説明

OLEDディスプレイ用アクティブマトリクス画素駆動回路

【課題】複数の画素を有する表示画素に関する。
【解決手段】夫々の画素は、第一の導電層と、基板の第一の領域で薄膜構成要素を有する切替え可能な素子を介して電流供給に結合された第二の導電層との間に結合された電流駆動の表示素子と;基板の第二の領域の上にあって、薄膜構成要素に導電結合された第一のキャパシタ板と、第二のキャパシタ板と、第一のキャパシタ板と第二のキャパシタ板との間の第一の絶縁層とを有する第一の容量性素子とを有する。第二の容量性素子は、第一の容量性素子の表面に積層され、第一の容量性素子の第二のキャパシタ板を共有し、第二の導電層の少なくとも一部を有する第三のキャパシタ板と、第二のキャパシタ板と前記第三のキャパシタ板との間の第二の絶縁層とを有する。この配置は、第一及び第二の容量性素子の容量の増大に対して有効であり、それらを寄生容量の影響を受けにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面領域の上に載せられた複数の画素を有する表示装置に関する。夫々の画素は、第一の導電層と第二の導電層との間に結合された電流駆動型表示素子を有する。第二の導電層は、基板表面領域の第一の部分に薄膜構成要素を有する切替え可能な素子を介して電流供給に結合されている。
【背景技術】
【0002】
III-V族半導体化合物に基づいた発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)又は高分子発光ダイオード(ポリLED)のような電流駆動型電界発光表示素子を有する表示装置は、多くの注目を集めている。このような装置の表示特性は、潜在的に、コントラスト及び輝度の性能の点で、液晶ディスプレイ(LCD)のような、より一般的である電圧駆動型表示装置よりも優れているからである。
【0003】
例えばOLED及びポリLED表示装置の画素は、一般的に、第一の導電層と第二の導電層との間に結合された表示素子を有する。第二の導電層は、切替え可能な素子によって電流供給ビアに結合されている。切替え可能な素子のチャネルタイプに応じて、第一の導電層は陰極として作動し、第二の導電層は陽極として作動する。あるいは、それらの極性は逆であっても良い。可能であれば、切替え可能な素子は電流源として動作し、ゲート電圧が切替え可能な素子、例えばトランジスタに印加される。トランジスタは、切替え可能な素子の実際の電流出力を決定する。実際の電流出力は、表示素子の輝度レベルを決める。
【0004】
図1は、アクティブマトリクス型アドレス指定電界発光表示装置用の既知の画素回路を示す。該表示装置は、規則正しく間隔を空けられた画素の行及び列のマトリクス配列を有するパネルを有する。該画素は、ブロック1によって表わされ、関連する切替え手段と共に電界発光表示素子2を有し、行(選択)及び列(データ)のアドレス導電体4及び6の交差する集合間の共通部分に置かれている。数個の画素のみが簡単化のため図に示されている。
【0005】
実際には、数百の行及び列の画素が存在する。画素1は、行の走査用駆動回路8及び列のデータ用駆動回路9を有する周辺の駆動回路によって、行及び列のアドレス導電体の集合を介してアドレス指定される。該駆動回路は、導電体の夫々の集合の終端に結合されている。
【0006】
電界発光表示素子2は、有機発光ダイオードを有する。配列の表示素子は、例えば基板のような絶縁支持材の一方の面の上に、関連するアクティブマトリクス回路と共に載せられている。表示素子の陰極又は陽極のいずれかは、透明な導電物質で形成されている。支持材は、例えばガラスのような透明な物質から作られ、基板に最も近い表示素子2の電極は、例えばITOのような透明な導電物質から成る。従って、電界発光層によって発せられる光は、支持材の他方の面から見る人に対して可視的であるように、これらの電極及び支持材を介して伝送される。一般的に、有機電界発光物質層の厚さは、100nmから200nmの間である。
【0007】
素子2に対して使用されうる適切な有機電界発光物質の典型例は、EP‐A‐0717446(特許文献1参照。)で知られ、記述されている。WO96/36959(特許文献2参照。)で記述されているような結合高分子化合物質も使用され得る。
【0008】
図1で示した表示装置の画素1にある上述した切替え可能な素子は、低温ポリシリコン(LTPS)薄膜トランジスタ(TFT)によって実現され得る。低温ポリシリコンTFTは、個々のTFTの閾値電圧(Vth)が表示装置の耐用年限の間は比較的安定しているという利点を有する。残念ながら、個々のTFTの閾値電圧の絶対値は、極めて変化しうる。これらの値は、表示装置の基板上でのポリシリコン粒子の分布関数であるからである。個々のTFTの閾値電圧間のこのような変動は、非常に好ましくない。それらは、電流駆動型表示素子からの意図した発光の強さから目に見える偏差をもたらしうるからである。出力電流(I)の量は、TFTのゲート−ソース間電圧(Vgs)とVthとの間の差の二乗に直接的に関連するので(I〜(Vgs−Vth)、Vthの意図した値からの偏差は、TFTの実際の出力電流の意図した値からの偏差と、表示素子の出力における上述した影響とをもたらすことが理解される。
【0009】
あるいは、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ(a−SiTFT)が切替え可能な素子として使用される。a−SiTFTの使用は、それらが安く作られるからという理由だけではなく、更に重要なことに、個々のa−SiTFTの閾値電圧が僅かの変動しか示さないので、上述した低温ポリシリコンTFTの欠点を回避できるという理由のために魅力的である。残念ながら、a−SiTFTは、a−SiTFTの動作中にアモルファスシリコンにおいて、例えばホットキャリア注入によって生じたピンホールのような欠陥の導入によって引き起こされる閾値電圧(Vth)の増大に悩まされる。このようなエージング効果は、様々な使用頻度に応じて一つの個別なa−SiTFTから他のものへ変化させうるが、上述したディスプレイの影響をも引き起こしうる。
【0010】
thの偏差又は低温ポリシリコンTFT若しくはa−SiTFTのような切替え可能な素子の劣化を補償するための幾つかの方法が存在する。可能な解決法は、英国特許出願031659.0(未公開)(特許文献3参照。)で開示されている。それを図2に示す。図2に示された表示装置の画素は、電流供給ライン26と接地ライン28との間に結合された電流駆動型表示素子2を有する。表示素子2は、駆動トランジスタ12を介して電流供給ライン26に結合されている。駆動トランジスタ12のゲートは、第一の容量性素子32及び第二の容量性素子34の直列接続を介してそれ自体のソースに結合されている。容量性素子32及び34は、別のトランジスタ13から16を用いてプログラミングされて、駆動トランジスタ12の実際の閾値電圧及び表示素子2の意図した輝度レベルを表わすデータ電圧を夫々蓄える。これは、駆動トランジスタ12のゲートに印加された実際のゲート電圧が駆動トランジスタ12の実際の閾値電圧で補正されることをもたらす。結果として、表示素子2に印加された電流は、駆動トランジスタ12の閾値電圧の変動とはほぼ無関係となる。
【0011】
a−SiTFTのエージング効果を補償するための他の解決法は、英国特許出願037475.4(未公開)(特許文献4参照。)で開示されている。これは、図3で示しているような画素を有する表示装置を開示している。電流駆動型表示素子2は、電流供給ライン26と接地ライン28との間に駆動トランジスタ12を介して結合されており、第一の容量性素子32及び第二の容量性素子34の直列配置は、駆動トランジスタ12のゲートとソースとの間に結合されている。第一の容量性素子32は、トランジスタ13及びデータライン24を介して表示素子2に対するデータ電圧を供給される。トランジスタ13及び16は、容量性素子32及び34をそれらの意図した状態にプログラミングするために必要とされる。表示装置は、擬似画素(図示せず。)を更に有する。擬似画素は、表示装置内の複数の画素に供給された複数のデータ信号の平均を表わす一つのデータ信号を供給される。擬似画素の駆動トランジスタのエージングは、表示装置の画素内の各種の駆動トランジスタ12のエージングの平均とみなされうる。擬似画素内の駆動トランジスタVthは、測定されて、擬似データ信号ライン60及びトランジスタ62を介して第二の容量性素子34に供給される。結果として、駆動トランジスタ12のゲートに印加されたゲート電圧は、平均されたVthの低下に基づく補償を有する。
【0012】
図2及び3において、容量性素子は、駆動トランジスタのように切替え可能な素子の閾値電圧のような物理的特性を記憶するために使用されており、このような図2及び3で示された回路のような画素の性能は、容量性素子と画素の他の部品との間の浮遊又は寄生容量の存在によって劣化しうる。例えば、図2で示した回路は、トランジスタ14のゲートと第一の容量性素子32との間に有効な寄生容量42を有しうる。寄生容量42は、第一の容量性素子32に蓄えられた充電に破壊的な影響を及ぼし、破壊的な影響が十分に大きい場合には、第一の容量性素子32に蓄えられたデータを改悪しうる。
【0013】
第一の容量性素子32に蓄えられたデータを改悪しうる他の有効な寄生容量は、駆動トランジスタ12のドレイン接触と第一の容量性素子32との間にある寄生容量52である。寄生容量42及び52は、駆動トランジスタ12の閾値電圧が第一の容量性素子32に蓄えられているときに特に好ましくない。駆動トランジスタ12の閾値電圧測定の間、節点Aは供給電圧レベルにあり、一方、節点Bは閾値電圧レベルにある。測定完了時に、トランジスタ14及び15はオフに切替えられ、これにより節点Bがデータ列24のデータによって定義される。結果として、節点Aは、このデータ電圧以上の閾値電圧の電圧値を示さなければならない。即ち、節点Aの電圧は、供給電圧からデータ電圧と駆動トランジスタ12の閾値電圧との和によって決められる電圧レベルに動かされる。この点において、寄生容量42及び52に蓄えられた充電が第一の容量素子32に移動するので、閾値電圧の測定結果は改悪される。これは、表示装置の出力における上述した好ましくない目に見える影響をもたらしうる。
【特許文献1】欧州特許出願EP‐A‐0717446
【特許文献2】国際特許出願WO96/36959
【特許文献3】英国特許出願031659.0(未公開)
【特許文献4】英国特許出願037475.4(未公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特に、本発明の目的は、上述したような表示装置を改善することである。
【0015】
本発明の他の目的は、上述した問題を起こす寄生容量よって及ぼされる影響を低減された、駆動トランジスタの現在のモードを制御するための容量性素子を有する複数の画素を有する表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の特徴によれば、基板の上に載せられた複数の画素を有する表示装置が存在し、 夫々の画素は、第一の導電層と、前記基板の第一の領域で薄膜構成要素を有する切替え可能な素子を介して電流供給に結合された第二の導電層との間に結合された電流駆動の表示素子と;前記基板の第二の領域の上にあって、前記薄膜構成要素に導電結合された第一のキャパシタ板と、前記第一のキャパシタ板の上に置かれた第二のキャパシタ板と、前記第一のキャパシタ板と前記第二のキャパシタ板との間の第一の絶縁層とを有する第一の容量性素子と;該第一の容量性素子の第二のキャパシタ板を共有し、該第二のキャパシタ板の上に置かれて、前記第二の導電層の少なくとも一部を有する第三のキャパシタ板と、前記第二のキャパシタ板と前記第三のキャパシタ板との間の第二の絶縁層とを更に有する第二の容量性素子とを有する。
【0017】
第一の容量性素子及び第二の容量性素子を互いに側面に沿って隣り合うように配置するのではなく、互いの表面上に積層することによって、これらの容量性素子の個々の容量を十分に増大させることができる。容量性素子は、容量性素子の個々の容量を制限するように、それらの間で利用可能な基板表面領域を分け合う必要がないからである。結果として、関連する容量性素子がより大きな容量を有するという事実に従って、関連する容量性素子に蓄えられたデータに対して画素の構成要素と容量性素子の一つとの間の寄生容量が与える影響は小さくなる。従って、寄生充電の量の関連する容量性素子の全ての充電に対する比は小さくなり、このようにして、引き起こされる関連する容量性素子に蓄えられたデータ破壊は小さくなる。
【0018】
一実施例において、前記第一の絶縁層は、前記第二の絶縁層とは異なる厚さを有する。第一の絶縁層及び第二の絶縁層の異なる厚さ、これらの層の誘電率及び第一及び第二の容量性素子の夫々の容量の使用は、それらの相関関係の特定の要求に対して求められうる。
【0019】
有利に、前記第一の絶縁層は、前記第一のキャパシタ板の上では第一の厚さを有し、前記薄膜構成要素の上では第二の厚さを有し、該第一の厚さは、該第二の厚さよりも薄い。即ち、薄膜構成要素と切替え可能な素子のチャネル構造との間の絶縁層は、関連する容量性素子のキャパシタ板の間に絶縁層を設けるためにも使用されうる。しかし、第一の容量性素子により薄い層を使用することによって、この容量性素子の容量を更に増大させることが可能であり、このようにして、寄生容量に対する第一の容量性素子のローバスト性が増大する。あるいは、容量性素子によって覆われた基板表面の面積の大きさを減少させることが可能であり、このようにして、基板を通る発光を利用している表示装置の場合には画素の開口特性が改善する。
【0020】
あるいは、前記第一の絶縁層は第一の物質を有し、前記第二の絶縁層は第二の物質を有し、該第一及び第二の物質は、異なる誘電率を有する。第一及び第二の容量性素子の容量を調整するように第一及び第二の絶縁層の厚さを変化させる代わりに、異なる誘電率を有する異なる物質が、第一及び第二の容量性素子の容量を調整するように第一及び第二の絶縁層に対して選ばれうる。
【0021】
前記第一のキャパシタ板が別の切替え可能な素子に対する導電結合を有する場合に、該導電結合は、前記第一の絶縁層を介して広がり、夫々の画素は、前記導電結合と前記第一の導電層ラインとの間の容量を減少させるために前記導電結合の上に置かれた前記第二の絶縁層の一部を覆っている導電層を更に有する。このような別の切替え可能な素子は、例えば図2のトランジスタ14であり、ビアを用いて第一の容量性素子に導電結合されうる。導電結合と画素の第一の導電層との間の寄生容量の発生を回避するために、導電結合は、導電結合の上に広がっている透明な酸化インジウム錫(ITO)パッドのような付加的な導電層によって第一の導電層から遮断される。このようにして、第一の容量性素子に影響を及ぼす寄生容量の量は減少する。
【0022】
望ましくは、前記第二の導電層は、前記薄膜構成要素の上に広がっていない。これは、薄膜構成要素と第二の導電層との間の寄生容量の量を減少させ、第一及び第二の容量性素子の両端に蓄えられた電圧による薄膜構成要素の制御性を改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を添付の図を参照して例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0024】
図は概略に過ぎず、実寸で描かれてはいないことが理解されるべきである。また、同じ参照数字が全ての図において使用されているが、これは同じ又は類似な部品を示すことが理解されるべきである。
【0025】
本発明について図2を用いて説明する。これは、本実施例に限定されるわけではないことに注意すべきである。即ち、駆動トランジスタのゲートとソース又はドレインとの間に直列に置かれた二つの容量性素子を有する如何なる画素に対しても、本発明の説明は有効である。
【実施例1】
【0026】
図4において、画素は、第一の導電層28と第二の導電層27との間に結合された電流駆動型表示素子2を有することが示されている。表示素子2に対して、第一の導電層28は陰極として作動し、第二の導電層27は陽極として作動する。しかし、層の相関関係は、適切な場合に反転しても良いことは明らかである。電流駆動型表示素子2は、既知のOLED又はポリLED材のような、如何なる既知のLED材を有しても良い。駆動トランジスタ12は、薄膜構成要素122を有する。薄膜構成要素122は、駆動トランジスタ12のゲートであって、切替え可能な素子12と共に基板120の第一の領域を覆っている。切替え可能な素子12は、図1のa−SiTFT駆動トランジスタであって、電流供給ライン12と第二の導電層27との間に結合されている。第一の容量性素子は、図2の第一の容量性素子32であって、第一の絶縁物質層130と共に第一のキャパシタ板132と第二のキャパシタ板133とによって形成されている。第一の絶縁物質層130は、二つの板の間に存在し、第一の誘電率を有する。第一のキャパシタ板132は、導電結合(図示せず。)によって薄膜構成要素122に導電結合されており、一般に、薄膜構成要素122と同じ導電物質の堆積ステップで実現される。第一のキャパシタ板132と薄膜構成要素122との間の導電結合は、同様にこの堆積ステップで実現され得る。一般的に、第一の絶縁層130は、以下の加工ステップで堆積されて、薄膜構成要素122及び第一のキャパシタ板132の両方を覆う。第一の絶縁層130は、窒化珪素(SiN)であっても良く、又は他の既知の絶縁物質から作られても良い。第二のキャパシタ板133は、一般に、導電物質の堆積及び第一の絶縁層130の表面状のパターン形成によって形成される。この導電物質は、様々な画素をアドレス指定するために行及び列を有するマトリクス配列表示装置の場合に、図2のデータライン24を実施するために使用された導電性の列の物質と同じステップで堆積されても良い。導電物質は、金属のような如何なる適切な導電物質であっても良い。
【0027】
第二の導電素子は、図2の第二の導電素子34であって、第一の容量性素子の表面に積み重ねられ、第一の容量性素子の第二のキャパシタ板133を共有することによって、及び第二の導電層27の少なくとも一部を有する第三のキャパシタ板によって形成される。第二及び第三のキャパシタ板は、第二の誘電率を有する第二の絶縁層140によって分けられている。画素の同じ層において第一及び第二の容量性素子が互いに隣り合うのではなく、互いの表面上で積層することの主な利点は、結果として、これら素子の容量を十分に増大させることができるという点である。容量性素子の容量Cは、式C=εA/dによって表わされうる。ここで、εは、板の間にある絶縁物質の誘電率であり、Aは、板の面積であり、dは、板の間の距離である。二つの容量性素子の積層は、キャパシタ板132及び133の面積の増大を可能にし、これによって容量性素子の容量が増大する。表面放射画素の場合に、電流駆動型表示素子2によって放射された光は、基板を通る必要がない。従って、キャパシタ板は、画素の他の回路素子によって覆われないままとなっている全ての基板領域を十分に覆うだけの大きさにされうる。
【0028】
容量が大きくなればなるほど、容量性素子は、例えば第一のキャパシタ板132を有する導電層と電流供給ライン26との間の容量のような図2の寄生容量52である寄生容量の影響に対して頑強となる。閾値電圧への寄生容量の影響は、次の式によって表わすことができる。
【0029】
ΔV=(C42+C52)*Vth/(C32+C42+C52
ここで、ΔVは、第一の容量性素子の容量C32における寄生容量42及び52の夫々の容量C42及びC52の影響によって生じたVthの変化である。この式は、C32とC42及びC52との間の容量比が、Vthにおける寄生容量の影響を最小限に抑えるように最大にされるべきであることを明らかに示している。
【0030】
図4で示されているような積層キャパシタ構造を有することが望ましく、このような構造において、二つの容量性素子の一方は、他方よりも大きな容量を有する。これは、第一の絶縁層130及び第二の絶縁層140に対して異なる誘電率を有する異なる物質を選ぶことによって達成することができる。例えば第一の絶縁層130は、相対的に高い誘電率を有するSiN層であっても良く、第二の絶縁層140は、相対的に低い誘電率を有する高分子物質層であっても良い。このようにして、第一の容量性素子は、第二の容量性素子よりも大きな容量を有することになる。明らかに、回路要求に応じて、層は逆にされても良く、この場合には、第二の容量性素子が第一の容量性素子よりも大きな容量を有することになる。
【0031】
第一の容量性素子及び第二の容量性素子の異なる容量は、第一のキャパシタ板132と第二のキャパシタ板133との間及び第二のキャパシタ板133と第二の導電層27との間の距離を夫々異なるようにすることでも達成されうる。これは、第一の厚さで第一の絶縁層130を、第二の厚さで第二の絶縁層140を夫々堆積することによって実現可能である。絶縁層130及び140は、同じ物質から作られても良く、あるいは、異なる物質で構成されても良い。
【実施例2】
【0032】
図5は、第二の容量性素子とは異なる容量を有する第一の容量性素子を実現するように第一の絶縁層130及び第二の絶縁層140に対して異なる厚さを用いる変形例を示している。第一の絶縁層130は、第一のキャパシタ板132と第二のキャパシタ板133との間の第一の厚さ及び薄膜構成要素120と切替え可能な素子12との間の第二の厚さの二つの厚さを有する。第一の厚さは、非常に薄い状態に保たれている。望ましくは、第二の厚さは、切替え可能な素子12のようなTFTのゲートと半導体物質間との間の誘電体に対して一般的な厚さ、例えば0.33ミクロンに相当する。これは、例えば、第一の厚さを有する第一の絶縁物質の層を最初に堆積することによって実現可能であって、第一の絶縁物質の層では、薄膜構成要素122及び第一のキャパシタ板132に対するホールが次のステップでパターン形成される。これらの構造の完成の後には、薄膜構成要素を覆っている層が意図した第二の厚さまで厚くなるように、絶縁層130’の堆積が続く。この工程は、第一の絶縁層130の薄い部分が、第一の容量性素子の性能の劣化を引き起こすような如何なる金属特性の端を渡る必要が無いことを保証する。しかし、例えば、画素の金属ライン(図示せず。)の十分なステップ範囲を確実にするように、画素の他の部分に更に厚い絶縁層を適用することは有利である。
【0033】
第一のキャパシタ板132と第二のキャパシタ板133との間で非常に薄い誘電層を使用する主な利点は、第一の容量性素子の大容量が第一のキャパシタ板132及び基板120の大部分を覆う第二のキャパシタ板133の領域を広げる必要なしに実現可能である点である。これは、基板120を介して光を放射する底面放射表示装置に対して特に有利である。キャパシタ板132及び133の領域を減少させることによって、画素の開口が増大する。これは、底面放射表示装置に対して基板120を通る改善された発光効率をもたらす。
【0034】
この点で、第一及び第二の容量性素子と寄生容量との間の容量比を更に改善するために、図4及び5で示した画素における寄生容量の存在を制限することが有効であることが明らかである。この目的を達成するために、切替え可能な素子12を覆っている絶縁層150は、第一の導電層28と切替え可能な素子12の薄膜構成要素122との間の如何なる有効な寄生容量の存在も回避するように、実際には可能な限り厚く作られる。絶縁層150は、高分子物質層、窒化珪素又は酸化珪素の層のような如何なる既知の適切な絶縁層であっても良い。同じ理由のために、第二の導電層27は、切替え可能な素子12の薄膜構成要素122上で側面に沿って広げられるべきではない。このように広げることは、第二の導電層27と切替え可能な素子12の薄膜構成要素122との間の寄生容量を十分に大きくすることになるからである。
【実施例3】
【0035】
図6は、本発明による他の画素の断面図を示し、寄生容量の影響を制限するための更なる対策が含まれている。図6の断面図は、表示素子2が可視的ではないが、例えば、第一の容量性素子の第一のキャパシタ板132から別の切替え可能な素子14に第一の絶縁層130を介して広がっているビアのような導電結合144を有する本発明の積層された容量性素子の構造を示している。別の切替え可能な素子14は、図2のTFT14であって、基板120の上に薄膜構成要素142を有する。薄膜構成要素142は、別の切替え可能な素子14のゲートであっても良い。導電結合144は、第一の容量性素子の容量の一部を形成するが、第一の絶縁層130を介して広がっているので、導電結合144は、第一のキャパシタ板132よりも第一の導電層28と共に更に大きな寄生容量を生じさせうる。第一のキャパシタ板132は、第一の導電層28とは離れている。
【0036】
この好ましくない寄生容量を低減するために、導電結合144は、第二の絶縁層140の少なくとも一部を覆っている導電層160によって第一の導電層28から遮断されている。導電層160は、例えばビアのような導電結合162を介して第二のキャパシタ板133に導電結合されている。導電層160は、導電物質としてITOを用いて実現されても良い。この導電物質は、底面放射装置に対して、画素の開口が不利な影響を及ぼされないという利点を有する。しかし、他の導電物質が、特に表面放射表示装置の場合に、同様に使用されても良い。
【0037】
留意すべきは、上述した実施例は本発明を表わすものであって、限定するものではないこと、及び当業者が特許請求の範囲の適用範囲から外れることなく多数の他の変形例を設計可能であることである。特許請求の範囲において、括弧内に置かれた如何なる参照符号も請求項を限定するように解釈されるべきではない。語「有する」は、請求項に列挙された以外の他の要素又はステップの存在を認めないわけではない。語「一つの」は、このような素子が複数存在することを認めないわけではない。本発明は、幾つかの個別素子を有するハードウェアによって実施可能である。幾つかの手段を列挙している装置に関する請求項において、それらの手段の幾つかはハードウェアの同一の物品によって具現化可能である。特定の手段が相互に異なる従属請求項で挙げられているという事実は、これらの手段の組合せが有利に使用不可能であるということを示すわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】複数の画素を有する表示装置を概略的に表わした図である。
【図2】従来技術を概略的に表わした図である。
【図3】従来技術を概略的に表わした図である。
【図4】本発明の表示装置の画素の一実施例の断面図である。
【図5】本発明の表示装置の画素の他の実施例の断面図である。
【図6】本発明の表示装置の画素の他の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に載せられた複数の画素を有する表示装置において、
夫々の画素は、
第一の導電層と、前記基板の第一の領域で薄膜構成要素を有する切替え可能な素子を介して電流供給に結合された第二の導電層との間に結合された電流駆動の表示素子と;
前記基板の第二の領域の上にあって、前記薄膜構成要素に導電結合された第一のキャパシタ板と、
前記第一のキャパシタ板の上に置かれた第二のキャパシタ板と、
前記第一のキャパシタ板と前記第二のキャパシタ板との間の第一の絶縁層とを有する第一の容量性素子と;
該第一の容量性素子の第二のキャパシタ板を共有し、該第二のキャパシタ板の上に置かれて、前記第二の導電層の少なくとも一部を有する第三のキャパシタ板と、前記第二のキャパシタ板と前記第三のキャパシタ板との間の第二の絶縁層とを更に有する第二の容量性素子とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第一の絶縁層は、前記第二の絶縁層とは異なる厚さを有することを特徴とする、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第一の絶縁層は、前記第一のキャパシタ板の上では第一の厚さを有し、前記薄膜構成要素の上では第二の厚さを有し、
該第一の厚さは、該第二の厚さよりも薄いことを特徴とする、請求項1又は2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第一の絶縁層は第一の物質を有し、前記第二の絶縁層は第二の物質を有し、
該第一及び第二の物質は、異なる誘電率を有することを特徴とする、請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の表示装置。
【請求項5】
前記第一のキャパシタ板は、別の切替え可能な素子に対する導電結合を有し、該導電結合は、前記第一の絶縁層を介して広がり、
夫々の画素は、前記導電結合と前記第一の導電層との間の容量を減少させるために前記導電結合の上に置かれた前記第二の絶縁層の一部を覆っている導電層を更に有することを特徴とする、請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の表示装置。
【請求項6】
前記第二の導電層は、前記薄膜構成要素の上に広がっていないことを特徴とする、請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−527391(P2006−527391A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508433(P2006−508433)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001863
【国際公開番号】WO2004/109640
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】