説明

NF3の分解方法およびその方法を用いる装置

【課題】 本発明の目的は、半導体製造、液晶製造、または太陽電池製造に関する装置のクリーニングに用いられるNFを、安価で、温室効果の高いガスの生成を抑制し、且つ、工業的に分解する方法、さらには、安価でランニングコストの安いNFの分解装置または検出器を提供することである。
【解決手段】 NFと、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物とを化学反応させることによりNFを分解させることを特徴とするNFの分解方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造、液晶製造、または太陽電池製造に関する装置のクリーニングに用いられるNFの分解方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体、もしくは液晶、もしくは太陽電池を製造しようとする場合には、その過程において、回路、もしくは発電層を形成するために、基板となるシリコン、もしくはガラス、もしくは樹脂等に化学的気相成長法(CVD)で成膜を行わなければならない。
【0003】
CVDによる成膜を重ねると、CVD装置の基板設置部分以外にも、余分な膜が堆積し、ついには膜が剥がれて歩留まり低下の原因となるため、CVD装置に堆積した膜のクリーニングを定期的に行わなければならない。
前述のCVD装置のクリーニング方法として、一般に行われている方法としては、装置を解体して、フッ化水素酸などの酸性液体に余分な膜を溶解させるウェットクリーニングと、装置を解体しないままクリーニングガスと呼ばれるガスを装置内に導入して化学反応によって、沸点の低いガスとして装置外に排出するガスクリーニングがある。
【0004】
近年、ガスクリーニングに用いられているクリーニングガスに三フッ化窒素(NF)がある。NFは、常温で安定であり、クリーニング特性に優れることから広く使用されている。
【0005】
一方、NFは毒性ガスであるため、大気中に排出する際には管理濃度以下にまで除害する必要がある。さらに言えば、NFは非常に温室効果の高いガスであるため、一度大気中に放出されれば分解されるまでに多くの時間を要する。この観点から見ると、管理濃度以下というよりむしろ大気中に一切放出しないことが望ましい。
【0006】
NFは常温で活性が非常に低く、除害装置として一般に用いられるアルカリスクラバーやアルカリ性の薬剤では除害することができない。また、化学的吸着といった手法でも除去できない。このため、NFの除害方法には、分解装置によって700〜900℃の高温で分解させた後、分解で発生する酸性ガスを酸性ガスの除害装置、例えばアルカリスクラバーなどで除害する2段階の方法が用いられる。
【0007】
上記のNFの分解装置は、高温に加熱する機能が不可欠となるため、高額となることが避けられない。また、分解装置の稼動時は、装置内を常に高温で保つ必要があるため、ランニングコストも高くなる。
【0008】
その他の分解方法としては、水素や炭化水素などの可燃性ガスとNFを反応させて分解する方法(例えば、特許文献1、2)や、金属粉、もしくは金属粉を主成分とする還元性触媒を用いてNFを分解する方法(例えば、特許文献3、4)が知られている。
【0009】
しかしながら上記の分解方法において、水素を用いる場合は、安全性及び水素ガス供給設備の設置などの面で、炭化水素を用いる場合は、温室効果の高いNFを分解させた結果、新たに非常に温室効果の高いパーフルオロカーボンの1種であるCFが生成する点で問題点がある。また、金属粉を用いる場合は、単位時間当たりのNFの処理量が極端に少なく、除害装置として現実的でないという問題点がある。
【0010】
また、NFの検知方法については、従来、700〜900℃の高温で分解させた後、分解で発生する酸性ガスを酸性ガスの検知器で検出する方法が用いられている。この方法においても、高温に加熱する機能を有する装置が不可欠となるため、高額となることが避けらず、また、高温加熱による分解時には、装置内を常に高温で保つ必要があるため、ランニングコストも高くなるといった問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−303524号公報
【特許文献2】特開平8−131774号公報
【特許文献3】特開平11−197452号公報
【特許文献4】特開平5−261247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は半導体製造、液晶製造、または太陽電池製造に関する装置のクリーニングに用いられるNFを、安価で、温室効果の高いガスの生成を抑制し、且つ、工業的に分解する方法を提供することである。さらには、安価でランニングコストの安いNFの分解装置または検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑み鋭意検討の結果、NFを、金属、または金属化合物と反応させることにより、NFを安価で、工業的に分解できる方法を見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち本発明は、NFと、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物とを化学反応させることによりNFを分解させることを特徴とするNFの分解方法を提供するものである。さらに、該金属がMnであることを特徴とするNFの分解方法、該金属酸化物が、MnOもしくはFeであることを特徴とするNFの分解方法、該金属フッ化物が、FeFもしくはNiFであることを特徴とするNFの分解方法、または該金属フッ化物の水和物が、FeF・3HO、MnF・3HO、またはNiF・4HOであることを特徴とするNFの分解方法を提供するものである。
【0015】
また、少なくとも充填塔を有するNFの分解装置であって、該充填塔は、NFを含むガスの供給口と、分解処理後のガスを排出する排出口と、所望の温度に加温する機能を備え、且つ、内部に、該供給口より供給されるガス中のNFと化学反応させるための充填剤として、上記の、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物が充填されていることを特徴とするNFの分解装置、さらに前記のNFの分解装置おいて、ガス流通時の該充填塔の温度がNFと該充填剤との反応熱によって該所望の温度より高温になったとき異常として知らせる警報機能を有する温度測定器を、該充填塔に具備することを特徴とするNFの検出器、または、排出口の後段に、NFの分解によって発生するガスを検出したとき異常として知らせる警報機能を有するガス検出器を具備することを特徴とするNFの検出器を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、半導体製造、液晶製造、または太陽電池製造に関する装置のクリーニングに用いられるNFを、安価で、温室効果の高いガスの生成を抑制し、且つ、工業的に分解または検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明において、NFと、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物を所定の温度で接触させることにより化学反応させることができる。
【0019】
本発明に金属を用いる場合、金属の種類、純度は特に問わないが、Mnが望ましい。Mn以外の金属を使用する場合、NFとの十分な反応性が得られない可能性があり、中でも、高価な金属は、経済的に好ましくない。
【0020】
本発明に金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の種類、純度は特に問わないが、MnO、もしくはFeが望ましい。より望ましくは、MnOが望ましい。MnOの方が、FeよりもNFとの反応性に優れ、NFを低温で分解することができる。他の金属酸化物を使用する場合、NFとの十分な反応性が得られない可能性があり、中でも、高価な金属の酸化物は、経済的に好ましくない。
【0021】
本発明に金属フッ化物を用いる場合、金属フッ化物の種類、純度は特に問わないが、FeF、もしくはNiFが望ましい。より望ましくは、FeFが望ましい。FeFの方が、NiFよりもNFとの反応性に優れ、NFを低温で分解することができる。他の金属フッ化物を使用する場合、NFとの十分な反応性が得られない可能性があり、中でも、高価な金属のフッ化物は、経済的に好ましくない。
【0022】
本発明に金属フッ化物の水和物を用いる場合、金属フッ化物の水和物の種類、純度は特に問わないが、FeF・3HO、もしくはMnF・3HO、NiF・4HOが望ましい。より望ましくは、MnF・3HOが望ましく、さらに望ましくはFeF・3HOが望ましい。NiF・4HOよりもMnF・3HOが、MnF・3HOよりもFeF・3HOが、NFとの反応性に優れ、NFを低温で分解することができる。他の金属フッ化物の水和物を使用する場合、NFとの十分な反応性が得られない可能性があり、中でも、高価な金属のフッ化物の水和物は、経済的に好ましくない。
【0023】
NFと、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物を接触させる温度は、130〜500℃が好ましい。特に、Mnの場合130〜400℃、Niの場合150〜500℃、MnOの場合130〜400℃、Feの場合200〜400℃、FeFの場合150〜300℃、NiFの場合130〜400℃、FeF・3HOの場合130〜400℃、MnF・3HOの場合200〜350℃、NiF・4HOの場合250〜400℃が望ましい。さらに、Mnの場合230〜400℃、FeF・3HOの場合230〜400℃、MnOの場合230〜400℃、NiFの場合230〜400℃がより好ましい。上記の温度より低くなると、分解反応が十分に進行しない可能性があり、逆に上記の温度より高くなると、ランニングコストが高くなるため経済的に好ましくない。
【0024】
充填物として、上記の、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物が充填されている、本発明のNFの分解装置の充填塔には、少なくとも、NFを含むガスの供給口となる接続口と分解処理後のガスを排出する排出口が具備されている。
【0025】
例えば、本発明のNFの分解装置の例として、図1に示す。図1に示すNFの分解装置は、少なくとも上記の、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物のいずれか1つが充填されている充填管2の外側に電気ヒーター1、内部に温度表示計5を有する熱電対4が設置され、さらに充填管2は、入口側接続口6と出口側接続口7を具備し、充填管2の出口側に圧力ゲージ3が接続されている。電気ヒーター1により充填管2内部を加温し、充填管2内の温度を熱電対4により測定し温度表示計5に表示することができる。さらに、充填管2内の出口側の圧力を圧力ゲージ3で確認できる。入口側接続口6よりNFを含むガスが供給され、出口側接続口7より分解処理後のガスが排出される。但し、下記の条件を満たしていれば、必ずしも図1と同じでなくでもよい。
【0026】
充填物の形状は、特に限定されないが、粉末状、顆粒状、圧縮などによって成型したもの、あるいは、上記の、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物をガラスやアルミナ等の表面に付着させたものを使用できる。いずれも、NFを流通させる際に発生する圧力損失が、分解装置の耐久圧力を上回らなければ良い。
【0027】
さらに、該充填塔には、少なくとも該充填物とNFが反応する温度にまで加温できる機能を有している。加温の手段については、特に問わない。また、電気ヒーターなどで直接加温しても良いし、熱媒等を用いて間接的に加温しても良い。所望の温度としては、上記のNFと、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物を接触させる温度範囲内であることが望ましい。材質については、フッ化物ガスによる腐食、温度による変形、溶解などの面で支障をきたさない材質であれば、いかなる材料を用いても構わない。
【0028】
つぎに、NFの分解装置を使用する条件について説明する。
【0029】
流通させるNF含むガスの濃度、流量は特に問わないが、使用する分解装置の大きさに対して、極端にNF含むガスの濃度が高い、もしくは流量が多い場合には、不活性ガスで希釈した方が望ましい。希釈しないと、分解装置の入口付近で反応が急激に進み、内部温度が急上昇して、装置の形状等に影響を及ぼす可能性がある。圧力についても、使用時の圧力が容器の耐久圧力を上回らなければ特に問わない。加熱温度は、上記のNFと、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物を接触させる温度範囲内が好ましい。
【0030】
また、上記NFの分解装置において、該分解装置の充填塔が、ガス流通時の該充填塔の温度が所望の温度より高温になったとき異常として知らせる警報機能を有する温度測定器を具備することによりNFの検出器として用いることができる。該温度測定器は、該充填塔の温度変化を検出する手段として、熱電対もくしは抵抗測温体等の測温機を具備する。さらに該温度測定器は、該測温機からの信号を受信し、あらかじめ設定された所望の温度より高温になったとき警報を発する警報機を具備する。警報機が警報を発する温度は、前記所望の温度よりも5〜30℃高い温度が望ましい。測温機、及び警報機については上記機能を満たせば何でも良く、特に種類を限定するものではない。また、NFの検出感度を上げるためには、該充填塔に導入するガスは希釈しない方が望ましい。
【0031】
また、上記NFの分解装置において、排出口の後段に、NFの分解によって発生するガス、例えば、HF、NO、またはNOなどのガスを検出したとき異常として知らせる警報機能を有するガス検出器を具備することによりNFの検出器として用いることができる。用いるガス検出器の動作条件に合わせ、通過させるガスの温度、流量、圧力等を調節する必要がある。該ガス検出器については上記機能を満たせば何でも良く、特に種類を限定するものではない。また、NFの検出感度を上げるためには、該充填塔に導入するガスは希釈しない方が望ましい。
【0032】
例えば、本発明のNFの検出器の例として、図2に示す。図2に示すNFの検出器は、少なくとも上記の、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物のいずれか1つが充填されている充填管22の外側に電気ヒーター21、内部に温度表示計25を有する熱電対24が設置され、さらに充填管22は、入口側接続口26と出口側接続口27を具備し、充填管22の出口側に圧力ゲージ23と警報器29を有する分解処理により生じたガスを検知できるガス検知部28が接続されている。電気ヒーター21により充填管22内部を加温し、充填管22内の温度を熱電対24により測定し温度表示計25に表示することができる。さらに、充填管22内の出口側の圧力を圧力ゲージ23で確認できる。入口側接続口26より測定対象のガスが供給され、分解処理後のガスの一部はガス検知部28に導入され分解処理により生じたガスが検出された時点で警報器29により異常として知らせることができ、ガス検知部28に導入されない分解処理後のガスは出口側接続口27より排出される。但し、下記の条件を満たしていれば、必ずしも図2と同じでなくてもよい。
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
[実施例1〜5]
図3に、本実施例1〜5で用いた装置の系統図を示す。
【0035】
外径1/2インチのNi管35に電気炉34を取り付け、外側から加熱できる構造になっている。このNi管35を充填剤の充填管として使用し、充填剤を充填する際には飛散を防止するためにNiメッシュ37包んで入れる。中の温度を監視できるように保護管付き熱電対36を差し込み、保護管付き熱電対36で検出される温度が温度表示計41に表示される。また、圧力ゲージ33がNi管35に接続され、Ni管35内の圧力が表示される。
【0036】
さらに、NFボンベ31及びNボンベ38にそれぞれ減圧弁32、弁を介してNi管35に接続されており、Ni管35には、任意の圧力、濃度でNFを封入することができる。封入したガスの圧力は圧力ゲージ33を用いて確認する。また、Ni管35には、GC−MS40(島津製作所製、QP−5000)が取り付けられており、NF、N、NO及びNOの分析を行える。配管及びNi管35をガス置換するための真空ポンプ39が、弁を介してNi管35に接続されている。
【0037】
Ni管35内に、充填剤としてNiメッシュ37で包んだFeF・3HOを0.1g入れてある。このNi管35内をNボンベ38のNガスでガス置換した後、真空ポンプ39で真空引きを行った。つぎに、NFボンベ31からNFをNi管35内に大気圧まで封入した。さらに、所定温度で1時間加温保持後、Ni管35内のガスをGC−MS40(島津製作所製、QP−5000)で分析を行った。また、ブランクとして、Ni管35内にNiメッシュ37で包んだFeF・3HOを入れずNFの代わりにArを封入し所定温度を260℃とした以外は前記と同様に行った。
【0038】
GC−MS40による分析で得られたスペクトルから、NFに対する、N、NO、NOのピーク面積の比をそれぞれ算出した。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
所定温度が60℃(実施例1)、90℃(実施例2)、180℃(実施例3)、260℃(実施例4)、350℃(実施例5)、及び260℃(ブランク1)のスペクトルのピーク面積の比をそれぞれ比較すると、明らかに90℃より高い温度で、N、NO、NOのNFに対するピーク面積比がいずれも増大している。すなわち、FeF・3HOによってNFが分解し、N、NO及びNOが生成していることが示されている。
[実施例6〜10]
Niメッシュ37に包む充填剤をMnO(0.1g)に変更する以外は、前記の実施例1〜6と同様に行い、GC−MS40による分析で得られたスペクトルから、NFに対する、N、NO、NOのピーク面積の比をそれぞれ算出した。その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
所定温度が60℃(実施例6)、90℃(実施例7)、180℃(実施例8)、260℃(実施例9)、350℃(実施例10)、及び260℃(ブランク2)のスペクトルのピーク面積の比をそれぞれ比較すると、明らかに90℃より高い温度でN、NO、NOのNFに対するピーク面積比がいずれも増大している。すなわち、MnOによってNFが分解し、N、NO、及びNOが生成していることが示されている。
[実施例11〜15]
Niメッシュ37に包む充填剤をNiF(0.1g)に変更する以外は、前記の実施例1〜6と同様に行い、GC−MS40による分析で得られたスペクトルから、NFに対する、N、NO、NOのピーク面積の比をそれぞれ算出した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
所定温度が60℃(実施例11)、90℃(実施例12)、180℃(実施例13)、260℃(実施例14)、350℃(実施例15)、及び260℃(ブランク3)のスペクトルのピーク面積の比をそれぞれ比較すると、
明らかに180℃より高い温度でNのNFに対するピーク面積比が増大している。すなわち、NiFによってNFが分解し、Nが生成していることが示されている。
[実施例16〜20]
Niメッシュ37に包む充填剤をMn(0.1g)に変更する以外は、前記の実施例1〜6と同様に行い、GC−MS40による分析で得られたスペクトルから、NFに対する、N、NO、NOのピーク面積の比をそれぞれ算出した。その結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
所定温度が60℃(実施例16)、90℃(実施例17)、180℃(実施例18)、260℃(実施例19)、350℃(実施例20)、及び260℃(ブランク4)のスペクトルのピーク面積の比をそれぞれ比較すると、明らかに90℃より高い温度でNのNFに対するピーク面積比が増大している。すなわち、MnによってNFが分解し、Nが生成していることが示されている。
[実施例21〜25]
Ni管35内にNiメッシュのみを入れ、充填物を充填せずに、前記の実施例1〜6と同様に行った。GC−MS40による分析で得られたスペクトルから、NFに対する、N、NO、NOのピーク面積の比をそれぞれ算出した。その結果を表5に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
所定温度が60℃(実施例21)、90℃(実施例22)、180℃(実施例23)、260℃(実施例24)、350℃(実施例25)、及び260℃(ブランク5)のスペクトルのピーク面積の比をそれぞれ比較すると、明らかに90℃より高い温度でNのNFに対するピーク面積比が増大している。すなわち、NiによってNFが分解し、Nが生成していることが示されている。
[実施例26]
図4に、本実施例で用いた装置の系統図を示す。
【0049】
NFボンベ51及びNボンベ54はそれぞれの減圧弁52を介して同一の配管に接続され、さらにその先のNFの検出器の入口側接続口60に接続されている。また、NFの検出器の出口側接続口61は除害装置53に接続されている。さらに、NFの検出器は、入口側接続口60と出口側接続口61を具備する充填剤FeF・3HO(75g)が充填された充填管56(外径1インチ、長さ20cm、Ni製)、該充填剤を所望の温度まで加熱できる電気ヒーター55、充填管56の出口側の圧力を測定する圧力ゲージ57、および熱電対58で検出される温度を表示する温度表示計59を有し、温度表示計59は、温度が所望の温度より高温になったとき異常の信号を発信する警報発信機(YOKOGAWA製 型式:UD310)及び警報発信機からの信号を音で知らせるブザー(PATLITE製、Signal phone、MODEl:BM−202)を具備している。警報を人に知らせる手段として、今回は音で知らせるブザーを使用したが、音以外にも光で知らせるランプや、パソコンなどのモニターに表示して知らせても良い。
【0050】
あらかじめ、警報機の温度設定を195℃に設定した。さらに、充填管56の内部温度が180℃に達するのを熱電対58で確認されるまで電気ヒーター55で加熱した。
【0051】
その後、入口側接続口60より、NFとNの混合ガスを充填管56内にNF濃度50vol%、流量200sccmで流した。
【0052】
ガスを流し始めてから34秒後、充填管56の内部温度が設定値を上回ったことを示す警報が発信された。
[実施例27]
図5に、本実施例で用いた装置の系統図を示す。
【0053】
NFボンベ61及びNボンベ64はそれぞれの減圧弁62を介して同一の配管に接続され、さらにその先のNFの検出器の入口側接続口72に接続されている。また、NFの検出器の出口側接続口73は除害装置63に接続されている。さらに、NFの検出器は、入口側接続口72と出口側接続口73を具備する充填剤FeF・3HO(75g)が充填された充填管66(外径1インチ、長さ20cm、Ni製)、該充填剤を所望の温度まで加熱できる電気ヒーター65、充填管66内部の温度を測定表示できる温度表示計69を有する熱電対68、充填管66の出口側の圧力を測定する圧力ゲージ67、および警報器71を有するNFの分解により生じるガスを検出できるガス検知部70を具備している。警報器71を有するガス検知部70としてHF検知器(理研計器MODEL:SC−90)を充填管66の出口側に接続して使用した。
【0054】
あらかじめ、充填管66の内部温度が180℃に達するのを熱電対68で確認されるまで電気ヒーター65で加熱した。
【0055】
その後、入口側接続口72より、NFとNの混合ガスを充填管66内にNF濃度50vol%、流量200sccmで流した。
【0056】
ガスを流し始めてから37秒後、HFを検出したことを示す警報がHF検知器から発信された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のNFの分解装置の例の図である。
【図2】本発明のNFの検出器の例の図である。
【図3】本実施例に用いた装置の系統図である。
【図4】本実施例に用いた装置の系統図である。
【図5】本実施例に用いた装置の系統図である。
【符号の説明】
【0058】
1、21、55、65:電気ヒーター
2、22、56、66:充填管
3、23、33、57、67:圧力ゲージ
4、24、58、68:熱電対
5、25、41、59、69:温度表示計
6、26、60、72:入口側接続口
7、27、61、73:出口側接続口
28、70:ガス検知部
29、71:警報器
31、51、61:NFボンベ
32、52、62:減圧弁
34:電気炉
35:Ni管
36:保護管付き熱電対
37:Niメッシュ
38、54、64:Nボンベ
39:真空ポンプ
40:GC−MS
53、63:除害装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
NFと、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物とを化学反応させることによりNFを分解させることを特徴とするNFの分解方法。
【請求項2】
該金属がMnであることを特徴とする、請求項1に記載のNFの分解方法。
【請求項3】
該金属酸化物が、MnOもしくはFeであることを特徴とする、請求項1に記載のNFの分解方法。
【請求項4】
該金属フッ化物が、FeFもしくはNiFであることを特徴とする、請求項1に記載のNFの分解方法。
【請求項5】
該金属フッ化物の水和物が、FeF・3HO、MnF・3HO、またはNiF・4HOであることを特徴とする、請求項1に記載のNFの分解方法。
【請求項6】
少なくとも充填塔を有するNFの分解装置であって、該充填塔は、NFを含むガスの供給口と、分解処理後のガスを排出する排出口と、所望の温度に加温する機能を備え、且つ、内部に、該供給口より供給されるガス中のNFと化学反応させるための充填剤として、金属、金属酸化物、金属フッ化物、または金属フッ化物の水和物が充填されていることを特徴とするNFの分解装置。
【請求項7】
請求項6に記載のNFの分解装置おいて、ガス流通時の該充填塔の温度がNFと該充填剤との反応熱によって該所望の温度よりも高温になったとき異常として知らせる警報機能を有する温度測定器を、該充填塔に具備することを特徴とするNFの検出器。
【請求項8】
請求項6に記載のNFの分解装置おいて、排出口の後段に、NFの分解によって発生するガスを検出したとき異常として知らせる警報機能を有するガス検出器を具備することを特徴とするNFの検出器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−194416(P2010−194416A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39835(P2009−39835)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】