されたクローンは、無血清培地(5ml)中で25cmTC(TC:組織培養)フラスコの中へ移す。ハイブリドーマは、無血清培地中、75cmTCフラスコおよびローラーフラスコまで、漸増的に拡張する。NVP−AIN457−NX(340−110−28、すなわち、マウス番号−ハイブリドーマ番号−クローン番号)を含む異なった抗huIL−17MAbのすべて、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。培養上清をpH7.3に調整し、プロテインAセファロース 4 ファーストフロウ(Pharmacia)の適当なサイズのカラムに入れる。100mMの燐酸緩衝液(pH7.3)を用いて基本洗浄後、結合した抗体を50mM クエン酸、pH2.7、140mM NaClで溶出する。この溶出したフラクションを、直ちに中和し(pH 7.0)、無菌ろ過する。蛋白質濃度は、1.35吸光度(AU)/mgの倍率を用いて280nmでの吸光度によって決定する。
【0092】
ヒトの皮膚線維芽細胞中のhuIL−17によって誘発されるIL−6の産生に対する抗huIL−17MAbの阻害活性:ヒト皮膚線維芽細胞を2% FCS、インシュリン(5μg/ml)huFGF−basic(0.1μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を補充したFBM中で培養する。線維芽細胞は、トリプシン/EDTA溶液を用いてプラスチックから分離させる。線維芽細胞を、1%FCSを補充したFBM中で1×10細胞/ウェル密度で96ウェルのマイクロタイタープレートに分配する。線維芽細胞を一晩プレートに付着させる。翌朝、培地を除き、1%FCSを補充した新鮮なFBM、huIL−17(30〜500ng/mlの範囲の様々な濃度)およびハイブリドーマ上清(1/5最終希釈)または精製抗体を最終容量200μlまで加える。培養上清は、24時間のインキュベーションの後、回収し、そしてhuIL−6産生(量)がELISAによって測定される。
【0093】
抗huIL−17抗体の検証のためのELISA:ヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生に対する抗huIL−17MAbの阻害活性:ELISAマイクロタイタープレートをPBS 0.02%NaN中の組み換えhuIL−17(3μg/mlで100μl/ウェル;バッチ BM−E3141/98またはEn.E−3382/82)を用いて被覆し、次に室温で一晩インキュベートする。翌日、マイクロタイタープレートをPBS/2%BSA/0.02%NaNの300μlを用いて37℃で2時間ブロッキングする。次いでプレートを、PBS/0.05%ツイーン20/0.02%NaNで4回洗浄する。マウス27340の血清希釈液(35日目の最終希釈範囲:1/100〜1/3200;99日目の最終希釈範囲:1/200〜1/12800;100μl/ウェル)またはハイブリドーマの培養上清(最終希釈 1:3;100μl/ウェル)が加えられる。室温で一晩インキュベーションした後、プレートをPBS/0.05%ツイーン20/0.02%NaNで4回洗浄する。ビオチンコンジュゲートマウス抗hu−IgG、Fc断片特異的抗体が最終濃度1/20000(100μl/ウェル)で加えられる。サンプルを、室温で4時間反応させる。洗浄(4回)後、アルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジンが最終希釈1/8000(100μl/ウェル)で加えられる。室温で40分後、プレートを再び4回洗浄し、次に基質(ジエチルアミノバッファーpH9.8中のp−ニトロフェニルホスファート;150μl/ウェル)が加えられる。プレートをマイクロタイターリーダー(Bio-Rad)で、405および490nmのフィルターを用いて、反応の発色に応じて30分または45分後に読み取る。
【0094】
抗体アイソタイプの検出のためのELISA:MAbのアイソタイプを明らかにするために、培養上清(100μl;最終希釈1/5)をhuIL−17で被覆されたマイクロタイタープレートのウェルに加え(上記参照)、次に室温で一晩インキュベートする。洗浄(4回)後、100μl/ウェルのビオチンコンジュゲートマウスMAbs抗ヒトIgG1(最終希釈1/1000)、IgG2(最終希釈1/1000)、IgG3(最終希釈1/1000)、IgG4(最終希釈1/2000)または抗ヒトκ軽鎖(最終希釈1/1000)を室温で4時間加える。対照として、ビオチンコンジュゲートラット抗マウスλ1およびλ2軽鎖特異的MAbを使用する(最終希釈1/1000)。前に述べたごとくこれに続いて、洗浄およびアルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジンの添加(100μl;最終希釈1/8000)が行われる。4回洗浄した後、基質(ジエチルアミノバッファー中のp−ニトロフェニルホスファート;100μl)が加えられる。プレートをマイクロタイターリーダー(Bio-Rad)で、405および490nmのフィルターを用いて、反応の発色に応じて30分または45分後に読み取る。
【0095】
huIL−6産生の検証のためのELISA:ELISAマイクロタイタープレートをPBS 0.02%NaN中の抗huIL−6マウスMAb(R&D systemに由来するMAB206;4μg/mlで100μl/ウェル)を用いて被覆し、次に室温で一晩インキュベートする。次の日に、マイクロタイタープレートをPBS/2%BSA/0.02%NaNの300μlを用いて37℃で2時間ブロッキングした。次いでプレートは、PBS/0.05%ツイーン20/0.02%NaNで4回洗浄する。ヒト皮膚線維芽細胞の培養上清(最終希釈1:3;100μl/ウェル)が加えられる。タイトレーション曲線を確立するために、huIL−6(100μl/ウェル)を1:2希釈工程中400pg/ml〜3.1pg/mlで力価測定する。室温で一晩インキュベーションした後、プレートをPBS/0.05%ツイーン20/0.02%NaNで4回洗浄する。ビオチンコンジュゲートヤギ抗huIL−6抗体(BAP206; R&D Systems)が加えられる(25ng/ml;100μl/ウェル)。サンプルを、室温で4時間反応させる。洗浄(4回)後、アルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジン(alkaline phosphatase-conjugated streptavidin)が最終希釈1/8000(100μl/ウェル)で加えられる。室温で40分後、プレートを再び4回洗浄し、次に基質(ジエチルアミノバッファーpH9.8中のp−ニトロフェニルホスファート;150μl/ウェル)が加えられる。プレートをマイクロタイターリーダー(Bio-Rad)で、405および490nmのフィルターを用いて30分後に読み取る。
【0096】
計算:値は、オリジナルのO.D.値か、または2回の測定値の平均値に基づいて計算される阻害%として報告する。更なるデータは、平均値±標準誤差として報告する。huIL−6の標準曲線を、三次曲線フィットを用いることによって、培養上清中のhuIL−6濃度を測定するために使用した。
【0097】
結果
マウス27340の血清力価:
【表2】

*マイクロタイタープレートは、大腸菌(E.coli)(BM−E3141/98)またはHEK/EBNA細胞(En.E−3382/82)に由来するhuIL−17(3μg/ml)で被覆されている。
マウス27340の血清は、二個の異なったhuIL−17の調製物に基づいて、35日目と99日目に抗huIL−17抗体の存在についてELISAで分析する(表2)。結果は、マウス27340の血清力価は、35日目と99日目の間で約4倍に増加しており、そして、両方のhuIL−17調製物が識別されるということを示している。
【0098】
ハイブリドーマ上清のELISAにおける結合:684上清を、組み換えhuIL−17の二個の調製物(前者は大腸菌(E.coli)(BM−E3141/98)に起源しており、後者はHEK/EBNA細胞(En.E−3382/82)に起源している)を用いて、抗huIL−17抗体の存在についてELISAで試験する。52個の上清が、抗hu−IL−17抗体の存在に対してポジティブである(表3)。一方または他方のhuIL−17の調製物に優先的に結合することが、いくつかの場合に観察される。続いてクローン化する28個のハイブリドーマに、下線を引く。
【表3】

*プレートは、大腸菌(E.coli)(BM−E3141/98)またはHEK/EBNA細胞(En.E−3382/82)に由来する組み換えhuIL−17(3μg/ml)で被覆されている。上清は、最終希釈率1/3で試験される。
【0099】
ハイブリドーマクローンの培養上清のELISAにおける結合:抗huIL−17 MAbの最もよい産生物を維持している11個のハイブリドーマのクローンの上清のELISAにおける反応性を表4に示す。下線(bold)で強調されているクローンは、抗体の精製および分析のためのローラーボトル中の〜1リットルの上清を産生するために選択された。huIgG3κ抗体を産生するハイブリドーマNo 5から誘導されるクローンを除いて、他のクローンのすべては、アイソタイプ特異的モノクローナル抗体によって評価されるとおり、huIgG1κMAbを産生した。
【表4】

マイクロタイタープレートは、HEK/EBNA細胞(En.E−3382/82)に由来する組み換えhuIL−17(3μg/ml)で被覆されている。
【0100】
培養上清の活性の中和:培養上清を、組み換えhuIL−17で刺激されたヒト皮膚線維芽細胞によるhuIL−6の産生阻害について試験する。表5に示すとおり、大部分の培養上清は、阻害活性を示す。
【表5】

【0101】
AIN45の中和活性:開発候補物AIN457(本発明の好ましい態様)の産生のためのクローン110−28の選択は、精製抗体のBIACORE2000による中和活性およびアフィニティー測定に基づいている(下記実施例2参照)。
【0102】
実施例2:AIN457は、非常に高い親和性をもって組み換えヒトIL−17(huIL−17)に結合する;Kは、122±22pM(BIAcore)であり、ヒトの皮膚線維芽細胞中のhuIL−17によって誘発されるヒトIL−6の産生を中和する;IC50は、1.87nM huIL−17の濃度で2.1±0.1nMである。
a)方法
試薬:一般的研究用試薬を、MerckまたはSigma社から購入し、入手できる最も高い純度グレードである;特別の試薬の供給源は下記に詳述する。
蛋白質:モノクローナル抗体は、MEDAREXトランスジェニックマウスを組み換えヒトIL−17で免疫することによって生成させ、次いで細胞株を生産する標準的な手順に従って、そこから分泌物質をプロテインAセファロースクロマトグラフィー(Protein A Sepharose chromatography)によって精製することができる(実質的に実施例1中で述べられている)。AIN457は、50mMのクエン酸ナトリウム、pH7.0、140mMのNaCl中の滅菌ろ過溶液として4℃で保存される。この組み換えヒトAIN457(バッチ KB03303A)は、20mM クエン酸ナトリウム/40mM リン酸緩衝液、pH7、150mM NaClか、または1Mトリス塩基で調整された20mM 酢酸 pH5.5のどちらかの滅菌ストック溶液中で得られる。濃度は、通例、2mg/mlの範囲内であり、Biacore実験のために、BIA緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、0.05%v/vツイーン−20)中で最終濃度5μg/mlまで希釈される。
組み換えヒトIL−17は、社内で製造される;バッチ En/E 3882/83;0.29mg/ml。
【0103】
BIAcore測定
速度論的結合パラメーターおよび交差反応性のレベルの決定が、光バイオセンサーBIAcore 2000(BIAcore AB, Upsalla, Sweden, 詳細はLit. HS 1,2参照)を用いて表面プラズモン共鳴測定によって行われる。この技術によって、リガンドが受容体に結合および解離する顕微鏡的比率定数(konおよびkoff)の無標識での決定を可能とする。それ故、抗体−抗原の相互作用を特徴付けるのに特に適している。この技術は、ELISA測定の欠点を補い、様々な点でELISA測定に比べて優れている(Van Regenmortel, DevBiol(Basel).2003; 112: 141-51)。組み換えIL−17のIL−17抗体AIN457への結合の検討は、二つの方法で行われる。標準的プロトコールでは、AIN457は、その前にCM−5 BIAcoreセンサーチップ(研究グレード)に固定化されている抗ヒトFCγ抗体によって捕捉される(Jackson Immunochemicals; Cat. No. 109-005-098)。FCγ捕捉抗体の共有結合は、BIAcoreから提供される(BIAcore, Cat. No. BR-1000-50)‘アミン結合キット’を用いて行われる。通例、捕捉抗体の3000RUは、10mM Ac緩衝液、pH4.5中の30μg/ml 抗FCγ抗体溶液を流速5μl/分にすると、活性化したデキストラン表面に結合して、約250RUのAIN457の固定化に至る。ガイドラインとして、1000RUは、1ng/mmの物質移動に相当する。あるいは、IL−17(Section 3.2; 表4)、AIN457抗体は、抗体を捕捉することなく、直接チップの表面に結合する。この結果は、表9(下記参照)に述べられているプロトコールに比較されている。
【0104】
b)結果
IL−17/AIN457複合体の結合速度
平衡解離定数Kは、イン・ビボで形成された、複合体の安定性についてのいくつかの判断を可能にする。それ故、我々は、ヒトIL−17が固定化されたAIN457抗体に結合する速度定数を決定し、次にこうしたデータからこのプロセスのKを誘導した。二個の実験の曲線が、BIAエバルエーション(BIAevaluation) 3.0 ソフトウエアを用いるラングミアモデル(Langmuir model)にフィットしている場合に、表3は得られたデータのサマリーを示す。もちろん、抗体は二価であるけれども、この結合は、個々の抗体結合部位は、単量体IL−17分子によって占められるようになる表面に提示される個々の抗体結合部位で、1:1事象として処理できる。
この実験では、抗体−ケモカイン複合体の極端に速い結合ならびに極めて遅い解離速度の両方を示す。センサーグラムが、(BIAevaluationで示唆されているように全体的ではなく)個別的に処理されるときに、最もよいデータフィットが得られる。すなわち、連続したタイトレーションを集約した後、我々は、12個のセンサーグラムから平均値を得る(kon=(4.1±0.1)×10 l/Ms;koff=(3.8±0.5)×10−4 l/s;およびK=122±22pM)。
【表6】

平均Kは、式K=koff/konを適用したのではなく、個々のエントリー(垂直軸)から計算された。
【0105】
組み換え細胞中で産生されたAIN457(KB03303A)について、親和性測定を、ヒト、マーモセット、アカゲザルおよびカニクイザルにそれぞれ由来するIL−17サイトカインについて行う。Biacore測定の実験的詳細は、MAB110−28抗体の場合に上記で述べられたと同一である。それぞれのラン行程で六種のIL−17の濃度を試験する二つの独立したランが行われる。ヒトIL−17の濃度は、2、4、8、12、16、20nMであり、そして他の種のすべての場合は、10、20、30、40、50、60nMである。完全なデータ分析によって、各IL−17種のためのn=12の個々の測定が得られる。KならびにSEMを報告する。
【表7】

【0106】
on、koffおよびKならびにそれぞれのIL−17種を含んでいる抗体KB03303Aの場合のBIAcore分析の全一式データが、下記の表5〜8に提供される。
【表8】

【0107】
【表9】

【0108】
【表10】

【0109】
【表11】

【0110】
次に、huIL−17に対する精製されたAIN457(バッチ En/E−10333/53;0.54mg/ml)の阻害活性を評価する。IC50値は、表6に示す。これらの実験では、huIL−17R/Fcおよびマウス抗huIL−17 MAbは、ポジティブコントロールとして、そして、シムレクト(Simulect)はネガティブコントロールとして含まれる。
【表12】

*平均値および標準誤差は、三個の異なった、独立した実験から計算される。
【0111】
結論として、AIN457は、ヒトの皮膚線維芽細胞によるIL−17依存性のhuIL−6の分泌を抑止する。この作用強度は、huIL−17R/Fcのそれと匹敵し、商業上利用可能なマウス抗huIL−17 MAbのそれと比較して優れている。IL−17R/Fcに比較して、AIN457でより完全な阻害が観察されることを注目することは興味深い。
【0112】
実施例3:重鎖と軽鎖のアミノ酸シークエンシングの純度および部分的アミノ酸配列
およびV領域のアミノ末端アミノ酸配列:二個の抗IL−17A抗体の重鎖および軽鎖の最初の48個のアミノ酸残基、クローン110−7(表4参照)および110−28(表4参照)を、エドマン分解によって決定する。このアミノ酸配列は、両方のクローンで同一である。ジーンバンクでは、blast分析でサーチされ、そして、見出された最も相同的なDNA配列をクローニングプライマーの設計に使用する。
【0113】
およびV領域の分子クローニング:製造業者(Quiagen Hilden Germany)のプロトコールに従ってRNeasy Midi Kitを用いて、全RNAを2×10個のハイブリドーマ細胞(クローン 110−7、クローン 110−28)から調製する。全RNAを200μlのRNase非含有水中に溶出し、−80℃で保存する。ファーストストランドcDNA合成を、M−MLV逆転写酵素(Promega, Madison, WI)、oligo-dT プライマー、PCRヌクレオチド混合物(dNTP)およびRNAsin阻害剤(Roche, Mannheim)を用いて行う。5μgの全RNAは、1μlのoligo-dT プライマー(0.5μg/μl)と混和し、次にRNase非含有水を最終容積36μlまで加える。この混合物を70℃で10分間インキュベートし、次いで氷上に保存する。氷の上にある間に、次の試薬を加える:10μl 5× RT緩衝液、2μl dNTPs(各10mM)、2μl RNasinおよび1μl M−MLV逆転写酵素。この反応を42℃で1時間行う。
【0114】
PCR反応を全容量40μl中でcDNAテンプレート4μl、それぞれ10μMの各プライマー2μl(概要は下記および表10および11参照)、2×Qiamix (緩衝液、dNTP's, TAQPolymeraseを含む)20μlおよびPwo DNA Polymerase 1μlを用いて、構築する。このPCRの条件は、94℃で15秒間、55℃で20秒間そして72℃で30秒間の35サイクルにセットされる。PCR生成物をpCR4−TOPO−Zero(Stragagene, La Jolla, Ca.)クローニングベクターにサブクローニングする。いくつかのクローンを各反応から回収し、ヌクレオチド配列がプライマー MV432(配列番号21)、MV433(配列番号22)、MV434(配列番号23)、MV435(配列番号14)、およびベクターDNAにおける標準的プライマーを用いて、Solvias AG(Basel)によって決定する。
【0115】
重鎖をコードしているcDNAを、プライマーペアー MV416(配列番号15)/#265(配列番号16)およびMV418(配列番号17)/#265(配列番号16)を用いて増幅する。このプライマーは、重鎖の次のアミノ酸位置に相当するヌクレオチド配列をカバーしている:MV416 位置−19/−13(シグナルペプチド);MV418 位置+1/+7;#265 位置+253/+259。位置+1は、成熟蛋白質の最初のアミノ酸である。
【0116】
軽鎖をコードしているcDNAを、プライマーペアー MV417(配列番号18)/#223(配列番号19)およびMV419(配列番号20)/#223(配列番号19)を用いて増幅する。このプライマーは、軽鎖の次のアミノ酸位置に相当するヌクレオチド配列をカバーしている:MV417 位置−20/−14(シグナルペプチド);MV419 位置+1/+7;#223 位置+210/+215。このアプローチによって、それぞれの免疫グロブリン鎖の二個の独立したPCR増幅が可能になり、その結果、二個のDNA配列が独立して確立することになる。
【0117】
結果および考察
二個のハイブリドーマ(110−7および110−28、上記表4参照)に由来する重鎖および軽鎖をコードしているクローニングされたPCR生成物は、DNAシークエンシングによって特徴付けられる。5個および6個の独立した配列が軽鎖および重鎖の配列を集合させるために使用される。軽鎖cDNAは、すべて同一であり、全体をコードしている配列(アミノ酸位置−20〜+215)をカバーしている。重鎖cDNAは、それぞれ一個のcDNAに二個の異なるミスマッチを有していた。これらは、開始コドンから定常領域ドメイン1(アミノ酸位置−19から+238)の後のヒンジ領域の端まで伸長している最終的な配列から排除される。両方のハイブリドーマの配列は同一である。ハイブリドーマ110−28から得られるcDNAを選択し、すべての更なる発現作業のために使用する。配列番号7(AIN457の重鎖のcDNA)、配列番号8(AIN457の重鎖のアミノ酸配列)、配列番号9(AIN457の軽鎖のcDNA)および配列番号10(AIN457のアミノ酸配列)は、PCR増幅およびDNAシークエンシングのために使用される蛋白質配列およびプライマーの位置と共に、AIN457の軽鎖および重鎖をコードしているDNA配列を示す。このDNA配列は、重鎖に対しては受託番号 NPL003689として、軽鎖に対しては受託番号 NPL003690として、PlasNovaに登録されている。
【0118】
cDNAクローニングによって見出されたアミノ酸配列は、以前に精製免疫グロブリン重鎖および軽鎖のエドマン分解によって得られたそれと同一であり、正しいcDNAがクローニングされたことを示している。
【0119】
【表13】

【表14】

【0120】
【表15】

【表16】

【0121】
実施例4:抗ヒトIL−17Aモノクローナル抗体AIN457のFab断片の三次元構造
相補性決定領域(CDR')の立体配座およびAIN457の抗原結合部位の構造を決定するために、Fab断片を生成し、結晶化し、次にそのX線構造を蛋白質結晶構造解析によって決定する。
【0122】
方法:NVP−AIN457のFab断片を抗体全体からパパイン開裂によって製造し、プロテインAクロマトグラフィー、続いて、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製する。次いで精製物を限外ろ過によって10mM トリス−HCl、pH7.4、25mM NaCl、5mM TCEP中で20mg/mlまで濃縮する。結晶は、2.0M 硫酸アンモニウム、5% PEG400、0.1M Na MES pH6.5によって19℃で懸滴して蒸気拡散法の技術によって成長させる。これらは、単位格子寸法 a=90.3Å、b=106.7Å、c=131.4Åを有し、かつ非対称単位に二個のFab分子を有する空間群P2にある。X線データ回収の前に、AIN457 Fabの単一結晶は、Lustyの方法(J. Appl. Cryst. (1999) 32, 106-112)を用いて、グルタルアルデヒドで架橋され、次いで2.0M LiSO、2%PEG400、および0.1M Na MES pH6.5を含む溶液に移される。次にこの結晶をデータ回収のために95Kで、クリオループ(cryo-loop)にマウントし、急速冷凍する。それぞれ1.0deg振動に相当する180の回折像が記録される。この回折データは、HKLプログラムスイートで処理される。この構造は、分子置換によって2.5Å分解能まで決定される。次いでこの構造は、プログラムCNXを用いて、ねじれ角力学およびエネルギー最小化によって精度をあげる。
【0123】
結果:二個のAIN457Fab分子は結晶の非対称ユニットで存在し、両方のFab分子のH−CDR3ループが対称関連FabのH−CDR3ループとの蛋白質−蛋白質接触中に関与している。この二個のFab分子は、異なった肘角度を示すが、その他の点で本質的には同一のCDRループ立体配座を有する(CDRループのアミノ酸配列の表12参照)。このH−CDR1ループはしかるべきH1:1の正準な構造を採用しており、一方、H−CDR2ループ立体配座は、規範的構造H2:3Aのそれと適合している。AIN457抗体のH−CDR3ループは、Kabat 94位(Arg H98)と101位(Asp H115)の間の18個の残基を含んでなり、非常に長い。それは、94位(Arg H98)中のArgの側鎖とH101位(Asp H115)中のAspカルボキシラート基の間の塩架橋によって、およびTrp H117の側鎖とPhe H114の主鎖カルボニル基の間の水素結合相互作用によって、安定化された典型的な湾曲したトルソー構造(bulged torso structure)を示す。H−CDR3ループの頭部は、その基部に第二のベータ−湾曲(beta-bulge)およびその頂点にタイプIのベータ−ターン(type I' beta-turn)を有する長い、ねじれたベータヘアピン構造を有する。AIN457 H−CDR3ループの際立った特徴は、その高含量の芳香族残基である:6個のチロシン、2個のトリプトファン、1個のフェニルアラニン。他のCDRループのすべては、それぞれ更に一個のチロシンを供給しているので、AIN457の抗原結合部位は、全部で11個のチロシンを有している。L−CDR1とL−CDR2のループの立体配座は、それぞれ、正準な構造L1:6およびL2:1に合致する。H−CDR3とは対照的に、L−CDR3ループは短く(6個の残基)、その先端部にシス−プロリン(Pro L96)を有し、Kabat 90位にグルタミン(Gln L91)を有し、Kabat 97位にトレオニン(Thr L98)を有する、一般に観察される規範的構造L3:1を示す。しかしながら、AIN457 L−CDR3ループのかなり異例な特徴は、シス−プロリンの後にシステイン残基の存在することである(Cys L97)。Cys L97の側鎖は、V−Vインターフェイスに位置している浅い陥凹の底部にあり、残基Trp H112、Trp H47およびTyr L92によって並んでいる。
【表17】

【0124】
表1:Chothiaおよびその共同研究者のアプローチを用いて、Kabat定義に基づき、X線解析によって決定されたAIN457モノクローナル抗体の超可変領域のアミノ酸配列。太字で強調表示されたアミノ酸は、CDRループの部分であり、一方、普通のスタイルで示されたアミノ酸は、抗体フレームワークの部分である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】AIN457 FabのX線構造を示す。相補性決定領域が強調されているAIN457 Fab(C□トレース)の可変ドメインのクローズアップ図である。AIN457の抗原結合部位が特別にチロシン残基に多く含まれているという事実を図解するために、CDRループによって提供されているチロシン側鎖のすべてが示されている。V−VインターフェイスでのCys L97の側鎖が、また示されている(矢印)。
【図2】AIN457 FabのX線構造、概観図を示す。AIN457のFabのファンデルワールスの表面描写である。軽鎖および重鎖は、それぞれ、ライトグレイおよびダークグレイで色付けされている。CDRループは、異なった色で強調されている。抗体の抗原結合部位から突き出ているまさにループであるH−CDR3ループ(H-CDR3 loop)が存在していることが注目される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1nMのヒトIL−17の活性を5nM以下の濃度で50%阻害することができ、前記阻害活性はヒトの皮膚線維芽細胞中のhu−IL−17によって誘発されるIL−6の産生により測定される、IL−17結合分子。
【請求項2】
重鎖(V)および軽鎖(V)可変ドメインの両方を含んでなるIL−17結合分子であって;
前記IL−17結合分子は、
a)順に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3(前記CDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、前記CDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を有する)またはその直接CDR等価物を含む、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
b)順に超可変領域CDR1'、CDR2'およびCDR3'(前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列を有する)またはその直接CDR'等価物を含む、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)
を含んでなる少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子。
【請求項3】
重鎖(V)および軽鎖(V)可変ドメインの両方を含んでなるIL−17結合分子であって、前記IL−17結合分子は、
a)順に超可変領域CDR1−x、CDR2−xおよびCDR3−x(前記CDR1−xは、配列番号11のアミノ酸配列を有し、前記CDR2−xは、配列番号12のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3−xは、配列番号13のアミノ酸配列を有する)またはその直接CDR−x等価物を含む、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
c)順に超可変領域CDR1'、CDR2'およびCDR3'(前記CDR1'は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、前記CDR2'は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、そして前記CDR3'は、配列番号6のアミノ酸配列を有する)またはその直接CDR'等価物を含む、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)
を含んでなる少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子。
【請求項4】
ヒト抗体である請求項1、2または3に記載のIL−17結合分子。
【請求項5】
1位のアミノ酸から始まって127位のアミノ酸で終了する配列番号8に示されているアミノ酸に実質的に相同性のあるアミノ酸配列を有する第一のドメインまたは上記に述べられた第一のドメインと、1位のアミノ酸から始まって109位のアミノ酸で終了する配列番号10に示されているアミノ酸に実質的に相同性のあるアミノ酸配列を有する第二のドメインを含んでなる少なくとも一個の抗原結合部位を含んでなる、IL−17結合分子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のIL−17結合分子をコードしているDNA構築物。
【請求項7】
配列番号7またはその直接DNA等価物;または配列番号9またはその直接DNA等価物に実質的に相同的であるDNA分子を含んでなるDNA構築物。
【請求項8】
一方が配列番号7またはその直接DNA等価物に実質的に相同性があり、そして、他方が配列番号9またはその直接DNA等価物に実質的に相同性がある二個のDNA分子を含んでなるDNA構築物。
【請求項9】
請求項6、7または8に記載の少なくとも一個のDNA構築物を含んでなる原核または真核細胞株中で複製できる発現ベクター。
【請求項10】
(i)請求項9に記載の発現ベクターで形質転換された生物を培養し、そして(ii)培養物からIL−17結合分子を回収することを含んでなる、IL−17結合分子の製造方法。
【請求項11】
薬剤を製造するための請求項1〜5に記載のIL−17結合分子の使用。
【請求項12】
IL−17介在性疾患または障害の処置をする薬剤を製造するための請求項1〜5に記載のIL−17結合分子の使用。
【請求項13】
骨関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症および他の炎症性関節炎疹の処置のための請求項1〜5のいずれかに記載のIL−17結合分子の使用。
【請求項14】
患者に有効量の請求項1〜5のいずれかに記載のIL−17結合分子を投与することを含んでなる、それを必要とする患者におけるIL−17介在性疾患または障害の処置方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載のIL−17に対する抗体を薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と共に含んでなる医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−507988(P2008−507988A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524286(P2007−524286)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008470
【国際公開番号】WO2006/013107
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】