説明

PCB含有電気機器の選別分離方法

【課題】同一の複数段の破砕装置を利用し、同一の比重差選別機を使用して、その運転条件を切りかえることにより、混合物部材破砕時の銅と紙との選別、有機物部材破砕時の銅と木材との選別を効果的にできる分離方法を提供する。
【解決手段】PCB含有電気機器を解体して無機物と有機物とを含む混合物部材と、有機物のみを含む有機物部材とに分別する工程、混合物部材および有機物部材のそれぞれを交互に同一の複数段の破砕機で所望の大きさの破砕片に破砕する破砕工程、それぞれの破砕工程で得られたそれぞれの破砕片を同一の比重差選別機で交互に選別し、無機物と有機物とに分離する分離工程を備えることを特徴とするPCB含有電気機器の選別分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
PCB含有電気機器の解体分離方法に関する。より詳しくは、トランスのコア(鉄芯およびコイル、その付属物)、特にコイルを構成する銅線と銅線に巻かれている絶縁紙およびトランスを構成する木材やプレスボードを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCBはその優れた化学的安定性、高耐熱性、電気絶縁性などの特性を有していることから、電気機器のトランス、コンデンサの絶縁油、蛍光灯の安定器あるいは熱媒体等に多量に使用されてきた。PCBはポリ塩化ビフェニル化合物の総称であり、その分子内に保有する塩素の数やその位置の違いにより、理論的に209種の異性体が存在し、中でも、コプラナーPCBと呼ばれるPCBの毒性は極めて強く、ダイオキシン類として総称されるものの一つとされている。そして、PCBの人体への有害性が明らかになり、1974年までに製造、輸入、開放系用途での使用が禁止された。また、1992年には廃PCB、PCBを含む廃油およびPCB汚染物が廃棄物処理法に基づき、特別管理産業廃棄物に指定され、トランスをはじめ、PCB含有機器類やPCB含有廃油の相当量が事業所等で保管されてきている。
【0003】
さらに、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(2001年7月15日施行)により、PCB、PCBを含む廃油などを15年以内(2016年7月まで)に処理することが義務化された。
PCBの処理は、保有者自ら又は環境事業団若しくは廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づく許可を受けたポリ塩化ビフェニルに係る特別管理産業廃棄物処分業者に委託して、適正にポリ塩化ビフェニルを処分しなければならないとされ、現在各所で処理設備が建設され処分が始まっているところである。
【0004】
PCB油の無害化処理には、PCB含有機器を処理してPCB油を取出す工程が必要となる。このPCB含有機器の処理に伴って発生する金属類をリサイクルして有効に資源を活用する方法が多々考えられている。これら機器類は金属類のような無機物の他に、木や紙などの有機物が組み合わされて構成されており、無機物には一般にPCBがその表面に付着し存在する程度であるが、有機物にはPCBがその内部まで浸透していることが多く、含有されるPCB量が多い傾向にある。このようなPCB量の違いにより、PCBを一定の基準値以下に洗浄するのに要する時間は、無機物と有機物では当然異なる。
【0005】
例えば、トランスのコイルのように、無機物である銅線に絶縁物として有機物の紙が巻いてある場合は、紙に含まれるPCBを基準値以下にするための洗浄処理時間が長くかかる。そこで、PCB含有量の多い有機物を速く基準値以下のPCB量に洗浄するために、PCBを含有している有機物を細かく破砕して、表面積を多くして洗浄を効率的に行なう方法が多くとられている。
有機物と無機物とでは、効率的に汚染度を基準値以下にするために必要とされる、洗浄時の破砕片の大きさが異なる。ところが、これまで実施されていたのは、有機物の洗浄に必要な大きさに有機物と共に無機物も同時に破砕、洗浄し、その後有機物と無機物とに選別する方法であった。
【0006】
このようなトランスの無機物(銅)と有機物(木材、紙など)を分離する方法として次のような技術が開示されている。
特許文献1ではトランスを解体してコアを取出し、コアを解体して鉄心と銅コイルに分別し、銅コイルを破砕機により細かく破砕し、得られた破砕片を振動ふるいにかけると共に下方から送風することでコイルを構成する紙・木片を飛ばし、紙・木と銅線を風力分離し、風力分離された紙・木片はサイクロンで微粒子と分離され、スラリー化して水熱分解する方法が開示されている。また、特許文献1では、予めPCB油が抜き取られ、洗浄されたトランスを破砕し、風力分離したダストはフィルターで分離して排気することが開示されている。
【0007】
特許文献2では、得られる破片の寸法が異なる3台の切断機を用意して、変圧器用コイルを段階的に、より細かい破片へと切断することによって、コイル導体を構成していた導体材料の破片とコイル導体を被覆していた絶縁紙の破片とを容易に分離可能な状態にする。次いでそれぞれ得られた破片を全て分別処理槽内の液体中に供給して、導体材料と絶縁紙の比重の差により、導体材料の破片を沈め、絶縁紙の破片を浮遊させた状態にして、導体材料と絶縁紙とを分別する方法が開示されている。プレスボード(絶縁板)等の木材の処分については記載がない。
【特許文献1】特開2002−248455号公報
【特許文献2】特開2001−15347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような方法によってトランスに使用されていたコイル(銅と紙)および木材を同時に細かく切断すると、コイルの切断によって発生する熱により、木材の表面からPCBが煙となって蒸発するのが観察され、PCBの環境への飛散や、更に温度が上昇した場合ダイオキシン類が生成する恐れがある。また、無機物が必要以上に破砕されてしまい、選別が複雑となり、時間がかかるという問題も生じる。
コイルと大きな木材(プレスボード等)は解体後の分別が容易であるので、破砕前に分別でき別々に破砕を行うことができるが、別々の破砕装置で処理すると、多数の破砕設備が必要となる欠点がある。また、同一の装置でコイルと木材を交互に破砕した場合、破砕終了時に全ての破砕片を装置外に排出することができず、選別後に非含浸性物(無機物)中への含浸性物(有機物)の混入を防ぐことができない。すなわち、コイルと木材を同一装置で交互に破砕し、混合された破砕物を選別機で選別を行った場合、コイル破砕時の銅と紙の選別用の選別機を使用すると、木材破砕時の銅と木材の選別がうまく行えなかった。それは、破砕された木材が均一でないこと、および銅の混入割合が少ないことで、本来重量側に銅を、軽量側に木材を選別する目的であるのに対して、重量側に銅と木材の粒状物が選別されて、含浸性物と非含浸性物の選別ができなかった。
本発明は、同一の複数段の破砕装置を利用し、同一の比重差選別機を使用して、その運転条件を切りかえることにより、破砕設備の統合と混合物部材破砕時の銅と紙との選別、有機物部材破砕時の銅と木材との選別を効果的にできるような選別分離方法を提供することを目的とするものである。また、選別機の後段に破砕工程をさらに設け、含浸性物のみを更に破砕し、洗浄効率を上げることを目的とするものである。
なお、本発明では、鉄、銅などの金属類および碍子などの磁器類であって有害物質であるPCBが表面に付着するだけのものを非含浸性物といい、紙(絶縁紙)、木、樹脂、繊維などであって有害物質が内部まで浸透するものを含浸性物という。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、混合物部材および有機物部材を共に同程度で、ほぼ均一の大きさに破砕するのが良いことを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至ったものである。
すなわち本発明は、
(1)PCB含有電気機器を解体し、破砕して、構成する無機物と有機物とに分離する方法であって、該電気機器を解体して無機物と有機物とを含む混合物部材と、有機物のみを含む有機物部材とに分別する工程、混合物部材および有機物部材のそれぞれを交互に同一の複数段の破砕機で所望の大きさの破砕片に破砕する破砕工程、それぞれの破砕工程で得られたそれぞれの破砕片を同一の比重差選別機で交互に選別し、無機物と有機物とに分離する分離工程を備えることを特徴とするPCB含有電気機器の選別分離方法、
(2)前記分離工程では、混合物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別は選別機への送風と揺動で行い、有機物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別は選別機への送風量をより多くして行うことを特徴とする(1)に記載のPCB含有電気機器の選別分離方法、
(3)前記の混合物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別時の送風量が、デッキ1m当り70〜90m3/分であり、有機物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別時の送風量が、デッキ1m当り90〜120m3/分であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のPCB含有電気機器の選別分離方法、
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の選別分離方法において、分離後の有機物をさらに破砕機で破砕する工程を備えることを特徴とするPCB含有電気機器の選別分離方法、および、
(5)前記PCB含有電気機器がトランスであり、無機物と有機物とを含む混合物部材がコイルであり、有機物のみを含む有機物部材が木材、プレスボードを含むものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のPCB含有電気機器の選別分離方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
混合物部材の破砕と有機物部材の破砕を同一の装置で、また、銅と紙等との分離および銅と木材等との分離を同一の装置で行うので、装置の数が少なくて済み、低コストで無害化することができ、電気機器を構成していた有機物および無機物を適切に洗浄でき、リサイクル資源化することができる。
全工程を自動運転で無人化することができ、破砕工程や分離工程の区域を隔離することで作業者の安全性を高めることができる。
また、分離工程は分離用の液体を使用せずに分離を行うことができるものであり、処理液の浄化の必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のPCB含有電気機器の選別分離方法を添付する図を参照して、その構成を詳細に説明する。
本発明の処理対象とするPCB含有電気機器には、柱上トランス、高圧又は低圧トランス、高圧又は低圧コンデンサ等があるが、ここではそれらを代表して高圧トランスの処理について記載する。
高圧トランスは、容器、金属部品(ボルト・ナット等を含む)、耐雷素子、碍子、コイル、鉄芯、電線、紙、木・パッキン・プレスボードなど様々な部品から構成されている。
まず、高圧トランスから予めPCB油を抜き取り、洗浄(一次洗浄)、乾燥を行ない、容器、金属部品、耐雷素子、碍子、電線、トランスコア、並びに木・プレスボード・パッキン等に解体する。碍子はその中心を通る電線が樹脂で固定されているので、これを除去し碍子部品と電線に分別解体する。また、トランスコアは、切断してコイル部分と鉄芯にまで解体されていることが好ましい。コイル部分あるいはコイル部分の近くには、絶縁のための木やプレスボードが含まれており、コイルを構成する銅線にも絶縁紙が巻かれている。
本発明では、木、プレスボード、絶縁板(以下、合わせて木材と言う)、絶縁紙等の有害物質が部材内部まで浸透するものを有機物部材(含浸性部材)として分類し、また、コイルを構成する銅、鉄芯などの金属、碍子などの磁器類等であって有害物質が部材表面に付着するだけのものを無機物部材(非含浸性部材)として分類する。
【0012】
上記解体した部品のうち、容器、金属部品、耐雷素子、碍子等は解体時に分別されており、また非含浸性のもので、洗浄が容易であるので、さらに選別分離する必要はない。
したがって、本発明で選別分離の対象とする部品は、トランスコイル、電線、木材等が好ましい。解体し、分別処理された無機物と有機物とを含む混合物部材であるコイル部分および電線を破砕機で破砕し、砕片化すると同時に絶縁被覆、紙テープ等を剥離するが、絶縁被覆は剥離しにくいため段階的に複数の破砕機を組み合わせて行う。主に木材である有機物のみを含む有機物部材も同様に段階的に複数の破砕機を組み合わせて砕片化する。
【0013】
先ず、混合物部材の破砕、分離工程について記載する。混合物部材は一次洗浄装置(図示してない)で洗浄と乾燥を行い、破砕の際に被処理物がバラけ易く、破砕機のスクリーンを通過し易くして、破砕が容易にできるようにする。そして、図1に示すように、洗浄バスケット7に収容された混合物部材は、破砕機投入バスケット傾転装置8から1次破砕機1に投入される。
1次破砕機1および低速の2次破砕機2で一次破砕、二次破砕して、得られた破砕片を磁選機6に通して鉄分を回収し、三次破砕以降の分別で重比重側に分別される銅の回収を容易にするとともに、三次破砕時に鉄分を含まないため破砕が容易にできる。この三次破砕は、高速の3次破砕機3により行うが、この高速破砕機ではスクリーン径を6〜8mmとするのが好ましい。
得られたコイル、電線の破砕片は選別機投入コンベア9を経由して、投入フィーダ5aから比重差選別機5に投入されて無機物である銅(重量物)と有機物である紙等(軽量物)を選別、分離する。また同じ破砕片に含まれる木材もここで同時に軽量物として選別、分離される。
【0014】
比重差選別して得られた主に銅を含む無機物はバスケット10に収容し、選別室コンベア11によりシャッタ12で遮られた洗浄室(図示せず)に送られ、二次洗浄工程に進み、洗浄されて再資源化される。
一方、比重差選別して得られた径6〜8mmの有機物である含浸性部材の紙や木はさらに4次破砕機4で四次破砕されて、径3mm以下となり、素子破砕物用のサイクロン13aを経由してコンベア14aから洗浄用バレル15に集められ洗浄工程(図示せず)に進み、洗浄されてPCBを基準値以下にした後、別工程に送られる。
この四次破砕のときに、別工程で裁断後洗浄処理されていたコンデンサ等の素子の有機物をバスケット16、バスケット傾転装置17から併せて、4次破砕機4に投入することができる。このように四次破砕工程に素子の破砕工程を統合することで、装置の効率的な使用を可能とすることができる。
【0015】
次に、解体処理、洗浄(図示していない)の終わった有機物のみを含む有機物部材として、木材などの被処理物が先のバッチと同様に、破砕機投入バスケット傾転装置8から1次破砕機1に投入され、前記と同様1次、2次破砕機、磁選機、3次破砕機で破砕され比重差選別機5に送られる。
この時、先のバッチの被処理物である混合物部材の破砕片(銅と紙等、特に銅)がライン上や各破砕機に残存しており、これらが木材の破砕物と共に比重差選別機5に送られることとなり、比重差選別機デッキ上には木材と共に銅、紙が混在し、これらを無機物のみの銅(重量物)と有機物のみの紙、木材等(軽量物)に選別、分離する。
得られた無機物は、先に記載したと同様に洗浄室に送られ、また、有機物も先と同様に四次破砕された後、洗浄工程に送られる。
【0016】
上記の混合物部材の破砕工程、分離工程と有機物部材の破砕工程、分離工程とを自動化した手段で交互に行うが、破砕工程は、両バッチともほぼ同様の条件で行い、分離工程は後記するように違う条件で行う。
【0017】
破砕機について述べると、本発明の1次破砕機1は特に限定するものではないが、2軸式のロータリーカッタを備えたものを使用するのが好ましく、1軸式ローラーカッタでは破砕が困難なブロック状のものや硬いものでも容易に破砕することができる。。一次破砕では処理対象物であるコイル、電線又は木材をおよそ40mm程度の大きさ、電線は長さ1m以下に破砕するのが好ましい。この破砕片の大きさは特定されるものではなく、二次破砕によって得たい破砕片の大きさに処理できる程度の破砕片にすればよい。
【0018】
2次および3次破砕機は1軸のロータリカッタを備え、そして、そのロータリカッタ下方にはスクリーンを備えているものを使用するのが好ましい。このスクリーンを通過しない破砕片は、ロータリカッタですくいあげられ、繰り返し破砕され、このようにして二次および三次破砕で、破砕片が確実に所望の大きさでほぼ均一に破砕されようにすることが好ましい。スクリーンは、ロータリカッタの刃で破損しない強度を持った多孔板を使用するのが好ましく、三次段の高速破砕機ではスクリーン径を7〜8mmとするのが好ましい。
スクリーンの目の大きさは、二次破砕機のスクリーンを通過してくる破砕片の大きさが30mm程度、三次破砕機のスクリーンを通過してくる破砕片の大きさが7mm程度、四次破砕機のスクリーンを通過してくる破砕片の大きさが3mm程度になるように適宜製作されたものである。
【0019】
破砕についてはロータリカッタだけではなく、その他の破砕装置を用いても良い。ただし、湿式破砕は次工程に送る前に乾燥する工程が必要となり、また、用役・機器・工程の増加となるので避けるのが好ましい。
【0020】
二次破砕と三次破砕の間に磁選工程を設け、硬質物質である鉄材質の成分を除去するのが後続する破砕機にとって好ましい。磁選機は特殊なものでなく、実施形態にあった仕様のもの、例えば、マグネットロール等を適宜使用することができる。
各破砕工程や磁選工程での破砕等に伴うダスト対策として、各工程特に、3次破砕機3及び磁選機6、磁選機振動フィーダ6aをフードで覆い、ファン19a、サイクロン13bでダストを捕集し、ダストの拡散を防止し、大径のダストは4次破砕機4に送り更に破砕する。
【0021】
比重差選別機についても特殊なものでなく、実施形態にあった仕様のものを適宜使用することができる。その好ましい比重差選別機の一例を、選別機構の概略と構造の概略とで図2に示す。
比重差選別機5は、集塵フード20に囲まれ、被選別処理物投入口21、重量物排出口22、軽量物排出口23、網通過物排出口24、集塵機への排気口25を有し、細径穴パンチングメタルのスクリーンを階段状に加工したデッキ(波網)26、可動機構27およびブロア28から基本的に成り、この傾斜するデッキ26を楕円揺動させることによって、被選別物(破砕片)中の重比重のものに昇段力を付与しながら、軽比重のものと分離する。デッキ下側からブロア28で送風することにより特に軽比重のものとの分離は更にしやすくなる。
本発明においては、デッキは山ピッチ13〜16mm、目開き0.7〜1.0mmφ、特に0.8mmφが好ましく、基本傾斜角度11度で、11〜15°の範囲で角度調整ができる比重差選別機が好ましく、その稼動は振動30Hz〜65Hz、振幅10mm以下(偏心3〜5mm)で楕円揺動し、送風量はデッキ1m当り70〜120m3/分程度までのものが好ましい。
【0022】
被処理物が混合物部材の破砕片の場合には、被選別処理物が主に紙と銅および前バッチで残存する木材から成るものであり、被処理物が有機物部材の場合には、被選別処理物が主に木材と前バッチで残存する銅から成るものであるから、選別機への送風量は異なるものである。
前者の場合、被処理量が1000kg/h程度のとき、送風量はデッキ1m当り70〜90m3/分であり、振幅5〜10mm、振動数30〜60Hzの揺動で行うのが好ましく、これにより、銅を重量物排出口側へ、紙と木材を軽量物排出口側へと分離することができる。送風量が小さくなり過ぎると重量物排出口側への排出量が大きくなり、木材の一部を銅と同じ重量排出口側へ導くこととなるし、送風量が大きいと軽量物側の排出量が増え、軽量側へ排出される銅が増える。
後者の木材と銅との分離の場合には、被処理量が上記と同程度の場合、送風量は前バッチよりデッキ1m当り30%程度多くするのが好ましく、振幅、振動数は前バッチと同等で行うのが好ましい。送風量が多い場合特に不都合はないが、銅が木材に混入しやすく、少ないと重量排出口側へ木材が排出される。
送風するには、いろいろの手段を労する必要がないので空気が一番好ましいが、防爆や処理工程の要求によっては窒素等の不活性ガスなど所望のガスを使用することができる。
【0023】
本発明の比重差選別機の重量物排出口22および網通過物排出口24から得られる無機物である主として銅からなる粒体は、下方に設置されたバスケット10に収容され、先に述べたようにPCB油を基準値以下まで除去する目的でさらに洗浄工程に付される。
【0024】
軽量物排出口23から得られる有機物である主として紙および木材からなる破砕片部分は、別途解体工程から得られたコンデンサ等の素子と共に4次破砕機4である3mmのスクリーンを有する高速破砕機で更に破砕処理を施す。また、比重差選別機の排気口25から吸引した紙やダストなどは、選別機のサイクロン13cで微粒子を分離した後、3次破砕機3や磁選機振動フィーダ6a等からファン19a、サイクロン13bで吸引分離した紙と共に、同時にこの4次破砕機4で破砕処理するのが好ましい。なお、選別機のサイクロン13cで分離した微粒子は集塵機18bで更に分離し、粒子はコンベア14bから洗浄用バレル15に収容し、気体流は排気処理工程(図示せず)に送る。
四次破砕処理で3mm程度以下に破砕された含浸性物である有機物破砕片は、素子破砕用のサイクロン13aで分離処理し、洗浄バレルに収容し洗浄工程に送るが、銅などの被含浸性物を含まず、より細いものであるので、より適切な洗浄ができる。
【0025】
各機器類の間はベルトコンベアなどの移送手段で処理物が移送される。機器類をつなぐ移送手段としては、破砕片をそのままベルトコンベア、バケットコンベアによって移送する方法、破砕片を箱などの容器に一旦入れて、ベルトコンベアやローラーコンベア、AGV(Automatic Guided Vehicle)などで運搬する方法など、種々の方法を使用することができる。
【0026】
コンベアを使用する場合、破砕片が飛散しないようにコンベアに覆いをつける、コンベアを密閉する、密閉したうえ負圧にするなどの措置をすることが、作業環境の点から好ましい。破砕が進むにつれて破砕片が細かくなるので飛散しやすく、含浸していたPCBや洗浄液が作業環境中に放出される可能性があるので、このような措置をとることが好ましい。破砕機や磁選機、選別機についても、作業環境中に破砕片や破砕物からの放出成分を放出しないように、密閉したり負圧にするなどの手段を適宜行うことがより好ましい。
吸引した微細粒子は、サイクロンで分離し、集塵機18a、18bを通して分離した気体流は排気処理設備(図示せず)に送り無害化するのが好ましい。
【0027】
また、移送手段の途中や各機器に、破砕片などの処理物を一時貯留する設備(ホッパーやビンなど)を備えることもできる。本発明に使用する機器類は、使用環境にあわせて防爆や処理対象物によって劣化しにくい材質を使用する等の各種仕様を満足していることはいうまでもない。
以上述べた各工程は、すべて自動運転で無人化することができ、破砕工程や分離工程を含む区域を解体工程や洗浄工程と隔離することで作業者の安全性をより高めることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づき図面を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
保管されていたPCB含有高圧トランスに穴を空け、PCB油を抜き取り、洗浄、乾燥をした後、解体してトランスコア、木材(プレスボード、絶縁板)を得、トランスコアは更に切断・解体して、鉄心部分を除き無機物と有機物を含むコイル部分を得た。得られたコイル部分(混合物部材)および木材(有機物部材)は、それぞれ専用の搬送容器(例えば、バスケット)に収納した。
【0029】
(混合物部材処理工程)
先ず、図1に示すように、バスケット7に詰めたコイル部分を投入コンベアからバスケット傾転装置8により、1次破砕機1である2軸式破砕機に投入し、大きさ40mm程度、長さ1m以下に破砕し、次いで投入コンベアにより2次破砕機2である低速破砕機へ投入し、30mm程度に破砕する。粗破砕されたコイルを磁選機振動フィーダ6aから磁選機6に送り、含まれる鉄成分材料を除去し、次いで3次破砕機3である径7mmのスクリーンを有する高速破砕機で破砕した。
なお、磁選フィーダ6aおよび3次破砕機3の投入部にはファン19aをつなぎ、細い紙片は紙吸引装置用のサイクロン13bに送り、そこから後述する4次破砕機4に導入した。
【0030】
三次破砕後のコイル破砕片(7mm程度以下の大きさ)を選別機投入コンベア9を経由して定量投入フィーダ5aから17kg/分で比重差選別機5に送った。
比重差選別機5で、送られてきた主として銅、紙、前バッチで一部残留していた木材を含む破砕片を次の条件で選別した。
使用した比重差選別機は、山ピッチ15mm、目開き0.8mmφのデッキを有し、傾斜角度を11度に、振動数50Hz、振幅を10mm(偏心5mm)に設定して操業した。また、この選別機にデッキ1m当り80m3/分の風量で空気を送って選別したところ、銅を重量物排出口に、そして紙その他を軽量物排出口に分離することができた。重量物排出口では、紙、木材の含有は0.1%以下(重量)であった。軽量物中には、銅はほとんど無かった(なお、軽量物中に銅が少々混入しても洗浄には特に問題は生じない)。
【0031】
(有機物部材の処理工程)
次に、別のバスケット7に詰めた木材をコイル部分と同様に投入コンベアからバスケット傾転装置8により、1次破砕機1である2軸式破砕機に投入し、40mm程度に破砕し、次いで投入コンベアにより2次破砕機2である低速破砕機へ投入し、30mm程度に破砕した。粗破砕された木材片を磁選機振動フィーダ6aから磁選機6に送り、含まれる磁性成分材料を除去し、次いで3次破砕機3である径7mmのスクリーンを有する高速破砕機で破砕した。
【0032】
三次破砕後の木材破砕片は4〜7mmのものが大部分を占め、ほぼ均一な大きさであり、これを選別機投入コンベア9を経由して定量投入フィーダ5aから14kg/分で比重差選別機5に送った。送られてきた木材破砕片の中には、前のバッチで処理したものの内各破砕機やコンベア上に残存していた比重の大きい銅が混入していた。
比重差選別機5では、送られてきた主として木材と少量の銅等を含む破砕片を空気量をデッキ1m当り30%増やし選別を行い、銅を重量物側にそして木材その他を軽量物側に分離することができた。重量物側に分離した銅粒状体中には異物はほとんど混入していなかった。
【0033】
以上の混合物部材の処理工程および有機物部材の処理工程を交互に繰り返した。
比重差選別機で分離した銅粒状体は洗浄バスケット10に収納し、選別室コンベア11によりシャッタ12で遮られた別室の洗浄室に運び、さらに洗浄した。
【0034】
φ3mmのスクリーンを有する4次破砕機4で、比重差選別により軽量物側に分離した木材、紙等をさらに破砕した。この4次破砕機4には、磁選機6、磁選機振動フィーダ6aや3次破砕機3で吸引分離した紙、比重差選別機の排気口から回収した紙、および別途裁断洗浄処理したコンデンサの素子をバスケット16、バスケット傾転装置17を経て投入し、同時に破砕した。得られた3mm以下の破砕片はサイクロン13aで微粒子を除去して、洗浄用バレル15に収納し洗浄した。分離した微粒子は集塵機18aで更に分離し、粒子はコンベア14bから洗浄用バレル15に収納し洗浄し、気体流は排気処理工程へ付した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の工程を示す図である
【図2】本発明で使用する比重差選別機の一例の構造と選別機構の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 1次破砕機
2 2次破砕機
3 3次破砕機
4 4次破砕機
5 比重差選別機
6 磁選機
21 被選別処理物投入口
22 重量物排出口
23 軽量物排出口
24 網通過物排出口
26 デッキ
27 可動機構
28 ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB含有電気機器を解体し、破砕して、構成する無機物と有機物とに分離する方法であって、該電気機器を解体して無機物と有機物とを含む混合物部材と、有機物のみを含む有機物部材とに分別する工程、混合物部材および有機物部材のそれぞれを交互に複数段の破砕機で所望の大きさの破砕片に破砕する同一の破砕工程、それぞれの破砕工程で得られたそれぞれの破砕片を同一の比重差選別機で交互に選別し、無機物と有機物とに分離する分離工程を備えることを特徴とするPCB含有電気機器の選別分離方法。
【請求項2】
前記分離工程では、混合物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別は選別機への送風と揺動で行い、有機物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別は選別機への送風量をより多くして行うことを特徴とする請求項1に記載のPCB含有電気機器の選別分離方法。
【請求項3】
前記の混合物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別時の送風量が、デッキ1m当り70〜90m3/分であり、有機物部材の破砕工程で得られた破砕片の選別時の送風量が、デッキ1m当り90〜120m3/分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のPCB含有電気機器の選別分離方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の選別分離方法において、分離後の有機物をさらに破砕機で破砕する工程を備えることを特徴とするPCB含有電気機器の選別分離方法。
【請求項5】
前記PCB含有電気機器がトランスであり、無機物と有機物とを含む混合物部材がコイルであり、有機物のみを含む有機物部材が木材、プレスボードを含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のPCB含有電気機器の選別分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−116423(P2006−116423A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306881(P2004−306881)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005913)三井物産株式会社 (37)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)
【Fターム(参考)】