説明

LED電球

【課題】演色性の向上とグレアの低減とを実現すると共に、配光角を大きくすることを可能にしたLED電球を提供する。
【解決手段】LED電球1は、LEDモジュール2と、LEDモジュール2が設置された基体部3と、基体部3に取り付けられたグローブ4とを具備する。LEDモジュール2は、基板7の表面7aに実装された紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を備える。グローブ4は基板7の表面と平行な方向への断面が円形の形状を有する。グローブ4の内面には、LEDチップから出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光膜9が設けられている。グローブ4は上記断面が最大の部分の直径D2より基体部3への取り付け部の直径D1が小さい形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はLED電球に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)を用いた発光装置は、液晶表示装置のバックライト、信号装置、各種スイッチ類、車載用ランプ、一般照明等の照明装置に幅広く利用されている。特に、LEDと蛍光体とを組合せた白色発光型のLEDランプは、白熱電球の代替品として注目されており、その開発が急速に進められている。LEDランプを適用した電球(以下、LED電球と記す)としては、例えば電球口金が設けられた基体部にグローブを取り付けると共に、グローブ内にLEDチップを配置し、さらに基体部内にLEDチップの点灯回路を設けた一体型のランプ構造を有するものが知られている。
【0003】
従来のLED電球においては、青色発光のLEDチップ(青色LED)と、青色LEDから出射された青色光を吸収して黄色光を発光する黄色蛍光体(YAG蛍光体等)との組合せが適用されており、青色LEDから出射された青色光とそれを吸収して黄色蛍光体が発光する黄色光との混色により白色光を得ている。青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球は、明るさを確保しやすいというような特徴を有する。しかしながら、青色LEDからの青色光と黄色蛍光体からの黄色光との混色に基づく白色光は、平均演色評価数(Ra)等で評価される演色性に劣るという難点を有する。
【0004】
従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球は、光の分布が青色成分と黄色成分とに偏っており、赤色成分の光が不足しているため、LED電球からの光で物体を見たときの反射光が太陽光の下で見る自然色とは異なるという難点を有している。また、従来のLED電球では、青色LEDから出射された光が白色光の生成に使用されるため、電球全体の輝度を均一化することが難しく、これにより電球のぎらつきや局所的なまぶしさ、いわゆるグレアを低減することが困難であるという難点を有する。加えて、青色LEDから出射された青色光は直進性が強く、水平方向に進んだ光はそのまま直進して周囲に広がらないため、いわゆる配光角を十分に大きくすることができないという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−005546号公報
【特許文献2】特開2009−170114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、演色性の向上とグレアの低減とを実現すると共に、配光角を大きくすることを可能にしたLED電球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のLED電球は、LEDモジュールと、LEDモジュールが設置された基体部と、LEDモジュールを覆うように基体部に取り付けられ、基板の表面と平行な方向への断面が円形のグローブとを具備する。LEDモジュールは、基板上に実装された紫外乃至紫色発光のLEDチップを備える。基体部には、LEDチップを点灯させる点灯回路と、点灯回路と電気的に接続された口金とが設けられている。グローブは上記断面が最大の部分の直径より基体部への取り付け部の直径が小さい形状を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態によるLED電球を一部断面で示す図である。
【図2】第2の実施形態によるLED電球を一部断面で示す図である。
【図3】第3の実施形態によるLED電球を示す図である。
【図4】第4の実施形態によるLED電球を示す図である。
【図5】実施形態によるLED電球の配光角の一例を従来のLED電球の配光角と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態のLED電球について、図面を参照して説明する。図1は第1の実施形態によるLED電球を示す図、図2は第2の実施形態によるLED電球を示す図、図3は第3の実施形態によるLED電球を示す図、図4は第4の実施形態によるLED電球を示す図である。これらの図に示すLED電球1は、LEDモジュール2と、LEDモジュール2が設置された基体部3と、LEDモジュール2を覆うように基体部3上に取り付けられたグローブ4と、基体部3の下端部に絶縁部材5を介して取り付けられた口金6と、基体部3内に設けられた点灯回路(図示せず)とを具備する。
【0010】
LEDモジュール2は、基板7の表面7aに実装された紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を備えている。基板7上には複数のLEDチップ8が面実装されている。紫外乃至紫色発光のLEDチップ8には、InGaN系、GaN系、AlGaN系等の発光ダイオードが用いられる。基板7の表面7a(さらに必要に応じて内部)には、配線網(図示せず)が設けられており、LEDチップ8の電極は基板7の配線網と電気的に接続されている。LEDモジュール2の側面もしくは底面には、図示を省略した配線が引き出されており、この配線が基体部3内に設けられた点灯回路(図示せず)と電気的に接続されている。LEDチップ8は、点灯回路を介して印加される直流電圧により点灯する。
【0011】
グローブ4の内面には、LEDチップ8から出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光膜9が設けられている。LED電球1の発光色は、LEDチップ8の発光波長と蛍光膜9を構成する蛍光体との組合せにより決定される。紫外乃至紫色光のLEDチップ8と組合せて白色光を得るにあたって、蛍光膜9は青色蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体、及び赤色蛍光体を含有する混合蛍光体(BGR又はBYR蛍光体)で構成することが好ましい。混合蛍光体は、さらに青緑色蛍光体及び深赤色蛍光体から選ばれる少なくとも1種の蛍光体を含有していてもよい。蛍光膜9はそれからの発光のみ(LEDチップ8から出射された光を含まない)で白色光を得ることが可能な混合蛍光体を含んでいる。
【0012】
上記したBGR又はBYR蛍光体を構成する各蛍光体、また必要に応じて添加される青緑色蛍光体や深赤色蛍光体としては、LEDチップ8からの紫外乃至紫色光との組合せ、得られる白色光の色温度や演色性(平均演色評価数Ra等)等の観点から、以下に示す蛍光体を使用することが好ましい。青色蛍光体としては、発光のピーク波長が430〜460nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(1)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体を使用することが好ましい。
一般式:(Sr1-x-y-zBaxCayEuz5(PO43・Cl …(1)
(式中、x、y、及びzは0≦x<0.5、0≦y<0.1、0.005≦z<0.1を満足する数である)
【0013】
緑色乃至黄色蛍光体としては、発光のピーク波長が490〜580nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(2)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)及びマンガン(Mn)付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、式(3)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)及びマンガン(Mn)付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体、式(4)で表される組成を有するセリウム(Ce)付活希土類アルミン酸塩蛍光体、式(5)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体、及び式(6)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0014】
一般式:(Ba1-x-y-zSrxCayEuz)(Mg1-uMnu)Al1017 …(2)
(式中、x、y、z、及びuは0≦x<0.2、0≦y<0.1、0.005<z<0.5、0.1<u<0.5を満足する数である)
一般式:(Sr1-x-y-z-uBaxMgyEuzMnu2SiO4 …(3)
(式中、x、y、z、及びuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)
一般式:RE3xAl5-x-yy12:Cez …(4)
(式中、REはY、Lu、及びGdから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、A及びBは対をなす元素であって、(A,B)が(Mg,Si)、(B,Sc)、(B.In)のいずれかであり、x、y、及びzはx<2、y<2、0.9≦x/y≦1.1、0.05≦z≦0.5 を満足する数である)
一般式:(Si,Al)6(O,N)8:Eux …(5)
(式中、xは0<x<0.3を満足する数である)
一般式:(Sr1-xEuxαSiβAlγδω …(6)
(式中、x、α、β、γ、δ、及びωは0<x<1、0<α≦3、12≦β≦14、2≦γ≦3.5、1≦δ≦3、20≦ω≦22を満足する数である)
【0015】
赤色蛍光体としては、発光のピーク波長が580〜630nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(7)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活酸硫化ランタン蛍光体、式(8)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)及びビスマス(Bi)付活酸化イットリウム蛍光体、式(9)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活カズン蛍光体、及び式(10)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0016】
一般式:(La1-x-yEuxy22S …(7)
(式中、MはSm、Ga、Sb、及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、x及びyは0.08≦x<0.16、0.000001≦y<0.003を満足する数である)
一般式:(Y1-x-yEuxBiy23 …(8)
(式中、x及びyは0.01≦x<0.15、0.001≦y<0.05を満足する数である)
一般式:(Ca1-x-ySrxEuy)SiAlN3 …(9)
(式中、x及びyは0≦x<0.4、0<x<0.5を満足する数である)
一般式:(Sr1-xEuxαSiβAlγδω …(10)
(式中、x、α、β、γ、δ、及びωは0<x<1、0<α≦3、5≦β≦9、1≦γ≦5、0.5≦δ≦2、5≦ω≦15を満足する数である)
【0017】
青緑色蛍光体としては、発光のピーク波長が460〜490nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(11)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)及びマンガン(Mn)付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体を使用することが好ましい。
一般式:(Ba1-x-y-z-uSrxMgyEuzMnu2SiO4 …(11)
(式中、x、y、z、及びuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)
【0018】
深赤色蛍光体としては、発光のピーク波長が630〜780nmの範囲の蛍光体が用いられ、例えば式(12)で表される組成を有するマンガン(Mn)付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体を使用することが好ましい。
一般式:αMgO・βMgF2・(Ge1-xMnx)O2 …(12)
(式中、α、β、及びxは3.0≦α≦4.0、0.4≦β≦0.6、0.001≦x≦0.5を満足する数である)
【0019】
混合蛍光体を構成する各蛍光体の比率は、LED電球1の発光色等に応じて適宜に設定されるものであるが、例えば混合蛍光体は10〜60質量%の範囲の青色蛍光体、0〜10質量%の範囲の青緑色蛍光体、1〜30質量%の範囲の緑色乃至黄色蛍光体、30〜90質量%の範囲の赤色蛍光体、及び0〜35質量%の範囲の深赤色蛍光体を含有することが好ましい。このような混合蛍光体によれば、相関色温度が6500K〜2500Kというような広範囲の白色光を同一蛍光種で得ることができる。
【0020】
蛍光膜9は、例えば混合蛍光体の粉末をバインダ樹脂等と混合し、この混合物(例えばスラリー)をグローブ4の内面に塗布した後に加熱・硬化させることによって形成される。混合蛍光体粉末は平均粒子径(粒度分布の中位値(D50))が3〜50μmの範囲であることが好ましい。このような平均粒子径を有する混合蛍光体(蛍光体粒子)を使用することによって、LEDチップ8から出射される紫外乃至紫色光の吸収効率を高めることができ、LED電球1の輝度を向上させることが可能となる。
【0021】
また、蛍光膜9の膜厚は80〜800μmの範囲とすることが好ましい。蛍光膜9の励起源として紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を用いた場合、グローブ4からの紫外線の漏出を抑制することが好ましい。グローブ4から漏出した紫外線は、LED電球1の近傍や配置空間に存在する印刷物、食品、薬品、人体等に悪影響を及ぼすおそれがある。蛍光膜9の膜厚が80μm未満の場合、紫外線の漏出量が多くなる。一方、蛍光膜9の膜厚が800μmを超えるとLED電球1の明るさが低下する。膜厚が80〜800μmの蛍光膜9によれば、グローブ4から漏出する紫外線量(紫外線のエネルギー量)を例えば0.3mW/nm/lm以下まで低減しつつ、LED電球1の明るさの低下を抑制することができる。蛍光膜9の膜厚は150〜600μmの範囲とすることがより好ましい。
【0022】
この実施形態のLED電球1における蛍光膜9は、従来の蛍光体粒子をLEDチップの封止樹脂中に分散させたLEDモジュールとは異なり、LEDチップ8から離間するようにグローブ4の内面に設けられている。LED電球1に印加された電気エネルギーは、LEDチップ8で紫外乃至紫色光に変換され、さらに蛍光膜9でより長波長の光に変換されて白色光として放出される。LED電球1から放出される白色光は、従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球とは異なり、蛍光膜9の発光のみにより構成される。
【0023】
LED電球1は、グローブ4の内面全体に設けられた蛍光膜9が発光するため、従来の蛍光体粒子を封止樹脂中に分散させたLEDモジュールとは異なり、蛍光膜9全体を面発光させることができ、蛍光膜9から全方位に白色光が広がる。また、従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球とは異なり、蛍光膜9からの発光のみで白色光を得ているため、局所的な輝度ムラ等を抑制することができる。これらによって、ぎらつきが無く、均一で柔らかい白色光が得られる。すなわち、LED電球1のグレアを従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球に比べて大幅に低減することが可能となる。
【0024】
また、LED電球1の励起源として紫外乃至紫色発光のLEDチップ8を使用した場合には、従来の青色LEDと黄色蛍光体とを組合せたLED電球とは異なり、蛍光膜9を種々の蛍光体で構成することができる。すなわち、蛍光膜9の構成する蛍光体種の選択幅が広がるため、LED電球1から放出される白色光の演色性等を高めることができる。具体的には、相関色温度が6500K以下で、平均演色評価数(Ra)が85以上の白色光を容易に得ることができる。このような白色光を得ることによって、白熱電球の代替品としてのLED電球1の実用性等を向上させることが可能となる。
【0025】
LEDチップ8は紫外乃至紫色発光タイプ(発光ピーク波長が350〜430nm)のLEDであればよいが、特に発光ピーク波長が370〜415nmの範囲であると共に、発光スペクトルの半値幅が10〜15nmのLEDチップ8を使用することが好ましい。このようなLEDチップ8と上述した混合蛍光体(BGR又はBYR蛍光体、さらに必要に応じて青緑色蛍光体や深赤色蛍光体を加えた混合蛍光体)で構成した蛍光膜9とを組合せて使用した場合、相関色温度(発光色)についてはLEDチップ8の出力バラツキにかかわらず安定した白色光を得ることができ、LED電球1の歩留りを高めることが可能となる。従来の青色LEDと黄色蛍光体との組合せは、LEDチップの出力バラツキが直接相関色温度(発光色)に影響するため、LED電球の歩留りが低下しやすい。
【0026】
基板7上に面実装された複数のLEDチップ8は、透明樹脂層10で覆われていることが好ましい。すなわち、LEDモジュール2は、基板7上に面実装された複数のLEDチップ8と、複数のLEDチップ8を覆うように基板7上に設けられた透明樹脂層10とを備えていることが好ましい。透明樹脂層10には、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等が用いられ、特に耐紫外線性に優れるシリコーン樹脂を使用することが好ましい。このように、複数のLEDチップ8を透明樹脂層10で覆うことによって、各LEDチップ8から出射された光が互いに伝播し、グレアの一因となる局所的な光の強弱が緩和されると共に、光の取出し効率を高めることができる。
【0027】
グローブ4は可視光の透過率が80%以上の透明又は白色系の体色を有する材料、例えばガラスや樹脂で形成することが好ましい。これによって、蛍光膜9から発光された白色光を電球外部に効率よく取り出すことができる。グローブ4は、例えば図1に示すようにドーム型形状を有している。図1に示すドーム型形状は、基板7の表面7aと平行な方向への断面(第1の断面)が円形であると共に、第1の断面が最大の部分の直径D2より基体部3への取り付け部4aの直径D1が小さい形状を有している。図1に示すグローブ4は、球体の中心を含む平面(大円を含む面/中心面)から下方の半球部の一部を中心面と平行に切り取り、この切り取り後の端部を取り付け部4aとした形状を有している。
【0028】
このような形状を有するグローブ4の内面に白色発光する蛍光膜9を設けることによって、LED電球1の配光角を大きくすることができ、加えて蛍光膜9の温度上昇等に起因する経時的な輝度低下を抑制することができる。ここで、配光角とは電球の周囲への光の広がりを示すものであり、配光角が小さいと電球直下の輝度が高くても電球全体として明るさが不足しているように感じられるものである。この実施形態における配光角は、電球の中心輝度に対して輝度が1/2になる角度を左右両側に求め、両者の角度を合計したものである。左右対称の場合には、片側角度の2倍の値となる。
【0029】
従来の蛍光体を含有する樹脂層でLEDチップを覆った電球構造においては、LEDチップから放射されたエネルギーが樹脂層中の蛍光体で可視光に変換され、この可視光が樹脂層から様々な方向に拡散することになる。ただし、LEDチップが実装された基板の表面と水平に進んだ光はそのまま直進することになるため、基板の裏側(基板より下方)には光が広がりにくい。このため、図5(b)に示すように、蛍光体を含有する樹脂層でLEDチップを覆ったLED電球の配光角は120度程度である。
【0030】
また、従来の青色LEDと黄色蛍光体等とを組合せたLED電球において、黄色蛍光体等からなる蛍光膜をグローブの内面に形成した場合、蛍光膜からの発光が周囲に拡散するため、蛍光体を含有する樹脂層でLEDチップを覆ったLED電球より配光角が大きくなる。しかしながら、白色光の一部を構成する青色LEDから放射された光は直進性が高く、その状態でグローブを透過して外部に放出されるため、やはり基板の裏側(基板より下方)には広がりにくい。従って、LED電球の配光角の改善には限界がある。
【0031】
これらに対して、実施形態のLED電球1はグローブ4の内面に設けられた蛍光膜9全体を面発光させ、この蛍光膜9からの発光のみで白色光を得ているため、蛍光膜9から全方位に白色光が広がることになる。すなわち、白色光を構成する発光成分の全てをグローブ4の内側で発光させ、蛍光膜9の全面から周囲に白色光を拡散させているため、電球背面への白色光自体の広がりが大きくなる。
【0032】
さらに、グローブ4は第1の断面が最大部分の直径D2より基体部3への取り付け部4aの直径D1が小さい形状を有している。すなわち、グローブ4は取り付け部4aに向けてしぼった形状を有しているため、背面方向への白色光の広がりがより大きくなる。従って、図5(a)に示すように、LED電球1の白色光の配光角を大きくすることが可能となる。この実施形態のLED電球1によれば、配光角を例えば180度以上とすることができ、さらには200度以上とすることができる。
【0033】
LED電球1の配光角を向上させる上で、図2に示すドーム型形状を有するグローブ4がさらに有効である。図2に示すグローブ4は、半球状のドーム部11と、ドーム部11と基体部3への取り付け部4aとを繋ぐしぼり部12とを有している。しぼり部12は基板7の表面7aに垂直な方向への断面(図2に示す断面/第2の断面)が直線状の形状を有しており、これによりグローブ4の形状をより大きくしぼることができると共に、グローブ4の一部を背面方向に向けることが可能となる。
【0034】
このようなドーム部11としぼり部12とを有するグローブ4によれば、グローブ4の全体形状の増大を抑制した上で、ドーム部11の基体部3からの突出量(オーバーハング量)を大きくすると共に、グローブ4の内面に形成される蛍光膜9の一部をより効果的に背面方向に向けることができる。これによって、LED電球1から放出される白色光の配光角を効果的に大きくすることが可能となる。
【0035】
図2に示すグローブ4は、取り付け部4aの直径D1に対するドーム部11の最大直径(第1の断面における最大部分の直径)D2の比(D2/D1)が1.07〜1.61の範囲で、かつ最大直径D2と取り付け部4aの直径D1の差(D2−D1)に対するしぼり部12の高さHの比(H/(D2−D1))が0.147〜3.125の範囲の形状を有することがより好ましい。このような形状を有するグローブ4を適用することで、LED電球1から放出される白色光の配光角をより効率よく大きくすることができる。
【0036】
D2/D1比が1.07未満であると、しぼり部12による配光角の拡大効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、D2/D1比が1.61を超えても、それ以上の効果の増加が期待できないだけでなく、LED電球1の全体形状が拡大して実用性が低下する。また、H/(D2−D1)比が0.147未満であると、白色光を背面方向へ効果的に回り込ませることができず、配光角の拡大効果が低下するおそれがある。一方、H/(D2−D1)比が3.125を超えても、それ以上の効果の増加が期待できないだけでなく、LED電球1の全体形状が拡大して実用性が低下する。D2/D1比は1.07〜1.43の範囲であることがより好ましく、またH/(D2−D1)比は0.294〜1.7の範囲であることがより好ましい。
【0037】
ドーム部11やしぼり部12の具体的な形状は、口金6の種類等に応じて適宜に選択することが好ましい。例えば、一般電球に用いられているE26口金を有するLED電球1の場合、最大直径D2は60〜90mmの範囲とすることが好ましい。この際の取り付け部4aの直径D1は40〜84mmの範囲、またしぼり部12の高さHは5〜45mmの範囲とすることが好ましい。また、小型電球に用いられているE17口金等を有するLED電球1の場合には、それに応じて同様な比率の形状を適用することが好ましい。
【0038】
また、蛍光膜9の温度上昇等に起因する経時的な輝度低下に関して、従来の蛍光体含有の樹脂層でLEDチップを覆った構造では、LED電球を連続点灯させた際にLEDチップの温度上昇に基づいて蛍光体も温度上昇しやすい。このため、蛍光体の温度上昇による輝度劣化が生じやすい。これに対して、蛍光膜9をLEDチップ8から離間するようにグローブ4の内面に設けることによって、LEDチップ8が温度上昇した場合においても蛍光膜9の温度上昇を抑制することができる。蛍光膜9とLEDチップ8との間には十分な距離があるとき、例えば蛍光膜9の温度は60℃前後までしか上昇しない。従って、LED電球1の点灯中の経時的な輝度低下を抑制することができる。
【0039】
上述したグローブ4における最大部分の直径D2より基体部3への取り付け部4aの直径D1が小さい形状は、図1や図2に示したドーム型形状に限られるものではない。例えば、図3に示すようなナス型形状や図4に示すような円筒型形状を有するグローブ4を適用することも可能である。図3に示すナス型形状のグローブ4は、ナス型形状に基づいて最大部分の直径D2より取り付け部4aの直径D1が小さくなっている。図4に示す円筒型形状のグローブ4は、円筒部13と取り付け部4aとを繋ぐしぼり部14を有しており、これにより最大部分の直径D2より取り付け部4aの直径D1が小さくなっている。
【0040】
この実施形態のLED電球1は、例えば以下のようにして作製される。まず、蛍光体粉末を含む蛍光体スラリーを調製する。蛍光体スラリーは、例えば蛍光体粉末をシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等のバインダ樹脂やアルミナ、シリカ等の充填材と混合して調製される。蛍光体とバインダ樹脂との混合比は、蛍光体の種類や粒子径により適宜に選択されるが、例えば蛍光体を100質量部としたとき、バインタ樹脂を20〜1000質量部の範囲とすることが好ましい。蛍光体の種類、平均粒子径、混合比等は目的とする白色光に応じて、前述した条件範囲から適宜に設定することが好ましい。
【0041】
次に、グローブ4の内面に蛍光体スラリーを塗布する。蛍光体スラリーの塗布は、例えばスプレー法やディップ法、あるいはグローブ4を回転させる方法等により実施され、グローブ4の内面に均一に塗布する。次いで、蛍光体スラリーの塗布膜をドライヤやオーブン等の加熱装置を用いて加熱乾燥させることによって、グローブ4の内面に蛍光膜9を形成する。この後、LEDモジュール2や口金6等を設置した基体部3に、蛍光膜9を有するグローブ4を取り付けることによって、目的とするLED電球1を作製する。
【実施例】
【0042】
次に、具体的な実施例及びその評価結果について述べる。
【0043】
(実施例1)
まず、青色蛍光体として平均粒子径が40μmのEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩((Sr0.604Ba0.394Eu0.0025(PO43Cl)蛍光体と、緑色乃至黄色蛍光体として平均粒子径が17μmのEu及びMn付活アルカリ土類珪酸塩((Sr0.675Ba0.25Mg0.0235Eu0.05Mn0.00152SiO4)蛍光体と、赤色蛍光体として平均粒子径が45μmのEu付活酸硫化ランタン((La0.9Eu0.122S)蛍光体を用意した。これらの蛍光体を青色蛍光体と緑色乃至黄色蛍光体と赤色蛍光体の比率が質量比で17.6:4.1:78.3となるように混合して混合蛍光体(BGR蛍光体)を調製した。
【0044】
次いで、図1に形状を示したグローブを用意した。グローブは半透明で可視光の透過率が88%のポリカーボネート樹脂からなり、厚さが約1mm、最大部分の直径D2が63mm、基体部への取り付け部の直径D1が59mmのドーム型形状を有する。このようなグローブの内面に以下のようにして蛍光膜を形成した。まず、上記した混合蛍光体をバインダ樹脂としてのシリコーン樹脂に分散させて脱泡する。次に、グローブ内に所望の膜厚となる量の蛍光体スラリーを投入し、グローブの内面に均一に広がるように角度を変化させながらグローブを回転させる。次いで、赤外線ヒータやドライヤ等を用いて蛍光体スラリーが硬化し始めて塗布膜が流れなくなるまで加熱する。この後、オーブン等を用いて100℃×5時間程度の条件で熱処理し、蛍光体スラリーの塗布膜を完全に硬化させる。
【0045】
LEDモジュールは、発光ピーク波長が405nm、発光スペクトルの半値幅が15nmのLEDチップを112個使用し、これらLEDチップを基板上に面実装し、さらにシリコーン樹脂で被覆して構成したものである。また、基体部としてはE26口金を有するものを用意した。これらの構成部品を用いてLED電球を組み立てた。このようにして得たLED電球を後述する特性評価に供した。
【0046】
(実施例2〜22)
図2に形状を示したグローブを複数用意した。これらグローブの具体的な形状、すなわち最大部分の直径D2、基体部への取り付け部の直径D1、しぼり部の高さHは、それぞれ表1に示す通りである。このようなグローブを用いる以外は、実施例1と同様にしてLED電球を作製した。これらLED電球を後述する特性評価に供した。
【0047】
(比較例1)
実施例2と同一形状のグローブを使用すると共に、青色発光のLEDチップ(発光ピーク波長:450nm)を覆う樹脂層中にCe付活希土類アルミン酸塩蛍光体(黄色蛍光体)を分散させる以外は、実施例1と同様にしてLED電球を作製した。グローブの内面には蛍光膜を形成していない。このLED電球を後述する特性評価に供した。
【0048】
(比較例2〜5)
実施例2〜5と同一形状のグローブを使用すると共に、実施例1と同一のLEDチップ(発光ピーク波長:405nm)を覆う樹脂層中に実施例1と同様な混合蛍光体を分散させる以外は、実施例1と同様にしてLED電球を作製した。グローブの内面には蛍光膜を形成していない。これらLED電球を後述する特性評価に供した。
【0049】
次に、実施例1〜22及び比較例1〜5の各LED電球の配光角をコニカミノルタ社製照度計T−10により測定した。また、各LED電球のグレアを目視により評価した。それらの測定・評価結果を表1に示す。グレアは○、△、×の三段階で相対的に評価した。各LED電球の点灯時に放出される白色光の相関色温度、明るさ、平均演色評価数Raを測定したところ、各実施例によるLED電球は相関色温度が2700K、明るさが50l/W、平均演色評価数Raが94であったのに対し、比較例1によるLED電球は相関色温度が5000K、明るさが89l/W、平均演色評価数Raが70であった。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、実施例1〜22によるLED電球は配光角が大きく、またグレアも少ないことが分かる。特に、図2に示した形状を有するグローブを用いることによって、配光角をより効果的に大きくすることができる。一方、LEDチップを覆う樹脂層中に蛍光体を分散させた比較例1〜5のLED電球は配光角が小さく、またグレアの低減も十分ではないことが分かる。
【0052】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…LED電球、2…LEDモジュール、3…基体部、4…グローブ、4a…取り付け部、6…口金、7…基板、8…LEDチップ、9…蛍光膜、10…透明樹脂層、11…ドーム部、12…しぼり部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に実装された紫外乃至紫色発光のLEDチップとを備えるLEDモジュールと、
前記LEDモジュールが設置された基体部と、
前記LEDモジュールを覆うように前記基体部に取り付けられ、前記基板の表面と平行な方向への断面が円形のグローブと、
前記グローブの内面に前記LEDチップから離間させて設けられ、前記LEDチップから出射された紫外乃至紫色光を吸収して白色光を発光する蛍光膜と、
前記基体部内に設けられ、前記LEDチップを点灯させる点灯回路と、
前記点灯回路と電気的に接続された口金とを具備し、
前記グローブは前記断面が最大の部分の直径より前記基体部への取り付け部の直径が小さい形状を有することを特徴とするLED電球。
【請求項2】
請求項1記載のLED電球において、
前記グローブはドーム型形状を有することを特徴とするLED電球。
【請求項3】
請求項2記載のLED電球において、
前記グローブは、半球状のドーム部と、前記ドーム部と前記基体部への取り付け部とを繋ぐように設けられ、前記基板の表面に垂直な方向への断面が直線状のしぼり部とを有することを特徴とするLED電球。
【請求項4】
請求項3記載のLED電球において、
前記ドーム部の前記取り付け部の直径をD1、前記ドーム部の最大直径をD2、前記しぼり部の高さをHとしたとき、前記グローブはD2/D1が1.07〜1.61の範囲で、かつH/(D2−D1)が0.147〜3.125の範囲の形状を有することを特徴とするLED電球。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のLED電球において、
前記LED電球から放射される前記白色光の配光角が180度以上であることを特徴とするLED電球。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のLED電球において、
前記グローブは、透明又は白色系の体色を有し、かつ可視光の透過率が80%以上の材料からなることを特徴とするLED電球。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のLED電球において、
前記紫外乃至紫色光は、発光ピーク波長が370nm以上415nm以下の範囲であると共に、発光スペクトルの半値幅が10nm以上15nm以下の範囲であることを特徴とするLED電球。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のLED電球において、
前記LEDモジュールは、前記基板の表面に面実装された複数の前記LEDチップと、前記複数のLEDチップを被覆するように前記基板の表面に設けられた透明樹脂層とを備えることを特徴とするLED電球。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載のLED電球において、
前記蛍光膜は、青色蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体、及び赤色蛍光体を含むことを特徴とするLED電球。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項記載のLED電球において、
前記白色光は、相関色温度が6500K以下で、平均演色評価数(Ra)が85以上であることを特徴とするLED電球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−64496(P2012−64496A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209142(P2010−209142)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【特許番号】特許第4875198号(P4875198)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】