説明

LNG気化器パネルおよびその減肉防止方法

【課題】 伝熱管から落下する海水の乱流を防止し散水によるエロージョンを防止することである。
【解決手段】 LNGを海水で気化するための複数個の伝熱管11を縦方向に並列に配列してパネル17を形成し、このパネル17の下部に設けられた下部ヘッダ12からLNGをパネル17の各々の伝熱管11に供給する。また、上部ヘッダ18がパネル17の上部に設けられ、伝熱管11で気化されたNGを導入する。そして、複数個の伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部の近傍に整流部材19が設けられ、上部から落下する海水の流れを整流する。これにより、複数個の伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部にエロージョンが発生することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水を用いて伝熱管内を流れる液化天然ガスを気化して天然ガスにするLNG気化器パネルおよびその減肉防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(以下、LNGという)を気化して天然ガス(以下、NGという)を得るには、通常、オープンラック式気化器(以下ORVという)が用いられる。ORVでは、伝熱管内にLNGを流し伝熱管の外面に海水を流して、その海水による加熱によりNG化が行われている。
【0003】
ORVは、複数個の伝熱管を縦方向に並列に配列し上部ヘッダおよび下部ヘッダを取り付けてLNG気化器パネルを形成し、そのLNG気化器パネルの上方から熱源としての海水を流下させLNG気化器パネルの伝熱管の外面に沿って流下させる。また、LNG気化器パネルの下部ヘッダから伝熱管にLNGを供給し、伝熱管でNG化してLNG気化器パネルの上部ヘッダにNGが導入される。このようなORVでは、伝熱管に海水を散水していることから、上下ヘッダや伝熱管の表面には、母材保護のために犠牲陽極(メタリコン)を溶着している。
【0004】
LNG気化器パネルに犠牲陽極(メタリコン)を溶着したものとして、下部ヘッダとパネルとの溶接接合部又はその溶接接合部を含む近傍を検査面として残存させて、上下ヘッダ及びパネル全面に防食金属皮膜の溶射層を施し、伝熱管と下部ヘッダの溶接接合部近傍のPT検査を容易に行い得るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−270996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、犠牲陽極が溶射された伝熱管や上下ヘッダは、犠牲陽極の犠牲腐食により保護されるが、海水を散水していることから犠牲腐食による摩耗だけでなく、海水の落下による衝撃でも摩耗・剥離し、さらには母材まで減肉を起こすことがある。特に、下部ヘッダと複数個の伝熱管との接合部近傍は、海水の乱流を生じエロージョンが発生し、接合部や下部ヘッダの母材に減肉を生じることがある。
【0006】
図7は下部ヘッダと伝熱管との接合部近傍で発生する海水の乱流の説明図である。伝熱管11は下部ヘッダ12と溶接により接合されている。すなわち、伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部では、伝熱管11の付根部13が下部ヘッダ12と溶接接合部14で接合されており、海水15は伝熱管11を伝わって落下する。この場合、伝熱管11の付根部13は表面積が少なくなることから海水15の流速が早くなり乱流16が発生する。この乱流16により付根部13や溶接接合部14にエロージョンが発生する。
【0007】
本発明の目的は、伝熱管から落下する海水の乱流を防止し散水によるエロージョンを防止できるLNG気化器パネルおよびその減肉防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係わるLNG気化器パネルは、縦方向に並列に配列されLNGを海水で気化するための複数個の伝熱管と、前記伝熱管の下部に設けられLNGを各々の伝熱管に供給する下部ヘッダと、前記伝熱管の上部に設けられ前記伝熱管で気化されたNGを導入する上部ヘッダと、複数個の伝熱管と前記下部ヘッダとの接合部の近傍に設けられ上部から落下する海水の流れを整流するための整流部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係わるLNG気化器パネルは、縦方向に並列に配列されLNGを海水で気化するための複数個の伝熱管と、前記伝熱管の下部に設けられLNGを各々の伝熱管に供給する下部ヘッダと、前記伝熱管の上部に設けられ前記伝熱管で気化されたNGを導入する上部ヘッダと、複数個の伝熱管と前記下部ヘッダとの接合部を被覆するように設けられ上部から落下する海水の流れを整流するとともに前記接合部を保護する保護部材とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係わるLNG気化器パネルの減肉防止方法は、縦方向に並列に配列された複数個の伝熱管と各々の伝熱管にLNGを供給する下部ヘッダとの接合部の近傍に整流部材を配置し、上部から落下する海水の流れを整流部材で整流して乱流を防止し、乱流によるLNG気化器パネルの減肉を防止することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係わるLNG気化器パネルの減肉防止方法は、縦方向に並列に配列された複数個の伝熱管と各々の伝熱管にLNGを供給する下部ヘッダとの接合部を被覆するための保護部材を配置し、上部から落下する海水の流れを保護部材で整流して乱流を防止するとともに前記接合部を保護し、LNG気化器パネルの減肉を防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下部ヘッダと複数個の伝熱管との接合部の近傍に整流部材を設け、上部から落下する海水の流れを整流するので、複数個の伝熱管と下部ヘッダとの接合部にエロージョンが発生することを防止できる。また、下部ヘッダと複数個の伝熱管との接合部を保護部材で被覆するので、上部から落下する海水の流れを整流するとともに接合部を保護することができ、下部ヘッダと複数個の伝熱管との接合部の減肉を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの構成図である。図1に示すように、複数個の伝熱管11を縦方向に並列に配列してLNG気化器パネル17が形成されている。このLNG気化器パネル17の上方から熱源としての海水を落下させ、LNG気化器パネル17を形成する各々の伝熱管11の外面に沿って流下させる。一方、LNG気化器パネル17の下部ヘッダ12は伝熱管11にLNGを供給する配管であり、下部ヘッダ12内のLNGは伝熱管11を通り、伝熱管11の表面を流下する海水により暖められて気化しLNG気化器パネル17の上部ヘッダ18に気化したNGが導入される。
【0014】
LNG気化器パネル17の複数個の伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部の近傍には整流部材19が設けられている。すなわち、整流部材19は溶接接合部14の上部の付根部13に設けられ、上部から落下する海水の流れを整流する。図1では各々の伝熱管11の付根部13にそれぞれ3個の整流部材19を取り付けた場合を示している。
【0015】
図1では、3個の整流部材19を取り付けた場合を示したがが、4個以上の整流部材19を取り付けてもよいし、4個未満の整流部材19を取り付けるようにしてもよい。
【0016】
図2は整流部材19の構成図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は平面図である。整流部材19は伝熱管11の付根部13を貫通する貫通孔20を有し、貫通孔20の外周部は海水の流れが円滑になるようにテーパ状に形成されている。また、整流部材19は2個の半割れの整流部材19a、19bからなり、これら半割れの整流部材19a、19bを合体して形成される。これにより、既設のLNG気化器パネル17の各々の伝熱管11の付根部13に容易に設置できる。
【0017】
図3は第1の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの下部ヘッダ12と伝熱管11との接合部近傍での海水の流れの説明図である。海水15は伝熱管11を伝わって落下するが、伝熱管11の付根部13には整流部材19が設けられているので、伝熱管11の付根部13においても表面積が少なくなることがなく、整流部材19の表面に導かれて海水15はスムースに流れる。従って、付根部13や溶接接合部14にエロージョンを発生させることを防止できる。
【0018】
第1の実施の形態によれば、下部ヘッダ12と複数個の伝熱管11との接合部の近傍に整流部材19を設け、上部から落下する海水の流れを整流するので、乱流の発生を防止できる。従って、複数個の伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部にエロージョンが発生することを防止でき、伝熱管11の付根部13、溶接接合部14、さらには下部ヘッダ12の減肉を防止できる。
【0019】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、整流部材19に代えて、複数個の伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部を被覆する保護部材21を設け、上部から落下する海水の流れを整流するとともに接合部を保護するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0020】
LNG気化器パネル17の複数個の伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部には、接合部全体を覆う保護部材21が設けられている。すなわち、保護部材21は伝熱管11の付根部13および溶接接合部14を覆って設けられ、上部から落下する海水の流れを整流するとともに、伝熱管11の付根部13、溶接接合部14、さらには下部ヘッダ12が海水の落下による衝撃を受けないように保護する。
【0021】
図5は保護部材21の構成図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は平面図である。保護部材21は伝熱管11の付根部13を貫通する貫通孔22を有し、貫通孔22の内側部は溶接接合部14に当接するようにラッパ状に形成されている。また、貫通孔22の外周部は海水の流れが円滑になるようにテーパ状に形成されている。保護部材21は2個の半割れの保護部材21a、21bからなり、これら半割れの保護部材21a、21bを合体して形成される。これにより、既設のパネル17の各々の伝熱管11と下部ヘッダ12との接合部に容易に設置できる。
【0022】
図5では、4個の伝熱管11の接合部を一括して保護する保護部材21を示しているが、4個以上の伝熱管11の接合部を一括して保護する形状としてもよいし、4個未満の伝熱管11の接合部を保護する形状としてもよい。
【0023】
図6は第2の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの下部ヘッダ12と伝熱管11との接合部近傍での海水の流れの説明図である。海水15は伝熱管11を伝わって落下するが、伝熱管11の接合部(伝熱管11の付根部13、溶接接合部14)には保護部材21が設けられているので、伝熱管11の接合部においても表面積が少なくなることがなく、保護部材21の表面に導かれて海水15はスムースに流れる。また、伝熱管11の接合部(伝熱管11の付根部13、溶接接合部14)は保護部材21で覆われているので、伝熱管11の付根部13、溶接接合部14、さらには下部ヘッダ12にエロージョンを発生させることを防止できる。
【0024】
第2の実施の形態によれば、下部ヘッダ12と複数個の伝熱管11との接合部を保護部材21で被覆するので、上部から落下する海水の流れを整流することができる。また、伝熱管11の付根部13、溶接接合部14、下部ヘッダ12が海水の衝撃を受けることがないので、これらの減肉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態における整流部材の構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの下部ヘッダと伝熱管との接合部近傍での海水の流れの説明図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの構成図。
【図5】本発明の第2の実施の形態における保護部材の構成図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係わるLNG気化器パネルの下部ヘッダと伝熱管との接合部近傍での海水の流れの説明図。
【図7】従来のLNG気化器パネルにおける下部ヘッダと伝熱管との接合部近傍で発生する海水の乱流の説明図。
【符号の説明】
【0026】
11…伝熱管、12…下部ヘッダ、13…付根部、14…溶接接合部、15…海水、16…乱流、17…LNG気化器パネル、18…上部ヘッダ、19…整流部材、20…貫通孔、21…保護部材、22…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に並列に配列されLNGを海水で気化するための複数個の伝熱管と、前記伝熱管の下部に設けられLNGを各々の伝熱管に供給する下部ヘッダと、前記伝熱管の上部に設けられ前記伝熱管で気化されたNGを導入する上部ヘッダと、複数個の伝熱管と前記下部ヘッダとの接合部の近傍に設けられ上部から落下する海水の流れを整流するための整流部材とを備えたことを特徴とするLNG気化器パネル。
【請求項2】
縦方向に並列に配列されLNGを海水で気化するための複数個の伝熱管と、前記伝熱管の下部に設けられLNGを各々の伝熱管に供給する下部ヘッダと、前記伝熱管の上部に設けられ前記伝熱管で気化されたNGを導入する上部ヘッダと、複数個の伝熱管と前記下部ヘッダとの接合部を被覆するように設けられ上部から落下する海水の流れを整流するとともに前記接合部を保護する保護部材とを備えたことを特徴とするLNG気化器パネル。
【請求項3】
縦方向に並列に配列された複数個の伝熱管と各々の伝熱管にLNGを供給する下部ヘッダとの接合部の近傍に整流部材を配置し、上部から落下する海水の流れを整流部材で整流して乱流を防止し、乱流によるLNG気化器パネルの減肉を防止することを特徴とするLNG気化器パネルの減肉防止方法。
【請求項4】
縦方向に並列に配列された複数個の伝熱管と各々の伝熱管にLNGを供給する下部ヘッダとの接合部を被覆するための保護部材を配置し、上部から落下する海水の流れを保護部材で整流して乱流を防止するとともに前記接合部を保護し、LNG気化器パネルの減肉を防止することを特徴とするLNG気化器パネルの減肉防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−163034(P2007−163034A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360068(P2005−360068)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】