Mg2Si基化合物から成る熱電材料及びその製造方法
【課題】無次元性能指数の大きい熱電材料を供給し、その製法を容易にすること。
【解決手段】
化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物から成る熱電材料である。Mg2-x-y-zAlxZnyMnzは、Mg合金として付与される。Mg合金と、Si粉末を、Mg合金とSiの原子比が2 : 1になるように混合し、液相−固相反応法を用いて、不活性ガス雰囲気下でMg合金の融点以上の温度で、液相状態のMg合金と固相状態のSiの固液共存した状態で、Mg合金とSiとを合成反応させ、反応の完了の後に、冷却して、多孔質のMg2Si基化合物を作製し、Mg2Si基化合物を不活性ガス雰囲気下で粉砕して粉砕体を形成し、その後に、粉砕体を真空又は不活性雰囲気下で加圧焼結する。
【解決手段】
化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物から成る熱電材料である。Mg2-x-y-zAlxZnyMnzは、Mg合金として付与される。Mg合金と、Si粉末を、Mg合金とSiの原子比が2 : 1になるように混合し、液相−固相反応法を用いて、不活性ガス雰囲気下でMg合金の融点以上の温度で、液相状態のMg合金と固相状態のSiの固液共存した状態で、Mg合金とSiとを合成反応させ、反応の完了の後に、冷却して、多孔質のMg2Si基化合物を作製し、Mg2Si基化合物を不活性ガス雰囲気下で粉砕して粉砕体を形成し、その後に、粉砕体を真空又は不活性雰囲気下で加圧焼結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Mg2Si基化合物の熱電材料及びその製造方法に関する。特に、Mg2Si基化合物の合成には、Al, Zn及びMnを合金成分として含有するMg合金を原材料に使用し、それらの元素をドーパントとしたMg2Si基化合物の熱電材料と、液相−固相反応法と焼結を組合せた熱電材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱エネルギーと電気エネルギーとの相互変換が可能な熱電変換素子が知られている。その熱電モジュールは、P型及びN型の二種類の熱電材料( 熱電変換材料)を電気的に直列に接続し、熱的に並列に配置した構成とされている。この熱電モジュールは、両面間に温度差を与えれば、ゼーベック効果に基づいてP型では正孔の移動、N型では電子の移動が起こり、両端子間に起電力が発生する。
【0003】
熱電材料の性能指数は、Z=α2/(ρκ)、Z:性能指数(1/K)によって算出される。ここで、ρは電気抵抗率(Ω・m)、αはゼーベック係数(V/K)、κは熱伝導率(W/mK)である。
【0004】
この現象を利用して、各種熱発生システムから生ずる廃熱を利用した発電装置用の素子として用いたりすることが検討されている。また、自動車のエンジンの廃熱量は無視できないほど多量であるため、エンジンの廃熱を利用して発電することも考えられている。
【0005】
従来、熱電変換素子を構成する熱電材料として、Bi2Te3やPbTe等が実用化されているが、これらの熱電材料を構成する元素のBi, Te, Pbは毒性が強いため、環境汚染のおそれがある。そのため、環境負荷の少ない、即ち毒性を有しない熱電材料が望まれている。また、自動車の廃熱回収に使用するには軽量で資源的に豊富な材料が望まれている。
【0006】
無毒で軽量なN型中高温用熱電材料としてMg2Si( 比重は約2 )が知られている。Mg2Siの熱電性能を改善するために、ドーパントを添加することが行われる。Mg2Siに添加するドーパントとしては、N型半導体特性を発現させるAl, Sb等や、P型半導体特性を発現させるAg, Cu等が知られている。しかし、Mgが活性な金属であり、発火等の危険性があるため、これまでMg2Si熱電材料の開発はあまり進められていなかった。
【0007】
この種のMg2Si基化合物を製造する方法としては、MgとSiを原子比でMg : Si=2 : 1となるMg粉末及びSi粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末、又は、予め作製したMg2Si粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末を、Mg2Siの融点(1102℃)以上に加熱して、その後、冷却時にMg2Si基化合物を生成させる直接溶融法がある。しかし、この製造方法では、Mgの蒸発を抑制するための手段として高圧の不活性ガスを負荷しなければならず、装置、製造工程等にコストが掛かる上に、加熱保持の際にMgの爆発の危険性も伴う。また、MgやSiの偏析が生じやすく、不均一な組織となり生成物の中央部と坩堝側とで収縮率に差が生じ、生成物内にクラックが生じる可能性がある。
【0008】
別のMg2Si基化合物の製造方法としては、MgとSiとが原子比で2 : 1となるようなMg粉末及びSi粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末、又は、予め作製したMg2Si粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末を、不活性ガスで置換した加圧容器中のカーボン坩堝に入れ、高周波加熱・溶解する方法がある。しかし、高周波加熱による方法では、直接溶融法と同様に生成物内にクラックが生じること、加熱装置が高価であること、また、大量生産に適していないことなどから、得られる製品のコストが高くなるという問題がある。
【0009】
他のMg2Si基化合物の製造方法としては、メカニカルアロイング法と呼ばれるものがある。この方法は、原子比でMgとSiとが2 : 1となるようにMgとSiの粉末を秤量し、これらの粉末を鉄あるいはセラミックス製のボールにより長時間(例えば、300h)ボールミル粉砕を行うことで機械的にMg2Si粉末を合成するものである。こうして得られたMg2Si粉末とドーパント元素とを混合して加熱処理することによりMg2Si基化合物が作製される。メカニカルアロイング法による製造方法では、長時間の混合・粉砕作業によりボールが削れて、ボール粉末が、粉末中へと不純物として混入することが十分に考えられるため、得られる合金粉末の純度が悪くなる。また、ポットから粉末を取り出す際にMg粉末の爆発の危険性もある。
【0010】
更に他のMg2Si基化合物の製造方法としては、 放電プラズマ法と呼ばれるものがある。この方法は、MgとSiとが原子比で2 : 1となるようなMg粉末及びSi粉末とドーパント元素粉末とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合粉末をMgの融点(650℃)以上800℃以下の温度範囲内で所定時間加熱保持して、溶融MgとSi粒子との反応によりMg2Siを形成させると共に、ドーパント元素を溶融Mg中に溶解させ、そのドーパント原子をMg2Si結晶構造中のMg又はSiの一部と置換・固溶させて、非平衡組織を有するMg2Si基化合物が作製される。
【0011】
これに関連する技術として、例えば、特開2002-285274号公報(特許文献1)には、「Mg-Si系熱電材料及びその製造方法」に係る発明が提案されており、「MgとSiの原子比が2 : 1となるMg粉末及びSi粉末と前記ドーパント元素粉末とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合粉末をMgの融点Tm以上1073K以下の温度範囲内で所定時間加熱保持して溶融MgとSi粒子との反応によりMg2Siを形成させると共に、前記ドーパント元素を溶融Mg中に溶解させ前記Mg2Si結晶構造中のMg若しくはSiの一部と置換・ 固溶させることよりMg2Si基化合物を生成させる加熱保持工程と、該加熱保持工程を前記所定時間後に未反応のSi粒子が残存する程度で停止させる冷却工程とにより作製される。」 ことが開示されている。
【0012】
また、特開2006-128235号公報(特許文献2)では、Mg2Si基化合物に、Al及びZnの2種類のドーパント元素を添加することにより不活性ガス中で溶解してN型熱電半導体を合成し、その半導体を粉砕した後、その粉砕物を放電プラズマ焼結法で焼結することが開示されている。この発明では、Alのみの添加では偏析が大きくなり、ZnのみではP型になってしまいN型とはならないという課題を克服している。ドーパント元素の添加総量はAlとZnとで0.21at%〜2at%としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002-285274号公報
【特許文献2】特開2006-128235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に開示された方法では、上記他の製造法に比べると生成物の均質性や製造時の完全性を確保することができ、生成物の熱電性能の向上と製造コストの低減化に有用であるが、未反応のSi粒子が残存する程度で停止させる冷却工程の必要性については疑問である。また、特許文献1は、化学組成式がMg66.667-xSi33.333-yAx+y(Aはドーパント元素であり、Al、P、Ga、As、In、Sb、Ag、Cu、Au、Ni、Fe、Mn、Co、Zn、Pbのいずれかの元素、0.017≦x≦0.192及びy=0、若しくはx=0及び0.017≦y≦0.192)で表されるMg2Si基化合物を開示している。そして、その実施例では、MgAlSiの特定の材料に限定されており、他の化合物に関する実施例の記載はない。したがって、Al、Zn、Mnの特有な組合せである3元素を添加して、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiとした熱電材料は、特許文献1には示唆がない。また、添加するドーパントとしては1種類の元素(0.017at%〜0.192at%)に限られたものに過ぎない。
【0015】
特許文献2に開示された方法では、偏析を抑えて均質な素子の製造は図れるが、Mg2Si素子の課題である高温大気中における性能劣化の課題を克服することは依然としてできていない。また、特許文献2は、MgAlZnSiにおいて、Al及びZnの添加量が0.21at%〜2at%の化合物を開示するのみであり、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiとした熱電材料は、特許文献2にも、示唆がない。
【0016】
本発明は、上述した事情に鑑みて創案されたものであり、下記の目的を達成するものである。
本発明の目的は、熱電変換効率の高い新規な化合物から成る熱電材料を提供することである。
本発明の他の目的は、比較的低温での合成が可能な液相−固相反応法に着目し、製造工程の安全性の向上及び製造コストの削減を図ることができる熱電材料及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、Mg2Si基化合物にMg合金に由来するAl, Zn及びMnをドーパント元素として複合添加することで、優れた熱電性能と高温大気中での熱電性能の劣化を抑制する効果を発現できる熱電材料及びその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、ダイキャストや鋳物に使用されているMg合金の切削加工時に発生する切削屑を再利用した熱電材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本第1の発明は、熱電材料の発明である。本発明は、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物から成る熱電材料である。このMg2Si基化合物から成る熱電材料は知られていない。熱電材料としては新規物質である。この発明により、N型熱電半導体を得ることができる。
【0018】
本発明において、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiは、Mg66.667-X-Y-ZAlXZnYMnZSi33.333と表記することもできる。この表記を用いると、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であることは、Mg66.667-X-Y-ZAlXZnYMnZSi33.333において、0.3≦X+Y+Z≦5
と等価である。また、x=3X/100、y=3Y/100、z=3Z/100であり、0.009≦x+y+z≦0.15である。
【0019】
本発明において、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075であることが望ましい。また、Siと化合するMg2-x-y-zAlxZnyMnzは、Mg合金として付与されることが望ましい。
【0020】
本第2の発明は、熱電材料の製造方法に関する発明である。本発明は、Mg2Si基化合物から成る熱電材料の製造方法において、Mg合金と、Si粉末を、Mg合金とSiの原子比が2 : 1になるように混合し、液相−固相反応法を用いて、不活性ガス雰囲気下でMg合金の融点以上の温度で、液相状態のMg合金と固相状態のSiの固液共存した状態で、Mg合金とSiとを合成反応させ、反応の完了の後に、冷却して、多孔質のMg2Si基化合物を作製し、Mg2Si基化合物を不活性ガス雰囲気下で粉砕して粉砕体を形成し、その後に、粉砕体を真空又は不活性雰囲気下で加圧焼結することを特徴とする熱電材料の製造方法である。
【0021】
本発明は、液相−固相反応法を用いて、Mg2Si基化合物を製造するに際して、添加元素を、Mg合金として供給するようにしたことが特徴である。本発明において、製造されるMg2Si基化合物は、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下である化合物とすることができる。Al、Zn、Mnを含有する主要Mg合金のみを液相に利用する場合からそれにMgを添加・希釈して液相に用いる場合を考慮して、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下とした。この範囲の時に、後述するように無次元性能指数が従来例よりも向上すると思われる。
【0022】
また、化学式において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075とすることが望ましい。また、Mg合金には、Mg、Al、Zn、Mnを必須構成元素とするMg合金を用いることができる。この成分比の範囲も、Al、Zn、Mnを含有する主要Mg合金を少なくとも利用することを考慮して、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075を満足するものとした。この範囲の時に、後述するように無次元性能指数が従来例よりも向上すると思われる。
【0023】
Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金を用いることができる。このMg合金は、当業者において、AZ61として知られている。Mg合金は、2.5wt%以上、3.5wt%以下のAl、0.6wt%以上、1.4wt%以下のZn、0.20wt%以上、1.0wt%以下のMnを、含むMg合金を用いることができる。このMg合金は、当業者において、AZ31B合金として知られている。
【0024】
また、Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金から成り、混合において、さらに、Mg粉末を混合して、Mg合金とMg粉末との総和に対して、Mg合金を20wt%以上、100wt%未満(Mg粉末を用いない場合は100wt%)、混合されることが望ましい。これにより、製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiの無次元性能指数ZTを、従来の特許文献1、2に開示の熱電材料に比べて大きくすることができる。また、Mg合金は、Mg合金とMg粉末との総和に対して50wt%以上、混合させることが望ましい。
また、Mg合金の他、そのMg合金とは成分比の異なるMg、Al、Zn、Mnを必須構成成分とする第2のMg合金、又は、Mg粉末を、混合において、加えてもよい。この方法により、得られるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiのMg、Al、Zn、Mnの組成比を調整することができる。
【0025】
混合において、用いられるMg合金の形態は任意であるが、Mg合金として、粉体、又は、切削体から成る多数の微小物体として、混合されることが望ましい。Mg合金とSi粉末とを均一に混合することができ、得られるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiの組成比を均一にすることができる。
また、加圧焼結の前に粉砕体を、ふるい分級して未反応のMg合金を除去することが望ましい。得られるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiの組成比を均一にすることができる。
【0026】
また、加圧焼結には、 Mg2Si基化合物の粉砕体に電圧・ 電流を印加し、この粉砕体の粒子間隙で起こる放電現象により焼結体を作製する放電プラズマ焼結法を用いることができる。この方法によりMg2Si基化合物を、均質且つ効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物は、従来の Mg2Si、Mg2-xAlxSi、Mg2-x-yAlxZnySiに比べて、無次元性能指数ZTが、500℃において、4倍程度、向上した。また、高温大気下での熱電性能の劣化を抑制することができた。この結果、本発明のMg2Si基化合物は、熱電材料として極めて有効である。
【0028】
本発明の製造方法によれば、液相−固相反応法と加圧焼結を組合せることによって、製造工程の安全性の向上及び製造コストの削減を図ることができる。また、Al, Zn及びMnを含有するMg合金を、原材料に使用することで性能指数に優れ、高温大気下での熱電性能の劣化の抑制を可能にするMg2Si基化合物熱電半導体から成る熱電材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の製造方法に係る液相―固相反応法を示した模式図。
【図2】本発明の製造方法に使用したAZ61Mg合金切削片の形態を表す写真。
【図3】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料のXRDパターンの測定図。
【図4】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料の電気抵抗率の温度依存性を表す測定図。
【図5】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料のゼーベック係数の温度依存性を表す測定図。
【図6】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料の熱伝導率の温度依存性を表す測定図。
【図7】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す測定図。
【図8】Mgのみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す測定図。
【図9】AZ61Mg合金のみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す測定図。
【図10】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料の電気抵抗率の温度依存性を表す測定図。
【図11】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料のゼーベック係数の温度依存性を表す測定図。
【図12】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料の熱伝導率の温度依存性を表す測定図。
【図13】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す測定図。
【図14】AZ31BMg合金のみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す測定図。
【図15】MgとAZ61Mg合金またはAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した代表的な試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す測定図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明を実施するにあたり、用いる液相−固相反応法の模式図を図1に示す。この方法によって化合物合成が可能となる条件としては、2種類以上の材料において、主成分となる材料の融点が比較的低く、その他の材料の融点が高い場合で、主成分となる材料の融点以上の固液共存状態において、固液界面で拡散反応が盛んに起こることである。本発明で使用する原材料のうち、主成分となるMg合金または純Mgが低融点であり、純Siは高融点材料であり、両材料間では固液共存状態で盛んに拡散反応が起こる。そのため、Mg2Si基化合物の合成には適した方法であるといえる。また、比較的低温で短時間に合成ができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0031】
本発明で用いる液相−固相反応法による合成では、Al, Zn及びMnを含有するMg合金切削片と純Mg粉末または異種のMg合金切削片を用いて、純Si粉末と混合して、Al, Zn及びMnの添加総量が0.3at%〜5at%で、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiで表されるMg2Si基化合物において、y/x=0.04〜0.6及びz/x=0.013〜0.075となるように調製することが好ましい。Mg合金は粉末で供給しても良く、供給する形状は任意であるが、固相のSi粒子と一様に反応し易くするために、一般的には、Mg合金は、粉末、切削片等の微小物体として、組成比調整のためのMg粉末と、Si粉末と、混合するのが良い。
【0032】
本発明においては、液相−固相反応法による合成で得られた多孔質なMg2Si基化合物を粉砕した後に、ふるい分けによる粒度分級を実施する。これにより、合成化合物の粒度を調製するとともに、未反応物質として残留するMg合金の分離除去にも有効である。
【0033】
合成後粉砕および粒度分級の工程を経たMg2Si基化合物粉末を用いて、放電プラズマ焼結法の短時間焼結によりMg2Si基化合物の焼結体を作製することで、緻密なMg2Si基化合物半導体を得ることができ、その焼結体にマクロ偏析が生じることはない。
【実施例1】
【0034】
(熱電材料の製造)
本発明に係るMg2Si基化合物は、MgとSi、及び3種類の主要ドーパント元素Al, Zn及びMnを必須の構成元素とし、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiで表される。本実施例では、出発原料としてMg粉末(純度99.9%,粒径<180μm),Si粉末(純度99.9%,粒径<75μm)および、下記の表1に示す合金組成を有するAZ61Mg合金の切削片(図2)を用意する。AZ61Mg合金切削片の配合割合が、0,20,50,80,100wt%(残部がMg粉末)となるように調整したMg粉末とMg合金とのMg系混合物と、Si粉末とを原子比で2 : 1になるようにAr雰囲気下で秤量して混合する。AZ61Mg合金におけるAl, Zn及びMnの含有量をそれぞれAl:6wt%, Zn:1wt%, Mn:0.28wt%とすると、AZ61Mg合金の配合割合が20wt%〜100wt%の範囲でAl, Zn及びMnの添加総量は、0.798at%〜3.989at%、y/x=0.069、z/x=0.023に相当する。
また、AZ61Mg合金の配合割合が50wt%〜100wt%の範囲でAl, Zn及びMnの添加総量は、1.98at%〜3.99at%である。
【表1】
【0035】
表1の成分の範囲にあるAZ61Mg合金を用いると、製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいて、0.029≦y/x≦0.11、0.010≦z/x≦0.036とすることができる。AZ61Mg合金と、Si粉末により製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいては、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、3.50at%以上、4.91at%以下となる。
また、20wt%のAZ61Mg合金と80wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、0.70at%以上、0.97at%以下となる。したがって、20wt%〜100 wt%のAZ61Mg合金と80wt%〜0wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、0.70at%以上、4.91at%以下となる。
【0036】
また、50wt%のAZ61Mg合金と50wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、1.74at%以上、2.43at%以下となる。したがって、50wt%〜100 wt%のAZ61Mg合金と50wt%〜0wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、1.74at%以上、4.91at%以下となる。
【0037】
上記混合物をアルミナるつぼに移し、液相−固相反応法によってAr気流中,保持時間1h,保持温度680℃の条件でMg2Si基化合物の合成を行う。保持温度の下限は液相を形成する材料の融点(例えばAZ61Mg合金では610℃)で、上限は液相を形成する材料の沸点(例えばAZ61Mg合金では1107℃)か合成されるMg2Si基化合物の融点(例えば、Mg2Siでは1102℃)のどちらか低い方の温度を範囲とすることができる。また、保持時間は保持温度にも依存するが、少なくとも30min以上は必要であり、必要以上に保持時間をとった場合でも支障なくMg2Si基化合物の合成が可能である。圧力は大気圧である。
得られた合成物をAr雰囲気下で粉砕し、粉砕粉末を75μm以下に分級した後、放電プラズマ焼結法により焼結温度730℃,焼結圧力60MPa,保持時間30min,真空下の条件で焼結・固化を行う。焼結時に使用するダイとパンチは黒鉛製で、ダイの内径およびパンチの直径は、20mmである。粉砕粉末を形成する環境は、Arの他、He、Ne等の不活性ガス、N2ガスを用いることができる。焼結温度は、 650〜900℃、焼結圧力は30〜100MPa、保持時間は、10min〜1hとすることができる。
【0038】
図3は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して、ふるい分けによる粒度分級した後の粉末のXRDパターンである。いずれの配合割合においても、Mg2Si相のみが検出され、第2相は検出されていない。このことから均一なMg2-x-y-zAlxZnyMnzSi 化合物半導体が生成されていることが分かる。
【0039】
(熱電特性)
図4は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合(組成比)を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料の電気抵抗率の温度依存性を表す図である。純MgのみでAZ61Mg合金を配合しない場合の電気抵抗率は測定した温度全域で、0.11〜0.16mΩ・mと高い値を示した。これに対して、AZ61Mg合金を20wt%以上配合した場合には、電気抵抗率は、測定した温度全域において、0.013〜0.032 mΩ・mと、低い値を示した。この値は、純MgのみとSiの合金の場合の電気抵抗率の値の10分の1程度と、低い値である。低い電気抵抗率は、熱電性能の向上につながる。
【0040】
図5は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料のゼーベック係数の温度依存性を表す図である。いずれの試料においても、ゼ−ベック係数は負の値で変化しており、N型の熱電半導体の性質を示していることが分かる。AZ61Mg合金を配合しないMg2Siの合のゼーベック係数の絶対値は測定した温度全域で高い値を示すが、AZ61Mg合金を20wt%以上配合した場合には、ゼーベック係数の絶対値は減少し、AZ61Mg合金の配合割合の違いによらずほぼ同一の挙動を示す。
【0041】
図6は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料の熱伝導率の温度依存性を表す図である。純MgのみでAZ61Mg合金を配合しない場合と、50wt%Mgに50wt%AZ61Mg合金を配合した場合の熱伝導率は、同程度の値で同様な温度依存性を示すが、AZ61Mg合金のみの場合の熱伝導率は、1〜2W/m・K程、熱伝導率は増加する傾向を示した。
【0042】
図7は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す図である。50wt%Mg粉末に50wt%AZ61Mg合金を配合した場合の化合物の無次元性能指数ZTは、400〜600℃(ただし、測定最高温度は590℃)において、0.72〜1.22、温度590℃において、1.22であった。これに対して、純Mgのみを用いてAZ61Mg合金を用いないで製造したMg2Si場合には、400〜600℃において、0.27〜0.30、温度500℃において、0.30であった。実施例の化合物の無次元性能指数ZTは、Mg2Siに比べて、4倍程大きいことが分かる。これは、本実施例の場合には、ゼーベック係数の絶対値が減少するものの、電気抵抗率が大幅に低減し、熱伝導率は同程度となったため、無次元性能指数ZTは大幅に向上する結果となる。
【0043】
AZ61Mg合金のみの場合は、無次元性能指数ZTは、400〜600℃において、0.49〜0.7、温度600℃において、0.7であった。この場合の無次元性能指数ZTは、Mg2Siに比べて2倍程大きい。しかし、50wt%Mg粉末に50wt%AZ61Mg合金を配合した場合に比べて、無次元性能指数ZTは、7分の4程度に低下する。これは、熱伝導率がMgに50wt%AZ61Mg合金を配合した場合に比べて増加するため、無次元性能指数ZTは、その場合には及ばない結果となる。また、80wt%Mg粉末に20wt%AZ61Mg合金を配合した場合の化合物の無次元性能指数ZTは、400〜600℃において、0.25〜0.46、温度600℃において、0.46であった。また、450℃以下の温度域では、無次元性能指数ZT の変化は純Mgのみを配合した場合のZTの変化に類似する結果となった。さらに、20wt%Mg粉末に80wt%AZ61Mg合金を配合した場合の化合物の無次元性能指数ZTは、400〜600℃において、0.46〜0.74、温度600℃において、0.74であった。この化合物の無次元性能指数ZT の変化は、AZ61Mg合金のみの場合のZTの変化に類似した結果となった。
【0044】
(高温大気環境下における熱電性能)
高温大気環境下での熱電性能の変化を調査する目的で、純Mg粉末のみでAZ61Mg合金を配合していない試料と、AZ61Mg合金切削片のみを用いた試料とを時間を変えて大気中500℃で保持した場合の熱電性能を評価する一つの指標であるパワーファクター(α2/ρ、ただしαはゼーベック係数(V/K)、ρは電気抵抗率(Ωm))の変化を調査し比較をする。それぞれの試料を所定時間大気中500℃で保持した後に電気低効率及びゼーベック係数を測定し、その2つの数値からパワーファクターを求める。その後同じ試料について再び所定時間大気中500℃で保持した後に電気抵抗率とゼーベック係数を測定する。同様な工程を何度か繰り返すことで、保持時間経過に伴うパワーファクターの変化を調査する。
【0045】
図8は、Mgのみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す図である。保持時間を長くすることで性能は劣化していく。すなわち、Mg2Si化合物半導体の耐酸化性が低いことを意味する。
【0046】
図9は、AZ61合金のみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す図である。Mgのみを用いて合成した試料Mg2Siに比べて、保持時間を長くしても明らかな性能劣化は起こっていない。従って、AZ61のようなMg合金をMg2Si基化合物の合成に用いることによって、高温大気下における熱電性能劣化の防止が期待できる。むしろ、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した後、加熱処理することで、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi のパワーファクターは増加する傾向を示した。このことは、製造後の加熱処理の有効性を示している。
【実施例2】
【0047】
実施例1と同様にして、Mg合金として、下記表2に記載の成分を有するAZ31B合金のみを用いた場合と、50wt%のAZ31B合金に50wt%のMg粉末を混合して、各成分濃度を調整した上で、Si粉末と反応させて、各組成比のMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した。電気抵抗率の温度特性を、図10 に、ゼーベック係数の温度特性を、図11に、熱伝導率の温度特性を図12に、無次元性能指数を、図13に示す。電気抵抗率とゼーベック係数の温度特性は、実施例1における、AZ61合金のみを用いた場合と、50wt%のAZ61合金に50wt%のMg粉末を混合してMg合金の成分を供給した場合の実施例と、同一特性を示した。無次元性能指数については、100wt%のAZ31BMg合金を用いた場合には、400℃〜600℃の範囲(ただし、測定最高温度は590℃)で、0.47〜0.81が得られ、Mg2Siが0.27〜0.30であるので、1.7〜2.7倍の性能指数が得られていることが分かる。
【表2】
【0048】
また、実施例1と同様にして、本実施例2の試料を所定時間大気中500℃で保持した後に電気低効率及びゼーベック係数を測定し、その2つの数値からパワーファクターを求めた。各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を図14に示す。実施例1と同様に、高温大気下における熱電性能劣化の防止が期待できることが分かる。実施例1と同様に、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した後、加熱処理することで、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi のパワーファクターは増加する傾向を示した。このことから、AZ31BMg合金を用いる場合にも、半導体を製造した後に、加熱処理をすることで、性能が向上することが分かる。
【0049】
表2の成分の範囲にあるAZ31BのMg合金を用いると、製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいて、0.071≦y/x≦0.23、0.028≦z/x≦0.20とすることができる。AZ61Mg合金と、Si粉末により製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいては、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、1.72at%以上、2.79at%以下となる。
【0050】
また、特許文献2に開示されているMg66Al0.33Zn0.33Si33.33の無次元性能指数ZTは、400〜600℃の温度範囲において、Mg2Siより0.1程度大きいが、Mg2Siと大差はない。実施例1、2の化合物の無次元性能指数ZTは、Mg2SiやMg66Al0.33Zn0.33Si33.33に比べて、4〜3倍程大きいことが分かる。
【0051】
実施例1と実施例2の中から良好な結果を示した場合の無次元性能指数ZTを、Mg2Siおよび特許文献2に開示されているMg66Al0.33Zn0.33Si33.33の結果とともにまとめて図15に示す。実施例1と実施例2とから、無次元性能指数が、従来例よりも良くなる場合は、50wt%以上のAZ61Mg合金を用いた場合と、100wt%のAZ31BMg合金を用いた場合であることが、確認された。この結果、無次元性能指数が従来例よりも良くなる場合における製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiのAl、Zn、Mnの総和の添加量は、1.72以上、4.91以下であり、0.029≦y/x≦0.23、0.010≦z/x≦0.20であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は熱電材料として極めて有効である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、Mg2Si基化合物の熱電材料及びその製造方法に関する。特に、Mg2Si基化合物の合成には、Al, Zn及びMnを合金成分として含有するMg合金を原材料に使用し、それらの元素をドーパントとしたMg2Si基化合物の熱電材料と、液相−固相反応法と焼結を組合せた熱電材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱エネルギーと電気エネルギーとの相互変換が可能な熱電変換素子が知られている。その熱電モジュールは、P型及びN型の二種類の熱電材料( 熱電変換材料)を電気的に直列に接続し、熱的に並列に配置した構成とされている。この熱電モジュールは、両面間に温度差を与えれば、ゼーベック効果に基づいてP型では正孔の移動、N型では電子の移動が起こり、両端子間に起電力が発生する。
【0003】
熱電材料の性能指数は、Z=α2/(ρκ)、Z:性能指数(1/K)によって算出される。ここで、ρは電気抵抗率(Ω・m)、αはゼーベック係数(V/K)、κは熱伝導率(W/mK)である。
【0004】
この現象を利用して、各種熱発生システムから生ずる廃熱を利用した発電装置用の素子として用いたりすることが検討されている。また、自動車のエンジンの廃熱量は無視できないほど多量であるため、エンジンの廃熱を利用して発電することも考えられている。
【0005】
従来、熱電変換素子を構成する熱電材料として、Bi2Te3やPbTe等が実用化されているが、これらの熱電材料を構成する元素のBi, Te, Pbは毒性が強いため、環境汚染のおそれがある。そのため、環境負荷の少ない、即ち毒性を有しない熱電材料が望まれている。また、自動車の廃熱回収に使用するには軽量で資源的に豊富な材料が望まれている。
【0006】
無毒で軽量なN型中高温用熱電材料としてMg2Si( 比重は約2 )が知られている。Mg2Siの熱電性能を改善するために、ドーパントを添加することが行われる。Mg2Siに添加するドーパントとしては、N型半導体特性を発現させるAl, Sb等や、P型半導体特性を発現させるAg, Cu等が知られている。しかし、Mgが活性な金属であり、発火等の危険性があるため、これまでMg2Si熱電材料の開発はあまり進められていなかった。
【0007】
この種のMg2Si基化合物を製造する方法としては、MgとSiを原子比でMg : Si=2 : 1となるMg粉末及びSi粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末、又は、予め作製したMg2Si粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末を、Mg2Siの融点(1102℃)以上に加熱して、その後、冷却時にMg2Si基化合物を生成させる直接溶融法がある。しかし、この製造方法では、Mgの蒸発を抑制するための手段として高圧の不活性ガスを負荷しなければならず、装置、製造工程等にコストが掛かる上に、加熱保持の際にMgの爆発の危険性も伴う。また、MgやSiの偏析が生じやすく、不均一な組織となり生成物の中央部と坩堝側とで収縮率に差が生じ、生成物内にクラックが生じる可能性がある。
【0008】
別のMg2Si基化合物の製造方法としては、MgとSiとが原子比で2 : 1となるようなMg粉末及びSi粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末、又は、予め作製したMg2Si粉末にドーパント元素粉末を加えた混合粉末を、不活性ガスで置換した加圧容器中のカーボン坩堝に入れ、高周波加熱・溶解する方法がある。しかし、高周波加熱による方法では、直接溶融法と同様に生成物内にクラックが生じること、加熱装置が高価であること、また、大量生産に適していないことなどから、得られる製品のコストが高くなるという問題がある。
【0009】
他のMg2Si基化合物の製造方法としては、メカニカルアロイング法と呼ばれるものがある。この方法は、原子比でMgとSiとが2 : 1となるようにMgとSiの粉末を秤量し、これらの粉末を鉄あるいはセラミックス製のボールにより長時間(例えば、300h)ボールミル粉砕を行うことで機械的にMg2Si粉末を合成するものである。こうして得られたMg2Si粉末とドーパント元素とを混合して加熱処理することによりMg2Si基化合物が作製される。メカニカルアロイング法による製造方法では、長時間の混合・粉砕作業によりボールが削れて、ボール粉末が、粉末中へと不純物として混入することが十分に考えられるため、得られる合金粉末の純度が悪くなる。また、ポットから粉末を取り出す際にMg粉末の爆発の危険性もある。
【0010】
更に他のMg2Si基化合物の製造方法としては、 放電プラズマ法と呼ばれるものがある。この方法は、MgとSiとが原子比で2 : 1となるようなMg粉末及びSi粉末とドーパント元素粉末とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合粉末をMgの融点(650℃)以上800℃以下の温度範囲内で所定時間加熱保持して、溶融MgとSi粒子との反応によりMg2Siを形成させると共に、ドーパント元素を溶融Mg中に溶解させ、そのドーパント原子をMg2Si結晶構造中のMg又はSiの一部と置換・固溶させて、非平衡組織を有するMg2Si基化合物が作製される。
【0011】
これに関連する技術として、例えば、特開2002-285274号公報(特許文献1)には、「Mg-Si系熱電材料及びその製造方法」に係る発明が提案されており、「MgとSiの原子比が2 : 1となるMg粉末及びSi粉末と前記ドーパント元素粉末とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合粉末をMgの融点Tm以上1073K以下の温度範囲内で所定時間加熱保持して溶融MgとSi粒子との反応によりMg2Siを形成させると共に、前記ドーパント元素を溶融Mg中に溶解させ前記Mg2Si結晶構造中のMg若しくはSiの一部と置換・ 固溶させることよりMg2Si基化合物を生成させる加熱保持工程と、該加熱保持工程を前記所定時間後に未反応のSi粒子が残存する程度で停止させる冷却工程とにより作製される。」 ことが開示されている。
【0012】
また、特開2006-128235号公報(特許文献2)では、Mg2Si基化合物に、Al及びZnの2種類のドーパント元素を添加することにより不活性ガス中で溶解してN型熱電半導体を合成し、その半導体を粉砕した後、その粉砕物を放電プラズマ焼結法で焼結することが開示されている。この発明では、Alのみの添加では偏析が大きくなり、ZnのみではP型になってしまいN型とはならないという課題を克服している。ドーパント元素の添加総量はAlとZnとで0.21at%〜2at%としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002-285274号公報
【特許文献2】特開2006-128235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に開示された方法では、上記他の製造法に比べると生成物の均質性や製造時の完全性を確保することができ、生成物の熱電性能の向上と製造コストの低減化に有用であるが、未反応のSi粒子が残存する程度で停止させる冷却工程の必要性については疑問である。また、特許文献1は、化学組成式がMg66.667-xSi33.333-yAx+y(Aはドーパント元素であり、Al、P、Ga、As、In、Sb、Ag、Cu、Au、Ni、Fe、Mn、Co、Zn、Pbのいずれかの元素、0.017≦x≦0.192及びy=0、若しくはx=0及び0.017≦y≦0.192)で表されるMg2Si基化合物を開示している。そして、その実施例では、MgAlSiの特定の材料に限定されており、他の化合物に関する実施例の記載はない。したがって、Al、Zn、Mnの特有な組合せである3元素を添加して、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiとした熱電材料は、特許文献1には示唆がない。また、添加するドーパントとしては1種類の元素(0.017at%〜0.192at%)に限られたものに過ぎない。
【0015】
特許文献2に開示された方法では、偏析を抑えて均質な素子の製造は図れるが、Mg2Si素子の課題である高温大気中における性能劣化の課題を克服することは依然としてできていない。また、特許文献2は、MgAlZnSiにおいて、Al及びZnの添加量が0.21at%〜2at%の化合物を開示するのみであり、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiとした熱電材料は、特許文献2にも、示唆がない。
【0016】
本発明は、上述した事情に鑑みて創案されたものであり、下記の目的を達成するものである。
本発明の目的は、熱電変換効率の高い新規な化合物から成る熱電材料を提供することである。
本発明の他の目的は、比較的低温での合成が可能な液相−固相反応法に着目し、製造工程の安全性の向上及び製造コストの削減を図ることができる熱電材料及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、Mg2Si基化合物にMg合金に由来するAl, Zn及びMnをドーパント元素として複合添加することで、優れた熱電性能と高温大気中での熱電性能の劣化を抑制する効果を発現できる熱電材料及びその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、ダイキャストや鋳物に使用されているMg合金の切削加工時に発生する切削屑を再利用した熱電材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本第1の発明は、熱電材料の発明である。本発明は、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物から成る熱電材料である。このMg2Si基化合物から成る熱電材料は知られていない。熱電材料としては新規物質である。この発明により、N型熱電半導体を得ることができる。
【0018】
本発明において、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiは、Mg66.667-X-Y-ZAlXZnYMnZSi33.333と表記することもできる。この表記を用いると、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であることは、Mg66.667-X-Y-ZAlXZnYMnZSi33.333において、0.3≦X+Y+Z≦5
と等価である。また、x=3X/100、y=3Y/100、z=3Z/100であり、0.009≦x+y+z≦0.15である。
【0019】
本発明において、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075であることが望ましい。また、Siと化合するMg2-x-y-zAlxZnyMnzは、Mg合金として付与されることが望ましい。
【0020】
本第2の発明は、熱電材料の製造方法に関する発明である。本発明は、Mg2Si基化合物から成る熱電材料の製造方法において、Mg合金と、Si粉末を、Mg合金とSiの原子比が2 : 1になるように混合し、液相−固相反応法を用いて、不活性ガス雰囲気下でMg合金の融点以上の温度で、液相状態のMg合金と固相状態のSiの固液共存した状態で、Mg合金とSiとを合成反応させ、反応の完了の後に、冷却して、多孔質のMg2Si基化合物を作製し、Mg2Si基化合物を不活性ガス雰囲気下で粉砕して粉砕体を形成し、その後に、粉砕体を真空又は不活性雰囲気下で加圧焼結することを特徴とする熱電材料の製造方法である。
【0021】
本発明は、液相−固相反応法を用いて、Mg2Si基化合物を製造するに際して、添加元素を、Mg合金として供給するようにしたことが特徴である。本発明において、製造されるMg2Si基化合物は、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下である化合物とすることができる。Al、Zn、Mnを含有する主要Mg合金のみを液相に利用する場合からそれにMgを添加・希釈して液相に用いる場合を考慮して、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下とした。この範囲の時に、後述するように無次元性能指数が従来例よりも向上すると思われる。
【0022】
また、化学式において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075とすることが望ましい。また、Mg合金には、Mg、Al、Zn、Mnを必須構成元素とするMg合金を用いることができる。この成分比の範囲も、Al、Zn、Mnを含有する主要Mg合金を少なくとも利用することを考慮して、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075を満足するものとした。この範囲の時に、後述するように無次元性能指数が従来例よりも向上すると思われる。
【0023】
Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金を用いることができる。このMg合金は、当業者において、AZ61として知られている。Mg合金は、2.5wt%以上、3.5wt%以下のAl、0.6wt%以上、1.4wt%以下のZn、0.20wt%以上、1.0wt%以下のMnを、含むMg合金を用いることができる。このMg合金は、当業者において、AZ31B合金として知られている。
【0024】
また、Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金から成り、混合において、さらに、Mg粉末を混合して、Mg合金とMg粉末との総和に対して、Mg合金を20wt%以上、100wt%未満(Mg粉末を用いない場合は100wt%)、混合されることが望ましい。これにより、製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiの無次元性能指数ZTを、従来の特許文献1、2に開示の熱電材料に比べて大きくすることができる。また、Mg合金は、Mg合金とMg粉末との総和に対して50wt%以上、混合させることが望ましい。
また、Mg合金の他、そのMg合金とは成分比の異なるMg、Al、Zn、Mnを必須構成成分とする第2のMg合金、又は、Mg粉末を、混合において、加えてもよい。この方法により、得られるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiのMg、Al、Zn、Mnの組成比を調整することができる。
【0025】
混合において、用いられるMg合金の形態は任意であるが、Mg合金として、粉体、又は、切削体から成る多数の微小物体として、混合されることが望ましい。Mg合金とSi粉末とを均一に混合することができ、得られるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiの組成比を均一にすることができる。
また、加圧焼結の前に粉砕体を、ふるい分級して未反応のMg合金を除去することが望ましい。得られるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiの組成比を均一にすることができる。
【0026】
また、加圧焼結には、 Mg2Si基化合物の粉砕体に電圧・ 電流を印加し、この粉砕体の粒子間隙で起こる放電現象により焼結体を作製する放電プラズマ焼結法を用いることができる。この方法によりMg2Si基化合物を、均質且つ効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物は、従来の Mg2Si、Mg2-xAlxSi、Mg2-x-yAlxZnySiに比べて、無次元性能指数ZTが、500℃において、4倍程度、向上した。また、高温大気下での熱電性能の劣化を抑制することができた。この結果、本発明のMg2Si基化合物は、熱電材料として極めて有効である。
【0028】
本発明の製造方法によれば、液相−固相反応法と加圧焼結を組合せることによって、製造工程の安全性の向上及び製造コストの削減を図ることができる。また、Al, Zn及びMnを含有するMg合金を、原材料に使用することで性能指数に優れ、高温大気下での熱電性能の劣化の抑制を可能にするMg2Si基化合物熱電半導体から成る熱電材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の製造方法に係る液相―固相反応法を示した模式図。
【図2】本発明の製造方法に使用したAZ61Mg合金切削片の形態を表す写真。
【図3】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料のXRDパターンの測定図。
【図4】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料の電気抵抗率の温度依存性を表す測定図。
【図5】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料のゼーベック係数の温度依存性を表す測定図。
【図6】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料の熱伝導率の温度依存性を表す測定図。
【図7】MgとAZ61Mg合金の配合割合を変化させて合成した試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す測定図。
【図8】Mgのみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す測定図。
【図9】AZ61Mg合金のみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す測定図。
【図10】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料の電気抵抗率の温度依存性を表す測定図。
【図11】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料のゼーベック係数の温度依存性を表す測定図。
【図12】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料の熱伝導率の温度依存性を表す測定図。
【図13】MgとAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す測定図。
【図14】AZ31BMg合金のみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す測定図。
【図15】MgとAZ61Mg合金またはAZ31BMg合金の配合割合を変化させて合成した代表的な試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す測定図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明を実施するにあたり、用いる液相−固相反応法の模式図を図1に示す。この方法によって化合物合成が可能となる条件としては、2種類以上の材料において、主成分となる材料の融点が比較的低く、その他の材料の融点が高い場合で、主成分となる材料の融点以上の固液共存状態において、固液界面で拡散反応が盛んに起こることである。本発明で使用する原材料のうち、主成分となるMg合金または純Mgが低融点であり、純Siは高融点材料であり、両材料間では固液共存状態で盛んに拡散反応が起こる。そのため、Mg2Si基化合物の合成には適した方法であるといえる。また、比較的低温で短時間に合成ができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0031】
本発明で用いる液相−固相反応法による合成では、Al, Zn及びMnを含有するMg合金切削片と純Mg粉末または異種のMg合金切削片を用いて、純Si粉末と混合して、Al, Zn及びMnの添加総量が0.3at%〜5at%で、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiで表されるMg2Si基化合物において、y/x=0.04〜0.6及びz/x=0.013〜0.075となるように調製することが好ましい。Mg合金は粉末で供給しても良く、供給する形状は任意であるが、固相のSi粒子と一様に反応し易くするために、一般的には、Mg合金は、粉末、切削片等の微小物体として、組成比調整のためのMg粉末と、Si粉末と、混合するのが良い。
【0032】
本発明においては、液相−固相反応法による合成で得られた多孔質なMg2Si基化合物を粉砕した後に、ふるい分けによる粒度分級を実施する。これにより、合成化合物の粒度を調製するとともに、未反応物質として残留するMg合金の分離除去にも有効である。
【0033】
合成後粉砕および粒度分級の工程を経たMg2Si基化合物粉末を用いて、放電プラズマ焼結法の短時間焼結によりMg2Si基化合物の焼結体を作製することで、緻密なMg2Si基化合物半導体を得ることができ、その焼結体にマクロ偏析が生じることはない。
【実施例1】
【0034】
(熱電材料の製造)
本発明に係るMg2Si基化合物は、MgとSi、及び3種類の主要ドーパント元素Al, Zn及びMnを必須の構成元素とし、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiで表される。本実施例では、出発原料としてMg粉末(純度99.9%,粒径<180μm),Si粉末(純度99.9%,粒径<75μm)および、下記の表1に示す合金組成を有するAZ61Mg合金の切削片(図2)を用意する。AZ61Mg合金切削片の配合割合が、0,20,50,80,100wt%(残部がMg粉末)となるように調整したMg粉末とMg合金とのMg系混合物と、Si粉末とを原子比で2 : 1になるようにAr雰囲気下で秤量して混合する。AZ61Mg合金におけるAl, Zn及びMnの含有量をそれぞれAl:6wt%, Zn:1wt%, Mn:0.28wt%とすると、AZ61Mg合金の配合割合が20wt%〜100wt%の範囲でAl, Zn及びMnの添加総量は、0.798at%〜3.989at%、y/x=0.069、z/x=0.023に相当する。
また、AZ61Mg合金の配合割合が50wt%〜100wt%の範囲でAl, Zn及びMnの添加総量は、1.98at%〜3.99at%である。
【表1】
【0035】
表1の成分の範囲にあるAZ61Mg合金を用いると、製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいて、0.029≦y/x≦0.11、0.010≦z/x≦0.036とすることができる。AZ61Mg合金と、Si粉末により製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいては、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、3.50at%以上、4.91at%以下となる。
また、20wt%のAZ61Mg合金と80wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、0.70at%以上、0.97at%以下となる。したがって、20wt%〜100 wt%のAZ61Mg合金と80wt%〜0wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、0.70at%以上、4.91at%以下となる。
【0036】
また、50wt%のAZ61Mg合金と50wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、1.74at%以上、2.43at%以下となる。したがって、50wt%〜100 wt%のAZ61Mg合金と50wt%〜0wt%のMg粉末とを混合して、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した場合には、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおける、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、1.74at%以上、4.91at%以下となる。
【0037】
上記混合物をアルミナるつぼに移し、液相−固相反応法によってAr気流中,保持時間1h,保持温度680℃の条件でMg2Si基化合物の合成を行う。保持温度の下限は液相を形成する材料の融点(例えばAZ61Mg合金では610℃)で、上限は液相を形成する材料の沸点(例えばAZ61Mg合金では1107℃)か合成されるMg2Si基化合物の融点(例えば、Mg2Siでは1102℃)のどちらか低い方の温度を範囲とすることができる。また、保持時間は保持温度にも依存するが、少なくとも30min以上は必要であり、必要以上に保持時間をとった場合でも支障なくMg2Si基化合物の合成が可能である。圧力は大気圧である。
得られた合成物をAr雰囲気下で粉砕し、粉砕粉末を75μm以下に分級した後、放電プラズマ焼結法により焼結温度730℃,焼結圧力60MPa,保持時間30min,真空下の条件で焼結・固化を行う。焼結時に使用するダイとパンチは黒鉛製で、ダイの内径およびパンチの直径は、20mmである。粉砕粉末を形成する環境は、Arの他、He、Ne等の不活性ガス、N2ガスを用いることができる。焼結温度は、 650〜900℃、焼結圧力は30〜100MPa、保持時間は、10min〜1hとすることができる。
【0038】
図3は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して、ふるい分けによる粒度分級した後の粉末のXRDパターンである。いずれの配合割合においても、Mg2Si相のみが検出され、第2相は検出されていない。このことから均一なMg2-x-y-zAlxZnyMnzSi 化合物半導体が生成されていることが分かる。
【0039】
(熱電特性)
図4は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合(組成比)を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料の電気抵抗率の温度依存性を表す図である。純MgのみでAZ61Mg合金を配合しない場合の電気抵抗率は測定した温度全域で、0.11〜0.16mΩ・mと高い値を示した。これに対して、AZ61Mg合金を20wt%以上配合した場合には、電気抵抗率は、測定した温度全域において、0.013〜0.032 mΩ・mと、低い値を示した。この値は、純MgのみとSiの合金の場合の電気抵抗率の値の10分の1程度と、低い値である。低い電気抵抗率は、熱電性能の向上につながる。
【0040】
図5は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料のゼーベック係数の温度依存性を表す図である。いずれの試料においても、ゼ−ベック係数は負の値で変化しており、N型の熱電半導体の性質を示していることが分かる。AZ61Mg合金を配合しないMg2Siの合のゼーベック係数の絶対値は測定した温度全域で高い値を示すが、AZ61Mg合金を20wt%以上配合した場合には、ゼーベック係数の絶対値は減少し、AZ61Mg合金の配合割合の違いによらずほぼ同一の挙動を示す。
【0041】
図6は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料の熱伝導率の温度依存性を表す図である。純MgのみでAZ61Mg合金を配合しない場合と、50wt%Mgに50wt%AZ61Mg合金を配合した場合の熱伝導率は、同程度の値で同様な温度依存性を示すが、AZ61Mg合金のみの場合の熱伝導率は、1〜2W/m・K程、熱伝導率は増加する傾向を示した。
【0042】
図7は、純Mg粉末とAZ61Mg合金切削片の配合割合を変化させて液相−固相反応法で合成して焼結した試料の無次元性能指数ZTの温度依存性を表す図である。50wt%Mg粉末に50wt%AZ61Mg合金を配合した場合の化合物の無次元性能指数ZTは、400〜600℃(ただし、測定最高温度は590℃)において、0.72〜1.22、温度590℃において、1.22であった。これに対して、純Mgのみを用いてAZ61Mg合金を用いないで製造したMg2Si場合には、400〜600℃において、0.27〜0.30、温度500℃において、0.30であった。実施例の化合物の無次元性能指数ZTは、Mg2Siに比べて、4倍程大きいことが分かる。これは、本実施例の場合には、ゼーベック係数の絶対値が減少するものの、電気抵抗率が大幅に低減し、熱伝導率は同程度となったため、無次元性能指数ZTは大幅に向上する結果となる。
【0043】
AZ61Mg合金のみの場合は、無次元性能指数ZTは、400〜600℃において、0.49〜0.7、温度600℃において、0.7であった。この場合の無次元性能指数ZTは、Mg2Siに比べて2倍程大きい。しかし、50wt%Mg粉末に50wt%AZ61Mg合金を配合した場合に比べて、無次元性能指数ZTは、7分の4程度に低下する。これは、熱伝導率がMgに50wt%AZ61Mg合金を配合した場合に比べて増加するため、無次元性能指数ZTは、その場合には及ばない結果となる。また、80wt%Mg粉末に20wt%AZ61Mg合金を配合した場合の化合物の無次元性能指数ZTは、400〜600℃において、0.25〜0.46、温度600℃において、0.46であった。また、450℃以下の温度域では、無次元性能指数ZT の変化は純Mgのみを配合した場合のZTの変化に類似する結果となった。さらに、20wt%Mg粉末に80wt%AZ61Mg合金を配合した場合の化合物の無次元性能指数ZTは、400〜600℃において、0.46〜0.74、温度600℃において、0.74であった。この化合物の無次元性能指数ZT の変化は、AZ61Mg合金のみの場合のZTの変化に類似した結果となった。
【0044】
(高温大気環境下における熱電性能)
高温大気環境下での熱電性能の変化を調査する目的で、純Mg粉末のみでAZ61Mg合金を配合していない試料と、AZ61Mg合金切削片のみを用いた試料とを時間を変えて大気中500℃で保持した場合の熱電性能を評価する一つの指標であるパワーファクター(α2/ρ、ただしαはゼーベック係数(V/K)、ρは電気抵抗率(Ωm))の変化を調査し比較をする。それぞれの試料を所定時間大気中500℃で保持した後に電気低効率及びゼーベック係数を測定し、その2つの数値からパワーファクターを求める。その後同じ試料について再び所定時間大気中500℃で保持した後に電気抵抗率とゼーベック係数を測定する。同様な工程を何度か繰り返すことで、保持時間経過に伴うパワーファクターの変化を調査する。
【0045】
図8は、Mgのみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す図である。保持時間を長くすることで性能は劣化していく。すなわち、Mg2Si化合物半導体の耐酸化性が低いことを意味する。
【0046】
図9は、AZ61合金のみを用いて合成した試料を大気中500℃に保持した場合の各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を表す図である。Mgのみを用いて合成した試料Mg2Siに比べて、保持時間を長くしても明らかな性能劣化は起こっていない。従って、AZ61のようなMg合金をMg2Si基化合物の合成に用いることによって、高温大気下における熱電性能劣化の防止が期待できる。むしろ、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した後、加熱処理することで、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi のパワーファクターは増加する傾向を示した。このことは、製造後の加熱処理の有効性を示している。
【実施例2】
【0047】
実施例1と同様にして、Mg合金として、下記表2に記載の成分を有するAZ31B合金のみを用いた場合と、50wt%のAZ31B合金に50wt%のMg粉末を混合して、各成分濃度を調整した上で、Si粉末と反応させて、各組成比のMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した。電気抵抗率の温度特性を、図10 に、ゼーベック係数の温度特性を、図11に、熱伝導率の温度特性を図12に、無次元性能指数を、図13に示す。電気抵抗率とゼーベック係数の温度特性は、実施例1における、AZ61合金のみを用いた場合と、50wt%のAZ61合金に50wt%のMg粉末を混合してMg合金の成分を供給した場合の実施例と、同一特性を示した。無次元性能指数については、100wt%のAZ31BMg合金を用いた場合には、400℃〜600℃の範囲(ただし、測定最高温度は590℃)で、0.47〜0.81が得られ、Mg2Siが0.27〜0.30であるので、1.7〜2.7倍の性能指数が得られていることが分かる。
【表2】
【0048】
また、実施例1と同様にして、本実施例2の試料を所定時間大気中500℃で保持した後に電気低効率及びゼーベック係数を測定し、その2つの数値からパワーファクターを求めた。各保持時間におけるパワーファクターの温度依存性を図14に示す。実施例1と同様に、高温大気下における熱電性能劣化の防止が期待できることが分かる。実施例1と同様に、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSiを製造した後、加熱処理することで、Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi のパワーファクターは増加する傾向を示した。このことから、AZ31BMg合金を用いる場合にも、半導体を製造した後に、加熱処理をすることで、性能が向上することが分かる。
【0049】
表2の成分の範囲にあるAZ31BのMg合金を用いると、製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいて、0.071≦y/x≦0.23、0.028≦z/x≦0.20とすることができる。AZ61Mg合金と、Si粉末により製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiにおいては、Al、Zn、Mnの総和の添加量は、1.72at%以上、2.79at%以下となる。
【0050】
また、特許文献2に開示されているMg66Al0.33Zn0.33Si33.33の無次元性能指数ZTは、400〜600℃の温度範囲において、Mg2Siより0.1程度大きいが、Mg2Siと大差はない。実施例1、2の化合物の無次元性能指数ZTは、Mg2SiやMg66Al0.33Zn0.33Si33.33に比べて、4〜3倍程大きいことが分かる。
【0051】
実施例1と実施例2の中から良好な結果を示した場合の無次元性能指数ZTを、Mg2Siおよび特許文献2に開示されているMg66Al0.33Zn0.33Si33.33の結果とともにまとめて図15に示す。実施例1と実施例2とから、無次元性能指数が、従来例よりも良くなる場合は、50wt%以上のAZ61Mg合金を用いた場合と、100wt%のAZ31BMg合金を用いた場合であることが、確認された。この結果、無次元性能指数が従来例よりも良くなる場合における製造されるMg2-x-y-zAlxZnyMnzSiのAl、Zn、Mnの総和の添加量は、1.72以上、4.91以下であり、0.029≦y/x≦0.23、0.010≦z/x≦0.20であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は熱電材料として極めて有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物から成る熱電材料。
【請求項2】
前記化学式において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075であることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項3】
前記Siと化合するMg2-x-y-zAlxZnyMnzは、Mg合金として付与されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱電材料。
【請求項4】
Mg2Si基化合物から成る熱電材料の製造方法において、
Mg合金と、Si粉末を、Mg合金とSiの原子比が2 : 1になるように混合し、
液相−固相反応法を用いて、不活性ガス雰囲気下でMg合金の融点以上の温度で、液相状態のMg合金と固相状態のSiの固液共存した状態で、Mg合金とSiとを合成反応させ、
反応の完了の後に、冷却して、多孔質のMg2Si基化合物を作製し、
前記Mg2Si基化合物を不活性ガス雰囲気下で粉砕して粉砕体を形成し、
その後に、前記粉砕体を真空又は不活性雰囲気下で加圧焼結することを特徴とする熱電材料の製造方法。
【請求項5】
製造されるMg2Si基化合物は、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下である化合物であることを特徴とする請求項4に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項6】
前記化学式において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075であることを特徴とする請求項5に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項7】
前記Mg合金は、Mg、Al、Zn、Mnを必須構成元素とするMg合金であることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項8】
前記Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金、又は、2.5wt%以上、3.5wt%以下のAl、0.6wt%以上、1.4wt%以下のZn、0.20wt%以上、1.0wt%以下のMnを、含むMg合金であることを特徴とする請求項4乃至請求項7の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項9】
前記Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金から成り、前記混合において、さらに、Mg粉末を混合して、前記Mg合金と前記Mg粉末との総和に対して、前記Mg合金を20wt%以上、100wt%未満、混合されることを特徴とする請求項4乃至請求項7の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項10】
前記Mg合金の他、そのMg合金とは成分比の異なるMg、Al、Zn、Mnを必須構成成分とする第2のMg合金、又は、Mg粉末を、前記混合において、加えられることを特徴とする請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項11】
前記混合において、前記Mg合金は、粉体、又は、切削体から成る多数の微小物体として、混合されることを特徴とする請求項4乃至請求項10の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項12】
前記加圧焼結の前に前記粉砕体を、ふるい分級して未反応のMg合金を除去することを特徴とする請求項4乃至請求項11の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項1】
化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下であるMg2Si基化合物から成る熱電材料。
【請求項2】
前記化学式において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075であることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項3】
前記Siと化合するMg2-x-y-zAlxZnyMnzは、Mg合金として付与されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱電材料。
【請求項4】
Mg2Si基化合物から成る熱電材料の製造方法において、
Mg合金と、Si粉末を、Mg合金とSiの原子比が2 : 1になるように混合し、
液相−固相反応法を用いて、不活性ガス雰囲気下でMg合金の融点以上の温度で、液相状態のMg合金と固相状態のSiの固液共存した状態で、Mg合金とSiとを合成反応させ、
反応の完了の後に、冷却して、多孔質のMg2Si基化合物を作製し、
前記Mg2Si基化合物を不活性ガス雰囲気下で粉砕して粉砕体を形成し、
その後に、前記粉砕体を真空又は不活性雰囲気下で加圧焼結することを特徴とする熱電材料の製造方法。
【請求項5】
製造されるMg2Si基化合物は、化学式Mg2-x-y-zAlxZnyMnzSi、ただし、x≠0、y≠0、z≠0、で表され、Al、Zn、Mnの総添加量が0.3at%以上、5at%以下である化合物であることを特徴とする請求項4に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項6】
前記化学式において、0.04≦y/x≦0.6及び0.013≦z/x≦0.075であることを特徴とする請求項5に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項7】
前記Mg合金は、Mg、Al、Zn、Mnを必須構成元素とするMg合金であることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項8】
前記Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金、又は、2.5wt%以上、3.5wt%以下のAl、0.6wt%以上、1.4wt%以下のZn、0.20wt%以上、1.0wt%以下のMnを、含むMg合金であることを特徴とする請求項4乃至請求項7の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項9】
前記Mg合金は、5.5wt%以上、7.2wt%以下のAl、0.5wt%以上、1.5wt%以下のZn、0.15wt%以上、0.4wt%以下のMnを、含むMg合金から成り、前記混合において、さらに、Mg粉末を混合して、前記Mg合金と前記Mg粉末との総和に対して、前記Mg合金を20wt%以上、100wt%未満、混合されることを特徴とする請求項4乃至請求項7の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項10】
前記Mg合金の他、そのMg合金とは成分比の異なるMg、Al、Zn、Mnを必須構成成分とする第2のMg合金、又は、Mg粉末を、前記混合において、加えられることを特徴とする請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項11】
前記混合において、前記Mg合金は、粉体、又は、切削体から成る多数の微小物体として、混合されることを特徴とする請求項4乃至請求項10の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【請求項12】
前記加圧焼結の前に前記粉砕体を、ふるい分級して未反応のMg合金を除去することを特徴とする請求項4乃至請求項11の何れか1項に記載の熱電材料の製造方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2012−104558(P2012−104558A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249891(P2010−249891)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
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