説明

MP−52の使用

【課題】腱/靭帯様組織誘導活性を有し、腱/靭帯様組織の形成および修復を誘導するための組成物および使用方法の提供。
【解決手段】骨形態形成蛋白ファミリー(BMPs)であるMP−52を有効量含有する治療組成物および使用方法。さらに、該ファミリーのBMP−2を追加成分として含有する治療組成物および使用方法。該治療組成物は、結合組織と骨との間の接着の再生を必要とする疾患および歯周靱帯の再生を必要とする疾患に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製蛋白の新規ファミリー、およびかかる蛋白を含有する組成物に関し、該組成物は腱/靭帯様組織の形成、傷の治癒および靭帯ならびに他の組織の修復に有用である。骨形態形成蛋白の活性を増大させるための組成物中にこれらの蛋白を用いてもよい。
【背景技術】
【0002】
骨、軟骨、腱、および骨ならびに他の組織抽出物に存在する他の組織の形成のに関与する分子の検索は、骨形態形成蛋白(BMPs)と呼ばれる新規なセットの分子の発見につながった。BMP−1ないしBMP−11と命名されたいくつかの蛋白の構造はすでに調べられている(例えば、特許文献1参照)。これらの蛋白のユニークな誘導活性ならびにそれらの骨における存在は、それらが骨修復プロセスにおける重要なレギュレーターであり、骨組織の通常の維持に必要とされうるということを示唆する。他の生組織の形成において役割を果たすさらなる蛋白を同定する必要がある。
【特許文献1】米国特許第5141905号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の解決課題は、腱/靭帯様組織誘導活性を有し、腱/靭帯様組織の形成および修復を誘導するための組成物において有用である蛋白のファミリーを新たに同定することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、腱/靭帯様組織誘導活性を有し、腱/靭帯様組織の形成および修復を誘導するための組成物において有用である蛋白のファミリーのDNA配列およびアミノ酸配列を新たに同定し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、下記のものを提供する:
(1)DNA配列が、配列番号:1のヌクレオチド496、571もしくは577から882までの配列の対立遺伝子変種配列から選択されるものである、腱/靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−12蛋白をコードする単離DNA;
(2) DNA配列が、配列番号:25のヌクレオチド605もしくは659から964までの配列の対立遺伝子変種配列から選択されるものである、腱/靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−13蛋白をコードする単離DNA;
(3)(1)または(2)のDNA配列で形質転換された宿主細胞;
(4)発現制御配列に作動可能に連結された、(1)または(2)のDNAを含むベクター;
(5)(4)のベクターで形質転換された宿主細胞;
(6)以下の群:
(a)配列番号:2に示すアミノ酸−25からアミノ酸104まで;
(b)配列番号:2に示すアミノ酸1からアミノ酸104まで;および
(c)配列番号:2に示すアミノ酸3からアミノ酸104まで
から選択されるアミノ酸配列の対立遺伝子変種配列から選択されるアミノ酸配列を含む精製ポリペプチド;
(7)以下の群:
(a)配列番号:26示すアミノ酸1からアミノ酸120まで;および
(b)配列番号:26示すアミノ酸19からアミノ酸120まで
から選択されるアミノ酸配列の対立遺伝子変種配列から選択されるアミノ酸配列を含む精製ポリペプチド;
(8)腱/靱帯様組織の形成を誘導する能力を有することにより特徴づけられる(6)のポリペプチド;
(9)腱/靱帯様組織の形成を誘導する能力を有することにより特徴づけられる(7)のポリペプチド;
(10)医薬上許容される担体と混合された有効量の(8)または(9)のポリペプチドを含む、腱または靱帯に関連した疾病を治療または予防するための医薬組成物;
(11)医薬上許容される担体と混合された有効量の(8)または(9)のポリペプチドを含む、腱/靱帯様組織の治癒および組織修復のための医薬組成物;
(12)医薬上許容される担体と混合された有効量の(8)または(9)のポリペプチドを含む、結合組織と骨との間の接着を再生させるための医薬組成物;
(13)医薬上許容される担体と混合された有効量の(8)または(9)のポリペプチドを含む、腱/靱帯様組織の修復のための医薬組成物;
(14)腱/靱帯様組織の疾患を治療するための治療組成物を調製するための、有効量の(8)または(9)のポリペプチドの使用方法;
(15)結合組織と骨との間の接着の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物を製造するための、有効量の(8)または(9)のポリペプチドの使用方法;
(16)結合組織と骨との間の接着の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物を製造するための、有効量のMP−52の使用方法;
(17)歯周靱帯の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物を製造するための、有効量の(8)または(9)のポリペプチドの使用方法;
(18)歯周靱帯の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物を製造するための、有効量のMP−52の使用方法;
(19)結合組織と骨との間の接着の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物であってさらにBMP−2を含有するものを製造するための、有効量の(8)または(9)のポリペプチドの使用方法;
(20)結合組織と骨との間の接着の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物であってさらにBMP−2を含有するものを製造するための、有効量のMP−52の使用方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の解決課題は、腱/靭帯様組織誘導活性を有し、腱/靭帯様組織の形成および修復を誘導するための組成物において有用である蛋白のファミリーが新たに提供され、効果的に腱/靭帯様組織の形成および修復を誘導することができる。
【発明を解決するための手段】
【0007】
1の具体例において、本発明は、発明者らがVL−1と命名した腱/靭帯様組織誘導蛋白をコードするDNA分子からなる。この新規蛋白は、現在BMP−12と呼ばれている。さらに本発明は、BMP−12関連蛋白をコードするDNA分子を包含する。
【0008】
BMP−12関連蛋白は、BMP−12およびVL−1を含むBMP/TGF−β/Vg−1ファミリーの蛋白の部分集合であり、例えば、厳密性を減じた条件下で、下記プラーイマー#6および#7のごときBMP−12特異的プライマーを用いるPCRを用いてクローン化され同定されるDNA配列によりコードされる腱/靭帯様組織誘導蛋白として定義される。BMP−12関連蛋白をコードするDNA配列が、アミノ酸レベルにおいて、配列番号:1のアミノ酸#3から#103までと少なくとも80%の相同性を有することが好ましい。
【0009】
好ましくは、DNA分子は、配列番号:1に示すBMP−12、またはさらに本明細書において説明するBMP−12関連蛋白をコードするDNA配列を有する。BMP−12蛋白およびBMP−12関連蛋白はともに、実施例において説明するアッセイにおいて腱/靭帯様組織の形成を誘導する能力により特徴づけられる。
【0010】
本発明DNA分子は、好ましくは、配列番号:1に記載されたDNA配列、より好ましくは、配列番号:1のヌクレオチド#496から#882まで、#571から#882までもしくは#577から#882まで;あるいは厳密条件下で上記のものにハイブリダイゼーションし、腱/靭帯様組織を形成する能力を示す蛋白をコードしているDNA配列からなる。本発明DNA分子は、配列番号:25に記載したDNA配列;より好ましくは配列番号:25のヌクレオチド#604もしくは#658から#964までからなっていてもよい。
【0011】
さらに本発明DNA分子は、配列番号:2または配列番号:26に示すアミノ酸配列を有するBMP−12関連蛋白をコードするDNA配列、ならびに天然に存在する対立遺伝子および配列番号:2もしくは配列番号:26の等価な縮重コドン配列からなるDNA分子を包含する。好ましくは、本発明DNA配列は、配列番号:2のアミノ酸#25から#104まで、#1から#104までもしくは#3から#103まで;あるいは配列番号:26のアミノ酸#1から#120までもしくは#19から#120までをコードする。DNA配列は、5'から3'方向において、プロペプチドをコードするヌクレオチド、および配列番号:2のアミノ酸#25から#104まで、#1から#104までもしくは#3から#103まで;あるいは配列番号:26のアミノ酸#1から#120までもしくは#19から#120までをコードするヌクレオチドからなっていてもよい。好ましくは、上記具体例において有用なプロペプチドは、ネイティブ(native)なBMP−12プロペプチドおよびTGF−βスーパーファミリーまたはBMPファミリーの異なるメンバー由来の蛋白プロペプチドからなる群より選択される。さらに本発明は、厳密条件下で上記DNA配列にハイブリダイゼーションし、腱/靭帯様組織を形成する能力を示す蛋白をコードしているDNA配列からなる。
【0012】
他の具体例において、本発明は、BMP−12蛋白またはBMP−12関連蛋白をコードしているDNA分子を含んでいる宿主細胞およびベクターからなる。宿主細胞およびベクターは、さらに発現調節配列に作動可能に結合したコーディング配列からなっていてもよい。
【0013】
もう1つの具体例において、本発明は、精製BMP−12関連蛋白の製造方法であって、(a)BMP−12関連蛋白をコードするヌクレオチド配列からなる上記DNA分子またはベクターで形質転換した宿主細胞を培養し;次いで、(b)培地より該BMP−12関連蛋白を回収し精製する工程からなる方法よりなる。好ましい具体例において、該方法は、(a)配列番号:1に示すヌクレオチド配列#496、#571もしくは#577から#879もしくは#882まで;あるいは配列番号:25のヌクレオチド配列#604もしくは#658から#963までからなるDNA分子で形質転換した細胞を培養し;次いで、
(b)配列番号:2に示すアミノ酸#−25、#1もしくは#3からアミノ酸#103もしくは104まで;あるいは配列番号:26に示すアミノ酸#1もしくは#19からアミノ酸#120までのアミノ酸配列からなる蛋白を該培地から回収し精製することからなる。また、本発明は上記方法により製造される精製蛋白を包含する。
【0014】
さらに本発明は、腱/靭帯様組織の形成を誘導する能力によって特徴づけられる精製BMP−12関連蛋白からなる。好ましくは、BMP−12関連蛋白は配列番号:2に示すアミノ酸配列からなる。好ましくは、ポリペプチドは配列番号:2に示すアミノ酸−25、#1もしくは#3から#103もしくは#104まで;あるいは配列番号:26に示すアミノ酸#1もしくは#19から#120までからなる。好ましい具体例において、精製ポリペプチドは、それぞれが配列番号:2のアミノ酸配列とともに形成される、2つのサブユニットからなるダイマーの形態であってもよい。
【0015】
もう1つの具体例において、本発明は、有効量の上記BMP−12関連蛋白からなる組成物よりなる。該組成物において蛋白は医薬上許容される担体と混合されていてもよい。
【0016】
また、本発明は、腱炎、または他の腱もしくは靭帯の欠損の治療のための、および腱/靭帯様組織の形成を必要とする患者における腱/靭帯様組織の形成のための、腱/靭帯様組織の治癒および組織の修復方法であって、該患者に有効量の上記組成物を投与することからなる方法を包含する。
【0017】
他の具体例は、BMP−12をコードするDNA配列に正しい読み取り枠で結合したTGF−βスーパーファミリーのメンバー由来のプロペプチドをコードしているDNA配列からなるキメラDNA分子を包含する。1の適当なプロペプチドはBMP−2由来のプロペプチドである。また、本発明は、配列番号:2に示すアミノ酸配列有する1のモノマー、およびTGF−βサブファミリーの別の蛋白のアミノ酸配列を有する1のモノマーからなるヘテロダイマー蛋白分子を包含する。
【0018】
最後に、本発明は、腱/靭帯様組織の形成を必要とする患者における腱/靭帯様組織の形成の誘導方法であって、腱/靭帯様組織の形成を誘導する能力を示す蛋白であって配列番号:2または配列番号:4または配列番号:26に示すアミノ酸配列を有する蛋白からなる有効量の組成物を該患者に投与することからなる方法よりなる。より好ましくは、アミノ酸配列は、(a)配列番号:2のアミノ酸#25、#1もしくは#3から#103もしくは#104;(b)配列番号:4のアミノ酸#1もしくは#19から#120まで;(c)配列番号:26のアミノ酸#1もしくは#19から#119もしくは#120まで;(d)腱/靭帯形成能を示す(a)、(b)または(c)の変異体および/または変種のうちの1つである。上記方法の他の具体例において、蛋白は、配列番号:1、配列番号:3または配列番号:25のDNA配列によりコードされ、より好ましくは、(a)配列番号:1のヌクレオチド#496、#571もしくは#577から#879もしくは#882まで;(b)配列番号:3のヌクレオチド#845もしくは#899から#1201もしくは#1204まで;(c)配列番号:25のヌクレオチド#605もしくは#659から#961もしくは#964まで;および(d)厳密条件下で(a)または(b)とハイブリダイゼーションし、腱/靭帯様組織の形成能を示す蛋白をコードしている配列のうちの1つによりコードされる。
【0019】
配列の説明
配列番号:1はヒト・BMP−12をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号:2は成熟ヒト・BMP−12ポリペプチドからなるアミノ酸配列である。
配列番号:3は蛋白MP52をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号:4は成熟MP52ポリペプチドからなるアミノ酸配列である。
配列番号:5はヒト・BMP−12をコードする配列の特異的に増幅された部分のヌクレオチド配列である。
配列番号:6は配列番号:5のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:7はヒト・VL−1をコードする配列の特異的に増幅された部分のヌクレオチド配列である。
配列番号:8は配列番号:7のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:9はイー・コリにおけるBMP−12の発現に使用されるプラスミドpALV1−781のヌクレオチド配列である。
配列番号:10はネズミ・クローンmV1のフラグメントのヌクレオチド配列である。
配列番号:11はmV1によりコードされるネズミ・蛋白のフラグメントのアミノ酸配列である。
配列番号:12はネズミ・クローンmV2のフラグメントのヌクレオチド配列である。
配列番号:13はmV2によりコードされるネズミ・蛋白のフラグメントのアミノ酸配列である。
配列番号:14はネズミ・クローンmV9のフラグメントのヌクレオチド配列である。
配列番号:15はmV9によりコードされるネズミ・蛋白のフラグメントのアミノ酸配列である。
配列番号:16はBMP/TGF−β/Vg−1蛋白のコンセンサス配列のアミノ酸配列である。最初のXaaはGlnまたはAsnのいずれかを示し;2番目のXaaはValまたはIleのいずれかを表す。
配列番号:17はオリゴヌクレオチド#1のヌクレオチド配列である。
配列番号:18はBMP/TGF−β/Vg−1蛋白のコンセンサス配列のアミノ酸配列である。XaaはValまたはLeuのいずれかを示す。
配列番号:19はオリゴヌクレオチド#2のヌクレオチド配列である。
配列番号:20はオリゴヌクレオチド#3のヌクレオチド配列である。
配列番号:21はオリゴヌクレオチド#4のヌクレオチド配列である。
配列番号:22はオリゴヌクレオチド#5のヌクレオチド配列である。
配列番号:23はオリゴヌクレオチド#6のヌクレオチド配列である。
配列番号:24はオリゴヌクレオチド#7のヌクレオチド配列である。
配列番号:25はヒト・VL−1(BMP−13)をコードする配列のヌクレオチド配列である。
配列番号:26は配列番号:25のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:27はBMP−1プロペプチドとBMP−12の成熟コーディング配列との融合物をコードするヌクレオチド配列ある。
配列番号:28は配列番号:27のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:29はネズミ・mV1蛋白をコードするヌクレオチド配列である。X01はVal、Ala、GluまたはGly;X02はSer、Pro、ThrまたはAla;X03はSerまたはArg;X04はLeu、Pro、GlnまたはArg;X05はCysまたはTrp;X06はVal、Ala、AspまたはGly;X07はVal、Ala、GluまたはGly;X08はGln、LysまたはGluである。
配列番号:30は配列番号:29のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:31はネズミ・mV2蛋白をコードするヌクレオチド配列である。X01はProまたはThr;X02はValである。
配列番号:32は配列番号:31のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列である。X01およびX02は配列番号:31と同じである。
配列番号:33はヒト・BMP−12蛋白をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号:34は配列番号:33のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列である。
配列番号:35はオリゴヌクレオチド#8のヌクレオチド配列である。
【0020】
発明の詳細な記述
本発明DNA配列は、さらに後に説明するように、腱/靭帯様組織の形成を誘導する蛋白の製造にとり有用である。さらに本発明DNA配列は、同様の活性を有するBMP−12関連蛋白をコードするさらなるDNA配列の単位およびクローニングにとり有用である。これらのBMP−12関連蛋白は他の種由来の同族体であってもよく、あるいは同一種内の関連蛋白であってもよい。
【0021】
さらに、本発明のさらなる態様は、腱/靭帯様組織誘導蛋白の発現をコードするDNA配列である。かかる配列は、配列番号:1または配列番号:25に示す5'から3'の方向のヌクレオチド配列、遺伝コードの縮重を除いては配列番号:1または配列番号:25と同じであって配列番号:2または配列番号:26の蛋白をコードしているDNA配列を包含する。さらに、厳密条件下で配列番号:1または配列番号:25とハイブリダイゼーションし、腱または靭帯の形成を誘導する能力を有する蛋白をコードしているDNA配列は本発明に包含される。好ましいDNA配列は、マニアティス(Maniatis)ら,モレキュラー・クローニング(ア・ラボラトリー・マニュアル)(Molecular Cloning(A Laboratory Manual)),コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)(1982年),387〜389頁に記載の厳密条件下でハイブリダイゼーションするものを包含する。結局、配列番号:1または25の配列の対立遺伝子または他の変種は、かかるヌクレオチド変化がペプチド配列の変化を引き起こしても、引き起こさなくても、そのペプチド配列がやはり腱/靭帯様組織誘導活性を有する場合には本発明に包含される。
【0022】
ヒト・BMP−12のDNA配列(配列番号:1)およびアミノ酸配列(配列番号:2)を配列表に示す。本発明組成物および方法にとり有用な別の蛋白はVL−1である。VL−1は、BMP−12由来の配列を用いてクローン化されたBMP−12関連蛋白である。本発明者らはここにVL−1をBMP−13と命名した。VL−1の部分DNA配列(配列番号:7)およびコードされるアミノ酸配列(配列番号:8);ならびに成熟VL−1をコードするDNA配列(配列番号:25)およびコードされるアミノ酸配列(配列番号:26)を配列表に示す。配列番号:1および2のBMP−12配列に関してさらなる説明をするが、本発明は、配列番号:25および26に示すVL−1配列のごとき他のBMP−12関連配列について行われてもよい同様の改変および改良を包含することが認識されよう。
【0023】
配列番号:1に示すBMP−12配列は、全成熟配列およびプロペプチドの約190個のアミノ酸を含む。成熟ヒト・BMP−12蛋白のコーディング配列は配列番号:1のヌクレオチド#496または#571から開始してヌクレオチド#882まで続くと思われる。TGF−β蛋白に特徴的な7個のシステインの構造のうち最初のシステインは#577において始まる。最後のシステインは#879において終了する。よって、活性BMP−12種をコードするDNA配列は配列番号:1のヌクレオチド#577から#879までからなるであろうと考えられる。
【0024】
CHO細胞のごとき哺乳動物細胞により発現されるようなBMP−12は、異なるN末端を有するBMP−12蛋白の活性種の異種集団として存在すると考えられる。すべての活性種は、配列番号:2のアミノ酸#3におけるシステイン残基から始まりアミノ酸103における最後のシステイン残基もしくはアミノ酸104以降のストップコドンまで続くアミノ酸配列を含む。他の活性種は、N末端方向におけるさらなるアミノ酸を含む。さらに本明細書に記載したように、哺乳動物細胞により産生される活性種のN末端は、ペプチド配列Arg−X−X−Argをコードしているコンセンサス開裂部位の後ろから始まると考えられる。よって、活性BMP−12蛋白をコードするDNA配列は、配列番号:1のヌクレオチド#196、199、208、217、361、388、493、496もしくは571からヌクレオチド#879もしくは#882までのいずれかにおいて開始するヌクレオチド配列からなるヌクレオチド配列を有しているであろうと考えられる。
【0025】
ヒト・BMP−12の1の活性種のN末端を、イー・コリ(E.coli)における発現により実験的に決定したところ、以下のようであった:[M]SRXSRKPLHVDF(ここにXは明確でないシグナルのアミノ酸残基を示し、その位置のシステイン残基と矛盾しない)。よって、このBMP−12種のN末端は配列番号:1のアミノ酸#1におけるものであり、該BMP−12種をコードする
【0026】
DNA配列は配列番号:1のヌクレオチド#571において開始するであろうと思われる。このヒト・BMP−12種のダイマーの見かけの分子量をSDS−PAGEにより決定したところ、ノベックス(Novex)16%トリシンゲル上で約20〜22kdであった。ヒト・BMP−12蛋白は、0.1%トリフルオロ酢酸中で無色透明溶液として存在する。
【0027】
先に説明したように、BMP−12関連蛋白は蛋白のBMP/TGF−β/Vg−1ファミリーの部分集合であり、例えば、厳密性を減じた条件下で下記プライマー#6および#7のごときBMP−12特異的プライマーを用いるPCRを用いてクローン化され同定されうるDNA配列によりコードされる腱/靭帯様組織誘導蛋白として定義されうる。本発明DNA配列が、アミノ酸レベルにおいて、配列番号:1のアミノ酸#3から#103までをコードするDNAに関して少なくとも80%の相同性を有することが好ましい。本発明の目的からすると、用語BMP−12関連蛋白はヒト・MP52蛋白を包含しない。配列番号:1および配列番号:3の配列の情報および図1に示す比較を用いると、BMP−12関連蛋白をコードする遺伝子のクローニングを可能にするBMP−12配列に対するプライマーを設計することは当業者の範囲内である。
【0028】
本発明BMP−12関連蛋白の一例は、現在BMP−13と呼ばれるVL−1である。全成熟BMP−13の配列およびBMP−13のプロペプチドの少なくとも一部の配列を配列番号:25に示す。BMP−12と同様、CHO細胞のごとき哺乳動物細胞により発現されるようなBMP−13は、異なるN末端を有するBMP−13蛋白の活性種の異種集団として存在すると考えられる。すべての活性種は、配列番号:26のアミノ酸#19におけるシステイン残基から始まりアミノ酸119における最後のシステイン残基もしくはアミノ酸120以降のストップコドンまで続くアミノ酸配列を含む。他の活性種は、N末端方向におけるさらなるアミノ酸を含む。さらに本明細書に記載したように、哺乳動物細胞により産生される活性種のN末端は、ペプチド配列Arg−X−X−Argをコードしているコンセンサス開裂部位の後ろから始まると考えられる。よって、活性BMP−13蛋白をコードするDNA配列は、配列番号:25のヌクレオチド#410、458、602、605もしくは659からヌクレオチド#961もしくは#964までのいずれかにおいて開始するヌクレオチド配列からなるヌクレオチド配列を有しているであろうと考えられる。
【0029】
本発明において有用な精製腱/靭帯様組織誘導蛋白を製造するためには、適当なコーディング配列、特に配列番号:1のヌクレオチド#496、#571もしくは#577から#879もしくは#882までの配列をコードするDNAからなるDNA配列で形質転換された宿主細胞を培養し;次いで、配列番号:2のアミノ酸#−25、#1もしくは#3から#103もしくは#104までにより表される配列のアミノ酸配列または実質的にこれと相同的な配列を含む蛋白を培地から回収し精製することからなる方法を用いる。もう1つの具体例において、該方法は、適当なコーディング配列、特に配列番号:25のヌクレオチド#605もしくは#659から#961もしくは#964までの配列をコードするDNAからなるDNA配列で形質転換された宿主細胞を培養し;次いで、配列番号:26のアミノ酸#1もしくは#19から#119もしくは#120までにより表される配列のアミノ酸配列または実質的にこれと相同的な配列を含む蛋白を培地から回収し精製することからなる。
【0030】
ヒト・MP52のDNAはWO93/16099に記載されており、その開示を参照により本明細書に取り入れる。しかしながら、この文書は該蛋白の腱/靭帯様組織形成能、または腱/靭帯様組織誘導のための組成物におけるその使用を開示していない。もともと、ヒト・MP52はヒト・胚組織由来のRNAを用いて単離された。ヒト・MP52ヌクレオチド配列(配列番号:3)およびコードされるアミノ酸配列(配列番号:4)を配列表に示す。MP52蛋白は配列番号:3のヌクレオチド#845から始まり配列番号:3のヌクレオチド#1204をまで続くと思われる。TGF−β蛋白に特徴的な7個のシステインの構造のうち最初のシステインは#899において始まる。最後のシステインは#1201において終了する。MP52蛋白の他の活性種は配列番号:3のヌクレオチド#845からN末端方向においてさらなるヌクレオチドを有していてもよい。
【0031】
本発明精製ヒト・MP52蛋白は、配列番号:3のヌクレオチド#845から#1204までの配列をコードするDNAからなるDNA配列で形質転換された宿主細胞を培養し;次いで、配列番号:4のアミノ酸#1から#120までにより表される配列のアミノ酸配列または実質的にこれと相同的な配列を含む蛋白を培地から回収し精製することにより製造されうる。さらに配列番号:4のアミノ酸#17もしくは#19から#119もしくは#120までのアミノ酸配列は活性を保持しているであろうと考えられる。よって、ヌクレオチド#845、#893もしくは#899から#1201もしくは#1204までのDNA配列は活性蛋白をコードすると考えられる。
【0032】
哺乳動物宿主細胞における蛋白発現のためには、成熟蛋白に関するコーディング配列に正しい読み取り枠において結合している、宿主細胞による蛋白分泌に適するプロペプチドをコードするコーディング配列で宿主細胞を形質転換する。例えば、BMP−2以外の哺乳動物蛋白の前駆体部分をコードするDNAが成熟BMP−2蛋白をコードするDNAに融合されている米国特許第5,168,050号参照(その開示を参照により本明細書に取り入れる)。よって、本発明は、腱/靭帯様組織誘導ポリペプチドをコードするDNA配列に正しい読み取り枠において結合している、蛋白のTGF−βスーパーファミリーのメンバー由来のプロペプチドをコードするDNA配列からなるキメラDNA分子を包含する。
【0033】
用語「キメラ」は、プロペプチドが、コードされる成熟ポリペプチド以外の異なるポリペプチドに由来することを意味するために用いられる。もちろん、配列番号:2、配列番号:4または配列番号:26に示す成熟蛋白をコードしているコーディング配列に正しい読み取り枠において結合しているネイティブなプロペプチドをコードする配列をコードしているDNA配列を用いて宿主細胞を形質転換してもよい。ネイティブなプロペプチドの全配列を、当該分野において知られた方法により、配列番号:1、配列番号:3または配列番号:25に開示された配列を用いて決定して、クローン全体を同定し単離するのに適したプローブを設計してもよい。
【0034】
また本発明は、他の蛋白性物質をコードしているDNA配列が結合しておらず、蛋白を含む腱/靭帯様組織の発現をコードしている新規DNA配列を包含する。これらのDNA配列は、配列番号:1に示す5'から3'方向の配列、および厳密条件下[例えば、65℃において、0.1X SSC、0.1% SDS;ティー・マニアティスら,モレキュラー・クローニング(ア・ラボラトリーマニュアル),コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(1982年),387〜389頁参照]においてそれにハイブリダイゼーションし、腱/靭帯様組織誘導活性を有する蛋白をコードしている配列を包含する。
【0035】
同様に、配列番号:1または配列番号:25の配列によりコードされる蛋白、あるいは配列番号:2または配列番号:26のアミノ酸配列からなる蛋白をコードするが、遺伝コードの縮重または対立遺伝子変異(アミノ酸変化を引き起こしても、引き起こさなくてもよい種の集団における天然に存在する塩基変化)のためにコドン配列が異なっているDNA配列も、本明細書記載の腱/靭帯様組織誘導蛋白をコードする。コードされるポリペプチドの活性、半減期または生産を増大させるために点突然変異または誘導された修飾(挿入、欠失、および置換を含む)により生じた配列番号:1または配列番号:25のDNA配列のバリエーションも、本発明に包含される。
【0036】
本発明のもう1つの態様は、腱/靭帯様組織誘導蛋白の新規製造方法を提供する。本発明方法は、調節配列の調節下にある本発明蛋白をコードしているDNA配列で形質転換された適当な細胞系を培養しすることからなる。形質転換された宿主細胞を培養し、培地から蛋白を回収し精製する。精製蛋白は、同時生成される他の蛋白ならびに他の汚染物質を実質的に含まない。
【0037】
適当な細胞または細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のごとき哺乳動物細胞であってもよい。上記のごとく、哺乳動物細胞における蛋白発現は蛋白の分泌を保証する適当なプロペプチドを必要とする。適当な哺乳動物宿主細胞および形質転換、培養、増幅、スクリーニング、生成物の生産および精製のための方法は当該分野において知られている。例えば、ゲシング(Gething)およびサムブルック(Sambrook),ネイチャー(Nature),第293巻:620〜625頁(1981年)、あるいは、例えば、カウフマン(Kaufman)ら,モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Moll.Cell.Biol.),第5巻(7):1750〜1759頁(1985年)またはホウリー(Howley)ら,米国特許第4,419,446号参照。付記した実施例において説明されるもう1つの適当な哺乳動物細胞系はサル・COS−1細胞系である。哺乳動物細胞CV−1も適当である。
【0038】
細菌細胞も適当な宿主でありうる。例えば、種々のイー・コリ(E.coli)株(例えば、HB101、MC1061)はバイオテクノロジーの分野において宿主細胞としてよく知られている。ビー・スブチリス(B.subtilis)、シュードモナス(Pseudomonas)、他の枯草菌等を本発明方法に用いてもよい。細菌細胞において蛋白を発現させるには、プロペプチドをコードするDNAは必要ない。
【0039】
TGF−βファミリーを含む哺乳動物細胞の細菌での発現は、グリコシレーションされていない形態、および封入体として知られる不溶性ペレット形態の蛋白を生じることが知られている。これらの封入体を可溶化し、カオトロピック(chaotropic)試薬を用いて蛋白を変性させ、次いで、その可溶性形態を製造するために十分に正しく再生させるための方法は、当該分野において記載されている。例えば、EP0433225(参照によりその開示を本明細書に取り入れる)参照。
【0040】
別法として、所望蛋白が融合パートーを伴った融合蛋白として発現される、遺伝子融合蛋白の発現のごとき封入体形成を回避する方法が工夫されてきた。融合蛋白は、後で開裂されて所望蛋白を生じる。イー・コリに関するかかる遺伝子融合発現系の一例は、融合パートナーとしてのイー・コリ・チオレドキシン遺伝子の使用に基づいている。ラバリエ(LaVallie)ら,バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)第11巻:187〜193頁(1993年)(その開示を参照により本明細書に取り入れる)。
【0041】
当業者に知られた酵母細胞の多くの株も、本発明ポリペプチド発現のための宿主細胞として使用されうる。さらに、所望ならば、本発明方法における宿主細胞として昆虫細胞を用いてもよい。例えば、ミラー(Miller)ら,ジェネティック・エンジニアリング(Genetic Engineering)第8巻:277〜298頁(プレナム・プレス(Plenum Press,1986年)およびそこに引用された文献参照。
【0042】
本発明のもう1つの態様は、これらの腱/靭帯様組織誘導蛋白の発現方法に用いるベクターを提供する。好ましくは、ベクターは、本発明新規因子をコードする上記新規DNAの全配列を含んでいる。別法として、上記修飾配列を含んでいるベクターも本発明の具体例である。さらに、配列番号:1または配列番号:3または配列番号:25の配列を操作して、プロペプチド配列を欠失させ、それらをBMP蛋白もしくはTGF−βスーパーファミリーのメンバーをコードする配列と置換することにより成熟蛋白を発現させることができよう。よって、本発明は、配列番号:2または配列番号:4または配列番号:26のアミノ酸配列を有する蛋白をコードするDNA配列に正しい読み取り枠において結合しているTGF−βスーパーファミリーのメンバー由来のプロペプチドをコードしているキメラDNA分子を包含する。該ベクターを細胞系の形質転換法に用いてもよく、該ベクターは、選択宿主中で複製および発現を指令しうる本発明DNAコーディング配列に作動可能に結合した選択調節配列を含んでいる。かかるベクター用の調節配列は当業者に知られており、宿主細胞に応じて選択することができる。かかる選択は日常的なものであり、本発明の一部を形成しない。
【0043】
組織が不正常に形成されている環境において腱/靭帯様組織または他の組織の形成を誘導する本発明蛋白は、ヒトおよび他の動物における腱または靭帯の裂傷、形成不全および他の腱または靭帯の損傷の治療に応用される。腱/靭帯様組織誘導蛋白を用いるかかる標品は、腱または靭帯に対するダメージの防止における予防的用途、ならびに骨または他の組織への腱または靭帯の改善された固定および腱または靭帯組織に対する損傷の修復における用途を有しうる。本発明組成物により誘導されるデノボ(De novo)腱/靭帯様組織形成は、先天的な、外傷により誘発される、あるいは別の原因による腱または靭帯の損傷の修復に貢献し、さらに、腱または靭帯を付着または修復させるための整形外科手術にも有用である。また、本発明組成物は、腱炎、手根骨トンネル症候群および他の腱または靭帯の損傷の治療においても有用でありうる。また、本発明組成物を、腱および/または靭帯組織を治療または再生することが必要な他の徴候に使用することもできる。かかる徴候は、腱炎において発生するような歯根膜に対する損傷の再生および修復、および骨に対する腱の付着の再生および修復を包含するが、これらに限定されない。本発明組成物は、腱または靭帯形成細胞を引き寄せ、腱または靭帯形成細胞の増殖を刺激し、あるいは腱または靭帯形成細胞前駆細胞の分化を誘導するための環境を提供しうる。
【0044】
BMP−12関連蛋白を培地から回収し、同時生成される他の蛋白性物質および存在する他の汚染物質から単離することによりそれらを精製することができる。本発明蛋白は腱/靭帯様組織の形成能がある。後に説明するラット・異所性移植物アッセイにおける腱/靭帯様組織形成を示す能力によりこれらの蛋白をさらに特徴づけてもよい。これらの蛋白は、さらに、靭帯のごとき他のタイプの組織の形成を誘導する能力を有するかもしれないと考えられる。
【0045】
さらに本発明により提供される腱/靭帯様組織誘導蛋白は、配列番号:1または配列番号:25の配列と類似の配列によりコードされる因子であるが、その中において修飾が本来的になされている(例えば、ポリペプチドのアミノ酸変換を生じても生じなくてもよいヌクレオチド配列における対立遺伝子変異)かまたは計画的になされている因子を包含する。例えば、合成ポリペプチが配列番号:2のアミノ酸残基の連続した配列の全体または一部を複製したものであってもよい。これらの配列は、1次、2次または3次構造およびコンホーメーション的特徴を配列番号:2の腱/靭帯様組織成長因子ポリペプチドと共有することによって、それらに共通した腱/靭帯様組織または他の組織成長因子の生物学的特性を有しうる。よって、天然に存在する腱/靭帯様組織誘導ポリペプチドの生物学的に活性のある代替物としてそれらを治療組成物および治療プロセスにおいて使用してもよい。
【0046】
本明細書記載の腱/靭帯様組織誘導蛋白の配列の他の特異的な変異は、グリコシレーション部位の修飾を包含する。これらの修飾はO−結合またはN−結合グリコシレーション部位を包含しうる。例えば、グリコシレーションの不存在または部分的にのみされたグリコシレーションは、アスパラギン結合グリコシレーション認識部位におけるアミノ酸置換または欠失から起こる。アスパラギン結合グリコシレーション認識部位は、適当な細胞のグリコシレーション酵素により特異的に認識されるトリペプチド配列からなる。これらのトリペプチド配列は、アスパラギン−X−スレオニン、アスパラギン−X−セリンまたはアスパラギン−X−システイン(ここに、通常には、Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸)であってよい。グリコシレーション認識部位の第1または第3のアミノ酸位置における種々のアミノ酸置換または欠失(および/または第2の位置におけるアミノ酸欠失)は修飾されたトリペプチド配列における非グリコシレーションを引き起こす。さらに、蛋白の細菌による発現も、グリコシレーレョンされていない蛋白の生産を引き起こすであろう。
【0047】
本発明組成物は、配列番号:1または配列番号:25のDNA配列で形質転換された細胞を培養し、次いで、配列番号:2または配列番号:26のアミノ酸配列を有する蛋白を培地から回収し精製することにより製造される精製BMP−12関連蛋白からなる。精製された発現蛋白は、同時生成される蛋白性物質、ならびに他の汚染物質を実質的に含まない。回収された精製蛋白は腱/靭帯様組織形成活性、および靭帯再生のごとき他の組織の成長活性を示すと考えられる。後に説明するラットにおけるアッセにおける腱/靭帯様組織形成活性を示す能力により本発明蛋白をさらに特徴づけてもよい。
【0048】
腱/靭帯様組織形成を誘導するための本発明組成物は有効量の腱/靭帯様組織誘導蛋白からなっていてもよく、該蛋白は、配列番号:2、好ましくは、配列番号:2のアミノ酸−#25、#1もしくは#3から#103もしくは#104;あるいは配列番号:26のアミノ酸#1もしくは#19から#120まで;ならびに腱および/または靭帯様組織の形成能を示す配列番号:2または配列番号:26の変異体および/または変種からなる。
【0049】
さらに、発明組成物は、アクチビンのごとき、蛋白のTGF−βスーパーファミリーのさらなるメンバーのごときさらなる蛋白からなっていてもよい。本発明のもう1つの態様は、医薬上許容される賦形剤または担体中の、BMP−12またはVL−1のごとき治療上有効量の腱/靭帯誘導蛋白を含有する医薬組成物を提供する。これらの組成物を用いて腱/靭帯様組織または他の組織の形成を誘導してもよい。腱および靭帯の修復、傷の治療および皮膚の修復のごとき他の組織の修復のためにかかる組成物を用いてもよいと考えられる。本発明蛋白は神経の生存を増加させ、それゆえ、移植および神経の生存の減少を示す症状の治療に有用でありうるとさらに考えられる。さらに本発明組成物は、米国特許第5,108,922号、第5,013,649号、第5,116,738号、第5,106,748号、第5,187,076号、および第5,141,905号に開示されたBMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7;PCT出願WO91/18098に開示のBMP−8;PCT出願WO93/00432に開示のBMP−9;および1993年5月12に出願の同時係属特許出願第08/061,695号と第08/061,464号に開示のBMP−10またはBMP−11のごとき少なくとも1種の他の治療上有用な薬剤を含有していてもよい。上記文書の開示を参照により本明細書に取り入れる。
【0050】
本発明組成物は、BMP−12またはVL−1(BMP−13)のごとき腱/靭帯誘導蛋白のほかに、MP52、表皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子(TGF−αおよびTGF−β)、および線維芽細胞増殖因子−4(FGF−4)、甲状腺ホルモン(PTH)、白血球阻害因子(LIF/HILDA/DIA)、インスリン様増殖因子(IGF−IおよびIGF−II)を包含する他の治療上有用な薬剤からなっていてもよい。これらの薬剤の一部を本発明組成物に使用してもよい。例えば、一緒に移植されたBMP−2およびBMP−12の両方からなる組成物は、骨および腱/靭帯様組織を生じさせる。隣接した解剖学的位置において腱、靭帯、および骨が同時に形成される胚関節の損傷の治療にかかる組成物を用いてもよく、さらに該組成物は、骨への腱付着部位における組織の再生に有用でありうる。皮膚の治療および関連組織の修復のごとき傷の治療に本発明組成物を用いてもよいと考えられる。傷のタイプは、熱傷、切り傷および潰瘍を包含するが、これらに限定されない(傷の治療および関連組織の修復に関しては、例えばPCT出願WO84/01106号参照)。
【0051】
本発明蛋白は他の関連蛋白および増殖因子と協奏して、あるいはおそらく相乗的に作用しうると考えられる。それゆえ、本発明のさらなる治療方法および組成物は、治療量の少なくとも1種の上記BMP蛋白を伴った治療量の少なくとも1種の本発明蛋白からなる。かかる組成物は、個々のBMP蛋白分子あるいは異なるBMP部分からなるヘテロダイマーからなっていてもよい。例えば、本発明方法および組成物は、BMP−12関連蛋白のサブユニットと上記「BMP」蛋白のうちの1つ由来のサブユニットからなるジスルフィド結合したダイマーからなっていてもよい。よって、本発明は、1のサブユニットが配列番号:2のアミノ酸#1からアミノ酸#104までのアミノ酸配列からなり、もう1つのサブユニットがBMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10およびBMP−11からなる群より選択される骨形態形成蛋白に関するアミノ酸配列からなるヘテロダイマーである精製BMP−12関連ポリペプチドよりなる組成物を包含する。さらなる具体例は、ジスルフィド結合したBMP−12、VL−1(BMP−13)またはMP52のごとき腱/靭帯様組織誘導部分からなるヘテロダイマーよりなっていてもよい。例えば、ヘテロダイマーは、配列番号:2の#1から#104までのアミノ酸配列からなる1のサブユニットおよび配列番号:4の#1から#120までもしくは配列番号:26の#1から#120までのアミノ酸配列からなるもう1つのサブユニットからなっていてもよい。さらに、本発明組成物は、問題となる組織の損傷、傷害の治療に有益な他の薬剤を配合されていてもよい。
【0052】
pH、等張性、安定性等を考慮した、かかる生理学的に許容される蛋白組成物の調製および処方は当業者の範囲内である。また、目下のところ、治療組成物は、TGF−β蛋白における種特異性の欠如のため、獣医用途にも価値がある。特に、ヒトのほかに家畜およびサラブレッドの馬は本発明組成物でのかかる治療のための望ましい対象である。
【0053】
治療方法は、組成物を局所的に、全身的に、あるいはインプラントまたはデバイスのように局部的に投与することを包含する。投与する場合、本発明に使用する治療組成物は、もちろん、パイロジェン不含の、生理学的に許容される形態である。さらに、望ましくは、組成物をカプセル封入するかまたは組織ダメージ部位への送達用の粘性のある形態で注射してもよい。別法として、あるいはさらに、所望により上記組成物に含有されていてもよい蛋白以外の治療上有用な薬剤を、本発明方法において組成物と同時にあるいは順次投与してもよい。
【0054】
組成物は適当なマトリックスおよび/または隔離剤(sequestering agent)を担体として含んでいてもよい。例えば、マトリックスが組成物を支持し、あるいは腱/靭帯様組織形成および/または他の組織の形成のための表面を提供するものであってもよい。マトリックスが、蛋白および/またはその提供に適した環境をゆっくりと提供するものであってもよい。キレート剤は、注射または他の手段による投与を容易にすることにおいて助けとなる物質であってもよく、あるいは適用部位から蛋白がゆっくりと移動するようにするものであってもよい。
【0055】
担体材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容上の外観および界面の性質による。組成物の特別な適用は適切な処方を決定するであろう。組成物に適しうるマトリックスは生分解性で化学的に定義されたものであってもよい。さらなるマトリックスは純粋蛋白または細胞外マトリックス成分からなる。他の使用可能なマトリックスは非生分解性で化学的に定義されているものである。好ましいマトリックスは、ヘリスタット(Helistat)スポンジ(ニュージャージー州プレインズボロのインテグラ・ライフサイエンシズ(Integra LifeSciences)社製)のごときコラーゲンに基づく材料、または注射可能な形態のコラーゲン、ならびに隔離剤を包含するが、それらはやはり生分解性であってもよく、アルキルセルロース性材料を包含してもよい。
【0056】
もう1つの好ましいクラスの担体は多孔性粒子ポリマーマトリックスであり、ポリ(乳酸)のポリマー、ポリ(グリコール酸)のポリマーおよび乳酸とグリコール酸のコポリマーを包含する。さらにこれらのマトリックスが隔離剤を含有していもよい。適当なポリマーマトリックスは、例えば、WO93/00050(参照により本明細書に取り入れる)に記載されている。
【0057】
隔離剤の好ましいファミリーはアルキルセルロース(ヒドロキシアルキルセルロースを包含する)のごときセルロース性材料であり、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースを包含し、カルボキシメチルセルロース(CMC)のカチオン塩が最も好ましい。他の好ましい隔離剤は、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)、ポリオキシエチレンオキシド、カルボキシビニルポリマーおよびポリ(ビニルアルコール)を包含する。本発明に有用な隔離剤の量は、処方重量全体に対して0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であり、ポリマーマトリックスからの蛋白の脱落を防止し、組成物に適当な扱いやすさを与えるのに必要な量を提供するが、前駆細胞のマトリックスへの浸潤を妨げるような多量であってはならず、それゆえ、前駆細胞の活性を援助する機会を蛋白に付与する量である。
【0058】
本願の実施において有用なさらなる任意成分は、例えば、マンニトール、シュクロース、ラクトース、グルコースもしくはグリシンのごとき低温性保護剤(凍結乾燥の間の分解から蛋白を保護する)、メチルパラベンならびにプロピルパラベンおよびベンジルアルコールのごとき抗菌保存料、EDTA、クエン酸およびBHT(ブチル化されたヒドロキシトルエン)のごとき抗酸化剤、およびポリ(ソルベート)ならびにポリ(オキシエチレン)のごとき界面活性剤等を包含する。
【0059】
上記のごとく、本発明組成物を、腱または靭帯がダメージを受けている部分における腱/靭帯様組織の再生のごとき多くの腱損傷に用いて、腱組織の裂傷および種々のタイプの組織損傷もしくは傷害の修復を行ってもよい。本発明によれば、これらの方法は、かかる腱/靭帯様組織または他の組織の修復を必要とする患者に、配列番号:2、配列番号:4および/または配列番号:26に記載されたような有効量の腱/靭帯様組織誘導蛋白からなる組成物を投与することからなる。また、これらの方法は少なくとも1種の上記BMP蛋白と混合された腱/靭帯様組織誘導蛋白の投与からなっていてもよい。
【0060】
もう1つの具体例において、該方法は、1のモノマーがBMP−12、VL−1(BMP−13)またはMP52のごとき腱/靭帯様組織誘導ポリペプチドであり、第2のモノマーが増殖因子のTGF−βスーパーファミリーのメンバーであるヘテロダイマー蛋白の投与からなっていてもよい。さらに、これらの方法は、EGF、FGF、TGF−α、TGF−βおよびIGFを包含する他の増殖因子とともに腱/靭帯様組織誘導蛋白を投与することを包含してもよい。
【0061】
よって、本発明のさらなる態様は、腱/靭帯様組織の修復、腱もしくは靭帯の修復、ならびに腱炎および腱もしくは靭帯の損傷に関連した他の症状の治療のための治療方法および組成物である。かかる組成物は、医薬上許容される賦形剤、担体またはマトリックスと混合されたBMP−12、BMP−12関連蛋白またはMP52のごとき治療上有効量の1種またはそれ以上の腱/靭帯様組織誘導蛋白からなる。
【0062】
組成物の作用を変化させる種々の要因、例えば、形成が望まれる腱または靭帯組織の量、腱または靭帯のダメージ部位、ダメージを受けた腱または靭帯の状態、傷害のサイズ、ダメージを受けた組織のタイプ、患者の年齢、性別ならびに食事、感染の程度、投与時期および他の臨床的要因を担当医が考慮することにより投与規則が決定されるであろう。再構成に使用するマトリックスのタイプおよび組成物中のさらなる蛋白のタイプに応じて用量を変更してもよい。IGF−I(インスリン様増殖因子I)のごとき知られた増殖因子の最終組成物への添加も用量に影響しうる。
【0063】
腱/靭帯様組織の形成、腱または靭帯の成長および/または修復を定期的に評価することにより進行状況をモニターすることができる。当該分野において知られた方法、例えば、X線、関節鏡検査、組織形態計測的調査およびテトラサイクリン標識により進行状況をモニターすることができる。
【0064】
以下の実施例は、ヒト・腱/靭帯様組織誘導蛋白の回収ならびに特徴づけおよび他の腱/靭帯様組織誘導蛋白の回収のためのそれらの使用、ヒト・蛋白の取得、組み換え法による蛋白発現、およびインビボモデルにおいて腱/靭帯様組織を形成する本発明組成物の能力を示すことにおける本発明の実施を説明する。実施例はBMP−12に関して本発明を示すが、当業者の範囲内の少しの変更により、MP52およびVL−1についても同じ結果が得られると確信する。
【実施例1】
【0065】
DNAの単離
BMP−12およびBMP−12関連蛋白をコードするDNA配列を、当業者に知られた種々の方法により単離することができる。下記のごとく、他のBMP蛋白、Vg−1関連蛋白および他のTGF−βスーパーファミリーの蛋白に存在するアミノ酸配列に基づいてオリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。BMPファミリーの蛋白内およびTGF−βスーパーファミリーの蛋白の他のメンバー内において非常に保存的であるアミノ酸配列を含む領域を同定することができ、個々のBMP/TGF−β/Vg−1蛋白お対応領域の類似性に基づいてこれらの非常に保存的な領域のコンセンサスアミノ酸配列を構築することができる。かかるコンセンサスアミノ酸配列の例を以下に示す。
コンセンサスアミノ酸配列(I):
Trp−Gln/Asn−Asp−Trp−Ile−Val/Ile−Ala(配列番号:16)
[式中、X/Yはその位置にいずれかのアミノ酸が存在してもよいことを示す] 上で同定したコンセンサスアミノ酸配列(1)に基づいて以下のオリゴヌクレオチドを設計する。:

このオリゴヌクレオチド配列を自動DNA合成装置により合成する。上で同定したオリゴヌクレオチドプライマーの標準的なヌクレオチドのシンボルは以下のとおり:A,アデノシン;C,シトシン;G,グアニン;T,チミン;N,アデノシンまたはシトシンまたはグアニンまたはチミン;R,アデノシンまたはシトシン;Y,シトシンまたはチミン;H,アデノシンまたはシトシンまたはチミン;V,アデノシンまたはシトシンまたはグアニン;D,アデノシンまたはグアニンまたはチミン。
【0066】
オリゴヌクレオチド#1の最初の7個のヌクレオチド(下線)は、BMP−12蛋白をコードするDNA配列を特異的に増幅する操作を容易にするために制限エンドヌクレアーゼBamHIに対する認識部位を含んでおり、かくして上記コンセンサスアミノ酸配列(1)由来ではない。
【0067】
第2のコンセンサスアミノ酸配列は、下記BMP/TGF−βVg−1蛋白のもう1つの非常に保存的な領域に由来する:
His−Ala−Ile−Val/Leu−Gln−Thr(配列番号:18) 上で同定されたコンセンサスアミノ酸配列(2)に基づいて以下のオリゴヌクレオチドを設計する:

このオリゴヌクレオチド配列を自動DNA合成装置により合成する。オリゴヌクレオチド#1の最初の7個のヌクレオチド(下線)は、BMP−12蛋白をコードするDNA配列を特異的に増幅する操作を容易にするために制限エンドヌクレアーゼXbaIに対する認識部位を含んでおり、かくして上記コンセンサスアミノ酸配列(2)由来ではない。
【0068】
本発明BMP−12蛋白および他のBMP/TGF−β/Vg−1関連蛋白は上記コンセンサスアミノ酸配列に類似のアミノ酸配列を含んでいてもよく、BMP−12または他の新規関連蛋白中のそれらの配列の位置はそれらが由来した蛋白における相対位置に対応しているであろうと考えられる。さらに、他のBMP/TGF−β/Vg−1蛋白の構造から得られるこの位置的情報およびコンセンサスアミノ酸配列(1)ならびに(2)にそれぞれ由来するオリゴヌクレオチド配列#1ならびに#2を用いて、BMP−12蛋白または他のBMP/TGF−βVg−1関連蛋白の対応アミノ酸をコードするDNA配列を特異的に増幅することがでると考えられる。
【0069】
BMP/TGF−β/Vg−1蛋白の遺伝子構造の知識に基づくと、ヒト・ゲノムDNAを鋳型として用いてBMP−12/TGF−β/Vg−1(BMP−12関連蛋白)をコードする配列の同定となる特異的増幅反応を行うことができると考えられる。ヒト・ゲノムDNA鋳型のかかる特異的増幅反応を、先に説明したオリゴヌクレオチドプライマー#1および#2を用いて開始することができよう。上で同定したオリゴヌクレオチド#1および#2をプライマーとして用いてヒト・ゲノムDNA由来の特異的ヌクレオチド配列の特異的増幅を可能にする。増幅反応を以下のように行う:
ジェネティックス・インスティチュート(Genetics Institute)のケン・ジャコブス(Ken Jacobs)により提供されたヒト・ゲノムDNA(起源:末梢血リンパ球)を、25ゲージの注射針中を繰り返し通すことにより剪断力を与え、100℃で5分間変性させ、次いで、氷上で冷却してから200μMの各デオキシヌクレオチドトリホスフェート(dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)、10mM Tris−HCl pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl、0.001%ゼラチン、1.25ユニットのTaq DNAポリメラーゼ、100pMのオリゴヌクレオチド#1および100pMのオリゴヌクレオチド#2を含有する反応混合物に添加する。この反応混合物を94℃で2分加熱し、次いで、以下の方法のサーマルサイクリングに供する:
94℃1分、40℃1分、72℃1分を3サイクル;次いで、94℃1分、55℃1分、72℃1分を37サイクル行う。次いで、72℃で10分インキュベーションする。
【0070】
この反応により特異的に増幅されるDNAをエタノール沈殿し、制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびXbaIで消化し、次いで、アガロースゲル電気泳動に供する。BMP−12または他のBMP/TGF−β/Vg−1をコードするDNAフラグメントの予想サイズに対応するゲルの領域を切り取り、そこに存在する特異的に増幅されたDNAフラグメントを電気溶出し、プラスミドベクターpGEM−3のポリリンカーのXbaIとBamHI部位の間にサブクローンする。得られるBMP−12関連サブクローンの1つに関するDNA配列分析は、それに含まれている特異的に増幅されたDNA配列生成物が本発明BMP−12蛋白の一部をコードしていることを示す。
【0071】
この特異的に増幅されたBMP−12のDNAフラグメントのDNA配列(配列番号:5)および誘導されるアミノ酸配列(配列番号:6)を配列表に示す。 配列番号:5のヌクレオチド#1〜#26はオリゴヌクレオチド#1の一部からなり、ヌクレオチド#103〜#128は特異的増幅反応を行うために用いられるオリゴヌクレオチド#2のリバース・コンプリメント(reverse compliment)の一部からなる。増幅反応の開始におけるオリゴヌクレオチド#1および#2の機能のため、それらはBMP−12蛋白をコードする実際の配列に正確に対応していなくてもよく、それゆえ、対応するアミノ酸誘導体(配列番号:6)には翻訳されない。
【0072】
もう1つのサブクローンのDNA配列分析は、それに含まれている特異的に増幅されたDNA生成物が、VL−1と命名された、本発明のもう1つのBMP/TGF−β/Vg−1(BMP−12関連)をコードしていることを示す。
【0073】
この特異的に増幅されたDNAフラグメントのDNA配列(配列番号:7)および誘導されるアミノ酸配列(配列番号:8)を配列表に示す。
【0074】
配列番号:7のヌクレオチド#1〜#26はオリゴヌクレオチド#1の一部からなり、#103〜#128は特異的増幅反応を行うために用いられるオリゴヌクレオチド#2のリバース・コンプリメントの一部からなる。増幅反応の開始におけるオリゴヌクレオチド#1および#2の機能のため、それらはVL−1蛋白をコードする実際の配列に正確に対応していなくてもよく、それゆえ、対応するアミノ酸誘導体(配列番号:8)には翻訳されない。
【0075】
上に示す特異的に増幅されたBMP−12ヒト・DNA配列(配列番号:5)に基づいて以下のオリゴヌクレオチドプローブを設計し、自動DNA合成装置により合成する:

このオリゴヌクレオチドプローブを32Pで放射性標識し、ベクターλFIX(ストラタジーン(Stratagene)社カタログ#944201)中に構築されたヒト・ゲノムライブラリーをスクリーニングする。ヒト・ゲノムライブラリーの500000個の組み換え体を、プレート1枚あたり約10000個の組み換え体の密度で50枚のプレートに撒く。組み換えバクテリオファージプラークを2系のニトロセルロースにレプリカし、標準的ハイブリダイゼーションバッファー(SHB=5XSSC、0.1%SDS、5Xデンハーツ、100μg/mlサケ・精子DNA)中でオリゴヌクレオチドプローブ#3と65℃で一晩ハイブリダイゼーションさせる。翌日、放射性標識されたオリゴヌクレオチドを含有するハイブリダイゼーション溶液を除去し、フィルターを0.2XSSC、0.1% SDSで、65℃において洗浄する。単一のハイブリダイゼーション陽性組み換え体を同定し、プラーク精製する。BMP−12オリゴヌクレオチドプローブ#3にハイブリダイゼーションする、このプラーク精製された組み換えバクテリオファージクローンをλHuG−48と命名する。バクテリオファージプレートストックを作成し、バクテリオファージDNAをλHuG−48ヒト・ゲノムクローンから単離する。バクテリオファージλHuG−48を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、12301パークローン・ドライブ、ロックビル、MD(American Type Culture Collection,12301 Parklawn Drive,Rockville,MD)「ATCC」に、1993年12月7日に受託番号#75625の下、寄託されている。この寄託は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に適合する。この組み換え体λHuG−48のオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション領域は3.2kbのBamHIフラグメントに局在化している。このフラグメントをプラスミドベクター(pGEM3)中にサブクローンし、DNA配列分析を行う。このプラスミドサブクローンをPCR1−1#2と命名し、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、12301パークローン・ドライブ、ロックビル、MD(American Type Culture Collection,12301 Parklawn Drive,Rockville,MD)「ATCC」に、1993年12月7日に受託番号#69517の下、寄託されている。この寄託は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に適合する。クローンλHuG−48由来の、プラスミドサブクローンPCR1−1#2の3.2kbのDNAインサートの部分DNA配列(配列番号:1)および誘導されるアミノ酸配列(配列番号:2)を配列表に示す。
【0076】
配列番号:1のヌクレオチド#639〜#714は、配列番号:5に示す特異的に増幅されたBMP−12をコードするDNAフラグメントのヌクレオチド#27〜#102に対応し、かくして、ヒト・ゲノムバクテリオファージクローンλHuG−48および誘導されたサブクローンPCR1−1#2は少なくとも本発明BMP−12蛋白の一部をコードしている。プラスミドPCR1−1#2の3.2kbのBamHIインサートの一部分のヌクレオチド配列は、配列番号:1のヌクレオチド#1〜#882により定義される少なくとも882塩基対の読み取り枠を含んでいる。この読み取り枠は本発明BMP−12蛋白の少なくとも294個のアミノ酸をコードしている。コードされた294個のアミノ酸のヒト・BMP−12蛋白は成熟ヒト・BMP−12蛋白の全体(配列番号:2のアミノ酸#1〜#104)、ならびに1次翻訳産物のプロペプチド領域のC末端部分(配列番号:2のアミノ酸#−190から#−1まで)を含んでいる。
【0077】
配列番号:33に示すプラスミドPCR1−1#2の3.2kbのBamHIインサートのさらなるDNA配列は、配列番号:33のヌクレオチド#138から1301により定義される1164塩基対の読み取り枠の存在を示す[注、配列番号:1の開示されたすべての配列は配列番号:33に含まれる]。この配列はゲノムクローンに由来するため、コーディング配列の5'伸長部と介在配列(イントロン/非イントロン配列)の3'限界との間の境界を確定することは困難である。
【0078】
他のBMP蛋白およびTGF−βファミリーに属する他の蛋白に関する知識に基づくと、提案されているコンセンサス蛋白分解プロセッシング配列Arg−X−X−Argと一致して、前駆体ポリペプチドが多塩基性配列Arg−Arg−Gly−Argにおいて開裂されるであろうと予想される。BMP−12前駆体ポリペプチドの開裂は、配列番号:2の位置#1におけるアミノ酸セリンから始まる104個のアミノ酸の成熟ペプチドを生じると考えられる。成熟形態へのBMP−12のプロセッシングは、関連蛋白TGF−βのプロセッシング[ジェントリー(Gentry)ら,モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molec. & Cell. Biol.)第8巻:4162頁(1988年);デリンク(Derynck)ら,ネイチャー(Nature)第316巻:701頁(1985年)]と類似の様式でのダイマー化およびN末端領域の除去を包含すると考えられる。
【0079】
それゆえ、BMP−12の成熟活性種は2つのポリペプチドサブユニットのホモダイマーからなり、各サブユニットは配列番号:2のアミノ酸#1から#104までからなり、サブユニットの予想分子量約12000ダルトンである。さらなる活性種は、少なくとも配列番号:2のアミノ酸#3から#103までからなり、それゆえ、最初と最後の保存されたシステイン残基を含んでいると考えられる。蛋白のTGF−β/BMPファミリーの他のメンバーと同様に、BMP−12蛋白のカルボキシ末端部分はアミノ末端部分よりも高い配列保存性を示す。システインに富むC末端ドメイン(アミノ酸#3〜#104)におけるヒト・BMP−12蛋白の、ヒト・BMP蛋白およびTGF−βファミリーの他の蛋白の対応ヒト・BMP領域に対するアミノ酸同一性のパーセンテージは以下のようである:BMP−2,55%;BMP−3,43%;BMP−4,53%;BMP−5,49%;BMP−6,49%;BMP−7,50%;BMP−8,57%;BMP−9,48%;BMP−10,57%;アクチビンWC(BMP−11),38%;Vg1,46%;GDF−1,47%;TGF−β1,36%;TGF−β2,36%;TGF−β3,39%;インヒビンβ(B),36%;インヒビンβ(A),41%。
【0080】
ヒト・BMP−12 DNA配列(配列番号:1)、またはその一部をプローブとして用いて、BMP−12 mRNAを合成するヒト・細胞系または組織を同定することができる。簡単に説明すると、RNAを選択細胞または組織源から抽出し、ホルムアルデヒドアガロースゲルによる電気泳動を行いニトロセルロースに移すか、あるいはホルムアクデヒドと反応させてニトロセルロース上に直接スポットする。次いで、ニトロセルロースを、ヒト・BMP−12コーディング配列由来のプローブとハイブリダイゼーションさせる。
【0081】
別法として、ヒト・BMP−12配列を用いて、特異的増幅反応を行うために使用されるプライマー間の領域に存在するBMP−12コーディング配列の一部を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。これらのヒト・BMP−12由来のプライマーは、mRNA、cDNAまたはゲノムDNA鋳型由来の対応BMP−12コーディング配列を特異的に増幅することを可能にするであろうと考えられる。上記方法の1つにより使用可能な源が同定されたならば、オリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィーによりmRNAを選択し、cDNAを合成し、次いで、当業者に知られたλgt10または他のλバクテリオファージベクター、例えばλZAP中に確立された方法(トール(Toole)ら,上記)によってクローンする。上記のオリゴヌクレオチドプライマーにより行われる増幅反応を、λバクテリオファージベクター中にクローンされた前以て確立されている、ヒト・cDNAまたはゲノムライブラリーに対して直接行うことも可能である。かかる場合には、増幅されたBMP−12をコードするDNAのフラグメントをプローブとして用いて、ヒト・BMP−12蛋白の一部をコードする特異的に増幅されたDNA生成物を生じるライブラリーを直接スクリーニングすることができよう。
【0082】
ヒト・BMP−12ゲノムクローンλHuG−48のDNA配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを予想して、市販(すなわち、カリフォルニア州ラジョラのストラタジーン(Stratagene)社製またはカリフォルニア州パロ・アルトのクローンテック・ラボラトリーズ,インコーポレイテッド(Clontech Laboratories,Inc.)製)されている、前以て確立されたヒト・cDNAライブラリー由来のヒト・BMP−12をコードするDNA配列の特異的増幅を行う。配列番号:1に示すDNA配列のヌクレオチド#571から#590までに基づいて以下のオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、自動DNA合成装置により合成する:

プライマー#4の最初の9個のヌクレオチド(下線)は、BMP−12蛋白をコードするDNA配列を特異的に増幅する操作を容易にするために制限エンドヌクレアーゼBamHIに対する認識部位を含んでおり、かくして配列番号:1に示すDNA配列由来ではない。
【0083】
配列番号:1に示すDNA配列のヌクレオチド#866から#885までに基づいて以下のオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、自動DNA合成装置により合成する:

プライマー#5の最初の9個のヌクレオチド(下線)は、BMP−12蛋白をコードするDNA配列を特異的に増幅する操作を容易にするために制限エンドヌクレアーゼXbaIに対する認識部位を含んでおり、かくして配列番号:1に示すDNA配列由来ではない。
【0084】
上で同定された標準的なヌクレオチドシンボルは以下のごとし:A,アデノシン;C,シトシン;G,グアニン;T,チミン
上で同定したプライマー#4および#5をプライマーとして用いて、以下のもの:
ヒト・胎児脳cDNA/λZAPII(ストラタジーンのカタログ#936206)、ヒト・肝臓/λUNI−ZAP XR(ストラタジーンのカタログ#937200)、ヒト・肺/λUNI−ZAP XR(ストラタジーンのカタログ#937206)、およびヒト胎児脾臓/UNI−ZAP XR(ストラタジーンのカタログ#937205)を包含してもよい前以て確立されたcDNAライブラリー由来の特異的なBMP−12をコードするヌクレオチド配列の増幅を行う。
【0085】
上で詳述したヒト・cDNAインサートバクテリオファージライブラリー約1x10pfu(プラーク形成単位)を95℃で5分間変性させた後、200μMの各デオキシヌクレオチドトリホスフェート(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、10mM Tris−HCl pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl、0.001%ゼラチン、1.25ユニットのTaq DNAポリメラーゼ、100pMのオリゴヌクレオチドプライマー#4および100pMのオリゴヌクレオチドプライマー#5を含有する反応混合物に添加する。次いで、反応混合物を以下の方法のサーマルサイクリングに供する:94℃1分、50℃1分、72℃1分を39サイクル、次いで、72℃で10分インキュベーションする。
【0086】
この反応により特異的に増幅されるDNAは、約333塩基対のBMP−12をコードする生成物を生じると考えられよう。その内部の315塩基対は配列番号:1のヌクレオチド#571から#885に対応し、さらにプライマー#4および#5のヌクレオチド#1〜#9により定義される制限部位に対応するBMP−12特異的フラグメントの各末端の9塩基対を含んでいる。得られる333塩基対のDNA生成物を制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびXbaIで消化し、フェノール抽出し、クロロホルム抽出し、次いで、エタノール沈殿する。
【0087】
別法として、エタノール沈殿、バッファー交換、次いで、消化されたDNA生成物を10mM Tris−HCl pH8.0、1mM EDTA中に希釈し、その後セントリコン(Centricon)TM30マイクロコンセントレーター(マサチューセッツ州ビバリーのダブリュ・アール・グレイス・アンド・カンパニー(W.R.Grace & Co.)製;製品番号#4209)により遠心分離することにより、BamHI/XbaI制限消化により生じるDNAの小フラグメントの除去を行う。得られるBamHI/XbaI消化された増幅DNA生成物を、プラスミドベクター(すなわち、pBluescript、pGEM−3等)のポリリンカー領域のBamHI部位とXbaI部位との間にサブクローンする。得られるサブクローンのDNA配列分析は、BMP−12をコードするインサートの完全性を確認するために必要であろう。この方法において使用可能なcDNA源が同定されたならば、333塩基対のBMP−12特異的配列が増幅された対応cDNAライブラリーを、333塩基対のインサートまたは他のBMP−12特異的プローブを用いて直接スクリーニングして本発明のBMP−12蛋白の全長をコードするcDNAクローンを同定し単離することができよう。
【0088】
当業者に知られたさらなる方法を用いてヒト・BMP−12関連蛋白をコードする他のcDNAの全長、あるいはヒト以外、特に他の哺乳動物種由来の本発明BMP−12関連蛋白をコードするcDNAクローンの全長を単離してもよい。 以下の実施例は、ネズミ・ゲノムDNAライブラリー中のBMP−12関連蛋白由来の相同体を単離するためのヒト・BMP−12配列の使用を示す。
【0089】
本発明ヒト・BMP−12蛋白をコードするDNA配列は、ヒト以外の種由来のBMP−12およびBMP−12関連蛋白の配列に対して有意に相同的であると予想され、ヒトBMP−12配列を用いて、対応するBMP−12関連蛋白をコードするそれらの他の種由来のDNA配列を特異的に増幅することができよう。特別には、ヒト・BMP−12配列(配列番号:1)に基づいて以下のオリゴヌクレオチドを設計し、自動DNA合成装置により合成する:

プライマー#6および#7の最初の8個のヌクレオチド(下線)は、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびEcoRIからなる。ヒト以外の種由来のBMP−12またはBMP−12関連蛋白をコードする特異的に増幅されたDNA配列の操作を容易にするためにこれらの配列を用いることができ、よって、配列番号:1に示すDNA配列由来でない。配列番号:1のヌクレオチド#607〜#626に基づいてオリゴヌクレオチドプライマー#6を設計する。配列番号:1に示すDNA配列のヌクレオチド#846〜#865のリバース・コンプリメント列に基づいて、オリゴヌクレオチドプライマー#7を設計する。 上で同定したオリゴヌクレオチドプライマー#6および#7をプライマーとして用いて、ヒト以外の種由来のゲノムDNAからの特異的BMP−12関連配列の増幅を行う。増幅反応を以下のように行う:
ネズミ・ゲノムDNA(源:Balb c株)を、25ゲージの注射針中を繰り返し通すことにより剪断力を与え、100℃で5分間変性させ、次いで、氷上で冷却してから200μMの各デオキシヌクレオチドトリホスフェート(dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)、10mM Tris−HCl pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl、0.001%ゼラチン、1.25ユニットのTaq DNAポリメラーゼ、100pMのオリゴヌクレオチド#6および100pMのオリゴヌクレオチド#7を含有する反応混合物に添加する。反応混合物を以下の方法のサーマルサイクリングに供する:95℃1分、55℃1分、72℃1分を40サイクル、次いで、72℃で10分インキュベーションする。
【0090】
この反応により特異的に増幅されるDNAをエタノール沈殿し、制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびEcoRIで消化し、次いで、アガロースゲル電気泳動に供する。BMP−12またはBMP−12関連蛋白をコードするDNAフラグメントの予想サイズに対応するゲルの領域を切り取り、そこに存在する特異的に増幅されたDNAフラグメントを溶出し(当業者に知られた電気溶出または他の方法により)、pGEM−3またはpBluescriptのごときプラスミドベクターのポリリンカーのBamHIとEcoRI部位の間にサブクローンする。得られるサブクローンの1つ(mV1と命名)に関するDNA配列分析は、それに含まれている特異的に増幅されたDNA配列が、本発明BMP−12またはVL−1配列のいずれかに対するネズミ・相同体であると思われる蛋白の一部をコードしていることを示す。この特異的に増幅されたネズミ・DNAフラグメントのDNA配列(配列番号:10)および誘導されるアミノ酸配列(配列番号:11)を配列表に示す。
【0091】
配列番号:10のヌクレオチド#1〜#26はオリゴヌクレオチド#6からなり、ヌクレオチド#246〜#272は、特異的増幅反応を行うために用いられるオリゴヌクレオチド#7のリバース・コンプリメントの一部からなる。配列番号:10のヌクレオチド#27はコドントリプレットの最後のヌクレオチドであると思われ、配列番号:10のヌクレオチド#244〜#245はコドントリプレットの最初の2個のヌクレオチドであるように思われる。それゆえ、配列番号:10のヌクレオチド#28から#243まではmV1の部分コーディング配列に対応する。増幅反応を開始させることにおけるオリゴヌクレオチド#6よおび#7の機能のため、それらは、本発明ヒト・BMP−12またはVL−1蛋白に対するネズミ・相同配列をコードする実際の配列に正確に対応していなくてもよく、それゆえ、それらは対応するアミノ酸配列誘導体(配列番号:11)に正確に翻訳されない。
【0092】
当業者は、配列番号:10に示す特異的に増幅されたネズミ・BMP−12またはVL−1 DNA配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプローブを用いて全長のネズミBMP−12またはVL−1をコードするクローン(cDNAまたはゲノムDNAのいずれか)を同定することができよう。
【0093】
mV2と命名されたもう1つの得られたクローンのDNA配列分析は、特異的に増幅されたDNA配列はその中に本発明ネズミ・BMP−12関連配列の一部を含んでいたことを示す。この特異的に増幅されたネズミ・DNAフラグメントのDNA配列(配列番号:12)および誘導されるアミノ酸配列(配列番号:13)を配列表に示す。
【0094】
配列番号:12のヌクレオチド#1〜#26は、オリゴヌクレオチド#6の一部からなり、ヌクレオチド#246〜#272は特異的増幅反応を行うために用いられたオリゴヌクレオチド#7のリバース・コンプリメントの一部からなる。配列番号:12のヌクレオチド#27はコドントリプレットの最後のヌクレオチドであると思われ、配列番号:12のヌクレオチド#244〜#245はコドントリプレットの最初の2つのヌクレオチドであると思われる。それゆえ、配列番号:12のヌクレオチド#28から#243まではmV2の部分コーディング配列に対応する。増幅反応開始におけるオリゴヌクレオチド#6および#7の機能のために、それらは本発明ネズミ・BMP−12関連蛋白をコードする実際の配列に正確に対応していなくてもよく、それゆえ、対応するアミノ酸配列誘導体(配列番号:13)に翻訳されない。
【0095】
ネズミ・BMP−12関連蛋白の全長をコードしているクローン(cDNAまたはゲノムのいずれか)を同定するために、配列番号:12に示す特異的に増幅されたネズミ・BMP−12関連DNA配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプローブが当業者により用いられうる。
【0096】
mV9と命名されたもう1つの得られたクローンのDNA配列分析は、特異的に増幅されたDNA配列はその中に本発明ネズミ・BMP−12関連配列の一部を含んでいたことを示す。この配列は、配列番号:3に記載されたヒト・MP52 DNA配列に対するネズミ・相同体であると思われる。この特異的に増幅されたネズミ・DNAフラグメントのDNA配列(配列番号:14)および誘導されるアミノ酸配列(配列番号:15)を配列表に示す。
【0097】
配列番号:14のヌクレオチド#1〜#26はオリゴヌクレオチド#6の一部からなり、ヌクレオチド#246〜#272は特異的増幅反応を行うために用いられたオリゴヌクレオチド#7のリバース・コンプリメントの一部からなる。配列番号:14のヌクレオチド#27はコドントリプレットの最後のヌクレオチドであると思われ、配列番号:14のヌクレオチド#244〜#245はコドントリプレットの最初の2つのヌクレオチドであるように思われる。それゆえ、配列番号:14のヌクレオチド#28から#243まではmV9の部分コーディング配列に対応する。増幅反応開始におけるオリゴヌクレオチド#6および#7の機能のために、それらは本発明ネズミ・BMP−12関連蛋白をコードする実際の配列に正確に対応していなくてもよく、それゆえ、対応するアミノ酸配列誘導体(配列番号:15)に翻訳されない。
【0098】
ネズミ・BMP−12関連蛋白の全長をコードしているクローン(cDNAまたはゲノムのいずれか)を同定するために、配列番号:14に示す特異的に増幅されたネズミ・BMP−12関連DNA配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプローブが当業者により用いられうる。
【0099】
別法として、上で同定したオリゴヌクレオチドプライマー#6および#7をプライマーとして用いて、BMP−12をコードしているプラスミドサブクローンPCR1−1#2由来の275塩基対のDNAプローブの特異的増幅を行う。該DNAプローブの内部の259塩基対は配列番号:1のオリゴヌクレオチド#607から865までに対応している。この275塩基対のDNAプローブを32Pで放射性標識し、ベクターλFIXII(ストラタジーン(Stratagene)社カタログ#946306)中に構築されたネズミ・ゲノムライブラリーをスクリーニングするのに用いた。該ネズミ・ゲノム遺伝子ライブラリーの100万個の組み換え体を、プレート1枚あたり約20000個の組み換え体の密度で50枚のプレートに撒く。組み換えバクテリオファージプラークに関する2系のニトロセルロースレプリカを、厳密性を減じた条件下において、標準的なハイブリダイゼーションバッファー(SHB=5XSSC、0.1%、5Xデンハーツ、100μg/mlサケ・精子DNA)中、一晩60℃において特異的に増幅された333塩基対のプローブとハイブリダイゼーションさせる。翌日、放射性標識されたオリゴヌクレオチドを含有するハイブリダイゼーション溶液を除去し、厳密性を減じた条件下において、2XSSC、0.1%SDSにてフィルターを洗浄する。複数のハイブリダイゼーション陽性組み換え体を同定し、プラーク精製する。ハイブリダイゼーション陽性ネズミ・ゲノム組み換えクローンのフラグメントを標準的なプラスミドベクター(すなわちpGEM3)中にサブクローンし、DNA配列分析に供する。
【0100】
MVR3と命名されたこれらのサブクローンのうちの1つのDNA配列分析は、それが上記PCR生成物mV1に対応するマウス・遺伝子の一部をコードしていることを示す。このサブクローンの部分DNA配列および対応アミノ酸翻訳物を、それぞれ、配列番号:29および配列番号:30に示す。
【0101】
MVR32と命名されたこれらのサブクローンのうちのもう1つのサブクローンのDNA配列分析は、それが、上記PCR生成物mV2(配列番号:7に示すヒト・VL1配列のネズミ・相同体)に対応するマウス・遺伝子の一部をコードすることを示す。このサブクローンの部分DNA配列および対応アミノ酸翻訳物を、それぞれ、配列番号:31および配列番号:32に示す。
【0102】
MVR23と命名されたこれらのサブクローンのうちのもう1つのサブクローンのDNA配列分析は、それが、上記PCR生成物mV9(配列番号:3に示すMP52配列のネズミ・相同体)に対応するマウス・遺伝子の一部をコードすることを示す。
【0103】
本発明BMP−12蛋白をコードするヒト・ゲノムクローンを同定し単離することに関して上で説明したのと同様の方法で、配列番号:7に示すVL−1をコードする配列に対応するオリゴヌクレオチドプローブを設計することができ、VL−1(BMP−13)蛋白をコードするヒト・ゲノムまたはcDNA配列を同定するために用いることができる。これらのオリゴヌクレオチドはVL−1をコードする配列に特異的な領域に対して設計されるであろうし、それゆえ、特異的に増幅されたVL−1をコードする配列(配列番号:7)と特異的に増幅されたBMP−12をコードする配列(配列番号:5)との間の最低の程度のヌクレオチド配列同一性の領域由来である可能性があるだろう。
【0104】
別法として、上で同定したオリゴヌクレオチド#4および#5をプライマーとして用いて、BMP−12をコードするプラスミドクローンPCR1−1#2由来の333塩基対のDNAプローブの特異的増幅を行う。該DNAプローブの内部の315塩基対は配列番号:1のヌクレオチド#571から#885までに対応している。この333塩基対のDNAプローブを32Pで放射性標識し、ベクターλDASHII(ストラタジーン(Stratagene)社カタログ#945203)中に構築されたネズミ・ゲノムライブラリーをスクリーニングするのに用いた。該ネズミ・ゲノム遺伝子ライブラリーの100万個の組み換え体を、プレート1枚あたり約20000個の組み換え体の密度で50枚のプレートに撒く。組み換えバクテリオファージプラークに関する2系のニトロセルロースレプリカを、厳密性を減じた条件下において、標準的なハイブリダイゼーションバッファー(SHB=5XSSC、0.1%、5Xデンハーツ、100μg/mlサケ・精子DNA)中、一晩60℃において特異的に増幅された333塩基対のプローブとハイブリダイゼーションさせる。翌日、放射性標識されたオリゴヌクレオチドを含有するハイブリダイゼーション溶液を除去し、厳密性を減じた条件下において、2XSSC、0.1%SDSにてフィルターを洗浄する。複数(約15個)のハイブリダイゼーション陽性組み換え体を同定し、プラーク精製する。
【0105】
このスクリーニング工程に用いる、BMP−12をコードするプラスミドPCR1−1#2から得られた333塩基対のDNAプローブに陽性ハイブリダイゼーションすると予測されるBMP−12および他のBMP−12寒天蛋白をコードする組み換え体と、本発明VL−1をコードするハイブリダイゼーション陽性組み換え体とを区別するために、配列番号:7に示すVL−1に基づく下記オリゴヌクレオチドプローブを設計し、自動DNA合成装置により合成する:

配列番号:1に示すBMP−12をコードする配列の対応領域(ヌクレオチド#672から#689まで)に対して5個のヌクレオチド相違を有する、配列番号:7のヌクレオチド#60から#76までに対応するオリゴヌクレオチド。VL−1オリゴヌクレオチドプローブ#8にハイブリダイゼーションする組み換えバクテリオファージクローンの1つをλJLDc31と命名する。この組み換えバクテリオファージクローンをプラーク精製し、バクテリオファージプレートストックを作成し、λJLDc31ヒト・ゲノムクローンからバクテリオファージDNAを単離する。バクテリオファージλJLDc31を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、12301パークローン・ドライブ、ロックビル、MD(「ATCC」)に、受託番号75922の下、1994年10月20日に寄託した。この寄託は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に適合する。この組み換え体λJLDc31のオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション領域は2.5kbのEcoRIフラグメントに局在化している。このフラグメントをプラスミドベクター(pGEM3)中にサブクローンし、DNA配列分析を行う。このプラスミドサブクローンをpGEMJLDc31/2.5と命名し、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、12301パークローン・ドライブ、ロックビル、MD(「ATCC」)に、受託番号69710の下、1994年10月20日に寄託した。この寄託は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に適合する。
【0106】
クローンλJLDc31由来のプラスミドサブクローンpGEMJLDc31/2.5の2.5kbのDNAインサートの部分DNA配列(配列番号:25)および誘導されるアミノ酸配列(配列番号:26)を配列表に示す。
【0107】
プラスミドpGEMJLDc31/2.5の2.5kbのEcoRIインサートの一部のDNA配列を配列番号:25に示す。配列番号:25のヌクレオチド#52から#963により定義される912塩基対の読み取り枠を含んでいる。この配列がゲノムクローンに由来するため、コーディング配列の5'伸長部と介在配列(イントロン/非コーディング配列)の3'端との間の境界を決定することは困難である。全読み取り枠(配列番号:25のヌクレオチド#52から#963まで)は、304個のアミノ酸までの本発明VL−1蛋白の一部をコードしている。
【0108】
BMP蛋白およびTGF−βファミリーに属する他の蛋白に関する知識に基づくと、前駆体ポリペプチドは、提案されているコンセンサス蛋白分解配列Arg−X−X−Argと一致した多塩基性配列Arg−Arg−Arg−Argにおいて開裂されるであろうと予測される。VL−1前駆体ポリペプチドの開裂は、配列番号:26の位置#1におけるアミノ酸Thrから始まる120個のアミノ酸の成熟ペプチドを生じると考えられる。成熟形態へのVL−1のプロセッシングは、関連蛋白TGF−βのプロセッシング[ジェントリー(Gentry)ら,モレキュラー・アンド・セル・バイオロジー(Molec & Cell.Biol.),第8巻:4162頁(1988年);デリンク(Derynck)ら,ネイチャー(Nature),第316巻:701頁(1985年)]に類似した様式でのダイマー化およびN末端領域の除去を包含すると考えられる。
【0109】
それゆえ、VL−1の成熟活性種は、各サブユニットが配列番号:26のアミノ酸#1から#120まで(予想分子量約12000ダルトン)からなる2個のポリペプチドサブユニットのホモダイマーからなると考えられる。さらなる活性種は、少なくとも配列番号:26のアミノ酸#19から#119もしくは#120までからなり、それゆえ、最初と最後の保存されたシステイン残基を含むと考えられる。
【0110】
かかる方法を用いて、成熟ヒト・VL−1(BMP−13)をコードするクローンを得た。このクローンによりコードされるヌクレオチド配列および対応アミノ酸配列を、それぞれ、配列番号:25および26において配列表に示す。
【実施例2】
【0111】
BMP−12の発現
BMP−12蛋白を製造するために、慣用的な遺伝子工学的方法により、それをコードするDNAを適当な発現ベクター中に移行させ、哺乳動物細胞または他の好ましい真核もしくは原核宿主の細胞中に導入する。
【0112】
細菌細胞においてBMP−12蛋白を製造するために、以下の方法を用いる。
【0113】
イー・コリにおけるBMP−12の発現
イー・コリにおいてBMP−12を製造するために、以下の主要な特徴を有する発現プラスミドpALV1−781を構築した。ヌクレオチド1〜2060は、宿主イー・コリ株における抗生物質アンピシリン耐性を付与するβ−ラクタマーゼに関する遺伝子およびColE1由来の複製開始点を含むプラスミドpUC18[ノランダー(Norrandar)ら,ジーン(Gene)第26巻:101〜106頁(1983年)]由来のDNA配列を含む。ヌクレオチド2061〜2221は、3つのオペレーター配列O1、O2、O3を含むバクテリオファージλ[サンガー(Sanger)ら,ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)第162巻:729〜773頁(1982年)]の大左方プロモーター(pL)に関するDNA配列を含む。該オペレーターはλcIリプレッサー蛋白の結合部位であり、該蛋白の細胞内レベルはpLからの転写開始量を調節する。ヌクレオチド2222〜2723は、サンガー(Sanger)ら,ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)第162巻:729〜773頁(1982年)に記載されたバクテリオファージλ由来のヌクレオチド35566から35472までおよび38137から38361までに由来する配列上に含まれる強力なリボゾーム結合配列を含む。ヌクレオチド2724〜3041は、すべての3'非翻訳配列が除去されている成熟BMP−12蛋白をコードするDNA配列を含む。pALV1−781発現ベクター中に導入されたBMP−12 DNA配列を5'末端において修飾してコーディング能力を変化させずにA+T含量を増加させた。これらの変更を行ってイー・コリ中のBMP−12 mRNA上への翻訳効率を上昇させた。ヌクレオチド3042〜3058は、制限エンドヌクレアーゼ部位を有する「リンカー」DNA配列を提供する。ヌクレオチド3059〜3127は、イー・コリのaspA遺伝子の転写終結配列[タカギ(Takagi)ら,ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)第13巻:2063〜2074頁(1985年)]に基づく転写終結配列を提供する。ヌクレオチド3128〜3532はpUC18由来のDNA配列である。
【0114】
ダガート(Dagert)およびエールリッヒ(Ehrlich),ジーン(Gene)第6巻:23頁(1979年)の手順によりプラスミドpALV1−781をイー・コリ宿主株GI724(F,lacI,lacpL8,ampC::λcI)中に形質転換した。GI724(ATCC受託番号55151)はampC遺伝子座における染色体中に安定に組み込まれたλcIリプレッサー遺伝子のコピーを含んでおり、該遺伝子はサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)のtrpプロモーター/オペレーター配列の転写調節下に置かれている。最少培地または上記IMCのごときカサミノ酸を補足した最少培地のようなトリプトファン不含培地中での増殖の間にのみ、GI724中においてλcI蛋白が生産される。GI724培養へのトリプトファン添加はtrpプロモーターを抑制し、λcI合成のスイッチをオフにし、pLプロモーターが細胞中に存在する場合にはpLプロモーターからの転写誘導を徐々に引き起こすであろう。
【0115】
1mM MgSOを含有し、0.5%w/vグルコース、0.2%w/vカザミノ酸および100μg/mlアンピシリンを補足したM9培地[ミラー(Miller),「イクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティクス(Experiments in Molecular Genetics)」コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク(Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(1972年)]からなるIMC培地を含有する1.5%w/v寒天プレート上で形質転換体を選択した。pALV1−781で形質転換したGI724を、100μgアンピシリン含有IMC培地中で、A550が0.5になるまで37℃で増殖させた。次いで、最終濃度100μg/mlとなるようにトリプトファンを添加し、さらに培養物を4時間インキュベーションした。この間に、BMP−12蛋白は「封入体」フラクション中に蓄積する。
【0116】
蛋白モノマーの調製
18gの凍結細胞を計量し、60mlの100mM Tris、10mM EDTA、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル[PMSF],pH8.3中に再懸濁した。マイクロフルイダイザー(Microfluidizer)TM[#MCF100T型]に3回通すことにより細胞を溶解させた。4℃で20分間15000gでの遠心分離により封入体ペレットを得た。上清を傾斜法で捨て、100mlの100mM Tris、1.0M NaCl、10mM EDTA、1mM PMSF,pH8.3で洗浄した。懸濁物を、4℃で10分間15000gで再度遠心分離し、上清を傾斜法で捨てた。次いで、ペレットを、100mM Tris、10mM EDTA、1% Triton X−100、1mM PMSF,pH8.3で洗浄した。懸濁物を4℃で10分間15000gで再度遠心分離し、上清を傾斜法で捨てた。ガラス製組織ホモジナイザー中で、1% DTTを含有する50mlの20mM Tris、1mM EDTA,1mM PMSF,pH8.3にペレットを再懸濁した。次いで、氷酢酸で酸性にしてpHを2.5にすることによりモノマーBMP−12を可溶化した。4℃で20分間15000gで遠心分離することにより可溶性フラクションを単離した。
【0117】
この遠心分離により得られた上清を集め、20mlずつSephacrylS−100TMサイズ排除カラム(83cm x 2.6cm;ベッド約440ml)上でクロマトグラフィーを行った。1%酢酸を移動相として流速1.4ml/分でSephacrylS−100TMカラムを操作した。コンピューター計算した吸光係数18200M−1cm−1および分子量(11667ダルトン)を用い、280nmにおける吸光度によりBMP−12モノマーに対応するフラクションを検出した。このサイズ排除カラムによりプールされた材料を再生反応の出発材料として用いた。
【0118】
上記方法の別法として、−80℃に保存された1.0gの細胞を計り取る。溶液(3.4mlの100mM Tris、10mM EDTA,pH8.5)を添加する。十分に懸濁するまで溶液をボルテックス撹拌する。40μlのイソプロパノール中100mM PMSFを添加する。フレンチプレスで細胞を1000psiにおいて溶解させる。封入体をエッペンドルフーブ中、4℃で20分遠心分離してペレットを形成する。上清を傾斜法で捨てる。1個のペレット(全部で4個)に250mM DTTを含有する脱気した1.0mlの8.0Mグアニジン塩酸、0.5M Tris、5mM EDTA,pH8.5を添加する。ペレットを溶解し、液にアルゴンを30秒間吹き付ける。次に、溶液を37℃で1時間インキュベーションする。エッペンドルフ微量遠心を23℃で2〜3分行って不溶性物質をペレット化する。0.5〜1.0mlの上清をスペルコ(Supelco)の2cmガードカートリッジ(LC−304)に注入し、0.1%TFA中アセトニトリルを35分で1−70%とするグラジエントで溶離する。BMP−12は29ないし31分の間に溶離する。フラクションをプールし、アミノ酸組成に基づく理論吸光係数を用いて、0.1%TFAに対する280ナノメーターの吸光度により蛋白濃度を決定する。
【0119】
上記方法の第2の別法として、上記のごとくイー・コリから得た凍結細胞ペレットを30mlのTE8.3(100:10)バッファー(100mM Tris−HCl pH8.3、10mM NaEDTA、1mM PMSF)中で融解する。マイクロフルイダイザー(Microfluidizer)TM[#MCF100T型]に3回通すことにより細胞を溶解させる。最初に得られた封入体ペレットを、100mM DTTを含有する8M グアニジン−HCl、TE8.5(100:10)バッファー(100mM Tris−HCl pH8.5)、10mM NaEDTA)中に溶解し、37℃で1時間インキュベーションする。この材料を室温で15分間12000gで遠心分離する。
【0120】
CHAPS系を用いるBMP−12蛋白の再生
十分な体積のBMP−12プールを凍結乾燥して10μgの蛋白を得る。ガラス製装置で蒸留した5μlの水を添加して残渣を再溶解し、次いで、100μlの再生用混合物(50mM Tris、1.0M NaCl、2% 3−(3−クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ−1−プロパン−サルフェート(CHAPS)、5mM EDTA、2mM グルタチオン(還元型)、1mM グルタチオン(酸化型);pH約8.5)を添加する。部分試料をノベックス(Novex)の16%トリシンゲル上を125ボルトで2.5時間泳動させ、次いで、クーマシーブルー(Coomasie Blue)染色ならびに脱色することによりダイマー形成を評価する。
【0121】
1% Bバッファー(Aバッファー中に希釈)に対して平衡化されたC4分析用RP−HPLC(逆相高品質液体クロマトグラフィー)カラム(ビダック(Vydac)214TP54)を用い、流速1ml/分として以下のグラジエント(Aバッファー=0.1%トリフルオロ酢酸、Bバッファー=95%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸)を35分かけて行う間に蛋白を溶離させてBMP−12ダイマーを精製した:

1−5分 20%Bバッファー
5−10分 20−30%Bバッファー
10−30分 30−50%Bバッファー
30−35分 50−100%Bバッファー

蛋白を280nmにおける吸光度によりモニターした。ピークBMP−12フラクション(29ないし31分の間に溶離)をプールした。SDS−PAGEにより純度を評価した。上で示したコンピューターにより計算した吸光係数および分子量を用いて、280nmにおける吸光度により蛋白濃度を決定した。
【0122】
哺乳動物細胞におけるBMP−12の発現
生物学的に活性のある組み換えヒト・BMP−12のためのもう1つの考えられる好ましい発現系は安定に形質転換された哺乳動物細胞である。
【0123】
配列番号:1の配列またはBMP−12をコードする他のDNA配列もしくは他の修飾配列およびpCD[オカヤマ(Okayama)ら,モレキュラー・セル・バイオロジー(Mol.Cell Biol.),第2巻161〜170頁(1982年)]、pJL3、pJL4[ゴフ(Gough)ら,EMBO J.,第4巻:645〜653頁(1985年)]ならびにpMT2 CXMのごとき既知ベクターを用いることにより当業者は哺乳動物発現ベクターを構築することができる。
【0124】
哺乳動物発現ベクターpMT2 CXMはp91023(b)(ウォング(Wong)ら,サイエンス第228巻:810〜815頁,1985年)の誘導体であるが、それがテトラサイクリン耐性遺伝子のかわりにアンピシリン耐性遺伝子を含み、さらにcDNAクローン挿入のためのXhoI部位を含んでいるという点でp91023(b)とは異なる。pMT2 CXMの機能的エレメントは記載されており(カウフマン,アール・ジェイ(Kaufman,R.J.),1985年,プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユーエスエイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第82巻:689〜693頁)、アデノウイルスVA遺伝子、72塩基対のエンハンサーを含むSV40複製開始点、5'スプライス部位ならびにアデノウイルス後期mRNA上に存在するアデノウイルス三分節リーダー配列の大部分を含むアデノウイルス大後期プロモーター、3'スプライスアクセプター部位、DHFRインサート、SV40初期ポリアデニレーション部位(SV40)、およびイー・コリ中での増殖に必要なpBR322配列を含む。
【0125】
pMT2−VWFのEcoRI消化によりプラスミドpMT2 CXMを得て、これを米国メリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに、受託番号ATCC67122の下で寄託した。EcoRI消化によりpMT2−VWF中に存在するcDNAインサートを切除し、直鎖状のpMT2を得て、これを結合してイー・コリHB101またはDH−5をアンピシリン耐性に形質転換することができる。プラスミドpMT2 DNAを慣用的方法により調製することができる。次いで、ループアウト/イン突然変異[モリナガ(Morinaga)ら,バイオテクノロジー(Biotechnology)第84巻:636頁(1984年)]を用いてpMT2 CXMを構築する。これにより、SV40複製開始点およびpMT2のエンハンサー配列に近いHindIII部位に対する塩基1075から1145までを除去する。さらに、それは、制限エンドヌクレアーゼXhoIに関する認識部位を含む配列を挿入する。pMT23と命名したpMT2CXMの誘導体は制限エンドヌクレアーゼPstI、EcoRI、SalIおよびXhoIに関する認識部位を含んでいる。プラスミドpMT2 CXMおよびpMT23 DNAを慣用的方法により調製してもよい。
【0126】
pMT21由来のpEMC2β1も本発明の実施に適する。pMT21は、pMT2−VWF由来のpMT2に由来する。上記のごとく、EcoRI消化によりpMT−VWF中に存在するcDNAインサートを切除し、直鎖状のpMT2を得て、これを結合してイー・コリHB101またはDH−5をアンピシリン耐性に形質転換することができる。プラスミドpMT2 DNAを慣用的方法により調製することができる。
【0127】
pMT21は以下の2つの修飾によりpMT2に由来する。まず、cDNAクローニングのためのG/Cテイリングからの19個のG残基の伸長を含むDHFR cDNAの76塩基対の5'非翻訳領域を欠失させる。この工程において、XhoI部位を挿入してDHFRのすぐ上流に続く配列を得る。次に、EcoRVおよびXbaIでの消化、DNAポリメラーゼのクレノウフラクションでの処理、次いで、ClaIリンカーへの結合により唯一のClaI部位を導入する。これにより、250塩基対のセグメントがアデノウイルス関連RNA(VAI)領域から欠失されるが、VAI RNA遺伝子の発現または機能は妨害されない。pMT21をEcoRIおよびXhoIで消化し、ベクターpEMC2B1を誘導するために用いる。
【0128】
EcoRIおよびPstIでの消化によりpMT2−ECAT1[エス・ケイ・ジュング(S.K.Jung)ら,ジャーナル・オブ・ウイロロジー(J.Virol.)第63巻:1651〜1660頁(1989年)]からEMCVリーダーの一部を得て、2752塩基対のフラグメントを生じさせる。このフラグメントをTaqIで消化して、508塩基対のEcoRI−TaqIフラグメントを得て、これを低融点アガロースゲル上の電気泳動により精製する。68塩基対のアダプターおよびその相補鎖を、5'TaqI突出末端およびヌクレオチド763から827までのEMCウイルスリーダー配列にマッチする配列を有する3'XhoI突出末端とともに合成する。さらに、EMCウイルスリーダー中の位置10におけるATGをATTに変更し、XhoI部位に続ける。pMT21 EcoRI−
XhoIフラグメント、EMCウイルスEcoRI−TaqIフラグメント、および68塩基対のオリゴヌクレオチドアダプターであるTaqI−XhoIアダプターのスリー・ウェイ(three way)結合によりベクターpEMC2β1を得る。
【0129】
このベクターは、哺乳動物細胞における所望cDNAの高レベル発現を指令する関係となっているSV40複製開始点ならびにエンハンサー、アデノウイルス大後期プロモーター、アデノウイルス三分節リーダー配列の大部分のcDNAコピー、小型のハイブリッド介在配列、SV40ポリアデニレーションシグナルならびにアデノウイルスVA I遺伝子、DHFRならびにβ−ラクタマーゼマーカーおよびEMC配列を含んでいる。
【0130】
ベクター構造はBMP−12 DNA配列の修飾を含んでいてもよい。例えば、コーディング領域の5'および 3'末端の非コーディングヌクレオチドを除去することによりBMP−12 cDNAを修飾することができる。欠失された非コーディングヌクレオチドを、発現に有益であることが知られている他の配列に置換してもよく、置換しなくてもよい。これらのベクターをBMP−12蛋白発現に適する宿主細胞中に形質転換する。さらに、配列番号:1のヌクレオチド571から882までの成熟コーディング配列を単離し、他のBMP蛋白の完全なプロペプチドをコードする配列5'末端配列を付加することにより、配列番号:1の配列またはBMP−12蛋白をコードする他の配列を操作してBMP−12蛋白を発現させることができる。
【0131】
例えば、当業者は、BMP−2プロペプチドをコードするDNA配列が正しい読み取り枠において成熟BMP−12ペプチドをコードする配列に結合しているDNAベクターを調製することにより、BMP−2のプロペプチドが作動可能なように成熟BMP−12ペプチドに結合している融合蛋白を製造することができる。かかる融合蛋白のDNA配列を配列番号:27に示す。
【0132】
当業者は、コーディング配列に隣接する哺乳動物の調節配列を除去することにより、配列番号:1の配列を操作して上記のごとく細菌細胞による細胞内または細胞外発現用の細菌ベクターを作り出すことができる。もう1つの例として、さらにコーディング配列を操作することもできる(例えば、他の既知リンカーに結合する、非コーディング配列を欠失させることにより修飾する、あるいは他の既知方法によりヌクレオチドを変更する)。次いで、ティー・タニグチ(T.Taniguchi)ら,プロナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユーエスエイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第77巻:5230〜5233頁の記載のごとき手順を用いて、修飾されたBMP−12コーディング配列を既知細菌ベクター中に挿入することができる。次いで、この代表的な細菌ベクターを細菌宿主細胞中に形質転換し、それによりBMP−12を発現することができる。細菌細胞でのBMP−12蛋白の細胞外発現生産については、例えば、欧州特許出願公開EPA177,343参照。
【0133】
昆虫細胞における発現のための昆虫ベクターの構築を行うために同様の操作をすることができる。酵母細胞による本発明因子の細胞内もしくは細胞外発現のために、酵母の調節配列を用いて酵母ベクターを構築することもできる[例えば、公開されたPCT出願WO86/00639および欧州特許出願EPA123,289参照]。
【0134】
哺乳動物細胞における高レベルの本発明BMP−12蛋白の製造方法は、多コピーの異種BMP−12遺伝子を含む細胞の構築を包含してもよい。異種遺伝子を増幅可能なマーカー、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子に結合する。ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子のために、増加した遺伝子コピーを含む細胞をメトトレキセート(MTX)濃度を増加させていった場合の増殖について選択できる(カウフマン(Kaufman)およびシャープ(Sharp),ジャーナル・オブ・モレキュラー・マイオロジー(J.Mol.Biol.),第159巻:601〜629頁(1982年)の手順に従う)。このアプローチを多くの異なる細胞タイプに関して用いることができる。
【0135】
例えば、リン酸カルシウム共沈およびトランスフェクション、エレクトロポーレーションまたはプロトプラスト融合を包含する種々の方法により、その発現を可能にする他のプラスミド配列に作動可能に結合した本発明BMP−12に関するDNA配列を含むプラスミドおよびDHFR発現プラスミドpAdA26SV(A)3[カウフマンおよびシャープ,モレキュラー・セル・バイオロジー第2巻:1304頁(1982年)]をDHFR欠損CHO細胞DUKX−BII中に同時導入することができる。透析したウシ・胎児血清を含むアルファ培地での増殖に関してDHFR発現形質転換体を選択し、次いで、カウフマンら,モレキュラー・セル・バイオロジー第5巻:1750頁(1983年)に記載されたようにMXT濃度を増加させていった場合(例えば、連続的ステップでMXTを0.02、0.2、1.0次いで、5μMとする)の増殖について選択する。形質転換体をクローンし、下記実施例5において説明するローゼン−改変サムパス−レデイラットアッセイ(the Rosen-modified Sampath-Reddi rat assay)により生物学的に活性のあるBMP−12の発現をモニターする。BMP−12発現はMXT耐性レデイの増加に伴って増加するはずである。[35S]メチオニンもしくはシステインでのパルスラベリングおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動のごとき当該分野において知られた標準的方法を用いてBMP−12ポリペプチドを特徴づける。同様の手順に従って他の関連BMP−12蛋白を製造することができる。
【実施例3】
【0136】
BMP−2プロペプチド/BMP−12成熟ペプチド融合物の調製
BMP−2プロペプチド/BMP−12成熟ペプチド融合物をコードするベクターを構築するために、以下のクローニング手順を用いて2つの配列を融合させた。
【0137】
まず、ヒトBMP−2蛋白のプロペプチドからなるDNA制限酵素フラグメント、すなわち、配列番号:27のヌクレオチド1から843からなるフラグメントをpBMP2ΔEMCから切断する。pBMP2ΔEMCは、ヒト・BMP−2蛋白に関する全コーディング配列からなるラムダU20S−39(ATCC#40345)由来のプラスミドであり、BMP−2の非翻訳3'および5'配列をベクターから欠失してある。使用5'制限酵素はBglIIであり、それはベクター中のpBMP2ΔEMCをヌクレオチド979において切断する。使用3'制限酵素はMaeIIであり、それはBMP−2プロペプチド中のpBMP2ΔEMCをカルボキシ末端のわずかに手前のヌクレオチド1925において切断する。次いで、得られた954塩基対の生成物をゲルにより単離し、遺伝子を精製した。次に、ヒト・BMP−12成熟ペプチドDNA配列の5'部分からなるDNA制限酵素フラグメントをpPCR1−1#2 V1−1(ATCC#69517)から切断する。使用5'制限酵素はEaeIであり、それはヒト・BMP−12成熟ペプチド配列のN末端の丁度3'のところでpPCR1−1#2 V1−1を切断する。得られた259塩基対の生成物をゲルにより精製し、遺伝子を精製した。次いで、アニーリングした場合にヒト・BMP−2プロペプチドの最先の3'末端とBMP−12成熟ペプチドの5'末端との融合配列からなる小型のDNAフラグメントを生じるように2つのDNAオリゴを設計し合成した。該DNAフラグメントは、ヒト・BMP−2プロペプチドからなる3'制限酵素フラグメントにアニールする5'MaeII相補性粘着末端を有する。アニールしたオリゴDNAフラグメントは、ヒト・BMPO−12成熟ペプチドからなる制限酵素フラグメントの5'にアニールする3'EaeI相補性粘着末端を有する。コーディング鎖オリゴをB2/12と命名し、それは13塩基対の長さである。次に、BMP−12成熟ペプチドフラグメントの3'末端における123塩基対をコードするDNAフラグメントを以下のようにして得た。まず、ヒト・BMP−2蛋白のプロペプチドからなるDNAフラグメント、すなわちヌクレオチド1から846を、pBMP2ΔEMCからPCR増幅する。5'プライマー(オリゴ655a)はポリリンカーの丁度5'のところにアニールし、沈黙の変異によりBglII制限酵素部位を導入する。得られたPCR生成物を、ポリリンカー中で開裂するSalI、およびBglIIで切断した。850塩基対の制限酵素フラグメント(アミノ酸配列REKEで終わる)をゲルにより精製し、遺伝子を精製した。沈黙の変異によりBglII制限酵素部位をコードしていてアミノ酸配列SRCSから始まる成熟開裂生成物の5'末端にアニーリングする5'プライマー(オリゴ5−1)を用いてBMP−12成熟ペプチドをPCR増幅した。3'プライマー(V1−13)はBMP−12成熟ペプチド3'末端にアニーリングし、ストップコドンの後ろにXbaI制限酵素部位を導入する。得られたPCR生成物をBglIIおよびXbaIで切断した。321塩基対の制限酵素フラグメントをゲルにより精製し、遺伝子を精製した。
【0138】
前以てSalIおよびXbaIで切断したベクター中に2つの制限フラグメントをスリー・ウェイ結合させた。得られた構築物を配列決定してPCRにより誘発されたエラーをチェックしたところ、沈黙のCからTへの変異がプロペプチドの塩基対185において観察された。このプラスミドをpREKRSRCと命名した。次いで、pREKRSRCをBglIIおよびNgoMIで切断し、それによりBMP−12成熟配列の123塩基対を包含するベクターフラグメントを単離した。その3つの制限フラグメントおよびアニーリングしたオリゴリンカーをフォー・ウェイ(four way)結合して、BMP−12成熟ペプチドの(TAL)5'末端に融合した3'末端における成熟開裂部位を伴ったBMP−2プロペプチドを有するpREKR−TALを得た。得られた結合ベクターのコーディング配列を配列番号:27に示す。
【実施例4】
【0139】
発現されたBMP−12の生物学的活性
上記実施例2で得られた発現BMP−12蛋白の生物学的活性を測定するために、細胞培養物から蛋白を回収し、同時生成される他の蛋白性物質ならびに他の汚染物質からBMP−12蛋白を単離する。精製蛋白を下記実施例5のアッセイに従ってアッセイしてもよい。
【0140】
当業者に知られた標準的方法を用いて精製を行う。
【0141】
クーマシーブルーまたは銀[オウクリー(Oakley)ら,アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)第105巻:361頁(1980年)]で染色するSDS−PAGEアクリルアミド[レムリ(Laemmli),ネイチャー(Nature)第227巻:680頁(1970年)]のごとき標準的方法を用い、さらにイムノブロット[トウビン(Towbin)ら,プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユーエスエイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第76巻:4350頁(1979年)]により、蛋白分析を行う。
【実施例5】
【0142】
ローゼン改変サムパス−レデイアッセイ
サムパス(Sampath)およびレディ(Reddi),プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユーエスエイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第80巻:6591〜6595頁(1983年)記載のラット異所性インプラントアッセイの改変バージョンを用いてBMP−12蛋白の活性を評価する。この改変アッセイを本明細書においてローゼン−改変サムパス−レディアッセイと呼ぶ。サムパス−レディ法のエタノール沈殿工程を、アッセイすべきフラクションを水に対して透析(組成物が溶液の場合)または限界濾過(組成物が懸濁液の場合)することに置き換える。次いで、溶液または懸濁液を0.1%TFAに対して平衡化する。得られた溶液を20mgのラット・マトリックスに添加する。蛋白で処理されない模擬ラット・マトリックス試料は対照として役立つ。この材料を凍結乾燥し、得られた粉末を#5ゼラチンカプセルに封入する。21〜49日齢のロング・エバンズ・ラット(Long Evans Rats)の腹胸部位の皮下にカプセルを移植する。10日後にインプラントを除去する。各インプラントの切片を固定し、組織学的分析用に処理する。1μmのグリコールメタクリレート切片をフォン・コッサ(Von Kossa)および酸フクシンで染色して各インプラントに存在する誘導された腱/靭帯様組織量のスコアをつける。
【0143】
インプラント1個あたり1、5、25および50μgの用量でBMP−12を10日間移植した。5μgの用量のBMP−2は陽性対照として役立った。試験したすべてのBMP−12用量に関して、10日後にインプラントにおいて骨または軟骨の形成は観察されなかった。そのかわり、同じ平面に並んでおり互いに固く充填されている線維芽細胞の高密度の束の存在により容易に認識される、胚性の腱に類似した組織でインプラントが満たされていた[腱/靭帯様組織は、例えば、ハム(Ham)およびコーマック(Cormack),ヒストロジー(Histology)(JB・リッピンコット・カンパニー(JB Lippencott Co.)(1979年),367〜369頁に記載されており、引用によりその開示を本明細書に記載されているものとみなす]。腱/靭帯様組織がすべてのBMP−12含有インプラントに存在していた次のセットのアッセイにおいてこれらの知見が再び得られた。対照的に、期待されたように、BMP−2インプラントは骨および軟骨の形成を示したが、腱/靭帯様組織を含んでいなかった。
【0144】
本発明BMP−12蛋白および関連蛋白をこのアッセイにおける活性に関して評価してもよい。
【実施例6】
【0145】
上記実施例による方法を用い、当業者が行える範囲内のわずかな変更を行って、ヒトMP52蛋白およびBMP−13のネズミ・相同体を発現し、腱/靭帯様組織誘導活性に関してアッセイした。すべての蛋白は、BMP−12に関して上に記載した結果と同等の結果を示した。
【0146】
上記記載は、本発明の目下好ましい具体例を詳述するものである。これらの記載を考慮して本発明の実施における多くの改変および変更が当業者により行われると考えられる。それらの改変および変更は添付した請求の範囲に包含されると確信する。本明細書において議論したすべての文献の開示を引用により本明細書に記載されているものとみなす。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、腱/靭帯様組織誘導活性を有し、腱/靭帯様組織の形成および修復を誘導するための組成物において有用である蛋白の新たなファミリーを提供するものであり、特に、腱/靭帯様組織の形成および修復を誘導するための医薬品の分野において利用可能である。
(配列表)



















































































【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1はヒト・BMP−12とヒト・MP52配列の比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合組織と骨との間の接着の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物を製造するための、有効量のMP−52の使用方法。
【請求項2】
歯周靱帯の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物を製造するための、有効量のMP−52の使用方法。
【請求項3】
結合組織と骨との間の接着の再生を必要とする疾患を治療するための治療組成物であってさらにBMP−2を含有するものを製造するための、有効量のMP−52の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−16037(P2007−16037A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218531(P2006−218531)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【分割の表示】特願2005−168624(P2005−168624)の分割
【原出願日】平成6年12月6日(1994.12.6)
【出願人】(501418214)ジェネティクス インスティテュート,エルエルシー (35)
【出願人】(592257310)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (31)
【Fターム(参考)】