説明

MRTシステム、MRTシステム用の受信装置、およびMRTシステムにおけるMR信号の獲得方法

【課題】MRTシステムにおいてMRTシステムにおけるMR信号を高周波MR−HF信号から獲得するための回路コストを低減する。
【解決手段】MR−HF信号のための少なくとも1つの受信装置を備えるMRTシステムであって、前記受信装置は、MR−HF信号を受信するための受信コイルエレメントと、光学的変調器とを有し、該光学的変調器は、電気制御入力端が前記受信コイルエレメントと接続されており、当該変調器の出力信号出力するための光学的出力端を有するMRTシステムにおいて、前記光学的変調器は、前記MR−HF信号のための光学的復調装置を形成し、そのために前記変調器の光学的入力端はレーザ光源20と接続されており、該レーザ光源は、光強度が周期的に所定の周波数(Fosc)で変化するレーザ光を形成するよう構成されている、ことを特徴とするMRTシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放射される電磁的および/または磁気的MR−HF信号を受信するための少なくとも1つの受信装置を備える核磁気共鳴トモグラフシステム(MRTシステム)に関するものである。本発明はまた、MRTシステム用の受信装置およびMRTシステムによるMR信号の獲得方法に関する。前記形式のMRTシステムおよび受信装置は特許文献1から公知である。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴トモグラフを形成するためのシステムでは、被検体、たとえばヒトもしくは動物の被検体または材料試料が磁場内にもたらされ、この磁場はたとえばMRTシステムの超伝導磁気コイルによって形成される。引き続き被検体は、高周波交番磁界が送信されることによって、高周波磁気応答信号または高周波電磁応答信号を送信する。ここで応答信号の周波数は、磁界の磁気強度に依存しており、約42MHz/Tである。被検体内の個々の領域を区別するために、勾配磁場によって被検体の個々のボクセル(ボリュームエレメント)が互いに数100kHzだけ異なった応答信号を送信する。ボクセルから送信された高周波混合号をここではMR−HF信号と称する。
【0003】
MR−HF信号はMRTシステムの少なくとも1つの受信コイルエレメントによって受信され、これにより電気的MR−HF信号に変換される。個々のボクセルの重畳された全体信号は高周波領域(HF領域)から中間周波数領域または基本周波数領域に変調しなければならない。受信コイルエレメントの電気MR−HF信号は場合により増幅され、インピーダンス整合の後、ミクサに供給される。ミクサはMR−HF信号を中間周波数領域またはベースバンドに逓降混合または復調する。中間周波数領域または基本周波数数領域に復調された信号を、以下ではMR信号と称する。
【0004】
受信コイルエレメントは受信装置内にあり、受信装置はMRTシステムの磁場内にある。このことは、受信装置内でさらなる複雑な電気回路を駆動するのを困難にする。比較的強力な交番磁場は複雑なシールド措置を必要とする。とりわけこのような回路の熱は熱的信号ノイズの原因となり、これはMR−HF信号を妨害する。容積の大きな電気回路は受信装置を取り扱いにくくし、このことはとりわけ患者を検査する機器の場合にはこの受信装置を長時間患者に固定するのを困難にする。とりわけ患者にとっては機器の熱のため不快に熱くなる。
【0005】
したがってこれらの理由から、受信装置にはもっとも必要なコンポーネントしか装備されていない。さらなるコンポーネントは磁気的にシールドされた領域、たとえばMRTシステムのコントロール室に格納されている。したがって受信装置は通例、同軸ケーブルを介してこの評価装置と接続されている。同軸ケーブルを介して、増幅された電気MR−HF信号が磁場から取り出され、評価装置で復調され、さらに処理される。MRTシステムは通常、多数の受信コイルエレメントを有するから、同軸ケーブルのケーブル束は非常に取り扱いにくい。とくに伝送される信号が多数あるため、個々の同軸ケーブル間のクロストークは大きな労力を掛けないと阻止できない。最後に、磁気システムの交番磁界により同軸ケーブルの外皮に同相電流が誘導されるのを阻止しなければならない。このことは、同軸ケーブルに沿ってコモンモードチョークまたはシース電流フィルタを必要とする。これらのフィルタは磁界強度が大きいためフェライトコアによっては提供できず、共振回路、いわゆるバズーカによって得ることができる。その場合、シース電流フィルタはシース電流の波長の1/4の間隔で離さなければならない。磁界強度が3Teslaの場合、この間隔はたとえば15cmである。このことは受信装置をさらにやっかいなものにする。
【0006】
上記の刊行物には、MR−HF信号が光導波体を介して光学的に磁場から取り出され、MRTシステムの制御室に伝送されるMRTシステムが記載されている。このシステムでは受信装置が光学的変調器を有し、この光学的変調器の電気制御入力端に受信コイルエレメントが接続されている。変調器には一定の光強度のレーザ光が供給される。レーザ光の光強度は光学的変調器によって、受信コイルエレメントにより形成されたMR−HF信号に依存して変調される。光学的変調器の出力信号は次に光導波体を介して、磁気的にシールドされた評価装置の光電変換器に伝送され、この光電変換器は光信号を再び電気MR−HF信号に変換する。次にこの信号は復調のためミクサに供給される。このシステムの欠点は、付加的な光学エレメントがMRTシステムの製造コストを上昇させることである。とりわけ光学的変調器は、バイアス電圧を提供する回路を駆動するために供給電圧を必要とする。このバイアス電圧は変調器の動作点により調整される。したがってこのシステムでは、入力装置を光学的に接続するだけでなく、電気的にも接続しなければならない。したがってこのシステムにおいても、受信装置にコモンモードチョークを省略することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7508123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基礎とする課題は、MRTシステムにおいてMRTシステムにおけるMR信号を高周波MR−HF信号から獲得するための回路コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1のMRTシステム、請求項12の受信装置、および請求項13の方法によって解決される。本発明のMRTシステムの有利な改善形態は従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明のMRTシステムでも同じように受信装置が設けられており、この受信装置によって被検体が核磁気共鳴により送信するMR−HF信号が少なくとも1つの受信コイルエレメントにより受信される。このために受信装置は同様に光学的変調器を有し、その電気制御入力端は受信コイルエレメントと接続されている。受信装置にある光学的変調器によって、レーザ光の強度が受信コイルエレメントのMR−HF信号に依存して変調される。このように光強度変調された変調器の光学的出力信号は、受信装置の光学的出力端から出力される。そこから光学的出力信号は光案内装置、たとえば光導波体を介してMRTシステムの磁場から取り出され、評価装置に伝送することができる。
【0011】
本発明のMRTシステムでは、受信装置の光学的変調器が、受信コイルエレメントのMR−HF信号のための光学的復調装置を形成する。そのために変調器の光学的入力端は専用のレーザ光源と接続されている。このレーザ光源は、光強度が時間に関して一定ではなく、周期的に所定の周波数で変化するレーザ光を形成するよう構成されている。
【0012】
本発明のMRTシステムの駆動によって、MR信号を形成する以下の本発明の方法が実施される。コイルエレメントによって、MRTシステムの磁場内で被検体の電磁的および/または磁気的MR−HF信号が受信され、電気的MR−HF信号に変換される。次に光学的変調器によって、レーザ光源の光学的変調器が受信するレーザ光の光強度が電気的MR−HF信号に依存して変調される。このレーザ光はここでは、レーザ光の強度を所定の周波数で周期的に自ら変化させるレーザ光源によって形成される。すでに光強度が周期的に変動するレーザ光を変調器によってさらにMR−HF信号により変調することにより、変調器の光学的出力信号にはMR−HF信号の復調が行われる。すなわち出力信号の光強度の時間経過はMR信号を復調されたMR−HF信号として含んでいる。
【0013】
本発明のMRTシステムおよび本発明の方法には、復調されたMR信号を得るために電気的ミクサまたはデジタルミクサを追加で準備する必要がないという利点がある。受信装置での光電変換の際に逓降混合が自動的に行われる。同様に完全な復調に続いて必要な逓降混合された信号のローパスフィルタリングも、少なくとも一部が自動的に評価装置での光電変換の際に行われる。
【0014】
本発明のMRTシステムでは、とくに前記レーザ光源を受信装置の外に配置することができる。この場合、レーザ光源のレーザ光は光案内装置を介して受信装置に伝送される。したがってレーザ光源は有利には受信装置の外で磁気的にシールされた領域内で駆動することができる。レーザ光源は誘電電流に対してわざわざシールドする必要がなく、その電気線路にコモンモードチョークも必要としない。
【0015】
とりわけ評価装置内に、数10MHzから100MHz以上の周波数により変調される光信号を変換するための光電受信エレメントを必要としない。評価装置で受信された光信号はすでに中間周波数帯域またはベースバンドに復調されており、したがって対応して安価なコンポーネントを使用することができる。MRTシステムのとくに有利な実施形態では光電変換器を特別に選択する。すなわちこの変換器によれば、光案内装置を介して受信装置から評価装置に伝送される変調器の光出力信号が電気信号に変換される。このような光電変換器はたとえばフォトダイオードであり、通例、光感度を有していて、この光感度は変換すべき光出力信号の変調周波数に依存する。この感度は通例、構造に起因してローパス特性を有する。本発明のMRTシステムと関連して、ローパス特性の遮断周波数が変調により形成される2つの混合積の間にある光電変換器を設けるととくに有利であることが判明した。ここで混合積とは、復調時に発生する2つの周波数帯域を意味する。1つは復調されたHF信号と変調周波数との差であり、もう1つはこれら周波数の和である。復調された信号、すなわちMR信号を誤差なしでさらに処理するためには、高周波成分(HF信号周波数+変調周波数)をローパスフィルタにより減衰しなければならない。これは付加的な回路コストなしで、少なくとも一部はすでに光電変換器自体により、対応する低い遮断周波数を有する変換器を選択することによって行うことができる。遮断周波数の低い変換器の利点は、同時に比較的大きな光感知性面積によって構成できることであり、したがって同等の変換器よりも遮断周波数以下の信号に対して対応して大きな感度を有する。このような変換器は、従来のMRTシステムでもMR−HF信号の受信のために提供されていたものと同様である。
【0016】
上記の変調周波数は、すでに述べたようにレーザ光源がその出力レーザ光の光強度を変化させる周波数である。周波数は好ましくは50MHzから500MHzの範囲である。これにより通常のすべてのMRT磁場強度(1Teslaから11Teslaまで)についてMR−HF信号が、さらなる処理のため中間周波数領域または基本周波数数領域で復調される。
【0017】
本発明のMRTシステムには有利には光分配器が設けられており、この光分配器は、レーザ光源のレーザ光が多数の受信装置および/または多数の変調器に受信装置内で分配されるように構成されている。光電変換器の感度がよいので、多数の受信コイルエレメントの信号をMRTシステムの磁場から磁気シールドされた領域に光学的経路で伝送するのにただ1つのレーザ光源のレーザ光だけで十分である。
【0018】
前記レーザ光源の技術的実現との関連で有利な実施形態では、レーザ光源が光強度を変化するためにマッハ・ツェンダー変調器を有する。マッハ・ツェンダー変調器をすでに構成されたMRTシステムのモデルに後から装備することができ、したがって本発明の方法を実施するのに適する。
【0019】
受信装置自体の光変調器も有利にはマッハ・ツェンダー変調器を有する。ここでは、通常のマッハ・ツェンダー変調器はすでに説明したように、動作点を調整するためにバイアス回路を必要とし、このバイアス回路には電気エネルギーを供給しなければならないことに注意すべきである。したがってこのことは受信装置に電気線路を設けることを必要とし、この電気線路を再びコモンモードチョークによりシールドしなければならない。
【0020】
基本的にマッハ・ツェンダー変調器は、レーザを受信するための光入力端と、変調されたレーザ光を出力するための光出力端とを有する。光入力端は、光出力端と2つの光伝播経路を解して接続されている。電圧をマッハ・ツェンダー変調器の電気制御入力端に印加することによりカー効果に基づいて、2つの光伝播経路の光学的経路長の差が、印加される制御電圧が大きければ大きいほど大きくなる。対応して光出力端には、異なる伝播経路を介してそこに達した光線間の位相ずれが生じ、これらの光線は対応して破壊的に干渉する。本発明のMRTシステムでは有利には、2つの伝搬経路の光学的経路長がすでに構造に起因して異なっているマッハ・ツェンダー変調器が使用される。これにより、電気制御入力端に電圧が印加されない場合、光出力端には干渉が生じる。言い替えると、光学的バイアスは電気回路がなくても作用する。好ましくは使用するレーザ光の波長に対して2つの伝搬経路の光学的経路長が異なることにより、90°の位相ずれが生じ、制御電圧が0Vのとき変調器の透過率TはT=50%である。
【0021】
マッハ・ツェンダー変調器の適切な構成によって、受信装置における電気エネルギーの必要性はさらに低減する。好ましくは光学的変調器としてマッハ・ツェンダー変調器が設けられており、そのアクティブな変調長さは1cmより大きく、とりわけ2cmより大きく、好ましくは3cmより大きい。アクティブな変調長さとは、電気制御信号の電界がポッケルスセルまたはカーセル内で光学的入力信号に作用する領域の長さを意味する。このように変調長さが大きい場合では、受信装置においてMR−HF信号のための電気的前置増幅器を省略することができる。5Tesla、とりわけ10Tesla以上の強力な基本磁場を備えるMRTシステムにおいて、大きな信号品質の光学的変調を得るために、受信装置の光学的変調器は有利に進行波変調器として構成されている。
【0022】
受信装置においてさらに電気エネルギーを必要とする回路装置は、MRTシステムの場合、いわゆる離調装置である。離調装置は、電磁的および/または磁気的MR−HF信号を放射するよう被検体を励起する励起信号が受信コイル内で臨界的な電圧の受信信号を形成することを阻止する。本発明のMRTシステムの実施形態は、外部の電気エネルギーを必要としない離調装置を予定する。電気エネルギーの代わりに離調装置は、受信コイルエレメントの受信信号の強度に依存して自立的に切り替わる。受信信号が所定の電圧レベルを上回ると、この過電圧は、受信コイルエレメントを受動的に、すなわち受信コイルエレメントにより受信されたエネルギーによって離調するために用いられる。このことはたとえば逆並列に接続されたトランジスタによって達成することができる。トランジスタは受信コイルエレメントの共振回路を橋絡する。
【0023】
同様に、光学的にスイッチング可能な離調装置を設けると有利であることが判明した。対応するスイッチング信号と場合により離調装置のコンポーネントを駆動するためのエネルギーは、同じ光案内装置を介して受信装置に伝送することができ、この光案内装置を介してレーザ光源のレーザ光も伝送される。
【0024】
受信装置のアレイの受信コイルエレメントを離調することのできる複数の離調装置が同じ信号によってスイッチングされる場合には、受信装置の構造が有利に簡素化される。
【0025】
前記の改善形態によって、完全に外部の電気エネルギー供給なしで、または少なくとも非常に小さな電気エネルギーによって駆動することのできる受信装置を提供することができる。場合により残る必要エネルギーは、受信装置自体に格納されるバッテリーによって調達できるほど小さい。MRTシステムの有利な改善形態ではエネルギー伝送装置が設けられており、これにより所要のエネルギーを電磁的に、とりわけ光学的またはマイクロ波領域でまたは発振により伝送することができる。このようにして電気線路の使用、ひいては不所望のコモンモードチョークの使用を省略することができる。したがって受信装置をMRTシステムの他の部分と接続するための線路は非常に細く、取り扱いやすいように構成することができる。
【0026】
MRTシステムの他にMRTシステム用の受信装置も本発明全体に含まれる。ここで受信装置は、MRTシステム自体に関連して前に説明した特徴および改善形態を有する。したがって受信装置については特別に説明しない。
【0027】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のMRTシステムの第1の実施形態によるMRTシステムのブロック回路図である。
【図2】図1のMRTシステムの受信装置の光学的変調器の概略図である。
【図3】図1の光学的変調器の透過率を示す線図である。
【図4】本発明のMRTシステムの別の実施形態によるMRTシステムのブロック回路図である。
【図5】図4のMRTシステムの受信装置の光学的変調器の概略図である。
【図6】本発明のMRTシステムの別の実施形態によるMRTシステムのブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施例は本発明の有利な実施形態を示す。
【0030】
図1には、受信装置12と評価装置14を備える核磁気共鳴トモグラフまたはMRTシステム10が示されている。MRTシステム10は、図示の受信装置12の他にさらに同じ構造を有する別の受信装置を有することができる。受信装置12はたとえば患者または動物に、ベルトまたは別の固定装置によって固定することができる。患者は寝台の上に横たわり、MRTシステム10の(図示しない)コイルマグネットの基本磁場内に置かれている。評価装置14は区間の外でコイルマグネットと接続されており、これから磁気的に遮蔽されている。受信装置12は2つの光学的案内装置16、18を介して評価装置14と接続されている。光学的案内装置16、18は光導波体または光導体とすることができる。受信装置12は非常に平坦で軽量である、したがって受信装置が患者を煩わせたり、締め付けたりすることはない。光学的案内装置16、18の端子も非常に小型で軽量である。受信装置が必要とする電気エネルギーは、所要のシース型フィルタ付き電気ケーブルを必要としないほど小さい。
【0031】
MRTシステム10では被検体のMR-HF信号が受信装置12内ですでに復調され、復調された信号として評価装置14に伝送される。受信装置12は復調のために電気的要素を必要としない。その代わりに受信装置12は案内装置18を介して入力レーザ光線L1を受信する。このレーザ光の光強度は周波数Foscにより次第に発振し、光学的復調信号として用いられる。ここで光強度は有利には正弦波状に発振する。しかしレーザ光は別の周期的関数、たとえば矩形発振、鋸歯発振または三角波発振にしたがって変化することもできる。入力レーザ光線LIはレーザ光源20によって形成される。レーザ光源20はレーザ22と、レーザ光の強度を変化するための変調装置24とを有している。レーザ22はレーザ光をたとえばVCSELレーザダイオード、ファブリー・ペローレーザダイオード、分布帰還形レーザダイオードによって形成することができる。変調器24はマッハ・ツェンダー変調器とすることができる。電気制御信号を変調器24は評価装置14のクロック発生器26(CLK)から受信する。変調周波数はたとえば125MHzとすることができる。変調周波数は、磁気コイルの基本磁場の磁界強度に応じてクロック発生器26で調整される。
【0032】
受信装置12は受信コイル28によって患者の被検体から核磁気共鳴信号を受信し、その中心周波数Fmriはたとえば123MHzとすることができる。中心周波数はMRTシステム10の磁気コイルの基本磁場の強度に依存する。受信コイル28により被検体の応答信号が電気信号に変換され、この電気信号が第1のインピーダンス整合回路30を介して電力増幅器32に供給される。電力増幅器32の出力信号は、インピーダンス整合と出力信号のフィルタリングのための別の回路36を介して光学的変調器の電気制御入力端38に伝送され、ここでこの信号は制御信号Uとして作用する。制御信号Uの中心周波数は同様にFmri=123MHzである。制御信号UはMR−HF信号であり、磁気共鳴画像形成(MRI、各磁気共鳴画像)のための画像情報を含んでいる。
【0033】
回路30は離調装置(同調TNと離調DTN)も有しており、これは受信コイル28からエネルギーで駆動することができる。増幅器32は低ノイズの前置増幅器であり、非常に小さな電力しか必要としない。この電力は前置増幅器32に、受信装置12の(図示しない)バッテリーにより、またはエネルギー伝送装置を介して供給することができる。エネルギー伝送装置は、たとえば電磁経路または機械的経路(振動)を介して評価装置14からのエネルギーを受信する。したがって受信装置12とMRTシステム10の他のコンポーネントとの間に電気接続は必要ない。
【0034】
光学的変調器40は、たとえばマッハ・ツェンダー変調器とすることができる。光学的変調器40の機能を以下、図2と図3に関連して説明する。光学的変調器40は入力レーザ光線LIを光学的入力端42を介して受信する。ここから2つの別個の光学経路44、46を記して1つの光学的出力端48に導かれる。この光学的出力端で2つの経路44、46の2つの部分光線が1つの出力レーザ光線LOにまとめられる。光案内装置16は光学的出力端48に接続されており、出力レーザ光線LOを光案内装置16に入力結合する。光学的伝播経路44、46は、たとえばLiNbO3などからなる電子光学的基板に基づいて作製することができる。このような電子光学的基板の屈折率は、基板を貫通する電界の電界強度の関数である。制御電圧Uを変化することにより、対応して光学的変調器40の電極間にそれぞれの光学的伝播経路を通り抜ける電界が調整される。ここで電気制御信号Uは2つの光学経路44、46に反対方向に作用する。これにより伝播経路44、46の電子光学的エレメントの光路は、制御電圧Uが所定の値の場合、反対に変化する。制御電圧Uが0V(U=0V)の場合、光学的変調器14は全体で透過率T=50%に対応する光学的伝達特性を有する。透過率Tは、2つの部分光線の間の干渉度に対する尺度である(100%=建設的干渉、0%=相殺的干渉)。ここから、電圧信号Uの値によってレーザ光線の強度が変化する。入力信号が0VのときにT=50%の透過率を得るために、光学的変調器40は光学的伝播経路46に光学的バイアスエレメント50を有する。バイアスエレメント50によって光学的伝播経路46を通って導かれる部分光線は、伝播経路44を介して導かれる部分光線を基準にして90°だけ位相がずらされる。したがってU=0VのときにT=50%で光学的変調器40の動作点OPが得られる。ここで光学的変調器40の透過率の特性曲線Kは、最大勾配の線形領域52を有する。したがって光学的変調器40は、U=0Vの領域で制御信号Uの小さな変化に対してとくに鋭敏である。値が最大Umaxにある最大振幅に対して特性曲線Kは圧縮領域54を有する。これにより有利には、受信コイル28の入力信号を比較的広いダイナミクスで一義的に伝送することができる。
【0035】
光学的変調器40から発する出力レーザ光線LOは、受信コイル28の入力信号の2つの変形成分を含んでいる。すなわち中心周波数Fint=(Fosc−Fmri)の復調変形成分と、中心周波数(Fosc+Fmri)の第2の混合積である。出力レーザ光線LOは光電変換器56、たとえばフォトダイオードによって受信される。光電変換器の電気出力信号はインピーダンス変換器58によって整合され、続いてアンチエーリアスフィルタ60に伝送される。変換器56とアンチエーリアスフィルタ60によって高周波信号成分(Fosc+Fmri)が抑圧され、アンチエーリアスフィルタ60の出力信号は受信コイル28の復調された受信信号、すなわち中心周波数Fint=(Fosc−Fmri)のMR信号のみを有する。中心周波数はたとえばここではFint=2MHzである。この信号はプロセッサユニット62、たとえばデジタルシグナルプロセッサに伝送され、ここでAD変換器64はそこからデジタル入力信号を形成し、このデジタル入力信号はデエンファシス装置66によって補償される。補償によって特性曲線Kの圧縮領域54の影響が取り消される。デエンファシス装置はたとえば補償のための特性マップ(ルックアップテーブル)を有することができる。このようにデジタル化され、補償された入力信号は、第2のデジタルミクサ68を介して中心周波数Fintの中間周波数帯域からベースバンドに逓降され、直交成分に分解される。ミクサ68のデジタル出力信号は、各磁気共鳴画像を復元するために(図示しない)画像処理部に供給される。
【0036】
以下図4と図5に基づいて、受信装置の必要電気エネルギーがとくに小さい本発明のMRTシステムの実施形態を説明する。図1のMRTシステムとの相違を分かりやすくするため、図4と図5では図1のMRTシステムと同じように構成することのできるエレメントには図1と同じ参照符合が付してある。これらのエレメントは、図4と図5に関連して再度説明しない。
【0037】
図4のMRTシステム10’では、受信装置12’が前記増幅器32のような前置増幅器を有していない。その代わりに光学的変調器40’がマッハ・ツェンダー変調器として構成されており、ここでは電子光学的に活性な相互作用区間70がアクティブ変調長Lを有し、これは20mmから40mmの範囲にある。アクティブ変調長LはとりわけL=31mmである。これにより復調の際に、制御電圧U’として印加される受信コイル28のMR−HF信号の増幅率が約30dBだけ増強され、これは通常は前置増幅器によって達成しなければならない。変調器40’のマッハ・ツェンダー変調器は、図5に示すように進行波変調器としても構成することができる。変調器40’のバイアスエレメント50は図5には図示されていない。
【0038】
離調装置30とインピーダンス整合部36は完全に受動回路として構成されている。したがって離調回路30は、たとえば逆並列に接続された、LC素子を橋絡するためのトランジスタまたは光学的に切り替え可能なエレメントを含むことができる。
【0039】
全体として受信装置12’は受動回路ユニットを形成し、この受動回路ユニットには外部から電気エネルギーを供給する必要がない。
【0040】
図6には、とくに高い感度を有する光電変換器56をどのように使用するかが示されている。この光電変換器の上方遮断周波数は本発明のMRTシステムでは、従来のMRTシステムの場合よりも低くすることができる。図6では簡単にするため、構造が図1に対応する素子には図1と同じ参照符合が付してある。
【0041】
光電変換器56の高い感度は、ただ1つのレーザ光源20の光を複数のMR信号の伝送のために使用することを可能にする。このためにレーザ光源20の出力レーザ光線LIが光学的分配装置72によって分配され、複数の光学的変調器に供給される。これらの変調器のうち図6には光学的変調器40だけが図示されている。光学的変調器は同じ1つの受信装置の構成部分とすることができ、たとえば受信コイルアレイの信号を復調することができる。光学的分配器72はMRTシステムの受信装置の外部に配置することもでき、出力レーザ光線LIを複数の受信装置に分配する。複数の光学的分配装置を設け、レーザ光を複数の受信装置に分配することも、ただ1つの受信装置内で複数の光学変調器に分配することももちろん可能である。
【符号の説明】
【0042】
10、10’ MRTシステム
12、12’ 受信装置
14 評価装置
16、18 光学的案内装置
20 レーザ光源
22 レーザ
24 変調器
26 クロック発生器
28 受信コイル
30 整合回路
32 電力増幅器
34、36 回路
38 制御入力端
40、40’ 変調器
42 入力端
44、46 光学的経路
48 出力端
52 線形領域
54 圧縮領域
56 光電変換器
58 インピーダンス変換器
60 アンチエーリアスフィルタ
62 プロセッサユニット
64 AD変換器
66 デエンファシス装置
68 ミクサ
70 交互作用区間
72 光学的分配装置
K 特性曲線
LI 入力レーザ光線
LO 出力レーザ光線
OP 動作点
U、U’ 制御電圧
Umax 最大電圧
T 透過率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR−HF信号のための少なくとも1つの受信装置(12、12’)を備えるMRTシステム(10、10’)であって、
前記受信装置(12、12’)は、MR−HF信号を受信するための受信コイルエレメント(28)と、光学的変調器(40、40’)とを有し、
該光学的変調器は、前記受信コイルエレメント(28)に接続された電気制御入力端(38)と、当該変調器(40、40’)の出力信号(LO)を出力するための光学的出力端(48)とを有するMRTシステムにおいて、
前記光学的変調器(40、40’)は、前記MR−HF信号のための光学的復調装置を形成し、そのために前記変調器(40、40’)の光学的入力端(42)はレーザ光源(20)と接続されており、該レーザ光源は、光強度が周期的に所定の周波数(Fosc)で変化するレーザ光(LI)を形成するよう構成されている、ことを特徴とするMRTシステム。
【請求項2】
前記レーザ光源(20)は前記受信装置(12、12’)の外に配置されており、前記レーザ光源のレーザ光(LI)は光案内装置(18)を介して前記受信装置(12、12’)に伝送される、ことを特徴とする請求項1に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項3】
光電変換器(56)が設けられており、該光電変換器によって前記変調器(40、40’)の光学的出力信号(LO)が電気信号に変換され、
前記変換器(56)は、変換すべき光学的出力信号(LO)の変調周波数に依存する光学的感度を有しており、
前記感度のローパス特性が、変調によって形成される混合積の間にある遮断周波数を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項4】
前記所定の周波数(Fosc)は50MHzから500MHzの範囲にある、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項5】
光学的分配器(72)が設けられており、該光学的分配器は、前記レーザ光源(20)のレーザ光(LI)が複数の受信装置(12、12’)に供給されるよう、および/または1つの受信装置(12、12’)の複数の変調器(40、40’)に供給されるよう構成されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項6】
前記レーザ光源(20)は、光強度を変化させるためにマッハ・ツェンダー変調器(24)を有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項7】
前記光学的変調器(40、40’)はマッハ・ツェンダー変調器を有し、該マッハ・ツェンダー変調器の光学的入力端(42)は2つの光学的伝播経路(44、46)を介して前記変調器(40、40’)の光学的出力端(48)と接続されており、前記2つの伝播経路(44、46)の光学的経路長は、前記電気制御入力端(38)に0Vの制御電圧(U、U’)が印加される場合には異なる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項8】
前記光学的変調器(40’)はマッハ・ツェンダー変調器を有し、該マッハ・ツェンダー変調器のアクティブ変調長(L)は1cm以上、とりわけ2cm以上、好ましくは3cm以上であり、前記アクティブ変調長を介して前記電気入力信号(U、U’)が光学的入力信号(LI)に作用する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項9】
前記光学的変調器(40、40’)は進行波変調器として構成されている、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項10】
前記受信装置(12、12’)は離調装置(30)を有し、該離調装置は前記受信コイルエレメント(28)の受信信号の強度に依存して切り換えられる、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項11】
前記受信装置(12、12’)は、光学的に切り換えられる離調装置(30)を有する、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項12】
複数の離調装置(30)が同一の信号によって切り換えられる、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項13】
エネルギー伝達装置が設けられており、該エネルギー伝達装置によって前記受信装置(12)の電気コンポーネントを駆動するためのエネルギーを前記受信装置に伝達することができ、エネルギーは電磁的、とりわけ光学的に、またはマイクロ波領域で、または振動によって伝達される、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)。
【請求項14】
請求項7から13のいずれか1項に記載のMRTシステム(10、10’)のための受信装置(12、12’)。
【請求項15】
MRTシステム(10、10’)の磁場内で電磁的および/または磁気的MR−HF信号を被検体に照射し、
受信コイルエレメント(28)によって電気MR−HF信号に変換し、
前記電気MR−HF信号に依存してレーザ光(LI)の光強度を光学的変調器(40、40’)によって変調する方法において、
前記レーザ光(LI)をレーザ光源(20)によって形成し、該レーザ光源は前記レーザ光(LI)の強度を所定の周波数(Fosc)で変化させ、これにより前記MRーHF信号による前記レーザ光(LI)の変調の際に前記変調器(40、40’)の光学的出力信号(LO)は、MR信号を変調されたMR−HF信号として含む、MRTシステム(10、10’)においてMRTシステム信号を獲得する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−106950(P2013−106950A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251504(P2012−251504)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】