説明

PCウェル及び橋梁の施工方法

【課題】 施工期間を短縮することができるPCウェル及び橋梁の施工方法を提供する。
【解決手段】 筒状のPCウェル本体21と、PCウェル本体21から内方に突出し、橋脚3を取り付け可能な固定部10とを備えるPCウェル。また、前記PCウェルを用いて、内周面に固定部10を有する筒状のPCウェル基礎2を複数構築する基礎構築工程(S1)と、固定部10に橋脚3を取り付けることにより各PCウェル基礎2にそれぞれ橋脚3を仮固定する仮固定工程(S2)と、各橋脚3間に橋梁上部工4を架設する架設工程(S3)と、各PCウェル基礎2の内部にコンクリート80を打設して養生することにより各橋脚3を各PCウェル基礎2に本固定する本固定工程(S4)とを備え、架設工程(S3)は、本固定工程(S4)より前、又は、同時に行われることを特徴とする橋梁の施工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCウェル基礎に用いるPCウェル、及び、PCウェル基礎を備える橋梁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCウェル基礎を備える橋梁の施工方法として、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。ここで、PCウェル基礎とは、公知のPCウェル工法により構築される基礎構造であり、PCウェル工法とは、短筒状のプレキャストコンクリートからなるPCウェルを地中に順次圧入しながら複数積層して、地盤内に長尺筒状のPCウェル基礎を構築し、そのPCウェル基礎の軸方向全長に亘ってPC鋼材を配置し、それを緊張させることによってPCウェル基礎全体にプレストレスを付与する工法である。
【0003】
図7に示すように、従来の橋梁101の施工方法は、PCウェル基礎102を地中に複数構築する基礎構築工程と、各PCウェル基礎102にそれぞれ橋脚103を固定する橋脚固定工程と、各橋脚103間に橋梁上部工104を架設する架設工程とを備えている。また、上記橋脚固定工程は、図8に示すように、PCウェル基礎102の内部にコンクリートを打設、養生して、仮支持台105を構築する仮支持台構築工程と、仮支持台105に橋脚103を仮置きする仮置工程と、PCウェル基礎102の内部にモルタル106を打設、養生することにより橋脚103をPCウェル基礎102に固定するモルタル充填工程とを備えている。
【特許文献1】特開2004−190266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような橋梁101の施工方法では、橋脚103を設置するためには、仮支持台構築工程を行い、仮支持台105のコンクリートが硬化するのを待たなければならず、硬化に要する時間が施工期間を長期化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、施工期間を短縮することができるPCウェル及び橋梁の施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、筒状のPCウェル本体と、前記PCウェル本体から内方に突出し、橋脚を取り付け可能な固定部とを備えるPCウェルにより達成される。
【0007】
また、前記目的は、上記PCウェルを用いて、内周面に前記固定部を有する筒状のPCウェル基礎を複数構築する基礎構築工程と、前記固定部に橋脚を取り付けることにより前記各PCウェル基礎にそれぞれ前記橋脚を仮固定する仮固定工程と、前記各橋脚間に橋梁上部工を架設する架設工程と、前記各PCウェル基礎の内部にコンクリートを打設して養生することにより前記各橋脚を前記各PCウェル基礎に本固定する本固定工程とを備え、前記架設工程は、前記本固定工程より前、又は、同時に行われることを特徴とする橋梁の施工方法により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のPCウェル及び橋梁の施工方法によれば、施工期間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る橋梁の施工方法により構築された橋梁の側面図であり、図2は、(a)図1のA−A断面図、及び(b)この断面図におけるB−B断面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、橋梁1は、地中に埋設された複数のPCウェル基礎2と、各PCウェル基礎2に固定された複数の橋脚3と、各橋脚3間に架設された橋梁上部工4とを備えている。
【0011】
PCウェル基礎2は、地中に配置された複数の普通PCウェル20a及び固定用PCウェル20bを備えており、筒状に構成されている。また、PCウェル基礎2は、図示しないPC鋼材を備えており、PC鋼材の緊張により、軸方向にプレストレスが導入されている。PCウェル基礎2内には、底部に図示しない底盤コンクリートが充填され、その上に中詰土砂70が充填されている。また、PCウェル基礎2内には、橋脚3を固定する頭部コンクリート80が最上部に充填されている。
【0012】
普通PCウェル20a及び固定用PCウェル20bは、工場で予め製作された鉄筋コンクリート製の部材である。普通PCウェル20aは、円筒状のPCウェル本体21を備えている。固定用PCウェル20bは、円筒状のPCウェル本体21と、PCウェル本体21の内周面から径方向内方に突出する突起状の固定部10を備えている。普通PCウェル20aが軸方向に沿って複数積層され、普通PCウェル20aの上に固定用PCウェル20bが積層されることにより、内周面に固定部10を有するPCウェル基礎2が構築されている。
【0013】
図3及び図4は、固定用PCウェル20bの要部を示す断面図である。図3に示すように、固定部10には、アンカーボルト12が挿入されるボルト孔11が固定用PCウェル20bの軸方向に沿って形成されている。また、図4に示すように、固定用PCウェル20bは、軸方向及び周方向に沿って複数配置され、格子状に組み合わされた鉄筋50を内部に備えている。また、固定用PCウェル20bは、固定部10が設けられた部分では、径方向に複数配置され、格子状に組み合わされた鉄筋50を更に備えている。これにより、固定部10は、橋脚3の荷重を支持可能に構成されている。
【0014】
橋脚3は、例えば、箱型断面の鋼製橋脚を用いることができ、下端部に水平に配置されたベースプレート30を備えている。ベースプレート30には、アンカーボルト12が挿入されるボルト孔31が橋脚3の軸方向に沿って形成されている。ベースプレート30は、固定部10上に設置され、ボルト孔11、31に挿入されたアンカーボルト12により固定部10に仮固定されている。ベースプレート30の下方には、梁状の鋼製アンカービーム32が配置されている。アンカービーム32は、アンカーボルト12が挿入されるボルト孔33を備えており、アンカーボルト12によって固定されることによりベースプレート30に連結されている。
【0015】
橋梁上部工4は、例えば、箱型断面の主桁部41と、主桁部41から横方向に張り出すブラケット部42とを備えるものを用いることができ、図示しないボルトや溶接などによって橋脚の上端部に固定されている。
【0016】
次に、橋梁の施工方法について説明する。図5は、橋梁の施工方法の手順を示す工程図である。まず、固定用PCウェル20bを用いて、内周面に固定部10を有するPCウェル基礎2を複数構築する基礎構築工程(ステップS1)を行う。具体的には、各PCウェル基礎2を設置する地盤にそれぞれ複数の普通PCウェル20a及び固定用PCウェル20bを順次圧入することにより、軸方向に沿って積層し、各PCウェル基礎2を構築する。固定用PCウェル20bは、普通PCウェル20aの上に設置される。各PCウェル20a、20bの圧入は、例えば、地中に埋設したグランドアンカーを反力として、所定深度まで押圧する方法により行うことができる。また、PCウェル基礎2の内部に図示しない底盤コンクリートを打設し、底盤コンクリートの上に中詰土砂70を充填する。
【0017】
次に、固定部10に橋脚3を取り付けることにより、各PCウェル基礎2にそれぞれ橋脚3を仮固定する仮固定工程(ステップS2)を行う。具体的には、まず、アンカービーム32をPCウェル基礎2の内部に挿入し、固定部10の下方に配置する。アンカービーム32の配置は、クレーンで吊り上げることにより行うことができる。次に、この状態で、橋脚3の基部をPCウェル基礎2の内部に挿入し、固定用PCウェル20bの固定部10上にベースプレート30を設置する。橋脚3の設置は、例えば橋脚3をクレーンで吊り上げることにより行うことができる。そして、ボルト孔11、31、33にアンカーボルト12を挿入することにより、アンカービーム32とベースプレート30とを連結すると共に、ベースプレート30を固定部10取り付ける。これにより、橋脚3がPCウェル基礎2に仮固定される。橋脚3がPCウェル基礎2に仮固定されているときは、橋脚3を移動させて設置位置を調整してもよい。
【0018】
続いて、各橋脚3間に橋梁上部工4を架設する架設工程(ステップS3)を行う。具体的には、予め組み立てられた橋梁上部工4を一括で架設することにより各橋脚3間に架設する。また、橋梁上部工4は、現場で組み立てられることにより架設されてもよい。また、橋梁上部工4をジャッキアップすることにより橋脚3上に設置してもよい。
【0019】
また、架設工程(ステップS3)と同時に、又は、それより後に各PCウェル基礎2の内部に頭部コンクリート80を打設して養生することにより各橋脚3を各PCウェル基礎2に本固定する本固定工程(ステップS4)を行う。具体的には、PCウェル基礎2内部の中詰土砂70の上に頭部コンクリート80を充填して硬化させる。これにより、ベースプレート30及びアンカービーム32が頭部コンクリート80により固定され、橋脚3がPCウェル基礎2に完全に固定される。こうして、橋梁1が構築される。
【0020】
本実施形態に係る橋梁の施工方法によれば、内周面に固定部10を有するPCウェル基礎2を複数構築する基礎構築工程(S1)と、固定部10に橋脚3を取り付けることにより各PCウェル基礎2にそれぞれ橋脚3を仮固定する仮固定工程(S2)と、各橋脚3間に橋梁上部工4を架設する架設工程(S3)と、各PCウェル基礎2の内部に頭部コンクリート80を打設して養生することにより各橋脚3を各PCウェル基礎2に本固定する本固定工程(S4)とを備え、架設工程(S3)が本固定工程(S4)より前、又は、同時に行われるので、頭部コンクリート80が硬化するのを待つことなく橋梁上部工4を架設することができ、橋梁1の建設を進めることができるため、施工期間を短縮することができる。
【0021】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0022】
例えば、本実施形態では、固定部10は、固定用PCウェル20bの内周面に設けられた突起状の鉄筋コンクリートであったが、橋脚3のベースプレートを固定することができればその構成は特に限定されず、図6に示すように、固定用PCウェル20bの上端部に取り付けられた鋼板であってもよい。
【0023】
また、本実施形態では、固定用PCウェル20bはPCウェル基礎2の最上部に配置されていたが、橋脚3を固定できれば、その設置位置は特に限定されず、固定用PCウェル20bの上に普通PCウェル20aが配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る橋梁の施工方法により構築された橋梁の側面図である。
【図2】(a)図1のA−A断面図、及び(b)この断面図におけるB−B断面図である。
【図3】固定用PCウェルの要部を示す断面図である。
【図4】固定用PCウェルの要部を示す断面図である。
【図5】橋梁の施工方法の手順を示す工程図である。
【図6】他の実施形態に係る固定用PCウェルの要部を示す断面図である。
【図7】従来の橋梁の施工方法により構築された橋梁の側面図である。
【図8】従来のPCウェル基礎の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 橋梁
2 PCウェル基礎
3 橋脚
4 橋梁上部工
10 固定部
11 ボルト孔
12 アンカーボルト
20a 普通PCウェル
20b 固定用PCウェル
30 ベースプレート
50 鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のPCウェル本体と、
前記PCウェル本体から内方に突出し、橋脚を取り付け可能な固定部とを備えるPCウェル。
【請求項2】
請求項1に記載のPCウェルを用いて、内周面に前記固定部を有する筒状のPCウェル基礎を複数構築する基礎構築工程と、
前記固定部に橋脚を取り付けることにより前記各PCウェル基礎にそれぞれ前記橋脚を仮固定する仮固定工程と、
前記各橋脚間に橋梁上部工を架設する架設工程と、
前記各PCウェル基礎の内部にコンクリートを打設して養生することにより前記各橋脚を前記各PCウェル基礎に本固定する本固定工程とを備え、
前記架設工程は、前記本固定工程より前、又は、同時に行われることを特徴とする橋梁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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