説明

N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステルの触媒的製造方法

環状N−ヒドロキシアルキル化ラクタム(L)[ここで、R1は、C1〜C5−アルキレンを表すか又は1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により及び/又は1つ又はそれ以上のシクロアルキル−、−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基により中断されたC2〜C20−アルキレンを表し、その際に前記の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよく、但し、R1は、炭素原子以外の原子がラクタム−カルボニル基に直接隣接してはならず、R2は、C1〜C20−アルキレン、C5〜C12−シクロアルキレン、C6〜C12−アリーレンを表すか又は1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により及び/又は1つ又はそれ以上のシクロアルキル−、−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基により中断されたC2〜C20−アルキレンを表し、その際に前記の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよく、又はR2−OHは式−[Xik−Hの基を表し、kは、1〜50の数を表し、かつXiは、各々i=1〜kについて互いに独立して、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH(NH2)−、−CH2−CH(NHCHO)−、−CH2−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から選択されていてよく、ここで、Phはフェニルを表し、かつVinはビニルを表す]を、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属アセチルアセトナートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒(K)の存在で、(メタ)アクリル酸(S)でエステル化するか又は少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル(D)とエステル交換反応することによる、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステル(F)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステルを触媒的に製造する方法及びそれらの使用に関する。
【0002】
本発明の範囲内での(メタ)アクリル酸はアクリル酸及び/又はメタクリル酸であると理解され、(メタ)アクリル酸エステルはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルであると理解される。
【0003】
(メタ)アクリル酸エステルの製造はたいてい、アルコールでの、(メタ)アクリル酸の触媒的エステル化又は他の(メタ)アクリル酸エステルのエステル交換反応により行われる。その際に、しばしば強酸又は強塩基が使用されるので、酸感受性又は塩基感受性の(メタ)アクリル酸エステルは、この経路でのエステル化又はエステル交換反応により通例意図的に製造されることができない。
【0004】
N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステルは知られている。
【0005】
国際公開(WO-A1)第03/006568号には、触媒としてp−トルエンスルホン酸を用いるヒドロキシエチルピロリドンでのアクリル酸の酸性エステル化が記載されている。前記収率はしかしながら単に71%に過ぎない。
【0006】
整理番号DE 10 2005 052 931.3号を有するこれまで未発行の独国特許出願からは、エステル化又はエステル交換反応が不均一系の無機塩の存在で実施されることによる、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステルの触媒的な製造方法が知られている。
【0007】
独国特許(DE)第1 595 233号明細書及び英国特許(GB)第930 668号明細書からは、アルカリ金属アルコラート及びアンモニウムアルコラート並びにチタンテトラアルコラートの存在での、N−ヒドロキシアルキル−ラクタムと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応が知られている。これらの方法にとって不利であるのは、生成物中に残留している痕跡量の触媒が、場合によりその後の重合に影響を及ぼし、故に費用をかけて、生成物から除去されなければならないことである。そのような除去は、たいてい、水での洗浄を用いて実施されるので、生成物が引き続き乾燥されなければならない。
【0008】
英国特許(GB)第930 668号明細書からは、同様に、N−ヒドロキシアルキル−ラクタムと(メタ)アクリル酸塩化物との反応による、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステルの製造が記載されている。しかしながら、前記の反応の際に(メタ)アクリル酸塩化物の使用は、塩形成をまねきかつその高い反応性のために非選択的反応、例えばマイケル付加をまねく。
【0009】
故に、本発明の課題は、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステルが、高い転化率及び高い純度で、単純な出発物質から製造可能である代替的な方法を提供することであった。前記合成は温和な条件下に経過すべきであるので、低い色数及び高い純度を有する生成物が生じる。特に、前記方法の実施は、工業的に実現できるべきである。
【0010】
前記課題は、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステル(F)の製造方法によって解決され、前記方法において環状N−ヒドロキシアルキル化ラクタム(L)
【化1】

[式中、
1は、C1〜C5−アルキレンを表すか又は1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により及び/又は1つ又はそれ以上のシクロアルキル−、−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基により中断されたC2〜C20−アルキレンを表し、その際に前記の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよく、
但し、R1は、炭素原子以外の原子がラクタム−カルボニル基に直接隣接してはならず、
2は、C1〜C20−アルキレン、C5〜C12−シクロアルキレン、C6〜C12−アリーレンを表すか又は1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により及び/又は1つ又はそれ以上のシクロアルキル−、−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基により中断されたC2〜C20−アルキレンを表し、その際に前記の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよく、又は
2−OHは式−[Xik−Hの基を表し、
kは、1〜50の数を表し、かつ
iは、各々i=1〜kについて互いに独立して、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH(NH2)−、
−CH2−CH(NHCHO)−、−CH2−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から選択されていてよく、ここで、Phはフェニルを表し、かつVinはビニルを表す]
を、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属アセチルアセトナートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒(K)の存在で、(メタ)アクリル酸(S)でエステル化するか又は少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル(D)とエステル交換反応する。
【0011】
以下に、出発物質である(メタ)アクリル酸(S)及び(メタ)アクリル酸エステル(D)も、合わせて(メタ)アクリル化合物(B)の概念に包摂される。
【0012】
本発明による方法を用いて、次の利点の少なくとも1つを有するN−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリラートの製造が可能である:
・高い収率、
・温和な反応条件、
・良好な色数及び
・反応混合物の精製のための洗浄工程が不要である。
【0013】
前記の定義において、以下の意味を有する
場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されたC1〜C20−アルキレン、例えばメチレン、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキシレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−エチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン、
場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されたC5〜C12−シクロアルキレン、例えばシクロプロピレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロオクチレン、シクロドデシレン、
場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換された、1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により及び/又は1つ又はそれ以上のシクロアルキル−、−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O基により中断されたC1〜C20−アルキレン、例えば1−オキサ−1,3−プロピレン、1,4−ジオキサ−1,6−ヘキシレン、1,4,7−トリオキサ−1,9−ノニレン、1−オキサ−1,4−ブチレン、1,5−ジオキサ−1,8−オクチレン、1−オキサ−1,5−ペンチレン、1−オキサ−1,7−ヘプチレン、1,6−ジオキサ−1,10−デシレン、1−オキサ−3−メチル−1,3−プロピレン、1−オキサ−3−メチル−1,4−ブチレン、1−オキサ−3,3−ジメチル−1,4−ブチレン、1−オキサ−3,3−ジメチル−1,5−ペンチレン、1,4−ジオキサ−3,6−ジメチル−1,6−ヘキシレン、1−オキサ−2−メチル−1,3−プロピレン、1,4−ジオキサ−2,5−ジメチル−1,6−ヘキシレン、1−オキサ−1,5−ペント−3−エニレン、1−オキサ−1,5−ペント−3−イニレン、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキシレン、1,2−又は1,3−シクロペンチレン、1,2−、1,3−又は1,4−フェニレン、4,4′−ビフェニレン、1,4−ジアザ−1,4−ブチレン、1−アザ−1,3−プロピレン、1,4,7−トリアザ−1,7−ヘプチレン、1,4−ジアザ−1,6−ヘキシレン、1,4−ジアザ−7−オキサ−1,7−ヘプチレン、4,7−ジアザ−1−オキサ−1,7−ヘプチレン、4−アザ−1−オキサ−1,6−ヘキシレン、1−アザ−4−オキサ−1,4−ブチレン、1−アザ−1,3−プロピレン、4−アザ−1−オキサ−1,4−ブチレン、4−アザ−1,7−ジオキサ−1,7−ヘプチレン、4−アザ−1−オキサ−4−メチル−1,6−ヘキシレン、4−アザ−1,7−ジオキサ−4−メチル−1,7−ヘプチレン、4−アザ−1,7−ジオキサ−4−(2′−ヒドロキシエチル)−1,7−ヘプチレン、4−アザ−1−オキサ−(2′−ヒドロキシエチル)−1,6−ヘキシレン又は1,4−ピペラジニレン及び
場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されたC6〜C12−アリーレン、例えば1,2−、1,3−又は1,4−フェニレン、4,4′−ビフェニレン、トルイレン又はキシリレン。
【0014】
1の例は、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、1−ヒドロキシメチル−1,2−エチレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−エチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン及び2,2−ジメチル−1,4−ブチレンであり、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン及び1,3−プロピレンが好ましく、1,3−プロピレンが特に好ましい。
【0015】
2の例は、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、1−ヒドロキシ−メチル−1,2−エチレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキシレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−エチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン及び2,2−ジメチル−1,4−ブチレン、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン,1,3−シクロヘキシレン、o−フェニレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン、3,6−ジオキサ−1,8−オクチレン及び3,6,8−トリオキサ−1,8,11−ウンデシレンであり、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレンが好ましく、1,2−エチレン及び1,2−プロピレンが特に好ましく、かつ1,2−エチレンが極めて特に好ましい。
【0016】
好ましい個々のもの(L)は、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−ピロリドン、N−(2′−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−カプロラクタム、N−(2−ヒドロキシプロピル)−カプロラクタム並びにN−(2′−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−カプロラクタムであり、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン及びN−(2−ヒドロキシプロピル)−ピロリドンが好ましく、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドンが特に好ましい。
【0017】
N−ヒドロキシアルキル化ラクタム(L)が光学活性である場合には、これらは好ましくはラセミで又はジアステレオマー混合物として使用されるが、しかしながら、これらを純粋な鏡像体もしくはジアステレオマーとして又は鏡像体混合物として使用することも可能である。
【0018】
反応工程において、(メタ)アクリル酸(S)でのエステル化又は好ましくは少なくとも1つの、好ましくはまさに1つの(メタ)アクリル酸エステル(D)とのエステル交換反応は、本発明によれば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属アセチルアセトナートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒(K)の存在で行われる。
【0019】
エステル化のためには、(メタ)アクリル酸(S)が、又はエステル交換反応のためには、飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(D)、好ましくは(メタ)アクリル酸の飽和C1〜C10−アルキルエステル又はC3〜C12−シクロアルキルエステル、特に好ましくは(メタ)アクリル酸の飽和C1〜C4−アルキルエステルが使用されることができる。
【0020】
飽和は、本明細書の範囲内で、(もちろん(メタ)アクリル単位中のC=C−二重結合の他に)C−C−多重結合を有しない化合物を意味する。
【0021】
化合物(D)の例は、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸n−オクチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリラート及び1,2−エチレングリコールモノ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート及び1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート及び1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート及びペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラートである。
【0022】
(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが特に好ましく、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル及び(メタ)アクリル酸n−ブチルエステルが極めて特に好ましく、特に(メタ)アクリル酸メチルエステル及び(メタ)アクリル酸エチルエステルである、かつ殊に(メタ)アクリル酸メチルエステルである。
【0023】
本発明により使用可能な触媒(K)は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属アセチルアセトナートからなる群から選択されている。
【0024】
これらの触媒は、均一系並びに不均一系であってよい。不均一系触媒は、本明細書の範囲内で、本発明によれば、反応媒体中に25℃で1g/l以下、好ましくは0.5g/l以下及び特に好ましくは0.25g/l以下の溶解度を有するそのような触媒である。
【0025】
本明細書の範囲内のアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物は、7.0以下、好ましくは6.0以下及び特に好ましくは4.0以下のpKB値を有する塩基性化合物であると理解される。
【0026】
前記アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物は、固形で並びに溶液の形で、例えば水溶液として使用されることができる。好ましくは、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物は固形で、本発明による方法に添加される。
【0027】
適したアルカリ金属水酸化物は例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。適したアルカリ土類金属水酸化物は例えば水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムである。アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。
【0028】
同様に適した触媒(K)は金属アセチルアセトナートである。金属アセチルアセトナートは、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)のエノラートアニオンを有する金属キレートであり、かつ一般式Mn(C572nもしくはMn(acac)nを有する。金属Mとして、多数の金属、特に遷移金属が考慮に値する。遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアルミニウムの群から選択される金属Mが好ましい。適したアルカリ金属及びアルカリ土類金属は例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムである。好ましくはアルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムが使用される。遷移金属として、好ましくはチタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル及び銅が使用される。この群の好ましい代表例は、リチウムアセチルアセトナート(Li(acac))、ナトリウムアセチルアセトナート(Na(acac))及びカリウムアセチルアセトナート(K(acac))並びにカルシウムアセチルアセトナート(Ca(acac)2)である。
【0029】
触媒(K)により触媒されたエステル化又はエステル交換反応は一般的に30〜140℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜90℃及び極めて特に好ましくは50〜80℃で行われる。
【0030】
本発明による方法の好ましい一実施態様において、前記反応は、エステル化の際に遊離した水又はエステル交換反応の際に生じた低沸点アルコールが、場合によりアゼオトロープとして、留去されるべきである場合に、例えば200hPaないし常圧、好ましくは200〜600hPa及び特に好ましくは300〜500hPaの弱い真空下で実施されることができる。
【0031】
(メタ)アクリル酸(S)又は(メタ)アクリル酸エステル(D)とN−ヒドロキシアルキル化ラクタム(L)とのモル比は、1つの触媒(K)により触媒されたエステル化又はエステル交換反応の場合に、通例1〜6:1mol/mol、好ましくは1〜5:1mol/mol及び特に好ましくは1〜4:1mol/molである。
【0032】
触媒(K)により触媒されたエステル化又はエステル交換反応の際の反応時間は、通例、45min〜18時間、好ましくは2時間〜12時間及び特に好ましくは3〜10時間である。
【0033】
反応媒体中の、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属アセチルアセトナートの群から選択される触媒(K)の含量は通例、使用されるN−ヒドロキシアルキル化ラクタム(L)の総和を基準として、約0.01〜5mol%、好ましくは0.1〜3mol%及び特に好ましくは0.3〜2mol%の範囲内である。
【0034】
前記エステル化又はエステル交換反応の際に、(以下に記載されるような)重合防止剤は必然的に必要である。
【0035】
触媒(K)により触媒された反応の間の酸素含有ガス(下記参照)の存在が好ましい。
【0036】
本発明による方法の好ましい一実施態様において、故に、前記反応の間に、連続的に酸素含有ガスが反応混合物中へ導通される。例えば蒸留又は精留による、粗生成物の別の後処理の場合に、同様に連続的な酸素導通が好ましい。
【0037】
本発明によるエステル化又はエステル交換反応の際に、500APHA未満、好ましくは200APHA未満及び特に好ましくは150APHA未満の色数(DIN ISO 6271による)を有する生成物が通例得られる。
【0038】
前記反応は、有機溶剤又はそれらの混合物中で又は溶剤を添加せずに進行することができる。前記バッチは通例、大体において無水であり、すなわち含水量は、好ましくは10質量%未満、特に好ましくは5質量%未満、殊に好ましくは1質量%未満及び極めて特に好ましくは0.5質量%未満である。通例、含水量は100〜5000ppm、好ましくは500〜1000ppmである。さらに、前記バッチは、第一級及び第二級アルコールが大体において不含であり、すなわちアルコール含量10質量%未満、好ましくは5質量%、特に好ましくは1質量%未満及び極めて特に好ましくは0.5質量%未満である。
【0039】
適した有機溶剤は、これらの目的に知られたそのような溶剤、例えば第三級モノオール、例えばC3〜C6−アルコール、好ましくはt−ブタノール、t−アミルアルコール、ピリジン、ポリ−C1〜C4−アルキレングリコールジ−C1〜C4−アルキルエーテル、好ましくはポリエチレングリコールジ−C1〜C4−アルキルエーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル500、C1〜C4−アルキレンカーボネート、特にプロピレンカーボネート、酢酸C3〜C6−アルキルエステル、特に酢酸t−ブチルエステル、THF、トルエン、1,3−ジオキソラン、アセトン、イソブチル−メチルケトン、エチルメチルケトン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、ヘキサン、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、アセトニトリル、並びにそれらの一相又は多相の混合物である。
【0040】
エステル交換反応の特に好ましい一実施態様において、前記反応は、出発物質として使用される(メタ)アクリル酸エステル(D)中で実施される。生成物(F)が前記反応の終了後に、出発物質として使用される(メタ)アクリル酸エステル(D)中の約10〜80質量%溶液として、特に20〜50質量%溶液として、生じるような前記反応の実施が極めて特に好ましい。
【0041】
前記出発物質は、反応媒体中に溶解されて、固体として懸濁されて又は乳濁液中で存在する。本発明による方法の好ましい一実施態様において、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属アセチルアセトナートの群から選択されている触媒(K)は、溶剤の不在で及び好ましくは固体として使用される。
【0042】
前記反応は、連続的に、例えば管形反応器中で又は撹拌反応器カスケード中で、又は不連続に行われることができる。本発明による方法の好ましい一実施態様において、しかしながら全ての出発物質、並びに安定剤及び触媒(K)は、完全に前記反応の最初に添加され、すなわち連続的に、前記反応過程の間に添加されない。
【0043】
前記反応は、そのような反応に適した全ての反応器中で実施されることができる。そのような反応器は当業者に知られている。好ましくは、前記反応は撹拌釜反応器又は固定床反応器中で行われる。
【0044】
前記反応バッチの混合のためには、任意の方法が使用されることができる。特殊な撹拌装置は必要ない。前記混合は、例えば、ガス、好ましくは酸素含有ガス(下記参照)を供給することにより行われることができる。前記反応媒体は、一相又は多相であってよく、かつ前記反応物は、その中に溶解されるか、懸濁されるか又は乳化される。前記温度は、前記反応の間に所望の値に調節され、かつ、所望の場合には、前記反応過程の間に高められる又は低下されることができる。
【0045】
エステル化の場合の水又はエステル交換反応の際に(メタ)アクリル酸エステル(D)から遊離されるアルコールの除去は、それ自体として知られた方法で、例えば真空、アゼオトロープ除去、ストリッピング、吸収、浸透気化及び膜を経ての拡散又は抽出により、連続的に又は徐々に行われる。
【0046】
有利に、前記エステル化又はエステル交換反応は、酸素含有ガス、好ましくは空気又は空気−窒素混合物の存在で、実施される。
【0047】
このストリッピングは、例えば、反応混合物への酸素含有ガス、好ましくは空気又は空気−窒素混合物を導通させることにより、場合により蒸留に追加して、行われることができる。既に前記したように、本発明による方法の好ましい一実施態様において、前記反応の間に、連続的に酸素含有ガスが反応混合物中へ導通される。
【0048】
吸収のために、好ましくはモレキュラーシーブ又はゼオライト(例えば約3〜10Åの範囲内の孔径)、蒸留による又は適した半透膜を用いる分離が適している。
【0049】
しかし、(メタ)アクリル酸エステル(D)及びしばしばアゼオトロープを形成するこの母体となるアルコールからなる分離された混合物を直接、(メタ)アクリル酸エステル(D)を製造するための設備中へ供給し、そこで(メタ)アクリル酸とのエステル化において再利用することも可能である。
【0050】
前記反応の終了後に、エステル化又はエステル交換反応から得られた反応混合物をさらに精製することなく使用することができ、又はこれを必要な場合には別の工程において精製することができる。
【0051】
通例、前記精製工程において、使用される触媒(K)のみが、反応混合物から分離され、かつ反応生成物は、場合により使用される有機溶剤から、分離される。
【0052】
触媒(K)の分離は通例、ろ過、電気ろ過、吸収、遠心分離又はデカンテーションにより又は蒸留又は精留により行われる。分離された触媒(K)は、別の反応のために引き続き使用されることができる。
【0053】
有機溶剤の分離は通例、蒸留、精留によるか又は固体の反応生成物の場合にろ過により行われる。
【0054】
好ましくは、前記精製工程において、しかしながら触媒(K)及び場合により使用される溶剤のみが分離される。
【0055】
場合により精製された反応混合物は、好ましくは蒸留にかけられ、その中でN−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステル(F)が、未反応(メタ)アクリル酸(S)又は未反応(メタ)アクリル酸エステル(D)並びに場合により形成された副生物から蒸留により分離される。既に前記したように、蒸留又は精留による粗生成物の後処理の際に、同様に連続的な酸素導通が好ましい。
【0056】
前記蒸留ユニットは、たいてい、循環蒸発器及び凝縮器を備えた常用の構造形式の精留塔である。前記供給は、好ましくは底部領域内で行われ、底部温度は、ここでは例えば130〜160℃、好ましくは150〜160℃であり、頂部温度は好ましくは140〜145℃であり、かつ頂部圧力は3〜20mbar、好ましくは3〜5mbarである。もちろん、当業者は、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムのそれぞれの(メタ)アクリル酸エステル(F)が蒸留により精製されることができる他の温度範囲及び圧力範囲を見つけ出すこともできる。その場合に、所望の生成物ができるだけ分解反応に晒されていない条件での出発物質及び副生物からの所望の生成物の分離が、本質的である。
【0057】
前記蒸留ユニットは、通例5〜50の理論段を有する。
【0058】
前記蒸留ユニットは、それ自体として知られた構造形式のものであり、かつ常用の内部構造物を有する。塔内部構造物として、原則的に全ての普通の内部構造物、例えばトレイ、規則充填物及び/又は不規則充填物が考慮に値する。トレイの中ではバブルキャップトレイ、シーブトレイ、バルブトレイ、Thormannトレイ及び/又はデュアルフロートレイが好ましく、不規則充填物の中では、リング、らせん(Wendeln)、サドル体、ラシヒリング、Intosリング又はポールリング、バレル(Barrel-)サドル又はIntalox-サドル、Top-Pak等又は編込み物(Geflechten)を有するそのようなものが好ましい。
【0059】
好ましくは、所望の生成物は不連続に蒸留され、その際にまず最初に、低沸成分、たいてい溶剤又は未反応(メタ)アクリル酸(S)又は(メタ)アクリル酸エステル(D)が反応混合物から除去される。これらの低沸成分の分離後に、蒸留温度は高められる及び/又は真空へと低下され、かつ所望の生成物が留去される。
【0060】
残留している蒸留残留物はたいてい廃棄される。
【0061】
本発明によるエステル化又はエステル交換反応の際の反応条件は温和である。低い温度及びその他の温和な条件に基づいて、副生物の形成は前記反応において回避され、これらの副生物はさもなければ、例えば強酸性又は強塩基性の触媒に由来しうるか又は使用される(メタ)アクリル化合物(B)の望ましくないラジカル重合により生じるかもしれず、この形成はそれとは別に安定剤の添加によってのみ防止されることができる。
【0062】
本発明による反応操作の場合に、反応混合物に、いずれにせよ(メタ)アクリル化合物(B)中に含まれている貯蔵安定剤だけでなく、追加的な安定剤、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、フェノール類、例えば2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチル−フェノール又はN−オキシル類、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル又はBASF AktiengesellschaftのUvinul(登録商標) 4040P又はアミン、例えばBASF AktiengesellschaftのKerobit(登録商標) BPD(N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン)が、例えば50〜2000ppmの量で添加されることができる。
【0063】
本発明により使用される触媒(K)は、副反応する傾向を僅かに示すに過ぎない。
【0064】
さらに、前記反応は、本発明による反応条件下に極めて選択的であり、通例、副生物10%未満、好ましくは5%未満が見出される(転化率を基準とする)。
【0065】
本発明により製造されるN−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステル(F)は、例えば、分散液、例えばアクリル分散液の製造におけるモノマー又はコモノマーとして、放射線硬化可能なコーティング組成物における又は塗料における、好ましくは屋外塗料におけるような、反応性希釈剤として、並びに製紙分野における用途のための分散液において、使用される。
【0066】
次の実施例は、本発明の性質を説明するが、しかしこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
"部"は、この明細書において、他に記載されていない限り、"質量部"であると理解される。
【0068】
例1
触媒として水酸化リチウムを用い、その後の精製蒸留を伴うN−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステルの製造
【化2】

【0069】
エステル交換反応を、Oldershaw塔及び液体分配器を備えた750mLミニプラント反応器中で行った。還流比は、25:1(還流:流出)であり、撹拌速度(アンカー撹拌機)は400rpmであり、かつ空気導入は1.5L/hであった。
【0070】
この装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル(350ppm)280mg、フェノチアジン(50ppm)40mg、メタクリル酸メチル(MMA)600g(6.0mol)及びヒドロキシエチルピロリドン194g(1.5mol)を装入し、撹拌した。引き続き、固体水酸化リチウム0.72g(30mmol;ヒドロキシエチルピロリドンを基準として2.0mol%)を添加し、真空に調節し(300mbar)、前記懸濁液を加熱した(ジャケット温度はサーモスタットを用いて120℃に調節した)。約10分後に懸濁液の沸騰が始まり、この時点を開始点として選択した(t=0min)。前記反応の間に、連続的に留出物(MMA及びメタノールからなるアゼオトロープ)を除去した。300min後に前記反応は終了し、かつ真空を解除した。前記懸濁液を冷却し、引き続き加圧吸引ろ過器によりろ過した。粗生成物494gが得られた。
【0071】
引き続き、粗生成物247gにKerobit(登録商標) BPD(BASF Aktiengesellschaft、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン)200ppmを安定化のために添加した。前記混合物を真空下に蒸留し、その際にまず最初に過剰のメタクリル酸メチルが除去され、引き続き、有用生成物が得られた(1.3mbarで131〜132℃)。前記蒸留の間に、酸素を、蒸留すべき混合物中へ導通した。
【0072】
次の組成(GC分析)を有する生成物133.5g(収率90%)が得られた:N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステル97.8%、ヒドロキシエチルピロリドン0.6%、メタクリル酸メチル0.2%及びその他の副生物1.4%。APHA色数は67であった。底部に残留物6gが残留した。
【0073】
例2
触媒として水酸化ナトリウムを用い、その後の精製蒸留を伴うN−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステルの製造
例1に類似して再作業したが、しかしながら水酸化リチウムの代わりに、固体水酸化ナトリウム1.2g(30mmol;ヒドロキシエチルイミダゾールを基準として2.0mol%)を触媒として使用した。前記反応は120min後に終了し、かつ真空を解除した。前記懸濁液を冷却し、引き続き加圧吸引ろ過器によりろ過した。粗生成物644gが得られた。
【0074】
引き続き、粗生成物にKerobit(登録商標) BPD(BASF Aktiengesellschaft、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン)200ppmを安定化のために添加した。前記混合物を真空下に蒸留し、その際にまず最初に過剰のメタクリル酸メチルが除去され、引き続き、有用生成物が得られた(2.8mbarで142〜144℃)。前記蒸留の間に、酸素を、蒸留すべき混合物中へ導通した。
【0075】
次の組成(GC分析)を有する生成物258g(収率87%)が得られた:N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステル95.5%、ヒドロキシエチルピロリドン0.6%、メタクリル酸メチル0.1%及びその他の副生物1.4%。APHA色数は50であった。底部に残留物14gが残留した。
【0076】
例3
触媒として水酸化カリウムを用い、その後の精製蒸留を伴うN−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステルの製造
例1に類似して再作業したが、しかしながら水酸化リチウムの代わりに、固体水酸化カリウム1.68g(30mmol;ヒドロキシエチルイミダゾールを基準として2.0mol%)を触媒として使用した。前記反応は120min後に終了し、かつ真空を解除した。前記懸濁液を冷却し、引き続き加圧吸引ろ過器によりろ過した。粗生成物636gが得られた。
【0077】
引き続き、粗生成物にKerobit(登録商標) BPD(BASF Aktiengesellschaft、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン)200ppmを安定化のために添加した。前記混合物を真空下に蒸留し、その際にまず最初に過剰のメタクリル酸メチルが除去され、引き続き、有用生成物が得られた(5.5mbarで156〜158℃)。前記蒸留の間に、酸素を、蒸留すべき混合物中へ導通した。
【0078】
次の組成(GC分析)を有する生成物258g(収率79%)が得られた:N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステル98.5%、ヒドロキシエチルピロリドン0.5%及びその他の副生物1.4%。メタクリル酸メチルはもはや含まれていなかった。APHA色数は58であった。底部に残留物45gが残留した。
【0079】
例4
触媒として水酸化リチウムを用い、安定剤としてのフェノチアジンを用いず、かつその後の精製蒸留をしない、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステルの製造
例1に記載された装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル(350ppm)280mg、メタクリル酸メチル(MMA)600g(6.0mol)及びヒドロキシエチルピロリドン194g(1.5mol)を装入し、撹拌した。引き続き、固体水酸化リチウム1.08g(45mmol;ヒドロキシエチルピロリドンを基準として3.0mol%)を添加し、真空に調節し(300mbar)、前記懸濁液を加熱した(ジャケット温度はサーモスタットを用いて120℃に調節した)。約10分後に懸濁液の沸騰が始まり、この時点を開始点として選択した(t=0min)。前記反応の間に、連続的に留出物(MMA及びメタノールからなるアゼオトロープ)を除去した。180min後に、底部の温度を60℃に調節し、過剰のMMAを真空中で除去した。引き続き、真空を解除し、前記懸濁液を冷却し、引き続き加圧吸引ろ過器によりろ過した。次の組成(GC分析)を有する粗生成物287g(収率97%)が帯淡黄色の液体として得られた:N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステル96.5%、ヒドロキシエチルピロリドン0.4%、メタクリル酸メチル0.7%及びその他の副生物2.3%。APHA色数は125であった。
【0080】
例5
触媒として水酸化カリウムを用い、安定剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル及びフェノチアジンを用いず、かつその後の精製蒸留をしない、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステルの製造
例1に記載された装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル15ppmで安定化されているメタクリル酸メチル(MMA)308g(3.1mol)、及びヒドロキシエチルピロリドン(APHA色数118)100g(0.77mol)を装入し、かつ撹拌した。引き続き、固体水酸化カリウム0.86g(15mmol;ヒドロキシエチルピロリドンを基準として2.0mol%)を添加し、真空に調節し(300mbar)、前記懸濁液を加熱した(ジャケット温度はサーモスタットを用いて120℃に調節した)。約10分後に懸濁液の沸騰が始まり、この時点を開始点として選択した(t=0min)。前記反応の間に、連続的に留出物(MMA及びメタノールからなるアゼオトロープ)を除去した。150min後に、底部の温度を60℃に調節し、過剰のMMAを真空中で除去した。引き続き、真空を解除し、前記懸濁液を冷却し、引き続き加圧吸引ろ過器によりろ過した。次の組成(GC分析)を有する粗生成物143g(収率94%)が帯淡黄色の液体として得られた:N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステル95.3%、ヒドロキシエチルピロリドン1.1%、メタクリル酸メチル1.7%及びその他の副生物2.0%。APHA色数は92であった。
【0081】
例6
触媒としてナトリウムアセチルアセトナートを用い、その後の精製蒸留を伴うN−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステルの製造
例1に類似して再作業したが、しかしながら水酸化リチウムの代わりに、固体ナトリウムアセチルアセトナート4.2g(30mmol;ヒドロキシエチルイミダゾールを基準として2.0mol%)を触媒として使用した。前記反応は180min後に終了し、かつ真空を解除した。前記懸濁液を冷却し、引き続き加圧吸引ろ過器によりろ過した。粗生成物457gが得られた。
【0082】
引き続き、粗生成物448gにKerobit(登録商標) BPD(BASF Aktiengesellschaft、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン)200ppmを安定化のために添加した。前記混合物を真空下に蒸留し、その際にまず最初に過剰のメタクリル酸メチルが除去され、引き続き、有用生成物が2つの留分で得られた(4mbarで148〜149℃)。前記蒸留の間に、酸素を、蒸留すべき混合物中へ導通した。底部に残留物39gが残留した。
【0083】
次の組成(GC分析)及び色数を有する生成物229g(収率79%)が得られた:
【表1】

1) N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン−メタクリル酸エステル
2) ヒドロキシエチルピロリドン
3) その他の副生物の総和

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステル(F)の製造方法であって、環状N−ヒドロキシアルキル化ラクタム(L)
【化1】

[式中、
1は、C1〜C5−アルキレンを表すか又は1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により及び/又は1つ又はそれ以上のシクロアルキル−、−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基により中断されたC2〜C20−アルキレンを表し、その際に前記の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよく、
但し、R1は、炭素原子以外の原子がラクタム−カルボニル基に直接隣接してはならず、
2は、C1〜C20−アルキレン、C5〜C12−シクロアルキレン、C6〜C12−アリーレンを表すか又は1つ又はそれ以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1つ又はそれ以上の置換又は非置換のイミノ基により及び/又は1つ又はそれ以上のシクロアルキル−、−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基により中断されたC2〜C20−アルキレンを表し、その際に前記の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよく、又は
2−OHは式−[Xik−Hの基を表し、
kは、1〜50の数を表し、かつ
iは、各々i=1〜kについて互いに独立して、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH(NH2)−、−CH2−CH(NHCHO)−、−CH2−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から選択されていてよく、ここで、Phはフェニルを表し、かつVinはビニルを表す]
を、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属アセチルアセトナートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒(K)の存在で、(メタ)アクリル酸(S)でエステル化するか又は少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル(D)とエステル交換反応する
ことを特徴とする、N−ヒドロキシアルキル化ラクタムの(メタ)アクリル酸エステル(F)の製造方法。
【請求項2】
アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択されており、かつアルカリ土類金属水酸化物が水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒(K)として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物を使用する、請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
触媒(K)として、一般式Mn(C572nもしくはMn(acac)nの金属アセチルアセトナートを使用し、ここで、Mは、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアルミニウムの群から選択されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
金属アセチルアセトナートとして、リチウムアセチルアセトナート(Li(acac))、ナトリウムアセチルアセトナート(Na(acac))、カリウムアセチルアセトナート(K(acac))又はカルシウムアセチルアセトナート(Ca(acac)2)を使用する、請求項1又は4記載の方法。
【請求項6】
1が、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、1−ヒドロキシメチル−1,2−エチレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−エチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン及び2,2−ジメチル−1,4−ブチレンからなる群から選択されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
2が、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、1−ヒドロキシ−メチル−1,2−エチレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキシレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−エチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン及び2,2−ジメチル−1,4−ブチレン、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン,1,3−シクロヘキシレン、o−フェニレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン、3,6−ジオキサ−1,8−オクチレン及び3,6,8−トリオキサ−1,8,11−ウンデシレンからなる群から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(L)が、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−ピロリドン、N−(2′−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−カプロラクタム、N−(2−ヒドロキシプロピル)−カプロラクタム及びN−(2′−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−カプロラクタムからなる群から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
反応の間に連続的に酸素含有ガスを反応混合物中へ導通する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により得ることができる、N−ヒドロキシアルキル化ラクタム(L)の(メタ)アクリル酸エステル(F)。
【請求項11】
分散液、例えばアクリル分散液の製造におけるモノマー又はコモノマーとして、放射線硬化可能なコーティング組成物における又は塗料におけるような、反応性希釈剤として、並びに製紙分野における用途のための分散液における、請求項10記載の(メタ)アクリル酸エステル(F)の使用。

【公表番号】特表2010−518178(P2010−518178A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549816(P2009−549816)
【出願日】平成20年2月11日(2008.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051586
【国際公開番号】WO2008/098887
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】