説明

N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−[[6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−メチル−4−ピリミジニル]アミノ]−5−チアゾールカルボサキミドを含む医薬組成物

本発明は医薬品有効成分としてダサチニブを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品有効成分としてN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−[[6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−メチル−4−ピリミジニル]アミノ]−5−チアゾールカルボサキミドを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−[[6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−メチル−4−ピリミジニル]アミノ]−5−チアゾールカルボサキミドを含む医薬組成物および該組成物を調製する方法に関する。
【0003】
化合物N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−[[6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−メチル−4−ピリミジニル]アミノ]−5−チアゾールカルボサキミド(国際一般名:ダサチニブ)は、慢性骨髄性白血病(CML)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)等の疾患を治療するために用いられる小分子チロシンキナーゼ阻害剤である。その活性は、Bcr−Abl、Src、cKitおよび血小板由来増殖因子受容体β(PDGFRβ)などの多様な受容体型チロシンキナーゼならびに細胞チロシンキナーゼを標的(ターゲット)にして細胞シグナル伝達を抑制することに基づいている。これらのキナーゼは、下流にある多くのエフェクターを活性化し、多くの発生的細胞増殖・分化経路を媒介する。そのため、これらの標的を同時に阻害することで、イマチニブ耐性患者に対しても、悪性血球数の正常化または少なくとも低減を達成できる。
【0004】
ダサチニブ、ならびに免疫学的疾患および腫瘍性疾患に対するダサチニブの薬効は、国際公開第00/62778号パンフレットに記載されている。さらに、ダサチニブとその塩類の医学用途は、特に、国際公開第2006/135790号パンフレットおよび国際公開第2007/047893号パンフレットによって知られている。
【0005】
国際公開第00/62778号パンフレットには、ダサチニブを調製する方法が開示されている。この方法や他の公知の製造方法(たとえば国際公開第2005/077945号パンフレット)によれば、ダサチニブは固体として得られる。
【0006】
国際公開第2007/035874号パンフレットには、pH調整剤とダサチニブとを組み合わせた、経口投与用医薬製剤が記載されている。
【0007】
国際公開第2006/121742号パンフレットには、経口投与を意図した、ダサチニブを含む従来の医薬製剤が開示されている。その実施例によれば、ダサチニブの錠剤は湿式造粒法によって得られる。
【0008】
一般に、ダサチニブは、1回70mgの用量で1日2回経口投与されるが、個体の耐性および安全性により、必要に応じて変更しなければならない。そのため、用量に十分な柔軟性を持たせる目的で、一般に20mg、50mgおよび70mgのダサチニブを含む剤形がそれぞれ用意されている。ダサチニブの結晶性一水和物を含むフィルムコート錠は、スプリセルという商標名(ブリストルマイヤーズ株式会社)で販売されている。このダサチニブの結晶性一水和物は国際公開第2005/077945号パンフレットに記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、公知のダサチニブ製剤よりも容易かつ経済的に調製することのできる、ダサチニブを含む錠剤形態の医薬組成物を提供することである。同時に、この新しい組成物は、医薬品有効成分の溶解度および生物学的利用能が良好であることを必要とする。さらに、この組成物は、貯蔵安定性および均質性を保持しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、ダサチニブが国際公開第2005/077945号パンフレットに記載されているような非塩化無水物形態、J.Med.Chem.2004,47,6658−6661に記載されているような塩酸塩形態、または米国特許出願第2006/004067号明細書(実施例10)で開示されているようなヘミエタノール溶媒和物の形態で使用される場合、ダサチニブを含む錠剤の調製に従来必要であった湿式造粒法を回避できることが発見された。これら特定形態のダサチニブを使用すれば、直接圧縮によって錠剤を調製することができる。
【0011】
いかなる理論に従うものでもないが、上記した特定形態のダサチニブは、粒子が特殊な表面特性(たとえば、結晶形、表面の相対寸法、アスペクト比等)を示すことにより、直接圧縮法に適したものになると考えられる。これとは対照的に、従来の錠剤に使用されたダサチニブ水和物は、直接圧縮法には不適である。
【0012】
したがって、本発明は、医薬品有効成分としてダサチニブを含む錠剤形態の医薬組成物であって、該医薬品有効成分が非塩化無水物形態、塩酸塩形態、またはヘミエタノール溶媒和物の形態で存在すること、および直接圧縮によって錠剤を得ることができることを特徴とする医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
各図は、米国薬局方パドル法II型装置を用い、pH4.0の緩衝酢酸溶液900ml中、37℃、75rpmで実施した溶出試験から得られた溶出プロファイルである。本発明による錠剤は、基準製品であるスプリセル(登録商標)よりも溶出が速い。
【0014】
【図1】実施例1で得られた医薬組成物(三角)の溶出プロファイルをスプリセル錠(登録商標)20mg(菱形)と比較して示した図である。
【図2】実施例2で得られた医薬組成物(三角)の溶出プロファイルをスプリセル錠(登録商標)20mg(菱形)と比較して示した図である。
【図3】実施例3で得られた医薬組成物(三角)の溶出プロファイルをスプリセル錠(登録商標)20mg(菱形)と比較して示した図である。
【図4】実施例4で得られた医薬組成物(三角)の溶出プロファイルをスプリセル錠(登録商標)20mg(菱形)と比較して示した図である。
【図5】実施例1で得られた医薬組成物の、安定性試験開始時、4週間保管後、および12週間保管後の溶出プロファイル(上の3つのグラフ)をスプリセル錠(登録商標)20mg(一番下のグラフ)と比較して示した図である。
【図6】実施例2で得られた医薬組成物の、安定性試験開始時、4週間保管後、および12週間保管後の溶出プロファイル(上の3つのグラフ)をスプリセル錠(登録商標)20mg(一番下のグラフ)と比較して示した図である。
【図7】実施例3で得られた医薬組成物の、安定性試験開始時、4週間保管後、および12週間保管後の溶出プロファイル(上の3つのグラフ)をスプリセル錠(登録商標)20mg(一番下のグラフ)と比較して示した図である。
【図8】実施例4で得られた医薬組成物の、安定性試験開始時、4週間保管後、および12週間保管後の溶出プロファイル(上の3つのグラフ)をスプリセル錠(登録商標)20mg(一番下のグラフ)と比較して示した図である。
【図9】実施例5で得られた医薬組成物の、安定性試験開始時、4週間保管後、および12週間保管後の溶出プロファイル(上の3つのグラフ)をスプリセル錠(登録商標)20mg(一番下のグラフ)と比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−[[6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−メチル−4−ピリミジニル]アミノ]−5−チアゾールカルボサキミド(ダサチニブ)は以下の化学構造を有する。
【化1】

【0016】
ダサチニブおよびその塩類は、当技術分野で公知の技術を使用して容易に合成することができる。結晶性ダサチニブ無水物の合成は、国際公開第2005/077945号パンフレットに開示されている。本発明に使用される結晶性塩酸塩は、J.Med.Chem.2004,47,6658−6661に開示されている手順に従って調製できる。ダサチニブのヘミエタノール溶媒和物の合成は、米国特許出願第2006/004067号明細書に開示されている。
【0017】
「結晶(性)」という語は、医薬品有効成分の任意の非無定形形態を指す。「無定形形態」という語は、結晶性形態のような長距離秩序を持たない、医薬品有効成分の一形態を指す。無定形形態で存在する物質では、原子または分子が不均一に配列している。化合物が結晶性形態にあるか無定形形態にあるかは、たとえば粉末X線回折によって識別できる。
【0018】
「医薬組成物」という語は、単位用量剤形、すなわち錠剤を指す。医薬組成物の総重量と言う場合、総重量とは、該当する場合、コーティングの重量を除外した錠剤の総重量である。
【0019】
「ダサチニブ無水物」という語は、非塩化無水物形態にあるダサチニブを指す。好ましくは、該無水物形態は結晶である。
【0020】
「ダサチニブ塩酸塩」という語は、ダサチニブ一塩酸塩を指す。好ましくは、該塩酸塩の形態は結晶である。該塩酸塩はまた、ヘミ水和物であることが好ましい。
【0021】
「ダサチニブのヘミエタノール溶媒和物」という語は、非塩化ヘミエタノール溶媒和物の形態にあるダサチニブを指す。好ましくは、該ヘミエタノール溶媒和物は結晶である。
【0022】
「医薬品有効成分」(API)という語は、無水物形態、塩酸塩形態、またはヘミエタノール溶媒和物形態にあるダサチニブを指す。
【0023】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、溶媒和されていない形態にある遊離塩基の重量にして20±2mg、50±5mg、または70±7mgの医薬品有効成分を含む。
【0024】
医薬品有効成分は、本発明の医薬組成物中に5〜70重量%または10〜70重量%存在することが好ましく、より好ましくは10〜50重量%または20%〜50重量%、最も好ましくは20〜40重量%、たとえば20〜30重量存在する。ここで、それぞれの量は、組成物の総重量に対する値を示す。
【0025】
本発明の医薬品有効成分の平均粒径が1〜300μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μmである場合、溶解度、均質性、安定性、流動性、圧縮性および分離傾向の回避に関して有利な特性が得られる。粒径分布は、不活性な懸濁媒質に分散させた該APIに対してレーザー散乱を行うことによって測定できる。
【0026】
製造工程から得られる医薬品有効成分は粒径が様々である可能性があるため、均一かつ適切な粒径を保証するために、ミルやグラインダーによる粉砕、および/または篩過が必要となることもある。
【0027】
グラインダーによる粉砕は、たとえばピンミルまたはハンマーミルを使用して行われる。ミルの回動速度、製品の流入量、および/またはミル加工の時間を変えることによって、所望の粒径および/または比表面積を有する粒子を得ることができる。たとえば10μm未満という粒径が必要とされる場合、エアジェット粉砕機の適用が有利なこともある。いずれの場合にも、APIの粒径は、異なる粒径のAPIを混合することおよび/または適切な目開きのふるいで篩過することによって調節できる。
【0028】
直接圧縮前の、本発明の医薬組成物成分混合物のかさ密度は、0.3〜0.9g/ml、好ましくは0.4〜0.8g/mlの範囲にあることが有利である。
【0029】
直接圧縮前の、本発明の医薬組成物成分混合物のハウスナー比は、好ましくは1.05〜1.65、より好ましくは1.1〜1.5の範囲にある。ハウスナー比とは、タップ密度に対するかさ密度の比率である。
【0030】
本発明の医薬品有効成分の有利な特性および該医薬品有効成分を含む医薬組成物の製造方法の有利な特性により、本発明の医薬組成物は優れた溶解度、均質性、流動性および圧縮性を有する。さらに、本発明の医薬組成物は、組成物中の医薬品有効成分の適切な濃度範囲全般にわたり、作業性が良く便利である。
【0031】
本発明の医薬組成物は、充填剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、付着防止剤、溶解促進剤、および崩壊剤等の薬学的に許容される1以上の添加剤をさらに含んでもよい。薬学的に許容される添加剤としては、当業者に公知である慣用の添加剤を使用してもよい。たとえば、H.P.Fiedler編、Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie,Kosmetik und angrenzende Gebiete(薬剤、化粧品及び関連分野のための補助剤辞典)第4版およびそれ以前の版、Editio Cantor,AulendorfならびにArthur H.Kibbe編、Handbook of Pharmaceutical Excipients(医薬品添加物ハンドブック)第3版、American Pharmaceutical Association,Washington,USA,and Pharmaceutical Press,Londonを参照のこと。
【0032】
充填剤の好ましい例としては、乳糖、マンニトール、ソルビトール、イソマルト、または微結晶セルロースが挙げられる。充填剤は、組成物の総重量に対して約10〜80重量%、好ましくは約30〜70重量%存在することが適切である。
【0033】
結合剤は、たとえば微結晶セルロース(MCC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、イソマルトまたはトウモロコシデンプンであってよい。結合剤は、好ましくは組成物の総重量に対して約1〜25重量%、より好ましくは約2〜15重量%存在する。
【0034】
滑沢剤としては、ステアリン酸塩が好ましく、アルカリ土類金属のステアリン酸塩、たとえばステアリン酸マグネシウム等がより好ましい。滑沢剤は、組成物の総重量に対して約0.1〜2重量%、好ましくは約0.5〜1.5重量%存在することが適切である。
【0035】
好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、または架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)である。崩壊剤は、組成物の総重量に対して約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%存在することが適切である。
【0036】
流動促進剤は、たとえばコロイド状二酸化ケイ素であってよい。流動促進剤は、好ましくは組成物の総重量に対して約0.5〜8重量%、より好ましくは約0.5〜3重量%存在する。
【0037】
付着防止剤は、たとえば滑石であり、組成物の総重量に対して約1〜5重量%、より好ましくは約1.5〜3重量%存在してもよい。
【0038】
医薬品有効成分の溶解度の改善は、たとえば錯体形成剤/化合物(たとえば安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウムもしくはシクロデキストリン)の添加、溶媒特性の変更(たとえばPVPもしくはポリエチレングリコールの添加)または界面活性剤ミセルを形成する溶解促進剤(たとえば界面活性剤)の添加によって達成される。
【0039】
適切な溶解促進剤は、たとえばポリオキシエチレンアルコールエーテル(たとえばBrij(登録商標))、ポリソルベート(たとえばツイーン(登録商標))、またはポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体(ポロキサマー、たとえばプルロニック(登録商標))等の界面活性剤である。溶解促進剤は、組成物の総重量に対して約0.5〜7重量%、より好ましくは約1〜5重量%存在してもよい。
【0040】
あるいは、疑似乳化剤を使用することもできる。その作用機序は、主として粘性の増加に基づく。しかしながら、疑似乳化剤は乳化性をも有している。好ましい疑似乳化剤は、たとえばセルロースエーテル、アラビアゴム、またはトラガントである。疑似乳化剤は、組成物の総重量に対して約1〜10重量%、より好ましくは約3〜7重量%存在してもよい。
【0041】
本発明の医薬組成物は錠剤として製剤化される。特に好ましい医薬組成物はフィルムコーティング錠形態のものである。該錠剤は、適切な粉末混合物を直接圧縮することによって、すなわち予め添加剤を造粒することなく、得ることができる。
【0042】
前記錠剤は、所望の効果に応じて、セルロース誘導体、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルポリマーおよびセラック等の任意の機能性もしくは非機能性フィルム形成剤、または当技術分野で公知の、たとえばオイドラギット(登録商標)もしくはファーマコート(登録商標)等のシリーズから選択される、すぐに使用できる任意のフィルム形成組成物によって、さらにコーティングされてもよい。非機能性フィルムコートであるファーマコート(登録商標)603が特に好ましい。
【0043】
前記医薬組成物は、20±2mg、50±5mg、および70±7mg(無水物形態における遊離塩基の重量として)の用量のダサチニブを含んでいてもよい。これにより、投与量は、個体の耐性および安全性によって容易に変更することができ、1日1回70mgという標準用量とは異なる柔軟な投与が保証される。
【0044】
好ましい一実施形態において、本発明の医薬組成物は、組成物の総重量に対し、医薬品有効成分を20〜30重量%、乳糖一水和物とトウモロコシデンプンとの噴霧乾燥混合物(混合物の総重量に対し、乳糖一水和物を85%、トウモロコシデンプンを15%含む)を60〜70重量%、架橋ポリビニルピロリドンを5〜6重量%、コロイド状二酸化ケイ素を1〜1.5重量%、およびステアリン酸マグネシウムを1〜1.5重量%含む。
【0045】
別の好ましい一実施形態では、医薬組成物は、組成物の総重量に対し、医薬品有効成分を20〜30重量%、イソマルトを60〜70重量%、架橋ポリビニルピロリドンを5〜6重量%、コロイド状二酸化ケイ素を1〜1.5重量%、およびステアリン酸マグネシウムを1〜1.5重量%含む。
【0046】
本発明はさらに、上述した実施形態の任意の組合せに関する。
【実施例】
【0047】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、実施例は本発明を限定するものではない。以下の表における各成分の量は、1錠中のmg数を示している。
【0048】
<実施例1>
【表1】

【0049】
ダサチニブ無水物、Starlac(登録商標)およびコリドン(登録商標)CLを篩過して混合した。これにアエロジル(登録商標)200とステアリン酸マグネシウムとを加えてさらに混合し、圧縮して錠剤を得た。次いでこれを1錠あたり3mgのファーマコート603でコーティングした。
【0050】
<実施例2>
【表2】

【0051】
ダサチニブ無水物、GalenIQ(登録商標)721およびコリドン(登録商標)CLを篩過し、混合した。これにアエロジル(登録商標)200とステアリン酸マグネシウムとを加えてさらに混合し、圧縮して錠剤を得た。次いでこれを1錠あたり3mgのファーマコート603でコーティングした。
【0052】
<実施例3>
【表3】

【0053】
ダサチニブ塩酸塩、Starlac(登録商標)およびコリドン(登録商標)CLを篩過し、混合した。これにアエロジル(登録商標)200とステアリン酸マグネシウムとを加えてさらに混合し、圧縮して錠剤を得た。次いでこれを1錠あたり3mgのファーマコート603でコーティングした。
【0054】
<実施例4>
【表4】

【0055】
ダサチニブ塩酸塩、GalenIQ(登録商標)721およびコリドン(登録商標)CLを篩過し、混合した。これにアエロジル(登録商標)200とステアリン酸マグネシウムとを加えてさらに混合し、圧縮して錠剤を得た。次いでこれを1錠あたり3mgのファーマコート603でコーティングした。
【0056】
<実施例5>
【表5】

【0057】
錠剤を製造するため、ステアリン酸マグネシウム以外の成分すべてを篩過(目開き0.5mm)した後タンブラーブレンダーに入れて15分間混合した。ステアリン酸マグネシウムを篩過(目開き0.5mm)して加えた後、この最終混合物を3分間混合した。これを圧縮して、硬度45N、直径6mmの錠剤を得た。次いでこれを以下のパラメータを有するパンコーティング機に入れ、1錠あたり3mgのファーマコート603でコーティングした:
吸気エアー50〜60℃、排気エアー35〜45℃、ドラム回転数4rpm、0.7mmノズル、噴霧圧力1.8bar、噴霧速度6ml/分。
【0058】
<実施例6>
実施例1〜5で得られた錠剤を用いて、安定性試験を行った。試験では、錠剤を両面アルミブリスターで包装し、40℃、相対湿度75%で保管した。
【0059】
試験開始時、4週間の保管後、および12週間の保管後の、水分量、不純物(関連物質)の含有量および錠剤の溶出プロファイルを測定した。水分量および不純物の総量についての結果を、以下の表にまとめて示す。
【表6】

【0060】
この試験により、温度および相対湿度の高い状態で3か月保管した後でも、本発明の錠剤は安定であることがわかる。この錠剤は吸湿性ではなく、また、総不純物量が顕著に増加することもない。さらに、添付の図5〜9が示すように、本発明の錠剤の溶出プロファイルは、3か月保管した後でもわずかに変化するに過ぎない。これらの図において、上の3つのグラフはそれぞれ、安定性試験開始時、4週間保管後、および12週間保管後の、本発明の錠剤の溶出プロファイルを示す。一番下のグラフは、スプリセル錠(登録商標)20mgの溶出プロファイルを比較のために示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤の形態にある医薬組成物であって、該錠剤が医薬品有効成分としてダサチニブ無水物、ダサチニブ塩酸塩、またはダサチニブヘミエタノール溶媒和物を含むこと、および直接圧縮によって該錠剤が得られることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
溶媒和されていない形態にある遊離塩基の重量にして20±2mg、50±5mg、または70±7mgの医薬品有効成分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
組成物中に、組成物の総重量に対して10〜70重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは20〜30重量%の医薬品有効成分が存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬品有効成分の平均粒径が1〜300μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
直接圧縮前の成分混合物のかさ密度が0.3〜0.9g/ml、好ましくは0.4〜0.8g/mlであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
直接圧縮前の成分混合物のハウスナー比が1.05〜1.65、好ましくは1.1〜1.5であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
組成物の総重量に対し、医薬品有効成分を20〜30重量%、乳糖一水和物とトウモロコシデンプンとの噴霧乾燥混合物(混合物の総重量に対し、乳糖一水和物を85%、トウモロコシデンプンを15%含む)を60〜70重量%、架橋ポリビニルピロリドンを5〜6重量%、コロイド状二酸化ケイ素を1〜1.5重量%、およびステアリン酸マグネシウムを1〜1.5重量%を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物の総重量に対し、医薬品有効成分を20〜30重量%、イソマルトを60〜70重量%、架橋ポリビニルピロリドンを5〜6重量%、コロイド状二酸化ケイ素を1〜1.5重量%、およびステアリン酸マグネシウムを1〜1.5重量%含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬品有効成分をさらなる成分と混合する工程および得られた混合物から直接圧縮によって錠剤を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−518860(P2013−518860A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551634(P2012−551634)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051649
【国際公開番号】WO2011/095588
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(501249043)ラティオファルム ゲー・エム・ベー・ハー (7)
【Fターム(参考)】