説明

LPD低減剤、シリコンウエハの欠陥低減方法、及びシリコンウエハの製造方法

【課題】LPD低減剤を用いて研磨した後の研磨対象物表面における65nm以上のサイズのLPDの数を低減することが可能なLPD低減剤、シリコンウエハの欠陥低減方法、及びシリコンウエハの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のLPD低減剤は、LPD低減剤中のナトリウムイオンの濃度が10ppb以下であり、シリコンウエハ研磨において用いられる。LPD低減剤は、さらにアルカリを好ましくは含有する。LPD低減剤は、シリコンウエハの仕上げ研磨に用いられ、LPDの大きさが65nm以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを研磨する用途で主に使用されるLPD低減剤、シリコンウエハの欠陥低減方法、及びシリコンウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウエハ等の半導体ウエハの研磨は予備研磨と仕上げ研磨の二段階に分けて行われる。仕上げ研磨で使用可能な研磨用組成物として、例えば特許文献1,2に記載の研磨用組成物が知られている。特許文献1の研磨用組成物は、水、コロイダルシリカ、ポリアクリルアミドやシゾフィランのような水溶性高分子、及び塩化カリウムのような水溶性塩類を含有している。特許文献2の研磨用組成物は、ナトリウム及び金属含有量が0〜200ppmであるコロイダルシリカ、殺細菌剤及び殺生物剤を含有している。
【0003】
現在、研磨用組成物を用いて研磨した後のウエハ表面で観察される欠陥の一種であるLPD(light point defects)について、半導体デバイスの性能に影響するとして、65nm以上のサイズのものの低減が要求されている。この点、特許文献1,2の研磨用組成物を用いても、LPDの数を従来に比べて低減することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−158684号公報
【特許文献2】特開平03−202269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、LPD低減剤を用いて研磨した後の研磨対象物表面における65nm以上のサイズのLPDの数を低減することが可能なLPD低減剤、シリコンウエハの欠陥低減方法、及びシリコンウエハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のLPD低減剤は、LPD低減剤中のナトリウムイオンの濃度が10ppb以下であり、シリコンウエハ研磨において用いられることを特徴とする。
【0007】
さらにアルカリを含むことが好ましい。
シリコンウエハの仕上げ研磨に用いられることが好ましい。
前記LPDの大きさが65nm以上であることが好ましい。
【0008】
本発明のシリコンウエハの欠陥低減方法は、シリコンウエハ研磨において、ナトリウムイオンの濃度が10ppb以下であるLPD低減剤を用いることを特徴とする。
前記LPDの大きさが65nm以上であることが好ましい。
【0009】
本発明のシリコンウエハの製造方法は、シリコンウエハ研磨において、ナトリウムイオンの濃度が10ppb以下であるLPD低減剤を含有する研磨剤で研磨することを特徴とする。
【0010】
さらに、LPD低減剤中の酢酸イオンの濃度が10ppb以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、LPD低減剤を用いて研磨した後の研磨対象物表面における65nm以上のサイズのLPDの数を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、所定量の水溶性高分子とアルカリと砥粒を水と混合することにより製造される。従って、本実施形態の研磨用組成物は、水溶性高分子、アルカリ、砥粒及び水から実質的になる。この研磨用組成物は、シリコンウエハ等の半導体ウエハを研磨する用途で使用されるものであり、特にウエハの仕上げ研磨で使用されるものである。
【0013】
本実施形態の研磨用組成物は、ナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度がそれぞれ10ppb以下である。研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンは、水溶性高分子、アルカリ、砥粒及び水に含まれる不純物に由来する。これには水溶性高分子の合成の際に用いられるナトリウム化合物及び酢酸化合物に由来するナトリウムイオン及び酢酸イオンのほか、砥粒がシリカを含む場合にはシリカの合成の際に発生するナトリウムイオンも含まれる。研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度が10ppbよりも多い場合には、研磨用組成物を用いて研磨した後のウエハ表面における65nm以上のサイズのLPDの数を低減することは困難である。研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンは研磨対象物であるウエハの表面又は研磨用組成物中の砥粒の表面に電気的に吸着し、その結果、ウエハ又は砥粒の表面の電気二重層が不安定になると推測される。より具体的には、研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンは、ともに負電荷を帯びているウエハ表面と砥粒表面の間の電気的反発を弱める働きをすると考えられる。そのため、研磨用組成物中のナトリウムイオン濃度及び酢酸イオン濃度が高くなるにつれて、ウエハ表面に砥粒が付着しやすくなり、その結果、ウエハ表面に欠陥が生じやすくなる。この点、研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度がそれぞれ10ppb以下であれば、このような研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンに起因する表面欠陥の発生を強く抑制することができ、ウエハ表面における65nm以上のサイズのLPDの数を低減することができる。
【0014】
研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度をそれぞれ10ppb以下とするためには、研磨用組成物の製造時、不純物をできるだけ含まない高純度の原料を用いることが好ましい。例えばアルカリのように高純度の原料が市販されている場合にはそれを用いてもよいし、あるいは高純度の原料の合成が可能な場合にはその合成したものを用いてもよい。また、原料に多くの不純物が含まれる場合には、不純物の除去を予め行ってからそれを研磨用組成物の製造に用いることが好ましい。水溶性高分子に含まれる不純物の除去は例えば洗浄又はイオン交換により可能である。アルカリに含まれる不純物の除去は例えばイオン交換又はキレート樹脂による吸着により可能である。砥粒に含まれる不純物の除去は例えば洗浄又はイオン交換により可能である。
【0015】
本実施形態の研磨用組成物に含まれる水溶性高分子は、研磨用組成物を用いて研磨した後のウエハ表面で観察される欠陥の一種であるヘイズを低減するという観点からすると、水溶性セルロース又はビニルポリマーであることが好ましい。水溶性セルロースの具体例としては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。ビニルポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらの水溶性高分子は、ウエハ表面に親水膜を形成し、この親水膜の作用によりヘイズを低減するものと推測される。
【0016】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロース又はポリビニルアルコールである場合、さらに言えばヒドロキシエチルセルロースである場合には、それ以外の水溶性高分子を用いた場合に比べて、研磨後のウエハ表面で観察されるヘイズがより大きく低減する。従って、研磨用組成物に含まれる水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロース又はポリビニルアルコールであることが好ましく、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。
【0017】
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は、0.01g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.03g/L以上、最も好ましくは0.05g/L以上である。水溶性高分子の含有量が多くなるにつれて、ヘイズの低減に有効な親水膜がウエハ表面に形成されやすくなるために、研磨後のウエハ表面で観察されるヘイズはより大きく低減される。この点において、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が0.01g/L以上、さらに言えば0.03g/L以上、もっと言えば0.05g/L以上であれば、研磨後のウエハ表面で観察されるヘイズを大きく低減することができる。
【0018】
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量はまた、2g/L以下であることが好ましく、より好ましくは0.5g/L以下、最も好ましくは0.2g/L以下である。水溶性高分子による親水膜は研磨用組成物によるウエハの研磨速度(除去速度)の低下を招く。そのため、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が少なくなるにつれて、親水膜による研磨速度の低下はより強く抑制される。この点において、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が2g/L以下、さらに言えば0.5g/L以下、もっと言えば0.2g/L以下であれば、親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。
【0019】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子が水溶性セルロースである場合、使用される水溶性セルロースの平均分子量は300,000以上であることが好ましく、より好ましくは600,000以上、最も好ましくは900,000以上である。一方、研磨用組成物に含まれる水溶性高分子がビニルポリマーである場合には、使用されるビニルポリマーの平均分子量は1,000以上であることが好ましく、より好ましくは5,000以上、最も好ましくは10,000以上である。水溶性高分子の平均分子量が大きくなるにつれて、ヘイズの低減に有効な親水膜がウエハ表面に形成されやすくなるために、研磨後のウエハ表面で観察されるヘイズはより大きく低減される。この点において、研磨用組成物に含まれる水溶性セルロースの平均分子量が300,000以上、さらに言えば600,000以上、もっと言えば900,000以上であれば、研磨後のウエハ表面で観察されるヘイズを大きく低減することができる。また、研磨用組成物に含まれるビニルポリマーの平均分子量が1,000以上、さらに言えば5,000以上、もっと言えば10,000以上であれば、同じく研磨後のウエハ表面で観察されるヘイズを大きく低減することができる。
【0020】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子が水溶性セルロースである場合、使用される水溶性セルロースの平均分子量はまた3,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは2,000,000以下、最も好ましくは1,500,000以下である。一方、研磨用組成物に含まれる水溶性高分子がビニルポリマーである場合には、使用されるビニルポリマーの平均分子量はまた1,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは500,000以下、最も好ましくは300,000以下である。水溶性高分子の平均分子量が小さくなるにつれて、親水膜によるウエハの研磨速度の低下はより強く抑制される。この点において、研磨用組成物に含まれる水溶性セルロースの平均分子量が3,000,000以下、さらに言えば2,000,000以下、もっと言えば1,500,000以下であれば、親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。また、研磨用組成物に含まれるビニルポリマーの平均分子量が1,000,000以下、さら
に言えば500,000以下、もっと言えば300,000以下であれば、同じく親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。
【0021】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子がポリビニルアルコールである場合、使用されるポリビニルアルコールのケン化度は75%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。ケン化度が高くなるにつれて、親水膜によるウエハの研磨速度の低下はより強く抑制される。この点において、研磨用組成物に含まれるポリビニルアルコールのケン化度が75%以上、さらに言えば95%以上であれば、親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。
【0022】
本実施形態の研磨用組成物に含まれるアルカリは、例えば、アンモニア及びアミンのいずれであってもよい。これらのアルカリは、ウエハを化学的に研磨する作用を有し、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を向上させる働きをする。
【0023】
アンモニア又は水酸化テトラメチルアンモニウムは、それ以外のアルカリに比べて、金属不純物の除去が容易であり、容易に高純度化が可能である。従って、研磨用組成物に含まれるアルカリは、アンモニア又は水酸化テトラメチルアンモニウムであることが好ましい。
【0024】
研磨用組成物中のアルカリの含有量は、0.01g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.02g/L以上、最も好ましくは0.05g/L以上である。アルカリの含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるウエハの研磨速度はより大きく向上する。この点において、研磨用組成物中のアルカリの含有量が0.01g/L以上、さらに言えば0.02g/L以上、もっと言えば0.05g/L以上であれば、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を大きく向上させることができる。
【0025】
研磨用組成物中のアルカリの含有量はまた、1g/L以下であることが好ましく、より好ましくは0.5g/L以下、さらに好ましくは0.3g/L以下である。アルカリは、研磨後のウエハの表面粗さの増大を招く虞がある。そのため、研磨用組成物中のアルカリの含有量が少なくなるにつれて、研磨後のウエハの表面粗さの増大はより強く抑制される。この点において、研磨用組成物中のアルカリの含有量が1g/L以下、さらに言えば0.5g/L以下、もっと言えば0.3g/L以下であれば、研磨後のウエハの表面粗さの増大を強く抑制することができる。
【0026】
本実施形態の研磨用組成物に含まれる砥粒は、例えば、焼成粉砕シリカやフュームドシリカ、コロイダルシリカのようなシリカであってもよい。これらの砥粒は、ウエハを機械的に研磨する作用を有し、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を向上させる働きをする。
【0027】
研磨用組成物に含まれる砥粒がコロイダルシリカである場合には、それ以外の砥粒を用いた場合に比べて、研磨用組成物の安定性が向上し、その結果、研磨後のウエハ表面におけるLPDの数が低減する。使用するコロイダルシリカは、研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度を低く抑えるためには、ゾルゲル法により合成されるコロイダルシリカであることが好ましい。ゾルゲル法では、ケイ酸メチルをメタノール、アンモニア及び水からなる溶媒中に溶解して加水分解させることにより、不純物の含有量が少ないコロイダルシリカを得ることが可能である。
【0028】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、0.01g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1g/L以上、さらに好ましくは0.2g/L以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるウエハの研磨速度はより大きく向上する。この点
において、研磨用組成物中の砥粒の含有量が0.01g/L以上、さらに言えば0.1g/L以上、もっと言えば0.2g/L以上であれば、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を大きく向上させることができる。
【0029】
研磨用組成物中の砥粒の含有量はまた、20g/L以下であることが好ましく、より好ましくは10g/L以下、さらに好ましくは6g/L以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物のコストはより大きく低減される。この点において、研磨用組成物中の砥粒の含有量が20g/L以下、さらに言えば10g/L以下、もっと言えば6g/L以下であれば、研磨用組成物のコストを大きく低減することができる。
【0030】
研磨用組成物に含まれる砥粒の平均一次粒子径は、10nm以上であることが好ましく、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、ウエハを機械的に研磨する砥粒の作用がより強まるため、研磨用組成物によるウエハの研磨速度はより大きく向上する。この点において、砥粒の平均一次粒子径が10nm以上、さらに言えば15nm以上、もっと言えば20nm以上であれば、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を大きく向上させることができる。
【0031】
研磨用組成物に含まれる砥粒の平均一次粒子径はまた、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。平均一次粒子径の大きい砥粒は、研磨後のウエハ表面のスクラッチの増加を招く虞がある。そのため、砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨後のウエハ表面のスクラッチの増加はより強く抑制される。この点において、砥粒の平均一次粒子径が100nm以下、さらに言えば60nm以下、もっと言えば40nm以下であれば、研磨後のウエハ表面のスクラッチの増加をより強く抑制することができる。
【0032】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
・ 本実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度がそれぞれ10ppb以下である。そのため、本実施形態の研磨用組成物によれば、研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンに起因する表面欠陥の発生を強く抑制することができ、ウエハ表面における65nm以上のサイズのLPDの数を低減することができる。
【0033】
前記実施形態を次のように変更してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物では、研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度がそれぞれ10ppb以下であったが、研磨用組成物中のナトリウムイオンの濃度のみが10ppb以下であってもよい。この場合でも、ナトリウムイオンに起因する表面欠陥の発生を強く抑制することができ、ウエハ表面における65nm以上のサイズのLPDの数を低減することができる。
【0034】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は水溶性高分子、アルカリ、砥粒及び水から実質的になるが、ナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度がそれぞれ10ppb以下であるか或いはナトリウムイオンの濃度が10ppb以下である限り、研磨用組成物の組成は適宜に変更されてもよい。例えば、前記実施形態の研磨用組成物には必要に応じて、ポリエチレンオキサイドやポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのポリアルキレンオキサイドを添加してもよい。あるいは、キレート剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤のような公知の添加剤を添加してもよい。
【0035】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は使用前に濃縮原液を希釈することによって調製されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、半導体ウエハ以外の研磨対象物を研磨する用途で
使用されてもよい。
【0036】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
水溶性高分子、アルカリ、砥粒、及びその他の成分を適宜に水と混合することにより実施例1,2,4〜7、参考例3及び比較例1〜7の研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物中の水溶性高分子、アルカリ、砥粒及びその他の成分の詳細並びに研磨用組成物中のナトリウムイオン及び酢酸イオンの濃度は表1に示すとおりである。
【0037】
表1の“水溶性高分子”欄中、HEC*1は陽イオン交換処理及び陰イオン交換処理したヒドロキシエチルセルロースを表し、HEC*2は陽イオン交換処理したヒドロキシエチルセルロースを表し、HEC*3は陰イオン交換処理したヒドロキシエチルセルロースを表し、HEC*4は陽イオン交換処理及び陰イオン交換処理していないヒドロキシエチルセルロースを表し、PVA*1は陽イオン交換処理及び陰イオン交換処理したポリビニルアルコールを表し、PVA*2は陽イオン交換処理及び陰イオン交換処理していないポリビニルアルコールを表す。
【0038】
表1の“アルカリ”欄中、NHはアンモニアを表し、TMAHは水酸化テトラメチルアンモニウムを表し、PIZは無水ピペラジンを表す。
表1の“砥粒”欄中、CS*1は平均一次粒子径が35nmであるコロイダルシリカを表す。
【0039】
表1の“その他の成分”欄中、PEOはポリエチレンオキサイドを表し、NaOHは水酸化ナトリウムを表す。
表1の“ナトリウムイオン濃度”欄に示す研磨用組成物中のナトリウムイオンの濃度は、誘導結合高周波プラズマ分光分析装置(ICP−AES)を用いて測定したものである。なお、ナトリウムイオンの濃度の測定は、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)又は原子吸光分析装置を用いて行われてもよい。
【0040】
表1の“酢酸イオン濃度”欄に示す研磨用組成物中の酢酸イオンの濃度は、キャピラリー電気泳動法により測定したものである。
表1の“LPD”欄には、実施例1,2,4〜7、参考例3及び比較例1〜7の研磨用組成物を用いて研磨した後のシリコンウエハ表面における65nm以上のサイズのLPDの数を測定した結果を示す。具体的には、まず、予備研磨用組成物としてフジミインコーポレーテッド株式会社製のGLANZOX-2100を用いて表2に示す研磨条件でシリコンウエハを予備研磨した。その後、予備研磨後のシリコンウエハを、仕上げ研磨用組成物として実施例1,2,4〜7、参考例3及び比較例1〜7の研磨用組成物を用いて表3に示す研磨条件で仕上げ研磨した。仕上げ研磨後のウエハについて、SC−1洗浄(Standard Clean 1)を行ってからケーエルエー・テンコール社製の“SURFSCAN SP1-TBI”を用いて、ウエハ表面当たりの65nm以上のサイズのLPDの数を測定した。
【0041】
表1の“ヘイズ”欄には、実施例1,2,4〜7、参考例3及び比較例1〜7の研磨用組成物を用いて研磨した後のシリコンウエハ表面におけるヘイズレベルを測定した結果を示す。具体的には、実施例1,2,4〜7、参考例3及び比較例1〜7の研磨用組成物を用いた仕上げ研磨後のウエハについて、SC−1洗浄を行ってからケーエルエー・テンコール社製の“SURFSCAN SP1-TBI”を用いて、ウエハ表面のヘイズレベルを測定した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

表1に示すように、実施例1,2,4〜7、参考例3の研磨用組成物によれば、比較例1〜7の研磨用組成物の場合に比べて、LPDの数が低減する結果が得られた。
【0045】
前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ さらに、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロースを含有する前記研磨用組成物。この場合、研磨後の研磨対象物の表面におけるヘイズが大きく低減する。
【0046】
・ 前記アルカリがアンモニアである前記研磨用組成物。この場合、アルカリの高純度化が容易であり、高純度のアルカリの使用により研磨用組成物中の不純物を低減させることができる。
【0047】
・ さらに、砥粒としてコロイダルシリカを含有する前記研磨用組成物。この場合、研磨後の研磨対象物の表面におけるLPDの数が低減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPD低減剤中のナトリウムイオンの濃度が10ppb以下であり、シリコンウエハ研磨において用いられることを特徴とするLPD低減剤。
【請求項2】
さらにアルカリを含むことを特徴とする請求項1に記載のLPD低減剤。
【請求項3】
シリコンウエハの仕上げ研磨に用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のLPD低減剤。
【請求項4】
前記LPDの大きさが65nm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のLPD低減剤。
【請求項5】
シリコンウエハ研磨において、ナトリウムイオンの濃度が10ppb以下であるLPD低減剤を用いることを特徴とするシリコンウエハの欠陥低減方法。
【請求項6】
前記LPDの大きさが65nm以上であることを特徴とする請求項5に記載のシリコンウエハの欠陥低減方法。
【請求項7】
シリコンウエハ研磨において、ナトリウムイオンの濃度が10ppb以下であるLPD低減剤を含有する研磨剤で研磨することを特徴とするシリコンウエハの製造方法。
【請求項8】
さらに、LPD低減剤中の酢酸イオンの濃度が10ppb以下であることを特徴とする請求項7に記載のシリコンウエハの製造方法。

【公開番号】特開2013−21343(P2013−21343A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189155(P2012−189155)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2006−227613(P2006−227613)の分割
【原出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】