説明

NF−κB活性化遺伝子

【課題】NF−κBの過剰な活性化または阻害が関与する疾患の診断、治療または予防等に使用されるNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質を提供する。
【解決手段】ヒト肺線維芽細胞等から作製したcDNAライブラリーから、プラスミドpNFκB−Lucを用いて、NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするcDNAをクローニングして、そのDNA配列およびそれより推定されるアミノ酸配列を決定した。同タンパク質、これをコードするDNA、同DNAを含有する組換えベクターおよび同組換えベクターを含有する形質転換体は、NF−κBの活性化を阻害または促進する物質のスクリーニングに使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAの取得方法、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体ならびに該タンパク質と特異的に反応する抗体に関する。また、本発明は、NF−κBの過剰な活性化または阻害が関与する疾患の診断、治療または予防を行う際の本発明のタンパク質、DNAまたは抗体の使用に関する。
【0002】
また本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、NF−κBの活性化を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
転写因子NF−κB(Nuclear factor kappa B)は、炎症や免疫反応に関与する種々の遺伝子の転写調節において重要な役割を果たしている。NF−κBは、Relファミリーに属するタンパク質のホモあるいはヘテロ二量体からなり、無刺激の状態では、制御タンパク質であるIκB(Inhibitor of NF−κB)と複合体を形成することによりその核移行シグナルが覆い隠され、細胞質内で不活性型として存在する。
【0004】
細胞にインターロイキン(IL)−1、腫瘍壊死因子(TNF)−αなどのサイトカインの刺激が与えられると、IκBはIKK(IκB kinase)によってリン酸化され、ユビキチン化を経て26Sプロテアソームにより分解される。これにより遊離されたNF−κBは核内に移行し、NF−κB結合配列と呼ばれているDNA配列に結合し、その制御下の遺伝子の転写を誘導する。NF−κBによって発現調節を受けているとされている遺伝子は免疫グロブリン遺伝子の他、IL−1、TNF−αなどの炎症性サイトカイン、インターフェロン、細胞接着因子等が知られており、NF−κBはこれらの遺伝子の発現誘導を介して、炎症や免疫応答に関わっている。
【0005】
NF−κBの機能あるいは活性化を阻害することによって、炎症・免疫疾患やその他の疾病、たとえば腫瘍増殖、に関与している多くの因子(タンパク質)の発現を抑制できる可能性があり、自己免疫や炎症を原因・症状とする疾病に対する医薬の有望な標的である〔たとえば、Clinical Chemistry 45,7−17(1999)、J.Clin.Pharmacol.38,981−993(1998)、Gut 43,856−860(1998)、The New England Journal of Medicine 366,1066−1071(1997)、TiPS 46−50(1997)、The FASEB Journal 9,899−909(1995)、Nature 395,225−226(1998)、Science 278,818−819(1997)、Cell 91,299−302(1997)〕。
【0006】
細胞外からの情報は、何らかのシグナルの形に変えて、細胞膜を通過し細胞質をこえて核に到達し、標的遺伝子の発現を調節して細胞の応答が引き起こされる。そのため、細胞外の刺激からNF−κBの活性化に至る細胞内におけるシグナル伝達の仕組みを解明することは、自己免疫疾患や炎症症状を呈する疾患に対する新たな医薬の開発あるいは治療法の開発に非常に重要な手段を提供することとなり、極めて重要な意義を有している。
【0007】
しかしながら、細胞が一定の刺激を受けてからNF−κBの活性化に至るまでのシグナル伝達経路にはプロテインキナーゼなどの各種伝達分子が関わる多くのステップの存在が考えられ、従って、より効率的な創薬研究のためには、主要な役割を果たす伝達分子を明らかにした上でそれらに焦点をしぼった新しい薬物スクリーニング方法を確立することが望まれる。しかし、NF−κBの活性化のメカニズムは上記IKK、ユビキチン化酵素、26Sプロテアソームの他、TNF receptor associated factor 2(TRAF2)やNF−κB inducing kinase(NIK)などの幾つかのシグナル伝達分子が同定され、少しずつ解明されつつあるものの、いまだ不明な点が多く、新たなシグナル伝達分子の同定とより進んだNF−κB活性化メカニズムの解明が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記のように有用なNF−κBを直接的、あるいは間接的に活性化する作用を有する新規な遺伝子、タンパク質を見出し、これを医薬、診断薬、医療の分野で利用する方法を提供することにある。即ち、NF−κBを活性化する作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の製造方法、該タンパク質またはその部分ペプチドに対する抗体、該抗体の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、NF−κBの活性化を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法、該スクリーニング用キット、該スクリーニング方法もしくはスクリーニング用キットを用いて得られるNF−κBの活性化を阻害または促進する物質、該物質の製造方法、NF−κBの活性化を阻害または促進する物質を含有している医薬などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
近年、生体内で発現している遺伝子を解析する手段として、cDNAの配列をランダムに解析する研究が活発に行われており、このようにして得られたcDNAの断片配列がEST(Expressed Sequence Tag、たとえばhttp//www.ncbi.nlm.nih.gov/dbEST)として、データベースに登録され公開されている。しかし、ESTは配列情報のみであり、その機能を推定することは困難である。また、ESTはUniGene(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)により整備され、これまでに約92000クラスターが登録されている。しかし、その多くは5’端ヌクレオチド配列を欠損しており、タンパク質翻訳開始部位を含まない。そのため、mRNAのコード領域の決定を前提とするタンパク質の機能解析、プロモーターの解析による遺伝子発現制御の理解といった遺伝子機能の解析に直結しているとは言いがたい。
【0011】
一方、遺伝子の産物、すなわちタンパク質の機能を解明する方法の一つに、動物細胞を用いた一過性発現クローニング法がある(たとえば、実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック)。この方法は、動物細胞発現ベクターを用いて作製したcDNAライブラリーを、動物細胞にトランスフェクションすることで機能的なタンパク質を直接発現させ、このタンパク質が細胞に及ぼす生物活性を指標としてcDNAを同定、クローニングする方法である。この方法では、目的とするタンパク質産物に関する化学的情報(アミノ酸配列や分子量)をあらかじめ必要とせず、細胞内や培養液中に発現しているタンパク質の特異的生物活性を検出してcDNAクローンの同定を行うことができる。
【0012】
この発現クローニングを効率良く行なうためには、cDNAライブラリーの作製方法を工夫する必要がある。なぜなら、従来より汎用されているcDNAライブラリー作製方法には幾つかの方法があるが(たとえばGubbler−Hoffmanの方法:Gene 25(1983)オカヤマ−バーグの方法:Mol.Cell.Biol.2(1982))、これらの方法によって作製されたcDNAは、そのほとんどが5’末端ヌクレオチド配列を欠損したものであり、完全長(mRNAの全ヌクレオチド配列を含む)であることは稀であるからである。その理由は、mRNAからcDNAを作るのに使用する逆転写酵素が、完全長のcDNAを作る効率が必ずしも高くないからである。
【0013】
さらに、遺伝子の機能解析を試みるに際しては、完全長cDNAをクローニングし、そこからタンパク質を発現させることが必須の要件である。従って、全体のクローンの中で、完全長のものの割合が高いライブラリーを作製することが、発現クローニングを効率良く行なうために必要であった。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製し、293−EBNA細胞を用いた発現クローニング法による遺伝子機能アッセイ系を完成し、該アッセイ系によりNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードする新規DNA(cDNA)を単離することに成功した。この新規DNAは、293−EBNA細胞内で発現させることによりNF−κBの活性化を誘発した。この結果は、この新規DNAがNF−κBの活性化に関与するシグナル伝達分子であることを示しており、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は
(1) 以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質。
【0016】
(2) 上記(1)記載のタンパク質とその全長にわたり少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつNF−κBを活性化する作用を有する、精製されたタンパク質。
【0017】
(3) 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質。
【0018】
(4) 以下の(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179のいずれかで表されるポリヌクレオチド配列。
(b)(a)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179のいずれかにおいて、1若しくは複数個のヌクレオチド配列が欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列からなり、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
【0019】
(5) 上記(3)記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
(6) 上記(4)記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
【0020】
(7) 上記(3)〜(6)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
(8) 上記(3)〜(6)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
【0021】
(9) 上記(8)に記載の組換えベクターを含む形質転換された細胞。
(10) 上記(1)または(2)に記載のタンパク質が膜タンパク質である場合における、上記(9)記載の細胞の膜。
【0022】
(11) (a)上記(3)〜(6)のいずれか1つに記載の単離されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現する条件下で該ポリヌクレオチドを含有する形質転換された細胞を培養し、
(b)培養物からタンパク質を回収する、
ことを含む、タンパク質の製造方法。
【0023】
(12) (a)個体のゲノムにおける上記(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析する、
ことを含む該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法。
【0024】
上記方法において、好ましくは、発現するタンパク質の量が正常の2倍以上の場合、あるいは2分の1以下の場合に病気であると診断する。
【0025】
(13) 以下の工程を含むNF−κB活性化の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングする方法。
(a)NF−κBを活性化するタンパク質をコードする遺伝子およびNF−κBの活性化に対応した、検出可能シグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物として単離もしくは同定する工程。
【0026】
また、シグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定し、2分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0027】
(14) 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子、および検出可能なシグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された宿主細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程、および
(f)単離または同定された化合物を医薬組成物として最適化する工程。
【0028】
また、本発明においては、シグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定し、2分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0029】
(15) NF−κB活性化の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットであって、
(a)NF−κBを活性化するタンパク質をコードする遺伝子、およびNF−κBの活性化後、検出可能なシグナルを提供しうる成分により形質転換された細胞、および
(b)検出可能なシグナルを測定するための試薬
を含むキット。
【0030】
(16) 上記(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体。
(17) 上記(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することからなる、上記(1)、(2)または(7)記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
【0031】
(18) NF−κBの活性化タンパク質の発現を阻害する、上記(3)〜(6)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
(19) 上記(1)、(2)または(7)記載のタンパク質をコードするRNAの開裂により、NF−κBの活性化を阻害するリボザイム。
【0032】
(20) 炎症、自己免疫疾患、感染症、癌および骨疾患からなる群から選択される疾患の治療に有効な量の上記(13)記載の方法でスクリーニングされた化合物および/または上記(16)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体および/または上記(18)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または上記(19)記載のリボザイムを個体に投与することを含む疾患の治療法。
(21) NF−κBの活性化を阻害または活性化するものとして上記(14)に記載の方法により製造された医薬組成物。
【0033】
(22) 炎症、自己免疫疾患、癌、感染症、骨疾患、AIDS、神経変性疾患、または虚血性障害の治療のための上記(21)記載の医薬組成物。
(23) NF−κBに関連する疾患を患っている患者に上記(14)記載の方法により製造された医薬組成物を投与することからなる炎症、自己免疫疾患、癌疾患、感染症、骨疾患、AIDS、神経変性疾患、または虚血性障害を治療する方法。
【0034】
(24) 上記(16)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を有効成分として含有する医薬組成物。
(25) 上記(18)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬組成物。
【0035】
(26) 対象疾患が炎症、自己免疫疾患、感染症、癌疾患、骨疾患、AIDS、神経変性疾患および虚血性障害からなる群から選択される、上記(24)または(25)に記載の医薬組成物。
【0036】
(27) 機能を有する新規遺伝子の取得方法であり、少なくとも以下の工程を含む方法。
(a)オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製し、
(b)完全長cDNAおよび該機能を有するタンパク質の存在を示すシグナルを発する因子を含有するプラスミドを細胞中にコトランスフェクションし、さらに
(c)シグナルを発するプラスミドを選択する。
【0037】
尚、本発明における機能を有する新規遺伝子とは、例えば生物活性を持つタンパク質をコードする核酸分子が挙げられる。
【0038】
(28) 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177および179で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178および180で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体。
【0039】
(29) 上記(28)に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列および/または他のアミノ酸配列のデータを比較して他のポリヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列との同一性の算出を行う方法。
【0040】
(30) 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
【0041】
(31) 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。
【発明の効果】
【0042】
本発明により、産業上有用性の高いNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質やそれらの遺伝子が提供された。本発明のタンパク質やそれらの遺伝子により、NF−κBの過剰な活性化、又は阻害が関与する疾患の治療や予防に有用な化合物のスクリーニング、さらにそのような疾患の診断薬を作製することが可能である。更に本発明の遺伝子は、遺伝子治療に用いられる遺伝子ソースとしても有用である。
【0043】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2000-402288号、2001-088912号及び2001-254018号、並びに、米国仮出願 60/258,315号、60/278,640号及び60/314,385号の明細書及び/または図面に記載される内容を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
まず、本発明の基本的特徴を更に明らかにするために、本発明の完成に至る経緯を追いながら、本発明について説明する。NF−κBを活性化する作用を有する新規遺伝子を取得する目的で、実施例に示すように、以下の実験を実行した。まずヒト正常肺線維芽細胞(三光純薬株式会社より購入)より調製したmRNAより、オリゴキャッピング法によって完全長cDNAを作製し、該cDNAをベクターpME18S−FL3(GenBank Accession AB009864)に組み込んだ完全長cDNAライブラリーを作製した。次に、該cDNAライブラリーを大腸菌に導入し、1クローンずつプラスミドを調製した。次に、293−EBNA細胞(インビトロジェン社)に、ルシフェラーゼをコードするDNAを含有するpNFκB−Lucレポータープラスミド(STRATAGENE社)と上記の完全長cDNAプラスミドとを共導入した。そして、24時間あるいは48時間培養後、ルシフェラーゼ活性を測定し、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAの代わりに、ベクターpME18S−FL3を入れた細胞)と比べて有意に上昇している(対照実験と比べてルシフェラーゼ活性が5倍以上の値を示した)プラスミドを選抜し、該プラスミドにクローニングされているcDNAの全ヌクレオチド配列を決定した。このようにして得られたcDNAによりコードされるタンパク質は、該タンパク質がNF−κBの活性化に関与するシグナル伝達分子であることを示している。
【0045】
次に、以下に本発明について詳細に説明する。
本発明におけるNF−κBを活性化する作用を有するとは、適切な細胞内に遺伝子を導入し、該遺伝子にコードさせるタンパク質を過剰発現させた時、NF−κBが直接的あるいは間接的に活性化される(NF−κBの活性化を誘発する)ことをいう。NF−κBの活性化は、例えば、NF−κB依存レポーター遺伝子を用いたアッセイにより測定できる。アッセイは、該レポーター活性を対照細胞(ベクターのみを導入した細胞)に比し上昇させる作用を有することをいう。レポーター活性の上昇は、好ましくは、1.5倍以上、さらに好ましくは、2倍以上、さらに好ましくは5倍以上である。
【0046】
レポーター活性は、発現させたいタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えばcDNA)を適切な発現ベクター内にクローニングし、該発現ベクターとNF−κB依存レポータープラスミドを適切な細胞に共導入(コ・トランスフェクション)し、一定時間培養後、レポーターの活性を測定することにより測定することができる。適切な発現ベクターは当業者にはよく知られており、例えば、pME18S−FL3、pcDNA3.1(Invitrogen社)などが挙げられる。レポーター遺伝子は、当業者がその発現を容易に検出できるものであればよく、例えば、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子である。ルシフェラーゼをコードする遺伝子を使用することが最も好ましく、NF−κB依存レポータープラスミドとしては、例えば、pNF−κB−Luc(STRATAGENE社)が例示される。適切な細胞とは、IL−1あるいはTNF−αなどの刺激によりNF−κBが活性化される応答を示すような細胞であり、例えば、293−EBNA細胞が挙げられる。細胞培養および細胞への遺伝子導入(トランスフェクション)は、当業者であれば当該技術分野で公知の慣用方法により実施でき最適化できる。
【0047】
好ましい方法としては、293−EBNA細胞を細胞培養用96穴プレートに1×10cells/wellの細胞数となるように、5%FBS(Fetal Bovine Serum)存在下のDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培地にまき、5%CO存在下、37℃で24時間培養した後、FuGENE6(Roche社)を用いて、pNF−κB−Lucレポータープラスミド(STRATAGENE社)と、発現ベクターを1ウエルに共導入する。37℃で24時間培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステムピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定することによりNF−κBの活性化を測定する。ルシフェラーゼ活性の測定は、例えば、PerkinElmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて測定できる。FuGENE6による遺伝子導入の方法及びピッカジーンLT2.0によるルシフェラーゼ活性測定は、それぞれに添付されているプロトコールに従い実施できる。FuGENE6を用いた96穴プレートでの遺伝子導入の方法は、1ウエルあたり、FuGENE6の量は0.3〜0.5μlが良く、好ましくは0.3μlであり、pNF−κB−Lucプラスミドの量は50〜100ngが良く、好ましくは50ngであり、発現ベクターの量は、50〜100ngが良く、好ましくは100ngである。NF−κBを活性化する作用を有するとは、該レポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を対照実験(空のベクターのみを導入した細胞)に比し、上昇させる作用を有することをいう。レポーター活性の上昇は、好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは、2倍以上、さらに好ましくは5倍以上である。
【0048】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかのアミノ酸配列に関連して、本発明は、以下のタンパク質を提供する。
(a)上記アミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)上記アミノ酸配列の1つを有するペプチド。
(c)NF−κBを活性化し、かつ上記アミノ酸配列において、1以上のアミノ酸の削除、置換または付加を有するタンパク質。
(d)その全長にわたり配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
【0049】
“同一性”とは、当該技術で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の適合によって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間の適合によって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味する。“同一性”および“類似性”は、既知の方法により容易に決定できる。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最も長く適合するように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。相同性決定には、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りであるが、これに限定されない。
【0050】
アミノ酸置換行列とは20種類のアミノ酸の各々のペアの類縁性を数値化した行列であり、通常BLOSUM62のデフォルトマトリックスが用いられる。このアミノ酸置換行列の理論についてはAltschul S.F., J.Mol.Biol.,219:555-565(1991)に、DNA配列の比較への適用についてはStates D.J., Gish W., Altschul S.F., Methods, 3:66-70(1991)に示されている。その際の最適なギャップコストは経験的に決定されており、BLOSUM62の場合は好ましくは、Existence 11、Extension 1のパラメーターが用いられる。期待値(EXPECT)とは、データベース配列に対してマッチする際の統計的有意性に関する閾値であり、デフォルト値は10である。
【0051】
一例として、配列番号2のアミノ酸配列に対して例えば95%以上の同一性を有するタンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸100個あたり5個までのアミノ酸の変化を含んでよいことを意味する。言い換えれば、対照アミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質は、対照配列中の全アミノ酸の5%までの数のアミノ酸が欠失または他のアミノ酸と置換していてもよく、あるいは、対照配列中の全アミノ酸配列のうち5%までの数のアミノ酸が対照配列中に挿入されたものであっても良い。対照配列におけるこれらの変化は、対照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端位置に存在していてもよく、あるいはそれらの末端間のいずれかの位置に存在していてもよく、あるいは対照配列内で1個またはそれ以上の一連の群をなしていてもよい。
【0052】
上記した配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかに記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質がNF−κBを活性化する作用を有することは、本願明細書実施例に記載の通りである。
【0053】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112,114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179のいずれかのポリヌクレオチドに関連して、本発明は、また以下の単離されたポリヌクレオチドを提供する。
(a)上記配列に少なくとも95%、好ましくは97−99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
(b)上記配列のポリヌクレオチド。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかのアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド。
【0054】
上記ヌクレオチド配列に含まれるヌクレオチド配列に同一またはほとんど同一なポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする全長cDNA及びゲノムクローンまたは上記配列に対応する相同性の高い他の遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして、または核酸増幅反応のためのプライマーとして使用してもよい。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記配列に70%同一であり、好ましくは、80%同一であり、より好ましくは90%同一であり、最も好ましくは、95%同一である。プローブまたはプライマーは、一般的には少なくとも15ヌクレオチドを含有し、好ましくは30ヌクレオチドを含有し、50ヌクレオチドを含有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50ヌクレオチドを有する。特に好ましいプライマーは、20〜25ヌクレオチドを有する。
【0055】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(たとえば、cDNAおよびクローニングによって得られるか、あるいは合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であってもよく、RNA(たとえばmRNA)の形態であってもよい。該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであってもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖としても知られる)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖としても知られる)であってもよい。
【0056】
当業者であれば、公知の方法を用いてこのタンパク質中のアミノ酸の置換などを適宜行い、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同様にNF-κBを活性化する作用を有するタンパク質を作製することが可能である。一つの方法としては、該タンパク質をコードするDNAに対して、慣用の突然変異誘発法を使用する方法がある。別の方法としてはたとえば部位特異的変異法(たとえば宝酒造株式会社のMutan−Super Express Km キット)が挙げられる。また、タンパク質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このようにアミノ酸の欠失、置換、付加により配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかのタンパク質に対してアミノ酸配列が変異した変異体であって、NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質及び該タンパク質をコードするDNAも本発明に含まれる。変異の数は、好ましくは10まで、より好ましくは5まで、最も好ましくは3までが好ましい。
【0057】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
【0058】
当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術などを用いて配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(たとえば配列番号2)またはその一部を基に、これと類似性の高いDNAを単離して、該DNAから配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様にNF-κBを活性化する作用を有するタンパク質を得ることも通常行い得ることである。このように上記した配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかで表されるアミノ酸配列のタンパク質と高い同一性を有するタンパク質であって、NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。高い同一性とは、上記配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかであらわされるアミノ酸配列の全長にわたり少なくとも90%、好ましくは95%、さらに好ましくは、少なくとも97%以上の同一性を有するアミノ酸配列を示す。
【0059】
本発明のタンパク質としては、ヒトや哺乳動物のあらゆる細胞や組織に由来する天然のタンパク質でもよく、化学合成タンパク質であってもよく、また遺伝子組換え技術によって得られたタンパク質でもよい。タンパク質は糖鎖やリン酸化などの翻訳後修飾は受けていても受けていなくても良い。
【0060】
本発明は、上記で示される本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。上記の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列としてより具体的には、たとえば配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179のいずれかで表されるヌクレオチド配列が挙げられる。DNAはcDNAのほか、ゲノムDNA、化学合成DNAも含まれる。遺伝暗号の縮重に従い、遺伝子から生産されるタンパク質のアミノ酸配列を変えることなく配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチドを他の種類のヌクレオチドに置換することができる。従って、本発明のDNAはまた、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって変換されたヌクレオチド配列も含有する。このようなDNAは、公知の方法により合成することができる。
【0061】
本発明のDNAは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179のいずれかで表されるヌクレオチド配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。ストリンジェントな条件とは、当業者には十分理解できることであり、たとえば、T.Maniatisらの実験操作書(Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1982、1989)に従えば容易に実施できる。
【0062】
すなわち、ストリンジェントな条件とは、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中(5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、100μg/mlの変性せん断サケ精子DNA)で37℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで1×SSC、0.1%SDS中、37℃で10分の洗浄を2回行う条件である(低ストリンジエンシー)。より好ましい条件は、40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、1%SDS中、42℃で10分の洗浄を2回行う条件である(中ストリンジエンシー)。最も好ましい条件は、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で10分の洗浄を2回行う条件である(高ストリンジエンシー)。この際、得られたDNAは、NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードすることが必須である。
【0063】
本発明は、上記(3)あるいは(4)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と高い類似性を有し、かつNF-κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記(3)または(4)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の全長にわたり95%同一であり、より好ましくは97%同一であり、最も好ましくは少なくとも99%同一である。
【0064】
上記の本発明のDNAは、前述のタンパク質を、組換えDNA技術を用いて製造するのに用いることができる。本発明のDNA及びペプチドは、概略以下のようにして得ることができる。
(A)本発明のタンパク質をコードするDNAをクローニングする。
(B)タンパク質の全コード領域あるいはその一部をコードするDNAを発現用ベクターに組み込んで、組換えベクターを構築する。
(C)構築した組換えベクターにより、宿主細胞を形質転換する。
(D)得られた細胞を培養し、該タンパク質、またはその類縁体を発現させ、カラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0065】
上記の工程中でDNA、組換え体宿主としての大腸菌等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれらの目的を達成することができる。以下に上記(A)〜(D)の工程について更に詳しく説明する。
【0066】
上記(A)における本発明のタンパク質をコードするDNAのクローニングの手段としては、本願明細書実施例に記載した方法の他に、本発明のヌクレオチド配列(たとえば配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22,24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179のいずれか)の一部を有する合成DNAをプライマーとしたPCR法によって増幅する方法、あるいは、適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別すること、などが挙げられる。細胞、組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(RT-PCR法)によって増幅することもできる。適当なベクターに組み込んだDNAとしては、たとえば市販されている(CLONTECH社、STRATAGENE社)ライブラリーを使用することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。クローン化された本発明のタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。上記のようにして得られるDNAは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179のいずれかに記載のヌクレオチド配列を有する遺伝子であるか、あるいは前述の(3)〜(6)のポリヌクレオチドであればよい。上記(B)において発現ベクターに組み込むDNAは、上述のタンパク質の全長をコードする全長cDNAでも、DNA断片でも良いし、その一部分を発現する様に構築されたDNA断片でも良い。
【0067】
すなわち、本発明は、上記のDNAを含有する組換えベクターである。
本発明のタンパク質の発現ベクターは、たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0068】
用いる発現ベクターとしては、複製可能であれば、大腸菌をはじめとする原核生物由来、酵母由来、真菌由来、昆虫ウイルス由来、脊椎動物ウイルス由来のいずれのベクターでも良いが、宿主として使用する微生物または細胞に適したものを選択する必要がある。また、発現物に応じて、宿主細胞―発現ベクター系としては、適切な組み合わせが選択される。
【0069】
微生物を宿主として使用する場合、これら微生物に適したプラスミドベクターが組み換え体DNAの複製可能な発現ベクターとして一般に用いられる。
【0070】
たとえば、大腸菌を形質転換するためのプラスミドベクターとしては、プラスミドpBR322やpBR327などを用いることができる。プラスミドベクターは通常複製起源、プロモーター、及び組換え体DNAで形質転換した細胞を選別するのに有用な表現型を組換え体DNAに与えるマーカー遺伝子等を含んでいる。プロモーターの例としては、β−ラクタマーゼプロモーター、ラクトースプロモーター、トリプトファンプロモーター等が挙げられる。マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子やテトラサイクリン遺伝子などが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpBR322、pBR327の他に、pUC18、pUC19等が挙げられる。
【0071】
酵母で本発明のDNAを発現するためには、複製可能なベクターとして、たとえばYEp24を用いることができる。プラスミドYEp24はURA3遺伝子を含有しており、このURA3遺伝子をマーカー遺伝子として利用することができる。酵母細胞用の発現ベクターのプロモーターの例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼなどの遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0072】
真菌で本発明のDNAを発現するための発現ベクターに用いられるプロモーター及びターミナーターの例としては、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPD)、アクチン等の遺伝子プロモーター及びターミネーターが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpPGACY2、pBSFAHY83等が挙げられる。
【0073】
昆虫細胞で本発明のDNAを発現させるための発現ベクターに用いられるプロモーターの例としては、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。
【0074】
動物細胞で本発明のDNAを発現させるための組換えベクターは、一般に遺伝子を制御するための機能配列、たとえば、複製起源、本発明のDNAの上流に位置すべきプロモーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位や転写終止配列を含有している。本発明のDNAを真核細胞内で発現させるのに用いることができるそのような機能配列はウイルスやウイルス性物質から得ることができる。例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどがあげられる。これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の上流位置に本来存在するプロモーターも、上述の宿主−ベクター系で使用するのに適しているならば使用することができる。複製起源については、外来性の起源、たとえばアデノウイルス、ポリオーマ、SV40等のウイルス由来の複製起点を用いることができる。また、発現ベクターとして宿主染色体に組み込まれるような性質を有するベクターを用いる場合、宿主染色体の複製起源を利用することができる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpSV−dhfr(ATCC 37146)、pBPV−1(9−1)(ATCC 37111)、pcDNA3.1(INVITROGEN社)、pME18S−FL3等が挙げられる。
【0075】
本発明は、上記の組換えベクターを含む形質転換された細胞である。本発明の複製可能な組換えベクターで形質転換された微生物または細胞は、前述の通り、組換えベクターに与えられた少なくとも1種の表現型によって形質転換されずに残った親細胞から選別される。表現型は少なくとも1種のマーカー遺伝子を組換えベクターに挿入することによって与えることができる。また複製可能なベクターが本来有しているマーカー遺伝子を利用することもできる。マーカー遺伝子の例としては、たとえば、ネオマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子やジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子などが挙げられる。
【0076】
上記(C)において用いる宿主としては、大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでも良いが、用いる発現ベクターに適したものを選択する必要がある。微生物の例としては、エシュリヒア コリ(Escherichia coli)の菌株、たとえばE.coliK12株294(ATCC 31446)、E.coli X1776(ATCC 31537)、E.coli C600、E.coli JM109、E.coli B株、あるいはバチラス サブチリス(Bacillus subtilis)の如きBacillus属の菌株、あるいはサルモネラ チフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア マーゼサンス(Serratia marcesans)等の大腸菌以外の腸内菌、あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属の種々の菌株が挙げられる。酵母としては、たとえば、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。真菌としては、たとえば、アスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans)、アクレモニウム クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)(ATCC 11550)等が挙げられる。
【0077】
昆虫細胞としては、たとえば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda:Sf細胞)、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、などが用いられる。動物細胞の例としては、HEK293細胞、COS−1細胞、COS−7細胞、Hela細胞、チャイニーズハムスター(CHO)細胞等が挙げられる。これらの中でも、CHO細胞およびHEK293細胞が好ましい。 細胞を宿主とする場合、用いられる発現ベクターと宿主細胞の組合せは実験の目的により異なるが、その組合せにより、一過的発現、構成的発現の2種類の発現方式が考えられる。
【0078】
上記(C)における微生物及び細胞の形質転換とは、DNAを強制的方法や、細胞の貪食能により微生物や細胞に取り込ませ、プラスミド状態あるいは染色体に組み込まれた状態でDNAの形質を一過的あるいは構成的に発現させることである。当業者であれば公知の方法によって形質転換できる(たとえば実験医学別冊遺伝子工学ハンドブック)。たとえば動物細胞の場合、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、リポフェクション法などの方法でDNAを細胞に導入することができる。動物細胞を用いて、本発明のタンパク質を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のタンパク質の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、Dihydroforate reductase(DHFR)遺伝子を選択マーカーとして用いた場合Methotrexate(MTX)濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、DHFR遺伝子とともに、本発明のタンパク質をコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
【0079】
上記の形質転換された細胞を本発明のタンパク質をコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質を生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質を製造することができる。すなわち、本発明は、上記(3)〜(6)に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む形質転換された細胞を、該ポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を発現させる条件下培養し、次いで培養物から該タンパク質を回収することを含む該タンパク質の製造方法である。
【0080】
上記の形質転換された細胞の培養は、当業者に公知の方法で行なうことができる(たとえばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社)。たとえば動物細胞の場合、各種の動物細胞培養法、たとえば、シャーレ培養、マルチトレー式培養、モジュール培養などの付着培養、または細胞培養用担体(マイクロキャリアー)に付着させるか生産細胞自体を浮遊化させ浮遊培養等の公知の方法により培養を行なえば良い。培地は通常良く用いられる動物細胞用の培地、たとえばD−MEMやRPMI1640等を用いれば良い。
【0081】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。たとえば、本発明のタンパク質は、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスフォセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。最も好ましくは、高性能液体クロマトグラフィーが精製に使用される。ポリペプチドが細胞内合成、単離または精製の間に変性するときには、活性なコンフォーメションを再生するためにタンパク質をリフォールディングするためのよく知られた技術を使用できる。
【0082】
本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として製造することができる。これらも、本発明に含まれる。この融合タンパク質を発現する際に用いられるベクターとしては、該タンパク質をコードするDNAを組み込むことができ、かつ該融合タンパク質を発現することができるベクターであれば、いかなるベクターでも用いることができる。本発明のペプチドに融合できるタンパク質としては、たとえばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン残基の6個の連続配列(6×His)等が挙げられる。本発明のタンパク質を他の蛋白質と融合した蛋白質として発現させた場合には、融合した蛋白質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、有利である。例えば、GSTとの融合蛋白質として生産した場合は、グルタチオンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0083】
本発明は、上記(7)のタンパク質の活性を阻害するタンパク質を含む。たとえば、抗体や上記(7)のタンパク質の活性中心等に結合し、活性の発現を妨げる他のタンパク質が挙げられる。
【0084】
本発明は、前記の本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドに特異的に結合する抗体ならびにそのような抗体の製造方法に関する。抗体は、本発明のタンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体のフラグメント、一本鎖抗体、ヒト化抗体の何れであってもよい。抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。たとえば、該抗体フラグメントには、限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント及びFvフラグメントが含まれる。たとえば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、上記(1)または(2)に記載のタンパク質を抗原またはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することにより得られる。本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質あるいはそのペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。たとえば実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版に記載の方法が挙げられる。
【0085】
ポリクローナル抗体の場合であれば、たとえば、本発明のタンパク質をウサギなどの動物に本発明のタンパク質あるいはペプチドを注射することにより該タンパク質あるいはペプチドに対する抗体を産生させ、次いで血液を採取し、これを、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0086】
モノクローナル抗体の場合は、たとえば、本発明のタンパク質をマウスなどの動物に免疫し、同マウスから脾臓を抽出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウス内より腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0087】
得られた抗体をヒトに投与する目的で使用する場合は、免疫原性を低下させるために、ヒト型化抗体あるいはヒト抗体を用いることが好ましい。ヒト型化抗体は、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物を用いて作製することができる。これらのヒト型化抗体のやヒト抗体の一般的概説は、たとえば、Morrison,S.L.et al.〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)〕、Jones,P.T.et al〔Nature 321:522−525(1986)〕、野口浩〔医学のあゆみ 167:457−462(1993)〕、松本隆志〔化学と生物 36:448−456(1998)〕によって供されている。ヒト化キメラ抗体は、マウス抗体のV領域とヒト抗体のC領域を遺伝子組換えにより結合し、作製することができる。ヒト化抗体は、マウスのモノクローナル抗体から相補性決定部位(CDR)以外の領域をヒト抗体由来の配列に置換することによって作製できる。また、免疫系をヒトのものと入れ換えたマウスを用いて、該マウスを免疫して、通常のモノクローナル抗体と同様に直接ヒト抗体を作製することもできる。これらの抗体は、タンパク質を発現するクローンを単離したり同定するのに使用できる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質を細胞抽出液、または本発明のタンパク質を産生する形質転換細胞から精製するのに使用できる。更にこれらの抗体は、細胞や組織中の本発明のタンパク質を検出するELISAやRIA(ラジオイムノアッセイ)、またはウエスタンブロット系の構築に使用できる。このような検出系は、動物、好ましくは、ヒトの組織または血管内流体などの身体サンプル中に存在する本発明のタンパク質の存在量を検出する診断目的に使用することができる。たとえば、これらの抗体は、炎症、自己免疫疾患、感染症(一例としてHIV感染)、骨疾患、癌などの、本発明のタンパク質の(発現)異常に起因するNF‐κBの望ましくない活性化または抑制によって特徴付けられる疾患の診断に使用できる。疾患の診断の基礎を提供するために、本発明のタンパク質の発現についての通常の値、すなわち標準値が確立されなければならないが、これは当業者においては周知の技術である。すなわち、複合体形成のための適切な条件下で、ヒトあるいは動物のどちらでもよいが、正常の被験者から得られた体液あるいは細胞抽出物と、本発明のタンパク質に対する抗体とを結合させ、この抗体−タンパク複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原(本発明のタンパク質)を含む標準液を用いて作成した標準曲線を用いて、正常サンプルから得られた標準値を算出する。標準値と本発明のタンパク質が関係する疾患を潜在的に患う被験者からのサンプルから得られた値と比較し、標準値との偏差によって疾病の存在を確認することができる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質の機能を研究する試薬としても用いることができる。
【0088】
本発明の抗体は精製され得、次いで、たとえば、炎症、自己免疫疾患、感染症(一例としてHIV感染)、癌などの、本発明のタンパク質の(発現)異常に起因するNF‐κBの望ましくない活性化によって特徴付けられる疾患の患者に投与され得る。すなわち本発明は、上記に記載の抗体を有効成分として含有する医薬、および抗体を用いた治療方法である。これらの医薬は治療的使用のためにさらなる有効成分または不活性成分(たとえば、従来の薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(たとえば、免疫原性アジュバント)と、生理学的に無毒の安定化剤および賦形剤とともに組み合わされ得る。これらの組み合わせは、濾過滅菌され、そして凍結乾燥により投薬バイアル中に、または安定化水性調製物中の貯蔵物として投薬形態にされ得る。患者への投与は、たとえば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などの当業者に公知の方法により行い得る。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。これらの抗体は、本発明のタンパク質で仲介されるNF−κBの活性化を阻害し、治療効果を示す。
【0089】
本発明のDNAは、細胞内シグナリングプロセスに関与する他のタンパク質を単離、同定、クローン化することにも使用できる。たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、コードされたタンパク質を「バイト(bait)」として用いて、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから、本発明のタンパク質に結合できるタンパク質をコードする他の配列「プレイ(prey)」を単離し、クローン化する酵母ツーハイブリッドシステム(たとえばNature、340:245−246(1989))に用いることができる。同様の方式で、本発明のタンパク質が、他の細胞タンパク質(たとえばNIK,TRAF2)に結合できるかどうかも決定することができる。あるいは別の方法として、本発明のタンパク質の抗体を用いた免疫沈降法(たとえば、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によって、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を細胞抽出物から単離する方法が挙げられる。さらに別の方法として、上記に記載のように、本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として発現させ、融合タンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降法を行ない、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を単離する方法が挙げられる。
【0090】
診断アッセイは、前述の方法により、NF‐κBを活性化する機能を持つ(1)、(2)または(7)のタンパク質遺伝子中の変異を検出することにより疾患の診断や該疾患への感受性を決定するための方法を提供する。さらに、このような疾患は、個体に由来するサンプル中のタンパク質またはmRNAレベルの異常な減少または増加を測定することを含む方法によって診断してもよい。発現の減少または増加は、当該技術でRNAレベルでのポリヌクレオチドの定量によく知られた方法、たとえば、RT−PCRなどの核酸増幅法、およびRNase保護法、ノーザンブロット法その他のハイブリダイゼーション法などの方法で測定できる。宿主に由来するサンプル中のタンパク質レベルの測定に使用され得るアッセイ技術は、当業者によく知られている。そのような方法には、ラジオイムノアッセイ、競合的結合測定法、ウェスタンブロット分析およびELISAアッセイが含まれる。本発明のDNAは、本発明のタンパク質またはそのペプチドフラグメントをコードするDNAまたはmRNAにおける異常を検出するのに使用できる。本発明は、個体における上記(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質の発現に関連した疾患または疾患への感受性を診断する方法に関する。該方法は、タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列における変異を、測定することを含む。
【0091】
本発明のDNAは、本発明のDNAを用いることによって、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常を検出することができるので、たとえば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、増加あるいは発現過多などの遺伝子診断に有用である。すなわち本発明は、個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法であって、
(a)個体のゲノムにおける請求項1、2または7に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析する、ことを含む診断方法であって、好ましくは発現するタンパク質の量が正常の2倍以上あるいは1/2以下の場合に病気であると診断する方法に関する。
【0092】
上記(a)により、NF−κBを活性化する機能を持つ(1)、(2)または(7)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に変異がある場合は、該変異がNF−κBの活性化に関連した疾病を引き起こす可能性がある。あるいは、(b)により、被験者における前記(1)、(2)または(7)のタンパク発現量を測定し正常値を異なる値を示す場合は、NF−κBを活性化する作用を持つ本発明の新規タンパク質の発現量異常がNF−κBの活性化に関連した疾病の原因である可能性がある。ここで、(a)のNF−κBを活性化する機能を持つ(1)、(2)または(7)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の変異の有無を測定する方法としては、それらのタンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列の一部をプライマーとして、RT−PCRを行い、その後通常のヌクレオチド配列決定方法によって配列を決定し、変異の有無を検出できる。あるいは、PCR−SSCP法(Genomics、5:874−879、1989年、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によっても変異の有無を調べることができる。
【0093】
また、(b)のタンパク質発現量を調べる方法としては、たとえば、前記(16)に記載の抗体を利用する方法が挙げられる。
【0094】
また、本発明は、本発明のタンパク質によるNF−κBの活性化を阻害または促進する化合物のスクリーニング方法に関する。
【0095】
このスクリーニング方法は、
(a)NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子および検出可能なシグナルを提供し得る成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の被検化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを検出する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離または同定する工程、
を含む。
【0096】
また、シグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定し、2分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0097】
検出可能なシグナルを提供し得る成分としては、たとえばレポーター遺伝子が挙げられる。レポーター遺伝子は、テストを行なう転写因子の活性化を直接検出するかわりに用いられるもので、調べたい遺伝子のプロモーターをレポーター遺伝子につなぎ、レポーター遺伝子の産物の活性を測定することによってプロモーターの転写活性の解析を行なうものである(バイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))。
【0098】
レポーター遺伝子としては、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド、タンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。たとえば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等の酵素活性を測定することで利用できる。NF−κBの活性化を評価するのに用いるレポータープラスミドとしては、NF−κB認識配列をレポーター遺伝子の上流に組み込んだものであればよく、たとえばpNF−κB−Luc(STRATAGENE社)が利用できる。あるいは、Tanaka S.et.al J.Vet.Med.Sci.Vol.59(7)、Rothe M.et.al.Science Vol.269 p1424−1427(1995)に記載のNF−κB依存レポータープラスミドが例示される。
【0099】
宿主細胞としては、NF−κBの活性化を検出し得る細胞であればよく、好ましくは、哺乳動物細胞であり、たとえば293−EBNA細胞が好適に用いられる。形質転換及び培養に関しては、上記に記載の通りである。
【0100】
NF−κBの活性化を阻害または促進する化合物のスクリーニングは、具体的には、たとえば、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することにより、NF−κBの活性化を阻害または促進する化合物をスクリーニングすることができる。レポーター活性の測定は、当業者に公知の方法(たとえばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))で行なうことができる。スクリーニングの被検物質には特に制限はなく、低分子化合物、ペプチドなどが挙げられる。被検物質は、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであっても良い。また単一物質でも、混合物でもい。検出可能なシグナルとしては、上記レポーター遺伝子の他に、NF−κBの活性化によって発現が誘導されることが知られている、たとえばIL−1やTNF−αのmRNA量あるいはタンパク質量を測定しても良い。mRNA量の測定は、たとえばノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法などが挙げられる。タンパク質量の測定はたとえば抗体を用いる方法が挙げられる。抗体は公知の方法によって作製しても良いし、市販のもの(たとえば和光純薬工業株式会社)を使用することもできる。
【0101】
また、以下の(a)〜(f)の工程により医薬組成物を製造することも可能である。
(a)NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子および検出可能なシグナルを与えることができる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された宿主細胞と1あるいは複数個の化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離または同定する工程、および
(f)単離または同定された化合物を医薬組成物として最適化する工程。
【0102】
また、本発明においてシグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物、2分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0103】
本願発明のタンパク質は、以下の工程により、該タンパク質のアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤を、構造を基礎にして設計する方法に使用してもよい。
(a)まず、タンパク質の三次元構造を決定する工程、
(b)アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の反応性部位または結合部位と思われる部位の三次元構造を推論する工程、
(c)推論した結合部位または反応性部位に結合するかあるいは結合すると予測される候補化合物を合成する工程、および
(d)該候補化合物が本当にアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤であるか否かを試験する工程。
【0104】
また本発明は、上記スクリーニングによって得られた化合物を含む。しかしながら、本発明のスクリーニング方法は、上記の方法に限定されるものではない。さらに、上記(14)に記載の方法により医薬組成物を製造する方法も含む。
【0105】
該候補化合物には特に制限はなく、低分子化合物、ペプチドなどが挙げられ、また、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであっても良い。上記スクリーニングによって得られた化合物は、NF−κBの活性化を阻害または促進する作用を有しているので、NF−κBの望ましくない活性化あるいは不活性化に起因する疾患を治療または予防するための医薬として有用である。混合物から目的化合物を単離、精製するには、自体公知の方法、例えぱ濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィ一等を適宜組み合わせて行なうことができる。化合物の塩を取得したい時は、化合物が塩の形で得られる場合にはそのまま精製すれぱ良く、また遊離の形で得られる場合には、通常の方法により適当な溶媒に溶解または懸濁し、所望の酸または塩基を添加し、塩を形成させて単離精製すれば良い。本発明の方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として最適化する工程としては、例えば以下のような常法により製剤化する方法が例示される。すなわち活性成分として有効な量の上記化合物またはその薬理的に許容される塩と、薬理的に許容される担体とを混合すれば良い。製剤化は選択された投与様式に適した形態が選ばれる。経口投与に適した組成物としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、および散剤などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、乳剤、および懸濁液剤が挙げられる。上記の担体としては、例えばゼラチン、乳糖、グルコース等の糖類、コーン・小麦・米・とうもろこし澱粉等の澱粉類、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、タルク、植物油、ステアリンアルコール・ベンジルアルコール等のアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらのうち液状担体の例としては、一般に水、生理食塩水、デキストロースまたは類似の糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。
【0106】
本発明は、NF−κB活性化の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットである。該キットは、
(a)NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子およびNF−κBの活性化後、その活性化が検出可能なシグナルを提供する成分を含有する細胞、
(b)該検出可能なシグナルを測定するための試薬、から成り、NF−κBの活性化を阻害または促進する化合物をスクリーニングするために必要な試薬類
を含む。
【0107】
別の側面において、本発明は、
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179で表されるヌクレオチド配列を有する本発明のポリヌクレオチド;
(b)(a)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列;
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180で表されるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質またはそれらの断片;または
(d)(c)の本発明のタンパク質に対する抗体;
を含む診断キットに関する。
【0108】
少なくとも(a)〜(d)のいずれかを含むキットは、炎症、自己免疫疾患、感染性疾患(たとえばHIV感染)および癌などの疾患または該疾患への感受性を診断するのに有用である。
【0109】
NF−κBは、炎症、自己免疫疾患、ガン及びウイルス感染などの多種の病理学的状態におけるその関与のため、薬物デザイン及び治療介在のための魅力的な標的である。多数の実験が、NF−κB活性が深い生理学的作用を有し得ることを示している(たとえば、Ann. Rheum. Dis. 57, 738-741 (1998), American Journal of Pathology 152, 793-803 (1998), ARTHRITIS & RHEUMATISM 40, 226-236 (1997), Am. J. Respir. Crit. Care Med. 158, 1585-1592 (1998), J. Exp. Med. 188 1739-1750 (1998), Gut 42, 477-484 (1998), The Journal of Immunology 161, 4572-4582 (1998), Nature Medicine 3,894-899 (1997))。本明細書中に報告するNF−κBを活性化する作用を有する新規タンパク質の発見により、異常なNF−κB機能を制御する新しい方法が提供された。さらなる具体例において、本発明は、NF−κBの活性化を阻害するための前記のNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質の機能を阻害する化合物を用いる方法に関する。また、本発明は、NF−κBの活性化を促進するための前記のNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質の機能を活性化する化合物を用いる方法に関する。上記スクリーニング方法によって得られた、NF−κBの活性化を阻害する化合物は、たとえば炎症、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息など)、感染症、骨疾患、移植片拒絶反応などの、NF−κBの望ましくない活性化によって特徴つけられる疾患を治療または予防する医薬として有用である。更に、NF−κBの活性化が細胞のアポトーシスを抑制することが、最近明らかになりつつある。上記スクリーニング方法によって得られた、NF−κBの活性化を阻害する化合物は、アポトーシスを促進する機能を持つ可能性も考えられる。アポトーシスの誘導が治療につながる疾患としては、腫瘍が挙げられる。
【0110】
また、NF−κB活性の異常に関連する疾患としては、例えば、AIDS(acquired immunodeficiency syndrome)、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など)、虚血性障害(心筋梗塞、再潅流障害などにより起こるものなど)、骨髄形成不良症候群(再生不良性貧血など)、皮膚疾患(Toxic epidermal necrolysisなど)、増殖性腎炎(IgA腎炎、紫斑病性腎炎、ループス腎炎)、劇症肝炎などが挙げられる。よって、上記スクリーニング方法によって得られた、NF−κB活性化を阻害する化合物または促進する化合物はこれらの疾患の治療または予防のための医薬として有用である。
【0111】
更に、本発明のタンパク質をコードする遺伝子は、癌、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、および炎症性応答を初めとする様々な疾患の治療を目的とした遺伝子治療にも有用である。遺伝子治療とは、疾病の治療を目的として、遺伝子または遺伝子を導入した細胞をヒトの体内に投与することを意味する。本発明のタンパク質や該タンパク質をコードするDNAは、診断目的にも使用できる。
【0112】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。たとえば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、たとえば、ヒトや哺乳動物(たとえば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。患者への投与は、たとえば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。すなわち本発明は、上記化合物を有効成分として含有する医薬に関する。
【0113】
さらに、上記化合物は、炎症、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、感染症、ガン、骨疾患などの、NF−κB活性の異常によって特徴つけられる疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち本発明は、上記化合物を含む炎症、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、感染症、ガン、骨疾患などの医薬に関する。具体的には、例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、糖尿病、敗血症、喘息、アレルギー性鼻炎、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、くも膜下出血、ウイルス肝炎、エイズ、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、ウイルス感染症、クローン病、糖尿病、通風、肝炎、多発性硬化症、心筋梗塞、腎炎、骨粗鬆症、アルツハイマー、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、乾癬、筋萎縮性側索硬化症、心筋梗塞、再生不良性貧血などに対する治療及び予防薬として有用である。
【0114】
さらにまた、本発明は、炎症、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、ガン、感染症、骨疾患などの医薬の製造における上記(14)記載の方法により製造された医薬組成物の使用も含む。 また本発明は、上記(3)〜(6)に記載の遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的とした遺伝子配列に対して相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドを用いて、タンパク質への翻訳、細胞質への輸送、あるいは全体的な生物活性機能に必要な他の活性等のRNAの機能を阻害することによって、標的遺伝子の発現を抑制することができる。この際、アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、RNAを用いても良いし、DNAを用いても良い。本発明のDNA配列は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNAとハイブリダイズし得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために使用できる。一般にアンチセンスオリゴヌクレオチドが、その遺伝子の発現に対して抑制的に作用することは公知での事実である(たとえば、細胞工学 Vol.13 No.4(1994))。 本発明のタンパク質をコードする遺伝子に対するアンチセンスコード配列を有するオリゴヌクレオチドは、標準の方法で細胞内に導入することができ、該オリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子のmRNAの翻訳を効果的に遮断して、その発現を遮断して、望ましくない作用が阻害される。
【0115】
本発明のオリゴヌクレオチドは、天然に見出されるオリゴヌクレオチドの他に、修飾されたものであっても良い〔たとえば、村上&牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259−266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364−1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85−95(1996〕。従って、オリゴヌクレオチドは変化した糖部分あるいは糖間部分を有していても良い。これらの例は、当該技術分野において使用が知られているホスホチオエート及び他のイオウ含有種である。幾つかの好ましい態様に従えば、オリゴヌクレオチドの少なくとも一つのホスホジエステル結合が、その活性が調節されるべきRNAが位置する細胞の領域に浸透する組成物の能力を高める機能を有する構造により置換される。
【0116】
このような置換は、ホスホロチオエート結合、ホスホロアミデート結合、メチルホスホネート結合または短鎖アルキルもしくはシクロアルキル構造を含むことが好ましい。オリゴヌクレオチドはまた、少なくとも幾つかの修飾されたヌクレオチド型を含んでいても良い。従って、天然に通常見いだされるもの以外のプリン及びピリミジンを使用していても良い。同様に本発明の本質的な意図が実行される限り、ヌクレオチドサブユニットのフラノシル部分を修飾することもできる。このような修飾の例は、2’−O−アルキル−、及び2’−ハロゲン置換ヌクレオチドである。本発明において有用な幾つかの糖部分の2’位の修飾の例は、OH、SH、SCH、OCH、OCN、またはO(CHCH(ここでnは1から約10である)、及び同様の特性を有する他の置換基である。全てのこのような類似体は、本発明の遺伝子のmRNAとハイブリダイズしてそのRNAの機能を阻害する機能を果たす限り、本発明に包含される。
【0117】
本発明のオリゴヌクレオチドは、約3から約50ヌクレオチドを含み、約8から約30ヌクレオチドを含むことが好ましく、約12から約25ヌクレオチドを含むことがさらに好ましい。本発明のオリゴヌクレオチドは、周知の方法である固相合成法により作製することができる。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含む幾つかの業者により販売されている。ホスホチオエート等の他のオリゴヌクレオチドの製造も当業者に公知の方法で作製できる。
【0118】
本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明の遺伝子から転写されるmRNAとハイブリダイズできるように設計される。与えられた遺伝子の配列に基づいてアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する方法は、当業者であれば容易である〔たとえば、村上および牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259−266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364−1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85−95(1996)〕。 最近の研究は、mRNAの5’領域、好ましくは翻訳開始部位を含む領域に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが、遺伝子の発現の阻害に最も効果的であることを示唆している。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、15から30ヌクレオチドが好ましく、20から25ヌクレオチドがより好ましい。ホモロジー検索で他のmRNAとの相互作用がないこと、オリゴヌクレオチド配列内で二次構造を取らないことを確認しておくことは重要である。設計したアンチセンス分子が機能したかどうかの評価は、適当な細胞を用いて、該細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、当業者には公知の方法で、対象mRNAの量(たとえば、ノーザンブロットまたはRT−PCR法)、あるいは対象タンパク質の量(たとえば、ウエスタンブロットまたは蛍光抗体法)を測定することにより、発現抑制の効果を確認できる。
【0119】
一方、三重らせん形成(トリプル・ヘリックス技術)は、核内のDNAを標的とした、主に転写の段階での遺伝子発現制御方法である。オリゴヌクレオチドは、主に転写に関与する遺伝子領域に設計され、それにより、転写及び本発明のタンパク質の産生を抑える。これらのRNA、DNA、オリゴヌクレオチドは、公知の合成装置などを用いて製造することができる。
【0120】
本発明のオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列を含む細胞に、たとえばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法などのDNAトランスフェクション法、またはウイルスなどの遺伝子導入ベクターの使用を含む遺伝子導入法のいずれを用いて導入してもよい。適切なレトロウイルスベクターを用いてアンチセンスオリゴヌクレオチド発現ベクターを作製し、その後、該発現ベクターを細胞とin vivoまたはex vivoで接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入できる。
【0121】
本発明のDNAは、アンチセンスRNA/DNA技術またはトリプル・へリックス技術を用いて、本発明のタンパクを介するNF−κBの活性化を阻害するのに使用できる。
【0122】
本発明のタンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえば炎症、自己免疫疾患、感染症(たとえば、HIV感染症)、ガンなどの、NF−κBの望ましくない活性化によって特徴つけられる疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち、本発明は、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法を用いてそれらの疾病の検出に利用することもできる。
【0123】
本発明は、NF−κBの活性化を阻害するリボザイムも含む。リボザイムは、核酸のヌクレオチド配列を認識して、核酸を切断する活性を持つRNAである(たとえば、柳川弘志 実験医学バイオサイエンス12、RNAのニューエイジ)。リボザイムは、選択された標的RNA、たとえば本発明のタンパク質をコードするmRNAを開裂するように製造することができる。本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列を基に、本発明のタンパク質のmRNAを特異的に切断するリボザイムを設計することができ、かようなリボザイムは本発明のタンパク質のmRNAに対して相補的な配列を有し、該mRNAと相補的結合し、ついで該mRNAが開裂され本発明のタンパク質の発現が減少する(または完全に発現しない)。発現減少のレベルは標的細胞内でのリボザイム発現のレベルに依存している。
【0124】
よく用いられるリボザイムには、ハンマーヘッド型とヘアピン型の2種類があり、特にハンマーヘット型リボザイムは切断活性に必要な一次構造や二次構造がよく調べられており、当業者であれば、本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列情報のみで容易にリボザイムの設計が可能である〔たとえば、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)〕。ハンマーヘッドリボザイムは、標的RNAと相補鎖を形成する2ヶ所の認識部位(認識部位Iと認識部位II)と活性部位からなる構造をなし、標的RNAと認識部位で相補対を形成した後、標的RNAのNUXの配列(N:AまたはGまたはCまたはU、X:AまたはCまたはU)の3’末端側で切断することが知られており、特にGUC(あるいはGUA)が一番高い活性を持つことが知られている〔たとえばKoizumi,Mら:Nucl. Acids Res.17,7059-7071(1989)、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)、川崎&多比良:実験医学 Vol.18 No.3 p381-386 (2000)〕。
【0125】
そこでまず、本発明のDNA配列の中からGTC(またはGTA)の配列を探し出し、その前後で数ヌクレオチドから十数ヌクレオチドの相補対をつくることができるようにリボザイムを設計する。設計したリボザイムの適切性の評価は、たとえば、大川&平比良の文献〔実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994) 〕に記載の方法によって、作製したリボザイムが、イン ビトロで標的mRNAを切断できるかどうかを調べることで評価できる。リボザイムの調製は、RNA分子を合成するための当分野で周知の方法により調製する。
【0126】
別法としては、リボザイムの配列をDNA合成機で合成し、たとえばT7或いはSP6のような適切なRNAポリメラーゼプロモーターを有する多種のベクターに組み込み、イン ビトロで酵素的にRNAを合成させる方法が挙げられる。これらのリボザイムは、たとえばマイクロインジェクション法などの遺伝子導入方法によって細胞内に導入できる。あるいは別の方法として、リボザイムDNAを適当な発現ベクターに組み込んで、株細胞、細胞或いは組織内に導入する。選択された細胞中にリボザイムを導入するのに、適切なベクターを使用することができ、たとえばプラスミドベクター、動物ウイルス(たとえばレトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスあるいはワクシニアウイルス)ベクターがこれらの目的に通常用いられる。これらのリボザイムは、本発明のタンパク質で仲介されるNF−κBの活性化を阻害する作用を有する。
【0127】
本発明はまた、機能を有する新規遺伝子の取得方法であり、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製する方法および該機能を有するタンパク質の存在を示すシグナル因子を用いる方法からなる取得方法に関する。シグナル因子には、たとえばレポーター遺伝子が挙げられる。
【0128】
機能を有する遺伝子(cDNA)を多数取得するためには、不完全長のものが多いcDNAライブラリーを用いると効率が悪い。したがって、全体のクローンの中で、完全長のものの割合が高いライブラリーが必要となる。完全長cDNAは遺伝子から出来るmRNAの完全なコピーのことである。オリゴキャッピング法で作製したcDNAライブラリーは、完全長cDNAの割合が50〜80%であり、従来の方法で作製されたcDNAライブラリーと比べて、5〜10倍の完全長cDNAクローンの濃縮になっている(菅野純夫:月刊 BIO INDUSTRY Vol.16 No.11 p19-26)。完全長cDNAは、遺伝子の機能解析においては、タンパク質発現のために必須なクローンであり、完全長cDNAのクローンそのものが活性測定のための材料として極めて重要なものであるため、遺伝子の機能解析を試みるに際して、完全長cDNAのクローニングは必須の要件である。さらにその配列を決定することで、それがコードするタンパク質の一次配列を確定するための重要な情報となると同時に、遺伝子の全エクソンの配列も分かる。すなわち、完全長cDNAは、遺伝子を同定する上で貴重な情報、たとえばタンパク質の一次配列、エクソン−イントロン構造、mRNAの転写開始点、プロモーターの位置などを決めるための情報をも与える。
【0129】
オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製は、たとえば実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック改訂第3版(1999年)に記載の方法に従い行うことができる。機能を有するタンパク質の存在を示すレポーター遺伝子は、転写因子等のタンパク質因子が結合できる適切な発現制御配列部分(1つまたは複数)と、その転写因子等による活性化を測定できる構造遺伝子部分からなる。構造遺伝子部分は、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド、タンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。たとえば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等を用いることができ、その酵素活性を測定することで利用できる。
【0130】
本発明において、オリゴキャッピング法とは、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版に記載のように、BAP,TAP,RNAリガーゼにより、キャップ構造を合成オリゴに置換する方法である。
【0131】
本発明の方法は、イン ビトロ(in vitro)の系、あるいは細胞を用いて(cell−based)の系のどちらの方法でも良く、好ましくは細胞を用いた系である。細胞は、原核大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでも良く、好ましくは動物細胞であり、293−EBNA細胞、NIH3T3細胞が例示できる。
【0132】
機能を有するタンパク質の存在を示すレポーター遺伝子としては、本願明細書に示したNF−κB依存レポーター遺伝子の他に、たとえばCREB(cAMP responsive element binding protein)結合配列あるいはAP−1(activator protein-1)結合配列をレポーター遺伝子の発現制御配列部分に有するレポーター遺伝子が挙げられる。たとえば、CREBを活性化する機能を有する遺伝子を取得したい場合は、CREB依存レポータープラスミドとオリゴキャッピング法で作製した完全長cDNAを含む発現ベクターを細胞に共導入し、その中からレポーター活性が上昇した発現ベクターを選ぶことによって、該目的を達成することができる。また、CREBを抑制する機能を有する遺伝子を取得したい場合は、CREB依存レポータープラスミドとオリゴキャッピング法で作製した完全長cDNAを含む発現ベクターを細胞に共導入し、その中からレポーター活性が減少した発現ベクターを選ぶことによって、該目的を達成することができる。この場合、細胞に何らかの刺激を加えた状態で行なっても良い。cDNAクローン(発現ベクター)の細胞への導入は、1クローンでも良いし、複数のクローンを同時に導入しても良い。本発明の該方法の一例は、本願明細書実施例に詳細に記述してある。あるいは、完全長cDNAを含む発現ベクターとレポーター遺伝子を細胞に導入した後、細胞をIL−1あるいはTNF−αなどで刺激し、レポーター活性の上昇の弱いクローンを選ぶことによって、NF−κBの活性化を抑制する機能を有する遺伝子を取得するためのスクリーニング系を構築することもできる。
【0133】
しかしながら、本発明の該方法は、この方法に限定されるものではない。また、本発明のcDNAは、完全長cDNAであるため、その5’末端の配列がmRNAの転写開始点であり、該cDNA配列をゲノムのヌクレオチド配列と比較することにより、該遺伝子のプロモーター領域を同定することに利用できる。ゲノムのヌクレオチド配列は、データベースに公知の配列として登録されている場合はその配列を利用できる。あるいは、該cDNAを用いてたとえばハイブリダイゼーションによってゲノムライブラリーからクローニングし、ヌクレオチド配列を決めることもできる。このようにして、本発明のcDNAのヌクレオチド配列をゲノムの配列と比較することによって、その上流に存在する該遺伝子のプロモーター領域を同定することが可能である。さらに、このようにして同定した該遺伝子のプロモーター断片を用いて該遺伝子の発現を調べるレポータープラスミドを作製することができる。レポータープラスミドは、大方の場合、転写開始点からその上流2kb、好ましくは転写開始点からその上流1kbのDNA断片をレポーター遺伝子の上流に組み込むことによって作製できる。さらに該レポータープラスミドは、該遺伝子の発現を増強あるいは減弱させる化合物のスクリーニングに利用できる。具体的には例えば、該レポータープラスミドで適当な細胞を形質転換し、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することによりスクリーニングすることができる。これらも本発明に含まれる。
【0134】
また本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178および180で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体に関する。
【0135】
さらに本発明は、上記に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列のデータを比較して相同性の算出を行う方法に関する。すなわち、本発明の遺伝子およびアミノ酸配列は、その2次元および3次元構造を決定し、たとえば同様の機能を有する相同性の高いさらなる配列を同定するための貴重な情報源となる。これらの配列をコンピュータ読み込み可能媒体に保存し、ついで既知の高分子構造プログラムにおいて保存したデータを用いて、GCGのような既知検索ツールを用いてデータべースを検索すれば、データベース中の、ある相同性を有する配列を見出すことは容易である。
【0136】
コンピュータ読み取り可能媒体は情報またはデータを保存するのに用いる物体のいずれの組成物であってもよく、たとえば、市販フロッピーディスク、テープ、チップ、ハードドライブ、コンパクトディスク、およびビデオディスク等がある。また、本媒体上のデータは、他のヌクレオチド配列のデータと比較して相同性の算出を行なう方法を可能にする。この方法には、本発明ポリヌクレオチド配列を含む第一のポリヌクレオチド配列をコンピュータ読み込み可能媒体中に提供し、次いで、該第一のポリヌクレオチド配列を少なくとも一つの第二のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を同定する工程を含む。
【0137】
本発明はまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質に関する。DNAプローブである複数の各種ポリヌクレオチドがスライドガラス等の特別に加工された基質上に固定され、次いで標識された標的ポリヌクレオチドを、固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせ、それぞれのプローブからのシグナルを検出する。得られるデータは、解析され、遺伝子発現が測定される。
【0138】
本発明はさらにまた、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178または180で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質に関する。このタンパク質を固定した不溶性基質と、生物由来の細胞抽出液とを混合し、不溶性基質上に捕獲された、診断あるいは新薬開発のために有効であることが期待されるタンパク質などの細胞由来の成分を、単離あるいは同定することができる。
【実施例】
【0139】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。
【0140】
(実施例1)オリゴキャッピング法を用いた完全長cDNAライブラリーの作製
(1)ヒト肺線維芽細胞(Cryo NHLF)からのRNA調製
ヒト肺線維芽細胞(Cryo NHLF:三光純薬株式会社より購入)を、添付のプロトコールに従って培養した。10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、セルスクレーパーで細胞を回収した。次いで、回収した細胞からRNA抽出用試薬ISOGEN(ニッポンジーンより購入)を用いて全RNAを取得した。取得の具体的方法は、試薬のプロトコールに従った。次いで、オリゴ−dT セルロース カラムを用いて、全RNAからポリA+RNAを取得した。ポリA+RNA取得の具体的方法は、上記Maniatisの実験書に従った。
(2)マウスATDC5細胞からのRNA調製
マウスEC(embryonal carcinoma)由来クローン化細胞株ATDC5(Atsumi,T.et al.:Cell Diff.Dev.,30:p109-116(1990))を10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、上記(1)と同様の方法でポリA+RNAを取得した。ATDC5細胞の培養は、Atsumi,T.et al.:Cell Diff.Dev.,30:p109-116(1990)に記載の方法に従って培養した。
(3)オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製
上記ヒト肺線維芽細胞とATDC5細胞のポリA+RNAから、オリゴキャッピング法により完全長cDNAライブラリーをそれぞれ作製した。オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製の具体的方法は、菅野らの方法〔たとえば、Maruyama,K.& Sugano,S.Gene,138:171−174(1994)、Suzuki、Y.et al.Gene、200:149−156(1997)、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版〕に従って作製した。
(4)プラスミドDNAの調製
上記実施例で作製した完全長cDNAライブラリーを、エレクトロポレーション法によって大腸菌TOP10株に形質転換した後、100μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。続いて、アンピシリン含有LB寒天培地上で生育した大腸菌のコロニーから、QIAGEN社のQIAwell 96 Ultra Plasmid Kitを用いてプラスミドを回収した。具体的方法は、QIAwell 96 Ultra Plasmid Kitに添付のプロトコールに従った。
【0141】
(実施例2)NF−κBを活性化する作用を有するDNAのクローニング
(1)NF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするcDNAのスクリーニング
293−EBNA細胞(Invitrogen社より購入)を細胞培養用96穴プレートに1×10Cells/100μl/wellとなるように、5%FBS存在下のDMEM培地にまき、24時間37℃で培養した(5%CO存在下)。次いで、FuGENE6(Roche社より購入)を用いて、pNFκB−Luc(STRATAGENE社より購入)50ngと、上記実施例1.(4)で調製した完全長cDNA発現ベクター2μlを1ウエルに共導入した。導入の方法は添付のプロトコールに従った。24時間37℃で培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステム、ピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて添付されている説明書に従い、NF−κBのレポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を測定した。なおルシフェラーゼ活性は、Perkin Elmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて行った。
【0142】
(2)ヌクレオチド配列の決定
上記スクリーニングを155000クローン行い、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNA発現ベクターの代わりに、空ベクターpME18S−FL3を導入した細胞のルシフェラーゼ活性)と比べて5倍以上上昇しているプラスミドを選抜し、まず、クローニングされているcDNAの5’側(シークエンスプライマ−:5’−CTTCTGCTCTAAAAGCTGCG−3’(配列番号181)と3’側(シークエンスプライマ−:5’−CGACCTGCAGCTCGAGCACA−3’(配列番号182)からそれぞれone−passシークエンスを行ない、できる限り長く決定した。なお、ヌクレオチド配列決定のための試薬や方法は、Thermo Sequenase II Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(アマシャム ファルマシア社)、あるいはBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(アプライドバイオシステムズ社)を用い、ABI PRISM 377シークエンサー、あるいは、ABI PRISM 3100シークエンサーを用い、各々キットに添付されている説明書に従って行なった。
【0143】
(3)得られたクローンのデータベース解析
得られたヌクレオチド配列について、GenBankに対するBLAST(Basic local alignment search tool)〔S. F. Altschul et al., J. Mol. Biol., 215: 403-410 (1990) 〕検索を行なった。その結果、148クローンがNF−κBを活性化する作用を有する新規のタンパク質をコードする90種類の遺伝子であった。
【0144】
(4)全長シークエンス
90種類の新規のクローンについて全長ヌクレオチド配列(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177または179)を決定し、タンパク質をコードする部分(オープンリーディングフレーム)のアミノ酸配列(配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178および180)を予想した。
【0145】
(実施例3)NF−κBの活性化を阻害する化合物のスクリーニング
293−EBNA細胞を細胞培養用96wellプレートに、1×10Cells/100μl/wellの細胞数になるように、5%FBS存在下のDMEM培地にまき、5%CO存在下、37℃で24時間培養した。次いで、FuGENE6を用いて、上記実施例2で得た、配列番号5、9、17、21、35、37、41、53、57、63、67、71、75、81、87、91、93、97、121、123、129、154、158、162、168、170、172、176または178のNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子を含有する発現ベクター50ngと、レポータープラスミドpNFκB−Luc50ngを1wellに共導入した。1時間後、プロテアソーム阻害剤であることが知られているMG−132(CALBIOCHEMより購入)(Uehara T.et.al.J.Biol.Chem. 274 p15875−15882(1999)、Wang XC.et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.40 p477−486)を終濃度0.1μM、0.5μM、1.0μM、10μMになるようにそれぞれ培養液中に加えた。37℃で24時間培養後、ピッカジーンLT2.0を用いてレポーター活性を測定した。その結果、MG132はレポーター遺伝子の発現を抑制した(図1から図29)。
【0146】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1は、実施例3配列番号5のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。図中で横軸は、MG−132濃度、縦軸は、MG−132無添加(0μM)条件での相対ルシフェラーゼ活性値を100%とした相対値を示す(各濃度での相対ルシフェラーゼ活性値をMG−132無添加条件での相対ルシフェラーゼ活性で割ってパーセント表示した)。
【図2】図2は、実施例3配列番号9のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図3】図3は、実施例3配列番号17のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図4】図4は、実施例3配列番号21のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図5】図5は、実施例3配列番号35のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図6】図6は、実施例3配列番号37のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図7】図7は、実施例3配列番号41のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図8】図8は、実施例3配列番号53のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図9】図9は、実施例3配列番号57のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図10】図10は、実施例3配列番号63のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図11】図11は、実施例3配列番号67のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図12】図12は、実施例3配列番号71のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図13】図13は、実施例3配列番号75のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図14】図14は、実施例3配列番号81のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図15】図15は、実施例3配列番号87のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図16】図16は、実施例3配列番号91のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図17】図17は、実施例3配列番号93のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図18】図18は、実施例3配列番号97のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図19】図19は、実施例3配列番号121のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図20】図20は、実施例3配列番号123のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図21】図21は、実施例3配列番号129のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図22】図22は、実施例3配列番号154のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図23】図23は、実施例3配列番号158のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図24】図24は、実施例3配列番号162のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図25】図25は、実施例3配列番号168のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図26】図26は、実施例3配列番号170のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図27】図27は、実施例3配列番号172のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図28】図28は、実施例3配列番号176のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【図29】図29は、実施例3配列番号178のプロテアソーム阻害剤MG−132によるNF−κBのレポーター活性抑制を示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0148】
配列番号181はプライマーである。
配列番号182はプライマーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号162で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号162において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつNF−κB(Nuclear factor kappa B)を活性化する作用を有するタンパク質。
【請求項2】
請求項1記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつNF−κBを活性化する作用を有する精製されたタンパク質。
【請求項3】
以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号162で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号162において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質。
【請求項4】
以下の(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号161で表されるポリヌクレオチド配列。
(b)(a)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
(c)配列番号161において、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列からなり、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
【請求項5】
請求項3記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項4記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつNF−κBを活性化する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の組換えベクターを含む形質転換された細胞。
【請求項10】
請求項1または2に記載のタンパク質が膜タンパク質である場合における、請求項9記載の細胞の膜。
【請求項11】
(a)請求項3〜6のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現する条件下で該ポリヌクレオチドを含有する形質転換された細胞を培養し、
(b)培養物からタンパク質を回収する、
ことを含むタンパク質の製造方法。
【請求項12】
(a)個体のゲノムにおける請求項1、2または7に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量またはmRNA量を分析する、
ことを含む、該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法。
【請求項13】
以下の工程を含むNF−κB活性化の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングする方法。
(a)請求項1、2または7に記載のタンパク質をコードする遺伝子、およびNF−κBの活性化に対応した、検出可能なシグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程。
【請求項14】
NF−κB活性化の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットであって、
(a)請求項1、2または7に記載のタンパク質をコードする遺伝子、およびNF−κBの活性化後、検出可能なシグナルを提供しうる成分により形質転換された細胞、および
(b)検出可能なシグナルを測定するための試薬
を含むキット。
【請求項15】
請求項1、2または7に記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体。
【請求項16】
請求項1、2または7に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することを含む、請求項1、2または7記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
【請求項17】
請求項1、2または7に記載のタンパク質の発現を阻害する、請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
請求項15記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項19】
対象疾患が炎症、自己免疫疾患、感染症、癌疾患、骨疾患、AIDS、神経変性疾患および虚血性障害からなる群から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
配列番号161で表されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
【請求項21】
配列番号162で表されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−161195(P2008−161195A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10637(P2008−10637)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【分割の表示】特願2002−555244(P2002−555244)の分割
【原出願日】平成13年12月25日(2001.12.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】