説明

LEDランプ

【課題】1基のランプ本体において使用者の嗜好や使用場所に応じてランプの発光色(発光スペクトル)、光の配向角度(指向性)やランプデザインを選択できるようなLEDランプを提供する。
【解決手段】基板7と、この基板7上に実装されたLEDチップ8とを備えるLEDモジュール2と、このLEDモジュール2が設置された基体部3と、上記LEDモジュール2を、空間をおいて覆うように上記基体部3に取り付けられたグローブ4aと、このグローブ4aの内面に前記LEDチップ8から離間させて設けられ、上記LEDチップ8から出射された紫外乃至紫色光を吸収して可視光を発光する蛍光膜9と、上記基体部3内に設けられ、上記LEDチップ8を点灯させる点灯回路11と、この点灯回路11と電気的に接続された口金6とを具備し、上記グローブ4aと基体部3aとが着脱自在となるように着脱機構12を設けたことを特徴とするLEDランプである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、LEDランプに係り、特に着脱可能なグローブを有し、使用者の嗜好や使用場所に応じてランプの発光色、光の配向角度(指向性)やランプデザインを選択できるように構成したLEDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)を用いた発光装置は、液晶表示装置のバックライト、信号装置、各種スイッチ類、車載用ランプ、一般照明等の照明装置に幅広く利用されている。特に、LEDと蛍光体とを組合せた白色発光型のLEDランプは、白熱電球の代替品として注目されており、その開発が急速に進められている。このLEDランプとしては、例えばランプ口金が設けられた基体部にグローブを取り付けると共に、グローブ内にLEDチップを配置し、さらに基体部内にLEDチップの点灯回路を設けた一体型のランプ構造を有するものが知られている。
【0003】
この種のLEDランプとしては、LEDチップの表面に直接蛍光体層を塗布し、一定の発光スペクトルを持つランプが公知であり、また現在未公開であるが特願2010−192533号明細書に記載されたLED電球のように、蛍光体層をLEDチップから離れたところに設けたランプなどがある。
【0004】
上記特願2010−192533号明細書に記載されたLED電球は、図5に示すように、基板7と、この基板7上に実装された紫外乃至紫色発光のLEDチップ8とを備えるLEDモジュール2と、このLEDモジュール2が設置された基体部3と、上記LEDモジュール2を覆うように上記基体部3に取り付けられたグローブ4と、このグローブ4の内面に上記LEDチップ8から離間させて設けられ、上記LEDチップ8から出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光膜(蛍光体層)9と、上記基体部3内に設けられ、上記LEDチップ8を点灯させる点灯回路(図示せず)と、この点灯回路と電気的に接続された口金6とを具備して構成されている。いずれも省電力が可能であり、フィラメント方の白熱電球と比較して長寿命であるという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2010−192533号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記LEDチップの表面に直接蛍光体層を塗布したLEDランプにおいては、LEDチップ部分のみが局部的に高輝度に発光するために、ランプ(電球)全体の輝度を均一化することが困難であり、これにより電球のぎらつきや局所的な「まぶしさ」、いわゆるグレアを低減することが困難であるという問題点が提起されていた。
【0007】
また上記特願2010−192533号明細書に記載されたLED電球は、製造工場において、予め蛍光膜を形成したグローブと基体部とが強固に固着されているために、一般の使用者自身でグローブを交換することは不可能であった。
【0008】
また、LEDランプの販売店において点灯状態でその発光性能や発光色を実演していて、その発光状態を確認した後にLEDランプを購入しても、家庭等で実際に使用する場所で点灯した場合には、発光の色合いや照度が従来の電球の発光スペクトルとは大きく異なるため、利用者によっては違和感を覚えたり、周囲への配光度合が従来と異なったりして、部屋全体での配光バランスが大きく変化して効果的な照明装置には成り得ない場合が多い。
【0009】
さらに、LEDランプは現時点では一般的に高価であるため、容易に買い換えて購入することが困難であるという問題や利用者個人のそれぞれの嗜好に沿った発光仕様への変更が困難であるという欠点を有している。
【0010】
本発明は上記先行技術の問題点を解決するためになされたものであり、特に着脱可能なグローブを有し、蛍光体層の組成や形状を替えたグローブを取替え可能な構造とすることにより、1基のランプ本体において使用者の嗜好や使用場所に応じてランプの発光色(発光スペクトル)、光の配向角度(指向性)やランプデザインを選択できるように構成したLEDランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の実施形態に係るLEDランプは、基板とこの基板上に実装されたLEDチップとを備えるLEDモジュールと、このLEDモジュールが設置された基体部と、上記LEDモジュールを、空間をおいて覆うように上記基体部に取り付けられたグローブと、このグローブの内面に前記LEDチップから離間させて設けられ、上記LEDチップから出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光膜と、上記基体部内に設けられ、上記LEDチップを点灯させる点灯回路と、この点灯回路と電気的に接続された口金とを具備し、上記グローブと基体部とが着脱自在となるように着脱機構を設けたことを特徴とする。このようなLEDランプでは、他の蛍光体層が塗布されたグローブや形状を替えたグローブを容易に着脱交換することができ、使用者の嗜好に沿った所望の発光特性を備えるグローブに変更することが可能となる。
【0012】
また、上記LEDランプにおいて、前記着脱機構が、前記グローブの外周縁周上に均等に配設された複数の係止片と、この係止片を係止すると共に、前記基体部の外周縁周上に形成された複数の係止部材とから成ることが好ましい。このような着脱機構によれば、グローブにおける係止片も、基体部における係止部材も樹脂材の一体成形で容易に形成することが可能である。しかも、係止片を設けたグローブを僅かに回転させるだけで着脱操作が迅速に完了できる。
【0013】
さらに上記LEDランプにおいて、前記LEDモジュールが波長350〜420nmの紫外乃至紫色発光を出射する一方、この紫外乃至紫色発光を受けて、グローブ内面に塗布された蛍光体層が可視光を出射することが好ましい。このようなLEDランプでは、LEDモジュールから出射された波長350〜420nmの紫外乃至紫色発光を高い変換効率で可視光に変換できる蛍光体が実現しているので、より高い発光強度が得られる。
【0014】
また上記LEDランプにおいて、前記蛍光体層とは異なる種類の蛍光体層を設けたグローブまたは前記グローブの形状とは異なる形状を有するグローブを基体部に装着することにより、ランプの発光色または配光角度を適宜変更することが可能になるので好ましい。すなわち、それぞれの用途に適合する光を発する蛍光体層が塗布されたグローブに交換することにより、電球色や昼白色、青色、赤色、橙色、黄色など様々な発光色を出射できるLED電球が得られる。
【0015】
さらに上記LEDランプにおいて、前記グローブの最大径Aが、基体部の最大径Bよりも大きいことが好ましい。この場合には、ランプ本体の背面方向にも光が出射されることになり、より広い配向性が得られ、広配光を実現するLEDランプが得られる。
【0016】
また上記LEDランプにおいて、前記グローブを基体部から脱着したときに前記点灯回路をOFFとする一方、前記グローブを基体部に装着したときに前記点灯回路をONとするリミットスイッチを配置することが好ましい。グローブの交換に際して、通常は電源をOFFとした後にランプ全体を口金部分から脱着した状態で、他の蛍光体層や他の形状を有する他のグローブに交換するのが通常である。しかしながら、上記リミットスイッチを設けることにより、上記グローブを脱着した状態では点灯しないので、有害とされる紫外光のみの出射状態を回避できるので、上記リミットスイッチは有効である。
【発明の効果】
【0017】
上記構成に係るLEDランプによれば、グローブと基体部とが着脱自在となるように着脱機構が設けられているために、グローブ内面に形成する蛍光体層の組成やグローブの形状を替えたものに付け替えることが可能になり、1基のランプ本体において使用者の嗜好や使用場所に応じてランプの発光色(発光スペクトル)、光の配向角度(指向性)やランプデザインを自由に選択できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態によるLEDランプについてグローブ部を破断して示す部分断面図。
【図2】第1の実施形態における着脱機構の構成例を示す斜視図。
【図3】他の実施形態に係るLEDランプについてグローブ部を破断して示す部分断面図。
【図4】グローブの他の形状例を示す断面図。
【図5】先行技術としてのLEDランプの構成例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1実施形態に係るLEDランプ1aは、図1および図2に示すように、基板7と、この基板7上に実装されたLEDチップ8とを備えるLEDモジュール2と、このLEDモジュール2が設置された基体部3aと、上記LEDモジュール2を、空間をおいて覆うように上記基体部3aに取り付けられたグローブ4aと、このグローブ4aの内面に上記LEDチップ8から離間させて設けられ、上記LEDチップ8から出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光膜9と、上記基体部3a内に設けられ、上記LEDチップ8を点灯させる点灯回路11と、この点灯回路11と電気的に接続された口金6とを具備し、上記グローブ4aと基体部3aとが着脱自在となるように着脱機構12を設けて構成されている。
【0020】
また、図1においてLEDチップ8の上面は透明樹脂層で封止されている。一方、基体部3aと口金6とは、絶縁部材5を介して接合されている。
【0021】
さらに、上記のLEDランプ1aにおいて、上記着脱機構12は、上記グローブ4aの外周縁周上に少なくも3箇所に均等間隔で配設された複数の係止片4Bと、この係止片4Bを係止すると共に、前記基体部3aの外周縁周上の少なくも3箇所に均等間隔で形成された複数の係止部材3Aとから構成されている。なお、上記グローブ4aに配設された複数の係止片4Bと、基体部3aの外周縁周上形成された複数の係止部材3Aとは、それぞれに対応した位置に形成されていることは、両者がそれぞれ対応位置で係止されることから当然の構成である。
【0022】
上記LEDモジュール2は、基板7上に実装された紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を備えている。基板7上には複数のLEDチップ8が面実装されている。紫外乃至紫色発光のLEDチップ8としては、InGaN系、GaN系、AlGaN系等の発光ダイオードが用いられる。基板7の表面(さらに必要に応じて内部)には、配線網が設けられており、LEDチップ8の電極は基板7の配線網と電気的に接続されている。LEDモジュール2の側面もしくは底面には、配線が引き出されており、この配線が基体部3内に設けられた点灯回路11と電気的に接続されている。LEDチップ8は、点灯回路11を介して印加される直流電圧により点灯する。
【0023】
グローブ4aの内面には、LEDチップ8から出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光膜(蛍光体層)9が設けられている。従来の蛍光体粒子をLEDチップの封止樹脂中に分散させたLEDモジュールとは異なり、蛍光膜9はLEDチップ8から離間するようにグローブ4aの内面に設けられている。LEDランプ1aに印加された電気エネルギーは、LEDチップ8で紫外乃至紫色光に変換され、さらに蛍光膜9でより長波長の光に変換されて白色光として放出される。LED電球1から放出される白色光は、従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球とは異なり、蛍光膜9の発光のみにより構成される。
【0024】
LEDランプ1aはグローブ4aの内面全体に設けられた蛍光膜9が発光するため、従来の蛍光体粒子を封止樹脂中に分散させたLEDモジュールとは異なり、蛍光膜9全体を面発光させることができ、蛍光膜9から全方位に白色光が広がる。また、従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLEDランプとは異なり、蛍光膜9からの発光のみで白色光を得ているため、局所的な輝度ムラ等を抑制することができる。これらによって、ぎらつきが無く、均一で柔らかい白色光が得られる。すなわち、LEDランプ1aのグレアを従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLEDランプ1aと比べて大幅に低減することが可能となる。
【0025】
グローブ4aの形状は特に限定されるものではなく、図1に示すような半球ドーム型形状や図3に示すようなナス型形状を適用することができる。なお、図3に示すLEDランプ1bは、グローブ4bの形状が異なる点以外は、図1に示すLEDランプ1aと同様な構成を備えている。グローブ4aの形成材料は透光性を有するものであれば特に限定されず、例えばガラス製のグローブや樹脂製のグローブ等が使用される。グローブ4aは、例えば白熱電球と同等の大きさを有している。
【0026】
LEDランプ1aの発光色は、LEDチップ8の発光波長と蛍光膜9を構成する蛍光体との組合せにより決定される。紫外乃至紫色光のLEDチップ8と組合せて白色光を得るにあたって、蛍光膜9は青色蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体、及び赤色蛍光体を含む混合蛍光体(BGR又はBYR蛍光体)で構成することが好ましい。混合蛍光体は、さらに青緑色蛍光体及び深赤色蛍光体から選ばれる少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。混合蛍光体を構成する各蛍光体は特に限定されるものではないが、LEDチップ8からの紫外乃至紫色光との組合せ、また得られる白色光の色温度や演色性(平均演色評価数Ra等)の観点から以下に示す蛍光体を使用することが好ましい。
【0027】
すなわち、青色蛍光体としては、発光のピーク波長が430〜460nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(1)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体を使用することが好ましい。
【0028】
一般式:(Sr1−x−y−zBaCaEu(PO・Cl …(1)
(式中、x、y、及びzは0≦x<0.5、0≦y<0.1、0.005≦z<0.1を満足する数である)
また、緑色乃至黄色蛍光体としては、発光のピーク波長が490〜580nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(2)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)及びマンガン(Mn)付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、式(3)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)及びマンガン(Mn)付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体、式(4)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体、及び式(5)で表わされる組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0029】
一般式:(Ba1−x−y−zSrCaEu)(Mg1−uMn)Al1017 …(2)
(式中、x、y、z、及びuは0≦x<0.2、0≦y<0.1、0.005<z<0.5、0.1<u<0.5を満足する数である)
一般式:(Sr1−x−y−z−uBaMgEuMnSiO …(3)
(式中、x、y、z、及びuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)
一般式:(Si,Al)(O,N):Eu …(4)
(式中、xは0<x<0.3を満足する数である)
一般式:(Sr1−xEuαSiβAlγδω …(5)
(式中、x、α、β、γ、δ、及びωは0<x<1、0<α≦3、12≦β≦14、2≦γ≦3.5、1≦δ≦3、20≦ω≦22を満足する数である)
一方、赤色蛍光体としては、発光のピーク波長が580〜630nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(6)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活酸硫化ランタン蛍光体、式(7)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活カズン蛍光体、及び式(8)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0030】
一般式:(La1−x−yEuS …(6)
(式中、MはSm、Ga、Sb、及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、x及びyは0.08≦x<0.16、0.000001≦y<0.003を満足する数である)
一般式:(Ca1−x−ySrEu)SiAlN …(7)
(式中、x及びyは0≦x<0.4、0<x<0.5を満足する数である)
一般式:(Sr1−xEuαSiβAlγδω …(8)
(式中、x、α、β、γ、δ、及びωは0<x<1、0<α≦3、5≦β≦9、1≦γ≦5、0.5≦δ≦2、5≦ω≦15を満足する数である)
さらに青緑色蛍光体としては、発光のピーク波長が460〜490nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(9)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)及びマンガン(Mn)付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体を使用することが好ましい。
【0031】
一般式:(Ba1−x−y−z−uSrMgEuMnSiO …(9)
(式中、x、y、z、及びuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)
また深赤色(DR)蛍光体としては、発光のピーク波長が630〜780nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(10)で表される組成を有するマンガン(Mn)付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体を使用することが好ましい。
【0032】
一般式:αMgO・βMgF・(Ge1−xMn)O …(10)
(式中、α、β、及びxは3.0≦α≦4.0、0.4≦β≦0.6、0.001≦x≦0.5を満足する数である)
混合蛍光体を構成する各蛍光体の比率は、LEDランプ1aの発光色等に応じて適宜に設定されるものであるが、例えば混合蛍光体は質量割合で、10〜60%の範囲の青色蛍光体、0〜10%の範囲の青緑色蛍光体、1〜30%の範囲の緑色乃至黄色蛍光体、30〜90%の範囲の赤色蛍光体、及び0〜35%の範囲の深赤色蛍光体を含むことが好ましい。このような混合蛍光体によれば、相関色温度が6500K〜2500Kというような広範囲の白色光を同一蛍光種で得ることができる。従来の青色LEDと黄色蛍光体との組合せの場合、2色の組合せのみでは2800Kの電球色を、偏差を含めて調整することは困難であり、青色励起で発光する赤色蛍光体を追加することが必要となる。
【0033】
蛍光膜9は、例えば混合蛍光体の粉末をバインダ樹脂等と混合し、この混合物(例えばスラリー)をグローブ4aの内面に塗布した後に加熱・硬化させることによって形成される。混合蛍光体粉末は平均粒子径(粒度分布の中位値(D50))が3〜50μmの範囲であることが好ましい。このような平均粒子径を有する混合蛍光体(蛍光体粒子)を使用することによって、LEDチップ8から出射される紫外乃至紫色光の吸収効率を高めることができ、LEDランプ1aの輝度を向上させることが可能となる。
【0034】
LEDランプ1aの励起源として紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を使用した場合には、従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球とは異なり、上述したように蛍光膜9を種々の蛍光体で構成することができる。すなわち、蛍光膜9の構成する蛍光体種の選択幅が広がるため、LEDランプ1aから放出される白色光の演色性等を高めることができる。具体的には、相関色温度が6500K以下で、黒体軌跡からの偏差が−0.01以上0.01以下の範囲であると共に、平均演色評価数(Ra)が85以上の白色光を得ることができる。このような白色光を得ることによって、白熱電球の代替品としてのLEDランプ1aの実用性等を向上させることが可能となる。
【0035】
LEDチップ8は紫外乃至紫色発光タイプ(発光ピーク波長が350〜430nm)のLEDであればよいが、特に発光ピーク波長が400〜420nmの範囲、さらに好ましくは370〜410nmの範囲であると共に、発光スペクトルの半値幅が10〜20nmのLEDチップ8を使用することが好ましい。このようなLEDチップ8と上述した混合蛍光体(BGR又はBYR蛍光体、さらに必要に応じて青緑蛍光体や深赤色(DR)蛍光体を加えた混合蛍光体)で構成した蛍光膜9とを組合せて使用した場合、相関色温度(発光色)についてはLEDチップ8の出力バラツキにかかわらず安定した白色光を得ることができ、LEDランプ1aの歩留りを高めることが可能となる。従来の青色LEDと黄色蛍光体との組合せは、LEDチップの出力バラツキが直接相関色温度(発光色)に影響するため、LEDランプの歩留りが低下しやすい。
【0036】
また、基板7上に面実装された複数のLEDチップ8は、透明樹脂層10で覆われていることが好ましい。すなわち、LEDモジュール2は、基板7上に面実装された複数のLEDチップ8と、複数のLEDチップ8を覆うように基板7上に設けられた透明樹脂層10とを備えることが好ましい。透明樹脂層10には、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等が用いられ、特に耐紫外線性に優れるシリコーン樹脂を使用することが好ましい。このように、複数のLEDチップ8を透明樹脂層10で覆うことによって、各LEDチップ8から出射された光が互いに伝播し、グレアの一因となる局所的な光の強弱が緩和されると共に、光の取出し効率を高めることができる。
【0037】
ところで、蛍光膜9の励起源として紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を用いた場合、グローブ4aからの紫外線の漏出を抑制することが重要となる。グローブ4aから漏出した紫外線は、LEDランプ1aの近傍やLEDランプ1aが配置された室内空間等に存在する印刷物、食品、薬品、人体等に悪影響を及ぼすおそれがある。このような点から、実施形態のLED電球1はグローブ4aから漏出する紫外線量(紫外線のエネルギー量)を0.1mW/nm/lm以下とすることが好ましい。このような紫外線の漏れ量であれば、蛍光灯等の従来の照明器具と同等レベルもしくはそれ以下であり、印刷物の色劣化、食品や薬品の変質、人体等への悪影響を極力抑えることができ、LED電球1の実用性を高めることが可能となる。
【0038】
グローブ4aから漏出する紫外線量を低減するためには、蛍光膜9の膜厚を厚くすることが有効である。ここで、実施形態のLEDランプ1aは蛍光膜9からの発光光のみで白色光を得ているため、蛍光膜9の膜厚を厚くすることができ、その場合にもLEDランプ1aから放出される白色光の色度等に影響を及ぼすことがない。ただし、蛍光膜9の膜厚を厚くしすぎると、LEDランプの明るさが低下する。そこで、実施形態のLEDランプ1aでは膜厚が80〜800μmの蛍光膜9を適用している。膜厚が80〜800μmの蛍光膜9を適用することによって、グローブ4から漏出する紫外線量を0.1mW/nm/lm以下まで低減しつつ、LEDランプ1aの明るさの低下を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態ではグローブ4aと基体部3とを着脱自在にする着脱機構を設けている。この着脱機構は、特に限定されるものではないが、例えばグローブ4a下縁部と基体部3の上縁部に雌ねじと雄ねじ部をそれぞれ形成し、両者をねじで螺合する方式でも良い。
【0040】
また、従来の円環状蛍光ランプを固定する金具のように、常時は基体部からランプ外方向に拡開するようにばね付勢された複数の弾性体を基体部上面に植設し、グローブ内部に一体に形成した突起部に上記弾性体を係止することにより、グローブ4aと基体部3とを着脱自在に固定する方式も採用できる。
【0041】
本第1実施形態では、特に着脱機構12が、前記グローブ4aの外周縁周上に均等に配設された複数の係止片4Bと、この係止片4Bを係止すると共に、前記基体部の外周縁周上に形成された複数の係止部材3Aとから構成されている。グローブ4aを基体部3に装着する場合は、グローブ4aの係止片4Bが、図2において矢印方向に移動するように、グローブ4aを右回りに回転すると、係止片4Bが基体部3の係止部材3Aに係止されてグローブ4aが固定される。
【0042】
ここで、係止部材3Aの内側端部には、グローブ4aを基体部3から脱着したときに前記点灯回路11をOFFとする一方、グローブ4aを基体部3に装着したときに点灯回路11をONとするリミットスイッチ3Aaが配置されている。
【0043】
そのため、グローブ4aを基体部3に装着したときは、係止片4Bが係止部材3Aの内部に十分に進入する結果、係止片4Bの先端部がリミットスイッチ3Aaに当接してリミットスイッチ3Aaが動作して点灯回路11がONとなる。
【0044】
一方、グローブ4aを基体部3から脱着する時には、図2において係止部材3Aに係止していた係止片4Bを外すべく、グローブ4aを左回りに回転すると、係止片4Bが係止部材3Aから外れるので、グローブ4aは基体部3から脱着される。このとき、リミットスイッチ3Aaが開放されるように動作して点灯回路11がOFFとなる。したがって、グローブ4aを脱着した状態では、たとえランプ電源を入れたとしても点灯回路11はOFFのままであり、LEDランプ1aは点灯しない。
【0045】
そのため、上記リミットスイッチ3Aaを設けることにより、上記グローブ4aを脱着した状態ではLEDランプ1aは点灯しないので、有害とされる紫外光のみの出射状態を回避できるので、このLEDランプ1aが配置された室内空間等に存在する印刷物、食品、薬品、人体等に悪影響を及ぼすおそれがない。また、上記のような着脱機構12によれば、グローブ4aにおける係止片4Bも、基体部3における係止部材3Aも樹脂材の一体成形で容易に形成することが可能である。
【0046】
次に本発明の第2実施形態について図3を参照して説明する。
【0047】
図3に示す第2実施形態に係るLEDランプ1bは、グローブ4bの最大径Aが、基体部3aの最大径Bよりも大きい点以外の構成は、第1実施形態に係るLEDランプ1aと同一である。同一構成要素には同一符号を付してその説明は省略する。
【0048】
本実施形態のように、グローブ4bの最大径Aを、基体部3aの最大径Bよりも大きくすることにより、蛍光体層9から出射される光の方向がランプ本体の背面方向まで拡大されることになるために、ランプ本体の背面方向にも光が出射されることになり、より広い配向性が得られ、広配光を要する照明空間に最適なLEDランプが得られる。
【0049】
次に本発明の第3実施形態について図4を参照して説明する。
【0050】
この第3実施形態では、特にグローブ4cの形状を有底円筒状に形成した点に特徴が有り、他の構成は図1および図3に示すLEDランプ1a,1bと同一である。本第3実施形態のLEDランプでは、図1および図3に示す「半球ドーム形状」および「なす型」に形成したグローブ4a,4bを使用したLEDランプ1a,1bと比較して、蛍光膜9から出射される光の方向がグローブ4cの平坦な発光面方向に集中する指向性が発揮されるので、この平坦面に対向する部位の照度を高めることができる。
【0051】
以上の詳細な説明では、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の実施形態に係るLEDランプによれば、グローブと基体部とが着脱自在となるように着脱機構が設けられているために、グローブ内面に形成する蛍光体層の組成やグローブの形状を替えた他のグローブに容易に付け替えることが可能になり、1基のランプ本体において使用者の嗜好や使用場所に応じてランプの発光色(発光スペクトル)、光の配向角度(指向性)やランプデザインを自由に選択できる効果が得られる。
【符号の説明】
【0053】
1,1a,1b…LEDランプ、2…LEDモジュール、3,3a…基体部、3A…係止部材、3Aa…リミットスイッチ、4,4a,4b,4c…グローブ、4B…係止片、5…絶縁部材、6…口金、7…基板、8…LEDチップ(発光素子)、9…蛍光膜(蛍光体層)、10…透明樹脂層、11…点灯回路、12…着脱機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上に実装されたLEDチップとを備えるLEDモジュールと、このLEDモジュールが設置された基体部と、上記LEDモジュールを、空間をおいて覆うように上記基体部に取り付けられたグローブと、このグローブの内面に前記LEDチップから離間させて設けられ、上記LEDチップから出射された紫外乃至紫色光を吸収して可視光を発光する蛍光膜と、上記基体部内に設けられ、上記LEDチップを点灯させる点灯回路と、この点灯回路と電気的に接続された口金とを具備し、上記グローブと基体部とが着脱自在となるように着脱機構を設けたことを特徴とするLEDランプ。
【請求項2】
請求項1記載のLEDランプにおいて、前記着脱機構が、前記グローブの外周縁周上に均等に配設された複数の係止片と、この係止片を係止すると共に、前記基体部の外周縁周上に形成された複数の係止部材とから成ることを特徴とするLEDランプ
【請求項3】
請求項1記載のLEDランプにおいて、前記LEDモジュールが波長350〜420nmの紫外乃至紫色発光を出射する一方、この紫外乃至紫色発光を受けて、グローブ内面に塗布された蛍光体層が可視光を出射することを特徴とするLEDランプ。
【請求項4】
請求項1記載のLEDランプにおいて、前記蛍光体層とは異なる種類の蛍光体層を設けたグローブまたは前記グローブの形状とは異なる形状を有するグローブを基体部に装着することにより、ランプの発光色または配光角度を変更したことを特徴とするLEDランプ。
【請求項5】
請求項1記載のLEDランプにおいて、前記グローブの最大径Aが、基体部の最大径Bよりも大きいことを特徴とするLEDランプ。
【請求項6】
請求項1記載のLEDランプにおいて、前記グローブを基体部から脱着したときに前記点灯回路をOFFとする一方、前記グローブを基体部に装着したときに前記点灯回路をONとするリミットスイッチを配置したことを特徴とするLEDランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−64805(P2012−64805A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208430(P2010−208430)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】