説明

L−(−)−モプロロールL−(+)−酒石酸塩

L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)、その製造方法、及びそれを含む薬剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)、その製造方法、及びそれを含む眼用薬剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伊国特許1 113 029号には、モプロロールの2つの光学異性体の分離方法が記載されている。
【0003】
欧州特許出願公開0 118 940号には、緑内障を治療するための流動性眼用組成物を生産するために、L-(-)-モプロロール又はその医薬として許容される酸−付加塩を使用することが記載されている。該文書において特に説明され且つ試験されている前記医薬として許容される酸−付加塩は、塩酸塩である。
【特許文献1】伊国特許1 113 029号
【特許文献2】欧州特許出願公開0 118 940号
【発明の開示】
【0004】
ここで、L-(+)-酒石酸塩が前記塩酸塩よりも良好な局所忍容性を示すことを発見した。
【0005】
従って、第一の態様において、本発明は、L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)に関する。
【0006】
前記L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)は、公知の技術、例えば、適切な有機溶媒に溶解させたL-(+)-酒石酸を、適切な有機溶媒に同じく溶解させたL-(-)-モプロロール塩基に、2:1のモル比で添加することによって容易に製造される。次に、こうして形成された塩(L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1))は、塩の沈殿及びその濾過を含む公知の技術を経て、或いは、気化による溶媒の除去を経て単離される。
【0007】
一好適実施態様においては、上述の有機溶媒がエタノールであり、エチルエーテルの添加によってアセトン溶液から前記塩を沈殿させる。
【0008】
従って、第二の態様において、本発明は、適切な有機溶媒に溶解させたL-(+)-酒石酸を、適切な有機溶媒に同じく溶解させたL-(-)-モプロロールに、2:1のモル比で添加することを含むことを特徴とするL-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)の製造方法に関する。
【0009】
その良好な局所忍容性のおかげで、L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩は、目に使用するのに特に有用であることが見出された。
【0010】
従って、第三の態様において、本発明は、医薬として許容される少なくとも一種の賦形剤と共に、L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)を含むことを特徴とする眼用薬剤組成物に関する。
【0011】
本発明に従う薬剤組成物による治療から利点を見出し得る病状の代表例は、高眼圧症及び緑内障である。
【0012】
好ましくは、本発明に従う薬剤組成物は、ゲル、軟膏又は点眼薬の形態にあり、また、眼用に好適な他の賦形剤、例えば、エチレングリコール、PEG、カルボキシメチルセルロース、マンニトール、ソルビトール、ポロキサマー類、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を含んでもよい。
【0013】
また、前記組成物は、保存剤、安定剤、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調整用塩類、乳化剤等の他の従来成分を含んでもよい。
【0014】
特別な治療用途に必要ならば、本発明に従う薬剤組成物は、同時投与が有効な他の薬理的に活性な成分を含んでもよい。
【0015】
本発明の薬剤組成物におけるL-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩の量は、公知のファクター、例えば、治療される疾病の特定の型、疾病の深刻さ、日々の投与回数に依存して、広い範囲で変わり得る。しかしながら、当業者であれば、容易に且つ普通に最適量を決定することができる。
【0016】
本発明の薬剤組成物中のL-(-)-モプロロールの量は、典型的には、0.01重量%から20重量%の間であり、より一層好ましくは、1重量%から8重量%の間である。
【0017】
本発明の薬剤組成物の服用形態は、混合、溶解、殺菌等を含む薬剤師に周知の技術に従って調製することができる。
【実施例】
【0018】
本発明を説明するために以下に実施例を示すが、該実施例は、本発明を限定するものではない。
【0019】
実施例1
L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)の調製
工程a)
2Nの水酸化ナトリウム溶液を、水(100ml)中にL-(-)-モプロロール塩酸塩(10g)を溶解させた溶液に、沈殿物が更に形成されなくなるまで、撹拌しながら滴下した。
【0020】
上記沈殿物をジクロロメタン(100ml)で抽出した。該有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥した。最後に、上記ジクロロメタンを気化によって除去した。
【0021】
こうして得られた固形残渣は、L-(-)-モプロロール塩基(9.1g)からなっていた。
【0022】
工程b)
無水エタノール(15ml)中にL-(+)-酒石酸(1.57g; 0.01mol)を溶解させた溶液を、熱い無水エタノール(30ml)中にL-(-)-モプロロール塩基(5.0g; 0.02mol)を溶解させた溶液に加えた。
【0023】
上記溶液を60℃で10分間撹拌した後、沈殿が終わるまで、エチルエーテルを加えた。こうして得た沈殿物(非常に吸湿性)をデカンテーションで分離し、無水エタノール(30ml)から結晶化して、目的生成物(5.2g)を得た。
【0024】

【0025】
試験1
眼の忍容性
二種の水溶液を用いた。
【0026】
第一の溶液は、L-(-)-モプロロール塩酸塩を1重量%(0.87重量%のL-(-)-モプロロールに相当)含んでいた。第二の溶液は、L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)を1.14重量%(0.87重量%のL-(-)-モプロロールに相当)含んでいた。
【0027】
平均体重が2kgで平均月齢が10ヶ月のオスのウサギ12匹を使用し、それぞれ6匹のウサギからなる二つのグループに分けた。第一のグループを、第一の試験溶液 0.1mlで、15日間、一日当り3回処置した。第二のグループを、第二の試験溶液 0.1mlで、15日間、一日当り3回処置した。
【0028】
J. Draize et al., Pharmacol. Exp. Ther., 83, 377-390 (1994)に従って、忍容性を評価した。結果を下記の表1に示す。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)。
【請求項2】
目に使用するための薬剤組成物であって、
医薬として許容される少なくとも一種の賦形剤と共に、L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)を含むことを特徴とする薬剤組成物。
【請求項3】
ゲル、軟膏又は点眼薬の形態にあること特徴とする請求項2に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
L-(-)-モプロロールの量が0.01重量%から20重量%の間であることを特徴とする請求項2又は3に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
L-(-)-モプロロールの量が1重量%から8重量%の間であることを特徴とする請求項2又は3に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
L-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)の製造方法であって、
適切な有機溶媒に溶解させたL-(+)-酒石酸を、適切な有機溶媒に同じく溶解させたL-(-)-モプロロール塩基に、2:1のモル比で添加することを含むことを特徴とするL-(-)-モプロロール L-(+)-酒石酸塩(2:1)の製造方法。
【請求項7】
前記のようにして形成された塩を沈殿及び濾過を経て単離することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上述の有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
エチルエーテルの添加によって、前記エタノール溶液から前記塩を沈殿させることを特徴とする請求項8に記載の方法。


【公表番号】特表2007−519661(P2007−519661A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550043(P2006−550043)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000560
【国際公開番号】WO2005/075408
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(592160973)アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ (36)
【氏名又は名称原語表記】AZIENDE CHIMICHE RIUNITE ANGELINI FRANCESCO A.C.R.A.F.SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】