説明

NOxを選択的に触媒により還元する方法および装置

【課題】本発明は、アンモニアおよび還元触媒を使用して酸素含有排ガス中のNOxを選択的に触媒により還元する方法および装置を提供するものであって、特に、容器に導入される固体の貯蔵媒体の加熱によりガス状アンモニアを使用する。なお、前記方法および装置は特別な方法で自動車に使用するために適している。
【解決手段】本発明は、アンモニアおよび還元触媒9を使用して酸素含有排ガス中のNOxを選択的に触媒により還元する方法において、容器1に導入されている固体の貯蔵媒体2を加熱することによりガス状アンモニアを使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアおよび還元触媒を使用して酸素含有排ガス中のNOxを選択的に触媒により還元する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、例えば内燃機関の酸素含有排ガス中の窒素酸化物を選択的に接触還元する(SCR selective catalytic reduction)ための効率のよい還元剤として知られている。
【0003】
特に毒性および保存によりガス状のアンモニアが発生する安全性の問題の理由から、まず還元剤としてその使用する場所で尿素の加水分解によりアンモニアを生じる方法が開発された。
【0004】
特許文献1には、水性尿素溶液を蒸発器に噴霧し、更に加水分解触媒上を通過することにより尿素を定量的に加水分解する方法が記載され、この場合にアンモニアおよびCO2中で尿素の定量的加水分解に触媒作用し、尿素の固体の反応生成物の形成を阻止する活性成分が蒸発器の表面および加水分解触媒に被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0487886号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記方法は、還元剤を供給する液体を供給しなければならず、この液体はガス状媒体より正確に供給できないという欠点を有する。
【0007】
従って還元触媒を離れるガス流は一般になお燃焼されないアンモニアを含有し、これは容易に大気中に放出することができず、酸化触媒の所で非酸化物成分に分解しなければならない。
【0008】
この方法は、加水分解触媒および尿素溶液の一緒の供給および流動断而への均一な導入に起因する高い装置の費用と結びついている。
【0009】
加水分解触媒は、低温でアンモニアを沈積するという別の欠点を有する。排ガス温度を急速に高めると、多くの量の沈積したアンモニアが脱着し、アンモニアは選択的な触媒による還元に還元剤として利用することができない。
【0010】
水性尿素溶液の使用は、自動車の冬期の運転および排ガス中の水の蒸発による排ガス温度の低下により他の問題を生じる。技術水準により使用される約30〜35%の水性尿素溶液は−11℃の凝固点を有する。例えばディーゼル燃料の凝固点までの低い温度では自動車の運転が保証されない。添加物による凝固点降下は可能であるが、そのような添加物、例えばギ酸アンモニウムは一般に特に腐食性であり、従ってその使用は新たな問題を生じる。
【0011】
排ガス中の水の蒸発の必然性により、排ガスは約20°Kだけ冷却する。これにより特にSCR触媒の不十分な低温活性が強く生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これに対して請求の範囲1の特徴部分に記載の本発明の方法は、正確に供給できるガス状の還元剤を使用し、冬期の運転に問題を生ぜず、従って付加的な凝結防止手段が必要でなく、本発明の方法を使用する場合にSCR触媒の低い低温活性の問題がかなり除去される。
【0013】
更に本発明の方法を実施する装置は、尿素−加水分解触媒がなくなり、付加的に水性尿素溶液の貯蔵密度に比べて約3倍大きい、本発明により使用される固体の貯蔵媒体のアンモニアの貯蔵密度により空間を節約できるので、装置が簡単である。自由になる構造空間は、場合により付加的なSCRモノリスに利用できる。
【0014】
尿素−水溶液と異なり供給成分の閉塞の問題が生じることがないので、供給装置への要求は少ない。
【0015】
アンモニアを放出する際に排ガス系への常に十分な圧力の低下が形成されるので、還元剤を導入するための圧縮空気の補助の必要がなくなる。従ってこの系はPkw(Personenkraftwagen乗用自動車)およびNkw(Nutzkraftwagen 商業車)の使用に同様に適している。
【0016】
一緒に運ばれるアンモニアが十分に貯蔵物質に結合する、すなわち自由に動けないので、ガス状アンモニアを用いる方法に比べて安全性の問題が取り除かれる。
【0017】
更に、本発明により使用される固体の貯蔵媒体は再生可能であり、すなわち空になった貯蔵器にアンモニアを再び充填できることが特に有利である。再生サイクルの数は1000回までであってもよい。
【0018】
請求の範囲2以下に記載の手段により、請求の範囲1記載の方法の有利な構成および改良が可能である。
【0019】
固体の貯蔵媒体として、有利な方法で塩化ストロンチウムSrCl2を使用することができ、これは固体の尿素の貯蔵密度に匹敵するアンモニアのための高い密度を有する。塩化ストロンチウムは全部または一部分、匹敵する利点を提供する塩化カルシウムに交換してもよい。
【0020】
更に、固体の貯蔵媒体を加熱するために、内燃機関の冷却剤および/または排ガスの廃熱を使用することが特に有利である。
【0021】
本発明の装置は、断続的な内燃機関の運転および/または開始段階でアンモニア貯蔵器を加熱するために十分なエネルギーを使用できない場合に、容器1の加熱段階に無関係にガス状アンモニアを蓄えておくために、有利にはガス状アンモニアの緩衝容器を備えていてもよい。
【0022】
本発明を以下の図而により詳細に説明する。図面には本発明の方法を自動車で実施するための装置に関する3つの実施例が示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の装置の図である。
【図2】図2は本発明の装置の有利な構成を示す図である。
【図3】図3は本発明の装置のもう1つの有利な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細には、図1は本発明の装置の図であり、図2は有利な構成を示し、図3は本発明の装置の特に有利な構成を示す。
【0025】
図1の装置は加熱装置3により加熱可能な容器1を有し、該容器にはアンモニア貯蔵物質2が含有されている。
【0026】
容器1の容積は、自動車の整備間隔内で触媒系を用いて内燃機関の排ガスからNOxを除去するために十分なアンモニアを提供するように決定される。約10リットルの容積が特に適していることが示される。
【0027】
固体の貯蔵媒体として、周囲条件(約20℃)で、アンモニア蒸気圧が、閉じた系中で貯蔵媒体上で低く(0.5バール未満)なるようにアンモニアを貯蔵する物質が該当する。
【0028】
本発明による固体の貯蔵媒体は、アンモニアを物理的および/または化学的吸着により結合している物質、例えば活性炭、ゼオライト等を含有してもよい。
【0029】
固体の貯蔵媒体として更にアンモニアを化学的錯体の形で結合している物質が該当する。このために、主に1種以上のアルカリ土類金属および/または1種以上の第3副族の元素、有利にはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および/または亜鉛の塩、特に塩化物および/または硫酸塩が該当する。
【0030】
有利な方法で、塩化ストロンチウムSrCl2を含有する固体の貯蔵媒体を使用する。塩化ストロンチウムは、[Sr(NH38]Cl2を形成して、ストロンチウムイオン1個当たり8個までの分子のアンモニアを貯蔵する。ほぼ1.5g/cm3の密度で貯蔵媒体1リットル当たりNH348モルの量を貯蔵する。これに比較して尿素は1.32g/cm3の密度で固体の尿素1リットル当たりアンモニア44モルの量を提供する。塩化ストロンチウムは全部または一部分塩化カルシウムと交換してもよい。
【0031】
注目すべきアンモニアの放出は[Sr(NH38]Cl2の場合は約30℃から開始する。その際約0.8バールのアンモニア蒸気圧が生じる。80℃で約8バールのアンモニア蒸気圧が生じる。容器1中の圧力が有利には2〜10バールであるように装置を作動すべきである。
【0032】
加熱装置3として、内燃機関の冷却剤および/または排ガスの廃熱を利用する、電気加熱器および加熱装置が該当する。
【0033】
固体の貯蔵媒体の加熱により生じるガス状アンモニアを電気または空気式に作動する弁4を介して、制御装置5により制御し、アンモニアの供給導管6を介してモーター7と触媒9との間の排ガス通路8に供給する。
【0034】
有利な実施例(図2)により、弁4と排ガス通路8との間に緩衝容器10を中間接続する。緩衝容器10は制御装置5により制御可能な弁4bを介して排ガス通路8に接続している。自動車を停止する場合に弁4および4bが閉じ、緩衝容器10はガス状アンモニアを充填し、圧力下にある。従って、図2による装置を使用して、モーターの開始後すぐにガス状アンモニアを容器1の加熱段階に無関係に蓄えておくことが可能である。
【0035】
更に有利な装置部材を有する装置が図3に示される。容器1を充填するために、充填容器は組み込まれた逆止弁16を有し、該弁は充填開口により導入されるアンモニアの漏出を阻止する。微孔質のふるい状の構造部材11は容器1に存在するグラニュール状の貯蔵物質2の放出を阻止する。調節のためにおよび安全性の理由から、容器1に圧力センサー12が取り付けられ、該センサーは決められた最大圧力水準に達した場合に熱供給を中断する。更に安全弁13(開放圧力約10〜15バール)が備えられ、該弁は貯蔵容器中の高すぎる圧力の上昇に反応し、放出するアンモニアを、例えば排ガス通路に導く。
【0036】
緩衝容器10の後方に圧力調節器14が備えられ、該調節器は2〜3バールの必要なアンモニア分圧を保証する。流れをさかのぼって適当な位置に、触媒9の前方にアンモニア供給部分15、例えば遮閉物を有する供給管が備えられ、アンモニアと排ガスの良好な混合を保証することができる。
【0037】
流出を監視し、アンモニアの量を現在のモーターの運転状態に適合する付加的な機能が補充されている電気的制御装置(ディーゼルEDC)を調節する。
【符号の説明】
【0038】
1 容器
2 アンモニア貯蔵物質
3 加熱装置
4、4b 弁
5 制御装置
6 アンモニアの供給導管
7 モーター
8 排ガス通路
9 触媒
10 緩衝容器
11 構造部材
12 圧力センサー
13 安全弁
14 圧力調節器
15 アンモニア供給部分
16 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアおよび還元触媒(9)を使用して酸素含有排ガス中のNOxを選択的に触媒により還元する方法において、容器(1)に導入されている固体の貯蔵媒体(2)を加熱することによりガス状アンモニアを使用することを特徴とする、NOxを選択的に触媒により還元する方法。
【請求項2】
貯蔵媒体(2)が吸着によりアンモニアを結合している請求項1記載の方法。
【請求項3】
貯蔵媒体(2)が化学的錯体の形でアンモニアを結合している請求項1記載の方法。
【請求項4】
貯蔵媒体(2)が1種以上のアルカリ土類金属および/または1種以上の第3副族の元素、有利にはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および/または亜鉛の1種以上の塩、特に塩化物および/または硫酸塩を含有する請求項3記載の方法。
【請求項5】
貯蔵媒体(2)が塩化ストロンチウムおよび/または塩化カルシウムを含有する請求項4記載の方法。
【請求項6】
貯蔵媒体(2)を、電気加熱器および/またはモーター冷却剤および/または排ガスの廃熱により加熱する請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
貯蔵媒体(2)を50〜200℃、有利には80〜150℃に加熱する請求項6記載の方法。
【請求項8】
貯蔵媒体(2)を加熱してアンモニア蒸気圧0.1〜30バール、有利には2〜10バールにする請求項6記載の方法。
【請求項9】
還元触媒(9)および、モーター(7)と還元触媒(9)との間の排ガス通路(8)へのアンモニアの供給導管(6)を有する請求の範囲1から8までのいずれか1項記載の方法を実施する装置において、供給導管(6)が弁(4)を介して容器(1)と接続され、該容器は固体の貯蔵媒体(2)が充填され、加熱装置(3)により加熱可能であることを特徴とする、NOxを選択的に触媒により還元する装置。
【請求項10】
供給導管(6)にガス状アンモニアの緩衝容器(10)および該容器(10)から排ガス通路(8)にアンモニアを供給する弁(4b)が備えられている請求項9記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−24761(P2012−24761A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206855(P2011−206855)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願平11−506094の分割
【原出願日】平成10年6月25日(1998.6.25)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】