説明

MPR表示装置及びコンピュータ断層撮影装置

【課題】断面像のデータ量が増えても、高速処理にて断面像を作成でき、短い切替え時間でMPR表示を実現することにある。
【解決手段】連続平行な複数断面像の3Dデータを記憶する第1の記憶部25と、記憶された3Dデータから任意断面像を作成する断面像処理制御部23と、この作成された断面像を表示する表示手段30とを有し、前記断面像処理制御部23は、第1の記憶部25に記憶される3Dデータのデータ量を減らして圧縮3Dデータを作成し第2の記憶部24に記憶する圧縮部42と、圧縮3Dデータから3Dデータに平行な任意の断面像を作成し表示するアキシャル断面像作成部43と、このアキシャル断面像上に任意の第1の断面位置を設定する第1断面位置設定部44と、圧縮3Dデータから、第1の断面位置にて第1断面像を作成し表示する第1断面像作成部45とを備えたMPR表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に関する投影データより得られる複数の断層画像から任意断面の断層画像を生成し表示するMPR表示装置及びコンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影装置(以下、CT装置と呼ぶ)は、X線線源とX線検出器との間に被検体を配置し、被検体をX線光軸に直交する軸の回りに回転させつつX線源からX線を被検体に向けて照射するか、或いはX線源及びX線検出器とを一体として被検体の周囲を回転させつつ、X線源からX線を被検体に向けて照射し、当該被検体から透過してくる投影データをX線検出器で検出し、被検体の3次元領域に関する投影データを収集している。
【0003】
CT装置は、収集された被検体の3次元領域に関する投影データから連続した平行な複数枚の断面像を再構成し、この再構成された複数枚の断面像から任意指定の断面位置に関する断面像を生成し、MPR(Multi−Planar Reconstruction)表示することが行われている。
【0004】
MPR表示は、例えば特許文献1,2に記載するように既に知られている。MPR表示は、被検体の3次元領域に関する投影データから得られる複数枚の断面像と平行な任意の断面像であるアキシャル断面像、このアキシャル断面像上に任意の直線を指定し、この指定直線に従って断面した断面像であるオブリーク断面像、オブリーク断面像上に任意の直線を指定し、この指定直線に従って断面した断面像であるダブリオブリーク断面像などを生成し、表示部に表示するものである。
【0005】
このMPR表示は、断面像上に任意指定する直線両端部の2つの指定断面位置が変更されたとき、前述した再構成された複数枚の断面像から再度計算し直し、前述した幾つかの断面像を生成する。
【0006】
ところで、以上のようなCT装置は、被検体の3次元領域に関する投影データから連続した平行な複数枚の断面像を再構成し、これら再構成された複数枚の断面像から任意断面位置の断面像を生成するが、高速計算により任意断面位置の断面像を生成するため、ランダムアクセス不可能な不揮発メモリの副メモリであるディスクに一旦記憶した後、演算処理用CPUが、ディスクから必要とする断面像データを高速的に読み出し、ランダムアクセス可能な揮発性のメモリ(主メモリとも呼んでいる)に移し、任意断面位置の断面像を生成する計算処理を行っている。
【特許文献1】特開2005−300438号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2006−110059号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、上下左右がほぼ同じ分解能をもつ2次元のX線検出器を用いた,いわゆるコーンビームCT装置が利用されるようになり、1回のスキャンによって複数枚の断面像を取得でき、かつ、スライス厚さ方向の分解能が実際のスライスに沿った方向とあまり変わらない等方向(アイソトロピック)な断面像を得ることが可能となっている。
【0008】
また、連続した複数枚の断面像を3次元データとして、解析に使用するデジタルエンジニアリング技術も徐々に普及し始めている。これに伴って、連続した複数枚の断面像を構成する3次元マトリクス数が益々増大する傾向にある。
【0009】
その結果、従来のMPR表示処理では、前述したように連続した複数枚の断面像のデータ量が揮発性メモリの作業領域に記憶することが難しい状況にある。その為、複数枚の断面像のデータは、ランダムアクセス不可能な不揮発メモリの副メモリであるディスクに一旦記憶し、演算処理用CPUが、ディスクから必要とする断面像データを高速的に読み出してMPR表示処理を行っている。このように複数枚の断面像データ量が大きくなってくると、ディスクのロード/アンロード(ディスク停止時のヘッド退避)の頻度が増加し、MPR表示処理の速度が益々遅くなり、ひいてはMPR表示の切替り時間が長くなる問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、断面像のデータ量が増えても、高速処理により任意の断面像を作成可能とし、短い切替え時間でMPR表示を実現するMPR表示装置及びコンピュータ断層撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 上記課題を解決するために、本発明に係るMPR表示装置は、連続した平行な複数の断面像である3Dデータを記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶される3Dデータから任意指定による断面像を作成する断面像処理制御手段と、この断面像処理制御手段で作成された任意断面像を表示する表示手段とを有し、
前記断面像処理制御手段は、前記第1の記憶手段に記憶される3Dデータのデータ量を減らした圧縮3Dデータを作成し第2の記憶手段に記憶する圧縮手段と、前記3Dデータまたは前記圧縮3Dデータから、前記3Dデータの断面像と平行な任意指定の断面像であるアキシャル断面像を作成し前記表示手段に表示するアキシャル断面像作成手段と、表示された前記アキシャル断面像上に任意指定の第1の断面位置を設定する第1断面位置設定手段と、前記圧縮3Dデータから、前記第1の断面位置に従って断面した第1断面像を作成し前記表示手段に表示する第1断面像作成手段とを備えたMPR表示装置である。
【0012】
このような構成によれば、データ量を減らした圧縮3Dデータから第1断面像(オブリーク断面像)を作成し表示するので、任意指定の第1の断面位置を変更したとき、変更された第1断面像を短時間に作成でき、切替り時間の短いMPR表示を実現できる。
【0013】
また、本発明は、前記断面像処理制御手段の構成に新たに、前記表示手段に表示された前記第1断面像上に任意指定の第2の断面位置を設定する第2断面位置設定手段と、前記圧縮3Dデータから、前記第2の断面位置に従って断面した第2断面像を作成し前記表示手段に表示する第2断面像作成手段とを付加した構成である。
【0014】
この構成によれば、データ量を減らした圧縮3Dデータから第2断面像(ダブりオブリーク断面像)を作成し表示するので、任意指定の第2の断面位置を変更したとき、変更された第2断面像を短時間に作成でき、切替り時間の短いMPR表示を実現できる。
【0015】
(2) また、本発明は、前記断面像上に任意指定される前記第1及び第2の断面位置は、前記作成される前記第1及び第2断面像との対応関係が判るように色の異なる矢印や識別可能な印、記号をもって表示すれば、任意指定される断面位置と断面像との関係が容易に把握できる。
【0016】
また、前記圧縮手段としては、前記圧縮3Dデータのデータ量が前記第2の記憶手段における所定の容量を超えないように、前記圧縮3Dデータのボクセルサイズとマトリックス数を決定することを特徴とする。
【0017】
また、前記圧縮手段としては、前記圧縮3Dデータのボクセルサイズは3方向でほぼ同じになるようにデータ量を減らすことにより、表示手段に表示される第1断面像や第2断面像の分解能が等方的にすることができる。
【0018】
(3) さらに、前記第1の記憶手段としては、前記断面像処理制御手段がランダムアクセスできない副メモリであり、前記第2の記憶手段としては、前記断面像処理制御手段がランダムアクセスできる主メモリであり、前記圧縮3Dデータのデータ量は当該主メモリに記憶できるデータ量とするものである。これにより、圧縮3Dデータをランダムアクセス可能な主メモリに記憶するので、第1断面像及び第2断面像を高速的に作成でき、短い切替え時間でMPR表示を実現できる。
【0019】
(4) さらに、本発明は、被検体の3次元領域に関する投影データを再構成し、連続した平行な複数枚の断面像を取得するCT撮影装置1と、前述した構成を持ったMPR表示装置とを備えたコンピュータ断層撮影装置である。
【0020】
これにより、切替り時間の短いMPR表示のコンピュータ断層撮影装置を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、断面像のデータ量が増えても、高速処理により任意の断面像を作成でき、短い切替え時間でMPR表示を実現するMPR表示装置及びコンピュータ断層撮影装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るMPR表示装置を含むコンピュータ断層撮影装置の一実施の形態を示す構成図である。
【0023】
コンピュータ断層撮影装置は、被検体の3次元領域に関する投影データを収集し、この収集された投影データから連続した平行な複数枚の断面像を再構成するCT撮影装置1と、この再構成された複数枚の断面像から任意指定の断面位置に関する断面像を生成しMPR表示するMPR表示装置2とで構成される。
【0024】
CT撮影装置1は、従来周知の技術であり、例えばターンテーブル11上に載置される被検体12を挟むように放射線源13と放射線検出器14とが対向配置される。
【0025】
放射線源13は、例えばX線源が使用され、コリメータを用いて、角錐形に成形されたX線ビームを被検体12に向けて照射する。放射線検出器14は、例えばコーンビームに対応し、縦横に配列された複数のX線検出素子を有する2次元アレイ型が採用される。そして、複数のX線検出素子は、X線照射軸にほぼ直交して略平面状に配列される。
【0026】
放射線源13及び放射線検出器14は、例えば回転駆動装置により回転駆動されるリング状の回転フレーム等に取り付けられ、或いは図示するごとく放射線源13からのX線照射軸を中心軸として放射線検出器14を対向するように固定設置する一方、前記ターンテーブル11を上下動、かつ、回転可能に設置し、放射線源13から発生されたX線ビームが被検体12の全周にわたって照射可能な構成となっている。
【0027】
さらに、放射線検出器14の出力側には投影データ収集部15及び再構成処理部16が設けられている。
【0028】
投影データ収集部15は、放射線検出器14からチャンネルごとに出力される信号をデジタル信号に変換し、投影データとして収集する。
【0029】
再構成処理部16は、投影データ収集部15で収集された被検体12の3次元領域に関する投影データから連続した平行な複数枚の断面像を再構成し、LAN3を介してMPR表示装置2へ供給するか、MPR表示装置2からのデータ要求に基づいて再構成された連続した複数枚の断面像データを送信する。
【0030】
なお、再構成処理部16は、CT撮影装置1ではなく、MPR表示装置12内に設けた構成であっても構わない。以下、CT撮影装置1内に再構成処理部16を設けた例について説明する。
【0031】
MPR表示装置2は、通常のコンピュータであって、前述したLAN3と装置2内部のバスライン21と間のデータの受け渡しを行うLANインターフェース22、CPU(Central Processing Unit:中央演算ユニット)で構成される断面像処理制御部23、主メモリ24、ディスク25、DVDドライブ26、表示出力インターフェース27、キーボード28、マウス等のポインティングデバイス29、前記表示出力インターフェース27に接続される表示器30等で構成されている。
【0032】
MPR表示装置2としては、他に、筐体、電源その他必要とする構成体等が設けられているが、発明の要旨とは直接関係ないことから省略する。
【0033】
LANインターフェース22は、CT撮影装置1から送信されてくる連続複数枚の断面像データを取り込み、またはMPR表示装置2からのデータ要求指示に基づいてCT撮影装置1から送信されてくる再構成された連続した複数枚の断面像データを取り込む機能を持っている。
【0034】
断面像処理制御部23は、主メモリ24に格納された各種のプログラムをそれぞれ順次読み出して所定の演算処理を実行するユニットであって、機能的には後記する図2に示すようなブロック構成を有する。断面像処理制御部23は、CT撮影装置1からLANインターフェース22を介して取り込んだ連続した平行な複数枚の断面像データをディスク25に格納する。なお、所定の演算処理を実行する各種のプログラムは、ディスク25に格納され、実行時には読み出され、主メモリ24に格納される。
【0035】
ディスク25は、ランダムアクセスできず、かつ、アクセス速度が遅い副メモリである不揮発性メモリであるが、主メモリ24よりも相当大きなメモリ容量を持っている。ここで、ランダムアクセスとは、任意の番地からデータを取り出すことを意味する。
【0036】
一方、主メモリ24は、断面像処理制御部23が高速にランダムアクセスできる揮発性メモリであって、ディスク25よりもメモリ容量が少ない。よって、主メモリ24は、任意指定に基づく断面位置の断面像の生成を高速的に作業処理することが可能であるが、前述したように作業処理領域が少なく、何らかの工夫が必要となる。
【0037】
DVDドライブ26は、大容量光ディスクを総称するDVD(Digital Versatile Diskの略)31の読取り及び書き込みを行う機能を有し、例えばCT撮影装置1の再構成処理部16で得られた連続した平行な複数枚の断面像データをDVD31に書き込んだ後、DVDドライブ26に装填し、DVD31から連続複数枚の断面像データを読み出してMPR表示装置2内に取り込むことが可能である。
【0038】
表示出力インターフェース27は、断面像処理制御部23によって連続複数枚の断面像データから得られる任意指定に基づく断面像を表示器30に対して受け渡しする機能を有し、例えば必要に応じて画像メモリや表示制御機能を含むものである。
【0039】
キーボード28及びポインティングデバイス29は、断面像処理制御部23により実行されるプログラムに従って各種の制御指示データを入力したり、位置指定や必要な選択指示を入力する機能を有する。
【0040】
図2はMPR表示装置2における断面像処理制御部23の機能的なブロック構成図である。
断面像処理制御部23としては、機能的には、表示フロー制御部41と、圧縮部42と、アキシャル断面像作成部43と、第1断面位置設定部44と、第1断面像作成部45と、第2断面位置設定部46と、第2断面像作成部47とを有する。
【0041】
表示フロー制御部41は、CT撮影装置1からLANインターフェース22を介して連続した平行な複数枚の断面像である3Dデータ(3次元データ)を受信し、またはDVD31に格納される3DデータをDVDドライブ26で読み出し、ディスク25に記憶する。
【0042】
圧縮部42は、ディスク25に記憶される3Dデータを所要の比率(圧縮率に相当する)のもとにデータ量を減らし、任意指定の断面位置に基づく断面像を生成処理可能な圧縮3Dデータを生成し、主メモリ24に格納する。
【0043】
アキシャル断面像作成部43は、3Dデータまたは圧縮3Dデータから、3Dデータの断面像に平行なアキシャル断面像を作成し、表示出力インターフェース27を介して表示器30に表示する。
【0044】
第1断面位置設定部44は、表示器30に表示されるアキシャル断面像上に直線となる任意の第1の断面位置を指定入力し、この指定された任意の第1の断面位置データを取り込んで適宜なメモリ例えば主メモリ24に設定する機能を持っている。第1断面像作成部45は、主メモリ24の圧縮3Dデータから、第1断面位置設定部44で設定された第1の断面位置データに基づいて断面し、第1の断面像であるオブリーク断面像を作成し、表示出力インターフェース27を介して表示器30に表示する。
【0045】
第2断面位置設定部46は、表示器30に表示されたオブリーク断面像上に直線となる任意の第2の断面位置を指定入力し、この指定された任意の第2の断面位置データを取り込んで適宜なメモリ例えば主メモリ24に設定する機能を有する。第2断面像作成部47は、主メモリ24の圧縮3Dデータから、第2断面位置設定部46で設定された第2の断面位置データに基づいて断面し、第2の断面像であるダブリオブリーク断面像を作成し、表示出力インターフェース27を介して表示器30に表示する。
【0046】
なお、MPR表示装置2の断面像処理制御部23はプログラムに従って一連の処理を実行しMPR表示画面を取得するが、理解を容易にするために図3を参照し、断面像処理制御部23で得られるMPR表示画面について説明する。
【0047】
MPR表示装置2の断面像処理制御部23は、予めプログラムに定められている画面分割データに基づき、表示器30のMPR表示用画面を4分割した表示画面領域を作成表示する。
【0048】
この4分割された表示画面領域には次のような断面像が表示される。すなわち、
図示左上段表示画面領域にはアキシャル断面像P0、
図示左下段表示画面領域には任意指定の断面位置データに基づく断面であるオブリーク断面像P1a、
図示右上段表示画面領域には異なる任意指定の断面位置データに基づく断面であるオブリーク断面像P1b、
図示右下段表示画面領域にはオブリーク断面像から任意指定の断面位置データに基づく断面であるダブルオブリーク断面像P2がそれぞれ表示されている。
【0049】
次に、断面像に対する任意指定に基づく断面位置について説明する。
図示左上段に表示されるアキシャル断面像P0上には2つの断面位置L1aとL1bが指定入力されている。断面位置L1aに従って断面された断面像は図示左下段に示すオブリーク断面像P1aである。断面位置L1bに従って断面された断面像は図示右上段に示すオブリーク断面像P1bである。
【0050】
図示左下段に表示されるオブリーク断面像P1a上には断面位置L0が指定入力され、この指定入力のもとに断面された断面像は図示左上段に示すアキシャル断面像P0に相当する断面像が表示される。
【0051】
図示右上段に表示されるオブリーク断面像P1b上には断面位置L0とL2が指定入力され、この指定入力される断面位置L0のもとに断面された断面像は図示左上段に示すアキシャル断面像P0に相当する断面像が表示され、また指定入力される断面位置L2のもとに断面された断面像は図示右下段に示すダブリオブリーク断面像P2である。
【0052】
指定断面位置L1aとL1bの変更は、操作者が例えばポインティングデバイス29を使って交点となる点Aと角度φとを変更要求入力することで決まり、表示位置として表示される。これら指定断面位置L1aとL1bは互いに直交する直線である。指定入力がない初期のデフォルトは、図示左上段に示すアキシャル断面像P0のA点は中心、角度φは0°である。
【0053】
また、指定断面位置L0の変更は、前述同様に操作者の変更要求入力により決まり、横線の表示位置として表示される。デフォルトは中央である。なお、オブリーク断面像P1a上のL0とオブリーク断面像P1b上のL0は上下方向で同じ位置にあり、一方を変更すると、もう一方はそれに連動して変化する。
【0054】
また、指定断面位置L2の変更は、操作者がポインティングデバイス29を使って点Bと角度θの変更要求入力によって決まり、表示位置として表示される。デフォルトは、B点は中央、角度θは0°である。
【0055】
なお、図3においては、指定断面位置L0,L1a,L1b,L2には、断面像との対応及び向きが分かるように矢印を付しているが、例えば相互の指定断面位置と各断面像との対応及び向きが分かるように色の異なる矢印を付して表示してもよい。この矢印は指定断面位置に完全に一致させた状態で表示しなくともよい。さらに、矢印に代えて、識別可能な他の印や記号を付して表示しても構わない。
【0056】
次に、以上のように構成されたMPR表示装置2の動作について図4及び図5を参照して説明する。
【0057】
MPR表示装置2の断面像処理制御部23はプログラムに従って一連の処理を実行する。先ず、断面像処理制御部23は表示フロー制御部41を実行する。表示フロー制御部41は、CT撮影装置1からLAN3及びLANインターフェース22を介して連続した平行な複数枚の断面像である3Dデータ(3次元データ)を取込み、ディスク25に記憶する(S1)。また、DVD31に格納される3DデータをDVDドライブ26で読み出し、ディスク25に記憶してもよい。
【0058】
断面像処理制御部23は、連続した平行な複数枚の断面像である3Dデータをディスク25に記憶した後、圧縮部42を実行する。
【0059】
圧縮部42は3Dデータから圧縮3Dデータを作成する(S2)。図5は圧縮を説明する図である。この圧縮部42による圧縮処理は、M×Mの断面像をK枚重ねたマトリックス数M×M×Kの3Dデータ(図5(a)参照)を、3Dデータの実空間での領域サイズを変えずに、マトリックス数Mc×Mc×Kcの圧縮3Dデータ(図5(b)参照)に変換する処理である。
【0060】
今、断面像の圧縮処理に際し、マトリックス数M×M×Kの3Dデータを構成する各ボクセルのサイズ(mm)は、処理前がΔx,Δy(=Δx),Δzであり、処理後にはΔxc,Δyc,Δzcに変換するものとする。
【0061】
そこで、圧縮部42は、操作者がキーボード28から3Dデータの付帯情報である前述したM,K,Δx,Δy,Δzが入力されると、下記する所定の計算式に基づき、M,K,Δx,Δy,ΔzからMc,Kc,Δxc,Δyc,Δzcを計算する。
【0062】
計算式としては、Umaxを所定データ量(バイト)とし、また、3Dデータの1点の値(1つのボクセルに対応する値)を2バイトで表すとすれば、M,KとUmaxとの関係は、2×M×M×K≦Umaxと、2×M×M×K>Umaxとの2つの場合に分けることができる。なお、Umaxは、圧縮3Dデータが、例えば主メモリ24の全記憶容量から少なくともプログラムデータ分と処理作業記憶領域分とを差し引いた残りの記憶容量に収まるように、予め定めた値であり、主メモリ24のメモリ空き領域と呼ぶ。その結果、主メモリ24が他の処理にも使用する場合にはその分を考慮した少なくなる値となる。
【0063】
* 2×M×M×K≦Umaxの場合は、
主メモリ24の空き領域が十分に存在する。その結果
Mc=M,Kc=K,Δxc=Δx,Δyc=Δy,Δzc=Δz ……(1)
とする。すなわち、3Dデータをそのまま圧縮3Dデータとする。
【0064】
* 2×M×M×K>Umaxの場合は、
主メモリ24の空き領域が不足している。そこで、Umaxと2×M×M×Kとの比率(圧縮率に相当する)Reを求める。
Re=Umax/(2×M×M×K) ……(2)
ここで、中間的な計算として、圧縮後のボクセルを立方体としたときの仮ボクセルサイズΔを求める。
Δ={(Δx×Δy×Δz)/Re}1/3 ……(3)
そして、求めた仮ボクセルサイズΔを用いて、以下の(4)式、(5)式でマトリクスサイズの計算を行う。
Mc=INT{(M−1)・Δx/Δ} ……(4)
Kc=INT{(K−1)・Δz/Δ} ……(5)
次に、仮ボクセルサイズΔを用いた場合、実空間での領域サイズに端切れが出てしまうので、端切れが出ないよう、以下の計算でΔxc、Δyc、ΔzcをΔから若干大きくする方向に調整する。
【0065】
Δxc=(M−1)・Δx/(Mc−1) ……(6)
Δyc=Δxc ……(7)
Δzc=(K−1)・Δz/(Kc−1) ……(8)
以上の計算式により、ΔzcとΔxc(及びΔyc)は若干調整されるだけで、仮ボクセルサイズΔとほぼ同じとなり、等方的となる。
【0066】
さらに、圧縮部42は、以上のようにして求めたパラメータを用いて、3Dデータから補間計算を実施し、最終的な圧縮3Dデータを作成し、主メモリ24に記憶する。これにより、3Dデータの実空間での領域サイズを変えずに、圧縮3Dデータを作成し、主メモリ24に記憶することで、以下の処理で、ランダムにアクセスし、高速的に断面像の生成作業処理を行うことができる。
【0067】
引き続き、断面像処理制御部23は、圧縮3Dデータを主メモリ24に記憶した後、操作者がキーボード28及びポインティングデバイス29を用いて、各種の断面像を作成するための断面位置L0,L1a,L1b、L2を指定入力すると、アキシャル断面位置を含む第1断面位置設定部44及び第2断面位置設定部46がそれらの断面位置を取り込んで適宜なメモリに設定するとともに、表示器30に表示する(S3)。最初の設定はデフォルト位置である。
【0068】
断面像処理制御部23は、以上のようにして断面位置を設定した後、アキシャル断面像作成部43を実行し、アキシャル断面像P0を作成する(S4)。
【0069】
すなわち、アキシャル断面像作成部43は、圧縮3Dデータから、設定された断面位置L0に一番近いz位置のMc×Mcの断面像を選び出し、表示用マトリックスに変換することにより、アキシャル断面像P0を作成し、表示器30に表示する(図3参照)。このとき、z方向に補間を行ってもよい。
【0070】
引き続き、断面像処理制御部23は、第1断面像作成部45を実行し、オブリーク断面像P1aを作成する(S5)。第1断面像作成部45は、圧縮3Dデータから、設定された断面位置L1a上に設定された表示用マトリックスに対して、補間計算を行いつつ変換することにより、オブリーク断面像P1aを作成し、表示器30に表示する(図3参照)。
【0071】
また、第1断面像作成部45はオブリーク断面像P1bを作成する(S6)。第1断面像作成部45は、圧縮3Dデータから、設定された断面位置L1b上に設定された表示用マトリックスに対して、補間計算を行いつつ変換することにより、オブリーク断面像P1bを作成し、表示器30に表示する(図3参照)。
【0072】
さらに、断面像処理制御部23は、第2断面像作成部47を実行し、ダブルオブリーク断面像P2を作成する(S7)。第2断面像作成部47は、圧縮3Dデータから、設定された断面位置L2上に設定された表示用マトリックスに対して、補間計算を行いつつ変換することにより、ダブルオブリーク断面像P2を作成し、表示器30に表示する(図3参照)。
【0073】
以上のようにして所要とする断面像を作成した後、キーボード28及びポインティングデバイス29から断面位置の変更要求が入力されたか否かを判断し(S8)、変更要求が無かった場合には終了要求が入力されたか否かを判断し(S9)、終了要求があった場合は終了し、無かった場合はステップS8に戻る。
【0074】
ステップS8において、変更要求があった場合には、ステップS3に移行し、変更要求に伴う断面位置の指定入力を取り込む。そして、断面像処理制御部23は、引き続き、ステップS4以降の一連の処理を繰り返し実行し、所要の断面像を作成し、ステップS8に戻る。
【0075】
従って、以上のように操作者がキーボード28及びポインティングデバイス29を用いて、断面位置を変更すると、この変更された断面位置に従って断面位置L0,L1a,L1b、L2が短時間に切替って順次各断面像P0,P1a,P1b,P2をほぼリアルタイムで切替えて表示する。
【0076】
従って、以上のような実施の形態によれば、圧縮3Dデータのボクセルサイズとマトリックス数とを、主メモリ24の空き領域内の容量Umaxに収まるように自動的に決定し、圧縮3Dデータを作成するので、主メモリ24の記憶容量を有効活用できる。
【0077】
また、主メモリ24に記憶された圧縮3DデータからMPR表示する各断面像を計算し作成するので、データ量が増えても高速にてMPR表示用の断面像を作成でき、短かい切替え時間のMPR表示を実現できる。
【0078】
また、圧縮3Dデータがほぼ等方的に生成されるので、MPR表示されるオブリーク断面像(第1断面像)やダブルオブリーク断面像(第2断面像)の分解能が等方的となる。このことは、一方向に流れる断面像となることを未然に回避することができる。
【0079】
さらに、断面像を作成するための指定断面位置の表示に形態あるいは色の異なる矢印、もしくは他の印、記号を用いて表示することにより、各指定断面位置と各断面像との対応及び断面像の向きを直感的に把握することができる。
【0080】
(その他の実施の形態)
(1) 上記実施の形態では、ボクセルサイズとマトリックス数は前述した所定の計算式に従って計算したが、この計算式に限定されるものではない。また、ボクセルサイズΔzcはΔxcとほぼ同じにしているが、完全に同一サイズであっても構わない。例えば前記(6)式及び(8)式は端切れを出さないように計算したが、当該(6)式及び(8)式の代りにそれぞれ
Δxc=Δ ……(6´)
Δzc=Δ ……(8´)
としてもよい。この場合には領域に端切れが生じるが、ボクセルサイズとしては3方向とも完全に同じサイズの正立方体となる。
【0081】
(2) 上記実施の形態では、ダブルオブリーク断面像P2の断面位置L2は図3の右上段のP1b像上に表示しているが、左下段のP1a像上にL2を指定入力してもよい。また、操作者はP1aとP1bとの何れかを選択できるようにしてもよい。
【0082】
(3) 上記実施の形態では、アキシャル断面像だけは圧縮しない3Dデータから作成してもよい。その理由は、アキシャル断面像は3Dデータの1断面像あるいは隣り合う2断面像のみから計算でき、また、断面位置の変更に対しても隣接した断面位置の変更となるので、ディスク25から主メモリ24へのロード/アンロードの頻度を少なくすることができるためである。すなわち、予め表示断面位置の前後の小範囲をロードしておけば、断面位置の変更に対応できる。これにより、高速切替えを維持したまま、アキシャル断面の表示を高品位にすることができる。
【0083】
(4) 上記実施の形態では、アキシャル断面像とオブリーク断面像は、圧縮3Dデータの中心を表示画面の中心にして全体を表示しているが、操作者の要求のもとに例えば圧縮3Dデータの中心を表示画面の中心から所望とする点にずらして表示することも可能であり、さらに所望の拡大率または縮小率で拡大または縮小して表示器30に表示できる。この場合、圧縮3Dデータ中の表示の中心と拡大率または縮小率を変更入力すると、MPR表示はほぼリアルタイムに変更できる。
【0084】
なお、断面像を拡大表示する場合、拡大表示する領域に限定して圧縮3Dデータを作成するようにしてもよい。これにより、圧縮してデータ量を減らしても、高い分解能のMPR表示を得ることができる。
【0085】
(5) 上記実施の形態では、CT撮影装置1とMPR表示装置2とを完全に分離した構成としたが、例えばCT撮影装置1内にMPR表示装置2を組み込んだ構成であってもよい。このとき、独立した単体としてのMPR表示装置2を組み込んでもよいし、CT撮影装置1の再構成処理する処理装置に図2に示すプログラムの機能ブロックを持たせるようにしてもよい。
【0086】
(6) さらに、上記実施の形態では、MPR表示装置2は圧縮3Dデータから、アキシャル断面像とオブリーク断面像とダブリオブリーク断面像を作成し表示するようにしたが、操作者からの画像の高品位化指令あるいは保存指令があったときに、例えばディスク25に記憶される圧縮していない3Dデータから断面位置の設定に基づき、図3に示す4つの断面像を作成し直し、表示器30に表示してもよいし、あるいはディスク25に保存用MPR画像として保存してもよい。すなわち、操作者が任意指定に基づいて断面位置を変更したとき、各断面像を表示器30に表示させ、その表示させた断面像が最適な断面像であるときに高品位化指令あるいは保存指令を入力し、MPR画像を作成し直して表示させ、あるいは保存用MPR画像としてディスク25に保存する。
【0087】
このような構成によれば、MPR表示は切替り時間が短く、再作成あるいは保存するMPR画像は圧縮しない3Dデータから作るので、高品位のMPR画像に生成できる。
【0088】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0089】
また、各実施の形態は可能な限り組み合わせて実施することが可能であり、その場合には組み合わせによる効果が得られる。さらに、上記各実施の形態には種々の上位,下位段階の発明が含まれており、開示された複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。例えば問題点を解決するための手段に記載される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されうることで発明が抽出された場合には、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係るコンピュータ断層撮影装置の一実施の形態を示すハードウェア構成図。
【図2】図1に示すMPR表示装置の断面像処理制御部で実現される機能的なブロック構成を一例を示す図。
【図3】図1に示す表示器に表示されるMPR表示画面の説明図。
【図4】MPR表示装置による処理フローの一例を示す図。
【図5】MPR表示装置による圧縮を説明する図。
【符号の説明】
【0091】
1…CT撮影装置、2…MPR表示装置、3…LAN、22…LANインターフェース、23…断面像処理制御部、24…主メモリ、25…ディスク、26…DVDドライブ、27…表示出力インターフェース、28…キーボード、29…ポインティングデバイス、30…表示器、31…DVD、41…表示フロー制御部、42…圧縮部、43…アキシャル断面像作成部、44…第1断面位置設定部、45…第1断面像作成部、46…第2断面位置設定部、47…第2断面像作成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した平行な複数の断面像である3Dデータから任意断面像を作成しMPR表示するMPR表示装置において、
前記3Dデータを記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶される3Dデータから任意指定による断面像を作成する断面像処理制御手段と、この断面像処理制御手段で作成された任意断面像を表示する表示手段とを有し、
前記断面像処理制御手段は、
前記第1の記憶手段に記憶される3Dデータのデータ量を減らした圧縮3Dデータを作成し第2の記憶手段に記憶する圧縮手段と、
前記3Dデータまたは前記圧縮3Dデータから、前記3Dデータの断面像と平行な任意指定の断面像であるアキシャル断面像を作成し前記表示手段に表示するアキシャル断面像作成手段と、
表示された前記アキシャル断面像上に任意指定の第1の断面位置を設定する第1断面位置設定手段と、
前記圧縮3Dデータから、前記第1の断面位置に従って断面した第1断面像を作成し前記表示手段に表示する第1断面像作成手段と
を備えたことを特徴とするMPR表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のMPR表示装置において、
前記断面像処理制御手段は、
前記表示手段に表示された前記第1断面像上に任意指定の第2の断面位置を設定する第2断面位置設定手段と、
前記圧縮3Dデータから、前記第2の断面位置に従って断面した第2断面像を作成し前記表示手段に表示する第2断面像作成手段と
をさらに備えたことを特徴とするMPR表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のMPR表示装置において、
前記断面像上に任意指定される前記第1及び第2の断面位置は、前記作成される前記第1及び第2断面像との対応関係が判るように色の異なる矢印や識別可能な印、記号をもって表示することを特徴とするMPR表示装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のMPR表示装置において、
前記圧縮手段は、前記圧縮3Dデータのデータ量が前記第2の記憶手段における所定の容量を超えないように、前記圧縮3Dデータのボクセルサイズとマトリックス数を決定することを特徴とするMPR表示装置。
【請求項5】
請求項1,2,4の何れか一項に記載のMPR表示装置において、
前記圧縮手段は、前記圧縮3Dデータのボクセルサイズは3方向でほぼ同じになるようにデータ量を減らすことを特徴とするMPR表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のMPR表示装置において、
前記第1の記憶手段は、前記断面像処理制御手段がランダムアクセスできない副メモリであり、前記第2の記憶手段は、前記断面像処理制御手段がランダムアクセスできる主メモリであり、前記圧縮3Dデータのデータ量は当該主メモリに記憶できるデータ量であることを特徴とするMPR表示装置。
【請求項7】
被検体の3次元領域に関する投影データを再構成し、連続した平行な複数枚の断面像を取得するCT撮影装置1と、
前記請求項1ないし請求項6の何れか1つの構成を持ったMPR表示装置と
を備えたことを特徴とするコンピュータ断層撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−188116(P2008−188116A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23344(P2007−23344)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】