説明

NADH/NADPHを含む組成物

【課題】本発明の目的は、抗酸化剤の内在的産生に加えて、その外来的取り込みをも可能にするために、貯蔵安定型で−180mV未満の低酸化還元電位を有する健康増進性抗酸化剤を提供することにある。
【解決手段】本発明は、−180mV未満の酸化還元電位を有する少なくとも1種の健康増進性の分離された抗酸化剤A、および前記抗酸化剤Aの標準酸化還元電位未満の標準酸化還元電位を有する少なくとも1種の安定化抗酸化剤Bを含む組成物に関する。また、本発明の組成物の用途およびその組成物の調製方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、組成物を調製するための方法、および組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従属栄養生物であるため、人間は、彼/彼女のエネルギー需要および実質的需要を満たすために、高分子(タンパク質、脂肪、炭水化物)を毎日必要とする。エネルギー代謝に関連して、ヒトの細胞は、多量栄養素の分解産物を、その分解物の電子を分子状の吸気酸素に渡すことによって、燃焼している。そうすることで、熱エネルギーおよび生化学的貯蔵エネルギーをATPおよび他の高エネルギーリン酸塩の形で貯蔵物として形成する。しかし、これら分解産物の大半は、新しい生物的構成物(たとえば、酵素、ホルモン、体細胞、結合組織材料)の生物的合成および再生のためにも使用される。こうした合成手順にも、電子と燃焼過程から放出される生物化学エネルギー(たとえばATP)との両方が必要とされる。酸化(化学構造を破壊することにより、エネルギーを放出する)も還元(エネルギー消費によって新しい生物的構造を構築する)も代謝過程であって、この過程によって電子が多量栄養素分子から渡される。このように、ヒトの体内で生じる全ての代謝過程は、酸化および還元工程、いわゆる酸化還元工程であって、この工程のために、「健康増進性」抗酸化剤は不可欠である。
【0003】
電子は、生物化学過程中では分離された状態では受け渡しできないので、細胞は、電子キャリアとも呼ばれる受け渡し分子を必要とする。基本的には、電子を反応相手に渡すあらゆる原子あらゆる分子が電子キャリアであるか、または、電子を渡される相手から見れば、それぞれ、電子供与体、還元剤、または抗酸化剤となる。電子を伝達する電位は分子によって異なる。標準の酸化還元電位は、その分子によってかけられる電子の圧力が強くなればなるほど低くなり、そのような電子の圧力が低くなればなるほど高くなる。低標準酸化還元電位を有する分子は、高エネルギーの電子を担持している。このエネルギーは、生化学的エネルギーか高次元の新しい生化学的構成物の合成に流れる。このことは、結局、ヒトの体の活力が食品中の高エネルギー電子の比率の高さに依存することを意味する。たとえば、NADHは、−320mVとその標準酸化還元電位が非常に低いために、ヒト代謝作用の最も重要でもっともエネルギー豊富な電子キャリアの中のひとつと格付けされる。NADHは、(同時にATP形成する一方で)、基本的にはエネルギーを回復させる目的で、分子状の吸気酸素に電子(結合「水素化合物」として)を渡す。この反応経路−これは酸化的リン酸化反応または呼吸鎖と呼ばれる−は、細胞のミトコンドリア中で生じる。このように、NADHは、いわば、細胞エネルギーの象徴である。
【0004】
NADHは、パーキンソン症およびアルツハイマー症、また疲労、無気力、慢性疲労症候群の場合に、認知能力、知的能力および運動能力を促進する。またNADHは、活力および意欲を高め、また場合によっては性欲障害および性交能力障害を排除することも報告されている。うつ病、学習および集中力の低下は、身体的緊張下および激しいスポーツで体力が低下するとまったく同じように、内在性NADH合成が制限されることに起因する可能性がある。最後になったが大事なのは、NADHは肝臓の合成作用および解毒作用を促進することである。
【0005】
しかし、このような「健康増進性」抗酸化剤の種類は他にも多く存在し、これらは生物自身で広く産生されている。したがって、基本的に、ヒトの生体は、たとえばNADHのようなこれら抗酸化剤を自身で蓄積することができる。NADHは、ナイアシンまたはその前駆体L−トリプトファン、またリン酸を配合する糖である5−ホスホリボシル−1−ピロリン酸(PRPP)、すなわち3リン酸残基を含むリボースから幾つかの代謝過程を経てまた高エネルギーを消費して酵素学的に形成される。このように形成されたニコチン酸リボヌクレオチドに対して、ATP(すなわちAMP)由来の分子状残基が渡される。最終合成過程でグルタミンアミノ基が渡されてNAD+が得られる。さらにリン酸塩(ATP由来)がこれらの分子に連結すると、そこからNADP(再生分子)を得ることになる。栄養分子からの水素化物の伝達による、NAD+の生物的活性化そのものは、ATPの生分解によって、すなわち高エネルギーを消費して同様に起こる。したがって、ナイアシンおよびグルタミンは、ATPおよび高エネルギー合成酵素の細胞貯蔵が十分に満たされた場合に、NADHの内在的合成を促進することになる。
【0006】
しかし、基本的には、生体の健康に不可欠な望ましい抗酸化剤を、食品を通して外来的に供給することもまた実現が可能である。しかし、その非常に低い標準酸化還元電位のために、これらの抗酸化剤は、酸素に対して非常に敏感であり、したがって、還元型では実際利用不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、抗酸化剤の内在的産生に加えて、その外来的取り込みをも可能にするために、貯蔵安定型で−180mV未満の低酸化還元電位を有する健康増進性抗酸化剤を提供することにある。この目的のためにその貯蔵安定性は、少なくとも6カ月間にわたり酸化分解および化学分解から抗酸化剤を守る程度に高くあるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、−180mV未満の酸化還元電位を有する少なくとも1種の分離された、健康増進性抗酸化剤A、および前記抗酸化剤Aを安定化し、前記抗酸化剤Aの標準酸化還元電位未満の範囲にある標準酸化還元電位を有する少なくとも1種の分離された抗酸化剤Bを含むことを特徴とする組成物によって達成される。
【0009】
標準酸化還元電位が抗酸化剤Aよりも低い抗酸化剤Bを提供することによって、驚くべきことに、抗酸化剤Aは、従来の組成物とは異なり、十分貯蔵安定性を保持し分解に対して保護されることがわかった。
【0010】
たとえば、欧州特許1161884A1は、NADHを含む食品添加物が、ビタミンEによって安定化されることを開示している。その上、ビタミンEは、本発明による抗酸化剤Bよりも高い標準酸化還元電位を有している。すなわち、たとえば、トコフェロールは、+300mVの標準酸化還元電位を有している。
【0011】
米国特許5,332,727および5,952,312は、NADHおよびNADPHをそれぞれと、NaHCO3、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、トコフェロール、酢酸トコフェロール、またはポリビニルピロリドンを安定剤として含む組成物に関する。さらに、これらの安定剤もまた、本発明による抗酸化剤Bよりも高い標準酸化還元電位を有し、これらは、たとえばNADHまたはNADPHを、低い標準酸化還元電位によって最適に安定化しやすいというわけではない。たとえば、アスコルビン酸は、酸化還元電位+80mVを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の組成物の例8種の長期安定性試験の結果(2002年4月22日ま で)を示す図である。
【図2】図1に2002年7月22日の結果を加えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
組成物中に供される抗酸化剤は、合成物でも天然由来でもよく、ここでは、抗酸化剤が、分離型、すなわち精製された形で提供されることが不可欠であり、前記にすでに指摘したように、1種の分離された抗酸化剤、または保護すべき抗酸化剤Aよりも低い標準酸化還元電位を有する少なくとも1種の抗酸化剤Bを有する分離された複数の抗酸化剤の混合物を提供することが実現可能である。「分離された」によって、精製された抗酸化剤が、組成物中に天然の混合物、すなわち天然に存在する混合物、よりも高い濃度で存在することが理解される。このような濃度は、安定剤、塩および他の補助的物質を除く組成物の20%を超えることが好ましく、好ましくは40%、より好ましくは60%である。抗酸化剤Bの酸化還元電位は、たとえば、−190mV未満、−320mV未満または−600mV未満であってよい。
【0014】
用語「抗酸化剤A」は、酸化還元電位−180mV未満を有する健康増進性抗酸化剤を意味するものであって、用語「健康増進性」は、抗酸化剤がヒトまたは動物の生体の機能に重要であることを意味する。好ましくは、これら抗酸化剤には、すでにヒトまたは動物の生体で産生されているが、体内自体では、生来の疾患または外因的影響によって非常に低い濃度で内在的に産生されているので、最適な健康状態を供するために、外来的に供給することが不可欠であるものが含まれる。この種の抗酸化剤Aには、NADH、NADPH、FADH2、FMNH2、FADH、FMNHなどが含まれる。
【0015】
本出願との関連では、組成物中に存在する、抗酸化剤Aよりも低い酸化還元電位を有する抗酸化剤を示すのに、用語「抗酸化剤B」を使用し、それにより抗酸化剤Aが抗酸化剤Bによって安定化されることになろう。そうすることによって、とりわけ、前記抗酸化剤はヒトまたは動物の生体の健康に何ら直接的影響も及ぼさないことになろう。
【0016】
標準酸化還元電位−190mVを有するただ1種の抗酸化剤A、たとえばFADHが組成物中に存在しているとすると、酸化還元電位でFADHを安定化させるためには、組成物中に標準酸化還元電位−190mV未満を有する抗酸化剤Bがあればよい。一方で、もしFADH以外に組成物中に、より低い酸化還元電位を有する、たとえば、FADH2(−220mV)および/またはFMNH2(−220mV)などの第2のまたは数種の他の抗酸化剤Aが存在しているなら、標準酸化還元電位−220mV未満を有する少なくとも1種の抗酸化剤Bが、組成物中に存在していることになる。−190mV未満の酸化還元電位を有する抗酸化剤Bは、補助的に存在し得ることは言うまでもない。組成物中に含まれる抗酸化剤Bが1種または数種かどうかは、製造工程、コスト要因、および他の要因によって示される適用上の選択肢の関数として、個々の事例で決定しなければならないであろう。どの事例にも必要不可欠なのは、最も低い酸化還元電位を有する抗酸化剤Aの安定化のために、さらに低い酸化還元電位を有する抗酸化剤Bが常に存在することである。
【0017】
抗酸化剤Aと抗酸化剤Bとの相違は、抗酸化剤Aが、健康増進作用を有するのに対して、抗酸化剤Bが、必ずしもというわけではないが、まず第一に、抗酸化剤Aを安定化させるために働くことにある。
【0018】
もし抗酸化剤AがNADH、NADPH、還元型αリポ酸、還元型グルタチオン、FADH2、FMNH2、FADH、および/またはFMNHからなる群から選択されるならば、特に有利である。これらの抗酸化剤は下記の酸化還元電位を有する。
【0019】
還元型αリポ酸:−290mV、グルタチオン:−230mV、FADH2:−220mV、FMNH2:−220mV、FADH:−190mV、FMNH:−190mVおよびNADH:−320mV。これらの抗酸化剤は、ヒトおよび動物の生体の健康に特に重要であり、−180mV未満の標準酸化還元電位を有する。これらの物質は、非常に敏感であるので、抗酸化剤をたとえば化学的に変化させず、また有害な保存剤と混和させずに、貯蔵安定型で利用することは難しい。これら抗酸化剤は全て一緒に組成物中に存在させ得ることは言うまでもない。その場合、全ての抗酸化剤Aを安定化させるために抗酸化剤Bを十分な量存在させることが唯一重要となる。
【0020】
組成物は、たとえば、従来食品、栄養補助食品、ダイエット食品、薬品など、加工に適した形ならいかなる形で提供されてもよい。
【0021】
抗酸化剤Bは、好ましくはクロロフィルおよび/または還元型フェレドキシンである。驚くべきことに、−180mV未満の酸化還元電位を有する抗酸化剤の分解を防止する手段として、クロロフィルが特に好ましいことが判明した。ここでは、たとえば、クロロフィルA、B、C、および/またはD、光化学系IIクロロフィルよりも低い酸化還元電位を有する光化学系Iクロロフィルを、1種または数種、提供することが実現可能である。
【0022】
特に好ましくは、組成物はさらに酸素隔離物質を含む。もし、酸素隔離物質が、抗酸化剤Bに加えて組成物中に提供されるなら、抗酸化剤Aと酸素との任意の接触も阻まれ、つまり、抗酸化剤Aの酸化過程が防止されることになる。この場合においても、もちろん、ただ1種のみだけでなく、2種ないしは数種の異なる酸素隔離物質を組成物中に提供するのが実用可能である。ここで、用語「酸素隔離物質」には、抗酸化剤Aと酸素とのいかなる接触も減らすかまたは大きく阻害するいかなる物質または物質組成物も含まれる。
【0023】
好ましくは、前記酸素隔離物質は、含油物質である。含油物質は、本発明による組成物の酸素隔離剤として特に適する。というのは、これらが、酸素と組成物中の抗酸化剤Aとの任意の接触を有効に阻害するかまたは少なくとも強力に削減するためであり、また数多くの含油物質が健康増進性を有することが知られているからでもある。また、含油物質は1種ばかりでなく、種々(たとえば、数種の不飽和脂肪酸または起源を異にする種々油脂などを含む油性物)使用することも、もちろん実現可能である。
【0024】
このような状況で、酸素隔離物質が、少なくとも1種の別種抗酸化剤Cからなる含油物質であれば特に適切である。この抗酸化剤Cによって、抗酸化剤Aはさらに保護される。というのは抗酸化剤Aの酸化分解が、抗酸化剤Bによって防止されるのみならず、この含油物質によっても二重に防止されるからである。つまり、第1に、抗酸化剤Aと酸素との接触が防止されるかまたは大きく減少し、第2に、酸素の存在下では、後者が油性物質に含まれる抗酸化剤Cによってすでに減っているからである。
【0025】
特に好ましくは、酸素隔離物質はビタミンE、特に、トコトリエノールを抗酸化剤Cとして含む。ビタミンEは、たとえばコレステロール低下性、細胞保護性などの補助的な健康増進性を提供する抗酸化剤である。この点については、ビタミンEを1種(たとえば、トコフェロールタイプ)または少なくとも2種以上のビタミンEを提供することが実現可能である。その際は、トコトリエノールを提供するならば特に有益である。なぜならば、トコトリエノールが合成トコフェロールよりも50〜100倍高い抗酸化性を有しているからである。親油性の抗酸化剤であるので、トコトリエノールは、核(遺伝物質)、ミトコンドリア(細胞のエネルギー供給源)、小胞体(細胞の合成物出力部)および細胞膜(組織の安定性および生存)の抗酸化的保護に関連する重要な生物的役割を果たしている。栄養医学におけるトコトリエノールの適用分野には、たとえば、免疫系、心臓血管系、筋肉/腱/関節複合体、解毒器官としての肝臓、皮膚、および神経系の再生過程が挙げられる。トコトリエノールもトコフェロールも両者が酸素隔離物質中に提供され得ることは言うまでもない。
【0026】
特に好ましい組成物で、利用可能なものは、前記抗酸化剤Aおよび前記抗酸化剤Bが10:1から1:10、好ましくは3:1から1:3の間の比率で供給される。
【0027】
これらの比率は、抗酸化剤Aを保護するために最適な比率であって、特に1:1〜1:3の比率は、抗酸化剤Aに対する包括的な保護を与える。
【0028】
好ましくは、組成物はさらに1種または数種の補助剤を含む。組成物の用途のタイプによっては、このような補助剤には薬学的に許容可能な担体、乳化剤、安定剤、着色剤、香味剤、補助的な医薬剤、食品工学補助剤などが含まれる。たとえば、シリカは、担体として特に適する。というのもシリカが中性で構成成分の酸化還元電位に何の影響も与えないからである。
【0029】
本発明のさらに別の態様では、本発明による上記記載の組成物の栄養補助剤としての用途に関する。このように、抗酸化剤Aは、病気にかからずとも、医学的処置を施されずとも、たとえば多くのヒトを特に春に悩ます疲労などの場合に、栄養補助剤として簡単に服用できる。激しいスポーツ活動、試験ストレス下などの高次の動作を伴う時でさえ、組成物を栄養補助剤の形で取り入れることができる。この目的で、組成物は、従来型の栄養補助剤、食品またはダイエット食品中に提供される。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、本発明による上記規定の組成物の薬物としての用途に関する。また、抗酸化剤Aの摂取は、慢性疲労症候群、うつ病または運動性低下のような疾患の場合に、特にプラスの効果を示すので、本発明による組成物を薬物の形態で提供することが好適である。一般的な薬物形態もまた本発明で提供されている。
【0031】
本発明の別の態様は、酸化的リン酸化を促進する薬剤、認知能力、知的能力および/または運動能力を促進する薬剤、肝臓の合成および解毒作用を促進する薬剤、疲労、無気力、性欲障害、および性交能力障害、うつ病、学習および集中力の低下を治療する薬剤からなる群から選択される薬剤を調製するための本発明による上記記載の組成物の用途に関する。
【0032】
驚くべきことに、本発明による組成物は、これらの適用分野で特に有効であることが示されてきている。
【0033】
さらに、組成物が錠剤、液剤、カプセル剤、コーティング錠、シロップ剤、ローション剤、クリーム剤、または散剤の形で提供されると有益である。
【0034】
使用分野によっては、どれかひとつの形態がより適する。つまり、錠剤、カプセル剤、コーティング錠、またはシロップ剤は、たとえば、栄養補助剤として適切である。もし組成物が皮膚を通してまたは皮膚上で作用すべきものであれば、ローションまたはクリームが特に好適となろう。当分野の技術者なら、その個々の形態について必要な補助剤を選択し得るであろう。
【0035】
本発明の別の態様は、上記に記載したような本発明による組成物を調製する方法に関する。ここでは、抗酸化剤A、抗酸化剤B、任意選択で酸素隔離物質をお互いに混合しあい、その組成物を任意選択で、錠剤、液剤、カプセル剤、コーティング錠、シロップ剤、ローション剤、クリーム剤または散剤に加工する。
【0036】
たとえば、混合工程は、混合ドラムまたは何らかの容器で自動または手動で行ってもよい。さらに、加工はそれ自体公知の方法で行う。本発明による方法の利点は、抗酸化剤Bによってすでに保護されているので、抗酸化剤Aを保護するために他の手段をとる必要がないという事実にある。
【0037】
抗酸化剤A、抗酸化剤Bおよび任意選択で酸素隔離物質を不活性ガスの下で混合するなら特に好ましい。このような不活性ガスは、たとえば、窒素であって、これによって組成物に対する酸素のアクセスが補助的に阻害され低下する。したがって抗酸化剤Aが酸化される危険性がさらに低下する。
【0038】
組成物が、不活性ガスの下で加工されるのであればさらに好ましい。この場合にも、不活性ガスはたとえば窒素である。ここで、混合工程も、錠剤、液剤、カプセル剤、コーティング錠剤、シロップ剤、ローション剤、クリーム剤または散剤への加工工程もともに、不活性ガスの下で行うので、全ての工程を酸素の侵入を防止するかまたは低下させる方法で行うことになり、特に有益である。
【0039】
本発明は、下記実施例および添付の図面によってより詳細に説明するものである。しかし、本発明は、異なる組成物の貯蔵安定性を比較説明している図1および2に限定されるものではない。
【0040】
実施例1:種々の組成物の調製
本実施例では、NADH(−320mV)を抗酸化剤Aとして使用した。酸素隔離性油性物または強力な抗酸化剤によるNADHの保護作用を具体化するために、NADHと高トコトリエノールのコムギ種子油(以下油性物と呼ぶ)との混合物およびクロロフィルを、−660mVの酸化還元電位を有する抗酸化剤Bとして、補助物質として不活性のエアロジルを使用して調製した。
配合物1番: NADH 20mg
油性物 20mg
エアロジル 20mg
配合物2番: NADH 20mg
油性物 60mg
エアロジル 30mg
配合物3番: NADH 20mg
クロロフィル 20mg
エアロジル 20mg
配合物4番: NADH 20mg
クロロフィル 80mg
エアロジル 20mg
配合物5番: NADH 20mg
油性物 20mg
クロロフィル 20mg
エアロジル 20mg
配合物6番: NADH 20mg
油性物 20mg
クロロフィル 60mg
エアロジル 20mg
配合物7番: NADH 20mg
エアロジル 20mg
配合物8番: NADH 20mg
油性物 20mg
クロロフィル 60mg
エアロジル 20mg
配合物1〜7番は、不活性ガスとして窒素の下で混合し、続いて硬質ゲルカプセル中に充填し、ポリプロピレン容器に詰めた。
【0041】
配合物8番は、酸素を不活性ガスとして使用せずに混合し、続いて同様に、窒素で保護することなくカプセル化し、ポリプロピレン容器に充填した。
【0042】
実施例2:個々の組成物の貯蔵安定性試験
8種のテスト標本の全てを25℃及び相対湿度60%の長期条件下で6カ月間貯蔵し、1カ月間隔で化学的分析調査を行った。分析はNADHからNAD+へのまたは他の化合物への酸化分解を測定することを目的とした。
【0043】
分析操作は下記条件下で実施した。
【0044】
分析パラメーター
HPLC: アジレント(Agilent)1100シリーズ;
四進ポンプ、自動採取器、カラム温度調整、および
可変波長検出器(VWD)または蛍光検出器(FLD)
を各々付属
分離カラム: リクロスファー(LiChrospher)(商標)100
RP−18(5μm)250×4mm(含、ガードカラム
4×4mm)
カラム温度調整: 25℃
溶離液: 900mlのH2O、60mlのCH3CN、23mlの
THF、1mlのリン酸および1.2gの
オクタンスルホン酸ナトリウム(NaOSS)
流量: 1.5ml/分
検出: VWD:260nm
FLD:励起:290nm、発光:395nm
保持時間: NADH:1.04分
NAD+:1.34分
標準化
商業的に入手可能なNADH(ファネンシュミット社(Pfannenschmidt GmbH)およびNAD+(シグマアルドリッチ社)のそれぞれのストック溶液の連続希釈物を利用して、2つの物質の直線検量線が、1〜50mg/l(FLD)および10〜200mg/l(VWD)の範囲でそれぞれ決定できた。
【0045】
各配合物の分析に、濃度のためにVWDを使用するが、より少量の検出にはFLDでも実行可能であろう。
【0046】
分析の実行
カプセルの内容物を、螺子栓付瓶に入れ、50mlの蒸留水を補給し、1分激しく攪拌する。
【0047】
懸濁物をスプレイフィルター(サルトリウスミニサート(Sartorius Minisart)RC25、0.45μm)でろ過し、溶液をバイアルに充填し、そこでNADHおよびNAD+の濃度を外部標準法によるHPLC/VWDで測定した。
【0048】
結果
サンプル1番〜8番のNADHの含有量の評価を表および図面に表示する。
【0049】
【表1】

【0050】
これらの評価から明らかなように、NADHは、酸化に敏感であるため保護物質の添加なしでは化学的に不安定である(サンプル7)。
【0051】
サンプル1および2ではNADHの酸化分解によって、油性溶液(たとえ、トコトリエノールを含んでいても)による酸素からの遮蔽が、ある程度保護効果を有することが実証されるが、何時間にもわたってNADHの酸化分解(遅らせるとはいえ)を完全に防ぐことはできない。
【0052】
これに反し、−600mVと非常に酸化還元電位が低く、したがってたとえば大気からの酸素によるNADH(−320mV)の酸化を防ぐことができると思われるクロロフィルを添加することが、最適であることがわかった(サンプル3番)。また、クロロフィルと高トコトリエノール油性物の組合せも、サンプル5番および6で実証されるように非常に有利であることもわかった。サンプル8番の値からは、クロロフィルおよび高トコトリエノール油性物の抗酸化保護力が高いので、適切な混合物をカプセル、錠剤または他の剤形へ、さらに加工することが不活性ガスによる保護無しでも可能であるように見える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−180mV未満の酸化還元電位を有する少なくとも1種の分離された健康増進性抗酸化剤Aで、NADH、NADPH、FADH2、FMNH2、FADH、およびFMNHからなる群から選択されたもの、および前記抗酸化剤Aを安定化し、前記抗酸化剤Aの標準酸化還元電位未満範囲にある酸化還元電位を有する少なくとも1種の分離された抗酸化剤Bを含み、この際前記抗酸化剤Bが、クロロフィルおよび/または還元型フェレドキシンであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
酸素隔離物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸素隔離物質が、含油物質であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸素隔離物質が、少なくとも1種の別の抗酸化剤Cを含む含油物質であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸素隔離物質が、前記抗酸化剤CとしてビタミンEを含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ビタミンE抗酸化剤Cがトコトリエノールを含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗酸化剤Aおよび抗酸化剤Bが、10:1から1:10の間の比率で供給されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗酸化剤Aおよび抗酸化剤Bが、3:1から1:3の間の比率で供給されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
1種または数種の補助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の栄養補助剤としての使用。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の薬物としての使用。
【請求項12】
酸化的リン酸化を促進する薬剤、認知能力、知的能力および運動能力を促進する薬剤、肝臓の合成および解毒作用を促進する薬剤、疲労、無気力、性欲障害および性交能力障害、うつ病、学習および集中力の低下を治療する薬剤からなる群から選択される薬剤を調製するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
錠剤、液剤、カプセル剤、コーティング錠、シロップ剤、ローション剤、クリーム剤、散剤の形態で提供されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗酸化剤A、前記抗酸化剤B、ならびに任意選択で酸素隔離物質を互いに混合し、前記組成物を、錠剤、液剤、カプセル剤、コーティング錠、シロップ剤、ローション剤、クリーム剤または散剤に任意選択で加工することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項15】
前記抗酸化剤A、前記抗酸化剤B、および任意選択で前記酸素隔離物質を不活性ガスの下で混合することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物を不活性ガスの下で加工することを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−144186(P2011−144186A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39874(P2011−39874)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【分割の表示】特願2004−552258(P2004−552258)の分割
【原出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願人】(502400072)ヌートロピア エアネールングスメディツィニッシェ フォーシューンクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (2)
【Fターム(参考)】