説明

PI3KαおよびmTORのピリドピリミジノン阻害剤

本発明は式Iの化合物、


場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能な塩、およびこれらの化合物を作製し、使用する方法に関する。疾患、障害または症候群を治療する方法であって、その方法は、治療上有効な量の本発明の化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩を、さらに場合によっては薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液と共に、患者に投与することで構成される方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明はプロテインキナーゼおよびその阻害剤の分野に関する。特に、本発明はホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)シグナル伝達経路の阻害剤およびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の概要
PI3Kシグナル伝達経路は細胞の増殖、分裂、生存を調節し、ヒト腫瘍中での頻繁な調節不全が確認されている。腫瘍におけるPI3K経路の活性化は、PIK3CA遺伝子(PI3Kaのp110サブユニットをコードする遺伝子)の高頻度の変異および増幅、または脂質ホスファターゼPTENのダウンレギュレーションなど、複数の機序により起きる。PI3Kの下流では、mTORがmTORC1およびmTORC2という2つの個別のシグナル伝達複合体を通じ、細胞の増殖と分裂を制御する。重要な細胞機能に対してPI3Kシグナル伝達経路が果たす役割を考慮すると、PI3KとmTORの両方を標的とする阻害剤は、PIK3CAもしくはRasの活性化変異またはPTENの活性低下を伴う腫瘍、または増殖因子のシグナル伝達でアップレギュレートされる腫瘍に罹患した患者集団に対する医療効果を提供しうると考えられる。
【0003】
ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3Kα)は二重特異プロテインキナーゼであり、85kDaの調節サブユニットと110kDaの触媒サブユニットで構成される。この遺伝子がコードするタンパク質は、触媒サブユニットを発現し、ATPを使い、PtdIns、PtdIns4P、PtdIns(4,5)P2をリン酸化する。PTENは複数の機序を通じて細胞の増殖を阻害する腫瘍サプレッサーであり、PIK3CAの主産物であるPIP3を脱リン酸化する。PIP3はプロテインキナーゼB(AKT1、PKB)の細胞膜への転位置に必要とされ、プロテインキナーゼBは細胞膜で上流のキナーゼによりリン酸化され、活性化される。細胞死に対するPTENの影響は、PIK3CA/AKT1経路により媒介される。
【0004】
PI3Kαは細胞骨格再構成、アポトーシス、小胞輸送、増殖、分化の過程の制御と結びつけられてきた。PIK3CAのコピー数および発現の増加は、卵巣癌(非特許文献1; Levine et al., Clin Cancer Res 2005, 11, 2875−2878; Wang et al., Hum Mutat 2005, 25, 322; Lee et al.,gynecol Oncol 2005, 97, 26−34)、子宮頸癌、乳癌(Bachman, et al. Cancer Biol Ther 2004, 3, 772−775; Levine, et al., 同上; Li et al., Breast Cancer Res Treat 2006, 96, 91−95; Saal et al., Cancer Res 2005, 65, 2554−2559; Samuels and Velculescu, Cell Cycle 2004, 3, 1221−1224)、結腸直腸癌(Samuels, et al. Science 2004, 304, 554; Velho et al. Eur J Cancer 2005, 41, 1649−1654)、子宮内膜癌(Oda et al. Cancer Res. 2005, 65, 10669−10673)、胃癌(Byun et al., Int J Cancer 2003, 104, 318−327; Li et al., 同上; Velho et al., 同上; Lee et al., Oncogene 2005, 24, 1477−1480)、肝細胞癌(Lee et al., id.)、小細胞および非小細胞肺癌(Tang et al., Lung Cancer 2006, 51, 181−191; Massion et al., Am J Respir Crit Care Med 2004, 170, 1088−1094)、甲状腺癌(Wu et al., J Clin Endocrinol Metab 2005, 90, 4688−4693)、急性骨髄性白血病(AML)(Sujobert et al., Blood 1997, 106, 1063−1066)、慢性骨髄性白血病(CML)(Hickey and Cotter J Biol Chem 2006, 281, 2441−2450)、神経膠芽腫(Hartmann et al. Acta Neuropathol(Berl) 2005, 109, 639−642; Samuels et al., 同上)など、数々の悪性腫瘍と関連づけられている。
【0005】
生物学的過程および病状に対してPI3Kαが果たす重要な役割という観点から、このプロテインキナーゼの阻害剤が待望されている。
【0006】
哺乳類におけるラパマイシンの標的であるmTORは、細胞の増殖、分裂、生存の細胞外と細胞内の両方のシグナルを統合するプロテインキナーゼである。細胞表面のレセプターからのシグナルを伝達する細胞外分裂促進増殖因子および低酸素ストレス、エネルギー、栄養状態を伝達する細胞内経路のすべてが、mTORに集合する。mTORは2つの個別の複合体、mTOR複合体1(mTORC1)およびmTOR複合体2(mTORC2)の形で存在する。mTORC1が転写と細胞増殖の重要なメディエーターであり(基質であるp70S6キナーゼおよび4E−BP1を介する)、血清およびグルココルチコイド誘導性キナーゼSGKを介して細胞の生存を促進するのに対し、mTORC2は生存促進性のキナーゼAKTの活性化を促進する。細胞の増殖、分裂、生存における中心的役割という観点から、癌その他の疾患において、mTORシグナル伝達の調節不全が頻繁に確認されるのは当然と言える(Bjornsti and Houghton Rev Cancer 2004, 4(5), 335−48; Houghton and Huang Microbiol Immunol 2004, 279, 339−59; Inoki, Corradetti et al. Natgenet 2005, 37(1), 19−24)。
【0007】
mTORはATM、ATR、DNAPKを誘導する非定型キナーゼであるPIKK(PI3K関連キナーゼ)ファミリーの1種であり、その触媒領域はPI3Kと相同である。PI3Kシグナル伝達の調節不全は、腫瘍細胞で頻繁に観察される作用である。従って、mTORの阻害は一般的に、以下に論じるPI3Kシグナル伝達が関与する腫瘍タイプの多くと取り組むための戦略と考えることができる。
【0008】
乳癌の治療において、PI3Kシグナル伝達の阻害は、抗HER2抗体であるトラスツズマブなどのEGFRファミリー阻害剤の活性にとり不可欠であり(Nagata, Lan et al., Cancer Cell 2004, 6(2), 117−27)、PTENの活性低下はトラスツズマブ耐性と相関性を持つ(Pandolfi N Engl J Med 2004, 351(22), 2337−8; Nahta, Yu et al. Nat Clin Pract Oncol 2006, 3(5), 269−280)。従って、PI3Kシグナル伝達の阻害は、トラスツズマブに応答しないか、または耐性をつけたHER2陽性腫瘍において、特に有効と考えられる。
【0009】
マントル細胞リンパ腫(MCL)は普通、サイクリンDの過剰発現および細胞周期調節不全を特徴とする。サイクリンDの転写は、主にmTORシグナル伝達により媒介され、mTORキナーゼ活性のアロステリック阻害剤であるラパマイシンが、in vitroでMCL細胞株のサイクリンDレベルをダウンレギュレートすることが報告されている(Dal CoL、Zancai et al. Blood 2008, 111(10), 5142−51)。
【0010】
腎細胞癌に関しては、mTORにより促進される低酸素誘導性転写因子(HIF1α)の翻訳、およびその結果として促進される血管内皮増殖因子の発現が、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)タンパク質における機能欠失型変異を持つ腫瘍と、特に関連性を持つことが考えられる。このタンパク質はプロテアソームが媒介するHIFの分解を阻止し、その結果、血管新生促進性の増殖因子の恒常的発現を引き起こす(Thomas, Tran et al. Nat Med 2006, 12(1), 122−7)。このような変異は腎細胞癌で特に多く、この疾患におけるmTOR阻害剤の有望な臨床活性の基礎を成すものと思われる。
【0011】
PI3Kは急性骨髄性白血病(AML)患者から採取した芽細胞で活性化され、この疾患の病態生理学的状態を引き起こすだけでなく、化学療法に対する耐性の原因とも考えられる。AML細胞は常にp110δアイソフォームを発現し、PI3Kδの阻害は、正常造血前駆細胞に影響を与えずに、AML細胞の分裂と生存を阻害する(Sujobert, Bardet et al.Blood 2005, 106(3), 1063−6; Billottet,grandage et al. Oncogene 2006, 25(50), 6648−6659)。一方、PI3K経路の活性化は、新規にAMLと診断された患者における全体的生存率および無再発性生存率の改善と関連することが確認されている(Tamburini, Elie et al. Blood 2007, 110(3), 1025−8)。
【0012】
慢性骨髄性白血病(CML)では、BCR−ABL癌遺伝子が、白血病誘発、細胞増殖、細胞生存を媒介するPI3Kのp85サブユニットを介してシグナルを伝達する(Skorski, Bellacosa et al. Embo J 1997, 16(20), 6151−61)。NPM/ALKにより癌化した未分化大細胞リンパ腫の増殖と生存にも、同様の機序が関与すると考えることができる(Bai, Ouyang et al. Blood 2000, 96(13), 4319−27)。さらに、p110γサブユニットの転写がBCR−ABLによりアップレギュレートされると考えられ、造血細胞で優先的に発現されるPI3Kγが、薬物耐性CMLにおける重要な標的になりうる(Hickey and Cotter Biol Chem 2006, 281(5), 2441−50)。
【0013】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株および腫瘍検体でも、PI3K経路の活性化が示され、PI3Kの阻害により、数種類のDLBCL細胞株でアポトーシスが起きた(Uddin, Hussain et al. Blood 2006, 108(13), 4178−86)。
【0014】
IGF1Rレセプターおよび下流のPI3K−mTOR経路によるシグナル伝達の活性化は、数種類の肉腫サブタイプの発生と進行に関与すると考えられている(Hernando, Charytonowicz et al. Nat Med 2007, 13(6), 748−53; Wan and Helman Oncologist 2007, 12(8), 1007−18)。
【0015】
最も多い小児肉腫の1種である横紋筋肉腫は、インスリン様増殖因子Iレセプターに依存することが報告されており、それはAKTシグナル伝達の上昇により測定できる(Cao, Yu et al. Cancer Res 2008, 68(19), 8039−8048)。これらの癌では、インスリン様増殖因子IIが過剰発現しており、横紋筋肉腫の異種移植片でmTORC1阻害剤のラパマイシンの抗腫瘍効果を評価した結果、ラパマイシンが移植片の増殖を阻害することが報告された。
【0016】
卵巣癌でのPIK3CAの増幅はPI3Kαがヒト癌遺伝子として作用することを最初に示した徴候の1つであった(Shayesteh, Lu et al. Natgenet, 1999, 21(1), 99−102)。PI3Kの増幅とPTENの活性低下の両方が、卵巣癌におけるシスプラチンに対する耐性と関連することが知られている(Lee, Choi et al.gynecol Oncol 2005, 97(1) 26−34)。
【0017】
子宮内膜腫瘍では、PTENの活性低下、およびPI3Kの変異または増幅の両方が高頻度で認められ、子宮内膜癌のサブタイプである類内膜癌の最高80%で、PTENの変異が見つかっている。子宮内膜腫瘍では、LKB1およびTSC2腫瘍抑制因子(またはそのいずれか)のダウンレギュレーションにより促進されるmTORの活性化が頻繁に観察されるため、PI3K軸とmTOR軸の両方を二重に阻害することが、特に効果的な戦略になりうる(Lu, Wu et al. Clin Cancer Res 2008, 14(9), 2543−50)。
【0018】
PI3Kシグナル伝達は、多数の肺腫瘍において重要な役割を果たすと考えられる。最近の研究では、非小細胞肺癌(NSCLC)検体の41%でAKTの過剰発現を認め、46%でPTENの活性低下を認めた(Tang、He et al. Lung Cancer 2006, 51(2), 181−91)。別の最近の分析では、NSCLC腫瘍の74%で、PTENの発現の減少または消失が確認された(Marsit, Zheng et al. Hum Pathol 2005, 36(7), 768−76)。PIK3CAの増幅も、小細胞(67%)、扁平上皮(70%)、大細胞(38%)、腺癌(19%)などの様々な肺癌サブタイプにおいて、高頻度で確認されている(Massion, Taflan et al. Am J Respir Crit Care Med 2004, 170(10), 1088−94)。注目すべき点として、EGFR阻害剤のゲフィチニブに対する耐性は、AKTシグナル伝達のダウンレギュレーション不全およびPTENの活性低下と相関し(Kokubo,gemma et al. Br J Cancer 2005, 92(9), 1711−9)、KRASの状態も、EGFR阻害剤に対する応答を決定する上で重要な役割を果たすものと考えられる。
【0019】
PI3Kは結腸直腸腫瘍の13〜32%で変異しており、特にマイクロサテライト不安定性を示すものを始めとする結腸直腸腫瘍では、PTENの活性低下が頻繁に観察される(GoeL、Arnold et al. Cancer Res 2004, 64(9), 3014−21; Nassif, Lobo et al. Oncogene 2004, 23(2), 617−28)。さらに、結腸直腸腫瘍の癌遺伝子の中で最も変異が多いのが、KRAS(PI3Kシグナル伝達のアップレギュレーションも起こす)である(Bos Cancer Res 1989. 49(17), 4682−9; Fearon Ann N Y Acad Sci 1995, 768, 101−10)。PI3K経路の調節不全は、抗EGFR抗体のセツキシマブに対する応答低下とも関連し、化学療法に対する応答の補強にも利用しうる(Perrone, Lampis et al. Ann Oncol 2009, 20(1), 84−90)。
【0020】
胃癌の36%でPTEN発現レベルが異常に低いことが確認され、それと同等の割合の腫瘍で、PIK3CAのゲノム増幅が確認されている(Byun, Cho et al. Int J Cancer 2003, 104(3), 318−27)。
【0021】
肝細胞腫瘍でPI3K活性化変異の頻度が高いことが報告された(Lee, Soung et al. Oncogene 2005, 24(8), 1477−80)。さらに、肝腫瘍の最高40%でPTENタンパク質レベルが低下しており、病理学的グレードおよび疾患進行との間で逆相関関係を示す(Hu, Huang et al. Cancer 2003, 97(8), 1929−40; Wan, Jiang et al. Cancer Res Clin Oncol 2003, 129(2), 100−6)。
【0022】
原発性メラノーマの18〜19%およびメラノーマ細胞株の29〜38%で、PTENタンパク質発現の低下が起き、それは腫瘍の厚さの増加と関連する(Guldberg、thor Straten et al. Cancer Res 1997, 57(17), 3660−3; Tsao, Zhang et al. Cancer Res 2000, 60(7), 1800−4; Whiteman, Zhou et al. Int J Cancer2002, 99(1), 63−7;goeL、Lazar et al. J Invest Dermatol 126(1), 2006, 154−60)。
【0023】
膵腫瘍では、きわめて高頻度のKRAS変異が認められ、それが下流でのPI3K経路の活性化を誘導する。さらに、膵癌細胞株および腫瘍検体では、PTEN機能の低下、およびその結果として、NFκBの活性化とMYCの安定化が報告されている(Asano, Yao et al. Oncogene 2004, 23(53), 8571−80)。
【0024】
前立腺癌の特徴として、PTEN機能の低下が頻繁に観察されるため、PI3K阻害剤はこの疾患で特に有効と考えられる(Majumder and Sellers Oncogene 2005, 24(50) 7465−74)。最近のデータでは、腫瘍幹細胞様の細胞群の拡大において、PTENの活性低下が根本的な役割を果たす可能性が示唆されている(Wang、Garcia et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2006, 103(5), 1480−5)。アンドロゲンレセプター(AR)とPI3K経路によるシグナル伝達の間には、広範なクロストークがあり、PI3K/AKTまたはmTORの阻害は、前立腺癌のアンドロゲン依存性と非依存性の両方の臨床前モデルで、有望であると報告されている(Lu, Ren et al. Int J Oncol 2006, 28(1), 245−51; Mulholland, Dedhar et al. Oncogene 25(3), 2006, 329−37; Xin, Teitell et al. Proc Natl Acad Sci U S A 12006, 03(20), 7789−94; Mikhailova, Wang et al. Adv Exp Med Biol 2008, 617, 397−405; Wang、Mikhailova et al. Oncogene 2008, 27(56), 7106−7117)。
【0025】
甲状腺癌、特に未分化癌サブタイプで、PI3Kの頻繁な変異が確認されている(Garcia−Rostan, Costa et al. Cancer Res 2005, 65(22), 10199−207)。別の研究では、PI3K変異が甲状腺癌で比較的少ないと報告されたが、濾胞性甲状腺癌では、PI3Kの増幅が高頻度で観察された(Wu, Mambo et al. J Clin Endocrinol Metab 2005, 90(8), 4688−93)。
【0026】
未分化大細胞リンパ腫(ALCL)患者では、ヌクレオフォスミン遺伝子とALKキナーゼ遺伝子の融合により、活性型ALKキナーゼが発現される。融合により生じるNPM−ALKタンパク質は、ALCL発生と因果関係を持ち、mTORシグナル伝達の上昇を起こす。
【0027】
過誤腫、血管筋脂肪腫、結節性硬化症(TSC)に伴うリンパ脈管筋腫症、孤発性リンパ脈管筋腫症:カウデン病(多発性過誤腫症候群)の主な原因は、PTENの遺伝性機能喪失である。この場合、主に皮膚と甲状腺で過誤腫性新生物が発生する。結節性硬化症患者では、TSC1またはTSC2のいずれかの変異が原因で、肺、脳、腎臓、皮膚、心臓で、良性の過誤腫が発生する。これらの患者のかなりの割合で、血管筋脂肪腫も発生する(Bissler, McCormack et al. N Engl J Med 2008, 358(2), 140−151)。多数の女性TSC患者で、平滑筋細胞が肺に浸潤した結果、進行性の肺疾患であるリンパ脈管筋腫症が発生する(Bissler, et al. id.)。これらの腫瘍は良性であるが、これらの腫瘍および浸潤細胞の増殖により、重度の合併症を発症する場合がある。
【0028】
珍しい肺腫瘍である硬化性血管腫の患者を対象として実施した最近の研究で、患者の84%においてSTK11/LKB1の発現が低下し、mTORのリン酸化およびシグナル伝達が上昇していることが判明した(Randa M. S. Amin Pathology International 2008, 58(1), 38−44)。常染色体優性遺伝疾患であるポイツ・イェガース症候群(PJS)の原因は、LKB1/STK1の生殖細胞系列変異である。
【0029】
頭部癌および頸部癌の主な治療法は外科手術と放射線治療(またはそのいずれか)である。PI3K/mTOR経路のアップレギュレーションにより、放射線耐性が生じることを示す証拠がある。患者におけるAKTリン酸化測定値の低下が、癌の局所制御の改善と相関づけられている。
【0030】
以上の腫瘍タイプに加え、mTORは特に他の疾患とも関連づけられている。例えば、神経線維腫症の治療法に関し、ラパマイシンの臨床試験が行われている。神経線維腫症において、神経線維腫症1型遺伝子の変異により、mTOR経路の活性化が起きる。さらに、ラパマイシンについては、黄斑変性症、黄斑浮腫、骨髄性白血病に関する臨床試験も実施中である。さらに、全身性エリテマトーデスおよび自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)の患者でも、ラパマイシンの臨床試験を実施中である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Campbell et al., Cancer Res 2004, 64, 7678−7681
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0032】
発明の概要
以下の概要は、本発明の特定局面のみの概要であり、これらに限定されない。これらの局面および他の局面ならびに実施形態については、その詳細を後述する。本明細書に引用するすべての参考文献は、その全体を参照により本明細書の一部とする。本明細書の明示的な開示と参照により一部とした参考文献との間に齟齬がある場合は、本明細書の明示的な開示が優先する。
【0033】
本発明は、PI3KおよびmTORを阻害し、かつ制御し、かつ調節し、またはそのいずれかを行い、ヒトにおける癌などの過剰増殖性疾患の治療に役立つ化合物を提供する。本発明は、その化合物を作製する方法、およびヒトにおける過剰増殖性疾患の治療にその化合物を使用する方法を提供し、さらに、その化合物を含む医薬組成物を対象とする。
【0034】
本発明の第1の局面では、式Iの化合物を提供し、
【0035】
【化1】

【0036】
これは場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩である。この式において、
はテトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニル
は水素またはアルキル
は−NR4aを表し、
およびR4aは、水素とアルキルから、それぞれ独立に選択される。
【0037】
第2の局面で、本発明は医薬組成物を対象とし、それは式Iの化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩、および担体、賦形剤または希釈液で構成される。
【0038】
第3の局面で、本発明は疾患、障害または症候群を治療する方法を提供し、それは治療上有効な量の式Iの化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩を、患者に投与するか、または、治療上有効な量の式Iの化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩、および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液で構成される医薬組成物を、患者に投与することで構成される。
【0039】
第4の局面で、本発明は式Iの化合物を調製する方法を提供し、その方法の構成を以下に示す。
(a) 式9の中間体
【0040】
【化2】

【0041】
(RとRは、発明の概要における式Iの化合物に関する定義に従う)を、式RNHの中間体(Rは、発明の概要における式Iの化合物に関する定義に従う)と反応させ、式Iの化合物を得る。または、
(b) 式7の中間体
【0042】
【化3】

【0043】
(Rは、発明の概要における式Iの化合物に関する定義に従う)を、式8の中間体と反応させ
【0044】
【化4】

【0045】
(Rは、発明の概要における式Iの化合物に関する定義に従う)、式I(f)の化合物を得る。および、
【0046】
【化5】

【0047】
(c) 場合によってはRをアルキル化する(Rは−NHまたは−NHR4a、R4aはアルキル)。および、
(d) 場合によっては個々の異性体をさらに分解する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
略語および定義
以下の略語および用語は、本明細書の全体を通じ、本欄に示す意味を持つ。
【0049】
【数1】

【0050】
「−」という記号は単結合、「=」は二重結合、
【0051】
【化6】

【0052】
は三重結合、
【0053】
【化7】

【0054】
は単結合または二重結合を意味する。
【0055】
【化8】

【0056】
という記号は、二重結合上の基が、記号がつけられた二重結合の末端のいずれかの位置を占めることを意味する。すなわち、二重結合がEとZのどちらの幾何異性体であるかは指定しない。基を親の式から切り離して表記する場合、基を親の構造式から切り離すために、理論上切断された結合の末端に
【0057】
【化9】

【0058】
という記号を使う。
【0059】
化学構造を表記または説明する場合、別段の記載がない限り、すべての炭素は4価の水素置換基を持つものと仮定する。例えば、下図の左側の構造では、9個の水素があることを暗に示している。9個の水素を表示すると右図のようになる。例えば−CHCH−のように、構造中の特定の原子を文字式で表し、置換基としての水素(明示的に定義された水素)があることを示す場合がある。複雑な構造を簡潔かつ単純に記述するために、化学分野では上記の記述技法が一般的であることは、当業者により理解されている。
【0060】
【化10】

【0061】
本発明の化合物に言及して用いる「投与」およびその関連語(例えば化合物を「投与する」)は、化合物または化合物のプロドラッグを、治療を必要とする動物の体組織に導入することを意味する。本発明の化合物またはそのプロドラッグが、一以上の他の能動的作用因子(例えば外科手術、放射線照射、化学療法など)と併用される場合、「投与」およびその関連語の各々が、化合物またはそのプロドラッグ、および他の作用因子の同時および順次の導入を含むものと理解される。
【0062】
「アルキル」は、1個から6個の炭素原子から成る1価の直鎖飽和炭化水素遊離基、または3個から6個の炭素原子から成る1価の分枝飽和炭化水素遊離基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル(すべての異性体を含む)、またはペンチル(すべての異性体を含む)および類似物である。
【0063】
「アミノ」は、−NHを意味する。
【0064】
「キナーゼ依存性の疾患または症状」は、一以上のプロテインキナーゼの活性に依存する病的状態を意味する。キナーゼは、分裂、接着、遊走、分化、浸潤などの多様な細胞活動のシグナル伝達経路に、直接的または間接的に関与する。キナーゼ活性と関連する疾患としては、腫瘍増殖、固形腫瘍増殖を促進する病的血管新生があり、眼球疾患(糖尿病性網膜症、年齢に関係する黄斑変性症など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)などの過剰な局所血管新生が関与する他の疾患と関連する。
【0065】
理論に縛られることは望まないが、ホスファターゼは「キナーゼ依存性の疾患または症状」において、キナーゼの同族としての役割を果たす可能性がある。すなわち、例えばタンパク質基質を、キナーゼはリン酸化し、ホスファターゼは脱リン酸化する。従って、本発明の化合物は、本明細書で説明するように、キナーゼ活性を調節する一方、ホスファターゼ活性も、直接的または間接的に調節することが考えられる。この追加の調節が存在するとすれば、関連するか、またはそれ以外に相互依存する、キナーゼまたはキナーゼファミリーに対する本発明の化合物の活性に対し、相乗的に働く(または相乗的ではない)可能性がある。いずれにせよ、前述のように、本発明の化合物は、異常なレベルの細胞分裂(すなわち腫瘍増殖)、プログラム細胞死(アポトーシス)、細胞の遊走および浸潤、および腫瘍増殖に関連する血管新生で部分的に特徴づけられる疾患の治療に有効である。
【0066】
「代謝物」は、動物またはヒトの体内での代謝または生体内分解により生じる化合物またはその塩の分解または最終産物を意味する。例えば、酸化、還元、加水分解などによる比較的極性の強い分子への生物分解、または共役物質への生物分解などである(生物分解に関する詳細な解説は、Goodman andgilman, ”The Pharmacological Basis of Therapeutics” 8.sup.th Ed., Pergamon Press,gilman et al.(eds), 1990 を参照のこと)。本明細書で使用する限り、本発明の化合物またはその塩の代謝物は、体内の化合物の生物学的活性を持つ一形態を意味する場合がある。その一例は、生物学的活性を持つ形態の代謝物がin vivoで放出されるようにするためのプロドラッグの使用である。別の例としては、生物学的活性のある代謝物が偶然に発見されることもある。この場合、プロドラッグのデザイン自体は行っていない。本明細書を考慮すると、本発明の化合物からの代謝物の活性を測定する測定法は、当業者の間で知られている。
【0067】
本発明の目的に関し、「患者」はヒトおよび他の動物、特に哺乳類、および他の生物を含む。従って、本方法はヒトの治療と動物用途の両方に適用可能である。好ましい実施形態では、患者は哺乳類であり、最も好ましい実施形態では、患者はヒトである。
【0068】
化合物の「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容され、かつ、親化合物の望ましい薬理活性を有する塩を意味する。薬学的に許容可能な塩は無毒性であるものと理解される。適切な薬学的に許容可能な塩に関する追加情報としては、参照により本明細書の一部とするRemington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985、または、参照により本明細書の一部とするS. M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 1977;66:1−19を参照のこと。
【0069】
薬学的に許容可能な酸追加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸ならびに類似物の無機酸を追加して形成される塩、および、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、酪酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、p−トルエンスルホン酸、ならびに類似物の有機酸を追加して形成される塩がある。
【0070】
薬学的に許容可能な塩基追加塩の例としては、親化合物に存在する酸性プロトンが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムならびに類似物の金属に置換された塩がある。好ましい塩はアンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩である。薬学的に許容可能な有機無毒塩基に由来する塩としては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、サイクリックアミン、塩基性イオン交換樹脂の塩を含み、ただし、それらに限定しない。有機塩基の例としては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ポリアミン樹脂ならびに類似物がある。代表的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、カフェインである。
【0071】
「プロドラッグ」は、in vivoで、例えば血中での加水分解などにより分解され(通常は急速に)、上記式の親化合物を産生する化合物を意味する。よくある例としては、化合物のエステルおよびアミドであって、カルボン酸鎖を含む活性型を有するものを含み、ただし、それらに限定しない。本発明の化合物の薬学的に許容可能なエステルの例としては、アルキルエステル(例えば、約1個から約6個の炭素原子を持つ)があるが、ただし、それらに限定せず、アルキル基は直鎖または分枝を有する。許容されるエステルとしては、シクロアルキルエステルおよびアリルアルキルエステルも含まれ、ベンジルを含むが、それに限定しない。本発明の化合物の薬学的に許容可能なアミドの例としては、一級アミド、および二級アルキルアミドならびに三級アルキルアミド(例えば、約1個から約6個の炭素原子を持つ)があり、ただし、それらに限定しない。本発明の化合物のアミドおよびエステルは、従来法に従い調製することができる。プロドラッグに関する詳細な解説については、T. Higuchi and V. Stella, “Pro−drugs as Novel Delivery Systems,” Vol 14 of the A.C.S. Symposium SeriesおよびBioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987を参照のこと。どちらも、すべての目的に関し、参照により本明細書の一部とする。
【0072】
「立体異性体」は、二以上の異性体であって、同様に相互に結合された同一の原子を含むが、ただし、原子間または原子の基の間で空間配置が異なるものを意味する。「立体異性体」には、例えばエナンチオマー、幾何異性体、ジアステレオマー、回転異性体、シス異性体、トランス異性体、配座異性体などがある。
【0073】
「テトラヒドロフラニル」には、テトラヒドロフラン−2−イルならびにテトラヒドロフラン−3−イル、およびその任意の立体異性体ならびに立体異性体の混合を含む。
【0074】
「テトラヒドロピラニル」には、テトラヒドロピラン−2−イル、テトラヒドロピラン−3−イル、ならびにテトラヒドロピラン−4−イル、およびそれらの立体異性体ならびに立体異性体の混合を含む。
【0075】
「治療上有効な量」は、本発明の化合物の量であって、患者に投与したときに疾患の症状を軽減する量である。「治療上有効な量」に相当する本発明の化合物の量は、化合物、疾患の状態および重症度、治療する患者の年齢などにより変動する。治療上有効な量は、当業者がその知識および本明細書本文に照らし、普通に行う方法により、決定することができる。
【0076】
疾患、障害または症候群を「治療すること」またはそれらの「治療」は、本明細書で用いる限り、以下を含む。(i)ヒトにおける疾患、障害または症候群の発症を防ぐこと。すなわち、疾患、障害または症候群に曝露するか、または素因を持つ可能性はあるが、疾患、障害または症候群の症状をまだ経験していないか、または示していない動物において、疾患、障害または症候群の臨床症状の発現を防ぐこと。(ii)疾患、障害または症候群を阻害すること。すなわち、その発現を抑止すること。(iii)疾患、障害または症候群を軽減すること。すなわち、疾患、障害または症候群の退縮を引き起こすこと。当業者の間で知られるように、全身性と局所性の投与の比較、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与時期、薬物の相互作用、重症度に関して補正が必要な場合があり、それらは当業者の間で普通に行われる方法による通常の実験で確認できる。
【0077】
本明細書で説明する各反応の「収率」は、理論上の収率に対する比率(百分率値)で表現する。
【0078】
発明の実施形態
以下の項では、本発明の化合物に関する数例の実施形態を提示する。各例において、実施形態には前述の化合物、およびその単一の立体異性体または立体異性体の混合、およびその薬学的に許容可能な塩の両方を含む。
【0079】
本発明の別の実施形態では、式Iの化合物を対象とし、Rは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0080】
本発明の別の実施形態では、式Iの化合物を対象とし、Rはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態では、式Iの化合物において、Rがメチルまたはエチルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0081】
本発明の別の実施形態では、式Iの化合物を対象とし、RおよびR4aは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0082】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物を対象とし、Rは水素、R4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0083】
別の実施形態では、式Iの化合物において、Rはメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0084】
別の実施形態では、式Iの化合物において、Rはメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0085】
本発明の別の実施形態では、式Iの化合物を対象とし、RおよびR4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0086】
別の実施形態では、式Iの化合物において、Rはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノのいずれかであり、であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0087】
別の実施形態では、式Iの化合物において、Rはジメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0088】
本発明の別の実施形態では、式Iの化合物を対象とし、R、RおよびR4aは水素であり、Rは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0089】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物を対象とし、Rは水素、RおよびR4aはアルキルであり、Rは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0090】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物を対象とし、Rは水素、RおよびR4aはメチルであり、Rは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0091】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物を対象とし、RおよびRは水素、R4aはアルキルであり、Rは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0092】
本発明の一実施形態(A1)では、式Iの化合物においてRはテトラヒドロフラン−2−イルまたはテトラヒドロフラン−3−イルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態では、式Iの化合物においてRはテトラヒドロフラン−2−イルまたはテトラヒドロフラン−3−イル、Rは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態では、式Iの化合物においてRはテトラヒドロフラン−2−イルまたはテトラヒドロフラン−3−イル、Rはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0093】
本発明の別の実施形態(A2)では、式Iの化合物においてRはテトラヒドロフラン−3−イルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0094】
本発明の別の実施形態(B1)では、式Iの化合物は式Iaに従い、
【0095】
【化11】

【0096】
およびRは、発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0097】
本発明の別の実施形態(B2)は、式Iaの化合物を対象とし、Rは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0098】
本発明の別の実施形態(B3)は、式Iaの化合物を対象とし、Rはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態で、式Iaの化合物におけるRはメチルまたはエチルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0099】
本発明の別の実施形態(B4)は、式Iaの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0100】
本発明の別の実施形態(B5)は、式Iaの化合物を対象とし、Rは−NR4a、Rは水素、R4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0101】
別の実施形態(B6)では、式Iaの化合物において、Rはメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0102】
別の実施形態(B7)では、式Iaの化合物において、Rはメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0103】
本発明の別の実施形態(B8)は、式Iaの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0104】
別の実施形態(B9)では、式Iaの化合物において、Rはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0105】
別の実施形態(B10)では、式Iaの化合物において、Rはジメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0106】
本発明の別の実施形態(B11)では、式Iaの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aは水素である。
【0107】
本発明の別の実施形態(B12)では、式Iaの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはアルキルである。
【0108】
本発明の別の実施形態(B13)では、式Iaの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはメチルである。
【0109】
本発明の別の実施形態(B14)では、式Iaの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはアルキルである。
【0110】
本発明の別の実施形態(B15)では、式Iaの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはメチルである。
【0111】
本発明の別の実施様態(C1)では、式Iの化合物は式Ibに従い、
【0112】
【化12】

【0113】
およびRは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0114】
本発明の別の実施形態(C2)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0115】
本発明の別の実施形態(C3)は、式Ibの化合物を対象とし、Rはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態で、式Ibの化合物におけるRはメチルまたはエチルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0116】
本発明の別の実施形態(C4)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0117】
本発明の別の実施形態(C5)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは−NR4a、Rは水素、R4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0118】
別の実施形態(C6)では、式Ibの化合物において、Rはメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0119】
別の実施形態(C7)では、式Ibの化合物において、Rはメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0120】
本発明の別の実施形態(C8)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0121】
別の実施形態(C9)では、式Ibの化合物において、Rはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0122】
別の実施形態(C10)では、式Ibの化合物において、Rはジメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0123】
本発明の別の実施形態(C11)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aは水素である。
【0124】
本発明の別の実施形態(C12)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはアルキルである。
【0125】
本発明の別の実施形態(C13)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはメチルである。
【0126】
本発明の別の実施形態(C14)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはアルキルである。
【0127】
本発明の別の実施形態(C15)は、式Ibの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはメチルである。
【0128】
本発明の別の実施形態(D1)では、式Iの化合物において、Rはテトラヒドロピラン−2−イル、テトラヒドロピラン−3−イル、テトラヒドロピラン−4−イルのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0129】
本発明の別の実施形態(D2)では、式Iの化合物において、Rはテトラヒドロピラン−3−イルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0130】
本発明の別の実施形態(E1)では、式Iの化合物は式Icに従い、
【0131】
【化13】

【0132】
およびRは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0133】
本発明の別の実施形態(E2)は、式Icの化合物を対象とし、Rは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0134】
本発明の別の実施形態(E3)は、式Icの化合物を対象とし、Rはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態で、式Icの化合物におけるRはメチルまたはエチルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0135】
本発明の別の実施形態(E4)は、式Icの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0136】
本発明の別の実施形態(E5)は、式Icの化合物を対象とし、Rは−NR4a、Rは水素、R4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0137】
別の実施形態(E6)では、式Icの化合物において、Rはメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0138】
別の実施形態(E7)では、式Icの化合物において、Rはメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0139】
本発明の別の実施形態(E8)は、式Icの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0140】
別の実施形態(E9)では、式Icの化合物において、Rはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0141】
別の実施形態(E10)では、式Icの化合物において、Rはジメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0142】
本発明の別の実施形態(E11)は、式Icの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aは水素である。
【0143】
本発明の別の実施形態(E12)は、式Icの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはアルキルである。
【0144】
本発明の別の実施形態(E13)は、式Icの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはメチルである。
【0145】
本発明の別の実施形態(E14)は、式Icの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはアルキルである。
【0146】
本発明の別の実施形態(E15)は、式Icの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはメチルである。
【0147】
本発明の別の実施形態(F1)では、式Iの化合物は式Idに従い、
【0148】
【化14】

【0149】
およびRは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0150】
本発明の別の実施形態(F2)は、式Idの化合物を対象とし、Rは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0151】
本発明の別の実施形態(F3)は、式Idの化合物を対象とし、Rはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態で、式Idの化合物におけるRはメチルまたはエチルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0152】
本発明の別の実施形態(F4)は、式Idの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0153】
本発明の別の実施形態(F5)は、式Idの化合物を対象とし、Rは−NR4a、Rは水素、R4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0154】
別の実施形態(F6)では、式Idの化合物において、Rはメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0155】
別の実施形態(F7)では、式Idの化合物において、Rはメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0156】
本発明の別の実施形態(F8)は、式Idの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0157】
別の実施形態(F9)では、式Idの化合物において、Rはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0158】
別の実施形態(F10)では、式Idの化合物において、Rはジメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0159】
本発明の別の実施形態(F11)は、式Idの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aは水素である。
【0160】
本発明の別の実施形態(F12)は、式Idの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはアルキルである。
【0161】
本発明の別の実施形態(F13)は、式Idの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはメチルである。
【0162】
本発明の別の実施形態(F14)は、式Idの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはアルキルである。
【0163】
本発明の別の実施形態(F15)は、式Idの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはメチルである。
【0164】
本発明の別の実施形態(G1)では、式Iの化合物は式Ieに従い、
【0165】
【化15】

【0166】
およびRは発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0167】
本発明の別の実施形態(G2)では、式Iの化合物は式Ieに従い、Rは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0168】
本発明の別の実施形態(G3)では、式Iの化合物は式Ieに従い、Rはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。別の実施形態で、式Ieの化合物におけるRはメチルまたはエチルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0169】
本発明の別の実施形態(G4)は、式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aは水素であり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0170】
本発明の別の実施形態(F5)は、式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは−NR4a、Rは水素、R4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0171】
別の実施形態(G6)は、式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rはメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0172】
別の実施形態(G7)は、式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rはメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0173】
本発明の別の実施形態(G8)は、式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは−NR4a、RおよびR4aはアルキルであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0174】
別の実施形態(G9)は、式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノのいずれかであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0175】
別の実施形態(G10)は、式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rはジメチルアミノであり、他のすべての基は発明の概要における式Iの化合物の定義に従う。
【0176】
別の実施形態(G11)は、本発明は式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aは水素である。
【0177】
別の実施形態(G12)は、本発明は式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはアルキルである。
【0178】
別の実施形態(G13)は、本発明は式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、RおよびR4aはメチルである。
【0179】
別の実施形態(G14)は、本発明は式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、Rは水素、R4aはアルキルである。
【0180】
別の実施形態(G15)は、本発明は式Ieに従う式Iの化合物を対象とし、Rは水素、Rは−NR4aであり、R水素、R4aはメチルである。
【0181】
本発明の別の実施形態(K)は、式Iの化合物で構成され、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩、および担体、賦形剤または希釈液で構成される医薬組成物を対象とする。別の実施形態では、式Iの化合物は上記の実施形態のいずれかに従う。
【0182】
下記の中で任意の実施形態を、上記の中で任意の実施形態と共に実施することができる。そのような実施形態の組み合わせはすべて、本発明の範囲内である。
【0183】
本発明の別の実施形態(H)は、PI3KαおよびmTOR、またはそのいずれかにより直接的または間接的に影響を受け、制御されず、異常であり、かつ望ましくない細胞活性、またはそのいずれかである細胞活性と関連する疾患において、疾患、障害または症候群を治療する方法であって、その方法は、治療上有効な量の式Iの化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩、またはその医薬組成物を、それを必要とするヒトに投与することで構成される。別の実施形態では、式Iの化合物は式Iaに従う。別の実施形態では、式Iの化合物は式Ibに従う。別の実施形態では、式Iの化合物は式Icに従う。別の実施形態では、式Iの化合物は式Idに従う。別の実施形態では、式Iの化合物は式Ieに従う。別の実施形態では、式Iの化合物は表2から選択される。
【0184】
本発明の別の実施形態(J)は、疾患、障害または症候群を治療する方法を対象とし、その方法は、治療上有効な量の式Iの化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩を患者に投与するか、または、治療上有効な量の式Iの化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩、および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液で構成される医薬組成物を患者に投与することで構成される。実施形態(J)の別の実施形態(J1)では、疾患は癌である。実施形態(J1)の別の実施形態(J2)では、癌は乳癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、胃癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、メラノーマ、卵巣癌、子宮頸癌、膵癌、前立腺癌、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、甲状腺癌のいずれかである。実施形態(J2)の別の実施形態(J3)では、癌は卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、神経膠芽腫のいずれかである。実施形態(J)、(J1)、(J2)、(J3)のいずれかの別の実施形態(J4)では、式Iの化合物は式Iaに従う。実施形態(J)、(J1)、(J2)、(J3)のいずれかの別の実施形態(J5)では、式Iの化合物は式Ibに従う。実施形態(J)、(J1)、(J2)、(J3)のいずれかの別の実施形態(J6)では、式Iの化合物は式Icに従う。実施形態(J)、(J1)、(J2)、(J3)のいずれかの別の実施形態(J7)では、式Iの化合物は式Idに従う。実施形態(J)、(J1)、(J2)、(J3)のいずれかの別の実施形態(J8)では、式Iの化合物は式Ieに従う。実施形態(J)、(J1)、(J2)、(J3)のいずれかの別の実施形態(J9)では、式Iの化合物は表2から選択される。
【0185】
表1の化合物は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)、国際生化学・分子生物学連合(IUBMB)、Chemical Abstracts Service(CAS)により合意された命名法を体系的に応用して命名した。命名はACD/Labs命名ソフトウェアのリリース8.00、製品バージョンを使い行った。
【0186】
【表1−1】

【0187】
【表1−2】

【0188】
【表2】

【0189】
【表3】

【0190】
表2および3の化合物は、生化学的測定(生物学的実施例1および2を参照)、PI3Kシグナル伝達が活性化されている細胞内での測定(生物学的実施例3を参照)、細胞増殖測定(生物学的実施例4を参照)において、PI3KとmTOR両方の非常に強力な阻害剤である。非常に強力であることに加え、表2の化合物は、表3の化合物とは対照的に、マウスミクロソーム酸化測定法で予想外の結果を示した(生物学的実施例5を参照)。この測定法における活性は、代謝の不安定さを示す指標であり、この測定法は化合物による創薬可能性を決定するためのツールとして使われる。この測定法で示される代謝の率が高いほど、化合物が肝臓のミクロソームで分解される率が高く、動物またはヒトに投与したとき、化合物が大幅に代謝される危険性が高い。表2に記載した本発明の化合物は、表3の化合物と比較し、マウス肝ミクロソームによる代謝に関するマイナス要因が存在しないか、または顕著に低いことを実証した。
【0191】
一般的な投与方法
一局面で、本発明は本発明に従う化合物および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液で構成される医薬組成物を提供する。他の特定の実施形態で、投与は経口で行われる。本発明の化合物または薬学的に許容可能なその塩の純粋な形態または適切な医薬組成物は、同等の有用性を提供するために許容される任意の投与方法または薬剤を通じて投与することができる。従って、例えば経口、経鼻、非経口(静脈内、筋肉内、皮下のいずれか)、局所的、経皮、膣内、膀胱内、脳槽内、直腸内のいずれかの経路を通じ、固体、半固体、凍結乾燥粉末、液体のいずれかの投与形態で、例えば錠剤、坐薬、丸剤、ソフトエラスティックカプセルおよびハードゼラチンカプセル、散剤、溶液、懸濁液、エアロゾルならびに類似物により、特に、正確な量を簡単に投与するために適した単位投与形態で投与することができる。
【0192】
医薬組成物は、従来の薬剤担体または賦形剤、および唯一の作用薬または複数の作用薬の一つとして本発明の化合物を含み、それらに加え、担体、アジュバントなどを追加してもよい。
【0193】
アジュバントには、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、調味剤、芳香剤、乳化剤、調剤用薬剤が含まれる。微生物の作用を防止するために、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸ならびに類似物などの各種抗菌剤および抗真菌剤を使うことができる。例えば糖類や塩化ナトリウムならびに類似物などの等張剤も望ましい。例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を使用することにより、注射用薬剤形態の長時間での吸収が可能である。
【0194】
それが望ましい場合、本発明の医薬組成物には、例えばクエン酸、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエンなど、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤、抗酸化剤ならびに類似物などの少量の補助剤を含めてもよい。
【0195】
剤形の選択は、薬剤投与方法(例えば経口投与のためには、錠剤、丸剤、カプセルのいずれかの形態の剤形)および薬剤物質のバイオアベイラビリティに依存する。最近、表面積を拡大することにより、すなわち、粒子サイズを縮小することにより、バイオアベイラビリティを改善できるという原理に基づき、バイオアベイラビリティが低い薬剤用の特別な剤形が開発されている。例えば、U.S. Pat. No. 4,107,288では、粒子サイズの範囲が10〜1,000nmで、架橋した高分子マトリックスで活性物質を支える構造の剤形を記載している。U.S. Pat. No. 5,145,684では、表面改質剤の存在下で薬剤物質をナノ粒子(平均粒子サイズ400nm)に微粉砕した後、液体媒体中に分散させることにより、著しく高いバイオアベイラビリティを示す剤形を記載している。
【0196】
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容される無菌の水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液、乳濁液のいずれか、および、無菌の注射用溶液または分散液に再構成できる無菌の散剤で構成することができる。適切な水溶性および非水溶性の担体、希釈液、溶媒、媒体の例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールならびに類似物)、それらの適切な混合、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0197】
一つの特定の投与経路は経口であり、便利な毎日服用する方法で投与し、投与法は治療する疾患状態の重症度に従い調製できる。
【0198】
経口投与のための固体の投与形態は、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、粒子を含む。そのような固体の投与形態では、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなど、最低一の普通に使われる不活性の賦形剤(または担体)、または(a)例えばデンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、ケイ酸などの充填剤または増量剤、もしくは(b)例えばセルロース誘導体、デンプン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、アラビアガムなどの結合剤、もしくは(c)例えばグリセロールなどの保水剤、もしくは(d)例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカ由来のデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、もしくは(e)例えばパラフィンなどの溶解遅延剤、もしくは(f)例えば四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、もしくは(g)例えばセチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウムならびに類似物などの湿潤剤、もしくは(h)例えばカオリンやベントナイトなどの吸収剤、もしくは(i)例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合などの潤滑剤と活性化合物を混合する。カプセル、錠剤、丸剤の場合、投与形態に緩衝剤を含めてもよい。
【0199】
上記の固体の投与形態は、腸溶コーティングなど、当業者の間で知られるコーティングおよびシェルと共に調製することができる。それらに鎮静剤を含めてもよく、単一の活性化合物または複数の活性化合物を、腸管内の特定部分で、遅らせて放出するような組成物にすることもできる。使用可能な包埋組成物の例は、重合体物質およびワックスである。適切であれば、活性化合物は上記賦形剤の一以上と共にマイクロカプセル化することもできる。
【0200】
経口投与用の液体の投与形態としては、薬学的に許容可能な乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル剤がある。そのような投与形態は、例えば本発明の化合物または薬学的に許容可能なその塩、および場合によっては医薬用アジュバントを、例えば水、生理食塩水、水溶性デキストロース、グリセロール、エタノールならびに類似物などの担体、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアルデヒドなどの可溶化剤および乳化剤、特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油などの油類、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合、ならびに類似物に溶解するか、分散させるか、その他の方法で、溶液または懸濁液を形成することにより調製する。
【0201】
懸濁液には、活性化合物に加え、例えばイソステアリルアルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカント、およびこれらの物質の混合、ならびに類似物などの懸濁剤を含めてもよい。
【0202】
直腸投与用の組成物は、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスなど、常温では固体であるが、体温では液体であり、適当な体腔内で溶け、そこで活性化合物を放出するような、適切な非刺激性の賦形剤または担体を、本発明の化合物と混合することにより調製する坐剤などである。
【0203】
本発明の化合物を局所的に投与するための投与形態は、軟膏剤、粉剤、噴霧剤、吸入剤を含む。活性化合物は無菌状態で、生理的に許容される担体、および必要に応じ、保存剤、緩衝剤または噴霧剤と混合される。点眼剤、眼軟膏剤、粉剤、液剤も、本発明の範囲内である。
【0204】
本発明の化合物をエアロゾル形態で分散させるために、圧縮ガスを使用してもよい。この目的に適した不活性気体は、窒素、二酸化炭素などである。
【0205】
一般に、意図する投与方法に従い、薬学的に許容可能な組成物は、本発明の化合物または薬学的に許容可能なその塩を重量濃度で約1%から約99%、および適切な医薬賦形剤を重量濃度で99%から1%含む。一例では、組成物は本発明の化合物または薬学的に許容可能なその塩を重量濃度で約5%から約75%含み、適切な医薬賦形剤が残りを占める。
【0206】
そのような投与形態を調製するための実際の方法は、当業者の間で知られているか、または明白である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.,(Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990) を参照のこと。投与される組成物は、いかなる場合も、本発明の教示に従い、疾患状態の治療のために、治療上有効な量の本発明の化合物または薬学的に許容可能なその塩を含むものとする。
【0207】
本発明の化合物または薬学的に許容可能なその塩または溶媒和化合物は、治療上有効な量で投与され、その量は、投与される特定化合物の活性、その化合物の作用の代謝安定性および持続時間、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与の方法および回数、排出の速度、薬剤の組み合わせ、特定疾患状態の重症度、治療を受ける生体により、変動する。本発明の化合物は、1日約0.1mg〜約1,000mgの範囲の用量で、患者に投与することができる。体重約70キログラムの正常な成人の場合、一例として、1日に体重1キログラムあたり約0.01mgから約100mgの範囲で投与できる。ただし、使用する特定の投与量は変動する。例えば、患者の必要条件、治療する症状の重症度、使用する化合物の薬理活性などの要因により、投与量が変動する。特定患者に関する最適な投与量の決定方法は、当業者の間で知られている。
【0208】
一定用量として配合する場合、そのような配合製品では、上記範囲内の投与量の本発明の化合物、および承認された用量範囲内の他の薬学的活性薬剤を採用する。配合製剤が不適切な場合、それに代わり、本発明の化合物を既知の薬学的に許容可能な薬剤と逐次的に使用してもよい。
【0209】
式Iの化合物を含む代表的な医薬製剤を、以下の医薬組成物の例に記載する。
【0210】
一般的な合成方法
本発明の化合物は、以下に記載する合成手順により作製できる。これらの化合物の調製に使用する開始材料および試薬は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee, Wis.) またはBachem(Torrance, Calif.) などの業者から入手するか、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1−17(John Wiley and Sons, 1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1−5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers, 1989)、Organic Reactions, Volumes 1−40(John Wiley and Sons, 1991)、March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons, 4th Edition)、およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc., 1989)などの参考文献に明記された手順に従い、当業者の間で知られる方法により調製する。これらの反応図式は、本発明の化合物を合成できる数例の方法を単に例示するものであり、これらの反応図式には種々の修正を加えることが可能であり、本明細書本文を参考として修正するよう当業者に提案する。開始材料および反応中間体は、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーならびに類似の方法を含み、ただしそれらに限定しない従来法を使い、必要に応じ、単離し、精製することができる。物理定数および分光分析データなどの従来法を使い、それらの材料の特徴を決定してもよい。
【0211】
別に指定しない限り、ここに記載する反応は、大気圧および約−78℃から約150℃の温度範囲、より特定的に約0℃から約125℃の温度範囲、より特定的に例えば約20℃などの室温(または周囲温度)で起きる。別に指定(水素添加の場合のように)しない限り、すべての反応は窒素雰囲気中で実施される。
【0212】
プロドラッグは当業者の間で知られた技法により調製することができる。これらの技法では一般に、化合物中の適切な官能基を修飾する。これら修飾された官能基は、一定の操作またはin vivoで、元の官能基を再生する。本発明の化合物のアミドおよびエステルは、従来法に従い調製することができる。プロドラッグに関する詳細な解説については、T. Higuchi and V. Stella, “Pro−drugs as Novel Delivery Systems,” Vol 14 of the A.C.S. Symposium SeriesおよびBioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987を参照のこと。どちらも、すべての目的に関し、参照により本明細書の一部とする。
【0213】
本発明の化合物、または薬学的に許容可能なその塩は、その構造中に、非対称の炭素原子または四級化された窒素原子を含む場合がある。ここに記載する合成方法を通じて調製される式Iの化合物は、単一の立体異性体、ラセミ化合物、エナンチオマーの混合、およびジアステレオマーとして存在する。そのようなすべての単一の立体異性体および混合は、本発明の範囲内と意図される。
【0214】
本発明の化合物の一部は互変異性体として存在する場合がある。例えば、ケトンまたはアルデヒドがある場合、分子はエノール型で存在する。アミドがある場合、分子はイミド酸として存在する。エナミンがある場合、分子はイミンとして存在する。そのようなすべての互変異性体は、本発明の範囲内である。特に、イミダゾール−5−イルはイミダゾール−4−イルの互変異性体、およびピラゾール−5−イルはピラゾール−3−イルの互変異性体として存在することができる。どのような構造または用語法が使われるかにかかわらず、各互変異性体が本発明の範囲内に含まれる。
【0215】
本発明は、式Iの化合物のN−酸化物誘導体および保護誘導体も含む。例えば、式Iの化合物が酸化可能な窒素原子を含む場合、その窒素原子は当業者の間で知られる方法により、N−酸化物に変えることができる。式Iの化合物がヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基などの基、または窒素原子を持つ任意の基を含む場合、これらの基は適切な「保護基」で保護することができる。適切な保護基の包括的リストは、T.W.greene, Protectivegroups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. 1991に掲載され、その掲載内容は全体として、参照により本明細書の一部とする。式Iの化合物の保護誘導体は、当業者の間で知られる方法により調製できる。
【0216】
単一の立体異性体を調製し、立体異性体のラセミ混合物または非ラセミ混合物から分離かつ単離するか、またはそのいずれかを行う方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、光学活性に関するRとSの異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使い調製するか、または従来法を使い分離することができる。エナンチオマー(RおよびS異性体)は、当業者の間で知られる方法を使い分離することができる。例えば、ジアステレオ異性体の塩または複合体を形成し、それを例えば結晶化により分離する方法、ジアステレオ異性体の誘導体を形成し、それを例えば結晶化により分離する方法、例えば酵素酸化または還元など、エナンチオマーをエナンチオマー特異性試薬と選択的に反応させた後、修飾されたエナンチオマーと未修飾のエナンチオマーを分離する方法、例えばキラル配位子が結合されたシリカなどの支持体上、またはキラル溶媒の存在下などのキラル環境におけるガス液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーなどの方法がある。所定のエナンチオマーが、上記の分類方法の一つにより別の化学物質に変換される場合、エナンチオマー形態を遊離させるために、さらなる手順を必要とする場合が生じるものと予想される。別の方法として、光学活性のある試薬、基質、触媒または溶媒を使用する不斉合成、または不斉変換による別のエナンチオマーへの変換により、特定のエナンチオマーを合成することもできる。特定のエナンチオマーの濃度が高いエナンチオマー混合物に関しては、その主要成分であるエナンチオマーを、再結晶化により、さらに濃縮できる(それに伴い、収率が下がる)。
【0217】
さらに、本発明の化合物は、水、エタノールならびに類似物などの薬学的に許容可能な溶媒と溶媒和した形態に加え、溶媒和していない形態でも存在できる。一般に、本発明の目的に関し、溶媒和した形態は溶媒和していない形態と同等とみなす。
【0218】
本発明の化合物の調製に関し、その化学的性質は当業者の間で知られている。実際、本発明の化合物を調製するには、複数の過程が存在しうる。以下の例は本発明を例示するが、限定するものではない。以下に特に記述しない本発明の化合物は、本明細書に記載する手順を使い、および両方とも参照により本明細書の一部とするWO 2007/044813およびWO 2008/127712に記載されたものを含め、当業者の間で知られる手順を使い、調製することができる。本明細書に引用するすべての参考文献は、その全体として、参照により本明細書の一部とする。
【0219】
式Iの化合物であって、Rが水素、RおよびRが発明の概要における式Iの化合物に関する定義に従うものは、反応図式1の記載に従い調製できる。
【0220】
反応図式1
【0221】
【化16−1】

【0222】
A段階:市販の中間体1を約0℃で、メタノールなどの溶媒中で、一塩化ヨウ素または一臭化ヨウ素などのヨウ化剤で処理し、約一晩、または反応の完了に必要なそれよりも短時間、室温で反応させ、2を得る。完了後、残渣をアセトンでトリチュレートする。別法として、余分なヨウ素をクエンチするために、完了後に反応混合物を0.2Nチオ硫酸ナトリウムに加えてもよい。別法として、アセトニトリルおよびメタノール、またはそのいずれかなどの溶媒中で加熱し、N−ヨードスクシンイミドで処理し、中間体2を調製することができる。
【0223】
B段階:式4の中間体を調製するには、式2の中間体を、TEAなどの塩基が存在する水や水とエタノールの混合などの溶媒中で、市販の一級アミンRNH(遊離アミンまたはHCl塩などのその塩として)と反応させ、反応物を加熱する。
【0224】
別法として、A段階およびB段階を逆の順序で実行し、式4の中間体を得ることもできる。
【0225】
C段階:次に中間体4を、トリエチルアミンなどの塩基、および(+)BINAP存在下のPd(OAc)などの触媒、または(Pd(PPhなどの触媒の存在下で、エチルアクリレートと反応させる。反応物を約95−100℃に加熱した後、約一晩、または反応の完了に必要なそれよりも短時間、反応させ、式5を得る。次に、場合によっては、カラムクロマトグラフィーで5を精製してもよい。
【0226】
6の調製は、5を室温で、場合によってはDIEAなどの塩基の存在下で、DBUで処理して行う。反応物を加熱還流するか、または約170℃に加熱し、完了するまで約5〜15時間、反応させる。溶媒が蒸発した後、残渣をアセトンでトリチュレートし、濾過することにより、6を得る。別法として、反応物を室温に冷却した後、カラムクロマトグラフィーで直接精製してもよい。
【0227】
中間体7の調製は、およそ室温でDCMなどの溶媒中で、Brなどの臭素化剤と6を反応させて行う。次に、反応物を約3時間から一晩、攪拌する。その結果として得た産物を濾過し、DCMなどの溶媒に懸濁し、トリエチルアミンなどの塩基で処理する。有機層を水で洗浄し、NaSOなどの乾燥剤の上で乾燥させ、7を得る。別法として、反応完了後、反応物を部分的に濃縮し、アセトンを加えた後、酢酸エチルなどの溶媒中で、濃縮し、沈殿させ、濾過することにより、7を得ることもできる。
【0228】
市販、または当業者の間で公知の手順を使い調製可能な、式8のボロン酸(またはエステル)を使い、DMEと水の混合またはジオキサンと水の混合などの溶媒中で、Pd(dpppf)およびPd(PPhなどの触媒の存在下で、トリエチルアミンまたはKCOなどの塩基の存在下で、7のSuzukiカップリングを行う。反応物を加熱還流するか、または約95−100℃に加熱し、約3時間反応させる。反応物を室温に冷却した後、水および酢酸エチルで分画する。分離後、有機層を水で洗浄し、NaSOなどの乾燥剤の上で乾燥させ、式I(f)の化合物を得る。
【0229】
別法として、式
【0230】
【化16−2】

【0231】
のスズ試薬を使い、トルエンなどの溶媒中で、Pd(PPhなどの存在下で、場合によってはトリエチルアミンまたはヒューニッヒ塩基などの塩基の存在下で、7(遊離塩基またはHBr塩などのその塩として)のStilleカップリングを行うことができる。反応物を約80−110℃で約4時間、熱する。室温に冷却した後、反応物をカラムクロマトグラフィーで精製し、式I(f)の化合物を得る。別法として、室温に冷却した後、アルミナを担体とする40%KFを追加する。この混合物をセライトで濾過してアルミナを除去した後、セライトを酢酸エチルなどの溶媒で洗浄する。濾液を1M水溶性KFおよびブラインで洗浄する。有機層を減圧下で、MgSOなどの乾燥剤の上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。その後、残渣を塩化メチレンおよびヘキサンでトリチュレートし、式I(f)の化合物を得る。
【0232】
別法として、式Iの化合物であって、R、RおよびRが発明の概要における式Iの化合物に関する定義に従うものは、反応図式2の記載に従い調製できる。
【0233】
反応図式2
【0234】
【化17】

【0235】
WO 2007/044813に記載した手順を使い調製できる中間体9を、市販の式RNHの中間体で、ジオキサンなどの溶媒中で処理し、約一晩、室温で攪拌し、式Iの化合物を得る。
【実施例】
【0236】
合成例
例1(化合物3)
2−アミノ−6−(6−アミノピリジン−3−イル)−4−メチル−8−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン
【0237】
【化18】

【0238】
反応図式A
【0239】
【化19】

【0240】
2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン(10.0g、70.0mmol)をアセトニトリル(100mL)およびMeOH(140mL)に懸濁したものに、室温でN−ヨードスクシンイミド(24.0g、105.0mmol)を加えた。反応物を60℃に加熱し、窒素雰囲気で5時間攪拌した後、室温に冷却した。減圧下で溶媒の約80%を蒸発させ、混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、4−クロロ−5−ヨード−6−メチルピリミジン−2−アミンの微細な結晶を得た(収率:15.70g、83.2%)。LC/MS:CClINに関する計算値(270.47)。検出:272.65(M+2)。HPLC分析純度:97.3%。
【0241】
反応図式B
【0242】
【化20】

【0243】
4−クロロ−5−ヨード−6−メチルピリミジン−2−アミン(16.0g、59.3mmol)をエタノール(200mL)およびHO(250mL)に懸濁したものに、トリエチルアミン(30.0mL、207.5mmol)および4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩(9.75g、71.2mmol)を順に加えた。反応物を加熱還流し、72時間攪拌した後、室温に冷却した。減圧下で溶媒の約80%を蒸発させた。混合物は酢酸エチルとHOで分画した。減圧下で、有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、粗生成物を得た。それをフラッシュクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/アセトンから100%酢酸エチルまで)で精製し、5−ヨード−6−メチル−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリミジン−2,4−ジアミンを淡黄色の結晶として得た(収率:10.23g、51.7%)。LC/MS:C1015INOに関する計算値(334.03)。検出:335.08(MH)。HPLC分析純度:>99.0%。
【0244】
反応図式C
【0245】
【化21】

【0246】
5−ヨード−6−メチル−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン(10.0g、30.0mmol)のDMF(200mL)溶液に室温で、トリエチルアミン(12.50mL、90.0mmol)およびエチルアクリレート(9.80mL、90.0mmol)を順に加えた。反応物を窒素で5分間パージし、Pd(PPh(10mol%、3.50g)を加えた。反応物を95℃に加熱し、窒素雰囲気で一晩、攪拌した。減圧下でほとんどのDMFを蒸発させた。反応物を酢酸エチル(500mL)およびHO(300mL)に加えた。減圧下で、有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、粗生成物を得た。それをフラッシュクロマトグラフィー(70%酢酸エチル/ヘキサンから10%エタノール/酢酸エチルまで)で精製し、(E)−エチル−3−(2−アミノ−4−メチル−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルアミノ)ピリミジン−5−イル)アクリレートを淡黄色の半結晶として得た(収率:6.85g、75.0%)。LC/MS:C1522に関する計算値(306.17)。検出:307.2(MH)。HPLC分析純度:>97.0%。
【0247】
反応図式D
【0248】
【化22】

【0249】
DBU(40mL、267.0mmol)を(E)−エチル−3−(2−アミノ−4−メチル−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルアミノ)ピリミジン−5−イル)アクリレート(6.85g、22.4mmol)に加えた。反応物を170℃に加熱し、24時間、攪拌した。それを70℃に冷却し、HO(100mL)を加え、結晶を晶出させた。混合物を3時間で徐々に室温に冷却した。茶色の結晶を回収し、HOで洗浄して、所望の生成物である2−アミノ−4−メチル−8−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オンを得た(収率:3.0g、51.5%)。LC/MS:C1316O2に関する計算値(260.13)。検出:261.2(MH)。HPLC分析純度:>95%。
【0250】
反応図式 E
【0251】
【化23】

【0252】
2−アミノ−4−メチル−8−(テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(3.0g、11.5mmol)をジクロロメタン(100mL)に懸濁したものに、臭素(0.71mL、13.9mmol)を滴下した。この反応物を室温で3時間、攪拌した。溶媒の約80%が除去されるまで、減圧下で溶媒を蒸発させた。次に、酢酸エチル(100mL)を加え、2−アミノ−6−ブロモ−4−メチル−8−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オンHBr塩(収率:4.50g、92.7%)を淡黄色の結晶として得た。LC/MS:C1315BrNに関する計算値(339.04)。検出:341.1(M+2)。HPLC分析純度:>97%。
【0253】
反応図式F
【0254】
【化24】

【0255】
2−アミノ−6−ブロモ−4−メチル−8−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オンHBr塩(4.50g、10.7mmol)をジオキサン(100mL)およびHO(35mL)に懸濁し、2−アミノピリジン−5−ボロン酸ピナコールエステル(3.55g、16.06mmol)およびKCO(4.50g、32.1mmol)を加えた。反応物を窒素で5分間パージし、Pd(PPh(1.24g、10mol%)を加えた。それを95℃に加熱し、窒素雰囲気で3時間、攪拌した。3時間後に行ったHPLC分析では、開始材料は残っていなかった。攪拌を停止し、この反応混合物を酢酸エチル(200mL)およびHO(100mL)に加えた。有機層を容積が約50%になるまで蒸発させ、約3時間で徐々に室温に冷却し、粗生成物を得た。濾過により固体を回収し、水(50mL)および酢酸エチル(50mL)で洗浄し、黄色の固体として2.5gの粗生成物を得た。
【0256】
固体粗生成物(3.0g)に、1,4−ジオキサン(380mL)および脱イオン水(91mL)を加え、70℃以上に加熱し、遊離塩基を分解した。この加熱溶液に、146mgのSi−SPM3スカベンジャーレジン(重量濃度8%、PhosphonicS Ltd, Oxford, UK)を加え、1時間、85−90℃に加熱した。反応混合物が冷却する前に濾過し、濾過フラスコとフィルターを1,4−ジオキサン(20mL)で洗い流した。溶媒の約70%が除去されるまで、濾液を減圧下で濃縮した。懸濁液を4時間で室温に冷却し、減圧濾過により沈殿した固体を回収し、酢酸エチル(30mL)で洗浄し、高減圧下で一晩、乾燥させ、2−アミノ−6−(6−アミノピリジン−3−イル)−4−メチル−8−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(収率:1.50g、39.8%)を淡黄色の結晶として得た。LC/MS:C1820に関する計算値(352.4)。検出:353.04(MH)。HPLC分析純度:>99%。HNMR(DMSO−d,400MHz);δ 8.21(s,1H),7.83(s,1H),7.70(d,1H),7.10(s,2H),6.41(d,1H),6.02(s,2H),5.70(m,1H),4.01(m,2H),
3.40(m,3H),2.95(m,2H),2.57(s,3H),1.50(m,2H)
例2(化合物5)
2−アミノ−6−(6−アミノピリジン−3−イル)−4−メチル−8−[(3R)−テトラヒドロフラン−3−イル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン
【0257】
【化25】

【0258】
反応図式G
【0259】
【化26】

【0260】
アセトニトリル(100mL)とMeOH(140mL)に2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン(Aldrich、10g、70mmol)を溶解した溶液に、N−ヨードスクシンイミド(Aldrich、24g、105mmol)を室温で加えた。反応混合物を窒素雰囲気で5時間、60℃に加熱した。反応完了後、LC/MSでモニタリングし、室温に冷却した。反応混合物をロータリーエバポレーターに入れ、元の容積の半分まで、溶媒を蒸発させた。ジエチルエーテル(200mL)を加えることにより、沈殿物が形成された。減圧濾過により沈殿物を回収し、4−クロロ−5−ヨード−6−メチルピリミジン−2−アミン(15.7g、収率83%)を得た。CClINに関するMS(EI):272.65(M+2)。HPLC分析純度:>97%。
【0261】
反応図式H
【0262】
【化27】

【0263】
4−クロロ−5−ヨード−6−メチルピリミジン−2−アミン(7.03g、26.08mmol)、(R)−テトラヒドロフラン−3−アミン塩酸塩(Milestone PharmTech、3.90g、31.3mmol)およびトリエチルアミン(9.236g、91.3mmol)を、EtOH(150mL)および水(50mL)に溶解した混合物を、2〜3日、還流した。反応はLC/MSでモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、150mLの酢酸エチルおよび200mLの水で分画した。水層を酢酸エチルで3回、抽出した。それらを集めた有機層を減圧下で乾燥させ(MgSO)、濃縮した。酢酸エチルからの残渣を再結晶化し、(R)−5−ヨード−6−メチル−N−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン(4.53g、収率54%)を得た。C13INOに関するMS(EI) :321.0(MH)。
【0264】
反応図式J
【0265】
【化28】

【0266】
(R)−5−ヨード−6−メチル−N−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリミジン−2,4−ジアミン(4.53g、14.2mmol)、エチルアクリレート(4.25g、42.5mmol)、およびトリエチルアミン(4.30g、42.5mmol)をDMF(150mL)に溶解した溶液に、室温の窒素雰囲気で、Pd(PPh(1.635g、10mol%)を加えた。この混合物を窒素雰囲気で18時間、95℃に加熱した。LC/MSにより反応の完了を確認した後、混合物を減圧下で濃縮し、直接カラムクロマトグラフィーにかけて精製し、(R,E)−エチル3−(2−アミノ−4−メチル−6−(テトラヒドロフラン−3−イルアミノ)ピリミジン−5−イル)アクリレート(3.90g、収率94%)を得た。C1420Oに関するMS(EI):293.2(MH)。
【0267】
反応図式K
【0268】
【化29】

【0269】
フラスコでDBU(20mL)に(R,E)−エチル3−(2−アミノ−4−メチル−6−(テトラヒドロフラン−3−イルアミノ)ピリミジン−5−イル)アクリレート(3.9g、13.4mmol)を溶解した。反応混合物を窒素雰囲気で24時間、170℃で攪拌した。混合物を放置して室温に冷却し、水で希釈した。水層を酢酸エチルで抽出した(100mL x 3)。集めた有機層をブラインで洗い、分離し、MgSO4で乾燥させた。クロマトグラフィーで精製し、(R)−2−アミノ−4−メチル−8−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(1.59g、収率48%)を得た。C1214に関するMS(EI):247.1(MH)。
【0270】
反応図式L
【0271】
【化30】

【0272】
(R)−2−アミノ−4−メチル−8−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(1.59g、6.45mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解した溶液に、室温で臭素(0.4mL、7.74mmol)を加えた。この反応物を室温で2時間、攪拌し、LC/MSでモニタリングした。減圧下で溶媒を除去して得た粗生成物に酢酸エチルを加え、(R)−2−アミノ−6−ブロモ−4−メチル−8−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン臭化水素酸塩を沈殿させ、黄色の沈殿物を得た(2.60g、定量)。それ以上精製せずに、この臭化水素酸塩を次の反応に使用した。C1213BrNに関するMS(EI):325.0(M)、327.0(M+2)。
【0273】
反応図式M
【0274】
【化31】

【0275】
(R)−2−アミノ−6−ブロモ−4−メチル−8−(テトラヒドロフラン−3−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン臭化水素酸塩(2.97g、7.36mmol)を1,4−ジオキサン(100mL)および水(25mL)に溶解した溶液に、2−アミノピリジン−5−ボロン酸ピナコールエステル(2.43g、11.0mmol)、KCO(3.05g、22.1mmol)、およびPd(PPh(170mg、2mol%)を窒素雰囲気で加えた。反応混合物を95℃で3時間、熱した。LC/MSで反応の完了を確認した後、反応混合物を酢酸エチル(200mL)で分画した。水層中の沈殿物を濾過して回収した。一方、水層を酢酸エチルで(100mL x 3)、有機層をブラインで洗った。有機層を回収し、MgSOで乾燥させ、混合物を濾過した。溶媒を減圧下で除去し、黄色の固体を得た。集めた固体を酢酸エチルおよび水で洗い、所望の生成物を得た(1.96g、収率79% yield、HPLC純度>98%)。
【0276】
この固形生成物に、1,4−ジオキサン(150mL)および脱イオン水(50mL)を加え、80℃に加熱した。この均質な加熱溶液に、98mgのSi−SPM3スカベンジャーレジン(5%w/w、PhosphonicS Ltd,Oxford,UK)を加え、80℃で2時間、熱した。反応混合物が冷却する前にセライトで濾過し、1,4−ジオキサンで洗い流した。溶媒の約70%が除去されるまで、濾液を減圧下で濃縮した。懸濁液を約2時間、室温に冷却し、沈殿した固体を濾過で回収し、酢酸エチルで洗浄し、高減圧下で一晩、乾燥させ、2−アミノ−6−(6−アミノピリジン−3−イル)−4−メチル−8−[(3R)−テトラヒドロフラン−3−イル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(927mg、収率37%、純度>99%)を得た。濾液を濃縮し、再結晶化させ、追加の化合物を得た(355mg、収率14%、純度>96%)。C1718に関するMS(EI):339.2(MH)。HPLC(純度>97%)。HNMR(400MHz,DMSO−d6);δ 8.20(s,1H),7.85(s,1H),7.69(dd,1H),7.12(s,2H),6.45(d,1H),6.20(m,1H),6.03(s,2H),4.22(qr,1H),3.87(m,3H),2.53(s,3H),2.37(m,1H),2.03(m,1H)
例3から5は、本明細書に記載した手順と類似の手順を使い、調整される。
【0277】
【数2】

【0278】
実用性
PI3KおよびmTORの活性および化合物によるその阻害を測定するための適切なin vitro測定法は、当分野で知られている。生物学的実施例1および2に記載した測定法を使い、本発明の化合物の試験を行い、それらがPI3KおよびmTORの阻害剤であることを決定した。癌の治療におけるin vitroの有効性を測定するための測定法は、当分野で知られている。それらに加え、下記の生物学的実施例3に、細胞ベースの腫瘍モデルを記載する。増殖を測定するためのアッセイ法は、下記の生物学的実施例4に記載する。本発明の化合物のマウスミクロソームによる酸化を測定するための測定法は、下記の生物学的実施例5に記載する。癌に関する適切なin vivoモデルが当業者の間で知られている。乳腺癌、結腸腺癌、前立腺癌に関するin vivoモデルについてさらに詳しくは、下記の生物学的実施例6、7および8を参照のこと。当分野で開示されている例に加え、ここで開示する例に従い、当業者は本発明の化合物の阻害活性を決定することができる。
【0279】
本発明の化合物は、PI3KおよびmTORの阻害剤として、PI3KおよびmTOR、またはそのいずれかの活性が、疾患の病態および総体症状に寄与するような疾患、特に癌の治療に対して有用である。例えば、PI3KおよびmTOR、またはそのいずれかの活性が、疾患の病態および総体症状に寄与する癌には、乳癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、胃癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、メラノーマ、卵巣癌、子宮頸癌、膵癌、前立腺癌、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、または甲状腺癌が含まれる。
【0280】
生物学的実施例
生物学的実施例1
PI3Kルシフェラーゼ結合化学発光測定法プロトコール
PI3Kα活性は、ルシフェラーゼ・ルシフェリン結合化学発光を使い、キナーゼ反応後に消費されたATPの割合として測定される。反応は384ウェルの白色、培地結合マイクロタイタープレート(Greiner)中で行った。キナーゼ反応は、試験化合物、ATP、基質(PIP2)、キナーゼを緩衝液に溶解した20μLの溶液中で開始した。標準PI3Kalpha測定用緩衝液は、50mM Tris(pH 7.5)、1mM EGTA、10mMmgCl、1mM DTT、0.03% CHAPSで構成される。酵素、ATP、基質に関する標準測定濃度は、順に1.5nm、1μM、10μMである。反応混合物を約2時間、外気温でインキュベートした。キナーゼ反応後、ルシフェラーゼ・ルシフェリン混合液(Promega Kinase−Glo)の10μLのアリコートを加え、Victor2プレートリーダー(Perkin Elmer)を使い、化学発光シグナルを測定した。ATP総消費量は40〜60%に制限され、対照化合物のIC50値は、参考文献の値とよく相関する。PI3Kの他の異性体に関する化合物の活性を求めるために、PI3KαをPI3Kβ、PI3Kδ、またはPI3Kγに置き換えることができる。
【0281】
生物学的実施例2
mTOR/GbL/Raptor(mTORC1)のELISA測定
4E−BP1タンパク質をリン酸化した後、ELISA法によりmTORC1酵素活性を測定した。すべての実験を384ウェルのプレートで行った。種々の濃度の試験化合物を含む0.5μL DMSOを、酵素溶液15μLと混合した。基質を含む15μLの溶液を加え、キナーゼ反応を開始させた。測定は0.2nm mTORC1、10μM ATPおよび50nm NHisタグ付加4E−BP1を20mM Hepes、pH 7.2、1mM DTT、50mM NaCL、10mM MnCl、0.02mg/mL BSA、0.01% CHAPS、50mM β−グリセロリン酸に溶解した条件で行った。外気温で120分間インキュベートした後、20μLの反応液を、ニッケルキレートでコーティングした384ウェルのプレートに移した。4E−BP1タンパク質の結合反応を60分間進行させた後、50μLのトリス緩衝生理食塩水(TBS)で4回、洗浄した。抗リン4E−BP1ウサギIgG(20μL、1:5000)の5% BSA−TBST(0.2% Tween−20を含むTBS)溶液を加え、さらに60分間インキュベートした。一次抗体を洗い流した後(50μLで4回)、同様の方法で、二次抗体であるHRPタグ付加抗IgGのインキュベーションを行った。TBSTによる最後の洗浄後、20μLのSuperSignal ELISA Femto(Pierce Biotechnology)を加え、EnVisionプレートリーダーを使い、発光を測定した。
【0282】
生物学的実施例3
pS6(S240/244)のELISA測定
10% FBS(Cellgro)、1% NEAA(Cellgro)および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Cellgro)を含むDMEM(Cellgro)が入った96ウェルプレート(Corning, 3904)に、PC−3細胞およびMCF−7細胞(どちらもATCC)を、1ウェルあたり8x10個の割合で播種した。細胞を固定してELISAで測定するために、pS6(S240/244)用プレート1枚およびトータルS6用プレート1枚の合計2枚のプレートを用意した。細胞を37°C、5% COで48時間インキュベートした後、増殖培地を無血清DMEMに交換した。試験化合物を0.3% DMSO(媒体)で段階希釈した液を細胞に加え、3時間インキュベートした。細胞を固定するために、培地を除去し、4%ホルムアルデヒド(Sigma Aldrich, F8775)を含むTBS(20mM Tris、500mM NaCl)に100μL/ウェルを各ウェルに加え、室温で30分間放置した。0.1% Tween20(Bio−Rad, catalog # 170−6351)を含むTBS(TBST)200μLで3回、細胞を洗浄し、100μL 0.6% H(VWR InternationaL, catalog # VW3742−1)を含む100μL TBSTで、室温で30分間、クエンチした。プレートを200μL TBSTで3回洗浄し、5% BSA(Jackson ImmunoResearch, 001−000−173)を含む100μL のTBSTで、室温で1時間ブロックした。抗pS6(S240/244)抗体(Cell Signaling Technology, 2215)および抗トータルS6抗体(Cell Signaling Technology, 2217)を、5% BSAを含むTBSTで1/500に希釈し、それぞれの一次抗体溶液50μLを1枚のプレートに加え、pS6またはトータルS6を検出した。4°Cで一晩インキュベートした後、200μL TBSTでプレートを4回、洗浄した。ヤギ抗ウサギ二次抗体(Jackson ImmunoResearch, catalog # 111−035−003)を、5% BSAを含むTBSTで1/15000に希釈した。100μLの抗体溶液を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを200μL TBSTで3回、および200μL TBSで2回、洗浄した。化学発光基質(Super Signal Elisa Femto Chemiluminescent Substrate; Pierce, 37075)を室温で調製した。1ウェルあたり100μLの化学発光基質を加えた後、プレートを1分間、振盪した。その直後、Wallacプレートリーダーで、発光を測定した。IC50値は、化合物を含むウェルでのトータルS6のシグナルに対するpS6のシグナルの比率を、DMSOで処理した対照ウェルと比較して決定した。
【0283】
生物学的実施例4
MCF−7およびPC−3の2日間BrdU細胞増殖測定
MCF−7細胞(ATCC)およびPC−3細胞(ATCC)を、DMEM(Cellgro, # 10−014−CV) + 10% 加熱不活化FBS(Invitrogen) + 1% Pen/Strep(Cellgro, # 30−002−CI) + 1% NEAA(Cellgro, # 25−025−CI)で構成される増殖培地を入れた96ウェルプレート(Corning, # 3904)に、それぞれ1ウェルあたり15000個および8000個の密度で潘種した。細胞を37°C、5% COで一晩インキュベートした。翌日、試験化合物を増殖培地で段階希釈した液で細胞を処理した(最終濃度0.3%のDMSOを含む)。各化合物濃度に対して3個のウェルを使用した。対照ウェルでは、増殖培地に0.3% DMSOを加えた。プレートは37°C、5% COでさらに48時間インキュベートした。細胞をBrdU(Roche, # 10280879001, 20 μM)で2〜4時間標識した後、70% EtOH + 0.1 M NaOHで30分間、室温で固定した。抗BrdUペルオキシダーゼ(Roche, # 11585860001, 1/2000 in PBS + 1% BSA)複合体を細胞に加えた後、 1x PBSでプレートを3回、洗浄した。化学発光基質溶液(Pierce, # 3707A/B)を加え、プレートリーダーを使い、0.1秒間、発光を測定した。IC50値は、化合物で処理した場合の細胞増殖を、0.3% DMSO媒体による対照と比較して決定した。
【0284】
生物学的実施例5
マウスミクロソーム酸化測定
マウス肝ミクロソーム画分存在下での試験化合物のミクロソームによる酸化を、96ウェルのマイクロタイタープレートで行った。肝ミクロソーム製剤はBDgentest(Cat # 452701)から購入した。肝ミクロソームおよびNADPHの存在下で、試験化合物のプレートを2枚、37℃で30分間インキュベートした。反応混合物(75μL)では、100mMリン酸カリウムpH 7.4緩衝液に、最終濃度15μMの試験化合物、0.15% DMSO、0.5mg/mLミクロソームタンパク、1mM NADPHを溶解した。対照インキュベーションには、酵素と基質はすべて含めたが、NADPHは加えなかった。すべての検査セットに、測定法の性能を確認するための基準とするCYP450基質を含めた。0.1%ギ酸を含む150μLアセトニトリルを加えて反応を止めた。残った試験化合物の濃度は、Sciex API−3000によるLC/MS/MS分析で決定した。酸化率(%)は、試料と共に注入した内部標準のピーク積分と比較した試験化合物のピーク積分の変化(NADPHを加えた場合と加えない場合)から求めた。
【0285】
酸化率(%)= [((ピーク積分化合物、NADPHなし / ピーク積分標準) −(ピーク積分 化合物、NADPHあり / ピーク積分標準)) / 100]
分析物のクロマトグラフィーによる分離は、Phenomenex Synergi Hydro−RPカラム(Torrance, CA)で、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルおよび0.1%ギ酸を含む水で構成される移動相を使い行った。HPLCカラムからの化合物の溶出には、直線勾配2〜98%のアセトニトリルを使用した。一試料に関する複数の測定値(例えば、同一試料の数回の注入で得た値)で観察された通常の変動(すなわち精度)は約10%であり、従って、+/− 10%の実験結果は、ほとんど、または全く酸化が起きなかったことに相当する。負の値が大きい実験結果(負の値が>10%)が得られた場合に、化合物のNADPH依存性の代謝が起きた可能性が示唆される。
【0286】
生物学的実施例6−8
薬力学的異種移植腫瘍モデル
以下のモデルでは、生後5〜8週で体重が約20〜25gの雌雄の胸腺欠損ヌードマウス(NCr)を使用した。試験開始前に、マウスを最低48時間順化させた。これらの試験中、マウスには適宜、食物と水を与え、室温70〜75°Fおよび相対湿度60%に設定した部屋に収容した。自動タイマーを使い、12時間ずつの明暗のサイクルを維持した。化合物による死または腫瘍に関連する死を確認するために、すべてのマウスを毎日、調べた。
【0287】
MCF−7乳腺癌モデル
MCF7ヒト乳腺癌細胞をin vitroで、DMEM(Cellgro)に10%ウシ胎児血清(Cellgro)、ペニシリン−ストレプトマイシン、非必須アミノ酸を追加した培地を使い、37℃、加湿5%のCO雰囲気中で培養した。第0日に、細胞をトリプシン処理して収集し、50%氷冷ハンクス平衡緩衝塩溶液および50%成長因子低減マトリゲル(Becton Dickinson)の溶液100μL中の5 x 10個の細胞を、雌ヌードマウスの側腹後部皮下に移植した。個体識別とデータ追跡のために、各マウスにトランスポンダを埋め込み、臨床症状および生存を確認するために、毎日モニターした。
【0288】
腫瘍の平均重量が100〜200mgに達した時点で、雌胸腺欠損ヌードマウス中で腫瘍が確立され、ステージの決定が行われた。本発明の化合物を、水(1:1モル比の1N HClを含む)に溶解した溶液/微細懸濁液として、1日1回(qd)または1日2回(bid)、10、25、50および100mg/kg、経口投与した。14〜19日間の投与期間中、週に2回、腫瘍の重量を測定し、体重を毎日記録した。
【0289】
Colo−205結腸モデル
Colo−205ヒト結腸直腸癌をin vitroで、DMEM(Mediatech)に10%ウシ胎児血清(Hyclone)、ペニシリン−ストレプトマイシン、非必須アミノ酸を追加した培地を使い、37℃、加湿5% CO雰囲気で培養した。第0日に、細胞をトリプシン処理して回収し、氷冷ハンクス平衡緩衝塩溶液0.1mL中の3 x 10個の細胞(継代数10〜15、生存率>95%)を、生後5〜8週の雌胸腺欠損ヌードマウスの側腹後部皮内に移植した。個体識別とデータ追跡のために、各マウスにトランスポンダを埋め込み、臨床症状および生存を確認するために、毎日モニターした。
【0290】
腫瘍の平均重量が100〜200mgに達した時点で、雌胸腺欠損ヌードマウス中で腫瘍が確立され、ステージの決定が行われた。本発明の化合物を、水(1:1モル比の1N HClを含む)に溶解した溶液/微細懸濁液として、1日1回(qd)または1日2回(bid)、10、25、50および100mg/kg、14日間、経口投与した。14日間の投与期間中、週に2回、腫瘍の重量を測定し、体重を毎日記録した。
【0291】
PC−3前立腺癌モデル
PC−3ヒト前立腺癌細胞をin vitroで、DMEM(Mediatech)に20%ウシ胎児血清(Hyclone)、ペニシリン−ストレプトマイシン、非必須アミノ酸を追加した培地を使い、37℃、加湿5% CO雰囲気で培養した。第0日に、細胞をトリプシン処理して収集し、氷冷ハンクス平衡緩衝塩溶液0.1mL中の3 x 10個の細胞(継代数10〜14、生存率>95%)を、生後5〜8週の雄胸腺欠損ヌードマウスの側腹後部皮下に移植した。個体識別とデータ追跡のために、各マウスにトランスポンダを埋め込み、臨床症状および生存を確認するために、毎日、モニターした。
【0292】
腫瘍の平均重量が100〜200mgに達した時点で、雄胸腺欠損ヌードマウス中で腫瘍が確立され、ステージの決定が行われた。本発明の化合物を、水(1:1モル比の1N HClを含む)に溶解した溶液/微細懸濁液として、1日1回(qd)または1日2回(bid)、10、25、50および100mg/kg、19日間、経口投与した。14〜19日間の投与期間中、週に2回、腫瘍の重量を測定し、体重を毎日記録した。
【0293】
試験実施中、週に2回、皮下または内皮の腫瘍に関し、それぞれの対照群および治療群の各個体における平均腫瘍重量を測定した。腫瘍重量(TW)は、次の式を使い、ノギスで垂直方向の2直径を測定して求めた。
【0294】
腫瘍重量(mg)=[腫瘍体積=長さ(mm) x 幅(mm)]/2
これらのデータを記録し、腫瘍重量を縦軸、移植後経過日数を横軸とする直線グラフにプロットし、腫瘍増殖速度を示す図を作成した。次の式により、腫瘍増殖阻害率(TGI)を求めた。
【0295】
【数3】

【0296】
この式でX=第0日の全腫瘍群の平均TW
=第f日の治療群のTW
=第f日の対照群(媒体のみ)のTW
腫瘍が開始時点のサイズよりも退縮した場合は、次の式により、腫瘍退縮率を求める。
【0297】
【数4】

【0298】
腫瘍サイズは各腫瘍に関して個別に計算し、各試験群に関する平均± SEM 値を求める。統計上の有意性は、Studentの両側t検定を使い決定する(P<0.05の場合に有意と定義する)。
【0299】
上記発明は、明確さと理解しやすさを目的として、図および例を使い、ある程度まで詳細に説明した。種々の特定の実施形態および技法を参照し、本発明について説明した。ただし、本発明の精神と範囲の内部にとどまりつつ、多数の変更および修正を加えることが可能であると理解すべきである。添付した請求項の範囲内で変更および修正が可能であることは、当業者には明白である。上記の説明は、例示を意図したものであり、限定的ではないと理解していただきたい。従って、本発明の範囲は、上記説明を参照して決定すべきではなく、その代わりに、以下の請求項、および請求項と同等と認められるものの全範囲を参照して決定すべきである。本明細書で引用するすべての特許、特許明細書および出版物は、すべての目的に関し、全体として、あたかもそれぞれの特許、特許明細書または出版物を個別に示すかのように、参照により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
提供する式Iの化合物は、
【化32】

場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩である。この式において、
はテトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニル
は水素またはアルキル
は−NR4a
およびR4aは水素である。
【請求項2】
請求項1の化合物またはその単一の立体異性体もしくは複数の立体異性体の混合であって、Rが水素であるもの。場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項3】
請求項1の化合物またはその単一の立体異性体もしくは複数の立体異性体の混合であって、Rがアルキルであるもの。場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項4】
請求項1、2または3の化合物またはその単一の立体異性体もしくは複数の立体異性体の混合であって、Rがテトラヒドロフラニルであるもの。場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項5】
請求項1、2または3の化合物またはその単一の立体異性体もしくは複数の立体異性体の混合であって、Rがテトラヒドロピラニルであるもの。場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項6】
請求項1、2または3の化合物であって、式Iの化合物が式Iaに従うもの。
【化33】

および場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項7】
請求項1、2または3の化合物であって、式Iの化合物が式Ibに従うもの。
【化34】

および場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項8】
請求項1、2または3の化合物であって、式Iの化合物が式Icに従うもの。
【化35】

および場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項9】
請求項1、2または3の化合物であって、式Iの化合物が式Idに従うもの。
【化36】

および場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項10】
請求項1、2または3の化合物であって、式Iの化合物が式Ieに従うもの。
【化37】

および場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項11】
以下から選択される請求項1の化合物
【数5】

【請求項12】
2−アミノ−6−(6−アミノピリジン−3−イル)−4−メチル−8−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オンと命名される請求項10の化合物、および場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項13】
2−アミノ−6−(6−アミノピリジン−3−イル)−4−メチル−8−[(3R)−テトラヒドロフラン−3−イル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オンと命名される請求項6の化合物、および場合によっては薬学的に許容可能なその塩。
【請求項14】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11の化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩、および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液で構成される医薬組成物。
【請求項15】
請求項12の化合物、場合によっては薬学的に許容可能なその塩、および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液で構成される医薬組成物。
【請求項16】
請求項13の化合物、場合によっては薬学的に許容可能なその塩、および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液で構成される医薬組成物。
【請求項17】
疾患、障害または症候群を治療する方法であって、その方法は、治療上有効な量の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13の化合物、場合によってはその単一の立体異性体または複数の立体異性体の混合、さらに場合によっては薬学的に許容可能なその塩を、さらに場合によっては薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈液と共に、患者に投与することで構成される。
【請求項18】
請求項17の方法であって、疾患が癌である。
【請求項19】
請求項18の方法であって、癌が乳癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、胃癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、メラノーマ、卵巣癌、子宮頸癌、膵癌、前立腺癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、甲状腺癌のいずれかである。癌は卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、神経膠芽腫のいずれかである。
【請求項20】
請求項19の方法であって、癌は卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、神経膠芽腫のいずれかである。
【請求項21】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13のいずれかの化合物を調製するための、以下で構成される過程。
(a) 式9の中間体を
【化38】

式RNHの中間体と反応させ、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13の化合物を得る。または、
(b)式7の中間体を
【化39】

式8の中間体と反応させ、
【化40】

が水素である請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13の化合物を得る。および
(c)場合によっては個々の異性体をさらに分解する。

【公表番号】特表2012−504628(P2012−504628A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530150(P2011−530150)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/058881
【国際公開番号】WO2010/039740
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(506024489)エグゼリクシス, インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】