説明

N2Oの分解方法、そのための触媒及びこの触媒の製法

本発明は、触媒の存在下で、NOを含有するガス中のNOを触媒により分解する方法であって、触媒は、ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる貴金属の群から選択される第1の金属、並びに、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2の金属を担持したゼオライトを含み、ゼオライトへの金属の担持は、最初に貴金属を、次に遷移金属をゼオライトに担持させることによって得られる方法、並びにこの方法のための触媒及びこの触媒の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOを含有するガス中のNOの触媒による分解方法に関する。本発明は、また、そのための触媒、並びにこの触媒の製法にも関する。
【背景技術】
【0002】
酸化二窒素又は笑気(NO)は、実質的に温室効果の一因となっており、高い地球温暖化の可能性(1分子が温室効果に果たす度合いはCOの1分子に相当する)を有する。過去数年にわたり、温室ガスの排出を減少するための方策が開発されている。NO排出の様々な特筆すべき源が確認されており、農業、ナイロン前駆物質(アジピン酸及びカプロラクタム)の工業生産、硝酸の製造、三元触媒を備えた自動車等などである。
【0003】
様々な触媒技術及び非触媒技術を使用して笑気ガスを無害にすることができる。例えば、NOのN及びOへの触媒による分解又は転化のための様々な触媒が知られている(例えば、特開平06−154611号公報には遷移金属及び貴金属を担持した担体をベースとする触媒が記載されている)。しかしながら、最先端の触媒を用いるこの反応は、ほとんどすべての上記のNO源からのオフガス中に生じる酸素及び水の存在によって大幅に妨げられる。
【0004】
期待できる代替手段は選択的な触媒による還元である。アルケン(C2n)、アルコール又はアンモニア等の還元剤を用いるNOの転化に対しては、様々な触媒が文献から知られている。技術的及び経済的理由により、飽和炭化水素(C2n+2)の添加が前記還元剤には好ましい。これに関しては、特に天然ガス(CH)及びLPG(C及びC10の混合物)が興味深い。
【0005】
炭化水素を用いてNOを還元することが可能な触媒を使用する方法の欠点は、炭化水素のための付加的な施設を導入しなければならず、炭化水素及び/又はCOが排出され得ることである。環境の観点から、炭化水素の排出を避けるためにさらなる触媒がしばしば使用される。
【0006】
国際公開第04/009220号パンフレットは、NOの触媒による還元について記載しているが、この開示はNOの触媒による分解の方法は提供しない。
【0007】
Oを分解するための多くの既知触媒の欠点は、これらの触媒が、しばしば不安定であり、且つ/又はNO(NO、NO、N(x=3/2)など)、O及びHO等のガスの存在によって失活することである。しかしながらこれらのガスは、燃焼排ガスからのNOの分解などの現実的な状況に中に事実上常に存在する。
【特許文献1】特開平06−154611号公報
【特許文献2】国際公開第04/009220号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点が完全又は部分的に除去されたNOの触媒による分解の方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、この方法で使用するための触媒並びにこの触媒を調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外なことに、本発明による触媒は、低温においてさえも良好なNOの転化を与え、(NOのN及びOへの)分解反応中安定であり、また良好な転化を与え、且つ、NOを含有するガス中に他のガス(NO、NO、Nその他、O及びHOなど)もまた存在する場合に、良好な安定性を有していることが分かる。その上有利なことに、NOを含有するガスに炭化水素を添加しなくてもよい。それ故、これらの触媒は、NOの分解にことのほか適している。
【0010】
本発明は、触媒の存在下で、NOを含有するガス中のNOを触媒により分解する方法であって、触媒は、ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる貴金属の群から選択される第1金属、並びに、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2金属を担持したゼオライトを含み、ゼオライトへの金属の担持は、最初に貴金属を、次に遷移金属をゼオライトに担持させることによって得られた方法に関する。
【0011】
本発明は、また、NOを含有するガス中のNOを触媒により分解するための触媒を調製する方法であって、触媒は、ゼオライトを含み、該ゼオライトに、最初に、ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる貴金属の群から選択される第1金属を担持させ、次に、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2金属を担持させる方法を提供する。
【0012】
本発明は、さらにまた、この方法により得ることができ、例えば、0.00001〜4%(m/m)の第1金属及び0.1〜10%(m/m)の第2金属を含有している触媒、並びにNOを分解するためのこの触媒の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
Oを含有するガスは、例えば、硝酸の合成に由来するオフガス、又は、例えば、ナイロン前駆物質の製造中に遊離されるオフガスであり得る。このガスは、酸素及び/又は水を含有し得る。現況技術による大多数の触媒とは対照的に、本発明による触媒は、酸素、水又はその両方の存在下で活性度をほとんど失わない。これは、特に、水が最大で約5〜10%(V/V)(容積百分率;容積百分率は、NOを含有するガスの容積に関わり、存在する任意のNO、O及びHOその他を含む)の量で存在する場合に当てはまる。例えば、最大で約20%まで、例えば0.5〜20%(V/V)の酸素が存在し得る。NOもまた、例えば約10ppm〜5%のNO、例えば10ppm〜1%(V/V)のNOが存在し得る。したがって、一実施形態において、本発明は、NOを含有するガスが酸素及び/又は水を含有している方法、並びに、NOを含有するガスが、酸素、水及びNOからなる群から選択される1種又は複数のガスをも含有する(例えば、3種すべてのガスがNOと一緒に存在する)方法を目的とする。したがって、本発明との関連で、NOを含有するガスとは、このガスが、いずれにしてもNOを含有し、さらに、他のガス、例えば、N、NO、HO、Oなどを含有することができることを意味する。このガス(又はガス混合物)は、当業者には知られているように、触媒と接触させる。「NOを含有するガス中のNOの分解」とは、ガス中に存在するNOを部分的にであっても(本発明による触媒を用いて)分解し、N及びOを生じさせることを意味する。
【0014】
より詳しくは、本発明は、NOを含有するガス中のNOの触媒による分解の方法を目的とし、
− ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる貴金属の群から選択される第1金属、並びに、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2金属を担持したゼオライトを含む触媒を準備すること、
− NOを含有しているガスを準備し、このNOを含有しているガスを、触媒を含有しているチャンバーを通して供給し、チャンバーとガス又はその両方は、必要に応じて加熱すること
を含む。
【0015】
Oを含有しているガスは、本発明による触媒と接触し、NOが、組成物反応において少なくとも部分的に分解する。反応中、必要に応じてNOの(完全又は部分的な)分解が起こり得る温度まで加熱することが可能である。しかしながら、NOを含有しているガスは、オフガスとして既に望ましい温度を有しているか望ましい温度まで冷却されている。チャンバーとは、当業者には知られているように、NO含有ガスを本発明の触媒と接触させることができる、例えば、反応器(チャンバー)、反応管、又は任意のその他の空間である。このチャンバーは、好ましくは、当業者には知られているNOを分解するように設計された反応器である。
【0016】
本発明の説明において、NOは、NO、NO、Nなどのxが1以上である窒素酸化物として定義される。したがって、NO、笑気は、この用語に該当するものとは理解されない。NOは、通常xが1を超える他の窒素酸化物と平衡状態にある。本発明による触媒は、存在の可能性のあるNO、NOなど(NO)による安定性の被害がなく、NOを含有しているガスからのNOの分解にことのほか適することが見出されている。したがって、一実施形態において、本発明は、また、NOを含有しているガスが、NO(xは、1以上の、例えば、x=1、3/2、2などである)をも含有する方法を提供する。もちろん、このガスは、上記NO化合物の組合せを含有することもできる。それ故、一実施形態においてNOを含有しているガスは、少なくともNO及びNOを含有する。
【0017】
特に本発明は、NOを含有しているガスが本質的に炭化水素を何ら含有していない場合のNOの分解を目的としている。NOを含有しているガスは、NOを含有しているガスの全体量を基準として、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満、さらにより好ましくは20ppm未満の炭化水素、又は、NOを含有しているガス中のNOの量を基準として、例えば、5%(V/V)未満、好ましくは3%(V/V)未満、より好ましくは1%(V/V)未満の炭化水素を含有する。より詳しくは、このガスは、C2n+2(式中、nは、好ましくは1〜4から選択され、すべての異性体を含む)を本質的に含有していない。
【0018】
Oを含有しているガス中のNOの触媒による分解方法のプロセス条件は、用途に応じる。当業者であれば、一般に、最良の転化結果が得られるように、触媒量、ガス速度、温度、圧力などを選択するであろう。良好な結果は、例えば、NOを含有しているガスの約100ppm以上、例えば約100〜100,000ppmのNO含量で得られる。実際の条件下でのNOの量は、一般に、NOを含有しているガスの約100ppmと3000ppmの間である。NOを含有しているガスは、約200〜200,000h−1、好ましくは1000〜100,000h−1のガス空間速度(GHSV;気体時空間速度)で好ましくは供給し、この値は、使用される触媒量と関係する。NOを含有しているガスの圧力は、施用次第であり、例えば、約1〜50bara(バール気圧:bara)の間、好ましくは約1〜25baraの間であり得る。この方法は、比較的低温で使用することができる。NOの転化は、約300℃から起こる。例えば、ガス空間速度、容量及び触媒装填量等の条件によっては、実質的に完全な転化が約375℃で既に起こり得る。好ましくは300℃と600℃の間、より好ましくは350℃と500℃の間、さらにより好ましくは約375と475℃の間の温度が使用される。なおさらなる実施形態において、反応温度は、約300℃と450℃の間、より好ましくは約350℃と425℃の間、さらにより好ましくは400℃より下であり、NOを含有しているガスは、約200〜20,000h−1、好ましくは1000〜15,000h−1、さらにより好ましくは6000〜10,000h−1のガス空間速度(GHSV;気体時空間速度)で供給し、この値は、使用される触媒量と関係する。
【0019】
本発明による方法は、なかんずく、例えば、非常用発電機、ガスエンジン、硝酸製造装置によって排出されるNO、カプロラクタムの製造中、流動床での石炭燃焼中、その他で排出されるNOの触媒による還元のために使用することができる。したがって、本発明は、また、例えば、NOの触媒による分解のための本発明による触媒の使用を目的としている。本発明による方法は、また、例えば硝酸の工業生産中に同様に排出されるNOを除去するための触媒との組合せで使用することもできる。
【0020】
本発明による方法で使用されるゼオライトは、例えば、それらの略称で当業者には知られている以下のゼオライトである(例えば、Atlas or zeolite framework types, Ch. Baerlocher, W. M. Meier, D. H. Olson, 2001, Elsevier Science, ISBN: 0-444-50701-9):ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CFI、CGF、CGS、CHA、−CHI、−CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、OFF、OSI、OSO、−PAR、PAU、PHI、PON、RHO、−RON、RSN、RTE、RTH、RUT、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、−WEN、YUG、ZON。(担持した)ゼオライトの組合せも使用することができる。
【0021】
好ましくはケイ素及びアルミニウムをベースとするゼオライトを、2〜60、好ましくは2.5〜30のSi/Al比で使用する。例えば、ゼオライトが、FAU、FER、CHA、MOR、MFI、BEA、EMT、CON、BOG及びITQ−7からなる群から選択される場合に良好な結果が得られる。好ましい実施形態において、本発明は、ゼオライトが、FER、CHA、MOR及びBEAからなる群から選択される方法を目的としている。特に好ましいのは、FER、CHA及びBEA、さらにより好ましいのはFER及びBEAである。特にBEAは、本発明のNO分解法において意外なほど高い安定性を示す。
【0022】
ゼオライト構造イオンの一部は、当業者には知られているように、Fe、Tiなどの他のイオンで置き換わっていてもよい。例えば、Si又はAlの約5%までは、Fe又はTi或いはGa又はGeなどの他のイオン、或いは上記イオンの2種以上の組合せにより置き換わっていてもよい。そのような構造イオンの置換は、当業者には知られているように、出発材料中に「あるべき構造イオン」の一部をFe又はTi(或いはその他のイオン)により置換することにより達成することができる。ゼオライトは、そのゼオライトの合成後、又は第1及び第2金属をその後担持させた後に、この構造金属の一部が触媒活性部位としての細孔中に現れることができるように、必要に応じて水蒸気処理にかけることができる。このような方法で、構造イオンとしてFeを有するCo−Rh−BEA又はNi−Ru−MFIは、例えば、それぞれFe、Co−Rh−BEA又はFe、Ni−Ru−MFIに転化させることができる。
【0023】
さらに別の好ましい実施形態においては、FER、CHA及びMFI(ZSM−5)等のゼオライトが使用され、これらのゼオライトは、比較的小さい導管を有しており、12員環などの過度に大きな環は有さない。この実施形態におけるゼオライトは、4、5、6、8又は10員環(或いはそれらの組合せ)を有することができる。異なる実施形態において、本発明は、第2金属が、鉄(FeIII)などの三価の金属であり、ゼオライトが、4、5、6、8又は10員環(或いはそれらの組合せ)を有するが10員を超える環はないゼオライトからなる群から選択される方法及び触媒を目的としている。別の異なる実施形態において、本発明は、第2金属が、コバルト(CoII)などの二価の金属であり、ゼオライトが、4、5、6、8、10又は12員環(或いはそれらの組合せ)を有するゼオライトからなる群から選択され、ゼオライトが少なくとも10又は12員環(或いはその両方)を含有している方法及び触媒を目的としている。
【0024】
本発明による触媒を調製するには、様々な方法がある。ゼオライトは、当業者には知られているような方法を用いて、例えば、湿式含浸法((溶解した)塩の液体の容積がゼオライトの細孔の容積より大きい)及び細孔容積含浸法(「乾式含浸法」又は「初期湿潤」:(部分的に溶解した)塩の液体の容積がゼオライトの細孔容積と等しい)を用いるか、イオン交換(液相中での交換であり、当業者には知られているように、交換されるべき金属が、いずれにしても、液相にイオン(又は錯化イオン)として少なくとも部分的に溶解しており、ゼオライトを、交換されるべきイオンを含有する液体中で攪拌する)によるか、化学蒸着(CVD)を用いて担持させることができる。NOを含有しているガス中のNOを触媒により分解するための方法は、好ましくは、この組成物に対して使用されるゼオライトを、イオン交換法又は含浸法を用いて第1金属を担持させ、その後第2金属を担持させ、使用し、そのまま、或いは、乾燥、ふるい分け及び/又は焼成担体に加える等のなし得るさらなるステップの後に、NOを含有しているガス中のNOの触媒による分解のために使用する。好ましい実施形態においては、ゼオライトがイオン交換法により第1金属を担持している方法が使用される。
【0025】
同じことが第2金属について当てはまる。したがって、好ましくは、ゼオライトがイオン交換法又は含浸法により第2金属を担持している方法が使用され、一実施形態においては、ゼオライトがイオン交換法により第2金属を担持している方法が使用される。特定の実施形態においては、ゼオライトがイオン交換法により第1金属及び第2金属を(順次)担持している、NOを含有しているガス中のNOの触媒による分解のための方法が使用される。これは、良好な分解値をもたらす。
【0026】
この発明において、金属とは、金属として当業者には知られている元素(例えば、元素の周期律表(IUPAC表記法)の3〜12族からの金属)が本発明で使用されることを指すために使用する。本発明において、遷移金属とは、元素の周期律表(IUPAC表記法)の3〜12族からの金属であり、Ib、IIb〜VIIb及びVIII族としても知られる。第2金属とは、同時にまた貴金属ではない遷移金属を指して使用される。貴金属とは、金属類、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt及びAuである。本発明においては、Ru、Rh、Ag、Re、Os、Ir、Pt及びAu、好ましくは、Ru、Rh、Os及びIr(8族及び9族の貴金属)が使用される。ゼオライトに担持させるときは、一般に、金属がイオンの形態(通常は水中)で、又は溶液中(湿式含浸法又は細孔容積含浸法(初期湿潤))に存在し、金属が、イオンとして溶液中に、且つ/又はイオンとして塩化合物中に存在する溶液状態の塩(イオン交換)が使用される。イオン交換(液相における)又は細孔容積含浸法が好ましくは使用されるために、調製後及び焼成前に、触媒は、一般に、金属がイオンの形態で(且つAlと配位して)存在するゼオライトを含む。焼成後及び/又は本発明による方法を実施している間に、いくらかのイオン形態の金属は、酸化物及び/又は交換場所で金属に転化し、例えばクラスタ化して粒子を生じ得る。金属と交換したゼオライトのこの挙動は、当業者には知られている。この発明において、金属は、したがってまた、金属イオンに向けても使用され、例えば、ゼオライトの担持(ゼオライトへの金属の適用)の後、金属は、さらにまた、金属酸化物又は金属塩(例えば、塩化物、酸塩化物、硝酸塩、硫酸塩など)を含むことができる。
【0027】
一実施形態においては、ゼオライトがイオン交換によって第1金属を担持している方法が使用される。これにより、Alの2〜50%が第1金属により配位し、より好ましくはAlの約5〜40%が第1金属により配位するゼオライトを生じることができる。これは、例えばIR技術その他を用いて測定することができる。したがって、例えば、活性化ゼオライトの架橋OH伸縮振動(ゼオライトのタイプ及び測定温度により、ほぼ3600cm−1)の積分強度は、選択した金属を担持した同じゼオライトと比較することができる。この積分強度は、ゼオライト中のアルミニウムの濃度と相関する。選択した金属で交換した結果、積分強度は減少し、その強度差(交換の前後)がアルミニウムに配位した金属の量である。
【0028】
ゼオライトを担持させた後、そのゼオライトは一般に乾燥する。次いでそれを焼成することができる。焼成(空気、酸素中で加熱する)の替わりに還元(還元性雰囲気中で加熱する)又は不活性雰囲気中で活性化する(不活性雰囲気中で加熱する)ことも可能である。そのような処理は、「後変性」処理として当業者には知られている。焼成は、一般に、空気中で、例えば、400〜550℃で行われる。還元は、水素により、例えば、300〜500℃で達成することができる。不活性雰囲気中の活性化は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどを用いて、例えば、約300〜550℃で行うことができる。これらの処理は通常数時間を要する。
【0029】
良好な分解結果は、第1金属が、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択されている方法が使用される場合に得られる。別の実施形態においては、第2金属は、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択されているゼオライトが使用される。好ましくは、第1金属は、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択され、第2金属は、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択された、NOを含有しているガス中のNOを触媒により分解するための方法が使用される。好ましい実施形態において、NOを分解するための方法及び触媒が提供され、その触媒は、ゼオライトを含んでおり、そのゼオライトは、FAU、FER、CHA、MOR、MFI、BEA、EMT、CON、BOG及びITQ−7からなる群から選択される。好ましい第1金属は、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される。
【0030】
具体的な好ましい実施形態は、第2金属がFeであり、ゼオライトがFERであるか、第2金属がCoであり、ゼオライトがMORである本発明による方法及び本発明による触媒を含む。別の好ましい実施形態において、本発明は、第2金属がCoであり、ゼオライトがFERである、例えば、Co−Rh−FER、又は第2金属がFeであり、ゼオライトがMORである、例えば、Fe−Rh−MORである方法及び触媒を含む。したがって、本発明は、また、金属を担持したゼオライトが、Fe−Rh−FER、Fe−Ir−FER、Fe−Ru−FER、Co−Rh−MOR、Co−Ir−MOR、Co−Ru−MOR、Fe−Rh−MOR、Fe−Ir−MOR、Fe−Ru−MOR、Co−Rh−FER、Co−Ir−FER及びCo−Ru−FERからなる群から選択されている方法及び触媒を目的としている。さらに好ましい触媒は、Fe−Rh−BEA、Fe−Ir−BEA、Fe−Ru−BEA、Co−Rh−BEA、Co−Ir−BEA及びCo−Ru−BEAである。
【0031】
本発明による触媒は、好ましくは、約0.00001〜4%(m/m)の第1金属及び約0.1〜10%(m/m)の第2金属を含む(0.00001%(m/m)は10ppmである)。より好ましくは、ゼオライトは、約0.01から0.5%(m/m)、より好ましくは、0.1〜0.5%(m/m)の第1金属、及び約0.5から4%(m/m)、より好ましくは1〜4%(m/m)の第2金属を含有する。もちろん、「第1」の金属の組合せ、並びに「第2」の金属の組合せなど、例えば、Fe−Ir、Ru−FER、Co、Ni−Ir−MOR及びCo、Ni−Rh、Os−MORなども使用することができる。その上に、第1及び第2の担持は、1回又は複数回のその後の担持を妨げない。
【0032】
本発明による触媒は、好ましくは、ゼオライトのみを含む。別の実施形態においては、触媒は、ゼオライト及び一定量の担体、例えば、0.1〜50%のベーマイトを、例えば、ペレットの形、又は、当業者には知られているように、モノライト(monolite)に施した形で含む。金属(第1金属及び第2金属)の量は、ゼオライトの量と関連しており、金属は、ゼオライト上及びゼオライト中に存在する。
【0033】
既知の塩、例えば、易溶性の硝酸塩等がイオン交換に使用される。使用されるゼオライトは、例えば、ゼオライトのH、Na、K又はNHの形、例えば、NH−MOR又はH−FAUなどであり得る。交換は、約0.00001〜4%(m/m)の第1金属がゼオライト中に存在するようになる長さの時間(又はそれだけの頻度)継続する。ゼオライトは、また、他の方法(細孔容積含浸法など)で担持させることもできる。ゼオライトは、そのとき好ましくは濾別洗浄し、場合によっては乾燥する。次に、そのゼオライトには0.1〜10%(m/m)の第2金属を担持させる。これは、イオン交換(液相中)によるか、細孔容積含浸法(初期湿潤技術)など(上記参照)により行うことができる。ゼオライトは、次いで必要に応じて乾燥及び焼成をする。
【0034】
第1金属に関してなるべくなら所望の割合の交換が達成されていることを明らかにすることができる上記のIR技術に加えて、本発明による方法を応用する利点は、また、例えば、電子顕微鏡又はCO化学吸着を用いる他の方法で確定することができる。この方法により、貴金属の最終的な分散がどうなったかをその結果に応じてはっきりと描くことが可能である。CO化学吸着の場合は、例えば、結合するCOの量が、貴金属の分散の尺度となる。
【0035】
本発明による調製方法により得ることができる本発明の触媒は、ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる貴金属の群から選択される第1金属、並びに、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2金属を担持したゼオライトを含む。好ましい実施形態において、本発明の触媒は、ゼオライトからなり、即ち、本発明の触媒は本発明により調製されたゼオライトである(場合により担体に供給されている)。好ましいゼオライトは、FAU、FER、CHA、MOR、MFI、BEA、EMT、CON、BOG及びITQ−7、特に、FER、CHA及びBEAからなる群から選択される。好ましい第1金属は、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択され、さらにより好ましいのは、Ru、Rh及びIrである。別の実施形態においては、本発明の触媒は、他の触媒、例えば、NOの分解に適した他の触媒及び/又はNOの分解に適した触媒をさらに含んでもよい。
【0036】
従来技術の触媒(例えば、最初に遷移金属イオンが、次に貴金属がゼオライトに導入されている)とは対照的に、本発明の触媒は、Alの約2〜50%が第1金属により配位しているゼオライトを含む。本発明の触媒(即ちゼオライト)のもう1つの重要な特徴は、ゼオライトがゼオライト粒子の大部分を通した第1金属の比較的一定の濃度及び異なるゼオライト粒子にわたる平均した濃度を有していることである。ゼオライト粒子(例えば、直径約0.1〜5mmの圧縮ゼオライト粒子)中の第1金属の濃度は、粒子中の異なる位置で(例えば、SEM/EDXにより)測定することができ(局所濃度)、それにより第1金属の平均濃度が提供される。それ故、本明細書における用語「局所」濃度とは、SEM/EDXによりゼオライト粒子の一点において、約0.5〜5μmの走査解像度、好ましくは約0.1〜1μmの走査解像度で好ましくは測定された濃度を指す。本明細書において、平均(第1)金属濃度を有するゼオライトとは、例えばゼオライト晶子(例えば約0.1〜10μm)、ゼオライト(バルク)粉末(例えば、上記晶子からなる)、圧縮粒子などのバルク(又は平均)濃度を指す。局所濃度の多数の測定結果が、平均金属濃度を計算するために使用される。例えば、約0.1〜1μmの一点で濃度を測定し、最初の点から数μmの間隔で、ゼオライト粉末の別の点又はゼオライト晶子の別の点に移動し、2番目の局所濃度を測定するなど。測定された(第1)金属の局所濃度を平均することにより、(第1)金属の平均局所濃度が与えられる。本発明の調製方法により提供されたゼオライト触媒は、どうやら、第1金属の局所濃度が、第1金属の平均濃度の50%を超えず、好ましくは30%を超えず、より好ましくは20%を超えない濃度偏差を有するのが有利なようである。それ故、平均第1金属濃度を有するゼオライトが提供され、そこでは、いずれの局所の第1金属濃度も平均第1金属濃度の50%を超えない濃度偏差を有し得る。第1金属の意外なほど均一な分布により、本触媒の良好なNO分解結果が提供され得るが、逆の順序の担持が選択された場合は、より低いNOの転化が得られる。
【実施例】
【0037】
試験装置
O(及び任意のNO)の触媒による分解は、半自動式の試験設定で検討した。ガスは、いわゆる質量流量制御装置(MFC)を用いて供給し、水は、正確な温度にセットした含浸機により加える。ラインを凝結の影響を避ける130℃に加熱する。実験のため内径0.6から1cmの石英反応器をオーブン中に設置した。触媒のふるい分級物(0.25〜0.5mm)を石英の細目網上に置いた。ガス相の定量分析は、モデル9100ガス分析器を備えているか又はパーキンエルマーGC−TCDを用いる較正Bomen MB 100フーリエ変換赤外(FTIR)分光計を使用することにより可能である。実施例中のキャリヤーガス(バランス)は、Nである。
【0038】
[実施例1]
担持ゼオライトの調製
調製した触媒:
【0039】

【0040】
Cat1:Rh−MOR
第1段階でRh−MORを、イオン交換を用いて調製した。1.5%硝酸ロジウム(Johnsson & Matthey)中のNH−MOR粉末(Zeolyst、CBV21a)を0.1MのNHNOと共に80℃で16時間攪拌した。ゼオライトを次に濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、80℃で16時間乾燥した。ゼオライトに0.35%(m/m)のRhを担持させる(化学分析:金属を消化し(すべてを濃酸中に溶解)、成分をICP/AASを用いて測定する)。
【0041】
Cat2:Rh−アルミナ(Al
Rh−アルミナを、湿式含浸法を用いて調製した。1%(m/m)ロジウムに相当する濃度の硝酸ロジウムを細孔の容積の約2倍の容積のアルミナに塗布した。
【0042】
Cat3:Cu−Rh−MOR
第1段階でRh−MORを、イオン交換を用いて調製した。1.5%硝酸ロジウム(Johnsson & Matthey)中のNH−MOR粉末(Zeolyst、CBV21a)を0.1MのNHNOと共に80℃で16時間攪拌した。ゼオライトを次に濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、80℃で16時間乾燥した。ゼオライトに0.35%(m/m)のRhを担持させる(化学分析)。第2段階で、ロジウムMORに、ロジウムMORの細孔容積と等しく、4.9%(m/m)の銅の濃度となる量の硝酸銅を加えた。ゼオライトを次に濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で16時間乾燥した。
【0043】
Cat4:Rh−Cu−MOR
上の第2段階で記載した銅による交換を最初に行った以外は上と同じ調製法に従った。ゼオライトに5%(m/m)のCu及び0.35%(m/m)のRhを担持させた(化学分析)。この触媒は、特開平06−154611と同じように調製した(最初にCu、次にRh;5重量%(m/m)のCu及び0.35重量%(m/m)のRh)。
【0044】
Cat5:Co−Rh−MOR
第1段階でRh−MORを、イオン交換を用いて調製した。1.5%硝酸ロジウム(J&M)中のNH−MOR粉末(Zeolyst、CBV21a)を0.1MのNHNOと共に80℃で16時間攪拌した。ゼオライトを次に濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、80℃で16時間乾燥した。ゼオライトに0.35%(m/m)のRhを担持させる(化学分析)。第2段階で、ロジウムMORに、ロジウムMORの細孔容積と等しく、2.8%(m/m)のコバルトの濃度となる量の硝酸コバルトを加えた。ゼオライトを次に濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で16時間乾燥した。
【0045】
Cat6:Fe−FER
Fe−FERを、細孔容積含浸法を用いて調製した。NH−FER(Tosoh;Si/Al9))に、FERの細孔の容積と等しく、2.5%(m/m)の鉄の濃度となる量の硝酸鉄を加えた。ゼオライトを次に濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で16時間乾燥した。
【0046】
Cat7:Fe−Ru−FER
2.3グラムのRu(NHCl(J&M)を100mlの脱イオン水に溶解し、Na−FER(Tosoh)と共に80℃で16時間攪拌した。ゼオライトを次に濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、80℃で乾燥した。それを次に0.1MのNHNOと室温で24時間攪拌した。ゼオライトを次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。次に、Ru−NH−FERに、Ru−FERの細孔の容積と等しく、2.5%(m/m)の鉄の濃度となる量の硝酸鉄を加えた。0.41%(m/m)のRu及び2.5%(m/m)のFeを担持。
【0047】
Cat8:Fe−Ir−FER
400mgのIrClを、300mlの濃HClに溶解した。細孔容積含浸法により、FERの細孔容積と等しい容量のIrClを、次にNH−FERに加え、濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し80℃で乾燥し、0.2%(m/m)のIrを担持させた。次に、Ir−NH−FERに、Ir−FERの細孔容積と等しく、2.5%(m/m)の鉄の濃度となる量の硝酸鉄を加えた。
【0048】
Cat9:Fe−Rh−FER
Rh−FERを、鉄交換について上で記した方法と同様にして、0.1MのNHNOと共に1.5%(m/m)の硝酸ロジウム(J&M)中で攪拌した。次に、ロジウム−NH−FERに、ロジウム−FERの細孔容積と等しく、2.5%(m/m)の鉄及び0.3%(m/m)のRhの濃度となる量の硝酸鉄を加えた。
【0049】
Cat10:Fe−Ru−MOR
2.3gのRu(NHClを100mlの脱イオン水に溶解し、Na−MOR(Zeolyst CBV10a)と80℃で16時間攪拌した。ゼオライトを次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。それを、次に、0.1MのNHNOと室温で24時間攪拌した。そのゼオライトを次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。次に、Ru−NH−FERに、Ru−FERの細孔容積と等しく、2.5%(m/m)の鉄の濃度となる量の硝酸鉄を加えた。0.41%(m/m)のRu及び2.5%(m/m)のFeを担持。
【0050】
Cat11:Ru−FER
2.3gのRu(NHClを100mlの脱イオン水に溶解し、Na−FER(Tosoh)と80℃で16時間攪拌した。ゼオライトを次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。それを次に、0.1MのNHNOと室温で24時間攪拌した。そのゼオライトを次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。担持は、0.4%(m/m)のRuである。
【0051】
Cat12:Co−MOR
NH−MOR(Zeolyst、CBV21a)に、MORの細孔容積と等しく、2.8%(m/m)のコバルトの濃度となる量の硝酸コバルトを加えることによりCo−MORを調製した。
【0052】
Cat13:Co−Rh−FER
Rh−FERを、鉄交換について上で記した方法と同様にして0.1MのNHNOと共に1.5%(m/m)の硝酸ロジウム(J&M)中で攪拌した。第2段階で、ロジウムMOR(0.3%(m/m)Rh)に、ロジウムMORの細孔容積と等しく、2.5%(m/m)のコバルトの濃度となる量の硝酸コバルトを加えた。そのゼオライトを、濾別し、脱イオン水で十分に洗浄し、120℃で16時間乾燥した。
【0053】
Cat14:Fe−ZSM−5
この触媒は、FeCl・4HOを含む液相中(2.5%(m/m)のFeの担持をもたらすはずである)のアルシペンタ(Alsi−penta)SN27ゼオライトZSM−5の、上にも記載されている80℃16時間のイオン交換を用いて調製した。そのゼオライトを、次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。反応前に、その触媒を、550℃で5時間、インサイチューで焼成した。
【0054】
Cat15:Ru−ZSM−5
この触媒は、Ru(NHClを含む液相中(0.3%(m/m)のRuの担持をもたらすはずである)のアルシペンタ(Alsi−penta)SN27ゼオライトZSM−5の、上にも記載されている80℃16時間のイオン交換を用いて調製した。そのゼオライトを、次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。反応前に、その触媒を、550℃で5時間、インサイチューで焼成した。
【0055】
Cat16:Fe−Ru−ZSM−5
この触媒は、FeCl・4HO、Ru(NHClを含む液相中(0.3%(m/m)のRu及び2.5%(m/m)のFeの担持をもたらすはずである)のアルシペンタ(Alsi−penta)SN27ゼオライトZSM−5のよる上にも記載されている80℃16時間の共イオン交換を用いて調製した。そのゼオライトを、次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。反応前に、その触媒を、550℃で5時間、インサイチューで焼成した。
【0056】
Cat17:Fe−BEA
この触媒は、Zeolyst BEA CP814eのイオン交換を用いて調製した。NH−BEAを、2.5%(m/m)のFeに相当する量のFeSO・7HOで交換した。そのゼオライトを、次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。その触媒を、反応前に550℃で焼成した。
【0057】
Cat18:Fe−Ru−BEA
この触媒は、Zeolyst BEA CP814eのイオン交換を用いて調製した。NH−BEAを、最初に、1MのNaNOで交換し、ナトリウムの形のBEAを得た。その後、そのNa−BEAを、0.3%(m/m)のRuの担持となるRu(NHCl(J&M)で交換した。そのゼオライトを、次に濾別し、十分に洗浄し、Ru−BEAを得た。Fe−Ru−BEAは、Ru−BEAを2.3%(m/m)のFeの担持となるFeClでイオン交換することにより得た。そのゼオライトを、次に濾別し、十分に洗浄し、80℃で乾燥した。その触媒を、反応前に550℃で焼成した。
【0058】
[実施例2]
Rh−アルミナ及びRh−MORを用いるNOの分解
Oを、以下の条件でCat1及びCat2を用いて分解し、以下の結果を得た。
【0059】

【0060】

【0061】
この表から、ゼオライトがアルミナより適切な担体であることが分かる。Rh−アルミナは、安定性が低く、時間とともに失活する。
【0062】
[実施例3]
Cu−Rh−アルミナ及びRh−Cu−MORを用いるNOの分解
実施例1からのCat3、Cat4及びCat5を用いて、400℃の替わりに今度は430℃を用い、0.5%の替わりに今度は5%のHOが存在する以外は実施例2の表2に記載の条件下で、NOを分解した。ここでは以下の結果が得られた。
【0063】

【0064】
これらの結果から、本発明により調製された触媒(Cat3;最初に貴金属、次に遷移金属)が使用される本発明による方法は、現況技術により調製された触媒(Cat4;最初に遷移金属、次に貴金属)より良好な特性を有することが分かる。本発明によるコバルト−ロジウム−MOR(Cat5)は、また、同じく本発明による銅−ロジウム−MOR(Cat3)よりさらに良好な特性を有することが見出せる。
【0065】
[実施例4]
Fe、Fe/Ru、Re/Ir及びFe/Rhで交換したFERを用いるNOの分解
実施例1からの触媒6〜9を用い、温度を変えた以外は実施例2の表1に記載の条件下でNOを分解し、以下の結果を得た。
【0066】

【0067】
これらの結果から、第2金属としての鉄と、Ru、Ir及びRh等の第1金属との本発明による組合せにより、明らかに改善された転化が生ずることが分かる。
【0068】
[実施例5]
Fe−Ru−FER及びFe−Ru−MORを用いるNOの分解
実施例1からの触媒7及び10を用い、温度を変えた以外は、実施例2の表1に記載の条件下でNOを分解し、以下の結果を得た。
【0069】

【0070】
本発明による触媒の両方ともが良好な特性を有しているが、Ru、Ir及びRh等の第1金属の第2金属としてのFeとの組合せは、MORよりFERなどのゼオライトでさらに良好な特性(転化)を提供する。
【0071】
[実施例6]
a)Fe−Ru−FER及びFe−FERとRu−FERとの組合せ及びb)Co−Rh−MOR及びCo−MORとRh−MORとの組合せを用いるNOの分解
実施例1からの触媒6、7及び11を用い、温度を変えた以外は、実施例2の表1に記載の条件下でNOを分解した。触媒7を、触媒6と11との物理的混合物と比較した(a:Fe−Ru−FERとFe−FER及びRu−FERの組合せ)。この混合物は、0.3mlのCat6と0.3mlのCat11との(合計0.6ml)混合物からなった。
【0072】
実施例1からの触媒5、1及び12を用い、温度を変えた以外は、実施例2の表1に記載の条件下でNOを分解した。触媒5を、触媒1と12との物理的混合物と比較した(b:Co−Rh−MORとCo−MOR及びRH−MORの組合せ)。この混合物は、0.3mlのCat1と0.3mlのCat12との混合物からなった(物理的混合物:ある時間混合し、均質化する)。
【0073】
以下の結果が得られた。
【0074】

【0075】
この実験から、物理的混合物は本発明による触媒などの良好な特性を有していないことが分かる。本発明による触媒が調製される場合、Ru、Ir及びRh等の第1金属、並びにFe及びCo等の第2金属の存在は、NOの分解に対してどうやら相乗効果を生じるらしい。この相乗効果は、特に、低温で、例えば約350〜430℃、特に370〜430℃の間で見られる。
【0076】
Cat5もまたWO2004009220に記載されているCH−SCRの組立てで、WO2004009220の表3の条件下で試験をしたが、この触媒は、CHによるNO転化には適さないようであった(280〜433℃の間でNO転化≦1%)。
【0077】
[実施例7]
Co−Rh−MOR及びCo−Rh−FERを用いるNOの分解
実施例1からのCat5及びCat13を用い、温度を変えた以外は、実施例2の表1に記載の条件下でNOを分解した。
【0078】

【0079】
これらの結果から、Co−Rh−FERもまた優れた結果を与えることが分かる。
【0080】
[実施例8]
Co−Rh−MORを用いるNOの分解
実施例1からのCat5を用い、表8aに記載の条件下でNOを分解した。その結果を表8bに示す。
【0081】

【0082】

【0083】
これらの結果から、約75%の除去効率が、375℃での長い接触時間で可能であることが分かる。
【0084】
[実施例9]
Fe、Fe/Ru及びRuで交換したZSM−5を用いるNOの分解
実施例1からの触媒14〜16を用い、温度を変えた以外は、実施例2の表1に記載の条件下でNOを分解した。
【0085】
以下の結果が得られた。
【0086】

【0087】
これらの結果から、液相中の共イオン交換(第1及び第2金属の同時交換)、即ち、Fe及びRuでの同時担持によっても、単一の金属で担持された類似のRu−ZSM−5及びFe−ZSM−5と比較して改良された触媒が生じることが分かる。
【0088】
[実施例10]
Fe又はFe及びRuで交換したBEAを用いるNOの分解
実施例1からの触媒17及び18を用い、表10aに記載の条件下で温度を変動させてNOを分解した(表10b参照)。
【0089】

【0090】
ここで、以下の結果が得られた。
【0091】

【0092】
これらの結果から、Ru−Feの組合せにより大幅に高いNOの転化が、特に約385〜470℃の温度範囲で提供されることが分かる。さらに、Fe−Ru−BEA触媒は、また、NOの転化において非常に安定しているようである。
【0093】
[実施例11]
第1金属の濃度の変化
最初にRhを担持させたか又は最初にCuを担持させたゼオライトの試料の異なる点でのRhの重量百分率を測定した。SEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散X線分光)測定を、JEOL−JSM−6330F顕微鏡で実施した。上記測定は、当業者には知られている。試料を収束電子ビームによる照射にさらすことにより、二次電子又は後方散乱電子の画像化並びに観察及び割断面の画像化のためのX線のエネルギー分析並びに組成分析がもたらされる。SEM/EDM分析技術により、粒子は、大きさ、形状、及び表面形態を含む粒子の物理的性質についての情報を提供するSEMにより画像化することができ、一方、EDXは、粒子の元素組成についての情報を提供する。
【0094】

【0095】
それぞれの試料について4個の走査を、異なる粒子を使って0.1〜1μmの走査解像度でとった。表から、ロジウム濃度は、銅を最初に担持させたとき、非常に不均一であるが、最初にRhで次にCuの試料(本発明によるもの)についての最大偏差は、20%未満であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で、NOを含有するガス中のNOを触媒により分解する方法であって、触媒が、ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる貴金属の群から選択される第1金属、並びに、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2金属を担持したゼオライトを含み、ゼオライトへの金属の担持が、最初に貴金属を、次に遷移金属をゼオライトに担持させることによって得られる前記方法。
【請求項2】
ゼオライトが、イオン交換により第1金属を担持する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1金属が、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第2金属が、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ゼオライトが、FAU、FER、CHA、MOR、MFI、BEA、EMT、CON、BOG及びITQ−7からなる群から選択される請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ゼオライトが、FAU、FER、CHA、MOR、MFI、BEA、EMT、CON、BOG及びITQ−7からなる群から選択され、第1金属が、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
金属を担持したゼオライトが、Fe−Rh−FER、Fe−Ir−FER、Fe−Ru−FER、Co−Rh−MOR、Co−Ir−MOR、Co−Ru−MOR、Fe−Rh−MOR、Fe−Ir−MOR、Fe−Ru−MOR、Co−Rh−FER、Co−Ir−FER、Co−Ru−FER、Fe−Rh−BEA、Fe−Ir−BEA、Fe−Ru−BEA、Co−Rh−BEA、Co−Ir−BEA及びCo−Ru−BEAからなる群から選択される請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ゼオライトが、0.00001〜4%(m/m)の第1金属及び0.1〜10%(m/m)の第2金属を含有している請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ゼオライトが、0.1〜0.5%(m/m)の第1金属を含有している請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ゼオライトが、1〜4%(m/m)の第2金属を含有している請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
Oを含有しているガスが、酸素及び/又は水を含有している請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
Oを含有しているガスが、本質的に炭化水素を含有しておらず、好ましくは50ppm未満の炭化水素しか含有していない請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
Oを含有しているガスが、NO(xは、1以上である)をも含有している請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
触媒が、NOの除去のためにも使用される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Oを含有しているガスを、触媒を含有するチャンバーを通して供給し、チャンバー、ガス又はこれらの両方は、必要に応じて加熱される請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
Oを含有するガス中のNOを触媒により分解するための触媒を調製する方法であって、触媒は、ゼオライトを含み、該ゼオライトに、最初に、ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる貴金属の群から選択される第1金属を担持させ、次に、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2金属を担持させる前記方法。
【請求項17】
ゼオライトに、イオン交換により第1金属を担持させる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1金属が、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
第2金属が、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ゼオライトが、FAU、FER、CHA、MOR、MFI、BEA、EMT、CON、BOG及びITQ−7からなる群から選択される請求項16から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項16から20のいずれかに記載の方法により得ることができる触媒。
【請求項22】
ゼオライトが、0.00001〜4%(m/m)の第1金属及び0.1〜10%(m/m)の第2金属を含有している請求項21に記載の触媒。
【請求項23】
第1金属が、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される請求項21又は22に記載の触媒。
【請求項24】
ゼオライトを含み、該ゼオライトが、ルテニウム、ロジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる貴金属の群から選択される第1金属と、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる遷移金属の群から選択される第2金属とを担持している触媒。
【請求項25】
第1金属が、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される請求項24に記載の触媒。
【請求項26】
触媒が、Si及びAlをベースとするゼオライトを含み、Alの2〜50%が第1金属により配位されている請求項21から25のいずれかに記載の触媒。
【請求項27】
ゼオライトが、平均第1金属濃度を有しており、いずれの局所の第1金属濃度も、平均第1金属濃度の50%を超えない濃度偏差を有する請求項21から26のいずれかに記載の触媒。
【請求項28】
ゼオライトが、FAU、FER、CHA、MOR、MFI、BEA、EMT、CON、BOG及びITQ−7からなる群から選択され、第1金属が、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される請求項21から27のいずれかに記載の触媒。
【請求項29】
金属を担持したゼオライトが、Fe−Rh−FER、Fe−Ir−FER、Fe−Ru−FER、Co−Rh−MOR、Co−Ir−MOR、Co−Ru−MOR、Fe−Rh−MOR、Fe−Ir−MOR、Fe−Ru−MOR、Co−Rh−FER、Co−Ir−FER、Co−Ru−FER、Fe−Rh−BEA、Fe−Ir−BEA、Fe−Ru−BEA、Co−Rh−BEA、Co−Ir−BEA及びCo−Ru−BEAからなる群から選択される請求項21から28のいずれかに記載の触媒。

【公表番号】特表2007−537858(P2007−537858A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527071(P2007−527071)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000371
【国際公開番号】WO2005/110582
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506377064)スティヒティング エネルギーオンダーゾーク セントラム ネーデルランド (7)
【Fターム(参考)】