説明

NF−κBの阻害

【課題】腫瘍細胞において野生型p53活性を回復させることができる物質を同定すること。
【解決手段】アミノアクリジンは、NF−κBのインヒビターである。NF−κBの阻害は、機能的にブロックされたp53を有するガン細胞においてp53の再活性化をもたらす。NF−κB活性に関連する状態を処置する方法であって、NF−κBのインヒビターを含む組成物を、その必要がある患者に投与する工程を包含する、方法。前記NF−κB活性は、構成的であるかまたは誘導されたものであり得る。前記NF−κB活性が基底レベルにあり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願では、その内容が本明細書中に参考として援用される、2004年7月20日に提出された米国仮特許出願番号60/589,637の利益を主張する。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、細胞増殖またはアポトーシスの調節に広く関係する。さらに具体的には、本発明は、細胞増殖またはアポトーシスの調節のための組成物、その使用方法、およびその同定方法に関係する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の説明)
ヒトにおけるガンの頻度は、先進国世界においては集団の年齢が上がるとともに増大する。いくつかのタイプのガンと診断時の病期については、広く研究されているにもかかわらず、罹患率および死亡率は、近年、有意には改善されていない。プログラムされた細胞死、すなわち、アポトーシスの誘導は、最も興味深いガンの治療方法の1つである。
【0004】
p53は遺伝子の安定性を制御し、そして、DNAの損傷またはプロトオンコジーンの脱調節に応答して、増殖の停止またはアポトーシスの誘導を通じてガンのリスクを低下させる。腫瘍予防因子としてのp53の効力は、不活化変異が原因で生じる、ヒト腫瘍の少なくとも50%におけるp53の消失の頻度によって反映される。野生型p53の機能の不活化についてのいくつかの機構がヒトの腫瘍について記載されており、これには通常は、プロテアソームを介し、そしてMdm2によって媒介されるp53の過剰な分解が含まれる。Mdm2は、低分子による抑制のため、あるいは、p53機能の回復により腫瘍細胞を選択的に死滅させるための他のアプローチについての興味深い標的と考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腎細胞ガン(RCC)は野生型ではあるが機能的には不活性であるp53を維持している。RCCにおけるp53の抑制の機構は優勢であり、これは、ガンにおけるp53機能の回復についての、これまでのところはまだ知られていない分子標的の存在を示している。腫瘍細胞において野生型p53活性を回復させることができる物質を同定することが大いに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
NF−κB活性に関連する状態は、NF−κBのインヒビターを含む組成物をその必要がある患者に投与することによって処置することができる。NF−κB活性は構成的である場合も、誘導されたものである場合も、または基底レベルである場合もある。NF−κBの阻害によってp53が活性化される場合もある。NF−κBの阻害によって機能的にサイレントであるp53が活性化させられる場合もある。処置される状態は、ガン、炎症、自己免疫疾患、対宿主性移植片病、HIV感染に関連する状態、または構成的に活性なNF−κBに依存して獲得された前ガン細胞であり得る。処置することができるガンの形態としては、腎細胞ガン、肉腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、骨髄腫、骨髄性白血病およびリンパ芽球性白血病、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、HTLV感染によって引き起こされるガンが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0007】
NF−κBのインヒビターは以下の式のアミノアクリジンであり得る:
【0008】
【化2】

ここで、
は、Hまたはハロゲンであり;
は、Hまたは必要に応じて置換されたアルコキシであり;
は、Hまたは必要に応じて置換されたアルコキシであり;そして
は、Hまたは必要に応じて置換された脂肪族、アリール、もしくは複素環である。
【0009】
アミノアクリジンは9−アミノアクリジンまたはキナクリンであり得る。組成物にはさらに、TNFファミリーのポリペプチドの死受容体の活性化因子が含まれる場合がある。活性化因子は、TNFポリペプチド(例えば、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、TNF−α、CD134L/OX40L、CD27L/CD70、FasL/CD95、CD30L、TNF−β/LT−α、LT−β、またはTRAIL)であり得る。
【0010】
機能的にサイレントなp53を調節する物質は、候補の物質を、p53応答性レポーターを含む細胞に対して加え、そしてp53応答性レポーターのシグナルのレベルを測定することによって同定することができる。この物質は、対照と比較したシグナルの差によって同定することができる。この物質はp53の活性を増大させる場合も、また低下させる場合もある。細胞には、機能的にサイレントなp53が含まれる場合がある。
【0011】
NF−κBを調節する物質は、候補の物質を、p53応答性レポーターを含む細胞に対して加え、そしてp53応答性レポーターのシグナルのレベルを測定することによって同定することができる。この物質は、対照と比較したシグナルの差によって同定することができる。この物質はNF−κBの活性を増大させる場合も、また低下させる場合もある。細胞には、機能的にサイレントなp53が含まれる場合がある。細胞には、NF−κBトランス活性化複合体も含まれる場合がある。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
NF−κB活性に関連する状態を処置する方法であって、NF−κBのインヒビターを含む組成物を、その必要がある患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記NF−κB活性が構成的であるかまたは誘導されたものである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記NF−κB活性が基底レベルにある、項目1に記載の方法。
(項目4)
NF−κBの阻害によってp53が活性化される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記状態がガンである、項目1に記載の方法。
(項目6)
NF−κBの阻害によって、機能が損なわれた野生型p53の活性化が誘導される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記ガンが、腎細胞ガン、肉腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、骨髄腫、骨髄性白血病およびリンパ芽球性白血病、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、およびHTLV感染によって引き起こされるガンからなる群より選択される、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記状態が、炎症、自己免疫疾患、対宿主性移植片病、またはHIV感染に関連する状態である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記状態が、構成的に活性なNF−κBに依存して獲得された前ガン細胞である、項目1に記載の方法。
(項目10)
NF−κBのインヒビターが以下の式:
【化1】


のアミノアクリジンであり、ここで、
は、Hまたはハロゲンであり;
は、Hまたは必要に応じて置換されたアルコキシであり;
は、Hまたは必要に応じて置換されたアルコキシであり;そして
は、Hまたは必要に応じて置換された脂肪族、アリール、もしくは複素環である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記アミノアクリジンが、9−アミノアクリジンおよびキナクリンからなる群より選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記組成物はさらに、TNFファミリーのポリペプチドの死受容体の活性化因子を含む、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記活性化因子が、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、TNF−α、CD134L/OX40L、CD27L/CD70、FasL/CD95、CD30L、TNF−β/LT−α、LT−β、およびTRAILからなる群より選択されるTNFファミリーのポリペプチドである、項目12に記載の方法。
(項目14)
機能的にサイレントなp53を活性化させる物質をスクリーニングする方法であって:
(a)候補の物質を、p53応答性レポーターを含む細胞に対して加える工程;
(b)該p53応答性レポーターのシグナルのレベルを測定する工程
を包含し、それによって、(b)での対照を上回るシグナルによって物質が同定される、方法。
(項目15)
前記細胞が、機能的にサイレントなp53を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
NF−κBを阻害する物質をスクリーニングする方法であって:
(a)候補の物質を、p53応答性レポーターを含む細胞に対して加える工程;
(b)該p53応答性レポーターのシグナルのレベルを測定する工程
を包含し、それによって、(b)での対照を上回るシグナルによって物質が同定される、方法。
(項目17)
前記細胞が機能的にサイレントなp53を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記細胞がNF−κBトランス活性化複合体を含む、項目16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、RCC細胞中でのp53によって媒介されるトランス活性化の回復がRCC細胞の死によって行われることを示している。図1A:種々の濃度のp53またはGFPを発現するレンチウイルスベクターを形質導入したRCC45ConALacZ細胞中でのp−53応答性レポーターの活性。β−ガラクトシダーゼ活性(ONPG染色)を、レンチウイルスの形質導入の48時間後に測定し、タンパク質濃度によって正規化した。図1B:細胞の生存率を、レンチウイルスの形質導入の96時間後にメチレンブルー染色によって測定し、同じ濃度のGFPウイルスを形質導入した同じ細胞に対する、p53ウイルスを形質導入した細胞のメチレンブルー染色の強度の割合として示した。
【図2】図2は、化合物1の式の物質のp53回復活性を示す。図2A:読み出し細胞の選択と選択基準の設定。MCF7、ACHN、RCC26b、およびRCC45細胞(全て、ConALacZレポーターを含む)を96ウェルプレートにプレートし、種々の濃度のドキソルビシンを含む培地の中で24時間インキュベートした。その後、β−ガラクトシダーゼ活性をONPG染色によって測定し、タンパク質濃度によって正規化した。図2Bは、9AAがRCC45細胞中でp53依存性レポーターの最も強い活性を引き起こすことを示している。化合物1の式の物質を、RCC45ConALacZ細胞中でのp53トランス活性化について、用量依存性アッセイにおいて試験した。棒は2μMのドキソルビシンの効果を上回る、化合物によって誘導されたp53の活性化の倍数として計算したそれぞれの化合物の相対的活性を示す(3回の実験の結果)。
【図3】図3は、9AAが様々な腫瘍細胞の中でp53の転写活性を誘導することを示している。図3Aは、9AAが用量依存性の様式でp53応答性レポーターを誘導することを示している。RCC45ConALacZ細胞およびMCF7ConALacZ細胞を、示した濃度のドキソルビシン(dox)または9AA(全ての濃度をμMで示す)を含む培地の中で24時間インキュベートし、その後、β−ガラクトシダーゼ活性をONPG染色によって測定し、タンパク質含有量によって正規化し、そして未処理の細胞と比較したレポーターの誘導の倍数として示した。図3Bは、9AAが内因性p53依存性標的の発現を誘導することを示している。10μMの9AAまたは2μMのドキソルビシンで示した時間(時間)の間処理し、そして抗p53、抗Hdm2、または抗p21抗体でプローブしたRCC45細胞およびMCF7細胞の全細胞溶解物のウェスタンブロット分析。図3Cは、9AAが試験した腫瘍細胞の大部分においてドキソルビシンよりも強くp53を活性化することを示している。p53応答性レポーターが組み込まれている示した細胞を、種々の濃度の9AA(1〜10μM)およびドキソルビシン(dox、0.2〜2μM)で24時間処理し、その後、β−ガラクトシダーゼ活性をONPG染色によって測定し、タンパク質含有量によって正規化した。データは、doxの効果を上回る9AAの最も有効な用量による、未処理の対照を上回るレポーターの誘導の倍数として示した。図3Dは、9AAがp53依存性の様式でβ−ガラクトシダーゼ活性を誘導することを示している。抗p53または抗GFP siRNAを発現する構築物を形質導入したHT1080ConALuCを、5μMの9AAで24時間処理した。棒は、未処理の対照を上回るp53応答性レポーターの誘導の倍数を示す。囲みは、基本的な条件、およびドキソルビシンで処理した条件の両方の細胞変異体の全タンパク質溶解物中でのp53の発現についてのウェスタンブロットを示す(p53の基底レベルとDNA損傷によって誘導されたレベルを評価するため)。図3Eは、9AAで24時間処理したHT1080ConALuc細胞中のp53応答性レポーターの活性の用量応答曲線を示す(タンパク質濃度に対する正規化は行わなかった)。誘導倍数は、未処理の対照を上回るレポーターの活性化の倍数として示した。図3Fは、9AAのp53誘導効果の時間依存性を示している。HT1080ConALuC細胞を20μMの9AAで1時間処理し、その後、β−ガラクトシダーゼ活性を示した時点で測定した。誘導倍数を未処理の対照を上回るレポーター活性化の倍数として示した。
【図4】図4は、9AAに伴う細胞傷害性がp53依存性であることを示している。図4Aは、示した濃度の9AAで処理したHT1080−sip53およびHT1080−siGFP細胞の生存率(「材料および方法」の項を参照のこと)を、未処理の対照と比較した細胞の割合として示した結果とともに示している。図4Bは、図4Aについて記載した様式で試験した種々のレベルのp53を用いた細胞の他の対を示している。上段のパネルは、作成した細胞の対におけるp53タンパク質レベルのウェスタンブロット分析を示している。下段のパネルは、未処理の対照(100%)と比較した9aa(2μM)での処理後の細胞の相対数を示している。図4Cは、3もしくは20μMの9AAで示した時間の間、または2μMのdoxで24時間処理した、HT1080 sip53細胞またはHT1080 siGFP細胞の細胞周期分析を示している。図4Dは、種々の薬物の細胞傷害性のp53依存性を示している。図4Aに記載したものと同じ実験を、30d9(最初のヒット、9aaのアナログ、1〜10μM),ドキソルビシン(dox、0.1〜1μM)、カンポテシン(campothecin)(camp、0.16〜1.6μM)、ビンブラスチン(vinbl、0.1〜1μM)、およびタキソール(tax、0.06〜0.6μM)を使用して行った。棒は薬物の用量についてプロットし、これは、p53「+」細胞とp53「−」細胞の間での感度の最大の差を示している。図4Eは、9AAが正常な腎臓上皮細胞(NKE)よりもRCCに対してより高い毒性があることを示している。図4Aに記載したものと同じ実験を、NKE、RCC45、RCC54、およびACHN細胞を用いて行った。図4Fは、9AAが低濃度でRCCに対してより毒性があることを示している。いくつかの細胞型(NKE−正常な腎臓上皮細胞、RCC45、ACHN−RCC細胞株、HCT116−結腸ガン、p53野生型、SK−N−SH−神経芽細胞腫、p53野生型、LNCaP前立腺線ガン、p53野生型、DU145、PC3−前立腺ガン、p53欠損、Mel7、Mel29黒色腫、リー−フラウメニ癌症候群の患者由来の041−線維芽細胞、p53ヌル、WI38−正常なヒト2倍体線維芽細胞)を、図4Aに記載したように2μMの9AAで処理し、細胞の生存率を対応する未処理の細胞と比較した。
【図5】図5は、化合物1の式の物質が、活性なp53を有している腫瘍細胞に対して毒性であることを示している。図5Aは、複数の物質のインビボでのp53誘導効果を示している。HT1080ConALuC細胞をヌードマウスの両方の脇腹に接種した。腫瘍が5mmの直径に達した時点で、マウスに示した濃度の薬物(mg/kg、1つのグループについて3匹のマウス)を腹腔内注射した。24時間後にマウスを屠殺し、腫瘍を単離し、レポーター溶解試薬(Reporter Lysis Reagent(Promega))の中で溶解させ、ルシフェラーゼ活性を10mgの腫瘍タンパク質中で測定した。棒は、媒体で処理した腫瘍の中でのルシフェラーゼ活性を上回る、薬物で処理した腫瘍内でのルシフェラーゼ活性の誘導の倍数を示している。図5B:HT1080sip53細胞またはHT1080siGFP細胞を、それぞれ、ヌードマウスの左脇腹および右脇腹に接種した。腫瘍が5mmの直径に達した時点で、マウスに媒体(PBS中の50%のDMSO)、キナクリン(QC、50mg/kg)、および5−フルオロウラシル(5FU,35mg/kg)を24時間おきに腹腔内注射した(1つのグループについて5匹のマウス)。結果は、処置の第1日目の腫瘍容積と比較した、個々の腫瘍の相対的な腫瘍容積の平均として示す。
【図6】図6は、9AA活性について考えられる機構の試験を示している。図6Aは、9AAで処理した細胞中でのDNA−トポイソメラーゼII複合体形成の測定を示している。図6Bは、9AA(5μM)またはdox(1μM)で16時間処理したRCC45細胞中でのp53のリン酸化状態を示している。全タンパク質溶解物のウェスタンブロット分析を、p53(DO1)に対する抗体と、p53の中の特異的なリン酸化部位に対する抗体を使用して行った。図6Cは、プロテアソーム活性に対する9AAの効果を示している。HCT116細胞を1μMのPS−341で30分間処理した。PS−341を30分後に洗浄し、処理後3時間または16時間での分析前に、細胞を、薬物を含まない培地の中で再度インキュベートした。9AAの場合には、細胞を2μMの9−アミノアクリジンで、分析の前に3時間または16時間継続して処理した。プロテアソーム活性は、AMC−蛍光性ペプチドの切断によって生じる遊離のAMCの吸光度を測定することによって決定した。未処理の細胞のプロテアソーム活性を100%に設定した。図6Dは、9AAでの処理後のIκB−αリン酸化の状態を示している。PC−3細胞を10μMの9−アミノアクリジンで1時間、2時間、4時間、および8時間、または10μMのMG−132で8時間処理した。細胞溶解物を処理後の示した時間で単離し、ウェスタンブロッティングに使用した。ブロットを、IκB−αのリン酸化形態に特異的な抗体およびリン酸化されていない形態に特異的な抗体の両方でプローブした。β−アクチン特異的抗体をローディング対照として使用した。図6Eは、9AAでの処理によってIκB−αタンパク質レベルの低下が導かれることを示している。ウェスタンブロット分析は、抗IκB抗体とともに、1μMのドキソルビシン(dox)および10μMの9AAの中で8時間インキュベートしたMCF7細胞を示している。
【図7】図7は、NF−κB経路に対する9AAの効果を示している。図7Aは、9AAがNF−κB依存性の転写を阻害することを示している。H1299−NF−κBLuc細胞を種々の濃度の9AAおよびキナクリン(QC)で、TNFa(10ng/ml)の前(9AAまたはQCの後にTNF)またはTNFaと同時(TNFと9AAまたはQC)に、2時間処理した。TNFaの添加の6時間後に、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を測定した。図7Bは、9AAがTNFによって刺激されたIκBレベルの再構成を阻害することを示している。HT1080細胞をTNF(10ng/ml)で、9AA(10μM)の存在下または9AAが存在しない条件で処理した。示した時点で全細胞溶解物を調製し、そしてIκBに対する抗体でのウェスタンブロッティングによって分析した。図7C:H1299−NF−κBLuc細胞を示した濃度の9AAおよびTNF(10ng/ml)で処理した。6時間後、細胞質および核の抽出物を単離し、ルシフェラーゼアッセイまたはゲルシフトアッセイにそれぞれ使用した。図7Dは、9AAがp65/p50およびp50/p50 NFκB複合体の蓄積を生じることを示している。ゲルシフトアッセイを、9AA(10μM)およびTNF(10ng/ml)で30分間処理したH1299細胞の核抽出物を用いて行った。図7Eは、9AAが核に由来するp65複合体の排出を遅らせることを示している。p65に対する抗体とともに、示した時間の間9AA(10mM)およびTNF(10ng/mL)で処理したHT1080細胞の免疫蛍光染色。図7Fは、9AAがTNFに応答してp65のリン酸化を減少させることを示している。上段のパネル:示した時間の間、9AA(10μM)の存在下または9AAが存在しない条件においてTNF(10ng/ml)で処理したHT1080細胞の全細胞溶解物のウェスタンブロット分析。同じメンブレンをp65全体に対する抗体とホスホ−p65Ser536に対する抗体でプローブした。下段のパネル:BioRad QuantityOneソフトウェアを使用した上段のパネルに示した実験の定量。結果は、未処理の対照と比較したバンドの強度の変化の倍数として示す。図7Gは、9AAによってp50タンパク質レベルの増大が生じることを示している。HT1080細胞の核および細胞質画分(図7Aに記載したように処理した)のウェスタンブロット分析。図7Hは、9AAはトリコスタチンA(TSA)によって誘導されたNF−κBのトランス活性化を阻害しないことを示している。NF−κB依存性ルシフェラーゼレポーターが組み込まれているH1299細胞を100nMのTSAで、9AA(20mM)の存在下または9AAが存在しない条件において、4時間または16時間処理した。TNFaでの処理を、レポーター活性の対照として使用した。
【図8】図8は、9AAがNF−κBの阻害を通じてp53依存性の転写を活性化させることを示している。図8Aは、IκB SuperSupresson(ss)がRCC細胞中でp53を活性化させることを示している。ACHN細胞をp21−ConALucと、IκB SupreSuppressor、p53、およびArf cDNAまたは抗Hdm2 siRNAを含む示したプラスミドで同時トランスフェクトした。48時間後、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を測定した。正規化を、pCMV−LacZプラスミドの同時トランスフェクションによって行った。図8BはIκB SupreSuppressorがNF−κB転写活性を阻害することを示している。ACHN細胞を、NF−κB応答性レポーターであるpNF−κBLucとIκB SuperSuppressor(SS)で同時トランスフェクトした。48時間後、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を測定した。図8Cは、9AAは、NF−κBが阻害されている細胞においてp53を活性化させることができないことを示している。ACHN細胞を、pConALucまたはpNF−κBLucのいずれかと、IκB SupreSuppressor(SS)または空のベクターで同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、全ての細胞をバラバラにし、9AA(10μM)で処理した。NF−κBレポーター活性を処理の6時間後に測定し、p53応答性レポーター活性を処理の24時間後に測定した。正規化を、pCMV−LacZプラスミドの同時トランスフェクション(様々なプラスミドのセットによってトランスフェクトした細胞について)によって、そしてタンパク質濃度(9AAで処理した細胞と未処理の細胞について)によって行った。
【図9】図9は、死リガンドとの9−アミノアクリジンの相乗効果を示している。
【図10】図10は、9AAおよびQCが抗RCC物質であることを示している。図10Aは、種々のRCC細胞および非RCC細胞の9AA、QC、およびいくつかの抗ガン剤のIC50%用量の比較を示している。個々の細胞株と個々の薬物についてIC50%を決定した。それぞれの点は、特定の細胞株のIC50%を示しており、これらが以下にようにグループ分けされる:(i)黒丸−RCC細胞株(ACHN、RCC9、RCC13、RCC29、RCC45、RCC54)、(ii)赤三角−非RCC細胞株(MCF7、HT1080、H1299、U20S、LNCaP、HCT116)、(iii)緑四角−正常な腎細胞(NKE)。図10Bは、キナクリンがエキソビボで培養されたRCC腫瘍においてp53応答性レポーターを活性化することを示している。p53応答性レポーターレンチウイルスがエキソビボで形質導入され、そしてキナクリンまたはドキソルビシンで処理された腫瘍および正常な腎臓の断片のX−gal染色。図10Cは、キナクリンはRCC45とRCC54をTRAILに対して感作させるが、正常な腎臓上皮細胞(NKE)は感作させないことを示している。96ウェルプレートにプレートした細胞を、示した濃度のTRAILおよびキナクリンの存在下で24時間インキュベートし、細胞数をメチレンブルーアッセイを使用して予測した。図10Dは、キナクリン(QC)の抗腫瘍活性を示している。10個のACHN細胞をヌードマウスの皮下に接種した。腫瘍が5mmの直径に達した時点で、50mg/kgのQCの腹腔内投与を開始した。5FU(35mg/kg)を対照として使用した。腫瘍の大きさを一日おきに測定し、腫瘍の容積の倍数増加として示した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本発明の化合物、生成物、および組成物、ならびに方法を開示し、そして記載する前に、本明細書中で使用される専門用語は特定の実施形態を記載する目的のためだけのものであり、限定するようには意図されないことが理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」には、その状況が他の場所で明確に示されない限りは複数形についての言及も含まれることに留意されなければならない。
【0014】
(1.定義)
用語「分岐している」は、本明細書中で使用される場合は、1個から24個までの骨格原子を含む基であって、ここで、この基の骨格鎖が主鎖からの1つ以上の付随する分岐を含む基を意味する。本明細書中の好ましい分岐している基には1個から12個までの骨格原子が含まれる。分岐している基の例としては、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、−CHCHCH(CH3)CHCH、−CHCH(CHCH)CHCH、−CHCHC(CHCH、−CHCHC(CHなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0015】
用語「分岐していない」は、本明細書中で使用される場合は、1個から24個までの骨格原子を含む基であって、ここで、この基の骨格鎖が一直線に伸びている基を意味する。本明細書中の好ましい分岐していない基には1個から12個までの骨格原子が含まれる。
【0016】
用語「環式」または「シクロ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、3個から12個までの骨格原子、好ましくは、3個から7個の骨格原子の環を保有している1つ以上の閉じた環(不飽和であるか飽和であるかは問わない)を有している基を意味する。
【0017】
用語「低級」は、本明細書中で使用される場合は、1個から6個の骨格原子を有している基を意味する。
【0018】
用語「飽和」は、本明細書中で使用される場合は、骨格原子の全ての利用可能な原子価結合が他の分子に結合している基を意味する。飽和基の代表的な例としては、ブチル、シクロヘキシル、ピペリジンなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0019】
用語「不飽和」は、本明細書中で使用される場合は、2つの隣接している骨格原子の少なくとも1つの利用可能な原子価結合が他の原子には結合していない基を意味する。不飽和基の代表的な例としては、−CHCHCH=CH、フェニル、ピロールなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0020】
用語「脂肪族」は、本明細書中で使用される場合は、分岐していない基、分岐している基、または環状の炭化水素基を意味し、これは置換されている場合も、また置換されていない場合もあり、飽和である場合も、また、不飽和である場合もあるが、芳香族ではない。用語「脂肪族」にはさらに、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置き換えている酸素、窒素、硫黄、またはリン原子を含む脂肪族基が含まれる。
【0021】
用語「芳香族」は、本明細書中で使用される場合は、4n+2個の非局在π(パイ)電子を有している不飽和の環式炭化水基を意味し、これは置換されている場合も、また置換されていない場合もある。用語「芳香族」にはさらに、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置き換えている窒素原子を含む芳香族基が含まれる。芳香族基の例としては、フェニル、ナフチル、チエニル、フラニル、ピリジニル、(イソ)オキサゾリルなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0022】
用語「置換された」は、本明細書中で使用される場合は、1つ以上の水素または他の原子が炭素または適切なヘテロ原子から除去され、そして、別の基で置き換えられている基を意味する。本明細書中の好ましい置換された基は、1個から5個、最も好ましくは1個から3個の置換基で置換されている。2つの置換基を有している原子は「ジ」と記載され、一方、2つ以上の置換基を有している原子は「ポリ」によって記載される。このような置換基の代表的な例としては、脂肪族基、芳香族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、ハロ、アリールオキシ、カルボニル、アクリル、シアノ、アミノ、ニトロ、リン含有基、硫黄含有基、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アシルアミノ、アミジノ、イミノ、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、アルキルスルフィニル、トリフルオロメチル、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、ヘテロアリール、セミカルバジド、チオセミカルバジド、マレイミド、オキシイミノ、イミデート、シクロアルキル、シクロアルキルカルボニル、ジアルキルアミノ、アリールシクロアルキル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールシクロアルキルカルボニル、アリールホスフィニル、アリールアルキルホスフィニル、アリールシクロアルキルホスフィニル、アリールホスホニル、アリールアルキルホスホニル、アリールシクロアルキルホスホニル、アリールスルホニル、アリールアルキルスルホニル、アリールシクロアルキルスルホニル、これらの組み合わせ、およびこれらの置換基が挙げられるがこれらに限定はされない。
【0023】
用語「置換されていない」は、本明細書中で使用される場合は、それに対していずれの基もさらに結合させられていないか、またはそれについて置換されていない基を意味する。
【0024】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、分岐しているかまたは分岐していない、飽和脂肪族基を意味する。アルキル基の代表的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0025】
用語「アルケニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、鎖に沿っていずれかの安定した部位で生じ得る少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、分岐しているかまたは分岐していない、不飽和脂肪族基を意味する。アルケニル基の代表的な例としては、エテニル、E−およびZ−ペンテニル、デセニルなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0026】
用語「アルキニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、鎖に沿っていずれかの安定した部位で生じ得る少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、分岐しているかまたは分岐していない、不飽和脂肪族基を意味する。アルキニル基の代表的な例としては、エチニル、プロピニル、プロパルギル、ブチニル、ヘキシニル、デシニルなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0027】
用語「アリール」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、必要に応じて他の芳香族環式基または非芳香族環式基に縮合させることができる、置換されているかまたは置換されていない芳香族基を意味する。アリール基の代表的な例としては、フェニル、ベンジル、ナフチル、ベンジリジン、キシリル、スチレン、スチリル、フェネチル、フェニレン、ベンゼントリイルなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0028】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、1つの末端エーテル結合によって結合させられたアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を意味する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、2−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n−ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、3−メチルペントキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、およびトリクロロメトキシが挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、1つの末端エーテル結合によって結合させられたアリール基を意味する。
【0030】
用語「ハロゲン」、「ハライド」、または「ハロ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、フッ素「F」、塩素「Cl」、臭素「Br」、ヨウ素「I」、およびアスタチン「At」を意味する。ハロ基の代表的な例としては、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミド、ヨードアセトアミドなどが挙げられるがこれらの限定はされない。
【0031】
用語「ヘテロ」は、本明細書中で使用される場合は、組み合わせて、炭素または水素以外の任意の元素の1つ以上の原子を含む基を意味する。ヘテロ基の代表的な例としては、窒素、酸素、硫黄、およびリンを含むがこれに限定されないヘテロ原子を含む基が挙げられるがこれらに限定はされない。
【0032】
用語「複素環」は、本明細書中で使用される場合は、ヘテロ原子を含む環式基を意味する。複素環の代表的な例としては、ピリジン、ピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピペラジン、ピロール、ピロリジノン、ピロリジン、モルホリン、チオモルホリン、インドール、イソインドール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリン、アザピン、ナフトピラン、フラノベンゾピラノンなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0033】
用語「カルボニル」または「カルボキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、炭素−酸素二重結合を含む基を意味する。カルボニルを含む基の代表的な例としては、アルデヒド(すなわち、ホルミル)、ケトン(すなわち、アシル)、カルボン酸(すなわち、カルボキシル)、アミド(すなわち、アミド)、イミド(すなわち、イミド)、エステル、無水物などが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0034】
用語「アクリル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、CH=C(Q)C(O)O−によって表される基を意味する。ここでは、Qは脂肪族または芳香族基である。
【0035】
用語「シアノ」、「シアネート」、または「シアン化物」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、炭素−窒素二重結合を意味する。シアノ基の代表的な例としては、イソシアネート、イソチオシアネートなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0036】
用語「アミノ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または組み合わせて、骨格窒素原子を含む基を意味する。アミノ基の代表的な例としては、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、ウレイドなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0037】
用語「リン含有基」は、本明細書中で使用される場合は、酸化された状態で少なくとも1つのリン原子を含む基を意味する。代表的な例としては、リン酸、ホスフィン酸、リン酸エステル、ホスフィニデン、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスフィニリデン、ホスホ、ホスホン、ホスホラニル、ホスホラニリデン、ホスホロソなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0038】
用語「硫黄含有基」は、本明細書中で使用される場合は、硫黄原子を含む基を意味する。代表的な例としては、スルフヒドリル、スルフェノ、スルフィノ、スルフィニル、スルホ、スルホニル、チオ、チオキソなどが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0039】
用語「必要に応じた」または「必要に応じて」は、本明細書中で使用される場合は、続いて記載される事象または状況が生じる場合も、または生じない場合もあり、そして、この記載には、上記の事象または状況が起こる例と、それが起こらない例が含まれることを意味する。例えば、表現「必要に応じて置換されたアルキル」は、アルキル基が置換されている場合も、または置換されていない場合もあり、そしてこの記載には、置換されていないアルキルと置換されているアルキルの両方が含まれることを意味する。
【0040】
用語「有効量」は、本明細書中で提供される化合物、生成物、または組成物に関して使用される場合は、所望される結果を提供するために十分な量の化合物、生成物、または組成物を意味する。必要な抽出物の量は、使用される特定の化合物、生成物、または組成物、その投与形式などに応じて様々であろう。したがって、正確な「有効量」を特定することは必ずしも可能ではない。しかし、適切な有効量は、日常的に行われている実験だけを使用することによって本発明の開示によって与えられる情報により当業者であれば決定できる。
【0041】
用語「適切な」は、本明細書中で使用される場合には、記載される目的についての本明細書中で提供される化合物、生成物、または組成物と適合する基を意味する。記載される目的についての適合は、日常的に行われている実験だけを使用して当業者であれば容易に決定できる。
【0042】
本明細書中で使用される場合は、用語「投与する」は、化合物の投与量を記載するために使用される場合には、化合物の単回投与または複数回投与を意味する。
【0043】
本明細書中で使用される場合は、「アポトーシス」は、細胞小器官の完全性を保ったままの細胞体積の段階的な収縮;光学顕微鏡または電子顕微鏡で見ることができるクロマチンの凝縮(すなわち、核の凝縮);ならびに/あるいは、遠心分離堆積アッセイ(centrifuged sedimentation assay)によって決定されるヌクレオソームのサイズの断片へのDNAの切断を含む、細胞死の1つの形態を意味する。細胞死は、食作用性細胞による完全な細胞断片(「アポトーシスボディー」)の飲み込みを伴って、細胞膜の完全性が失われる(例えば、膜のブレブ形成)と生じる。
【0044】
本明細書中で使用される場合は、用語「ガン」は、アポトーシス性の刺激に対する耐性を特徴とする任意の状態を意味する。
【0045】
本明細書中で使用される場合は、用語「ガンの処置」は、化学療法および放射線治療を含むがこれらに限定されない当該分野で公知のガンについての任意の処置を意味する。
【0046】
本明細書中で使用される場合は、用語「〜との組み合わせ」は、アミノアクリジンの投与および別の処置手段を記載するために使用される場合には、アミノアクリジンを、別の処置の前に、別の処置と一緒に、または別の処置の後で、あるいはそれらと組み合わせて投与することができることを意味する。
【0047】
本明細書中で使用される場合は、用語「処置」または「処置する」は、ある状態からの哺乳動物の防御について言う場合には、この状態を予防する、抑制する、抑える、または排除することを意味する。状態の予防には、この状態の発症の前に哺乳動物を処置することが含まれる。状態の抑制には、状態の誘導後ではあるが、その臨床的所見の前に哺乳動物を処置することが含まれる。状態を抑えることには、状態の臨床的所見の後に哺乳動物を処置することが含まれ、その結果、状態は軽減されるか、または維持される。状態の排除には、状態の臨床的所見の後に哺乳動物を処置することが含まれ、その結果、哺乳動物はそれ以上の状態に見舞われることはない。
【0048】
本明細書中で使用される場合は、用語「腫瘍細胞」は、アポトーシス性の刺激に対する耐性を特徴とする任意の細胞を意味する。
【0049】
(2.腫瘍中でのp53の抑制についてのNF−κBによって媒介される機構)
本発明は、NF−κB活性を阻害することにより、機能的にブロックされたp53を有しているガン細胞においてp53が活性化される場合があるという発見に関係する。腫瘍中のp53経路の不活化は、p53変異よりもはるかに広い範囲の現象である。腫瘍が野生型p53を維持していてもなお、その機能は通常は完全であるか、または一部が失われているかのいずれかである。これらの場合には、そのようなガンの中のp53は薬理学的再活性化のための標的と見ることができるので、治療の観点から特に興味深い。p53活性が組織特異的機構によってブロックされているいくつかのタイプの腫瘍が存在している。したがって、Hdm2の過剰発現は肉腫において特に頻度が高く、一方、ヒトパピローマウイルスのE6は大部分の子宮頸ガンにおいてp53を不活化する。RCCは、この種類の腫瘍の別の例を提供し、これは、本発明者らによって最近報告されたように、RCCの中の野生型p53が、おそらくは組織特異的である未知の優勢な機構によって抑えられているので、とりわけ興味深い分析対象である。したがって、p53の再活性化は、この、これまでのところは治療不可能な形態のガンの処置のため、ならびに、p53を不活化させるための同様の機構を有している他のガンの処置についての興味深い方針であると考えられている。
【0050】
NF−κB活性は、インビトロおよびインビボでのアポトーシスの抑制に関係している。常に、多くのアポトーシス耐性腫瘍はNF−κBの構成的な活性化を獲得する。腫瘍細胞中でのNF−κBの活性化は、おそらく、自然界での死の刺激(例えば、TNF,Fas、またはTRAIL)および薬理学的な死の刺激(化学療法剤)のいずれに対しても耐性を提供することによって、おそらくその悪性の表現型を導いている。構成的に活性なNF−κBは多くの腫瘍のタイプにおいて記載されているが、NF−κBの活性化とp53の阻害との間の関係は、完全には理解されてはいない。
【0051】
ガン(例えば、機能性p53または野生型p53を有しているガン)は、NF−κB活性を阻害することによって処置される場合がある。これは、野生型p53活性の回復とその活性化を導くことができる。NF−κB活性のインヒビターはまた、化学療法、放射線治療、自然界に存在している死リガンド(例えば、TNFポリペプチド)のような処置によるp53依存性のアポトーシスまたはp53非依存性のアポトーシスに対してガンを感作させるためにも使用される場合がある。それらのp53の状態にはかかわらず、大部分のヒトのガンは、構成的にNF−κBを過剰に活性化させる。結果として、NF−κBのインヒビターは、トランス活性化NF−κB複合体の転写抑制複合体への再プログラミングの理由から、それらのp53状態にはかかわらずいずれの腫瘍の処置にも使用することができる。
【0052】
(3.アミノアクリジン)
アミノアクリジンは、NF−κB活性を阻害するために使用することができる物質の代表的な例である。アミノアクリジンは以下の式のものであり得る:
【0053】
【化3】

ここで、
は、Hまたはハロゲンであり;
は、Hまたは必要に応じて置換されたアルコキシであり;
は、Hまたは必要に応じて置換されたアルコキシであり;そして
は、Hまたは必要に応じて置換された脂肪族、アリール、もしくは複素環である。
【0054】
アミノアクリジンの代表的な例としては、9−アミノアクリジンまたはメパクリン(Mepacrine)(これは、キナクリンとしても知られている)、さらには、実施例2に記載されるアミノアクリジンが挙げられるがこれらに限定はされない。腫瘍細胞を感作させるためにアミノアクリジンを使用することは、多くのアミノアクリジンが限られた副作用しか有さないので、魅力的である。
【0055】
9AAは、1942年から治療薬として使用されている。特定の9AA誘導体は、DNA損傷活性を介在できると考えられている。しかし、本発明者らにより、9AAとキナクリンはDNA損傷活性を示さないことが見出された。9aaとキナクリンはいずれも、インビトロおよびインビボで正常な細胞に比べて腫瘍に対してより毒性があることが明らかにされている。さらに、いずれの化合物も、RCCを除く様々な腫瘍細胞のタイプについてp53を活性化させることができ、そしてp53依存性の死滅をさせることができることが示されている。p53依存性のそれらの抗腫瘍活性は、それらの野生型p53または機能性p53を有している腫瘍の標的化に基づいて、従来の化学療法剤からアミノアクリジンを明確に区別させる。
【0056】
アミノアクリジンはp53活性化物質のいずれの既知のカテゴリーにも適合しない。これらはp53の蓄積を引き起こし得るが、これらは、DNA損傷薬とは異なり、p53のリン酸化を誘導することはできない。さらに、アミノアクリジンはDNAの損傷を引き起こすことはない。その代わりに、アミノアクリジンの最初の効果は、p53の活性化に対しては現れず、NF−κBの抑制に対して現れる。これは、後にp53の誘導を導く。重要なことは、NF−κBの阻害によって、細胞内で、p53の活性化に対する直接的なアプローチのいずれによっても「目を覚まさせる」ことができないp53機能が活性化されることであり、これには、Arfの導入、Hdm2のノックダウン、またはp53の異所性の過剰発現が含まれる。
【0057】
NF−κBの阻害は、通常は、NF−κBの主要なネガティブ調節因子であるIκBの安定化を通じて行われる。遺伝的には、これは、このタンパク質の調節性のリン酸化部位を変異させることによって、そして、IκBリン酸化のブロックを導く上流のキナーゼの阻害を通じて薬理学的に行うことができる。多くの既知のNF−κBの化学的インヒビターは、この機構を通じて作用する。IκBの安定化によって、細胞質隔離と、転写因子としてのNF−κB複合体の機能的不活化が生じる。
【0058】
アミノアクリジンの活性は、それらが、トランス活性化の完全な抑制を伴う活性化の刺激に応答して、核内でのNF−κB複合体の蓄積を強力に促進するので、これまでの薬物よりも優れている場合がある。したがって、アミノアクリジンは、IκBの下流で作用し、そしてNF−κBの不活性な複合体への変換を含む機構によってNF−κBを阻害することができる。NF−κB依存性転写の欠損によって、IκB(これは、NF−κBの直接的な転写標的である)のプールの枯渇と、通常は、IκBによって発揮される、核からの排出の欠損が原因である核内でのNF−κBの保持が導かれる場合がある。興味深いことに、NF−κB活性化が関係している細胞性因子(IKKα、IKKβ、TBK1、PKC−ζ)のいずれのノックアウトによっても、アミノアクリジンの効果は模倣されず、このことは、これらの全てがアミノアクリジンの標的ではないことを示唆している。p65を含む不活性なNF−κB複合体の核での蓄積がUV、ドキソルビシン、およびダウノルビシンでの細胞の処理の後に生じることが最近報告されたが、これらの処置はいずれも、おそらくはNF−κB阻害活性が弱いことが原因で、p53を活性化することにおいてはアミノアクリジンと匹敵するものではない。
【0059】
アミノアクリジンは、NF−κBによるシグナル伝達(「標準的な」NF−κB活性化経路)のIκBリン酸化アームに対してだけではなく、NF−κB活性化の別の機構を介しても有効であり得る。これは、刺激されたNF−κB活性をブロックするアミノアクリジン(例えば、9AA)の能力によってサポートされ、そして腫瘍細胞の中での構成的NF−κB活性の基底レベルをもまた効率よく低下させる。対照的に、IKK2インヒビターは、刺激されたNF−κB活性をブロックすることができるのみである。
【0060】
(4.組成物)
本発明は、アミノアクリジンと必要に応じて化学療法剤を含む組成物に関係する。本発明はまた、アミノアクリジンと必要に応じてTNFポリペプチドを含む組成物にも関係する。
【0061】
(a.化学療法剤)
化学療法剤は、アポトーシスを誘導する任意の薬理学的物質または化合物であり得る。薬理学的物質または化合物は、例えば、有機低分子、ペプチド、ポリペプチド、核酸、または抗体である場合もある。
【0062】
化学療法剤は、細胞傷害性物質または細胞増殖抑制剤、あるいはそれらの組み合わせである場合もある。細胞傷害性物質は、(1)DNAを複製する細胞の能力を妨害すること、ならびに(2)ガン細胞中で細胞死および/またはアポトーシスを誘導することによって、ガン細胞が増殖することを妨げる。細胞増殖抑制剤は、細胞増殖を調節する細胞性のシグナル伝達プロセスの調節、妨害、または阻害を通じて作用し、そして時には低い連続的レベルで存在する。
【0063】
細胞傷害性物質として使用することができる化合物のクラスとしては、以下が挙げられる:アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、およびトリアジンを含むがこれらに限定はされない);ウラシルマスタード、クロロメチン、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン−メラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド;代謝拮抗物質(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、およびアデノシンデアミナーゼインヒビターを含むがこれらに限定はされない):メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フロキシウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビン;自然界に存在している生成物およびそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍性抗生物質、酵素、リンホカイン、およびエピポドフィロトキシン):ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ara−c、パクリタキセル(パクリタキセルはタキソール(Taxol(登録商標))として市販されている)、ミトラマイシン、デオキシコ−ホルマイシン、マイトマイシン−c、l−アスパラギナーゼ、インターフェロン(好ましくは、IFN−α)、エトポシド、およびテニポシド。他の増殖性細胞傷害性物質は、ナベルベン(navelbene)、CPT−11、アナストラゾール、レトラゾール、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イフォサミド、およびドロロキサフィンである。
【0064】
微小管に影響を及ぼす物質は、細胞の有糸分裂を妨害し、そしてそれらは細胞傷害活性について当該分野でよく知られている。本発明に有用な微小管に影響を及ぼす物質としては、アロコルヒチン(NSC406042)、ハリコンドリンB(NSC609395)、コルヒチン(NSC757)、コルヒチン誘導体(例えば、NEC33410)、ドラスタチン10(NSC376128)、マイタンシン(NSC153858)、リゾキシン(NSC332598)、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、NSC125973)、タキソール(登録商標)誘導体(例えば、誘導体(例えば、NSC608832)、チオコルヒチン(NSC361792)、トリチルシステイン(NSC83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC49842)、硫酸ビンクリスチン(NSC67574)、自然界に存在しているエポチロンおよび合成のエポチロン(エポチロンA、エポチロンB、およびジスコデルモライドを含むがこれらに限定はされない)(Service,(1996)Science,274:2009を参照)、エストラムチン、ノコダゾール、MAP4などが挙げられるがこれらに限定はされない。このような物質の例はまた、Bulinski(1997)J.Cell Sci.110:3055−3064;Panda(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:10560−10564;Muhlradt(1997)Cancer Res.57:3344−3346;Nicolaou(1997)Nature 387:268−272;Vasquez(1997)Mol.Biol.Cell.8:973−985;およびPanda(1996)J.Biol.Chem.271:29807−29812にも記載されている。
【0065】
エピドフィロトキシンのような細胞傷害性物質;抗新生物性の酵素;トポイソメラーゼインヒビター;プロカルバジン;ミトキサントロン;シスプラチンおよびカルボプラチンのような白金配位錯体;生物学的応答修飾因子;増殖インヒビター;抗ホルモン治療薬;ロイコボリン;テガフール;および造血性成長因子もまた適している。
【0066】
使用することができる細胞増殖抑制剤としては、ホルモンおよびステロイド(合成のアナログを含む)が挙げられるがこれらに限定はされない:17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニソン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニソロン、メチル−テストステロン、プレドニソロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン(hlorotrianisene)、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゾラデックスが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0067】
他の細胞増殖抑制剤は、マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビターのような抗血管形成剤、および抗VEGF抗体のような他のVEGFインヒビターであり、そして、ZD6474およびSU6668のような低分子もまた含まれる。Genetechによる抗Her2抗体もまた利用することができる。適切なEGFRインヒビターはEKB−569(不可逆的インヒビター)である。EGFRに免疫特異的なImclone抗体C225、およびsrcインヒビターもまた含まれる。
【0068】
カソデックス(Casodex(登録商標))(ビカルタミド、Astra Zeneca)もまた細胞増殖抑制剤としての使用に適している。これは、アンドロゲン依存性のガン腫を非増殖性にする。細胞増殖抑制剤のさらに別の例は抗エストロゲンであるタモキシフェン(Tamoxifen(登録商標))であり、これは、エストロゲン依存性の乳ガンの増殖または成長を阻害する。細胞増殖シグナルの伝達のインヒビターは、細胞増殖抑制剤である。代表的な例としては、上皮成長因子インヒビター、Her−2インヒビター、MEK−1キナーゼインヒビター、MAPKキナーゼインヒビター、PI3インヒビター、Srcキナーゼインヒビター、およびPDGFインヒビターが挙げられる。
【0069】
(b.TNFポリペプチド)
TNFポリペプチドは、リガンドのTNFスーパーファミリーのメンバーであり得る。TNFポリペプチドの代表的な例としては、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、TNF−α、CD134L/OX40L、CD27L/CD70、FasL/CD95、CD30L、TNF−β/LT−α、LT−β、およびTRAILが挙げられるがこれらに限定はされない。TNFスーパーファミリーのメンバーは、免疫系の維持および機能に関係しており、そしてアポトーシスを誘発することができる、自然界に存在しているタンパク質である。TNFポリペプチドはTRAILである場合もあり、これは、主に腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導するが、正常な細胞では誘導しない。
【0070】
これらのいわゆる「死リガンド」の活性は、TNF受容体ファミリーのメンバーとの結合によって媒介されると考えられている。TNF受容体ファミリーには、それらの細胞内部分に構造が類似している死ドメインが含まれる。個々の死リガンドに特異的なこれらの受容体の連結によって、カスパーゼの活性化を生じる事象のカスケードの活性化が誘発される。TNFポリペプチドによって結合されるTNF−R受容体の代表的な例としては、LNGFR/p75、CD40、CD137/4−1BB/ILA、TNFRI/p55/CD120a、TNFRII/p75/CD120b、CD134/OX40/ACT35、CD27、Fas/CD95/APO−1、CD30/Ki−1、LT−βR、DR3、DR4、DR5、DcR1/TRID、TR2、GITR、およびオステオプロテゲリンが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0071】
腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導するそれらの特有の能力の理由から、TNFファミリーのメンバーは抗ガン剤である可能性があると考えられる。しかし、多くの腫瘍細胞は死リガンドのプロアポトーシス作用を回避し、それによって死リガンド感受性であるガンに対するこれらの物質の使用を減少させ、腫瘍が宿主免疫応答を回避できる。NF−κBのインヒビターの使用は、死リガンド(例えば、TNFポリペプチド)の死滅に対して腫瘍細胞を感作させるために使用することができる。
【0072】
他の物質をTNFポリペプチドの代わりに使用できることもまた想定される。例えば、TNFポリペプチドの活性を模倣する抗体を使用することができる。このような抗体の代表的な例としては、FAS、TRAIL受容体、またはTNFRに対するアゴニスト抗体が挙げられるがこれらに限定はされない。加えて、アプタマーおよび対応するレセプターを活性化することができる他の合成のリガンドが使用される場合もある。
【0073】
(c.塩)
組成物の有効成分は、種々の薬学的に許容される塩の形態で有用であり得る。用語「薬学的に許容される塩」は、薬剤師に明らかである塩の形態、すなわち、実質的に非毒性であり、所望される薬物動態特性、おいしさ、吸収、分布、代謝、または排せつの特性を提供するものを意味する。より実際的には、選択においてもまた重要である他の要因は、原材料費、結晶化の容易さ、収量、安定性、吸湿性、および得られるバルクの薬物の流動性である。好都合なことに、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて有効成分から、またはそれらの薬学的に許容される塩から調製され得る。
【0074】
有効成分の薬学的に許容される塩としては、塩酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、臭化水素、メタンスルホン酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファミン酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、パモン酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセトン酸(isethonic acid)のような様々な有機酸および無機酸を用いて形成された塩が挙げられるがこれらに限定はされず、そして、種々の他の薬学的に許容される塩(例えば、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩など)が含まれる。四級アンモニウムイオンのような陽イオンは、陰イオン性部分についての薬学的に許容される対イオンとして想定される。加えて、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、およびリチウムのようなアルカリ金属;カルシウムおよびマグネシウムのようなアルカリ土類金属;ジシクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、およびピリジンのような有機塩基;ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸を用いて形成され得る。
【0075】
薬学的に許容される塩は、通常の化学的な方法によって合成することができる。一般的には、塩は、遊離の塩基または酸を、化学量論的な量または過剰な、所望される塩を形成する、無機もしくは有機の酸または塩基と、適切な溶媒または溶媒混合物中で反応させることによって調製される。
【0076】
一般的には、塩の対イオンは、化合物を合成するのに使用される反応物質によって決定することができる。反応物質に応じた、塩の対イオンの混合物が存在する場合がある。例えば、NaIが反応を促進させるために添加される場合は、対イオンは、ClとIとの対アニオンの混合物であり得る。さらに、プレパラティブHPLCによって、酢酸が溶媒の中に存在する場合には、元々の対イオンが、酢酸陰イオンによって交換されることになる場合もある。塩の対イオンは、様々な対イオンに交換することができる。対イオンは好ましくは、上記に記載される塩を形成するように、薬学的に許容される対イオンに交換される。対イオンを交換するための手順は、WO2002/042265、WO2002/042276、およびS.D.Clas,「Quaternized Colestipol,an improved bile salt absorbent:In Vitro studies.」Journal of Pharmaceutical Sciences,80(2):128−131(1991)(その内容は引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。明確にするという理由のために、対イオンは、本明細書中の化学構造に示すことはできない。
【0077】
(d.処方物)
組成物にはさらに、1つ以上の薬学的に許容される別の成分(単数または複数)(例えば、ミョウバン、安定剤、抗微生物剤、緩衝液、着色剤、香味剤、アジュバントなど)が含まれる場合がある。
【0078】
組成物は、通常の様式で処方された錠剤またはトローチ剤の形態である場合もある。例えば、経口投与用の錠剤およびカプセル剤には、一般的な賦形剤が含まれる場合がある。賦形剤としては、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、および湿潤剤が挙げられるがこれらに限定はされない。結合剤としては、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプンの粘液、およびポリビニルピロリドンが挙げられるがこれらに限定はされない。増量剤としては、乳糖、糖、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、およびソルビトールが挙げられるがこれらに限定はされない。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、およびシリカが挙げられるがこれらに限定はされない。崩壊剤としては、ジャガイモデンプン、およびグリコール酸ナトリウムデンプンが挙げられるがこれらに限定はされない。湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられるがこれらに限定はされない。錠剤は、当該分野で周知の方法にしたがってコーティングすることができる。
【0079】
組成物はまた、液体処方物である場合もある。これには、水性または油性の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、およびエリキシル剤が含まれるがこれらに限定はされない。組成物はまた、使用前に水または他の適切な媒体で構成するための乾燥生成物として処方される場合もある。このような液体調製物には、添加剤が含まれる場合がある。添加剤としては、懸濁剤、乳化剤、非水性媒体、および保存剤が挙げられるがこれらに限定はされない。懸濁剤としては、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および水素化食用脂が挙げられるがこれらに限定はされない。乳化剤としては、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、およびアカシアが挙げられるがこれらに限定はされない。非水性媒体としては、食用油脂、アーモンド油、ヤシ油、油性のエステル、プロピレングリコール、およびエチルアルコールが挙げられるがこれらに限定はされない。保存剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸プロピル、およびソルビン酸が挙げられるがこれらに限定はされない。
【0080】
組成物はまた、坐剤として処方することもできる。これには、ココアバターまたはグリセリドを含むがこれらに限定はされない坐剤基剤が含まれ得る。組成物はまた、吸入用に処方される場合もある。これは、液剤、懸濁液、または乳濁液を含むがこれらに限定されない形態であり得、乾燥粉末として、あるいは、高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタン)を使用してエアゾールの形態で投与される場合がある。組成物はまた、クリーム剤、軟膏、ローション、ペースト、薬の入った湿布薬、パッチ、または膜を含むがこれらに限定はされない、水性または非水性の媒体を含む、処方された経皮用処方物である場合もある。
【0081】
組成物はまた、注射または点滴を含むがこれらに限定されない方法による、非経口投与用に処方される場合もある。注射用の処方物は、油性または水性の媒体中の懸濁液、液剤、または乳濁液の形態であり得、そして懸濁剤、安定剤、および分散剤を含むがこれらに限定はされない処方剤が含まれる場合がある。組成物はまた、滅菌の発熱物質を含まない水を含むがこれに限定はされない適切な媒体での再構成用の粉末形態で提供される場合もある。
【0082】
組成物はまた、デポー製剤として処方される場合もある。これは、移植によって、または筋肉内注射によって投与することができる。組成物は、適切な高分子物質または疎水性物質(例えば、許容される油の中の乳濁液として)、イオン交換樹脂とともに、あるいは、難溶性誘導体として(例えば、難溶性の塩として)処方される場合もある。
【0083】
組成物はまた、リポソーム調製物として処方される場合もある。リポソーム調製物には、目的の細胞または角質層に浸潤して細胞膜と融合し、それによってリポソーム内容物の細胞内への送達を生じるリポソームを含めることができる。例えば、米国特許第5,077,211号、米国特許第4,621,023号、または米国特許第4,508,703号(これらは引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されているリポソームのようなリポソームを使用することができる。皮膚の状態を標的化するように意図された組成物は、酸化によるダメージを引き起こすUVまたは複数の物質に対する哺乳動物の皮膚の露出前、露出の間、または露出後に投与することができる。他の適切な処方物は、ニオゾーム(niosome)を使用することができる。ニオゾームは、大部分が非イオン性脂質から構成される膜を有している、リポソームと類似している脂質小胞であり、そのいくつかの形態は角質層を通過して化合物を輸送するために有効である。
【0084】
(5.処置)
組成物は、アミノアクリジンをそれを必要としている患者に投与することにより、インビボでNF−κB活性に関連する状態を処置するために使用され得る。NF−κB活性は、任意のレベルであり得、その低下によって状態の処置が導かれる。NF−κB活性はまた基底レベルである場合もある。NF−κB活性はまた、構成的なレベルである場合もある。NF−κB活性はまた、誘導された構成的なレベルである場合もある。
【0085】
NF−κB活性に関連する状態はガンである場合もある。以下を含むがそれらに限定はされない種々のガンが処置され得る:膀胱ガン(加速された膀胱ガンおよび転移性膀胱ガン)、乳ガン、結腸ガン(結腸直腸ガンを含む)、腎臓ガン、肝臓ガン、肺ガン(小細胞性肺ガンおよび非小細胞性肺ガン、ならびに肺腺ガンを含む)、卵巣ガン、前立腺ガン、睾丸ガン、尿生殖路ガン、リンパ系のガン、直腸ガン、咽頭ガン、膵臓ガン(外分泌性膵臓ガンを含む)、食道ガン、胃ガン、胆嚢ガン、頸ガン、甲状腺ガン、腎ガン、および皮膚ガン(扁平上皮細胞ガンを含む);白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、およびバーキットリンパ腫を含むリンパ系の造血系腫瘍;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、および前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血系腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢神経系および抹消神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉種を含む間葉に由来する腫瘍;ならびに、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌、腎細胞ガン(RCC)、膵臓ガン、骨髄腫、骨髄性白血病およびリンパ芽球性白血病、神経芽細胞腫、および膠芽細胞腫を含む他の腫瘍。
【0086】
成人のTリンパ芽球性白血病(ATL)の原因因子であるHTLVのtaxによって誘導されるトランスフォーメーションは、RCCに関係しているものと同じ分子標的を共有し得る。例えば、NF−κBは、taxでトランスフォーメーションされた細胞において構成的に活性である。RCCと同様に、p53活性は、taxでトランスフォーメーションされた細胞においてはNF−κBの活性化を通じて阻害され、そしてp53の阻害には、p300の隔離は含まれない。P53の不活化についての共通の機構に基づくと、組成物はまた、HTLVによって誘導される白血病を処置するために使用することもできる。それらのp53状態にはかかわらず、ヒトのガンの大半は、構成的に過剰に活性化されたNF−κBを有している。組成物はまた、トランス活性化NF−κB複合体を転写抑制複合体に再プログラミングすることによってNF−κBを阻害することもできる。これはまた、それらのp53状態とは無関係に、任意の腫瘍の処置にも使用することができる。組成物はまた、HIV LTRがNF−κB活性に強く依存しているので、HIV感染を処置するために使用することもできる。
【0087】
組成物はまた、構成的なNF−κB活性化によって引き起こされ得る抗ガン剤耐性を克服するためのアジュバント療法に使用される場合もある。抗ガン剤は本明細書中に記載される化学療法剤であり得る。
【0088】
(a.投与)
組成物は、化学療法および放射線治療のような他の抗ガン治療と同時に、またはそれと一緒に一定の間隔で(metronomically)投与することができる。用語「同時」または「同時に」は、本明細書中で使用される場合は、他の抗ガン治療および組成物が、互いに48時間、24時間、12時間、6時間、3時間またはそれ未満の間に投与されることを意味する。用語「一定の間隔で」は、本明細書中で使用される場合は、化学療法とは別のタイミングでの、そして反復投与および/または化学療法の投薬計画に対して一定の頻度での組成物の投与を意味する。
【0089】
組成物は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、粘膜を介して、局所、吸入によって、口腔投与によって、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の形式で投与することができる。非経口投与としては、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、髄腔内、および関節内が挙げられるがこれらに限定はされない。組成物はまた、組成物を徐放することができ、さらに、ゆっくりに制御された静脈内注入が可能であるインプラントの形態で投与される場合もある。
【0090】
(b.投与量)
治療での使用に必要な薬剤の治療有効量は、処置される状態の性質、活性が所望される時間、ならびに、患者の年齢および状態に応じて変化し、最終的にはかかりつけの医師によって決定される。所望される用量は、好都合には、単回投与で、または例えば、1日に1回、2回、3回、4回、またはそれ以上に分けられた用量として適切な間隔で投与される複数回投与として投与され得る。複数回投与が多くの場合に所望、または必要とされる。
【0091】
他の治療薬と組み合わせて投与される場合には、組成物は、比較的少ない投与量で投与され得る。加えて、標的化剤の使用によって必要な投与量を比較的少なくすることができる。特定の組成物は、低い毒性、高いクリアランス、第3アミンの遅い切断速度を含むがこれに限定されない要因が原因で、比較的多い投与量で投与される場合がある。結果として、組成物の投与量は、約1ng/kgから約200mg/kgまで、約1μg/kgから約100mg/kgまで、または約1mg/kgから約50mg/kgまでであり得る。組成物の投与量としては、約1μg/kg、25μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、125μg/kg、150μg/kg、175μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、425μg/kg、450μg/kg、475μg/kg、500μg/kg、525μg/kg、550μg/kg、575μg/kg、600μg/kg、625μg/kg、650μg/kg、675μg/kg、700μg/kg、725μg/kg、750μg/kg、775μg/kg、800μg/kg、825μg/kg、850μg/kg、875μg/kg、900μg/kg、925μg/kg、950μg/kg、975μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、または100mg/kgが挙げられるがこれらに限定はされない任意の投与量であり得る。
【0092】
(6.診断方法)
組成物はまた、患者の腫瘍を組成物によって処置することができるかどうかを診断するために使用することもできる。腫瘍の試料は患者から得ることができる。腫瘍の細胞には、その後、p53レポーターシステム(例えば、p53応答性lacZレポーター)が形質導入され得る。形質導入された細胞は、その後、組成物とともにインキュベートされる。対照を上回る、p53によって媒介されるシグナルの生産は、腫瘍を組成物で処置できることを示す。
【0093】
(7.スクリーニング方法)
本発明はまた、NF−κB活性を調節する物質を同定する方法にも関する。NF−κB活性を調節する物質は、NF−κB活性の調節因子の候補を細胞をベースとするNF−κBによって活性化される発現システムに対して加えることを含む方法によって同定することができる。ここでは、NF−κB活性の調節因子は、NF−κBによって活性化された発現のレベルを変化させる能力によって同定される。NF−κB活性を調節する物質はまた、NF−κB活性の調節因子の候補を、細胞をベースとするp53によって活性化される発現システムに対して加えることを含む方法によっても同定することができる。ここでは、NF−κB活性の調節因子は、p53によって活性化させられる発現のレベルを変化させる能力によって同定される。NF−κB活性を調節する物質はまた、NF−κBまたはp53によって活性化される発現システムに対して、アミノアクリジンとNF−κB活性の調節因子の候補を添加すること、NF−κBまたはp53によって活性化された発現のレベルを対照と比較することを含む方法によって同定することもできる。ここでは、NF−κB活性の調節因子は、NF−κBまたはp53によって活性化される発現システムのレベルを対照と比較して変化させる能力によって同定される。
【0094】
細胞には、機能的にサイレントなp53が含まれる場合がある。細胞には、また、NF−κBトランス活性化複合体も含まれる場合がある。p53によって活性化される発現システムは、腎ガン細胞株である場合がある。細胞株は、肉腫細胞株である場合もある。細胞株はまた、増幅されたmdm2を有している細胞株である場合もある。細胞株はまた、HPV−E6を発現する細胞株である場合も、また、HPV−E6を発現することが可能な細胞株である場合もある。
【0095】
候補の物質は、ライブラリー(すなわち、化合物のコレクション)の中に存在する場合がある。このような物質は、例えば、発現ライブラリーの中のDNA分子によってコードされる場合もある。候補の物質は、馴化培地中、または細胞抽出物中に存在する。他のこのような物質としては、10ダルトン未満、好ましくは、10ダルトン未満、そしてなおさらに好ましくは、10ダルトン未満の分子量を有している「低分子」として当該分野で公知である化合物が挙げられる。このような候補の物質は、複数の予め決定された化学反応にしたがって調製された複数の合成の物質(例えば、ペプチド)を含む組み合わせライブラリーのメンバーとして提供される場合もある。多様な種類のこのようなライブラリーは確立されている手順にしたがって調製することができ、そして候補の物質のライブラリーのメンバーを本明細書中に記載されているように同時にまたは連続してスクリーニングできることは、当業者に明らかであろう。
【0096】
スクリーニング方法は、インビトロアッセイ、細胞をベースとするアッセイ、およびインビボアッセイを含む種々の形式で行うことができる。任意の細胞を、細胞をベースとするアッセイとともに使用することができる。好ましくは、本発明と共に使用される細胞としては哺乳動物細胞が挙げられ、さらに好ましくは、ヒト細胞、およびヒト以外の霊長類の細胞が挙げられる。細胞をベースとするスクリーニングは、NF−κBおよび/またはp53の活性化についての代理マーカーを発現する遺伝子修飾された腫瘍細胞を使用して行うことができる。このようなマーカーとしては、細菌のβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、および機能強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)が挙げられるがこれらに限定はされない。代理マーカーの発現量は、比色分析、発光分析、および蛍光分析を含むがこれらに限定されない当該分野で標準的である技術を使用して測定することができる。細胞をベースとするアッセイにおいて使用することができる細胞の代表的な例としては、腎細胞ガン細胞が挙げられるがこれに限定はされない。
【0097】
予想される調節因子が、例えば混合によって細胞に添加される条件は、アポトーシスまたはシグナル伝達を妨害する他の調節性の化合物が原則としては存在しない場合に細胞がアポトーシスまたはシグナル伝達を受けることができる条件である。効果的な条件には、細胞増殖を可能にする適切な培地、温度、pH、および酸素条件が含まれるがこれらに限定はされない。適切な培地は、通常、増殖因子および吸収できる炭素、窒素、およびリン酸塩の供給源、さらには適切な塩、無機化合物、金属、および他の栄養素(例えば、ビタミン)を含む固体または液体の培地である。これには、細胞を培養することができ、その結果、細胞がアポトーシスまたはシグナル伝達を示すことができる有効な培地が含まれる。例えば、哺乳動物細胞については、培地としては、10%のウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地を挙げることができる。
【0098】
細胞は、組織培養フラスコ、試験管、マイクロタイター皿、およびペトリ皿を含むがこれらに限定はされない様々な容器の中で培養することができる。培養は、細胞に適切な温度、pH、および二酸化炭素含有量で行われる。このような培養条件はまた、当業者の範囲内である。
【0099】
予想される調節因子を細胞に対して添加するための方法としては、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞による発現(すなわち、裸の核酸分子、組み換え体ウイルス、レトロウイルス発現ベクター、およびアデノウイルスの発現を含む発現システムを使用する)、イオン対合剤(ion pairing agent)の使用、および細胞透過のための界面活性剤の使用が挙げられるがこれらに限定はされない。
【0100】
本発明には、以下の限定ではない実施例によって説明される複数の態様がある。
【実施例】
【0101】
(材料および方法)
(細胞)
使用した腎細胞ガン細胞株、RCC45、RCC54、およびACHNは、Gurova et al.,(2004).Cancer Res 64,1951−1958に記載されている。H1299、HT1080、MCF7、LNCaP、PC3、DU145、HCT116、SK−N−SH、W138細胞は、ATCCから入手した。正常な腎臓上皮細胞(NKE)の初代培養物は、J.Didonato(Cleveland Clinic Foundation,OH)から提供された。リー−フラウメニ癌症候群の患者に由来する041線維芽細胞株は、G.Starkから提供された。Mel7およびMel29細胞は、Kichina et al.,(2003).Oncogene 22,4911−4917に記載されている黒色腫細胞株である。全ての細胞を、10%のFBS、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのHepes緩衝液、55nMのβ−メルカプトエタノールと、抗生物質を補充したRPMI 1640培地の中で維持した。
【0102】
p53応答性β−ガラクトシダーゼを有しているレポーター細胞株は、Gurova,et al.,(2004).Cancer Res 64,1951−1958に記載されているものであった。p53応答性ルシフェラーゼを有しているレポーター細胞株は、p21−ConALucプラスミドのトランスフェクションと、その後のG418での選択によって作成した。NF−κB依存性ルシフェラーゼを有しているレポーター細胞株は、pNF−κBLucとpEGFP−mito(Clontech)プラスミドの同時トランスフェクションと、その後のG418(pEGFP−mitoプラスミドによって提供されるマーカー)についての選択によって得た。myc、またはClock/Bmal応答性レポーターを有しているレポーター細胞株は、C.Burkhart and M.Antoch(Cleveland Clinic Foundation,OH)から好意によって提供された。
【0103】
p53の発現が阻害されている細胞は、siRNAの発現のためのpBabeH1−sip53またはpBabeH1−siGFPベクターのレトロウイルス形質導入と、その後のピューロマイシンについての選択によって作成した。
【0104】
(プラスミド)
p53、Arf発現ベクター、pBabeH1−siHdm2、p21−ConALucレポータープラスミドは、Gurova,et al.,(2004).Cancer
Res 64,1951−1958に記載されている。pNF−κBLucプラスミドは、N.Neznanov(Cleveland Clinic Foundation,ref.59)によって提供された。pss−IκBを発現するpCDNA3ベクターは、I.Budunova(Northwestern University)によって提供された。siRNAの発現のためのpBabeH1−sip53およびpBabeH1−siGFPベクターは、Gurova,et al.,(2004)Cancer
Res 64,1951−1958に記載されているpBabeH1−siHDM2ベクターと同様に、siRNAの発現のためのH1プロモーターと64オリゴヌクレオチドループ鋳型を、pBabeH1−puroベクターの左のLTRに挿入することによって作成した。p53およびGFPに対するsiRNAの配列は、Brummelkamp,et al.,(2002).Science 296,550−553に記載されている。p53またはGFPの発現のためのレンチウイルスプラスミドは、Gurova,et al.,(2004).Cancer Res 64,1951−1958に記載されている。
【0105】
(化学物質)
34,000種類の化合物のDiverSetライブラリーは、Chembridge,Inc.から入手した。30d9および9AAの周辺の集中的ライブラリーは、Chembridge,Inc.から提供された。全ての他の化合物はSigmaより入手した。
【0106】
(レトロウイルスおよびレンチウイルスの形質導入)
60mmのプレートにプレートしたパッケージング細胞(ClontechによるA293)を、製造業者による推奨にしたがってLipofectamin Plus(Invitrogen)を使用して2μgのレトロウイルスベクターDNAでトランスフェクトした。培地を8時間後に交換した。8μg/mlのポリブレン(Polybrene(Sigma))を補充したウイルスを含む培地を、トランスフェクションの24時間後および48時間後に回収し、そして感染のために使用した。ウイルスが形質導入された細胞を、感染していない細胞を完全に死滅させることができる適切な選択物質(ベクターに応じて、G418、ハイグロマイシン、またはピューロマイシン)に対する耐性について選択した。
【0107】
p53またはEGFP(対照ベクター)を有している組み換え体レンチウイルスのストックを、リポフェクタミン試薬(Invitrogen)を使用して水疱性口内炎ウイルスのウイルス構造タンパク質とGタンパク質をコードするパッケージングプラスミドとともにpLV−CMV−p53およびpLV−CMV−EGFPプラスミドでトランスフェクトした293細胞株を使用して調製した。293T細胞によるウイルスを含む培地を48時間後に回収し、4μg/mlのポリブレンの存在下で標的細胞に移し、そしてウイルスを超遠心分離によって50〜100倍に濃縮した。ウイルス力価(通常は、10IU/ml)を、Rat 1a細胞(p53の異所性発現に対して耐性であることが知られている)の感染、その後のピューロマイシンに対する選択およびコロニーのカウントによって決定した。
【0108】
(化合物のライブラリーのスクリーニング)
2×10個のRCC45ConALacZ細胞を、標準的な添加剤を含む200μLのフェノールレッドを含まないRPMI培地中の96ウェルプレートのウェルにプレートした。一晩のインキュベーションの後、対照とともに、DMSO溶液中の化合物のライブラリーを、プラスチック製の細菌増殖装置(bacterial replicator)(200+/−100nL)の助けを借りて添加した。化合物の最終濃度はおよそ5μg/mlであった。ネガティブ対照はDMSOとし、ポジティブ対照はドキソルビシン溶液(0.2、0.6、および2μM)とした。24時間後、ONPGを含む溶解緩衝液を、氷上の培地に直接添加した。37℃で3時間のインキュベーションの後、β−ガラクトシダーゼ活性を、λ=430mmでのWallack 1420プレートリーダー(Perkin Elmer)の吸光度の読取値から概算した。ドキソルビシンの最も有効な濃度よりも強いONPG反応を誘導した全ての化合物を、最初のヒットと考えた。
【0109】
(レポーターアッセイ)
同時トランスフェクションの準備のために、2×10個の細胞を6ウェルプレートにプレートし、そして一晩のインキュベーションの後、種々の濃度のp53、Arf、Ss−IκB、またはsiHDM2を発現するプラスミドと組み合わせた0.5μgのレポータープラスミド(p21−ConALucまたはpNF−κBLuc)を、Lipofectamin Plus試薬(Gibco BRL)を用いてトランスフェクトした。対応する空のベクターを、2μgまでの量の全DNAで、全てのトランスフェクションに加えた。トランスフェクション効率の正規化を0.2μgのpCMV−LacZプラスミドを添加することによって行った。ルシフェラーゼ活性とβ−ガラクトシダーゼ活性を、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)またはβ−ガラクトシダーゼ酵素システム(Promega)によって、細胞溶解緩衝液(Promega)でのトランスフェクションの48時間後に調製した溶解物中で測定した。発光反応と比色反応を、Wallack 1420プレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。組み込まれたレポーターの準備。レポーターが組み込まれている2×10個の細胞を96ウェルプレートにプレートした。一晩のインキュベーションの後、化合物またはレンチウイルスを生産する細胞からの培地を添加した。様々なタイミングで細胞溶解物を、レポーター溶解緩衝液(Promega)を使用して調製した。ルシフェラーゼ活性またはβ−ガラクトシダーゼ活性、およびタンパク質濃度を、標準的なキット(Promega,Luciferase and β−galactosidase assay systems,Biorad Protein Assay Kit)を使用して細胞溶解物のアリコートの中で測定した。
【0110】
(細胞生存率のアッセイ)
5×10個の細胞を6ウェルプレートにプレートし、様々な濃度の薬物で24時間処理した。その後、薬物を含まない新しい培地を添加した。コロニーの数を、5〜6日間のインキュベーション後に概算した。細胞の生存率は、未処理の対照と比較した、処理した細胞のメチレンブルー染色の強度の割合として概算した(染色したコロニーからメチレンブルーを0.1%のSDSによって抽出し、そして分光光度計で定量した)。
【0111】
(細胞周期の分析)
10個の細胞を100mmのプレートにプレートし、そして一晩のインキュベーションの後、種々の濃度の9AAまたはドキソルビシンを添加した。インキュベーション時間の終了後、細胞を回収し、固定し、ヨウ化プロピジウムで染色した。DNA含有量をFACScalibur(Becton Dickinson)を使用して測定し、CellQuestソフトウェアを使用して分析した。
【0112】
(ウェスタンブロット分析)
細胞を、1mMのPMSF(Sigma)、10μg/mlのアプロチニン(Sigma)、および10μg/mlのロイペプチン(Sigma)を含むRIPA緩衝液(25mMのTris HCl、pH7.2、125mMのNaCl、1%のNP40、1%のデオキシコール酸ナトリウム、1mMのEDTA)中で溶解させた。タンパク質濃度を、BioRad Dcタンパク質アッセイキットを用いて決定した。等量のタンパク質を4〜20%の勾配のプレキャストゲル(Novex)上で泳動させ、PVDF膜(Amersham)上にブロットした。以下の抗体を使用した:抗p53モノクローナルマウスDO1(Santa−Cruz)、抗p21モノクローナルマウスF−5(Santa−Cruz)、抗mdm2モノクローナルマウスSMP14(Santa−Cruz)。p53のリン酸化状態を、製造業者による推奨にしたがって、Cell signalingによるホスホ−p53サンプラーキット、抗p65(C20、Santa Cruz)、抗ホスホ−p65(ser536,Cell Signaling)、抗IκBa(C21,Santa Cruz)、抗p50(NLS,Santa Cruz)を使用して分析した。HRP結合二次抗体はSanta−Cruzから購入した。データの定量はQuantity One(BioRad)を使用して行った。
【0113】
(免疫蛍光の免疫染色)
チャンバースライドの中の細胞をPBSで洗浄し、そこで室温の10%のリン酸緩衝化ホルマリン、−20℃の100%のメタノール、および−20℃のアセトンで固定した。その後、スライドをPBS中の3%のBSA、0.1%のTriton X100の溶液中で1時間ブロックした。抗p65抗体(C−20、Santa−Cruz)を、ブロッキング溶液中で1μg/mlの濃度で添加した。二次抗ウサギCy2結合抗体(Sigma)を使用した。全ての洗浄は、ブロッキング溶液を用いて行った。
【0114】
(DNA−トポイソメラーゼII活性のアッセイ)
HT1080細胞を、0.02から0.04mCi/mLの[14C]チミジン、比活性53mCi/mmol(Amersham)で24時間標識した。標識したHT1080細胞を、種々の濃度のエトポシド(VP−16)、アムサクリン(m−AMSA)、または9−アミノアクリジンで1時間処理した。トポIIによって媒介されるDNAの切断の誘導を、SDS−KCl技術の改良を使用してタンパク質DNA複合体の沈殿を測定することによって決定した。
【0115】
(プロテアソーム阻害アッセイ)
プロテアソームアッセイキットは、Boston Biochem,Inc.から購入し、製造業者による推奨にしたがって使用した。
【0116】
(電気泳動の移動度のアッセイ(EMSA))
核抽出物は、Chernov,et al.,(1997).Oncogene 14,2503−2510に記載されているように調製した。NF−κB結合部位に相当するアニーリングしたオリゴヌクレオチド(Santa−Cruz)を、Klenowポリメラーゼによって[α−32P]dCTPで、その後、T4ポリヌクレオチドキナーゼによって[γ−32P]dATPで放射標識した。10cpmの標識したオリゴヌクレオチドを、Probe Quantカラム(Amersham)でアフィニティー精製した。放射標識したオリゴヌクレオチドを、非特異的結合を防ぐための1μgのポリ−dIdC(Amersham)とともに、10μgのタンパク質核抽出物に対して添加し、そして室温で30分間インキュベートした。スーパーシフトのために、200ngの抗p65抗体、抗p50抗体、または抗−抗体を反応に添加した(全ての抗体はSanta Cruzによる)。30分間のインキュベーションの後、反応混合物の全てを0.5×TBE緩衝液中の4%のポリアクリルアミドゲルにロードし、200Vで2時間泳動した。乾燥させたゲルをX線フィルムに対して30分から1時間露光させた。
【0117】
(動物実験)
5〜6週齢の雄のNIH Swiss無胸腺ヌードマウスをHarlanから購入した。5×10個の腫瘍細胞を100μLのPBSの中でマウスの脇腹に接種した。腫瘍が5mmの直径に達した時点で、薬物の腹腔内注射を、PBS中の50%のDMSOの100μlの溶液の中で開始した(PBSに溶解させたキナクリンを除く)。媒体として、PBS中の50%のDMSOを使用した。腫瘍の大きさを一日おきに三次元で測定した。
【0118】
(実施例1)
(RCC細胞をベースとする、p53活性化物質の単離のための読み出し)
p53のトランス活性化機能は、まだ知られていないインヒビターによってRCC細胞の中で阻害され、このことは、このタイプの腫瘍細胞、さらにはp53と同様の阻害を有している他の腫瘍細胞を選択的に死滅させるためのアプローチとしての、薬物によって媒介されるp53機能の回復を示唆している。p53の再活性化がRCC細胞に対して毒性であるかどうかを試験するために、本発明者らは、インヒビターを枯渇させる試みにおいて5種類のRCCに由来する細胞株においてp53を異所で発現させた。細胞に、組み込まれたp53応答性レポーター(ConALacZ)を補ってp53の再活性化をモニタリングした。p53 cDNAを、CMVプロモーターを有しているレンチウイルスベクターを使用して形質導入した。p53欠損肺腺ガン細胞株H1299(これは野生型p53に対して反応性である)およびラットの繊維芽細胞様細胞株Rat1(これは、ヒトp53に対して耐性である)を対照として使用した。
【0119】
図1に示すように、RCC中の休眠状態のp53は再活性化させることができ、そしてこの再活性化によって腫瘍細胞の死が導かれた。特定の発現レベルから開始すると、p53は、同時に、細胞傷害性になり、そしてRCC45細胞中のレポーターを誘導することにおいて活性となった(図1aおよびb)。このことは、細胞(例えば、RCC細胞)を、p53を再活性化させることができる物質のスクリーニングのための細胞をベースとするレポーターシステムにおいて使用できることを示している。このことはまた、腫瘍細胞(例えば、RCC細胞)中でのp53の再活性化が細胞傷害性であり得ることも示している。
【0120】
(実施例2)
(化合物のライブラリーのスクリーニングによるRCCの中での強力なP53活性化因子としてのアミノアクリジンの同定)
本発明者らは、RCC特異的p53の抑制の機構を解明するためのツールとしてもまた使用することができる治療可能性を有している低分子を単離するために、RCC中のp53トランス活性化を回復することができる化合物の、細胞をベースとする直接のスクリーニングを行った。RCC45ConALacZ細胞を、34,000種類の化合物の様々な化学的ライブラリーをスクリーニングするために使用した(Chembridge Corporation)。β−ガラクトシダーゼ活性を、化合物とのインキュベーションの24時間後に細胞溶解物中で測定した。1μMのドキソルビシンよりも高いβ−ガラクトシダーゼ活性を誘導した28種類の化合物を、最初のヒットと考えた(図2a)。最も活性のあった化合物(化合物30d9)は、RCC45細胞中のレポーターの22倍の誘導を生じ、これは、ドキソルビシンよりも7倍強く作用した。化合物30d9の近くで構築した、40種類の化合物からなる構造アナログのライブラリーを、同じ細胞をベースとするレポーターアッセイを使用してスクリーニングした。化合物1の式の2つの物質が活性であることが明らかになった。
【0121】
その後、化合物30d9の59種類の誘導体のライブラリーをスクリーニングした。これには、抗ガン剤であるアムサクリン(amsa)と抗マラリア薬であるキナクリンを含めた。試験した化合物のうちの12種類が、RCC45細胞の中でp53を再活性化させ、それらの活性はドキソルビシンと同等(例えば、amsa)からドキソルビシンよりも7〜10倍高い活性までの範囲であった。化合物30d9および9AAが最も強かった(図2b)。キナクリンは中程度のレベルの活性を示した。SAR分析は、アミノアクリジンがp53を再活性化させることができることを示していた。
【0122】
(実施例3)
(アミノアクリジンは種々の細胞型におけるp53の強力な活性化因子である)
9AAは、RCC45細胞中でのp53レポーター遺伝子の誘導だけではなく、p21/Waf1およびHdm2のタンパク質レベルの分析によって判断される内因性p53応答性遺伝子の誘導においても、ドキソルビシンよりもはるかに強かった(図3aおよびb)。興味深いことに、p53経路が極めて活性であるMCF7細胞においては、9AAの効果はドキソルビシンよりも弱かった(図3aおよびb)。
【0123】
本発明者らは、野生型p53を有しているいくつかの他のレポーター細胞株中でのp53のトランス活性化に対する9AAの効果を試験した。試験した細胞の大部分において、9AAは、ドキソルビシンまたは使用した他のDNAを損傷させる薬物よりもはるかに強いレポーター活性を刺激し(図3cおよびデータは示さない)、このことは、共通の機構が種々の腫瘍細胞型における活性なp53のネガティブな制御に関係していることを示唆している。9AAによるp53の最も強い誘導は、多くのアッセイにおいてRCC細胞株と並行して使用したヒト線維肉腫HT1080細胞において観察された。9AAの効果はp53依存性であった。なぜなら、レポーター活性の刺激は、p53ヌルH1299細胞またはsiRNAによってp53発現が阻害されている細胞においては検出されなかったからである(図3cおよびd)。
【0124】
9AAは、1μMのような低い濃度でp53を活性化させた(図3e)。活性化の速度はDNAを損傷させる刺激と比較すると異常に遅い。9AAによって誘導されるp53依存性トランス活性化は12時間でわずかに検出できるようになり、そして、処理のおよそ36時間後に最大に達した(図3f)。9AAとの1時間のインキュベーションが、数時間後に検出可能なp53の活性化を開始させるには十分であった(図3f)。
【0125】
(実施例4)
(アミノアクリジンは野生型p53を有している腫瘍に対しては毒性がある)
p53の活性化がp53依存性細胞傷害性に形を変えるかどうかを試験するために、本発明者らは、p53の状態が異なる細胞の生存率に対する9AAの効果を比較した。この目的のために、本発明者らは、抗p53を発現する構築物または対照であるsiRNAを発現する構築物のいずれかを発現する同系の対である細胞株のシリーズを作成した。siRNAによるp53のダウンレギュレーションの程度を、ウェスタン免疫ブロッティングによって試験した。試験した全ての細胞変異体に対して9AAが毒性を有していることが明らかになった。しかし、これはp53の発現が低下している細胞に対しては毒性が低く、HT1080細胞においては極大差が観察された(図4aおよびb)。
【0126】
用量に応じて、9AAは、p53依存性の増殖の停止(3μM)またはアポトーシス(20μM、図4c)を生じた。低用量の9AAは、さらに長い時間のインキュベーション(48時間まで)の後でもなおアポトーシスを生じることはなく、一方、高用量のこの化合物によって、先に増殖が停止されることなくアポトーシスが誘導された。おそらくはG1チェックポイントの制御の欠損が原因で対照細胞よりもp53が欠損している細胞の周期の中での細胞の分布の変化がより強く生じたドキソルビシンとは反対に、細胞周期の分布におけるごくわずかな変化が9AAで処理したp53欠損細胞において観察された(図4c)。
【0127】
興味深いことに、DNAの損傷を生じる機構を通じて作用する化学療法剤(例えば、カンプトテシン、ドキソルビシン)か、または微小管ネットワークに影響を与えることによって作用する化学療法剤(例えば、タキソール、ビンブラスチン)のいずれの毒性も、p53依存性ではないことが明らかになった(図4d)。このことは、アミノアクリジンが従来の化学療法剤とは異なる機構を通じて腫瘍細胞を死滅させることを示唆している。正常な細胞も活性なp53を有しているので、本発明者らは、正常な腎臓上皮細胞およびヒトの2倍体線維芽細胞WI38に対する9AAの毒性を試験した。これらの正常な細胞型はいずれも、RCCまたは他の腫瘍細胞と比較して、9AAに対してより耐性があった(図4eおよびf)。
【0128】
(実施例5)
(アミノアクリジンをベースとする薬物はインビボで抗腫瘍効果を有している)
アミノアクリジンのインビボでの抗腫瘍効果を、それらのp53状態が異なり、そしてヌードマウスにおいて皮下で増殖させたp53ルシフェラーゼレポーターを有しているHT1080細胞を使用して、異種移植腫瘍モデルにおいて試験した。腫瘍細胞中でのp53依存性ルシフェラーゼレポーターの活性を、インビボでの9AAの生体利用性を試験するために使用した。9AAおよびキナクリンはいずれも、腫瘍中のp53を活性化させることができ(図5a)、そしていずれの化合物も、上記の実験と同様の特性を示した(データは示さない)。
【0129】
キナクリンの効果についてのp53依存性を十分に引き出すために、HT1080sip53細胞(左脇腹)およびHT1080siGFP細胞(右脇腹)をマウスに接種した。腫瘍が5mmの直径に達した後、マウスに、50mg/kgのキナクリンを毎日腹腔内注射し、5−フルオロウラシル(5FU、35mg/kg)を比較のために使用した。図5bに示すように、キナクリンは、5FUと同じ程度までp53を発現する腫瘍の増殖を阻害し、そしてp53欠損腫瘍の増殖に対しては効果がなかった。これは、アミノアクリジンがp53依存性の様式で異種移植腫瘍のインビボでの増殖を阻害することを示している(図5b)。
【0130】
マウスにはまた、2×10個のヒト前立腺ガン細胞をPC3 p53ネガティブを使用して、または変異体p53を含むDU145細胞を接種した。マウスを、経口強制飼養によって100mg/kgの用量のキナクリンで、または対照としての滅菌水で処置した。腫瘍の増殖は、キナクリンで処置したマウスにおいては約50%減少した。興味深いことに、このことは、アミノアクリジンもまた、p53依存性の様式で異種移植腫瘍のインビボでの増殖を阻害することを示している。
【0131】
(実施例6)
(アミノアクリジンによって媒介されるp53の活性化の機構)
本発明者らは、最初に、アミノアクリジンが、p53を誘導する化合物についての周知の作用機構であるDNAの損傷を通じてp53を活性化させるかどうかを試験した。9AA誘導体の1つであるamsaはトポイソメラーゼIIの毒性を介してDNAの損傷を引き起こすので、本発明者らは、トポイソメラーゼIIの別のインヒビターであるamsaおよびエトポシドと比較して、9AAがインビトロではトポイソメラーゼII活性に対して効果がないことを試験し、明らかにした(図6a)。さらに、9AAは、DNAの切断に感受性であるキナーゼ(ATM、ATRなど)を介してp53を活性化するDNAを損傷させる薬物から予想することができるように、p53のリン酸化状態には影響は与えなかった。ポジティブ対照としてこれらの実験で使用したドキソルビシンは、p53のリン酸化を誘導し、このことによって、上流のp53によるシグナル伝達がRCCにおいて機能的であることが確認された(図6b)。この結果は、様々なタイプのDNAの損傷によってはRCC中のp53は活性化させられないことを示す以前の結果とともに、アミノアクリジンがDNAの損傷とは異なる機構によってp53を活性化させることを示している。
【0132】
プロテアソームインヒビターは未修飾のp53タンパク質の蓄積を引き起こすp53活性化物質の別のクラスを構成する。9AAでの処置に応答したリン酸化されていないp53の蓄積と、細胞質内での薬物の顕著な局在化(蛍光顕微鏡でモニターした)は、アミノアクリジンがプロテアソームの分解のインヒビターとして作用できることを示唆しした。この仮説は、直接的なインビトロでのアッセイを使用して(図6c)、そしてプロテアソームの分解についての別の標的であるIκBのレベルに対する9AAの効果をモニターすることによって[21](これは、プロテアソーム活性とは無関係な指標として使用した)排除された。MG132(ポジティブ対照として使用したプロテアソームの分解のインヒビター)は、IκBのリン酸化形態の蓄積を生じたが、9AAでの処置によっては、驚くべきことに、反対の効果があり、これによって、IκBの段階的な減少と、その後の完全な消滅が導かれた(図6dおよびe)。これらの結果は、アミノアクリジンはプロテアソームの阻害によってはp53を活性化をさせることはないことを示している。
【0133】
(実施例7)
(アミノアクリジンはNF−κBを阻害する)
実施例6に示したように、9AAによってIκBの分解は予想外に誘導された。これらの結果に基づいて、本発明者らはNF−κβ経路に対するアミノアクリジンの可能性のある効果に焦点をあてた。本発明者らは、NF−κBの転写活性に対する9AAの効果を試験するために、NF−κB応答性レポーターが組み込まれているp53ヌルH1299細胞を使用した。本発明者らは、9AAとキナクリンはいずれも、レポーターの基底の活性およびTNF−によって誘導される活性を阻害したことを明らかにした(図7a)。これらは、TNFでの刺激前(−24〜0時間)、TNFでの刺激と同時(0時間)、またはTNFでの刺激の後(0〜6時間)に添加された場合に有効であった(データは示さない)。これらはまた、NF−κBフィードバック調節ループの不可欠な部分であるIκBのTNFによって刺激される誘導も阻害した(図7b)。驚くべきことに、9AAおよびキナクリンによるNF−κB依存性トランス活性化のブロックは、NF−κBのDNA結合活性における同時用量依存性の増加と同時に生じた(図7c)。いくらかの増大は、TNFでの刺激を伴わない場合にもなお観察され、これには、p50/p50ホモ二量体が主に関係している(図7d)。この増大は、薬物をTNFと組み合わせて投与した場合に特に強く、これには、p65/p50およびp50/p50 NF−κB複合体の両方が関係していた(図7cおよびd)。
【0134】
NF−κB複合体のDNA結合活性の増大は、免疫蛍光染色によって観察した場合には、9AAの存在下では、TNFで刺激した場合のp65を含むNF−κB複合体の核での蓄積と相関していた。本発明者らは、p65は9AAの存在とは無関係に核に侵入するが、薬物によって核の中でのその存在時間が有意に延長させられることを見出した(図7e)。これはおそらく、核からのNF−κBのシャトル輸送の役割を担うIκBの欠損が原因である。
【0135】
これらの結果は、アミノアクリジンが、異常な機構を通じて作用するNF−κBのトランス活性化の強力なインヒビターであることを示している。IκBを安定化させることによって作用する以前に記載されたインヒビターとは反対に、アミノアクリジンは、NF−κB複合体を転写不活性な状態に転換させることによって作用し得る。これは、そのシャトル因子(shuttling factor)IκBの誘導の欠損が原因で核に捕捉される。
【0136】
NF−κB複合体の機能的な不活化に応答することができる機構のなかでも、p65のリン酸化(NF−κB活性に不可欠であると報告されている)を欠損させることにより、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を複合体に動員して、転写開始部位のクロマチンの不活性な形態への変換を生じる。この可能性を試験するために、本発明者らは、TNFで処理した細胞の核内でのp65のリン酸化に対する9AAの効果を分析した。TNFだけで処理した細胞の中では、リン酸化されたp65の割合は全p65と平行して増加した。TNFと9AAで処理した細胞においては、リン酸化されたp65の割合は増加しなかった(図7f)。これらの結果は、アミノアクリジンの存在下では、p65はリン酸化された状態、したがって、おそらくは不活性な形態で優先的に核に侵入することを示している。
【0137】
不活性なNF−κBは、刺激されていない核内では、HDACとの複合体として存在する。トリコスタチンA(TSA)によるHDAC活性の阻害によって、NF−κB依存性の転写の活性化が生じ、これにはさらなる刺激はともなわない。アミノアクリジンによるNF−κBの不活化もまたHDACに関係している場合には、NF−κBのTSAによって刺激された誘導に対して効果はないはずである。実際、NF−κBレポーター細胞のTSAでの処理によって、9AAによってブロックすることはできなかったNF−κB依存性転写の有意な活性化が生じた(図7h)。これらの結果は、アミノアクリジンは不活性なNF−κB複合体の蓄積を生じることができ、そして、それらの不活化がHDACに関係していることを示している。
【0138】
p65のリン酸化のブロックは、アミノアクリジンの抗NF−κB活性についての唯一の機構ではない可能性がある。本発明者らは、9AAでの処理によって、細胞質および核のプールにおいてp50の増加が生じることを明らかにした(図7g)。p50/p50ホモ二量体(その割合はこのNF−κBサブユニットの9AAによって媒介される蓄積にともなって増加した(図7d))はまた、不活性なNF−κB複合体の形成にも関係している可能性があった。
【0139】
(実施例8)
(アミノアクリジンはNF−κBの阻害を通じてRCCの中でp53を活性化させる)
アミノアクリジンはRCC細胞中で2つの強い効果を生じる。これらは、DNAの損傷、またはプロテアソームの分解の阻害には関係していない異常な方法でp53を活性化させる。これはまた、NF−κBも、異常な方法で、転写活性のあるNF−κB複合体を転写不活性な形態に変換させることによって阻害する。これはおそらく、p65/RelAのリン酸化の阻害が原因である。p53およびNF−κBに対するアミノアクリジンの効果は極めて特異的である。なぜなら、これらは、c−Myc、またはN−Myc、アンドロゲン受容体、またはCLOCK/BMAL1のような他の試験した因子によって調節された転写に対しては効果がないからである(データは示さない)。本発明者らは、アミノアクリジンによるp53の活性化およびNF−κBの抑制が薬物の活性と関係しているのか、または薬物の活性とは無関係であるのか、そして、相関している場合には、これは初期事象であるのかどうかを知ることについて興味を抱いた。本発明者らは、p53の活性化がNF−κBの抑制の要因である可能性を容易に排除することができた。なぜなら、NF−κB経路に対するアミノアクリジンの効果の全てがp53欠損細胞(H1299)と、さらにはp53野生型細胞(HT1080)細胞において見られたからである。さらに、アミノアクリジンによるNF−κBの阻害は、化合物の投与後1時間以内に検出できるが、p53に対するそれらの効果は、通常はゆっくりであり、効果が見え始めるには12から16時間の処置が必要である(図2d)。正反対のモデル(アミノアクリジンによるNF−κBの抑制がp53の活性化を駆動する)を研究するために、本発明者らは(i)NF−κBが別の機構によって阻害された場合にp53活性と共に何が生じるかを試験し、そして(ii)NF−κB欠損細胞中でのp53活性化に対するアミノアクリジンの効果を分析した。
【0140】
p53およびNF−κBに対する9AAおよびキナクリンの二重効果をさらに確認するために、本発明者らは、2種類の用量の9AA(2μMおよび10μM、それぞれ、増殖の停止とアポトーシスを引き起こす)で処理した2種類のRCC細胞株、RCC45とRCC54の全体的な遺伝子発現プロフィールの変化を、マイクロアレイハイブリダイゼーションを使用して分析した。RNAを処理の16時間後に単離し、この処理は、細胞死の兆候が生じる前にp53を誘導するために十分であった。アレイ上に提示された36847遺伝子のうちのわずかに0.6%が、両方の細胞株において少なくとも一方の用量で少なくとも2倍、それらのmRNA量を変化させた。最もアップレギュレートされた遺伝子としては、p21、mdm2、さらにはいくつかの他のp53標的が挙げられる(表1)。一方、IκBα、IL−8、ならびに、いくつかのケモカインおよびサイトカイン(表2)(全てNF−κB応答性遺伝子によってコードされる)は、処理の結果として強く抑制された。これらの結果により、p53のインデューサー、およびNF−κBの転写のインヒビターとしてのアミノアクリジンの二重効果を確認した。
【0141】
RCC細胞中のNF−κB活性を抑制するために、本発明者らは、両方のリン酸化部位が欠失している安定なIκB変異体である、IκBスーパーサプレッサー(ss−IκB)を使用した。この変異体のRCC ACHN細胞への形質導入によって、NF−κBレポーター活性の3倍の阻害が生じ(図8a)、これは、NF−κBが試験した全てのRCC細胞株の中で構成的に活性であるという本発明者らの観察と一致していた。重要なことは、同じ細胞の中でのp53応答性レポーターの活性は、NF−κB阻害性ss−IκBが形質導入されると5倍に増大したことである(図8b)。同様の効果が、別のRCC株であるRCC54、さらには、非RCC細胞であるHT1080(データは示さない)において観察された。これらはいずれも、p53の活性化により9AAに応答した(図3a)。注目すべきは、ss−IκBは、p53経路の「直接的」な調節因子(例えば、Arf、siRNAからHdm2、またはp53自体)の形質導入よりもはるかに強く、RCCにおいてp53を活性化させた(図8b)。したがって、本発明者らは、NF−κB活性のブロックによって、RCC細胞中のp53のトランス活性化を回復させることができること、そしてアミノアクリジンはおそらくこの機構を通じて作用することを明らかにした。
【0142】
アミノアクリジンによるNF−κBの阻害がそのp53活性化効果に唯一関与しているものであるかどうかを試験するために、本発明者らは、ss−IκBによって阻害されているNF−κBを有しているRCC細胞を9AAで処理した。本発明者らは、ss−IκBを安定に発現するRCC細胞株を作成することはできなかった。なぜなら、NF−κBの阻害はRCC細胞の生存率を妨害したからである(非公開の観察)。したがって、NF−κBが抑制されている細胞に対するアミノアクリジンの効果を、一時的なトランスフェクション実験において試験した。ここでは、ss−IκBの導入を、NF−κBまたはp53応答性レポーターのいずれかと組み合わせた。ACHNへのss−IκBのトランスフェクションによってNF−κBレポーター活性が阻害され、9AAでの処理によって全くさらなる阻害が生じなかった場合のレベルにまで低下した。これらの条件下では、9AAはそれ以上p53応答性レポーターを活性化させることはできず(図8c)、これは、アミノアクリジンのp53活性化効果がNF−κB機能の阻害によって媒介されていること、そしてNF−κB活性がRCCにおいてはp53の抑制に応答性であることを示している。
【0143】
(実施例9)
(耐性腫瘍細胞の感作)
本発明者らは、次に、死リガンドに耐性である腫瘍細胞を感作させるアミノアクリジンの能力を試験した。本発明者らは、前立腺、腎臓、肺、および乳房に由来する、もともと死リガンドでの処理に対して耐性であった腫瘍細胞が、非毒性または毒性が低い濃度のアミノアクリジンの存在下で処理した場合には、TNF、Fas、およびTRAILに対して劇的に感作させられたことを見出した(図9)。
【0144】
(実施例10)
(アミノアクリジンの抗腫瘍適用)
本発明者らは、従来の化学療法に対するアミノアクリジンの効力を試験した。この目的のために、本発明者らは、RCCに由来する腫瘍細胞とRCC以外に由来する腫瘍細胞(それぞれのタイプについて6種類)、さらには、正常な腎臓細胞(NKE)のセットについて、いくつかの化学療法剤(ドキソルビシン、タキソール、および5−フルオロウラシル)、9AA、およびキナクリン(QC)のIC50%を比較した。非RCC細胞株には、MCF7(wt p53)、HT1080(wt p53)、H1299(p53ヌル)、U2OS(wt p53)、LNCaP(wt p53)、およびHCT116(wt p53)を含めた。RCCの平均のIC50%は、使用したすべての化学療法剤について非RCC細胞株よりも高く、そして正常な細胞のIC50%に近かった。これは、臨床報告と一致していた(図10)。9AAおよびキナクリンは、試験した10種類のRCC細胞株のうちの9種類においてp53によって媒介されるトランス活性化を効率よく回復させた(データは示さない)。これらの化合物は、後者のp53状態とは無関係に、RCC細胞および非RCC細胞の両方に対して同等に有効であった。さらに表3も参照のこと。
【0145】
本発明者らは、次に、アミノアクリジンがエキソビボでの臓器の培養においても同様の効果を生じることを確認した。新しいRCC標本と同じ患者に由来する正常な腎臓の断片を、p53応答性lacZレポーター(図10B)を有しているレンチウイルスベクターを含む培地中の短時間臓器培養物の中に24時間入れた。その後、組織試料をキナクリンまたはドキソルビシンでさらに24時間処理し、その後、グルタルアルデヒドで固定し、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性についてX−gal(青色染色)を使用して染色した。図10Bに示すように、キナクリンは、腫瘍試料中でp53応答性レポーターの発現を誘導したが、ドキソルビシンは誘導しなかった。いずれの薬物によっても、正常な腎臓試料(内因性β−ガラクトシダーゼ活性を発現する正常な腎臓構造が見られた)中ではレポーターの誘導は検出できなかった。レポーターを形質導入しなかった全ての腫瘍試料においては、X−galポジティブ染色は観察されなかった。したがって、p53機能はアミノアクリジンによって回復させられた。このアッセイはまた、アミノアクリジン処理に対する腫瘍の応答性を予想することができる予後検査の基準として使用することもできる。
【0146】
1つの化合物において2つの重要な特性(NF−κB活性の阻害とp53の活性化)が組み合わされていることによって、アミノアクリジンの可能な用途が提供される。最も将来性のある自然界に存在している抗ガン性サイトカインの1つであるTRAILに対する腫瘍細胞の耐性には、通常、構成的に活性なNF−κBと、p53の阻害が関係している。これは、TRAIL受容体の1つであるDR5の発現を制御する。9AAは、試験した2種類のRCC細胞株においてTRAILレポーター(DR5)の発現を誘導することができた(表1)。したがって、NF−κBの阻害とp53の活性化を同時に行うことができる化合物は、TRAILに対して耐性である腫瘍細胞を覆すと予想される。本発明者らは、TRAIL耐性RCC細胞株であるRCC54とRCC45をキナクリンと組み合わせて処理することによってこれを試験した。正常な腎臓上皮細胞を比較のために使用した。図10Cに示すように、キナクリンは、腫瘍のTRAIL耐性を覆したが、正常な腎臓細胞については覆すことはできず、このことは、アミノアクリジンのガンに対する適用の別の形態を示している。
【0147】
最後に、本発明者らは、ヌードマウスに皮下注射したACHN細胞によって形成された腫瘍の異種移植片の増殖に対するキナクリンの効果を試験し、5−フルオロウラシル(5FU)を用いた場合に観察された効果と同様の、腫瘍増殖の約50%の阻害を見出した。しかし、これには、5FUの投与にともなった有意な体重の減少(20%まで)はなかった(図10D)。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−219499(P2011−219499A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−163729(P2011−163729)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【分割の表示】特願2007−522754(P2007−522754)の分割
【原出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(502093896)クリーブランド クリニック ファウンデイション (6)
【Fターム(参考)】