説明

PCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収する方法

【課題】 PCB脱塩素化スラッジに含まれる油分と無機塩類と固形残渣とを容易に分離回収する。
【解決手段】 PCB脱塩素化スラッジ2と水3とを圧力容器1に入れて密封し、容器1内を加熱して容器1内の温度を100℃以上374℃以下の亜臨界水状態にし、その状態を1分間以上20分間以下保持することにより、PCB脱塩素化スラッジ2を亜臨界水処理し、その後、容器1内を冷却するとともに静置する。これにより、PCB脱塩素化スラッジ2と水3との混合物は、容器1内で、油分層6と、非水溶性の固形残渣からなる固形分層7と、無機塩類が溶出した水層8とに分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PCBの脱塩素化分解処理としては、金属ナトリウム分解法(以下、SD法と記載)がある。この方法は、窒素ガス中で金属ナトリウムの分散体(金属ナトリウムの微粒子を10〜40wt%となるように絶縁油に分散させたもの)を用いて脱塩素化するものである(例えば特許文献1参照)。上記のようにPCBをSD法によって脱塩素化処理した後には、含油性廃棄物であるPCB脱塩素化スラッジが残り、このPCB脱塩素化スラッジをリサイクルする場合、PCB脱塩素化スラッジを水と混合して洗浄し、PCB脱塩素化スラッジに含まれる塩素分を除去し、その後、PCB脱塩素化スラッジに含まれる油分を分離し、この油分をリサイクルしている。
【0003】
しかしながら上記の従来形式では、PCB脱塩素化スラッジと水との接触性が悪いため、PCB脱塩素化スラッジを水で洗浄しても、塩素分を十分に除去することができず、PCB脱塩素化スラッジ中に塩素分が残留し、油分を分離する際、残留した塩素分が油分中に混入してしまい、PCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを精度良く分離回収することは難しかった。
【特許文献1】特開2002−97159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、PCB脱塩素化スラッジに含まれる油分と無機塩類と固形残渣とを容易に分離回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本第1発明におけるPCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収する方法は、PCB脱塩素化スラッジに水を混合して密封し、温度を100℃以上374℃以下の亜臨界水状態にし、その状態を1分間以上20分間以下保持することにより、上記PCB脱塩素化スラッジを亜臨界水処理し、PCB脱塩素化スラッジに含まれる油分を抽出するとともに、無機塩類を水相に抽出し、上記油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収するものである。
【0006】
これによると、PCB脱塩素化スラッジから容易に且つ精度良く油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収することができる。
本第2発明におけるPCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収する方法は、PCB脱塩素化スラッジと水との混合物のpHを中性に調整した後、亜臨界水処理を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、PCB脱塩素化スラッジから容易に且つ精度良く油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明における実施の形態を図1に基づいて説明する。
1は圧力容器であり、この圧力容器1内を加熱する加熱装置(図示せず)が設けられている。PCBをSD法により脱塩素化処理して分解・無害化した後の含油性廃棄物であるPCB脱塩素化スラッジ2は、以下のような方法で、油分と無機塩類と固形残渣とに分離され回収される。
【0009】
先ず、図1(a)に示すように、上記PCB脱塩素化スラッジ2に水3を混合して圧力容器1内に入れ、PCB脱塩素化スラッジ2と水3との混合物のpHを中性に調整する。その後、圧力容器1を密封し、圧力容器1内を加熱装置で加熱し、圧力容器1内の加熱温度を100℃以上374℃以下とし且つ圧力を1〜218気圧(0.1〜22.1MPa)に調節して亜臨界水状態にし、その状態を1分間以上20分間以下の保持時間保持することにより、PCB脱塩素化スラッジ2を亜臨界水処理する。これによって、PCB脱塩素化スラッジ2から油分が抽出されるとともに無機塩類が水相に抽出される。
【0010】
上記保持時間経過後、圧力容器1内を自然放冷または急速冷却するとともに静置することによって、PCB脱塩素化スラッジ2と水3との混合物は、圧力容器1内で、図1(b)に示すように、油分層6と、非水溶性の固形残渣(膨脂等)からなる固形分層7と、無機塩類が溶出した水層8とに分離される。これにより、油分と無機塩類と固形残渣とを容易且つ確実に分離回収してリサイクルすることができる。尚、上記膨脂とは、PCBの重合したもの、油の重合したもの、PCBと油の重合したものである。
【0011】
尚、上記加熱温度は、実験によると、100℃〜374℃のうち、約200℃程度が最も望ましい。また、圧力容器1内の圧力は、加熱により水蒸気が発生することで、1〜218気圧に保たれる。
【0012】
また、加熱温度が374℃より上昇したり或いは保持時間が20分間より長くなると、油分層6が加水分解されて減少してしまうため、油分の回収量も減少する。このような油分回収量の減少を防止するために、加熱温度の上限を374℃、保持時間の上限を20分間に設定している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるPCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収する方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0014】
2 PCB脱塩素化スラッジ
3 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB脱塩素化スラッジに水を混合して密封し、温度を100℃以上374℃以下の亜臨界水状態にし、その状態を1分間以上20分間以下保持することにより、上記PCB脱塩素化スラッジを亜臨界水処理し、PCB脱塩素化スラッジに含まれる油分を抽出するとともに、無機塩類を水相に抽出し、上記油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収することを特徴とするPCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収する方法。
【請求項2】
PCB脱塩素化スラッジと水との混合物のpHを中性に調整した後、亜臨界水処理を行うことを特徴とする請求項1記載のPCB脱塩素化スラッジから油分と無機塩類と固形残渣とを分離回収する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−35109(P2006−35109A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219445(P2004−219445)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【出願人】(591090161)株式会社コートク (1)
【出願人】(500315541)
【Fターム(参考)】