説明

MACブリッジングネットワークにおけるループ発生方向判定方式およびループ切り離し方式

【課題】 ループが該ネットワークのどの方向で発生しているかを、簡単かつ迅速、経済的に検出できるMACブリッジングネットワークにおけるループの発生方向判定方式およびループ切り離し方式を提供する。
【解決手段】 試験装置6から試験フレームaをMACブリッジングネットワークに送信し、該試験フレームaが試験装置6に戻ってきた時にループ発生方向判定装置を起動する。該ループ発生方向判定装置は、各MACブリッジング装置の学習テーブルT1〜T4における試験フレームの送信元MACアドレスが、そのMACブリッジング装置から見て論理的に試験装置6に最も近いポート方向ではないポートに学習されている場合に、その方向にループがあると判定する。MACブリッジング装置自体がループの一部を構成した場合も検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MACブリッジングネットワーク(イーサネット(登録商標))において、ループ発生時に、MACブリッジング装置のどのポート方向にループが発生しているのかを判定するループ発生方向判定方式、および早期にループを排除することにより、システム全体の安定性、信頼性の向上を図るようにするループ切り離し方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.1D等に定められたMACブリッジングにおいて、多数のスイッチノードを組み合わせてネットワークを構成した場合、設定のミスなどによりフラッディングトラヒックがネットワーク上を回り続けるループが構成されると次に上げるように様々な点で正常な通信を阻害し、ネットワークをダウンさせてしまう恐れがある。
(1)ループ内を回転するフラッディングトラヒックがネットワークの伝送帯域を使い切るまで増殖し続けることにより、ネットワークの転送能力を使い切ってしまう点。
(2)ループ内を回転するフラッディングトラヒックによってMACアドレス学習テーブルの学 習内容が書き換えられて破壊されてしまう点。
(3)ループ内を回転するフラッディングトラヒックによるエンドノード機器への悪影響が ある点。
このような悪影響があるため、MACブリッジングネットワークではループを発生させてはならず、ループを防止する様々な機構が考えられてきた。
【0003】
ループが構成されないようにトポロジを維持する代表的な機構としては、IEEE802.1Dの STP(Spanning Tree Protocol)が上げられる。このようなトポロジを維持するプロトコルは、多くの場合、特定のインターフェースを非転送状態とすることによってループが構成されないようにネットワークの論理構成をコントロールする。しかしながら、前記のSTPのような機構を使った場合でもCPUの過負荷や異常により、自動的にループを排除できない場合が起こる。このため、ループが万が一発生した場合のために、発生したルー プを排除する手段を用意しておき、ループが発生していることを検出するとともに、ループを構成している箇所(ループの発生箇所)を見つけ出す必要がある。
【0004】
ループの発生は、MACブリッジングデバイス上の学習テーブルに学習されたMACアドレスの書き換わりの頻度を見る方法、定期的にネットワークにループ検出用のマルチキャストフレームなどを送信し、それが戻って来ないかどうかを確認する方法、ネットワーク上に流れているフラッディングトラフィックの流量やパター ンの変化を見る方法などにより検出することができる。
【0005】
また、拡張されたMACブリッジング方式においては、送信するフレームに、整数値のフレーム生存時間情報(TTL)を保持するTTL(Time To Live)フィールドを設け、該フレームがスイッチノードを通過するたびにTTLから所定値を減算し、予め決められた値、例えば「0」のTTLを保持するフレームを受けたとき、該フレームを破棄するとともに、ループ発生の可能性をTrapやSyslogによって警告するという方法もある。これらの方法によってループの発生を検出することができる。
【0006】
一方、ループの発生箇所の検出に関しては、さらにTTLを利用してループが発生しているスイッチノードを直接検出する方法が例えば下記の特許文献1に記されているように提案されている。ただし、このTTLを利用したループ発生箇所の検出は広域イーサネットを提供する通信事業者のネットワークコアにおいて利用されているが、一般のLANで用いられるイーサネットや、広域イーサネットにおける、事業者のスイッチから、加入者宅までのアクセス回線部分のイーサネットでは、TTLを用いたMACブリッジングが標準的なMACブリッジングのプロトコルでない事から利用されていない。すなわち、TTLを利用したループ発生箇所の検出は、事業者のスイッチから加入者宅までのアクセス回線でのループ発生箇所の検出、及び加入者宅のLANと広域イーサネットワークがMACブリッジング装置で接続されている場合の加入者宅内でのループ発生拠点判定に利用する事ができない。
【0007】
広域イーサネットでは加入者宅までのアクセス区間、あるいは加入者宅内のLANにおいてループが発生した場合、事業者のスイッチのMACアドレスの書き変わりの頻度をモニターするなどによりそのイーサネットセグメント内のどこかでループが発生している状況を検出する事は短時間に行える。また、加入者が複数の拠点を持つ場合にどの拠点でループが発生しているかについての判定はトラフィックの流入が多いポートを見つけて、該当のポートの閉塞する事により、ループの影響が無くなるのを確認していくという方法が主に行われている。しかしながら、この方法は実際にはループが発生していないアクセスを閉塞してしまう危険性があり、また発見までに手作業にて探索していくステップを取るのでこのステップで非常に時間がかかってしまうという問題がある。
【0008】
また、アクセス回線を収容する事業者のスイッチの各ポートから、定期的にマルチキャストやブロードキャストのフレームを送信し、そのフレームが送信したスイッチに戻ってくる事を確認する方法では、ループの発生している加入者の拠点およびアクセス回線を判定する事ができるものの、特殊な専用のスイッチが必要となり、経済的に利用できない場合があった。
【0009】
また、他の方法として、例えば下記の特許文献2に記されている「ケーブルモデムシステム」があるが、センタ装置からループ検出パケットを送信後、そのループ検出パケットが加入者宅側から供給された場合にループが発生した事をブリッジ(ケーブルモデム)が加入者宅内側から供給された送り先アドレスに着目して主体的に判定を行う役割を持つため、ブリッジ(ケーブルモデム)自体に専用の実装が必要であり、汎用のブリッジシステムを用いた設備では利用できなかった。
【特許文献1】特開2005−328164号公報
【特許文献2】特開2000−183943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、ループの発生箇所を検出するために、アクセス回線を収容する事業者のスイッチの各ポートから、定期的にマルチキャストやブロードキャストのフレームを送信し、そのフレームが送信したスイッチに戻ってくる事を確認する方法では、特殊な専用のスイッチが必要となり、経済的に利用できない場合が起きるという課題、また、前記特許文献2の方式では、ブリッジ(ケーブルモデム)自体に専用の実装が必要となり、汎用のブリッジシステムを用いた設備では利用できないという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、MACブリッジングネットワーク(LANや広域イーサネット(登録商標))で、ループが該ネットワークのどの方向で発生しているかを、簡単かつ迅速、経済的に検出でき、通信の支障を取り除く手助けとなるループの発生方向判定方式、およびその判定方式を利用してループネットワークを切り離すループ切り離し方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した目的を達成するために、本発明は、MACブリッジングネットワーク上でのループの発生方向判定方式において、ループ発生の有無を検査するための試験フレームをMACブリッジングネットワークに送出する試験装置と、前記MACブリッジングネットワーク上に位置し、前記試験フレームを受信し、送信元アドレスと受信した物理的または論理的ポートを学習テーブルに学習した後、前記試験フレームの宛先に従って転送する複数個のMACブリッジング装置と、前記試験装置に前記試験フレームが戻ってきた時にトリガされるループ発生方向判定装置とを具備し、前記ループ発生方向判定装置は、前記学習テーブルを調べてループの発生方向を判定するようにした点に第1の特徴がある。
【0013】
また、前記ループ発生方向判定装置は、前記試験フレームの送信元MACアドレスがそのMACブリッジング装置から見て論理的に前記試験装置に最も近いポート方向ではないポートに学習されている場合に、その方向にループがあると判定するようにした点に第2の特徴がある。
【0014】
また、前記ループ発生方向判定装置は、前記試験フレームの送信元MACアドレスの内容の消しこみが発生する前で、かつ、次の試験フレームが試験装置より送信される前に、前記各MACブリッジング装置の学習テーブルの確認を複数回行う事により、前記MACブリッジング装置自体がループを形成している場合であっても、該ループを形成しているポートを検出できるようにした点に第3の特徴がある。
【0015】
さらに、MACブリッジングネットワーク上に位置するMACブリッジング装置のポートを閉塞する手段を具備し、前記ループ発生方向判定方式によりループの発生が検出された場合に、前記MACブリッジング装置のポートを自動的に閉塞するようにした点に第4の特徴がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の前記第1の特徴によれば、MACブリッジングネットワークにおいて、従来からある学習テーブルを利用することにより、ループの発生方向を簡単かつ迅速に判定でき、通信の支障を取り除く手助けとすることができる。
【0017】
また、前記第2の特徴によれば、学習テーブルのPortの学習状況を調べるだけで、ループの発生方向を簡単かつ迅速に判定できるようになる。
【0018】
また、前記第3の特徴によれば、ノードであるMACブリッジング装置自体がループを形成している場合であっても、該ループを形成しているポートを検出できるようになる。
【0019】
さらに、前記第4の特徴によれば、ループの発生が検出された場合に、該ループ発生方向のMACブリッジング装置のポートを自動的に閉塞することにより、MACブリッジングネットワークからループを切り離すことができる。この結果、前記背景技術で述べた(1)〜(3)のような不具合を速やかに解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明の概要を説明する。本発明では、マルチキャストやブロードキャストを送信する試験装置をループ発生方向判定を行いたいイーサネットに接続する。試験装置から試験用のマルチキャストやブロードキャストを試験フレームを1フレーム送信すると、ループが発生している場合、そのループにより、送信した試験装置にその試験フレームが戻ってくる事を観測する事ができる。これによりループの発生自体は検出できるため、これをトリガとしてループの発生方向の判定を開始する。
【0021】
この時、イーサネット上のMACブリッジング装置(後述するコアスイッチCSW、エッジスイッチESW等)の学習テーブル上に試験フレームの送信元アドレスがMACブリッジング装置の論理構成から見て試験装置方向でないポートで学習されている場合、そのポートの接続先方向で、ループが発生していると判定することができる。MACブリッジング装置自体がループを形成している事を疑う場合は、複数回学習テーブルをチェックする事により、そのノード自体がループを形成している場合であっても、試験フレームの送信元MACアドレスがそのMACブリッジング装置から見て論理的に試験装置に最も近いポート方向ではないポートに学習されている状況の発生を高い確率で検出することができる。
【0022】
ループが発生していない場合は試験フレームは試験装置に戻って来ず、試験フレームの送信元アドレスはそのイーサネットセグメント内全てのMACブリッジング装置の学習テーブルにおいて論理的に試験装置が存在する方向のポートにて学習される事となる。なお、MACブリッジング装置の学習テーブルは新しく学習しなおされなければ一定時間が経過するとその学習内容が消し込まれるため、試験フレームを送信後学習テーブル上で試験フレームの送信元のMACアドレスが学習され、消し込みが発生する前(一般には5分以内)に学習テーブルの内容を調べる必要がある。
【0023】
ループの発生と方向検出を一元的に行いたい場合は、定期的に試験フレームを送信しループにより試験フレームが試験装置に戻ってくる事によりループが発生したとみなし、試験フレームの送出を一時的に停止してその時点でのMACブリッジング装置の学習テーブルの状況により、ループの発生方向を判定する事により、ループの発生および方向判定を一元的に行う事ができる。
【0024】
また、事前にMACブリッジングの特定のポートの方向にループが発生するかループを自ら構成するポートであると判明した場合に、自動的にポートを切り離すよう、システムを構築しておく事により、ネットワークの特定の領域を守った形で、ループ発生時に自動的にループしているネットワークを切り離す事ができる。
【0025】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、MACアドレスの学習機能を持つ一般のMACブリッジングネットワークを対象とする。なお、MACアドレスの学習テーブルについては、本発明者による特許出願(例えば、特開2004−304230号公報)に詳細に説明されているのでさらなる説明を省略するが、該学習テーブルは送信元アドレス(MAC)を登録するMAC登録領域と、フレームが到着した物理的あるいは論理的ポートを登録するPort登録領域を少なくとも有している。
【0026】
図1は、本発明が適用されるMACブリッジングネットワーク(イーサネット)の一例を示すブロック構成図であり、本例のLANは、直接アクセスを収容してMACブリッジングを行うエッジスイッチ(以下、ESWと記す)1〜3と、直接アクセスを収容しないでMACブリッジングを行うコアスイッチ(以下、CSWと記す)4を有するMACブリッジングネットワーク5とからなり、前記CSW4にループの試験フレームを送信し、ループの発生および方向判定を行う試験装置6が接続されている。また、前記ESW1、2、3には、それぞれのアクセス部と端末拠点A、B、Cが接続されている。
【0027】
図1を参照して、ループが発生していない状態での試験フレームの流れ方を説明する。試験装置6から出力された試験用のフレームaは、テーブルT6に示されているように、送り元のアドレスとして試験装置6固有のアドレス「α」を持ち、宛先アドレスとしてマルチキャストアドレス、ブロードキャストアドレス、あるいはアンノウンユニキャストアドレスといったフラッディングされるアドレスを持つ。
【0028】
試験装置6から試験フレームaが送信されると、該試験フレームaはCSW4に到着する。これによって、CSW4の学習テーブルT4では試験フレームが送られてきた「Port(1)」の方向にアドレス「α」が存在すると学習される。
【0029】
次に、図2では、試験フレームaは、宛先アドレスとしてマルチキャストあるいはブロードキャストアドレスを持ちフラッディングされるため、CSW4からESW1、ESW2、ESW3に同時にコピーされ転送されており、さらにESW1、ESW2、ESW3のそれぞれの学習テーブルT1、T2、T3では、試験フレームaが送られてきた「Port(1)」の方向にアドレス「α」が存在すると学習される。
【0030】
図1、図2に示すように、ループが発生していない状況では各MACブリッジング装置の学習テーブルT1〜T4は、試験フレームaの送り元アドレス「α」をMACブリッジング装置から見て論理的に試験装置6に最も近いポート方向に学習している事が分かる。
【0031】
図3は、端末拠点BにてループRが発生した場合に、試験フレームaが端末拠点Bより折り返ってESW2の「Port(2)」に戻ってきている様子を示す。この折り返りの結果ESW2の学習テーブルT2では、試験装置6固有のアドレス「α」がESW2の「Port(2)」側にあるとして、書き換え学習される。なお、学習テーブルT2中の「×」は、書き換え学習されたことを示す。以降の図の学習テーブルにおいても同様である。
【0032】
さらに、図4では、折り返って来た試験フレームaがCSW4の「Port(3)」に戻ってきている様子を示しており、その結果CSW4の学習テーブルT4では、試験装置6固有のアドレス「α」がCSW4の「Port(3)」側にあるとして、書き換え学習される。
【0033】
さらに、図5では、ループRにより折り返って来た試験フレームaが、CSW4から分岐し、試験装置6、ESW1、ESW3に送られている。ESW1及びESW3ではそれぞれの「Port(1)」から折り返し試験フレームaを受信するから、「Port(1)」側に「α」が学習されている状態は変わらない(すなわち、書き換えは発生しない)。一方、試験装置6はこの時点で試験フレームが送り返されてきた事により、当該MACブリッジングネットワーク5にてループが発生していると判定し、この判定をトリガとして、ループの発生方向を調べる。
【0034】
具体的には、当該MACブリッジングネットワーク5上のMACブリッジング装置の学習テーブルT1〜T4にて、試験装置6固有のアドレス「α」が論理的に試験装置6に最も近いポートにて学習されているかいないかを調べる。このチェックは、MACブリッジング装置とは独立した装置(例えば、試験装置6)によりMACブリッジング装置の学習テーブルの情報を読み出す仕組み(一般には、SNMPやプログラムによるリモートログイン)により行われる。なお、該チェックを試験装置以外の他の装置により行ってもよい。
【0035】
図5で各MACブリッジング装置での試験装置6から送出されたフレームの送信元MACアドレスの学習状況を確認すると、ESW1とESW3では、試験装置6が接続されている方向に学習されている事が分かる。一方、CSW4とESW2では試験装置6が接続されている方向ではない方向に学習されており、これによりCSW4から見てPort(3)の方向、ESW2から見てPort(2)の方向にループRが発生していると判定する。MACブリッジング装置の接続構成とこの学習状況から、結果的に端末拠点BのLANあるいは端末拠点Bへのアクセス部分でループRが発生している事が分かる。
【0036】
事前にESW1、ESW2、ESW3の端末拠点向けのポート方向でループと判定された場合そのポートを自動的あるいは手動により閉塞するようにしておく事により、ESW2から見てPort(2)の方向(端末拠点向け)にループが発生していると判定されると、ESW2の端末拠点Bの方向のポートが自動的に閉塞され、ループRが切り離される事により、網全体にループの影響が及ぶのを防ぐ事が可能となる。
【0037】
図6は、上記とは他の態様でループが発生する場合を示す。図6のように、ループの発生方向を判定する対象のノード自体すなわちMACブリッジング装置自体が、ループの一部を構成している場合を考えてみると、アクセス部分から折り返されてきた試験フレームa1、a2はそれぞれESW1及びESW2で「Port(2)」側に「α」が学習される(学習テーブルT1、T2参照)。
【0038】
図7は、折り返った試験フレームa1、a2がCSW4に到着している場合を示す。図示されているように、CSW4の学習テーブルT4では折り返ったフレームa1、a2が、「Port(2)」あるいは「Port(3)」の方向に「α」があるとして上書き学習されるが、どちらに上書き学習されるかは、どちらのフレームがより遅く到着したかによる。
【0039】
さらに、図8は、折り返った試験フレームa1、a2が試験装置6、ESW1、ESW2、及びESW3に送られている場合を示す。図示されているように、ループを形成していないESW3では学習テーブルT3の上書きは発生しないが、ループを形成するESW1、ESW2の学習テーブルT1、T2では「Port(1)」側に「α」が存在すると学習の書き換えが発生する。試験装置6は、試験フレームaが到着するのでループが発生したと判定し、この判定をトリガとして、ループの発生方向を調べる。
【0040】
具体的には、各MACブリッジング装置の学習テーブルT1〜T4の内容を確認するが、この場合、ESW1、ESW2、及びCSW4の間を試験フレームaが回り続けるため、CSW4の学習テーブルT4ではループの影響で常に「Port(2)」あるいは「Port(3)」方向に「α」が学習されている。このため、「Port(2)」あるいは「Port(3)」方向のどちらかの方向にループがあると判定される。(後述する複数回の確認方式をとれば、「Port(2)」と「Port(3)」がループを構成していると判定することも可能となる。)
【0041】
一方、ESW1、ESW2の学習テーブルT1、T2では「Port(1)」あるいは「Port(2)」のどちらに「α」が学習されているかは、MACブリッジング装置の学習テーブルを読み込むタイミングによって異なるため、一回の学習テーブルの読み込みではループの発生方向がどちらか判定できない場合がある。しかしながら、書き換わりは常に発生しているため、適当な時間間隔で該判定に十分と考えられる回数(この時間間隔と回数は予め決めておいても、または試験装置がループを検出した後MAC学習テーブルの内容が消しこまれる時間を勘案して決めてもよい)、学習テーブルT1、T2を読み込みにいく事により、特定の確率で「α」が「Port(2)」で学習されている状況が確認できる。
【0042】
すなわち、本実施形態によれば、MACブリッジング装置の学習テーブルに学習された、試験フレームの送信元アドレスの内容の消しこみが発生する前(一般には5分以内)で、かつ、次の試験フレームが試験装置より送信される前にMACブリッジング装置の学習テーブルの確認を複数回行う事により、そのノードすなわちMACブリッジング装置自体がループを形成している場合であっても、試験フレームの送信元MACアドレスがそのMACブリッジング装置から見て論理的に試験装置に最も近いポート方向ではないポートに学習されている状況の発生を検出することにより、該ノードのループを形成しているポートを検出することができる。
【0043】
ループを排除する事が目的であれば、事前にESW1、ESW2、ESW3の端末拠点A、B、C向けのポート方向でループが発生した(つまり、「Port(2)」の方向に試験フレームの送り元アドレスが学習された)と判定された場合、そのポートを自動的あるいは手動により閉塞するようにしておく事により、自動的にESW1、ESW2、ESW3から見て端末拠点A、B、Cの方向のポートが閉塞される。この結果、ループが切り離される事になり、網全体にループの影響が及ぶ事を防ぐ事が可能となる。
【0044】
ループの発生方向を判定する対象のMACブリッジング装置自体が、ループの一部を構成している場合でかつ、MACブリッジング装置から見て論理的に試験装置に最も近いポートがループを形成している場合も検出を行いたい場合は、前記試験フレームの送信元MACアドレスがそのMACブリッジング装置から見て論理的に試験装置に最も近いポート方向ではないポートに学習されている状況を検出した後も、MACブリッジング装置の学習テーブルの確認を複数回行う。そうすると、検出するタイミングにより、前記試験フレームの送信元MACアドレスがそのMACブリッジング装置から見て論理的に試験装置に最も近いポート方向に学習される状況も検出されるが、学習テーブル上で試験フレームの送信元のMACアドレスの学習状況を、消し込みが発生する前に検出することにより、前記ループの検出を行うことができる。このように、ループ発生に関わっている部分を特定できるため、ループの影響を取り除く事に役立てる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明が適用されるMACブリッジングネットワーク(イーサネット)の一例を示すブロック構成図であり、試験装置から試験フレームが送信された時の状態を示す図である。
【図2】ループが発生していない状態での試験フレームと学習テーブルの状態を示す図である。
【図3】端末拠点Bにてループが発生した状態と学習テーブルの状態をを示す図である。
【図4】端末拠点Bにてループが発生した場合のCSWに到達する試験フレームの流れと学習テーブルの状態をを示す図である。
【図5】端末拠点Bにてループが発生した場合の最終的な試験フレームの流れと学習テーブルの状態を示す図である。
【図6】ループの発生方向を判定する対象のMACブリッジング装置自体がループの一部を構成した場合の、試験フレームがアクセス部からESWに送られる状態と学習テーブルの状態を示す図である。
【図7】ループの発生方向を判定する対象のMACブリッジング装置自体がループの一部を構成した場合の、試験フレームがESWからCSWに送られる状態と学習テーブルの状態を示す図である。
【図8】ループの発生方向を判定する対象のMACブリッジング装置自体がループの一部を構成した場合の、試験フレームがCSWからESW、試験装置に送られる状態、及び学習テーブルの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3・・・エッジスイッチ(ESW)、4・・・コアスイッチ(CSW)、5・・・MACブリッジングネットワーク、6・・・試験装置、T1〜T4・・・学習テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MACブリッジングネットワーク上でのループの発生方向判定方式において、
ループ発生の有無を検査するための試験フレームをMACブリッジングネットワークに送出する試験装置と、
前記MACブリッジングネットワーク上に位置し、前記試験フレームを受信し、送信元アドレスと受信した物理的あるいは論理的ポートを学習テーブルに学習した後、前記試験フレームの宛先に従って転送する複数個のMACブリッジング装置と、
前記試験装置に前記試験フレームが戻ってきた時にトリガされるループ発生方向判定装置とを具備し、
前記ループ発生方向判定装置は、前記学習テーブルを調べてループの発生方向を判定することを特徴とするループ発生方向判定方式。
【請求項2】
請求項1に記載のループ発生方向判定方式において、
前記試験フレームの宛先が、マルチキャストアドレス、ブロードキャストアドレス、アンノウンユニキャストアドレス等の前記MACブリッジングネットワーク上でフラッディング転送される宛先であることを特徴とするループ発生方向判定方式。
【請求項3】
請求項1または2に記載のループ発生方向判定方式において、
前記試験装置が、前記ループ発生方向判定装置を兼ねることを特徴とするループ発生方向判定方式。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のループ発生方向判定方式において、
前記学習テーブルは、少なくとも送信元MACアドレス登録領域と、フレームが到着した物理的または論理的ポートを登録するPort登録領域とを有し、前記ループ発生方向判定装置は、前記試験フレームの送信元MACアドレスがそのMACブリッジング装置から見て論理的に前記試験装置に最も近いポート方向ではないポートに学習されている場合に、その方向にループがあると判定することを特徴とするループ発生方向判定方式。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のループ発生方向判定方式において、
前記試験装置は、前記試験フレームを定期的に送信することを特徴とするループ発生方向判定方式。
【請求項6】
請求項5に記載のループ発生方向判定方式において、
前記ループ発生方向判定装置は、試験フレームの送信元MACアドレスの内容の消しこみが発生する前で、かつ、次の試験フレームが試験装置より送信される前に、各MACブリッジング装置の学習テーブルを調べることを特徴とするループ発生方向判定方式。
【請求項7】
請求項6に記載のループ発生方向判定方式において、
前記ループ発生方向判定装置は、前記試験フレームの送信元MACアドレスの内容の消しこみが発生する前で、かつ、次の試験フレームが試験装置より送信される前に、前記各MACブリッジング装置の学習テーブルの確認を複数回行う事により、前記MACブリッジング装置自体がループを形成している場合であっても、ループの発生方向として該ループを形成しているポートを検出できるようにしたことを特徴とするループ発生方向判定方式。
【請求項8】
MACブリッジングネットワーク上に位置するMACブリッジング装置のポートを閉塞する手段を具備し、
前記請求項1ないし7のいずれかのループ発生方向判定方式によりループの発生が検出された場合に、前記MACブリッジング装置のポートを自動的に閉塞するようにしたことを特徴とするループ切り離し方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−235691(P2007−235691A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56217(P2006−56217)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】