MMP阻害活性を有する画像診断剤
本発明は画像診断の分野に関する。具体的には、本発明は、特定のマトリックスメタロプロテイナーゼが関与していることが知られている疾患の画像診断に関する。本発明の一実施形態は、画像診断に好適な、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害活性を有する化合物である。本発明ではまた、本発明の画像診断剤を哺乳動物への投与に適した形態で含む医薬組成物も開示されている。本発明ではさらに、本発明の画像診断剤の合成における中間体、及び本発明の医薬組成物の調製用キットも開示されている。本発明の医薬組成物は、特定のマトリックスメタロプロテイナーゼが関与していることが知られている疾患の診断に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボでの画像診断、特にSPECTイメージングの分野に関する。具体的には、本発明はマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む新規イメージング剤であって、循環器疾患、炎症性疾患及び悪性疾患のインビボでの画像診断に有用な新規イメージング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)とは、細胞外マトリックス(ECM)の分解又は再構築を仲介する、少なくとも20種の亜鉛依存性エンドペプチダーゼのファミリーのことである[Massova et al FASEB J(1998)12 1075−95]。また、MMPファミリーのメンバーは、血管壁の全成分を分解することができるため、ECMの成分の分解を伴う生理現象と病理現象の両方に大きな役割を果たす。MMPsは細胞の挙動を制御する細胞−マトリックス相互作用に干渉することができるため、その活性は細胞の分化、遊走、増殖及びアポトーシスといった様々なプロセスに影響を与える[Nagase and Woessner J.Biol.Chem.(1999)274 21491−4]。生理状況下でのMMP活性を細かく調整する負の調整制御は、必ずしも適切に働くわけではない。MMP活性の不適切な発現は、いくつかの疾患状態における病理機序の一部を構成すると考えられている。そのため、MMPsは、多くの炎症性、悪性及び変性疾患の治療用阻害剤の標的となっている[Whittaker et al Chem.Rev.(1999)99 2735−76]。
【0003】
したがって、MMPsの合成阻害剤は多くの炎症性、悪性及び変性疾患の治療に有用であると考えられている。さらに、MMPsの阻害剤がこれらの疾患の診断に有用であることも示唆されている。国際公開第01/60416号には、アテローム性動脈硬化症、心不全及び再狭窄などの細胞外マトリックス分解に関連する循環器病の診断に有用であるとして提示された化合物が開示されている。同パンフレットに開示の化合物は、診断用金属に結合することが可能なキレート剤に任意のリンカーを介して連結しているMMP阻害剤を含む。好ましいMMP阻害剤、キレート剤及びリンカーは同パンフレットに記載されている。Zhengらの報告[Nuc.Med.Biol.29 761−770(2002)]には、ポジトロン放出断層撮影(PET)トレーサー11C及び18Fで標識したMMP阻害剤の合成が記録されている。同報告に記載の化合物は、乳癌の非侵襲イメージングに有用であると仮定されている。
【特許文献1】国際公開第01/60416号パンフレット
【特許文献2】国際公開第91/01144号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4885363号明細書
【非特許文献1】Massova et al FASEB J(1998)12 1075−95
【非特許文献2】Nagase and Woessner J.Biol.Chem.(1999)274 21491−4
【非特許文献3】Whittaker et al Chem.Rev.(1999)99 2735−76
【非特許文献4】Zheng et al Nuc.Med.Biol.29 761−770(2002)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
画像診断に特に有用であることが判明した、MMP阻害活性を有する新規画像診断剤が開示されている。本発明の別の一態様は、人体の画像診断に有用な医薬組成物である。また、本発明の医薬組成物の調製用キットも開示されている。さらに本発明は、本発明の医薬組成物の、画像診断のための使用を含む。
【0005】
本発明のイメージング剤は、特定のマトリックスメタロプロテイナーゼが関与することが知られている一連の疾患状態(炎症性、悪性及び変性疾患)の、インビボでの画像診断に有用である。
【0006】
これらの疾患状態には以下が含まれる。
【0007】
(a)各種MMPsが過剰発現するアテローム性動脈硬化症。MMP−1、3、7、9、11、12、13及びMT1−MMPのレベルの上昇が、ヒトのアテローム硬化型プラーク内で検出された[S.J.George、Exp.Opin.Invest.Drugs、9(5)、993−1007(2000)及び同論文内の参照文献]。ヒトアテロームでのMMP−2の発現[Z.Li et al、Am.J.Pathol.、148、121−128(1996)]及びMMP−8の発現[M.P.Herman et al、Circulation、104、1899−1904(2001)]もまた報告されている。
【0008】
(b)CHF(Peterson,J.T.et al.Matrix metalloproteinase inhibitor development for the treatment of heart failure、Drug Dev.Res.(2002)、55(1)、29−44では、心不全においてMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−8、MMP−9、MMP−13及びMMP−14が上方制御されることが報告されている)。
【0009】
(c)癌[Vihinen et al、Int.J.Cancer 99、p157−166(2002)では、MMPの癌への関与が概説されており、特にMMP−2、MMP−3、MMP−7及びMMP−9が強調されている]。
【0010】
(d)関節炎[Jacson et al、Inflamm.Res.50(4)、p183−186(2001)「Selective matrix metalloproteinase inhibition in rheumatoid arthritis−targeting gelatinase A activation」では、MMP−2が特に論じられている]。
【0011】
(e)筋萎縮性側索硬化症[Lim et al、J.Neurochem、67、251−259(1996);MMP−2及びMMP−9が関与]。
【0012】
(f)MMP−2、MMP−9及びMMP−13が関係すると報告されている脳転移[Spinale、Circul.Res.、90、520−530(2002)]。
【0013】
(g)MMP−2及びMMP−9が関与すると報告されている脳血管疾患[Lukes et al、Mol.Neurobiol.、19、267−284(1999)]。
【0014】
(h)MMP−2及びMMP−9が患部組織内で同定されたアルツハイマー病[Backstrom et al、J.Neurochem.、58、983−992(1992)]。
【0015】
(i)MMP−2、MMP−3及びMMP−9が関与する神経炎症性疾患[Mun−Bryce et al、Brain.Res.、933、42−49(2002)]。
【0016】
(j)MMP−1、MMP−2、MMP−8及びMMP−9が上方制御されると報告されているCOPD(即ち、慢性閉塞性肺疾患)[Segura−Valdez et al、Chest、117、684−694(2000)]。
【0017】
(k)眼病[Kurpakus−Wheater et al、Prog.Histo.Cytochem.、36(3)、179−259(2001)]。
【0018】
(l)皮膚疾患[Herouy,Y.、Int.J.Mol.Med.、7(1)、3−12(2001)]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の態様は、γ−放射性核種で標識した式Iのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む画像診断剤である。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、R1は水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C6−14アリール、C7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC6−8シクロアルキル環又はC4−6複素環を形成するか、或いはR4と共に5〜7個の原子及びN又はOから選択される1又は2個のヘテロ原子を含有するC4−6複素環を形成し、
R2及びR3は各々独立に水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アミノ、C6−14アリール、C7−20アリールアルキル又はC7−20カルバモイルアリールであり、
R4はC6−14アリール、C4−6ヘテロアリール、C7−20アリールアルキル、C7−20カルバモイルアリール又はアリールカルバモイルアリールであり、
R5は水素又はC1−6アルキルから選択される。
【0022】
ただし、R1がイソプロピル、R3が水素、R4が3−ピリジルの場合、R2はメトキシではない。
【0023】
単独で又は他の基(例えばヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル又はアルコキシアルキル)の一部として用いられる「アルキル」は、本明細書では、任意の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和CxH2x+1基(式中、特に指定がなければ、xは1〜6の整数である。)として定義される。
【0024】
単独で又は他の基の一部として用いられる「アリール」は、本明細書では、単環式又は多環式芳香族炭化水素から誘導される任意のC6−14分子断片又は基として定義される。本発明の好適なアリール基は、任意の位置で置換されていてもよいフェニル又はナフチル基である。
【0025】
「アリールアルキル」は、本発明では、上記定義のアルキル基及びアリール基からなる任意のC7−20基として定義される。
【0026】
「複素環」は、本発明では、1又は2個のヘテロ原子を含むC4−6環式基として定義される。好適なヘテロ原子としてはN及びOが挙げられる。
【0027】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される基を意味する。
【0028】
「アミン」は、本発明では、アミノ又は置換アミノ基を含有する任意の有機基として定義される。
【0029】
本明細書で用いる「γ−放射性核種で標識した」という表現は、式Iの原子又は置換基の1個が、γ−放射性核種を、人工的に富化されたレベルの下部構造に固有の原子として、或いは該γ−放射性核種を結合させるのに適した官能基を介して化学的に結合した追加の必須要素として含むことを意味する。
【0030】
本発明の好ましい画像診断剤は、γ−放射性核種で標識した式Iの化合物を含み、式中、
R1はC1−6アルキル、C6−14アリール又はC7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC4−6複素環を形成し、
R2は水素、ヒドロキシ、メチル、イソプロピル、メトキシ又はハロゲンであり、
R3は水素であり、
R4はピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1はフェニレンであり、R″′はCH2又はC=Oであり、yは0又は1であり、zは0又は1であり、
R5は水素である。
【0031】
ただし、R1がイソプロピル、R4が3−ピリジルの場合、R2はメトキシではない。
【0032】
本発明の最も好ましい画像診断剤は、γ−放射性核種で標識した式Iの化合物を含み、式中、
R1はメチル、イソブチル、イソプロピル、ベンジル又はヒドロキシベンジルであり、
R2はヒドロキシ、ハロゲン又はメトキシであり、
R3は水素であり、
R4はピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1は1,4−フェニレンであり、R″′はCH2又はC=Oであり、yは0又は1であり、zは0又は1であり、
R5は水素である。
【0033】
ただし、R1がイソプロピル、R4が3−ピリジルの場合、R2はメトキシではない。
【0034】
R5が水素の場合、本発明のマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤は、R1基を有する炭素原子にキラル中心を含む。このキラル中心における鏡像異性体は本発明の範囲内であり、好ましいかかる鏡像異性体は、式Iaの鏡像異性体である。
【0035】
【化2】
【0036】
本発明の特に好ましい画像診断剤は、式Iの化合物を含み、式中、該γ−放射性核種は、置換基R1〜R4の1個以上個と置換されているか、それに化学的に結合している。本発明の最も好ましい画像診断剤は、式Iの化合物を含み、式中、R2はスルホンアミドに対してパラ位にあり、R3はスルホンアミドに対してメタ位にある。
【0037】
γ−放射体で標識されていない式Iの化合物は、MacPherson et al J.Med.Chem.1997;2525−32記載の方法に従って容易に合成することができる。
【0038】
本発明の好適なγ−放射性核種は、γ−放射性金属イオン又はγ−放射性ハロゲンである。これらについて、好ましい実施形態及び最も好ましい実施形態を含め、以下、さらに詳細に説明する。
【0039】
本発明のγ−放射性核種が金属イオンの場合、99mTc、111In、113mIn、67Cu又は67Gaから好適に選択される。好ましいγ−放射性金属イオンは、99mTc、67Cu、67Ga及び111Inであり、99mTcが最も好ましい。金属イオンは、好適には、本発明の画像診断剤中に金属錯体として、画像診断剤が式IIの金属錯体結合体となるように存在する。
【0040】
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}−(A)n]m−[金属錯体]
(II)
式中、−(A)n−はリンカー基であり、
nは0〜50の整数であり、
mは1、2又は3である。
【0041】
「金属錯体」という用語は、金属イオンと1個以上の配位子との配位錯体を意味する。金属錯体が「トランスキレート化耐性を有すること」、即ち、金属の配位部位をめぐって競合する可能性のある他の配位子との配位子交換が容易には行われないことが非常に好ましい。競合する可能性のある配位子としては、式Iの化合物に加えて、インビトロの製剤中の賦形剤(例えば、製剤中で用いられる放射線防護剤又は抗菌防腐剤)、或いはインビボの内因性化合物(例えば、グルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)が挙げられる。「リンカー基」(A)nは、式IIaに関する下記定義の通りである。
【0042】
本発明の第2の態様は、放射標識されることで式IIの金属錯体結合体を形成する配位子結合体である。本発明の好ましい配位子結合体は、式IIaの配位子結合体である。
【0043】
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}−(A)n]m−[配位子]
(IIa)
式中、−(A)n−はリンカー基であって、式中、各Aは独立にCR′2、CR′=CR′、C≡C、CH2CH2O、CR′2CO2、CO2CR′2、NR′CO、CONR′、NR′(C=O)NR′、NR′(C=S)NR′、SO2NR′、NR′SO2、CR′2OCR′2、CR′2SCR′2,CR′2NRCR′2、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基、C3−12ヘテロアリーレン基又はアミノ酸であり、
R′はH、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C1−4アルコキシアルキル又はC1−4ヒドロキシアルキルから各々独立に選択され、
nは0〜50の整数であり、
mは1、2又は3である。
【0044】
式II及びIIa中、mは好ましくは1又は2であり、最も好ましくは1である。
【0045】
トランスキレート化耐性を有する金属錯体結合体を形成する、本発明で好適に用いられる配位子としては、(金属ドナー原子を連結する炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位骨格を有することで)5員環又は6員環のキレート環を形成するように、2〜6個、好ましくは2〜4個の金属ドナー原子が配置されているキレート剤、或いは、イソニトリル、ホスフィン又はジアゼニドなどの、金属イオンと強力に結合するドナー原子を含む単座配位子が挙げられる。キレート剤の一部として金属によく結合するドナー原子の種類は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンが挙げられる。ホスフィンは強い金属錯体を形成するため、単座又は二座のホスフィンでも好適な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドは、その線状の幾何配置のため、それ自体容易にはキレート剤には組み込まれにくいため、通常は単座配位子として用いられる。好適なイソニトリルとしては、例えば、tert−ブチルイソニトリルなどの単純アルキル、及びMIBI(即ち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)などのエーテル置換イソニトリルが挙げられる。好適なホスフィンとしては、テトロフォスミン、及びトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンなどの単座ホスフィンが挙げられる。好適なジアゼニドとしては、HYNIC系の配位子、即ちヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドが挙げられる。
【0046】
トランスキレート化耐性を有する金属錯体を形成する、テクネチウム用の好適なキレート剤としては、下記の化合物が挙げられるが、それだけには限定されない。
【0047】
(i)式IIIのジアミンジオキシム。
【0048】
【化3】
【0049】
式中、E1〜E6は各々独立にR″基であり、
各R″はH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアリール、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキル、C2−10カルボキシアルキル若しくはC1−10アミノアルキルであるか、或いは2個以上のR″基がそれらが結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものであり、1個以上のR″基は式Iの化合物に結合し、
Qは式−(J)f−の架橋基であり、
式中、fは3、4又は5であり、各Jは独立に−O−、−NR″−又は−C(R″)2−である。ただし、−(J)f−は−O−又は−NR″−である最大1個のJ基を含有する。
【0050】
好ましいQ基は以下の通りである。
【0051】
Q=−(CH2)(CHR″)(CH2)−、即ちプロピレンアミンオキシム、又はPnAO誘導体、
Q=−(CH2)2(CHR″)(CH2)2−、即ちペンチレンアミンオキシム、又はPentAO誘導体、
Q=−(CH2)2NR″(CH2)2−。
【0052】
E1〜E6は、C1−3アルキル、C4−10アルキルアリール、C2−3アルコキシアルキル、C1−3ヒドロキシアルキル、C1−2フルオロアルキル、C1−3カルボキシアルキル又はC1−3アミノアルキルから好ましく選択される。最も好ましくは、各E1〜E6基はCH3である。
【0053】
式Iの化合物は、E1又はE6のR″基、或いはQ部分のR″基に結合することが好ましい。最も好ましくは、式Iの化合物はQ部分のR″基に結合する。式Iの化合物がQ部分のR″基に結合する場合、R″基は橋頭位にあることが好ましい。その場合、Qは−(CH2)(CHR″)(CH2)−、−(CH2)2(CHR″)(CH2)2−又は−(CH2)2NR″(CH2)2−であることが好ましく、−(CH2)2(CHR″)(CH2)2−であることが最も好ましい。
【0054】
特に好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレート剤は、以下の構造を有し、
【0055】
【化4】
【0056】
それにより式Iの化合物は、橋頭の−CH2CH2NH2基を介して結合する。本明細書の残りの部分では、この二官能性ジアミンジオキシムキレート剤をキレート剤1又はCA1と呼ぶ。
【0057】
(ii)MAG3(メルカプロアセチルトリグリシン)などのチオールトリアミドドナーセットを有するN3S配位子及び関連配位子、又はPICAなどのジアミドピリジンチオールドナーセットを有するN3S配位子。
【0058】
(iii)BAT若しくはECD(即ち、エチルシステイネートダイマー)などのジアミンジチオールドナーセット、又はMAMAなどのアミドアミンジチオールドナーセットを有するN2S2配位子。
【0059】
(iv)シクラム、モノオキソシクラム又はジオキソシクラムなどのテトラミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミンドナーセットを有する開環又は大環状配位子であるN4配位子。
【0060】
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN2O2配位子。
【0061】
上記配位子は、99mTcと錯体を形成するのに特に好適であり、Jurisson et al[Chem.Rev.(1999)99 2205−2218]により詳しく記載されている。他の好適な配位子はSandozの国際公開第91/01144号に記載されており、同パンフレットにはインジウム及びガドリニウムに特に好適な配位子、とりわけ大環状アミノカルボン酸塩及びアミノホスホン酸配位子が含まれている。ガドリニウムの非イオン性(即ち、中性)金属錯体を形成する錯体が知られており、米国特許第4885363号に記載されている。放射性金属イオンがテクネチウムの場合、配位子は四座配位子であるキレート剤であることが好ましい。テクテニウム用の好ましいキレート剤は、ジアミンジオキシム、或いは上記のN2S2又はN3Sドナーセットを有するキレート剤である。テクテニウム用の特に好ましいキレート剤はジアミンジオキシムである。
【0062】
式IIのリンカー基−(A)n−の役割は、式Iの化合物の活性部位から、比較的嵩高な金属錯体を引き離すことにあり、それによって該化合物のMMP酵素への結合が妨げられることがなくなると予想されている。これは、それにより嵩高な基が自ら活性部位から離れる自由を有する、屈曲性のある鎖(例えば、単純アルキル鎖)、及び/又は、金属錯体が活性部位から離れるよう方向付ける、シクロアルキル若しくはアリールスペーサーなどの強固なスペーサーの組合せにより達成可能である。
【0063】
リンカー基の性質は、得られる金属錯体コンジュゲートの体内分布を改変するのに用いることもできる。したがって、例えばリンカー中へのエーテル基の導入により、血漿タンパク質の結合が最小限に抑えられる。いくつかの連結した−CH2CH2O−基を含むリンカー(PEGリンカー)又は1〜10個のアミノ酸のペプチド鎖を含むリンカーは、特定の化合物の臨床特性、とりわけ体内分布の好ましい改変を可能にするさらなる特性を有する。かかる「生体改変」リンカー基は、筋肉又は肝臓などの背景組織、及び/又は血液からのイメージング剤の除去を促進でき、したがって、背景による干渉がより少なくなるため、より良い診断画像が得られる。生体改変リンカー基は、特定の排泄経路を選択するために、例えば肝臓ではなく腎臓を選択するためにも用いることができる。
【0064】
アルキレン基又はアリーレン基などの非ペプチドリンカー基は、それと結合した式Iの化合物との間で著しい水素結合相互反応が生じないため、リンカーが式Iの化合物を包み込むことがないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は−(CH2)q−(式中、qは2〜5)である。好ましいアリーレンスペーサーは式IVのアリーレンスペーサーである。
【0065】
【化5】
【0066】
式中、a及びbは独立に0、1又は2である。
【0067】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖を含まない場合、好ましいリンカー基−(A)n−は、2〜10個の原子、最も好ましくは2〜5個の原子、特に好ましくは2又は3個の原子からなる−(A)n−部分を構成する連結した原子の主鎖を有する。2個の原子からなる最小のリンカー基主鎖でも、キレート剤が式Iの化合物から十分に隔てられ、それにより任意の相互反応が最小限に抑えられるという利点が得られる。リンカー基がPEGリンカーの場合、−(A)n−中のA基の数nは最大50、好ましくは15〜30である。リンカーがペプチド鎖を含む場合、1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖であることが好ましく、アミノ酸残基はグリシン、リジン、アスパラギン酸又はセリンから選択されることが好ましい。
【0068】
結合が血液中で容易に代謝されないように、式Iの化合物が金属錯体に結合していることが非常に好ましい。そうでなければ、該化合物が所望のインビボの標的部位に到達する前に、金属錯体が開裂してしまうためである。そのため、式Iの化合物は、容易に代謝されない結合を介して、本発明の金属錯体と共有結合していることが好ましい。
【0069】
γ−放射性金属イオンで標識した本発明の最も好ましい化合物は、CA1に配位した99mTcで標識した本発明の化合物であり、CA1は、好適な化学官能基を介して、任意のリンカーと、式IのR1〜R4の置換基の1個において結合している。99mTcで標識した本発明の好ましい化合物としては、例えば下記に例示の通りである(Tcは構造中の99mTcを意味する)。
【0070】
【化6】
【0071】
[0]γ−放射性核種が放射性ハロゲンの場合、ヨウ素の同位体であることが好ましく、画像診断剤は、前駆体とヨウ素のγ−放射性同位体とを反応させることで有用に調製される。かかる前駆体は以下で詳しく説明し、本発明の第4の態様とする。本発明の好ましいヨウ素のγ−放射性同位体は123I又は131Iである。
【0072】
ヨウ素のγ−放射性同位体は、直接共有結合を介して、ベンゼン環などの芳香環又はビニル基に結合していることが好ましい。飽和脂肪族環系に結合しているヨウ素原子は、インビボで代謝される傾向にあり、そのためヨウ素のγ−放射性同位体が失われる傾向にあるためである。最も好ましくは、ヨウ素のγ−放射性同位体は、直接共有結合を介して式Iの−NSO2−フェニル環に結合している。
【0073】
ヨウ素のγ−放射性同位体で標識した、本発明の特に好ましい画像診断剤は、式Iの化合物であって、式中、
(i)R1はイソプロピルであり、R2は4−OHであり、R3は3−123Iであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物4)であるか、
(ii)R1はイソプロピルであり、R2は4−123Iであり、R3はHであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物7)であるか、
(iii)R1はイソプロピルであり、R2は4−(4−[123I]ヨードベンズアミド)であり、R3はHであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物20)であるか、
(iv)R1は4−ヒドロキシ−3−[123I]ヨードベンジルであり、R2は4−ヨードであり、R3はHであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物21)であるか、或いは
(v)R1はイソプロピルであり、R2は4−ヨードであり、R3は3−Hであり、R4は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−(Ar2)であって、Ar1は1,4−フェニレンであり、Ar2は4−[123I]ヨードフェニルであり、R″′はCH2又はC=Oであり、yは0又は1であり、zは0又は1であり、
R4がピリジルの場合、3−ピリジルであることが好ましい化合物である。
【0074】
放射性ヨウ素化MMP阻害剤の非放射性類似体は、MMP−2に対して優れた阻害作用を示し、IC50値は化合物9(表1)では2.5nMであり、化合物8(表1)では320nMである。これらの非放射性類似体はまた、MMP−9に対しても優れた阻害作用を示し、IC50値は化合物9では4.6nMであり、化合物8では153nMである。そのため、本発明の化合物は、インビボでのMMP活性のイメージングに成功することが予想できる、インビトロでの特性を有する。そのため、これらの新規放射性トレーサーをSPECTと組み合わせて用いることで、インビボで非侵襲的にMMP活性をイメージングするための革新的な手段が提供される。動物モデルにおけるイメージング調査により、本発明の薬剤がインビボでのMMP活性の画像診断に好適であることがさらに証明される。
【0075】
第3の態様では、本発明は、前記の画像診断剤を、生体適合性担体と共に、哺乳動物への投与に適した形態で含む医薬組成物を提供する。「生体適合性担体」とは、画像診断剤がそれに懸濁又は溶解することで、該組成物が生理的に許容できるようになる、即ち、毒性又は不当な不快感なしに哺乳動物の身体に投与可能になる、流体、特に液体のことである。生体適合性担体は、好適には、発熱物質を含まない注射用の滅菌水などの注射可能な液体担体、(注射用の最終製品が等張性を有するように、又は低浸透圧性を有さないように、平衡化されていると有利である)食塩水などの水溶液、1種以上の張度調節物質(例えば、生体適合性対イオンを有する血漿カチオン)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセリン)、或いは他の非イオン性ポリオール材料(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液である。
【0076】
本発明の第4の態様は、本発明の放射性ヨウ素化画像診断剤の調製に有用な前駆体であって、該画像診断剤を得るためのヨウ素のγ−放射性同位体との反応に好適な基を含む前駆体である。放射性ヨウ素化画像診断剤の調製に好適な前駆体は、ヨウ化又は臭化アリールなどの(放射性ヨウ素との交換を許容する)非放射性ハロゲン原子、活性化アリール環(例えば、フェノール基)、有機金属前駆体化合物(例えば、トリアルキルスズ又はトリアルキルシリル)、或いはトリアゼンなどの有機前駆体を含む、式Iの化合物である。ヨウ素のγ−放射性同位体を導入する方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm.2002 45 485−528]に記載されている。ヨウ素のγ−放射性同位体が結合できる好適なアリール基としては、例えば下記のアリール基が挙げられる。
【0077】
【化7】
【0078】
好適なアリール基が存在する本発明の好ましい前駆体化合物としては、例えば下記に例示の通りである。
【0079】
【化8】
【0080】
上記で論じた好適なアリール基は両方とも、芳香環上にヨウ素で容易に置換可能な置換基を含有する。ヨウ素のγ−放射性同位体を含有する代替の置換基は、例えば、下記のような放射性ハロゲン交換を介した直接ヨウ素化により合成することができる。
【0081】
【化9】
【0082】
第5の態様では、本発明は、本発明の医薬組成物の調製用キットを提供する。本発明の医薬組成物がγ−放射性金属で標識した画像診断剤を含む場合、該キットは(i)γ−放射性金属の配位に適した配位子と結合した式Iの化合物を含む配位子結合体、及び(ii)生体適合性還元剤を含む。本発明の医薬組成物がヨウ素のγ−放射性同位体で標識した画像診断剤を含む場合、該キットはヨウ素のγ−放射性同位体との反応に適した基を含む式Iの化合物である前駆体を含み、それにより該前駆体と、通常はヨウ化物の形態であるヨウ素のγ−放射性同位体との反応で、該画像診断剤が得られる。
【0083】
かかるキットは、例えば直接注射を介してヒトの血流に投与するのに適した無菌の放射性医薬品が得られるよう設計されている。99mTcについて、キットは凍結乾燥されていることが好ましく、99mTc放射性同位体発生装置からの無菌99mTc−パーテクネテート(TcO4−)で再構築され、さらに操作を行わずにヒト投与に適した溶液が得られるよう設計されている。好適なキットは、遊離塩基又は酸性塩の形態の配位子又はキレート剤結合体を、亜二チオン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、第1スズイオン、Fe(II)又はCu(I)などの生体適合性還元剤と共に収容する容器(例えば、隔壁が封着されているバイアル)を含む。生体適合性還元剤は、塩化第1スズ又は酒石酸第1スズなどの第1スズ塩であることが好ましい。或いは、キットは、放射性金属の付加時にトランスメタレーション(即ち、金属交換)されて所望の生成物を与える金属錯体を含んでもよい。
【0084】
キットは、トランスキレート剤、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調節剤又は充填剤などの追加の成分をさらに含んでもよい。「トランスキレート剤」とは、急速に反応してテクネチウムと弱い錯体を形成し、次いで配位子により置換される化合物のことである。これにより、錯体化テクネチウムと競合するパーテクネテートが急速に還元されるため、還元・加水分解したテクネチウム(RHT)が形成される危険性が最小限に抑えられる。好適なかかるトランスキレート剤は、弱有機酸、即ちpKaが3〜7の範囲の有機酸と生体適合性カチオンとの塩である。適切なかかる弱有機酸は、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、安息香酸、フェノール又はホスホン酸である。したがって、好適な塩は酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、フェノール塩又はホスホン酸塩である。好ましいかかる塩は酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩又はホスホン酸塩であり、最も好ましくはホスホン酸塩であり、特に好ましくはジホスホン酸塩である。好ましいかかるトランスキレート剤は、MDP、即ちメチレンジホスホン酸と生体適合性カチオンとの塩である。
【0085】
「生体適合性カチオン」という用語は、イオン化され、負の電荷を有する基と塩を形成する正の電荷を有する対イオンを意味し、この正の電荷を有する基もまた無毒であり、したがって哺乳動物の身体、特に人体への投与に適している。好適な生体適合性カチオンとしては、例えばアルカリ金属のナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属のカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンが挙げられる。好ましい生体適合性カチオンはナトリウム及びカリウム、最も好ましくはナトリウムである。
【0086】
「放射能防護剤」とは、水の放射線分解で生じる含酸素フリーラジカルなどの高反応性フリーラジカルを捕捉することにより、酸化還元プロセスなどの分解反応を阻害する化合物を意味する。本発明の放射能防護剤は、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、及びその前記の生体適合性カチオンとの塩から好適に選択される。
【0087】
「抗菌防腐剤」という用語は、細菌、酵母又はカビなどの有害の可能性がある微生物の増殖を阻害する薬剤を意味する。抗菌防腐剤は、用量に応じていくつかの殺菌特性をも発揮し得る。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、再構築後の医薬組成物、即ち、放射性診断用製品自体において、任意のかかる微生物の増殖を抑制することにある。しかしながら、抗菌防腐剤を、再構築前の本発明のキットの1種以上の成分中で、有害の可能性がある微生物の増殖を抑制するために用いてもよい。好適な抗菌防腐剤としては、パラベン、即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはその混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオマーサルが挙げられる。好ましい抗菌防腐剤はパラベンである。
【0088】
「pH調節剤」という用語は、再構成されたキットのpHがヒト又は哺乳動物への投与に許容される範囲(約pH4.0〜10.5)内にあることを確実にするのに有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調節剤としては、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]などの製薬的に許容される緩衝液、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はその混合物などの製薬的に許容される塩基が挙げられる。配位子結合体を酸性塩の形態で用いる場合、pH調節剤を別のバイアル又は容器内に入れて、多段階法の一部としてキットの使用者がpHを調節できるようにしてもよい。
【0089】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥中の原料の取り扱いを容易にできる、製薬的に許容される増量剤を意味する。好適な賦形剤としては、塩化ナトリウムなどの無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースなどの水溶性の糖又は糖アルコールが挙げられる。
【0090】
本発明の第6の態様は、本発明の医薬組成物の、循環器疾患の画像診断のための使用である。本発明の医薬組成物は、アテローム性動脈硬化症及びCHFの画像診断に特に有用である。本発明の画像診断剤の使用により、活性プラーク負荷が同定されて、冠動脈疾患の発症が分かっているか又は疑わしい患者、即ち、疼痛又は疼痛の病歴を有する患者、或いは危険性が高いことが確認されたが無症候である患者の危険性が層別化される。また、本発明の画像診断剤により、症候性の患者の脆弱なプラークが同定されて、狭窄に関係なく急性心筋梗塞又は脳卒中の高い危険性が確認され、患者が胸痛を呈する場合でも危険性が直ちに層別化される。さらに、脆弱なプラークの血管形成術は危険性が高く、術後に動脈塞栓症を引き起こすおそれがある。したがって、このサブタイプのプラークのイメージングにより、術後合併症を減少させることができる。
【0091】
本発明の第7の態様は、本発明の医薬組成物の、炎症性疾患の画像診断、特にCOPDの画像診断のための使用である。
【実施例】
【0092】
実施例1には、非放射性の従来技術化合物CGS27023の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0093】
実施例2には、いずれも本発明の画像診断剤である化合物6及び7の非放射性の変種である化合物9の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0094】
実施例3には、実施例14及び15記載の化合物6及び7の調製に用いられる前駆体である化合物14の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0095】
実施例4には、実施例12及び13記載の化合物4及び5の調製に用いられる前駆体である化合物13の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0096】
実施例5には、いずれも本発明の画像診断剤である化合物4及び5の非放射性の変種である化合物8の合成に使われた合成経路が記載されている。
【0097】
実施例6には、いずれも本発明の画像診断剤である化合物1、2、3、16及び17中に99mTcを配位させるのに用いられるキレート剤であるCA1の調製に使われた合成が記載されている。
【0098】
実施例7には、99mTcで標識されて化合物1を生成することができる配位子結合体である化合物10の合成に使われた合成経路が記載されている。
【0099】
実施例8には、99mTcで標識されて化合物2を生成することができる配位子結合体である化合物11の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0100】
実施例9には、99mTcで標識されて化合物16を生成することができる配位子結合体である化合物18の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0101】
実施例10には、99mTcで標識されて化合物17を生成することができる配位子結合体である化合物19の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0102】
実施例11には、化合物10、11、12、18及び19を99mTcで標識する方法が記載されている。
【0103】
実施例12には、化合物13を123Iで標識することによる化合物4の調製が記載されている。実施例13では、実施例12と同じ調製方法を使って化合物5を得たが、実施例13では化合物13を125Iで標識した。
【0104】
実施例14には、前駆体である化合物14を用いた化合物6の放射性合成が記載されている。実施例15では、実施例14と同じ放射性合成を使って化合物7を調製した。化合物6及び7はいずれも本発明の画像診断剤である。
【0105】
実施例16には、化合物6及び7の放射性合成に適した前駆体である化合物15の合成が記載されている。
【0106】
実施例17には、トリブチルスズ前駆体である化合物15からの化合物7の放射性合成が記載されている。
【0107】
実施例18には、本発明の化合物の、MMP−2及びMMP−9を阻害する能力を評価するために使われたアッセイが記載されている。表2の結果からは、本発明の画像診断剤の非放射性の変種(化合物8及び9)が従来技術化合物と同程度のMMP阻害活性を有することが明らかになる。これにより、これらの化合物(化合物2〜5)の非放射性の変種を、MMPが関与する疾患状態における画像診断剤に使用できることが証明される。
【0108】
実施例19には、本発明の化合物のインビボ特性の評価に使われたApoE(−/−)マウスモデルが記載されている。
【0109】
実施例20には、組織学及び免疫組織化学用組織サンプルの調製に使われた方法が記載されている。実施例21には、オートラジオグラフィー用サンプルの調製に使われた方法が記載されている。図8に示すこれらの実験の結果から、化合物5の取り込みがMMP−9の存在と関連があることが証明される。
【0110】
実施例22には、マウスにおいてインビボイメージング調査を行った方法が記載されている。実験では、結紮を行った領域で120分にわたって化合物4の取り込みが増大したことが証明され、化合物4が病変部に特異的に取り込まれたことを示唆している。また、非放射性の従来技術化合物CGS27023を予め投与したApoE−/−マウスでは、化合物4が同様には取り込まれなかったことも証明され、化合物4がCGS27023と同様の結合特性を有することを示唆している。関心領域の分析により調査した化合物4の生体分布では、腎排泄及び肝排泄を介して血液から迅速に排除されたこと、同時期に胸腔及び脳で目立ったシグナルがみられなかったことが明らかになった(図12)。かかる除去特性は画像診断剤に好適である。
【0111】
本明細書で例示した化合物の多くは式Iの化合物であり、便宜のため次頁の表1で定義する。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1 CGS27023(従来技術)の調製
MacPherson et al[J.Med.Chem.1997、40;2525−2532]記載の合成の変法によりCGS27023を合成した。
【0114】
本合成は、市販のバリンt−ブチルエステルとフェニルスルホニルクロリドとを反応させることで開始した。一方、MacPhersonらの合成は、保護されていないバリンとフェニルスルホニルクロリドとを反応させ、次にt−ブチルエステルとして酸官能基を保護することで開始する。本合成の残りはMacPhersonらの報告と同じであった。使用した合成経路を図1に示す。CGS27023の場合、Xはメトキシである。
【0115】
収率94%
融点156〜158°
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:10.76(広幅,s,1H,OH)、8.52(m,2H,HAryl)、8.18(d,3J=8.1Hz,1H,HAryl)、7.69(dd,3J1=8.1Hz,3J2=5.6Hz,1H,HAryl)、7.47(d,3J=8.9Hz,2H,HAryl)、6.82(d,3J=8.9Hz,2H,HAryl)、4.72(d,2J=16.7Hz,1H,CH2)、4.52(d,2J=16.7Hz,1H,CH2)、3.63(s,3H,OCH3)、3.64(d,3J=10.4Hz,1H,N−CH)、1.85〜1.71(m,1H,CH(CH3)2)、0.59(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)、0.42(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0116】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.22、163.01、144.91、142.01、141.14、138.78、131.48、129.59、126.52、114.72、63.35、56.12、45.04、28.09、19.50、19.29。
【0117】
実施例2 化合物9の調製
図1のXをIとして、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ方法で、化合物9を調製した。
【0118】
収率:粗生成物56%。これをアセトニトリルから再結晶して36%の無色固体が得られる。
【0119】
融点169℃。
【0120】
1H−NMR(400MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:10.87(広幅,s,1H,OH)、8.80(m,2H,HAryl)、8.45(d,3J=8.3Hz,1H,HAryl)、7.96(dd,3J1=8.1Hz,3J2=6.0Hz,1H,HAryl)、7.90(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、7.52(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、4.95(d,2J=16.9Hz,1H,CH2)、4.74(d,2J=16.9Hz,1H,CH2)、3.83(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.05〜1.93(m,1H,CH(CH3)2)、0.78(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)、0.59(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0121】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.95、145.67、143.58、142.69、140.27、139.47、139.18、129.96、127.45、102.99、64.51、46.16、29.11、20.51、20.24。
【0122】
MALDI−TOF:490(M−HCl+H+)。
【0123】
元素分析:C17H21lClN3O4S:C 38.83、H 4.03、N 7.99。実測値:C 38.67、H 3.85、N 7.94。
【0124】
実施例3 化合物14の調製
図1のXをBrとして、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ方法で、化合物14を調製した。
【0125】
収率:無色固体51%。
【0126】
融点:169〜170℃。
【0127】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:11.03(広幅,s,1H,OH)、8.80(m,2H,HAryl)、8.42(d,3J=8.1Hz,1H,HAryl)、7.93(dd,3J1=8.0Hz,3J2=5.9Hz,1H,HAryl)、7.90(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、7.52(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、4.98(d,2J=16.6Hz,1H,CH2)、4.77(d,2J=16.6Hz,1H,CH2)、3.88(d,3J=10.5Hz,1H,N−CH)、2.08〜1.95(m,1H,CH(CH3)2)、0.81(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)、0.63(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0128】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:165.91、145.13、142.02、141.17、138.91、138.47、132.67、129.39、127.51、126.66、63.54、45.18、28.12、19.51、19.23。
【0129】
MALDI−TOF:466(M−HCl+Na+)、464(M−HCl+Na+)、444(M−HCl+H+)、442(M−HCl+H+)。
【0130】
元素分析:C17H21BrClN3O4Sの計算値:C 42.64、H 4.42、N 8.78。実測値C 42.60、H 4.20、N 8.52。
【0131】
実施例4 化合物13の調製
XがBnOである図1の式V(N−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ベンジルオキシフェニル)スルホニル](3−ピコリル)アミノ]−3−メチルブタンアミド)から、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ経路を介して、化合物13の合成を行った。
【0132】
図1の式V(式中、XはBnO)に対応する化合物1.20g(2.28mmol)を無水メタノール30mlに溶解し、Pd/C(10%)110mgで処理し、H2雰囲気下で66時間攪拌した。触媒を濾別し、エタノール80mlで洗浄した。溶媒を蒸発させ、固体残渣を減圧乾燥した。クロロホルムから再結晶させて、無色の微結晶生成物である図1の式V(式中、XはOH)(N−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシフェニル)スルホニル](3−ピコリル)アミノ]−3−メチル−ブタンアミド)を797mg(1.83mmol、80%)得た。
【0133】
融点160〜162℃。
【0134】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:10.74(s,1H,OH)、8.64(s,1H,HAryl)、8.54(m,1H,HAryl)、7.83(d,3J=7.9Hz,1H,HAryl)、7.63(d,3J=8.7Hz,2H,HAryl)、7.37(dd,3J1=7.8Hz,3J2=4.8Hz,1H,HAryl)、6.91(d,3J=8.7Hz,2H,HAryl)、4.80(s,2H,CH2)、4.09(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.09〜1.97(m,1H,CH(CH3)2)、1.22(s,9H,C(CH3)3)、0.93(d,3J=6.3Hz,3H,CH(CH3)2)、0.86(d,3J=6.3Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0135】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:168.14、161.56、150.30、148.49、136.64、133.85、130.87、129.43、123.18、115.78、81.04、63.07、45.52、28.56、26.60、19.59、19.20。
【0136】
MALDI−TOF:474(M+K+)、458(M+Na+)、436(M+H+)。
【0137】
図1の式V(式中、XはOH)600mg(1.38mmol)を、エタノール80μl(1.38mmol)を含有するジクロロエタン30ml中に溶解した。溶液を−10℃に冷却し、塩酸を3時間吹き込んだ。反応容器を密封し、混合物を室温まで加熱した。2日間攪拌後、溶媒の体積を蒸発により3分の1まで減少させ、残渣をエーテルで処理した。得られた懸濁液を激しく4時間攪拌した。沈殿物を吸引濾過により回収し、減圧乾燥して化合物13を562mg(1.35mmol、98%)、無色の粉末固体として得た。
【0138】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:11.13(s,1H,OH)、10.83(s,1H,OH)、8.96(s,2H,HAryl)、8.59(d,3J=8.0Hz,1H,HAryl)、8.11(dd,3J1=7.7Hz,3J2=5.9Hz,1H,HAryl)、7.77(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、7.06(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、5.11(d,2J=16.8Hz,1H,CH2)、4.90(d,2J=16.8Hz,1H,CH2)、4.01(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.25〜2.12(m,1H,CH(CH3)2)、0.99(d,3J=6.4Hz,3H,CH(CH3)2)、0.81(d,3J=6.4Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0139】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.32、162.04、144.85、142.09、141.17、138.99、129.72、129.59、126.45、115.93、63.30、44.98、28.08、19.49、19.33。
【0140】
MALDI−TOF:402(M−HCl+Na)+。
【0141】
実施例5 化合物8の調製
XがOHである図1の式V(N−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシフェニル)スルホニル](3−ピコリル)アミノ]−3−メチル−ブタンアミド)から、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ経路を介して、化合物8の合成を行った。
【0142】
図1の式V(式中、XはOH)1.00g(2.30mmol)を、メタノール40mlに溶解し、炭酸ナトリウム1.22g(11.5mmol)で処理した。溶液を氷浴中で冷却し、一塩化ヨウ素をメタノールに溶解させた1M溶液2.3mlを1時間にわたって滴下した。滴下中、溶液の深紅色がほぼ即時に消失した。混合物を室温にして、終夜攪拌した。懸濁液を濾過した後、濾液を10%チオ硫酸ナトリウム溶液4mlで処理し、1N H2SO4でpH7に調節した。エーテルで抽出後、混合抽出物を食塩水で洗浄、乾燥した(Na2SO4)。エーテル溶液を減圧濃縮してN−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)スルホニル](3−ピコリル)−アミノ]−3−メチルブタンアミド900mgを得た。これは薄桃色固体であり、さらに精製することなく次のステップに使用した。
【0143】
粗製のN−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)スルホニル](3−ピコリル)−アミノ]−3−メチルブタンアミド900mgを、エタノール93μlを含有するジクロロメタン150mlに溶解させた。溶液を−10℃に冷却し、塩酸を1.5時間吹き込んだ。反応容器を密封し、混合物を室温まで加熱した。室温で19時間攪拌後、溶媒を蒸発により約20mlに減少させ、残渣をエーテル約50mlで処理した。得られた懸濁液を激しく1〜2時間攪拌した。沈殿物を吸引濾過で回収し、減圧乾燥して無色から薄黄色の粉末固体830mgを得た。メタノール/アセトニトリル(1:1)で2回再結晶させて、純化合物8を150mg得た。
【0144】
収率:12%(2段階にわたる)。
【0145】
融点:201〜203℃。
【0146】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:11.70(広幅,s,1H,OH)、11.03(広幅,s,1H,OH)、8.86(s,1H,HAryl)、8.84(s,1H,HAryl)、8.45(d,3J=8.1Hz,1H,HAryl)、7.98(dd,3J1=8.3Hz,3J2=5.7Hz,1H,HAryl)、7.96(d,3J=2.3Hz,1H,HAryl)、7.69(d,3J=8.6Hz,1H,HAryl)、7.10(d,3J=8.6Hz,1H,HAryl)、4.98(d,2J=16.5Hz,1H,CH2)、4.82(d,2J=16.5Hz,1H,CH2)、3.89(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.15〜2.02(m,1H,CH(CH3)2)、0.87(d,3J=6.6Hz,3H,CH(CH3)2)、0.69(d,3J=6.6Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0147】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.25、161.32、144.95、142.22、141.36、138.72、138.12、131.33、129.15、126.44、115.16、84.87、63.33、45.03、28.05、19.50、19.31。
【0148】
元素分析:C17H21IN3O5SClの計算値:C 37.69、H 3.90、N 7.76;実測値:C 37.84、H 4.42、N 7.39。
【0149】
実施例6 キレート剤1の調製
6(a) 3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル
カルボメトキシメチレントリフェニルホスホラン(167g、0.5mol)のトルエン(600ml)溶液を3−オキソグルタル酸ジメチル(87g、0.5mol)で処理し、反応液を120℃の油浴上、窒素雰囲気下で100℃に36時間加熱した。次に、反応液を減圧濃縮し、油状残渣を40/60石油エーテル/ジエチルエーテル1:1、600mlで粉砕した。トリフェニルホスフィンオキシドを沈殿除去し、上澄液をデカント/濾別した。減圧蒸発させた残渣を高真空下、沸点でKugelrohr蒸留して(0.2torrでオーブン温度180〜200℃)、3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステルを89.08g、267mM、53%で得た。
【0150】
NMR 1H(CDCl3):δ3.31(2H,s,CH2)、3.7(9H,s,3×OCH3)、3.87(2H,s,CH2)、5.79(1H,s,=CH)、ppm。
【0151】
NMR 13C(CDCl3)、δ36.56、CH3、48.7、2×CH3、52.09及び52.5(2×CH2);122.3及び146.16 C=CH;165.9、170.0及び170.5 3×COOppm。
【0152】
6(b) 3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステルの水素付加
3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89g、267mmol)のメタノール(200ml)溶液を、木炭上のパラジウム10%:水50%(9g)と共に、水素ガス雰囲気下(50psi)30時間振とうした。溶液をkieselguhrで濾過し、減圧濃縮して3−(メトキシカルボニルメチル)グルタル酸ジメチルエステルを油状物として得た(収量84.9g、収率94%)。
【0153】
NMR 1H(CDCl3)、δ2.48(6H,d,J=8Hz,3×CH2)、2.78(1H,六重線,J=8Hz CH)、3.7(9H,s,3×CH3)。
【0154】
NMR 13C(CDCl3)、δ28.6、CH;37.50、3×CH3;51.6、3×CH2;172.28、3×COO
6(c) トリメチルエステルのトリアセテートへの還元及びエステル化
窒素雰囲気下、2L三つ口丸底フラスコ中で、水素化リチウムアルミニウム(20g、588mmol)のテトラヒドロフラン(400ml)溶液をトリ(メチルオキシカルボニルメチル)メタン(40g、212mmol)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液で1時間にわたって慎重に処理した。激しい発熱反応が生じ、溶媒は激しく還流した。反応液を90℃の油浴上で加熱し、3日間還流させた。酢酸(100ml)を慎重に滴下することで反応液をクエンチして、水素の発生を中止させた。攪拌した反応混合物を無水酢酸溶液(500ml)で、緩やかに還流させる速度で慎重に処理した。このフラスコに蒸留用の装備をつけ、攪拌後、90℃(油浴温度)で加熱してテトラヒドロフランを留去した。無水酢酸(300ml)をさらに加え、還流時の構成に戻し、反応液を140℃の油浴中で5時間攪拌、加熱した。反応液を冷却、濾過した。酸化アルミニウム沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、混合濾液をロータリーエバポレーター上で、水浴温度50℃で減圧(5mmHg)濃縮して油状物を得た。油状物を酢酸エチル(500ml)中に取り込み、飽和炭酸カリウム水溶液で洗浄した。酢酸エチル溶液を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して油状物を得た。油状物を高真空下でKugelrohr蒸留してトリス(2−アセトキシエチル)メタン(収量45.313g、収率95.9%、0.165mol)を油状物として得た。0.1mmHgで沸点220。
【0155】
NMR 1H(CDCl3)、δ1.66(7H,m,3×CH2,CH)、2.08(1H,s,3×CH3);4.1(6H,t 3×CH2O)。
【0156】
NMR 13C(CDCl3)、δ20.9、CH3;29.34、CH;32.17、CH2;62.15、CH2O;171、CO。
【0157】
6(d) トリアセテートからの酢酸エステル基の除去
トリス(2−アセトキシエチル)メタン(45.3g、165mM)のメタノール(200ml)及び880アンモニア(100ml)溶液を80℃の油浴上で2日間加熱した。反応液をさらなる880アンモニア(50ml)で処理し、油浴中80℃で24時間加熱した。880アンモニア(50ml)をさらに加え、反応液を80℃で24時間加熱した。次に、反応液を減圧濃縮して全溶媒を除去し、油状物を得た。これを880アンモニア(150ml)中に取り込み、80℃で24時間加熱した。次に、反応液を減圧濃縮して全溶媒を除去し、油状物を得た。沸点170〜180、0.2mmでのKugelrohr蒸留でアセトアミドを得た。このアセトアミドを収容しているバルブをきれいに洗浄し、蒸留を継続した。沸点220℃、0.2mmで蒸留してトリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(22.53g、152mmol、92.1%)を得た。
【0158】
NMR 1H(CDCl3)、δ1.45(6H,q,3×CH2)、2.2(1H,五重線,CH);3.7(6H,t 3×CH2OH);5.5(3H,brs,3×OH)。
【0159】
NMR 13C(CDCl3)、δ22.13、CH;33.95、3×CH2;57.8、3×CH2OH。
【0160】
6(e) トリオールのトリス(メタンスルホネート)への変換
攪拌・氷冷したトリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(10g、0.0676mol)のジクロロメタン(50ml)溶液を、塩化メタンスルホニル(40g、0.349mol)のジクロロメタン(50ml)溶液に、窒素下、温度が15℃を超えて上昇しない速度でゆっくりと滴下した。次に、ピリジン(21.4g、0.27mol、4当量)のジクロロメタン(50ml)溶液を、温度が15℃を超えて上昇し発熱反応を起こさないような速度で滴下した。反応液を室温で24時間攪拌した後、5N塩酸溶液(80ml)で処理、層分離した。水層をさらなるジクロロメタン(50ml)で抽出し、有機抽出物を混合、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮して、過剰量の塩化メタンスルホニルで汚染したトリス(2−(メチルスルホニルオキシ)エチル)メタンを得た。理論上の収量は25.8gであった。
【0161】
NMR 1H(CDCl3)、δ4.3(6H,t,2×CH2)、3.0(9H,s,3×CH3)、2(1H,六重線,CH)、1.85(6H,q,3×CH2)。
【0162】
6(f) 1,1,1−トリス(2−アジドエチル)メタンの調製
トリス(2−(メチルスルホニルオキシ)−エチル)メタン[ステップ1(e)から、過剰量の塩化メチルスルホニルで汚染](25.8g、67mmol、理論値)の乾燥DMF(250ml)攪拌溶液を窒素下、アジ化ナトリウム(30.7g、0.47mol)で少しづつ15分かけて処理した。発熱が観察され、反応液を氷浴上で冷却した。30分後、反応混合物を50℃の油浴上で24時間加熱した。反応液は褐色になった。反応液を冷却し、希炭酸カリウム溶液(200ml)で処理し、40/60石油エーテル/ジエチルエーテル10:1(3×150ml)で3回抽出した。有機抽出物を水(2×150ml)で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過した。エタノール(200ml)を石油/エーテル溶液に加えてトリアジドを溶液に保ち、体積を減圧下で200ml以上に減少させた。エタノール(200ml)を加え、減圧再濃縮して最後の微量の石油を除去し、200ml以上のエタノール溶液が残った。
【0163】
注意:アジ化物は爆発の可能性があり、常に希溶液に保たなければならないので、溶媒をすべて除去することのないように。
【0164】
NMR 1H(CDCl3)、δ3.35(6H,t,3×CH2)、1.8(1H,六重線,CH)、1.6(6H,q,3×CH2)。
【0165】
6(g) 1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
トリス(2−アジドエチル)メタン(15.06g、0.0676mol)(前の反応の収率を100%とする)のエタノール(200ml)溶液を、木炭上の10%パラジウム(2g、水50%)で処理し、12時間水素添加した。反応容器から2時間毎に排気して、反応液から発生した窒素を除去し、水素を再充填した。サンプルをNMR分析用に採取して、トリアジドのトリアミンへの変換完了を確認した。
【0166】
注意:非還元アジ化物は蒸留時に爆発の可能性あり。
【0167】
反応液をセライトパッドで濾過して触媒を除去し、減圧濃縮してトリス(2−アミノエチル)メタンを油状物として得た。これを0.4mm/Hgで沸点180〜200℃のKugelrohr蒸留でさらに精製して無色油状物を得た(8.1g、55.9mmol、トリオールからの合計収率82.7%)。
【0168】
NMR 1H(CDCl3)、2.72(6H,t,3×CH2N)、1.41(H,七重線,CH)、1.39(6H,q,3×CH2)。
【0169】
NMR 13C(CDCl3)、δ39.8(CH2NH2)、38.2(CH2.)、31.0(CH)。
【0170】
1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンは、下記の代替方法でも調製することができる。
【0171】
6(g)(i):トリメチルエステルのp−メトキシ−ベンジルアミンを用いたアミド化
トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタン[2g、8.4mmol;上記ステップ6(b)と同様に調製]をp−メトキシ−ベンジルアミン(25g、178.6mmol)に溶解した。装置を蒸留用に調整し、窒素流下で120℃に24時間加熱した。反応の進行を回収したメタノールの量によりモニターした。反応混合物を外界温度に冷却し、酢酸エチル30mlを加えた後、蒸留したトリアミド生成物を30分間攪拌した。トリアミドを濾過により単離し、フィルターケーキを十分量の酢酸エチルで数回洗浄して、過剰量のp−メトキシ−ベンジルアミンを除去した。乾燥後、白色粉末4.6g、100%を得た。この極めて不溶性の生成物を次のステップに、さらに精製又は特徴付けをせずに直接使用した。
【0172】
6(g)(ii):1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタンの調製
氷水浴中で冷却した1000ml三つ口丸底フラスコ中の1Mボラン溶液(3.5g、244.3mmol)ボランに、ステップ2(a)のトリアミド(10g、17.89mmol)を慎重に加える。添加完了後、氷水浴を除去し、反応混合物を60℃に加熱する。反応混合物を60℃で20時間攪拌する。反応混合物のサンプル(1ml)を取り出し、5N HCl 0.5mlと混合、30分間静置した。サンプルに50NaOH 0.5mlを加えた後、水2mlを加え、溶液を攪拌して白色沈殿物をすべて溶解させた。溶液をエーテル(5ml)で抽出し、蒸発させた。残渣をアセトニトリルに溶解して濃度を1mg/mlにし、質量分析法で分析した。モノ及びジアミド(M+H/z=520及び534)が質量スペクトルに見られる場合、反応は完了していない。反応を完了させるには、1MボランTHF溶液100mlをさらに加え、反応混合物を60℃でさらに6時間攪拌し、上記のサンプリング法に従って新しいサンプルを取り出す。必要であれば1MボランTHF溶液の添加をさらに続けてトリアミンへの変換を完了させる。
【0173】
反応混合物を外界温度に冷却し、5N HClをゆっくり加える[注意:気泡が活発に形成!]。HClを加えて、ガス発生がもはや観察されないようにした。混合物を30分間攪拌した後、蒸発させた。ケーキをNaOH水溶液(20〜40%;1:2w/v)に懸濁させ、30分間攪拌した。次に、混合物を水で希釈した(3倍体積)。次に混合物をジエチルエーテル(2×150ml)で抽出した[注意:ハロゲン化溶媒を使用しないこと]。次に、混合有機相を水(1×200ml)、食塩水(150ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸発後の油状物としての収量7.6g、収率84%。
【0174】
NMR 1H(CDCl3)、δ:1.45、(6H,m,3×CH2;1.54、(1H,七重線,CH);2.60(6H,t,3×CH2N);3.68(6H,s,ArCH2);3.78(9H,s,3×CH3O);6.94(6H,d,6×Ar)。7.20(6H,d,6×Ar)。
【0175】
NMR 13C(CDCl3)、δ:32.17、CH;34.44、CH2;47.00、CH2;53.56、ArCH2;55.25、CH3O;113.78、Ar;129.29、Ar;132.61;Ar;158.60、Ar;
6(g)(iii) 1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタン(20.0グラム、0.036mol)をメタノール(100ml)に溶解し、Pd(OH)2(5.0グラム)を加えた。混合物を水素添加し(3バール、100℃、オートクレーブ中)、5時間攪拌した。10時間後及び15時間後、Pd(OH)2をさらに2回(2×5グラム)各々加えた。
【0176】
反応混合物を濾過し、濾液をメタノールで洗浄した。混合有機相を蒸発させ、残渣を減圧(1×10−2、110℃)蒸留して、前記方法で得たものと同一の1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンを2.60グラム(50%)得た。
【0177】
6(h) 3−クロロ−2−ニトロソブタンの調製。
【0178】
2−メチルブト−2−エン(147ml、1.4mol)と亜硝酸イソアミル(156ml、1.16mol)との混合物をカーディス及びメタノールの浴中で−30℃に冷却し、オーバーヘッド空気攪拌機で激しく攪拌し、濃塩酸(140ml、1.68mol)を温度が−20℃未満に維持されるような速度で滴下して処理した。著しい発熱が生じ、過熱を避けるために注意が必要なことから、これには約1時間を要する。エタノール(100ml)を加えて上記添加の完了時に形成したスラリーの粘度を低下させ、反応液を−20〜−10℃でさらに2時間攪拌して反応を完了させた。沈殿物を減圧濾過で回収し、冷(−20℃)エタノール4×30ml及び氷冷水100mlで洗浄し、減圧乾燥して3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンを白色固体として得た。エタノール濾液と洗液を混合し、水(200ml)で希釈し、冷却し、−10℃で1時間静置して、3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンのさらなる生成物が結晶化された。沈殿物を濾過により回収し、最小量の水で洗浄し、減圧乾燥してNMRによる純度98%超の3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンの全収量(115g 0.85mol、73%)を得た。
【0179】
NMR 1H(CDCl3)、異性体の混合物(異性体1,90%)1.5d、(2H,CH3)、1.65d、(4H,2×CH3)、5.85、q及び5.95、q、合計1H。(異性体2,10%)、1.76s、(6H,2×CH3)、2.07(3H,CH3)。
【0180】
6(i) ビス[N−(1,1−ジメチル−2−N−ヒドロキシイミンプロピル)2−アミノエチル]−(2−アミノエチル)メタン(キレート剤1)の合成
トリス(2−アミノエチル)メタン(4.047g、27.9mmol)の乾燥エタノール(30ml)溶液に、無水炭酸カリウム(7.7g、55.8mmol、2当量)を室温で、窒素雰囲気下で激しく攪拌しながら加えた。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(7.56g、55.8mol、2当量)の溶液を乾燥エタノール(100ml)に溶解し、この溶液75mlを上記反応混合物にゆっくりと滴下した。反応後、ジクロロメタン、メタノール、濃アンモニア(比重0.88)の100/30/5混合物中で運転するシリカ上でのTLCにかけ、TLCプレートをニンヒドリン噴霧及び加熱により展開した。モノ、ジ及びトリアルキル化生成物がみられ、Rf値はこの順序で増大した。分析HPLCを、RPR逆相カラムを使って、3%アンモニア水中のアセトニトリルのグラジエントを7.5〜75%にして運転した。反応液を減圧濃縮してエタノールを除去し、水(110ml)に再懸濁した。水性スラリーをエーテル(100ml)で抽出してトリアルキル化合物の一部及び親油性不純物を除去し、水層中にはモノ及び所望のジアルキル化生成物が残った。水溶液を酢酸アンモニウム(2当量、4.3g、55.8mmol)で緩衝して良好なクロマトグラフィーを確保した。水溶液を終夜4℃で保管した後、自動分取HPLCで精製した。
【0181】
収量・収率(2.2g、6.4mM、23%)。
【0182】
質量スペクトル;陽イオン10Vコーン電圧。実測値:344;計算値M+H=344。
【0183】
NMR 1H(CDCl3)、δ1.24(6H,s,2×CH3)、1.3(6H,s,2×CH3)、1.25〜1.75(7H,m,3×CH2,CH)、(3H,s,2×CH2)、2.58(4H,m,CH2N)、2.88(2H,t CH2N2)、5.0(6H,s,NH2 ,2×NH,2×OH)。
【0184】
NMR 1H((CD3)2SO)δ1.14×CH;1.29、3×CH2;2.1(4H,t,2×CH2);
NMR 13C((CD3)2SO)、δ9.0(4×CH3)、25.8(2×CH3)、31.0 2×CH2、34.6 CH2、56.8 2×CH2N;160.3、C=N。
【0185】
HPLC条件:流量8ml/分、25mmPRPカラム使用
A=3%アンモニア溶液(比重=0.88)/水。
【0186】
B=アセトニトリル
時間 B(%)
0 7.5
15 75.0
20 75.0
22 7.5
30 7.5
1運転当たり水溶液3mlを負荷、12.5〜13.5分の時間窓内に回収。
【0187】
実施例7 化合物10の調製
合成経路は図2に示す。
【0188】
7(a) 4−(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピルスルファモイル)−安息香酸メチルエステル(化合物1*)
2−アミノ−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(H−D−Val−OtBu.HCl)(500mg、2.38mmol)のアセトニトリル(20ml)攪拌懸濁液に、ピリジン(767μl、9.52mmol)を外界温度で加えた。透明で無色の溶液が速やかに得られた。次に、4−クロロスルホニル−安息香酸メチルエステル(670mg、2.86mmol)のアセトニトリル(6ml)溶液を滴下し、薄黄色になった混合物を外界温度で4時間攪拌した。反応はTLC(EtOAc/ヘキサン、1:1)でモニターした。溶媒を蒸発させ、酢酸エチル(50ml)及び飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10ml)を加えた。混合物を分液漏斗に移しかえ、激しく振とうした。次に層分離し、酢酸エチル層を食塩水(10ml)で1回抽出、乾燥(MgSO4)、濾過し、蒸発させて粗生成物を得た。(酢酸エチル/ヘキサン、1:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィーで標記純生成物を白色固体として得た。収量880mg(収率99.55%)。
【0189】
7(b) 4−[(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸メチルエステル(化合物2*)
4−(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピルスルファモイル)−安息香酸メチルエステル(化合物1*−884mg、2.38mmol)のジメチルホルムアミド(30ml)攪拌溶液に、炭酸セシウム(10.86g、33.34mmol)を外界温度で加えた。次に、塩化3−ピコリル塩酸塩(546mg、3.33mmol)を懸濁液に加え、反応混合物を室温で24時間混合した。その時点でTLC(EtOAc/ヘキサン 1:1)モニタリングを行い、反応の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固し、残渣を酢酸エチル(50ml)中で攪拌した。酢酸エチル相を水(1×50ml)で抽出、乾燥(MgSO4)、濾過し、蒸発させて粗生成物を褐色油状物として得た。この油状物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して標記純生成物を無色油状物として得た。収量800mg(収率79.21%)。
【0190】
7(c) 4−[(1−カルボキシ−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸メチルエステル(化合物3*)
エステル(化合物2*−321mg、0.75mmol)を塩化メチレン(15ml)に溶解し、−10℃に冷却した。塩酸ガスを溶液に10分間吹き込んだ。反応混合物を封着、室温に加熱、16時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を塩化メチレン(2×10ml)と共蒸発させて標記生成物を白色気泡として得た(278mg、収率83.73%)。
【0191】
7(d) 4−[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸メチルエステル(化合物5*)
酸(化合物3*−112mg、0.28mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(39mg、0.29mmol)、4−メチルモルホリン(297μl、1.4mmol)及びO−tert−ブチルジメチルシリル}ヒドロキシルアミン(124mg、0.84mmol)を塩化メチレン(8ml)に溶解した。N−[(ジメチルアミノ)プロピル]−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩(73mg、0.38mmol)を加え、反応混合物を24時間攪拌した。反応混合物を水(10ml)で希釈、塩化メチレン(2×10ml)で抽出した。塩化メチレン混合相を乾燥(Na2SO4)、濾過した。塩酸のジオキサン溶液を数滴、濾液に加えて標記の遊離ヒドロキサム酸(108mg)を直接得た。
【0192】
7(e) 4−[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸(化合物6*)
2N水酸化ナトリウム(200μl)をエステル(化合物5*−32mg、0.072mmol)のメタノール(1ml)溶液に加え、反応混合物を外界温度で攪拌した。30分後、混合物を蒸発乾固し、残渣を水(2ml)に溶解した。溶液を2N HClで酸性にした。分取HPLCで標記純生成物を白色粉末として得た(収量28mg、収率95.01%)。
【0193】
7(f) 4−[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−N−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチル}−ベンズアミド(化合物10)
酸(化合物6*)−12.5mg、0.031mmol}、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.68mg、0.027mmol)、4−メチルモルホリン(17.4μl、0.124mmol)及びN−[(ジメチルアミノ)プロピル]−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩(8.06mg、0.042mmol)をジメチルホルムアミド(2ml)に溶解した。キレート剤1(13mg、0.037mmol)を加え、反応混合物を24時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗生成物をHPLCで直接精製した(グラジエント00_30_60)。標記生成物は薄褐色のゴムであった(収量2mg、収率9%)。
【0194】
実施例8 化合物11の調製
化合物11の合成は図3に示す。
【0195】
8(a) 2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル
2−アミノ−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(H−D−Val−OtBu.HCl)(500mg、2.38mmol)のアセトニトリル(20ml)攪拌懸濁液に、ピリジン(767μl、9.52mmol)を周囲温度で加えた。透明で無色の溶液が速やかに得られた。次に、塩化4−メトキシル−ベンゼンスルホニル(541mg、2.62mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液を滴下し、薄黄色になった混合物を外界温度で攪拌した。TLC(EtOAc/ヘキサン、1:1)で、反応が3時間後に完了したことが明らかになった。アセトニトリルを蒸発させた後、残渣をジクロロメタン(30ml)に取り込み、10%炭酸水素ナトリウム溶液(30ml)及び水(30ml)で各々1回づつ抽出した。次に層分離し、ジクロロメタン層を乾燥(Na2SO4)、濾過し、蒸発させて粗生成物を得た。(酢酸エチル/ヘキサン、1:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィーで標記純生成物を白色固体として得た。収量801mg(収率93.90%)。
【0196】
8(b) 4−{[(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}安息香酸メチルエステル(化合物7)
2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(140mg、0.41mmol)のアセトニトリル(5ml)攪拌溶液に、炭酸セシウム(1.33g、4.10mmol)を外界温度で加えた。次に、4−(ブロモメチル)安息香酸メチル(115mg、0.50mmol)を懸濁液に加え、反応混合物を70℃で1時間混合した。その時点でTLC(EtOAc/ヘキサン 1:1)モニタリングにより、反応の完了が明らかになった。外界温度に冷却後、混合物を濾過して過剰量の炭酸セシウムを除去し、蒸発乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:1)で精製して標記純生成物を薄黄色油状物として得た。収量153mg(収率76%)。
【0197】
8(c) 4−{[(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}−安息香酸(化合物8*)
ジエステル(化合物7*)(151mg、0.31mmol)をテトラヒドロフラン(2ml)に溶解し、4N LiOH(250μl)を外界温度で加えた。混合物を60℃に5時間加熱した時点で、HPLCモニタリングにより加水分解の完了が明らかになった。混合物を外界温度に冷却し、溶媒を蒸発させた。残渣を水に溶解し、透明溶液をジエチルエーテルで1回抽出した。次に、水相を5℃(氷/水)に冷却し、1N HClで中和した後、酢酸エチル(3×5ml)で抽出した。混合酢酸エチル相を水(5ml)及び食塩水(5ml)で抽出、(Na2SO4)で乾燥、濾過し、蒸発させて標記生成物を白色気泡として得た。収量133mg(収率90%)。
【0198】
8(d) 2−[(4−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチルプロピルアミノ)−エチル]−ペンチルカルバモイル}−ベンジル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物9*)
酸(化合物8*)(61mg、0.13mmol)のジメチルホルムアミド(4ml)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(46μl、0.26mmol)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド、HATU(49mg、0.15mmol)及びC−Pn216(51mg、0.15mmol)を加えた。反応混合物を外界温度で攪拌し、1時間後、HPLCにより新しい生成物への変換の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固した後、フラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール、8:2)で標記純生成物を白色結晶として単離した。収量66mg
8(e) 2−[(4−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチルカルバモイル}−ベンジル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸(化合物10*)
ジクロロメタン(4ml)をtert−ブチルエステル(化合物9*)(64mg、0.08mmol)に加え、得られた乳白色溶液に外界温度で塩酸ガスを10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させて標記生成物をオフホワイト固体として得た。収量58mg(収率97%)。M+1=747。
【0199】
8(f) 4−{[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]メチル}−N−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチル}−ベンズアミド(化合物11)
ヒドロキサム酸を、tert−ブチルジメチルシリルで保護された中間体(化合物11*)を介して結合させた。これに従い、酸(化合物10*)(57mg、0.76mmol)、4−メチルモルホリン(34μl、0.30mmol)、[7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート]PyAOP、40mg、0.076mmol)及びO−(tert−ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン(12mg、0.08mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(4ml)溶液を外界温度で攪拌し、反応をHPLCでモニターした。反応を3時間後に停止し、溶媒を蒸発させた。残渣をジクロロメタンに再溶解し、外界温度で塩酸ガスを混合物に10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させた。HPLCで標記生成物を白色粉末として得、M+Hは762であった。収量15mg。
【0200】
実施例9 化合物18の調製
9(a) 2−[[4−(2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチルカルバモイル)−ベンジル]−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物12*)
酸(化合物8*;140mg、0.30mmol)のジメチルホルムアミド(6ml)溶液にN,N′−ジイソプロピルエチルアミン(104.51μl、0.60mmol)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド、HATU(114mg、0.30mmol)及び2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチルアミン(65.50mg、0.30mmol)を加えた。反応混合物を外界温度で攪拌し、2時間後、HPLCモニタリングで新しい生成物への変換の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固した後、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル)で標記純生成物を無色油状物として単離した。収量142mg(収率70%)。
【0201】
9(b) 2−[[4−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチルカルバモイル)−ベンジル]−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物13*)
0℃(氷/H2O)に冷却したアジ化物(化合物12*;200mg、0.29mmol)のTHF(5ml)攪拌溶液にトリフェニルホスフィン(84mg、0.32mmol)を加えた。この温度で5分攪拌後、冷却浴を除去し、外界温度で19時間攪拌を続けた。次に水(200μl)を加え、15時間後に分析(HPLC)したところ、加水分解の完了が示された。溶媒を蒸発させ、油状残渣をフラッシュクロマトグラフィーで、まずCHCl3/メタノール(8:2)、次いでCHCl3/MeOH/H2Oを用い精製して標記化合物を無色油状物として得た。収量134mg(収率71%)。M+652
9(c) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(4−カルボキシ−ブチリルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステルCA1(化合物14*)
アミン(化合物13*;73mg,0.11mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(39μl,0.22mmol)及び活性エステルである4−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチルカルバモイル}−チオ酪酸2,3,5,6−テトラフルオロ−フェニルエステル(b;85mg、0.11mmol)のジメチルホルムアミド(5ml)溶液を外界温度で2時間攪拌した。その時点でのHPLCモニタリングにより、反応の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH、8:2)で精製して標記生成物をゴムとして得た。収量54mg(収率45%)。
【0202】
9(d) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(4−カルボキシ−ブチリルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸cPn216(化合物15*)
ジクロロメタン(5ml)をtert−ブチルエステル(化合物14*;50mg、0.046mmol)に加え、得られた乳白色溶液に外界温度で塩酸ガスを10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させて標記生成物を白色固体として得た。収量47mg(収率99%)。M+1=1035。
【0203】
9(e) 4−[2−(2−{2−[2−(4−{[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}−ベンゾイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−酪酸cPn216(化合物18)
ヒドロキサム酸官能基を、tert−ブチルジメチルシリルで保護された中間体を介して結合させた。これに従い、酸(化合物15*;47mg、0.045mmol)、4−メチルモルホリン(20μl、0.18mmol)、[7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート]PyAOP(a;23.5mg、0.045mmol)及びO−(tert−ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン(10mg、0.07mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(3ml)溶液を外界温度で攪拌し、反応をHPLCでモニターした。反応を1時間後に停止し、溶媒を蒸発させた。残渣をジクロロメタンに再溶解し、外界温度で塩酸ガスを混合物に10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させた。HPLCで標記生成物を白色粉末として得た。M+Hは1050、収量7mg(収率15%)であった。
【0204】
実施例10 化合物19の調製
10(a) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(2−カルボキシメトキシ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物17*)
アミン(化合物13*;60mg、0.092mmol)、N,N′−ジイソプロピルエチルアミン(96μl、0.55mmol)及びジグリコール酸無水物(66mg、0.55mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(6ml)溶液を外界温度で3時間攪拌した。その時点でHPCモニタリングを行い、反応の完了が明らかになった。溶媒を減圧除去し、残渣を0.1%TFAを含有するアセトニトリルに溶解した。5分間攪拌後、混合物を蒸発乾固し、CHCl3/MeOH/H2O、65:25:4を用いたフラッシュクロマトグラフィーで粗生成物を精製した。標記生成物を白色気泡として得た。収量70.50mg(収率99.80%)。
【0205】
10(b) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(2−カルボキシメトキシ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル−CA1結合体(化合物18*)
酸(化合物17*;70.50mg、0.092mmol)のジメチルホルムアミド(5ml)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(32μl、0.184mmol)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド、HATU(38mg、0.10mmol)及びキレート剤1(CA1;34mg、0.10mmol)を加えた。反応混合物を外界温度で攪拌し、6時間後、HPLCにより新しい生成物への実質的な変換の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固した後、アセトニトリル:水:0.1%トリフルオロ酢酸(10:80:60)を用いた分取HPLCクロマトグラフィーで標記純生成物を白色結晶として単離した。収量21mg(収率21%)。
【0206】
10(c) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(2−カルボキシメトキシ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸−CA1結合体(化合物19*)
ジクロロメタン(3ml)をtert−ブチルエステル(化合物18*;20mg、0.018mmol)に加え、得られた乳白色溶液に外界温度で塩酸ガスを60分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させて標記生成物をオフホワイト固体として得た。収量18mg(収率95%)。M+1=1037。
【0207】
10(d) {[2−(2−{2−[2−(4−{[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}−ベンゾイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−メトキシ}−酢酸−CA1結合体(化合物19)
ヒドロキサム酸を、tert−ブチルジメチルシリルで保護された中間体を介して結合させた。これに従い、酸(化合物19*;18mg、0.017mmol)、4−メチルモルホリン(8μl、0.70mmol)、[7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート]PyAOP(9.4mg、0.017mmol)及びO−(tert−ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン(4mg、0.026mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(2ml)溶液を外界温度で攪拌し、反応をHPLCでモニターした。反応を2時間後に停止し、溶媒を蒸発させた。残渣(化合物20*)をジクロロメタンに再溶解し、外界温度で塩酸ガスを混合物に10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×3ml)と共蒸発させた。HPLCで標記生成物を白色粉末として得、M+Hは1052であった。収量4mg(収率22.35%)。
【0208】
実施例11 化合物1、2、3、16及び17を各々生成するための、化合物10、11、12、18及び19の99mTc標識
SnCl2 10mg及びMDP 90mgを窒素で浄化した生理食塩水100mlに溶解してSnCl2/MDP溶液を調製する。化合物10、11又は12の1つをメタノールに溶解した1mg/ml溶液50μlに、(1)メタノール0.7ml、(2)0.1M炭酸ナトリウム緩衝液0.5ml、(3)500MBq/ml TcO4 0.5ml及び(4)SnCl2/MDP溶液100μlを加える。この反応混合物を37℃で30分加熱して化合物1、2又は3の1つを各々形成する。
【0209】
実施例12 化合物4の調製
化合物4の調製用の合成経路を図6に示す。4μ[123I]NaIの0.05N NaOH溶液4μl(12.04MBq)、化合物13溶液39μl(濃度=1.23g/MeOH 1リットル)及びNCS溶液71μl(NCS=N−クロロスクシンイミド)(濃度=0.579g/注射用水1リットル)を円錐型バイアルに加えた。
【0210】
混合物を1分間ボルテックスした後、暗所で60分間、室温で振とうした。次に、Na2S2O3溶液25μl(濃度=2.00g/注射用水1リットル)を加え、混合物を再度ボルテックスした。
【0211】
溶液を、γ−及びUV検出器並びに対応する20×4mm2のプレカラムを有するNucleosil(登録商標)逆相C−18 5μ 250×4mm2 カラムを備えたグラジエントHPLCクロマトグラフに注入した。
【0212】
HPLC条件:
溶離液A: CH3CN/H2O/TFA 950/50/1
溶離液B: CH3CN/H2O/TFA 50/950/1
時間プログラム: 溶離液Bを45分以内に92%から50%に、次いで10分以内に50%から92%に
流量: 1.5ml/分
λ: 254nm
保持時間(生成物−画分):18.50〜19.80分
この画分を蒸発乾固し、PBS緩衝液200mlに再溶解し、同条件(上記参照)でグラジエントHPLCに再注入した。
【0213】
保持時間(化合物4): 17.40〜18.70分
この生成物の品質管理(HPLC、同条件)では、γ及びUVチャネル中に不純物は現れなかった。放射線化学収量は44%であった。
【0214】
実施例13 化合物5の調製
化合物5は化合物4の125I変種である。[123I]NaIの代わりに[125I]NaIを使用した以外は、実施例12記載の方法で調製した。
【0215】
実施例14 化合物6の調製
2,5−ジヒドロキシ安息香酸0.6mg、アスコルビン酸0.8mg、注射用水20μl及びCuSO4・5H2O溶液5μl(濃度=3.26g/注射用水1リットル)を、化合物14を50μl収容した円錐形バイアル(濃度=2.00g/EtOH 1リットル)に加えた。氷冷した混合物をHe流で10分間脱気した。次に、[125I]NaIの0.05N NaOH溶液4μl(8.68MBq)を加え、ボルテックスした。混合物を113℃まで51分間加熱し、5分毎に振とうした。室温に冷却後、混合物をEtOH 40μlで希釈した。次に、溶液をHPLCクロマトグラフに注入し、実施例10記載のようにHPLCを行った。保持時間(生成物画分):17.18〜19.54分。
【0216】
この画分を蒸発乾固し、CH3CN/H2O/TFA:50/950/1 200μlに再溶解し、グラジエントHPLCに再注入した。保持時間(化合物6):21.05〜21.36分。
【0217】
生成物のHPLCによる品質管理では、γ及びUVチャネル中に不純物は検出されなかった。2回目の品質管理用注入物に化合物9(即ち、非放射性の化合物6)の一定分量を加えることで、保持時間パラメータを認識した。
【0218】
平均放射線化学収率:23%(n=5)。
【0219】
実施例15 化合物7の調製
[125I]NaIの代わりに[123I]NaIを使用する以外は、実施例6と同じ経路を介して化合物7を調製する。
【0220】
実施例16 化合物15の調製
化合物15の調製に使用できる合成経路を図7に示す。
【0221】
合成経路Aでは、フラスコに窒素を入れた後、ジクロロ(ビストリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.1当量)及び酢酸カリウム(3当量)を順次加える。N−メチルピロリドン(5ml)を加えた後、化合物9(1当量)及び水素化トリブチルスズ(2当量)を順次加える。反応混合物を室温で24時間攪拌する。次に反応混合物を酢酸エチルで希釈、水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を蒸発し、標記生成物をHPLC精製で単離する。
【0222】
合成経路Bでは、フラスコに窒素を入れた後、化合物14及び無水トルエンを加える。これにヘキサブチルスズ及びテトラキシトリフェニルホスフィンパラジウムを順次加える。反応混合物を24時間加熱還流して標記生成物を得る。
【0223】
実施例17 化合物7の調製
0.1mM Na127Iの0.01M NaOH溶液10μlを0.2M NH4OAc(pH4)200μlに加えた。次にNa127I/NH4OAc溶液をNa123Iの0.05M NaOH溶液11.0μl(111MBq)に加えた。混合溶液をシラン処理プラスチックバイアルに移しかえた。過酢酸を酢酸に溶解した36〜40重量%溶液5μlをH2O 5mlに加えて、過酢酸の溶液を調製した。次に、調製した過酢酸溶液5μlを、Na123/127Iを収容したバイアルに加えた。最後に、シラン処理プラスチックバイアル中のトリブチルスズ前駆体(化合物15)の3mM溶液17μlを反応混合物に加え、溶液を3分間静置した。
【0224】
化合物7は、γ−及びUV検出器並びに逆相Phenomenex C18(2)Luna 5μ、150×4.6mmカラムを備えたグラジエントHPLCクロマトグラフィーを用いて分析又は精製することができる。
【0225】
HPLC条件
溶離液A:0.1%TFA水溶液
溶離液B:0.1%TFA CH3CN溶液
溶離液Bは20分かけて20%から80%に。
【0226】
20分 80% B
20.2分 100% B
23.2分 100% B
23.7分 20% B
流量: 1ml/分
λ: 254nm
保持時間:7分
実施例18 MMP−2及びMMP−9阻害活性アッセイ
合成広スペクトル蛍光原基質である(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチルpro−Leu−Gly−Leu−(3−(2,4−ジニトロフェニル)−L−2,3−ジアミノ−プロピオニル)−Ala−Arg−NH2(R&D Systems)を使って、既述のMMP−2及びMMP−9活性[Huang et al J.Biol.Chem.272 22086−22091(1997)]をアッセイした。CGS27023並びに化合物8、9、13及び14によるMMP−2及びMMP−9の阻害アッセイは、MMP−2(1nm)又はMMP−9(2nm)、及び様々な濃度(10pm〜1mM)でアッセイすべき該化合物を、0.2M NaCl、5mM CaCl2、20μM ZnSO4及び0.05%食塩水を含有するpH7.5の50mMトリス−HCl中、35〜37℃で30分間予めインキュベートすることで行った。次に、基質(5μM)の一定分量(10μl)を、予めインキュベートした90μMのMMP/化合物混合物に加え、活性を以下の経時的生成物放出により37℃で測定した。蛍光変化のモニタリングは、Fusion Universal Microplate Analyzer(Packard Bioscience)を用い、励起及び放射波長をMMP−2、MMP−9について各々330、390nmに設定して行った。阻害率は、生成物放出が経時的に直線状である最初10分の反応プロファイルから測定した。非線形回帰分析は、Linux用ソフトウェアXMGRACE 5.18を用いて行った。
【0227】
アッセイした化合物について得られたIC50値を下記の表2に示す。
【0228】
【表2】
【0229】
実施例19 ApoE(−/−)マウスモデル
ApoE−/−マウス(4週齢、20〜28g)にキシラジン/ケタミン(Bayer、ドイツ)の腹腔内注射で麻酔をかけた。左総頸動脈を、分岐近傍で5−0シルク(Ethicon)を用いて結紮した。偽手術した対照群では、左総頸動脈の下に縛らずに縫合糸を通した。これらの動物を1週間かけて回復させた後、高コレステロールの食餌(ココファット15%、コレステロール1.0%、コール酸ナトリウム0.5%)を与えた。手術の5週間後、マウスを組織病理学、オートラジオグラフィー及びイメージング調査に使用した。
【0230】
実施例20 組織学及び免疫組織化学
実施例16記載のApoE−/−マウスをLangendorff緩衝液で3分間灌流した。結紮部位並びに左及び右頸動脈を除去し、さらなる切除をせずに液体窒素中でスナップ冷凍した。5つの切片(組織病理学用に10μm)毎のグループを等間隔で回収した。
【0231】
結紮部位並びに左及び右頸動脈の外科標本の連続クリオスタット切片(10μm)を切除し、顕微鏡スライド上で風乾し、3.75%PFA(MMP−9)中に10分間、4℃のアセトン中に10分間(MAC3、550292、BD Pharmingen、カリフォルニア州、米国)固定した。切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。免疫組織化学用に、切片を、抗ペルオキシダーゼ試薬(S2001、DAKO、デンマーク)で10分、1%BSAで25分、バックグラウンド低減成分を有する抗体希釈液(S3022、DAKO、カリフォルニア州、米国)中に室温で1時間おいた一次抗体(2μg/mlウサギ抗マウスMMP−9、AB19047、Chemicon、ドイツ)又は対照抗体(ウサギIgG、E0432、DAKO、デンマーク)で30分インキュベートし、サプライヤーの推奨に従って処理した。ヤギ抗ウサギIgG(H+L)のビオチン結合体(AB132B、1:500、Chemicon、ドイツ)25分。ストレプトアビジン−HRP(LSABキット、K0675、カリフォルニア州、米国)25分、AEC(K0696、DAKO、カリフォルニア州、米国)20分、ヘマトキシリン1分、H2O 1〜2分。
【0232】
免疫組織化学の結果及びオートラジオグラフィーの結果を図8に示す。取り込みはMMP−9の存在と関連していることが明らかである。
【0233】
実施例21 インビボでのオートラジオグラフィー
4匹の結紮されたApoE−/−マウスの眼窩後に、0.5μCi(20MBq)の化合物5の0.9%NaCl 0.2ml溶液及びCGS27023(0.9%NaCl 200μlに溶解した6mM溶液、非特異的に結合)又は食塩水を注射し、その2時間後に放射性リガンドを注射した。マウスは注射2時間後に屠殺した。結紮部位並びに左及び右総頸動脈を素早く除去し、凍結切片を切除した後、厚さ60μmの切片をミクロオートラジオグラフィー用に処理した。
【0234】
オートラジオグラフィーの結果を、実施例17で論じた免疫組織化学の結果と併せて図8に示す。
【0235】
実施例22 インビボでのイメージング
化合物4を眼窩後の静脈叢に注射し、超高解像度コリメータを備えたSiemens MULTISPECT 3ガンマカメラ上で平面イメージングを行った。動画像を1分フレームのオリジナルフレーミングで得て、このフレーミングを分析用に10分フレームに要約した。プラーク領域を環状のROIs(関心領域)により分析し、TACs(時間放射能曲線)を作成した。
【0236】
実験A:9MBqの化合物4の0.9%NaCl 200μl溶液を各マウス(マウス1〜6)に注射し、動画像を注射後120分までに撮影した。TACsを作成し、結紮領域で120分にわたり標識化合物の取り込みが増大したことがわかった(図9参照)。
【0237】
実験B:2日後、CGS27023を0.9%NaCl 200μlに溶解した6mM溶液を前の実験のマウス4及び5に注射し、その2時間後に7.5MBqの化合物4の0.9%NaCl 200μl溶液を注射した。マウス1〜3にも、非放射性予備投与なしに7.5MBqの化合物4の0.9%NaCl 200μl溶液を注射した。動画像を120分にわたって得(図10)、TACsを作成した。マウス4及び5における取り込みを、実験Aの予備投与なしの場合と実験Bの予備投与後とで比較したところ、予備投与した動物での取り込み量がより少ないことがわかった(図11参照)。
【0238】
実験Aでは、肝臓、腎臓、膀胱、脳及び胸郭上に追加のROIsを設定した。各ROIについて、減衰補正したTACsを計算し、注射後10分の放射能、即ち、正規化された秒当たりカウント数に正規化した(図12参照)。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】γ−放射性核種がヨウ素の放射性同位体である、本発明の画像診断剤の放射性合成用の前駆体化合物の調製に使った合成経路を示す図である。これらの放射性ヨウ素標識した画像診断剤の非放射性の変種もまた、この合成経路を経由して調製された。図1の「X」は同図のV及びVIと同定義である。
【図2】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図3】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図4】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図5】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図6】化合物13の放射性ヨウ素標識を介した化合物4の放射性合成を示す図である。
【図7】前駆体である化合物15の調製に使われる2つの代替合成経路を示す図である。
【図8】ApoE(−/−)マウスから採取した左頸動脈のサンプルを用いて行った免疫組織化学の結果を示す図である。HE=ヘマトキシリン及びエオシン。また、化合物5のインビボ注射後のApoE(−/−)マウスから採取した左頸動脈の試料を用いて行ったオートラジオグラフィー(「Autorad」と称する)の結果を示す図でもある。
【図9】化合物4注射後のApoE(−/−)マウス内で形成された画像を示す。
【図10】非放射性化合物を予め投与しなかったApoE(−/−)マウスと非放射性化合物CGS27023を予め投与した後のApoE(−/−)マウスとの、化合物4の取り込みの比較を示す図である。
【図11】実験Aの予備投与なしの場合と実験Bの予備投与後とでのマウス4及び5における取り込みに基づいて作成された時間放射能曲線を示す図である。予備投与した動物での取り込み量がより少ないことがわかった。
【図12】実験AのApoE−/−マウス1〜6の肝臓、腎臓、膀胱、脳及び胸郭の関心領域分析から得られた平均(±SEM)データを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボでの画像診断、特にSPECTイメージングの分野に関する。具体的には、本発明はマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む新規イメージング剤であって、循環器疾患、炎症性疾患及び悪性疾患のインビボでの画像診断に有用な新規イメージング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)とは、細胞外マトリックス(ECM)の分解又は再構築を仲介する、少なくとも20種の亜鉛依存性エンドペプチダーゼのファミリーのことである[Massova et al FASEB J(1998)12 1075−95]。また、MMPファミリーのメンバーは、血管壁の全成分を分解することができるため、ECMの成分の分解を伴う生理現象と病理現象の両方に大きな役割を果たす。MMPsは細胞の挙動を制御する細胞−マトリックス相互作用に干渉することができるため、その活性は細胞の分化、遊走、増殖及びアポトーシスといった様々なプロセスに影響を与える[Nagase and Woessner J.Biol.Chem.(1999)274 21491−4]。生理状況下でのMMP活性を細かく調整する負の調整制御は、必ずしも適切に働くわけではない。MMP活性の不適切な発現は、いくつかの疾患状態における病理機序の一部を構成すると考えられている。そのため、MMPsは、多くの炎症性、悪性及び変性疾患の治療用阻害剤の標的となっている[Whittaker et al Chem.Rev.(1999)99 2735−76]。
【0003】
したがって、MMPsの合成阻害剤は多くの炎症性、悪性及び変性疾患の治療に有用であると考えられている。さらに、MMPsの阻害剤がこれらの疾患の診断に有用であることも示唆されている。国際公開第01/60416号には、アテローム性動脈硬化症、心不全及び再狭窄などの細胞外マトリックス分解に関連する循環器病の診断に有用であるとして提示された化合物が開示されている。同パンフレットに開示の化合物は、診断用金属に結合することが可能なキレート剤に任意のリンカーを介して連結しているMMP阻害剤を含む。好ましいMMP阻害剤、キレート剤及びリンカーは同パンフレットに記載されている。Zhengらの報告[Nuc.Med.Biol.29 761−770(2002)]には、ポジトロン放出断層撮影(PET)トレーサー11C及び18Fで標識したMMP阻害剤の合成が記録されている。同報告に記載の化合物は、乳癌の非侵襲イメージングに有用であると仮定されている。
【特許文献1】国際公開第01/60416号パンフレット
【特許文献2】国際公開第91/01144号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4885363号明細書
【非特許文献1】Massova et al FASEB J(1998)12 1075−95
【非特許文献2】Nagase and Woessner J.Biol.Chem.(1999)274 21491−4
【非特許文献3】Whittaker et al Chem.Rev.(1999)99 2735−76
【非特許文献4】Zheng et al Nuc.Med.Biol.29 761−770(2002)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
画像診断に特に有用であることが判明した、MMP阻害活性を有する新規画像診断剤が開示されている。本発明の別の一態様は、人体の画像診断に有用な医薬組成物である。また、本発明の医薬組成物の調製用キットも開示されている。さらに本発明は、本発明の医薬組成物の、画像診断のための使用を含む。
【0005】
本発明のイメージング剤は、特定のマトリックスメタロプロテイナーゼが関与することが知られている一連の疾患状態(炎症性、悪性及び変性疾患)の、インビボでの画像診断に有用である。
【0006】
これらの疾患状態には以下が含まれる。
【0007】
(a)各種MMPsが過剰発現するアテローム性動脈硬化症。MMP−1、3、7、9、11、12、13及びMT1−MMPのレベルの上昇が、ヒトのアテローム硬化型プラーク内で検出された[S.J.George、Exp.Opin.Invest.Drugs、9(5)、993−1007(2000)及び同論文内の参照文献]。ヒトアテロームでのMMP−2の発現[Z.Li et al、Am.J.Pathol.、148、121−128(1996)]及びMMP−8の発現[M.P.Herman et al、Circulation、104、1899−1904(2001)]もまた報告されている。
【0008】
(b)CHF(Peterson,J.T.et al.Matrix metalloproteinase inhibitor development for the treatment of heart failure、Drug Dev.Res.(2002)、55(1)、29−44では、心不全においてMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−8、MMP−9、MMP−13及びMMP−14が上方制御されることが報告されている)。
【0009】
(c)癌[Vihinen et al、Int.J.Cancer 99、p157−166(2002)では、MMPの癌への関与が概説されており、特にMMP−2、MMP−3、MMP−7及びMMP−9が強調されている]。
【0010】
(d)関節炎[Jacson et al、Inflamm.Res.50(4)、p183−186(2001)「Selective matrix metalloproteinase inhibition in rheumatoid arthritis−targeting gelatinase A activation」では、MMP−2が特に論じられている]。
【0011】
(e)筋萎縮性側索硬化症[Lim et al、J.Neurochem、67、251−259(1996);MMP−2及びMMP−9が関与]。
【0012】
(f)MMP−2、MMP−9及びMMP−13が関係すると報告されている脳転移[Spinale、Circul.Res.、90、520−530(2002)]。
【0013】
(g)MMP−2及びMMP−9が関与すると報告されている脳血管疾患[Lukes et al、Mol.Neurobiol.、19、267−284(1999)]。
【0014】
(h)MMP−2及びMMP−9が患部組織内で同定されたアルツハイマー病[Backstrom et al、J.Neurochem.、58、983−992(1992)]。
【0015】
(i)MMP−2、MMP−3及びMMP−9が関与する神経炎症性疾患[Mun−Bryce et al、Brain.Res.、933、42−49(2002)]。
【0016】
(j)MMP−1、MMP−2、MMP−8及びMMP−9が上方制御されると報告されているCOPD(即ち、慢性閉塞性肺疾患)[Segura−Valdez et al、Chest、117、684−694(2000)]。
【0017】
(k)眼病[Kurpakus−Wheater et al、Prog.Histo.Cytochem.、36(3)、179−259(2001)]。
【0018】
(l)皮膚疾患[Herouy,Y.、Int.J.Mol.Med.、7(1)、3−12(2001)]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の態様は、γ−放射性核種で標識した式Iのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む画像診断剤である。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、R1は水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C6−14アリール、C7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC6−8シクロアルキル環又はC4−6複素環を形成するか、或いはR4と共に5〜7個の原子及びN又はOから選択される1又は2個のヘテロ原子を含有するC4−6複素環を形成し、
R2及びR3は各々独立に水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アミノ、C6−14アリール、C7−20アリールアルキル又はC7−20カルバモイルアリールであり、
R4はC6−14アリール、C4−6ヘテロアリール、C7−20アリールアルキル、C7−20カルバモイルアリール又はアリールカルバモイルアリールであり、
R5は水素又はC1−6アルキルから選択される。
【0022】
ただし、R1がイソプロピル、R3が水素、R4が3−ピリジルの場合、R2はメトキシではない。
【0023】
単独で又は他の基(例えばヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル又はアルコキシアルキル)の一部として用いられる「アルキル」は、本明細書では、任意の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和CxH2x+1基(式中、特に指定がなければ、xは1〜6の整数である。)として定義される。
【0024】
単独で又は他の基の一部として用いられる「アリール」は、本明細書では、単環式又は多環式芳香族炭化水素から誘導される任意のC6−14分子断片又は基として定義される。本発明の好適なアリール基は、任意の位置で置換されていてもよいフェニル又はナフチル基である。
【0025】
「アリールアルキル」は、本発明では、上記定義のアルキル基及びアリール基からなる任意のC7−20基として定義される。
【0026】
「複素環」は、本発明では、1又は2個のヘテロ原子を含むC4−6環式基として定義される。好適なヘテロ原子としてはN及びOが挙げられる。
【0027】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される基を意味する。
【0028】
「アミン」は、本発明では、アミノ又は置換アミノ基を含有する任意の有機基として定義される。
【0029】
本明細書で用いる「γ−放射性核種で標識した」という表現は、式Iの原子又は置換基の1個が、γ−放射性核種を、人工的に富化されたレベルの下部構造に固有の原子として、或いは該γ−放射性核種を結合させるのに適した官能基を介して化学的に結合した追加の必須要素として含むことを意味する。
【0030】
本発明の好ましい画像診断剤は、γ−放射性核種で標識した式Iの化合物を含み、式中、
R1はC1−6アルキル、C6−14アリール又はC7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC4−6複素環を形成し、
R2は水素、ヒドロキシ、メチル、イソプロピル、メトキシ又はハロゲンであり、
R3は水素であり、
R4はピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1はフェニレンであり、R″′はCH2又はC=Oであり、yは0又は1であり、zは0又は1であり、
R5は水素である。
【0031】
ただし、R1がイソプロピル、R4が3−ピリジルの場合、R2はメトキシではない。
【0032】
本発明の最も好ましい画像診断剤は、γ−放射性核種で標識した式Iの化合物を含み、式中、
R1はメチル、イソブチル、イソプロピル、ベンジル又はヒドロキシベンジルであり、
R2はヒドロキシ、ハロゲン又はメトキシであり、
R3は水素であり、
R4はピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1は1,4−フェニレンであり、R″′はCH2又はC=Oであり、yは0又は1であり、zは0又は1であり、
R5は水素である。
【0033】
ただし、R1がイソプロピル、R4が3−ピリジルの場合、R2はメトキシではない。
【0034】
R5が水素の場合、本発明のマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤は、R1基を有する炭素原子にキラル中心を含む。このキラル中心における鏡像異性体は本発明の範囲内であり、好ましいかかる鏡像異性体は、式Iaの鏡像異性体である。
【0035】
【化2】
【0036】
本発明の特に好ましい画像診断剤は、式Iの化合物を含み、式中、該γ−放射性核種は、置換基R1〜R4の1個以上個と置換されているか、それに化学的に結合している。本発明の最も好ましい画像診断剤は、式Iの化合物を含み、式中、R2はスルホンアミドに対してパラ位にあり、R3はスルホンアミドに対してメタ位にある。
【0037】
γ−放射体で標識されていない式Iの化合物は、MacPherson et al J.Med.Chem.1997;2525−32記載の方法に従って容易に合成することができる。
【0038】
本発明の好適なγ−放射性核種は、γ−放射性金属イオン又はγ−放射性ハロゲンである。これらについて、好ましい実施形態及び最も好ましい実施形態を含め、以下、さらに詳細に説明する。
【0039】
本発明のγ−放射性核種が金属イオンの場合、99mTc、111In、113mIn、67Cu又は67Gaから好適に選択される。好ましいγ−放射性金属イオンは、99mTc、67Cu、67Ga及び111Inであり、99mTcが最も好ましい。金属イオンは、好適には、本発明の画像診断剤中に金属錯体として、画像診断剤が式IIの金属錯体結合体となるように存在する。
【0040】
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}−(A)n]m−[金属錯体]
(II)
式中、−(A)n−はリンカー基であり、
nは0〜50の整数であり、
mは1、2又は3である。
【0041】
「金属錯体」という用語は、金属イオンと1個以上の配位子との配位錯体を意味する。金属錯体が「トランスキレート化耐性を有すること」、即ち、金属の配位部位をめぐって競合する可能性のある他の配位子との配位子交換が容易には行われないことが非常に好ましい。競合する可能性のある配位子としては、式Iの化合物に加えて、インビトロの製剤中の賦形剤(例えば、製剤中で用いられる放射線防護剤又は抗菌防腐剤)、或いはインビボの内因性化合物(例えば、グルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)が挙げられる。「リンカー基」(A)nは、式IIaに関する下記定義の通りである。
【0042】
本発明の第2の態様は、放射標識されることで式IIの金属錯体結合体を形成する配位子結合体である。本発明の好ましい配位子結合体は、式IIaの配位子結合体である。
【0043】
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}−(A)n]m−[配位子]
(IIa)
式中、−(A)n−はリンカー基であって、式中、各Aは独立にCR′2、CR′=CR′、C≡C、CH2CH2O、CR′2CO2、CO2CR′2、NR′CO、CONR′、NR′(C=O)NR′、NR′(C=S)NR′、SO2NR′、NR′SO2、CR′2OCR′2、CR′2SCR′2,CR′2NRCR′2、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基、C3−12ヘテロアリーレン基又はアミノ酸であり、
R′はH、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C1−4アルコキシアルキル又はC1−4ヒドロキシアルキルから各々独立に選択され、
nは0〜50の整数であり、
mは1、2又は3である。
【0044】
式II及びIIa中、mは好ましくは1又は2であり、最も好ましくは1である。
【0045】
トランスキレート化耐性を有する金属錯体結合体を形成する、本発明で好適に用いられる配位子としては、(金属ドナー原子を連結する炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位骨格を有することで)5員環又は6員環のキレート環を形成するように、2〜6個、好ましくは2〜4個の金属ドナー原子が配置されているキレート剤、或いは、イソニトリル、ホスフィン又はジアゼニドなどの、金属イオンと強力に結合するドナー原子を含む単座配位子が挙げられる。キレート剤の一部として金属によく結合するドナー原子の種類は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンが挙げられる。ホスフィンは強い金属錯体を形成するため、単座又は二座のホスフィンでも好適な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドは、その線状の幾何配置のため、それ自体容易にはキレート剤には組み込まれにくいため、通常は単座配位子として用いられる。好適なイソニトリルとしては、例えば、tert−ブチルイソニトリルなどの単純アルキル、及びMIBI(即ち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)などのエーテル置換イソニトリルが挙げられる。好適なホスフィンとしては、テトロフォスミン、及びトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンなどの単座ホスフィンが挙げられる。好適なジアゼニドとしては、HYNIC系の配位子、即ちヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドが挙げられる。
【0046】
トランスキレート化耐性を有する金属錯体を形成する、テクネチウム用の好適なキレート剤としては、下記の化合物が挙げられるが、それだけには限定されない。
【0047】
(i)式IIIのジアミンジオキシム。
【0048】
【化3】
【0049】
式中、E1〜E6は各々独立にR″基であり、
各R″はH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアリール、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキル、C2−10カルボキシアルキル若しくはC1−10アミノアルキルであるか、或いは2個以上のR″基がそれらが結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものであり、1個以上のR″基は式Iの化合物に結合し、
Qは式−(J)f−の架橋基であり、
式中、fは3、4又は5であり、各Jは独立に−O−、−NR″−又は−C(R″)2−である。ただし、−(J)f−は−O−又は−NR″−である最大1個のJ基を含有する。
【0050】
好ましいQ基は以下の通りである。
【0051】
Q=−(CH2)(CHR″)(CH2)−、即ちプロピレンアミンオキシム、又はPnAO誘導体、
Q=−(CH2)2(CHR″)(CH2)2−、即ちペンチレンアミンオキシム、又はPentAO誘導体、
Q=−(CH2)2NR″(CH2)2−。
【0052】
E1〜E6は、C1−3アルキル、C4−10アルキルアリール、C2−3アルコキシアルキル、C1−3ヒドロキシアルキル、C1−2フルオロアルキル、C1−3カルボキシアルキル又はC1−3アミノアルキルから好ましく選択される。最も好ましくは、各E1〜E6基はCH3である。
【0053】
式Iの化合物は、E1又はE6のR″基、或いはQ部分のR″基に結合することが好ましい。最も好ましくは、式Iの化合物はQ部分のR″基に結合する。式Iの化合物がQ部分のR″基に結合する場合、R″基は橋頭位にあることが好ましい。その場合、Qは−(CH2)(CHR″)(CH2)−、−(CH2)2(CHR″)(CH2)2−又は−(CH2)2NR″(CH2)2−であることが好ましく、−(CH2)2(CHR″)(CH2)2−であることが最も好ましい。
【0054】
特に好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレート剤は、以下の構造を有し、
【0055】
【化4】
【0056】
それにより式Iの化合物は、橋頭の−CH2CH2NH2基を介して結合する。本明細書の残りの部分では、この二官能性ジアミンジオキシムキレート剤をキレート剤1又はCA1と呼ぶ。
【0057】
(ii)MAG3(メルカプロアセチルトリグリシン)などのチオールトリアミドドナーセットを有するN3S配位子及び関連配位子、又はPICAなどのジアミドピリジンチオールドナーセットを有するN3S配位子。
【0058】
(iii)BAT若しくはECD(即ち、エチルシステイネートダイマー)などのジアミンジチオールドナーセット、又はMAMAなどのアミドアミンジチオールドナーセットを有するN2S2配位子。
【0059】
(iv)シクラム、モノオキソシクラム又はジオキソシクラムなどのテトラミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミンドナーセットを有する開環又は大環状配位子であるN4配位子。
【0060】
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN2O2配位子。
【0061】
上記配位子は、99mTcと錯体を形成するのに特に好適であり、Jurisson et al[Chem.Rev.(1999)99 2205−2218]により詳しく記載されている。他の好適な配位子はSandozの国際公開第91/01144号に記載されており、同パンフレットにはインジウム及びガドリニウムに特に好適な配位子、とりわけ大環状アミノカルボン酸塩及びアミノホスホン酸配位子が含まれている。ガドリニウムの非イオン性(即ち、中性)金属錯体を形成する錯体が知られており、米国特許第4885363号に記載されている。放射性金属イオンがテクネチウムの場合、配位子は四座配位子であるキレート剤であることが好ましい。テクテニウム用の好ましいキレート剤は、ジアミンジオキシム、或いは上記のN2S2又はN3Sドナーセットを有するキレート剤である。テクテニウム用の特に好ましいキレート剤はジアミンジオキシムである。
【0062】
式IIのリンカー基−(A)n−の役割は、式Iの化合物の活性部位から、比較的嵩高な金属錯体を引き離すことにあり、それによって該化合物のMMP酵素への結合が妨げられることがなくなると予想されている。これは、それにより嵩高な基が自ら活性部位から離れる自由を有する、屈曲性のある鎖(例えば、単純アルキル鎖)、及び/又は、金属錯体が活性部位から離れるよう方向付ける、シクロアルキル若しくはアリールスペーサーなどの強固なスペーサーの組合せにより達成可能である。
【0063】
リンカー基の性質は、得られる金属錯体コンジュゲートの体内分布を改変するのに用いることもできる。したがって、例えばリンカー中へのエーテル基の導入により、血漿タンパク質の結合が最小限に抑えられる。いくつかの連結した−CH2CH2O−基を含むリンカー(PEGリンカー)又は1〜10個のアミノ酸のペプチド鎖を含むリンカーは、特定の化合物の臨床特性、とりわけ体内分布の好ましい改変を可能にするさらなる特性を有する。かかる「生体改変」リンカー基は、筋肉又は肝臓などの背景組織、及び/又は血液からのイメージング剤の除去を促進でき、したがって、背景による干渉がより少なくなるため、より良い診断画像が得られる。生体改変リンカー基は、特定の排泄経路を選択するために、例えば肝臓ではなく腎臓を選択するためにも用いることができる。
【0064】
アルキレン基又はアリーレン基などの非ペプチドリンカー基は、それと結合した式Iの化合物との間で著しい水素結合相互反応が生じないため、リンカーが式Iの化合物を包み込むことがないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は−(CH2)q−(式中、qは2〜5)である。好ましいアリーレンスペーサーは式IVのアリーレンスペーサーである。
【0065】
【化5】
【0066】
式中、a及びbは独立に0、1又は2である。
【0067】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖を含まない場合、好ましいリンカー基−(A)n−は、2〜10個の原子、最も好ましくは2〜5個の原子、特に好ましくは2又は3個の原子からなる−(A)n−部分を構成する連結した原子の主鎖を有する。2個の原子からなる最小のリンカー基主鎖でも、キレート剤が式Iの化合物から十分に隔てられ、それにより任意の相互反応が最小限に抑えられるという利点が得られる。リンカー基がPEGリンカーの場合、−(A)n−中のA基の数nは最大50、好ましくは15〜30である。リンカーがペプチド鎖を含む場合、1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖であることが好ましく、アミノ酸残基はグリシン、リジン、アスパラギン酸又はセリンから選択されることが好ましい。
【0068】
結合が血液中で容易に代謝されないように、式Iの化合物が金属錯体に結合していることが非常に好ましい。そうでなければ、該化合物が所望のインビボの標的部位に到達する前に、金属錯体が開裂してしまうためである。そのため、式Iの化合物は、容易に代謝されない結合を介して、本発明の金属錯体と共有結合していることが好ましい。
【0069】
γ−放射性金属イオンで標識した本発明の最も好ましい化合物は、CA1に配位した99mTcで標識した本発明の化合物であり、CA1は、好適な化学官能基を介して、任意のリンカーと、式IのR1〜R4の置換基の1個において結合している。99mTcで標識した本発明の好ましい化合物としては、例えば下記に例示の通りである(Tcは構造中の99mTcを意味する)。
【0070】
【化6】
【0071】
[0]γ−放射性核種が放射性ハロゲンの場合、ヨウ素の同位体であることが好ましく、画像診断剤は、前駆体とヨウ素のγ−放射性同位体とを反応させることで有用に調製される。かかる前駆体は以下で詳しく説明し、本発明の第4の態様とする。本発明の好ましいヨウ素のγ−放射性同位体は123I又は131Iである。
【0072】
ヨウ素のγ−放射性同位体は、直接共有結合を介して、ベンゼン環などの芳香環又はビニル基に結合していることが好ましい。飽和脂肪族環系に結合しているヨウ素原子は、インビボで代謝される傾向にあり、そのためヨウ素のγ−放射性同位体が失われる傾向にあるためである。最も好ましくは、ヨウ素のγ−放射性同位体は、直接共有結合を介して式Iの−NSO2−フェニル環に結合している。
【0073】
ヨウ素のγ−放射性同位体で標識した、本発明の特に好ましい画像診断剤は、式Iの化合物であって、式中、
(i)R1はイソプロピルであり、R2は4−OHであり、R3は3−123Iであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物4)であるか、
(ii)R1はイソプロピルであり、R2は4−123Iであり、R3はHであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物7)であるか、
(iii)R1はイソプロピルであり、R2は4−(4−[123I]ヨードベンズアミド)であり、R3はHであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物20)であるか、
(iv)R1は4−ヒドロキシ−3−[123I]ヨードベンジルであり、R2は4−ヨードであり、R3はHであり、R4はピリジル(R4が3−ピリジルの場合、化合物21)であるか、或いは
(v)R1はイソプロピルであり、R2は4−ヨードであり、R3は3−Hであり、R4は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−(Ar2)であって、Ar1は1,4−フェニレンであり、Ar2は4−[123I]ヨードフェニルであり、R″′はCH2又はC=Oであり、yは0又は1であり、zは0又は1であり、
R4がピリジルの場合、3−ピリジルであることが好ましい化合物である。
【0074】
放射性ヨウ素化MMP阻害剤の非放射性類似体は、MMP−2に対して優れた阻害作用を示し、IC50値は化合物9(表1)では2.5nMであり、化合物8(表1)では320nMである。これらの非放射性類似体はまた、MMP−9に対しても優れた阻害作用を示し、IC50値は化合物9では4.6nMであり、化合物8では153nMである。そのため、本発明の化合物は、インビボでのMMP活性のイメージングに成功することが予想できる、インビトロでの特性を有する。そのため、これらの新規放射性トレーサーをSPECTと組み合わせて用いることで、インビボで非侵襲的にMMP活性をイメージングするための革新的な手段が提供される。動物モデルにおけるイメージング調査により、本発明の薬剤がインビボでのMMP活性の画像診断に好適であることがさらに証明される。
【0075】
第3の態様では、本発明は、前記の画像診断剤を、生体適合性担体と共に、哺乳動物への投与に適した形態で含む医薬組成物を提供する。「生体適合性担体」とは、画像診断剤がそれに懸濁又は溶解することで、該組成物が生理的に許容できるようになる、即ち、毒性又は不当な不快感なしに哺乳動物の身体に投与可能になる、流体、特に液体のことである。生体適合性担体は、好適には、発熱物質を含まない注射用の滅菌水などの注射可能な液体担体、(注射用の最終製品が等張性を有するように、又は低浸透圧性を有さないように、平衡化されていると有利である)食塩水などの水溶液、1種以上の張度調節物質(例えば、生体適合性対イオンを有する血漿カチオン)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセリン)、或いは他の非イオン性ポリオール材料(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液である。
【0076】
本発明の第4の態様は、本発明の放射性ヨウ素化画像診断剤の調製に有用な前駆体であって、該画像診断剤を得るためのヨウ素のγ−放射性同位体との反応に好適な基を含む前駆体である。放射性ヨウ素化画像診断剤の調製に好適な前駆体は、ヨウ化又は臭化アリールなどの(放射性ヨウ素との交換を許容する)非放射性ハロゲン原子、活性化アリール環(例えば、フェノール基)、有機金属前駆体化合物(例えば、トリアルキルスズ又はトリアルキルシリル)、或いはトリアゼンなどの有機前駆体を含む、式Iの化合物である。ヨウ素のγ−放射性同位体を導入する方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm.2002 45 485−528]に記載されている。ヨウ素のγ−放射性同位体が結合できる好適なアリール基としては、例えば下記のアリール基が挙げられる。
【0077】
【化7】
【0078】
好適なアリール基が存在する本発明の好ましい前駆体化合物としては、例えば下記に例示の通りである。
【0079】
【化8】
【0080】
上記で論じた好適なアリール基は両方とも、芳香環上にヨウ素で容易に置換可能な置換基を含有する。ヨウ素のγ−放射性同位体を含有する代替の置換基は、例えば、下記のような放射性ハロゲン交換を介した直接ヨウ素化により合成することができる。
【0081】
【化9】
【0082】
第5の態様では、本発明は、本発明の医薬組成物の調製用キットを提供する。本発明の医薬組成物がγ−放射性金属で標識した画像診断剤を含む場合、該キットは(i)γ−放射性金属の配位に適した配位子と結合した式Iの化合物を含む配位子結合体、及び(ii)生体適合性還元剤を含む。本発明の医薬組成物がヨウ素のγ−放射性同位体で標識した画像診断剤を含む場合、該キットはヨウ素のγ−放射性同位体との反応に適した基を含む式Iの化合物である前駆体を含み、それにより該前駆体と、通常はヨウ化物の形態であるヨウ素のγ−放射性同位体との反応で、該画像診断剤が得られる。
【0083】
かかるキットは、例えば直接注射を介してヒトの血流に投与するのに適した無菌の放射性医薬品が得られるよう設計されている。99mTcについて、キットは凍結乾燥されていることが好ましく、99mTc放射性同位体発生装置からの無菌99mTc−パーテクネテート(TcO4−)で再構築され、さらに操作を行わずにヒト投与に適した溶液が得られるよう設計されている。好適なキットは、遊離塩基又は酸性塩の形態の配位子又はキレート剤結合体を、亜二チオン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、第1スズイオン、Fe(II)又はCu(I)などの生体適合性還元剤と共に収容する容器(例えば、隔壁が封着されているバイアル)を含む。生体適合性還元剤は、塩化第1スズ又は酒石酸第1スズなどの第1スズ塩であることが好ましい。或いは、キットは、放射性金属の付加時にトランスメタレーション(即ち、金属交換)されて所望の生成物を与える金属錯体を含んでもよい。
【0084】
キットは、トランスキレート剤、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調節剤又は充填剤などの追加の成分をさらに含んでもよい。「トランスキレート剤」とは、急速に反応してテクネチウムと弱い錯体を形成し、次いで配位子により置換される化合物のことである。これにより、錯体化テクネチウムと競合するパーテクネテートが急速に還元されるため、還元・加水分解したテクネチウム(RHT)が形成される危険性が最小限に抑えられる。好適なかかるトランスキレート剤は、弱有機酸、即ちpKaが3〜7の範囲の有機酸と生体適合性カチオンとの塩である。適切なかかる弱有機酸は、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、安息香酸、フェノール又はホスホン酸である。したがって、好適な塩は酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、フェノール塩又はホスホン酸塩である。好ましいかかる塩は酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩又はホスホン酸塩であり、最も好ましくはホスホン酸塩であり、特に好ましくはジホスホン酸塩である。好ましいかかるトランスキレート剤は、MDP、即ちメチレンジホスホン酸と生体適合性カチオンとの塩である。
【0085】
「生体適合性カチオン」という用語は、イオン化され、負の電荷を有する基と塩を形成する正の電荷を有する対イオンを意味し、この正の電荷を有する基もまた無毒であり、したがって哺乳動物の身体、特に人体への投与に適している。好適な生体適合性カチオンとしては、例えばアルカリ金属のナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属のカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンが挙げられる。好ましい生体適合性カチオンはナトリウム及びカリウム、最も好ましくはナトリウムである。
【0086】
「放射能防護剤」とは、水の放射線分解で生じる含酸素フリーラジカルなどの高反応性フリーラジカルを捕捉することにより、酸化還元プロセスなどの分解反応を阻害する化合物を意味する。本発明の放射能防護剤は、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、及びその前記の生体適合性カチオンとの塩から好適に選択される。
【0087】
「抗菌防腐剤」という用語は、細菌、酵母又はカビなどの有害の可能性がある微生物の増殖を阻害する薬剤を意味する。抗菌防腐剤は、用量に応じていくつかの殺菌特性をも発揮し得る。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、再構築後の医薬組成物、即ち、放射性診断用製品自体において、任意のかかる微生物の増殖を抑制することにある。しかしながら、抗菌防腐剤を、再構築前の本発明のキットの1種以上の成分中で、有害の可能性がある微生物の増殖を抑制するために用いてもよい。好適な抗菌防腐剤としては、パラベン、即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはその混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオマーサルが挙げられる。好ましい抗菌防腐剤はパラベンである。
【0088】
「pH調節剤」という用語は、再構成されたキットのpHがヒト又は哺乳動物への投与に許容される範囲(約pH4.0〜10.5)内にあることを確実にするのに有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調節剤としては、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]などの製薬的に許容される緩衝液、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はその混合物などの製薬的に許容される塩基が挙げられる。配位子結合体を酸性塩の形態で用いる場合、pH調節剤を別のバイアル又は容器内に入れて、多段階法の一部としてキットの使用者がpHを調節できるようにしてもよい。
【0089】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥中の原料の取り扱いを容易にできる、製薬的に許容される増量剤を意味する。好適な賦形剤としては、塩化ナトリウムなどの無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースなどの水溶性の糖又は糖アルコールが挙げられる。
【0090】
本発明の第6の態様は、本発明の医薬組成物の、循環器疾患の画像診断のための使用である。本発明の医薬組成物は、アテローム性動脈硬化症及びCHFの画像診断に特に有用である。本発明の画像診断剤の使用により、活性プラーク負荷が同定されて、冠動脈疾患の発症が分かっているか又は疑わしい患者、即ち、疼痛又は疼痛の病歴を有する患者、或いは危険性が高いことが確認されたが無症候である患者の危険性が層別化される。また、本発明の画像診断剤により、症候性の患者の脆弱なプラークが同定されて、狭窄に関係なく急性心筋梗塞又は脳卒中の高い危険性が確認され、患者が胸痛を呈する場合でも危険性が直ちに層別化される。さらに、脆弱なプラークの血管形成術は危険性が高く、術後に動脈塞栓症を引き起こすおそれがある。したがって、このサブタイプのプラークのイメージングにより、術後合併症を減少させることができる。
【0091】
本発明の第7の態様は、本発明の医薬組成物の、炎症性疾患の画像診断、特にCOPDの画像診断のための使用である。
【実施例】
【0092】
実施例1には、非放射性の従来技術化合物CGS27023の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0093】
実施例2には、いずれも本発明の画像診断剤である化合物6及び7の非放射性の変種である化合物9の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0094】
実施例3には、実施例14及び15記載の化合物6及び7の調製に用いられる前駆体である化合物14の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0095】
実施例4には、実施例12及び13記載の化合物4及び5の調製に用いられる前駆体である化合物13の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0096】
実施例5には、いずれも本発明の画像診断剤である化合物4及び5の非放射性の変種である化合物8の合成に使われた合成経路が記載されている。
【0097】
実施例6には、いずれも本発明の画像診断剤である化合物1、2、3、16及び17中に99mTcを配位させるのに用いられるキレート剤であるCA1の調製に使われた合成が記載されている。
【0098】
実施例7には、99mTcで標識されて化合物1を生成することができる配位子結合体である化合物10の合成に使われた合成経路が記載されている。
【0099】
実施例8には、99mTcで標識されて化合物2を生成することができる配位子結合体である化合物11の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0100】
実施例9には、99mTcで標識されて化合物16を生成することができる配位子結合体である化合物18の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0101】
実施例10には、99mTcで標識されて化合物17を生成することができる配位子結合体である化合物19の調製に使われた合成経路が記載されている。
【0102】
実施例11には、化合物10、11、12、18及び19を99mTcで標識する方法が記載されている。
【0103】
実施例12には、化合物13を123Iで標識することによる化合物4の調製が記載されている。実施例13では、実施例12と同じ調製方法を使って化合物5を得たが、実施例13では化合物13を125Iで標識した。
【0104】
実施例14には、前駆体である化合物14を用いた化合物6の放射性合成が記載されている。実施例15では、実施例14と同じ放射性合成を使って化合物7を調製した。化合物6及び7はいずれも本発明の画像診断剤である。
【0105】
実施例16には、化合物6及び7の放射性合成に適した前駆体である化合物15の合成が記載されている。
【0106】
実施例17には、トリブチルスズ前駆体である化合物15からの化合物7の放射性合成が記載されている。
【0107】
実施例18には、本発明の化合物の、MMP−2及びMMP−9を阻害する能力を評価するために使われたアッセイが記載されている。表2の結果からは、本発明の画像診断剤の非放射性の変種(化合物8及び9)が従来技術化合物と同程度のMMP阻害活性を有することが明らかになる。これにより、これらの化合物(化合物2〜5)の非放射性の変種を、MMPが関与する疾患状態における画像診断剤に使用できることが証明される。
【0108】
実施例19には、本発明の化合物のインビボ特性の評価に使われたApoE(−/−)マウスモデルが記載されている。
【0109】
実施例20には、組織学及び免疫組織化学用組織サンプルの調製に使われた方法が記載されている。実施例21には、オートラジオグラフィー用サンプルの調製に使われた方法が記載されている。図8に示すこれらの実験の結果から、化合物5の取り込みがMMP−9の存在と関連があることが証明される。
【0110】
実施例22には、マウスにおいてインビボイメージング調査を行った方法が記載されている。実験では、結紮を行った領域で120分にわたって化合物4の取り込みが増大したことが証明され、化合物4が病変部に特異的に取り込まれたことを示唆している。また、非放射性の従来技術化合物CGS27023を予め投与したApoE−/−マウスでは、化合物4が同様には取り込まれなかったことも証明され、化合物4がCGS27023と同様の結合特性を有することを示唆している。関心領域の分析により調査した化合物4の生体分布では、腎排泄及び肝排泄を介して血液から迅速に排除されたこと、同時期に胸腔及び脳で目立ったシグナルがみられなかったことが明らかになった(図12)。かかる除去特性は画像診断剤に好適である。
【0111】
本明細書で例示した化合物の多くは式Iの化合物であり、便宜のため次頁の表1で定義する。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1 CGS27023(従来技術)の調製
MacPherson et al[J.Med.Chem.1997、40;2525−2532]記載の合成の変法によりCGS27023を合成した。
【0114】
本合成は、市販のバリンt−ブチルエステルとフェニルスルホニルクロリドとを反応させることで開始した。一方、MacPhersonらの合成は、保護されていないバリンとフェニルスルホニルクロリドとを反応させ、次にt−ブチルエステルとして酸官能基を保護することで開始する。本合成の残りはMacPhersonらの報告と同じであった。使用した合成経路を図1に示す。CGS27023の場合、Xはメトキシである。
【0115】
収率94%
融点156〜158°
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:10.76(広幅,s,1H,OH)、8.52(m,2H,HAryl)、8.18(d,3J=8.1Hz,1H,HAryl)、7.69(dd,3J1=8.1Hz,3J2=5.6Hz,1H,HAryl)、7.47(d,3J=8.9Hz,2H,HAryl)、6.82(d,3J=8.9Hz,2H,HAryl)、4.72(d,2J=16.7Hz,1H,CH2)、4.52(d,2J=16.7Hz,1H,CH2)、3.63(s,3H,OCH3)、3.64(d,3J=10.4Hz,1H,N−CH)、1.85〜1.71(m,1H,CH(CH3)2)、0.59(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)、0.42(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0116】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.22、163.01、144.91、142.01、141.14、138.78、131.48、129.59、126.52、114.72、63.35、56.12、45.04、28.09、19.50、19.29。
【0117】
実施例2 化合物9の調製
図1のXをIとして、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ方法で、化合物9を調製した。
【0118】
収率:粗生成物56%。これをアセトニトリルから再結晶して36%の無色固体が得られる。
【0119】
融点169℃。
【0120】
1H−NMR(400MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:10.87(広幅,s,1H,OH)、8.80(m,2H,HAryl)、8.45(d,3J=8.3Hz,1H,HAryl)、7.96(dd,3J1=8.1Hz,3J2=6.0Hz,1H,HAryl)、7.90(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、7.52(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、4.95(d,2J=16.9Hz,1H,CH2)、4.74(d,2J=16.9Hz,1H,CH2)、3.83(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.05〜1.93(m,1H,CH(CH3)2)、0.78(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)、0.59(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0121】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.95、145.67、143.58、142.69、140.27、139.47、139.18、129.96、127.45、102.99、64.51、46.16、29.11、20.51、20.24。
【0122】
MALDI−TOF:490(M−HCl+H+)。
【0123】
元素分析:C17H21lClN3O4S:C 38.83、H 4.03、N 7.99。実測値:C 38.67、H 3.85、N 7.94。
【0124】
実施例3 化合物14の調製
図1のXをBrとして、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ方法で、化合物14を調製した。
【0125】
収率:無色固体51%。
【0126】
融点:169〜170℃。
【0127】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:11.03(広幅,s,1H,OH)、8.80(m,2H,HAryl)、8.42(d,3J=8.1Hz,1H,HAryl)、7.93(dd,3J1=8.0Hz,3J2=5.9Hz,1H,HAryl)、7.90(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、7.52(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、4.98(d,2J=16.6Hz,1H,CH2)、4.77(d,2J=16.6Hz,1H,CH2)、3.88(d,3J=10.5Hz,1H,N−CH)、2.08〜1.95(m,1H,CH(CH3)2)、0.81(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)、0.63(d,3J=6.5Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0128】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:165.91、145.13、142.02、141.17、138.91、138.47、132.67、129.39、127.51、126.66、63.54、45.18、28.12、19.51、19.23。
【0129】
MALDI−TOF:466(M−HCl+Na+)、464(M−HCl+Na+)、444(M−HCl+H+)、442(M−HCl+H+)。
【0130】
元素分析:C17H21BrClN3O4Sの計算値:C 42.64、H 4.42、N 8.78。実測値C 42.60、H 4.20、N 8.52。
【0131】
実施例4 化合物13の調製
XがBnOである図1の式V(N−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ベンジルオキシフェニル)スルホニル](3−ピコリル)アミノ]−3−メチルブタンアミド)から、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ経路を介して、化合物13の合成を行った。
【0132】
図1の式V(式中、XはBnO)に対応する化合物1.20g(2.28mmol)を無水メタノール30mlに溶解し、Pd/C(10%)110mgで処理し、H2雰囲気下で66時間攪拌した。触媒を濾別し、エタノール80mlで洗浄した。溶媒を蒸発させ、固体残渣を減圧乾燥した。クロロホルムから再結晶させて、無色の微結晶生成物である図1の式V(式中、XはOH)(N−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシフェニル)スルホニル](3−ピコリル)アミノ]−3−メチル−ブタンアミド)を797mg(1.83mmol、80%)得た。
【0133】
融点160〜162℃。
【0134】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:10.74(s,1H,OH)、8.64(s,1H,HAryl)、8.54(m,1H,HAryl)、7.83(d,3J=7.9Hz,1H,HAryl)、7.63(d,3J=8.7Hz,2H,HAryl)、7.37(dd,3J1=7.8Hz,3J2=4.8Hz,1H,HAryl)、6.91(d,3J=8.7Hz,2H,HAryl)、4.80(s,2H,CH2)、4.09(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.09〜1.97(m,1H,CH(CH3)2)、1.22(s,9H,C(CH3)3)、0.93(d,3J=6.3Hz,3H,CH(CH3)2)、0.86(d,3J=6.3Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0135】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:168.14、161.56、150.30、148.49、136.64、133.85、130.87、129.43、123.18、115.78、81.04、63.07、45.52、28.56、26.60、19.59、19.20。
【0136】
MALDI−TOF:474(M+K+)、458(M+Na+)、436(M+H+)。
【0137】
図1の式V(式中、XはOH)600mg(1.38mmol)を、エタノール80μl(1.38mmol)を含有するジクロロエタン30ml中に溶解した。溶液を−10℃に冷却し、塩酸を3時間吹き込んだ。反応容器を密封し、混合物を室温まで加熱した。2日間攪拌後、溶媒の体積を蒸発により3分の1まで減少させ、残渣をエーテルで処理した。得られた懸濁液を激しく4時間攪拌した。沈殿物を吸引濾過により回収し、減圧乾燥して化合物13を562mg(1.35mmol、98%)、無色の粉末固体として得た。
【0138】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:11.13(s,1H,OH)、10.83(s,1H,OH)、8.96(s,2H,HAryl)、8.59(d,3J=8.0Hz,1H,HAryl)、8.11(dd,3J1=7.7Hz,3J2=5.9Hz,1H,HAryl)、7.77(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、7.06(d,3J=8.6Hz,2H,HAryl)、5.11(d,2J=16.8Hz,1H,CH2)、4.90(d,2J=16.8Hz,1H,CH2)、4.01(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.25〜2.12(m,1H,CH(CH3)2)、0.99(d,3J=6.4Hz,3H,CH(CH3)2)、0.81(d,3J=6.4Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0139】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.32、162.04、144.85、142.09、141.17、138.99、129.72、129.59、126.45、115.93、63.30、44.98、28.08、19.49、19.33。
【0140】
MALDI−TOF:402(M−HCl+Na)+。
【0141】
実施例5 化合物8の調製
XがOHである図1の式V(N−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシフェニル)スルホニル](3−ピコリル)アミノ]−3−メチル−ブタンアミド)から、実施例1でCGS27023について記載したものと同じ経路を介して、化合物8の合成を行った。
【0142】
図1の式V(式中、XはOH)1.00g(2.30mmol)を、メタノール40mlに溶解し、炭酸ナトリウム1.22g(11.5mmol)で処理した。溶液を氷浴中で冷却し、一塩化ヨウ素をメタノールに溶解させた1M溶液2.3mlを1時間にわたって滴下した。滴下中、溶液の深紅色がほぼ即時に消失した。混合物を室温にして、終夜攪拌した。懸濁液を濾過した後、濾液を10%チオ硫酸ナトリウム溶液4mlで処理し、1N H2SO4でpH7に調節した。エーテルで抽出後、混合抽出物を食塩水で洗浄、乾燥した(Na2SO4)。エーテル溶液を減圧濃縮してN−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)スルホニル](3−ピコリル)−アミノ]−3−メチルブタンアミド900mgを得た。これは薄桃色固体であり、さらに精製することなく次のステップに使用した。
【0143】
粗製のN−(tert−ブチルオキシ)−2(R)−[[(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)スルホニル](3−ピコリル)−アミノ]−3−メチルブタンアミド900mgを、エタノール93μlを含有するジクロロメタン150mlに溶解させた。溶液を−10℃に冷却し、塩酸を1.5時間吹き込んだ。反応容器を密封し、混合物を室温まで加熱した。室温で19時間攪拌後、溶媒を蒸発により約20mlに減少させ、残渣をエーテル約50mlで処理した。得られた懸濁液を激しく1〜2時間攪拌した。沈殿物を吸引濾過で回収し、減圧乾燥して無色から薄黄色の粉末固体830mgを得た。メタノール/アセトニトリル(1:1)で2回再結晶させて、純化合物8を150mg得た。
【0144】
収率:12%(2段階にわたる)。
【0145】
融点:201〜203℃。
【0146】
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:11.70(広幅,s,1H,OH)、11.03(広幅,s,1H,OH)、8.86(s,1H,HAryl)、8.84(s,1H,HAryl)、8.45(d,3J=8.1Hz,1H,HAryl)、7.98(dd,3J1=8.3Hz,3J2=5.7Hz,1H,HAryl)、7.96(d,3J=2.3Hz,1H,HAryl)、7.69(d,3J=8.6Hz,1H,HAryl)、7.10(d,3J=8.6Hz,1H,HAryl)、4.98(d,2J=16.5Hz,1H,CH2)、4.82(d,2J=16.5Hz,1H,CH2)、3.89(d,3J=10.6Hz,1H,N−CH)、2.15〜2.02(m,1H,CH(CH3)2)、0.87(d,3J=6.6Hz,3H,CH(CH3)2)、0.69(d,3J=6.6Hz,3H,CH(CH3)2)。
【0147】
13C−NMR(75.5MHz,DMSO−D6):δ[ppm]:166.25、161.32、144.95、142.22、141.36、138.72、138.12、131.33、129.15、126.44、115.16、84.87、63.33、45.03、28.05、19.50、19.31。
【0148】
元素分析:C17H21IN3O5SClの計算値:C 37.69、H 3.90、N 7.76;実測値:C 37.84、H 4.42、N 7.39。
【0149】
実施例6 キレート剤1の調製
6(a) 3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル
カルボメトキシメチレントリフェニルホスホラン(167g、0.5mol)のトルエン(600ml)溶液を3−オキソグルタル酸ジメチル(87g、0.5mol)で処理し、反応液を120℃の油浴上、窒素雰囲気下で100℃に36時間加熱した。次に、反応液を減圧濃縮し、油状残渣を40/60石油エーテル/ジエチルエーテル1:1、600mlで粉砕した。トリフェニルホスフィンオキシドを沈殿除去し、上澄液をデカント/濾別した。減圧蒸発させた残渣を高真空下、沸点でKugelrohr蒸留して(0.2torrでオーブン温度180〜200℃)、3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステルを89.08g、267mM、53%で得た。
【0150】
NMR 1H(CDCl3):δ3.31(2H,s,CH2)、3.7(9H,s,3×OCH3)、3.87(2H,s,CH2)、5.79(1H,s,=CH)、ppm。
【0151】
NMR 13C(CDCl3)、δ36.56、CH3、48.7、2×CH3、52.09及び52.5(2×CH2);122.3及び146.16 C=CH;165.9、170.0及び170.5 3×COOppm。
【0152】
6(b) 3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステルの水素付加
3(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89g、267mmol)のメタノール(200ml)溶液を、木炭上のパラジウム10%:水50%(9g)と共に、水素ガス雰囲気下(50psi)30時間振とうした。溶液をkieselguhrで濾過し、減圧濃縮して3−(メトキシカルボニルメチル)グルタル酸ジメチルエステルを油状物として得た(収量84.9g、収率94%)。
【0153】
NMR 1H(CDCl3)、δ2.48(6H,d,J=8Hz,3×CH2)、2.78(1H,六重線,J=8Hz CH)、3.7(9H,s,3×CH3)。
【0154】
NMR 13C(CDCl3)、δ28.6、CH;37.50、3×CH3;51.6、3×CH2;172.28、3×COO
6(c) トリメチルエステルのトリアセテートへの還元及びエステル化
窒素雰囲気下、2L三つ口丸底フラスコ中で、水素化リチウムアルミニウム(20g、588mmol)のテトラヒドロフラン(400ml)溶液をトリ(メチルオキシカルボニルメチル)メタン(40g、212mmol)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液で1時間にわたって慎重に処理した。激しい発熱反応が生じ、溶媒は激しく還流した。反応液を90℃の油浴上で加熱し、3日間還流させた。酢酸(100ml)を慎重に滴下することで反応液をクエンチして、水素の発生を中止させた。攪拌した反応混合物を無水酢酸溶液(500ml)で、緩やかに還流させる速度で慎重に処理した。このフラスコに蒸留用の装備をつけ、攪拌後、90℃(油浴温度)で加熱してテトラヒドロフランを留去した。無水酢酸(300ml)をさらに加え、還流時の構成に戻し、反応液を140℃の油浴中で5時間攪拌、加熱した。反応液を冷却、濾過した。酸化アルミニウム沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、混合濾液をロータリーエバポレーター上で、水浴温度50℃で減圧(5mmHg)濃縮して油状物を得た。油状物を酢酸エチル(500ml)中に取り込み、飽和炭酸カリウム水溶液で洗浄した。酢酸エチル溶液を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して油状物を得た。油状物を高真空下でKugelrohr蒸留してトリス(2−アセトキシエチル)メタン(収量45.313g、収率95.9%、0.165mol)を油状物として得た。0.1mmHgで沸点220。
【0155】
NMR 1H(CDCl3)、δ1.66(7H,m,3×CH2,CH)、2.08(1H,s,3×CH3);4.1(6H,t 3×CH2O)。
【0156】
NMR 13C(CDCl3)、δ20.9、CH3;29.34、CH;32.17、CH2;62.15、CH2O;171、CO。
【0157】
6(d) トリアセテートからの酢酸エステル基の除去
トリス(2−アセトキシエチル)メタン(45.3g、165mM)のメタノール(200ml)及び880アンモニア(100ml)溶液を80℃の油浴上で2日間加熱した。反応液をさらなる880アンモニア(50ml)で処理し、油浴中80℃で24時間加熱した。880アンモニア(50ml)をさらに加え、反応液を80℃で24時間加熱した。次に、反応液を減圧濃縮して全溶媒を除去し、油状物を得た。これを880アンモニア(150ml)中に取り込み、80℃で24時間加熱した。次に、反応液を減圧濃縮して全溶媒を除去し、油状物を得た。沸点170〜180、0.2mmでのKugelrohr蒸留でアセトアミドを得た。このアセトアミドを収容しているバルブをきれいに洗浄し、蒸留を継続した。沸点220℃、0.2mmで蒸留してトリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(22.53g、152mmol、92.1%)を得た。
【0158】
NMR 1H(CDCl3)、δ1.45(6H,q,3×CH2)、2.2(1H,五重線,CH);3.7(6H,t 3×CH2OH);5.5(3H,brs,3×OH)。
【0159】
NMR 13C(CDCl3)、δ22.13、CH;33.95、3×CH2;57.8、3×CH2OH。
【0160】
6(e) トリオールのトリス(メタンスルホネート)への変換
攪拌・氷冷したトリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(10g、0.0676mol)のジクロロメタン(50ml)溶液を、塩化メタンスルホニル(40g、0.349mol)のジクロロメタン(50ml)溶液に、窒素下、温度が15℃を超えて上昇しない速度でゆっくりと滴下した。次に、ピリジン(21.4g、0.27mol、4当量)のジクロロメタン(50ml)溶液を、温度が15℃を超えて上昇し発熱反応を起こさないような速度で滴下した。反応液を室温で24時間攪拌した後、5N塩酸溶液(80ml)で処理、層分離した。水層をさらなるジクロロメタン(50ml)で抽出し、有機抽出物を混合、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧濃縮して、過剰量の塩化メタンスルホニルで汚染したトリス(2−(メチルスルホニルオキシ)エチル)メタンを得た。理論上の収量は25.8gであった。
【0161】
NMR 1H(CDCl3)、δ4.3(6H,t,2×CH2)、3.0(9H,s,3×CH3)、2(1H,六重線,CH)、1.85(6H,q,3×CH2)。
【0162】
6(f) 1,1,1−トリス(2−アジドエチル)メタンの調製
トリス(2−(メチルスルホニルオキシ)−エチル)メタン[ステップ1(e)から、過剰量の塩化メチルスルホニルで汚染](25.8g、67mmol、理論値)の乾燥DMF(250ml)攪拌溶液を窒素下、アジ化ナトリウム(30.7g、0.47mol)で少しづつ15分かけて処理した。発熱が観察され、反応液を氷浴上で冷却した。30分後、反応混合物を50℃の油浴上で24時間加熱した。反応液は褐色になった。反応液を冷却し、希炭酸カリウム溶液(200ml)で処理し、40/60石油エーテル/ジエチルエーテル10:1(3×150ml)で3回抽出した。有機抽出物を水(2×150ml)で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過した。エタノール(200ml)を石油/エーテル溶液に加えてトリアジドを溶液に保ち、体積を減圧下で200ml以上に減少させた。エタノール(200ml)を加え、減圧再濃縮して最後の微量の石油を除去し、200ml以上のエタノール溶液が残った。
【0163】
注意:アジ化物は爆発の可能性があり、常に希溶液に保たなければならないので、溶媒をすべて除去することのないように。
【0164】
NMR 1H(CDCl3)、δ3.35(6H,t,3×CH2)、1.8(1H,六重線,CH)、1.6(6H,q,3×CH2)。
【0165】
6(g) 1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
トリス(2−アジドエチル)メタン(15.06g、0.0676mol)(前の反応の収率を100%とする)のエタノール(200ml)溶液を、木炭上の10%パラジウム(2g、水50%)で処理し、12時間水素添加した。反応容器から2時間毎に排気して、反応液から発生した窒素を除去し、水素を再充填した。サンプルをNMR分析用に採取して、トリアジドのトリアミンへの変換完了を確認した。
【0166】
注意:非還元アジ化物は蒸留時に爆発の可能性あり。
【0167】
反応液をセライトパッドで濾過して触媒を除去し、減圧濃縮してトリス(2−アミノエチル)メタンを油状物として得た。これを0.4mm/Hgで沸点180〜200℃のKugelrohr蒸留でさらに精製して無色油状物を得た(8.1g、55.9mmol、トリオールからの合計収率82.7%)。
【0168】
NMR 1H(CDCl3)、2.72(6H,t,3×CH2N)、1.41(H,七重線,CH)、1.39(6H,q,3×CH2)。
【0169】
NMR 13C(CDCl3)、δ39.8(CH2NH2)、38.2(CH2.)、31.0(CH)。
【0170】
1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンは、下記の代替方法でも調製することができる。
【0171】
6(g)(i):トリメチルエステルのp−メトキシ−ベンジルアミンを用いたアミド化
トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタン[2g、8.4mmol;上記ステップ6(b)と同様に調製]をp−メトキシ−ベンジルアミン(25g、178.6mmol)に溶解した。装置を蒸留用に調整し、窒素流下で120℃に24時間加熱した。反応の進行を回収したメタノールの量によりモニターした。反応混合物を外界温度に冷却し、酢酸エチル30mlを加えた後、蒸留したトリアミド生成物を30分間攪拌した。トリアミドを濾過により単離し、フィルターケーキを十分量の酢酸エチルで数回洗浄して、過剰量のp−メトキシ−ベンジルアミンを除去した。乾燥後、白色粉末4.6g、100%を得た。この極めて不溶性の生成物を次のステップに、さらに精製又は特徴付けをせずに直接使用した。
【0172】
6(g)(ii):1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタンの調製
氷水浴中で冷却した1000ml三つ口丸底フラスコ中の1Mボラン溶液(3.5g、244.3mmol)ボランに、ステップ2(a)のトリアミド(10g、17.89mmol)を慎重に加える。添加完了後、氷水浴を除去し、反応混合物を60℃に加熱する。反応混合物を60℃で20時間攪拌する。反応混合物のサンプル(1ml)を取り出し、5N HCl 0.5mlと混合、30分間静置した。サンプルに50NaOH 0.5mlを加えた後、水2mlを加え、溶液を攪拌して白色沈殿物をすべて溶解させた。溶液をエーテル(5ml)で抽出し、蒸発させた。残渣をアセトニトリルに溶解して濃度を1mg/mlにし、質量分析法で分析した。モノ及びジアミド(M+H/z=520及び534)が質量スペクトルに見られる場合、反応は完了していない。反応を完了させるには、1MボランTHF溶液100mlをさらに加え、反応混合物を60℃でさらに6時間攪拌し、上記のサンプリング法に従って新しいサンプルを取り出す。必要であれば1MボランTHF溶液の添加をさらに続けてトリアミンへの変換を完了させる。
【0173】
反応混合物を外界温度に冷却し、5N HClをゆっくり加える[注意:気泡が活発に形成!]。HClを加えて、ガス発生がもはや観察されないようにした。混合物を30分間攪拌した後、蒸発させた。ケーキをNaOH水溶液(20〜40%;1:2w/v)に懸濁させ、30分間攪拌した。次に、混合物を水で希釈した(3倍体積)。次に混合物をジエチルエーテル(2×150ml)で抽出した[注意:ハロゲン化溶媒を使用しないこと]。次に、混合有機相を水(1×200ml)、食塩水(150ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸発後の油状物としての収量7.6g、収率84%。
【0174】
NMR 1H(CDCl3)、δ:1.45、(6H,m,3×CH2;1.54、(1H,七重線,CH);2.60(6H,t,3×CH2N);3.68(6H,s,ArCH2);3.78(9H,s,3×CH3O);6.94(6H,d,6×Ar)。7.20(6H,d,6×Ar)。
【0175】
NMR 13C(CDCl3)、δ:32.17、CH;34.44、CH2;47.00、CH2;53.56、ArCH2;55.25、CH3O;113.78、Ar;129.29、Ar;132.61;Ar;158.60、Ar;
6(g)(iii) 1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタン(20.0グラム、0.036mol)をメタノール(100ml)に溶解し、Pd(OH)2(5.0グラム)を加えた。混合物を水素添加し(3バール、100℃、オートクレーブ中)、5時間攪拌した。10時間後及び15時間後、Pd(OH)2をさらに2回(2×5グラム)各々加えた。
【0176】
反応混合物を濾過し、濾液をメタノールで洗浄した。混合有機相を蒸発させ、残渣を減圧(1×10−2、110℃)蒸留して、前記方法で得たものと同一の1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンを2.60グラム(50%)得た。
【0177】
6(h) 3−クロロ−2−ニトロソブタンの調製。
【0178】
2−メチルブト−2−エン(147ml、1.4mol)と亜硝酸イソアミル(156ml、1.16mol)との混合物をカーディス及びメタノールの浴中で−30℃に冷却し、オーバーヘッド空気攪拌機で激しく攪拌し、濃塩酸(140ml、1.68mol)を温度が−20℃未満に維持されるような速度で滴下して処理した。著しい発熱が生じ、過熱を避けるために注意が必要なことから、これには約1時間を要する。エタノール(100ml)を加えて上記添加の完了時に形成したスラリーの粘度を低下させ、反応液を−20〜−10℃でさらに2時間攪拌して反応を完了させた。沈殿物を減圧濾過で回収し、冷(−20℃)エタノール4×30ml及び氷冷水100mlで洗浄し、減圧乾燥して3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンを白色固体として得た。エタノール濾液と洗液を混合し、水(200ml)で希釈し、冷却し、−10℃で1時間静置して、3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンのさらなる生成物が結晶化された。沈殿物を濾過により回収し、最小量の水で洗浄し、減圧乾燥してNMRによる純度98%超の3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンの全収量(115g 0.85mol、73%)を得た。
【0179】
NMR 1H(CDCl3)、異性体の混合物(異性体1,90%)1.5d、(2H,CH3)、1.65d、(4H,2×CH3)、5.85、q及び5.95、q、合計1H。(異性体2,10%)、1.76s、(6H,2×CH3)、2.07(3H,CH3)。
【0180】
6(i) ビス[N−(1,1−ジメチル−2−N−ヒドロキシイミンプロピル)2−アミノエチル]−(2−アミノエチル)メタン(キレート剤1)の合成
トリス(2−アミノエチル)メタン(4.047g、27.9mmol)の乾燥エタノール(30ml)溶液に、無水炭酸カリウム(7.7g、55.8mmol、2当量)を室温で、窒素雰囲気下で激しく攪拌しながら加えた。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(7.56g、55.8mol、2当量)の溶液を乾燥エタノール(100ml)に溶解し、この溶液75mlを上記反応混合物にゆっくりと滴下した。反応後、ジクロロメタン、メタノール、濃アンモニア(比重0.88)の100/30/5混合物中で運転するシリカ上でのTLCにかけ、TLCプレートをニンヒドリン噴霧及び加熱により展開した。モノ、ジ及びトリアルキル化生成物がみられ、Rf値はこの順序で増大した。分析HPLCを、RPR逆相カラムを使って、3%アンモニア水中のアセトニトリルのグラジエントを7.5〜75%にして運転した。反応液を減圧濃縮してエタノールを除去し、水(110ml)に再懸濁した。水性スラリーをエーテル(100ml)で抽出してトリアルキル化合物の一部及び親油性不純物を除去し、水層中にはモノ及び所望のジアルキル化生成物が残った。水溶液を酢酸アンモニウム(2当量、4.3g、55.8mmol)で緩衝して良好なクロマトグラフィーを確保した。水溶液を終夜4℃で保管した後、自動分取HPLCで精製した。
【0181】
収量・収率(2.2g、6.4mM、23%)。
【0182】
質量スペクトル;陽イオン10Vコーン電圧。実測値:344;計算値M+H=344。
【0183】
NMR 1H(CDCl3)、δ1.24(6H,s,2×CH3)、1.3(6H,s,2×CH3)、1.25〜1.75(7H,m,3×CH2,CH)、(3H,s,2×CH2)、2.58(4H,m,CH2N)、2.88(2H,t CH2N2)、5.0(6H,s,NH2 ,2×NH,2×OH)。
【0184】
NMR 1H((CD3)2SO)δ1.14×CH;1.29、3×CH2;2.1(4H,t,2×CH2);
NMR 13C((CD3)2SO)、δ9.0(4×CH3)、25.8(2×CH3)、31.0 2×CH2、34.6 CH2、56.8 2×CH2N;160.3、C=N。
【0185】
HPLC条件:流量8ml/分、25mmPRPカラム使用
A=3%アンモニア溶液(比重=0.88)/水。
【0186】
B=アセトニトリル
時間 B(%)
0 7.5
15 75.0
20 75.0
22 7.5
30 7.5
1運転当たり水溶液3mlを負荷、12.5〜13.5分の時間窓内に回収。
【0187】
実施例7 化合物10の調製
合成経路は図2に示す。
【0188】
7(a) 4−(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピルスルファモイル)−安息香酸メチルエステル(化合物1*)
2−アミノ−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(H−D−Val−OtBu.HCl)(500mg、2.38mmol)のアセトニトリル(20ml)攪拌懸濁液に、ピリジン(767μl、9.52mmol)を外界温度で加えた。透明で無色の溶液が速やかに得られた。次に、4−クロロスルホニル−安息香酸メチルエステル(670mg、2.86mmol)のアセトニトリル(6ml)溶液を滴下し、薄黄色になった混合物を外界温度で4時間攪拌した。反応はTLC(EtOAc/ヘキサン、1:1)でモニターした。溶媒を蒸発させ、酢酸エチル(50ml)及び飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10ml)を加えた。混合物を分液漏斗に移しかえ、激しく振とうした。次に層分離し、酢酸エチル層を食塩水(10ml)で1回抽出、乾燥(MgSO4)、濾過し、蒸発させて粗生成物を得た。(酢酸エチル/ヘキサン、1:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィーで標記純生成物を白色固体として得た。収量880mg(収率99.55%)。
【0189】
7(b) 4−[(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸メチルエステル(化合物2*)
4−(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピルスルファモイル)−安息香酸メチルエステル(化合物1*−884mg、2.38mmol)のジメチルホルムアミド(30ml)攪拌溶液に、炭酸セシウム(10.86g、33.34mmol)を外界温度で加えた。次に、塩化3−ピコリル塩酸塩(546mg、3.33mmol)を懸濁液に加え、反応混合物を室温で24時間混合した。その時点でTLC(EtOAc/ヘキサン 1:1)モニタリングを行い、反応の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固し、残渣を酢酸エチル(50ml)中で攪拌した。酢酸エチル相を水(1×50ml)で抽出、乾燥(MgSO4)、濾過し、蒸発させて粗生成物を褐色油状物として得た。この油状物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して標記純生成物を無色油状物として得た。収量800mg(収率79.21%)。
【0190】
7(c) 4−[(1−カルボキシ−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸メチルエステル(化合物3*)
エステル(化合物2*−321mg、0.75mmol)を塩化メチレン(15ml)に溶解し、−10℃に冷却した。塩酸ガスを溶液に10分間吹き込んだ。反応混合物を封着、室温に加熱、16時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を塩化メチレン(2×10ml)と共蒸発させて標記生成物を白色気泡として得た(278mg、収率83.73%)。
【0191】
7(d) 4−[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸メチルエステル(化合物5*)
酸(化合物3*−112mg、0.28mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(39mg、0.29mmol)、4−メチルモルホリン(297μl、1.4mmol)及びO−tert−ブチルジメチルシリル}ヒドロキシルアミン(124mg、0.84mmol)を塩化メチレン(8ml)に溶解した。N−[(ジメチルアミノ)プロピル]−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩(73mg、0.38mmol)を加え、反応混合物を24時間攪拌した。反応混合物を水(10ml)で希釈、塩化メチレン(2×10ml)で抽出した。塩化メチレン混合相を乾燥(Na2SO4)、濾過した。塩酸のジオキサン溶液を数滴、濾液に加えて標記の遊離ヒドロキサム酸(108mg)を直接得た。
【0192】
7(e) 4−[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−安息香酸(化合物6*)
2N水酸化ナトリウム(200μl)をエステル(化合物5*−32mg、0.072mmol)のメタノール(1ml)溶液に加え、反応混合物を外界温度で攪拌した。30分後、混合物を蒸発乾固し、残渣を水(2ml)に溶解した。溶液を2N HClで酸性にした。分取HPLCで標記純生成物を白色粉末として得た(収量28mg、収率95.01%)。
【0193】
7(f) 4−[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−ピリジン−3−イルメチル−スルファモイル]−N−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチル}−ベンズアミド(化合物10)
酸(化合物6*)−12.5mg、0.031mmol}、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.68mg、0.027mmol)、4−メチルモルホリン(17.4μl、0.124mmol)及びN−[(ジメチルアミノ)プロピル]−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩(8.06mg、0.042mmol)をジメチルホルムアミド(2ml)に溶解した。キレート剤1(13mg、0.037mmol)を加え、反応混合物を24時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗生成物をHPLCで直接精製した(グラジエント00_30_60)。標記生成物は薄褐色のゴムであった(収量2mg、収率9%)。
【0194】
実施例8 化合物11の調製
化合物11の合成は図3に示す。
【0195】
8(a) 2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル
2−アミノ−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(H−D−Val−OtBu.HCl)(500mg、2.38mmol)のアセトニトリル(20ml)攪拌懸濁液に、ピリジン(767μl、9.52mmol)を周囲温度で加えた。透明で無色の溶液が速やかに得られた。次に、塩化4−メトキシル−ベンゼンスルホニル(541mg、2.62mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液を滴下し、薄黄色になった混合物を外界温度で攪拌した。TLC(EtOAc/ヘキサン、1:1)で、反応が3時間後に完了したことが明らかになった。アセトニトリルを蒸発させた後、残渣をジクロロメタン(30ml)に取り込み、10%炭酸水素ナトリウム溶液(30ml)及び水(30ml)で各々1回づつ抽出した。次に層分離し、ジクロロメタン層を乾燥(Na2SO4)、濾過し、蒸発させて粗生成物を得た。(酢酸エチル/ヘキサン、1:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィーで標記純生成物を白色固体として得た。収量801mg(収率93.90%)。
【0196】
8(b) 4−{[(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}安息香酸メチルエステル(化合物7)
2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(140mg、0.41mmol)のアセトニトリル(5ml)攪拌溶液に、炭酸セシウム(1.33g、4.10mmol)を外界温度で加えた。次に、4−(ブロモメチル)安息香酸メチル(115mg、0.50mmol)を懸濁液に加え、反応混合物を70℃で1時間混合した。その時点でTLC(EtOAc/ヘキサン 1:1)モニタリングにより、反応の完了が明らかになった。外界温度に冷却後、混合物を濾過して過剰量の炭酸セシウムを除去し、蒸発乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:1)で精製して標記純生成物を薄黄色油状物として得た。収量153mg(収率76%)。
【0197】
8(c) 4−{[(1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}−安息香酸(化合物8*)
ジエステル(化合物7*)(151mg、0.31mmol)をテトラヒドロフラン(2ml)に溶解し、4N LiOH(250μl)を外界温度で加えた。混合物を60℃に5時間加熱した時点で、HPLCモニタリングにより加水分解の完了が明らかになった。混合物を外界温度に冷却し、溶媒を蒸発させた。残渣を水に溶解し、透明溶液をジエチルエーテルで1回抽出した。次に、水相を5℃(氷/水)に冷却し、1N HClで中和した後、酢酸エチル(3×5ml)で抽出した。混合酢酸エチル相を水(5ml)及び食塩水(5ml)で抽出、(Na2SO4)で乾燥、濾過し、蒸発させて標記生成物を白色気泡として得た。収量133mg(収率90%)。
【0198】
8(d) 2−[(4−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチルプロピルアミノ)−エチル]−ペンチルカルバモイル}−ベンジル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物9*)
酸(化合物8*)(61mg、0.13mmol)のジメチルホルムアミド(4ml)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(46μl、0.26mmol)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド、HATU(49mg、0.15mmol)及びC−Pn216(51mg、0.15mmol)を加えた。反応混合物を外界温度で攪拌し、1時間後、HPLCにより新しい生成物への変換の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固した後、フラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール、8:2)で標記純生成物を白色結晶として単離した。収量66mg
8(e) 2−[(4−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチルカルバモイル}−ベンジル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸(化合物10*)
ジクロロメタン(4ml)をtert−ブチルエステル(化合物9*)(64mg、0.08mmol)に加え、得られた乳白色溶液に外界温度で塩酸ガスを10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させて標記生成物をオフホワイト固体として得た。収量58mg(収率97%)。M+1=747。
【0199】
8(f) 4−{[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]メチル}−N−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチル}−ベンズアミド(化合物11)
ヒドロキサム酸を、tert−ブチルジメチルシリルで保護された中間体(化合物11*)を介して結合させた。これに従い、酸(化合物10*)(57mg、0.76mmol)、4−メチルモルホリン(34μl、0.30mmol)、[7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート]PyAOP、40mg、0.076mmol)及びO−(tert−ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン(12mg、0.08mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(4ml)溶液を外界温度で攪拌し、反応をHPLCでモニターした。反応を3時間後に停止し、溶媒を蒸発させた。残渣をジクロロメタンに再溶解し、外界温度で塩酸ガスを混合物に10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させた。HPLCで標記生成物を白色粉末として得、M+Hは762であった。収量15mg。
【0200】
実施例9 化合物18の調製
9(a) 2−[[4−(2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチルカルバモイル)−ベンジル]−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物12*)
酸(化合物8*;140mg、0.30mmol)のジメチルホルムアミド(6ml)溶液にN,N′−ジイソプロピルエチルアミン(104.51μl、0.60mmol)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド、HATU(114mg、0.30mmol)及び2−{2−[2−(2−アジド−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチルアミン(65.50mg、0.30mmol)を加えた。反応混合物を外界温度で攪拌し、2時間後、HPLCモニタリングで新しい生成物への変換の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固した後、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル)で標記純生成物を無色油状物として単離した。収量142mg(収率70%)。
【0201】
9(b) 2−[[4−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチルカルバモイル)−ベンジル]−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物13*)
0℃(氷/H2O)に冷却したアジ化物(化合物12*;200mg、0.29mmol)のTHF(5ml)攪拌溶液にトリフェニルホスフィン(84mg、0.32mmol)を加えた。この温度で5分攪拌後、冷却浴を除去し、外界温度で19時間攪拌を続けた。次に水(200μl)を加え、15時間後に分析(HPLC)したところ、加水分解の完了が示された。溶媒を蒸発させ、油状残渣をフラッシュクロマトグラフィーで、まずCHCl3/メタノール(8:2)、次いでCHCl3/MeOH/H2Oを用い精製して標記化合物を無色油状物として得た。収量134mg(収率71%)。M+652
9(c) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(4−カルボキシ−ブチリルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステルCA1(化合物14*)
アミン(化合物13*;73mg,0.11mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(39μl,0.22mmol)及び活性エステルである4−{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−エチル]−ペンチルカルバモイル}−チオ酪酸2,3,5,6−テトラフルオロ−フェニルエステル(b;85mg、0.11mmol)のジメチルホルムアミド(5ml)溶液を外界温度で2時間攪拌した。その時点でのHPLCモニタリングにより、反応の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH、8:2)で精製して標記生成物をゴムとして得た。収量54mg(収率45%)。
【0202】
9(d) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(4−カルボキシ−ブチリルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸cPn216(化合物15*)
ジクロロメタン(5ml)をtert−ブチルエステル(化合物14*;50mg、0.046mmol)に加え、得られた乳白色溶液に外界温度で塩酸ガスを10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させて標記生成物を白色固体として得た。収量47mg(収率99%)。M+1=1035。
【0203】
9(e) 4−[2−(2−{2−[2−(4−{[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}−ベンゾイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−酪酸cPn216(化合物18)
ヒドロキサム酸官能基を、tert−ブチルジメチルシリルで保護された中間体を介して結合させた。これに従い、酸(化合物15*;47mg、0.045mmol)、4−メチルモルホリン(20μl、0.18mmol)、[7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート]PyAOP(a;23.5mg、0.045mmol)及びO−(tert−ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン(10mg、0.07mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(3ml)溶液を外界温度で攪拌し、反応をHPLCでモニターした。反応を1時間後に停止し、溶媒を蒸発させた。残渣をジクロロメタンに再溶解し、外界温度で塩酸ガスを混合物に10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させた。HPLCで標記生成物を白色粉末として得た。M+Hは1050、収量7mg(収率15%)であった。
【0204】
実施例10 化合物19の調製
10(a) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(2−カルボキシメトキシ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル(化合物17*)
アミン(化合物13*;60mg、0.092mmol)、N,N′−ジイソプロピルエチルアミン(96μl、0.55mmol)及びジグリコール酸無水物(66mg、0.55mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(6ml)溶液を外界温度で3時間攪拌した。その時点でHPCモニタリングを行い、反応の完了が明らかになった。溶媒を減圧除去し、残渣を0.1%TFAを含有するアセトニトリルに溶解した。5分間攪拌後、混合物を蒸発乾固し、CHCl3/MeOH/H2O、65:25:4を用いたフラッシュクロマトグラフィーで粗生成物を精製した。標記生成物を白色気泡として得た。収量70.50mg(収率99.80%)。
【0205】
10(b) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(2−カルボキシメトキシ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸tert−ブチルエステル−CA1結合体(化合物18*)
酸(化合物17*;70.50mg、0.092mmol)のジメチルホルムアミド(5ml)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(32μl、0.184mmol)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド、HATU(38mg、0.10mmol)及びキレート剤1(CA1;34mg、0.10mmol)を加えた。反応混合物を外界温度で攪拌し、6時間後、HPLCにより新しい生成物への実質的な変換の完了が明らかになった。混合物を蒸発乾固した後、アセトニトリル:水:0.1%トリフルオロ酢酸(10:80:60)を用いた分取HPLCクロマトグラフィーで標記純生成物を白色結晶として単離した。収量21mg(収率21%)。
【0206】
10(c) 2−[{4−[2−(2−{2−[2−(2−カルボキシメトキシ−アセチルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−ベンジル}−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−3−メチル−酪酸−CA1結合体(化合物19*)
ジクロロメタン(3ml)をtert−ブチルエステル(化合物18*;20mg、0.018mmol)に加え、得られた乳白色溶液に外界温度で塩酸ガスを60分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×5ml)と共蒸発させて標記生成物をオフホワイト固体として得た。収量18mg(収率95%)。M+1=1037。
【0207】
10(d) {[2−(2−{2−[2−(4−{[(1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−メチル}−ベンゾイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルカルバモイル]−メトキシ}−酢酸−CA1結合体(化合物19)
ヒドロキサム酸を、tert−ブチルジメチルシリルで保護された中間体を介して結合させた。これに従い、酸(化合物19*;18mg、0.017mmol)、4−メチルモルホリン(8μl、0.70mmol)、[7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート]PyAOP(9.4mg、0.017mmol)及びO−(tert−ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン(4mg、0.026mmol)の混合物のジメチルホルムアミド(2ml)溶液を外界温度で攪拌し、反応をHPLCでモニターした。反応を2時間後に停止し、溶媒を蒸発させた。残渣(化合物20*)をジクロロメタンに再溶解し、外界温度で塩酸ガスを混合物に10分間吹き込んだ。混合物を蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(5×3ml)と共蒸発させた。HPLCで標記生成物を白色粉末として得、M+Hは1052であった。収量4mg(収率22.35%)。
【0208】
実施例11 化合物1、2、3、16及び17を各々生成するための、化合物10、11、12、18及び19の99mTc標識
SnCl2 10mg及びMDP 90mgを窒素で浄化した生理食塩水100mlに溶解してSnCl2/MDP溶液を調製する。化合物10、11又は12の1つをメタノールに溶解した1mg/ml溶液50μlに、(1)メタノール0.7ml、(2)0.1M炭酸ナトリウム緩衝液0.5ml、(3)500MBq/ml TcO4 0.5ml及び(4)SnCl2/MDP溶液100μlを加える。この反応混合物を37℃で30分加熱して化合物1、2又は3の1つを各々形成する。
【0209】
実施例12 化合物4の調製
化合物4の調製用の合成経路を図6に示す。4μ[123I]NaIの0.05N NaOH溶液4μl(12.04MBq)、化合物13溶液39μl(濃度=1.23g/MeOH 1リットル)及びNCS溶液71μl(NCS=N−クロロスクシンイミド)(濃度=0.579g/注射用水1リットル)を円錐型バイアルに加えた。
【0210】
混合物を1分間ボルテックスした後、暗所で60分間、室温で振とうした。次に、Na2S2O3溶液25μl(濃度=2.00g/注射用水1リットル)を加え、混合物を再度ボルテックスした。
【0211】
溶液を、γ−及びUV検出器並びに対応する20×4mm2のプレカラムを有するNucleosil(登録商標)逆相C−18 5μ 250×4mm2 カラムを備えたグラジエントHPLCクロマトグラフに注入した。
【0212】
HPLC条件:
溶離液A: CH3CN/H2O/TFA 950/50/1
溶離液B: CH3CN/H2O/TFA 50/950/1
時間プログラム: 溶離液Bを45分以内に92%から50%に、次いで10分以内に50%から92%に
流量: 1.5ml/分
λ: 254nm
保持時間(生成物−画分):18.50〜19.80分
この画分を蒸発乾固し、PBS緩衝液200mlに再溶解し、同条件(上記参照)でグラジエントHPLCに再注入した。
【0213】
保持時間(化合物4): 17.40〜18.70分
この生成物の品質管理(HPLC、同条件)では、γ及びUVチャネル中に不純物は現れなかった。放射線化学収量は44%であった。
【0214】
実施例13 化合物5の調製
化合物5は化合物4の125I変種である。[123I]NaIの代わりに[125I]NaIを使用した以外は、実施例12記載の方法で調製した。
【0215】
実施例14 化合物6の調製
2,5−ジヒドロキシ安息香酸0.6mg、アスコルビン酸0.8mg、注射用水20μl及びCuSO4・5H2O溶液5μl(濃度=3.26g/注射用水1リットル)を、化合物14を50μl収容した円錐形バイアル(濃度=2.00g/EtOH 1リットル)に加えた。氷冷した混合物をHe流で10分間脱気した。次に、[125I]NaIの0.05N NaOH溶液4μl(8.68MBq)を加え、ボルテックスした。混合物を113℃まで51分間加熱し、5分毎に振とうした。室温に冷却後、混合物をEtOH 40μlで希釈した。次に、溶液をHPLCクロマトグラフに注入し、実施例10記載のようにHPLCを行った。保持時間(生成物画分):17.18〜19.54分。
【0216】
この画分を蒸発乾固し、CH3CN/H2O/TFA:50/950/1 200μlに再溶解し、グラジエントHPLCに再注入した。保持時間(化合物6):21.05〜21.36分。
【0217】
生成物のHPLCによる品質管理では、γ及びUVチャネル中に不純物は検出されなかった。2回目の品質管理用注入物に化合物9(即ち、非放射性の化合物6)の一定分量を加えることで、保持時間パラメータを認識した。
【0218】
平均放射線化学収率:23%(n=5)。
【0219】
実施例15 化合物7の調製
[125I]NaIの代わりに[123I]NaIを使用する以外は、実施例6と同じ経路を介して化合物7を調製する。
【0220】
実施例16 化合物15の調製
化合物15の調製に使用できる合成経路を図7に示す。
【0221】
合成経路Aでは、フラスコに窒素を入れた後、ジクロロ(ビストリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.1当量)及び酢酸カリウム(3当量)を順次加える。N−メチルピロリドン(5ml)を加えた後、化合物9(1当量)及び水素化トリブチルスズ(2当量)を順次加える。反応混合物を室温で24時間攪拌する。次に反応混合物を酢酸エチルで希釈、水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を蒸発し、標記生成物をHPLC精製で単離する。
【0222】
合成経路Bでは、フラスコに窒素を入れた後、化合物14及び無水トルエンを加える。これにヘキサブチルスズ及びテトラキシトリフェニルホスフィンパラジウムを順次加える。反応混合物を24時間加熱還流して標記生成物を得る。
【0223】
実施例17 化合物7の調製
0.1mM Na127Iの0.01M NaOH溶液10μlを0.2M NH4OAc(pH4)200μlに加えた。次にNa127I/NH4OAc溶液をNa123Iの0.05M NaOH溶液11.0μl(111MBq)に加えた。混合溶液をシラン処理プラスチックバイアルに移しかえた。過酢酸を酢酸に溶解した36〜40重量%溶液5μlをH2O 5mlに加えて、過酢酸の溶液を調製した。次に、調製した過酢酸溶液5μlを、Na123/127Iを収容したバイアルに加えた。最後に、シラン処理プラスチックバイアル中のトリブチルスズ前駆体(化合物15)の3mM溶液17μlを反応混合物に加え、溶液を3分間静置した。
【0224】
化合物7は、γ−及びUV検出器並びに逆相Phenomenex C18(2)Luna 5μ、150×4.6mmカラムを備えたグラジエントHPLCクロマトグラフィーを用いて分析又は精製することができる。
【0225】
HPLC条件
溶離液A:0.1%TFA水溶液
溶離液B:0.1%TFA CH3CN溶液
溶離液Bは20分かけて20%から80%に。
【0226】
20分 80% B
20.2分 100% B
23.2分 100% B
23.7分 20% B
流量: 1ml/分
λ: 254nm
保持時間:7分
実施例18 MMP−2及びMMP−9阻害活性アッセイ
合成広スペクトル蛍光原基質である(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチルpro−Leu−Gly−Leu−(3−(2,4−ジニトロフェニル)−L−2,3−ジアミノ−プロピオニル)−Ala−Arg−NH2(R&D Systems)を使って、既述のMMP−2及びMMP−9活性[Huang et al J.Biol.Chem.272 22086−22091(1997)]をアッセイした。CGS27023並びに化合物8、9、13及び14によるMMP−2及びMMP−9の阻害アッセイは、MMP−2(1nm)又はMMP−9(2nm)、及び様々な濃度(10pm〜1mM)でアッセイすべき該化合物を、0.2M NaCl、5mM CaCl2、20μM ZnSO4及び0.05%食塩水を含有するpH7.5の50mMトリス−HCl中、35〜37℃で30分間予めインキュベートすることで行った。次に、基質(5μM)の一定分量(10μl)を、予めインキュベートした90μMのMMP/化合物混合物に加え、活性を以下の経時的生成物放出により37℃で測定した。蛍光変化のモニタリングは、Fusion Universal Microplate Analyzer(Packard Bioscience)を用い、励起及び放射波長をMMP−2、MMP−9について各々330、390nmに設定して行った。阻害率は、生成物放出が経時的に直線状である最初10分の反応プロファイルから測定した。非線形回帰分析は、Linux用ソフトウェアXMGRACE 5.18を用いて行った。
【0227】
アッセイした化合物について得られたIC50値を下記の表2に示す。
【0228】
【表2】
【0229】
実施例19 ApoE(−/−)マウスモデル
ApoE−/−マウス(4週齢、20〜28g)にキシラジン/ケタミン(Bayer、ドイツ)の腹腔内注射で麻酔をかけた。左総頸動脈を、分岐近傍で5−0シルク(Ethicon)を用いて結紮した。偽手術した対照群では、左総頸動脈の下に縛らずに縫合糸を通した。これらの動物を1週間かけて回復させた後、高コレステロールの食餌(ココファット15%、コレステロール1.0%、コール酸ナトリウム0.5%)を与えた。手術の5週間後、マウスを組織病理学、オートラジオグラフィー及びイメージング調査に使用した。
【0230】
実施例20 組織学及び免疫組織化学
実施例16記載のApoE−/−マウスをLangendorff緩衝液で3分間灌流した。結紮部位並びに左及び右頸動脈を除去し、さらなる切除をせずに液体窒素中でスナップ冷凍した。5つの切片(組織病理学用に10μm)毎のグループを等間隔で回収した。
【0231】
結紮部位並びに左及び右頸動脈の外科標本の連続クリオスタット切片(10μm)を切除し、顕微鏡スライド上で風乾し、3.75%PFA(MMP−9)中に10分間、4℃のアセトン中に10分間(MAC3、550292、BD Pharmingen、カリフォルニア州、米国)固定した。切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。免疫組織化学用に、切片を、抗ペルオキシダーゼ試薬(S2001、DAKO、デンマーク)で10分、1%BSAで25分、バックグラウンド低減成分を有する抗体希釈液(S3022、DAKO、カリフォルニア州、米国)中に室温で1時間おいた一次抗体(2μg/mlウサギ抗マウスMMP−9、AB19047、Chemicon、ドイツ)又は対照抗体(ウサギIgG、E0432、DAKO、デンマーク)で30分インキュベートし、サプライヤーの推奨に従って処理した。ヤギ抗ウサギIgG(H+L)のビオチン結合体(AB132B、1:500、Chemicon、ドイツ)25分。ストレプトアビジン−HRP(LSABキット、K0675、カリフォルニア州、米国)25分、AEC(K0696、DAKO、カリフォルニア州、米国)20分、ヘマトキシリン1分、H2O 1〜2分。
【0232】
免疫組織化学の結果及びオートラジオグラフィーの結果を図8に示す。取り込みはMMP−9の存在と関連していることが明らかである。
【0233】
実施例21 インビボでのオートラジオグラフィー
4匹の結紮されたApoE−/−マウスの眼窩後に、0.5μCi(20MBq)の化合物5の0.9%NaCl 0.2ml溶液及びCGS27023(0.9%NaCl 200μlに溶解した6mM溶液、非特異的に結合)又は食塩水を注射し、その2時間後に放射性リガンドを注射した。マウスは注射2時間後に屠殺した。結紮部位並びに左及び右総頸動脈を素早く除去し、凍結切片を切除した後、厚さ60μmの切片をミクロオートラジオグラフィー用に処理した。
【0234】
オートラジオグラフィーの結果を、実施例17で論じた免疫組織化学の結果と併せて図8に示す。
【0235】
実施例22 インビボでのイメージング
化合物4を眼窩後の静脈叢に注射し、超高解像度コリメータを備えたSiemens MULTISPECT 3ガンマカメラ上で平面イメージングを行った。動画像を1分フレームのオリジナルフレーミングで得て、このフレーミングを分析用に10分フレームに要約した。プラーク領域を環状のROIs(関心領域)により分析し、TACs(時間放射能曲線)を作成した。
【0236】
実験A:9MBqの化合物4の0.9%NaCl 200μl溶液を各マウス(マウス1〜6)に注射し、動画像を注射後120分までに撮影した。TACsを作成し、結紮領域で120分にわたり標識化合物の取り込みが増大したことがわかった(図9参照)。
【0237】
実験B:2日後、CGS27023を0.9%NaCl 200μlに溶解した6mM溶液を前の実験のマウス4及び5に注射し、その2時間後に7.5MBqの化合物4の0.9%NaCl 200μl溶液を注射した。マウス1〜3にも、非放射性予備投与なしに7.5MBqの化合物4の0.9%NaCl 200μl溶液を注射した。動画像を120分にわたって得(図10)、TACsを作成した。マウス4及び5における取り込みを、実験Aの予備投与なしの場合と実験Bの予備投与後とで比較したところ、予備投与した動物での取り込み量がより少ないことがわかった(図11参照)。
【0238】
実験Aでは、肝臓、腎臓、膀胱、脳及び胸郭上に追加のROIsを設定した。各ROIについて、減衰補正したTACsを計算し、注射後10分の放射能、即ち、正規化された秒当たりカウント数に正規化した(図12参照)。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】γ−放射性核種がヨウ素の放射性同位体である、本発明の画像診断剤の放射性合成用の前駆体化合物の調製に使った合成経路を示す図である。これらの放射性ヨウ素標識した画像診断剤の非放射性の変種もまた、この合成経路を経由して調製された。図1の「X」は同図のV及びVIと同定義である。
【図2】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図3】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図4】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図5】配位子結合体である化合物10、11、18及び19の調製に各々使われた合成経路を示す図である。
【図6】化合物13の放射性ヨウ素標識を介した化合物4の放射性合成を示す図である。
【図7】前駆体である化合物15の調製に使われる2つの代替合成経路を示す図である。
【図8】ApoE(−/−)マウスから採取した左頸動脈のサンプルを用いて行った免疫組織化学の結果を示す図である。HE=ヘマトキシリン及びエオシン。また、化合物5のインビボ注射後のApoE(−/−)マウスから採取した左頸動脈の試料を用いて行ったオートラジオグラフィー(「Autorad」と称する)の結果を示す図でもある。
【図9】化合物4注射後のApoE(−/−)マウス内で形成された画像を示す。
【図10】非放射性化合物を予め投与しなかったApoE(−/−)マウスと非放射性化合物CGS27023を予め投与した後のApoE(−/−)マウスとの、化合物4の取り込みの比較を示す図である。
【図11】実験Aの予備投与なしの場合と実験Bの予備投与後とでのマウス4及び5における取り込みに基づいて作成された時間放射能曲線を示す図である。予備投与した動物での取り込み量がより少ないことがわかった。
【図12】実験AのApoE−/−マウス1〜6の肝臓、腎臓、膀胱、脳及び胸郭の関心領域分析から得られた平均(±SEM)データを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−放射性核種で標識した式Iのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む画像診断剤。
【化1】
式中、R1は水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C6−14アリール、C7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC6−8シクロアルキル環又はC4−6複素環を形成するか、或いはR4と共に5〜7個の原子及びN又はOから選択される1又は2個のヘテロ原子を含有するC4−6複素環を形成し、
R2及びR3は各々独立に水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アミノ、C6−14アリール、C7−20アリールアルキル又はC7−20カルバモイルアリールであり、
R4はC6−14アリール、C4−6ヘテロアリール、C7−20アリールアルキル、C7−20カルバモイルアリール又はアリールカルバモイルアリールであり、
R5は水素又はC1−6アルキルから選択される。
【請求項2】
R1がC1−6アルキル、C6−14アリール又はC7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC4−6複素環を形成し、
R2が水素、ヒドロキシ、メチル、イソプロピル、メトキシ又はハロゲンであり、
R3が水素であり、
R4がピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1がフェニレンであり、R″′がCH2又はC=Oであり、yが0又は1であり、zが0又は1であり、
R5が水素である、
請求項1記載の画像診断剤。
【請求項3】
R1がメチル、イソブチル、イソプロピル、ベンジル又はヒドロキシベンジルであり、
R2がヒドロキシ、ハロゲン又はメトキシであり、
R3が水素であり、
R4がピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1が1,4−フェニレンであり、R″′がCH2又はC=Oであり、yが0又は1であり、zが0又は1であり、
R5が水素である、
請求項1又は請求項2記載の画像診断剤。
【請求項4】
R5が水素であり、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が式Iaのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤である、請求項1乃至請求項3記載の画像診断剤。
【化2】
【請求項5】
R1〜R4の1個が前記γ−放射性核種を含む、請求項1乃至請求項4記載の画像診断剤。
【請求項6】
R2がスルホンアミドに対してパラ位にあり、R3がスルホンアミドに対してメタ位にある、請求項1乃至請求項5記載の画像診断剤。
【請求項7】
前記γ−放射性核種が99mTc、111In、113mIn、67Cu又は67Gaから選択されるγ−放射性金属である、請求項1乃至請求項6のいずれか記載の画像診断剤。
【請求項8】
前記γ−放射性金属が、前記γ−放射性金属と1個以上の配位子との金属錯体の一部として存在する、請求項7記載の画像診断剤。
【請求項9】
前記金属錯体が式IのR1、R2又はR4の位置で結合している、請求項8記載の画像診断剤。
【請求項10】
式IIの画像診断剤である、請求項8及び請求項9記載の画像診断剤。
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}]−(A)n]m−[金属錯体]
(II)
式中、−(A)n−はリンカー基であって、式中、各Aは独立にCR′2、CR′=CR′、C≡C、CH2CH2O、CR′2CO2、CO2CR′2、NR′CO、CONR′、NR′(C=O)NR′、NR′(C=S)NR′、SO2NR′、NR′SO2、CR′2OCR′2、CR′2SCR′2,CR′2NRCR′2、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基又はC3−12ヘテロアリーレン基であり、
R′はH、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C1−4アルコキシアルキル又はC1−4ヒドロキシアルキルから各々独立に選択され、
nは0〜50の整数であり、
mは1、2又は3である。
【請求項11】
前記1個以上の配位子が、ジアミンジオキシム、N3S、N2S2、N4及びN2O2から選択されるドナーセットを有するキレート剤を含む、請求項8乃至請求項10記載の画像診断剤。
【請求項12】
前記γ−放射性核種がヨウ素のγ−放射性同位体である、請求項1乃至請求項6記載の画像診断剤。
【請求項13】
前記ヨウ素のγ−放射性同位体が123Iである、請求項12記載の画像診断剤。
【請求項14】
ヨウ素のγ−放射性同位体が直接共有結合を介して式I又は式Iaの芳香環の3位又は4位に結合している、請求項12及び請求項13記載の画像診断剤。
【請求項15】
99mTc、111In、113mIn、67Cu又は67Gaから選択されるγ−放射性金属の配位に適した配位子に結合している式I又は式Iaのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む配位子結合体。
【請求項16】
式IIaの配位子結合体である、請求項15記載の配位子結合体。
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}−(An)]m−[配位子]
(IIa)
式中、(An)、n及びmは請求項9における式IIと同定義である。
【請求項17】
前記配位子がキレート剤であって、キレート剤中、金属配位により5員環又は6員環のキレート環が形成されるように、2〜6個の金属ドナー原子が配置されている、請求項16記載の配位子結合体。
【請求項18】
前記キレート剤がジアミンジオキシム、N3S配位子、N2S2配位子、N4配位子及びN2O2配位子から選択される、請求項17記載の配位子結合体。
【請求項19】
請求項1乃至請求項14のいずれか記載の画像診断剤を、生体適合性担体と共に、哺乳動物への投与に適した形態で含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項7乃至請求項11記載の画像診断剤を含む、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項12乃至請求項14記載の画像診断剤を含む、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項12乃至請求項14記載の画像診断剤の調製に有用な前駆体であって、前記画像診断剤を得るためのヨウ素のγ−放射性同位体との反応に好適な基を含む前駆体。
【請求項23】
ヨウ素のγ−放射性同位体との反応に好適な前記基がヨウ化アリール、臭化アリール、フェノール基、トリアルキルスズ誘導体、トリアルキルシリル誘導体、トリアゼン基又はアリールジアゾニウム塩から選択される、請求項22記載の前駆体。
【請求項24】
請求項19乃至請求項21記載の医薬組成物の調製用キット。
【請求項25】
医薬組成物が請求項20で定義の通りであって、請求項15乃至請求項18記載の配位子結合体を含む、請求項24記載のキット。
【請求項26】
γ−放射性金属が99mTcである、請求項25記載のキット。
【請求項27】
生体適合性還元剤をさらに含む、請求項25及び請求項26記載のキット。
【請求項28】
生体適合性還元剤がSn2+である、請求項27記載のキット。
【請求項29】
医薬組成物が請求項21で定義の通りであって、請求項22及び請求項23記載の前駆体を含む、請求項24記載のキット。
【請求項30】
請求項19乃至請求項21記載の医薬組成物の、循環器疾患の画像診断のための使用。
【請求項31】
循環器疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項30記載の使用。
【請求項32】
循環器疾患が鬱血性心不全である、請求項30記載の使用。
【請求項33】
請求項19乃至請求項21記載の医薬組成物の、炎症性疾患の画像診断のための使用。
【請求項34】
炎症性疾患が慢性閉塞性肺疾患である、請求項33記載の使用。
【請求項1】
γ−放射性核種で標識した式Iのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む画像診断剤。
【化1】
式中、R1は水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C6−14アリール、C7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC6−8シクロアルキル環又はC4−6複素環を形成するか、或いはR4と共に5〜7個の原子及びN又はOから選択される1又は2個のヘテロ原子を含有するC4−6複素環を形成し、
R2及びR3は各々独立に水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アミノ、C6−14アリール、C7−20アリールアルキル又はC7−20カルバモイルアリールであり、
R4はC6−14アリール、C4−6ヘテロアリール、C7−20アリールアルキル、C7−20カルバモイルアリール又はアリールカルバモイルアリールであり、
R5は水素又はC1−6アルキルから選択される。
【請求項2】
R1がC1−6アルキル、C6−14アリール又はC7−20アリールアルキルから選択されるか、或いはR5及びそれが結合した炭素と共にC4−6複素環を形成し、
R2が水素、ヒドロキシ、メチル、イソプロピル、メトキシ又はハロゲンであり、
R3が水素であり、
R4がピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1がフェニレンであり、R″′がCH2又はC=Oであり、yが0又は1であり、zが0又は1であり、
R5が水素である、
請求項1記載の画像診断剤。
【請求項3】
R1がメチル、イソブチル、イソプロピル、ベンジル又はヒドロキシベンジルであり、
R2がヒドロキシ、ハロゲン又はメトキシであり、
R3が水素であり、
R4がピリジル又は(Ar1)y−(R″′)z(NH)−フェニルであって、式中、Ar1が1,4−フェニレンであり、R″′がCH2又はC=Oであり、yが0又は1であり、zが0又は1であり、
R5が水素である、
請求項1又は請求項2記載の画像診断剤。
【請求項4】
R5が水素であり、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が式Iaのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤である、請求項1乃至請求項3記載の画像診断剤。
【化2】
【請求項5】
R1〜R4の1個が前記γ−放射性核種を含む、請求項1乃至請求項4記載の画像診断剤。
【請求項6】
R2がスルホンアミドに対してパラ位にあり、R3がスルホンアミドに対してメタ位にある、請求項1乃至請求項5記載の画像診断剤。
【請求項7】
前記γ−放射性核種が99mTc、111In、113mIn、67Cu又は67Gaから選択されるγ−放射性金属である、請求項1乃至請求項6のいずれか記載の画像診断剤。
【請求項8】
前記γ−放射性金属が、前記γ−放射性金属と1個以上の配位子との金属錯体の一部として存在する、請求項7記載の画像診断剤。
【請求項9】
前記金属錯体が式IのR1、R2又はR4の位置で結合している、請求項8記載の画像診断剤。
【請求項10】
式IIの画像診断剤である、請求項8及び請求項9記載の画像診断剤。
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}]−(A)n]m−[金属錯体]
(II)
式中、−(A)n−はリンカー基であって、式中、各Aは独立にCR′2、CR′=CR′、C≡C、CH2CH2O、CR′2CO2、CO2CR′2、NR′CO、CONR′、NR′(C=O)NR′、NR′(C=S)NR′、SO2NR′、NR′SO2、CR′2OCR′2、CR′2SCR′2,CR′2NRCR′2、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基又はC3−12ヘテロアリーレン基であり、
R′はH、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C1−4アルコキシアルキル又はC1−4ヒドロキシアルキルから各々独立に選択され、
nは0〜50の整数であり、
mは1、2又は3である。
【請求項11】
前記1個以上の配位子が、ジアミンジオキシム、N3S、N2S2、N4及びN2O2から選択されるドナーセットを有するキレート剤を含む、請求項8乃至請求項10記載の画像診断剤。
【請求項12】
前記γ−放射性核種がヨウ素のγ−放射性同位体である、請求項1乃至請求項6記載の画像診断剤。
【請求項13】
前記ヨウ素のγ−放射性同位体が123Iである、請求項12記載の画像診断剤。
【請求項14】
ヨウ素のγ−放射性同位体が直接共有結合を介して式I又は式Iaの芳香環の3位又は4位に結合している、請求項12及び請求項13記載の画像診断剤。
【請求項15】
99mTc、111In、113mIn、67Cu又は67Gaから選択されるγ−放射性金属の配位に適した配位子に結合している式I又は式Iaのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む配位子結合体。
【請求項16】
式IIaの配位子結合体である、請求項15記載の配位子結合体。
[{マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤}−(An)]m−[配位子]
(IIa)
式中、(An)、n及びmは請求項9における式IIと同定義である。
【請求項17】
前記配位子がキレート剤であって、キレート剤中、金属配位により5員環又は6員環のキレート環が形成されるように、2〜6個の金属ドナー原子が配置されている、請求項16記載の配位子結合体。
【請求項18】
前記キレート剤がジアミンジオキシム、N3S配位子、N2S2配位子、N4配位子及びN2O2配位子から選択される、請求項17記載の配位子結合体。
【請求項19】
請求項1乃至請求項14のいずれか記載の画像診断剤を、生体適合性担体と共に、哺乳動物への投与に適した形態で含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項7乃至請求項11記載の画像診断剤を含む、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項12乃至請求項14記載の画像診断剤を含む、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項12乃至請求項14記載の画像診断剤の調製に有用な前駆体であって、前記画像診断剤を得るためのヨウ素のγ−放射性同位体との反応に好適な基を含む前駆体。
【請求項23】
ヨウ素のγ−放射性同位体との反応に好適な前記基がヨウ化アリール、臭化アリール、フェノール基、トリアルキルスズ誘導体、トリアルキルシリル誘導体、トリアゼン基又はアリールジアゾニウム塩から選択される、請求項22記載の前駆体。
【請求項24】
請求項19乃至請求項21記載の医薬組成物の調製用キット。
【請求項25】
医薬組成物が請求項20で定義の通りであって、請求項15乃至請求項18記載の配位子結合体を含む、請求項24記載のキット。
【請求項26】
γ−放射性金属が99mTcである、請求項25記載のキット。
【請求項27】
生体適合性還元剤をさらに含む、請求項25及び請求項26記載のキット。
【請求項28】
生体適合性還元剤がSn2+である、請求項27記載のキット。
【請求項29】
医薬組成物が請求項21で定義の通りであって、請求項22及び請求項23記載の前駆体を含む、請求項24記載のキット。
【請求項30】
請求項19乃至請求項21記載の医薬組成物の、循環器疾患の画像診断のための使用。
【請求項31】
循環器疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項30記載の使用。
【請求項32】
循環器疾患が鬱血性心不全である、請求項30記載の使用。
【請求項33】
請求項19乃至請求項21記載の医薬組成物の、炎症性疾患の画像診断のための使用。
【請求項34】
炎症性疾患が慢性閉塞性肺疾患である、請求項33記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−519216(P2006−519216A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502261(P2006−502261)
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000524
【国際公開番号】WO2004/069365
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
Linux
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000524
【国際公開番号】WO2004/069365
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
Linux
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】
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